JP2009262154A - 塗膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上記目的を達成するために、本発明は、塗料吐出用のスリットを設けたスリットダイコータ口金を用いて基材表面に塗料を塗布し、塗膜を形成する塗膜の製造方法において、
上記塗料の動的粘度をμ、上記基材と上記口金との相対速度をV、上記塗料の動的表面張力をσとした際に、下記式(1)で得られるキャピラリー数(Ca)と、
Ca=μ・V/σ (1)
上記口金の下端面と上記基材表面との間隔である塗布ギャップをTとし、塗膜の塗布時のウェット膜厚をtとした際に、T/tで得られる無次元膜厚(X)とが、下記式(2)
Ca≦0.0651X−0.6669 (2)
および、下記式(3)
Ca≦−0.0005Ln(X)+0.0108 (3)
のいずれかを満足するように設定されて塗膜が形成されることを特徴とする塗膜の製造方法を提供する。
【選択図】 図1
Description
このうち、スピンコータを用いる方法は、半導体ウエハのフォトレジスト塗布に広く用いられている方法であり、回転する被塗工材の表面中央に塗料を滴下することによって塗膜を形成することができる。そして、この方法により得られる塗膜は塗料の種類をこの方法に適したものに設定することにより、被塗工材の全範囲にわたって膜厚をかなり精度良く均一化できる。しかしながら、所定の膜厚の塗膜を得るための塗料の使用量が著しく多く、不経済である。また、被塗工材のエッジ部や裏面に塗料が付着したり、装置内に飛散した塗料がゲル化或いは固形化することがあり、工程の安定性、清浄性に欠けるので、塗工製品の品質低下の原因になってしまう。
また、バーコータを用いる方法は、ロッドに細いワイヤを巻いたバーを用いて被塗工材に塗料を塗布する方法である。この方法ではロッドに巻かれたワイヤが被塗工材に接するため塗膜にスジが入り易いという不都合がある。
ダイコータは、従来から厚膜塗工や、高粘度塗料を連続塗布する用途に広く採用されており、ダイコータを用いて被塗工材塗膜を形成する場合には特許文献4、特許文献5、および特許文献6に見られるようにカーテンフロー法、押出法、ビード法などの塗工方法が知られる。中でも上記ビード法は、ダイコータの口金に設けられたスリットから塗料を吐出して、口金と一定の間隔を保って相対的に走行する被塗工材との間に塗料ビードと呼ばれる塗料溜りを形成し、この状態で被塗工材の走行に伴って塗料を引き出して塗膜を形成する。そして、塗膜形成により消費される量と同量の塗料をスリットから供給することにより塗膜を連続的に形成するビード法を採用すれば、形成された塗膜は膜厚の均一性をかなり高精度に達成できる。また、塗料の無駄がほとんどなく、また、スリットから吐出されるまで塗料送液経路が密閉されているのであるから、塗料の変質、異物の混入を防止でき、得られる塗膜の品質を高く維持できる。
上記塗料の動的粘度をμ、上記基材と上記口金との相対速度をV、上記塗料の動的表面張力をσとした際に、下記式(1)で得られるキャピラリー数(Ca)と、
Ca=μ・V/σ (1)
上記口金の下端面と上記基材表面との間隔である塗布ギャップをTとし、塗膜の塗布時のウェット膜厚をtとした際に、T/tで得られる無次元膜厚(X)とが、下記式(2)
Ca≦0.0651X−0.6669 (2)
および、下記式(3)
Ca≦−0.0005Ln(X)+0.0108 (3)
のいずれかを満足するように設定されて塗膜が形成されることを特徴とする塗膜の製造方法を提供する。
本発明者等は、ダイコータ口金の下端面と基材表面に形成される塗料ビードを安定化させることにより、塗膜表面に発生する横スジムラを大幅に低減させることができる点に着目し、塗料ビードを安定化させるための条件を種々検討した結果、塗料の動的粘度、塗料の動的表面張力、および基材とダイコータとの相対速度により決定するキャピラリー数と、ダイコータの下端面と基材との間の距離である塗布ギャップ、および塗膜のウェット膜厚により決定する無次元膜厚とを所定の範囲とすることにより、大幅に横スジムラを低減させることができることを見いだし、本発明を完成するに至ったものである。
以下、本発明の塗膜の製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。
本発明においては、このような塗料ビードの安定化のためのパラメータとして、まずキャピラリー数(Ca)に着目する。
キャピラリー数(Ca)は、下記式(1)で示されるものである。
Ca=μ・V/σ (1)
ここで、μは塗料の動的粘度を示し、Vは基材と口金との相対速度を示し、σは塗料の動的表面張力を示すものである。一般的には、塗料ビードの安定化の観点からは、塗料の動的粘度μは低く、かつ塗料の動的表面張力σは高い方が、塗料ビードの形状を維持するうえで好ましいといえる。また、基材と口金の相対速度Vは、遅いほうが塗料ビードの形状の安定性の面で好ましい。したがって、一般的には、キャピラリー数(Ca)は低い方が塗料ビードの安定性の面では好ましいといえる。
X=T/t (4)
ここで、Tはスリットダイコータ口金の下端面と基材表面との間隔である塗布ギャップであり、tは塗膜のウェット膜厚である。
図1に示すように、T>tであり、かつその差が小さい程、液切れ等の問題が少なく、かつ塗料ビードの形状を維持する上で好ましい。したがって、無次元膜厚(X)の値も、一般的には低い方が好ましいといえる。
Ca≦0.0651X−0.6669 (2)
Ca≦−0.0005Ln(X)+0.0108 (3)
Ca≦0.0403X−0.6301 (5)
Ca≦−0.0006Ln(X)+0.008 (6)
次に、このキャピラリー数(Ca)および無次元膜厚(X)を算出するための各種パラメータについて説明する。
まず、キャピラリー数を得るためには、塗料の動的粘度μ、塗料の動的表面張力σ、および基材と口金との相対速度を定める必要がある。以下、これらについて説明する。
本発明における塗料の動的粘度は、二重円筒方式レオメータ(レオメトリック・サイエンティフィック社製、商品名:ARES)を用い、シェアレートが100S−1、23℃、液量10ccで測定した値を用いる。二重円筒方式レオメータの概略を図4に示す。
本発明における塗料の動的表面張力は、バブルプレッシャー動的表面張力計(商品名:BP−2、KRUSS社製)を用いて測定した値を用いる。測定条件は以下の通りである。
キャピラリ径:φ0.228mm
測定温度:23℃
液量:60cc
表面寿命:10ms
キャピラリ浸漬深さ:10mm
設定密度:1.00g/cm3
バブルプレッシャー動的表面張力計の概略を図5に示す。
本発明における塗布速度とは、スリットダイコータ口金と基材との相対速度を意味するものである。本発明の塗膜の製造方法に適用することができる塗布速度としては、0.01m/sec〜0.50m/secの範囲内、特に0.05m/sec〜0.20m/secの範囲内とすることが好ましい。上記範囲より塗布速度を遅くすると生産効率の面で問題が生じる可能性があることから好ましくなく、上記範囲より早いものは生産装置として現実的でないからである。
本発明において用いられる無次元膜厚(X)は、上述したように、塗布ギャップTとウェット膜厚tにより算出されるパラメータである。
本発明において用いられる塗布ギャップTとは、スリットダイコータ口金の下端面から基材表面までの距離をいう。
本発明においては、塗料ビードの安定性等の観点からこの塗布ギャップTは、後述するウェット膜厚tより大きな値とする必要がある。
本発明において用いられるウェット膜厚tとは、基材上に塗工された塗料吐出量/塗工面積の形で表され、塗工直後の塗料中の溶剤が揮発する前の状態で存在する際の固液界面と気液界面間の距離である。
本発明においては、上述したようにキャピラリー数と無次元膜厚とが所定の関係を有するように、塗料の材料を選択し、かつ装置のパラメータを調整することにより、横スジムラの発生が抑えられた塗膜を得ることができる。したがって、上述したキャピラリー数と無次元膜厚に関連するパラメータを主として考慮すればよいのであるが、その他のパラメータであっても数値が大幅に異なる場合は、スジムラの発生等に影響を及ぼす可能性を有するものもある。以下このようなパラメータについて説明する。
口金から吐出する塗料の吐出量は、結果的に上述したウェット膜厚tに影響するものであることから、この吐出量も所定の範囲内である場合に、横スジムラを抑制することができるといえる。
これも、上記ウェット膜厚tに影響するパラメータであり、固形分濃度とウェット膜厚tとの関係で決定するパラメータである。具体的には、0.5μm〜5μmの範囲内、その中でも特に1μm〜3μmの範囲内であり、基材中央部と、塗膜端部から50mm内側の領域との膜厚差が±5%以内であることが好ましい。上記範囲内の塗膜の製造に際して、本発明の横スジムラ抑制作用が効果的に得られるからである。
本発明は、上記パラメータを所定の関係を満たすように調整して用いることにより、特に横スジムラの少ない塗膜を製造するものであるが、この塗膜の製造方法は、具体的には、ダイコータによりなされるものであり、塗料吐出用のスリットを設けたスリットダイコータ口金を用いて基材表面に塗料を塗布し、塗膜を形成することによりなされる。
本発明に用いられるスリットダイコータ口金は、その形状や材質等に特に限定はなく、高精度に吐出量を制御することができる口金であればいかなる種類もしくは形状のものであっても用いることができる。
本発明において塗膜が形成される基材としては、枚葉式で供給され、表面に一定の平滑性を有するものであれば特に限定されるものではなく、用途に応じてガラス基板、透明樹脂基板等の基材が選択されて用いられる。
本発明に用いられる塗料に関しても、上記パラメータに関する関係を満足することが可能な塗料であれば特に限定されるものではない。一般的には、溶媒に固形分が溶解されてなるものであるが、これに限定されるものではなく、モノマー成分を多く含み、塗布後重合させて硬化させるようなタイプの塗料であってもよい。
具体的には、後述するカラーフィルタの着色層形成用塗料や、各種レジスト用塗料等を挙げることができる。
本発明の塗膜の製造方法においては、塗膜端部の平滑化のために、ダイコータ法による塗布終了後に、500rpm以下の低速スピンをかけるようにしてもよい。また同様に塗膜端部の平滑化のために、最適化したサックバックを行うようにしてもよい。
本発明のカラーフィルタの製造方法は、透明基板上に、少なくとも着色層および遮光層が形成されてなるカラーフィルタの製造方法であって、上記着色層および上記遮光層のうちの少なくとも一層が上述した塗膜の製造方法を用いて形成されていることを特徴とするものである。
基材サイズが550mm×650mm×0.7mmの無アルカリガラス(日電ガラスOA-10)を用い、また、定量ポンプとしてダイヤフラムポンプを使用した。また、スリット先端の吐出口の渡り方向の幅を540mmとした。
ガラス基板端部より10mmの位置に口金先端の中央部を停止させ、クリアランスを40μmとし、0.01〜0.03L/minの吐出レートで塗料を0.3〜1.0sec間吐出し、塗料ビードを形成した。なお、塗料の組成に関しては、以下の通りである。
次に、基板搬送速度を15mm/sec〜180mm/sec、吐出レートを0.01〜0.03L/minの間で任意に設定し、塗料吐出装置をZ軸方向に上昇させ、塗布ギャップが40μm〜200μmとなる点で上昇を停止して定常塗工状態とした。
さらに、塗工終了側の基板端部より10mmの位置にて、塗料の吐出を停止させ、同時に塗料吐出装置をZ軸方向に上昇させ塗工を終了した。
得られた塗工基板をケミカルドライポンプにて減圧チャンバー内圧が93Paを示すまで仮乾燥させた後、ホットプレートにて80℃で30分間焼成を行い、塗膜を得た。
塗料の組成を以下に示す。
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート:35.62重量部
・3−メトキシブチルアセタート:39.39重量部
・顔料:6.2重量部
(ピグメントレッド254、ピグメントイエロー138)
・アルカリ可溶性アクリル系ポリマー:7.8重量部
(平均分子量:10000,酸価:60)
・光重合性モノマー:5.2重量部
(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)
・光重合開始剤:2.5重量部
(2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モンフォリノプロパノン-1)+(ジエチルアミノベンゾフェノン)
・顔料分散剤:3.1重量部
(ビッグケミー株式会社製、Disperbyk161)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート:38.04重量部
・3−メトキシブチルアセタート:42.06重量部
・顔料:5.0重量部
(ピグメントレッド254、ピグメントイエロー138)
・アルカリ可溶性アクリル系ポリマー:6.3重量部
(平均分子量:10000,酸価:60)
・光重合性モノマー:4.2重量部
(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)
・光重合開始剤:2.0重量部
(2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モンフォリノプロパノン-1)+(ジエチルアミノベンゾフェノン)
・顔料分散剤:2.5重量部
(ビッグケミー株式会社製、Disperbyk161)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート:39.70重量部
・3−メトキシブチルアセタート:43.90重量部
・顔料:4.1重量部
(ピグメントレッド254、ピグメントイエロー138)
・アルカリ可溶性アクリル系ポリマー:5.2重量部
(平均分子量:10000,酸価:60)
・光重合性モノマー:3.4重量部
(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)
・光重合開始剤:1.7重量部
(2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モンフォリノプロパノン-1)+(ジエチルアミノベンゾフェノン)
・顔料分散剤:2.1重量部
(ビッグケミー株式会社製、Disperbyk161)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート:36.09重量部
・3−メトキシブチルアセタート:39.91重量部
・顔料:6.0重量部
(ピグメントレッド254、ピグメントイエロー138)
・アルカリ可溶性アクリル系ポリマー:7.5重量部
(平均分子量:10000,酸価:60)
・光重合性モノマー:5.0重量部
(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)
・光重合開始剤:2.4重量部
(2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モンフォリノプロパノン-1)+(ジエチルアミノベンゾフェノン)
・顔料分散剤:3.0重量部
(ビッグケミー株式会社製、Disperbyk161)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート:31.34重量部
・3−メトキシブチルアセタート:34.66重量部
・顔料:8.5重量部
(ピグメントレッド254、ピグメントイエロー138)
・アルカリ可溶性アクリル系ポリマー:10.7重量部
(平均分子量:10000,酸価:60)
・光重合性モノマー:7.1重量部
(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)
・光重合開始剤:3.4重量部
(2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モンフォリノプロパノン-1)+(ジエチルアミノベンゾフェノン)
・顔料分散剤:4.2重量部
(ビッグケミー株式会社製、Disperbyk161)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート:38.14重量部
・3−メトキシブチルアセタート:43.06重量部
・顔料:4.7重量部
(ピグメントレッド254、ピグメントイエロー138)
・アルカリ可溶性アクリル系ポリマー:6.3重量部
(平均分子量:10000,酸価:60)
・光重合性モノマー:3.9重量部
(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)
・光重合開始剤:1.6重量部
(2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モンフォリノプロパノン-1)+(ジエチルアミノベンゾフェノン)
・顔料分散剤:2.4重量部
(ビッグケミー株式会社製、Disperbyk161)
結果を、表1、表2および図2に示す。
(Naランプ反射)
◎:良好
○:若干スジ有り
△:スジ有り
×:塗布不良発生
(白色透過)
○:良好
△:若干スジ有り
×:塗布不良発生
2 … スリットダイコート口金
3 … 基材
4 … 塗膜
5 … 口金下端面
6 … 塗料ビード
Claims (2)
- 塗料吐出用のスリットを設けたスリットダイコータ口金を用いて基材表面に塗料を塗布し、塗膜を形成する塗膜の製造方法において、
前記塗料の動的粘度をμ、前記基材と前記口金との相対速度をV、前記塗料の動的表面張力をσとした際に、下記式(1)で得られるキャピラリー数(Ca)と、
Ca=μ・V/σ (1)
前記口金の下端面と前記基材表面との間隔である塗布ギャップをTとし、塗膜の塗布時のウェット膜厚をtとした際に、T/tで得られる無次元膜厚(X)とが、下記式(2)
Ca≦0.0651X−0.6669 (2)
および、下記式(3)
Ca≦−0.0005Ln(X)+0.0108 (3)
のいずれか満足するように設定されて塗膜が形成されることを特徴とする塗膜の製造方法。 - 透明基板上に、少なくとも着色層および遮光層が形成されてなるカラーフィルタの製造方法であって、前記着色層および前記遮光層のうちの少なくとも一層が前記請求項1に記載の塗膜の製造方法を用いて形成されていることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
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