JP2010082860A - ハードコートフィルム及びハードコートフィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】トリアセチルセルロース基材の一面側に隣接して、反応性官能基aを有する平均粒径10〜100nmの反応性シリカ微粒子、及び、前記反応性官能基aとの架橋反応性を有する反応性官能基bを3つ以上有するバインダー成分を含み、且つ前記反応性シリカ微粒子を全固形分に対して30〜65重量%含むハードコート層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる、膜厚3〜25μmのハードコート層20が設けられ、前記トリアセチルセルロース基材の前記ハードコート層20側の界面から0.05〜0.70μmの領域には、前記ハードコート層20の前記バインダー成分が浸透した浸透層30が形成されていることを特徴とする、ハードコートフィルム1。
【選択図】図1
Description
すなわち、上記問題点を解決する本発明の特徴は、以下の点である。
前記トリアセチルセルロース基材の前記ハードコート層側の界面から0.05〜0.70μmの領域には、前記ハードコート層の前記バインダー成分が浸透した浸透層が形成されていることを特徴とする。
上記微粒子は、凝集粒子であっても良く、凝集粒子である場合は、二次粒径が上記範囲内であれば良い。
本発明において、「ハードコート層」とは、一般にJIS K5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験(4.9N荷重)で「H」以上の硬度を示すものである。
また、本発明の光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線が含まれる。
本発明において、膜厚とは乾燥時の膜厚(乾燥膜厚)を意味する。
本発明において、分子量とは、分子量分布を有する場合には、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である重量平均分子量を意味し、分子量分布を有しない場合には、化合物そのものの分子量を意味する。
本発明において、微粒子の平均粒径とは、溶液中の当該粒子を動的光散乱方法で測定し、粒径分布を累積分布で表したときの50%粒子径(d50 メジアン径)を意味する。当該平均粒径は、日機装(株)製のMicrotrac粒度分析計又はNanotrac粒度分析計を用いて測定することができる。
上記微粒子は、凝集粒子であっても良く、凝集粒子である場合は、二次粒径が上記範囲内であれば良い。
本発明に係るハードコートフィルムは、トリアセチルセルロース基材の一面側に隣接して、反応性官能基aを有する平均粒径10〜100nmの反応性シリカ微粒子、及び、前記反応性官能基aとの架橋反応性を有する反応性官能基bを3つ以上有するバインダー成分を含み、且つ前記反応性シリカ微粒子を全固形分に対して30〜65重量%含むハードコート層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる、膜厚3〜25μmのハードコート層が設けられ、
前記トリアセチルセルロース基材の前記ハードコート層側の界面から0.05〜0.70μmの領域には、前記ハードコート層の前記バインダー成分が浸透した浸透層が形成されていることを特徴とする。
また、本発明のハードコートフィルムは、前記ハードコート層が帯電防止剤や防眩剤等を含んでなることにより、帯電防止機能や防眩機能が付与されるものであっても良い。
トリアセチルセルロース基材10のハードコート層側の界面から0.05〜0.70μmの領域にはハードコート層のバインダー成分が浸透した浸透層30が形成されている。
図2は、本発明に係るハードコートフィルム1の層構成の他の一例を模式的に示した断面図である。トリアセチルセルロース基材10の一面側にハードコート層20、帯電防止層40、及び低屈折率層50がこの順に設けられている。トリアセチルセルロース基材10のハードコート層側には図1と同様に浸透層30が形成されている。
本発明に用いられるトリアセチルセルロース基材は、透明性(光透過性)の高いプラスチックフィルム又はシートである。
光学積層体の透明基材として用い得る物性を満たすものであれば特に限定されることはなく、適宜選んで用いることができる。
トリアセチルセルロース基材は、光学的等方性を有するため、液晶ディスプレイ用途の場合においても好ましく用いることができる。
本発明のハードコート層は、少なくとも平均粒径10〜100nmの反応性シリカ微粒子、バインダー成分並びにイソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ブチル及びメチルイソブチルケトンよりなる群から選ばれる1種以上の合計量が80重量%以上である溶剤を含み、且つ前記反応性シリカ微粒子を全固形分に対して30〜65重量%含むハードコート層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、膜厚が3〜25μmである。
本発明において「ハードコート層」とは、上述のように、JIS K5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験(4.9N荷重)でH以上の硬度を示すものである。
本発明のハードコート層は、前記鉛筆硬度試験で更に4H以上であることが好ましい。
本発明のハードコート層用硬化性樹脂組成物について説明する。
本発明のハードコート層用硬化性樹脂組成物は、反応性官能基aを有し、且つ平均粒径が10〜100nmの反応性シリカ微粒子、バインダー成分並びにイソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ブチル及びメチルイソブチルケトンよりなる群から選ばれる1種以上の合計量が80重量%以上である溶剤を含み、その他、機能性付与を目的として防眩剤や防汚剤及び帯電防止剤、コーティング適正の制御としてレベリング剤や溶剤、ブロッキング防止を目的として易滑剤等を含有していても良い。
反応性シリカ微粒子は、ハードコート層に硬度を付与するための成分である。
ハードコート層用硬化性樹脂組成物に平均粒径10〜100nmのシリカ微粒子を当該ハードコート層用硬化性樹脂組成物の全固形分に対して30〜65重量%含有させることにより、ハードコート層に優れた硬度を付与しやすくなる。
反応性シリカ微粒子の平均粒径は12〜50nmであることが好ましい。反応性シリカ微粒子の平均粒径が10nm未満ではハードコート層に十分な硬度を付与できず、また、ハードコート層に隣接するトリアセチルセルロース基材の浸透層や必要に応じてハードコート層のトリアセチルセルロース基材とは反対側に設けるその他の層とシリカ微粒子との接触面積が増えるために、基材との密着性が悪化するおそれがある。平均粒径が100nmを超えると、ハードコート層の透明性が低下し、透過率の悪化、ヘイズの上昇を招く。
反応性シリカ微粒子は、ハードコート層に更に機能を付与するものであっても良く、目的に合わせて適宜選択して用いる。
なお、単位面積当りの有機成分量は、以下の方法により求めることができる。まず、示差熱重量分析(DTG)により、有機成分重量を無機成分重量で割った値(有機成分重量/無機成分重量)を測定する。次に、無機成分重量と用いたシリカ微粒子の比重から無機成分全体の体積を計算する。また、被覆前のシリカ微粒子が真球状であると仮定し、被覆前のシリカ微粒子の平均粒径から被覆前のシリカ微粒子1個当りの体積、及び表面積を計算する。次に、無機成分全体の体積を被覆前のシリカ微粒子1個当たりの体積で割ることにより、反応性シリカ微粒子の個数を求める。更に、有機成分重量を反応性シリカ微粒子の個数で割ることにより、反応性シリカ微粒子1個当たりの有機成分量を求める。最後に、反応性シリカ微粒子1個当りの有機成分重量を、被覆前のシリカ微粒子1個当りの表面積で割ることにより、単位面積当たりの有機成分量を求めることができる。
中でも、本発明においては、被覆している有機成分が反応性シリカ微粒子中に、被覆前のシリカ微粒子の単位面積当たり1.00×10−3g/m2以上含まれることが可能で、シリカ微粒子同士の凝集を抑制し、膜の硬度を向上させる点から、以下の(i)(ii)のシリカ微粒子のいずれかを適宜選択して用いることが好ましい。
(i)飽和又は不飽和カルボン酸、当該カルボン酸に対応する酸無水物、酸塩化物、エステル及び酸アミド、アミノ酸、イミン、ニトリル、イソニトリル、エポキシ化合物、アミン、β‐ジカルボニル化合物、シラン、及び官能基を有する金属化合物よりなる群から選択される1種以上の分子量500以下の表面修飾化合物の存在下、分散媒としての水及び/又は有機溶媒の中にシリカ微粒子を分散させることにより得られる、表面に反応性官能基aを有するシリカ微粒子。
(ii)被覆前のシリカ微粒子に導入する反応性官能基a、下記化学式(1)に示す基、及びシラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基を含む化合物と、金属酸化物微粒子とを結合することにより得られる、表面に反応性官能基aを有するシリカ微粒子。
化学式(1)
−Q1−C(=Q2)−Q3−
化学式(1)中、Q1は、NH、O(酸素原子)、又はS(硫黄原子)を示し、Q2はO又はSを示し、Q3は、NH又は2価以上の有機基を示す。
(i)飽和又は不飽和カルボン酸、当該カルボン酸に対応する酸無水物、酸塩化物、エステル及び酸アミド、アミノ酸、イミン、ニトリル、イソニトリル、エポキシ化合物、アミン、β‐ジカルボニル化合物、シラン、及び官能基を有する金属化合物よりなる群から選択される1種以上の分子量500以下の表面修飾化合物の存在下、分散媒としての水及び/又は有機溶媒の中にシリカ微粒子を分散させることにより得られる、表面に反応性官能基aを有するシリカ微粒子。
上記(i)の反応性シリカ微粒子を用いる場合には、有機成分含量が少なくても膜強度を向上できるというメリットがある。
例えば、疎水性分子残基としては、不活性化又は反発作用をもたらす、アルキル、アリール、アルカリル、アラルキル又はフッ素含有アルキル基等が挙げられる。親水性基としてはヒドロキシ基、アルコキシ基又はポリエステル基等が挙げられる。
アミノ酸の例としては、β−アラニン、グリシン、バリン、アミノカプロン酸、ロイシン及びイソロイシンが挙げられる。
分散媒は、蒸留(任意に減圧下)により容易に除去できる沸点を有することが好ましく、沸点が200℃以下、特に150℃以下の溶媒が好ましい。
化学式(1)
−Q1−C(=Q2)−Q3−
化学式(1)中、Q1は、NH、O(酸素原子)、又はS(硫黄原子)を示し、Q2はO又はSを示し、Q3は、NH又は2価以上の有機基を示す。
上記(ii)の反応性シリカ微粒子を用いる場合には、有機成分量が高まり、分散性、及び膜強度がより高まるという利点がある。
上記反応性官能基修飾加水分解性シランにおいて、当該シリカ微粒子に導入したい反応性官能基aは、後述するバインダー成分と反応可能なように適宜選択すれば特に限定されない。上述したような重合性不飽和基を導入するのに適している。
[(RaO)mRb 3ーmSi−]で示される基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリフェノキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基等を挙げることができる。このような基のうち、トリメトキシシリル基又はトリエトキシシリル基等が好ましい。
ハードコート層用硬化性樹脂組成物に用いられるバインダー成分は、前記反応性シリカ微粒子の反応性官能基aと架橋反応性を有する反応性官能基bを3つ以上有する。当該反応性官能基aと当該反応性官能基bが架橋結合し、網目構造が形成され、ハードコート層の硬度及び耐擦傷性を更に高める。当該反応性官能基bとしては、重合性不飽和基が好適に用いられ、好ましくは光硬化性不飽和基であり、特に好ましくは電離放射線硬化性不飽和基である。その具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合及びエポキシ基等が挙げられる。
尚、変性体としては、EO(エチレンオキサイド)変性体、PO(プロピレンオキサイド)変性体、CL(カプロラクトン)変性体、及びイソシアヌル酸変性体等が挙げられる。
前記ポリアルキレンオキシド鎖含有ポリマー(A)は、下記化学式(4)で表され、末端に3つ以上の反応性官能基bを有する分子量が1000以上のポリアルキレンオキシド鎖含有ポリマーである。
ハードコート層を形成した際の硬度を維持しつつクラックを抑制する点から、n1、n2・・・nkはそれぞれ2〜500の数であることが好ましく、更に2〜300の数であることが好ましい。
Y1〜Ykが反応性官能基bそのものである場合、Y1〜Ykとしては例えば、(メタ)アクリロイル基等の重合性不飽和基が挙げられる。
例えば、エチレン性不飽和基を有する化合物残基としては、具体的には例えば、以下の化合物のエチレン性不飽和基以外の反応性置換基又は反応性置換基の一部(水素等)を除いた残基が挙げられる。例えば、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
2つ以上の反応性官能基bを有する分子量が10,000未満の化合物(B)は、前述の反応性シリカ微粒子と相俟って、ハードコート層の硬度を向上させ、十分な耐擦傷性を付与するものである。なお、上記ポリマー(A)の構造を有するものは、2つ以上の反応性官能基bを有する分子量が10,000未満の化合物(B)から除かれる。
本発明において当該化合物(B)は、上記ポリマー(A)と前述の反応性シリカ微粒子との組み合わせにおいて、互いに反応可能な反応性官能基bを有し、十分な耐擦傷性を有する広範な化合物から適宜選択して用いることができる。当該化合物(B)としては、1種単独で用いても良いが、2種以上を適宜混合して用いても良い。
2つ以上の反応性官能基bを有する分子量が10000未満の化合物(B)は、1分子中に含まれる反応性官能基bが3個以上であることが、硬化膜の架橋密度をあげて、硬度を付与する点から好ましい。ここで化合物(B)が分子量分布を有するオリゴマーの場合、反応性官能基b数は、平均の個数で表される。
また、化合物(B)の分子量は、硬度向上の点から、5,000未満であることが好ましい。
重合性不飽和基を有する具体例として、重合性不飽和基を1分子内に2つ以上有する多官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン変性品、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン変性品、イソシアヌール酸EO変性トリ(メタ)アクリレート(東亞合成製アロニックスM−315等)、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、フタル酸水素−(2,2,2−トリ−(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチル、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン変性品等の3官能(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン変性品、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレート化合物;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン、脂肪酸、アルキル、ウレタン変性品等の5官能(メタ)アクリレート化合物;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン、脂肪酸、アルキル、ウレタン変性品、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン、脂肪酸、アルキル、ウレタン変性品等の6官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
また、上記ウレタン(メタ)アクリレート類に用いられるポリオールとしては、例えば、1,6−ヘキサンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンポリオール、ポリエステルジオール等が挙げられる。上記ウレタン(メタ)アクリレート類に用いられるポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフエニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ヘキサメレチンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。上記ウレタン(メタ)アクリレート類に用いられる水酸基を含有する(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記ポリエステルアクリレート類に用いられるポリエステルポリオールを形成するためのポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられ、多塩基酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
本発明で用いる溶剤は、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ブチル及びメチルイソブチルケトンよりなる群から選ばれる1種以上の合計量が80重量%以上である溶剤である。前記6種類の溶剤の1種以上を溶剤全体の80重量%以上含むことにより、前記バインダー成分が適度にトリアセチルセルロース基材に浸透するため、0.05〜0.70μmの浸透層が形成されやすくなる。
なお、本発明において、浸透とは、トリアセチルセルロース基材を溶解又は膨潤させることをいう。
ハードコート層硬化性樹脂組成物には、上記成分のほかに、更に重合開始剤、帯電防止剤、防眩剤等を適宜添加することもできる。更に、反応性又は非反応性レベリング剤、各種増感剤等の各種添加剤が混合されていても良い。帯電防止剤及び/又は防眩剤を含む場合には、ハードコート層に、更に帯電防止性及び/又は防眩性を付与できる。
上記ラジカル重合性官能基やカチオン重合性官能基の開始又は促進させるために、必要に応じてラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカル及びカチオン重合開始剤等を適宜選択して用いても良い。これらの重合開始剤は、光照射及び/又は加熱により分解されて、ラジカルもしくはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。
帯電防止剤の具体例としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1〜第3アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基などのアニオン性基を有するアニオン性化合物、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系などの両性化合物、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系などのノニオン性化合物、スズ及びチタンのアルコキシドのような有機金属化合物及びそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物等が挙げられ、さらに上記に列記した化合物を高分子量化した化合物が挙げられる。また、第3級アミノ基、第4級アンモニウム基、又は金属キレート部を有し、且つ、電離放射線により重合可能なモノマー又はオリゴマー、或いは電離放射線により重合可能な重合可能な官能基を有する且つ、カップリング剤のような有機金属化合物等の重合性化合物もまた帯電防止剤として使用できる。
防眩剤としては微粒子が挙げられ、微粒子の形状は、真球状、楕円状などのものであってよく、好ましくは真球状のものが挙げられる。また、微粒子は無機系、有機系のものが挙げられるが、好ましくは有機系材料により形成されてなるものが好ましい。微粒子は、防眩性を発揮するものであり、好ましくは透明性のものがよい。微粒子の具体例としては、プラスチックビーズが挙げられ、より好ましくは、透明性を有するものが挙げられる。プラスチックビーズの具体例としては、スチレンビーズ(屈折率1.59)、メラミンビーズ(屈折率1.57)、アクリルビーズ(屈折率1.49)、アクリル−スチレンビーズ(屈折率1.54)、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズなどが挙げられる。微粒子の添加量は、樹脂組成物100重量部に対し、2〜30重量部、好ましくは10〜25重量部程度である。
本発明に係るハードコートフィルムは、トリアセチルセルロース基材のハードコート層側界面に、ハードコート層のバインダー成分が浸透した厚さ0.05〜0.70μmの浸透層を有する。当該浸透層ではハードコート層のバインダー成分がトリアセチルセルロース基材の樹脂と混合している。
前記ハードコート層のバインダー成分がトリアセチルセルロース基材に浸透して硬化しているので、トリアセチルセルロース基材−ハードコート層間の密着性が優れたものになる。これにより、トリアセチルセルロース基材からのハードコート層の剥離といった問題が生じないため耐熱性や耐水性等の信頼性が高くなるという利点を有する。
浸透層の存在は、例えば、塗膜の断面から顕微IRによるマッピングやTOF−SIMS法によって、確認することができる。
密着度(%)=(剥がれなかったマス目の数/合計のマス目数100)×100
ハードコートフィルムは、上記したようにトリアセチルセルロース基材、ハードコート層及び浸透層により基本的には構成されてなる。しかしながら、ハードコートフィルムとしての機能又は用途を加味して、上記ハードコート層のトリアセチルセルロース基材とは反対側の面に、更に下記のような一又は二以上の層を設けてもよい。
帯電防止層は、帯電防止剤と硬化性樹脂を含む帯電防止層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。帯電防止層の厚さは、30nm〜3μm程度であることが好ましい。
防眩層は、防眩剤と硬化性樹脂を含む防眩層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。当該硬化性樹脂は、公知のものを適宜選択して、1種又は2種以上用いることができる。
防眩剤としては、上記ハードコート層の防眩剤で挙げたものと同様のものを用いることができる。
本発明の好ましい態様によれば、ハードコートフィルム最表面の汚れ防止を目的として防汚層を設けてもよい。防汚層は、ハードコートフィルムに対して防汚性と耐擦傷性のさらなる改善を図ることが可能となる。防汚層は、防汚剤と硬化性樹脂組成物を含む防汚層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。
低屈折率層は、当該層の基材フィルム側に隣接する層よりも屈折率が低い層であり、低屈折率層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。当該低屈折率層用硬化性樹脂組成物には、前記隣接する層よりも屈折率が低くなるように、適宜公知の低屈折率硬化性樹脂や微粒子を用いることができる。
ハードコートフィルムの硬度を更に向上させるために、前記ハードコート層のトリアセチルセルロース基材とは反対側の面に第2のハードコート層を設けても良い。
第2のハードコート層は前記ハードコート層と同様のものを用いることができ、当該二つのハードコート層の組成は同一であっても良く、異なっていても良い。
本発明に係るハードコートフィルムの製造方法は、反応性官能基aを有する平均粒径10〜100nmの反応性シリカ微粒子、バインダー成分並びに、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ブチル及びメチルイソブチルケトンよりなる群から選ばれる1種以上の合計量が80重量%以上である溶剤を含み、且つ前記反応性シリカ微粒子を全固形分に対して30〜65重量%含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を準備し、当該ハードコート層用硬化性樹脂組成物をトリアセチルセルロース基材の一面側に塗布、乾燥後に硬化させることにより、膜厚3〜25μmのハードコート層を形成すると共に、前記トリアセチルセルロース基材の前記ハードコート層側の界面から0.05〜0.70μmの領域に前記ハードコート層の前記バインダー成分が浸透した浸透層を形成することを特徴とする。
ハードコート層は、従来公知の方法で形成すれば良い。
例えば、調製したハードコート層用硬化性樹脂組成物をトリアセチルセルロース基材の一面側に塗布し、塗膜を形成し、乾燥を行い、次いで、前記塗膜を光及び/又は熱により硬化させ、ハードコート層を形成する。
また、トリアセチルセルロース基材上へのハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗工量としては、得られるハードコートフィルムが要求される性能により異なるものであるが、乾燥後の膜厚が3〜25μmになるように適宜調節すればよく、塗工量が3g/m2〜30g/m2の範囲内、特に5g/m2〜25g/m2の範囲内であることが好ましい。
加熱する場合は、通常40℃〜120℃の温度にて処理する。また、室温(25℃)で24時間以上放置することにより反応を行っても良い。
図3(a)に示すように、トリアセチルセルロース基材10の一面側にハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜60を形成する。
次いで、図3(b)に示すように、塗膜60を乾燥させ、乾燥した塗膜70とする。この際、ハードコート層用硬化性樹脂組成物に含まれる溶剤がトリアセチルセルロース基材10に浸透していき、溶剤及びバインダー成分が浸透している領域80が形成される。
次いで、図3(c)に示すように、トリアセチルセルロース基材10側から光照射90を行い、乾燥した塗膜70が硬化させられることにより、膜厚3〜25μmのハードコート層20が形成されると共に、トリアセチルセルロース基材10のハードコート層20側の界面から0.05〜0.70μmの領域に浸透層30が形成される。
シリカ微粒子(1)として、日産化学工業(株)製、IPA−STL、平均粒径44nm、コロイダルシリカ、固形分30%IPA液を用いた。
シリカ微粒子(2)として、日産化学工業(株)製、IPA−ST、平均粒径12nm、コロイダルシリカ、固形分30%IPA液を用いた。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとして、日本化薬(株)製、DPHAを用いた。
ペンタエリスリトールトリアクリレートとして、日本化薬(株)製、PET30を用いた。
多官能ウレタンアクリレートとして、日本合成化学工業(株)製、UV1700Bを用いた。
多官能ポリマーアクリレートとして、荒川化学工業(株)製、BS371、固形分65%、分子量3〜4万を用いた。
重合開始剤として、チバ・ジャパン(株)製、イルガキュア184を用いた。
シランカップリング剤として、信越化学工業(株)製、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、KBM−503を用いた。
透明基材フィルムとして、TACフィルム(厚み40μm、トリアセチルセルロース樹脂フィルム、商品名:KC4UY、コニカ(株)製)を用いた。
各化合物の略語はそれぞれ、以下の通りである。
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
MIBK:メチルイソブチルケトン
MEK:メチルエチルケトン
IPA:イソプロパノール
シリカ微粒子(1)をロータリーエバポレーターを用いてIPAからMIBKに溶剤置換を行い、シリカ粒子30重量%のMIBK分散液を得た。このMIBK分散液100重量部に3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランを5重量部添加し、50℃で1時間加熱処理することにより、表面処理された平均粒径44nmの反応性シリカ微粒子の固形分30重量%MIBK分散液を得た。
反応性シリカ微粒子(1)の調製において、シリカ微粒子(1)をシリカ微粒子(2)に代えた以外は同様にして、表面処理された平均粒径12nmの反応性シリカ微粒子(2)の固形分30重量%MIBK分散液を得た。
下記に示す組成の成分を配合して硬化性樹脂組成物1〜13をそれぞれ、調製した。各硬化性樹脂組成物の反応性シリカ微粒子の硬化性樹脂組成物の全固形分に対する配合割合(重量%)、バインダー成分の種類、及び当該バインダー成分の官能基数を表1に示す。
反応性シリカ微粒子(1):133質量部(固形分:40質量部)
DPHA:60質量部
イルガキュア184:4質量部
MIBK:100質量部
反応性シリカ微粒子(1):133質量部(固形分:40質量部)
DPHA:60質量部
イルガキュア184:4質量部
MIBK:10質量部
反応性シリカ微粒子(1):133質量部(固形分:40質量部)
DPHA:60質量部
イルガキュア184:4質量部
MIBK:57質量部
反応性シリカ微粒子(1):200質量部(固形分:60質量部)
DPHA:40質量部
イルガキュア184:4質量部
MIBK:10質量部
反応性シリカ微粒子(1):133質量部(固形分:40質量部)
DPHA:30質量部
PET30:30質量部
イルガキュア184:4質量部
MIBK:30質量部
反応性シリカ微粒子(1):133質量部(固形分:40質量部)
DPHA:30質量部
UV1700B:30質量部
イルガキュア184:4質量部
MIBK:30質量部
反応性シリカ微粒子(1):133質量部(固形分:40質量部)
DPHA:30質量部
BS371:46質量部(固形分:30質量部)
イルガキュア184:4質量部
MIBK:14質量部
反応性シリカ微粒子(2):133質量部(固形分:40質量部)
DPHA:60質量部
イルガキュア184:4質量部
MIBK:30質量部
反応性シリカ微粒子(1):133質量部(固形分:40質量部)
DPHA:60質量部
イルガキュア184:4質量部
IPA:30質量部
反応性シリカ微粒子(1):133質量部(固形分:40質量部)
DPHA:60質量部
イルガキュア184:4質量部
MEK:93質量部
反応性シリカ微粒子(1):0質量部
DPHA:100質量部
イルガキュア184:4質量部
MIBK:30質量部
反応性シリカ微粒子(1):33質量部(固形分:10質量部)
DPHA:90質量部
イルガキュア184:4質量部
MIBK:100質量部
反応性シリカ微粒子(1):300質量部(固形分:90質量部)
DPHA:10質量部
イルガキュア184:4質量部
MIBK:1質量部
ハードコート層用硬化性樹脂組成物として、上記硬化性樹脂組成物1を準備し、当該硬化性樹脂組成物1をTACフィルムの片面に塗布し、温度70℃の熱オーブン中で60秒間乾燥し、塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚10μmのハードコート層を形成すると共に、TACフィルムのハードコート層側界面にバインダー成分が浸透した厚さ0.11μmの浸透層を形成し、ハードコートフィルムを作製した。
作製した実施例1〜10及び比較例1〜7のハードコートフィルムについて、以下の様に鉛筆硬度、密着性、クラックを評価した。その結果を表1に示す。
鉛筆硬度試験;鉛筆引っ掻き試験の硬度は、作製したハードコートフィルムを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(4.9N荷重)を行い、傷がつかなかった最も高い硬度を測定した。
塗布密着性(JIS K 5600):1mm角で合計100目の碁盤目を入れ、ニチバン(株)製工業用24mmセロテープ(登録商標)を用いて5回連続剥離試験を行い、残っているマス目の数量を計測し、下記基準に基づいて密着度を測定することにより密着性を評価した。
密着度(%)=(剥がれなかったマス目の数/合計のマス目数100)×100
評価基準
○:90%以上
×:90%未満
10×2cmの大きさに切り取ったハードコートフィルムを、ハードコート層面を外側にして曲率のある円柱に巻きつけ、ひび割れ(クラック)が発生し始める曲率直径を測定することで評価した。
評価基準
評価○:14mm以内であった。
評価×:15mm以上であった。
ハードコートフィルムのカールの度合い(カール幅)は、ハードコートフィルムを10cm×10cmにカットしたサンプル片を水平な台(平面)の上に置き、浮き上がったハードコート層の端点間の距離の平均値(mm)で評価した。
評価基準
評価○:5mm以上であった。
評価×:5mm未満であった。
また、実施例1〜10は密着性、クラック性及びカール性の評価も良好であった。
逆に、ハードコート層の膜厚が30μmと厚すぎる比較例3は鉛筆硬度は5Hと優れるが、クラック性とカール性の評価が不十分となった。
比較例2は、浸透層の膜厚が0.001μmと薄く、密着性が不十分となった。
逆に、浸透層の膜厚が1.00μmと厚すぎる比較例4は、鉛筆硬度も2Hと低く、カールも大きく、不十分な性能であった。
硬化性樹脂組成物に反応性シリカ微粒子が含まれない比較例5や含まれても含有量が30重量%未満の比較例6では、鉛筆硬度が2Hと低く、比較例5ではカールも大きく、不十分な性能であった。
硬化性樹脂組成物に反応性シリカ微粒子が65重量%を超えて含まれる比較例7では、逆に硬度が低下し、ハードコート層がもろいため、鉛筆硬度がHと低く、クラック性も不十分となった。
10 透明基材フィルム
20 ハードコート層
30 浸透層
40 帯電防止層
50 低屈折率層
60 塗膜
70 乾燥した塗膜
80 溶剤及びバインダー成分が浸透している領域
90 光照射
Claims (3)
- トリアセチルセルロース基材の一面側に隣接して、反応性官能基aを有する平均粒径10〜100nmの反応性シリカ微粒子、及び、前記反応性官能基aとの架橋反応性を有する反応性官能基bを3つ以上有するバインダー成分を含み、且つ前記反応性シリカ微粒子を全固形分に対して30〜65重量%含むハードコート層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる、膜厚3〜25μmのハードコート層が設けられ、
前記トリアセチルセルロース基材の前記ハードコート層側の界面から0.05〜0.70μmの領域には、前記ハードコート層の前記バインダー成分が浸透した浸透層が形成されていることを特徴とする、ハードコートフィルム。 - 反応性官能基aを有する平均粒径10〜100nmの反応性シリカ微粒子、バインダー成分並びに、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ブチル及びメチルイソブチルケトンよりなる群から選ばれる1種以上の合計量が80重量%以上である溶剤を含み、且つ前記反応性シリカ微粒子を全固形分に対して30〜65重量%含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を準備し、当該ハードコート層用硬化性樹脂組成物をトリアセチルセルロース基材の一面側に塗布、乾燥後に硬化させることにより、膜厚3〜25μmのハードコート層を形成すると共に、前記トリアセチルセルロース基材の前記ハードコート層側の界面から0.05〜0.70μmの領域に前記ハードコート層の前記バインダー成分が浸透した浸透層を形成することを特徴とする、ハードコートフィルムの製造方法。
- 前記乾燥を行う際の乾燥温度を、30〜110℃とすることを特徴とする請求項2に記載のハードコートフィルムの製造方法。
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