JP4895562B2 - 積層構造体およびその用途 - Google Patents

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Description

本発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略記する)を含有する層と紙基材との積層構造体に関し、更に詳しくは、ガスバリア性、ガスバリアの安定性に優れた積層構造体に関する。
EVOHは透明性、ガスバリア性、保香性、耐溶剤性、耐油性などに優れており、従来より、かかる特性を生かして、食品包装材料、医薬品包装材料、工業薬品包装材料、農薬包装材料等のフィルムやシート、或いはチューブ、カップ、トレイ、ボトル等の容器に成形されて利用されている。
そして、ジュースや乳製品(牛乳等)などの飲料食品の容器にも紙基材とEVOHを積層した積層構造体が用いられている。 例えば、特許文献1には、LDPE/ペーパーボード/結合層/EVOH/結合層/LDPEの層構成を有するジュース包装用の積層構造体が記載されている。また特許文献2〜4には紙などの基材にEVOH層とカルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂層とを共押出コーティングして、最内層にEVOHを配した積層構造体が記載されている。また、特許文献5には紙との積層構造体において折り曲げ時の耐ピンホール性の改善を目的にEVOHに160℃以下の融点を有するポリアミド系樹脂を添加することが提案されている。
特開昭63−312143号公報 特開2000−177067号公報 特開2000−177068号公報 特開2001−018336号公報 特開2003−025519号公報
しかしながら、上記の積層構造体では保香性やガスバリア性、耐ピンホール性は良好となるものの、近年、生産効率を上げる為に製膜速度の高速化が進んでおり、高速で紙基材の上にEVOH層を押出コーティングして積層構造体を作成した場合は、EVOH層が不安定化するためかガスバリア性能にばらつきが生じるという問題があることが明らかになった。そこで高速押出コーティング時においても良好なガスバリア性およびガスバリアの安定性を有する多層構造体が望まれるところである。
そこで、上記の実情を鑑みて鋭意研究した結果、エチレン含有量が20〜60モル%であり、かつ下記の構造単位(1)を含有するEVOHを有する層と紙基材とを積層した積層構造体が上記の目的に合致することを見出して本発明を完成するに至った。
Figure 0004895562
(ここで、Xは結合鎖であってエーテル結合を除く任意の結合鎖で、R1〜R4はそれぞれ独立して任意の置換基であり、nは0または1を表す。)
本発明においては、上記の構造単位(1)を0.1〜30モル% 含有すること、ホウ素化合物をホウ素換算でEVOH100部に対して0.001〜1重量部含有すること、EVOHを紙基材に押出コーティングして積層してなる積層構造体であること等が好ましい実施形態である。
本発明の積層構造体は、特定の構造単位を含有するEVOHを有する層と紙基材からなるため、ガスバリア性及びガスバリアの安定性に優れている。
以下に、本発明を詳細に述べる。
本発明の積層構造体に使用されるEVOHは、上記の構造単位(1)、すなわち側鎖に1,2−グリコール結合を有する構造単位を含有することを特徴とするEVOHで、その分子鎖と1,2−グリコール結合構造とを結合する結合鎖(X)に関しては、エーテル結合を除くいずれの結合鎖を適用することも可能で、その結合鎖としては特に限定されないが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレンの他、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素(これらの炭化水素はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていても良い)の他、−CO−、−COCO−、−CO(CH2mCO−、−CO(C64)CO−、−S−、−CS−、−SO−、−SO2−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−、−HPO4−、−Si(OR)2−、−OSi(OR)2−、−OSi(OR)2O−、−Ti(OR)2−、−OTi(OR)2−、−OTi(OR)2O−、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−、等が挙げられるが(Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは自然数である)、エーテル結合は溶融成形時に分解し、EVOHの熱溶融安定性が低下する点で好ましくない。その中でも熱溶融安定性の点では結合種としてはアルキレンが好ましく、さらには炭素数が6以下のアルキレンが好ましい。また、EVOHのガスバリア性能が良好となる点で、炭素数はより少ないものが好ましく、n=0である1,2−グリコール結合構造が直接、分子鎖に結合している構造が最も好ましい。また、R1〜R4に関しては任意の置換基であり、とくに限定されないが水素原子、アルキル基がモノマーの入手が容易である点で好ましく、さらには水素原子がEVOHのガスバリア性が良好である点で好ましい。
本発明のEVOHの製造方法については特に限定されないが、最も好ましい構造である主鎖に直接1,2−グリコール結合構造を結合した構造単位を例とすると、3,4−ジオール−1−ブテン、ビニルエステル系モノマーおよびエチレンを共重合して得られた共重合体をケン化する方法、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、ビニルエステル系モノマーおよびエチレンを共重合して得られた共重合体をケン化する方法、3−アシロキシ−4−オール−1−ブテン、ビニルエステル系モノマーおよびエチレンを共重合して得られた共重合体をケン化する方法、4−アシロキシ−3−オール−1−ブテン、ビニルエステル系モノマーおよびエチレンを共重合して得られた共重合体をケン化する方法、3,4−ジアシロキシ−2−メチル−1−ブテン、ビニルエステル系モノマーおよびエチレンを共重合して得られた共重合体をケン化する方法、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン、ビニルエステル系モノマーおよびエチレンを共重合して得られた共重合体をケン化する方法、およびビニルエチレンカーボネート、ビニルエステル系モノマーおよびエチレンを共重合して得られた共重合体をケン化、脱炭酸する方法があげられる。また、結合鎖(X)としてアルキレンを有するものとしては4,5−ジオール−1−ペンテンや4,5−ジアシロキシ−1−ペンテン、4,5−ジオール−3−メチル−1−ペンテン、4,5−ジオール−3−メチル−1−ペンテン、5,6−ジオール−1−ヘキセン、5,6−ジアシロキシ−1−ヘキセン等とビニルエステル系モノマーおよびエチレンを共重合して得られた共重合体をケン化する方法が挙げられるが、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、ビニルエステル系モノマーおよびエチレンを共重合して得られた共重合体をケン化する方法が共重合反応性に優れる点で好ましく、さらには3,4−ジアシロキシ−1−ブテンとして、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを用いることが好ましい。また、これらのモノマーの混合物を用いてもよい。また、少量の不純物として3,4−ジアセトキシ−1−ブタンや1,4−ジアセトキシ−1−ブテン、1,4−ジアセトキシ−1−ブタン等を含んでいても良い。また、かかる共重合方法について以下に説明するが、これに限定されるものではない。
なお、かかる3,4−ジオール−1−ブテンとは、下記(2)式、3,4−ジアシロキシ−1−ブテンとは、下記(3)式、3−アシロキシ−4−オール−1−ブテンは下記(4)式、4−アシロキシ−3−オール−1−ブテンは下記(5)式で示されるものである。
Figure 0004895562
Figure 0004895562
(ここで、Rはアルキル基であり、好ましくはメチル基である。)
Figure 0004895562
(ここで、Rはアルキル基であり、好ましくはメチル基である。)
Figure 0004895562
(ここで、Rはアルキル基であり、好ましくはメチル基である。)
なお、上記の(2)式で示される化合物は、イーストマンケミカル社から、上記(3)式で示される化合物はイーストマンケミカル社やアクロス社から入手することができる。
また、ビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられるが、経済的にみて中でも酢酸ビニルが好ましく用いられる。
3,4−ジアシロキシ−1−ブテン等と、ビニルエステル系モノマー及びエチレンを共重合するに当たっては、特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、またはエマルジョン重合等の公知の方法を採用することができるが、通常は溶液重合が行われる。
共重合時のモノマー成分の仕込み方法としては特に制限されず、一括仕込み、分割仕込み、連続仕込み等任意の方法が採用される。
また、共重合体中にエチレンを導入する方法としては通常のエチレン加圧重合を行えばよく、その導入量はエチレンの圧力によって制御することが可能であり、目的とするエチレン含有量により一概にはいえないが、通常は25〜80kg/cm2の範囲から選択される。
かかる共重合で用いられる溶媒としては、通常、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコールやアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられ、工業的には、メタノールが好適に使用される。
溶媒の使用量は、目的とする共重合体の重合度に合わせて、溶媒の連鎖移動定数を考慮して適宜選択すればよく、例えば、溶媒がメタノールの時は、S(溶媒)/M(モノマー)=0.01〜10(重量比)、好ましくは0.05〜7(重量比)程度の範囲から選択される。
共重合に当たっては重合触媒が用いられ、かかる重合触媒としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル等の公知のラジカル重合触媒やt−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、α,α’ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート等のパーオキシエステル類、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−iso−プロピルパーオキシジカーボネート]、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、ジイソブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類などの低温活性ラジカル重合触媒等が挙げられ、重合触媒の使用量は、触媒の種類により異なり一概には決められないが、重合速度に応じて任意に選択される。例えば、アゾビスイソブチロニトリルや過酸化アセチルを用いる場合、ビニルエステル系モノマーに対して10〜2000ppmが好ましく、特には50〜1000ppmが好ましい。
また、共重合反応の反応温度は、使用する溶媒や圧力により40℃〜沸点程度の範囲から選択することが好ましい。
本発明では、上記触媒とともにヒドロキシラクトン系化合物またはヒドロキシカルボン酸を共存させることも好ましく、該ヒドロキシラクトン系化合物としては、分子内にラクトン環と水酸基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、グルコノデルタラクトン等を挙げることができ、好適にはL−アスコルビン酸、エリソルビン酸が用いられ、また、ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸等を挙げることができ、好適にはクエン酸が用いられる。
かかるヒドロキシラクトン系化合物またはヒドロキシカルボン酸の使用量は、回分式及び連続式いずれの場合でも、酢酸ビニル100重量部に対して0.0001〜0.1重量部(さらには0.0005〜0.05重量部、特には0.001〜0.03重量部)が好ましく、かかる使用量が0.0001重量部未満では共存の効果が十分に得られないことがあり、逆に0.1重量部を越えると酢酸ビニルの重合を阻害する結果となって好ましくない。かかる化合物を重合系に仕込むにあたっては、特に限定はされないが、通常は低級脂肪族アルコールや酢酸ビニルを含む脂肪族エステルや水等の溶媒又はこれらの混合溶媒で希釈されて重合反応系に仕込まれる。
なお、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン等の共重合割合は特に限定されないが、前述の構造単位(1)の導入量に合わせて共重合割合を決定すればよい。
また、本発明では、上記の共重合時に本発明の効果を阻害しない範囲で共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合していてもよく、かかる単量体としては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類、メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類、ビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、グリセリンモノアリルエーテル、エチレンカーボネート等が挙げられる。
さらに、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−アクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、3−ブテントリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ジエチルジアリルアンモニウムクロライド等のカチオン基含有単量体、アセトアセチル基含有単量体等も挙げられる。
さらにビニルシラン類としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルイソブチルジメトキシシラン、ビニルエチルジメトキシシラン、ビニルメトキシジブトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメトキシジヘキシロキシシラン、ビニルジメトキシヘキシロキシシラン、ビニルトリヘキシロキシシラン、ビニルメトキシジオクチロキシシラン、ビニルジメトキシオクチロキシシラン、ビニルトリオクチロキシシラン、ビニルメトキシジラウリロキシシラン、ビニルジメトキシラウリロキシシラン、ビニルメトキシジオレイロキシシラン、ビニルジメトキシオレイロキシシラン等を挙げることができる。
得られた共重合体は、次いでケン化されるのであるが、かかるケン化にあたっては、上記で得られた共重合体をアルコール又は含水アルコールに溶解された状態で、アルカリ触媒又は酸触媒を用いて行われる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブタノール等が挙げられるが、メタノールが特に好ましく用いられる。アルコール中の共重合体の濃度は系の粘度により適宜選択されるが、通常は10〜60重量%の範囲から選ばれる。ケン化に使用される触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒、硫酸、塩酸、硝酸、メタスルフォン酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等の酸触媒が挙げられる。
かかるケン化触媒の使用量については、ケン化方法、目標とするケン化度等により適宜選択されるが、アルカリ触媒を使用する場合は通常、ビニルエステル系モノマー及び3,4−ジアシロキシ−1−ブテンの合計量に対して0.001〜0.1当量、好ましくは0.005〜0.05当量が適当である。
また、ケン化時の圧力は目的とするエチレン含有量により一概に言えないが、2〜7kg/cm2の範囲から選択され、このときの温度は80〜150℃、好ましくは100〜130℃から選択される。
かくして、本発明に使用される側鎖に1,2−グリコール結合を有する構造単位を有するEVOHが得られるのであるが、本発明においては、得られたEVOHのエチレン含有量は、20〜60モル%(さらには20〜50モル%、特には25〜48モル%)、ケン化度は特に限定されないが、90モル%以上(さらには95モル%以上、特には99モル%以上)のものが好適に用いられ、該エチレン含有量が10モル%未満では高湿時のガスバリア性や外観性が低下する傾向にあり、逆に60モル%を越えるとガスバリア性が低下する傾向にあり、さらにケン化度が90モル%未満ではガスバリア性や耐湿性等が低下する傾向にあり好ましくない。
さらに、得られたEVOH中に導入される上記の構造単位(1)(1,2−グリコール結合を有する構造単位)量としては特に制限はされないが、0.1〜30モル%(さらには0.5〜25モル%、特には1〜20モル%)が好ましく、かかる導入量が0.1モル%未満では本発明の効果が十分に発現されず、逆に30モル%を越えるとガスバリア性が低下する傾向にあり好ましくない。また、1,2−グリコール結合を有する構造単位量を調整するにあたっては、1,2−グリコール結合を有する構造単位の導入量の異なる少なくとも2種のEVOHをブレンドして調整することも可能であり、そのうちの少なくとも1種が1,2−グリコール結合を有する構造単位を有していなくても構わない。
このようにして1,2−グリコール結合量が調整されたEVOHに関しては、1,2−グリコール結合量は重量平均で算出しても差し支えなく、またそのエチレン含有量についても重量平均で算出させても差し支えないが、正確には後述する1H−NMRの測定結果より、エチレン含有量、1,2−グリコール結合量を算出することができる。
かかる方法で得られた構造単位(1)を有するEVOHは、そのままで用いることもできるが、さらに、本発明の目的を阻害しない範囲において、酢酸、リン酸等の酸類やそのアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等の金属塩を添加させることが、ホウ素化合物としてホウ酸またはその金属塩を添加させることが樹脂の熱安定性を向上させる点で好ましい。
酢酸の添加量としてはEVOH100重量部に対して0.001〜1重量部(さらには0.005〜0.2重量部、特には0.010〜0.1重量部)とすることが好ましく、かかる添加量が0.001重量部未満ではその含有効果が十分に得られないことがあり、逆に1重量部を越えると得られる成形物の外観が悪化する傾向にあり好ましくない。
ホウ酸金属塩としてはホウ酸カルシウム、ホウ酸コバルト、ホウ酸亜鉛(四ホウ酸亜鉛,メタホウ酸亜鉛等)、ホウ酸アルミニウム・カリウム、ホウ酸アンモニウム(メタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウム等)、ホウ酸カドミウム(オルトホウ酸カドミウム、四ホウ酸カドミウム等)、ホウ酸カリウム(メタホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸カリウム、六ホウ酸カリウム、八ホウ酸カリウム等)、ホウ酸銀(メタホウ酸銀、四ホウ酸銀等)、ホウ酸銅(ホウ酸第2銅、メタホウ酸銅、四ホウ酸銅等)、ホウ酸ナトリウム(メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム等)、ホウ酸鉛(メタホウ酸鉛、六ホウ酸鉛等)、ホウ酸ニッケル(オルトホウ酸ニッケル、二ホウ酸ニッケル、四ホウ酸ニッケル、八ホウ酸ニッケル等)、ホウ酸バリウム(オルトホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、二ホウ酸バリウム、四ホウ酸バリウム等)、ホウ酸ビスマス、ホウ酸マグネシウム(オルトホウ酸マグネシウム、二ホウ酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、四ホウ酸三マグネシウム、四ホウ酸五マグネシウム等)、ホウ酸マンガン(ホウ酸第1マンガン、メタホウ酸マンガン、四ホウ酸マンガン等)、ホウ酸リチウム(メタホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、五ホウ酸リチウム等)などの他、ホウ砂、カーナイト、インヨーアイト、コトウ石、スイアン石、ザイベリ石等のホウ酸塩鉱物などが挙げられ、好適にはホウ砂、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム(メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム等)があげられる。またホウ素化合物の添加量としては、組成物中の全EVOH100重量部に対してホウ素換算で0.001〜1重量部(さらには0.002〜0.2重量部、特には0.005〜0.1重量部)とすることが好ましく、かかる添加量が0.001重量部未満ではその含有効果が十分に得られないことがあり、逆に1重量部を越えると得られる成形物の外観が悪化する傾向にあり好ましくない。
また、かかる金属塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の有機酸や、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸等の無機酸の金属塩が挙げられ、好適には酢酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩である。また、該金属塩の添加量としては、EVOH100重量部に対して金属換算で0.0005〜0.1重量部(さらには0.001〜0.05重量部、特には0.002〜0.03重量部)とすることが好ましく、かかる添加量が0.0005重量部未満ではその含有効果が十分に得られないことがあり、逆に0.1重量部を越えると得られる成形物の外観が悪化する傾向にあり好ましくない。尚、EVOHに2種以上のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩を添加する場合は、その総計が上記の添加量の範囲にあることが好ましい。
EVOHに酸類やその金属塩を添加する方法については、特に限定されず、ア)含水率20〜80重量%のEVOHの多孔性析出物を、酸類やその金属塩の水溶液と接触させて、酸類やその金属塩を含有させてから乾燥する方法、イ)EVOHの均一溶液(水/アルコール溶液等)に酸類やその金属塩を含有させた後、凝固液中にストランド状に押し出し、次いで得られたストランドを切断してペレットとして、さらに乾燥処理をする方法、ウ)EVOHと酸類やその金属塩を一括して混合してから押出機等で溶融混練する方法、エ)EVOHの製造時において、ケン化工程で使用したアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を酢酸等の酸類で中和して、残存する酢酸等の酸類や副生成する酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属塩の量を水洗処理により調整したりする方法等を挙げることができる。本発明の効果をより顕著に得るためには、酸類やその金属塩の分散性に優れるア)、イ)またはエ)の方法が好ましい。
上記ア)、イ)またはエ)の方法で得られたEVOH組成物は、塩類や金属塩が添加された後、乾燥が行われる。
かかる乾燥方法としては、種々の乾燥方法を採用することが可能である。例えば、実質的にペレット状のEVOHが、機械的にもしくは熱風により撹拌分散されながら行われる流動乾燥や、実質的にペレット状のEVOHが、撹拌、分散などの動的な作用を与えられずに行われる静置乾燥が挙げられ、流動乾燥を行うための乾燥器としては、円筒・溝型撹拌乾燥器、円管乾燥器、回転乾燥器、流動層乾燥器、振動流動層乾燥器、円錐回転型乾燥器等が挙げられ、また、静置乾燥を行うための乾燥器として、材料静置型としては回分式箱型乾燥器が、材料移送型としてはバンド乾燥器、トンネル乾燥器、竪型乾燥器等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。流動乾燥と静置乾燥を組み合わせて行うことも可能である。
該乾燥処理時に用いられる加熱ガスとしては空気または不活性ガス(窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等)が用いられ、該加熱ガスの温度としては、40〜150℃が、生産性とEVOHの熱劣化防止の点で好ましい。該乾燥処理の時間としては、EVOHの含水量やその処理量にもよるが、通常は15分〜72時間程度が、生産性とEVOHの熱劣化防止の点で好ましい。
上記の条件でEVOH組成物が乾燥処理されるのであるが、該乾燥処理後のEVOH組成物の含水率は0.001〜5重量%(さらには0.01〜2重量%、特には0.1〜1重量部)になるようにするのが好ましく、該含水率が0.001重量%未満では、ロングラン成形性が低下する傾向にあり、逆に5重量%を越えると、押出成形時時に発泡が発生する虞があり好ましくない。
かくして本発明に使用されるEVOHあるいはその組成物(以下、まとめてEVOH組成物と記す)が得られるわけであるが、かかるEVOH組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲において、多少のモノマー残査(3,4−ジオール−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、3−アシロキシ−4−オール−1−ブテン、4−アシロキシ−3−オール−1−ブテン、4,5−ジオール−1−ペンテン、4,5−ジアシロキシ−1−ペンテン、4,5−ジオール−3−メチル−1−ペンテン、4,5−ジオール−3−メチル−1−ペンテン、5,6−ジオール−1−ヘキセン、5,6−ジアシロキシ−1−ヘキセン、4,5−ジアシロキシ−2−メチル−1−ブテン等)やモノマーのケン化物(3,4−ジオール−1−ブテン、4,5−ジオール−1−ペンテン、4,5−ジオール−3−メチル−1−ペンテン、4,5−ジオール−3−メチル−1−ペンテン、5,6−ジオール−1−ヘキセン等)を含んでいてもよい。
また、本発明で使用されるEVOHは、構造単位(1)を含有するEVOHとこれと異なる他のEVOHのブレンド物であることもガスバリア性と耐圧性を良好とする点で好ましく、かかる他のEVOHとしては、構造単位が異なるもの、エチレン含有量が異なるもの、ケン化度が異なるもの、分子量が異なるものなどを挙げることができる。
構造単位(1)を有するEVOHと構造単位が異なるEVOHとしては、例えばエチレン構造単位とビニルアルコール構造単位のみからなるEVOHや、EVOHの側鎖に2−ヒドロキシエトキシ基などの官能基を有する変性EVOHを挙げることができる。
また、エチレン含有量が異なるものを用いる場合、その構造単位は同じであっても異なっていても良いが、そのエチレン含有量差は1モル%以上(さらには2モル%以上、特には2〜20モル%)であることが好ましい。かかるエチレン含有量差が大きすぎると透明性が不良となる場合があり、好ましくない。また、異なる2種以上のEVOH(ブレンド物)の製造方法は特に限定されず、例えばケン化前のEVAの各ペーストを混合後ケン化する方法、ケン化後の各EVOHのアルコールまたは水とアルコールの混合溶媒に溶解させた溶液を混合する方法、各EVOHをペレット状、または粉体で混合した後、溶融混練する方法などが挙げられる。
かくして得られたEVOH組成物のメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)については特に限定はされないが、0.1〜100g/10分(さらには0.5〜50g/10分、特には1〜30g/10分)が好ましく、該メルトフローレートが該範囲よりも小さい場合には、成形時に押出機内が高トルク状態となって押出加工が困難となる傾向にあり、また該範囲よりも大きい場合には、耐ピンホール性や外観性やガスバリア性が低下する傾向にあり好ましくない。
また、本発明においては、かかるEVOHに本発明の目的を阻害しない範囲において、飽和脂肪族アミド(例えばステアリン酸アミド等)、不飽和脂肪酸アミド(例えばオレイン酸アミド等)、ビス脂肪酸アミド(例えばエチレンビスステアリン酸アミド等)、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等)、低分子量ポリオレフィン(例えば分子量500〜10,000程度の低分子量ポリエチレン、又は低分子量ポリプロピレン等)などの滑剤、無機塩(例えばハイドロタルサイト等)、酸素吸収剤(例えば無機系酸素吸収剤として、還元鉄粉類、さらにこれに吸水性物質や電解質等を加えたもの、アルミニウム粉、亜硫酸カリウム、光触媒酸化チタン等が、有機化合物系酸素吸収剤として、アスコルビン酸、さらにその脂肪酸エステルや金属塩等、ハイドロキノン、没食子酸、水酸基含有フェノールアルデヒド樹脂等の多価フェノール類、ビス−サリチルアルデヒド−イミンコバルト、テトラエチレンペンタミンコバルト、コバルト−シッフ塩基錯体、ポルフィリン類、大環状ポリアミン錯体、ポリエチレンイミン−コバルト錯体等の含窒素化合物と遷移金属との配位結合体、テルペン化合物、アミノ酸類とヒドロキシル基含有還元性物質の反応物、トリフェニルメチル化合物等が、高分子系酸素吸収剤として、窒素含有樹脂と遷移金属との配位結合体(例:MXDナイロンとコバルトの組合せ)、三級水素含有樹脂と遷移金属とのブレンド物(例:ポリプロピレンとコバルトの組合せ)、炭素−炭素不飽和結合含有樹脂と遷移金属とのブレンド物(例:ポリブタジエンとコバルトの組合せ)、光酸化崩壊性樹脂(例:ポリケトン)、アントラキノン重合体(例:ポリビニルアントラキノン)等や、さらにこれらの配合物に光開始剤(ベンゾフェノン等)や過酸化物補足剤(市販の酸化防止剤等)や消臭剤(活性炭等)を添加したものなど)、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、充填材(例えば無機フィラー等)他樹脂(ポリオレフィンやポリアミド等)等を配合しても良い。
かくして本発明の積層構造体に使用されるEVOH組成物が得られるわけであるが、積層構造体を作成するにあたっては、紙基材と積層される。紙基材としては、特に制限はなく、坪量30〜500g/m2程度の天然紙、合成紙、あるいは混抄紙などを挙げることができる。
本発明の積層構造体は、上記の如きEVOH組成物の層が紙基材に積層されていればよく、これらの層以外の層、例えば、熱可塑性樹脂層、接着剤層等が積層されていても構わない。積層構造体(積層体)の層構成の具体例を挙げれば、紙基材/EVOH組成物層、紙基材/接着性樹脂層/EVOH組成物層、紙基材/EVOH組成物層/接着性樹脂層/熱可塑性樹脂層、紙基材/EVOH組成物層/接着性樹脂層/EVOH組成物層/接着性樹脂層/熱可塑性樹脂層、紙基材/熱可塑性樹脂層/接着性樹脂層/EVOH組成物層等を例示することができ、好適には、紙基材/熱可塑性樹脂層/接着性樹脂層/EVOH組成物層や紙基材/EVOH組成物層/接着性樹脂層/熱可塑性樹脂層の層構成が採用されうるが、これに限定されるものではない。
上記の如き積層構造体を得るにあたっては、特に制限はないが、溶融押出コーティングにより積層構造体を成形することが好ましく、これについて具体的に説明するが、これに限定されるものではない。
溶融押出コーティングを実施するにあたっては、紙の表面に必要に応じて、コロナ処理や火炎処理またはプライマー処理等の表面処理を施しておくことが好ましく、該プライマー処理剤としては、有機チタン系接着剤、2液反応型ポリウレタン系接着剤、ポリエステル/イソシアネート系接着剤等が挙げられ、好適には2液反応型ポリウレタン系接着剤が使用される。かかるプライマー処理剤の使用量は0.1〜10g/m2が好ましく、さらには0.3〜5g/m2である。
ついで、かかる紙基材にEVOH組成物を溶融押出するのであるが、かかる溶融押出に際しては公知の溶融押出機を用いることができ、(必要により表面処理された)紙の表面に溶融押出コーティングすればよく、また、接着性樹脂や熱可塑性樹脂等を併用するときは、2種2層以上の共押出コーティングを行えば良い。
上記の熱可塑性樹脂としては、具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン(ブロック又はランダム)共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン、ポリメチルペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したものなどの広義のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂(共重合ポリアミドも含む)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、芳香族または脂肪族ポリケトン、更にこれらを還元して得られるポリアルコール類、更には他のEVOH等が挙げられる。
また、接着性樹脂としては、種々のものを使用することができるが、一般的には、不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体(上述のオレフィンの単独又は共重合体)に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体を挙げることができ、具体的には、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等から選ばれた1種または2種以上の混合物が好適なものとして挙げられる。このときの、オレフィン系重合体に含有される不飽和カルボン酸又はその無水物の量は、0.001〜1重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.5重量%である。該変性物中の変性量が少ないと、層間接着性が低下し、逆に多いと架橋反応を起こし、成形性が悪くなることがあり好ましくない。
さらに、本発明においては、層間の密着性を向上させるために、EVOH組成物層に上記の接着性樹脂等を適当量配合することも可能である。
上記の各層の厚みについては、特に限定されないが、EVOH組成物層の厚みは、0.5〜50μm(さらには1〜30μm、特には2〜20μm、殊には3〜10μm)の範囲から選択することが好ましく、かかる厚みが0.5μm未満では、酸素バリア性が不十分となり、逆に50μmを越えると機械的強度が不十分となり、また経済的にも不利となって好ましくない。
接着性樹脂層の厚みは、0.5〜30μm(さらには1〜20μm、特には2〜10μm)の範囲から選択することが好ましく、かかる厚みが0.5μm未満では、接着強度が不十分となり、逆に30μmを越えると高温下での加工性が低下して好ましくない。
熱可塑性樹脂層の厚みは、10〜200μm(さらには20〜100μm、特には30〜70μm)の範囲から選択することが好ましく、かかる厚みが10μm未満では、機械的強度が不充分となり、逆に200μmを越えると積層構造体の柔軟性が低下して好ましくない。なお、押出コーティングは、共押出で全層をコーティングしても良いし、各層を別々の押出機でそれぞれコーティングしても良い。
押出コーティング速度に関しては、特に限定されないが、生産効率を上げる為には押出コーティング速度が高くすることが好ましく、30m/分以上更には50m/分以上、特には80m/分以上が好ましい。
かくして本発明の積層体が得られるのであるが、かかる積層体は、各種包装体に用いることができるが、特にジュースや乳製品などの紙容器として用いることが好ましく、かかる用途について説明する。本発明の積層体を紙容器とするには、紙基材側を外側になるように、公知の製造機に供して製造することが可能である。また、紙容器の外側には、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂などで紙基材表面をコーティングしておくことも好ましい。
以下に、実施例を挙げて本発明の方法を具体的に説明する。なお、以下「%」とあるのは、特にことわりのない限り、重量基準を意味する。
重合例1
下記の方法によりEVOH組成物(A1)を得た。
冷却コイルを持つ1m3の重合缶に酢酸ビニルを500kg、メタノール100kg、アセチルパーオキシド500ppm(対酢酸ビニル)、クエン酸20ppm、および3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを14kgを仕込み、系を窒素ガスで一旦置換した後、次いでエチレンで置換して、エチレン圧が35kg/cm2となるまで圧入して、攪拌した後、67℃まで昇温して、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを15g/分で全量4.5kgを添加しながら重合し、重合率が50%になるまで6時間重合した。その後、重合反応を停止してエチレン含有量29モル%のエチレン-酢酸ビニル共重合体を得た。
該エチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液を棚段塔(ケン化塔)の塔上部より10kg/時の速度で供給し、同時に該共重合体中の残存酢酸基に対して、0.012当量の水酸化ナトリウムを含むメタノール溶液を塔上部より供給した。一方、塔下部から15kg/時でメタノールを供給した。塔内温度は100〜110℃、塔圧は3kg/cm2Gであった。仕込み開始後30分から、1,2−グリコール結合を有する構造単位を有するEVOHのメタノール溶液(EVOH30%、メタノール70%)が取出された。かかるEVOHの酢酸ビニル成分のケン化度は99.5モル%であった。
次いで、得られた該EVOHのメタノール溶液をメタノール/水溶液調整塔の塔上部から10kg/時で供給し、120℃のメタノール蒸気を4kg/時、水蒸気を2.5kg/時の速度で塔下部から仕込み、塔頂部よりメタノールを8kg/時で留出させると同時に、ケン化で用いた水酸化ナトリウム量に対して6当量の酢酸メチルを塔内温95〜110℃の塔中部から仕込んで塔底部からEVOHの水/アルコール溶液(樹脂濃度35%)を得た。
得られたEVOHの水/アルコール溶液を、孔径4mmのノズルより、メタノール5%、水95%よりなる5℃に維持された凝固液槽にストランド状に押し出して、凝固終了後、ストランド状物をカッターで切断し、直径3.8mm、長さ4mmの含水率45%のEVOHの多孔性ペレットを得た。
該多孔性ペレット100部に対して水100部で洗浄した後、0.032%のホウ酸及び0.007%のリン酸二水素カルシウムを含有する混合液中に投入し、30℃で5時間撹拌した。
さらにかかる多孔性ペレットを回分式通気箱型乾燥器にて、温度70℃、水分含有率0.6%の窒素ガスを通過させて12時間乾燥を行って、含水率を30%とした後に、回分式塔型流動層乾燥器を用いて、温度120℃、水分含有率0.5%の窒素ガスで12時間乾燥を行って目的とするEVOH組成物のペレットを得た。かかるペレットは、EVOH100重量部に対して、ホウ酸およびリン酸二水素カルシウムをそれぞれ0.015重量部(ホウ素換算)および0.005重量部(リン酸根換算)含有し、MFR(210℃、2160g)は4.0g/10分であった。
また、1,2−グリコール結合の導入量は、ケン化前のエチレン−酢酸ビニル共重合体を1H−NMR(内部標準物質:テトラメチルシラン、溶媒:d6−DMSO)で測定して算出したところ、2.5モル%であった。なお、NMR測定には日本ブルカー社製「AVANCE DPX400」を用いた。
Figure 0004895562
1H−NMR](図1参照)
1.0〜1.8ppm:メチレンプロトン(図1の積分値a)
1.87〜2.06ppm:メチルプロトン
3.95〜4.3ppm:構造(I)のメチレン側のプロトン+未反応の3,4−ジア セトキシ−1−ブテンのプロトン(図1の積分値b)
4.6〜5.1ppm:メチンプロトン+構造(I)のメチン側のプロトン(図1の積 分値c)
5.2〜5.9ppm:未反応の3,4−ジアセトキシ−1−ブテンのプロトン(図1 の積分値d)
[算出法]
5.2〜5.9ppmに4つのプロトンが存在するため、1つのプロトンの積分値はd/4、積分値bはジオールとモノマーのプロトンが含まれた積分値であるため、ジオールの1つのプロトンの積分値(A)は、A=(b−d/2)/2、積分値cは酢酸ビニル側とジオール側のプロトンが含まれた積分値であるため、酢酸ビニルの1つプロトンの積分値(B)は、B=1−(b−d/2)/2、積分値aはエチレンとメチレンが含まれた積分値であるため、エチレンの1つのプロトンの積分値(C)は、C=(a−2×A−2×B)/4=(a−2)/4と計算し、構造単位(1)の導入量は、100×{A/(A+B+C)} =100×(2×b−d)/(a+2)より算出した。
また、ケン化後のEVOHに関しても同様に1H−NMR測定を行った結果を図2に示す。1.87〜2.06ppmのメチルプロトンに相当するピークが大幅に減少していることから、共重合された3,4−ジアセトキシ−1−ブテンもケン化され、1,2−グリコール構造となっていることは明らかである。
重合例2
下記の方法によりEVOH組成物(A2)を得た。
重合例1において、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの替わりに3,4−ジアセトキシ−1−ブテンと3−アセトキシ−4−オール−1−ブテンと1,4−ジアセトキシ−1−ブテンの70:20:10の混合物を用いた以外は同様に行い、エチレン含有量が29モル%で側鎖に1,2−グリコール結合を有する構造単位の導入量が2.0モル%のEVOH(A2)組成物を得た。このEVOH共重合体のMFRは3.7g/10分で、ホウ酸含0.015重量部(ホウ素換算)リン酸二水素カルシウム0.005重量部(リン酸根換算)含有のEVOH組成物(A2)であった。
別途、エチレン含有量29モル%、ケン化度99.5モル%、MFI=4.0g/分(210℃、2160g)、ホウ酸の含有量(ホウ素換算)0.015重量部、リン酸二水素カルシウムの含有量0.005重量部(リン酸根換算)の構造単位(1)を含有しないEVOH組成物(B1)を用意した。
実施例1
上記で得られたEVOH組成物(A1)をフィードブロック3種5層の多層Tダイを備えた多層押出装置に供給して、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製『ノバテックLD LF542H』)層/接着樹脂(三菱化学製『モディックAP M505』)層/EVOH組成物(A1)層/接着樹脂層(同左)/低密度ポリエチレンを紙基材[坪量250g/m2で幅100cmの天然紙、予め積層表面をバーナーで火炎処理済み]に100m/分で溶融押出コーティングして、紙基材上に層構成が10/5/5/5/10μmの多層構造体を積層した積層構造体を得てガスバリア性、およびガスバリアの安定性を以下の要領で評価した。
(ガスバリア性)
積層構造体の幅方向に20cm間隔で5カ所について酸素透過度をMOCON社製「OXTRAN2/21」を用いて23℃、80%RHの条件下で測定し、その平均値を算出した。
(ガスバリアの安定性)
ガスバリア性の評価で測定した5カ所の酸素透過度の標準偏差を求めて、ガスバリアの安定性とした。(ばらつきが大きい程、標準偏差が大きい)
実施例2
実施例1において、EVOH組成物(A1)の代わりにEVOH組成物(A2)を使用した以外は同様に積層構造体を作成し、同様に評価を行った。
比較例1
実施例1において、EVOH組成物(A1)に変えて、EVOH組成物(B1)を用いた以外は同様にし積層構造体を作成し、同様に評価を行った。
実施例及び比較例の評価結果を表1にまとめて示す。
[表1]
ガスバリア性 ガスバリアの安定性
実施例1 6.7 0.16
実施例2 6.5 0.22
比較例1 5.4 0.73
注)ガスバリア性の単位は、cc/m2・day・atm
本発明の積層構造体は、ガスバリア性、ガスバリアの安定性に優れており、特に紙カートン容器として、食品や医療品、工業薬品、薬品、農薬、電子部品、機械部品等の包装材料として有用である。
重合例1で得られたEVOHのケン化前の1H−NMRチャートである。 重合例1で得られたEVOHの1H−NMRチャートである。

Claims (13)

  1. エチレン含有量が20〜60モル%であり、かつ下記の構造単位(1)を含有するエチ
    レン−ビニルアルコール共重合体を有する層と紙基材が積層してなることを特徴とする積
    層構造体。
    Figure 0004895562
    (ここで、Xは結合鎖であってエーテル結合を除く任意の結合鎖で、R1〜R4はそれ
    ぞれ独立して任意の置換基であり、nは0または1を表す。)
  2. 構造単位(1)のR1〜R4がそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基
    、炭素数3〜8の環状炭化水素基又は芳香族炭化水素基のいずれかであることを特徴とす
    る請求項1記載の積層構造体。
  3. 構造単位(1)のR1〜R4がいずれも水素原子であることを特徴とする請求項1また
    は2記載の積層構造体。
  4. 構造単位(1)のXが炭素数6以下のアルキレン基であることを特徴とする請求項1〜
    3いずれか記載の積層構造体。
  5. 構造単位(1)のnが0であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の積層構造
    体。
  6. 構造単位(1)が共重合によりエチレン−ビニルアルコール共重合体の分子鎖中に導入
    されたものであることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の積層構造体。
  7. エチレン−ビニルアルコール共重合体の分子鎖中に構造単位(1)を0.1〜30モル
    %含有することを特徴とする請求項1〜いずれか記載の積層構造体。
  8. エチレン−ビニルアルコール共重合体が3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、ビニルエ
    ステル系モノマーおよびエチレンの共重合体をケン化して得られたものであることを特徴
    とする請求項5〜いずれか記載の積層構造体。
  9. エチレン−ビニルアルコール共重合体が3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、ビニルエ
    ステル系モノマーおよびエチレンの共重合体をケン化して得られたものであることを特徴
    とする請求項5〜いずれか記載の積層構造体。
  10. エチレン−ビニルアルコール共重合体がホウ素化合物をエチレン−ビニルアルコール共重
    合体100重量部に対してホウ素換算で0.001〜1重量部含有することを特徴とする
    請求項1〜いずれか記載の積層構造体。
  11. エチレン−ビニルアルコール共重合体を有する層が共押出コーティングにより紙基材に
    積層されてなることを特徴とする請求項1〜10いずれか記載の積層構造体。
  12. 構造単位(1)を含有するエチレン− ビニルアルコール共重合体を有する層の厚さが
    0.5〜50μmであることを特徴とする請求項1〜11いずれか記載の積層構造体。
  13. 請求項1〜12いずれか記載の積層構造体を用いることを特徴とする飲料包装用カート
    ン。

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