JP2010053335A - ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】分子量を制御しながら、揮発性成分を低減しかつクエンチ法での回収では塩素含有量1000ppm以下、フラッシュ法での回収では2000ppm以下のPASを効率的に得ることを課題とする。
【解決手段】有機極性溶媒中でスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物およびモノハロゲン化化合物を反応させてポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する際に、スルフィド化剤100モルに対しジハロゲン化芳香族化合物を95モル以上105モル未満、モノハロゲン化化合物を0.01モル以上5モル未満で反応させることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、塩素含有量が低減されたポリアリーレンスルフィド樹脂およびその製造方法に関するものである。詳しくは、所定量のジハロゲン化芳香族化合物と所定量のモノハロゲン化化合物を重合時に使用し、クエンチ法またはフラッシュ法で回収および洗浄することで、分子量を制御しながら、揮発性成分を低減しかつ塩素含有量を低減したポリアリーレンスルフィド樹脂およびその製造方法を提供する。
近年のRoHS規制、REACH規制など国際的な化学物質規制が高まっている中、電気電子部品分野では環境に対する取り組みとして低ハロゲン化への動きが活発化している。例えば汎用樹脂では難燃性を付与させるためにハロゲン系難燃剤を用いることが多いが、低ハロゲン化の流れから、ハロゲン系難燃剤なしでも十分な難燃性が得られる樹脂が注目されている。
ポリアリーレンスルフィド(以下PASと略する場合もある)樹脂はハロゲン系難燃剤を用いずとも高い難燃性を有していると同時に、耐薬品性、耐湿熱性、バリア性、電気絶縁性など優れた特性を有しているため、ハロゲン系難燃剤レスの樹脂として注目されている。
しかしながら、一般的なPAS製造方法であるジハロゲン化芳香族化合物を原料とする場合には、ジハロゲン化芳香族化合物に由来するハロゲンが任意の割合で分子鎖末端に存在するため、高いハロゲン含有量を示す。また、重合反応終了後のPAS回収方法もハロゲン含有量に影響を与える。一般的に、PAS製造の際に出来るオリゴマー成分は高いハロゲン含有量を示す。重合反応物を高温高圧の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ溶媒回収と同時に重合体を粉粒状にして回収するフラッシュ法では、不揮発成分であるオリゴマー成分を含むPASを回収するため、オリゴマー成分により良流動性を示すものの、オリゴマー成分を含有しているがゆえに5000ppm程度の高いハロゲン含有量を示す。それに対し、重合反応物を高温高圧の状態から徐々に冷却して反応系内のPAS成分を析出させ、固液分離によりオリゴマー成分を除去してPASを得るクエンチ法では、フラッシュ法に比較して低いハロゲン含有量を示す。しかし、クエンチ法においても低ハロゲン含有量の要求を満足するには至っておらず、クエンチ法とフラッシュ法ともにハロゲン含有量の改善が求められる。
また、PASの溶融混練や射出成形を行うとPAS中に含有する揮発性成分が揮散する。本揮発性成分は溶融混練時のベント詰まりを引き起こし、操作性が悪化するという問題が生じるのみならず、揮散物が大気中に放出されると環境負荷が増大するため、溶融時の揮発性成分の低減が望まれている。
クエンチ法で回収されたPAS中の塩素含有量を低減する方法としては、特許文献1のように有機極性溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略することもある)中でスルフィド化剤(NaSH)とジハロゲン化芳香族化合物(p−ジクロロベンゼン)を反応させ、反応により得られたポリマーのスラリーをNMPで洗浄し、得られたポリマーを更に溶剤洗浄することでオリゴマー成分を除去する方法が例示できる。本方法ではクエンチ法でのPAS回収および溶剤洗浄によるオリゴマー成分の低減により、確かに塩素含有量が低減すると共にオリゴマー成分分解に由来する揮発性成分も低減することが予想できる。しかし、回収PASの分子鎖末端には依然として塩素が存在するため塩素含有量は1000ppm以上であると推測される。また、オリゴマーを低減するために煩雑な操作を行っており、本発明のようにクエンチ法で回収し、塩素含有量が1000ppm以下に低減され、かつ揮発性成分の低減されたPASを効率よく得ることは出来ていない。
特許文献2ではクエンチ法で得られたPASの結合塩素含有量が500ppm以下を示しているが、該PASを得るため、有機極性溶媒(NMP)中で、スルフィド化剤(硫化ナトリウム2.9水和物)とジハロゲン化芳香族化合物(p−ジクロロベンゼン)とを反応させて得た塩素含有量2890ppmのPASをメルカプト基含有化合物と共に再度NMP中で加熱溶解させる、という煩雑な操作を行っており、本発明のようにクエンチ法回収において、塩素含有量1000ppm以下のPASを効率よく得ることは出来ていない。
特許文献3ではモノハロゲン化化合物であるモノクロロベンゼンを用いてPAS重合を行っており、モノクロロベンゼンを使用せずに重合して得られたPASに比べ塩素含有量が低減していることが推測され、また特許文献2のような煩雑な操作を行っていない。しかし、トリクロロベンゼンの存在下で重合を行っており、架橋構造を形成するために、得られたPASの重量平均分子量は20万〜100万未満と高く、本発明のような3万以上18万未満の重量平均分子量のPASを得ることは出来ていない。また、構造中に塩素を3個有するトリクロロベンゼンを使用しているため、塩素含有量の増加が予想される。
フラッシュ法での回収の場合、一般的に回収物はクエンチ法での回収物と比較して、オリゴマー成分の存在により流動性に優れかつ高い生産効率で得られるが、塩素割合の大きいオリゴマー成分を多量に含むため、高い塩素含有量を示す。
フラッシュ法での回収物を改良するための手法として、特許文献4のようにフラッシュ法で回収されたPASに対して有機溶剤を用いず、高温にて熱水や酸または酸の水溶液を用いて洗浄を行う方法が開示されている。この方法で得られたPASは、オリゴマー成分を含むことから流動性に優れ、また洗浄によりイオン性不純物や発生ガス量の低減が認められている。しかし、塩素含有量に関しては、イオン性不純物の除去による塩素含有量の低減は期待されるものの、分子鎖末端の塩素は多量に存在することから、塩素含有量の低減効果はわずかであると推測される。
低塩素含有量を示すPAS製造方法として、環状PASのプレポリマーを製造した後、溶融重合により高分子量化する方法が挙げられる。特許文献5では、塩素含有量1000ppm以下のPASを得ているが、高価な反応触媒を使用していると同時に、PAS原料である環状PASオリゴマーを得るため、有機極性溶媒(NMP)中で、スルフィド化剤(硫化ナトリウム)とジハロゲン化芳香族化合物(p−ジクロロベンゼン)とを反応させて得たポリマーをソックスレー抽出により回収する、という煩雑な操作を行っており、本発明のようにPASを効率よく得ることはできていない。また、溶融重合後の重合物は230℃で1−クロロナフタレンに溶解した後、再沈殿させる操作を経て得られることから、1−クロロナフタレンに溶解するオリゴマー成分は回収物中には少ないことが予想される。そのため、本発明のようにオリゴマー成分に代表されるクロロホルム抽出成分を1重量%以上含み、塩素含有量が2000ppm以下であり、重量平均分子量が1万以上10万未満のポリアリーレンスルフィド樹脂を得ることは出来ていない。
特開平7−003022号公報(実施例) 特開昭62−106929号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開平7−330903号公報(実施例) 特開平14−293934号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開平5−163349号公報(特許請求の範囲、実施例)
本発明は、分子量を制御しながら、揮発性成分を低減しかつクエンチ法での回収では塩素含有量1000ppm以下、フラッシュ法での回収では2000ppm以下のPASを効率的に得ることを課題として検討した結果達成されたものである。
本発明は、かかる課題を解決すべく鋭意検討した結果、有機極性溶媒中でスルフィド化剤と所定量のジハロゲン化芳香族化合物と所定量のモノハロゲン化化合物を反応させることで、分子量を制御しながら、揮発性成分を低減しかつクエンチ法での回収では塩素含有量1000ppm以下、フラッシュ法での回収では2000ppm以下のPASを効率的に得る製造方法を見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
1.有機極性溶媒中でスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物およびモノハロゲン化化合物を反応させてポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する際に、スルフィド化剤100モルに対しジハロゲン化芳香族化合物を95モル以上105モル未満、モノハロゲン化化合物を0.01モル以上5モル未満で反応させることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
2.ハロゲン化化合物の合計量がスルフィド化剤100モルに対し98モル以上108モル未満で反応させることを特徴とする1記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
3.モノハロゲン化化合物がモノハロゲン化芳香族化合物であることを特徴とする1または2記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
4.モノハロゲン化化合物がクロロベンゼンであることを特徴とする3記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
5.有機カルボン酸金属塩、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸金属塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩、およびアルカリ土類金属リン酸塩から選ばれる少なくとも一種の化合物の存在下で反応を行うことを特徴とする1〜4いずれか記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
6.ポリアリーレンスルフィド樹脂をクエンチ法で回収し、得られるポリアリーレンスルフィド樹脂の塩素含有量が1000ppm以下であり、重量平均分子量が3万以上18万未満であることを特徴とする1〜5いずれか記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
7.ポリアリーレンスルフィド樹脂をフラッシュ法で回収し、得られるポリアリーレンスルフィド樹脂の塩素含有量が2000ppm以下であり、重量平均分子量が1万以上10万未満であることを特徴とする1〜5いずれか記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
8.得られるポリアリーレンスルフィド樹脂のクロロホルム抽出量が1重量%以上であることを特徴とする7記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
9.フラッシュ法で回収したポリアリーレンスルフィド樹脂を、80℃以上の液体に浸漬させる処理を1回以上行うことを特徴とする7または8記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
10.フラッシュ法で回収したポリアリーレンスルフィド樹脂を浸漬させる液体が80〜200℃であり、熱水、酸または酸の水溶液、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液から選ばれる1種以上の液体であることを特徴とする9記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
11.酸または酸の水溶液に浸漬させる処理において、処理後の液体のpHが2〜8であることを特徴とする10記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
12.フラッシュ法でポリアリーレンスルフィド樹脂を回収した後、80〜200℃の熱水にポリアリーレンスルフィド樹脂を浸漬させる処理をした後、濾過して、濾過液とポリマーを分離した後、酸または酸の水溶液にポリアリーレンスルフィド樹脂を浸漬させる処理をすることを特徴とする10または11記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
13.クロロホルム抽出成分を1重量%以上含み、塩素含有量が2000ppm以下であり、重量平均分子量が1万以上10万未満であることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂。
本発明によれば、分子量を制御しながら、揮発性成分を低減しかつクエンチ法での回収では塩素含有量1000ppm以下、フラッシュ法での回収では2000ppm以下のPASを効率的に得ることができる。
本発明におけるPASとは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有するホモポリマーまたはコポリマーである。Arとしては下記の式(A)〜式(K)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましい。
Figure 2010053335
(R1,R2は水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい)
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(L)〜式(N)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
Figure 2010053335
また、本発明におけるPASは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいPASとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
Figure 2010053335
を80モル%以上、特に90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略する場合もある)の他、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトンが挙げられる。
本発明の、有機極性溶媒中でスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物およびモノハロゲン化化合物を用いてPASを得る反応では、モノハロゲン化化合物が反応することで、得られるPASのp−フェニレンスルフィド単位の分子鎖末端は下記の式のようにハロゲン基を有さない構造が形成される。クエンチ法での回収では塩素含有量1000ppm以下、フラッシュ法での回収では2000ppm以下のPASを得るうえで、下記式のようにハロゲン基を有さない末端構造は、PASの全分子鎖末端鎖に対し10〜100%有していることが好ましい。
Figure 2010053335
本発明でのPASの製造方法について、以下、スルフィド化剤、有機極性溶媒、ジハロゲン化芳香族化合物、モノハロゲン化化合物、重合助剤、分岐・架橋剤、重合安定剤、前工程、重合反応工程、クエンチ法、フラッシュ法、その他の後処理及び生成PASの順に詳述する。
(1)スルフィド化剤
本発明で用いられるスルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるスルフィド化剤も用いることができる。また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物からスルフィド化剤を調製し、これを重合槽に移して用いることができる。
あるいは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系においてin situで調製されるスルフィド化剤も用いることができる。また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素からスルフィド化剤を調製し、これを重合槽に移して用いることができる。
本発明において、スルフィド化剤の量は、脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられる。これらのうち、水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましく、この使用量はアルカリ金属水硫化物100モルに対し95から120モル、好ましくは100から115モル、更に好ましくは100から110モルの範囲が例示できる。この範囲にすることで、分解を引き起こすことなく、また重合副生物量の少ないPASを得ることができる。
(2)有機極性溶媒
本発明では重合溶媒として有機極性溶媒を用いる。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)が好ましく用いられる。
本発明においてPASの重合溶媒として用いる有機極性溶媒の使用量に特に制限はないが、安定した反応性および経済性の観点から、スルフィド化剤100モル当たり200モルから1000モル、好ましくは225から600モル、より好ましくは250から550モルの範囲が選択される。
(3)ジハロゲン化芳香族化合物
本発明で用いるジハロゲン化芳香族化合物としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼンなどのジハロゲン化ベンゼン、および1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、3,5−ジクロロ安息香酸などのハロゲン以外の置換基をも含むジハロゲン化芳香族化合物などを挙げることができる。なかでも、p−ジクロロベンゼンに代表されるp−ジハロゲン化ベンゼンを主成分にするジハロゲン化芳香族化合物が好ましい。また、PAS共重合体を製造するために異なる2種以上のジハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて用いることも可能である。
本発明では、分子量を制御しながら、揮発性成分を低減しかつクエンチ法での回収では塩素含有量1000ppm以下、フラッシュ法での回収では2000ppm以下のPASを効率的に得ることを目的としており、ジハロゲン化芳香族化合物を大過剰で使用することは分子量の低下を引き起こすため好ましくない。また、ジハロゲン化芳香族化合物が少なすぎると反応系内が硫黄源過剰な状態となり分解反応を引き起こす。そのため、ジハロゲン化芳香族化合物の使用量は、スルフィド化剤100モル当たり95モル以上105モル未満必要であり、好ましくは98モル以上105モル未満、特に好ましくは100モル以上104モル未満の範囲が例示できる。
(4)モノハロゲン化化合物
本発明で用いるモノハロゲン化化合物としては、クロロベンゼン、ブロモベンゼンなどのモノハロゲン化ベンゼン、1−クロロトルエン、2−クロロトルエン、3−クロロトルエン、1−クロロアニリン、2−クロロアニリン、3−クロロアニリン、1−クロロ安息香酸、2−クロロ安息香酸、3−クロロ安息香酸、1−クロロフェノール、2−クロロフェノール、3−クロロフェノールなどのハロゲン以外の置換基をも含むモノハロゲン化ベンゼン、1−クロロナフタレン、2−クロロナフタレン、1−ブロモナフタレン、2−ブロモナフタレンなどのナフタレン環を含むモノハロゲン化ナフタレン、1−クロロアントラセン、2−クロロアントラセン、9−クロロアントラセン、1−ブロモアントラセン、2−ブロモアントラセン、9−ブロモアントラセンなどのアントラセン環を含むモノハロゲン化アントラセン、3−クロロビフェニル、4−クロロビフェニル、3−ブロモビフェニル、4−ブロモビフェニル、2−クロロジフェニルエーテル、4−クロロジフェニルエーテル、2−ブロモジフェニルエーテル、4−ブロモジフェニルエーテル、2−クロロジフェニルスルフィド、3−クロロジフェニルスルフィド、4−クロロジフェニルスルフィド、2−ブロモジフェニルスルフィド、3−ブロモジフェニルスルフィド、4−ブロモジフェニルスルフィド、3−クロロベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、3−ブロモベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−クロロジフェニルスルホキシド、4−クロロジフェニルスルホキシド、2−ブロモジフェニルスルホキシド、4−ブロモジフェニルスルホキシド、2−クロロジフェニルスルホン、3−クロロジフェニルスルホン、4−クロロジフェニルスルホン、2−ブロモジフェニルスルホン、3−ブロモジフェニルスルホン、4−ブロモジフェニルスルホン、(4−クロロフェニル)フェニルメタン、2−(4−クロロフェニル)−2−フェニルプロパン、2−(4−クロロ−3,5−ジメチルフェニル)−2−フェニルプロパン、(4−ブロモフェニル)フェニルメタン、2−(4−ブロモフェニル)−2−フェニルプロパン、2−(4−ブロモ−3,5−ジメチルフェニル)−2−フェニルプロパンなどのベンゼン環を2個以上含むモノハロゲン化化合物、2−クロロフラン、2−クロロピロール、2−クロロチオフェン、2−クロロイミダゾール、2−クロロオキサゾール、2−クロロチアゾール、2−ブロモフラン、2−ブロモピロール、2−ブロモチオフェン、2−ブロモイミダゾール、2−ブロモオキサゾール、2−ブロモチアゾールなどのモノハロゲン化複素環式化合物、などを挙げることができる。なかでも、経済性の観点からするとモノハロゲン化ベンゼンやモノハロゲン化ナフタレンが好ましい。また、異なる2種以上のモノハロゲン化化合物を組み合わせて用いることも可能である。
モノハロゲン化化合物は通常分子量調整剤として使用され、過剰に使用すると分子量は低くなる傾向にあるが、本発明ではモノハロゲン化化合物を使用しても分子量の低下を抑制することができ、かつクエンチ法での回収では塩素含有量1000ppm以下、フラッシュ法での回収では2000ppm以下となるPASを得ることを目的としている。そのため、モノハロゲン化化合物の使用量は、スルフィド化剤100モル当たり0.01モル以上5モル未満が必要であり、好ましくは0.1モル以上4.5モル以下、特に好ましくは0.1モル以上4モル以下の範囲である。モノハロゲン化化合物の使用量が0.01モル未満では塩素低減効果が低く、クエンチ法での回収では塩素含有量1000ppm以下、フラッシュ法での回収では2000ppm以下のPASを得ることができない。モノハロゲン化化合物の使用量が5モルを超えると分子量の低下を引き起こし所望の分子量を有するPASを得ることができない。
また、ハロゲン化化合物の合計量は、スルフィド化剤100モルに対し、98モル以上108モル未満で反応させることが好ましい。ハロゲン化化合物としては、上述のジハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物のみならず、後述の分岐・架橋剤で使用するハロゲン化化合物も含む。
(5)重合助剤
本発明においては、高重合度のPASをより短時間で得るために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは得られるPASの粘度を増大させる作用を有する物質をさす。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸金属塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸金属塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上同時に用いても差し障りない。なかでも、有機カルボン酸金属塩および/または水が好ましく用いられる。
有機カルボン酸金属塩とは、一般式R(COOM)n(式中、Rは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物を好ましい例として挙げることができる。有機カルボン酸金属塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。有機カルボン酸金属塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。有機カルボン酸金属塩は、有機酸と、水酸化アルカリ金属、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属重炭酸塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記有機カルボン酸金属塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価であり、カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は反応系への溶解性が不十分であると推定しており、安価でかつ反応系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが好ましく用いられる。
高重合度PASを得るため、重合助剤として上記有機カルボン酸金属塩を用いる場合の使用量は、仕込みスルフィド化剤100モルに対し、1モル〜70モルの範囲が好ましく、2〜60モルの範囲がより好ましく、5〜55モルの範囲がいっそう好ましい。1モル未満では、高重合度化効果が不十分になる傾向にあり、70モルを越えて使用しても、それ以上の高重合度化効果は得にくくなる傾向にある。
重合助剤として有機カルボン酸金属塩を使用する場合、その添加時期には特に制限はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、添加の容易性からすると、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが好ましい。
重合助剤として水を用いる場合、水単独で用いることも可能であるが、有機カルボン酸金属塩を同時に用いることが好ましく、これにより重合助剤としての効果をより高めることができ、より少ない重合助剤の使用量でも短時間で高重合度PASを得ることができる傾向にある。この場合の重合系内の好ましい水分量の範囲は、スルフィド化剤100モルに対し80モル〜300モルであり、85〜180モルがより好ましい。この場合の水分量がスルフィド化剤100モルに対し80モル未満であると、十分な高重合度化効果が得られない場合があり、一方300モルを越えると、反応器内圧の上昇が大きく、反応器により高い耐圧性能を有した反応器が必要となるため、経済的にも安全性の面でも好ましくない傾向にある。
重合系内の水分量を前期範囲にするのは後述するようにジハロゲン化芳香族化合物の転化率が60モル%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上になった段階が好ましい。
また、重合後に水を添加することも好ましい様態の一つである。重合後に水を添加した後の重合系内の水分量の好ましい範囲は、スルフィド化剤100モルに対して100〜1500モルであり、150〜1000モルがより好ましい。
(6)分岐・架橋剤
本発明では、実質的に直鎖状PASの分子量低下を抑制しながら塩素含有量が低減され、かつ揮発性成分が低減されたPAS樹脂を得ることができるが、分岐または架橋重合体を形成させるために、トリハロゲン化以上のポリハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)、活性水素含有ハロゲン化芳香族化合物及びハロゲン化芳香族ニトロ化合物などの分岐・架橋剤を併用することも可能である。ポリハロゲン化合物としては通常に用いられる化合物を用いることができるが、中でもポリハロゲン化芳香族化合物が好ましく、具体例としては、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、1,4,6−トリクロロナフタレン等を挙げることができ、中でも1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンが好ましい。前記、活性水素含有ハロゲン化芳香族化合物としては、例えばアミノ基、メルカプト基及びヒドロキシル基などの官能基を有するハロゲン化芳香族化合物を挙げることができる。具体例としては2,5−ジクロロアニリン、2,4−ジクロロアニリン、2,3−ジクロロアニリン、2,4,6−トリクロロアニリン、2,2’−ジアミノ−4,4’−ジクロロジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノ−2’,4−ジクロロジフェニルエーテルなどを挙げることができる。前記、ハロゲン化芳香族ニトロ化合物としては、例えば2,4−ジニトロクロロベンゼン、2,5−ジクロロニトロベンゼン、2−ニトロ−4,4’−ジクロロジフェニルエーテル、3,3’−ジニトロ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、2,5−ジクロロ−2−ニトロピリジン、2−クロロ−3,5−ジニトロピリジンなどを挙げることができる。分岐・架橋剤は構造中に塩素等のハロゲンを含むため、多量に用いるのは好ましくない。分岐・架橋剤の添加量はスルフィド化剤100モルに対し0.7モル未満が好ましく、0.1モル未満が更に好ましい。
(7)重合安定剤
本発明のPASの製造においては、重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。前述した有機カルボン酸金属塩も重合安定剤として作用するので、本発明で使用する重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、重合反応開始前の反応系内のアルカリ金属硫化物のイオウ成分100モルに対して、通常1〜20モル、好ましくは3〜10モルの割合で使用することが望ましい。この割合が少ないと安定化効果が不十分になる場合があり、逆に多すぎても経済的に不利益であったり、ポリマー収率が低下したりする傾向にある。なお、反応時にアルカリ金属硫化物の一部が分解して、硫化水素が発生する場合には、その結果生成したアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
重合安定剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよい。
(8)前工程
本発明のPASの製造方法において、スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるが、ジハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。なお、この操作により水を除去し過ぎた場合には、不足分の水を添加して補充することが好ましい。
また、上述したように、スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温〜100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180℃〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
前工程が終了した段階での系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤100モル当たり90〜110モルであることが好ましい。ここで系内の水分量とは前工程で仕込まれた水分量から系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は、水、水溶液、結晶水などのいずれの形態であってもよい。
前工程が終了した後、有機極性溶媒中で、前工程で調製した反応物とジハロゲン化芳香族化合物およびモノハロゲン化化合物を接触させて重合反応を行うが、前工程と同じ反応器で後述の重合反応工程を行っても良いし、前工程と異なる反応容器に前工程で調製した反応物を移送した後に重合反応工程を行ってもよい。
(9)重合反応工程
本発明においては、有機極性溶媒中でスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物およびモノハロゲン化化合物を接触させてPASを製造するにあたり、重合反応開始後、200℃から260℃までの反応を平均昇温速度0.1℃/分以上で行う工程(重合工程A)、次いで、250℃以上で反応を継続する工程(重合工程B)を含むことが望ましい。本発明においてはPASの重合を少なくとも重合工程A(以下、工程Aと略する場合もある)と重合工程B(以下、工程Bと略する場合もある)を含む方法で行うことで、短い重合時間でも効率よくポリアリーレンスルフィド樹脂を得ることが可能である。
以下に工程A及び工程Bについて詳述する。
<工程A>本発明では、有機極性溶媒中でスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物およびモノハロゲン化化合物を重合させてPASを製造するに際して、重合反応開始後200℃から260℃までの反応を平均昇温速度0.1℃/分以上で行う工程Aを行うことが望ましい。なお、前記の平均昇温速度とは、ある一定の温度t2(℃)からある一定の温度t1(℃)までの温度区間(但しt2<t1とする)を昇温するのに要した時間m(分)から、下記式
平均昇温速度(℃/分)=[t1(℃)−t2(℃)]/m(分)
で計算される平均速度である。従って、前述した平均昇温速度の範囲内であれば、必ずしも一定速度である必要はなく、定温区間があってもよいし、多段で昇温を行っても差し障り無く、本発明の本質を損なわない限りは一時的に負の昇温速度となる区間があっても良い。
なお、前記平均昇温速度は0.1℃/分以上2.0℃/分以下が好ましく、0.2℃/分以上1.5℃/分以下がより好ましい。平均昇温速度が低すぎると所望の高重合度PASを得るのにより長い反応時間を要する傾向がある。平均昇温速度が高すぎると反応の制御が困難になる場合があり、また昇温するために、より大きなエネルギーが必要になる傾向がある。また、反応初期に激しい反応が起こる場合には240℃以下である程度反応を行った後に240℃を越える温度に昇温する方法で反応を行う方が好ましい傾向にある。
工程Aにおける反応は、工程Aの終了時のジハロゲン化芳香族化合物の転化率が60モル%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上になるように行うことが望ましく、これにより高重合度のPASを得やすくなる傾向がある。なお、ジハロゲン化芳香族化合物(以下DHAと略する場合もある)の転化率は、以下の式で算出した値である。DHA残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求めることができる。
(a)ジハロゲン化芳香族化合物をスルフィド化剤に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=[〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)−DHA過剰量(モル)〕]×100%
(b)上記(a)以外の場合
転化率=[〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)〕]×100%。
<工程B>本発明では、有機極性溶媒中でスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物およびモノハロゲン化化合物を重合させてPASを製造するに際して、工程Aに引き続き250℃以上で反応を継続する工程Bを行うことが望ましい。工程Bは255℃〜280℃で行うことが好ましく、260℃〜280℃がより好ましい。温度が250℃未満では反応速度が比較的遅く、短時間で高重合度PASを得ることが困難である。一方、300℃を超えると生成したポリマー成分の分解や、溶媒の劣化が起こりやすくなる傾向に有り、さらに、反応器内圧の上昇が大きくなる傾向にあり、反応器により高い耐圧性能を有した反応器が必要となる場合があるため、経済的にも安全性の面でも好ましくないことがある。
工程Bでの反応は一定温度で行う一段反応、段階的に温度を上げていく多段階反応、あるいは連続的に温度を変化させていく形式の反応のいずれでもかまわない。また、工程Bの反応時間は使用した原料の種類や量、あるいは反応温度に依存するので一概に規定できないが、0.1時間未満では未反応成分の量が増大したり生成するポリマーが低分子量になる可能性が高く、また40時間以上では経済的に不利となる。工程Bの好ましい反応時間としては0.5〜10時間が例示でき、より好ましくは0.5〜5時間である。
なお、本発明の重合には、バッチ方式、連続方式など公知の各重合方式を採用することができる。また、重合の際における雰囲気は非酸化性雰囲気下が望ましく、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、特に、経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素が好ましい。反応圧力については、使用した原料及び溶媒の種類や量、あるいは反応温度等に依存し一概に規定できないので、特に制限はない。
また、PASをより短時間で得るために、全重合工程のうちの少なくとも一部を前述した重合助剤存在下で行うことが好ましい。重合助剤の添加時期に特に制限はないが、前工程の開始前、工程A開始時、工程Aの途中、工程Bの開始時、工程Bの途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、少なくとも工程Bを重合助剤存在下で行う様にすると短時間で高重合度PASを得やすくなる。重合助剤は、無水物、水和物、水溶液または有機極性溶媒との混合物などいかなる形態で添加してもかまわないが、添加する重合助剤が水を含む場合で、かつ、工程B開始時または工程Bの途中で添加する場合は、重合助剤を添加し終えた段階における反応系内の水分量は、スルフィド化剤100モルに対し80モル〜300モルであり、85〜180モルがより好ましい。
本発明のPASの製造においては、重合工程終了後に、重合工程で得られたPAS成分および溶剤などを含む固形物からPASを回収する。回収方法としては、クエンチ法、フラッシュ法が挙げられる。
(10)クエンチ法
クエンチ法とは、重合反応物を高温高圧の状態から徐々に冷却して反応系内のPAS成分を析出させ、かつ70℃以上、好ましくは100℃以上の状態で濾別することでPAS成分を含む固体を回収する方法である。なおここで、ポリマー成分が析出した状態とは、生成したポリマー成分の少なくとも60%以上が重合溶媒に溶融解しない状態になっている状態である。
重合反応物を高温高圧の状態から徐々に冷却する際の好ましい様態としては、ポリマー成分の少なくとも60%以上が重合溶媒に溶融解した状態から平均速度約1℃/分で冷却した際にポリマー成分が析出した状態に移行する温度Ts(℃)に対して、少なくともTs±10℃における平均冷却速度が0.01から2℃/分である様態が例示できる。ここで、平均冷却速度とは、ある一定の温度t1(℃)からある一定の温度t2(℃)までの温度区間(但しt1>t2)を冷却するに要した時間m(分)から、下記式
平均冷却速度(℃/分)=[t1(℃)−t2(℃)]/m(分)
で計算される平均速度である。従って、前述した冷却速度の範囲内であれば、必ずしも一定速度である必要はなく、定温区間があってもよいし、多段で冷却を行っても差し障り無い。なお、前記したTs(℃)としては、例えば前述した有機極性溶媒の好ましい使用量範囲においては約180℃から約250℃が例示できる。
重合反応物を徐々に冷却する際に、ポリマー成分が析出する前に水を添加してもよく、水を添加した後の重合系内の水分量の好ましい範囲は、スルフィド化剤100モルに対して100〜1500モルであり、150〜1000モルがより好ましい。
このようにして得られた固体のPASを含む生成物は、有機溶媒及び/または水で洗浄する事が好ましい。
固体のPASを含む生成物を有機溶媒で洗浄する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示できる。すなわち、洗浄に用いる有機溶媒としては、PASを分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。これらの有機溶媒のなかでN−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミド、クロロホルムなどの使用が好ましく、N−メチル−2−ピロリドンおよび/またはアセトンがより好ましい。また、これらの有機溶媒は1種類または2種類以上の混合物として使用することができる。
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPASを浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。
有機溶媒でPASを洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。
PASと有機溶媒の割合は、有機溶媒が多いほうが好ましいが、通常、有機溶媒1リットルに対し、PASが300g以下の浴比が選択される。
なお、回収方法として重合反応物を高温高圧の状態から徐々に冷却して回収する方法を用いて、粒状のPASを含むスラリー状態で固体のPASを含む生成物を得た場合は、有機溶媒による洗浄を行う前に、前記スラリーの濾別を行い、続いて有機溶媒による洗浄を行うことが好ましい。このような手順を踏むことで、同量の有機溶剤を用いた際により高い洗浄効果を得られることが多い。なお、濾別の方法に特に制限はないが篩い等による濾別、遠心分離による濾別、濾布を用いた濾別などを例示できる。
また固体のPASを含む生成物から残留有機溶媒やイオン性不純物を除去するため、水で数回洗浄することが好ましく、通常、洗浄回数は20回未満であることが好ましい。
水での洗浄を複数回行った後、必要に応じて、水にギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、アクリル酸、クロトン酸、安息香酸、サリチル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などの有機酸性化合物及びそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物およびアンモニウムイオンなどの添加剤を加えた水溶液を用いて洗浄を行ってもよい。添加剤量はPASに対し、0.01〜5重量%が好ましく、0.1〜0.7重量%が更に好ましい。
PASを水または水溶液で洗浄する場合の方法としては、水または水溶液にPASを浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。
PASを洗浄する際の洗浄温度は特に制限はなく、例えば20℃〜220℃が挙げられるが、クエンチ法で得られたPASは洗浄効率が良いため、低い温度でも、比較的良好に洗浄可能である。生産性から考えると、20℃〜100℃が好ましく、50℃〜80℃が更に好ましい。20℃未満だと副生成物の除去が困難となる。
PASと水との割合は、水が多いほうが好ましいが、通常、水1リットルに対し、PAS200g以下の浴比が選択される。この際、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。
クエンチ法にて回収されるPASの重量平均分子量は3万以上が望ましい。重量平均分子量が小さいPASでは冷却時に析出する粒子形状が小さく、高収率を達成するには固液分離によりPASを回収する操作が煩雑となることから、生産性上好ましくない。
(11)フラッシュ法
フラッシュ法とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、0.8MPa以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ溶媒回収と同時に重合体を粉粒状にして回収する方法であり、ここでフラッシュとは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、具体的には例えば常圧中の窒素または水蒸気があげられ、その温度は通常150〜250℃の範囲が選択される。
フラッシュ法は、溶媒回収と同時に固形物の回収が可能な点、回収時間が比較的短い点、クエンチ法に比較して得られる回収物量が多い点に関して、経済的に優れた回収方法である。また、フラッシュ法にて得られたPASはオリゴマー成分を含むため、クエンチ法で得られたPASに比較して、流動性や生産効率に優れる。
反面、フラッシュ過程でNaに代表されるイオン性不純物や有機系不純物を同様に回収されるため、それら不純物中に含まれる塩素に由来して、高い塩素含有量を示すデメリットがある。
本発明者らは、フラッシュ法の優れた経済性を活かしつつ、上記の不純物を低減し、かつ塩素含有量の少ないPASを得ることを目的に検討を行った。その結果、得られた重合反応物を80℃以上の温度で、熱水、酸または酸の水溶液、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液のいずれかの液体に浸漬させる処理を1回以上行うことで、オリゴマー成分を含みつつかつ塩素含有量2000ppm以下のPASが得られることを見出した。
更には、80℃以上の温度で、浸漬させる処理を2回以上行うことが好ましく、1回目に熱水、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液のいずれかの液体に浸漬させる処理を行うことが好ましい。もちろん、2回以上の浸漬させる処理を行う場合、異なる2種以上の液体に浸漬させる処理を組み合わせて用いることも可能であり、中でも、熱水にPASを浸漬させる処理をした後、濾過して、濾過液とポリマーを分離した後、酸または酸の水溶液にPASを浸漬させる処理が好ましい。
酸または酸の水溶液にPASを浸漬させる処理は、処理後の液体のpHが2〜8であることが好ましい。酸または酸の水溶液とは、有機酸、無機酸または上記水に有機酸、無機酸等を添加して酸性にしたものである。使用する有機酸、無機酸としては、酢酸、プロピオン酸、塩酸、硫酸、リン酸、蟻酸等が例示でき、これらに限定されるものではないが、酢酸、塩酸が好ましい。
アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液にPASを浸漬させる処理に使用する水溶液のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の量はPASに対し、0.01〜5重量%が好ましく、0.1〜0.7重量%が更に好ましい。アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液とは、上記水にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を添加して溶解させたものである。使用するアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩としては、上記有機酸のカルシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
液体でPASを洗浄する際の洗浄温度は80℃以上200℃以下が好ましく、150℃以上200℃以下がより好ましく、さらには180℃以上200℃以下がより好ましい。100℃以上の液体での処理の操作は、通常、所定量の液体に所定量のPASを投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱、攪拌することにより行われる。
熱水、酸の水溶液、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液に使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。PASと液体の割合は、液体が多いほうが好ましいが、通常、液体1リットルに対し、PAS10〜500gの浴比が好ましく選択され、50〜200gが更に好ましい。
(12)その他の後処理
かくして得られたPASは常圧下および/または減圧下に乾燥する。かかる乾燥温度としては、120〜280℃の範囲が好ましく、140〜250℃の範囲がより好ましい。乾燥雰囲気は、窒素、ヘリウム、減圧下などの不活性雰囲気でも、酸素、空気などの酸化性雰囲気、空気と窒素の混合雰囲気の何れでも良い。乾燥時間は、0.5〜50時間が好ましく、1〜30時間が好ましく、1〜20時間がさらに好ましい。
本発明において得られたPASを、揮発性成分を除去するために、或いは架橋高分子量化するために、酸素含有雰囲気下、130〜260℃の温度で処理することも可能である。
架橋高分子量化を抑制し、揮発分除去を目的として乾式熱処理を行う場合、熱処理は熱処理温度および熱処理時間を特定の範囲にすれば、高い酸素濃度雰囲気下でも低い酸素濃度雰囲気下でも差し支えない。
高い酸素濃度雰囲気の条件としては酸素濃度が2体積%以上であることが好ましく、熱処理温度は160〜270℃、熱処理時間は0.1〜20時間行うことが望ましい。ただ、酸素濃度が高い条件下では揮発性成分の低減速度が速いものの、同時に酸化架橋が急速に進行するためゲル化物が発生しやすくなる。そのため概して低温・長時間または高温・短時間で熱処理を行うことが好ましい。低温・長時間熱処理する具体的な条件としては160℃以上210℃以下で1時間以上20時間以下が好ましく、170℃以上200℃以下で1時間以上10時間以下がより好ましい。熱処理温度が160℃を下回る温度で熱処理を行っても揮発性成分の低減効果が小さく溶融紡糸性の改善効果は小さい。また、低温であっても酸素濃度2体積%以上の条件においては熱処理時間が20時間を越えると酸化架橋が進行しゲル化物が発生しやすくなる。高温・短時間熱処理する具体的な条件としては210℃を超え270℃以下で0.1時間以上1時間未満が好ましく、220℃以上260℃以下で0.2〜0.8時間がより好ましい。熱処理温度が270℃を超えると酸化架橋が急激に進行しゲル化物が発生しやすくなる。また、高温であっても酸素濃度2体積%以上の条件においては熱処理時間が0.1時間を下回ると揮発性成分の低減効果が小さく溶融紡糸性の改善効果は小さい。
低い酸素濃度雰囲気の条件としては酸素濃度が2体積%未満であることが好ましく、熱処理温度は210〜270℃、熱処理時間は0.2〜50時間行うことが望ましい。酸素濃度が低いと揮発性成分の低減効果が小さくなる傾向にあるため概して高温・長時間で熱処理を行うことが好ましく、220℃〜260℃の熱処理温度条件下2〜20時間行うことがより好ましい。熱処理時間が210℃を下回る場合は揮発性ガスが低減せず溶融紡糸性の改善効果は小さく、熱処理時間が50時間を上回ると生産性が低下する。この方法で乾式熱処理されたPASは真空下320℃で2時間加熱溶融した際に揮発するガス発生量が0.3重量%以下であり、かつ250℃で5分間、20倍重量の1−クロロナフタレンに溶解してポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルターで熱時加圧濾過した際の残さ量が4.0重量%以下であることが望ましい。
架橋高分子量化を目的として乾式熱処理する場合、その温度は210〜270℃が好ましく、220〜260℃の範囲がより好ましい。また酸素濃度2体積%以上、更には8体積%以上とすることが望ましい。処理時間は、1〜100時間が好ましく、2〜50時間がより好ましく、3〜25時間が更に好ましい。
加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
(13)生成PAS
本発明の方法により、スルフィド化剤100モルに対し、ジハロゲン化芳香族化合物を95〜105モル未満、モノハロゲン化化合物を0.01モル以上5モル未満で反応させることにより、クエンチ法で回収を行った場合には、塩素含有量が1000ppm以下、重量平均分子量が3万以上18万未満のPASを得ることができ、フラッシュ法で回収を行った場合には、塩素含有量が2000ppm以下、重量平均分子量が1万以上10万未満であり、かつクロロホルム抽出量が1重量%以上であるPASを得ることができる。
ここで、塩素含有量は、ダイアインスツルメンツ社製自動試料燃焼装置AQF−100を用い、ポリマー1〜2mgを最終温度1000℃で燃焼させ、発生したガス成分を希薄な酸化剤を含んだ10mLの水に吸収させ、吸収液を炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム混合水溶液を移動相とするDIONEX社製イオンクロマトグラフィーシステムICS1500に供し、ポリマー中の全塩素含有量を測定した値である。
また、重量平均分子量は、1−クロロナフタレンを溶離液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、カラム温度210℃で測定し、ポリスチレンスタンダードで換算した値である。
また、クロロホルム抽出量は、ポリマー10gを90℃のクロロホルム100gで3時間ソックスレー抽出し、この抽出液からクロロホルムを留去した際に得られる成分の重量をポリマー重量に対する割合で表す。
本発明により得られるPASは、耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気的性質並びに機械的性質に優れ、射出成形、射出圧縮成形、ブロー成形用途のみならず、押出成形により、シート、フィルム、繊維及びパイプなどの押出成形品に成形することができる。
また本発明の樹脂組成物の用途としては、例えばセンサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;水道蛇口コマ、混合水栓、ポンプ部品、パイプジョイント、水量調節弁、逃がし弁、湯温センサー、水量センサー、水道メーターハウジングなどの水廻り部品;バルブオルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、ライトディマー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、車速センサー、ケーブルライナー、エンジンコントロールユニットケース、エンジンドライバーユニットケース、コンデンサーケース、モーター絶縁材料、ハイブリッドカーの制御系部品ケースなどの自動車・車両関連部品、その他の各種用途が例示できる。
本発明により得られたPASを用いたPPSフィルムの製造方法としては、公知の溶融製膜方法を採用することができ、例えば、単軸または2軸の押出機中でPASを溶融後、フィルムダイより押出し冷却ドラム上で冷却してフィルムを作成する方法、あるいは、このようにして作成したフィルムをローラー式の縦延伸装置とテンターと呼ばれる横延伸装置にて縦横に延伸する二軸延伸法などにより製造することができるが、特にこれに限定されるものではない。
このようにして得られたPASフィルムは、優れた機械特性、電気特性、耐熱性を有しており、フィルムコンデンサーやチップコンデンサーの誘電体フィルム用途、離形用フィルム用途など各種用途に好適に使用することができる。
本発明により得られるPASを用いたPAS繊維の製造方法としては、公知の溶融紡糸方法を適用することができ、例えば、原料であるPASチップを単軸または2軸の押出機に供給しながら混練し、ついで押出機の先端部に設置したポリマー流線入替器、濾過層などを経て紡糸口金より押出し、冷却、延伸、熱セットを行う方法などを採用することができるが、特にこれに限定されるものではない。
このようにして得られたPASモノフィラメントあるいは短繊維は、抄紙ドライヤーキャンパス、ネットコンベヤー、バグフィルターなどの各種用途に好適に使用することができる。
以下、本発明の方法を実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、各種測定法は以下の通りである。
[ポリマーの重量平均分子量]
ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:SSC−7100(センシュー科学)
カラム名:GPC3506(センシュー科学)
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.2重量%)。
[ポリマーの塩素含有量]
ダイアインスツルメンツ社製自動試料燃焼装置AQF−100を用い、ポリマー1〜2mgを最終温度1000℃で燃焼させ、発生したガス成分を希薄な酸化剤を含んだ10mLの水に吸収させ、吸収液を炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム混合水溶液を移動相とするDIONEX社製イオンクロマトグラフィーシステムICS1500に供し、ポリマー中の全塩素含有量の測定を行った。
[揮発性成分量]
腹部が100mm×25mmφ、首部が255mm×12mmφ、肉厚が1mmのガラスアンプルにポリマー3gを計り入れてから真空封入した。このガラスアンプルの胴部のみを、アサヒ理化製作所製のセラミックス電気管状炉ARF−30Kに挿入して320℃で2時間加熱した。アンプルを取り出した後、管状炉によって加熱されておらず揮発ガスの付着したアンプル首部をヤスリで切り出して秤量した。次いで付着ガスを5gのクロロホルムで溶解して除去した後、60℃のガラス乾燥機で1時間乾燥してから再度秤量した。ガスを除去した前後のアンプル首部の重量差を揮発性成分量(ポリマーに対する重量%)とした。
[クロロホルム抽出量]
クロロホルム抽出量は、ポリマー10gを90℃のクロロホルム100gで3時間ソックスレー抽出し、この抽出液からクロロホルムを留去した際に得られる成分の重量をポリマー重量に対する割合で表す。
[実施例1]
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.94kg(70.63モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム1.89kg(23.1モル)、及びイオン交換水5.50kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水9.77kgおよびNMP0.28kgを留出した時点で加熱を終え冷却を開始した。この時点での仕込みアルカリ金属水硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.01モルであった。また、硫化水素の飛散量は1.4モルであったため、本工程後の系内のスルフィド化剤は68.6モルであった。
その後200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)10.28kg(69.97モル)、クロロベンゼン(CB)0.085kg(0.755モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加えた後に反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温し、270℃で140分反応した。その後、270℃から250℃まで15分かけて冷却しながら水2.40kg(133モル)を圧入した。ついで250℃から220℃まで75分かけて徐々に冷却した後、室温近傍まで急冷し内容物を取り出した。
内容物を約35リットルのNMPで希釈しスラリーとして85℃で30分撹拌後、80メッシュ金網(目開き0.175mm)で濾別して固形物を得た。得られた固形物を同様にNMP約35リットルで洗浄濾別した。得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収する操作を合計3回繰り返した。得られた固形物および酢酸32gを70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過し、更に得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収した。このようにして得られた固形物を窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPSを得た。
[実施例2]
重合時に使用するp−DCB10.16kg(69.15モル)、CB0.170kg(1.509モル)としたこと以外は実施例1と同様に重合および洗浄を行った。
[実施例3]
重合時に使用するp−DCB10.07kg(68.53モル)、CB0.247kg(2.195モル)、酢酸ナトリウム2.29kg(27.86モル)としたこと以外は実施例1と同様に重合および洗浄を行った。
[実施例4]
重合時に使用するp−DCB10.16kg(69.15モル)、CB0.116kg(1.029モル)、酢酸ナトリウム0.517kg(6.30モル)としたこと以外は実施例1と同様に重合および洗浄を行った。
[比較例1]
重合時に使用するp−DCBを10.44kg(71.00モル)とし、クロロベンゼンを使用しなかったこと以外は実施例1と同様に重合および洗浄を行った。
[比較例2]
重合時に使用するp−DCB10.64kg(72.37モル)、CB0.170kg(1.509モル)としたこと以外は実施例1と同様に重合および洗浄を行った。
[比較例3]
重合時に使用するp−DCB9.48kg(64.48モル)、CB0.170kg(1.509モル)としたこと以外は実施例1と同様に重合および洗浄を行った。
[比較例4]
重合時に使用するp−DCB10.29kg(69.97モル)、CB0.386kg(3.430モル)としたこと以外は実施例1と同様に重合および洗浄を行った。
[比較例5]
重合時に使用するp−DCB10.64kg(72.37モル)、CB0.463kg(4.116モル)としたこと以外は実施例1と同様に重合および洗浄を行った。
得られたPAS樹脂の重量平均分子量、塩素含有量、揮発性成分量の測定結果を表1に示す。実施例1〜4からわかるように、スルフィド化剤100モルに対するp−DCBを95モル以上105モル未満、CBを0.01モル以上5モル未満とすることで、溶融粘度の低下を抑制しながら塩素含有量が1000ppm以下となり、更には揮発性成分量も低減できることがわかる。
Figure 2010053335
[実施例5]
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.26kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.94kg(70.63モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)14.57kg(147.00モル)、及びイオン交換水3.19kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水7.53kgおよびNMP0.28kgを留出した時点で加熱を終え冷却を開始した。この時点での仕込みアルカリ金属水硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.01モルであった。また、硫化水素の飛散量は1.40モルであったため、本工程後の系内のスルフィド化剤は68.60モルであった。
その後200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)10.16kg(69.15モル)、クロロベンゼン(CB)0.270kg(2.40モル)、NMP5.55kg(56.00モル)を加えた後に反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から276℃まで昇温し、276℃で63分反応した。その後、オートクレーブ底部の抜き出しバルブを開放し、窒素で加圧しながら内容物を攪拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく攪拌して大半のNMPを除去した。
得られた回収物およびイオン交換水74リットルを攪拌機付きオートクレーブに入れ、75℃で15分洗浄した後、フィルターで濾過し、ケークを得た。この操作を4回実施した後、ケークおよびイオン交換水74リットルを攪拌機付きオートクレーブに入れ、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、195℃まで昇温した。その後、オートクレーブを冷却し、内容物を取り出した。内容物をフィルターで濾過し、ケークを得た。その後、得られたケークおよびイオン交換水74リットル、酢酸0.816kgを攪拌機付きオートクレーブに入れ、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、195℃まで昇温した。その後、オートクレーブを冷却し、内容物を取り出した。内容物をフィルターで濾過し、ケークを得た。得られたケークを窒素気流下、120℃で乾燥することで、乾燥PPSを得た。
[実施例6]
実施例5と同様の方法で重合、フラッシュ法で回収を行い、回収物を得た。その後、得られた回収物およびイオン交換水74リットルを攪拌機付きオートクレーブに入れ、75℃で15分洗浄した後、フィルターで濾過し、ケークを得た。この操作を4回実施した後、ケークおよびイオン交換水74リットルを攪拌機付きオートクレーブに入れ、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、150℃まで昇温した。その後、オートクレーブを冷却し、内容物を取り出した。内容物をフィルターで濾過し、ケークを得た。その後、得られたケークおよびイオン交換水74リットル、酢酸0.816kgを攪拌機付きオートクレーブに入れ、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、150℃まで昇温した。その後、オートクレーブを冷却し、内容物を取り出した。内容物をフィルターで濾過し、ケークを得た。得られたケークを窒素気流下、120℃で乾燥することで、乾燥PPSを得た。
[実施例7]
重合時に使用するp−DCB10.06kg(68.46モル)、CB0.347kg(3.09モル)としたこと以外は実施例5と同様に重合および回収、洗浄を行った。
[実施例8]
重合時に使用するイオン交換水5.50kg、CB0.170kg(1.51モル)、酢酸ナトリウム1.89kg(23.10モル)としたこと以外は実施例5と同様に重合および回収、洗浄を行った。
[比較例6]
重合時に使用するp−DCB10.39kg(70.66モル)とし、クロロベンゼンを使用しなかったこと以外は実施例5と同様に重合および回収、洗浄を行った。
[比較例7]
重合時に使用するp−DCB10.08kg(68.60モル)、CB0.772kg(6.86モル)としたこと以外は実施例5と同様に重合および回収、洗浄を行った。
[実施例9]
実施例5と同様の方法で重合、フラッシュ法で回収を行い、回収物を得た。その後、得られた回収物およびイオン交換水74リットルを攪拌機付きオートクレーブに入れ、75℃で15分洗浄した後、フィルターで濾過し、ケークを得た。この操作を4回実施した後、ケークおよびイオン交換水74リットルを攪拌機付きオートクレーブに入れ、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、195℃まで昇温した。その後、オートクレーブを冷却し、内容物を取り出した。内容物をフィルターで濾過し、ケークを得た。得られたケークを窒素気流下、120℃で乾燥することで、乾燥PPSを得た。
[実施例10]
実施例9のケークおよびイオン交換水74リットルを攪拌機付きオートクレーブに入れ、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、195℃まで昇温する操作において、酢酸0.816kgをオートクレーブ内に添加すること以外は実施例9と同様に重合および回収、洗浄を行った。
[実施例11]
実施例9のケークおよびイオン交換水74リットルを攪拌機付きオートクレーブに入れ、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、195℃まで昇温する操作において、酢酸カルシウム1.074kgをオートクレーブ内に添加すること以外は実施例9と同様に重合および回収、洗浄を行った。
[実施例12]
実施例5で得られた乾燥PPS全量に対して、240℃にて、酸素濃度2体積%雰囲気下で0.5時間乾式熱処理を行った。酸素濃度2体積%での熱処理は、空気0.18リットル/分、窒素1.78リットル/分を撹拌機付き加熱装置に導入し、酸素濃度計を加熱装置内に設置して酸素濃度を測定した。
[実施例13]
実施例5で得られた乾燥PPS全量に対して、230℃にて、酸素濃度15体積%雰囲気下で15時間乾式熱処理を行った。
得られたPAS樹脂の重量平均分子量、塩素含有量、揮発性成分量の測定結果を表2に示す。実施例5〜13からわかるように、スルフィド化剤100モルに対するp−DCBを95モル以上105モル未満、CBを0.01モル以上5モル未満とすることで、溶融粘度の低下を抑制しながら塩素含有量が2000ppm以下となり、更には揮発性成分量も低減できることがわかる。
Figure 2010053335

Claims (13)

  1. 有機極性溶媒中でスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物およびモノハロゲン化化合物を反応させてポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する際に、スルフィド化剤100モルに対しジハロゲン化芳香族化合物を95モル以上105モル未満、モノハロゲン化化合物を0.01モル以上5モル未満で反応させることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
  2. ハロゲン化化合物の合計量がスルフィド化剤100モルに対し98モル以上108モル未満で反応させることを特徴とする請求項1記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
  3. モノハロゲン化化合物がモノハロゲン化芳香族化合物であることを特徴とする請求項1または2記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
  4. モノハロゲン化化合物がクロロベンゼンであることを特徴とする請求項3記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
  5. 有機カルボン酸金属塩、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸金属塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩、およびアルカリ土類金属リン酸塩から選ばれる少なくとも一種の化合物の存在下で反応を行うことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
  6. ポリアリーレンスルフィド樹脂をクエンチ法で回収し、得られるポリアリーレンスルフィド樹脂の塩素含有量が1000ppm以下であり、重量平均分子量が3万以上18万未満であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
  7. ポリアリーレンスルフィド樹脂をフラッシュ法で回収し、得られるポリアリーレンスルフィド樹脂の塩素含有量が2000ppm以下であり、重量平均分子量が1万以上10万未満であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
  8. 得られるポリアリーレンスルフィド樹脂のクロロホルム抽出量が1重量%以上であることを特徴とする請求項7記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
  9. フラッシュ法で回収したポリアリーレンスルフィド樹脂を、80℃以上の液体に浸漬させる処理を1回以上行うことを特徴とする請求項7または8記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
  10. フラッシュ法で回収したポリアリーレンスルフィド樹脂を浸漬させる液体が80〜200℃であり、熱水、酸または酸の水溶液、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶液から選ばれる1種以上の液体であることを特徴とする請求項9記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
  11. 酸または酸の水溶液に浸漬させる処理において、処理後の液体のpHが2〜8であることを特徴とする請求項10記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
  12. フラッシュ法でポリアリーレンスルフィド樹脂を回収した後、80〜200℃の熱水にポリアリーレンスルフィド樹脂を浸漬させる処理をした後、濾過して、濾過液とポリマーを分離した後、酸または酸の水溶液にポリアリーレンスルフィド樹脂を浸漬させる処理をすることを特徴とする請求項10または11記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
  13. クロロホルム抽出成分を1重量%以上含み、塩素含有量が2000ppm以下であり、重量平均分子量が1万以上10万未満であることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂。
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