JP2007261074A - 多層延伸フィルム - Google Patents

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耕司 山田
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Abstract

【課題】 ガスバリア性、耐屈曲性、透明性に優れた多層延伸フィルムを提供すること。
【解決手段】 下記の構造単位(1)を含有するエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)と、構造単位(1)を含有しないエチレン−ビニルアルコール系共重合体(B)を含有する層を有する多層フィルムを延伸後、熱固定処理してなることを特徴とする多層延伸フィルム。
【化1】
Figure 2007261074

(ここで、R1は水素または有機基を表し、Xは結合鎖を表し、nは0または1を表し、R2〜R4はそれぞれ水素または有機基を表す。)

Description

本発明は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(以下、EVOHと略記する。)を含有する層を有する多層延伸フィルムに関し、さらに詳しくは、延伸性、ガスバリア性、耐屈曲性、透明性に優れた多層延伸フィルムに関する。
一般にEVOHは、透明性、ガスバリア性、保香性、耐溶剤性、耐油性などに優れており、従来より、かかる特性を生かして、食品包装材料、医薬品包装材料、工業薬品包装材料、農薬包装材料等のフィルムやシート、或いはチューブ、カップ、トレイ、ボトル等の容器に成形されて利用されている。
また、EVOHの機械的特性や耐湿性を補うことを目的に他の熱可塑性樹脂と積層され多層構造体として使用されることが多く、他の熱可塑性樹脂の物性やEVOHのバリア性能を改善することを目的に延伸処理が施されることがある。
しかしながら、EVOHと他の熱可塑性樹脂、特にオレフィン系樹脂とでは理想的な延伸条件が大きく異なるため、積層された状態で同時に延伸処理することが難しく、その対策としてエチレン含有量に差を設けた2種以上のEVOHをブレンドする方法(例えば、特許文献1〜2参照。)が提案されている。
特開平08−311276号公報 特開2000−336230号公報
しかしながら、本発明者が特許文献1および2に記載の多層延伸フィルムについて詳細に検討したところ、高倍率で延伸した場合にはバリア性が低下することがあり、また、延伸後にはEVOH層の柔軟性が低下するためか、繰り返し屈曲させるとEVOH層に欠陥ができバリア性が低下することが判明した。すなわち、延伸性、ガスバリア性、耐屈曲性に優れ、透明性に優れたEVOH層含有多層延伸フィルムが望まれるところである。
そこで、上記の実情を鑑みて鋭意研究した結果、下記の構造単位(1)を含有するEVOH(A)と、構造単位(1)を含有しないEVOH(B)を含有する層を有する多層フィルムを延伸後、熱固定処理してなることを特徴とする多層延伸フィルムが上記の目的に合致することを見出して本発明を完成するに至った。
Figure 2007261074
(ここで、R1は水素または有機基を表し、Xは結合鎖を表し、nは0または1を表し、R2〜R4はそれぞれ水素または有機基を表す)
本発明の多層延伸フィルムは、EVOH含有層中のEVOHとして、構造単位(1)を含有するEVOH(A)と、構造単位(1)を含有しないEVOH(B)とを併用することを特徴とするもので、かかる構成を採用したことにより、各々のEVOHを単独で使用した場合には得られない、本発明の特有の効果が得られたものである。
なお、本発明においては、EVOH(A)及びEVOH(B)の配合比が、重量比で(A)/(B)=99/1〜15/85であること、EVOH(A)中の構造単位(1)の含有量が0.1〜30モル%であること、へイズ値が0.1〜5であること等が好ましい実施態様である。
本発明の多層延伸フィルムは、ガスバリア性、透明性、耐屈曲性に優れており、食品、薬品等の包装材料として好適である。
以下、本発明について具体的に説明する。
なお、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されない。
まず、本発明で用いられるEVOH(A)について説明する。
本発明で用いられるEVOH(A)は、下記構造単位(1)を含有するEVOHであり、かかる構造単位(1)のR1は水素または有機基を表わし、Xは結合鎖を表わし、nは0または1を表し、R2〜R4はそれぞれ水素または有機基を表わす。
Figure 2007261074
なお、かかるEVOH(A)における構造単位(1)は、主鎖の置換基であるR1、および側鎖の置換基であるR2〜R4がすべて水素原子であり、結合鎖(X)nのnが0、すなわち単結合であるものが望ましく、その水素原子が樹脂特性を大幅に損なわない程度の有機基で置換されたものでもよい。
また、かかるEVOH(A)は、構造単位(1)を0.1〜30モル%、エチレンに由来する構造単位を10〜60モル%含有し、残る部分の90モル%以上がビニルアルコール構造単位であるものが好ましく用いられる。
また、構造単位(1)の結合鎖(X)nのnが1の場合、エーテル結合を除くいずれの結合鎖を適用することも可能で、特に限定されないが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレンの他、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素(これらの炭化水素はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていても良い)の他、−CO−、−COCO−、−CO(CH2mCO−、−CO(C64)CO−、−S−、−CS−、−SO−、−SO2−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−、−HPO4−、−Si(OR)2−、−OSi(OR)2−、−OSi(OR)2O−、−Ti(OR)2−、−OTi(OR)2−、−OTi(OR)2O−、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−、等が挙げられ(Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは自然数である)、その中でも熱溶融安定性の点でアルキレンが好ましく、中でも炭素数6以下のものが好適に用いられる。
なお、結合鎖Xがエーテル結合であるものは、溶融成形によるフィルム製造時、延伸時、あるいは熱固定時にエーテル結合部分が熱分解しやすく、熱安定性が不十分であるため好ましくない。
また、構造単位(1)のR1およびR2〜R4が有機基である場合、その有機基としては特に限定されないが、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。
本発明で用いられるEVOH(A)の製造方法については特に限定されないが、最も好ましい構造である結合鎖が単結合((X)nにおけるnが0)である構造単位(1)を含有するEVOH(A)を例とすると、コモノマーとして3,4−ジオール−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、3−アシロキシ−4−オール−1−ブテン、4−アシロキシ−3−オール−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−2−メチル−1−ブテン、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソランを用い、これらとビニルエステル系モノマーおよびエチレンを共重合して得られた共重合体をケン化する方法、あるいはコモノマーとしてビニルエチレンカーボネートを用い、得られた共重合体をケン化、脱炭酸する方法が挙げられる。
中でも、3,4−ジアシロキシ−1−ブテンが、ビニルエステル系モノマーおよびエチレンとの共重合反応性に優れる点で好ましく、さらにはケン化反応による副生成物が酢酸ビニルと共通する3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを用いることが好ましい。また、モノマー中に少量の不純物として3,4−ジアセトキシ−1−ブタンや1,4−ジアセトキシ−1−ブテン、1,4−ジアセトキシ−1−ブタン等を含んでいても良い。
また、結合鎖Xがアルキレンであるものとしては4,5−ジオール−1−ペンテンや4,5−ジアシロキシ−1−ペンテン、4,5−ジオール−3−メチル−1−ペンテン、4,5−ジオール−3−メチル−1−ペンテン、5,6−ジオール−1−ヘキセン、5,6−ジアシロキシ−1−ヘキセン等とビニルエステル系モノマーおよびエチレンを共重合して得られた共重合体をケン化する方法が挙げられる。
なお、ビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられるが、経済的にみて中でも酢酸ビニルが好ましく用いられる。
以下、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンをコモノマーとした共重合方法について詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
3,4−ジアシロキシ−1−ブテンと、ビニルエステル系モノマー及びエチレン単量体を共重合するに当たっては、特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、またはエマルジョン重合等の公知の方法を採用することができるが、通常は溶液重合が行われる。
共重合時のモノマー成分の仕込み方法としては特に制限されず、一括仕込み、分割仕込み、連続仕込み等任意の方法が採用される。
なお、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン等の共重合割合は特に限定されないが、前述の構造単位(1)の導入量に合わせて共重合割合を決定すればよい。
また、共重合体中のエチレン含有量は重合時のエチレンの圧力によって制御することが可能であり、目的とするエチレン含有量により一概にはいえないが、通常は25〜80kg/cm2の範囲から選択される。
かかる共重合で用いられる溶媒としては、通常、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコールやアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられ、工業的には、メタノールが好適に使用される。
溶媒の使用量は、目的とする共重合体の重合度に合わせて、溶媒の連鎖移動定数を考慮して適宜選択すればよく、例えば、溶媒がメタノールの時は、S(溶媒)/M(モノマー)=0.01〜10(重量比)、好ましくは0.05〜7(重量比)程度の範囲から選択される。
共重合に当たっては重合触媒が用いられ、かかる重合触媒としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル等の公知のラジカル重合触媒やt−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、α,α'ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート等のパーオキシエステル類、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−iso−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、ジイソブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類などの低温活性ラジカル重合触媒等が挙げられる。
重合触媒の使用量は、触媒の種類により異なり一概には決められないが、重合速度に応じて任意に選択される。例えば、アゾビスイソブチロニトリルや過酸化アセチルを用いる場合、ビニルエステル系モノマーに対して10〜2000ppmが好ましく、特には50〜1000ppmが好ましい。
また、共重合反応の反応温度は、使用する溶媒や圧力により異なるが、通常は40℃〜沸点程度の範囲から選択することが好ましい。
また、本発明では、上記の共重合時に本発明の効果を阻害しない範囲で共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合していてもよく、かかる単量体としては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類、メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類、ビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、グリセリンモノアリルエーテル、エチレンカーボネート等が挙げられる。
さらに、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−アクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、3−ブテントリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ジエチルジアリルアンモニウムクロライド等のカチオン基含有単量体、アセトアセチル基含有単量体等も挙げられる。
さらに上述のビニルシラン類としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルイソブチルジメトキシシラン、ビニルエチルジメトキシシラン、ビニルメトキシジブトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメトキシジヘキシロキシシラン、ビニルジメトキシヘキシロキシシラン、ビニルトリヘキシロキシシラン、ビニルメトキシジオクチロキシシラン、ビニルジメトキシオクチロキシシラン、ビニルトリオクチロキシシラン、ビニルメトキシジラウリロキシシラン、ビニルジメトキシラウリロキシシラン、ビニルメトキシジオレイロキシシラン、ビニルジメトキシオレイロキシシラン等を挙げることができる。
なお、重合時に上記触媒とともにヒドロキシラクトン系化合物またはヒドロキシカルボン酸を共存させることが得られるEVOH(A)の色調を良好(無色に近づける)にする点で好ましく、該ヒドロキシラクトン系化合物としては、分子内にラクトン環と水酸基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、グルコノデルタラクトン等を挙げることができ、好適にはL−アスコルビン酸、エリソルビン酸が用いられ、また、ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸等を挙げることができ、好適にはクエン酸が用いられる。
かかるヒドロキシラクトン系化合物またはヒドロキシカルボン酸の使用量は、酢酸ビニル100重量部に対して0.0001〜0.1重量部、さらには0.0005〜0.05重量部、特には0.001〜0.03重量部が好ましく、かかる使用量が少なすぎるとこれらの添加効果が得られないことがあり、逆に多すぎると酢酸ビニルの重合を阻害する結果となって好ましくない。
かかる化合物を重合系に仕込むにあたっては、特に限定はされないが、通常は低級脂肪族アルコールや酢酸ビニルを含む脂肪族エステルや水等の溶媒又はこれらの混合溶媒で希釈されて重合反応系に仕込まれる。
得られた共重合体は、次いでケン化されるのであるが、かかるケン化にあたっては、上記で得られた共重合体をアルコール又は含水アルコールに溶解された状態で、アルカリ触媒又は酸触媒を用いて行われる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブタノール等が挙げられるが、メタノールが特に好ましく用いられる。アルコール中の共重合体の濃度は系の粘度により適宜選択されるが、通常は10〜60重量%の範囲から選ばれる。
ケン化に使用される触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒、硫酸、塩酸、硝酸、メタスルフォン酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等の酸触媒が挙げられる。
かかるケン化触媒の使用量については、ケン化方法、目標とするケン化度等により適宜選択されるが、アルカリ触媒を使用する場合は通常、ビニルエステル系モノマー及び3,4−ジアシロキシ−1−ブテン等のモノマーの合計量に対して0.001〜0.1当量、好ましくは0.005〜0.05当量が適当である。
かかるケン化方法に関しては目標とする鹸化度等に応じて、バッチ鹸化、ベルト上の連続鹸化、塔式の連続鹸化の何れも可能で、鹸化時のアルカリ触媒量が低減できることや鹸化反応が高効率で進み易い等の理由より、好ましくは、一定加圧下での塔式鹸化が用いられる。また、ケン化時の圧力は目的とするエチレン含有量により一概に言えないが、2〜7kg/cm2の範囲から選択され、このときの温度は80〜150℃、好ましくは100〜130℃から選択される。
かくして、得られるEVOH(A)のエチレン含有量やケン化度は、特に限定されないが、エチレン含有量は10〜60モル%、さらには20〜50モル%、特には25〜48モル%、ケン化度は90モル%以上、さらには95モル%以上、特には99モル%以上のものが好適に用いられ、該エチレン含有量が少なすぎると高湿度条件下でのガスバリア性が低下したり、外観が悪化する傾向にあり、逆に多すぎるとガスバリア性が低下する傾向にあるため、好ましくない。また、ケン化度が低すぎると、ガスバリア性や耐湿性が低下する傾向にあり、好ましくない。
さらに、EVOH(A)中に共重合によって導入される上記の構造単位(1)の含有量としては特に制限はされないが、0.1〜30モル%、さらには0.5〜20モル%、特には1〜10モル%であることが好ましく、かかる含有量が小さすぎると本発明の効果が十分に発現されず、逆に多すぎるとガスバリア性が低下する傾向にあり好ましくない。
また、かかる含有量を調整するにあたっては、構造単位(1)の含有量の異なる2種以上のEVOH(A)をブレンドして調整することも可能である。
かかるブレンドによって得られたEVOH(A)に関しては、その構造単位(1)の含有量は重量平均で算出しても差し支えなく、またそのエチレン含有量についても重量平均で求めてもよいが、正確には1H−NMRの測定結果からエチレン含有量、構造単位(1)含有量を算出することができる。
また、該EVOH(A)のメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)は、0.1〜100g/10分、さらには1〜50g/10分、特には2〜35g/10gであるものが好ましく、該メルトフローレートが小さすぎると成形時に押出機内が高トルク状態となって押出加工が困難となることがあり、逆に大きすぎると得られるフィルムやシートの厚み精度が低下することがあり好ましくない。
次に、本発明で用いられるEVOH(B)について説明する。
本発明で使用されるEVOH(B)は、構造単位(1)を含有するものでなければいかなるEVOHを使用することも可能であるが、通常はエチレン構造単位、ビニルアルコール構造単位、酢酸ビニル構造単位のみを有する従来公知のEVOHが好適に用いられる。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、上述の共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合したものであってもかまわない。
かかるEVOH(B)のエチレン含有量は20〜70モル%、さらには23〜58モル%、特には25〜55モル%、酢酸ビニル成分のケン化度が90モル%以上、さらには95モル%以上、特には99モル%以上のものが好ましく、該エチレン含有量が少なすぎると溶融成形が低下し、逆に多すぎると十分なガスバリア性が得られず、さらに酢酸ビニル成分のケン化度が少なすぎるとガスバリア性、熱安定性、耐湿性等が低下して好ましくない。
また、EVOH(A)とEVOH(B)とのエチレン含有量の差は20モル%以下、さらには15モル%以下、特には10モル%以下であることが好ましく、ケン化度の差は5モル%以下、さらには3モル%以下、特には1モル%以下であることが好ましい。かかるエチレン含有量の差、およびケン化度の差が大きすぎると、EVOH(A)とEVOH(B)との相溶性が低下し、均一な樹脂組成物を形成するのが困難になったり、延伸性が低下する場合があるため好ましくない。
また、該EVOH(B)のメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)は、0.5〜100g/10分(さらには1〜50g/10分、特には3〜35g/10分)が好ましく、該メルトフローレートが0.5g/10分未満では、成形時に押出機内が高トルク状態となって押出加工が困難となることがあり、逆に100g/10分を超えるときは、得られるフィルムやシートの厚み精度が低下することがあり好ましくない。
また、EVOH(A)とEVOH(B)とのMFRの差は20以下、さらには10以下、特には5以下であることが好ましく、かかる差が大きすぎると両者を混合し、均一な樹脂組成物を得ることが困難になる場合があるため好ましくない。
本発明の多層延伸フィルム中の2種のEVOHの配合比は特に限定されないが、構造単位(1)を含有するEVOH(A)と、構造単位(1)を含有しないEVOH(B)の配合比が、重量比で(A)/(B)=99/1〜15/85であることが好ましいい。さらに、特に良好な延伸性を求める場合には(A)/(B)=99/1〜45/55、さらには98/2〜60/40であることが好ましく、良好なガスバリア性を求める場合には、(A)/(B)=45/55〜15/85、さらには40/60〜15/85であることが好ましい。
なお、2種のEVOHを混合する方法は特に限定されないが、例えば(a)ケン化前のエチレン−酢酸ビニルのメタノールペーストを混合した後、ケン化する方法、(b)ケン化後の各EVOHの溶液を混合し、これをストランド状に凝固浴に押し出して切断しペレ-ト化する方法、(c)各EVOHペレットをドライブレンドした後、溶融混練する方法が挙げられるが、通常は(c)の方法を用いそのまま多層フィルムへと成形される。
さらには、本発明の多層延伸フィルム中のEVOH含有層には、本発明の目的を阻害しない範囲において、酢酸、リン酸などの酸類、ホウ酸またはそのアルカリ金属、アルカリ土類金属塩、各種有機酸あるいは無機酸の金属塩を添加することが溶融成形時の熱安定性を向上させる点で好ましい。
なお下記添加物の添加方法については、特に限定されず、EVOH(A)、EVOH(B)それぞれの製造時に添加してもよいし、EVOH(A)とEVOH(B)の混合時に添加してもよい。
酢酸の添加量としてはEVOH100重量部に対して0.001〜1重量部(さらには0.005〜0.2重量部、特には0.010〜0.1重量部)とすることが好ましく、かかる添加量が0.001重量部未満ではその含有効果が十分に得られないことがあり、逆に1重量部を越えると均一なフィルムを得ることが難しくなり好ましくない。
また、ホウ素化合物の添加量としては、EVOH100重量部に対してホウ素換算で0.001〜1重量部、さらには0.002〜0.2重量部、特には0.005〜0.1重量部とすることが好ましく、かかる添加量が少なすぎるとその含有効果が十分に得られないことがあり、逆に多すぎると均一なフィルムを得るのが困難となり好ましくない。
また、有機酸あるいは無機酸の金属塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の有機酸や、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸等の無機酸の金属塩が挙げられ、好適には酢酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩である。また、該金属塩の添加量としては、EVOH100重量部に対して金属換算で0.0005〜0.1重量部、さらには0.001〜0.05重量部、特には0.002〜0.03重量部とすることが好ましく、かかる添加量が少なすぎるとその含有効果が十分に得られないことがあり、逆に多すぎると均一なフィルムを得るのが困難となり好ましくない。尚、EVOHに2種以上のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩を添加する場合は、その総計が上記の添加量の範囲にあることが好ましい。
EVOHの混合物に酸類やその金属塩を添加する方法については、特に限定されず、ア)含水率20〜80重量%のEVOHの多孔性析出物を、酸類やその金属塩の水溶液と接触させて、酸類やその金属塩を含有させてから乾燥する方法、イ)EVOHの均一溶液(水/アルコール溶液等)に酸類やその金属塩を含有させた後、凝固液中にストランド状に押し出し、次いで得られたストランドを切断してペレットとして、さらに乾燥処理をする方法、ウ)EVOHと酸類やその金属塩を一括して混合してから押出機等で溶融混練する方法、エ)EVOHの製造時において、ケン化工程で使用したアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を酢酸等の酸類で中和して、残存する酢酸等の酸類や副生成する酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属塩の量を水洗処理により調整したりする方法等を挙げることができる。本発明の効果をより顕著に得るためには、酸類やその金属塩の分散性に優れるア)、イ)またはエ)の方法が好ましい。
なお、EVOHの混合物、あるいはその組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲において、多少のモノマー残査やモノマーのケン化物、具体的には、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、3,4−ジオール−1−ブテン、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、3−アセトキシ−4−オール−1−ブテン、4−アセトキシ−3−オール−1−ブテン、等を含んでいてもよい。
かくして得られたEVOHを含有する樹脂組成物は、このままでフィルムに加工することもできるが、本発明においては、かかる樹脂組成物に本発明の目的を阻害しない範囲において各種添加剤を配合することもできる。かかる添加剤としては、飽和脂肪族アミド(例えばステアリン酸アミド等)、不飽和脂肪酸アミド(例えばオレイン酸アミド等)、ビス脂肪酸アミド(例えばエチレンビスステアリン酸アミド等)、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等)、低分子量ポリオレフィン(例えば分子量500〜10,000程度の低分子量ポリエチレン、又は低分子量ポリプロピレン等)などの滑剤、無機塩(例えばハイドロタルサイト等)、可塑剤(例えばエチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコールなど)、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、充填材(例えば無機フィラー等)、酸素吸収剤、他樹脂(例えばポリオレフィン、ポリアミド等)等が挙げられる。
次に、本発明の多層延伸フィルムの製造法について説明する。
本発明の多層延伸フィルム中のEVOH含有層は、上述の通りEVOH(A)とEVOH(B)の二種の異なるEVOHを含有するもので、かかる二種のEVOHを混合する方法としては、特に限定されるものではないが、通常は各々のEVOHペレットをドライブレンドした後、多層フィルムへと成形する方法で行われる。
かかる、2種のEVOHを有する樹脂組成物は、他の基材と積層されて、多層フィルムとされる。他の基材と積層するときの積層方法としては、例えば本発明のEVOH組成物のフィルム、シート等に他の基材を溶融押出ラミネートする方法、逆に他の基材に該樹脂を溶融押出ラミネートする方法、該樹脂と他の基材とを共押出する方法、該樹脂(層)と他の基材(層)とを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法、他の基材上に該樹脂組成物を含有する溶液を塗工してから溶媒を除去する方法等が挙げられるが、積層体として延伸性が良好な点で共押出する方法が好ましい。
かかる共押出法としては、具体的には、マルチマニーホールドダイ法、フィードブロック法、マルチスロットダイ法、ダイ外接着法等の公知の方法を採用することができる。ダイスの形状としてはTダイス、丸ダイス等を使用することができ、溶融押出時の溶融成形温度は、150〜300℃が好ましい。
かかる他の基材としては、熱可塑性樹脂が有用で、具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したものなどの広義のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂(共重合ポリアミドも含む)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、芳香族または脂肪族ポリケトン、更にこれらを還元して得られるポリアルコール類、更には他のEVOH等が挙げられるが、積層体の物性(特に強度)等の実用性の点から、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂、特にはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン(ブロック又はランダム)共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体がましく用いられる。
さらに、多層フィルムに他の基材を押出コートしたり、他の基材のフィルム、シート等を接着剤を用いてラミネートする場合、かかる基材としては、前記の熱可塑性樹脂以外にも任意の基材(紙、金属箔、一軸又は二軸延伸プラスチックフィルム又はシートおよびその無機物蒸着物、織布、不織布、金属綿状、木質等)が使用可能である。
多層フィルムの層構成は、EVOH含有層をa(a1、a2、・・・)、熱可塑性樹脂含有層をb(b1、b2、・・・)とするとき、フィルム、シート状であれば、a/bの二層構造のみならず、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2、b2/b1/a/b1/a/b1/b2等任意の組み合わせが可能であり、さらには、少なくとも該EVOH組成物と熱可塑性樹脂の混合物からなるリグラインド層をRとするとき、b/R/a、b/R/a/b、b/R/a/R/b、b/a/R/a/b、b/R/a/R/a/R/b等とすることも可能である。なお、上記の層構成において、それぞれの層間には、必要に応じて接着性樹脂層を設けることができ、かかる接着性樹脂としては、種々のものを使用することもでき、延伸性に優れた積層体が得られる点で好ましく、bの樹脂の種類によって異なり一概に言えないが、不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体(上述の広義のポリオレフィン系樹脂)に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体を挙げることができ、具体的には、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等から選ばれた1種または2種以上の混合物が好適なものとして挙げられる。このときの、熱可塑性樹脂に含有される不飽和カルボン酸又はその無水物の量は、0.001〜3重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.03〜0.5重量%である。該変性物中の変性量が少ないと、接着性が不充分となることがあり、逆に多いと架橋反応を起こし、成形性が悪くなることがあり好ましくない。またこれらの接着性樹脂には、EVOH組成物や他のEVOH、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレンゴム等のゴム・エラストマー成分、さらにはb層の樹脂等をブレンドすることも可能である。特に、接着性樹脂の母体のポリオレフィン系樹脂と異なるポリオレフィン系樹脂をブレンドすることにより、接着性が向上することがあり有用である。
また、基材樹脂層に従来知られているような酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、核材、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、ワックス等を含んでいても良い。
上記の如き多層フィルム(積層体)は、次いで(加熱)延伸処理が施され分けであるが、かかる(加熱)延伸処理とは、熱的に均一に加熱されたフィルム、シート状の積層体をチャック、プラグ、真空力、圧空力、ブローなどにより、チューブ、フィルム状に均一に成形する操作を意味し、かかる延伸については、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよく、二軸延伸の場合は同時延伸であっても逐次延伸であってもよい。
延伸方法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法、真空圧空成形等のうち延伸倍率の高いものも採用できる。二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。延伸温度は40〜170℃、好ましくは60〜160℃程度の範囲から選ばれる。延伸温度が40℃未満では延伸性が不良となり、170℃を越えると安定した延伸状態を維持することが困難となる。
なお、延伸倍率は高倍率であるほど物性が向上する傾向にあり、面積比で4〜80倍、さらには9〜80倍、特には20〜80倍であることが好ましい。
本発明の多層延伸フィルムは延伸性に優れるため、かかる延伸時にピンホールやクラック、延伸ムラや偏肉等が生じることなく、ガスバリア性に優れ、さら白化による透明性低下がない多層延伸フィルムが得られる。
かくして延伸が終了した後、次いで熱固定を行う。熱固定は周知の手段で実施可能であり、上記延伸フィルムを緊張状態を保ちながら80〜180℃、好ましくは100〜165℃で2〜600秒間程度熱処理を行う。
多層延伸フィルムの熱可塑性樹脂層および接着性樹脂層の厚みは、層構成、熱可塑性樹脂の種類、接着性樹脂の種類、用途や包装形態、要求される物性などにより一概に言えないが、通常は熱可塑性樹脂層は1〜5000μm、さらには3〜1000μm、接着性樹脂層は0.1〜400μm、さらには0.2〜150μm)程度の範囲から選択される。
また、EVOH含有層の厚みは、要求されるガスバリア性などによって異なるが、通常は0.5〜30μm、さらには0.8〜10μm、特に1〜5μmであることが好ましく、かかる厚みが薄すぎると十分なガスバリア性が得られない場合があり、逆に厚すぎるとフィルムの柔軟性が不足する傾向にあるため好ましくない。
また、得られた多層延伸フィルムの透明性は、ヘイズ値としては0.1〜5、さらには0.1〜3、特には0.1〜1であることが好ましく、かかる値が低すぎても、また逆に高すぎても透明性が十分ではなく好ましくない。
かくして得られた多層延伸フィルムは良好なガスバリア性を有し、透明性に優れ、食品、医薬品、工業薬品、農薬等各種の包装材料として有用である。
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
なお、以下「%」「部」とあるのは、特にことわりのない限り、重量基準を意味する。
実施例1
EVOH(A)[エチレン含有量44mol%、ケン化度99.8mol%、構造単位(1)含有量3mol%、MFR4.0g/10min(210℃、2160g)]とEVOH(B1)[エチレン含有量38mol%、ケン化度99.6mol%、MFR3.5g/10min(210℃、2160g)]を50/50の割合でブレンドし、MFRを4.0g/10minに調製した組成物をフィードブロック3種5層の多層Tダイを備えた多層押出装置に供給して、ポリプロピレン(日本ポリプロ社製『ノバテックPP FL6H』層/接着樹脂(三菱化学社製『モディックAP P604V』)層/EVOH組成物層/接着樹脂層(同左)/ポリプロピレン層(同左)の層構成(厚み160/50/80/50/160μm)の多層フィルムを得て、160℃で2分間予熱し、同じ温度で300mm/secの延伸速度で、縦方向に7倍、横方向に7倍の順(延伸倍率:49倍)で逐次二軸延伸を行い、延伸の後、155℃で3分間の熱処理を行って、本発明の多層延伸フィルムを得た。多層延伸フィルムを作成する際の延伸性、得られた多層フィルムのガスバリア性、透明性を以下の要領で評価した。
(外観)
得られた積層体を目視観察して、その外観性を以下の指標に従って評価した。
○・・・延伸ムラ、偏肉が認められず、外観良好である。
△・・・延伸ムラ、偏肉が若干認められるものの、使用可能。
×・・・延伸時に破断し、延伸フィルムを得る事ができない。
(ガスバリア性)
延伸後の多層フィルムの酸素透過度についてMOCON社製「OXTRAN2/21」を用いて23℃、80%RHの条件下で測定した。
また、多層延伸フィルムをゲルボフレックステスター(理学工業社製)を用いて、23℃、50%RHの雰囲気中で、440°捻り(3.5インチ)+直進(2.5インチ)の繰り返し往復運動を、500回行うことにより屈曲試験を行った後、酸素透過度測定装置(MOCON社製「OXTRAN2/21」)を用いて、23℃、80%RHの条件下で該多層延伸フィルムの酸素透過度(cc/m2・day・atm)を測定し、屈曲を与える前の酸素透過度との比較で評価した。
(透明性)
延伸フィルム中のEVOHの透明性をヘイズメーターで測定し、以下の指標に従って評価した。
○・・・5未満。
△・・・5〜10未満。
×・・・10以上。
実施例2
実施例1において、EVOH(A)とEVOH(B1)とのブレンド比を90/10に変更した以外は同様に多層延伸フィルムを作成し、同様に評価を行った。
実施例3
実施例1において、EVOH(A)とEVOH(B1)とのブレンド比を30/70に変更した以外は同様に多層延伸フィルムを作成し、同様に評価を行った。
比較例1
実施例1において、EVOH(A)を用いずにEVOH(B1)のみを用いた以外は同様にして多層延伸フィルムを作成し、同様に評価を行った。
比較例2
比較例1において、EVOH(B1)に変えて、EVOH(B2)[エチレン含有量44mol%、ケン化度99.6mol%、MFR3.6g/10min(210℃、2160g)]を用いた以外は同様にして多層延伸フィルムを作成し、同様に評価を行った。
比較例3
比較例1において、EVOH(B1)に変えて、EVOH(B3)[エチレン含有量44mol%、ケン化度96.0mol%、MFR4.1g/10min(210℃、2160g)]を用いた以外は同様にして多層延伸フィルムを作成し、同様に評価を行った。
比較例4
実施例1において、EVOH(B1)を用いずにEVOH(A)のみを用いた以外は同様にして多層延伸フィルムを作成し、同様に評価を行った。
実施例及び比較例の評価結果を表1にまとめて示す。
[表1]
Figure 2007261074
本発明の多層延伸フィルムは、特定の構造単位を有するEVOHを用いているため、ガスバリア性、透明性、耐屈曲性に優れており、食品や医療品、工業薬品、薬品、農薬、電子部品、機械部品等の包装材料として有用である。

Claims (5)

  1. 下記の構造単位(1)を含有するエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)と、構造単位(1)を含有しないエチレン−ビニルアルコール系共重合体(B)を含有する層を有する多層フィルムを延伸後、熱固定処理してなることを特徴とする多層延伸フィルム。
    Figure 2007261074
    (ここで、R1は水素または有機基を表し、Xは結合鎖を表し、nは0または1を表し、R2〜R4はそれぞれ水素または有機基を表す)
  2. エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)及びエチレン−ビニルアルコール系共重合体(B)の配合比が、重量比で(A)/(B)=99/1〜15/85であることを特徴とする請求項1記載の多層延伸フィルム。
  3. 構造単位(1)のR1が水素原子あり、nが0であり、R2〜R4がいずれも水素原子であることを特徴とする請求項1または2に記載の多層延伸フィルム。
  4. エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)中の構造単位(1)の含有量が0.1〜30モル%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の多層延伸フィルム。
  5. へイズ値が0.1〜5であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の多層延伸フィルム。


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