JP5206294B2 - ハードコートフィルムの製造方法及び光学機能部材の製造方法 - Google Patents
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Description
すなわち、上記問題点を解決する本発明の特徴は、以下の点である。
分子中に1個以上の水酸基を有するトリアセチルセルロース基材の少なくとも一面側に、前記表面処理組成物を塗布して、乾燥させ、前記トリアセチルセルロース基材の前記塗膜との界面近傍に前記表面処理用化合物が浸透した浸透層を形成する工程、
前記浸透層を熱処理して熱硬化させる工程、
前記熱硬化させた浸透層上に、分子中に光硬化性基を2つ以上有する多官能光硬化性化合物を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布して、当該ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜を形成する工程、及び、
前記ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜に光照射して光硬化させてハードコート層を形成する工程を含むことを特徴とする。
分子中に1個以上の水酸基を有するトリアセチルセルロース基材の少なくとも一面側に、前記表面処理組成物を塗布して、乾燥させ、前記トリアセチルセルロース基材の前記塗膜との界面近傍に前記表面処理用化合物が浸透した浸透層を形成する工程、
前記浸透層を熱処理して熱硬化させる工程、
前記浸透層に光照射して浸透層を半硬化させる工程、
前記半硬化させた浸透層上に、分子中に光硬化性基を2つ以上有する多官能光硬化性化合物を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布して、当該ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜を形成する工程、及び、
前記ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜及び半硬化させた浸透層に光照射して光硬化させてハードコート層を形成する工程を含むことを特徴とする。
さらに、表面処理化合物は、トリアセチルセルロース基材の界面近傍に浸透層を形成することにより干渉縞の発生も防止する働きを有する。
これに対して本発明の表面処理化合物は、1分子内にトリアセチルセルロース基材の水酸基と反応可能な熱硬化性基及び、ハードコート層用硬化性樹脂組成物の多官能光硬化性化合物の光硬化性基と反応可能な光硬化性基を有しているため、上記問題を解決し、密着性及び硬度が向上できる。
上記微粒子は、凝集粒子であっても良く、凝集粒子である場合は、二次粒径が上記範囲内であれば良い。
ハードコートフィルムを有する光学機能部材の製造方法について説明する。
本発明において、「ハードコート層」とは、一般にJIS K5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験(4.9N荷重)で「H」以上の硬度を示すものである。
また、本発明の光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線が含まれる。
本発明において、膜厚とは乾燥時の膜厚(乾燥膜厚)を意味する。
本発明において、分子量とは、分子量分布を有する場合には、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である重量平均分子量を意味し、分子量分布を有しない場合には、化合物そのものの分子量を意味する。
本発明において、微粒子の平均粒径とは、溶液中の当該粒子を動的光散乱方法で測定し、粒径分布を累積分布で表したときの50%粒子径(d50 メジアン径)を意味する。当該平均粒径は、日機装(株)製のMicrotrac粒度分析計又はNanotrac粒度分析計を用いて測定することができる。
上記微粒子は、凝集粒子であっても良く、凝集粒子である場合は、二次粒径が上記範囲内であれば良い。
本発明において、光硬化性基とは、光照射により重合反応又は架橋反応等を進行させて塗膜を硬化させることができる官能基を意味し、例えば、光ラジカル重合、光カチオン重合、光アニオン重合のような重合反応、光二量化を経て進行する付加重合又は縮重合等の反応形式により反応が進行するものが挙げられる。
また、本発明の熱硬化性基とは、加熱によって同じ官能基同士若しくは他の官能基との間で重合反応又は架橋反応等を進行させて塗膜を硬化させることができる官能基を意味し、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、アルコキシル基等を例示することができる。
本発明に係る第一のハードコートフィルムの製造方法は、分子中に水酸基との硬化反応性を有する熱硬化性基及び光硬化性基を有する表面処理用化合物、並びに前記トリアセチルセルロース基材に対する浸透性を有する浸透性溶剤を含む表面処理組成物を準備する工程、
分子中に1個以上の水酸基を有するトリアセチルセルロース基材の少なくとも一面側に、前記表面処理組成物を塗布して、乾燥させ、前記トリアセチルセルロース基材の前記塗膜との界面近傍に前記表面処理用化合物が浸透した浸透層を形成する工程、
前記浸透層を熱処理して熱硬化させる工程、
前記熱硬化させた浸透層上に、分子中に光硬化性基を2つ以上有する多官能光硬化性化合物を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布して、当該ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜を形成する工程、及び、
前記ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜に光照射して光硬化させてハードコート層を形成する工程を含むことを特徴とする。
分子中に1個以上の水酸基を有するトリアセチルセルロース基材の少なくとも一面側に、前記表面処理組成物を塗布して、乾燥させ、前記トリアセチルセルロース基材の前記塗膜との界面近傍に前記表面処理用化合物が浸透した浸透層を形成する工程、
前記浸透層を熱処理して熱硬化させる工程、
前記浸透層に光照射して浸透層を半硬化させる工程、
前記半硬化させた浸透層上に、分子中に光硬化性基を2つ以上有する多官能光硬化性化合物を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布して、当該ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜を形成する工程、及び、
前記ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜に光照射して光硬化させてハードコート層を形成する工程を含むことを特徴とする。
表面処理用化合物及び浸透性溶剤を含む表面処理組成物を準備し、図1(a)に示すように、当該表面処理組成物を分子中に1個以上の水酸基を有するトリアセチルセルロース基材10の一面側に塗布し、乾燥させ、トリアセチルセルロース基材の界面近傍に表面処理用化合物が浸透した浸透層20を形成する。
次いで、図1(b)に示すように、浸透層20を熱硬化させ、トリアセチルセルロース基材の水酸基の一部と浸透層の表面処理化合物の一部又は全部を熱硬化により架橋させ、熱硬化した層21とする。
次いで、図1(c)に示すように、熱硬化した浸透層21の上に多官能光硬化性化合物を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜30を形成する。
次いで、図1(d)に示すように、ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜30に光照射40し、熱硬化した層の表面処理化合物の光硬化性基と塗膜30の多官能光硬化性化合物の光硬化性基を光照射により架橋させ、光硬化した浸透層22及びハードコート層50を形成し、ハードコートフィルム1を得る。
表面処理用化合物及び浸透性溶剤を含む表面処理組成物を準備し、図2(a)に示すように、当該表面処理組成物を分子中に1個以上の水酸基を有するトリアセチルセルロース基材10の一面側に塗布し、乾燥させ、トリアセチルセルロース基材の界面近傍に表面処理用化合物が浸透した浸透層20を形成する。
次いで、図2(b)に示すように、浸透層20を熱硬化させ、トリアセチルセルロース基材の水酸基の一部と浸透層の表面処理化合物の一部又は全部を熱硬化により架橋させ、熱硬化した層21とする。
次いで、図2(c)に示すように、熱硬化した浸透層21を光照射40し、一部の光硬化性基を半硬化させ、半硬化した層23とする。
次いで、図2(d)に示すように、半硬化した浸透層23の上に多官能光硬化性化合物を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜30を形成する。
次いで、図2(e)に示すように、ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜30に光照射40し、半硬化した浸透層23の表面処理化合物の残りの光硬化性基と塗膜30の多官能光硬化性化合物の光硬化性基を光照射により架橋させ、光硬化した浸透層22及びハードコート層50を形成し、ハードコートフィルム1を得る。
浸透層を熱硬化せずにハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とし、当該塗膜及び浸透層を熱硬化し、次いで光硬化する第三の方法、
浸透層を熱硬化せずにハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とし、当該塗膜及び浸透層を光硬化し、次いで熱硬化する第四の方法、
浸透層を熱硬化せずに当該浸透層を光照射し、半硬化し、次いでハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とし、当該塗膜及び半硬化した浸透層を光照射で完全硬化し、次いで熱硬化する第五の方法、
浸透層を熱硬化せずに当該浸透層を光照射し、半硬化し、次いでハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とし、当該塗膜及び半硬化した浸透層を熱硬化し、次いで光照射で完全硬化する第六の方法、及び、
浸透層を熱硬化せずに当該浸透層を光照射し、半硬化し、次いで、半硬化した浸透層を熱硬化し、次いでハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とし、次いで当該塗膜及び前記熱硬化した浸透層を光照射で完全硬化する第七の方法でもハードコートフィルムを得ることが可能である。
すなわち、前記第一及び第二のハードコートフィルムの製造方法において、トリアセチルセルロース基材の代わりに、少なくとも一面側をけん化処理したトリアセチルセルロース基材を用いて、ハードコートフィルムを製造する。
トリアセチルセルロース基材の少なくとも一面側をけん化処理することにより、表面処理化合物の熱硬化性基と反応可能な水酸基が増加し、トリアセチルセルロース基材とハードコート層の密着性及びハードコートフィルムの硬度が向上しやすくなる。
本発明の表面処理組成物は、表面処理化合物及び浸透性溶剤を含む。
表面処理組成物を分子中に1個以上の水酸基を有するトリアセチルセルロース基材の少なくとも一面側に塗布することにより、表面処理化合物と浸透性溶剤がトリアセチルセルロース基材の界面近傍に浸透し、浸透層を形成する。
表面処理化合物は、分子中に水酸基との硬化反応性を有する熱硬化性基及び光硬化性基を有し、当該熱硬化性基は、トリアセチルセルロース基材の水酸基と硬化反応し、架橋結合を形成し得る。また、前記光硬化性基はハードコート層用硬化性樹脂組成物に含まれる少なくとも一部の多官能光硬化性化合物の光硬化性基や他の表面処理化合物分子の光硬化性基と硬化反応し、架橋結合を形成し得る。
この2種類の硬化性基により表面処理化合物は、トリアセチルセルロース基材の水酸基及び他官能光硬化性化合物の光硬化性基と架橋反応が可能となり、トリアセチルセルロース基材とハードコート層との密着性及びハードコートフィルムの硬度向上に寄与する。
また、熱硬化性基は、例えば、下記式に示すように、熱処理等により脱保護して熱硬化性基を生じる基であってもよい。
浸透性溶剤は、前記表面処理用化合物をトリアセチルセルロース基材に浸透させ、トリアセチルセルロース基材の界面近傍に浸透層を形成させる。
上記6種類の溶剤は、トリアセチルセルロース基材への浸透性に優れているため好ましい。
浸透性溶剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いても良い。
表面処理組成物には、トリアセチルセルロース基材とハードコート層の密着性及びハードコートフィルムの硬度向上のために、2官能以上の光硬化性モノマー等のバインダー成分、及び帯電防止性向上のための帯電防止剤等、その他の成分が含まれていてもよい。当該その他の成分は後述するハードコート層用硬化性樹脂組成物の成分を用いることができる。
本発明のハードコート層用硬化性組成物について説明する。
本発明のハードコート層用硬化性組成物は、多官能光硬化性化合物を含み、その他、硬度付与を目的として微粒子を、機能性付与を目的として防眩剤、防汚剤、及び帯電防止剤を、コーティング適性の制御を目的としてレベリング剤、及び溶剤を、並びにブロッキング防止を目的として易滑剤等を含有していても良い。
ハードコート層用硬化性樹脂組成物に用いられる多官能光硬化性化合物は、前記表面処理用化合物の光硬化性基と架橋反応性を有する光硬化性基を2つ以上有する。前記表面処理用化合物の光硬化性基と多官能光硬化性化合物の光硬化性基が架橋結合し、網目構造が形成され、トリアセチルセルロース基材とハードコート層の密着性及びハードコートフィルムの硬度を更に高める。
多官能光硬化性化合物は、十分な架橋性を得るために、当該光硬化性基を1分子あたり3つ以上有することが好ましい。
当該光硬化性基としては、好ましくは電離放射線硬化性不飽和基である。その具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基及びエポキシ基等が挙げられ、さらに好ましくはエチレン性不飽和結合基(−CH=CH2)である。
尚、変性体としては、EO(エチレンオキサイド)変性体、PO(プロピレンオキサイド)変性体、CL(カプロラクトン)変性体、及びイソシアヌル酸変性体等が挙げられる。
また、前記ポリマー(A)及び後述する化合物(B)は、ハードコート層用硬化性樹脂組成物に反応性無機微粒子が含まれる場合、当該反応性無機微粒子の反応性官能基とも光硬化反応が可能であり、ハードコートフィルムの硬度を向上させることができる。
前記ポリアルキレンオキシド鎖含有ポリマー(A)は、下記化学式(1)で表され、末端に3つ以上の光硬化性基を有する分子量が1000以上のポリアルキレンオキシド鎖含有ポリマーである。
ハードコート層を形成した際の硬度を維持しつつクラックを抑制する点から、n1、n2・・・nkはそれぞれ2〜500の数であることが好ましく、更に2〜300の数であることが好ましい。
Y1〜Ykが光硬化性基そのものである場合、Y1〜Ykとしては例えば、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
例えば、エチレン性不飽和基を有する化合物残基としては、具体的には例えば、以下の化合物のエチレン性不飽和基以外の反応性置換基又は反応性置換基の一部(水素等)を除いた残基が挙げられる。例えば、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
2つ以上の光硬化性基を有する分子量が10,000未満の化合物(B)は、ハードコート層の硬度を向上させ、十分な耐擦傷性を付与するものである。なお、上記ポリマー(A)の構造を有するものは、2つ以上の光硬化性基を有する分子量が10,000未満の化合物(B)から除かれる。
本発明において当該化合物(B)は、上記ポリマー(A)と前記表面処理用化合物や後述する必要に応じて含まれる反応性無機微粒子との組み合わせにおいて、互いに反応可能な光硬化性基を有し、十分な耐擦傷性を有する広範な化合物から適宜選択して用いることができる。当該化合物(B)としては、1種単独で用いても良いし、2種以上を適宜混合して用いても良い。
2つ以上の光硬化性基を有する分子量が10000未満の化合物(B)は、1分子中に含まれる光硬化性基が3個以上であることが、硬化膜の架橋密度をあげて、硬度を付与する点から好ましい。ここで化合物(B)が分子量分布を有するオリゴマーの場合、光硬化性基数は、平均の個数で表される。
また、化合物(B)の分子量は、硬度向上の点から、5,000未満であることが好ましい。
光硬化性基を有する具体例として、光硬化性基を1分子内に2つ以上有する多官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン変性品、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン変性品、イソシアヌール酸EO変性トリ(メタ)アクリレート(東亞合成(株)製アロニックスM−315等)、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、フタル酸水素−(2,2,2−トリ−(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチル、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン変性品等の3官能(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン変性品、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレート化合物;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン、脂肪酸、アルキル、ウレタン変性品等の5官能(メタ)アクリレート化合物;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン、脂肪酸、アルキル、ウレタン変性品、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン、脂肪酸、アルキル、ウレタン変性品等の6官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
また、上記ウレタン(メタ)アクリレート類に用いられるポリオールとしては、例えば、1,6−ヘキサンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンポリオール、ポリエステルジオール等が挙げられる。上記ウレタン(メタ)アクリレート類に用いられるポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフエニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ヘキサメレチンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。上記ウレタン(メタ)アクリレート類に用いられる水酸基を含有する(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記ポリエステルアクリレート類に用いられるポリエステルポリオールを形成するためのポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられ、多塩基酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
ハードコート層用硬化性樹脂組成物には、上記成分のほかに、更に微粒子、重合開始剤、帯電防止剤、防眩剤等を適宜添加することもできる。更に、反応性又は非反応性レベリング剤、各種増感剤等の各種添加剤が混合されていても良い。帯電防止剤及び/又は防眩剤を含む場合には、ハードコート層に、更に帯電防止性及び/又は防眩性を付与できる。
微粒子は、ハードコート層に硬度を付与するための成分であり、硬度に加えて、帯電防止性等の機能を付与するものであっても良い。
無機微粒子の表面には通常、無機微粒子内ではこの形態で存在できない基を有する。これら表面の基は通常、相対的に反応しやすい官能基である。例えば、金属酸化物の場合には、例えば、水酸基及びオキシ基、例えば、金属硫化物の場合には、チオール基及びチオ基、又は例えば、窒化物の場合には、アミノ基、アミド基及びイミド基を有する。
反応性無機微粒子は、ハードコート層に更に機能を付与するものであっても良く、目的に合わせて適宜選択して用いる。
なお、単位面積当りの有機成分量は、以下の方法により求めることができる。まず、示差熱重量分析(DTG)により、有機成分重量を無機成分重量で割った値(有機成分重量/無機成分重量)を測定する。次に、無機成分重量と用いた無機微粒子の比重から無機成分全体の体積を計算する。また、被覆前の無機微粒子が真球状であると仮定し、被覆前の無機微粒子の平均粒径から被覆前の無機微粒子1個当りの体積、及び表面積を計算する。次に、無機成分全体の体積を被覆前の無機微粒子1個当たりの体積で割ることにより、反応性無機微粒子の個数を求める。更に、有機成分重量を反応性無機微粒子の個数で割ることにより、反応性無機微粒子1個当たりの有機成分量を求める。最後に、反応性無機微粒子1個当りの有機成分重量を、被覆前の無機微粒子1個当りの表面積で割ることにより、単位面積当たりの有機成分量を求めることができる。
中でも、本発明においては、被覆している有機成分が反応性無機微粒子中に、被覆前の無機微粒子の単位面積当たり1.00×10−3g/m2以上含まれることが可能で、無機微粒子同士の凝集を抑制し、膜の硬度を向上させる点から、以下の(i)(ii)の無機微粒子のいずれかを適宜選択して用いることが好ましい。
(i)飽和又は不飽和カルボン酸、当該カルボン酸に対応する酸無水物、酸塩化物、エステル及び酸アミド、アミノ酸、イミン、ニトリル、イソニトリル、エポキシ化合物、アミン、β‐ジカルボニル化合物、シラン、及び官能基を有する金属化合物よりなる群から選択される1種以上の分子量500以下の表面修飾化合物の存在下、分散媒としての水及び/又は有機溶媒の中に無機微粒子を分散させることにより得られる、表面に反応性官能基を有する無機微粒子。
(ii)被覆前の無機微粒子に導入する反応性官能基、下記化学式(3)に示す基、及びシラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基を含む化合物と、金属酸化物微粒子とを結合することにより得られる、表面に反応性官能基を有する無機微粒子。
化学式(3)
−Q1−C(=Q2)−Q3−
化学式(3)中、Q1は、NH、O(酸素原子)、又はS(硫黄原子)を示し、Q2はO又はSを示し、Q3は、NH又は2価以上の有機基を示す。
(i)飽和又は不飽和カルボン酸、当該カルボン酸に対応する酸無水物、酸塩化物、エステル及び酸アミド、アミノ酸、イミン、ニトリル、イソニトリル、エポキシ化合物、アミン、β‐ジカルボニル化合物、シラン、及び官能基を有する金属化合物よりなる群から選択される1種以上の分子量500以下の表面修飾化合物の存在下、分散媒としての水及び/又は有機溶媒の中に無機微粒子を分散させることにより得られる、表面に反応性官能基を有する無機微粒子。
上記(i)の反応性無機微粒子を用いる場合には、有機成分含量が少なくても膜強度を向上できるというメリットがある。
例えば、疎水性分子残基としては、不活性化又は反発作用をもたらす、アルキル、アリール、アルカリル、アラルキル又はフッ素含有アルキル基等が挙げられる。親水性基としてはヒドロキシ基、アルコキシ基又はポリエステル基等が挙げられる。
アミノ酸の例としては、β−アラニン、グリシン、バリン、アミノカプロン酸、ロイシン及びイソロイシンが挙げられる。
上記シランカップリング剤としては、特に限定されず、公知のものを挙げることができ、例えば、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503(商品名、いずれも、信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。
分散媒は、蒸留(任意に減圧下)により容易に除去できる沸点を有することが好ましく、沸点が200℃以下、特に150℃以下の溶媒が好ましい。
化学式(3)
−Q1−C(=Q2)−Q3−
化学式(3)中、Q1は、NH、O(酸素原子)、又はS(硫黄原子)を示し、Q2はO又はSを示し、Q3は、NH又は2価以上の有機基を示す。
上記(ii)の反応性無機微粒子を用いる場合には、有機成分量が高まり、分散性、及び膜強度がより高まるという利点がある。
上記反応性官能基修飾加水分解性シランにおいて、当該無機微粒子に導入したい反応性官能基は、前記多官能光硬化性化合物及び表面処理用化合物と反応可能なように適宜選択すれば特に限定されない。上述したような光硬化性基を導入するのに適している。
[(RaO)mRb 3ーmSi−]で示される基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリフェノキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基等を挙げることができる。このような基のうち、トリメトキシシリル基又はトリエトキシシリル基等が好ましい。
溶剤としては、要求されるハードコートフィルムの性能に応じて従来公知の溶剤を適宜選択して用いることができ、浸透性及び非浸透性の溶剤を用いることができる。
ハードコートフィルムの硬度向上の点から非浸透性の溶剤を用いることが好ましい。
非浸透性の溶剤としては、例えば、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、及びtert−ブタノールを挙げることができる。これらを1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ラジカル重合性官能基やカチオン重合性官能基の開始又は促進させるために、必要に応じてラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカル及びカチオン重合開始剤等を適宜選択して用いても良い。これらの重合開始剤は、光照射及び/又は加熱により分解されて、ラジカルもしくはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。
帯電防止剤の具体例としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1〜第3アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基などのアニオン性基を有するアニオン性化合物、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系などの両性化合物、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系などのノニオン性化合物、スズ及びチタンのアルコキシドのような有機金属化合物及びそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物等が挙げられ、さらに上記に列記した化合物を高分子量化した化合物が挙げられる。また、第3級アミノ基、第4級アンモニウム基、又は金属キレート部を有し、且つ、電離放射線により重合可能なモノマー又はオリゴマー、或いは電離放射線により重合可能な重合可能な官能基を有する且つ、カップリング剤のような有機金属化合物等の重合性化合物もまた帯電防止剤として使用できる。
防眩剤としては微粒子が挙げられ、微粒子の形状は、真球状、楕円状などのものであってよく、好ましくは真球状のものが挙げられる。また、微粒子は無機系、有機系のものが挙げられるが、好ましくは有機系材料により形成されてなるものが好ましい。微粒子は、防眩性を発揮するものであり、好ましくは透明性のものがよい。微粒子の具体例としては、プラスチックビーズが挙げられ、より好ましくは、透明性を有するものが挙げられる。プラスチックビーズの具体例としては、スチレンビーズ(屈折率1.59)、メラミンビーズ(屈折率1.57)、アクリルビーズ(屈折率1.49)、アクリル−スチレンビーズ(屈折率1.54)、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズなどが挙げられる。微粒子の添加量は、樹脂組成物100重量部に対し、2〜30重量部、好ましくは10〜25重量部程度である。
浸透層は、トリアセチルセルロース基材の表面処理組成物を塗布した側の界面近傍(界面から0.01〜5μmの領域)に形成される層であり、前記表面処理組成物に含まれる表面処理用化合物及び浸透性溶剤をトリアセチルセルロース基材に浸透させ、溶剤を乾燥させることにより形成される。
本発明に係る第一のハードコートフィルムの製造方法では、熱硬化した浸透層上に、ハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成し、当該ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜を光照射して硬化させることにより、前記セルロースポリマーと架橋結合を形成した表面処理化合物の光硬化性基と、ハードコート層用硬化性樹脂組成物に含まれる多官能光硬化性化合物の光硬化性基とが反応し、架橋結合を形成する。
また、本発明に係る第二のハードコートフィルムの製造方法のように、熱硬化した浸透層を光照射し、半硬化することで、表面処理化合物同士の一部が架橋し、その上にハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成し、当該塗膜を光照射して完全硬化させることでも、前記セルロースポリマーと架橋結合を形成した表面処理化合物の光硬化性基と、ハードコート層用硬化性樹脂組成物に含まれる多官能光硬化性化合物の光硬化性基とが反応し、架橋結合を形成する。
このように、表面処理用化合物が、セルロースポリマーと多官能光硬化性化合物を結び付けることにより、トリアセチルセルロース基材とハードコート層の密着性及びハードコートフィルムの硬度が向上する。
表面処理組成物をトリアセチルセルロース基材の少なくとも一面側に塗布し、浸透性溶剤を乾燥させることで、表面処理用化合物が浸透した浸透層が形成される。
また、トリアセチルセルロース基材上への表面処理組成物の塗工量としては、得られるハードコートフィルムが要求される性能により異なるものであるが、塗工量が1g/m2〜30g/m2の範囲内、特に5g/m2〜25g/m2の範囲内であることが好ましい。
ハードコート層は、第一のハードコートフィルムの製造方法では、上記熱硬化した浸透層上に、ハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、当該ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜を形成し、当該塗膜に光照射して光硬化させて形成する。第二のハードコートフィルムの製造方法では、上記熱硬化した浸透層を光照射し、半硬化させ、当該半硬化した浸透層上に、ハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、当該ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜を形成し、当該塗膜に光照射して完全硬化させて形成する。
本発明のハードコートフィルムは、上記第一及び第二のハードコートフィルムの製造方法により製造されるハードコートフィルムであって、トリアセチルセルロース基材の一面側にハードコート層を有し、且つ、トリアセチルセルロース基材のハードコート層との界面近傍に、表面処理化合物の熱硬化性基とトリアセチルセルロース基材の水酸基との架橋結合、及び表面処理化合物の光硬化性基とハードコート層用硬化性樹脂組成物の多官能光硬化性化合物の光硬化性基との架橋結合を含有する領域を有する。当該2種類の架橋結合により、トリアセチルセルロース基材とハードコート層の密着性及びハードコートフィルムの硬度が向上する。
また、本発明のハードコートフィルムは、前記ハードコート層が帯電防止剤や防眩剤等を含んでなることにより、帯電防止機能や防眩機能が付与されるものであっても良い。
本発明に用いられるトリアセチルセルロース基材は、透明性(光透過性)の高いプラスチックフィルム又はシートである。
光学積層体の透明基材として用い得る物性を満たし、水酸基を1つ以上有するものであれば特に限定されることはなく、適宜選んで用いることができる。
トリアセチルセルロース基材は、光学的等方性を有するため、液晶ディスプレイ用途の場合においても好ましく用いることができる。
本発明のハードコート層は、上記ハードコート層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。
本発明のハードコートフィルムは、前記鉛筆硬度試験で更に4H以上であることが好ましい。
ハードコート層の膜厚は、上記基材の強度や要求性能に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、好ましくは1〜100μm、更に5〜30μmの範囲にあることが好ましい。
ハードコートフィルムは、上記したようにトリアセチルセルロース基材及びハードコート層により基本的には構成されてなる。しかしながら、ハードコートフィルムとしての機能又は用途を加味して、上記ハードコート層のトリアセチルセルロース基材とは反対側の面に、更に下記のような一又は二以上の層を設けてもよい。
帯電防止層は、帯電防止剤と硬化性樹脂を含む帯電防止層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。帯電防止層の厚さは、30nm〜3μm程度であることが好ましい。
帯電防止剤としては、上記ハードコート層の帯電防止剤で挙げたものと同様のものを用いることができる。
防眩層は、防眩剤と硬化性樹脂を含む防眩層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。当該硬化性樹脂は、公知のものを適宜選択して、1種又は2種以上用いることができる。
防眩剤としては、上記ハードコート層の防眩剤で挙げたものと同様のものを用いることができる。
本発明の好ましい態様によれば、ハードコートフィルム最表面の汚れ防止を目的として防汚層を設けてもよい。防汚層は、ハードコートフィルムに対して防汚性と耐擦傷性のさらなる改善を図ることが可能となる。防汚層は、防汚剤と硬化性樹脂組成物を含む防汚層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。
低屈折率層は、当該層の基材フィルム側に隣接する層よりも屈折率が低い層であり、低屈折率層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。当該低屈折率層用硬化性樹脂組成物には、前記隣接する層よりも屈折率が低くなるように、適宜公知の低屈折率硬化性樹脂や微粒子を用いることができる。
ハードコートフィルムの硬度を更に向上させる点から、前記ハードコート層のトリアセチルセルロース基材とは反対側の面に第2のハードコート層を設けても良い。
第2のハードコート層は前記ハードコート層と同様のものを用いることができ、当該二つのハードコート層の組成は同一であっても良く、異なっていても良い。
本発明に係る光学機能部材の製造方法は、前記トリアセチルセルロース基材の両面をけん化処理した後、その一面側に、前記表面処理組成物を塗布して表面処理を行う一連の工程とハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布してハードコート層を形成する一連の工程を行ってハードコートフィルムを作成し、作成した当該ハードコートフィルムのハードコート層とは反対側の面を光学機能を有する部材の表面に貼り付けることを特徴とする。
ハードコートフィルムは上述したように、トリアセチルセルロース基材及びハードコート層の他に帯電防止層や低屈折率層等のその他の層が積層されたものでもよい。
図6(a)に示すように、トリアセチルセルロース基材の両面をけん化処理し、両面をけん化したトリアセチルセルロース基材11とする。
その後、図6(b)に示すように、当該トリアセチルセルロース基材11の一面側に、表面処理組成物を塗布し、トリアセチルセルロース基材の界面近傍に表面処理用化合物が浸透した浸透層20を形成する。
次いで、図6(c)に示すように、浸透層20を熱硬化させ、熱硬化した浸透層21とする。
次いで、図6(d)に示すように、熱硬化した浸透層21の上に多官能光硬化性化合物を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜30を形成する。
次いで、図6(e)に示すように、ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜30に光照射40し、塗膜30を光硬化させてハードコート層50を形成し、ハードコートフィルム1を得る。
次いで、図6(f)に示すように、ハードコートフィルム1のハードコート層とは反対側の面、すなわちトリアセチルセルロース基材のハードコート層50とは反対側の面を光学機能を有する部材80の表面に貼り付け、光学機能部材90を得る。
シリカ微粒子として、日産化学工業(株)製、商品名:IPA−STL、平均粒径44nm、コロイダルシリカ、固形分30%液を用いた。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとして、日本化薬(株)製、商品名:DPHAを用いた。
ペンタエリスリトールトリアクリレートとして、日本化薬(株)製、商品名:PET30を用いた。
多官能ウレタンアクリレートとして、日本合成化学工業(株)製、商品名:UV1700Bを用いた。
多官能ポリマーアクリレートとして、荒川化学工業(株)製、商品名:BS371、固形分65%、分子量3〜4万を用いた。
シランカップリング剤として、信越化学工業(株)製、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、KBM−503を用いた。
重合開始剤として、チバ・ジャパン(株)製、商品名:イルガキュア184を用いた。
表面処理用化合物(1)として、下記化学式(6)に示す昭和電工(株)製、商品名:カレンズMOI[分子量:155、熱硬化性基:イソシアネート基×1、光硬化性基:メタクリル基(CH2=C(CH3)−)×1]を用いた。
表面処理用化合物(2)として、下記化学式(7)に示す昭和電工(株)製、商品名:カレンズAOI[分子量:141、熱硬化性基:イソシアネート基×1、光硬化性基:アクリル基(CH2=CH−)×1]を用いた。
表面処理用化合物(3)として、下記化学式(8)に示す昭和電工(株)製、商品名:カレンズBEI[分子量:239、熱硬化性基:イソシアネート基×1、光硬化性基:アクリル基(CH2=CH−)×2]を用いた。
表面処理用化合物(4)として、旭化成(株)製、商品名:HDI デュラネート 24A100[熱硬化性基:イソシアネート基×2、光硬化性基:なし]を用いた。
表面処理用化合物(5)として、第一工業製薬(株)製、商品名:ME3[熱硬化性基:なし、光硬化性基×1]を用いた。
透明基材フィルム(1)として、TACフィルム(1)(厚み40μm、トリアセチルセルロース樹脂フィルム、商品名:KC4UY、コニカ(株)製)を用いた。
透明基材フィルム(2)として、TACフィルム(2)(厚み80μm、トリアセチルセルロース樹脂フィルム、商品名:TF80UL、富士フィルム(株)製)を用いた。
透明基材フィルム(3)として、透明基材フィルム(1)の両面をけん化処理したものを用いた。
透明基材フィルム(4)として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み125μm、商品名:A4300、東洋紡績(株)製)を用いた。
各化合物の略語はそれぞれ、以下の通りである。
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
MEK:メチルエチルケトン
IPA:イソプロパノール
MIBK:メチルイソブチルケトン
TAC:トリアセチルセルロース
PET:ポリエチレンテレフタレート
シリカ微粒子をロータリーエバポレーターを用いてIPAからMIBKに溶剤置換を行い、シリカ粒子30重量%のMIBK分散液を得た。このMIBK分散液100重量部に3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランを5重量部添加し、50℃で1時間加熱処理することにより、表面処理された平均粒径44nmの反応性シリカ微粒子の固形分30重量%MIBK分散液を得た。
下記に示す組成の成分を配合して表面処理組成物1〜6、及びハードコート層用硬化性樹脂組成物1〜5をそれぞれ、調製した。
カレンズMOI:10重量部
イルガキュア184:0.4重量部
MEK:15重量部
カレンズAOI:10重量部
イルガキュア184:0.4重量部
MEK:15重量部
カレンズBEI:10重量部
イルガキュア184:0.4重量部
MEK:15重量部
カレンズMOI:10重量部
イルガキュア184:0.4重量部
酢酸メチル:15重量部
HDI:10重量部
MEK:15重量部
カレンズMOI:10重量部
イルガキュア184:0.4重量部
トルエン:15重量部
ME3:10重量部
イルガキュア184:0.4重量部
MEK:15重量部
ME3:5重量部
HDI:5重量部
イルガキュア184:0.4重量部
MEK:15重量部
DPHA:10重量部
イルガキュア184:0.4重量部
MEK:15重量部
UV1700B:10重量部
イルガキュア184:0.4重量部
MEK:15重量部
PETA:10重量部
イルガキュア184:0.4重量部
MEK:15重量部
BS371:10重量部
イルガキュア184:0.4重量部
MEK:15重量部
DPHA:5重量部
反応性シリカ微粒子:16.6重量部(固形5重量部)
イルガキュア184:0.4重量部
MIBK:3.4重量部
TACフィルム(1)の片面に、上記表面処理組成物1を塗布し、50℃、60秒で塗膜中の溶剤を蒸発させ、3g/m2(乾燥時)の浸透層を形成し、温度90℃の熱オーブン中で120秒間加熱し、浸透層を熱硬化させた。次いで、当該熱硬化させた浸透層上にハードコート層用硬化性樹脂組成物1を塗布し、温度70℃の熱オーブン中で60秒間乾燥し、塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が200mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、13g/m2(乾燥時)(膜厚10μm)のハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを作製した。
実施例1において、表面処理組成物及びハードコート層用硬化性樹脂組成物を表1に示すものに代えた以外は実施例1と同様にして、実施例2〜8のハードコートフィルムを作製した。
実施例1において、TACフィルム(1)をTACフィルム(2)に代えた以外は実施例1と同様にして、実施例9のハードコートフィルムを作製した。
実施例1において、TACフィルム(1)をTACフィルム(3)に代えた以外は実施例1と同様にして、実施例9のハードコートフィルムを作製した。
実施例1において、表面処理組成物及びハードコート層用硬化性樹脂組成物を表1に示すものに代えた以外は実施例1と同様にして、比較例1〜4のハードコートフィルムを作製した。
実施例1において、TACフィルム(1)をポリエチレンテレフタレートフィルムに代えた以外は実施例1と同様にして、比較例5のハードコートフィルムを作製した。
実施例1において、浸透層を形成した後、温度90℃の熱オーブンによる120秒間の加熱処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして、比較例6のハードコートフィルムを作製した。
実施例1において、表面処理組成物及びハードコート層用硬化性樹脂組成物を表1に示すものに代えた以外は実施例1と同様にして、比較例7のハードコートフィルムを作製した。
作製した実施例1〜10及び比較例1〜7のハードコートフィルムについて、以下の様に鉛筆硬度、密着性及び干渉縞を評価した。その結果を表2に示す。
鉛筆硬度試験;鉛筆引っ掻き試験の硬度は、作製したハードコートフィルムを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(4.9N荷重)を行い、以下の基準で評価した。
評価○:鉛筆硬度が4H以上
評価×:鉛筆硬度が3H以下
塗布密着性(JIS K 5600):1mm角で合計100目の碁盤目を入れ、ニチバン(株)製工業用24mmセロテープ(登録商標)を用いて5回連続剥離試験を行い、残っているマス目の数量を計測し、下記基準に基づいて密着度を測定することにより密着性を評価した。
密着度(%)=(剥がれなかったマス目の数/合計のマス目数100)×100
評価基準
○:90%以上
×:90%未満
ハードコートフィルムのTACフィルム側の全面に(株)寺岡製作所製の黒テープを貼った後、干渉縞検査ランプ(フナテック(株)製、FNA18型)で干渉縞の発生の有無を下記基準によって評価した。
評価○:全方位での目視観察にて干渉縞が発生した。
評価×:全方位での目視観察にて干渉縞が確認された。
比較例2は、表面処理組成物の溶剤に非浸透性のトルエンを用いており、表面処理組成物の表面処理用化合物がトリアセチルセルロース基材に浸透できず、表面処理用化合物を介したトリアセチルセルロース基材とハードコート層の結合が不十分となり、鉛筆硬度及び密着性の評価が低かった。また、浸透層が形成されないため、干渉縞も発生してしまった。
表面処理用化合物として熱硬化性基をもたず、光硬化性基しか有さないME3を用いている比較例3は、浸透層のME3とハードコート層のバインダー成分が光照射により架橋結合を形成しないため、鉛筆硬度及び密着性の評価が低くなってしまった。
比較例4は、熱硬化性基しか有さないHDI及び光硬化性基しか有さないME3を組み合わせて表面処理用化合物として用いたが、HDI及びME3ともに、トリアセチルセルロース基材とハードコート層のバインダー成分の両方と架橋できないため、鉛筆硬度及び密着性の評価が低くなってしまった。
比較例5は、メチルエチルケトンが浸透性を有さないポリエチレンテレフタレート基材を用いており、表面処理用化合物の浸透が不十分となり干渉縞が発生してしまった。また、ポリエチレンテレフタレート基材はトリアセチルセルロース基材と異なり水酸基を有さないため、表面処理用化合物が熱硬化性により架橋結合を形成出来ず、鉛筆硬度及び密着性の評価が低くなってしまった。
比較例6は、浸透層を形成した後、熱処理を行っていないため、トリアセチルセルロース基材と熱硬化性基による架橋結合を形成できず、鉛筆硬度及び密着性の評価が低くなってしまった。
比較例7は、ハードコート層用硬化性樹脂組成物のバインダー成分として、光硬化性基を1つしかもたないME3を用いているため、ハードコート層における架橋が不十分となり、鉛筆硬度の評価が低くなってしまった。
10 トリアセチルセルロース基材
11 両面をけん化処理したトリアセチルセルロース基材
20 浸透層
21 熱硬化した浸透層
22 光硬化した浸透層
23 半硬化した浸透層
30 ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜
40 光照射
50 ハードコート層
60 帯電防止層
70 低屈折率層
80 光学機能を有する部材
90 光学機能部材
Claims (2)
- 分子中に水酸基との硬化反応性を有する熱硬化性基及び光硬化性基を有する表面処理用化合物、並びに酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、塩化メチレン及びシクロヘキサノンよりなる群から選ばれる少なくとも一種であるトリアセチルセルロース基材に対する浸透性を有する浸透性溶剤からなる溶剤を含む表面処理組成物を準備する工程、
分子中に1個以上の水酸基を有するトリアセチルセルロース基材の少なくとも一面側に、前記表面処理組成物を塗布して、乾燥させ、前記トリアセチルセルロース基材の前記塗膜との界面近傍に前記表面処理用化合物が浸透した浸透層を形成する工程、
前記浸透層を熱処理して熱硬化させる工程、
前記熱硬化させた浸透層上に、分子中に光硬化性基を2つ以上有する多官能光硬化性化合物を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布して、当該ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜を形成する工程、及び、
前記ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜に光照射して光硬化させてハードコート層を形成する工程を含むことを特徴とする、ハードコートフィルムの製造方法。 - 分子中に水酸基との硬化反応性を有する熱硬化性基及び光硬化性基を有する表面処理用化合物、並びに前記トリアセチルセルロース基材に対する浸透性を有する浸透性溶剤を含む表面処理組成物を準備する工程、
分子中に1個以上の水酸基を有するトリアセチルセルロース基材の少なくとも一面側に、前記表面処理組成物を塗布して、乾燥させ、前記トリアセチルセルロース基材の前記塗膜との界面近傍に前記表面処理用化合物が浸透した浸透層を形成する工程、
前記浸透層を熱処理して熱硬化させる工程、
前記浸透層に光照射して浸透層を半硬化させる工程、
前記半硬化させた浸透層上に、分子中に光硬化性基を2つ以上有する多官能光硬化性化合物を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布して、当該ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜を形成する工程、及び、
前記ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜及び半硬化させた浸透層に光照射して光硬化させてハードコート層を形成する工程を含むことを特徴とする、ハードコートフィルムの製造方法。
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