JP2008307693A - 多層フィルムおよび多層延伸フィルム - Google Patents

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雅彦 谷口
Hidefumi Onishi
英史 大西
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Abstract

【課題】本発明は、EVOH樹脂を含有する層と、ポリプロピレン樹脂層を有するガスバリア性に優れた多層延伸フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】 下記の構造単位(1)を含有するエチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物を含有する層の少なくとも片面に、融点が120〜150℃のプロピレン系共重合体を含有する層を積層してなる多層フィルムを延伸した多層延伸フィルムを用いる。
【化1】
Figure 2008307693

[一般式(1)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。]
【選択図】なし

Description

本発明は、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(以下、EVOH樹脂と称する)を含有する層と、融点が120〜150℃のプロピレン系共重合体層を有する多層フィルムおよび多層延伸フィルムに関する。
一般にEVOH樹脂は、透明性、ガスバリア性、保香性、耐溶剤性、耐油性などに優れているが、高湿度条件下ではガスバリア性が悪くなるという特徴を有するため、これに他の熱可塑性樹脂と積層し、機械的特性や耐湿性を向上させて多層フィルムとして各種用途(食品包装材料、医薬品包装材料、工業薬品包装材料、農薬包装材料等)に利用されている。かかる他の熱可塑性樹脂とは、通常、耐湿性と延伸性に優れる特徴を有するポリプロピレン樹脂が用いられていた。
EVOHフィルムは、通常、ガスバリア性能を向上すること等を目的に延伸処理が施される。しかしながら、EVOH樹脂層とポリプロピレン樹脂層を積層してなる多層フィルムは、両樹脂層の延伸に適する温度が異なるため、積層した状態で同時に延伸処理することが難しく、ガスバリア性の向上度に制限が生じるという問題があった。
上記問題を解決するため、延伸性のよいEVOH樹脂として、側鎖に特定の官能基を導入した変性EVOH樹脂を用い、熱可塑性樹脂と積層したフィルムを延伸し、ガスバリア性に優れた多層延伸フィルムを得る技術が提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、かかる多層延伸フィルムは、柔軟性については未だ改善の余地があるものであった。
特開2006−123534号公報
本発明は、側鎖に特定の官能基を導入した変性EVOH樹脂を含有する層と、α−オレフィンを共重合させる等によって特定の低い融点を有するプロピレン系共重合体層を有する多層フィルムおよび多層延伸フィルムに関するものであり、特にガスバリア性と柔軟性に優れた多層延伸フィルムを提供することを目的とする。
なお、同出願人による特開2006−123534号公報には、上記の構造単位(1)を有するEVOH樹脂と積層する樹脂として、αオレフィン−プロピレン共重合体が記載されているが、かかるαオレフィン−プロピレン共重合体は、多層延伸フィルムにヒートシール能を付与する場合に熱可塑性樹脂(ポリプロピレン樹脂)層の外側に設ける、ヒートシール層を目的としたものである。
一般に、αオレフィンを共重合させる等して低い融点を有するプロピレン系共重合体はポリプロピレン樹脂よりも耐湿性が劣るため、多層延伸フィルムにおいては、通常ポリプロピレン樹脂と併用されることはあっても、ポリプロピレン樹脂の代替品として用いるものではない。
また、上記ヒートシール層は、通常、延伸は行なわれず、延伸を行ったとしても、EVOH樹脂とポリプロピレン樹脂を積層して行うような、例えば160〜180℃の高温での延伸がなされていた。
本発明者らは、上記事情に鑑み鋭意検討の結果、EVOH樹脂の側鎖に特定の官能基を導入した変性EVOH樹脂に積層する樹脂として、従来用いられていたポリプロピレン樹脂に代えて、通常用いられることのなかった120〜150℃という比較的低い融点を有するポリプロピレン系共重合体を選択して用いることにより、上記目的が達成され、優れたガスバリア性フィルムが得られることを見出した。
すなわち、本発明は、下記の構造単位(1)を含有するEVOH樹脂を含有する層の少なくとも1面に、融点が120〜150℃のポリプロピレン系共重合体を積層してなることを特徴とする多層フィルムおよびかかる多層フィルムを延伸してなる多層延伸フィルムに関する。
Figure 2008307693
[一般式(1)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。]
本発明の効果は、上記のような構成を採用することにより、得られた多層フィルムは従来よりも低い温度で延伸することが可能となったために得られたものである。すなわち、融点が120〜150℃のプロピレン系共重合体を用い、従来法ではできなかった低温による延伸が行なわれた結果、耐湿性と柔軟性を付与することが可能となった。
さらに、低温での延伸により、EVOH樹脂層にかかる張力が上がり、高分子が同一方向により配列しやすくなったので、ガスバリア性が格段に優れた多層延伸フィルムを得る事が出来た。
以下、本発明について詳細に説明するが、以下に記載する説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に限定されるものではない。
本発明は、下記の構造単位(1)を含有するEVOH樹脂を含有する層の少なくとも片面に、融点が120〜150℃のプロピレン系共重合体を積層してなることを特徴とする多層フィルムおよびかかる多層フィルムを延伸してなる多層延伸フィルムに関する。
Figure 2008307693
[一般式(1)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。]
本発明において融点とは、示差走査熱量計(DSC)で昇温速度10℃/minにて融解メインピークを計測した値である。
本発明では、通常のEVOH系樹脂よりも融点が低く、優れた延伸性能を示す、上記の側鎖に上記1,2−ジオール構造単位を導入した変性EVOH樹脂に、融点が120〜150℃のプロピレン系共重合体を積層することにより、延伸工程において従来よりも低温での延伸を行なうことが可能になり、かかる結果、EVOH層にかかる張力が上がり、高分子が同一方向により配列しやすくなったので、EVOH層を含む多層フィルムでは従来為しえなかったガスバリア性を発現することを最大の特徴とするものである。
<プロピレン系共重合体の説明>
本発明では、上記の、側鎖に上記1,2−ジオール構造単位を導入した変性EVOH樹脂に、融点が120〜150℃のプロピレン系共重合体層を積層する。
以下、本発明で用いる融点が120〜150℃のプロピレン系共重合体について説明する。
本発明におけるプロピレン系共重合体とは、主としてプロピレンモノマーを共重合してなり、これに共重合可能なモノマー(例えばαオレフィン)を1種または2種以上共重合させてなる樹脂である。
本発明においては、プロピレン系共重合体の中でも、融点が120〜150℃のものを用いるところに特徴があり、これにより、上記の、側鎖に上記1,2−ジオール構造単位を導入した変性EVOH樹脂との積層体を、従来よりも低い温度で延伸することが可能になった。
融点が120〜150℃のプロピレン系共重合体とは、通常、主となるプロピレンモノマーに他のα−オレフィンを共重合することにより、低い融点を有するα−オレフィン−プロピレン共重合体である。
プロピレン系共重合体の融点は、ランダム共重合体かブロック共重合体か、およびαオレフィンの種類や共重合割合を調節することにより決定される。炭素数が多いαオレフィンを共重合すると融点が低くなるという傾向があり、αオレフィンの共重合割合が多いほど融点が低くなる。
α−オレフィンとは、例えばエチレン性不飽和結合を有する炭化水素化合物であり、通常炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜6である。
具体的には、エチレン、ブテン、イソブテン、ペンテン、ヘプテン、3−メチル−ブテン−1、3−メチル−ペンテン−1、ヘキセン、オクテン、デセン等の脂肪族オレフィン類、スチレン、アリルベンゼン等の芳香族オレフィン類、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロペンタン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロヘキセン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等の環状オレフィン類、ブタジエン、1,5−ヘキサジエンなどの脂肪族ジオレフィン類、ジビニルベンゼン、ジアリルベンゼン等の芳香族ジオレフィン類等が挙げられる。これらのα−オレフィンは、1種類のみを用いても良いし、2種類以上を同時に用いても良い。これらのうち好ましいものは脂肪族オレフィン類であり、特に好ましくはエチレンである。
上記α−オレフィンの共重合割合は、通常0.5〜15モル%、好ましくは1〜10モル%である。
また、共重合体は、通常上記α−オレフィンとプロピレンとのランダム共重合体であるが、ブロック共重合体であってもよい。本発明ではランダム共重合体が好ましい。
かかるプロピレン系共重合体には、本発明の趣旨を阻害しない範囲において従来知られているような酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、核材、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、ワックス等を含んでいても良い。
プロピレン系共重合体の融点は、120〜150℃であるが、好ましくは120〜145℃であり、特に好ましくは125〜140℃である。融点が低すぎた場合には延伸時に白化が起こる傾向があり、高すぎた場合には、比較的高温で延伸せざるえないため、高分子の同一方向への配列が十分でなくなる傾向がある。したがって、ガスバリア性の飛躍的な向上が認められない傾向がある。
<EVOH樹脂の説明>
本発明では、下記の構造単位(1)を含有するEVOH樹脂を用いる。
Figure 2008307693
[一般式(1)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。]
かかるEVOH樹脂は、通常のEVOH系樹脂と比較して融点が低く、優れた延伸性能を示す。
以下、本発明で用いるEVOH樹脂について詳しく説明する。
本願発明に用いるEVOH樹脂は、通常、エチレン、ビニルエステル系モノマーおよび、後述の、ケン化後に上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位となるモノマー(および他の共重合可能な他のモノマー)を共重合して得られる共重合体を、ケン化することにより製造される。
前記ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等があげられるが、通常炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜10、特に好ましく炭素数4〜7のものである。これらの中でも、経済的な面で酢酸ビニルが好ましい。
上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位における有機基としては、特に限定されず、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の飽和炭化水素基、フェニル基、ベンジル基等の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、水酸基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。
1〜R3は通常、炭素数1〜30であり、好ましくは炭素数1〜15であり、特に好ましくは炭素数1〜4の飽和炭化水素基または水素原子であり、水素原子が最も好ましい。R4〜R5は通常、炭素数1〜30であり、好ましくは炭素数1〜15、特に好ましくは炭素数1〜4の飽和炭化水素基または水素原子であり、水素原子が最も好ましい。特に、R1〜R6がすべて水素であるものが殊に好ましい。
また、一般式(1)で表わされる構造単位中のXは、ガスバリア性が優れる点などから、代表的には単結合である。
なお、本発明の効果を阻害しない範囲であれば結合鎖であってもよい。かかる結合鎖としては特に限定されないが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素鎖(これらの炭化水素はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていても良い)の他、−O−、−(CH2O)m−、−(OCH2m−、−(CH2O)mCH2−等のエーテル結合部位を含む構造、−CO−、−COCO−、−CO(CH2mCO−、−CO(C64)CO−等のカルボニル基を含む構造、−S−、−CS−、−SO−、−SO2−等の硫黄原子を含む構造、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−等の窒素原子を含む構造、−HPO4−等のリン原子を含む構造などのヘテロ原子を含む構造、−Si(OR)2−、−OSi(OR)2−、−OSi(OR)2O−等の珪素原子を含む構造、−Ti(OR)2−、−OTi(OR)2−、−OTi(OR)2O−等のチタン原子を含む構造、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−等のアルミニウム原子を含む構造などの金属原子を含む構造等が挙げられる(Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは自然数であり、通常1〜30、好ましくは1〜15、特に好ましくは1〜10である。)。その中でも製造時あるいは使用時の安定性の点で炭素数1〜10の炭化水素鎖が好ましく、さらには炭素数1〜6の炭化水素鎖、特には炭素数1であることが好ましい。
上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位における最も好ましい構造は、R1およびR2〜R4がすべて水素原子であり、Xが単結合であるものである。すなわち、下記構造式(1a)で示される構造単位が最も好ましい。
Figure 2008307693
本願発明で用いるEVOH樹脂における上記構造単位(1)の含有量は、通常0.1〜30モル%であり、好ましくは0.5〜25モル%であり、特に好ましくは1〜20モル%である。かかる含有量が少なすぎた場合、融点が比較的高くなりプロピレン系共重合体との延伸が困難となる傾向があり、多すぎた場合はガスバリア性が低下する傾向がある。
また、エチレン由来の構造単位の含有量は特に限定されないが、通常10〜60モル%であり、好ましくは20〜50モル%であり、特に好ましくは25〜48モル%である。エチレン含有量が低すぎた場合、高湿度条件下でのガスバリア性が低下したり、外観が悪化する傾向にあり、逆に多すぎるとガスバリア性が低下する傾向にある。
さらに、EVOH樹脂が有するビニルエステル構造単位のうち、ケン化によりビニルアルコール構造単位となっているものの含有量(ケン化度)は特に限定されないが、通常90〜100モル%であり、好ましくは95〜100モル%であり、特に好ましくは99〜100モル%である。ケン化度が低すぎると、ガスバリア性や耐湿性が低下する傾向がある。
EVOH樹脂のメルトフローレート(MFR)は210℃、荷重2160gにおいて、通常0.1〜100g/10分であり、好ましくは1〜50g/10分、特に好ましくは2〜35g/10分である。MFRが小さすぎた場合、成形時に押出機内が高トルク状態となって押出加工が困難となる傾向があり、逆に大きすぎると得られるフィルムやシートの厚み精度が低下する傾向がある。
EVOH樹脂の融点は、エチレン含有量、上記構造単位(1)の含有量、重合度、ケン化度等により変化するが、通常100〜200℃であり、好ましくは130〜180℃であり、特に好ましくは150〜170℃である。
また、通常、プロピレン系共重合体の融点よりもEVOH樹脂の融点が高いほうが好ましい。
また、本発明においては、その趣旨を阻害しない範囲(通常30モル%以下)において、EVOH樹脂に共重合可能な他のモノマーを共重合してもよい。
共重合可能な他のモノマーとしては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩等のアクリルアミド類、またはメタクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド等のN−ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類、トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類、酢酸アリル、アリルアルコール等のアリル化合物、グリセリンモノアリルエーテル、エチレンカーボネート等があげられる。さらに、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジエチルジアリルアンモニウムクロライド等のカチオン基含有単量体、アセトアセチル基含有単量体等もあげられる。これらは単独でまたは2種以上を同時に用いることができる。
EVOH樹脂の製造方法としては、特に限定するものではないが、最も好ましい構造である構造単位(1a)を含有するEVOH樹脂を例とすると、[1]コモノマーとして3,4−ジオール−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、3−アシロキシ−4−オール−1−ブテン、4−アシロキシ−3−オール−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−2−メチル−1−ブテン等を用い、これらとビニルエステル系モノマーおよびエチレンと共重合して共重合体を得、次いでこれをケン化する方法、あるいは、[2]コモノマーとしてビニルエチレンカーボネート等を用いてこれらとビニルエステル系モノマーおよびエチレンと共重合して共重合体を得、次いでこれをケン化、脱炭酸する方法、あるいは、[3]コモノマーとして2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン等を用い、これらとビニルエステル系モノマーおよびエチレンと共重合して共重合体を得、次いでケン化、脱アセタール化する方法等が挙げられる。
なかでも、重合が良好に進行し、1,2−ジオール構造単位を高分子主鎖中に均一に導入しやすいという製造時の利点や、未反応モノマーが少なく製品中の不純物を減らすことができることから、製造方法[1]の方法を採用することが好ましく、特に好ましくは、共重合反応性に優れる点で3,4−ジアシロキシ−1−ブテンとビニルエステル系モノマーおよびエチレンを共重合して得られた共重合体をケン化する方法である。さらには3,4−ジアシロキシ−1−ブテンとして、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを用いることが好ましい。また、[1]で例示したモノマーの混合物を用いてもよい。
なお、ビニルエステル系モノマーとして酢酸ビニルを用い、これと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを共重合させた際の各モノマーの反応性比は、r(酢酸ビニル)=0.710、r(3,4−ジアセトキシ−1−ブテン)=0.701、であり、これは後述のビニルエチレンカーボネートの場合の、r(酢酸ビニル)=0.85、r(ビニルエチレンカーボネート)=5.4、と比較して、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが酢酸ビニルとの共重合反応性に優れることを示すものである。
また、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの連鎖移動定数は、Cx(3,4−ジアセトキシ−1−ブテン)=0.003(65℃)であり、ビニルエチレンカーボネートの場合の、Cx(ビニルエチレンカーボネート)=0.005(65℃)や、2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソランの場合のCx(2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン)=0.023(65℃)と比較して、重合の阻害要因となって重合度が上がりにくくなったり、重合速度低下の原因となることがないことを示すものである。
また、かかる3,4−ジアセトキシ−1−ブテンは、その共重合体をケン化する際に発生する副生物が主構造単位である酢酸ビニル構造単位に由来するものと同一であり、その後処理に特別な装置や工程を設ける必要がない点も、工業的に大きな利点である。また、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンは少量の不純物として3,4−ジアセトキシ−1−ブタンや1,4−ジアセトキシ−1−ブテン、1,4−ジアセトキシ−1−ブタン等を含んでいても良い。
なお、3,4−ジオール−1−ブテンは、イーストマンケミカル社から、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンは工業生産用ではイーストマンケミカル社、試薬レベルではアクロス社の製品を市場から入手することができる。また、1,4―ブタンジオール製造工程中の副生成物として得られる3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを利用することも出来る。
上記[2]の製法により製造された1,2−ジオール構造単位を有するEVOH樹脂は、ケン化度が低い場合や、脱炭酸が不充分な場合には側鎖にカーボネート環が残存し、溶融成形時に脱炭酸され、樹脂が発泡する原因となる傾向がある。また、[3]により製造された1,2−ジオール構造単位を有するEVOH樹脂も、製造方法[2]によるものと同様に、側鎖に残存したモノマー由来の官能基(アセタール環)が溶融成形時に脱離して、臭気が発生する傾向があるため、これに留意して使用する必要がある。
本発明の多層フィルムおよび多層延伸フィルム中のEVOH樹脂含有層には、本発明の目的を阻害しない範囲において、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の有機酸類またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)、また、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸類、またはこれらのこれらのアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等)等の添加物を添加することが溶融成形時の熱安定性等の各種物性を向上させる点で好ましい。これらの中でも特に、酢酸、酢酸塩、ホウ酸およびホウ酸塩等のホウ素化合物、リン酸塩を添加することが好ましい。
酢酸の添加量としてはEVOH樹脂100重量部に対して通常0.001〜1重量部、好ましくは0.005〜0.2重量部、特に好ましくは0.010〜0.1重量部であり、かかる添加量が少なすぎた場合はその含有効果が十分に得られない傾向があり、逆に多すぎた場合は均一なフィルムを得ることが難しくなる傾向がある。
また、ホウ素化合物の添加量としては、EVOH樹脂100重量部に対してホウ素換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で通常0.001〜1重量部であり、好ましくは0.002〜0.2重量部であり、特に好ましくは0.005〜0.1重量部である。かかる添加量が少なすぎるとその含有効果が十分に得られないことがあり、逆に多すぎると均一なフィルムを得るのが困難となる傾向がある。
また、酢酸塩、リン酸塩(リン酸水素塩を含む)の添加量としては、EVOH樹脂100重量部に対して金属換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で通常0.0005〜0.1重量部、好ましくは0.001〜0.05重量部、特に好ましくは0.002〜0.03重量部であり、かかる添加量が少なすぎるとその含有効果が十分に得られないことがあり、逆に多すぎると均一なフィルムを得るのが困難となる傾向がある。尚、EVOHに2種以上のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩を添加する場合は、その総計が上記の添加量の範囲にあることが好ましい。
EVOH樹脂に上記の添加物を添加する方法については、特に限定されず、ア)含水率20〜80重量%のEVOH樹脂の多孔性析出物を、添加物の水溶液と接触させて、添加物を含有させてから乾燥する方法、イ)EVOH樹脂の均一溶液(水/アルコール溶液等)に添加物を含有させた後、凝固液中にストランド状に押し出し、次いで得られたストランドを切断してペレットとして、さらに乾燥処理をする方法、ウ)EVOH樹脂と添加物を一括して混合してから押出機等で溶融混練する方法、エ)EVOH樹脂の製造時において、ケン化工程で使用したアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を酢酸等の有機酸類で中和して、残存する酢酸等の有機酸類や副生成する酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属塩の量を水洗処理により調整したりする方法等を挙げることができる。本発明の効果をより顕著に得るためには、添加物の分散性に優れるア)、イ)または特に有機酸およびその塩を含有させる場合はエ)の方法が好ましい。
なお、本発明におけるEVOH樹脂は、本発明の目的を阻害しない範囲において、多少のモノマー残査やモノマーのケン化物、具体的には、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、3,4−ジオール−1−ブテン、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、3−アセトキシ−4−オール−1−ブテン、4−アセトキシ−3−オール−1−ブテン、等を含んでいてもよい。
かくして得られたEVOH樹脂は、このままでフィルムに加工することもできるが、本発明においては、かかる樹脂組成物に本発明の目的を阻害しない範囲において各種配合剤を配合することもできる。かかる配合剤としては、飽和脂肪族アミド(例えばステアリン酸アミド等)、不飽和脂肪酸アミド(例えばオレイン酸アミド等)、ビス脂肪酸アミド(例えばエチレンビスステアリン酸アミド等)、低分子量ポリオレフィン(例えば分子量500〜10,000程度の低分子量ポリエチレン、又は低分子量ポリプロピレン等)などの滑剤、不溶性無機塩(例えばハイドロタルサイト等)、エチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコールなどの可塑剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、充填材(例えば無機フィラー等)、酸素吸収剤、他樹脂(例えばポリオレフィン、ポリアミド等)等が挙げられる。
また、本発明で使用されるEVOH樹脂は、構造単位(1)を含有するEVOH樹脂と、これと異なる他のEVOH樹脂のブレンド物を用いても良い、かかる他のEVOH樹脂としては、通常の未変性EVOH樹脂だけではなく、変性基の構造単位が異なるもの、エチレン構造単位の含有量が異なるもの、ケン化度が異なるもの、分子量が異なるものなどを挙げることができる。
また、1,2−ジオール結合を有する構造単位量を調整するにあたっては、1,2−ジオール結合を有する構造単位の導入量の異なる少なくとも2種のEVOHをブレンドして調整することも可能であり、そのうちの少なくとも1種が1,2−ジオール結合を有する構造単位を有していなくても構わない。
このようにして1,2−ジオール結合量が調整されたEVOHに関しては、1,2−ジオール結合量は重量平均で算出しても差し支えなく、またそのエチレン含有量についても重量平均で算出させても差し支えないが、正確には後述する1H−NMRの測定結果より、エチレン含有量、1,2−ジオール結合量を算出することができる。
エチレン構造単位の含有量が異なるものを用いる場合、その他の構造単位は同じであっても異なっていても良いが、そのエチレン含有量差は通常1モル%以上、好ましくは2モル%以上、特に好ましくは2〜20モル%である。かかるエチレン含有量差が大きすぎると延伸性が不良となる場合がある。また、異なる2種以上のEVOH樹脂(ブレンド物)の製造方法は特に限定されず、例えばケン化前のエチレン−ビニルエステル共重合体の各ペーストを混合後ケン化する方法、ケン化後の各EVOH樹脂のアルコールまたは水とアルコールの混合溶媒に溶解させた溶液を混合する方法、各EVOH樹脂をペレット状、または粉体で混合した後、溶融混練する方法などが挙げられる。
<多層フィルムおよび多層延伸フィルムの製造方法>
本発明の多層フィルムおよび多層延伸フィルムを作成するにあたっては、まず上記のプロピレン系共重合体層(フィルム)と上記の構造単位(1)を含有するEVOH樹脂層(フィルム)とを積層する。
上記の構造単位(1)を含有するEVOH樹脂層およびプロピレン系共重合体層を積層するときの積層方法としては、例えば上記の構造単位(1)を含有するEVOH樹脂のフィルム、シート等にプロピレン系共重合体層を溶融押出ラミネートする方法、逆にプロピレン系共重合体層に上記の構造単位(1)を含有するEVOH樹脂を溶融押出ラミネートする方法、また、上記の構造単位(1)を含有するEVOH樹脂とプロピレン系共重合体層とを共押出する方法が挙げられるが、多層フィルムとして延伸性が良好な点で共押出する方法が好ましい。
共押出法においては、例えばインフレーション法、Tダイ法マルチマニーホールドダイ法、フィードブロック法、マルチスロットダイ法が挙げられる。ダイ外接着法等のダイスの形状としてはTダイス、丸ダイス等を使用することができ、溶融押出時の溶融成形温度は、通常150〜300℃である。
得られた多層フィルムに他の基材を押出コートしたり、他の基材のフィルム、シート等を接着剤を用いてラミネートする場合、かかる基材としては、前記の熱可塑性樹脂以外にも任意の基材(紙、金属箔、一軸又は二軸延伸プラスチックフィルム又はシートおよびその無機物蒸着物、織布、不織布、金属綿状、木質等)が使用可能である。
多層フィルムの層構成は、EVOH樹脂含有層の少なくとも片面にポリプロピレン系共重合体層を積層してあればよく、EVOH樹脂層をa(a1、a2、・・・)、ポリプロピレン系共重合体層をb(b1、b2、・・・)とするとき、a/bの二層構造のみならず、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2、b2/b1/a/b1/a/b1/b2等任意の組み合わせが可能である。
さらに、多層フィルムがEVOH樹脂とポリプロピレン系共重合体の混合物からなるリグラインド層を有する場合は、該リグラインド層をRとするとき、b/R/a、b/R/a/b、b/R/a/R/b、b/a/R/a/b、b/R/a/R/a/R/b等とすることも可能である。
また、これらの多層構造体は任意の位置に、他のEVOH樹脂や、ポリプロピレン系共重合体以外の熱可塑性樹脂を含有する層を設けても良い。
なお、多層フィルムのそれぞれの樹脂層間には、必要に応じて接着性樹脂層を設けることができ、かかる接着性樹脂としては、公知のものを使用することができる。接着性樹脂は、接着しようとする樹脂の種類によって選択すればよいが、例えば不飽和カルボン酸またはその無水物を、オレフィン系重合体に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られる、カルボキシル基を含有する変性αオレフィン−ポリプロピレン系共重合体を挙げることができる。具体的には、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性αオレフィンープロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等の無水マレイン酸グラフト変性ポリオレフィンが挙げられ、1種または2種以上の混合物が好適なものとして挙げられる。
このときの、熱可塑性樹脂に含有される不飽和カルボン酸又はその無水物の量は、通常0.001〜3重量%であり、好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.03〜0.5重量%である。該変性物中の変性量が少ないと、接着性が不充分となることがあり、逆に多いと架橋反応を起こし、成形性が悪くなる傾向がある。またこれらの接着性樹脂には、EVOH組成物や他のEVOH、ポリイソブチレン、ゴム・エラストマー成分、さらにはb層の樹脂等をブレンドすることも可能である。特に、接着性樹脂の母体のポリオレフィン系樹脂と異なるポリオレフィン系樹脂をブレンドすることにより、接着性が向上することがあり有用である。
上記の如き多層フィルムは、次いで延伸処理が施される。具体的には、熱的に均一に加熱された多層フィルムを、例えばチャック、プラグ、圧空力等により、フィルム状に均一に延伸する操作を意味している。かかる延伸については、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよい。延伸方法としては特に限定するものではなく、公知の、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法等のうち延伸倍率の高いものも採用できる。二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。
(延伸工程)
本発明では、上述の1,2−ジオール構造単位を有するEVOH樹脂と、融点が120〜150℃のプロピレン系共重合体を積層することにより、従来可能であった延伸温度よりも低い範囲の温度で延伸工程を行なうことが可能になったものである。
かかる延伸温度(フィルム近傍の雰囲気温度)は、通常、多層フィルムにおいてEVOH樹脂よりもプロピレン系共重合体のほうが融点が低いものを用いるため、プロピレン系共重合体の融点により決定することが好ましい。延伸温度は、具体的には通常100〜140℃、好ましくは110〜135℃である。延伸温度が低すぎた場合には延伸性が不良となり、フィルム破断が起こったり延伸フィルムにおける充分なガスバリア性が得られない傾向があり、高すぎた場合には安定した延伸状態を維持することが困難となり、延伸性が不良となって延伸フィルムにおける充分なガスバリア性が得られない傾向がある。
また、逐次延伸の場合は複数段階にて延伸する中で、最終段階の延伸が、上記の条件を満たすことが好ましい。
延伸工程においてはできるだけ高倍率の延伸を行うことが好ましく、かかる延伸倍率は、面積倍率で、通常15〜100倍、好ましくは20〜85倍、特に好ましくは30〜70倍である。
かくして延伸が終了した後、次いで熱固定を行う。熱固定は周知の手段で実施可能であり、上記延伸フィルムを、たるみなく緊張状態を保ちながらフィルム近傍の雰囲気温度にて通常80〜135℃、好ましくは100〜120℃にて、通常2〜600秒間程度熱処理を行う。
延伸多層フィルムの厚みは、通常5〜10000μmであり、好ましくは15〜1000μmである。延伸多層フィルムの各層の厚みは、層構成、用途や包装形態、要求される物性などにより一概に言えないが、EVOH樹脂含有層は通常0.5〜500μmであり、好ましくは2.5〜200μmである。プロピレン系共重合体含有層は通常4〜4000μmであり、好ましくは15〜700μmである。接着性樹脂層は通常0.5〜500μmであり、好ましくは0.5〜100μmの範囲から選択される。
また、EVOH樹脂層とポリプロピレン系共重合体層の厚みは、通常ポリプロピレン系共重合体層の方が厚く、その比はポリプロピレン系共重合体層/EVOH樹脂層として通常1〜100、好ましくは3〜20である。
かくして得られた多層延伸フィルムのガスバリア性向上倍率は、延伸前の多層フィルムに比較して(以下の式を用いて算出した値にて)、通常1.8倍以上、好ましくは2倍以上となる。
ガスバリア性向上倍率=未延伸フィルムの酸素透過度/延伸フィルムの酸素透過度
(酸素透過度は、20℃、80%RHにおいてMOCON社製「OXTRAN2/21」にて計測し、EVOH層の厚みを4μmに換算した値である。)
また、得られた多層延伸フィルムの透明性は、濁度計(日本電色工業製、機械名NDH2000)を用い、JIS−K−7105に準じて測定すると、通常0.1〜5、さらには0.1〜3、特には0.1〜1である。かかる値が低いほど透明性に優れており、高い場合は透明性が十分ではないことを示すものである。
かくして得られた多層延伸フィルムは、EVOH樹脂層とポリプロピレン系共重合体層を有する多層フィルムとしては従来得られなかった良好なガスバリア性を有し、柔軟性と延伸性に優れているので、食品、医薬品、工業薬品、農薬等各種の包装材料として有用である。
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
実施例1
EVOH樹脂(A1)[エチレン含有量38mol%、ケン化度99.8mol%、構造単位(1a)含有量1.5mol%、MFR4.0g/10min(210℃、荷重2160g)]をフィードブロック3種5層の多層Tダイを備えた多層押出装置に供給して、プロピレン系共重合体(B1)(融点139℃、MFR7.3g/10min、密度0.90g/cm3)層/ポリプロピレン系マレイン酸変性接着性樹脂(C1)(融点122℃)層/EVOH組成物(A1)層/接着樹脂層(同左)/プロピレン系共重合体層(同左)の層構成(厚み200/30/60/30/200μm)の本発明の多層フィルムを得た。
上記多層フィルムを135℃で2分間予熱し、同じ温度で200mm/secの延伸速度で、縦方向に7倍、横方向に7倍(延伸倍率:49倍)で同時二軸延伸を行った。延伸の後、100℃で3分間の熱処理を行って、多層延伸フィルムを得た。多層延伸フィルムを作成する際の延伸性、得られた多層フィルムおよび多層延伸フィルムのガスバリア性、柔軟性、透明性を以下の要領で評価した。
(延伸性)
得られた多層延伸フィルムを目視観察して、その延伸性を以下のとおり評価した。
○・・・延伸ムラ、偏肉が認められず、外観良好である。
△・・・延伸ムラ、偏肉が認められ外観不良であるが、延伸時に破断なし。
×・・・延伸時に破断し、延伸フィルムを得る事ができない。
(ガスバリア性)
多層延伸フィルムの酸素透過度についてMOCON社製「OXTRAN2/21」を用いて20℃、80%RHの条件下で測定した。
また、未延伸フィルムも、酸素透過度測定装置(MOCON社製「OXTRAN2/21」)を用いて、20℃、80%RHの条件下で該多層延伸フィルムの酸素透過度(cc/m2・day・atm)を測定し、延伸前の酸素透過度も測定した。
さらに、測定したサンプルの断面をミクロトームで処理後、顕微鏡で観察しEVOHの実厚みを測定した。実測した厚みを用い、計算によりEVOH層の厚み4μmに換算して、延伸前後のガスバリア性向上倍率を下記計算式を用い評価した。
ガスバリア性向上倍率=未延伸フィルムの酸素透過度/延伸フィルムの酸素透過度
(いずれのデータも20℃、80%RHで測定し、EVOH層の厚みを4μmに換算した値)
(柔軟性)
多層延伸フィルムの柔軟性を手触りにて、以下のとおり評価した。
○・・・十分やわらかい
△・・・多少のごわつきがあり、やや硬い
×・・・ごわつきが大きく、硬い
(透明性)
また、得られた多層延伸フィルムの透明性は、濁度計(日本電色工業製、機械名NDH2000)を用い、ヘイズ値をJIS−K−7105に準じて測定した。
実施例2
実施例1において、EVOH(A1)の代わりにEVOH(A2)[エチレン含有量38mol%、ケン化度99.8mol%、構造単位(1a)含有量3.0mol%、MFR4.0g/10min(210℃、荷重2160g)]、プロピレン系共重合体(B1)の代わりにプロピレン系共重合体(B2)(融点130℃、MFR5.3g/10min、密度0.90g/cm3)を使用した以外は同様に本発明の多層フィルムを得た。
この多層フィルムを125℃で2分間予熱し、同じ温度で200mm/secの延伸速度で、縦方向に7倍、横方向に7倍(延伸倍率:49倍)で同時二軸延伸を行った。延伸の後、100℃で3分間の熱処理を行って、本発明の多層延伸フィルムを得た。多層延伸フィルムを作成する際の延伸性、得られた多層フィルムおよび多層延伸フィルムのガスバリア性、柔軟性を評価した。
実施例3
実施例2において、EVOH(A2)の代わりにEVOH(A1)を用いた以外は同様に多層フィルムを作成し、さらに、同様にして多層延伸フィルムを作成し、同様に評価を行った。
実施例4
実施例2において、EVOH(A2)の代わりに、EVOH(A2)[エチレン含有量38mol%、ケン化度99.8mol%、構造単位(1a)含有量3mol%、MFR4.0g/10min(210℃、荷重2160g)]と未変性EVOH(C1)[エチレン含有量38mol%、ケン化度99.6mol%、構造単位(1)を含有しない、MFR4.0g/10min(210℃、荷重2160g)]を50/50の割合でブレンドした組成物(A3)を使用した以外は同様に多層フィルムを作成し、さらに、同様にして多層延伸フィルムを作成し、同様に評価を行った。
実施例5
実施例1において、プロピレン系共重合体(B1)の代わりにプロピレン系共重合体(B3)(融点125℃、MFR5.0g/10min、密度0.90g/cm3)を使用した以外は同様に本発明の多層フィルムを得た。
この多層フィルムを115℃で2分間予熱し、同じ温度で200mm/secの延伸速度で、縦方向に7倍、横方向に7倍(延伸倍率:49倍)で同時二軸延伸を行った。延伸の後、100℃で3分間の熱処理を行って、本発明の多層延伸フィルムを得た。多層延伸フィルムを作成する際の延伸性、得られた多層フィルムのガスバリア性、柔軟性を評価した。
実施例6
実施例5において、同じ多層フィルムを110℃で2分間予熱し、同じ温度で延伸した以外は同様に多層フィルムを作成し、さらに、同様にして多層延伸フィルムを作成し、同様に評価を行った。
比較例1
実施例1において、プロピレン系共重合体(B1)に変えて、プロピレン系共重合体(B4)(融点160℃、MFR2.3g/10min、密度0.91g/cm3)を用いた以外は同様にして多層フィルムを作成し、さらに、同様にして多層延伸フィルムを作成し、同様に評価を行った。
比較例2
比較例1において、EVOH(A1)の代わりにEVOH(A2)を用いた以外は同様にして多層フィルムを作成し、さらに、同様にして多層延伸フィルムを作成し、同様に評価を行った。
比較例3
比較例1において、EVOH(A1)の代わりにEVOH(A3)を用いた以外は同様にして多層フィルムを作成し、さらに、同様にして多層延伸フィルムを作成し、同様に評価を行った。
実施例及び比較例の条件を表1に、評価結果を表2にまとめて示す。
[表1]
Figure 2008307693
[表2]
Figure 2008307693
注)酸素透過度の単位は、(EVOH)4μm.cc/m2・day・atm
比較例1〜3では、融点が160℃のプロピレン系共重合体層と構造単位(1)を有するEVOH層を有する多層フィルムを得、これを延伸して多層延伸フィルムを得た。前記多層フィルムは155℃という比較的高い延伸温度でなければ延伸不能であり(実施例のような、延伸温度100〜140℃という条件では延伸出来ないものである)、かかる延伸によって得られた多層延伸フィルムはガスバリア性の向上倍率が1.8倍未満と小さく、ガスバリア性が不十分であり、かつ柔軟性も不足するものであった。
これに対して、本発明の実施例1〜6は、融点120℃〜150℃のプロピレン系共重合体層と構造単位(1)を有するEVOH層を有する本発明の多層フィルムを延伸し、本発明の多層延伸フィルムを得たものであり、従来なし得なかった低い温度で延伸することが可能であった。従ってかかる多層フィルムを延伸して得られた本発明の多層延伸フィルムは、ガスバリア性の向上倍率が1.8倍以上と大きく、良好なガスバリア性を有し、従来品と同様の延伸性と透明性を有し、かつ柔軟性に優れる。

Claims (4)

  1. 下記の構造単位(1)を含有するエチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物を含有する層の少なくとも片面に、融点が120〜150℃のプロピレン系共重合体を含有する層を積層してなることを特徴とする多層フィルム。
    Figure 2008307693
    [一般式(1)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。]
  2. 下記の構造単位(1)を含有するエチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物を含有する層の少なくとも片面に、融点が120〜150℃のプロピレン系共重合体を含有する層を積層してなる多層フィルムを、次いで少なくとも1方向に延伸してなることを特徴とする多層延伸フィルム。
  3. 延伸温度が100〜140℃にて延伸することを特徴とする請求項2記載の多層延伸フィルム。
  4. 延伸倍率が、フィルムの面積倍率にて15〜100倍であることを特徴とする請求項2〜3いずれかに記載の多層延伸フィルム。
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