JP2009241328A - 多層フィルムおよびこれを用いてなる真空断熱構造体 - Google Patents

多層フィルムおよびこれを用いてなる真空断熱構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】 ガスバリア性、特には高湿度下での水蒸気バリア性に優れ、更には断熱性能にも優れた多層フィルム及び真空断熱構造体を提供すること。
【解決手段】多段蒸着により形成された蒸着基材フィルム(A)/ガスバリア性フィルム(B)の層構成を有する多層フィルム、及び該多層フィルムと断熱性材料を含み、該多層フィルムが、断熱性材料を密封包装している真空断熱構造体。
【選択図】図1

Description

本発明は、多層フィルム、および該多層フィルムで断熱性材料を密封包装してなる真空断熱構造体に関し、更に詳しくは、ガスバリア性、特には高湿度下での水蒸気バリア性に優れ、更には断熱性能にも優れた多層フィルムおよび真空断熱構造体に関するものである。
従来、冷蔵庫や電気ポット等の断熱材、あるいは住宅用断熱壁用の断熱パネルとしては、ポリウレタンフォームを用いた断熱体が利用されてきたが、近年これに代わる、優れた材料として、グラスウール、酸化珪素、発泡樹脂などの断熱性材料を芯材とし、これをガスバリア性ラミネートフィルムで密封し、且つ内部を真空とした真空断熱構造体が用いられ始めている。
かかる真空断熱構造体では、ガスバリア性ラミネートフィルムとして、ビニルアルコール系フィルムやアルミ箔を用いた多層構造体などが用いられており、またビニルアルコール系フィルムとしては、ポリビニルアルコール樹脂からなるプラスチックフィルムや、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなるフィルムを用いた多層構造体などが用いられている。
例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂フィルムを含有した多層フィルムからなる真空断熱構造体としては、芯材と、前記芯材を外包する外装袋外被材とを備え、前記外装袋が、蒸着層を有するラミネートフィルムどうし、もしくは蒸着層を有するラミネートフィルムと、金属箔を有するラミネートフィルムとを、熱溶着によって袋状にしたものであり、前記蒸着層を有するラミネートフィルムが、熱溶着層と、ガスバリア層と、最外層とからなり、前記ガスバリア層がエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂からなるプラスチックフィルムの片側にアルミ蒸着を施したものであり、かつ、アルミ蒸着を施した面が熱溶着層側に設けられている真空断熱体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、従来のビニルアルコール系フィルムを用いた真空断熱構造体では、ガスバリア層の外側に蒸着PETが積層され、更にその最外層には更なるガスバリア性を確保するためナイロンフィルムが積層されることもある(例えば、特許文献2参照)。
特開平10−122477号公報 WO 2007/020978
しかしながら、金属箔を有するラミネートフィルムは、金属を使用するため伸縮あるいは屈曲に対する耐性に乏しく、かかるフィルムから構成される真空断熱構造体の外装袋に伸縮あるいは屈曲が加わると、その部分においてフィルムにクラックやピンホールが生じフィルムのガスバリア性が著しく低下し、真空断熱構造体としての断熱性能が低下してしまうという欠点がある。他方、上記ナイロンフィルムを最外層とする層構成では、高湿度下でのガスバリア性が不十分であるという欠点を有していた。そして、このような真空断熱構造体は、冷蔵庫や住宅用断熱壁用の断熱パネルに用いられており、外気の影響を受けやすい環境で使用されることから、高湿度下での使用にも十分なガスバリア性を有する真空断熱構造体が求められていた。
そこで、本発明ではこのような背景下において、ガスバリア性、特には高湿度下での水蒸気バリア性に優れ、更には断熱性能にも優れた多層フィルム及びそれを用いた真空断熱構造体を提供することを目的とするものである。
しかるに、本発明者は、かかる事情を鑑み鋭意研究を重ねた結果、断熱性材料を密封包装するにあたり、多段蒸着された蒸着基材フィルムを用い、これをガスバリア性フィルムと組み合わせることにより、ガスバリア性、特には高湿度下での水蒸気バリア性に優れ、更には断熱性能にも優れた真空断熱構造体が得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は、多段蒸着により形成された蒸着基材フィルム(A)/ガスバリア性フィルム(B)の層構成を有する多層フィルムを提供するものである。
また、本発明では、多段蒸着により形成された蒸着基材フィルム(A)/ガスバリア性フィルム(B)の層構成を有する多層フィルムが、断熱性材料を密封包装してなることを特徴とする真空断熱構造体も提供するものである。
要するに、本発明の真空断熱構造体は、断熱性材料を密封包装するための多層フィルムとして、従来は基材フィルムに対して1回の蒸着処理しか施していない蒸着基材フィルムを使用するのが常であったところ、あえて多段階で蒸着を施した蒸着基材フィルムを用いたことを特徴とするものである。
本発明の多層フィルム及び真空断熱構造体は、断熱性材料を多層フィルムを用いて密封包装するにあたり、多段蒸着により形成された蒸着基材フィルム(A)を用いることにより、ガスバリア性、特には高湿度下での水蒸気バリア性、断熱性能にも優れた効果を示し、更には該多層フィルムで断熱性材料を減圧下にて密封する際に多層フィルムにシワが発生する場合においても、これらシワ部分に加わる局所的な応力によるクラックあるいはピンホールの発生に対して耐性が高く、その結果、長期間にわたり使用した際にも高い信頼度で真空を維持することができ、断熱性能が低下しないといった効果を有するものである。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明における多層フィルムは、多段蒸着により形成された蒸着基材フィルム(A)及びガスバリア性フィルム(B)を含むものである。
多段蒸着により形成された蒸着基材フィルム(A)としては、基材フィルム上に多段階の蒸着処理を行なうことにより形成された蒸着層を有する基材フィルムを用いることができる。
本発明における基材フィルムとしては、例えば、ポリエステル系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエーテル系フィルム、ポリウレタン系フィルムを挙げることができ、中でも、ポリエステル系フィルム、ポリオレフィン系フィルムを使用することが、加工性、耐久性および経済性の点で好ましく、特にはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリプロピレン(OPP)フィルムが好ましく、殊にはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましい。
また、上記フィルムは延伸処理を施されたものを用いることが好ましく、特には二軸延伸フィルムを用いることが好ましい。
かかる基材フィルムの厚みとしては、通常、5〜100μmであり、好ましくは5〜50μm、特に好ましくは、5〜30μmである。かかる厚みが厚すぎると、真空断熱材に仕上げた場合に外装袋に入るシワの部分へ集中する応力が増大しピンホールの発生する可能性が高まる傾向があり、薄すぎると真空断熱材に仕上げた場合の外装袋としての強度が充分に得られず、加工中および使用中に破袋する傾向がある。
本発明における蒸着層としては、金属あるいは金属酸化物からなる蒸着層、非金属からなる蒸着層のどちらであってもよいが、特には金属あるいは金属酸化物からなる蒸着層であることが好ましい。
かかる蒸着層を形成する金属あるいは金属酸化物としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、クロム、スズ、インジウム、亜鉛、などの金属、或いはかかる金属の酸化物を用いることができる。これらのなかでも、アルミニウム、金、銀、スズが好ましく用いられ、特にアルミニウムが、コストの面から好ましく用いられる。
一方、非金属の蒸着層に用いられる非金属としては、例えば、珪素、酸化珪素等を挙げることができる。
本発明においては、上記蒸着層が基材フィルム上に多段蒸着により形成された少なくとも2層以上からなる多段蒸着層であることが必要である。
なお、以下本明細書中においては、かかる多段蒸着層がn段蒸着により形成されたものである場合に、基材フィルム側から順に、第1段目蒸着層、第2段目蒸着層・・・第n段目蒸着層と呼ぶこととする。
かかる多段蒸着層の総厚みとしては、通常、200〜1200Åであり、好ましくは400〜1000Å、特に好ましくは600〜1000Åである。かかる総厚みが厚すぎると、外力が加わった際に蒸着層そのものにクラックが発生しやすくなる傾向があり、薄すぎると所望の水蒸気バリア性が得難くなる傾向がある。
特に第1段目蒸着層の厚みに関しては、第1段目蒸着層は基材フィルムに対して直接蒸着を施し形成されるため比較的厚みの制御を行ない易く、また、第1段目蒸着層の厚みが、多段蒸着層全体が示す物性に対して大きく影響する傾向があるため、200〜600Åであることが好ましく、特には250〜550Åであることが好ましく、殊には300〜500Åであることが好ましい。
第2段目蒸着層以降の各層の厚みは、100〜500Åであることが好ましく、特に好ましくは150〜450Å、更に好ましくは200〜400Åである。更に、第2段目蒸着層〜第n段目蒸着層(追加蒸着層という。)の総厚みに関しては、第1段目蒸着層の厚みに対する追加蒸着層の厚みの比率が0.2〜2.5倍であることが好ましく、特には0.3〜1.5倍であることが好ましく、更には0.4〜1倍であることが好ましい。かかる比率が低すぎると、蒸着層を追加したことによるガスバリア性等の効果が発揮され難い傾向があり、高すぎると追加蒸着層の厚みが厚くなり重量も嵩むため、蒸着層の脱離が起こりやすくなる傾向がある。
かかる多段蒸着の蒸着回数としては、基材フィルムの表面に海島状態で積層される蒸着材料の非付着部分(海部分)に積極的に新たな蒸着基材を付着させるためには2回以上であることが必要であり、好ましくは経済性の面から2〜4回、特に好ましくは、2回である。通常、一度の蒸着操作で最低でも100Åの厚みが付与されることを考慮すると、蒸着回数が多すぎると蒸着層の総厚みが厚くなりすぎて、外力が加わった際に蒸着層そのものにクラックが発生しやすくなる傾向がある。
かかる多段蒸着層は、全ての蒸着層を同一の蒸着物質で蒸着したものであってもよいし、2種以上の蒸着物質を使用し、蒸着層ごとに異なった蒸着物質からなる多段蒸着層としたものであってもよいが、上述のように蒸着物質としてはアルミニウムを用いることが好ましく、該アルミニウム1種からなる多段蒸着層であることが好ましい。
ここで、2種以上の蒸着物質を使用する際には、第1段目蒸着層には基材フィルムとの密着性が高い蒸着物質を用いることが好ましく、例えば、クロムあるいはクロム化合物、ニッケルあるいはニッケル化合物、チタンあるいはチタン化合物、亜鉛あるいは亜鉛化合物、インジウム、スズ、銀、金、等が挙げられる。
また、酸化アルミニウムなど一般にフィルムへの蒸着で使用される硬質な金属酸化物、酸化珪素も蒸着物質として使用することができるが、これらの蒸着物質は、蒸着膜の屈曲性を得るために多段蒸着層の中でも2層以下、好ましくは1層の利用に留めることが好ましい。
本発明の蒸着方法としては、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、抵抗加熱蒸着法、高周波誘導加熱蒸着法、電子ビーム加熱蒸着法などの一般的な真空蒸着法を用いることができる
また、基材フィルムに蒸着処理を施す前に、基材フィルムの表面に前処理をすることも可能であり、かかる前処理としては、例えば、コロナ処理等の基材そのものの活性化を促す方法と、ポリエチレンやポリエーテルを主剤としウレタン系硬化剤を用いるようなコーティング剤で薄膜層を形成する方法を挙げることができる。
本発明で用いられるガスバリア性フィルム(B)は、ガスバリア性を有するフィルムであればよく、通常、かかるガスバリア性フィルムの中でも、23℃−50%RHの条件でJIS K 7126(等圧法)に記載の方法に準じて測定した際の酸素透過量が、1ml/(m2・day・atm)以下のフィルムを用いることが好ましく、特には、0.1ml/(m2・day・atm)以下のフィルムを用いることが好ましい。具体的には、ビニルアルコール系フィルムであることが高いガスバリア性を得るという点で特に好ましい。
かかるビニルアルコール系フィルムは、ビニルアルコール系樹脂より製膜されてなるものであり、ビニルアルコール系樹脂とは、ビニルエステル単位がケン化されてなるビニルアルコール単位を有するものであればよく、ビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂と略記することがある)や、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(以下、EVOH樹脂と略記することがある)を挙げることができる。更に、PVA系樹脂としては、酢酸ビニルを単独重合し、それをケン化したPVAと、変性PVAを挙げることができ、かかる変性PVAとしては、共重合変性品と後変性品とを挙げることができる。
ビニルアルコール系フィルムとしては、公知のPVA樹脂又はEVOH樹脂からなるフィルムを用いることができるが、これら樹脂について簡単に説明する
まず、PVA系樹脂について説明する。
PVA系樹脂としては、上記の通りPVAや変性PVAが挙げられ、PVAは、酢酸ビニルを単独重合し、更にそれをケン化して製造される。また変性PVAは、酢酸ビニルと酢酸ビニルと共重合可能な不飽和単量体を共重合させた後ケン化して製造されるものであり、その変性量としては通常10モル%未満である。
上記酢酸ビニルと共重合可能な不飽和単量体としては、例えばエチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、等のビニル化合物、酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、塩化ビニリデン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、ビニレンカーボネート、等が挙げられる。
また、変性PVAとしては、PVAを後変性することにより製造することもできる。かかる後変性の方法としては、PVAをアセト酢酸エステル化、アセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化、オキシアルキレン化する方法等が挙げられる。
本発明においては、上記PVA系樹脂の重合度が1100以上、平均ケン化度90モル%以上であることが好ましく、重合度の更に好ましい範囲は1100〜4000、特に好ましい範囲は1200〜2600である。かかる重合度が低すぎると得られるフィルムとしたときの機械強度が低下する傾向にある。なお、重合度が高すぎると製膜および延伸時の加工性が低下する傾向にある。平均ケン化度の更に好ましい範囲は95〜100モル%、特に好ましい範囲は99〜100モル%である。かかる平均ケン化度が低すぎると耐水性が低下し、ガスバリア性の湿度による変化が著しくなる傾向にあるので、比較的高いものを選ぶことが好ましい。
また、上記PVA系樹脂の4重量%水溶液の粘度としては、2.5〜100mPa・s(20℃)が好ましく、更には2.5〜70mPa・s(20℃)、特には2.5〜60mPa・s(20℃)が好ましい。該粘度が低すぎるとフィルム強度等の機械的物性が劣る傾向があり、高すぎるとフィルムへの製膜性が悪くなる傾向がある。
尚、上記粘度はJIS K6726に準じて測定されるものである。
これらのPVA系樹脂は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
次に、EVOH樹脂としては、通常10〜60モル%のエチレンとビニルエステルとの共重合体をケン化して得られるものであり、かかるビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。また、EVOH樹脂には、加熱溶融時の安定性向上のために共重合成分としてビニルシラン化合物を0.0002〜0.2モル%含有させることもできる。ここで、ビニルシラン系化合物としては、たとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシランが挙げられる。なかでも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好適に用いられる。さらに、本発明の目的が阻害されない範囲で、他の共重合性単量体、例えば、プロピレン、ブチレン;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸またはそのエステル;N−ビニルピロリドンなどのビニルピロリドン等を共重合することもできる。
EVOH樹脂のエチレン含有量は10〜60モル%であるが、良好な延伸性を得る観点からは、エチレン含有量は15モル%以上、さらには25モル%以上であるものが特に好ましい。また、ガスバリア性の観点からは、エチレン含有量は55モル%以下、さらには50モル%以下であるものが特に好ましい。エチレン含有量が少なすぎると溶融成形性が悪化する傾向があり、多すぎるとガスバリア性が不足する傾向がある。
なお、かかるEVOH樹脂のエチレン含有量は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
また、かかるEVOH樹脂のケン化度は、好適には90%以上であり、より好適には95%以上であり、更に好適には99%以上である。ケン化度が低すぎると、高湿度下でのガスバリア性が低下する傾向がある。
なお、ここで、EVOH樹脂が、ケン化度の異なる2種類以上のEVOH樹脂の配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をケン化度とする。
さらに、本発明の目的を阻外しない範囲内で加熱溶融時の安定性を向上させるためにEVOH樹脂にホウ素化合物をブレンドすることもできる。ここでホウ素化合物としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられる。具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸などが挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルなどが挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂などが挙げられる。これらの化合物のうちでもオルトホウ酸(以下、単にホウ酸と表示する場合がある)であることが好ましい。
EVOH樹脂にホウ素化合物をブレンドする場合、ホウ素化合物の含有量は、好ましくはホウ素元素換算で20〜2000ppm、より好ましくは50〜1000ppmである。この範囲内でホウ素化合物をブレンドすることで加熱溶融時のトルク変動が抑制されたEVOH樹脂を得ることができる。ホウ素化合物の含有量が少なすぎると添加効果が小さく、多すぎるとゲル化しやすく、成形性不良となる場合がある。
かかるEVOH樹脂の好適なメルトフローレート(MFR)(230℃、2160g荷重下)は、通常1〜50g/10分であり、より好適には3〜40g/10分、更に好適には5〜30g/10分である。これらのEVOH樹脂は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
本発明では、上記ビニルアルコール系樹脂を用いてフィルム製膜するのであるが、かかる製膜方法も公知のものでよく、特に限定されず、例えば、ドラム、エンドレスベルト等の金属面上にビニルアルコール系樹脂溶液を流延してフィルム形成する流延式成形法、あるいは押出機により溶融押出する溶融成形法によって製膜される。
かかるビニルアルコール系フィルムは、無延伸フィルムとして用いてもよいが、通常一軸延伸或いは二軸延伸フィルムとして用いることが好ましく、特にガスバリア性の点から、二軸延伸フィルムとして用いるのが好ましい。かかる一軸および二軸延伸フィルムの流れ方向(MD方向)の延伸倍率としては2.5〜5倍であることが好ましい。
かかる延伸処理方法は、通常行われる一軸延伸方法や、同時二軸延伸、逐次二軸延伸など、公知方法に従い行うことが可能である。
本発明においては、かかる二軸延伸ビニルアルコール系フィルムの中でも、二軸延伸PVA系フィルム、二軸延伸EVOH系フィルムが、特に好ましく用いられるが、これら二軸延伸フィルムの具体的な製法について説明する。
まず、二軸延伸PVA樹脂系フィルムについて説明する。
上記PVA系樹脂を用いて、PVA系フィルム(延伸前PVA系フィルム)を製膜するわけであるが、通常は、製膜用の原液として、PVA系樹脂濃度が5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%のPVA系樹脂−水の組成物を調製する。
かかるPVA系樹脂−水組成物には、本発明の効果を損なわない範囲でエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール類の可塑剤やフェノール系、アミン系等の抗酸化剤、リン酸エステル類等の安定剤、着色料、香料、増量剤、消包剤、剥離剤、紫外線吸収剤、無機粉体、界面活性剤等の通常の添加剤を適宜配合しても差し支えない。また、澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のPVA系樹脂以外の他の水溶性樹脂を混合してもよい。
PVA系フィルムの製膜法については、特に限定されないが、上記PVA系樹脂−水組成物を押出機に供給して溶融混練した後、Tダイ法、インフレーション法により押出し製膜し、乾燥する方法が好ましい。
かかる方法における押出機内での溶融混練温度は、55〜160℃が好ましい。かかる温度が低すぎるとフィルム肌の不良を招き、高すぎると発泡現象を招く傾向にある。また、製膜後のフィルムの乾燥については、70〜120℃で行うことが好ましく、更には80〜100℃で行うことが好ましい。
上記で得られたPVA系フィルムに対して、更に二軸延伸を施すことにより、本発明で好ましく用いられる二軸延伸PVA系フィルムとなる。
かかる二軸延伸については、機械の流れ方向(MD方向)の延伸倍率が2.5〜5倍、幅方向(TD方向)の延伸倍率が2〜4.5倍であることが好ましく、特に好ましくはMD方向の延伸倍率が3〜5倍、TD方向の延伸倍率が2.5〜4.5倍である。該MD方向の延伸倍率が低すぎると延伸による物性向上が得難くかつ耐熱性が損なわれる傾向があり、高すぎるとフィルムがMD方向へ裂けやすくなる傾向がある。また、TD方向の延伸倍率が低すぎると延伸による物性向上が得難く、かつ耐熱性が損なわれる傾向があり、高すぎると工業的にフィルムを製造する際に延伸時の破断が多発する傾向がある。
かかる逐次二軸延伸あるいは同時二軸延伸を行うにあたっては、PVA系フィルムの含水率を5〜30重量%、特には20〜30重量%に調整しておくことが好ましい。含水率の調整は、乾燥前のPVA系フィルムを引き続き乾燥する方法、含水率5重量%未満のPVA系フィルムを水に浸漬あるいは調湿等を施す方法等により行うことができる。かかる含水率が低すぎても、高すぎても延伸工程でMD方向、TD方向の延伸倍率を高めることができない傾向がある。
更に、二軸延伸を施した後は、熱固定を行うことが好ましく、かかる熱固定の温度は、PVA系樹脂の融点より低い温度を選択することが好ましく、特には140〜250℃であることが好ましい。熱固定温度が、融点より80℃以上低い温度の場合は、寸法安定性が悪く収縮率が大きくなる傾向があり、一方、融点より高い場合は、フィルムの厚み変動が大きくなる傾向がある。また、熱固定時間は1〜30秒間であることが好ましく、より好ましくは5〜10秒間である。
また、必要に応じて、熱変形性をさらに減少させる目的で、かかる二軸延伸PVA系フィルムに、水溶液への接触および乾燥の加工を施すことも可能である。水溶液との接触においては、通常5〜60℃、好ましくは10〜50℃の水溶液が用いられ、水溶液との接触時間は、水溶液の温度に応じて適宜選択されるが、工業的には10〜60秒であることが好ましい。
かかる水溶液との接触方法については、特に限定されないが、例えば、水溶液への浸漬や水溶液の噴霧、水溶液の塗布、スチーム処理などが挙げられ、これらを併用することもできる。水溶液との接触の後、工業的には、エアーシャワー等で非接触的に表面の付着水を取り除き、次いでニップロール等で接触的な水分除去を次に行うことが好ましい。また、乾燥機の種類としては、特に限定されないが、例えば、金属ロールやセラミックロール等に直接接触して乾燥する方法、あるいは非接触型の乾燥機を用いる方法などが挙げられる。
かかる水溶液との接触と乾燥の後に、得られた二軸延伸PVA系フィルムを再度巻き取ってロール状とする場合は、フィルムの水分量を通常3重量%以下、好ましくは0.1〜2重量%にすることが望まれる。かかる水分量が多すぎるとフィルムロールの中でフィルム同士が密着してしまう傾向があり、再度加工のための巻き出しを行う際にフィルムが破損するなどの問題を発生するおそれがある。
かくして本発明で好適に用いられる二軸延伸PVA系フィルムが得られる。
次に、二軸延伸EVOH系フィルムについて説明する。
上記EVOHを用いて、EVOH系フィルム(延伸前EVOH系フィルム)を製膜するわけである。
かかるEVOHには、本発明の目的を阻外しない範囲内で、酸化防止剤、色剤、紫外線吸収剤、スリップ剤、帯電防止剤、可塑剤、硼酸等の架橋剤、無機充填剤、無機乾燥剤等の各種添加剤、ポリアミド、ポリオレフィン、高吸水性樹脂等の各種樹脂を配合してもよい。
上記EVOHを用いて、EVOH系フィルムを製膜する際には、主に溶融成形が用いられる。以下に溶融成形方法について説明する。
かかる溶融成形時の条件としては、特に限定されないが、通常はノンベント、スクリュータイプ押出機を用い、溶融温度190〜250℃で押出製膜される。通常、圧縮比2.0〜4.5のスクリューを用い、Tダイス、または丸ダイスを用いて製膜される。
かくしてEVOH系フィルムが得られるわけであるが、該フィルムに対しては、更に、二軸延伸、好ましくは逐次二軸延伸を施すことにより、二軸延伸EVOH系フィルムとすることができる。
かかる二軸延伸の面積倍率については、好ましくは3倍以上、より好ましくは6倍以上、特に好ましくは9倍以上であることが、ガスバリア性および機械強度の観点から重要である。延伸する方法としては、ダブルバブル法、テンター法、ロール法等の一軸または二軸延伸する方法等公知の延伸方法を採用することができ、二軸延伸の場合は、同時延伸、逐次延伸のいずれの方式も採用出来る。
また、延伸前の原反フィルムに予め含水させておくことで容易な連続延伸が可能となり、延伸前の原反フィルムの水分率としては、2〜30重量%が好ましく、特には5〜30重量%が好ましく、更には10〜30重量%が好ましい。水分率が少なすぎると、延伸斑が残りやすく、また特にテンターで延伸する場合、グリップに近い部分の延伸倍率が高くなるために、グリップ近辺での破れが生じやすくなることがある。一方、水分率が高すぎると、延伸された部分の弾性率が低く、未延伸部分との差が十分でなく、延伸斑が残りやすくなることがある。
かかる延伸温度に関しては、延伸前の原反フィルムの水分率によって多少異なるが、一般に50〜130℃の範囲が適応可能である。特に同時二軸延伸においては、70〜100℃の範囲において、厚み斑の少ない二軸延伸EVOH系フィルムが得られやすく、逐次二軸延伸においては、ロールでの長手方向の延伸において70〜100℃、テンターでの幅方向の延伸において80〜120℃の温度範囲で行うことにより、厚み斑の少ない二軸延伸EVOH系フィルムが得られやすい。
そして、二軸延伸EVOH系フィルムの製造に関するさらに重要な因子としては、延伸後の熱処理と、その熱処理の結果として得られる二軸延伸EVOH系フィルムの密度および水分率がある。熱処理は、EVOHの融点より5℃〜40℃低い温度で、5〜20秒間行われることが好ましい。熱処理温度が低すぎると、熱処理が不十分なため、蒸着工程に耐えるだけの耐熱性および充分なガスバリア性が得られないことがある。一方、熱処理温度が高すぎると、部分的に延伸効果が低減されることがある。
かくして本発明で好適に用いられる二軸延伸EVOH系フィルムが得られる。
本発明で用いられるガスバリア性フィルム(B)の厚みとしては、通常5〜100μm、好ましくは8〜50μm、特に好ましくは8〜30μmであることが、工業的な生産性の面で有利である。
上記ガスバリア性フィルム(B)は、単独でも充分な低熱伝導性と高ガスバリア性および耐熱性を有するので、ガスバリア層としても充分使用可能であるが、さらにアルミホイルに匹敵する熱放射性を付与する目的で、塗料層を付与したりすることが好ましい。
塗料層を付与する場合においては、任意の塗料を選ぶことができるが、熱放射特性の点から、その塗料層の反射率が60%以上、特には80%以上であることが好ましく、色として白色、白銀色、銀色等が好適に用いられる。塗料層の形成方法としては特に制限されないが、市販の塗料をグラビア印刷、オフセット印刷あるいはフレキソ印刷等の印刷法によって付与する方法が実用的である。
ガスバリア性フィルム(B)と塗料層とのバインダーについても、特に限定されないが、バインダーにウレタン系硬化剤を配合しておく方が密着性の点から好ましい。
また、ガスバリア性フィルム(B)の表面に塗料層を施すにあたり、より塗料層との密着性を向上する目的で、該ガスバリア性フィルム(B)の表面に前処理を行うこともできる。前処理としてはコロナ処理等の基材そのものの活性化を促す方法と、ポリエチレンやポリエーテルを主剤としウレタン系硬化剤を用いるようなコーティング剤で薄膜層を形成する方法が例示できる。
上記、多段蒸着により形成された蒸着基材フィルム(A)及びガスバリア性フィルム(B)を貼り合せて多層フィルムを形成するのであるが、貼り合せるにあたっては、多段蒸着により形成された蒸着基材フィルム(A)の蒸着面上にガスバリア性フィルム(B)が積層されることが好ましく、また、かかる貼り合せには、有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物等の公知の接着剤を用いてラミネートする方法(ドライラミネート法)が好ましく用いられる。ただし、これら方法に限定されるものではない。
かかる多段蒸着により形成された蒸着基材フィルム(A)及びガスバリア性フィルム(B)の膜厚割合については、ビニルアルコール系フィルム(B)の厚みに対して、多段蒸着により形成された蒸着基材フィルム(A)の厚みが、通常0.5〜5倍、好ましくは0.5〜2.5倍である。
本発明における多層フィルム全体の厚みは、特に限定されないが、通常は20〜800μm、特には50〜500μmが好ましい。
本発明における多層フィルムは、上記の多段蒸着により形成された蒸着基材フィルム(A)及びガスバリア性フィルム(B)を用いて、多段蒸着により形成された蒸着基材フィルム(A)/ガスバリア性フィルム(B)の層構成を有する多層フィルムであればよいが、かかる2層の間もしくは外側に、ポリエステル系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、ポリウレタン系フィルム等のフィルムからなる層、粘接着剤層、シール層等、他の層を有していてもよい。
上記その他の層の中でも、多段蒸着により形成された蒸着基材フィルム(A)/ガスバリア性フィルム(B)の層構成を有する多層フィルムより形成される主要バリア層より外気側になる部分にポリオレフィン系フィルム、好ましくはポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、あるいはフッ素系フィルムを用いることが、該主要バリア層に到達する水蒸気を減少させるために好ましい。
かかるポリオレフィン系フィルムとしては、汎用のポリオレフィン系フィルムを用いることできる。
例えば、ポリプロピレン、ポリブテン−1、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンなどのホモポリマーが挙げられる他、プロピレンを主成分とするエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、スチレンなどとの共重合体、さらには無水マレイン酸などのカルボン酸でグラフト変性されたもの、ブテン−1を主成分とするエチレン、プロピレン、ブテン−2、イソブチレン、ブタジエン、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1などとの共重合体、さらには無水マレイン酸などのカルボン酸でグラフト変性されたもの、エチレンを主成分とするプロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、1−ヘキセン、1−オクテン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸、メタクリル酸グリシディルなどとの共重合体、さらには無水マレイン酸などのカルボン酸でグラフト変性されたもの等を挙げられる。これらの中でも、特にはポリプロピレンを用いることが防湿性および工業的な生産性の点で好ましい。
また、延伸処理を施し、一軸延伸或いは二軸延伸ポリオレフィン系フィルムを用いることも好ましく、特には、より薄膜でより高いガスバリア性を得るという点から、二軸延伸ポリオレフィン系フィルムが好ましく用いられる。
ポリオレフィン系フィルムの厚みに関しては、通常5〜200μm、特には10〜100μmであることが好ましい。フィルム厚みが薄すぎると、得られる真空断熱構造体の芯材となる断熱性材料の充填性が低下し、厚すぎると、加工性が悪くなるばかりでなく経済的にも不利となる。
更に、かかるポリオレフィン系フィルムは、初期弾性率が1〜100GPa、更には0.5〜50GPaであることが好ましく、また、水蒸気透過度が10g/m2/day以下、更には8g/m2/day以下であることが好ましい。なお、上記初期弾性率は、JIS K 7127に則して測定された23℃×60%r.h.での値であり、水蒸気透過度は、JIS Z 0208に則して測定された23℃×Δ90%r.h.での値である。
本発明においては、このようにして得られる多層フィルムを用いて、断熱性材料を密封包装して真空断熱構造体を形成する。
断熱性材料を包装するに当たって、その包装方法は特に限定されないが、例えば、多層フィルムを袋状に加工した外装袋を形成し、その中に断熱性材料を入れる方法を用いることができる。
このように、多層フィルムによって外装袋を形成する際には、多層フィルムが、外装袋の内側となる面に、シール層を有することが好ましい。シール層として特に限定されないが、シール強度の観点からポリオレフィン系樹脂層が好ましく、中でもポリプロピレンや高密度ポリエチレンや低密度ポリエチレンあるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体などが好適に用いられる。シール層については、上記樹脂より別途フィルムを作製しておき、外装袋の内側となる面に更に積層することもでき、また、外装袋の内側となる面に直接押し出して積層することもできる。シール層をフィルムとして積層する場合は、無延伸フィルムとして積層する方がシール性を得る点で有利である。シール層の厚みは、通常は10〜100μm、特には20〜80μmが好ましい。
本発明の多層フィルムを用いて断熱性材料を密封包装する際の好ましい層構成としては、ガスバリア性および防湿性の点から、外層側(断熱性材料とは逆側)から、
(1):PETフィルム/多段アルミ蒸着層//(接着剤層)//二延伸PVAフィルム//(接着剤層)//ポリエチレン層(シール層))
(2):二軸延伸ポリプロピレンフィルム//(接着剤層)//PETフィルム/多段アルミ蒸着層//(接着剤層)//二延伸PVAフィルム//(接着剤層)//ポリエチレン層(シール層))
(3):PETフィルム/多段アルミ蒸着層//(接着剤層)//二延伸PVAフィルム//ポリエチレン層(シール層))
(4):二軸延伸ポリプロピレンフィルム//(接着剤層)//PETフィルム/多段アルミ蒸着層//(接着剤層)//二延伸PVAフィルム/ポリエチレン層(シール層))
等を挙げることができるが、かかる層構成に限定されるものではない。
多層フィルムからなる外装袋に入れる断熱性材料としては特に限定されないが、内部に連続気泡を有する高分子、あるいは無機物や金属の微粉末が好ましく用いられ、多層フィルムからなる外装袋内部を真空引きしても形状を保持できるものである。多層フィルムからなる外装袋内部を真空引きし、開口部を封止して用いるにあたり、断熱性材料の高分子が気泡を有していない、あるいは独立気泡を有するものであると、真空断熱構造体の断熱効果が低減し好ましくない。
かかる断熱性材料としては、具体的には、アルミナ、シリカ、パーライトなどの微粉末、グラスウール、ロックウール、ケイソウ土、ケイ酸カルシウム成形体、連続気泡を有するウレタンフォーム、カーボンフォーム、フェノールフォーム、フェノールーウレタンフォームなどを挙げることができる。
また、かかる断熱性材料には、使用しているガスバリア性フィルム(B)が含有する水分により真空度の低下をまねく場合があるため、生石灰や塩化カルシウム等の乾燥剤を混合して使用することも好ましい。
かかる断熱性材料を多層フィルムからなる外装袋に入れ、減圧し、最後に袋の開口部をシールして閉じることで真空断熱構造体を得ることができる。該真空断熱構造体の真空度としては、特に制限されるわけではないが、1Torr以下が好ましく、さらには0.8Torr以下が好ましく、特には0.6Torr以下が好ましい。
本発明においては、真空断熱構造体の形状、大きさは特に限定されるものではなく、目的に応じて決めればよい。例えば、かかる真空断熱構造体形状については、一つの真空断熱構造体に対し、多層フィルムからなる外装袋が一つ含まれる形状でもよいし、一つの真空断熱構造体に対し、外装袋が複数個含まれる形状のものでもよい。
かかる外装袋が複数個含まれる形状である場合においては、外装袋部同士のつなぎ目になるシール部分が真空断熱構造体の中で厚みの薄い部分となり、真空断熱構造体を変形させた場合の変形の中心部となるため、真空断熱構造体が容易に変形することが可能となり好ましい。
更には、外的要因によって穴等が発生し、真空断熱構造体の真空性が失われてしまう場合にも、外装袋が複数個含まれる形状であると、断熱性の減少を最小限に留めることができ好ましい。
かかる真空断熱構造体の大きさに関しては、一般的に厚み5〜100mmで、縦と横が100〜1000mmの範囲の直方体状に加工される場合が多い。真空断熱構造体の体積が不必要に大きいと、多層フィルムの袋に穴等の欠陥が発生した場合に性能を失う面積が大きくなり、真空断熱構造体を利用した最終商品の性能を低下させるおそれがあるため、適当な大きさとすることが好ましい。
かくして本発明では、断熱性能に優れ、熱による収縮が小さく変形の発生が生じない真空断熱構造体が得られる。かかる真空断熱構造体は、クーラーボックス、ボトルケース等の生活用品、冷蔵庫、ジャーポット、炊飯器等の生活家電、温水器、浴槽、ユニットバス、便座等の住宅設備、床暖房、太陽光屋根、低温輻射板等の住宅システム、外壁用断熱パネル等の住宅建材、等の断熱材として有効に用いることができるが、これらの中でも、特に冷蔵庫用の断熱材として特に好適に用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
<実施例1>
〔多段蒸着基材フィルム(A)の作製〕
市販のポリエチレンテレフタレートフィルム(テイジン テトロンPC :厚み12μm)の片面に、電子線加熱方式により金属アルミニウムを蒸発させたロール・ツー・ロール方式の真空蒸着装置内で作業真空度1.3×10-2Paの条件で金属アルミニウム層を300Åの厚さになるように蒸着し、一旦蒸着装置内で巻き取った1段アルミ蒸着PETフィルムを、再度同様の蒸着装置に入れて2度目の金属アルミニウム層を200Åの条件で蒸着し、得られたフィルムを2段蒸着PETフィルム(A)とした。
〔ガスバリア性フィルム(B)の作製〕
ジャケット温度を60〜150℃に設定した二軸押出機型混練機(スクリューL/D=40)のホッパーからPVA(重合度1700、4重量%水溶液の粘度40mPa・s、ケン化度99.7モル%、酢酸ナトリウム含有量0.3%、日本合成化学工業社製「ゴーセノールNH−17Q」)と水をPVA/水の重量比40/60にて、定量ポンプにより供給し、混練し、吐出量500kg/hrの条件で吐出した。
この吐出物を直ちに一軸押出機(スクリューL/D=30)に圧送し、温度85〜140℃にて混練した後、Tダイより5℃のキャストロールに押出し、90℃の熱風乾燥機で30秒間乾燥し、含水率25%のPVAフィルム(厚み150μm)を作製した。引き続き、かかるPVAフィルムをMD方向に3.8倍延伸した後、テンターでTD方向に3.8倍延伸し、次いで180℃で8秒間熱固定し、二軸延伸PVAフィルム(B)(厚み12μm)を得た。
〔多層フィルムの作製〕
得られた2段アルミ蒸着PETフィルム(A)の2段アルミ蒸着面側と、二軸延伸PVAフィルム(B)の片面を、ポリエステル系/イソシアネート二液型ポリウレタン系接着剤(武田薬品社製「タケラックA−3210」/武田薬品社製「タケネートA−3072」=3/1(重量比))により70℃で貼合した後、40℃の環境で2日間エージングして積層体を得た。
さらに積層した2段アルミ蒸着PETフィルムの非蒸着面に、市販の二軸延伸ポリプロピレン(東セロ社製「OP U−1 #20」 水蒸気透過度=5.38g/m2/day;厚み20μm)を同様にして貼合し、また該積層体の反対面にあたる二軸延伸PVAフィルムの露出した面側に、熱溶融した高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製「ノバテックHD LY20」)をTダイコーターから315℃の設定で押出しながらコート厚40μmとなるように積層し、多層フィルムを得た(層構成=二軸延伸ポリプロピレンフィルム//接着剤層//PETフィルム/1段アルミ蒸着層/2段アルミ蒸着層//接着剤層//二軸延伸PVAフィルム//ポリエチレン層(シール層))。
〔真空断熱構造体の作製〕
得られた多層フィルムを縦20cm、横20cmの正方形に成形し、これを積層した高密度ポリエチレン層同士が合わせられるように重ね合わせ、その周囲3方の周辺部を幅1cmでシールして貼り合わせ(シール温度140℃)、得られた袋状多層構造体の内部に縦17cm、横17cmに裁断した厚さ25mmのグラスウール片(マグ社製「マグロールRR2425」)を入れて、これを真空包装装置内で0.01Torrの真空度にした状態で、残る1方の開口部を先と同じ条件で熱融着し、真空断熱構造体を得た。
<実施例2>
実施例1において、2段アルミ蒸着PETフィルムのアルミ蒸着層の形成において、1段目の蒸着厚みを200Åとし、2段目の蒸着厚みを200Åとして、さらに同じ真空蒸着装置にて3段目の蒸着層200Åを設け、合計600Åの蒸着層を設けた以外は同様にして積層することで多層フィルムを得た(層構成=二軸延伸ポリプロピレンフィルム//接着剤層//PETフィルム/1段目アルミ蒸着層/2段目アルミ蒸着層/3段目アルミ蒸着層//接着剤層//二軸延伸PVAフィルム//ポリエチレン層(シール層))。
得られた多層フィルムを用いて、実施例1と同様にして真空断熱構造体を得た。
<実施例3>
実施例1において、二軸延伸PVAフィルムの代わりに、市販の二軸延伸EVOHフィルム(クラレ社製、商品名エバールフィルムXL;(エチレン含有量32モル%、ケン化度99.5%以上、厚み12μm))を使用した以外は、実施例1と同様に行い、多層フィルムを得た(層構成=二軸延伸ポリプロピレンフィルム//接着剤層//PETフィルム/1段目アルミ蒸着層/2段目アルミ蒸着層//接着剤層//二軸延伸EVOHフィルム//ポリエチレン層(シール層))。
得られた多層フィルムを用いて、実施例1と同様にして真空断熱構造体を得た。
<比較例1>
実施例1において、PETフィルムに対するアルミ蒸着を1度のみ行い、その厚みを500Åとした以外は、実施例1と同様に行い、多層フィルムを得た(層構成=ナイロンフィルム//接着剤層//PETフィルム/1段目アルミ蒸着層//接着剤層//二軸延伸PVAフィルム//ポリエチレン層(シール層))。
得られた多層フィルムを用いて、実施例1と同様にして真空断熱構造体を得た。
<比較例2>
実施例1において、二軸延伸PVAフィルムを除外し、代わりに該アルミ蒸着層表面に市販のPETフィルム(テイジン テトロンPC :12μm)をポリエステル系/イソシアネート二液型ポリウレタン系接着剤(武田薬品社製「タケラックA−3210」/武田薬品社製「タケネートA−3072」=3/1(重量比))により70℃で貼合した後、40℃の環境で2日間エージングして積層した以外は、実施例1と同様に行い、多層フィルムを得た(層構成=ポリエチレンフィルム//接着剤層//PETフィルム/1段目アルミ蒸着層/2段目アルミ蒸着層//接着層//PETフィルム/ポリエチレン層(シール層))。
得られた多層フィルムを用いて、実施例1と同様にして真空断熱構造体を得た。
上記実施例及び比較例で得られた多層フィルム及び真空断熱構造体について、以下の評価を行った。評価結果は表1および表2に示す。
<酸素透過度>
上記多層フィルムの酸素透過度を、MODERN CONTROLS.INK製 酸素透過度測定装置 「MOCON OX−TRAN 2/20型」(検出限界値0.01ml/(m2・day・atm))を用い、23℃−50%RHの条件で、JIS K 7126(等圧法)に記載の方法に準じて測定した。なお、本発明でいう酸素透過度は、任意の膜厚で測定した透過度(ml/(m2・day・atm))である。また、該酸素透過量が上記した装置の検出限界値以下であった場合は≦0.01と記載する。
<水蒸気透過度>
上記多層フィルムを、L80−5000型水蒸気透過度計(検出限界値0.01g/m2/day)(Lyssy社製)を用い、40℃−Δ90%RHの条件で、JIS K7129(A法)に記載の方法に準じて測定した。なお、本発明でいう透湿度は、任意の膜厚で測定した値(g/m2/day)である。また、該水蒸気透過度が上記した装置の検出限界値以下であった場合は≦0.01と記載する。
Figure 2009241328
<断熱効果>
上記で得られた実施例1〜3および比較例1、2の真空断熱構造体について、まず作成直後に英弘精機社製HC−074により室温25℃を基準として熱伝導率(W/mK)を測定し、測定後40℃×90%r.h.の条件の高温高湿槽内に30日間放置した後、その放置後の熱伝導率を同様にして測定した。
Figure 2009241328
上記表1で示されるように、実施例1〜3の多段蒸着基材フィルムを使用した多層フィルムは、1段のアルミ蒸着しか施していない比較例1の多層フィルムに比べて優れた酸素バリア性、水蒸気バリア性を有することがわかり、更には、上記表2で示されるように、実施例1〜3の多層フィルムを用いた真空断熱構造体は、断熱性能にも優れることがわかる。
一方、1段のアルミ蒸着基材フィルムを用いた比較例1の多層フィルム及びガスバリア性フィルムを用いなかった比較例2の多層フィルムは、酸素バリア性及び水蒸気バリア性共に劣るものであり、更に、該多層フィルムを用いた真空断熱構造体の断熱性能も不充分であることがわかる。
本発明の多層フィルムは、ガスバリア性、特には高湿度下での水蒸気バリア性に優れ、更には断熱性能にも優れる。本発明の真空断熱構造体は、2段以上の蒸着層を有する多段蒸着基材フィルムとガスバリア性フィルムを積層してなる高気密性積層体にて断熱性材料を密封包装してなるため、真空性が長期間維持されることは勿論のこと、高湿度下においてもガスバリア性、断熱性能に優れるため、クーラーボックス、ボトルケース等の生活用品、冷蔵庫、ジャーポット、炊飯器等の生活家電、温水器、浴槽、ユニットバス、便座等の住宅設備、床暖房、太陽光屋根、低温輻射板等の住宅システム、外壁用断熱パネル等の住宅建材、等の断熱材として有効に用いることができるが、これらの中でも、特に冷蔵庫用の断熱材として特に好適に用いることができる。
実施例1で得られた多層フィルムの層構成の図である。
符号の説明
1.二軸延伸ポリプロピレンフィルム
2.接着剤層
3.PETフィルム
4.アルミ蒸着層(第1段蒸着層)
5.アルミ蒸着層(第2段蒸着層)
6.接着剤層
7.二軸延伸PVAフィルム
8.ポリエチレン層(シール層)

Claims (10)

  1. 多段蒸着により形成された蒸着基材フィルム(A)/ガスバリア性フィルム(B)の層構成を有することを特徴とする多層フィルム。
  2. 多段蒸着により形成された蒸着基材フィルム(A)の蒸着面上にガスバリア性フィルム(B)が積層されてなることを特徴とする請求項1記載の多層フィルム。
  3. 多段蒸着により形成された蒸着基材フィルム(A)が、アルミ蒸着基材フィルムであることを特徴とする請求項1又は2記載の多層フィルム。
  4. 多段蒸着により形成された蒸着基材フィルム(A)が、蒸着ポリエステル系フィルムあるいは蒸着ポリオレフィン系フィルムであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の多層フィルム。
  5. 多段蒸着により形成された蒸着基材フィルム(A)の蒸着層の総厚みが、200〜1200Åであることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の多層フィルム。
  6. 多段蒸着により形成された蒸着基材フィルム(A)の蒸着層において、基材フィルムに最も近い第1段目蒸着層の厚みに対して、第2段目以降の蒸着層の総厚みの比率が0.2〜2.5倍であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の多層フィルム。
  7. ガスバリア性フィルム(B)が、ビニルアルコール系フィルムであることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の多層フィルム。
  8. ビニルアルコール系フィルムが、二軸延伸ポリビニルアルコール系フィルムであることを特徴とする請求項7記載の多層フィルム。
  9. 請求項1〜8いずれか記載の多層フィルムによって、断熱性材料を密封包装してなることを特徴とする真空断熱構造体。
  10. 請求項1〜8いずれか記載の多層フィルムが、ガスバリア性フィルムを内側にして断熱性材料を密封包装してなることを特徴とする請求項9記載の真空断熱構造体。
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