JP6601052B2 - コーティング組成物及び該組成物を塗布し硬化して得られる有機無機複合膜を備えたガスバリア性構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリシラザンを成膜成分として含むコーティング組成物に関するものであり、より詳細には、該コーティング組成物を用いて得られる有機無機複合膜を備えたガスバリア性構造体にも関する。
各種プラスチック基材の特性、特にガスバリア性を改善するための手段として、プラスチック基材の表面に、ケイ素酸化物などからなる無機膜を形成することが従来から行われている。
無機膜を形成する手段としては、プラズマCVD等の蒸着が代表的であるが、コーティングにより無機膜を形成する手段(コーティング法)も知られている。コーティング法は、無機膜を形成するための成膜成分を含むコーティング組成物(塗布液)をプラスチック基材の表面に塗布し、乾燥等の熱処理を行うことにより成膜するというものである。このようなコーティング法は、蒸着などの成膜手段のように格別の装置を用いることなく、容易に無機膜を成膜できるという利点がある。
上記のコーティング組成物に用いられる成膜成分としては、ポリシラザンが注目されている。即ち、ポリシラザンは、加熱すると、空気中の水分と反応してSiOを形成するため、これを成膜成分として含むコーティング液では、SiO膜が形成され、これにより、ガスバリア性や硬度等の特性を向上せしめることが可能となる。
しかしながら、上記の無機膜は膜中にクラックが発生しやすく、そのため高いガスバリア性を得るには至っていないのが実情であり、例えば、このSiO膜により、10−1g/m・day/atm以下の水蒸気透過度を実現することはできない。
上記のような無機膜の欠点を改善するために、ポリシラザンが種々のポリマー成分と併用されているコーティング組成物が提案されている。
例えば、特許文献1には、ポリシラザンとアクリル系樹脂またはフッ素樹脂とを成膜成分として含むコーティング組成物が提案されている。
また、特許文献2には、水酸基を有する透明高分子とポリシラザンとを成膜成分として含むコーティング組成物が提案されている。
さらに、特許文献3には、エポキシ基を有する反応性セグメントと該反応性セグメントとは非相溶のセグメントとを有するブロック共重合体(例えばポリスチレン/エポキシ化ポリブタジエン共重合体)とポリシラザンとを成膜成分として含むコーティング組成物が提案されている。
特開平9−175868号公報 特開2006−328217号公報 特開2014−51637号公報
しかしながら、従来公知の技術では、ポリシラザンを成膜成分として含むコーティング組成物を用いて高いガスバリア性(例えば水蒸気透過度が10−1g/m・day/atm未満のレベル)の膜を得るには至っていない。
例えば、特許文献1のように、ポリシラザンとアクリル系樹脂の組み合わせでは、アクリル系樹脂の層にポリシラザンにより形成されるSiO成分が分散した構造の有機無機膜が形成され、透明性や表面硬度を向上させるには有効であり、またクラックの発生も有効に防止されているが、この膜のガスバリア性向上効果が十分でない。おそらく、SiO成分がアクリル系樹脂の層全体にわたって均等に分散されてしまっているため、SiOによるガスバリア性向上効果が不十分になってしまうものと思われる。
一方、ポリシラザンとフッ素樹脂の組み合わせでは、ポリシラザンが安定に分散したコーティング組成物を調製することが困難である。
また、特許文献2のように、水酸基を有する透明高分子とポリシラザンとの組み合わせでは、透明性や密着性に優れ、しかもクラックの発生を有効に防止することはできるとしても、ポリシラザンが、透明高分子が有する水酸基と反応してしまうため、やはり、SiOによるガスバリア性向上効果が不十分となってしまう。
さらに、特許文献3で提案されているブロック共重合体(例えばポリスチレン/エポキシ化ポリブタジエン共重合体)とポリシラザンとの組み合わせで得られる膜では、該ブロック共重合体が有する反応性セグメントから形成される層(例えばエポキシ化ポリブタジエンの層)と、これとは非相溶の層(例えばポリスチレンの層)とに層分離しており、反応性セグメントの層中に、ポリシラザンから形成されるSiOの粒子が層状に分布した構造となる。このような構造の膜は、クラックの発生が有効に回避されているが、やはり、ガスバリア性の向上効果が低い。即ち、ガスバリア性の向上に寄与するSiO成分が膜状に形成されず、粒状に分布しているに過ぎないため、所謂迂回効果によりガスバリア性が高められるに過ぎず、粒子間でのガスの透過を有効に回避することができないからである。
従って、本発明の目的は、ポリシラザンを成膜成分として有しており、クラックの発生が有効に回避されると同時に、高いガスバリア性を示す有機無機複合膜を形成することが可能なポリシラザン成分含有のコーティング組成物、及び該コーティング組成物の硬化膜である有機無機複合膜を備えたガスバリア性構造体を提供することにある。
本発明者等は、ポリシラザンを成膜成分として有するコーティング組成物について検討を重ねた結果、ポリシラザンに一定の条件を満足する疎水性樹脂(例えば、ポリオレフィン)を組み合わせたときには、クラックの発生が有効に解決され、しかも、優れたガスバリア性を示す有機無機複合膜が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明によれば、ポリシラザンと、該ポリシラザンとは非反応性の非フッ素系疎水性樹脂とを含有していることを特徴とするコーティング組成物が提供される。
かかるコーティング組成物においては、
(1)前記非フッ素系疎水性樹脂がポリオレフィン樹脂であること、
(2)前記非フッ素系疎水性樹脂の含有量が、コーティング組成物100質量部当り40〜95質量部であること、
が好ましい。
また、本発明によれば、下地基材の表面に、請求項1〜3の何れかに記載のコーティング組成物の硬化膜が形成されていることを特徴とするガスバリア性構造体が提供される。
かかるガスバリア性構造体においては、
(1)前記硬化膜には、前記下地基材には面していない側の表面から、前記下地基材に面している側の表面に向かって、ケイ素原子、窒素原子、炭素原子及び酸素原子の4原子基準での原子濃度で示して、ケイ素原子濃度が次第に低下しており且つ炭素原子濃度が次第に増大している濃度勾配が形成されていること、
(2)前記硬化膜は、前記下地基材には面していない側の表面から10nmの深さにおいて、前記4原子基準での炭素原子濃度が0.01〜10原子%の範囲にあること、
が好適である。
本発明のコーティング組成物は、ポリシラザンと組み合わせで、ポリシラザンとは非反応性であり(例えばOH基を有していない)且つ非フッ素系の疎水性樹脂が使用されている点に顕著な特徴を有している。即ち、かかるコーティング組成物では、該疎水性樹脂を主体とする有機成分中に、ポリシラザンにより形成される無機成分(SiO成分)濃度が高い領域を有する有機無機複合膜を形成することができ、このため、著しく高いガスバリア性を示す。例えば、後述する実施例に示されているように、水蒸気透過度が10−1g/m・day/atm以下のレベルの水分バリア性を実現することが可能となる。
また、疎水性樹脂をコーティングする場合、下地基材として汎用樹脂を使用した場合、密着性が非常に低くなるが、ポリシラザンと組み合わせたコーティング組成物の塗布膜では、ポリシラザンが下地基材とは反対側の表面側にポリシラザンが局在化すると同時に、下地基材との界面側にも局在化する。このような塗布膜を硬化することにより得られる硬化膜(有機無機複合膜)では、下地基材との反対側の表面でポリシラザンの硬化が有効に促進し、ポリシラザン由来のSiO成分の濃度が高い領域が形成される。一方で、下地基材との界面側では、ポリシラザン成分と下地基材の極性基が反応するため、このような塗布膜を硬化して得られる硬化膜(有機無機複合膜)は、下地基材に対しても高い密着性を示す。
従って、本発明のコーティング組成物から形成される硬化膜(有機無機複合膜)は、下地基材の表面との密着性に優れているため、このような有機無機複合膜を下地基材上に形成した構造体は、ガスバリア性構造体として使用される。
例えば、下地基材の表面が水分トラップ性を有する吸湿層により形成されている場合において、この吸湿性層の表面に、このコーティング組成物を用いて有機無機複合膜を形成した構造体は、水分の侵入を嫌う各種デバイスに有効に使用され、各種デバイスの基板や封止層として有用であり、特に有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)パネルにも好適に適用することができる。
本発明のコーティング組成物を用いて形成される有機無機複合膜における厚み方向についての原子分布を示す線図。
<本発明の原理>
本発明のコーティング組成物は、ポリシラザンと疎水性樹脂とを成膜成分として含み、さらに、揮発性の有機溶剤に加え、必要に応じて、公知の配合剤が添加されているが、特に重要な点は、ポリシラザンと組み合わせて使用されている疎水性樹脂として、ポリシラザンとは非反応性の非フッ素系の樹脂が使用されている点にある。
即ち、このような非反応性の非フッ素系疎水性樹脂をポリシラザンと併用することにより、クラックの発生低下と密着性の向上により、高いガスバリア性を得ることが出来るが、この理由について、本発明者等は次のように推定している。
即ち、上記のような疎水性樹脂がポリシラザンと共に存在する塗布層を加熱して成膜すると、形成される膜は、疎水性樹脂による有機成分とポリシラザンが水分と反応して生成する無機成分(SiO成分)を含むこととなる。
しかるに、疎水性樹脂は、ポリシラザンとは非反応性であり、ポリシラザンと反応するような反応性基を有していないため、ポリシラザンの分子は疎水性樹脂によって拘束されない。そのため、ポリシラザンは膜表面(下地基材界面とは反対側の表面)、及び、下地基材界面付近にブリードアウトのように局在化する。
従って、このコーティング組成物を下地基材の表面に塗布して形成された塗布層を硬化して得られる硬化膜(有機無機複合膜)では、膜表面にSiOが高濃度で分布し、例えば、蒸着により形成されるSiO膜に近い状態でSiOが存在することとなり、これにより、高いガスバリア性を示すこととなる。即ち、迂回効果ではなく、ガスの透過を直接的に遮断するようになり、この結果、高いガスバリア性が発現するわけである。
また、有機成分である疎水性樹脂により該膜でのクラックの発生も有効に緩和されているばかりか、この疎水性樹脂は、膜表面から膜の内部に連続した状態となっており、従って、表面に高濃度で分布しているSiOの剥がれ等は有効に防止される。
さらに、下地基材との界面近傍では、局在化したポリシラザンが下地基材の極性基と反応し、この結果として、形成される硬化膜と下地基材の表面との密着性も優れたものとなる。
このように、クラックの発生によるバリア性低下や膜の密着性不足も有効に回避され、さらに表面に高濃度で(局在化して)分布しているSiOにより、極めて高いガスバリア性を示し、例えば、疎水性樹脂の耐湿性と相俟って、水蒸気透過度を10−1g/m・day/atm以下のレベルに抑制することも可能となる。
尚、本発明のコーティング組成物を用いて下地基材上に形成される有機無機複合膜におけるSiOの濃度分布は、図1に示されている実験結果により明らかにされている。
即ち、図1は、実施例1で調製されたコーティング組成物をプラスチック基材表面に塗布しての硬化により形成された有機無機複合膜について、XPSにより、ケイ素原子(Si)、炭素原子(C)、酸素原子(O)及び窒素原子(N)についての厚み方向の濃度分布を示したものであり、横軸がエッチング時間(秒)であり、縦軸が原子濃度である。エッチング時間がゼロである場合が膜表面であり、エッチング時間が長くなるほど、膜の深部であることを示している。
この図1から理解されるように、SiO濃度に対応するケイ素原子濃度は、膜表面において高く、膜の内部にいくにしたがって低下しており、下地基材との界面付近で再び高くなる。一方、疎水性樹脂に相当する炭素原子濃度は、膜表面では著しく低く、膜の内部にいくにつれて増大しており、下地基材との界面付近で、再び炭素原子濃度は著しく低くなる。
このような結果から、膜表面では、ポリシラザンと水との反応により生成するSiOがほとんどであり、膜表面に局在化しており、膜の内部にいくにつれて、SiO濃度は徐々に減少していることが判る。
また、下地基材との界面近傍では、再びケイ素原子濃度が上昇している領域が認められる。このことから、下地基材との界面近傍にもポリシラザンの局在化した部分が含まれていることが理解される。
<ポリシラザン>
本発明のコーティング組成物に成膜成分として使用されるポリシラザンは、パーヒドロポリシラザンともよばれ、式:−(SiHNH)n−で表され、ヒドロシリル基(SiH)とシラザン基(SiN)と有している。このような構造のポリヒドロシラザンは、下記式で示されるように、水(空気中の水分)と反応し、−SiO−が網目状に連なったケイ素酸化物(SiO)を形成する。即ち、ポリシラザンと水の反応により生成するSiOが膜状に近い状態で連なったときに、迂回効果によらず、高いガスバリア性を発揮することとなる。
尚、ポリシラザンは、アルキル基等の有機基が水素原子との置換により導入されていてもよく、アルコキシシランの重縮合により形成されるシリコーン樹脂成分等が共重合されていてもよいが、有機基や共重合成分の導入は、膜の可撓性を増大させるものの、ガスバリア性の低下をもたらす。従って、これらの導入量は、ガスバリア性を損なわない範囲とすべきであり、例えば、膜表面から10nmの深さでの炭素原子濃度が、ケイ素原子、窒素原子、炭素原子及び酸素原子との4原子基準で10%以下に抑制される範囲内とするのがよい。即ち、膜表面部分での炭素原子濃度が多くなると、ガスバリア性の低下を引き起こすからである。
<疎水性樹脂>
本発明において、上記のポリシラザンと共に、成膜成分として使用される疎水性樹脂とは、23℃の大気中で24時間放置した場合の吸水率が0.05%以下のものを意味し、例えば、アクリル樹脂のように、吸水率の高いものは除外される。
また、用いる疎水性樹脂は、非フッ素系であり、フッ素原子を含有していないと共に、ポリシラザンと非反応性のもの、例えばOH基や脂肪族不飽和基を含有していない樹脂である。
即ち、含フッ素樹脂では、溶媒等が制限されてしまい、上述したポリシラザンが均一に溶解した塗布液を調製することができなくなってしまう。また、ポリシラザンと反応性の疎水性樹脂を用いた場合には、ポリシラザンが該疎水性樹脂によって拘束されることとなり、この結果、SiOが表面に局在化した分布構造を形成することができず、高いガスバリア性を得ることができない。
このように、本発明では、疎水性樹脂として、ポリシラザンとは非反応性の非フッ素系の樹脂が使用される。このような疎水性樹脂としては、種々のものを挙げることができるが、特に、ポリシラザンと水分との反応により得られるSiOの表面局在下に有利であり、表面に局在化したSiOをしっかりと保持することができるという点で、ポリエチレンテフタレート、ポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステル樹脂や、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、中或いは高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、及びα−オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、3−メチル1−ペンテン、1−デセン等)同志のランダムあるいはブロック共重合体、α−オレフィンと環状オレフィンとの共重合体(以下、環状オレフィン共重合体と呼ぶ)が好適であり、中でも環状オレフィン共重合体が最も好適である。
尚、環状オレフィン共重合体における環状オレフィンとしては、基本的には、エチレン系不飽和結合とビシクロ環とを有する脂肪族炭化水素化合物(例えばシクロヘキセン)が代表的であるが、シクロヘキセン環の内部に橋絡基(例えばメチレン基やエチレン基など)を有しているビシクロ環や、ビシクロ環にさらに脂肪族環が結合した多環構造を有している脂肪族炭化水素であってもよい。
このような多環構造の脂肪族炭化水素化合物は、下記式(2)で表される。
(2)
式中、Zは、メチレン基またはエチレン基である。
上記多環構造の脂肪族炭化水素化合物の具体例としては、以下のものを例示することができる。
勿論、環状オレフィンは、上記のものに限定されるものではなく、例えば、式(2)中の脂肪族環にアルキル基等の置換基を1又は2以上有するものであってもよく、特許第3893650号等に例示されているものであってもよい。
本発明において、上述した疎水性樹脂は、成膜可能な分子量を有していればよく、一般に、前述したコーティング組成物100質量部当り40〜95質量部、特に60〜90質量部の量で使用されるのがよい。疎水性樹脂の配合量が多すぎると、ポリシラザンと水との反応により形成されるSiOを十分な量で膜表面に局在化させることができず、ガスバリア性の低下を招きやすく、また、疎水性樹脂の配合量が少なすぎると、表面に局在化するSiO量が過剰となり、表面にクラックが発生し易くなり、さらには、表面に局在化したSiOの剥離が生じ易くなるおそれがある。
<その他の成分>
本発明のコーティング組成物は、上述したポリシラザン及び疎水性樹脂を揮発性の有機溶剤と混合して調製されるが、かかる有機溶剤としては、ポリシラザンから生成するSiOの表面局在化を妨げないようなもの、具体的には、ポリシラザンとは非反応性であり且つ疎水性のものが使用される。
このような有機溶剤として好適に使用されるものは、n−オクタン、n−ノナン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素系溶剤や、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶剤である。
このような有機溶剤は、最終的に得られるコーティング組成物を塗布するのに適した粘度となるような量で使用すればよい。
また、本発明のコーティング組成物には、ポリシラザンと水との反応によるSiOの表面局在化を妨げず、且つガスバリア性の低下を阻害しない限りにおいて、塗料の分野でそれ自体公知の各種添加剤、例えば、顔料、酸化防止剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤なども配合することができる。
<有機無機硬化膜>
上述したコーティング組成物は、所定の基材の表面に塗布し、このコーティング組成物の塗布層を加熱することにより、有機溶剤を除去しコーティング膜を形成し、且つ光照射(例えば波長200nm以下の真空紫外光照射)や加熱、プラズマ処理により、ポリシラザンを硬化しSiOを生成することにより、有機無機硬化膜を形成する。
このようにして形成される有機無機硬化膜は、クラックの発生が有効に回避され、下地基材の表面との密着性に優れ、表面に局在化したSiOも剥離することなく安定に保持され、優れたガスバリア性を示す。
また、上記の有機無機複合膜は、ポリシラザンと疎水性樹脂との量比を前述した範囲内で調整することにより、XPSにより測定して、膜表面から10nmの深さでの炭素原子濃度が、ケイ素原子、窒素原子、炭素原子及び酸素原子との4原子基準で0.01〜10原子%、特に0.01〜5原子%の範囲に設定されているものは、SiOの表面局在化がガスバリア性や表面に局在化しているSiOの耐クラック性をバランスよく発現されており、本発明においては最も好適である。
即ち、この炭素原子濃度が上記範囲よりも高いと、SiOの表面局在化量が少なくなり、ガスバリア性が低くなる傾向がある。
尚、膜表面から10nmの深さでの炭素原子濃度を測定してガスバリア性等の特性を保持するための指標としているのは、これよりも浅い領域では、コンタミの影響により、数値にバラつきを生じ易いからである。
さらに、上記のような有機無機複合膜では、下地基材との界面近傍(例えば下地基材の界面から50nm以内の領域)にケイ素原子濃度が下地基材の界面に向かって漸次増大していく領域が認められる。
このような有機無機複合膜の厚みは、用いたコーティング組成物の粘度等に応じて適宜の厚みに設定され、例えば高粘性のものを用いれば膜厚を厚くすることができるが、一般には、150nm〜3μm程度の厚みとすればよい。
上述した本発明の有機無機複合膜は、下地基材の表面との密着性に優れているため、下地基材が有機性に富んだ表面(例えば樹脂製表面)を有するもののみならず、無機性に富んだ表面(例えば無機蒸着面)を有する下地基材に対しても、これを設けることにより、高いガスバリア性を付与することができ、このような有機無機複合膜を備えた下地基材は、ガスバリア性構造体として、種々の用途に使用することができる。
<ガスバリア性構造体>
本発明の有機無機複合膜を備えており、ガスバリア性が向上されているガスバリア性構造体において、この有機無機複合膜の下地となっている下地基材としては、特に制限されず、種々の表面を有するものであり、その材質は特に制限されず、例えば、各種の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂から形成されているプラスチック基材であってもよいし、このようなプラスチック基材が、公知の酸素バリア性樹脂層や酸素吸収性層などの各種の機能層が積層された多層構造を有する積層体であってもよい。
上記のようなプラスチック基材は、その形態や材質に応じて、射出乃至共射出成形、押出乃至共押出成形、フィルム乃至シート成形、圧縮成形性、注型重合等により成形される。
特に、前述した有機無機複合膜は、水分に対して高いバリア性を示すことから、水分トラップ性を有する吸湿層を表面に有する水分バリア性積層体を下地基材として使用することが、最も好適である。
例えば、このような水分バリア性積層体は、上記のプラスチック基材の表面に、適宜、無機蒸着層を介して吸湿層を有する多層構造を有するものである。
かかる吸湿層は、水分トラップ層とも呼ぶことができ、所定の樹脂層中に粒状吸湿剤を分散させたものなど、それ自体公知の層である。
特に、水分に対する高いバリア性が要求される場合には、水分捕捉性が優れ、しかも水分吸収に起因する膨潤などの変形が有効に回避されているという観点から、イオン性ポリマー中に粒状吸湿剤が分散されている層であることが好ましい。
上記のイオン性ポリマーは、この吸湿層のマトリックスを形成するものであり、イオン性基としてカチオン性基(NH基など)を有するカチオン性ポリマーと、イオン性基としてアニオン性基(COONa基,COOH基など)を有しているアニオン性ポリマーがあり、粒状吸湿剤としては、一般に、イオン性ポリマーよりも到達湿度が低いものが使用される。
即ち、上記のイオン性ポリマーをマトリックスとする吸湿層では、この層に流入した微量の水分は、このマトリックス(イオン性ポリマー)に吸収されることとなる。マトリックス自体が高い吸湿性を示すため、水分を漏れなく捕水し、吸収するわけである。
ところで、単に水分がマトリックスに吸収されたに過ぎない場合には、温度上昇などの環境変化により、吸収された水分は容易に放出されてしまうこととなる。また、水分の侵入により、マトリックスを形成するポリマー分子の間隔を広げ、この結果、吸湿層は膨潤してしまうことにもなる。
しかるに、マトリックス(イオン性ポリマー)よりも到達湿度が低い粒状吸湿剤が分散されている場合には、マトリックス中に吸収された水分は、このマトリックスよりも吸湿性の大きい(即ち、到達湿度が低い)吸湿剤によってさらに捕捉されることとなり、吸収された水分子による膨潤が有効に抑制されるばかりか、この水分子は、吸湿層中に閉じ込められ、この結果、吸湿層からの水分の放出も有効に防止されることとなる。
このように、イオン性ポリマー中に粒状吸湿剤を分散させることにより吸湿層を形成した場合には、高い吸湿能力と共に水分の捕捉と閉じ込めとの2重の機能を有しているため、極低湿度の雰囲気下でも水分を捕捉することができ、層全体で水分を補足するために水分を外部へ漏らすことも無く、著しく高い水分バリア性を実現することができる。
本発明において、上記のようなマトリックスの形成に使用するイオン性ポリマーには、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとがある。
カチオン性ポリマーは、水中で正の電荷となり得るカチオン性基を分子中に有しており、カチオン性基が、求核作用が強く、かつ水素結合により水を補足するため、吸湿性を有するマトリックスを形成することができる。
カチオン性ポリマー中のカチオン性基量は、一般に、形成される吸湿性マトリックスの吸水率(JIS K−7209−1984)が湿度80%RH及び30℃雰囲気下において20%以上、特に30%〜45%となるような量であればよい。
このようなカチオン性ポリマーとしては、アリルアミン、エチレンイミン、ビニルベンジルトリメチルアミン、[4−(4−ビニルフェニル)−メチル]−トリメチルアミン、ビニルベンジルトリエチルアミン等のアミン系単量体;ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の含窒素複素環系単量体;及び、それらの塩類;に代表されるカチオン性単量体の少なくとも1種を、適宜、共重合可能な他の単量体と共に、重合乃至共重合し、さらに必要により、酸処理により部分中和させて得られるものが使用される。また、カチオン性単量体を使用する代わりに、カチオン性官能基を導入し得る官能基を有する単量体、例えば、スチレン、ブロモブチルスチレン、ビニルトルエン、クロロメチルスチレン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン等を使用し、重合後に、アミノ化、アルキル化(第4級アンモニウム塩化)などの処理を行ってカチオン性ポリマーを得ることもできる。
これらのカチオン性ポリマーの中でも、特にアリルアミンが成膜性等の観点から好適である。
また、吸湿性のマトリックスの形成に使用するアニオン性ポリマーは、水中で負の電荷となり得るアニオン性の官能基を分子中に有しており、このような官能基が水素結合により水を補足するため、吸湿性マトリックスを形成することができる。
アニオン性ポリマー中のアニオン性官能基量は、前述したカチオン性ポリマーと同様、形成される吸湿性マトリックスの吸水率(JIS K−7209−1984)が湿度80%RH及び30℃雰囲気下において20%以上、特に30%〜45%となるような量であればよい。
上記のような官能基を有するアニオン性ポリマーとしては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸等のカルボン酸系単量体;α−ハロゲン化ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸系単量体;ビニルリン酸等のホスホン酸系単量体;及びこれら単量体の塩類;などに代表されるアニオン性単量体の少なくとも1種を、適宜、共重合可能な他の単量体と共に重合乃至共重合させ、さらに必要により、アルカリ処理により部分中和させて得られるものが使用される。また、上記のアニオン性単量体を使用する代わりに、上記のアニオン性単量体のエステルや、アニオン性官能基を導入し得る官能基を有する単量体、例えば、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−ハロゲン化スチレン類等を使用し、重合後に、加水分解、スルホン化、クロルスルホン化、ホスホニウム化などの処理を行ってアニオン性ポリマーを得ることもできる。
好適なアニオン性ポリマーは、ポリ(メタ)アクリル酸及びその部分中和物(例えば一部がNa塩であるもの)である。
上述したイオン性ポリマーをマトリックス(吸湿性マトリックス)とする吸湿層中に分散される粒状吸湿剤は、上記のマトリックスを形成するイオン性ポリマー(カチオン性或いはアニオン性ポリマー)よりも到達湿度が低く、極めて高い吸湿性能を有するものでる。このようにマトリックスよりも高い吸湿性を有する吸湿剤を分散させることにより、前述したイオン性ポリマーにより形成されたマトリックスに吸収された水分が直ちに吸湿剤に捕捉され、吸収された水分のマトリックス中への閉じ込めが効果的に行われることとなり、極めて低湿度雰囲気でも水分の吸湿能力を有効に発揮することができるばかりか、水分の吸収による吸湿層の膨潤も有効に抑制される。
上記のような高吸湿性の粒状吸湿剤としては、イオン性ポリマーよりも到達湿度が低いことを条件として、例えば、湿度80%RH及び温度30℃の環境条件での到達湿度が6%以下のものが好適に使用される。即ち、この吸湿剤の到達湿度がイオン性ポリマーよりも高いと、マトリックスに吸収された水分の閉じ込めが十分でなく、水分の放出等を生じ易くなるため、水分バリア性の著しい向上が望めなくなってしまう。また、到達湿度がイオン性ポリマーよりも低い場合であっても、上記条件で測定される到達湿度が上記範囲よりも高いと、例えば低湿度雰囲気での水分のトラップが不十分となり、水分バリア性を十分に発揮できないことがある。
上記のような粒状吸湿剤は、一般に湿度80%RH及び温度30℃雰囲気下において50%以上の吸水率(JIS K−7209−1984)を有しており、無機系及び有機系のものがある。
無機系の吸湿剤としては、ゼオライト、アルミナ、活性炭、モンモリロナイト等の粘土鉱物、シリカゲル、酸化カルシウム、硫酸マグネシウムなどを挙げることができる。
有機系の吸湿剤としては、アニオン系ポリマー若しくはその部分中和物の架橋物を挙げることができる。このアニオン系ポリマーとしては、カルボン酸系単量体((メタ)アクリル酸や無水マレイン酸など)、スルホン酸系単量体(ハロゲン化ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸など)、ホスホン酸系単量体(ビニルリン酸など)及びこれら単量体の塩類等に代表されるアニオン性単量体の少なくとも1種を、重合或いは他の単量体と共重合させて得られるものを挙げることができる。特に透明性が求められる用途においては、有機系の吸湿剤が有効である。例えば、架橋ポリ(メタ)アクリル酸Naの微細粒子などが代表的な有機系吸湿剤である。
上述した粒状吸湿剤の中では、比表面積が大となり、高い吸湿性を示すという観点から粒径が小さな吸湿剤が好ましく(例えば、平均一次粒子径が100nm以下、特に80nm以下)、特に粒径の小さな有機系ポリマーの吸湿剤が最適である。例えば、架橋ポリアクリル酸Na微粒子(平均粒子径約70nm)のコロイド分散液(pH=10.4)が東洋紡株式会社よりタフチックHU−820Eの商品名で市販されており、これは、イオン性ポリマーと併用する粒状吸湿剤として最適である。
粒状吸湿剤の量は、イオン性ポリマーの種類に応じて適宜の量に設定される。
例えば吸湿層のマトリックスがカチオン性ポリマーにより形成されている場合には、このカチオン性ポリマー100重量部当り、50重量部以上、特に100乃至900重量部の量で存在することが好ましく、更には200乃至600重量部の量であることがより好ましい。また、マトリックスがアニオン性ポリマーにより形成されている場合には、アニオン性ポリマー100重量部当り、50重量部以上、特に100乃至1300重量部の量で存在することが好ましく、更には150乃至1200重量部の量であることがより好ましい。
上記のようなイオン性ポリマーと粒状吸湿剤とから形成される吸湿層は、これら成分が溶解乃至分散されている有機溶媒溶液を用いてのコーティング及び加熱硬化により容易に形成することができる。かかる有機溶媒溶液には、イオン性ポリマーに架橋構造を導入するための架橋剤を配合しておくこともでき、これにより、イオン性ポリマーのマトリックスに架橋構造が導入され、吸湿による膨潤をより効果的に抑制することができる。
このような架橋剤としては、イオン性ポリマーが有する官能基と反応性を有する化合物が使用され、例えば下記式(3):
X−SiR (OR3−n (3)
式中、Xは、末端にエポキシ基を有する有機基であり、
及びRは、それぞれ、メチル基、エチル基、もしくはイソプロピル基で
あり、
nは、0、1、もしくは2である、
で表されるシラン化合物や、下記式(4)
G−O(C=O)−A−(C=O)O−G (4)
式中、Gは、グリシジル基であり、
Aは、脂肪族環を有する2価の炭化水素基、例えばシクロアルキレン基であ
る、
で表されるジグリシジルエステルが代表的であり、これらは、用いるイオン性ポリマーの種類に応じて、適宜のものが選択して使用される。
例えば、イオン性ポリマーがカチオン性のものである場合には、式(3)のシラン化合物が好適であり、アニオン性のものである場合には、式(4)のジグリシジルエステルが好適である。
上述した各種成分の溶解乃至分散に用いる有機溶媒としては、比較的低温での加熱により揮散除去し得るものであれば特に制限されず、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒、或いはこれら溶媒と水との混合溶媒、或いは水、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒などを使用することができるが、特に架橋剤としてシラン化合物が配合されている場合には、シラン化合物の加水分解を促進させるために水を含む混合溶媒を使用することが望ましい。
上述した吸湿層は、プラスチック基材の表面に直接形成することもできるが、より高度のガスバリア性を発現させるためには、プラスチック基材の表面に無機蒸着層を形成し、この無機蒸着層上に上述した吸湿層を形成することが好ましい。
無機蒸着層は、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティングなどに代表される物理蒸着や、プラズマCVDに代表される化学蒸着などによって形成される無機質の蒸着膜、例えば各種金属乃至金属酸化物により形成される膜であるが、特に、凹凸を有する面にも均一に成膜され、水分のみならず酸素等に対しても優れたバリア性を発揮するという点で、プラズマCVDにより形成される蒸着膜であることが好ましい。
尚、プラズマCVDによる蒸着膜(無機バリア層1)は、所定の真空度に保持されたプラズマ処理室内に無機バリア層を支持すべきプラスチック基材を配置し、膜形成する金属若しくは該金属を含む化合物のガス(反応ガス)及び酸化性ガス(通常酸素やNOxのガス)を、適宜、アルゴン、ヘリウム等のキャリアガスと共に、ガス供給管を用いて、金属壁でシールドされ且つ所定の真空度に減圧されているプラズマ処理室に供給し、この状態でマイクロ波電界や高周波電界などによってグロー放電を発生させ、その電気エネルギーによりプラズマを発生させ、上記化合物の分解反応物をプラスチック基材の表面に堆積させて成膜することにより得られる。
尚、マイクロ波電界による場合は、導波管等を用いてマイクロ波をプラズマ処理室内に照射することにより成膜が行われ、高周波電界による場合は、プラズマ処理室内のプラスチック基材を一対の電極の間に位置するように配置し、この電極に高周波電界を印加して成膜が行われる。
上記の反応ガスとしては、一般に、プラスチック基材表面に炭素成分を含む柔軟な領域を有し且つその上に酸化度の高いバリア性に優れた領域を有する膜を形成できるという観点から有機金属化合物、例えばトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物や、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機ケイ素化合物等のガスを用いることが好ましく、特に、酸素に対するバリア性の高い無機バリア層1を比較的容易に効率良く形成できるという点で、有機ケイ素化合物が最も好ましい。
このような有機ケイ素化合物の例としては、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメチルシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等の有機シラン化合物、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン等の有機シロキサン化合物等が使用される。また、これら以外にも、アミノシラン、シラザンなどを用いることもできる。
尚、上述した有機金属化合物は、単独でも或いは2種以上の組合せでも用いることができる。
本発明において、上記のような有機金属化合物の反応ガス及び酸化性ガスを用いてのプラズマCVDによる成膜に際しては、グロー放電出力(例えばマイクロ波或いは高周波出力)を低くし、低出力で成膜を開始した後、高出力でプラズマ反応による成膜を行うことが好適である。
このような無機蒸着層の厚みは、用途や要求されるバリア性のレベルによっても異なるが、一般的には、10−2g/m・day/atom以下、特に10−3g/m・day/atom以下の水蒸気透過度が確保できる程度の厚みとするのがよく、このような水蒸気透過度を確保するために、4乃至500nm、特に30乃至400nm程度の厚みを有していればよい。
プラスチック基材上に形成された上記の無機蒸着層上に前述した吸湿層を形成し、この上に、本発明の有機無機複合膜を形成し、下記の層構造;
プラスチック基材/無機蒸着層/吸湿層/有機無機複合膜
とすることにより、ガスバリア性、特に水分に対するバリア性を大幅に向上させることができる。
勿論、本発明の有機無機複合膜は、無機性の表面に対する密着性も良好であるため、上記の無機蒸着層の上に直接形成することもでき、吸湿層を省略した層構造とすることも可能であるし、酸変性オレフィン樹脂やウレタン系樹脂などの接着剤を用い、有機無機複合膜の上に吸湿層を接着固定した層構造とすることも可能である。さらに、上記の有機無機複層膜の上に、表面に無機蒸着層が形成されたバリアフィルムの無機上層層面を、適当な接着剤を用いて貼り付けることにより、吸湿層及び有機無機複合膜を、2つの無機蒸着層によりサンドイッチした層構造とすることもできる。
このように、本発明の有機無機複合膜を備えたガスバリア性構造体は、種々の層構造を採用することができ、特に吸湿層や無機蒸着層の形成により水分バリア性を大きく向上させたものは、各種の電子デバイス、例えば有機EL素子、太陽電池、電子ペーパーなどの電子回路を封止するためのフィルムとして好適に使用することができ、水分による電荷のリーク等を有効に回避することができる。
本発明のコーティング組成物によって形成される有機無機複合膜の優れた性能を、以下の実験例により説明する。
<水蒸気透過度(g/m/day)の測定>
特開2010―286285号公報に記載の方法に基づき、以下のような方法で測定している。
有機無機複合系膜の表面に、真空蒸着装置(日本電子株式会社製、JEE−400)を用いて、真空蒸着により300nmの厚みのCa薄膜(水腐食性金属の薄膜)を形成し、さらに、Ca薄膜を覆うように540nmの厚みのAl蒸着膜(水不透過性金属薄層)を成膜して試料片を作製した。
尚、Ca薄膜は、金属カルシウムを蒸着源として使用し、所定のマスクを介しての真空蒸着により、1mmφの円形部分6箇所に形成した。また、Al蒸着膜は、上記のマスクを真空状態のまま取り去り、装置内のAl蒸着源から引き続き真空蒸着を行うことにより成膜した。
上記のようにして形成された試料を、吸湿剤としてシリカゲル(吸湿能力 300mg/g)を充填したガス不透過性カップに装着し、固定リングで固定して評価用ユニットとした。
このようにして作製された評価用ユニットを、40℃90%に雰囲気調整された恒温恒湿槽に520〜720時間保持した後、レーザー顕微鏡(Carl Zeiss社製、レーザスキャン顕微鏡)により試料のCa薄膜の腐食状態を観察し、金属カルシウムの腐食量から水蒸気透過度を算出した。水蒸気透過度が、10−3g/m/day未満のものを○、10−3g/m/day以上でかつ1g/m/day未満のものを△、1g/m/day以上のものを×とした。
<C原子量(Atomic%)の測定>
完全自動X線光電子分光装置を用い、下記の条件により有機無機複合膜における炭素原子とケイ素原子の存在割合の測定を行った。
測定装置:
「K−Alpha」Thermo Fisher Scientific(株)
X線源:Ar
イオンエネルギー:2000eV
真空度:6.0×10−8Pa
<可撓性評価>
有機無機複合膜を、中央部分よりで半分に折り曲げてラミネーター(フジプラ社製、「LAMIPACKER LPC1502」)の2本のロール間を、ラミネート速度5m/min、温度23℃の条件で通した。その後目視でクラックの有無を評価し、クラックがなければ○、クラックが発生していれば×とした。
<密着強度>
引っ張り試験に対するフィルムの強度を確保するために、試料の有機無機複合膜と支持体のPET面の両面に、厚さ4μmのウレタン系接着剤を介して、厚さ7μmのアルミ箔をドライラミネートし、接着層の硬化のため、50℃×3日間エージングを行い、T型剥離試験用サンプルを作製した。
前記T型剥離試験用サンプルを100mm×15mmの短冊に裁断し、引っ張り試験機により引っ張り速度300mm/minにてT型剥離試験を行った(N=3)。このときの平均の強度を密着強度とし、2(N/15mm)以上のものを○、1(N/15mm)以上2(N/15mm)未満のものを△、1(N/15mm)未満のものを×とした。
<実施例1>
COC(ポリプラスチックス社製、TOPAS8007)を、固形分が20重量%になるようにキシレンで溶解して、COCのポリマー溶液を得た。次いでパーヒドロポリシラザン(メルクパフォーマンスマテリアルズ合同会社製、アクアミカNL110A−20、キシレン溶剤)を5重量%、上記COCのポリマー溶液を95重量%になるように溶液を調整し、更に固形分が10重量%になるようキシレンで調整した上で良く撹拌し、ポリシラザンを成膜成分として含むコーティング組成物を調整した。
前記コーティング組成物をバーコーターにより、厚み100μmのPETフィルム(東レ社製、ルミラー)に塗布し、ボックス型の電気オーブンにより、ピーク温度150℃、ピーク温度保持時間3分の条件で熱処理することで、厚み1μmのコーティング膜を得た。
次いで、前記コーティング膜をエキシマ照射装置(エム・ディ・エキシマ社製、MEIRA-M-1-152-H2)を用い、下記の硬化条件により硬化させることで、有機無機複合膜を得た。
(硬化条件)
照度:60mW/cm2(172nm)
ステージ加熱温度:80℃
照射距離:3mm
搬送スピード:1m/min
搬送回数:10回(5往復)
酸素濃度:0%
<実施例2>
パーヒドロポリシラザンを20重量%、COCのポリマー溶液を80重量%になるよう溶液を調整した以外は、実施例1と同様の方法で有機無機複合膜を得た。
<実施例3>
パーヒドロポリシラザンを40重量%、COCのポリマー溶液を60重量%になるよう溶液を調整した以外は、実施例1と同様の方法で有機無機複合膜を得た。
<実施例4>
パーヒドロポリシラザンを60重量%、COCのポリマー溶液を40重量%になるよう溶液を調整した以外は、実施例1と同様の方法で有機無機複合膜を得た。
<実施例5>
COP(日本ゼオン株式会社製、ZEONOR1020R)を、固形分が20重量%になるようにキシレンで溶解して、COPのポリマー溶液を得た。次いでパーヒドロポリシラザン(メルクパフォーマンスマテリアルズ合同会社製、アクアミカNL110A−20、キシレン溶剤)を20重量%、上記COPのポリマー溶液を80重量%になるよう溶液を調整し、更に固形分が10重量%になるようキシレンで調整した上で良く撹拌し、ポリシラザンを成膜成分として含むコーティング組成物を調整した、以外は、実施例1と同様の方法で有機無機複合系膜を得た。
<実施例6>
パーヒドロポリシラザンを70重量%、COCのポリマー溶液を30重量%になるよう溶液を調整した以外は、実施例1と同様の方法で有機無機複合膜を得た。
<比較例1>
COCのポリマー溶液を100重量%になるよう溶液を調整した以外は、実施例1と同様の方法で有機膜を得た。
<比較例2>
パーヒドロポリシラザンを100重量%になるよう溶液を調整した以外は、実施例1と同様の方法で無機膜を得た。
<比較例3>
PMMA(住化化学社製、スミペックスLG)を、固形分が20重量%になるようにキシレンで溶解して、PMMAのポリマー溶液を得た。次いでパーヒドロポリシラザン(メルクパフォーマンスマテリアルズ合同会社製、アクアミカNL110A−20、キシレン溶剤)を20重量%、上記PMMAのポリマー溶液を80重量%になるよう溶液を調整し、更に固形分が10重量%になるようキシレンで調整した上で良く撹拌し、ポリシラザンを成膜成分として含むコーティング組成物を調整した、以外は、実施例1と同様の方法で有機無機複合系膜を得た。
<比較例4>
フッ素系樹脂(DIC社製、フルオネートK704)を、固形分が20重量%になるようにキシレンで溶解して、フッ素系樹脂のポリマー溶液を得た。次いでパーヒドロポリシラザン(メルクパフォーマンスマテリアルズ合同会社製、アクアミカNL110A−20、キシレン溶剤)を20重量%、上記フッ素系樹脂のポリマー溶液を80重量%になるよう溶液を調整し、更に固形分が10重量%になるようキシレンで調整した上で良く撹拌し、ポリシラザンを成膜成分として含むコーティング組成物を調整した、以外は、実施例1と同様の方法で有機無機複合系膜を得た。
<評価試験>
上記で作製された試料の水分バリア性積層体について、前述した方法で各種特性を測定し、その結果を表1に示した。

Claims (5)

  1. ポリシラザンと、該ポリシラザンとは非反応性の環状オレフィン系樹脂とを含有していることを特徴とするコーティング組成物。
  2. 前記環状オレフィン系樹脂の含有量が、前記コーティング組成物100質量部当り40〜95質量部である請求項に記載のコーティング組成物。
  3. 下地基材の表面に、請求項1又は2の何れかに記載のコーティング組成物の硬化膜が形成されていることを特徴とするガスバリア性構造体。
  4. 前記硬化膜には、前記下地基材には面していない側の表面から、前記下地基材に面している側の表面に向かって、ケイ素原子、窒素原子、炭素原子及び酸素原子の4原子基準での原子濃度で示して、ケイ素原子濃度が次第に低下しており且つ炭素原子濃度が次第に増大している濃度勾配が形成されている請求項に記載のガスバリア性構造体。
  5. 前記硬化膜は、前記下地基材には面していない側の表面から10nmの深さにおいて、前記4原子基準での炭素原子濃度が0.01〜10原子%の範囲にある請求項に記載のガスバリア性構造体。
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