ところで、物品の重量が重い場合、前記取出処理において、物品載置体を上昇開始位置から上昇終了位置まで上昇させる間に、物品が収納部における物品支持部材から物品載置体に移載されることで、物品載置体に対する荷重が増加し、走行台車に立設された昇降マスト及び走行台車が収納棚側に僅かに傾倒し、突出位置にある物品載置体が出退方向で突出側(収納部の奥側)に僅かに変位することがある。
そして、物品搬送装置の傾倒現象は収納部に収納されている物品の重量が収納棚の物品支持部材から物品載置体に移行する過程で発生することから、傾倒現象が発生する瞬間には、物品の重量の一部が物品載置体に支持され、物品の残りの重量が収納棚の物品支持部材にて支持される状態となっている。したがって、物品搬送装置の傾倒現象により物品載置体が収納部の奥側に変位することで、収納部に収納されている物品に対して、物品を収納部奥側に押し込もうとする押し込み操作力が作用する。また、傾倒現象が発生する瞬間には、収納部にて物品を支持する収納棚の物品支持部材にかかる物品の重量が低下していることから、物品支持部材による水平方向の外力に対する摩擦保持力が低下した状態となっている。
したがって、物品搬送装置の傾倒現象が発生して物品載置体が物品搬送装置の傾倒量に応じた量だけ収納部の奥側に変位すると、物品に作用する収納部の奥側への押し込み操作力が、収納棚の物品支持部材による収納部の奥行き方向の操作力に対する摩擦保持力を上回って、物品が、収納棚の物品支持部材と擦れながら、物品載置体と一体状態で収納部の奥側に向かって移動することになる。
このような物品の移動による擦れの発生は、収納棚や物品の磨耗をもたらすとともに、相互の擦れにより塵埃が発生するため、特にクリーンルーム内に設置されるものにおいては品質確保の点で好ましくない現象である。
そこで、従来の物品搬送装置では、制御手段が掬い制御を実行して、取出処理にて収納部に収納されている物品を取り出すときに、突出位置にある物品載置体に対する荷重が増加しても物品載置体ができるだけ突出位置から変位しないように、昇降マストの剛性を高めることや昇降マストの取付構造を強固なものにすることや走行台車の接地安定性を向上させる等の対策をしている。
しかしながら、このような対策では、傾倒量をゼロにして物品搬送装置の傾倒現象を完全になくすことはできないため、突出位置にある物品載置体を出退方向で突出側に全く変位させないようにすることはできず、物品と収納棚との間で擦れが発生する。特に、クリーンルーム内に設置されるものである場合、天井側から床面側に向かう浄化空気の気流を確保する必要があるために、昇降マストの上端側を天井案内レール等にて天井側に連結するように構成することができず、昇降マストは、その下端部を走行台車に支持され且つ片持ち状に上方に突出する形態で設けられることになるので、昇降マストの上端側が下端部を中心に振れ易く、上記傾倒現象の発生を抑制し難いので、物品と収納棚との間で発生する擦れを抑制し難い状況にある。
しかも、先述したガラス基板容器を物品として搬送するものにおいては、最近の液晶ディスプレイやプラズマディスプレイの大画面化に対応するために物品も大型化、大重量化しており、益々傾倒現象を抑制し難くなってきており、クリーンルーム内に設置されるものであることから、物品と収納棚との擦れにより塵埃が発生する問題が顕著なものとなりつつある。
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、収納棚の収納部に収納されている物品を取り出す場合に、収納棚と物品とが擦れることを極力防止できる物品搬送装置を提供する点にある。
この目的を達成するために、本発明にかかる物品搬送装置は、物品を収納する収納部が縦横に設けられた収納棚の前面側に設定された走行経路に沿って走行自在な走行台車と、この走行台車に立設された昇降マストに沿って昇降自在で、かつ、前記収納棚側に突出する突出位置と前記走行経路側に引退する引退位置とに亘って出退自在な物品載置体と、前記収納部に収納されている物品を取り出す取出処理及び前記収納部へ物品を収納する収納処理を行うべく前記物品載置体の昇降作動及び出退作動を制御する制御手段とが設けられ、前記制御手段が、前記取出処理として、前記物品載置体を前記突出位置まで突出させて前記収納部に収納されている物品の下方空間に位置させた状態で上昇開始位置から上昇終了位置まで上昇させた後に前記引退位置まで引退させるべく前記物品載置体の昇降作動及び出退作動を制御する掬い制御を実行するように構成されているものであって、その第1特徴構成は、前記制御手段が、前記掬い制御において、前記物品載置体を前記上昇開始位置から前記上昇終了位置まで上昇させる間における特定タイミングにおいて、前記物品載置体を前記引退位置側に設定距離だけ引退させるように、前記物品載置体の昇降作動及び出退作動を制御するように構成されている点にある。
すなわち、収納部に収納された物品を取り出す取出処理において、制御手段が掬い制御を実行することで、物品載置体を上昇開始位置から上昇終了位置まで上昇させる間における特定タイミングにおいて、物品載置体を引退位置側に設定距離だけ引退させることができる。
取出処理において物品搬送装置の傾倒現象が発生すると、物品載置体が出退方向で突出側に変位することになるが、特定タイミングにおいて、物品載置体を引退位置側に設定距離だけ引退させることにより、物品載置体が出退方向で突出側への変位する変位量を、設定距離だけ引退させる引退量で相殺することができる。そして、特定タイミングを適切に選択することで、物品載置体を引退操作する期間を傾倒現象により物品載置体が突出側へ変位しようとする期間に対応させることができる。
したがって、物品搬送装置の傾倒現象が発生しても、物品載置体を引退位置側に設定距離だけ引退させることで、物品搬送装置の傾倒現象により物品載置体が収納部に対して出退方向で突出側に変位しようとしても実際に変位する量が抑制され、物品載置体の収納部に対する出退方向での位置の変化が抑制される。
要するに、物品搬送装置の傾倒による物品載置体の突出側への変位量を、特定タイミングにおける設定距離の引退量にて相殺し、物品載置体の収納部における出退方向の位置が極力変化しないようにすることで、物品が、収納部において物品載置体の出退方向に極力移動しないようにすることができる。
したがって、取出処理において、物品搬送装置の傾倒現象が発生しても、特定タイミングにおける設定距離の引退操作により物品載置体の出退方向で突出側への変位が抑制されるので、物品が収納棚と擦れながら収納部の奥側へ移動することを極力防止できる。
掬い制御の特定タイミングにおいて物品載置体を引退させる設定距離としては、概ね3[mm]〜8[mm]程度の範囲で、取り出す物品の重量や当該物品が収納されている収納部の収納棚における高さなどの諸条件から予測される取出処理における物品搬送装置の傾倒量に応じて異ならせて設定してもよいし、上記範囲における固定値を設定してもよい。
特定タイミングとしては、掬い制御により物品載置体が上昇するにつれ、収納部に収納されている物品の重量が、収納棚から物品載置体に移行し始めることにより、物品搬送装置の傾倒現象が発生して、収納部の奥側に物品が移動する時期に対応したタイミングを選択することが好ましい。
物品搬送装置の傾倒現象により収納部の奥側に物品が移動する問題は、物品と収納棚との摩擦保持力が、物品載置体が上昇するに伴って次第に減少することにより、物品載置体が物品を収納棚奥側へ押し込む押し込み操作力を下回ることにより生じると考えられることから、特定タイミングの開始時期としては、摩擦保持力が、押し込み操作力を下回るタイミング乃至その直前のタイミングを選択することが好ましい。
例えば、物品載置体が物品の底部に当接してから物品が収納棚奥側へ押し込まれるまでの物品載置体が昇降開始位置から特定距離だけ上方に位置する特定位置に位置するときを特定タイミングの開始時期として選択してもよいし、物品載置体が上昇開始位置から上昇を開始した後の経過時間が特定時間に達したときを特定タイミングの開始時期として選択してもよい。また、物品載置体に対する物品の荷重を検出する荷重検出手段を設けて、この荷重検出手段の検出情報が特定荷重を超えたときを特定タイミングの開始時期として選択してもよい。なお、特定位置・特定時間・特定荷重等のパラメータは、その最適値を実験的に求めることができる。
このように、本発明の第1特徴構成によると、収納棚の収納部に収納されている物品を取り出す場合に、収納棚と物品とが擦れることを極力防止できる物品搬送装置を得るに至った。
本発明にかかる物品搬送装置の第2特徴構成は、第1特徴構成において、前記制御手段が、前記掬い制御において、前記物品載置体を前記特定タイミングにおいて前記設定距離だけ引退させるときの出退速度が、前記物品載置体を前記上昇終了位置に上昇させた後に前記引退位置まで引退させるときの出退速度とは異なる速度となるように、前記物品載置体の昇降作動及び出退作動を制御するように構成されている点にある。
すなわち、制御手段にて掬い制御が実行されると、物品載置体は、特定タイミングにおいて前記設定距離だけ引退するが、そのときの出退速度は、物品載置体を上昇終了位置に上昇させた後に引退位置まで引退させるときの出退速度とは異なる速度であるので、各出退速度を夫々の引退作動の状況に適した出退速度に設定できる。
例えば、物品載置体を上昇終了位置に上昇させた後は、物品は、収納棚から完全に離間し、物品載置体に完全に載置支持されているので、物品載置体の挙動の影響をまともに受ける状況にある。そこで、物品が物品載置体上で安定した状態を維持できるように、過度に高速な出退速度や、出退速度の急激な加減速は避けるべきであるとして、物品載置体を上昇終了位置に上昇させた後は、引退させるときの出退速度を比較的低速に設定する。これにより、物品載置体を上昇終了位置に上昇させた後に引退させるときには、物品載置体上における物品の挙動は安定したものとなる。
一方、特定タイミングにおいて物品載置体を引退させるときには、物品は、収納棚から完全には離間しておらず、その重量の一部が収納棚に支持されているので、物品載置体の挙動の影響は緩和される状況にあり、しかも、特定タイミングにおける引退作動は極短時間で完了するものである。そこで、物品載置体が一時的に急激な速度変化をしても許容でき、また、極短時間に設定距離だけ引退させるだけの高速にする必要があるとして、特定タイミングにおいて物品載置体を引退させるときの出退速度を比較的高速に設定する。これにより、物品載置体を特定タイミングにおいて引退させるときには、物品の挙動は、収納棚に擦れ難いようなものとなる。
したがって、取出処理において物品載置体を引退作動させる場合に、その引退作動を行う目的に即した物品の挙動とすることができる。
このように、本発明の第2特徴構成によると、取出処理において物品載置体を引退作動させる場合に、出退速度を引退作動の状況に適した出退速度に設定することで、引退作動による物品の挙動を、その引退作動の目的に即したものとすることができる。
本発明にかかる物品搬送装置の第3特徴構成は、第1又は第2特徴構成において、前記制御手段が、前記掬い制御において、前記特定タイミングにおける前記物品載置体の昇降速度が、前記物品載置体を前記上昇開始位置から上昇させるときの昇降速度よりも低速となるように、前記物品載置体の昇降作動を制御するように構成されている点にある。
取出処理において、制御手段にて掬い制御が実行されると、物品載置体は、上昇開始位置から上昇終了位置まで上昇するが、この間に、収納部に収納されている物品に当接し、支持する物品の荷重を徐々に増大させながら、物品の荷重を完全に支持する状態に変化する。
物品の取出処理に要する時間の短縮化を図るためには、物品載置体の昇降速度をできるだけ高速にする必要があるが、上昇開始位置から上昇終了位置まで一様に高速で上昇させると、物品載置体が物品に当接してから物品の荷重を完全に支持する状態に変化するまでの時間が短くなり、物品搬送装置の傾倒現象による物品載置体の移動が発生する期間が短くなってしまう。そのため、特定タイミングにおいて物品載置体を設定距離だけ引退させても、物品載置体が引退作動する時期が、物品搬送装置の傾倒現象により物品が移動する時期と同期せず、物品と収納棚との擦れの発生を抑制できない可能性が高くなってしまう。
そこで、特定タイミングにおいて物品載置体を上昇させるとき昇降速度を、物品載置体を上昇開始位置から上昇させるときの昇降速度よりも低速にすることで、物品の荷重を収納棚から物品載置体にゆっくり移行させることができるので、物品搬送装置の傾倒現象による物品の移動が発生する期間を長くすることができる。
したがって、物品搬送装置の傾倒現象による物品載置体の移動を特定タイミングにおける物品載置体の移動により相殺するべく、物品搬送装置の傾倒現象により物品載置体が移動する時期と、特定タイミングにおいて物品載置体を設定距離だけ引退させる時期とを同期させやすくなり、物品載置体に支持されている物品が収納棚と擦れることを防止できない事態の発生を極力少なくすることができる。
このように、本発明の第3特徴構成によると、取出処理における昇降速度をできるだけ高速にして取出処理の短時間化を図りながら、物品が収納棚と擦れることを防止できない事態の発生を極力少なくすることができる物品搬送装置を得るに至った。
本発明にかかる物品搬送装置の第4特徴構成は、第1〜第3特徴構成のいずれかにおいて、前記制御手段が、物品の重量に応じて前記設定距離を変更するように構成されている点にある。
すなわち、物品の重量が重くなるにつれて、取出処理において傾倒する物品搬送装置の傾倒量も増大すると考えられるので、特定タイミングにおける引退操作量を一定不変のものとした場合、物品の重量が大きいときには、物品搬送装置の傾倒による物品載置体の突出側への変位量が大きくなって、特定タイミングにおける引退操作量では物品載置体の突出方向への変位量を十分に相殺するだけの引退量が得られず、物品載置体が突出側に変位することにより物品が出退方向で突出側に移動して物品が収納棚と擦れたり、物品の重量が小さいときには、物品搬送装置の傾倒による物品載置体の突出側への変位量が小さくなって、特定タイミングにおける引退操作量では物品載置体の突出方向への変位量を適度に相殺する引退量よりも過剰なものとなって、物品載置体が引退側に変位することにより物品が出退方向で引退側に移動して物品が収納棚と擦れたりする事態が生じる虞がある。
そこで、制御手段が、物品の重量に応じて設定距離を変更することで、例えば、物品が重い場合には設定距離を長くして引退操作量を大きく、また、物品が軽い場合には設定距離を短くして引退操作量を小さく、といったように、設定距離をその物品の重量に適した値にして、物品の重量に応じた適切な引退操作量とすることができ、掬い制御における特定タイミングにて物品載置体を設定距離だけ引退させる場合に、物品の重量に適した距離だけ引退させることができる。
したがって、物品の重量が異なっても、特定タイミングにおける引退操作量が、その物品の重量に応じた物品載置体の変位量に対応したものとなり、重量の異なる物品を収納部から取り出す場合でも、物品と収納棚と擦れが極力発生しないようにすることができる。
このように、本発明の第4特徴構成によると、収納部から取り出す物品の重量が異なっても、収納棚と物品とが擦れることを極力防止できる物品搬送装置を得るに至った。
本発明にかかる物品搬送装置の第5特徴構成は、第1〜第4特徴構成のいずれかにおいて、前記物品載置体が、出退操作される載置体本体に、物品を載置支持する支持体を、前記載置体本体の出退方向に沿って移動自在で、且つ、その移動方向の初期位置に復帰付勢された状態で設けて構成されている点にある。
すなわち、物品載置体の載置体本体に設けられた支持体は、載置体本体の出退方向に沿って移動自在で、且つ、その移動方向の初期位置に復帰付勢されているので、収納部に収納されている物品を取り出す取出処理を行うに当たって、突出位置の物品載置体を物品の下方空間から上昇させて物品に当接させるときには、載置体本体における初期位置に位置する支持体を物品に当接させることができる。
そして、支持体は載置体本体の出退方向に沿って移動できるので、載置体本体を特定タイミングにて設定距離だけ引退させてもその設定距離が物品搬送装置の傾倒現象による突出側への変位量に対して過不足がある場合や、特定タイミングにおける引退操作時期と物品搬送装置の傾倒現象による物品載置体の出退方向での変位時期とがずれる場合に、載置体本体が突出位置から物品載置体の出退方向に変位しても、支持体が載置体本体上において、物品載置体の突出位置からの変位量に応じた量だけ、初期位置から載置体本体の出退方向に沿って移動することにより、支持体の収納部に対する位置をできるだけ変化させないようにすることができる。
したがって、掬い制御における特定タイミングにて物品載置体を引退させる設定距離及び時期が、物品搬送装置の傾倒による物品載置体の突出側への変位を相殺するのに最適な値からずれており、そのずれ量が許容限度よりも大きい場合であっても、物品を支持する支持体が載置体本体に対して出退方向に適切な量だけ移動することで、出退方向についての物品の収納部における位置をできるだけ変化させないようにすることができる。そのため、掬い制御における特定タイミングの時期及びその特定タイミングで物品載置体を引退させる設定距離の設定許容範囲が拡大することになる。
説明を加えると、物品載置体を上昇開始位置から上昇終了位置まで上昇させる間における特定タイミングとしては、物品の荷重により物品搬送装置が傾倒する時期に同期させることが理想である。しかし、物品搬送装置の傾倒現象により物品が収納x部の奥側に移動する時期は極めて短時間であるので、現実にはそのようなタイミングを設定することは困難である。この点、物品載置体が、出退操作される載置体本体に、物品を載置支持する支持体を、前記載置体本体の出退方向に沿って移動自在で、且つ、その移動方向の初期位置に復帰付勢された状態で設けて構成されているものにおいては、物品載置体を引退させると、物品を支持している支持体を載置体本体に対して突出側へ移動させ、載置体本体だけを引退させることができるので、物品を引退側へ移動させることなく理想のタイミングより早い時期に物品載置体を引退作動させることができる。
したがって、理想のタイミングよりも早い時期に物品載置体を予め引退させておくことで、物品搬送装置の傾倒により載置体本体が突出側へ変位する際に、予め行われた引退操作により初期位置よりも突出側に位置する支持体が初期位置側乃至初期位置よりも引退側の位置に移動することで、物品搬送装置の傾倒により物品が突出側に移動することを適確に回避することができる。
また、物品載置体を理想のタイミングよりも早い時期に予め引退させておくことで、支持体を載置体本体に対して初期位置より突出側の位置に移動させて初期位置に復帰付勢させておくことができ、載置体本体が突出側へ変位しても、復帰付勢された支持体が出退方向で初期位置に向かって移動することにより、支持体の収納部における位置を維持することができる。したがって、例えば、支持体が、前記物品載置体に固定状態で設けられた弾性変形自在で且つ上下方向に肉厚を有する弾性部材の上面部に、固定状態に取り付けられているもののように、弾性部材の復元力により支持体が初期位置側へ復帰移動するものであると、載置体本体が突出側に極短時間で変位しても支持体の突出側への変位速さに対応した速さで初期位置側に復帰移動することで、載置体本体が出退方向で突出側に変位しながらも、支持体が収納部における位置を維持しながら載置体本体に対して相対移動することになり、物品が突出側に移動することをより適確に抑制できる。
このように、特定タイミングを物品搬送装置の傾倒現象に厳密に同期させることなく、理想のタイミングよりも早い時期を特定タイミングとして設定して、物品が出退方向で移動することを適確に回避することができる。
また、特定タイミングにおいて引退させる設定距離についても、物品搬送装置の傾倒量に対応させた距離にすることが理想である。しかし、物品搬送装置の傾倒量は様々な要因により変化するので理想の距離は一つの値に定まるものではない。その点、支持体が物品載置体の出退方向で移動するように構成することで、設定距離が物品搬送装置の傾倒量に厳密に対応した距離となっていなくても、支持体の移動によりその過不足が吸収され、物品が出退方向で移動することを適確に回避することができる。
このように、本発明の第5特徴構成によると、掬い制御における特定タイミングの時期及びその特定タイミングで物品載置体を引退させる設定距離を設定し易く、かつ、物品が出退方向で移動することを適確に回避できる物品搬送装置を得るに至った。
本発明にかかる物品搬送装置の第6特徴構成は、第5特徴構成において、複数の前記支持体が、平面視で分散配置された状態で前記載置体本体に設けられている点にある。
すなわち、複数の支持体を載置体本体に平面視で分散配置することで、複数の支持体で物品の重量を分担して支持すればよいので、各支持体が分担する物品の重量を小さくすることができる。したがって、複数の支持体のそれぞれを小型化して、それらを載置体本体の平面視形状に応じて分散配置することで、物品載置体の平面視形状を載置体本体の平面視形状にできるだけ近付けることができる。
そして、物品載置体の平面視形状が載置体本体の平面視形状にできるだけ近付けることで、例えば、ダウンフロー式のクリーンルーム内に設置される物品搬送装置において、載置体本体が天井側から床面側に向かう浄化空気の気流を極力遮らないような平面視形状にて構成されている場合には、載置体本体に支持体を設けることにより浄化空気の気流が遮られる領域が増加する不都合を回避できる、といったように、支持体を設けることにより物品載置体の平面視形状が載置体本体のものから変化してしまうことによる不都合を回避できる。
また、物品載置体の平面視形状を載置体本体の平面視形状にできるだけ近付けることで、支持体が物品を支持するときの物品における支持領域を、支持体を備えない従来の物品載置体で物品を支持するときの物品における支持領域にできるだけ近付けることができるので、物品を物品載置体に載置したときのバランス等の条件をできるだけ変えることなく物品載置体にて物品を載置支持することができる。
このように、本発明の第6特徴構成によると、支持体を小型化して物品載置体の平面視形状を載置体本体の平面視形状にできるだけ近付けることにより支持体の設けることの不都合を回避できる物品搬送装置を得るに至った。
本発明にかかる物品搬送装置の第7特徴構成は、第5又は第6特徴構成において、前記支持体が、前記載置体本体に固定状態で設けられた弾性変形自在で且つ上下方向に肉厚を有する弾性部材の上面部に、固定状態に取り付けられている点にある。
すなわち、支持体は、載置体本体に固定状態で設けられた弾性部材の上面部に固定状態に取り付けられており、弾性部材は弾性変形自在で且つ上下方向に肉厚を有しているので、上下方向に肉厚を有した弾性部材が物品載置体の出退方向に弾性変形することにより、支持体は、載置体本体の出退方向に沿って載置体本体上において移動することができ、また、弾性部材を弾性変形させている載置体本体と支持体との間に作用する力がなくなると、弾性体の弾性変形が回復して、支持体が初期位置に復帰する。
したがって、収納部に収納されている物品を取り出す場合において、物品載置体の上昇に伴って、初期位置の支持体が物品を支持し始めてから物品搬送装置の傾倒現象が発生して、突出位置の物品載置体が収納棚の奥側に変位すると、弾性部材が弾性変形することで、支持体は、載置体本体に対して初期位置から移動し、物品を支持したまま収納部に対する位置を維持する。こうして、物品が収納部において収納部奥側に押し込まれることを防止できる。
そして、弾性部材は、載置体本体に固定状態で設けられ、また、上面部に支持体が固定状態に設けられているので、収納部において収納棚にも支持されている物品を支持する支持体に対して物品搬送装置の傾倒現象により載置体本体が移動しようとする力により弾性変形するので、支持体を載置体本体に対して移動させるための特段の駆動手段を必要とせず、構成の簡素化を図ることができる。
さらに、弾性部材の弾性変形により支持体を移動させるので、支持体を移動させるときに載置体本体側と支持体側との間で部材の擦れが発生せず、物品載置体で塵埃の発生するおそれが少ない。
このように、本発明の第7特徴構成によると、塵埃の発生するおそれが少なく、かつ、簡素な構成により、収納棚の収納部に収納されている物品を取り出す場合に収納棚と物品とが擦れることを極力防止できる物品搬送装置を得るに至った。
本発明にかかる物品搬送装置の第8特徴構成は、第1〜第7特徴構成のいずれかにおいて、前記昇降マストが、その下端部を前記走行台車に支持され且つ片持ち状に上方に突出する形態で設けられている点にある。
すなわち、昇降マストがその下端部を前記走行台車に支持され且つ片持ち状に上方に突出する形態で設けられているので、昇降マストの上端部は下端部を中心に振れ易くなっており、昇降マストの台車に対する取付構造を強固にし、また、昇降マストの剛性を向上させても、収納棚の高所に位置する収納部に収納されている物品を取り出す場合には、物品載置体が、昇降マストの振れ易い上端側に昇降した状態となるので、物品搬送装置の傾倒現象が発生しやすい。
例えば、物品搬送装置が、ダウンフロー式のクリーンルーム内に設置される場合、天井側から床面側に向かう浄化空気の気流を確保する必要があるために、昇降マストの上端側を天井案内レール等にて天井側に連結するように構成することができず、昇降マストは、その下端部を走行台車に支持され且つ片持ち状に上方に突出する形態で設けられることになるので、物品搬送装置の傾倒現象が発生しやすい。
そして、このように物品搬送装置の傾倒現象が発生しやすいものにおいて、物品を取り出す取出処理を行う場合に、物品搬送装置の傾倒現象が発生して物品の重量の一部を支持している物品載置体が収納部奥側に変位しても、物品が収納部において収納部奥側に押し込まれることを防止できるので、本発明の効果が顕著に現れる。
このように、本発明の第8特徴構成によると、本発明の効果が顕著に現れる好適な実施形態を得るに至った。
以下、本発明にかかる物品搬送装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明に係る物品搬送装置としてのスタッカークレーンVが、物品収納設備Wに設けられている。物品収納設備Wは、清浄化された浄化空気が天井側から床側に向けて下向きに通流するダウンフロー式のクリーンルーム1内に設けて、例えば、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイに使用されるガラス基板等を積層状態で収納する物品としての容器Cを塵埃の少ない環境にて保管するようになっている。
ダウンフロー式のクリーンルーム1について説明を加えると、クリーンルーム1の側壁18の床部近くに側壁吸引部2を形成し、クリーンルーム1の天井に天井吹出部3を形成して、側壁吸引部2を通して吸引した吸引空気を天井吹出部3から吹き出す形態で、浄化空気をクリーンルーム1に循環させるクリーンルーム用循環通風手段Fを設けてある。尚、クリーンルーム1の床部は無孔状のコンクリートにて構成してある。
クリーンルーム用循環通風手段Fは、側壁吸引部2に側壁用ファンフィルタユニット4を設け、天井吹出部3にHEPAフィルタ等からなるエアーフィルタ5を並設し、その天井吹出部3の上方側に空気チャンバ室6を設けて、クリーンルーム1の下部と空気チャンバ室6とを接続流路7にて連通接続してある。また、接続流路7に、循環用送風機8をクリーンルーム1に吸引作用するように設け、さらに、接続流路7における循環用送風機8の空気吐出側の部分にプレフィルタ9を設けてある。
そして、側壁用ファンフィルタユニット4及び循環用送風機8の通風作用により、クリーンルーム1内の空気が接続流路7に吸引され、その吸引された空気が接続流路7を流動しプレフィルタ9を通過して清浄化された後、空気チャンバ室6に流入し、さらに、エアーフィルタ5を通過して清浄化された後、天井吹出部3からクリーンルーム1内に向けて下向きに吹き出されるように構成してある。
したがって、クリーンルーム1内の空気が、側壁用ファンフィルタユニット4、プレフィルタ9及びエアーフィルタ5を通過しながら上述の経路を通して循環されることにより、常に浄化空気が天井吹出部3から下方に吹き出される状態でクリーンルーム1に供給されて、クリーンルーム1内が清浄度の高い状態に維持される構成となっている。
さらに、接続流路7における循環用送風機8の吸い込み側の部分に、外気取入流路10を接続するとともに、その外気取入流路10に外気取入量調節用ダンパ11を設け、前記接続流路7における前記循環用送風機8の吐出側の部分に、排気流路12を接続するとともに、その排気流路12に排気量調節用ダンパ13を設けてある。そして、外気取入量調節用ダンパ11及び排気量調節用ダンパ13夫々の開度を調節することにより、前記クリーンルーム用循環通風手段Fにて循環されるクリーンルーム1内における浄化空気のうちの所定量を新鮮な空気と交換するように構成してある。
次に、物品収納設備Wについて説明する。
前記物品収納設備Wは、収納部14を備える物品収納棚Sと、前記物品収納棚Sの前方の走行経路15における床部を走行する走行台車44とその走行台車44に昇降自在に支持された物品移載装置46とを備えるスタッカークレーンVと、浄化空気を前記収納部14の背部側から前記走行経路15に向けて前記収納部14を通過するように流動させ且つ前記走行経路15内を下方に流動させたのち排気部22より排気するように流動させる浄化空気通風手段Bと、前記物品収納棚Sにおける前記収納部14とは空気流動不能な状態に区画され且つ前記走行経路15とは空気流動可能な状態に連通する形態で、前記収納部14の下方に前記物品収納棚Sの棚横幅方向の全長又は略全長に亘って形成される空気流動空間20と、前記スタッカークレーンVの走行方向視にて、前記走行台車44における棚横幅方向の端部側部分の上部の高さと同じ高さ又はそれよりも上方に位置し且つ前記空気流動空間20の上端側における前記走行経路15側の端部から前記走行経路15内に突出する状態で、前記物品収納棚Sの棚横幅方向の全長又は略全長に亘る状態に形成された空気案内体17とを備えて構成し、その物品収納設備Wをクリーンルーム1内に設けてある。
この実施形態では、前記物品収納棚Sを、夫々の前方側を互いに向かい合わせた状態で且つ互いの間に前記走行経路15を形成すべく間隔を隔てる状態で、前記走行経路15の車両横幅方向(棚奥行き方向と同じ方向)両方側の床部上に設けており、これらの物品収納棚Sの夫々には、物品としての容器Cを収納する収納部14を棚横幅方向及び棚上下方向に複数並べて備えてある。収納部14は、棚の高さ方向に沿って物品収納棚Sの支柱の複数箇所において左右で対を為すように設けられた物品支持部材としての支持台14Dにて容器Cの底部の左右側部を受け止め支持する状態で容器Cを収納するようになっている。
そして、このように設けた一対の物品収納棚Sを、その側周囲が上下方向の両端部が開口する矩形筒状の周壁16にて囲んであり、周壁16の下端部の開口を床部にて閉塞し、周壁16の上端部の開口を複数の収納棚用ファンフィルタユニット21にて閉塞してある。また、各物品収納棚Sの後部に、前記クリーンルーム1の天井吹出部3から吹き出された浄化空気を収納部14に案内するための流動用空間19を設けてある。
次に、前記スタッカークレーンVについて説明を加える。図1〜図3に示すように、スタッカークレーンVは、走行経路15の床面に敷設された走行レール48上を棚横幅方向に沿って走行する走行台車44に、物品移載用の前記物品移載装置46の車両走行方向(棚横幅方向と同じ方向)での両端部夫々を各別に昇降自在に案内支持する前後一対の中央支柱体45を立設してある。前後一対の中央支柱体45の夫々は、車両走行方向の両側の面を車両走行方向に膨出させた曲形状に形成してあり、前後一対の中央支柱体45の上端部同士を上部フレーム47にて連結してある。
図1及び図2に示すように、車両走行方向に沿う形状で且つ上下方向の長さが前記中央支柱体45と同じ又は略同じ長さの整流板としての補助支柱体49を、前記中央支柱体45から車両横幅方向における前記物品収納棚Sが存在する側に離れた箇所に、前記中央支柱体45が位置する側とは反対側に向く外面が平面視において車両横幅方向に膨出させた曲形状に形成された状態で設けてある。
説明を加えると、補助支柱体49は、走行台車44における支持用部分44aの車両横幅方向の中央部に立設した中央支柱体45から車両横幅方向における前記物品収納棚Sが存在する側に離れた箇所に設けられるように、走行台車44における支持用部分44aの車両横幅方向の両端部に立設してある。
また、補助支柱体49は、内面を車両走行方向及び上下方向に沿う平坦面に形成し、外面を平面視において車両横幅方向の物品収納棚Sが位置する側に円弧状に膨出させた曲形状に形成して、平面視で車両走行方向の端部側ほど漸次細くなる先細り形状で且つ車両走行方向及び上下方向に沿う偏平状に形成してある。
前記中央支柱体45を、前記物品移載装置46の車両走行方向での両端部を各別に昇降自在に案内支持するように前後一対設けてある。また、前記補助支柱体49を、中央支柱体45から車両横幅方向に離れた両側箇所の夫々設け、その左右両側の前記補助支柱体49の夫々を、前記前後一対の中央支柱体45の夫々に対応して前後一対設けてある。そして、中央支柱体45と左右両側の補助支柱体49とを複数の棒状の連結体50にて接続してあり、中央支柱体45と左右両側の補助支柱体49と複数の連結体50とで本発明の昇降マストを構成してある。このように、本実施形態では、昇降マストが、その下端部を走行台車44に支持され且つ片持ち状に上方に突出する形態で設けられている。
ちなみに、補助支柱体49を中央支柱体45よりも車両走行方向に長く形成しており、補助支柱体49の車両走行方向の内方側端部が中央支柱体45の車両走行方向の内方側端部よりも車両走行方向の内方側に位置し、補助支柱体49の車両走行方向の外方側端部が中央支柱体45の車両走行方向の外方側端部よりも車両走行方向の外方側に位置するように設けられている。
図3に示すように、物品移載装置46は、収納部14と自己との間で容器Cを移載可能に構成してあり、中央支柱体45にて案内支持される昇降台55、上下軸心周りに旋回自在な旋回台56、及び、その旋回台56上に設けられた載置体57を出退操作自在に支持するリンク機構58からなるフォーク式の移載装置に構成してある。
そして、物品移載装置46は、旋回台56の旋回により載置体57を旋回移動可能で、且つ、リンク機構58の伸縮により載置体57を昇降台55上の引退位置P0に引退させた状態(図3(a)参照)や載置体57を収納部14側の突出位置P1に突出させた状態(図3(b)参照)に切り換え可能に構成してある。
ちなみに、図2に示すように、旋回台56の旋回により載置体57の出退移動方向を走行台車44の走行方向に沿わせた状態にすることで、載置体57の出退移動方向を車両横幅方向にした状態に比べて、物品移載装置46(特に、リンク機構58や載置体57)の車両横幅方向の幅が小さくなるため、物品移載装置46を載置体57の出退移動方向が車両走行方向に沿わせた状態にしてスタッカークレーンVを走行させるように構成してある。
リンク機構58は、旋回台56の上面側の載置体57の横幅方向に並ぶ2箇所に基端側が搬送装置上下向きの軸芯50まわりで回動自在に連結している操作リンク53、この一対の操作リンク53,53の遊端側を載置体57の基端部の下面側に各別に連動させている一対の揺動リンク54を備えて構成してある。
一対の操作リンク53,53は、旋回台56の下面側に設けた出退電動モータM3によって連動させて軸芯50まわりで揺動操作されるように構成してある。各揺動リンク54は、操作リンク53の遊端側に対しては搬送装置上下向きの軸芯51まわりで、載置体57の基端側に対しては搬送装置上下向きの軸芯52まわりでそれぞれ相対回動自在に連結している。
これにより、リンク機構58は、出退電動モータM3によって一対の操作リンク53,53を連動させてそれぞれの軸芯50まわりで揺動操作し、揺動する一対の操作リンク53,53によって一対の揺動リンク54,54を介して載置体57の基端側を押し操作したり引き操作することにより、載置体57を旋回台56に対して載置体57の長手方向に出退操作する。すなわち、旋回台56の旋回操作によって載置体57の先端側が一方の物品収納棚S又は他方の物品収納棚Sの方に向くように載置体57の昇降台55に対する向き調整が行なわれた後において、図3(b)の如く載置体57の先端側が収納部14に届くように旋回台56から物品収納棚Sの方に長く突出した物品収納や物品取り出しのための突出取り付け状態と、図3(a)如く載置体57の全体が前記突出取り付け状態の場合よりも旋回台56の方に引退した物品搬送のための引退取り付け状態とに切り換え操作するようになっている。
このように、載置体57は、走行台車44aに立設された中央支柱体45及び補助支柱体49に沿って昇降自在で、かつ、物品収納棚S側に突出する突出位置P1と走行経路15側に引退する引退位置P0とに亘って出退自在に構成されており、本発明の物品載置体に相当する。
載置体57は、図4に示すように、リンク機構58が連結された基端側のベース部31と、このベース部31の左右両端部に接続された左右一対のフォーク体32(左フォーク体32L及び右フォーク体32R)と、フォーク体32の前後長手方向の途中2箇所で左フォーク体32L及び右フォーク体32Rを連結する中間連結体33Mと、フォーク体32の先端部で左フォーク体32L及び右フォーク体32Rを連結する先端連結体33Tとが連結された載置体本体30を備えている。そして、載置体57は、この載置体本体30に、物品を載置支持する支持体としてのステンレスプレート34を、以下に説明するように、載置体本体30の出退方向に沿って移動自在で、且つ、その移動方向の初期位置Pnに復帰付勢された状態で設けて構成されている
ステンレスプレート34は、載置体本体30の左フォーク体32L及び右フォーク体32Rの上面における先端部から後端部までの左右6箇所計12箇所の取り付け箇所に平面視で分散配置された状態で設けられている。
各ステンレスプレート34は、図5に示すように、ステンレス製の平板にて形成され、弾性部材としてのウレタンゴム35の上面部35Uに、裏面を接着剤により固定状態に取り付けられている。ウレタンゴム35は、弾性変形自在で且つ上下方向に肉厚Tw(本実施形態では15[mm]としている。)を有した平面視正方形状の板状に形成されている。そして、各辺がフォーク体32の横幅より若干長い平面視正方形状の外縁部36Eによりウレタンゴム取り付け用の凹入部が形成された凹入状取付具36が、載置体本体30の左右のフォーク体32の上面に溶接されており、凹入状取付具36の外縁部36Eとウレタンゴム35の外周部の前後左右箇所に隙間が形成される状態で接着剤にて凹入状取付具36にウレタンゴム35の底面が面接着されている。なお、ステンレスプレート34の上面には、容器Cの底部との間で滑りが発生しにくいように、滑り止めとして樹脂シート37を貼り付けてある。
そして、ウレタンゴム35が載置体本体30の出退方向に弾性変形することで、各ステンレスプレート34は、載置体本体30の出退方向に沿って移動でき、また、変形したウレタンゴム35の弾性力により移動方向の初期位置Pnに復帰する。
このように、載置体57が、出退操作される載置体本体30に、物品としての容器Cを載置支持する支持体としてのステンレスプレート34を、載置体本体30の出退方向に沿って移動自在で、且つ、その移動方向の初期位置Pnに復帰付勢された状態で設けて構成されている。また、支持体としてのステンレスプレート34が、平面視で分散配置された状態で載置体本体30に設けられており、さらに、載置体57に固定状態で設けられた弾性部材としてのウレタンゴム35の上面部35Uに、固定状態に取り付けられている。
図6に示すように、スタッカークレーンVは、走行台車44を走行駆動する走行用モータM1、昇降台55を昇降駆動する昇降用モータM2、旋回台56を旋回駆動する旋回用モータM3、及び、載置体57を出退駆動する出退用モータM4を備えており、これらのモータの作動は、走行台車44に搭載された制御ボックス及び昇降台55に搭載された制御ボックスに分散配置して構成されたクレーンコントローラHにて制御される。
クレーンコントローラHは、走行台車44の走行作動を制御する走行コントローラH1、昇降台55の昇降作動を制御する昇降コントローラH2、旋回台56の旋回作動を制御する旋回コントローラH3、及び、載置体57の出退作動を制御する出退コントローラH4から構成されている。これらのコントローラは相互に通信可能に接続されており、また、上位の管理コンピュータ(図示せず。)と通信コントローラH5にて赤外線による無線通信が行えるようになっている。
そして、走行コントローラH1が、走行台車44の走行方向における走行台車44と走行経路15の端部に設定された基準位置との距離を計測する走行用レーザ距離計S1の測距情報に基づいて、走行台車44の走行作動を制御し、昇降コントローラH2が、昇降台55の昇降方向における昇降台55と走行台車44との距離を計測する昇降用レーザ距離計S2の測距情報に基づいて、昇降台55の昇降作動を制御し、旋回コントローラH3が、旋回台56の旋回原点位置(載置体57の出退移動方向を走行台車44の走行方向に沿わせた旋回状態)からの正逆の旋回量を検出する旋回用ロータリエンコーダS3の検出情報に基づいて、旋回台56の旋回作動を制御し、出退コントローラH4が、載置体57の引退位置から突出位置からまでの出退位置を検出する出退用ロータリエンコーダS4の検出情報に基づいて、載置体57の出退作動を制御する。
なお、各モータは、サーボモータを用いており、上記各コントローラは、各サーボモータの作動をローカルで制御する夫々のサーボモータに対応するサーボアンプ(走行モータ用サーボアンプSA1、昇降モータ用サーボアンプSA2、旋回モータ用サーボアンプSA3、出退モータ用サーボアンプSA4)に対して、目標速度を速度指令周期(例えば、本実子形態では、10[μs]としている。)毎に指令することで、当該サーボモータを当該目標速度にて作動させることができるようになっている。
クレーンコントローラHは、制御プログラムを保存しているROM及びこの制御プログラムを実行するマイクロコンピュータ等を備えており、電源投入等によりクレーンコントローラHが起動すると、制御プログラムがマイクロコンピュータ又は付属のRAMにロードされて、マイクロコンピュータが制御プログラムを実行することにより、スタッカークレーンVの作動を制御するように構成されている。
具体的には、上位の管理コンピュータが指令する収納指令及び取出指令が指令されると、クレーンコントローラHが、当該指令にて指定された移載箇所に対応する走行位置に走行台車44を走行させる走行制御、当該指令にて指定された移載箇所に対応する昇降位置に昇降台55を昇降させる昇降制御、当該指令にて指定された移載箇所において、載置体57に載置支持されている容器Cを収納部14に卸す卸し制御、当該指令にて指定された移載箇所において、収納部14に収納されている容器Cを載置体57に載置支持させる掬い制御を実行して、走行用モータM1、昇降用モータM2、旋回用モータM3、及び、出退用モータM4の作動を制御して次の如く容器Cの収納及び取り出しを行うようになっている。
すなわち、容器Cの取り出す取出処理を行うに当たり、クレーンコントローラHが、走行制御、昇降制御、掬い制御を実行する。これにより、走行台車44の走行と、昇降台55の昇降により、旋回台56が物品収納棚Sの前面に沿って水平及び上下方向に移動して載置体57を物品取り出しするべき収納部14に移送し、旋回台56の旋回により、載置体57を物品取り出しするべき収納部14に対応した所定の位置及び取付け向きにする。次に、載置体57をリンク機構58によって突出位置P1まで突出操作し、載置体57の先端側を収納部14に収納されている容器Cの下側に入り込ませる。次に、昇降台55を上昇開始位置Pbtmから上昇させて旋回台56を上昇操作することによって載置体57を容器Cに対して接近させ、載置体57のステンレスプレート34(より正確には、ステンレスプレート34の上面に貼り付けられた樹脂シート37)が容器Cの下面に当接した後もさらに昇降台55を上昇終了位置Ptopまで上昇させることで旋回台56をさらに上昇させ、載置体57によって容器Cを収納部14の支持台14Dから押し上げ浮上させることによって容器Cを載置体57のステンレスプレート34に載置する。次に、載置体57をリンク機構58によって引退位置P0まで引退操作することにより、容器Cを収納部14から取り出し、容器Cを載置体57に載せて保持する。そして、旋回台56によって載置体57を昇降及び走行用の取付け向きまで旋回操作して物品の取出処理が完了する。
また、容器Cの収納を行うに当たり、クレーンコントローラHが、走行制御、昇降制御、卸し制御を実行する。これにより、引退位置P0の載置体57に容器Cを載せて保持している状態で、走行台車44の走行と、昇降台55の昇降とにより、旋回台56を物品収納棚Sの前面に沿って水平及び上下方向に移動して、載置体57を当該容器Cを収納するべき収納部14に移送し、旋回台56の旋回により、載置体57を収納するべき収納部14に対応した移載用の取付け向きにする。次に、載置体57をリンク機構58によって突出位置P1まで突出させ、載置体57の先端側を収納部14に入り込ませる。次に、昇降台55を下降させて旋回台56を下降操作することによって載置体57を収納部14に対して接近させ、載置体57に載っている容器Cの底部が収納部14の支持台14Dに当接した後もさらに昇降台55を下降させて旋回台56を若干下降操作することによって、載置体57を容器Cから下方に離間させる。これにより、容器Cを収納部14の支持台14Dに載置し、容器Cを収納部14に収納する。次に、載置体57をリンク機構58によって引退位置P0まで引退操作し、載置体57を旋回台56によって昇降及び走行用の取付け向きに旋回操作して物品の収納処理を完了する。
このように、クレーンコントローラHは、収納部14に収納されている容器Cを取り出す取出処理及び収納部14へ容器Cを収納する収納処理を行うべく載置体57の昇降作動及び出退作動を制御し、また、取出処理として、載置体57を突出位置P1まで突出させて収納部14に収納されている物品の下方空間に位置させた状態で上昇開始位置Pbtmから上昇終了位置Ptopまで上昇させた後に引退位置P0まで引退させるべく載置体57の昇降作動及び出退作動を制御する掬い制御を実行するように構成されている。したがって、クレーンコントローラHは、本発明の制御手段として機能している。
そして、クレーンコントローラHは、上記掬い制御において、載置体57を上昇開始位置Pbtmから上昇終了位置Ptopまで上昇させる間における特定タイミングTにおいて、載置体57を引退位置P0側に設定距離Lpullだけ引退させるように、載置体57の昇降作動及び出退作動を制御するように構成されている。
また、クレーンコントローラHは、掬い制御において、載置体57を特定タイミングTにおいて設定距離Lpullだけ引退させるときの出退速度−Vh2が、載置体57を上昇終了位置Ptopに上昇させた後に引退位置P0まで引退させるときの出退速度−Vh1とは異なる速度となるように、載置体57の昇降作動及び出退作動を制御するように構成されている。
さらに、クレーンコントローラHは、掬い制御において、特定タイミングTにおける載置体57の昇降速度+Vv2が、載置体57を上昇開始位置Pbtmから上昇させるときの昇降速度+Vv1よりも低速となるように、載置体57の昇降作動を制御するように構成されている。
以下、クレーンコントローラHが実行する上記の掬い制御について、図7のフローチャートに基づいて詳しく説明する。
クレーンコントローラHは、掬い制御では、まず、ステップ#1〜ステップ#3で、載置体57を突出位置P1まで突出させる。この処理は、出退コントローラH4が、出退モータ用サーボアンプSA4に対して出退速度+Vh1(載置体57が突出作動する方向を正としている。以下同じ。)に対応した速度指令を、出退用ロータリエンコーダS4の検出情報が予め設定された突出位置P1に対応する値となるまで、継続して出力することにより行われる。本実施形態では、出退速度+Vv1を約+1500[mm/秒]に設定している。
載置体57が突出位置P1まで突出すると、載置体57の突出作動は停止し、ステップ#4で載置体57の上昇操作が開始される。この処理は、出退コントローラH4が昇降コントローラH2に対して出退完了信号を送信し、これを受信した昇降コントローラH2が、昇降モータ用サーボアンプSA2に対して昇降速度+Vv1(載置体57が上昇作動する方向を正としている。以下同じ。)に対応した速度指令を指令し始めることにより行われる。
ステップ#5及びステップ#6で、載置体57が昇降速度+Vv1で上昇するうちに載置体57が減速上昇位置Pslowに位置すると、昇降速度が+Vv2に減速される。この処理は、昇降コントローラH2が、昇降用レーザ距離計S2の測距情報を監視しておき、測距情報が予め設定してある減速上昇位置Pslowを示す値に一致した後は、昇降モータ用サーボアンプSA2に対して昇降速度+Vv1に対応した速度指令に代えて昇降速度+Vv2に対応した速度指令を指令することにより行われる。なお、本実施形態では、昇降速度+Vv1を約+12[mm/秒]、昇降速度+Vv2を約+4[mm/秒]に設定している。
ステップ#7〜ステップ#9で、載置体57が昇降速度+Vv2で上昇するうちに載置体57がフォーク補正上昇位置Ppullに位置すると、出退速度−Vh2で設定距離Lpullだけ載置体57を引退させる。この処理は、昇降コントローラH2が昇降用レーザ距離計S2の測距情報を監視しておき、測距情報が予め設定してあるフォーク補正上昇位置Ppullを示す値に一致すると、昇降コントローラH2が出退コントローラH4に対してフォーク補正位置到着信号を送信し、これを受信した出退コントローラH4が、出退モータ用サーボアンプSA4に対して出退速度−Vh2に対応した速度指令を、出退用ロータリエンコーダS4の検出情報が突出位置P1に対応する値から設定距離Lpullに対応する値だけ引退側に変化した値になるまで、継続して出力することにより行われる。本実施形態では、後述する実験結果に基づいて、フォーク補正上昇位置Ppullを上昇開始位置Pbtmより60[mm]上方の位置に設定し、出退速度−Vv2を約−2000[mm/秒]に、設定距離Lpullを6[mm]に設定している。
なお、載置体57のフォーク体32は自然状態で先端がベース部32よりも高くなるように取り付けられているため、載置体57がフォーク補正上昇位置Ppullに上昇するまでに、底面が水平姿勢となる状態で収納部14に収納されている容器Cの底部には、先ず、載置体57におけるフォーク体32の先端が当接し、その後、載置体57の上昇に伴いフォーク体32の姿勢が水平に向かって移行することで載置体57におけるフォーク体32の根元側が容器Cの底部に当接する。したがって、容器Cが載置体57に支持されて浮上するまでの期間(後述する当接時刻tt〜浮上時刻tu)は、載置体57におけるフォーク体32の先端は、容器Cの底部に当接したまま高さが変化しない。このため、載置体57が上昇終了位置Ptopまで上昇して容器Cが収納部14の支持台14Dから浮上した状態となるまでには、載置体57の昇降位置は変化するが載置体57におけるフォーク体32の先端の高さは、容器Cの底部に当接したまま変化しない期間が存在する(図9参照)。
ステップ#11及びステップ#12で、載置体57が昇降速度+Vv2で上昇するうちに載置体57が上昇終了位置Ptopに位置すると、載置体57の昇降作動を停止させる。この処理は、昇降コントローラH2が、昇降用レーザ距離計S2の測距情報を監視しておき、測距情報が予め設定してある上昇終了位置Ptopを示す値に一致すると、昇降モータ用サーボアンプSA2に対して昇降速度+Vv2に対応した速度指令に代えて昇降速度0に対応した速度指令を指令することにより行われる。
ステップ#13〜ステップ#15で、載置体57を引退位置P0まで引退させる。この処理は、昇降コントローラH2が昇降用レーザ距離計S2の測距情報を監視しておき、測距情報が予め設定してある上昇終了位置Ptopを示す値に一致すると、昇降コントローラH2が出退コントローラH4に対して上昇完了信号を送信し、これを受信した出退コントローラH4が、出退モータ用サーボアンプSA4に対して出退速度−Vh1に対応した速度指令を、出退用ロータリエンコーダS4の検出情報が予め設定された引退位置P0に対応する値となるまで、継続して出力することにより行われる。
上記掬い制御において昇降コントローラH2が昇降モータ用サーボアンプSA2に指令する速度指令及び出退コントローラH4が出退モータ用サーボアンプSA4に指令する速度指令のタイミングチャートは夫々図8の(a)及び(b)に示すようになる。
時刻tAから時刻tBまで出退コントローラH4が出退速度+Vh1に対応する速度指令を出退モータ用サーボアンプSA4に出力し、時刻tBから時刻tCまで昇降コントローラH2が昇降速度+Vv1に対応する速度指令を昇降モータ用サーボアンプSA2に出力し、時刻tCから時刻tDまで昇降コントローラH2が昇降速度+Vv2に対応する速度指令を昇降モータ用サーボアンプSA2に出力し、時刻tDから時刻tEまで出退コントローラH4が出退速度−Vh1に対応する速度指令を出退モータ用サーボアンプSA4に出力する。
そして、昇降コントローラH2が、時刻tCから時刻tDまで昇降指令を指令している期間内に、昇降用レーザ距離計S2の測距情報がフォーク補正上昇位置Ppullを示す値に一致したことを判別すると、昇降コントローラH2が出退コントローラH4に対してフォーク補正位置検出情報を送信し、これを受信した出退コントローラH4がその時刻t1から出退速度−Vh2に対応する速度指令を出退モータ用サーボアンプSA4に出力し始めて、出退用ロータリエンコーダS4の検出情報が突出位置P1に対応する値から設定距離Lpullに対応する値だけ引退側に変化した値になると、出退速度−Vh2に対応する速度指令の出力を停止する。この時刻を図中で時刻t2にて示している。
昇降コントローラH2及び出退コントローラH4がこれらの速度指令を対応するサーボアンプに出力することにより載置体57が昇降作動及び出退作動したときの、載置体本体30におけるフォーク体32の先端部分は、図9に示すように、点A(時刻tA)→点B(時刻tB)→点C(時刻tC)→点D(時刻tD)→点E(時刻tE)の軌跡をたどる。
なお、図9では、紙面左側がスタッカークレーンVの走行経路15側であり、紙面右側が、取出処理対象の物品が収納されている収納部14がある収納棚S側である。また、紙面左から右へ向かう出退方向(突出方向)が正の値の速度指令による出退方向に対応し、紙面下から上へ向かう昇降方向(上昇方向)が正の値の速度指令による昇降方向に対応している。
図8及び図9における時刻ttは載置体本体30におけるフォーク体32の先端部分が容器Cの底部に当接する時刻であり、時刻tuは容器Cが収納部14の支持台14Dから浮上する時刻である。時刻ttから時刻tuまでの間は、載置体57が上昇している(昇降台55が上昇している)が載置体57の載置体本体30におけるフォーク体32の先端は容器Cの底部に当接したまま上昇しない期間である。
図9における点Aは、図7のステップ#1の処理実行時に対応し、載置体57が掬い制御実行前の引退位置P0に位置するときのフォーク体32の先端の位置である。点Bは、図7のステップ#3及びステップ#4の処理実行時に対応し、載置体57が上昇開始位置Pbtmに位置するときのフォーク体32の先端の位置である。点Cは、図7のステップ#6の処理実行時に対応し、載置体57が減速上昇位置Pslowに位置するときのフォーク体32の先端の位置である。点Dは、図7のステップ#12及びステップ#13の処理実行時に対応し、載置体57が上昇終了位置Ptopに位置するときのフォーク体32の先端の位置である。点Eは、図7のステップ#15の処理実行時に対応し、載置体57が掬い制御実行後の引退位置P0に位置するときのフォーク体32の先端の位置である。
図8及び図9からも分かるように、クレーンコントローラHは、載置体57を上昇開始位置Pbtmから上昇終了位置Ptopまで上昇させる間(時刻tBから時刻tDまでの期間)において載置体57を出退速度−Vh2にて設定距離Lpullだけ引退させる特定タイミングTとして、載置体57の昇降高さがフォーク補正上昇位置Ppullに位置する時刻t1から始まる期間(時刻t1から時刻t2までの期間)が設定されている。なお、特定タイミングTの長さは、載置体57が設定距離Lpullだけ出退速度−Vh2にて出退するのに要する時間である。
また、載置体57を設定距離Lpullだけ引退させるときの時刻t1から時刻t2における出退速度−Vh2、すなわち、特定タイミングTにおける出退速度−Vh2は、載置体57を上昇終了位置Ptopに上昇させた後に引退位置P0まで引退させるときの時刻tDから時刻tEにおける出退速度−Vh1より高速となっている。
さらに、載置体57を特定タイミングTにおいて昇降させるときの時刻t1から時刻t2における昇降速度+Vv2は、載置体57を上昇開始位置Pbtmから上昇させるときの時刻tBから時刻tCにおける昇降速度+Vv1よりも低速となっている。
図10(b)に示すように、特定タイミングTにおいて載置体57を引退させない場合は、図10(a)に示すように、時刻ttでフォーク体32の先端が容器Cの底部に当接したのち、容器Cの重量が載置体57に移行するにつれて、スタッカークレーンVが傾倒し始め、ある傾倒量以上になると、載置体57と容器Cとが収納部14の奥側に変位し始め、これにより、容器Cは支持台14Dと擦れ始める。そして、時刻tuで容器Cが支持台14Dから浮上すると、フォーク体32の先端は、載置台57の上昇とスタッカークレーンVの傾倒による載置台57の突出側への変位とが組み合わさった作動による軌跡を描く。その後、載置体57の上昇作動が進行するに伴ってスタッカークレーンVの傾倒による載置台57の突出側への変位も進行し、時刻tdで載置体57の上昇作動が終わると突出側への変位も終了し、フォーク体32の先端は点D0に至る。
このように、掬い処理で載置体57を特定タイミングで引退させなければ、フォーク体32の先端は、突出位置P1を維持したまま載置体57が真上に上昇したとした場合のフォーク体32の先端位置(図中の点D)よりも、載置台57がスタッカークレーンVの傾倒により収納部14の奥側に変位した分だけ突出側に位置することになる。そして、載置体57が上昇終了位置Ptopまで上昇したときにフォーク体32の先端が点Dに位置するためには、スタッカークレーンVの傾倒による載置体57の突出側への変位量に相当する設定距離Lpullだけ引退側に出退操作しなければならないことが示されている。
図11(b)に示すように、載置体57を設定距離Lpullだけ引退させ始める時刻t1が早過ぎる場合、つまり、フォーク補正上昇位置Ppullが適正な位置よりも低く設定されている場合、フォーク体32の先端は、例えば、図11(a)に示すように、時刻ttで容器Cの底部に当接したのち、容器Cの重量が載置体57に移行するにつれて、スタッカークレーンVが傾倒して載置体57が突出側に変位するよりも先に、載置体57が引退方向に引退作動し始める。つまり、時刻t1で載置体57が引退操作され始めた後、容器Cに作用する載置体57による引退操作力が、容器Cと収納部14の支持台14Dとの摩擦保持力を上回ると、載置体57と容器Cとが収納部14の手前側(出退方向で引退側)に変位し始め、これにより、容器Cは支持台14Dと擦れ始める。そして、時刻tuで容器Cが支持台14Dから浮上すると、時刻t2で引退作動が終了するまで、フォーク体32の先端は、載置台57の上昇作動と引退作動との組み合わさった作動による軌跡を描く。これと前後して、スタッカークレーンVが傾倒し始めるので、載置台57は収納部14の奥側(出退方向で突出側)に変位し始める。したがって、フォーク体32の先端は、載置台57の上昇作動と突出側への変位とが組み合わさった作動による軌跡を描きながら時刻tdで点Dに至る。
図12(b)に示すように、載置体57を設定距離Lpullだけ引退させ始める時刻t1が遅過ぎる場合、つまり、フォーク補正上昇位置Ppullが適正な位置よりも高く設定されている場合、フォーク体32の先端は、例えば、図12(a)に示すように、時刻ttで容器Cの底部に当接したのち、容器Cの重量が載置体57に移行するにつれて、載置体57が引退方向に引退作動し始めるよりも先に、スタッカークレーンVが傾倒して載置体57が突出側に変位する。つまり、スタッカークレーンVが傾倒し始め、ある傾倒量以上になると、載置体57と容器Cとが収納部14の奥側に変位し始め、これにより、容器Cは支持台14Dと擦れ始める。その後、時刻t1で載置体57が引退操作され始めるので、容器Cが支持台14Dと擦れながら突出側へ変位する距離が抑制される。その後、時刻tuで容器Cが支持台14Dから浮上すると、時刻t2で引退作動が終了するまで、フォーク体32の先端は、載置台57の引退作動と上昇作動とスタッカークレーンVの傾倒による突出側への変位とが組み合わさった作動による軌跡を描きなが移動し、時刻t2で引退作動が終了した後は、載置体57の上昇作動とスタッカークレーンVの傾倒による突出側への変位とが組み合わさった作動によるに軌跡を描きながら時刻tdで点Dに至る。なお、図12では、載置体57が上昇終了位置Ptopに位置する時刻tdと引退作動が完了する時刻t2とが一致する程度に、特定タイミングTが適正時期より遅い例を示している。
以上のように、載置体57を設定距離Lpullだけ引退させ始める時刻t1が早過ぎる場合は図11で示すように、容器Cが支持台14Dと擦れながら載置体57の出退方向で引退側に移動し、遅過ぎる場合は図12で示すように、容器Cが支持台14Dと擦れながら載置体57の突出方向で引退側に移動する。また、設定距離Lpullが適切な距離よりも長過ぎる場合や短過ぎる場合も、上昇作動中の引退操作量が、スタッカークレーンVの傾倒による載置体57の変位量に対して過不足し、容器Cが支持台14Dと擦れながら載置体57の突出方向で引退側に移動する。
本実施形態では、容器Cを支持する支持体としての複数のステンレスプレート34が、ウレタンゴム35の弾性変形により載置体57の出退方向に移動自在でかつ初期位置Pnに復帰付勢された状態で、一対のフォーク体32に平面視で複数箇所に分散配置させて設けられているので、特定タイミングTの時期や設定距離Lpullが最適な値でないために、上昇作動中の引退操作量が、スタッカークレーンVの傾倒による載置体57の変位量に対して過不足する場合でも、ステンレスプレート34が載置体本体30上で出退方向に移動することで、過不足する引退操作量を吸収及び補完することができる。
すなわち、図13(a)に示すように、載置体57を突出位置P1にして、収納部14に収納されている容器Cの下方空間に載置体57が位置する状態にしてから載置体57の上昇を開始させると、フォーク体32の先端が時刻ttに容器Cの底部に当接する。このとき、初期位置Pnにあるステンレスプレート34が容器Cの底部に当接する。
そして、載置体57を設定距離Lpullだけ引退させ始める時刻t1が適切な特定タイミングTにおけるものより早過ぎる又は遅過ぎるために、載置体57が出退方向で突出側や引退側に変位量Lだけ変位しても、図13(b)に示すように、複数のステンレスプレート34に対応する各ウレタンゴム35が変位量Lに相当する量だけ弾性変形することで、ステンレスプレート34の容器Cに対する支持位置を保持したまま載置体本体30が変位位置P1´に向かって収納部14の奥側へ移動することを許容することができる。ちなみに、図13(b)は、載置体57における載置体本体30のフォーク体32の先端が容器Cに当接した後に載置体57を引退操作したところ、引退操作量が不足していた又は引退操作する時期が最適でなかったために、スタッカークレーンVの傾倒により載置体57が出退方向で突出側に変位量Lだけ変位した場合を示している。
したがって、特定タイミングTの時期や設定距離Lpullが最適な値でないために、上昇作動中の各時刻における引退操作量が、スタッカークレーンVの傾倒による載置体57の変位量に対して過不足する場合でも、ステンレスプレート34が載置体本体30上で出退方向に移動することで、過不足する引退操作量を吸収及び補完できるので、容器Cが支持台14Dと擦れながら出退方向に移動することを極力防止できる。
また、特定タイミングを厳密に理想のタイミングに合わすことが困難であり、しかも、載置体57を引退操作する速さは、容器CがスタッカークレーンVの傾倒により押し込み操作される速さに比べて遅く、しかも、ウレタンゴム35の弾性復帰によりステンレスプレート34が出退方向において初期位置Pnに向かって移動操作される速さより遅いことに鑑みれば、特定タイミングとして、理想のタイミングよりも意識的に早い時期に設定することにより、敢えて図13(b)に示す状態を現出させることが望ましい。
すなわち、ステンレスプレート34が載置体本体30に対して出退方向で移動自在に設けられているので、図13(a)に示す状態から載置体57を上昇させると、収納部14に収納されている容器Cの重量が、突出位置P1に位置する載置体57の上昇に伴って載置体57に次第に移行する過程で、スタッカークレーンVが、当該収納部14が設けられた物品収納棚Sに対して僅かに傾倒し、図13(b)に示すように、載置体57は突出側に変位する。スタッカークレーンVの傾倒現象が生じる初期段階では、ステンレスプレート34を介して容器Cに作用する収納部14の奥側への押し込み操作力は、収納部14の支持台14Dによる摩擦保持力を下回っているので、ウレタンゴム35が弾性変形することで、ステンレスプレート34が容器Cを載置支持する位置を保持したまま載置体本体30だけが突出側に変位する。
そして、取出処理行う場合に、突出位置P1まで突出させた載置体57を上昇開始位置から上昇終了位置まで上昇させる間における早い時期において、載置体57を引退位置P0側に設定距離Lpullだけ引退させると、ウレタンゴム35が弾性変形することで、ステンレスプレート34が載置体本体30に対して初期位置Pnより引退側の位置から突出側の位置まで移動する。これにより、図13(c)に示すように、ウレタンゴム35が図13(b)とは反対方向に弾性変形した状態となり、載置体本体30に対して初期位置Pnから突出側に移動した状態のステンレスプレート34にて容器Cを支持させることができる。
その後、載置体57を上昇させるに伴って容器Cに作用する収納部14の奥側への押し込み操作力が、収納部14の支持台14Dによる摩擦保持力を上回ると、スタッカークレーンVが一気に傾倒して、載置体57は極短い時期に出退方向で突出側に変位する。これと略同時期に、弾性変形しているウレタンゴム35の復元力によりステンレスプレート34が載置体57の突出側への変位速さに対応した速さで初期位置Pn側に復帰移動するので、図14(d)に示すように、載置体本体30が出退方向で突出側に変位しながらも、ステンレスプレート34が載置体本体30に対して相対移動することで収納部14における位置を維持することになり、図14(e)に示すように、容器Cの収納部14における出退方向の位置を図13(a)に示す位置にて維持することができる。したがって、スタッカークレーンVの傾倒により容器Cが収納部14の奥側へ押し込まれて収納部14の支持台14Dとの間で擦れが発生することを適確に防止できる。
以上のように、載置体57を適切な特定タイミングTにおいて適切な設定距離Lpullだけ引退させることで、図13及び図14に示すように、収納部14における支持台14Dに支持されている容器Cを棚奥行き方向で極力移動させずに載置体57を上昇させて、容器Cが支持台14Dに擦れないようにしながら容器Cを収納部14から取り出すことができる。
そして、本実施形態では、実験結果に基づき、重量が800[kg]及び600[kg]の容器Cについての取出処理における掬い制御での適切な特定タイミングT及び適切な設定距離Lpullを決定している。
すなわち、重量が800[kg]の容器Cについて、補正用の引退操作を開始する載置体57の昇降位置であるフォーク補正上昇位置Ppullを10[mm]ずつ異ならせながら、設定距離Lpullとして−4[mm]だけ出退操作した場合と、−6[mm]だけ出退操作した場合における、容器Cの滑動距離(支持台14Dと擦れながら移動する距離)を計測し、また、重量が600[kg]の容器Cについて、補正用の引退操作を開始する載置体57の昇降位置であるフォーク補正上昇位置Ppullを10[mm]ずつ異ならせながら、設定距離Lpullとして−6[mm]だけ出退操作した場合における、容器Cの滑動距離を計測したところ、図15の表に示す結果を得た。
図15に示す実験結果に基づいて、本実施形態では、フォーク補正上昇位置Ppullを上昇開始位置Pbtmから上側に60[mm]の位置に設定し、設定距離Lpullを、−6[mm]に設定している。このように設定することで、容器Cの重量が800[kg]である場合及び容器Cの重量が600[kg]である場合のいずれにおいても、取出処理における容器Cの滑動距離が極力抑制されることが確認できた。
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
(1)上記実施形態では、制御手段が、特定タイミングにおいて、物品載置体を引退位置側に、物品の重量に拘らず同じ設定距離だけ引退させるように、物品載置体の昇降作動及び出退作動を制御するように構成されているものを例示したが、これに代えて、制御手段が、特定タイミングにおいて、物品の重量に応じて異なる設定距離だけ引退させるように、物品載置体の昇降作動及び出退作動を制御するように構成されているものであってもよい。
この場合、例えば、収納部に収納されている物品の重量を管理する収納状態管理手段を設けて、制御手段が、取り出し対象の物品についての物品重量情報を前記収納状態管理手段から取得し、当該物品の重量に対応した設定距離をテーブル参照方式等にて取得するように構成されているものが考えられる。
(2)上記実施形態では、掬い制御において、物品載置体を特定タイミングにおいて設定距離だけ引退させるときの出退速度が、物品載置体を上昇終了位置に上昇させた後に引退位置まで引退させるときの出退速度よりも高速となるように、物品載置体の昇降作動及び出退作動を制御するように構成されているものを例示したが、これに代えて、掬い制御において、特定タイミングにおいて設定距離だけ引退させるときの出退速度と、物品載置体を上昇終了位置に上昇させた後に引退位置まで引退させるときの出退速度とを同じにしてもよい。
(3)上記実施形態では、制御手段が、掬い制御において、特定タイミングにおける物品載置体の昇降速度が、物品載置体を上昇開始位置から上昇させるときの昇降速度よりも低速となるように、物品載置体の昇降作動を制御するように構成されているものを例示したが、これに代えて、制御手段が、掬い制御において、物品載置体を上昇開始位置から上昇終了位置まで一定の昇降速度となるように物品載置体の昇降作動を制御するように構成されているものであってもよい。
(4)上記実施形態では、物品搬送装置が、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイに使用されるガラス基板等を積層状態で収納する容器を物品として搬送するものを例示したが、他のものを物品として搬送するものであってもよい。
(5)上記実施形態では、弾性部材が、平面視矩形状で厚みが15[mm]のウレタンゴムにて構成されたものを例示したが、弾性部材の材質はウレタンゴムに限らず、取出処理において物品載置体が突出位置から収納部奥側に変位する量や物品の重量に応じて適宜選択可能である。弾性部材の形状としては、平面視円形・楕円形・三角形等様々なものが考えられる。
(6)上記実施形態では、支持体が、ステンレスプレートにて構成されたものを例示したがこれに限らず、支持体の材質及び形状は種々選択可能である。
(7)上記実施形態では、物品載置体がフォーク体を備えて構成されたものを例示したが、これに限らず、物品載置体の具体構成は種々選択可能である。
(8)上記実施形態では、昇降マストが走行台車の走行方向で前後一対の2本設けられたものを例示したが、これに限らず、昇降マストが1本設けられたものであってもよい。
(9)上記実施形態では、支持体が載置体本体に固定状態で設けられた弾性変形自在で且つ上下方向に肉厚を有する弾性部材の上面部に、固定状態に取り付けられていることにより、出退操作される載置体本体の出退方向に沿って移動自在で、且つ、その移動方向の初期位置に復帰付勢された状態で設けられたものを例示したが、これに限らず、例えば、物品載置体が、載置体本体に固定状態で設けられたスライド基台と、このスライド基台の上部において、ベアリング等を介して載置体本体の出退方向に沿って移動自在な支持体としてのスライドテーブルとを備え、このスライドテーブルを初期位置に復帰付勢する付勢ばねにてスライド基台とスライドテーブルとを連結して構成されたものであってもよい。
(10)上記実施形態では、物品搬送装置が、クリーンルームに設置されたものを例示したが、クリーンルームでない屋内環境に設置されたものであってもよい。