JP2009295954A - 半導体装置およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】製造プロセス中に磁性体膜の材料の拡散を防止し得る半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置1は、基板20と、基板20の主面上に形成され、かつ配線層を含む半導体素子12と、半導体素子12を被覆する磁性体からなる磁気シールド膜15と、半導体素子12と磁気シールド膜15との間に介在し、かつ磁気シールド膜15の磁性体材料の拡散を防止するバッファ膜14と、を有する。バッファ膜14は、磁性体材料の拡散防止効果をもたらすとともに、磁気シールド膜の結晶化を促進する効果も有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、磁気シールド膜を有する半導体装置およびその製造方法に関する。
近年の電子機器の小型化および高性能化に伴い、その電子機器に組み込まれるLSIなどの半導体デバイスの応答速度の高速化が要求されている。この要求に応えるために半導体デバイスの動作周波数は高くなり、半導体デバイスの内部配線を伝搬する信号の周波数も高くなる。これにより電磁放射ノイズが発生し、他の電子機器への電磁妨害をもたらすという問題がある。一方、半導体デバイスの配線構造の微細化により、隣接配線間で発生するノイズ(配線間クロストーク)が顕著になり、半導体デバイスの誤動作をもたらすという問題もある。したがって、半導体デバイスの高信頼性を確保するためには、電磁放射ノイズを可能な限り低減することが望ましい。
電磁放射ノイズを低減するための手段として、磁性体の磁気損失を利用する方法が広く知られている。たとえば、特許文献1(特開平6−21060号公報)には、フェリ磁性体膜を含む多層配線構造を有する半導体デバイスが開示されている。この多層配線構造では、半導体基板上に、配線層、層間絶縁膜、フェリ磁性体膜、層間絶縁膜および配線層がこの順に形成されている。配線層と配線層との間にはフェリ磁性体膜が介在し、電磁シールド機能を発揮する。また、特許文献2(特開平9−330929号公報)には、金属配線層を含む絶縁層上に磁性体層が形成された半導体装置が開示されている。特許文献3(特開平6−120027号公報)には、正の磁歪を有するFeCo系の強磁性薄膜と、負の磁歪を有するRFeCo系合金薄膜またはスピネルフェライト磁性薄膜からなる中間層とが積層された構造が開示されている。この積層構造により、膜全体として実効的な磁歪を低減することが可能となる。
特開平6−21060号公報 特開平9−330929号公報 特開平6−120027号公報
しかしながら、半導体デバイスが磁性体膜を含むと、この磁性体膜の金属材料が拡散することで半導体デバイスの電気特性が著しく劣化する場合がある。その理由は、半導体デバイスの製造プロセス中に磁性体膜の構成材料の拡散が促進され、配線層に達して金属汚染を引き起こすからだと考えられる。たとえば、特許文献1に開示されている多層配線構造では、製造プロセス中に、フェリ磁性体膜の材料が層間絶縁膜を介して拡散して金属汚染を引き起こすおそれがある。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、半導体装置の製造プロセス中に磁性体膜の材料の拡散を防止し得るものである。
本発明によれば、基板と、前記基板の主面上に形成され、かつ配線層を含む半導体素子と、前記半導体素子の上面を被覆する磁性体からなる磁気シールド膜と、前記半導体素子と前記磁気シールド膜との間に介在し、かつ前記磁気シールド膜の磁性体材料の拡散を防止するバッファ膜と、を有する半導体装置が提供される。
本発明によれば、基板の主面上に配線層を含む半導体素子を形成するステップと、前記半導体素子の上面を被覆し、かつ磁性体材料の拡散を防止するバッファ膜を形成するステップと、前記バッファ膜の上面を被覆し、かつ前記磁性体材料からなる磁気シールド膜を形成するステップと、を含む半導体装置の製造方法が提供される。
本発明による半導体装置およびその製造方法では、半導体素子と磁気シールド膜との間にバッファ膜が介在するので、磁気シールド膜の磁性体材料が半導体素子に拡散し金属汚染を引き起こすことが防止される。
本発明によれば、磁気シールド膜の磁性体材料が半導体素子に拡散し金属汚染を引き起こすことが防止されるので、磁気シールド機能を持ちながら、電気特性の劣化を抑制し得る半導体装置およびその製造方法を提供することができる。後述するように、このバッファ膜は、磁気シールド膜の磁性体材料の拡散を防止するだけでなく、磁気特性の向上をも可能とする。
以下、本発明の種々の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係る第1の実施形態の半導体装置10の断面構造を概略的に示す図である。図1に示されるように、この半導体装置10は、半導体基板20と、この半導体基板20の主面上に形成され、かつ配線層を含む半導体素子12と、半導体素子12の上面を被覆する磁性体からなる磁気シールド膜15と、半導体素子12と磁気シールド膜15との間に介在し、かつ磁気シールド膜15の磁性体材料の拡散を防止するバッファ膜14とを有する。磁気シールド膜15を構成する磁性体は、軟磁性の強磁性体である。半導体素子12とバッファ膜14との間には絶縁膜(誘電体膜)13が形成されている。
第1の実施形態の半導体素子12は、半導体基板20上に形成されたトランジスタT1,T2を含む。これらトランジスタT1,T2の各々は、ゲート電極、ソース拡散領域およびドレイン拡散領域を含むn型またはp型のMOSトランジスタである。トランジスタT1は、STI(Shallow Trench Isolation)などの素子分離領域21,22により他の素子と分離され、トランジスタT2も、STIなどの素子分離領域22,23により他の素子と分離されている。トランジスタT1,T2の上には第1層間絶縁膜26が形成されている。この第1層間絶縁膜26には、トランジスタT1のソース拡散領域またはドレイン拡散領域の一方に接続されたコンタクトプラグ41Aと、トランジスタT1のソース拡散領域またはドレイン拡散領域の他方に接続されたコンタクトプラグ41Bとが形成されている。コンタクトプラグ41A上に導電層51Aが、コンタクトプラグ41B上に導電層51Bがそれぞれ形成されている。更に、第1層間絶縁膜26には、トランジスタT2のソース拡散領域またはドレイン拡散領域の一方に接続されたコンタクトプラグ42Aと、トランジスタT2のソース拡散領域またはドレイン拡散領域の他方に接続されたコンタクトプラグ42Bとが形成されている。コンタクトプラグ42A上に導電層52Aが、コンタクトプラグ42B上に導電層52Bがそれぞれ形成されている。トランジスタT1,T2、コンタクトプラグ41A,41B,42A,42Bおよび第1層間絶縁膜26は、トランジスタ層11Aを構成する。
トランジスタ層11Aの上には、第2層間絶縁膜27、第3層間絶縁膜28および第4層間絶縁膜29が積層される。第2層間絶縁膜27、第3層間絶縁膜28および第4層間絶縁膜29には、たとえばダマシンプロセス(シングルダマシンプロセスまたはデュアルダマシンプロセス)により埋め込み配線60,61が形成されている。具体的には、フォトリソグラフィー工程により、第2層間絶縁膜27に溝を形成し、当該溝にバリアメタルおよびCuシード膜をスパッタ法で順次形成する。続いて、電解めっき法により当該溝の内部にCu膜を成長させて当該溝にCu膜を埋設する。その後、化学機械的研磨法(CMP:Chemical Mechanical Polishing)により余剰のCu膜を除去する。これにより、第2層間絶縁膜27に埋め込み配線60が形成される。CMPの後は、形成されたCu膜のグレインの安定化のため、200乃至400℃の範囲で熱処理が施される。第3層間絶縁膜28および第4層間絶縁膜29においても、同様のプロセスで埋め込み配線を形成することができる。
第3層間絶縁膜28と第4層間絶縁膜29には、インダクタ62を構成する埋め込み配線が形成されている。第2層間絶縁膜27、第3層間絶縁膜28および第4層間絶縁膜29は、多層配線層11Bを構成する。この多層配線層11Bとトランジスタ層11Aは、タングステン(W)などのコンタクトプラグ41A,41B,42A,42Bを介して電気的に相互接続されている。
なお、第1〜第4層間絶縁膜26〜29は低誘電率材料からなることが好ましい。低誘電率材料としては、たとえば、SiOC、SiC、SiOF、多孔質SiO、または多孔質SiOCが挙げられる。
半導体装置10の製造方法を図2(A)および図2(B)を参照しつつ以下に説明する。図2(A)に示すように、半導体素子の多層配線層11Bの上に、Cuの酸化防止およびCuの拡散防止を目的とした配線キャップ用の絶縁膜13が形成される。この絶縁膜13の材料は、たとえば、SiO、SiNもしくはSiCNであればよい。あるいは、絶縁膜13は、ハードマスク絶縁膜を含む多層絶縁膜や、パッシベーション用の絶縁膜であってもよい。
次に、図2(B)に示すように、絶縁膜13上に、たとえばDCスパッタ法によりバッファ膜14が形成される。続いて、このバッファ膜14上に、たとえばRFマグネトロンスパッタ法により磁気シールド膜15が形成される。ここで、磁気シールド膜15の形成時のプロセス温度の上限を、多層配線層11Bのプロセス温度の上限に準じた300〜400℃の範囲内に設定する。
磁気シールド膜15を構成する磁性体は、スピネル型結晶構造を持つフェライト(スピネル型フェライト)とすることができる。スピネル型フェライトは、XFeおよびY1−nFeのうちの少なくとも一方の酸化物磁性体を主成分として含む。ここで、Xは、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)および鉄(Fe)よりなる群から選択された1種の元素である。Yは、Ni、Zn、Cu、CoおよびMnよりなる群から選択された1種の元素であり、Zは、Ni、Zn、Cu、CoおよびMnよりなる群から選択された1種の元素である。
バッファ膜14は、タングステン(W)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)およびルテニウム(Ru)の中から選択された1種の元素の高融点金属膜、もしくは、W、Ta、TiおよびRuの中から選択された少なくとも1種の元素を含む合金膜であればよい。あるいは、バッファ膜14は、W、Ta、TiおよびRuの中から選択された少なくとも1種の元素の窒化膜または当該元素の酸化膜を含んでもよい。バッファ膜14は、前記高融点金属膜、前記合金膜、前記酸化膜および前記窒化膜の中から選択された複数の膜(たとえば、Ti/TiN膜やTa/TaN膜)からなる積層構造を有していてもよい。
このようなバッファ膜14は、磁気シールド膜15の磁性体材料の半導体素子12への拡散を防止する機能を有する。特に前記窒化膜は、磁性体材料の拡散を防止する点で好ましいものである。ここで、バッファ膜14の厚みは、磁気シールド膜15の構成材料の拡散を抑制するのに十分な厚みであればよい。一方、バッファ膜14の厚みは、20nm以下であることが望ましい。これにより、バッファ膜14のシート抵抗が低くなり過ぎないので、渦電流損失の増大を回避できる。
更に、このようなバッファ膜14を使用すれば、バッファ膜14上に形成される磁気シールド膜15の磁気特性を向上させることが可能となる。すなわち、半導体素子12を構成する層間絶縁膜26〜29の耐熱性が低いことを考慮して半導体装置10のプロセス温度の上限を350〜400℃の範囲内に設定したとしても、バッファ膜14上に結晶性の高いスピネルフェライト膜を形成することが可能である。これにより、高い磁気シールド効果を得ることができる。
なお、本明細書での「磁気シールド効果」とは、磁性体の透磁率の実数成分を利用し、磁束密度を高め、インダクタ性能を向上させる効果や、透磁率の虚数成分を利用した磁気共鳴による磁気損失、もしくは渦電流損失を用いた電磁ノイズ抑制効果を指す。
以下、Ni−Zn系スピネル型フェライト(Ni1−nZnFe)からなる磁気シールド膜15の種々の特性の測定結果について説明する。バッファ膜14はDCスパッタ法により形成され、このバッファ膜14上に、Ni0.5Zn0.5Feのターゲット材料を用いたRFスパッタ法により磁気シールド膜15が成膜された。Ni−Zn系スピネル型フェライト(以下、単に「Ni−Zn系フェライト」と呼ぶ。)の成膜条件は、チャンバ内圧力を3.2mtorr、RFパワーを3kWとし、チャンバ内に導入したガス種をアルゴン(Ar)ガスおよび酸素(O)ガスとしたものである。
図3および図4は、100nm膜厚のバッファ膜14上に200nm膜厚のNi−Zn系フェライト膜が磁気シールド膜15として形成された場合のX線回折(XRD: X-Ray Diffraction)データを表すグラフである。グラフの横軸は散乱角2θ(単位:°、θ:ブラッグ反射角)を示し、縦軸はXRD強度を任意単位(a.u.)で示している。これらのグラフには、成膜時に導入された酸素濃度が0%、4%および8%である場合の測定値がそれぞれプロットされている。図3のグラフは、バッファ膜14がアモルファス酸化ケイ素(SiO)からなる場合(Ni−Zn系フェライト/SiO積層構造)のグラフ、図4のグラフは、バッファ膜14が窒化タンタル(TaN)からなる場合(Ni−Zn系フェライト/TaN積層構造)のグラフである。
図3および図4のグラフでは、Ni−Zn系フェライト膜の(311)面、(400)面および(333)面の強度が観測される。特に酸素濃度を8%とした条件下での(311)面の強度が非常に高く、酸素濃度を4%とした条件下では(400)面の配向が強く生じていることが分かる。
図5は、上記Ni−Zn系フェライトに関する飽和磁化の酸素濃度依存性を示すグラフを表す。図5のグラフの横軸は成膜時の酸素濃度(単位:%)を示し、その縦軸は飽和磁化Ms(単位:kG)を示している。図3乃至図5のグラフによれば、(311)面強度と飽和磁化Msとの間には正の相関が存在することが分かる。
図6は、酸素濃度が8%である場合のXRDデータを図3と図4から抽出したグラフを表す。このグラフによれば、TaN膜上に形成されたNi−Zn系フェライト膜の(311)面の強度は、アモルファス酸化ケイ素膜上に形成されたNi−Zn系フェライト膜のそれと比べて、非常に大きいことが分かる。その理由は、TaN膜の最配向面とNi−Zn系フェライト膜の最配向面(=(311)面)との格子整合性が良好であり、RFスパッタ法によりTaN膜上に(311)面が成長しやすいためであると考えられる。
図6に示した結晶性を有する、Ni−Zn系フェライト/TaNとNi−Zn系フェライト/SiOという2つの積層構造の磁気ヒステリシスの測定結果を図7のグラフに示す。このグラフの横軸は外部磁場Hex(単位:kOe)を示し、その縦軸は磁化Ms(単位:kG)を示している。図7のグラフによれば、Ni−Zn系フェライトの高結晶化により(311)面の強度が高まると、飽和磁化が大きくなり、保磁力が低下し、透磁率が大きくなることが分かる。また、膜欠陥も減少する。したがって、バッファ膜14として特にTaN膜を使用することで、Ni−Zn系フェライトの高結晶化と磁気シールド効果の向上が可能となる。
図8は、Ni−Zn系フェライト/Tiの積層構造の磁気ヒステリシスの測定結果を示すグラフを表す。図8のグラフには、図7の測定結果も示されている。図8のグラフによれば、Ni−Zn系フェライト/Ti積層構造の飽和磁化は、Ni−Zn系フェライト/SiO積層構造のそれと略同じである。一方、Ni−Zn系フェライト/Ti積層構造の保磁力は、Ni−Zn系フェライト/SiO積層構造のそれよりも若干大きく、Ni−Zn系フェライト/Ti積層構造の透磁率は、Ni−Zn系フェライト/SiO積層構造のそれよりも高いことが分かる。
図9は、100nm膜厚のTiからなるバッファ膜14上に200nm膜厚のNi−Zn系フェライト膜が磁気シールド膜15として形成された場合のXRDデータを表すグラフである。成膜時の酸素濃度は8%である。図9のグラフには、比較のために図6の測定結果も示されている。Ti膜上では、アモルファス酸化ケイ素膜上、TaN膜上で見られなかったNi−Zn系フェライト膜の(222)面の成長が見られ、最配向面となっている。バッファ膜の結晶構造によって、Ni−Zn系フェライト膜の成長面は異なることが分かる。
次に、バッファ膜14としてTaN膜、Ru膜およびTi膜を使用した場合を相互に比較する。図10は、100nm膜厚のTiからなるバッファ膜14上に200nm膜厚のNi−Zn系フェライト膜が磁気シールド膜15として形成された場合のXRDデータを表すグラフである。図11は、100nm膜厚のRuからなるバッファ膜14上に200nm膜厚のNi−Zn系フェライト膜が磁気シールド膜15として形成された場合のXRDデータを表すグラフである。そして、図12は、100nm膜厚のTaNからなるバッファ膜14上に200nm膜厚のNi−Zn系フェライト膜が磁気シールド膜15として形成された場合のXRDデータを表すグラフである。図10、図11および図12のいずれの場合も、成膜時の酸素濃度は8%である。
図10を参照すると、Ni−Zn系フェライト膜に(111)面、(222)面および(333)面の配向が起こっていることが分かる。これは、Ti膜の(002)面の結晶構造に起因して、Ni−Zn系フェライトの配向面が(111)面、(222)面および(333)面になったと考えられる。このようにバッファ膜14の結晶構造を変えることで、Ni−Zn系フェライトの配向面を制御することができる。バッファ膜14の結晶構造を制御して磁気シールド膜15の配向面を制御することにより、電磁ノイズの周波数や電磁ノイズの伝播方向に合わせた高い電磁ノイズ抑制効果を実現することが可能となる。
図4に示した通り、TaN膜上にNi−Zn系フェライト膜を形成し、成膜時の酸素濃度を0%または4%とした場合、Ni−Zn系フェライト膜に(400)面の配向が観測される。ただし、成膜時の酸素濃度を8%としたとき、Ni−Zn系フェライト膜に(400)面の配向は観測されない。これは、Ni−Zn系フェライトの結晶格子中に占める酸素イオンの配置や鉄の価数が酸素濃度の影響を受けて、Ni−Zn系フェライトの結晶構造が変化したと推測することができる。
図11および図12を参照すると、TaN膜上に形成されたNi−Zn系フェライト膜の(311)面強度が、Ru膜上に形成されたNi−Zn系フェライト膜の(311)面強度よりも高い。よって、TaN膜上に形成されたNi−Zn系フェライト膜が高結晶化していることが分かる。
図13は、図11および図12の測定の対象とされたNi−Zn系フェライト/RuとNi−Zn系フェライト/TaNの2つの積層構造の電流−電圧特性を示すグラフである。図13のグラフによれば、印加電圧が3Vのとき、TaN膜上に形成されたNi−Zn系フェライト膜の電気抵抗率は約1.6×10Ω・cmであり、Ru膜上に形成されたNi−Zn系フェライト膜の電気抵抗率は約5.3×10Ω・cmである。よって、TaN膜を使用すると、上述した(311)面配向による高結晶化とともに、高抵抗化による低渦電流損失を実現することが可能である。このため、バッファ膜14の結晶構造とNi−Zn系フェライト膜の成膜時の酸素濃度条件とを調整してNi−Zn系フェライト膜の配向性および結晶性を制御することができると考えられる。更に、Ni−Zn系フェライト膜の電気抵抗率がバッファ膜14の結晶構造に応じて異なると考えられることから、Ni−Zn系フェライト膜の結晶性、配向性および渦電流損失を調整して磁気シールド効果を制御することが可能である。
図14は、Ni−Zn系フェライト/TaN積層構造を形成する場合の、Ni−Zn系フェライト膜の成膜時の酸素濃度とNi−Zn系フェライト膜の(311)面のXRDピーク強度との間の関係を示すグラフである。図15は、当該(311)面のXRDピーク強度と飽和磁化Msとの間の関係を示すグラフである。図14のグラフによれば、酸素濃度が8%よりも小さい酸素濃度では、酸素欠陥などの影響により(311)面の成長が促進されず、ピーク強度が小さい。また、8%よりも大きくなる程に、過剰酸素により、(311)面のピーク強度が減少することが分かる。このグラフから、(311)面配向による高結晶化を得る観点からは、反応ガスのアルゴンおよび酸素により構成されるチャンバー内圧力3.2mtorrの下で、酸素濃度はおよそ6%から12%の範囲内にあることが望ましい。RFマグネトロンスパッタを用いたNi−Zn系フェライトの結晶化には、反応ガスである酸素の濃度制御が不可欠である。
図15のグラフによれば、(311)面の強度と飽和磁化Msとの間には正の相関があり、TaN膜上にNi−Zn系フェライトの(311)面を成長させることは、Ni−Zn系フェライト膜の高結晶化とともに磁気特性の改善につながり、磁気シールド効果を向上させることとなる。
図16は、Ni−Zn系フェライト/TaN積層構造の電流−電圧特性を示すグラフである。このグラフには、Ni−Zn系フェライト膜の成膜時の酸素濃度を0%、4%、8%および12%とした場合の測定値がプロットされている。図16のグラフによれば、酸素濃度8%と12%の条件下では、Ni−Zn系フェライト膜が高抵抗化していることが分かる。これら2つの条件では、Ni−Zn系フェライト膜の高抵抗化、高飽和磁化および高透磁率のいずれをも実現することができる。一方、酸素濃度が0%と4%の条件下では、酸素欠陥によりNi−Zn系フェライト膜は低抵抗化する。ただし、パーマロイやアモルファス磁性体であるCoZrTaなどの軟磁性体の電気抵抗率は10−6〜10−4Ω・cmのオーダーであるので、酸素濃度が0%と4%の条件下で形成されたNi−Zn系フェライト膜は、当該他の軟磁性体と比べて遙かに高い電気抵抗率を有しており、高周波での渦電流損失を十分に抑制することができる。
次に、膜厚100nmのSiO膜上に膜厚15nmのTaN膜をバッファ膜14として形成し、このTaN膜上に膜厚200nmのNi−Zn系フェライト膜を磁気シールド膜15として形成した場合の磁性体材料の拡散防止効果を調べた。図17は、裏面SIMS(backside SIMS; 裏面二次イオン質量分析)の結果を示すグラフである。なお、裏面SIMSとは、SIMSによる試料裏面からの深さ方向分析を意味する。試料として、Ni−Zn系フェライト/TaN/SiOの3層構造を、窒素雰囲気中350℃の下で7時間アニール処理したものが使用された。
図17のグラフ中、破線は、TaN膜とSiO膜との界面位置を表している。このグラフから明らかなように、破線よりもSiO膜側の領域にNi、Zn、Feが拡散して侵入していない。すなわち、TaN膜が拡散防止膜として機能していることが分かる。バッファ膜14として、W膜、Ru膜、Ta膜、Ti膜およびTiN膜の各々を用いた場合でも、TaN膜の場合と同様に拡散防止効果を得ることができる。
上記第1の実施形態の半導体装置10およびその製造方法が奏する効果は以下の通りである。図1に示したように、半導体素子12と磁気シールド膜15との間に、磁性体材料の拡散防止機能を持つバッファ膜14が介在するので、磁気シールド膜15の磁性体材料が半導体素子12に拡散し金属汚染を引き起こすことが防止される。磁性体材料の拡散防止機能を有するバッファ膜は、当該バッファ膜上に形成される磁気シールド膜を高結晶化して磁気特性をも向上させ得る。したがって、半導体素子12の電気特性を損なうことなく、磁気シールド機能を発揮することが可能である。
磁気シールド膜15は、半導体素子12内の多層配線層11Bの配線を伝搬する信号に起因して発生する電磁場をシールドする機能を有する。インダクタ62を構成する配線を高周波の電流信号が流れた場合にインダクタ62で発生した磁束を磁気シールド膜15に集中させることにより、インダクタ62のインダクタンスLやQ値(quality factor)を向上させることが可能である。このため、インダクタ62の高性能化と小型化が可能である。また、後述する多層配線構造のインダクタと、第1の実施形態の磁気シールド構造とを組み合わせることで、インダクタ62の小型化を実現することができる。たとえば、LCR回路構成を含むRFアナログ回路では、半導体チップの集積度が増すにつれて、インダクタの高性能化と小面積化が急務となっている。多層配線構造のインダクタと、第1の実施形態の磁気シールド構造とを組み合わせることで、インダクタの寸法を変更することなくインダクタンスLを増加させる、もしくはインダクタを小型化しても十分に高いインダクタンスLを得ることが可能となる。
更に、磁気シールド膜15によりインダクタ62の誘起磁束の広がりが抑制されるので、シリコン基板などの同一の半導体基板20上に複数個のインダクタを並列に形成した場合でも、これらインダクタ間の磁気結合が生じにくくなり、クロストークの発生が抑制される。したがって、複数のインダクタを密に並列に配置することができるので、高密度実装が可能である。
インダクタ性能は、シリコン基板などの半導体基板20上の低抵抗部分の渦電流損失によって劣化することが知られている。前述の磁気シールド効果により、インダクタ62の誘起磁束の広がりを抑えることができるので、前記渦電流損失が低減してインダクタの磁気効率の向上が可能となる。また、磁気シールド効果により、インダクタ62における磁束密度が向上し、インダクタ性能(インダクタンスやQ値)が向上する。更に、磁気シールド膜15の構成材料として、Ni−Zn系フェライトのような高抵抗な酸化物磁性体を用いることで、磁性体そのものの渦電流損失が小さくなり、また、GHz帯のような高周波帯域でもインダクタ62の誘起磁束を減衰させることなく、磁束密度を高めることが可能である。
ダマシンプロセスでは、層間絶縁膜の耐熱性が低いことを考慮してプロセス温度の上限を350〜400℃の範囲内に設定するのが一般的である。その理由は、低誘電率材料の構成原子間の結合力が比較的弱いため、高熱処理を受けると低誘電率材料の熱分解や脱ガスが生じるからである。よって、多層配線層11Bを形成する場合、その多層配線層11Bとともに磁気シールド膜15を形成するプロセスでも、そのプロセス温度の上限を350〜400℃の範囲内に設定する必要がある。上記実施形態の磁気シールド構造では、磁性体材料の拡散防止機能を有するバッファ膜14の上に磁気シールド膜15が形成されるので、上限が350〜400℃程度の比較的低温のプロセスでも、磁気シールド膜15の高結晶化を実現することができる。
磁気シールド膜15として特にスピネル型フェライトを使用したときに高い結晶性を持つ磁気シールド膜15の形成が可能である。したがって、配線層形成プロセスに適合したプロセス温度で半導体素子12上にバッファ膜14を形成し、更に当該バッファ膜14上にスピネル型フェライトの磁気シールド膜15を形成することで、磁性体材料の拡散防止と優れた磁気シールド効果とを共に実現し得る半導体装置10を提供することが可能となる。
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。図18は、第2の実施形態の半導体装置10Aの断面構造を概略的に示す図である。上記第1の実施形態の半導体装置10では、全体として凹凸を持たず平坦面を持つ磁気シールド膜15が形成されている。これに対し、第2の実施形態の半導体装置10Aは、形状加工されたバッファ膜14A,14B,14C,14D,14Eと磁気シールド膜15A,15B,15C,15D,15Eを有している。これら磁気シールド膜15A,15B,15C,15D,15Eを被覆するように上部バッファ膜16が形成されている。バッファ膜14A〜14Eと上部バッファ膜16の構成材料は、第1の実施形態のバッファ膜14(図1)のそれと同じである。
半導体装置10Aは、第1の実施形態の半導体装置10(図1)と同じ構成のトランジスタ層11Aと多層配線層11Bを含む。半導体装置10Aの製造プロセスは、以下の通りである。第1の実施形態と同じ製造工程にしたがって、多層配線層11B上に絶縁膜(誘電体膜)13が形成される。次いで、第1の実施形態と同じ製造工程にしたがって、絶縁膜13上にバッファ膜と磁気シールド膜が順次形成される。その後、形成されたバッファ膜と磁気シールド膜の積層構造を、エッチング、イオンミリング、あるいは、レジストを用いた塗布露光技術を用いて加工することにより、図18のバッファ膜14A,14B,14C,14D,14Eと磁気シールド膜15A,15B,15C,15D,15Eが形成される。更に、たとえばDCスパッタ法により、バッファ膜14A〜14Eと磁気シールド膜15A〜15Eを被覆する上部バッファ膜16が形成される。
第2の実施形態の半導体装置10Aとその製造方法は、上記第1の実施形態の半導体装置10およびその製造方法と同様の効果を奏し、更に以下に説明する効果を奏する。先ず、磁気シールド膜15A〜15Eは、完全に上部バッファ膜16で覆われているために、磁性体材料の上方への拡散を完全に防止することができる。ここで、バッファ膜14A〜14Eの厚みは、磁気シールド膜15A〜15Eの構成材料の拡散を抑制するのに十分な厚みであればよい。一方、バッファ膜14A〜14Eの厚みは、20nm以下であることが望ましい。これにより、バッファ膜14A〜14Eのシート抵抗が低くなり過ぎないので、渦電流損失の増大を回避できる。
磁気シールド膜15A〜15Eの各々は、図示する断面に対して垂直な方向(y方向)に沿って伸びるように凸状に加工されている。このように磁気シールド膜15A〜15Eの各々の横幅(x方向の幅)を制限することで形状磁気異方性を付与することができる。すなわち、磁気シールド膜15A〜15Eの各々が、x−y面に沿った方向を磁化容易軸(磁性体の磁化が向きやすい方向)として有し、z方向(膜厚方向)を磁化困難軸(磁性体の磁化が向き難い方向)として有することができる。
また、磁気シールド膜15A〜15E全体の断面積が小さくなるので磁気シールド膜が実効的に高抵抗化し、高周波での渦電流損失を低減することが可能となる。
なお、本実施形態では、図18の磁気シールド膜15A〜15Eの各々は凸状に加工されているが、これに限定されるものではない。x−y面に沿って複数の凸状が交差する幾何学的形状(たとえば、十字状や六角格子状)、円形状あるいはリング形状に磁気シールド膜を加工してもよい。各々の加工形状に応じた磁気構造に応じた磁気シールド効果が利用できる。
磁気シールド膜15A〜15Eの凸状の幅を十分に狭めることで、当該凸状を磁性細線にすることができる。強磁性体の磁性細線は、強い形状異方性を有し、長手方向に磁化して単磁区構造を形成しやすい。このため、x方向、y方向およびz方向に伸びる磁性細線を形成することで、磁気形状異方性を有し、かつ、x方向、y方向およびz方向にそれぞれ磁化する単磁区構造を形成することができる。磁気シールド膜に磁気異方性を付与することで、磁気共鳴周波数を高めることが可能である。
図1に示した磁気シールド膜15を微細加工することにより、磁性細線の単磁区構造を形成し、あるいは、複数の磁性細線の重ね合わせによる磁壁を形成することが可能である。また、電磁ノイズの対象周波数やその伝播方向に応じて、磁気シールド膜15を加工して磁壁を形成することができる。複数の磁性細線が十字状または六角格子状に形成される場合、単磁区構造を持つ磁性細線が交差する部分には、単一磁壁が形成される。かかる磁壁による磁壁共鳴を用いた電磁気ノイズ抑制を実現することが可能である。
図19(B)および図19(C)は、磁性細線構造の一例を概略的に示す図である。図19(B)は、磁性細線構造の一部の断面を概略的に示す図であり、図19(C)は、図19(B)に示した磁性細線構造の斜視図である。この磁性細線構造は、図19(A)に示す積層構造に対しエッチングなどの形状加工プロセスを施すことで形成される。図19(B)と図19(C)に示されるように、バッファ膜14上に磁性薄膜15Gが下地層として形成されており、この磁性薄膜15G上に磁性細線150,151が形成されている。このように下地層15Gと磁性細線150,151との組み合わせにより、x−y面に沿った方向の磁化容易軸とz方向の磁化容易軸とを導入することが可能となる。電磁ノイズの伝播方向に沿った磁化容易軸を導入することにより、磁気シールド膜の磁化の応答性を向上させることができる。これに対し、第1の実施形態の磁気シールド膜15では、z方向(膜厚方向)に沿って磁化困難軸が形成されやすいので、z方向の透磁率は低い。よって、外部磁場のz方向成分に対する磁化の応答性は、外部磁場のx方向成分またはy方向成分に対する磁化の応答性よりも低い。
(第3の実施形態)
次に、本発明に係る第3の実施形態について説明する。図20(A)〜(C)、図21(D)〜(E)、図22(F)〜(G)および図23(H)〜(I)は、第3の実施形態の半導体装置10B(図23(I))の製造工程を示す断面図である。
先ず、図1に示したトランジスタ層11Aとインダクタ62の配線を含む多層配線層11Bとが形成される。次いで、図20(A)に示されるように、多層配線層11Bの上に第5層間絶縁膜30が形成される。
その後、図20(A)に示した第3層間絶縁膜28、第4層間絶縁膜29および第5層間絶縁膜30の多層構造をエッチングで加工することにより図20(B)に示す凹部35,36,37を形成する。凹部(溝)35,37は、インダクタの外側の領域に形成され、凹部(溝)36は、インダクタの巻き線構造の中心領域に形成される。
次に、図20(B)に示した積層構造の全面上にスパッタ法により下部バッファ膜14Tが成膜される。下部バッファ膜14Tの構成材料は、上記バッファ膜14(図1)のそれと同じである。続けて、図21(D)に示すように、下部バッファ膜14Tの上に、たとえばRFマグネトロンスパッタ法により磁気シールド膜15Tが形成される。ここで、磁気シールド膜15Tの形成時のプロセス温度の上限を、多層配線層11Bの低温プロセス(めっき法やスパッタ法)の温度の上限に準じた350〜400℃の範囲内に設定すればよい。
その後、たとえばDCスパッタ法により、磁気シールド膜15Tを連続的に被覆する上部バッファ膜16Tを成膜する(図21(E))。次に、図21(E)の積層構造の全面上に、酸化ケイ素または窒化ケイ素などのハードマスク材料からなる第6層間絶縁膜31を形成する(図22(F))。この第6層間絶縁膜31の上面はCMPにより平坦化される(図22(G))。そして、図22(G)の第6層間絶縁膜31C上に、インダクタの形成領域以外の領域に開口部を持つマスクパターン(図示せず)を形成する。
その後、このマスクパターンを用いたエッチングにより、下部バッファ膜14T、磁気シールド膜15T、上部バッファ膜16Tおよび第6層間絶縁膜31Cからなる積層構造を選択的に加工する。その結果、図23(H)に示されるように、インダクタの形成領域のみを選択的に被覆する磁気シールド構造70が形成される。この磁気シールド構造70は、形状加工されたバッファ膜14P、磁気シールド膜15Pおよび上部バッファ膜16Pを含む。
次に、図23(H)に示した積層構造の全面上に層間絶縁膜を形成し、この層間絶縁膜の上面をCMPで平坦化することで図23(I)の第3の実施形態の半導体装置10Bを得る。図23(I)に示されるように、磁気シールド構造70を完全に被覆するように第7層間絶縁膜32が形成されている。なお、図23(I)の工程後に、図23(I)の構造に新たな配線を設けてもよい。
第3の実施形態の半導体装置10Bおよびその製造方法は、上記第1の実施形態の半導体装置10およびその製造方法と同様の効果を奏し、更に以下に説明する効果を奏する。半導体装置10Bは、第3層間絶縁膜28P、第4層間絶縁膜29Pおよび第5層間絶縁膜30Pに形成された凹凸部を有する。この凹凸部の面に沿ってバッファ膜14P、磁気シールド膜15Pおよび上部バッファ膜16Pが形成されている。ノイズ発生源となり得る配線構造の位置および形状に応じてできるだけ磁気シールド効果を発揮するように、磁気シールド膜15Pの凹凸形状を制御することができる。これにより、膜厚方向に伝播するノイズ成分のみならず、膜厚方向に垂直なz方向へ伝播するノイズ成分をも低減させることが可能となる。
第1の実施形態の磁気シールド膜15は、図1に示される通り、x−y面に沿った平坦な膜であるので、磁気シールド膜15のz方向(膜厚方向)に磁化困難軸が生じやすく、磁気シールド膜15のx−y面に沿った方向に磁化容易軸が向きやすい。このため、x−y面に沿った方向に伝播するノイズ成分を低減させる効果は高いが、z方向に伝播するノイズ成分を低減させる効果は低い。これに対して、第3の実施形態の磁気シールド膜15Pは、z方向へ伝播するノイズ成分を効果的に低減させることができる。
また、図23(I)に示されるように磁気シールド構造70は第7層間絶縁膜32の中に埋め込まれている。このため、図23(I)の構造に更に上部配線層を設ける場合でも、磁気シールド構造70が、この上部配線層の形成工程に影響を与えることはないという利点がある。
更に、図23(I)に示されるように、磁気シールド構造70を構成する磁気シールド膜15Pの凹部がインダクタの中心を貫くように巻き線構造の中心領域に形成されている。同時に、磁気シールド膜15Pは、インダクタを外側から包囲するように形成されている。このため、インダクタのインダクタンスLを向上させ、インダクタで発生する磁束を効率的に利用することができる。
前述した通り、LCR回路構成を含むRFアナログ回路では、半導体チップの集積度が増すにつれて、インダクタの高性能化と小面積化が急務となっている。このため、インダクタの寸法を変更することなくインダクタンスLを増加させる、もしくは、インダクタを小面積化しても十分に高いインダクタンスLを得ることが必要である。本実施形態は、磁気シールド膜15Pの高透磁率磁性材料をインダクタのコアとして使用することで、インダクタ内の磁束を高密度化することができる。したがって、インダクタの高性能化や小面積化を実現することが可能である。
なお、図23(I)の構造では、磁気シールド膜15Pは、インダクタの中心領域を略貫通する構造を有するが、これに限定されるものではない。たとえば、インダクタの中心領域の一部またはその近傍に磁気シールド膜15Pを形成しても、インダクタンスLが大きくなり、インダクタの高性能化や小面積化を図ることができる。
(第4の実施形態)
次に、本発明に係る第4の実施形態について説明する。図24は、第4の実施形態の半導体装置10Sの構造を概略的に示す断面図である。この半導体装置10Sは、インダクタ62Sの構造を除いて、第1の実施形態の半導体装置10(図1)と同じ構成を有している。すなわち、第1の実施形態のインダクタ62は、複数の配線層(層間絶縁膜)28,29内に形成された構造を有しているのに対し、本実施形態のインダクタ62Sは、単一配線層(第4層間絶縁膜)29内に形成された構造を有している。このような半導体装置10Sは、第1の実施形態の製造プロセスと同様の製造プロセスで作製することができる。
第1の実施形態のインダクタ62は、たとえば、配線層28,29にそれぞれ形成された平面型スパイラルインダクタをビアホール導体を介して直列接続することにより構成することができる。これに対し、本実施形態のインダクタ62Sは、単一層内に形成された平面型スパイラルインダクタとすることができる。
第4の実施形態の半導体装置10Sも、半導体素子12と磁気シールド膜15との間にバッファ膜14が介在するので、第1の実施形態の半導体装置10と同様の効果を奏する。磁気シールド効果は、インダクタの構造により限定されるものではなく、インダクタの誘起磁束の広がりを抑え、インダクタのコア部の磁束密度を高密度化するので、インダクタの磁気効率を高めるものである。
(第5の実施形態)
次に、本発明に係る第5の実施形態について説明する。第5の実施形態の半導体装置の半導体素子は、配線層とこの配線層に電気的に接続された磁気抵抗素子とを有する複数のメモリセルを含む。この半導体装置は、少なくともこれらメモリセルの形成領域を被覆するように形成された磁気シールド膜を含む。ここで、磁気抵抗素子には、TMR(Tunneling MagnetoResistive:トンネル磁気抵抗)素子が使用される。
図26〜図30は、第5の実施形態の半導体装置10C(図30)の製造工程を示す断面図である。図30に示される半導体装置10Cは、図25(A)および図25(B)に示す基本構造を持つメモリセルを含む半導体素子を被覆する磁気シールド構造を有する。図25(A)は、メモリセルの基本構造を概略的に示す断面図であり、図25(B)は、図25(A)のメモリセルの等価回路図である。
先ず、図25(A)および図25(B)を参照しつつ、メモリセルの基本構造を説明する。このメモリセルは、TMR素子80を利用したMRAM(Magnetic Random Access Memory)素子である。図25(A)に示されるように、TMR素子80は、トンネル絶縁膜82を強磁性層(ピン層)81と強磁性層(フリー層)83とで挟み込んだ積層構造を有する。MRAM素子は、このTMR素子80のトンネル磁気抵抗効果を利用した不揮発性メモリである。
図25(A)に示されるように、メモリセルは、TMR素子80、書き込み配線84、トランジスタTr、ワード線用配線85、ビット線用配線86および配線87を含む。トンネル絶縁膜82を挟み込む強磁性層81,83のうち一方の強磁性層81にはビット線用配線86が接続されており、他方の強磁性層83は、配線87を介してトランジスタTrのドレイン領域に接続されている。図25(B)に示されるようにトランジスタTrのソース領域は接地されている。トランジスタTrのゲート電極は、配線85を介してワード線WLに接続されている。TMR素子80の一方の強磁性層81は、配線86を介してビット線BLに接続されている。
強磁性層81,83の構成材料としては、たとえば、CoPtやFePtが挙げられる。トンネル絶縁膜82の構成材料には、Alなどのアモルファス膜、あるいは、MgOやMgO/Mgなどの単結晶膜を用いればよい。強磁性層81,83の各々は多層構造であってもよい。
トンネル絶縁膜82を挟み込む強磁性層81,83の磁化(スピン)の向きが平行状態にある場合と、強磁性層81,83の磁化の向きが反平行状態にある場合とでは、TMR素子80のトンネル磁気抵抗に差が生じる。そのトンネル磁気抵抗の差を用いてTMR素子80に「0」または「1」のビット情報を記憶させることができる。トンネル磁気抵抗の値は、ワード線WLとビット線BLの出力電圧差として検出され、この検出結果に基づいてビット情報が読み出される。ビット情報の書き換えは、ビット線BLとワード線WLに電流を流して強磁性層81,83に外部磁場を印加することにより行われる。この外部磁場の印加により強磁性層81,83の磁化の向きを平行状態または反平行状態のいずれか一方に設定できる。
なお、外部磁場や熱ゆらぎによって、強磁性層81,83の磁化の向きが変動しないように、強磁性膜/非磁性膜/強磁性膜の多層構造による強磁性膜間の磁気カップリングを導入して強磁性層81,83の少なくとも一方の磁化の向きを制御してもよい。当該多層構造の非磁性膜には、たとえば、Ru、CuまたはCrを使用できる。強磁性層81,83の磁化状態を変える方法は、前述の外部磁場を利用する方法に限定されるものではない。スピン偏極した電子を強磁性層81,83の少なくとも一方に直接流すことによりスピントルクを与えてビット情報の書き込みと読み出しとを同時に行う方法を採用してもよい。
次に、図26〜図30を参照しつつ、第5の実施形態の半導体装置10C(図30)の製造工程について説明する。この半導体装置10Cは、各々が図25(A)の基本構造を持つ複数のメモリセルが形成されるメモリ領域と、ロジック回路が形成されるロジック領域とを同一の半導体基板90上に混載したものである。
図26には、半導体素子の断面構造の一例が概略的に示されているが、これに限定されるものではない。この半導体素子は、半導体基板90上に形成されたトランジスタTr1,Tr2,Tr3,Tr4を含む。これらトランジスタTr1,Tr2,Tr3,Tr4の各々は、ゲート電極、ソース拡散領域およびドレイン拡散領域を含むn型またはp型のMOSトランジスタである。トランジスタTr1,Tr2,Tr3は、メモリセル用素子であり、トランジスタTr4は、ロジック回路用素子である。トランジスタTr1は、STIなどの素子分離領域91,92により他の素子と分離され、トランジスタTr2は、素子分離領域92,93により他の素子と分離され、トランジスタTr3は、素子分離領域93,94により他の素子と分離され、トランジスタTr4は、素子分離領域94,95により他の素子と分離されている。
トランジスタTr1,Tr2,Tr3,Tr4の上には、第1層間絶縁膜100が形成されている。この第1層間絶縁膜100には、トランジスタTr1,Tr2,Tr3,Tr4のソース拡散領域およびドレイン拡散領域に接続されたコンタクトプラグ111A,111B,112A,112B,113A,113B,114A,114Bが埋め込まれている。第1層間絶縁膜100上には第2層間絶縁膜101が形成されている。この第2層間絶縁膜101には、コンタクトプラグ111A,111B,112A,112B,113A,113B,114A,114Bにそれぞれ接続された導電層121A,121B,122A,122B,123A,123B,124A,124Bが埋設されている。第2層間絶縁膜101上には、第3層間絶縁膜102、第4層間絶縁膜103および第5層間絶縁膜104が順次形成されている。
メモリ領域においては、第3層間絶縁膜102には、導電層121B,122B,123Bにそれぞれ接続する配線131,132,133が埋設されている。第4層間絶縁膜103には、配線131,132,133にそれぞれ接続されたTMR素子80A,80B,80Cが形成されている。更に、第5層間絶縁膜104には、TMR素子80A,80B,80Cにそれぞれ接続されたビット線用配線141,142,143が埋設されている。一方、ロジック領域においては、第3層間絶縁膜102、第4層間絶縁膜103および第5層間絶縁膜104に形成されたスルーホールに配線144,145が埋設されている。
なお、第1〜第5層間絶縁膜100〜104は低誘電率材料からなることが好ましい。低誘電率材料としては、たとえば、SiOC、SiC、SiOF、多孔質SiO、または多孔質SiOCが挙げられる。
その後、図26に示した多層配線構造の第4層間絶縁膜103および第5層間絶縁膜104をエッチングで選択的に加工することにより複数の凹部(溝)を形成する。この結果、図27に示されるように、凹部を有する第4層間絶縁膜103Pおよび第5層間絶縁膜104Pが形成される。メモリ領域においては、TMR素子80AとTMR素子80Bとの間、並びに、TMR素子80BとTMR素子80Cとの間に、それぞれ、比較的浅い凹部が第5層間絶縁膜104Pに形成されている。また、メモリ領域とロジック領域との間には、比較的深い凹部が第4層間絶縁膜103Pおよび第5層間絶縁膜104Pに形成されている。この凹部は、TMR素子80A,80B,80Cとロジック領域に形成された配線とを磁気的に分離する目的で形成されている。
続いて、積層構造の全面上にスパッタ法により下部バッファ膜153(図27)が成膜される。下部バッファ膜153の構成材料は、上記第1の実施形態のバッファ膜14(図14)のそれと同じである。更に続けて、下部バッファ膜153の上に、たとえばRFマグネトロンスパッタ法により磁気シールド膜154(図27)が形成される。ここで、磁気シールド膜154の形成時のプロセス温度の上限を、多層配線構造の低温プロセス(めっき法やスパッタ法)の温度の上限に準じた350〜400℃の範囲内に設定すればよい。
その後、たとえばDCスパッタ法により、磁気シールド膜154を連続的に被覆する上部バッファ膜155(図27)を成膜する。続けて、積層構造の全面上に、酸化ケイ素または窒化ケイ素などのハードマスク材料を堆積し、当該堆積されたハードマスク材料にCMPを施すことで平坦化された第6層間絶縁膜105(図28)を形成する。
その後、図28の第6層間絶縁膜105をエッチングにより加工して、実質的にロジック領域に開口部を有し、かつメモリ領域を被覆するマスクパターン(図示せず)を形成する。続けて、このマスクパターンを用いて、下部バッファ膜153、磁気シールド膜154および上部バッファ膜155をエッチングにより選択的に加工する。その結果、図29に示されるように、下部バッファ膜153P、磁気シールド膜154P、上部バッファ膜155Pおよび第6層間絶縁膜105Pが形成される。よって、実質的にメモリセルの形成領域のみを選択的に被覆する磁気シールド構造が形成されることとなる。
その後、図29に示した積層構造の全面上に、配線146,147が埋設された第7層間絶縁膜106を形成することで図30の第5の実施形態の半導体装置10Cを得る。図30に示されるように、磁気シールド構造を完全に被覆するように第7層間絶縁膜106が形成されている。なお、図30の工程後に、図30の構造に新たな配線を設けてもよい。
第5の実施形態の半導体装置10Cおよびその製造方法は、上記第1の実施形態の半導体装置10およびその製造方法と同様の効果を奏し、更に以下に説明する効果を奏する。先ず、図30に示されているように、磁気シールド膜154Pは、下部バッファ膜153Pと上部バッファ膜155Pとで囲まれているので、磁性体材料の拡散を防止することができる。
図30に示されているように、磁気シールド膜154Pは、第5層間絶縁膜104Pに埋設されたビット線用配線141,142間を磁気的に分離する凹部と、ビット線用配線142,143間を磁気的に分離する凹部とを有している。ビット線用配線141,142,143は、TMR素子80A,80B,80Cにビット情報を書き込む際に書き込み電流を印加される配線である。ビット線用配線141,142,143の各々は、磁気シールド膜154Pで覆われているので、書き込み電流の印加で生ずる外部磁場を増大させることが可能となる。これにより、ビット情報の書き込みに必要な電流の振幅を下げることができ、動作電力の低減が可能となる。
また、図30に示した磁気シールド構造が存在しなければ、TMR素子80A,80B,80Cが外部から電磁ノイズを浴びると、TMR素子80A,80B,80Cを構成する強磁性層の磁化の向きが変化する可能性がある。図30に示した磁気シールド構造により、TMR素子80A,80B,80Cを当該電磁ノイズの影響から遮断することができ、メモリセルの誤動作を防止することができる。
上記により、第5の実施形態の半導体装置10Cは、メモリセルの低消費電力化および高信頼性を実現し得る磁気シールド構造を有する。
(第6の実施形態)
次に、本発明に係る第6の実施形態について説明する。図31(A)および図31(B)は、第6の実施形態の半導体装置の製造工程を概略的に示す断面図である。本実施形態では、図1に示した多層配線層11Bが形成された後、当該多層配線層11Bをエッチングにより加工して図31(A)に示す凹部(溝)を形成する。更に、当該凹部にバッファ膜14Tを形成し、続けて、スパッタ法やめっき法により当該凹部に磁性体膜を埋め込む。その後、バッファ膜14Tおよび磁気シールド膜15FをCMPにより平坦化して図31(B)に示すようにバッファ膜14Hと埋め込み磁気シールド膜15Hとからなる磁気シールド構造を得る。
第6の実施形態の半導体装置およびその製造方法では、インダクタの形成領域のみを選択的に被覆する磁気シールド構造を形成することが可能である。インダクタの周辺およびインダクタの中心領域を磁気シールド構造が貫く構造が得られるので、磁束密度を効率的に高めることが可能である。図31(B)の構造を得た後は、更に配線層を形成してもよい。
(第7の実施形態)
次に、本発明に係る第7の実施形態について説明する。図32(A)は、第7の実施形態の半導体装置の構造を概略的に示す断面図である。本実施形態では、図2(A)に示すトランジスタ層11Aが形成された後、配線を含む第2層間絶縁膜27と配線を含む第3層間絶縁膜とを形成する。当該第3層間絶縁膜にエッチングにより凹部(溝)を形成して第3層間絶縁膜28Cを得る。その後、この凹部に下部バッファ膜14Fを形成し、続けて下部バッファ膜14Fの上に磁性体材料を堆積する。当該堆積された磁性体材料をCMPにより平坦化して図32(A)に示す埋め込み磁気シールド膜15Iが形成される。更に、図32(B)に示すように、図32(A)に示す磁気シールド膜15Iを被覆するように選択的に上部バッファ膜14Sが成膜される(図32(B))。
第7の実施形態の半導体装置およびその製造方法では、磁気シールド膜15Iを下部バッファ膜14Fと上部バッファ膜14Sとで完全に覆う磁気シールド構造が形成される。よって、磁気シールド膜15Iの水平方向端部からの磁束の漏れを防止することができる。
(第8の実施形態)
次に、図32(C)は、本発明に係る第8の実施形態の半導体装置の構造を概略的に示す断面図である。本実施形態の半導体装置は、図示する配線のうち一部の配線をバッファ膜14I,14Gを介して完全に囲む埋め込み磁気シールド膜15I,15Jを有している。埋め込み磁気シールド膜15Iは、エッチング工程、スパッタ法およびCMPにより、第3層間絶縁膜28Cに形成された凹部(溝)内にバッファ膜14Fを介して埋設されている。また、埋め込み磁気シールド膜15Jは、エッチング工程、スパッタ法およびCMPにより、第4層間絶縁膜29Dおよび第5層間絶縁膜29Cに形成された凹部(溝)内にバッファ膜14Gを介して埋設されている。
第8の実施形態の半導体装置およびその製造方法では、第4層間絶縁膜29Dに形成された複数の配線のうち一部の配線のみを被覆する磁気シールド構造が形成される。このような磁気シールド構造を、たとえば、インダクタ用の配線で発生する磁束に沿った形状となるように形成すれば、インダクタの磁束密度を効率的に高めることが可能である。
(シミュレーションによる評価)
次に、インダクタによる磁束状態をシミュレーションした結果を説明する。図33および図34は、シミュレーション用の3次元スパイラルインダクタの構造を概略的に示す図である。図34は、3次元スパイラルインダクタの概略斜視図であり、図33は、図34に示したインダクタのA1−A2線に沿った概略断面図である。この3次元スパイラルインダクタは、金属配線層M2,M3,M4,M5にそれぞれ形成された平面型のスパイラルインダクタI2,I3,I4,I5と、最上層のスパイラルインダクタI5に接続された配線65とを有する。スパイラルインダクタI2〜I5は、ビアホール導体(図示せず)を介して直列に接続されている。また、スパイラルインダクタI2〜I5の各々の外形は、各辺の長さが約17μmとなる正方形状である。
図35および図36は、図34に示したインダクタ上に磁気シールド膜(電気抵抗率ρ=10Ω・cm;透磁率μ=100(透磁率の単位はCGS単位系による無単位))を配置した場合のシミュレーションの結果を示す図である。これらのシミュレーションでは、インダクタに10GHzの高周波電流を流した。図35と図36は、全て10GHzにおける磁界強度を0.00A/m〜6.26×10A/mの範囲内で濃淡の程度で示している。
図35のシミュレーションでは、磁気シールド膜は、インダクタの中心領域に凹部形状を有する。このシミュレーション結果では、インダクタの中心領域における磁束が高密度化していることが確認された。磁気シールド膜の磁化容易軸は磁気シールド膜の面内方向を向く傾向があるので、当該凹部における磁気シールド膜の磁化容易軸の方向は、インダクタの中心領域における磁束の方向と一致しやすい。このため、インダクタの磁束密度を効率的に高めることができる。
一方、図36中の点線は、平坦面を持つ磁気シールド膜を表している。このシミュレーション結果でも、インダクタの中心領域における磁束が高密度化していることが確認されたが、図36の結果よりも、図35のシミュレーション結果の方が、より磁束密度が高められた。これは、磁性体膜の凹部形状の、インダクタ内の磁束集中部への配置と、インダクタの磁束形状と凹部形状磁性体膜の磁化容易軸を合わせることにより、効率的に磁束密度を高められるためである。
次に、図37、図38および図39は、図34に示したインダクタに10GHzの高周波電流を流した場合のシミュレーション結果である磁界の強度分布を表す図である。図37、図38および図39は、1×10A/m〜2×10A/mの範囲内の濃淡の程度に応じた、10GHzにおける磁界の強度分布を示している。
図37のシミュレーションでは、インダクタ上に磁気シールド膜は配置されていない。図38のシミュレーションでは、インダクタ上に平坦面を持つ磁気シールド膜(電気抵抗率ρ=10MΩ・cm;透磁率μ=2)が配置されている。図38の磁気シールド膜は、10MΩ・cmの電気抵抗率を持つ、渦電流損失の低い磁性体膜である。図37のシミュレーション結果よりも図38のシミュレーション結果の方で、インダクタの中心領域とその周辺での磁束が高密度化していることが確認された。よって、図38の、電気抵抗率10MΩ・cmを有する磁気シールド膜は、GHz帯でのインダクタの磁束密度を高められる磁性体膜として効果的である。
図39のシミュレーションでは、インダクタ上に平坦面を持つ磁気シールド膜(電気抵抗率ρ=10μΩ・cm;透磁率μ=100)が配置されている。ここで用いた抵抗率と透磁率は、パーマロイのような一般的な軟磁性体の透磁率と電気抵抗率を想定したものを用いている。図39の磁気シールド膜は、10μΩ・cmの電気抵抗率を持つ、渦電流損失が非常に高い磁性体膜である。このシミュレーション結果では、電気抵抗率10μΩ・cmの磁性体膜では、10GHzの高周波帯で、インダクタ中の磁束密度を高めるような磁気シールド効果はなく、渦電流損失が極めて大きいため、図37の磁性体膜を用いない構造よりもインダクタ中の磁場強度が低下している。このような低抵抗な(電気抵抗率ρ=10μΩ・cm)磁性体膜では、渦電流損失が極めて大きいため、GHzにおけるインダクタの性能を上げることはできない。
上記シミュレーション結果によれば、磁気シールド膜として高抵抗かつ低損失な磁性体膜を用いた場合、GHz帯ではインダクタの中心部の磁場強度が高まり、磁束の広がりが抑えられることが分かった。また、磁気シールド膜の凹部がインダクタの巻き線構造の中心領域に形成された構造では、凹部が形成されない場合と比べて、インダクタの中心領域の磁場強度が向上することが分かった。
次に、別のシミュレーション結果について説明する。図40(A)および図40(B)は、このシミュレーション用の3次元スパイラルインダクタの断面を概略的に示す図である。図40(A)および図40(B)の3次元スパイラルインダクタの断面は、図34に示した3次元スパイラルインダクタのA1−A2線に沿った断面である。
図40(A)および図40(B)の3次元スパイラルインダクタは、金属配線層M2,M3,M4,M5にそれぞれ形成された平面型のスパイラルインダクタI2,I3,I4,I5と、金属配線層M6内に形成され最上層のスパイラルインダクタI5に接続された配線65とを有する。スパイラルインダクタI2〜I5は、ビアホール導体(図示せず)を介して直列に接続されている。また、スパイラルインダクタI2〜I5の各々の外形は、各辺の長さが約17μmとなる正方形状である。図40(A)の構造では、3次元スパイラルインダクタを被覆する平坦な磁気シールド膜15Mが形成されている。一方、図40(B)の構造では、3次元スパイラルインダクタを被覆し、かつ3次元スパイラルインダクタの中心領域に凹部を有する磁気シールド膜15Nが形成されている。磁気シールド膜15M,15Nのいずれも、透磁率μ=5,電気抵抗率ρ=10Ω・cmおよび厚み500nmを有する磁性体膜である。
図41および図42は、1)図40(A)の磁気シールド膜(磁性体薄膜)15Mを有する構造、2)図40(B)の磁気シールド膜(凹部形状磁性体膜)15Nを有する構造、3)図40(A),(B)の3次元スパイラルインダクタを有するが、磁気シールド膜(磁性体)を持たない構造、という3種類の構造に関するシミュレーション結果を示すグラフである。図41のグラフは、3次元スパイラルインダクタのインダクタンスの周波数依存性を示しており、このグラフにおいて、横軸は周波数(単位:GHz)に、縦軸はインダクタンス(単位:nH)にそれぞれ対応している。図42のグラフは、3次元スパイラルインダクタのQ値の周波数依存性を示しており、このグラフにおいて、横軸は周波数(単位:GHz)に、縦軸は、エネルギー損失に逆比例するQ値にそれぞれ対応している。
図41のグラフによれば、磁気シールド膜15M,15Nを有する構造の場合、磁気シールド膜を持たない構造の場合と比べて、GHz帯で高いインダクタンスが得られていることが分かる。平坦な磁気シールド膜(磁性体薄膜)15Mを有する構造の場合、磁気シールド膜(磁性体)を持たない構造の場合と比べて、インダクタンスの向上率が4GHzで約3%であった。また、磁気シールド膜(凹部形状磁性体膜)15Nを有する構造の場合、磁気シールド膜(磁性体)を持たない構造の場合と比べて、インダクタンスの向上率が4GHzで約8%であった。図35および図36のシミュレーション結果によれば、上述の通り、インダクタの中心領域における磁束が高密度化していることが確認された。図41および図42のシミュレーション結果により、インダクタ性能も向上することが確認された。
また、磁気シールド膜(凹部形状磁性体膜)15Nを有する構造の場合は、平坦な磁気シールド膜(磁性体薄膜)15Mを有する構造の場合よりも、インダクタンスの向上率が高いことが分かる。その理由は、3次元スパイラルインダクタの磁束集中部に磁気シールド膜(磁性体膜)15Nの凹部が配置されており、3次元スパイラルインダクタの中心領域での磁束の方向が当該凹部での磁気シールド膜15Nの磁化容易軸の方向と一致しやすいので、効率的に磁束密度を高めることができるからである。
図42のグラフによれば、平坦な磁気シールド膜(磁性体薄膜)15Mを有する構造の場合、磁気シールド膜(磁性体)を持たない構造の場合と比べて、Q値の向上率が2.8%であった。また、磁気シールド膜(凹部形状磁性体膜)15Nを有する構造の場合、磁気シールド膜(磁性体)を持たない構造の場合と比べて、Q値の向上率が6.3%であった。
次に、平面型スパイラルインダクタに対するシミュレーション結果を説明する。図43(A)および図43(B)は、このシミュレーション用の平面型スパイラルインダクタの断面を概略的に示す図である。図44は、この平面型スパイラルインダクタの斜視図であり、図43(A)および図43(B)の平面型スパイラルインダクタの断面は、図44のインダクタのB1−B2線に沿った断面である。
図43(A)および図43(B)の平面型スパイラルインダクタは、金属配線層M2,M3,M4,M5のうち金属配線層M5のみに形成されたスパイラルインダクタI5と、金属配線層M6内に形成されスパイラルインダクタI5に接続された配線65とを有する。このスパイラルインダクタI5の外形は、各辺の長さが約17μmとなる正方形状である。図43(A)の構造では、平面型スパイラルインダクタを被覆する平坦な磁気シールド膜15Mが形成されている。一方、図43(B)の構造では、平面型スパイラルインダクタを被覆し、かつ平面型スパイラルインダクタの中心領域に凹部を有する磁気シールド膜15Nが形成されている。図43(A)および図43(B)の磁気シールド膜15M,15Nの寸法および電磁気特性は、図40(A)および図40(B)の磁気シールド膜15M,15Nと同じである。
図45および図46は、1)図43(A)の磁気シールド膜(磁性体薄膜)15Mを有する構造、2)図43(B)の磁気シールド膜(凹部形状磁性体膜)15Nを有する構造、3)図43(A),(B)の平面型スパイラルインダクタを有するが、磁気シールド膜(磁性体)を持たない構造、という3種類の構造に関するシミュレーション結果を示すグラフである。図45のグラフは、平面型スパイラルインダクタのインダクタンスの周波数依存性を示しており、このグラフにおいて、横軸は周波数(単位:GHz)に、縦軸はインダクタンス(単位:nH)にそれぞれ対応している。図42のグラフは、平面型スパイラルインダクタのQ値の周波数依存性を示しており、このグラフにおいて、横軸は周波数(単位:GHz)に、縦軸は、エネルギー損失に逆比例するQ値にそれぞれ対応している。
図45のグラフによれば、磁気シールド膜15M,15Nを有する構造の場合、磁気シールド膜を持たない構造の場合と比べて、GHz帯で高いインダクタンスが得られていることが分かる。この結果は、上述の3次元スパイラルインダクタに関するシミュレーション結果と同様である。また、平坦な磁気シールド膜(磁性体薄膜)15Mを有する構造の場合、磁気シールド膜(磁性体)を持たない構造の場合と比べて、インダクタンスの向上率が4GHzで約6%であった。また、磁気シールド膜(凹部形状磁性体膜)15Nを有する構造の場合、磁気シールド膜(磁性体)を持たない構造の場合と比べて、インダクタンスの向上率が4GHzで約12%であった。
図46によれば、平坦な磁気シールド膜(磁性体薄膜)15Mを有する構造の場合、磁気シールド膜(磁性体)を持たない構造の場合と比べて、Q値の向上率が9.7%であった。また、磁気シールド膜(凹部形状磁性体膜)15Nを有する構造の場合、磁気シールド膜(磁性体)を持たない構造の場合と比べて、Q値の向上率が15.7%であった。このようにQ値が向上した理由は、磁気シールド効果により、磁気効率が向上し、さらにインダクタでの誘起磁束が広がらないので、半導体基板(たとえば、シリコン基板)などの低抵抗な箇所での渦電流損失が軽減されたからだと考えられる。
以上、各種シミュレーション結果について説明した。上記シミュレーションにより確認された磁気シールド効果は、磁気シールド膜の下方にあるインダクタの形状に限定されるものではないが、インダクタがつくる磁場分布により磁気シールド効果の程度は異なる。インダクタの誘起磁束が広がりやすく、インダクタの磁気効率が低い構造に磁気シールド膜を適用すれば、磁気シールド効果は十分に発揮されることが上記シミュレーション結果により確認された。また、Ni−Zn系フェライト膜のような高抵抗な磁気シールド膜を用いた場合には、GHz帯でも、渦電流損失が小さく、インダクタ性能(インダクタンス、Q値)を高められることが確認された。
なお、上記シミュレーションでは、単一層からなる磁気シールド膜を使用したが、たとえ、図23(I)に示した磁気シールド構造70のような多層構造を使用しても、同様のシミュレーション結果が得られることは明らかである。
図47は、同一の半導体基板20上に並列に形成された2個の3次元スパイラルインダクタを概略的に示す断面図である。これら3次元スパイラルインダクタは、それぞれ、図40(A)に示した3次元スパイラルインダクタと同じ構造を有しており、配線層M1上に形成されている。磁気シールド膜15Nにより各3次元スパイラルインダクタの磁束密度の広がりが抑制されるので、これら3次元スパイラルインダクタ間の磁気結合が生じにくくなり、クロストークの発生が抑制される。よって、3次元スパイラルインダクタ間の水平方向距離を短くし、3次元スパイラルインダクタを密に配置させることが可能である。なお、2個の3次元スパイラルインダクタが半導体基板20上に並列に形成された形態に限らず、3次元スパイラルインダクタと平面型スパイラルインダクタとが半導体基板上に並列に形成された形態や、3個以上のインダクタが半導体基板20上に並列に形成された形態もあり得る。
以上、図面を参照して本発明に係る種々の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な形態を採用することもできる。たとえば、上記実施形態では、多層配線構造を構成する層の数は4層ないし7層であったが、これに限定されるものではない。多層配線構造を構成する層の数を8層以上にしてもよい。また、第1の実施形態では、インダクタ62は2層構造を有していたが、これに限定されず、3層以上の構造を有していてもよい。
第2の実施形態では、形状加工された磁気シールド膜15A〜15Eの上に上部バッファ膜16が成膜されているが、これに限定されるものではない。図1に示した平坦面を持つ磁気シールド膜15の上に上部バッファ膜16が成膜されてもよい。
第3の実施形態では、凹部35,36,37が形成されたが、これら凹部35,36,37の位置、形状および数は、特に限定されるものではない。たとえば、凹部36のエッチング深さを、図20(B)に示した深さよりも大きくしてもよい。
また、第3の実施形態では、図23(I)に示されるようにインダクタの形成領域のみを被覆する磁気シールド構造70が形成されているが、これに限定されるものではない。磁気シールド構造は、インダクタを構成する配線の代わりに、他のノイズ発生源となり得る配線のみを被覆するように形成されてもよい。
上記第5の実施形態の半導体装置10Cは、TMR効果を利用した不揮発性メモリセルを含むものであったが、これに限定されるものではない。第5の実施形態の半導体装置は、TMR効果に限らず、一対をなす強磁性体のスピン状態の組み合わせに応じて電気抵抗が変化するという磁気抵抗効果を利用するメモリセルを含むものであればよい。たとえば、GMR(Giant MagnetoResistive:巨大磁気抵抗)効果を利用してもよい。
本発明に係る第1の実施形態の半導体装置の断面構造を概略的に示す図である。 第1の実施形態の半導体装置の製造工程を概略的に示す断面図である。 X線回折データを表すグラフである。 X線回折データを表すグラフである。 飽和磁化の酸素濃度依存性を示すグラフである。 X線回折データを表すグラフである。 Ni−Zn系フェライト/TaNとNi−Zn系フェライト/SiOの積層構造の磁気ヒステリシスの測定結果を示すグラフである。 Ni−Zn系フェライト/Tiの積層構造の磁気ヒステリシスの測定結果を示すグラフである。 X線回折データを表すグラフである。 X線回折データを表すグラフである。 X線回折データを表すグラフである。 X線回折データを表すグラフである。 図11および図12の測定の対象とされたNi−Zn系フェライト/RuとNi−Zn系フェライト/TaNの積層構造の電流−電圧特性を示すグラフである。 Ni−Zn系フェライト膜の成膜時の酸素濃度とNi−Zn系フェライト膜の(311)面のXRDピーク強度との間の関係を示すグラフである。 (311)面のXRDピーク強度と飽和磁化Msとの間の関係を示すグラフである。 Ni−Zn系フェライト/TaN積層構造の電流−電圧特性を示すグラフである。 裏面SIMSの結果を示すグラフである。 本発明に係る第2の実施形態の半導体装置の断面構造を概略的に示す図である。 (A)は、磁気シールド構造を概略的に示す図であり、(B)は、磁性細線構造の一例を概略的に示す図である。 本発明に係る第3の実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。 第3の実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。 第3の実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。 第3の実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。 本発明に係る第4の実施形態の半導体装置の構造を概略的に示す断面図である。 (A)は、メモリセルの基本構造を概略的に示す断面図であり、(B)は、(A)のメモリセルの等価回路図である。 本発明に係る第5の実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。 第5の実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。 第5の実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。 第5の実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。 第5の実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。 本発明に係る第6の実施形態の半導体装置の製造工程を概略的に示す断面図である。 (A)および(B)は、本発明に係る第7の実施形態の半導体装置の構造を概略的に示す断面図であり、(C)は、本発明に係る第8の実施形態の半導体装置の構造を概略的に示す断面図である。 図34に示したインダクタのA1−A2線に沿った概略断面図である。 インダクタの概略斜視図である。 図34に示したインダクタ上に磁気シールド膜を配置した場合のシミュレーションの結果を示す図である。 図34に示したインダクタ上に磁気シールド膜を配置した場合のシミュレーションの結果を示す図である。 図34に示したインダクタ上に磁気シールド膜を配置しない場合のシミュレーションの結果を示す図である。 図34に示したインダクタ上に低損失の磁気シールド膜を配置した場合のシミュレーションの結果を示す図である。 図34に示したインダクタ上に高損失の磁気シールド膜を配置した場合のシミュレーションの結果を示す図である。 (A)および(B)は、シミュレーション用の3次元スパイラルインダクタの断面を概略的に示す図である。 3次元スパイラルインダクタのインダクタンスの周波数依存性を示すグラフである。 3次元スパイラルインダクタのQ値の周波数依存性を示すグラフである。 (A)および(B)は、シミュレーション用の平面型スパイラルインダクタの断面を概略的に示す図である。 平面型スパイラルインダクタの斜視図である。 平面型スパイラルインダクタのインダクタンスの周波数依存性を示すグラフである。 平面型スパイラルインダクタのQ値の周波数依存性を示すグラフである。 並列に形成された2個の3次元スパイラルインダクタを概略的に示す断面図である。
符号の説明
10,10A,10B,10C,10S 半導体装置
11A トランジスタ層
11B 多層配線層
12 半導体素子
13 絶縁膜(誘電体膜)
14,14T,14H,14F,14S,14G バッファ膜
15,15H,15T,15M,15N,15F,15I,15J 磁気シールド膜
15G 磁性薄膜
150,151 磁性細線
16,16T 上部バッファ膜
20,90 半導体基板
26〜32 層間絶縁膜
62,62S インダクタ
70 磁気シールド構造
80,80A〜80C TMR素子
81,83 強磁性層
82 トンネル絶縁膜
84 書き込み配線
85 ワード線用配線
86 ビット線用配線

Claims (33)

  1. 基板と、
    前記基板の主面上に形成され、かつ配線層を含む半導体素子と、
    前記半導体素子を被覆する磁性体からなる磁気シールド膜と、
    前記半導体素子と前記磁気シールド膜との間に介在し、かつ前記磁気シールド膜の磁性体材料の拡散を防止するバッファ膜と、
    を有する半導体装置。
  2. 請求項1記載の半導体装置であって、前記磁性体は、スピネル型結晶構造を持つフェライトである、半導体装置。
  3. 請求項2記載の半導体装置であって、前記フェライトは、XFeおよびY1−nFeのうちの少なくとも一方の酸化物磁性体を主成分として含み、前記Xは、Ni、Zn、Cu、Co、MnおよびFeよりなる群から選択された1種の元素であり、前記Yは、Ni、Zn、Cu、CoおよびMnよりなる群から選択された1種の元素であり、前記Zは、Ni、Zn、Cu、CoおよびMnよりなる群から選択された1種の元素である、半導体装置。
  4. 請求項2または3記載の半導体装置であって、前記磁気シールド膜は、膜厚方向に配向した(311)面を有する、半導体装置。
  5. 請求項2から4のうちのいずれか1項に記載の半導体装置であって、前記バッファ膜は、W、Ta、TiおよびRuの中から選択された少なくとも1種の元素を含む膜である、半導体装置。
  6. 請求項2から5のうちのいずれか1項に記載の半導体装置であって、前記バッファ膜は、W、Ta、TiおよびRuの中から選択された少なくとも1種の元素の窒化膜または当該元素の酸化膜を含む、半導体装置。
  7. 請求項2または3記載の半導体装置であって、前記バッファ膜はTaNを主成分として含み、前記磁気シールド膜は、膜厚方向に配向した(311)面を有する、半導体装置。
  8. 請求項2または3記載の半導体装置であって、前記バッファ膜はTaNを主成分として含み、前記磁気シールド膜は、膜厚方向に配向した(400)面を有する、半導体装置。
  9. 請求項2または3記載の半導体装置であって、前記バッファ膜はTiを主成分として含み、前記磁気シールド膜は、膜厚方向に配向した面として、(111)面、(222)面および(333)面の中から選択された少なくとも1つを有する、半導体装置。
  10. 請求項1から9のうちのいずれか1項に記載の半導体装置であって、前記半導体素子と前記バッファ膜との間に絶縁膜が形成されている、半導体装置。
  11. 請求項10記載の半導体装置であって、前記絶縁膜に単数または複数の凹部または凸部が形成されており、前記絶縁膜の当該凹部または当該凸部の面に沿って前記バッファ膜および前記磁気シールド膜が形成されている、半導体装置。
  12. 請求項1から11のうちのいずれか1項に記載の半導体装置であって、前記磁気シールド膜を連続的に被覆する上部バッファ膜を更に備える半導体装置。
  13. 請求項1から12のうちのいずれか1項に記載の半導体装置であって、前記磁気シールド膜は、前記半導体素子の上面を選択的に被覆するように形成されている、半導体装置。
  14. 請求項13記載の半導体装置であって、前記半導体素子の配線層はインダクタを構成しており、前記磁気シールド膜は、少なくとも前記インダクタの形成領域を被覆するように形成されている、半導体装置。
  15. 請求項14記載の半導体装置であって、前記インダクタを構成する配線はスパイラル状に形成されており、前記磁気シールド膜は、前記インダクタの中心領域に凹部形状を有する、半導体装置。
  16. 請求項13記載の半導体装置であって、前記半導体素子は、前記配線層と前記配線層に電気的に接続された磁気抵抗素子とを有するメモリセルを含み、前記磁気シールド膜は、少なくとも前記メモリセルの形成領域を被覆するように形成されている、半導体装置。
  17. 基板の主面上に配線層を含む半導体素子を形成するステップと、
    前記半導体素子を被覆し、かつ磁性体材料の拡散を防止するバッファ膜を形成するステップと、
    前記バッファ膜を被覆し、かつ前記磁性体材料からなる磁気シールド膜を形成するステップと、
    を含む半導体装置の製造方法。
  18. 請求項17記載の半導体装置の製造方法であって、前記磁性体は、スピネル型結晶構造を持つフェライトである、半導体装置の製造方法。
  19. 請求項18記載の半導体装置の製造方法であって、前記フェライトは、XFeおよびY1−nFeのうちの少なくとも一方の酸化物磁性体を主成分として含み、前記Xは、Ni、Zn、Cu、Co、MnおよびFeよりなる群から選択された1種の元素であり、前記Yは、Ni、Zn、Cu、CoおよびMnよりなる群から選択された1種の元素であり、前記Zは、Ni、Zn、Cu、CoおよびMnよりなる群から選択された1種の元素である、半導体装置の製造方法。
  20. 請求項18または19記載の半導体装置の製造方法であって、前記磁気シールド膜は、膜厚方向に配向した(311)面を有する、半導体装置の製造方法。
  21. 請求項18から20のうちのいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法であって、前記バッファ膜は、W、Ta、TiおよびRuの中から選択された少なくとも1種の元素を含む膜である、半導体装置の製造方法。
  22. 請求項18から20のうちのいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法であって、前記バッファ膜は、W、Ta、TiおよびRuの中から選択された少なくとも1種の元素の窒化膜または当該元素の酸化膜を含む、半導体装置の製造方法。
  23. 請求項18または19記載の半導体装置の製造方法であって、前記バッファ膜はTaNを主成分として含み、前記磁気シールド膜は、膜厚方向に配向した(311)面を有する、半導体装置の製造方法。
  24. 請求項18または19記載の半導体装置の製造方法であって、前記バッファ膜はTaNを主成分として含み、前記磁気シールド膜は、膜厚方向に配向した(400)面を有する、半導体装置の製造方法。
  25. 請求項18または19記載の半導体装置の製造方法であって、前記バッファ膜はTiを主成分として含み、前記磁気シールド膜は、膜厚方向に配向した面として、(111)面、(222)面および(333)面の中から選択された少なくとも1つを有する、半導体装置の製造方法。
  26. 請求項17から25のうちのいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法であって、前記半導体素子を形成した後に前記半導体素子を被覆する絶縁膜を形成するステップを更に備え、前記磁気シールド膜は、前記絶縁膜を被覆するように形成される、半導体装置の製造方法。
  27. 請求項26記載の半導体装置の製造方法であって、前記絶縁膜にエッチングを施して前記絶縁膜に凹部または凸部を形成するステップを更に備え、
    前記絶縁膜の当該凹部または当該凸部の面に沿って前記バッファ膜および前記磁気シールド膜が形成されている、半導体装置の製造方法。
  28. 請求項17から27のうちのいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法であって、前記磁気シールド膜を連続的に被覆する上部バッファ膜を形成するステップを更に備える半導体装置の製造方法。
  29. 請求項17から28のうちのいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法であって、前記磁気シールド膜は、前記半導体素子の上面を選択的に被覆するように形成されている、半導体装置の製造方法。
  30. 請求項29記載の半導体装置の製造方法であって、前記半導体素子の配線層はインダクタを構成しており、前記磁気シールド膜は、少なくとも前記インダクタの形成領域を被覆するように形成されている、半導体装置の製造方法。
  31. 請求項30記載の半導体装置の製造方法であって、前記インダクタを構成する配線はスパイラル状に形成されており、前記磁気シールド膜は、前記インダクタの中心領域に凹部形状を有する、半導体装置の製造方法。
  32. 請求項29記載の半導体装置の製造方法であって、前記半導体素子は、前記配線層と、前記配線層に電気的に接続された磁気抵抗素子とを有するメモリセルを含み、前記磁気シールド膜は、少なくとも前記メモリセルの形成領域を被覆するように形成されている、半導体装置の製造方法。
  33. 請求項17から32のうちのいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法であって、前記バッファ膜および前記磁気シールド膜が400℃以下のプロセス温度で形成される、半導体装置の製造方法。
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