以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の真空断熱構造体用外装袋は、蒸着フィルム(A)の蒸着面の反対側から光を照射し、透過する光の数を輝点の数として測定したときに、該輝点の数が、フィルムサイズ4mm×3mm当たり200個以下である蒸着フィルム(A)を含む積層体[I]からなる。
本発明において、輝点とは、蒸着フィルム(A)の蒸着面の反対側から光を照射し、蒸着面側から顕微鏡で観察したときに、光がフィルムを透過するために見られる明るい点のことを言う。これは、蒸着フィルムの蒸着層に微細な欠陥がある場合や蒸着にムラがある場合に、欠陥がある部分や蒸着の薄い部分のみ光が透過し、顕微鏡で観察した際に明るく輝く点として見られるものである。
本発明において、輝点のサイズは直径1〜10μm程度の大きさのものを言い、目視では確認できない程度の微細なものであり、一般にクラックやピンホール等の目視で観測できる欠陥とは区別して用いる。
輝点の数は、下記のようにして測定される。
即ち、蒸着フィルム(A)を、蒸着面を上にして顕微鏡のステージに載せて上からスライドガラスを被せ、蒸着面の反対側から光を照射し、蒸着面側から顕微鏡で観察し、フィルムサイズ4mm×3mm当たりの輝点の数を画像解析ソフトを用いて測定する。
かかる蒸着フィルム(A)の輝点の数は、フィルムサイズ4mm×3mm当たり、200個以下であり、好ましくは150個以下、特に好ましくは100個以下、更に好ましくは70個以下である。かかる輝点の数が多すぎると、水蒸気及び酸素などのガスが真空断熱構造体の内部に進入し、真空断熱構造体の断熱性能が低下する傾向がある。なお、輝点の数は少なければ少ないほどよいが、通常下限値としては1個である。
また、本発明においては、輝点の面積率が0.05%以下である蒸着フィルム(A)を用いることが好ましく、更に好ましくは0.04%以下、特に好ましくは0.03%以下、殊に好ましくは、0.02%以下である。かかる基点の面積率が大きすぎると、輝点の数が少ない場合でも、内部に進入する水蒸気及びガスの総量が増え、真空断熱構造体の断熱性能が低下する傾向がある。なお、輝点の面積率は小さければ小さいほどよいが、通常下限値としては0.0000001%である。
ここで、面積率(%)は以下のようにして計算される。
即ち、蒸着フィルム(A)を、顕微鏡のステージに蒸着面を上にして載せて上からスライドガラスを被せ、蒸着面の反対側から光を照射し、蒸着面側から顕微鏡で観察し、フィルムサイズ4mm×3mm当たりの輝点の総面積を画像解析ソフトを用いて計算し、下式より輝点の面積率を求める。
面積率(%)=(フィルムサイズ3mm×4mm当たりの輝点の総面積/フィルムサイズ3mm×4mmの面積)×100
本発明において、照射される光としては、顕微鏡用照明装置の光であればよく、例えば、400〜750nmの領域の光を用いて行われる。光源の照度は一般的な顕微鏡用照明装置が有する照度であればよく、観察対象の蒸着フィルム近傍では、100〜50000ルクス程度の照度を有していればよい。また、観察対象の蒸着フィルムに応じて照度を調整し、蒸着のムラや微細な欠陥と、そうでない部分とで、輝度の差が明確に出るように照度を調整することが好ましい。照明装置の光源としては、例えば、LED、ハロゲンランプ、蛍光灯、白熱電球、キセノンランプ等が挙げられる。
まず、真空断熱構造体用外装袋に用いる積層体[I]に含まれる、蒸着フィルム(A)について説明する。
本発明の蒸着フィルム(A)は、真空断熱構造体を作製する際に断熱材料を包装する外装袋を構成する層に用いられるフィルムに蒸着処理が施されたものであり、例えば、基材フィルムに蒸着処理が施されたものや、ガスバリア性フィルムに蒸着処理が施されたものを挙げることができる。
基材フィルムとしては、真空断熱構造体用外装袋の基材フィルムとして通常用いられる合成樹脂フィルム、例えば、ポリエステル系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエーテル系フィルム、ポリウレタン系フィルム等の合成樹脂フィルムが挙げられ、基材フィルムが蒸着フィルム(A)として用いられる場合には、かかる合成樹脂フィルム上に蒸着処理による蒸着層を形成させたものを挙げることができる。中でも、ポリエステル系フィルム、ポリオレフィン系フィルム等のフィルムに蒸着層を形成させて基材フィルムとして使用することが、加工性、耐久性および経済性の点で好ましく、特にはポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム等のフィルムに蒸着層を形成させたものが好ましく、殊にはポリエチレンテレフタレートフィルム等のフィルムに蒸着層を形成させたものが好ましい。
また、上記基材フィルムに用いられる合成樹脂フィルムは、延伸処理を施されたものを用いることが、フィルム表面の平滑性や連続塗工機や連続貼合機への適用性の点から好ましく、特には二軸延伸フィルムを用いることが好ましい。
本発明において、基材フィルムとしては、23℃×50%RHの条件でJIS K 7126(等圧法)に記載の方法に準じて測定した際の酸素透過度が、10ml/(m2・day・atm)以下であることが好ましく、特には、5ml/(m2・day・atm)以下であることが好ましい。なお、かかる酸素透過度は小さければ小さいほどよいが、通常下限値としては0.000001ml/(m2・day・atm)である。
また、基材フィルムの厚みとしては、通常5〜80μm、好ましくは8〜40μm、特に好ましくは10〜30μmであることが、コスト面及び、他のフィルムを積層して積層体を得る際に積層体に適度な柔軟性を与えることができる点で好ましい。かかる厚みが厚すぎると積層体が硬くなり真空包装時の形状追従性が低くなり、破損を招く傾向があり、薄すぎるとその基材フィルム層の一部が欠損したりして、充分なガスバリア性が得られない傾向がある。
一方、ガスバリア性フィルムとしては、真空断熱構造体用外装袋のガスバリア性フィルムとして通常用いられる合成樹脂フィルム、例えば、ポリ塩化ビニリデンフィルムやナイロンフィルム、ビニルアルコール系樹脂フィルム等の合成樹脂フィルムを挙げることができ、ガスバリア性フィルムが蒸着フィルム(A)として用いられる場合には、かかる合成樹脂フィルム上に蒸着処理による蒸着層を形成させたものを挙げることができる。合成樹脂の中でも、本発明においては、ガスバリア性の点でビニルアルコール系樹脂フィルムを用いることが好ましい。
ビニルアルコール系樹脂とは、ビニルエステル単位がケン化されてなるビニルアルコール単位を有するものであればよく、好ましくは平均ケン化度が90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、更に好ましくは97モル%以上である。
ビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と略記することがある)や、エチレン−ビニルアルコール系樹脂(以下、「EVOH系樹脂」と略記することがある)を挙げることができ、中でも本発明においては、ガスバリア性の点からPVA系樹脂であることが好ましい。
<PVA系樹脂>
まず、PVA系樹脂について説明する。
PVA系樹脂は水(温水も含む。)に溶解し得る熱可塑性樹脂であり、本発明で用いられるPVA系樹脂としては、未変性のPVAや変性PVAが挙げられる。未変性のPVAは、酢酸ビニルを単独重合し、更にそれをケン化して製造される。一方、変性PVAには、共重合変性PVAと後変性PVAとがあり、その変性量としては本発明の効果を損なわない範囲内であり、通常10モル%未満である。
上記共重合変性PVAは、酢酸ビニルと、酢酸ビニルと共重合可能な不飽和単量体とを共重合させた後、ケン化して製造されるものである。
上記酢酸ビニルと共重合可能な不飽和単量体としては、例えば、エチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩等が挙げられる。
また、共重合変性PVAとして、側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVAを用いることもできる。かかる側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVAは、例えば、(ア)酢酸ビニルと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンとの共重合体をケン化する方法、(イ)酢酸ビニルとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、(ウ)酢酸ビニルと2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソランとの共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法、(エ)酢酸ビニルとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法、等により得られる。
本発明において、側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVAを用いる場合には、側鎖1,2−ジオール構造の含有量は、0.01〜20モル%であることが良好なフィルム成形性を得る点で好ましく、特には0.2〜15モル%、更には0.5〜12モル%が好ましい。
次に、前記の後変性PVAは、未変性のPVAを後変性することにより製造することができる。かかる後変性の方法としては、未変性のPVAあるいは上記変性PVAをアセト酢酸エステル化、アセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化、オキシアルキレン化する方法等が挙げられる。
本発明においては、上記PVA系樹脂の平均重合度が1100以上であることが好ましく、更に好ましい範囲は1100〜4000、特に好ましい範囲は1200〜2600である。かかる平均重合度が低すぎるとフィルムとした時の機械強度が低下する傾向にある。なお、平均重合度が高すぎると製膜および延伸時の加工性が低下する傾向にある。
また、上記PVA系樹脂の平均ケン化度は90モル%以上であることが好ましく、更に好ましい範囲は95〜100モル%、特に好ましい範囲は99〜100モル%である。かかる平均ケン化度が低すぎると耐水性が低下し、ガスバリア性の湿度による変化が著しくなる傾向にあるので、比較的高いものを選ぶことが好ましい。
なお、上記平均重合度及び平均ケン化度は、JIS K6726に準じて測定される。
また、上記PVA系樹脂の4重量%水溶液の粘度としては、2.5〜100mPa・s(20℃)が好ましく、更には2.5〜70mPa・s(20℃)、特には2.5〜60mPa・s(20℃)が好ましい。該粘度が低すぎるとフィルム強度等の機械的物性が劣る傾向があり、高すぎるとフィルムへの製膜性が低下する傾向がある。
なお、上記粘度はJIS K6726に準じて測定されるものである。
これらのPVA系樹脂は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
<EVOH系樹脂>
次に、EVOH系樹脂について説明する。
EVOH系樹脂は、エチレンとビニルエステル系モノマーを共重合させた後にケン化させることにより得られる、水(温水も含む。)には溶解しない熱可塑性樹脂であり、エチレンとビニルエステル系モノマーとの重合は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより行うことができる。
上記ビニルエステル系モノマーとしては、一般的に酢酸ビニルが用いられるが、他のビニルエステル系モノマー、例えば、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等の、通常炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜10、特に好ましくは炭素数4〜7の脂肪族ビニルエステルを用いてもよい。これらのモノマーは通常単独で用いるが、必要に応じて複数種を同時に用いてもよい。
更に、本発明の効果が阻害されない範囲で、エチレン、ビニルエステル系モノマー以外に、他のエチレン性不飽和単量体を共重合していてもよい。他のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1,2−ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類やそのエステル化物、アシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類等が挙げられる。
また、EVOH系樹脂として、側鎖に1,2−ジオール構造を有するEVOH系樹脂を用いることも好ましく、側鎖1,2−ジオール構造の含有量は、EVOH系樹脂の0.01〜20モル%であることが良好なフィルム成形性を得る点で好ましく、特には、0.2〜15モル%、更には0.5〜10モル%が好ましい。
EVOH系樹脂のエチレン含有量は、通常20〜60モル%であるが、良好な延伸性を得る観点からは、エチレン含有量は25モル%以上であることが好ましく、更には30モル%以上であることが特に好ましい。また、ガスバリア性の観点からは、エチレン含有量は55モル%以下、更には50モル%以下であることが特に好ましい。エチレン含有量が多すぎるとガスバリア性が低下する傾向がある。
なお、かかるEVOH系樹脂のエチレン含有量は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
前記EVOH系樹脂におけるビニルエステル成分の平均ケン化度は、JIS K6726(ただしEVOH樹脂は水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液にて)に基づいて計測した値で、通常90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、特に好ましくは99〜100モル%である。かかる平均ケン化度が低すぎた場合にはガスバリア性、熱安定性、耐湿性等が低下する傾向がある。
前記EVOH系樹脂のメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)は、通常0.5〜100g/10分であり、好ましくは1〜50g/10分、特に好ましくは2〜35g/10分である。MFRが大きすぎる場合には、製膜性が不安定となる傾向があり、小さすぎる場合には粘度が高すぎて流動不良が生じて、スジ・ムラなどの外観不良を発生する傾向がある。
かかるEVOH系樹脂には、本発明の目的を阻外しない範囲内で、酸化防止剤、色剤、紫外線吸収剤、スリップ剤、帯電防止剤、可塑剤、硼酸等の架橋剤、無機充填剤、無機乾燥剤等の各種添加剤、ポリアミド、ポリオレフィン、高吸水性樹脂等の各種樹脂を配合してもよい。
更に、本発明の目的を阻外しない範囲内で加熱溶融する場合に安定性を向上させるため、EVOH系樹脂にホウ素化合物をブレンドすることもできる。ここでホウ素化合物としては、例えば、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられる。具体的には、ホウ酸類としては、例えば、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸などが挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルなどが挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂などが挙げられる。これらの化合物のうちでもオルトホウ酸(以下、単に「ホウ酸」と表示する場合がある)であることが好ましい。
EVOH系樹脂にホウ素化合物をブレンドする場合、ホウ素化合物の含有量は、好ましくはホウ素元素換算で20〜2000ppm、より好ましくは50〜1000ppmである。この範囲内でホウ素化合物をブレンドすることで加熱溶融時のトルク変動が抑制されたEVOH系樹脂を得ることができる。ホウ素化合物の含有量が少なすぎると添加効果が小さく、多すぎるとゲル化しやすく、成形性不良となる場合がある。
更に、本発明に用いられるEVOH系樹脂は、公知の方法にてウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化など「後変性」されていてもよい。
これらのEVOH系樹脂は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
<フィルムの製法>
本発明では、上記ビニルアルコール系樹脂を用いてフィルム製膜するのであるが、かかる製膜方法も公知のものでよく、例えば、ドラム、エンドレスベルト等の金属面上にビニルアルコール系樹脂溶液を流延してフィルム形成する流延式成形法、あるいは押出機により溶融押出する溶融成形法によって製膜される。
かかるビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常一軸延伸或いは二軸延伸フィルムとして用いることが好ましく、特にガスバリア性の点から、二軸延伸フィルムとして用いるのが好ましい。かかる一軸および二軸延伸フィルムの流れ方向(MD方向)の延伸倍率としては2.5〜5倍であることが好ましい。
かかる延伸処理方法は、通常行われる一軸延伸方法や、同時二軸延伸、逐次二軸延伸など、公知方法に従い行うことが可能である。
本発明においては、かかる二軸延伸ビニルアルコール系樹脂フィルムの中でも、二軸延伸PVA系樹脂フィルム、二軸延伸EVOH系樹脂フィルムが好ましく用いられ、特には二軸延伸PVA系樹脂フィルムが好ましく用いられる。以下、これら二軸延伸フィルムの具体的な製法について説明する。
〈二軸延伸PVA系樹脂フィルムの製法〉
まず、二軸延伸PVA系樹脂フィルムの製法について説明する。
上記PVA系樹脂を用いて、PVA系樹脂フィルム(延伸前PVA系樹脂フィルム)を製膜するわけであるが、通常は、製膜用の原液として、PVA系樹脂濃度が5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%のPVA系樹脂−水の組成物を調製する。
かかるPVA系樹脂−水組成物には、本発明の効果を損なわない範囲でエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール類の可塑剤やフェノール系、アミン系等の抗酸化剤、リン酸エステル類等の安定剤、着色料、香料、増量剤、消泡剤、剥離剤、紫外線吸収剤、無機粉体、界面活性剤等の通常の添加剤を適宜配合しても差し支えない。また、澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のPVA系樹脂以外の他の水溶性樹脂を混合してもよい。
PVA系樹脂フィルムの製膜法については、特に限定されないが、上記PVA系樹脂−水組成物を押出機に供給して溶融混練した後、Tダイ法、インフレーション法により押出し製膜し、乾燥する方法が好ましい。
かかる方法における押出機内での溶融混練温度は、50〜170℃、特には55〜160℃が好ましい。かかる温度が低すぎるとフィルム肌の不良を招き、高すぎると発泡現象を招く傾向にある。また、製膜後のフィルムの乾燥については、70〜120℃で行うことが好ましく、更には80〜100℃で行うことが好ましい。
上記で得られたPVA系樹脂フィルムに対して、更に二軸延伸を施すことにより、本発明で好ましく用いられる二軸延伸PVA系樹脂フィルムとなる。
かかる二軸延伸については、機械の流れ方向(MD方向)の延伸倍率が2.5〜5倍、幅方向(TD方向)の延伸倍率が2〜4.5倍であることが好ましく、特に好ましくはMD方向の延伸倍率が3〜5倍、TD方向の延伸倍率が2.5〜4.5倍である。該MD方向の延伸倍率が低すぎると延伸による物性向上が得難くかつ耐熱性が損なわれる傾向があり、高すぎるとフィルムがMD方向へ裂けやすくなる傾向がある。また、TD方向の延伸倍率が低すぎると延伸による物性向上が得難く、かつ耐熱性が損なわれる傾向があり、高すぎると工業的にフィルムを製造する際に延伸時の破断が多発する傾向がある。
かかる二軸延伸を行うにあたっては、PVA系樹脂フィルムの含水率を5〜30重量%、特には20〜30重量%に調整しておくことが好ましい。含水率の調整は、乾燥前のPVA系樹脂フィルムを引き続き乾燥する方法、含水率5重量%未満のPVA系樹脂フィルムを水に浸漬あるいは調湿等を施す方法等により行うことができる。かかる含水率が低すぎても、高すぎても延伸工程でMD方向、TD方向の延伸倍率を高めることができない傾向がある。
更に、二軸延伸を施した後は、熱固定を行うことが好ましく、かかる熱固定の温度は、PVA系樹脂の融点より低い温度を選択することが好ましく、特には140〜250℃であることが好ましい。熱固定温度が、融点より80℃以上低い温度の場合は、寸法安定性が悪く収縮率が大きくなる傾向があり、一方、融点より高い場合は、フィルムの厚み変動が大きくなる傾向がある。また、熱固定時間は1〜30秒間であることが好ましく、より好ましくは5〜10秒間である。
また、必要に応じて、熱変形性を更に減少させる目的で、かかる二軸延伸PVA系樹脂フィルムに、水溶液への接触および乾燥の加工を施すことも可能である。水溶液との接触においては、通常5〜60℃、好ましくは10〜50℃の水溶液が用いられ、水溶液との接触時間は、水溶液の温度に応じて適宜選択されるが、工業的には10〜60秒であることが好ましい。
かかる水溶液との接触方法については、例えば、水溶液への浸漬や水溶液の噴霧、水溶液の塗布、スチーム処理などが挙げられ、これらを併用することもできる。水溶液との接触の後、工業的には、エアーシャワー等で非接触的に表面の付着水を取り除き、次いでニップロール等で接触的な水分除去を次に行うことが好ましい。また、乾燥機の種類としては、例えば、金属ロールやセラミックロール等に直接接触して乾燥する方法、あるいは非接触型の乾燥機を用いる方法などが挙げられる。
かかる水溶液との接触と乾燥の後に、得られた二軸延伸PVA系樹脂フィルムを再度巻き取ってロール状とする場合は、フィルムの水分量を通常3重量%以下、好ましくは0.1〜2重量%にすることが望まれる。かかる水分量が多すぎるとフィルムロールの中でフィルム同士が密着してしまう傾向があり、再度加工のための巻き出しを行う際にフィルムが破損するなどの問題を発生するおそれがある。
かくして二軸延伸PVA系樹脂フィルムが得られる。
〈二軸延伸EVOH系樹脂フィルムの製法〉
次に、二軸延伸EVOH系樹脂フィルムの製法について説明する。
上記EVOH系樹脂を用いて、EVOH系樹脂フィルム(延伸前EVOH系樹脂フィルム)を製膜する。
上記EVOH系樹脂を用いて、EVOH系樹脂フィルムを製膜する際には、主に溶融成形が用いられる。以下に溶融成形方法について説明する。
かかる溶融成形時の条件としては、特に限定されないが、通常はノンベント、スクリュータイプ押出機を用い、溶融温度190〜250℃で押出製膜される。通常、圧縮比2.0〜4.5のスクリューを用い、Tダイス、または丸ダイスを用いて製膜される。
かくしてEVOH系樹脂フィルムが得られるわけであるが、該フィルムに対しては、更に、二軸延伸、好ましくは逐次二軸延伸を施すことにより、二軸延伸EVOH系樹脂フィルムとすることができる。
かかる二軸延伸の面積倍率については、好ましくは3倍以上、より好ましくは6倍以上、特に好ましくは9倍以上であることが、ガスバリア性および機械強度の観点から重要である。延伸する方法としては、ダブルバブル法、テンター法、ロール法等の一軸または二軸延伸する方法等公知の延伸方法を採用することができ、二軸延伸の場合は、同時延伸、逐次延伸のいずれの方式も採用出来る。
また、延伸前の原反フィルムに予め含水させておくことで容易な連続延伸が可能となり、延伸前の原反フィルムの水分率としては、2〜30重量%が好ましく、特には5〜30重量%が好ましく、更には10〜30重量%が好ましい。水分率が少なすぎると、延伸斑が残りやすく、また特にテンターで延伸する場合、グリップに近い部分の延伸倍率が高くなるために、グリップ近辺での破れが生じやすくなることがある。一方、水分率が高すぎると、延伸された部分の弾性率が低く、未延伸部分との差が充分でなく、延伸斑が残りやすくなることがある。
かかる延伸温度に関しては、延伸前の原反フィルムの水分率によって多少異なるが、一般に50〜130℃の範囲が適応可能である。特に同時二軸延伸においては、70〜100℃の範囲において、厚み斑の少ない二軸延伸EVOH系樹脂フィルムが得られやすく、逐次二軸延伸においては、ロールでの長手方向の延伸において70〜100℃、テンターでの幅方向の延伸において80〜120℃の温度範囲で行うことにより、厚み斑の少ない二軸延伸EVOH系樹脂フィルムが得られやすい。
そして、二軸延伸EVOH系樹脂フィルムの製造に関する更に重要な因子としては、延伸後の熱処理と、その熱処理の結果として得られる二軸延伸EVOH系樹脂フィルムの密度および水分率がある。熱処理は、EVOHの融点より5〜40℃低い温度で、5〜20秒間行われることが好ましい。熱処理温度が低すぎると、熱処理が不充分なため、蒸着工程に耐えるだけの耐熱性および充分なガスバリア性が得られない傾向がある。一方、熱処理温度が高すぎると、部分的に延伸効果が低減される傾向がある。
かくして二軸延伸EVOH系樹脂フィルムが得られる。
上記ガスバリア性フィルムは、23℃×50%RHの条件でJIS K 7126(等圧法)に記載の方法に準じて測定した際の酸素透過度が、1ml/(m2・day・atm)以下であることが好ましく、特には、0.1ml/(m2・day・atm)以下であることが好ましい。なお、かかる酸素透過度は小さければ小さいほどよいが、通常下限値としては0.000001ml/(m2・day・atm)である。
また、ガスバリア性フィルムの厚みとしては、通常、5〜100μmであり、好ましくは5〜50μm、特に好ましくは、5〜30μmである。かかる厚みが厚すぎると、真空断熱構造体に仕上げた場合に外装袋に入るシワの部分へ集中する応力が増大しピンホールの発生する可能性が高まる傾向があり、薄すぎると真空断熱構造体に仕上げた場合の外装袋としての強度が充分に得られず、加工中及び使用中に破袋する傾向がある。
本発明で用いられる蒸着フィルム(A)は、上記基材フィルムに蒸着処理が施されてなる蒸着基材フィルム(A−1)や、上記ガスバリア性フィルムに蒸着処理が施されてなる蒸着ガスバリア性フィルム(A−2)であることが好ましい。
蒸着材料は、真空断熱構造体に用いる積層体を作製する際に用いられる公知一般の蒸着材料であればよいが、金属または金属酸化物が好ましく用いられる。
上記金属または金属酸化物としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、クロム、スズなどの金属、またはかかる金属の酸化物を用いることができる。それらのなかでも、アルミニウム、金、銀、スズが好ましく用いられ、特にアルミニウムが、コストの面からも好ましく用いられる。また、金属または金属酸化物による蒸着の代わりに、シリカ蒸着を行うこともできる。
蒸着方法としては、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、抵抗加熱蒸着法、高周波誘導加熱蒸着法、電子ビーム加熱蒸着法などの一般的な真空蒸着法を用いることができるが、特に本発明においては蒸着フィルム(A)の輝点の数を200個以下にするために、更に、輝点の面積率を0.05%以下にするために、例えば以下のような蒸着をすることが好ましい。
即ち、本発明においては、フィルムへの蒸着処理の際、真空度を一定に保ちながら蒸着したり、また、比較的遅い速度で蒸着したりすることが好ましい。また、蒸着処理の際の加熱温度が一定であることが好ましい。更には、蒸着直後の巻取りまたはスリット工程時に蒸着面が削れるのを防ぐために、蒸着面に接触するロール数をできる限り少なくし、ロールの材質も蒸着面に負荷を与えない材質にすることが望ましい。これらの方法により、蒸着材料の揮発量が一定となり、蒸着ムラのない蒸着層が得られる。結果として輝点の数が少ない、更に、輝点の面積率の小さい蒸着フィルムが得られるのである。
また、フィルムに蒸着処理を施す前に、蒸着されるフィルムの表面に前処理をすることも好ましく、かかる前処理としては、例えば、コロナ処理等の基材そのものの活性化を促す方法と、ポリエチレンやポリエーテルを主剤としウレタン系硬化剤を用いるようなコーティング剤で薄膜層を形成する方法を挙げることができる。
なお、蒸着は、一度の蒸着処理で得られたものであってもよいし、複数回にわたり蒸着処理を繰り返して得られたものであってもよい。
蒸着の厚みは、通常10〜100nm、特には30〜80nmが好ましい。薄すぎると、熱放射特性が得られにくくなる傾向があり、厚すぎると、その厚みを得るための蒸着時間が長くなり、蒸着時の熱的な影響が大きくなるとともにコストがかさむ傾向があり、工業的に好ましくない傾向がある。
本発明における積層体[I]は、上記蒸着フィルム(A)を少なくとも一層含むものであるが、強度の点や、ガスバリア性の点などから、基材フィルム/ガスバリア性フィルムの層構成を含み、基材フィルム及びガスバリア性フィルムの少なくとも一つが蒸着フィルム(A)であることが好ましい。基材フィルムまたはガスバリア性フィルムが蒸着層を有しない場合には、蒸着前の各種フィルムをそのまま用いることができる。
なお、基材フィルムやガスバリア性フィルムは、それぞれ一層のみ用いてもよいし、二層以上積層してもよい。また、基材フィルムやガスバリア性フィルムは、一種または二種以上のフィルムを用いることができる。
更に、本発明における積層体[I]が、基材フィルムの外側に保護フィルムを積層してなり、ガスバリア性フィルムの内側にシール層を積層してなるものであることが好ましい。
本発明で用いられる保護フィルムは、主として、積層体[I]を用いて真空断熱構造体用外装袋を作製したときの外層を保護する目的で用いられるフィルムであり、例えば、ポリエステル系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、ポリウレタン系フィルム等が挙げられる。中でもポリオレフィン系フィルム、好ましくはポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、あるいはフッ素系フィルムを用いることが、水蒸気バリア性を有することから好ましい。
かかるポリオレフィン系フィルムとしては、汎用のポリオレフィン系フィルムを用いることできる。
例えば、ポリプロピレン、ポリブテン−1、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンなどのホモポリマーが挙げられる他、プロピレンを主成分とするエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、スチレンなどとの共重合体、更には無水マレイン酸などのカルボン酸でグラフト変性されたもの、ブテン−1を主成分とするエチレン、プロピレン、ブテン−2、イソブチレン、ブタジエン、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1などとの共重合体、更には無水マレイン酸などのカルボン酸でグラフト変性されたもの、エチレンを主成分とするプロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、1−ヘキセン、1−オクテン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸、メタクリル酸グリシディルなどとの共重合体、更には無水マレイン酸などのカルボン酸でグラフト変性されたもの等を挙げられる。これらの中でも、特にはポリプロピレンを用いることが防湿性および工業的な生産性の点で好ましい。
ここで主成分とは、全体の過半を占める成分のことをいい、全体が主成分のみからなる場合も含む意味である。
また、延伸処理を施し、一軸延伸或いは二軸延伸ポリオレフィン系フィルムを用いることも好ましく、特には、より薄膜でより高いガスバリア性を得るという点から、二軸延伸ポリオレフィン系フィルムが好ましく用いられる。
保護フィルムの厚みに関しては、通常5〜200μm、特には10〜100μmであることが好ましい。厚みが薄すぎると得られる真空断熱構造体の芯材となる断熱性材料の充填性が低下する傾向があり、厚すぎると加工性が低下するばかりでなく経済的にも不利となる傾向がある。
更に、保護フィルムは、初期弾性率が1〜100GPa、更には0.5〜50GPaであることが好ましく、また、水蒸気透過度が10g/m2/day以下、更には8g/m2/day以下であることが好ましい。なお、上記初期弾性率は、JIS K 7127に則して測定された23℃×60%RHでの値であり、水蒸気透過度は、JIS Z 0208に則して測定された23℃×90%RHでの値である。なお、かかる水蒸気透過度は小さければ小さいほどよいが、通常下限値としては0.0000001g/m2/dayである。
本発明で用いられるシール層は、積層体[I]を用いて真空断熱構造体用外装袋を作製したときの内側に設けられるものであり、通常、シール強度の観点からポリオレフィン系樹脂層からなる層であることが好ましく、中でもポリプロピレンや高密度ポリエチレンや、低密度ポリエチレンが好ましく用いられる。また、ポリオレフィン系樹脂以外として、エチレン−酢酸ビニル共重合体なども好適に用いられる。
本発明においては、シール層を形成するに当たり、(1)上記シール層を形成する樹脂を用いて、別途フィルムを作製しておき、外装袋の内側となる面に更に積層することもでき、また、(2)外装袋の内側となる面に直接溶融押出形成にて積層することもできるが、(1)のほうがシール性の点で好ましい。
シール層の厚みは、通常は10〜100μm、特には20〜80μmが好ましく、薄すぎるとシール強度が低下する傾向があり、厚すぎるとシール層の端面からのガス侵入が助長されることになりガスバリア性が低下する傾向がある。
本発明において、積層体[I]を構成する各層を積層する方法としては、例えば、ポリエステルやポリエーテルを主剤としてイソシアネート系の硬化剤を用いる接着剤によるノンソルベントドライラミネート法、溶剤ドライラミネート法や、エマルジョン系接着剤によるウェットラミネート法などがあるが、特にこの方法に限られるものではない。
また、接着剤層の厚みとしては、接着強度の点から0.1〜10μmであることが好ましく、特には0.3〜7μm、更には0.5〜5μmであることが好ましい。かかる接着剤層の厚みが薄すぎると接着力が不充分となる傾向があり、厚すぎると接着剤層そのものの破壊によりデラミが発生し、接着強度が低下する傾向がある。
本発明における積層体[I]の全体の厚みは、通常5〜500μmであり、特には、10〜200μmが好ましい。
また、本発明の積層体[I]の水蒸気透過度は、通常1g/m2/day以下であり、更には0.5g/m2/day以下であることが好ましい。かかる水蒸気透過度が大きすぎるとガスバリア性が低下するため、真空断熱構造体の断熱性能が低下する傾向がある。なお、かかる水蒸気透過度は小さければ小さいほどよいが、通常下限値としては0.00001g/m2/dayである。
また、水蒸気透過度は、JIS Z 0208に則して測定された23℃×90%RHでの値である。
また、積層体[I]の酸素透過度は、23℃×50%RHの条件で、JIS K 7126(等圧法)に記載の方法に準じて測定した際の値が、通常0.5ml/(m2・day・atm)以下、好ましくは、0.1ml/(m2・day・atm)以下である。酸素透過度が高すぎると、上記水蒸気と同様に、真空断熱構造体を構成した後に酸素や窒素などの外気構成ガスが内部に侵入し断熱性能を著しく低下させる傾向がある。なお、かかる酸素透過度は小さければ小さいほどよいが、通常下限値としては0.000001ml/(m2・day・atm)である。
かくして、上記の積層体[I]を用いて、真空断熱構造体用外装袋が得られる。本発明においては、外装袋を形成する際に、積層体[I]のシール層を内側にして、形成することが好ましい。なお、積層体[I]がシール層を有しない場合は、ガスバリア性フィルムが内側になるようにして真空断熱構造体用外装袋を形成することが好ましい。かかる外装袋を用いて断熱性材料を密封包装することにより、本発明の真空断熱構造体を得ることができる。
<真空断熱構造体>
次に、本発明の真空断熱構造体について説明する。
断熱性材料を包装するに当たって、その包装方法は特に限定されないが、例えば、積層体[I]を袋状に加工した外装袋を形成し、その中に断熱性材料を入れる方法を用いることができる。
本発明の積層体[I]を用いてなる真空断熱構造体用外装袋で断熱性材料を密封包装する際の好ましい層構成としては、ガスバリア性および防湿性、更には長期耐久性の点から、外層側(断熱性材料とは逆側)から、例えば、
(1)保護フィルム/接着剤層/蒸着ポリエステル系フィルム(蒸着面)/接着剤層/二軸延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルム/接着剤層/シール層、
(2)保護フィルム/接着剤層/蒸着ポリエステル系フィルム(蒸着面)/接着剤層/(蒸着面)蒸着二軸延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルム/接着剤層/シール層、
(3)蒸着ポリエステル系フィルム(蒸着面)/接着剤層/蒸着ポリエステル系フィルム(蒸着面)/接着剤層/二軸延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルム/接着剤層/シール層、
等を挙げることができるが、かかる層構成に限定されるものではない。
本発明においては、特に、水蒸気バリア性の点から、上記(1)または(3)の層構成が好ましい。
また、各層の間に、更に、ガスバリア性フィルムや接着剤(または粘着剤)層等の他の層を有していてもよい。
積層体[I]からなる外装袋に密封包装される断熱性材料としては、例えば、内部に連続気泡を有する高分子、あるいは無機物や金属の微粉末が好ましく用いられ、外装袋内部を真空引きしても形状を保持できるものである。外装袋内部を真空引きし、開口部を封止して用いるにあたり、断熱性材料の高分子が気泡を有していない、あるいは独立気泡を有するものであると、真空断熱構造体の断熱効果が低減し好ましくない。
かかる断熱性材料としては、具体的には、ウレタンフォーム、カーボンフォーム、フェノールフォーム、フェノール−ウレタンフォームなどの連続気泡を有する高分子、アルミナ、シリカ、パーライトなどの微粉末、グラスウール、ロックウール、ケイソウ土、ケイ酸カルシウムなどの成形体等を挙げることができる。
これらの中でも、グラスウールなどの繊維状断熱性材料、粒状酸化ケイ素、発泡樹脂体などの粒状断熱性材料が、外装袋内部を真空引きしても形状を保持できる点や、気泡を有しているため真空断熱構造体の断熱効果を保持することができる点で好ましい。
また、かかる断熱性材料には、水分により真空度の低下をまねく場合があるため、酸化カルシウムや塩化カルシウム等の乾燥剤を混合して使用することも好ましい。
かかる断熱性材料を積層体[I]からなる外装袋に入れ、真空包装し、真空断熱構造体を形成するわけであるが、断熱性材料を外装袋に入れる際に、断熱性材料は予め所定の形状(例えば、立方体、直方体など)に形成しておくことが、断熱性能や作業性の点で好ましい。
本発明においては、断熱性材料を積層体[I]からなる外装袋に入れた状態で、減圧し、最後に袋の開口部をシールして閉じることで真空断熱構造体を得ることができる。該真空断熱構造体の真空度としては、特に制限されるわけではないが、100Pa以下が好ましく、更には10Pa以下が好ましく、特には5Pa以下が好ましい。
本発明においては、真空断熱構造体の形状、大きさは特に限定されるものではなく、目的に応じて決めればよい。例えば、かかる真空断熱構造体形状については、一つの真空断熱構造体に対し、積層体[I]からなる外装袋が一つ含まれる形状でもよいし、一つの真空断熱構造体に対し、外装袋が複数個含まれる形状のものでもよい。
かかる外装袋が複数個含まれる形状である場合においては、外装袋部同士のつなぎ目になるシール部分が真空断熱構造体の中で厚みの薄い部分となり、真空断熱構造体を変形させた場合の変形の中心部となるため、真空断熱構造体が容易に変形することが可能となり好ましい。更には、外的要因によって穴等が発生し、真空断熱構造体の真空性が失われてしまう場合にも、外装袋が複数個含まれる形状であると、断熱性の減少を最小限に留めることができ好ましい。
かかる真空断熱構造体の大きさに関しては、一般的に厚み5〜100mmで、縦と横が100〜1000mmの範囲の直方体状に加工される場合が多い。真空断熱構造体の体積が不必要に大きいと、外装袋に穴等の欠陥が発生した場合に性能を失う面積が大きくなり、真空断熱構造体を利用した最終商品の性能を低下させるおそれがあるため、適当な大きさとすることが好ましい。
かくして本発明では、蒸着フィルム(A)において観測される輝点の数が、フィルムサイズ4mm×3mm当たり200個以下である蒸着フィルム(A)を含む積層体[I]を用いてなる真空断熱構造体用外装袋を用いることにより、優れた断熱性能を有し、更に、長期間使用した際にも断熱性能の低下が非常に少ない真空断熱構造体が得られる。かかる真空断熱構造体は、クーラーボックス、ボトルケース等の生活用品、冷蔵庫、電気ポット、炊飯器等の生活家電、温水器、浴槽、ユニットバス、便座等の住宅設備、床暖房、太陽光屋根、低温輻射板等の住宅システム、外壁用断熱パネル等の住宅建材、等の断熱材として有効に用いることができる。とりわけ、これらの中でも、特に冷蔵庫用の断熱材として特に好適に用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
<実施例1>
以下のフィルムを用意した。
〔蒸着フィルム(A)〕
(アルミ蒸着二軸延伸ポリエステルフィルム(A−1))
厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡社製、商品名「コスモシャイン」)の平滑な片方の面に、金属アルミニウムを真空蒸発させ、厚さ80nmのアルミ蒸着二軸延伸ポリエステルフィルム(A−1)を得た。
得られたアルミ蒸着二軸延伸ポリエステルフィルム(A−1)を下記の通り測定したところ、輝点の数は28個であり、輝点の面積率は0.04(%)であった。
<輝点の数の測定方法>
上記で得られたアルミ蒸着二軸延伸ポリエステルフィルム(A−1)を、顕微鏡(キーエンス社製、デジタルマイクロスコープVHX−1000)のステージに載せて上からスライドガラスを被せ、蒸着面の反対側から光を照射し、蒸着面側から顕微鏡で観察し(倍率:100倍)、フィルムの5カ所(右上、左上、右下、左下、中央)において、それぞれ1カ所につき画像サイズ4mm×3mmとなるように画像を得た。得られた画像を、それぞれ画像解析ソフト(ImageJ)で8bitのモノクロ画像に変換後、コントラストが100〜255の部分をカウントするように設定し、その数を測定した。そして、測定した5カ所の数の平均値を、フィルムの輝点の数とした。
なお、上記得られた画像のうち、中央箇所の画像を、画像解析ソフト(ImageJ)で8bitのモノクロ画像に変換したものを図1に示した。
<輝点の面積率の測定方法>
上記、輝点の数の測定方法と同様に、アルミ蒸着二軸延伸ポリエステルフィルム(A−1)の画像を得た後、画像解析ソフト(ImageJ)を用いて輝点の総面積を測定し、輝点の面積率(%)を求めた。輝点の総面積についても、フィルムの5カ所(右上、左上、右下、左下、中央)において測定し、その平均値をフィルムの輝点の数とした。
〔二軸延伸PVAフィルム〕
ジャケット温度を60〜150℃に設定した二軸押出機型混練機(スクリューL/D=40)のホッパーからPVA(重合度1700、4重量%水溶液の粘度40mPa・s、ケン化度99.7モル%、酢酸ナトリウム含有量0.3%)と水をPVA/水の重量比40/60にて、定量ポンプにより供給し、混練し、吐出量500kg/hrの条件で吐出した。
この吐出物を直ちに一軸押出機(スクリューL/D=30)に圧送し、温度85〜140℃にて混練した後、Tダイより5℃のキャストロールに押出し、90℃の熱風乾燥機で30秒間乾燥し、含水率25%のPVAフィルム(厚み150μm)を作製した。引き続き、かかるPVAフィルムをMD方向に3.8倍延伸した後、テンターでTD方向に3.8倍延伸し、次いで180℃で8秒間熱固定し、二軸延伸PVAフィルム(厚み12μm)を得た。
〔保護フィルム〕
(二軸延伸ポリプロピレンフィルム)
厚さ25μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡社製、商品名「パイレンOT」)を用意した。このフィルムの23℃×90%RHでの水蒸気透過度を測定したところ7.2g/m2/dayであった。
〔シール層〕
(無延伸ポリプロピレンフィルム)
厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡社製、商品名「パイレンCT」)を用意した。
上記各フィルムを用いて、下記の通り真空断熱構造体を作製した。
アルミ蒸着二軸延伸ポリエステルフィルム(A−1)の蒸着処理を施していない面に、接着剤用主剤「タケラックA626」(三井化学社製)17部と接着剤用硬化剤「タケネートA50」(三井化学社製)17部に酢酸エチルを66部混合したドライラミネート用接着剤を塗工量10g/m2となるようにメッシュ100μmのグラビアロールを使ったグラビアコーターによって塗布し、これを80℃に暖めた乾燥機中を通し、滞留時間12秒で、乾燥後塗工量を3.4g/m2とした後、ラミネート圧力3.5kg/cm2(0.35MPa)で、二軸延伸ポリプロピレンフィルムと貼り合わせ、積層体(1)を得た。
次に、二軸延伸PVAフィルムの表面に、接着剤用主剤「タケラックA626」(三井化学社製)17部と接着剤用硬化剤「タケネートA50」(三井化学社製)17部に酢酸エチルを66部混合したドライラミネート用接着剤を塗工量10g/m2となるようにメッシュ100μmのグラビアロールを使ったグラビアコーターによって塗布し、これを80℃に暖めた乾燥機中を通し、滞留時間20秒で、乾燥後塗工量を3.4g/m2とした後、ラミネート圧力3.5kg/cm2(0.35MPa)で、上記の積層体(1)のアルミ蒸着ポリエステルフィルム(A−1)のアルミ蒸着を施した面と貼り合わせ、積層体(2)を得た。
次に、上記で得られた積層体(2)の二軸延伸PVAフィルムの表面(蒸着ポリエステルフィルムが積層されていない面)に、接着剤用主剤「タケラックA626」(三井化学社製)17部と接着剤用硬化剤「タケネートA50」(三井化学社製)17部に酢酸エチルを66部混合したドライラミネート用接着剤を塗工量10g/m2となるようにメッシュ100μmのグラビアロールを使ったグラビアコーターによって塗布し、これを80℃に暖めた乾燥機中を通し、滞留時間12秒で、乾燥後塗工量を3.4g/m2とした後、ラミネート圧力3.5kg/cm2(0.35MPa)で、厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを貼り合わせ、積層体[I−1]を得た。
上記で得られた積層体[I−1]を用いて、下記の通り、真空断熱構造体用外装袋を作製した。
即ち、積層体[I−1]を、30cm角のシートに裁断し、これを2枚用いて、その無延伸プロピレンフィルムの面同士を重ね合わせて、端部から10mmの幅で四辺の内三辺をシール温度130℃にてヒートシールすることで、三方シール包装袋(真空断熱構造体用外装袋)を得た。
(層構成=外側:二軸延伸ポリプロピレンフィルム/接着剤層/アルミ蒸着ポリエステルフィルム(蒸着面)/接着剤層/二軸延伸PVAフィルム/接着剤層/無延伸ポリプロピレンフィルム:内側)
次に、市販の微細グラスウール(マグ・イゾベール社製、「WR800」)を2kg/m2となるように積層し、これを630℃に加熱してから厚さ10mmになるまで荷重をかけて圧縮し、これを徐冷した後に20cm角に裁断して断熱性材料を得た。
上記で得られた断熱性材料をあらためて150℃の恒温槽に1時間放置して乾燥した。一方、三方シール包装袋(真空断熱構造体用外装袋)を口を開いたままの状態で100℃の恒温槽に1時間放置して乾燥し、その中に上記の乾燥した断熱性材料を挿入し、更に、その三方シール包装袋の内縁部にポリプロピレンの不織布に入った生石灰乾燥剤3gを同封し、直ちに真空包装機に配置し、その真空包装機にて2Paの圧力で減圧封止し、真空断熱構造体[V−1]を得た。
得られた真空断熱構造体[V−1]について、以下の評価を行った。結果を下記表1に示す。
<断熱性評価>
真空断熱構造体[V−1]を20℃×40%RHの恒温室内で24時間放置した後、熱伝導率(W1)(mW/m・K)を測定した。その後、70℃×90%RHの環境下で13日間放置した後に、同様に熱伝導率(W2)(mW/m・K)を測定し、耐久試験による熱伝導率劣化(W3=W2−W1)(mW/m・K)を求め、断熱性能として評価した。
なお、熱伝導率は、熱伝導率測定装置(英弘精機社製、HC−074)により測定した。
<実施例2〜4、比較例1〜2>
下記表1の通り、蒸着フィルム(A)として輝点の数及び面積率の異なるアルミ蒸着ポリエステルフィルムを用いた以外は実施例1と同様にして真空断熱構造体を製造し、得られた真空断熱構造体について、実施例1と同様の評価を行った。
なお、比較例1において、輝点の数の測定時に得られた画像のうち、中央箇所の画像を、画像解析ソフト(ImageJ)で8bitのモノクロ画像に変換したものを図2に示した。実施例1の画像である図1と、比較例1の画像である図2とを比べると、図1においては、白点がほとんど見られないのに対し、図2においては、白点が散見された。このように、画像における白点の数を輝点の数として測定できることが分かる。
上記表1で示されるように、輝点の数が200個以下である蒸着フィルム(A)、好ましくは更に面積率が0.05(%)以下である蒸着フィルム(A)を含む積層体を用いてなる実施例1〜4の真空断熱構造体は、初期の熱伝導率(W1)が低く、断熱性能に優れ、更には耐久試験後の熱伝導率劣化(W3)が少なく、断熱性能の持続性にも優れるものであった。これに対して、輝点の数が200個を超える蒸着フィルムを含む積層体を用いてなる比較例1及び2の真空断熱構造体は、初期の熱伝導率は実施例1〜4と同程度であるものの、耐久試験の熱伝導率劣化が大きく、断熱性能が著しく低下しており、実施例の真空断熱構造体のほうが断熱性能の持続性に優れ、長期耐久性に優れているものであることがわかる。