JP6468775B2 - エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物及び高圧ガス用ホース又は貯蔵容器 - Google Patents

エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物及び高圧ガス用ホース又は貯蔵容器 Download PDF

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Description

本発明はエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物及び高圧ガス用ホース又は貯蔵容器に関する。詳細には、エチレン含有量が特定少量であり、かつ側鎖に一級水酸基を有する構造単位を特定量有する新規なエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(以下「EVOH」と称することがある。)、及びこのEVOH又はその組成物からなる層を少なくとも1層有する高圧ガス用ホース又は高圧ガス用貯蔵容器に関する。
近年、水素ガスステーション等で車載用燃料電池への水素ガス供給に用いられる水素ガス貯蔵容器のコンパクト化が進められている。また、かかる燃料電池へ水素ガスを供給する水素ガス供給用ホースについては、現在のガソリン車と同等の走行距離が可能となる水素ガス量を前記のようなコンパクト化した水素ガス貯蔵容器へ一回で速やかに充填することが求められる。即ち、高圧の水素ガスを貯蔵できる貯蔵容器や高圧の水素ガスを移送又は充填するために用いられる高圧ガス用ホースが求められている。
高圧水素ガスを貯蔵する貯蔵容器や高圧の水素ガスを移送又は充填するためのホースの実用化にあたっては、水素脆化に対する耐久性(耐水素性)や水素ガスバリア性の更なる向上が求められている。
高圧ガス用ホース又は貯蔵容器として、例えば特許文献1には、側鎖に1,2−ジオール構造単位を含有するビニルアルコール系樹脂(以下「側鎖1,2−ジオール含有PVA系樹脂」と称することがある。)、及び極性官能基を有するフッ素樹脂を含有する樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する高圧ガス用ホース又は貯蔵容器が開示されている。側鎖に1,2−ジオール構造単位を含有するビニルアルコール系樹脂は、極性官能基を有するフッ素樹脂とポリマーアロイ化することで、水素ガスのような低分子量ガスに対しても高圧下でブリスタを引き起こすことなく高度なガスバリア性を有し、さらに、柔軟性にも優れ、高圧ガスの供給や停止に伴う変化にして優れた耐久性を有することが知られている。
一方、一般高圧ガス保安規則には、高圧タンクの耐圧試験基準が規定されている。その一つに液体(通常は水)による耐圧試験が記載され、例えば、常用の圧力の4倍の圧力(水媒体)にタンクが破損せず耐えられることが要求されている。
国際公開第2014/021422号
しかしながら、特許文献1の技術では、エチレンを含有しない側鎖1,2−ジオール含有PVA系樹脂を含む多層積層体で成形体を構成した場合、最内層が疎水性のポリオレフィン系樹脂層であっても蓄圧器用タンクの耐圧試験で水を用いた耐水試験を行うと、加圧水の影響で成形体の端部の一部がゲル化するおそれがあり、耐水試験後の品質低下が懸念されるという問題点があった。成形体の端部のゲル化を防ぐために、端部をポリオレフィン系樹脂で溶接する方法もあるが、この方法ではタンクの製造工程において生産性が低下するという新たな問題が生じる。
また、特許文献1の技術では、エチレン含有率が高い側鎖1,2−ジオール含有EVOHを使用した場合、例えば70MPa条件下での水素溶解試験の結果から、水素ガス用途の材料として適していると考えられる。しかしながら、今後要求が予想される更に厳しい条件下(例えば86MPa超の高圧下)では、耐水素性(樹脂層中への高圧水素ガスの溶解、拡散による破壊を抑制する特性であり、耐ブリスタ性を含む特性である。以下同じ。)や水素ガスバリア性が十分に満足できるものではなかった。
さらに、EVOHは、エチレン含有率が低下するにつれて、融点が上昇する傾向にあり、樹脂の熱分解温度と融点との差が小さくなる傾向がある。そのため、EVOHを単軸押出機で成型する場合、層流混合となるので、樹脂温分布が大きく、極端なときは、80℃程度の差が生じることがある。その結果、分解温度以上の樹脂温域が生じることによりゲルやフィッシュアイ等が発生する可能性が高くなり、成形加工性が悪化するという問題もあった。
そこで、本発明は、耐水性を備え、超高圧下であっても耐水素性や水素ガスバリア性をも備え、超高圧下で水素ガスを供給するホース又は高圧水素ガスの貯蔵容器を提供することを目的とし、またかかる高圧ガス用ホース又は貯蔵容器の構成材料に適したEVOHを提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、エチレン含有量が特定少量であり、かつ側鎖に一級水酸基を有する構造単位を特定量有する新規なエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物を用いた場合、エチレン含有量が特定少量であることによって、分子運動性の高い成分が少なくなり、耐水性に優れるとともに、超高圧下であっても耐水素性や水素ガスバリア性が良好となることを見いだした。また、側鎖に一級水酸基を有する構造単位を特定量有することによって、非晶部の分子運動性を低下させることで水素ガス透過性を抑制し、かつ結晶サイズを小さくし、融点が低下することで、成形加工性が優れた樹脂が得られることをも見いだした。さらに、このエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物又はその組成物からなる層を高圧ガス用ホース又は貯蔵容器が有する層の少なくとも1層として用いることによって、耐水性を備え、超高圧下あっても耐水素性や水素ガスバリア性をも備えた高圧ガス用ホース又は貯蔵容器が得られることをも見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、エチレン構造単位が10モル%以上20モル%未満であり、かつ側鎖に一級水酸基を有する構造単位(A)を含み、該構造単位(A)の含有量が0.5モル%〜15モル%であり、該構造単位(A)が下記一般式(1)の構造単位であるエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物である。
Figure 0006468775
〔式中、R 〜R 3 はそれぞれ独立して水素原子又は有機基を表し、Xは単結合又は結合鎖を示し、R 4 は水素原子又は有機基を示し、R 5 およびR は水素原子を示す〕
また、本発明は、本発明のエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物又はその組成物からなる層を少なくとも1層有する高圧ガス用ホース又は貯蔵容器である。
本発明の高圧ガス用ホース又は貯蔵容器は、耐水性を備え、超高圧下であっても耐水素性や水素ガスバリア性に優れた効果を発揮することかできる。また、本発明のエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物は、本発明の高圧ガス用ホース又は貯蔵容器を良好な成形加工性にて成形加工できるという効果を発揮することができる。
図1は実施例で使用した水素透過度測定装置の構成を説明するための模式図である。 図2は実施例で使用した試験片の構成を示す図である。 図3は実施例での高圧水素曝露試験に用いた装置の構成を示す模式図である。
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、本発明はこれらの内容に特定されるものではない。
まず、本発明のエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物について説明する。
<エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物>
本発明のエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(EVOH)は、エチレン由来の構造単位及び側鎖に一級水酸基を有する構造単位(A)を含むものである。
EVOHは、エチレン由来の構造単位を有するので、融点と分解温度の差が大きく、溶融成形が可能であり、耐水性が付与される。
EVOHにおけるエチレン構造単位の含有量は、通常10モル%以上20モル%未満であり、好ましくは12モル%〜19.9モル%、特に好ましくは15モル%〜19.9モル%、更に好ましくは16モル%〜19モル%である。エチレン構造単位の含有量が少なすぎると耐水性が低下する傾向があり、エチレン構造単位の含有量が多すぎると、超高圧下での耐水素性や水素ガスバリア性が低下する傾向がある。
側鎖に一級水酸基を有する構造単位(A)としては、下記のとおり、側鎖に一級水酸基を有するモノマー由来の構造単位が挙げられる。
例えば、アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、6−ヘプテン−1−オール等のモノヒドロキシアルキル基含有モノマー;2−メチレン−1,3−プロパンジオール、2−メチレン−1,3−プロパンジオール、2−メチレン−1,3−プロパンジオール等の2置換ジオールモノマー;3,4−ジオール−1−ブテン、4,5−ジオール−1−ペンテン、4,5−ジオール−3−メチル−1−ペンテン、4,5−ジオール−3−メチル−1−ペンテン、5,6−ジオール−1−ヘキセン等の1,2−ジオール基含有モノマー;グリセリンモノアリルエーテルやヒドロキシメチルビニリデンジアセテートが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を含んでいてもよい。
これらモノマーのうち側鎖1,2−ジオール構造が得られる1,2−ジオール基含有モノマーが特に好ましい。
上記構造単位を導入する得るためには、上記モノマーの水酸基をエステル化等の常法により保護した状態で共重合を行うことが好ましい。この場合、モノマーとしては、例えば2−メチレン−1,3−プロパンジオールジアセテート、2−メチレン−1,3−プロパンジオールジプロピオネート、2−メチレン−1,3−プロパンジオールジブチレート等の2置換ジオールモノマーのエステル化物;4,5−ジアシロキシ−1−ペンテン、5,6−ジアシロキシ−1−ヘキセン等の1,2−ジオール含有モノマーのアシル化物;ビニルエチレンカーボネート等のビニルカーボネートモノマー、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン等が挙げられる。
EVOHにおける該構造単位(A)の含有量は、通常、0.5モル%〜15モル%であり、好ましくは0.5モル%〜12モル%、特に好ましくは1モル%〜8モル%、更に好ましくは2モル%〜4モル%である。該構造単位(A)の含有量が少なすぎると、融点降下の効果が表れにくく、溶融成形性が損なわれる傾向があり、該構造単位(A)の含有量が多すぎると、樹脂の結晶性が低下しすぎるためか、耐水性が低下する傾向がある。
該構造単位(A)の含有量を調整するに際しては、構造単位(A)の導入量が異なる少なくとも2種のEVOHをブレンドして調整することも可能である。その際のEVOHのエチレン含有量の差は2モル%未満であることが好ましく、また、そのうちの少なくとも1種が構造単位(A)を有していなくても構わない。
従来、EVOHは、エチレン含有量が減少するに従って融点が上昇するため、樹脂の熱分解温度と融点との差が小さくなる傾向があり、成形加工性が悪化するという問題がある。「POLYVINYL ALCOHOL-DEVELOPMENTS」C.A.FINCH著の第205頁のFigure8.4によると、エチレン含有量が20モル%未満の場合、融点が200℃以上になることが図示され、その領域では樹脂の熱分解温度との差が小さいことがわかる。本発明では、EVOHに該構造単位(A)を含有させることで、樹脂の結晶サイズが小さくなり、融点が低下し、樹脂の熱分解温度との差が大きくなる傾向があり、成形加工性が向上する。
側鎖に一級水酸基を有する構造単位(A)としては、下記一般式(1)の構造単位、すなわち側鎖に1,2−グリコール結合を有する構造単位が用いられる
Figure 0006468775
〔式中、R〜R3はそれぞれ独立して水素原子又は有機基を表し、Xは単結合又は結合鎖を示し、 4 は水素原子又は有機基を示し、R 5 およびR は水素原子を示す〕
〜Rは、すべて水素原子であることが望ましいが、樹脂特性を大幅に損なわない程度の量であれば有機基であってもよい。該有機基としては特に限定しないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。R〜Rとしては、好ましくは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、特に好ましくは水素原子である。R〜Rとしては、好ましくは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、特に好ましくは水素原子である。
上記一般式(1)中、Xは単結合又は結合鎖であり、結晶性の向上や非晶部におけるフリーボリューム(自由体積空孔サイズ)低減による点から単結合であることが好ましい。上記結合鎖としては、特に限定しないが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素(これらの炭化水素は、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていてもよい)の他、−O−、−(CHO)m−、−(OCH)m−、−(CHO)nCH−等のエーテル結合部位を含む構造単位;−CO−、−COCO−、−CO(CH)mCO−、−CO(C)CO−等のカルボニル基を含む構造単位;−S−、−CS−、−SO−、−SO−等の硫黄原子を含む構造単位;−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−等の窒素原子を含む構造単位;−HPO−等のリン原子を含む構造などのヘテロ原子を含む構造単位;−Si(OR)−、−OSi(OR)−、−OSi(OR)O−等の珪素原子を含む構造単位;−Ti(OR)−、−OTi(OR)−、−OTi(OR)O−等のチタン原子を含む構造単位;−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−等のアルミニウム原子等の金属原子を含む構造単位などが挙げられる。これらの構造単位中、Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基であることが好ましい。またmは自然数であり、通常1〜30、好ましくは1〜15、特に好ましくは1〜10である。これらのうち、製造時あるいは使用時の安定性の点から、炭素数1〜10の炭化水素鎖が好ましく、さらには炭素数1〜6の炭化水素鎖、特に炭素数1の炭化水素鎖が好ましい。
上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位における特に好ましい構造単位は、R〜R及びR〜Rがすべて水素原子であり、Xが単結合である、下記構造式(1a)で示される構造単位である。
Figure 0006468775
このような側鎖1,2−ジオール含有PVA系樹脂は、例えば、(i)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(2)で示される化合物との共重合体をケン化する方法、(ii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(3)で示されるビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、(iii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(4)で示される2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソランとの共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法などにより、製造することができる。
Figure 0006468775
Figure 0006468775
Figure 0006468775
上記一般式(2)(3)(4)中、R〜Rは、いずれも一般式(1)の場合と同様であり、すべて水素原子であることが望ましいが、樹脂特性を大幅に損なわない程度の量であれば有機基であってもよい。R及びRは、それぞれ独立して水素またはR−CO−(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基)である。R10及びR11は、それぞれ独立して水素原子又は有機基であり、有機基は式(1)の場合と同様である。
(i)、(ii)、及び(iii)の方法については、例えば、特開2006−95825号公報に説明されている方法を採用できる。
なかでも、共重合反応性及び工業的な取扱いにおいて優れるという点で、(i)の方法が好ましく、特にR〜Rが水素、Xが単結合、R、RがR−CO−であり、Rがアルキル基である3,4−ジアシロキシ−1−ブテンが好ましく、その中でも特にRがメチル基である3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが好ましく用いられる。
(i)の方法について、さらに具体的に説明する。
上記一般式(1)中の結合鎖(X)が単結合である場合、即ち側鎖に1,2−グリコール結合を有する構造単位がEVOHの主鎖に直接結合した構造単位を例とすると、例えば、3,4−ジオール−1−ブテン、ビニルエステル系モノマー及びエチレンを共重合して得られた共重合体をケン化する方法、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、ビニルエステル系モノマー及びエチレンを共重合して得られた共重合体をケン化する方法、3−アシロキシ−4−オール−1−ブテン、ビニルエステル系モノマー及びエチレンを共重合して得られた共重合体をケン化する方法、4−アシロキシ−3−オール−1−ブテン、ビニルエステル系モノマー及びエチレンを共重合して得られた共重合体をケン化する方法、3,4−ジアシロキシ−2−メチル−1−ブテン、ビニルエステル系モノマー及びエチレンを共重合して得られた共重合体をケン化する方法が挙げられる。
また、上記一般式(1)中の結合鎖(X)としてアルキレン基を有するときの構造単位を例とすると、例えば、4,5−ジオール−1−ペンテンや4,5−ジアシロキシ−1−ペンテン、4,5−ジオール−3−メチル−1−ペンテン、4,5−ジオール−3−メチル−1−ペンテン、5,6−ジオール−1−ヘキセン、5,6−ジアシロキシ−1−ヘキセン等とビニルエステル系モノマー及びエチレンを共重合して得られた共重合体をケン化する方法が挙げられる。
これらのなかでも特に、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、ビニルエステル系モノマー及びエチレンを共重合して得られた共重合体をケン化する方法が共重合反応性に優れる点で好ましく、更には3,4−ジアシロキシ−1−ブテンとして、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを用いることが好ましい。
重合に際しては、これらのモノマーの混合物を用いてもよい。また、少量の不純物として3,4−ジアセトキシ−1−ブタンや1,4−ジアセトキシ−1−ブテン、1,4−ジアセトキシ−1−ブタン等を含んでいても良い。
かかる共重合方法について以下に説明するが、これに限定されるものではない。
なお、かかる3,4−ジオール−1−ブテンは下記式(5)で示されるものであり、3,4−ジアシロキシ−1−ブテンは下記一般式(6)で示されるものであり、3−アシロキシ−4−オール−1−ブテンは下記一般式(7)で示されるものであり、4−アシロキシ−3−オール−1−ブテンは下記一般式(8)で示されるものである。
Figure 0006468775
Figure 0006468775
(式中、Rはアルキル基であり、好ましくはメチル基である。)
Figure 0006468775
(式中、Rはアルキル基であり、好ましくはメチル基である。)
Figure 0006468775
(式中、Rはアルキル基であり、好ましくはメチル基である。)
なお、上記の式(5)及び一般式(6)で示される化合物は1,4―ブタンジオール製造工程中の副生成物として得られる3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを精製して利用することができる。
ビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル、トリフロロ酢酸ビニル等が挙げられる。これらの中でも、経済的な観点から、酢酸ビニルが好ましく用いられる。
3,4−ジアシロキシ−1−ブテン等と、ビニルエステル系モノマー及びエチレン単量体を共重合するに際しては、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、またはエマルジョン重合等の公知の方法を採用することができる。通常は、溶液重合が行われる。
共重合時のモノマー成分の仕込み方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、モノマーの反応性比を考慮したHanna法等の連続仕込みなどの任意の方法が採用される。
なお、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン等の共重合割合は、例えば、前述の構造単位(A)の導入量に合わせて共重合割合を決定することができる。
かかる共重合で用いられる溶媒としては、通常、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等の低級アルコールやアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられる。工業的には、メタノールが好適に使用され、また、低重合度の共重合体を合成する場合などにはイソプロピルアルコールが好適に使用される。
溶媒の使用量は、目的とする共重合体の重合度に合わせて、溶媒の連鎖移動定数を考慮して適宜選択することができ、例えば、溶媒がメタノールのときは、S(溶媒)/M(モノマー)=0.01〜10(重量比)、好ましくは0.05〜7(重量比)程度の範囲から選択される。
共重合に際しては重合触媒が用いられ、かかる重合触媒としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル等の公知のラジカル重合触媒;t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、α,α’ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート等のパーオキシエステル類;ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−iso−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、ジイソブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類などの低温活性ラジカル重合触媒等が挙げられる。
重合触媒の使用量は、触媒の種類により異なり一概には決められないが、重合速度に応じて任意に選択される。例えば、アゾビスイソブチロニトリルや過酸化アセチルを用いる場合、ビニルエステル系モノマーに対して通常、10ppm〜2000ppmであり、好ましくは50ppm〜1000ppmである。
また、共重合反応の反応温度は、使用する溶媒やエチレン圧力等に応じて、40℃〜沸点程度の範囲から選択することが好ましい。
本発明では、上記触媒とともにヒドロキシラクトン系化合物又はヒドロキシカルボン酸を共存させることが、得られるEVOHの色調を良好(無色に近づける)にする点で好ましい。該ヒドロキシラクトン系化合物としては、分子内にラクトン環と水酸基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、グルコノデルタラクトン等を挙げることができる。好適にはL−アスコルビン酸、エリソルビン酸が用いられる。また、ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸等を挙げることができ、好適にはクエン酸が用いられる。
かかるヒドロキシラクトン系化合物又はヒドロキシカルボン酸の使用量は、回分式及び連続式いずれの場合でも、酢酸ビニル100重量部に対して、通常、0.0001重量部〜0.1重量部、好ましくは0.0005重量部〜0.05重量部、特に好ましくは0.001重量部〜0.03重量部である。かかる使用量が少なすぎると、これらの添加効果が得られない傾向がある。逆に使用量が多すぎると酢酸ビニルの重合を阻害する傾向がある。かかる化合物を重合反応系に仕込むに際しては、通常は低級脂肪族アルコールや酢酸ビニルを含む脂肪族エステルや水等の溶媒又はこれらの混合溶媒で希釈され、重合反応系に仕込まれる。
また、本発明では、上記の共重合時に、本発明の効果を阻害しない範囲で、共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合していてもよい。
かかる単量体としては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類;アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類;メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類;アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類;炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類;ビニルシラン類;酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
また、その他のエチレン性不飽和単量体として、例えば、ヒドロキシメチルビニリデンジアセテートが挙げられ、具体的には、1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジプロピオニルオキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジブチロニルオキシ−2−メチレンプロパンなどが挙げられる。中でも、1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパンが製造容易性の点で好ましく用いられる。
さらに、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−アクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、3−ブテントリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ジエチルジアリルアンモニウムクロライド等のカチオン基含有単量体、アセトアセチル基含有単量体等も挙げられる。
さらにビニルシラン類としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルイソブチルジメトキシシラン、ビニルエチルジメトキシシラン、ビニルメトキシジブトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメトキシジヘキシロキシシラン、ビニルジメトキシヘキシロキシシラン、ビニルトリヘキシロキシシラン、ビニルメトキシジオクチロキシシラン、ビニルジメトキシオクチロキシシラン、ビニルトリオクチロキシシラン、ビニルメトキシジラウリロキシシラン、ビニルジメトキシラウリロキシシラン、ビニルメトキシジオレイロキシシラン、ビニルジメトキシオレイロキシシラン等を挙げることができる。
得られた共重合体は、次いでケン化される。かかるケン化に際しては、上記で得られた共重合体をアルコール又は含水アルコールに溶解した状態で、ケン化触媒としてアルカリ触媒又は酸触媒を用いて行われる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブタノール等が挙げられるが、メタノールが特に好ましく用いられる。
アルコール中の共重合体の濃度は、系の粘度により適宜選択され、通常は10重量%〜60重量%の範囲から選ばれる。ケン化に使用される触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒;硫酸、塩酸、硝酸、メタスルフォン酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等の酸触媒が挙げられる。
かかるケン化触媒の使用量については、ケン化方法、目標とするケン化度等により適宜選択される。アルカリ触媒を使用する場合は、ビニルエステル系モノマー及び3,4−ジアシロキシ−1−ブテン等のモノマーの合計量に対して、通常、0.001モル当量〜5モル当量、好ましくは0.005モル当量〜4.5モル当量である。かかるケン化方法としては、目標とするケン化度等に応じて、バッチケン化、ベルト上の連続ケン化、塔式の連続ケン化の何れも可能であり、ケン化時のアルカリ触媒量を低減できることやケン化反応が高効率で進み易い等の理由より、好ましくは、一定加圧下での塔式ケン化が用いられる。また、ケン化時の圧力は、目的とするエチレン含有量により異なるが、通常、2kg/cm〜7kg/cmの範囲から選択され、このときの温度は通常、80℃〜150℃、好ましくは100℃〜130℃範囲から選択される。
かくして、本発明のEVOHが得られるのである。本発明においては、得られたEVOHのケン化度は、通常、90モル%以上であり、好ましくは95モル%以上、特に好ましくは99モル%以上である。ケン化度が低すぎると、ガスバリア性等が低下する傾向にある。
また、該EVOHのメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)は、通常、0.1g/10分〜100g/10分であり、好ましくは0.5g/10分〜50g/10分、特に好ましくは1g/10分〜30g/10分である。該メルトフローレートが小さすぎると、成形時に押出機内が高トルク状態となって押出加工が困難となる傾向にあり、大きすぎると、ガスバリア性等が低下する傾向にある。
<エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物の組成物>
本発明の高圧ガス用ホース又は貯蔵容器においては、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物のみならず、これを含有する組成物をも用いることができる。
エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物組成物(以下「EVOH組成物」と称することがある。)は、EVOHの他、必要に応じて、本発明の効果を損なわない限り、他の樹脂を含有していてもよい。例えば、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6・66等のポリアミド樹脂;上記一般式(1)の構造単位を有しない未変性ビニルアルコール系樹脂;他の熱可塑性樹脂などを含有していてもよい。
EVOHの他に配合可能な樹脂の含有量は、EVOHに対して、通常、50重量%以下、好ましくは40重量%以下であり、特には他の樹脂を含有しないことが好ましい。
また、EVOH組成物は、公知の添加剤を含有していてもよい。例えば、酢酸、リン酸、ホウ酸等の酸類やそのアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等の金属塩;飽和脂肪族アミド(例えばステアリン酸アミド等)、不飽和脂肪酸アミド(例えばオレイン酸アミド等)、ビス脂肪酸アミド(例えばエチレンビスステアリン酸アミド等)、低分子量ポリオレフィン(例えば分子量500〜10, 000程度の低分子量ポリエチレン、又は低分子量ポリプロピレン等)などの滑剤;エチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコールなどの可塑剤;光安定剤;酸化防止剤;乾燥剤;紫外線吸収剤;着色剤;帯電防止剤;界面活性剤;抗菌剤;アンチブロッキング剤;不溶性無機塩(例えばハイドロタルサイト等);充填材(例えば無機フィラー等);酸素吸収剤(例えば、ポリオクテニレン等のシクロアルケン類の開環重合体や、ブタジエン等の共役ジエン重合体の環化物等);ワックス;分散剤(ステアリン酸モノグリセリド等);熱安定剤;難燃剤;架橋剤;硬化剤;発泡剤;結晶核剤;防曇剤;生分解用添加剤;シランカップリング剤;共役ポリエン化合物などの公知の添加剤を適宜配合することができる。
これら添加剤の含有量は、EVOH組成物全体に対して通常、5重量%未満、好ましくは3重量%未満である。
また、EVOH組成物には、EVOHの調製に際して不可避的に含有されるモノマー残渣やモノマーのケン化物などが含まれていてもよい。
かかる不可避的不純物としては、例えば、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、3,4−ジオール−1−ブテン、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、3−アセトキシ−4−オール−1−ブテン、4−アセトキシ−3−オール−1−ブテン等が挙げられる。
EVOH組成物は、EVOHと、さらに必要に応じて添加される他の樹脂や添加物とを配合し、溶融混練することにより調製できる。
溶融混練には、押出機、バンパリーミキサー、ニーダールーダー、ミキシングロール、ブラストミル等の公知の混練機を用いることができる。例えば、押出機の場合、単軸又は二軸の押出機等が挙げられる。溶融混練後、EVOH組成物をストランド状に押出し、カットしてペレット化する方法が採用され得る。
かかる溶融混練は、EVOHと他の樹脂等とを一括投入して行ってもよいし、EVOHを二軸押出機で溶融混練しながら、他の樹脂等を溶融状態、あるいは固体状態でサイドフィードして行ってもよい。
上記の溶融混練温度は、通常100℃〜300℃の範囲から選ぶことができる。溶融混練温度は、通常190℃〜250℃であり、好ましくは190℃〜235℃、特に好ましくは200℃〜230℃、更に好ましくは200℃〜225℃℃である。
本発明のEVOHおよびEVOH組成物は、任意の成形物に成形することが可能である。例えば単層のフィルム、シート、成形物とすることも可能であるし、他の樹脂層および任意の基材と積層した多層構造体とすることも可能である。
本発明のEVOHおよびEVOH組成物は、公知一般のEVOHおよびEVOH組成物に適用される成形方法が適用可能である。例えば、溶液流延法、溶液コート法等の溶液成形法や、押出成形法、共押出成形法、射出成形法、ブロー成形法、回転成形法等の溶融成形法が挙げられる。
本発明のEVOHおよびEVOH組成物からなるフィルムや多層構造体等は、さらに公知の手法にて加工することも可能である、例えば、ドライラミネート法や、一軸延伸法、二軸延伸法、真空成型法、圧空成形法等の延伸法が採用可能である。
<高圧ガス用ホース又は貯蔵容器>
本発明の高圧ガス用ホース又は貯蔵容器(以下単に「ホース又は貯蔵容器」と称することがある。)は、上記EVOH又はその組成物からなる層(以下「ガスバリア層」と称することがある。)を少なくとも1層含むものである。
好ましくは多層構造からなるホース又は貯蔵容器のうち、内側層(すなわち高圧ガスと接する層)又は中間層、より好ましくは中間層として、ガスバリア層を含むものである。さらに、内側層及び/又は外側層(すなわち外気と接する層)に、耐水性、水分不透過性の熱可塑樹脂層を含むことが好ましい。なお、中間層とは、外側層と内側層の間にある層をいう。
また、外側層に、さらに補強層を設けることが好ましい。補強層が設けられている場合、補強層が外気と接する層(最外層)となる。さらにまた、これらの層間に、接着性樹脂からなる接着層が設けられていてもよい。
従って、高圧ガス用ホース又は貯蔵容器を構成する積層構造としては、内側から順に、ガスバリア層/水分不透過性熱可塑性樹脂層/補強層、水分不透過性熱可塑性樹脂層/ガスバリア層/補強層、水分不透過性熱可塑性樹脂層/ガスバリア層/水分不透過性熱可塑性樹脂層/補強層などが挙げられる。好ましくは水分不透過性熱可塑性樹脂層/ガスバリア層/水分不透過性熱可塑性樹脂層/補強層である。これらのホース又は貯蔵容器を構成する多層構造の層間には、接着層を設けてもよい。尚、多層構造体の層数は、補強層を含むのべ数にて通常3層〜15層、好ましくは4層〜10層である。
ガスバリア層と水分不透過性熱可塑性樹脂層の厚み比は、積層体中の同種の層厚みを全て足し合わせた状態で、通常、水分不透過性熱可塑性樹脂層の方が厚く、ガスバリア層に対する水分不透過性熱可塑性樹脂層の厚み比(水分不透過性熱可塑性樹脂層/ガスバリア層)は、通常1〜100、好ましくは3〜20、特に好ましくは6〜15である。水分不透過性熱可塑性樹脂層の厚みは通常50μm〜5000μmである。
ガスバリア層が薄すぎる場合、得られるホース又は貯蔵容器の高度なガスバリア性が得られにくい傾向がある。厚すぎる場合、柔軟性や経済性が低下する傾向がある。
また水分不透過性熱可塑性樹脂層が薄すぎる場合、得られるホース又は貯蔵容器の強度が低下する傾向があり、厚すぎる場合は耐屈曲性や柔軟性が低下したり、内容積が減少する傾向がある。
また、接着層を用いる場合、通常、ガスバリア層を厚くすることが好ましい。接着層に対するガスバリア層の厚み比(ガスバリア層/接着層)は通常1〜100、好ましくは1〜50、特に好ましくは1〜10である。接着層の厚みは通常10μm〜2000μmであることが好ましい。接着層が薄すぎる場合、層間接着性が不足する傾向があり、厚すぎる場合は経済性が低下する傾向がある。
水分不透過性熱可塑性樹脂層に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、疎水性熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。具体的には、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体などのポリプロピレン系樹脂;ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、環状ポリオレフィン、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和力ルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したもの(カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂、エステル変性ポリオレフィン系樹脂)等の広義のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミドやナイロン6・12、ナイロン6・66等の共重合ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル等のビニルエステル系樹脂;ポリウレタン系樹脂;テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素系重合体;塩素化ポリエチレン;塩素化ポリプロピレン;極性基を有するフッ素系樹脂、熱可塑性ポリウレタン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
なかでも、耐水性、強度、靱性や低温での耐久性の点で、ポリオレフィン系樹脂、特に極性基を有するポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、極性基を有するフッ素系樹脂から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に好ましくはカルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、極性基を有するフッ素系樹脂から選ばれる少なくとも1種である。尚、水分不透過性熱可塑性樹脂層の外側にエポキシ樹脂を塗工してもよい。
接着層としては、公知の接着性樹脂を用いることが可能であり、通常、ポリオレフィン系樹脂をマレイン酸等の不飽和力ルボン酸(または不飽和力ルボン酸無水物)で変性したカルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂や、極性基を有するフッ素樹脂が好ましく用いられる。前記ポリオレフィン系樹脂としては、上述の水分不透過性の熱可塑性樹脂層に用いられる熱可塑性樹脂として列挙したポリオレフィン系樹脂を用いることができる。
経済性と性能のバランスの点から、カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましく、特に好ましくはカルボン酸変性ポリプロピレン系樹脂若しくはカルボン酸変性ポリエチレン系樹脂又はこれらの混合物である。
なお、上記水分不透過性熱可塑性樹脂層、接着層には、成形加工性や諸物性の向上のために、公知一般の各種添加剤や改質剤、充填材、他の樹脂等を本発明の効果を阻害しない範囲で配合してもよい。
本発明で用いるEVOH組成物は、PVA樹脂、他のEVOH樹脂に対して接着性を有するので、特殊な態様として、PVA樹脂や他のEVOH樹脂を上記水分不透過性熱可塑性樹脂層に用いることも可能である。例えば、ポリアミド樹脂層/他のEVOH樹脂層/ガスバリア層、ポリアミド樹脂層/他のEVOH樹脂層/ガスバリア層/他のEVOH樹脂層等の層構成が挙げられる。上記ポリアミド樹脂は、好ましくはナイロン6やナイロン6系の共重合ポリアミドであり、特に好ましくはナイロン6・66である。
補強層としては、繊維を用いた補強繊維層や、ゴムを用いた補強ゴム層等が挙げられる。補強繊維層としては、例えば、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール(PBO)繊維、アラミド繊維、炭素繊維等の高強度繊維、不織布、布などを用いることができる。好ましくは、補強繊維層であり、特に好ましくは高強度樹維を用いた補強繊維層であり、更に好ましくは高強度繊維を編み組したシート層又は当該シートをスパイラルに巻き付けてなる補強繊維層である。
尚、ホースの補強層の構造は、例えば、特開2010−31993号公報に記載の構造に準じて構成してもよい。ホースの補強層としては、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール(PBO)繊維を用いることが好ましい。貯蔵容器の補強層としては、炭素繊維が好適に使用される。炭素繊維は、強度面からはPAN系が好ましく、熱伝導度の制御の面からは、熱伝導度が高いピッチ系が好ましい。
本発明のホースまたは貯蔵容器が、ガスバリア層を少なくとも1層含む多層構造からなるホース又は貯蔵容器である場合、多層構造を構成する樹脂層の各層を構成する材料の平均線膨張係数が互いに近いことが好ましい。また、ガスバリア層に対する多層構造を構成する層の平均線膨張係数の比(多層構造を構成する材料/EVOH組成物)は、通常2以下、好ましくは0.8〜1.8、特に好ましくは1〜1.8である。好ましくはガスバリア層に対する該ガスバリア層の隣接層の比(隣接層を構成する材料/EVOH組成物)が上記範囲内であり、特に好ましくはガスバリア層に対する最外層の比(最外層を構成する材料/EVOH組成物)が上記範囲内である。
平均線膨張係数の比を1に近づけることにより、水素暴露の高圧時と脱圧時の環境変化に対して各層が類似挙動を示し、ガスバリア層が他の層の挙動に追随できるので、ガスバリア層の受ける屈曲等の負荷を軽減することができる。
かかる平均線膨張係数の比は、同一条件で測定した平均線膨張係数を適用することが可能である。さらには、高圧ガス設備における実用的な温度範囲である、−60℃〜40℃における平均線膨張係数を用いることが好ましい。
特に、補強層として、上記高強度繊維を編み組したシート層又は当該シートをスパイラルに巻き付けてなる層(補強繊維層)を有する場合、補強繊維層の線膨張係数を考慮して、多層構造の層材料の組み合わせを選定することが好ましい。なお、平均線膨張係数は、熱機械分析装置(TMA)によって測定することができる。
ホースの内径、外径、厚み、長さは、用途により選定すればよく、例えばその内径は通常1mm〜180mm、好ましくは3mm〜100mm、特に好ましくは4.5mm〜50mm、殊に好ましくは5mm〜12mmである。外径は、通常5mm〜200mm、好ましくは7mm〜100mm、特に好ましくは9mm〜50mm、殊に好ましくは10mm〜15mmである。その厚さは、通常1mm〜50mm、好ましくは1mm〜20mm、特に好ましくは1mm〜10mmである。長さは、通常0.5mm〜300m、好ましくは1mm〜200m、特に好ましくは3mm〜100mである。
貯蔵容器の厚み、サイズは、用途により選定すればよく、例えばその厚みは通常1mm〜100mm、好ましくは3mm〜80mm、特に好ましくは3mm〜50mmである。貯蔵容器の容量サイズとしては、用途により選定すればよく、特に限定しないが、容量が通常5L〜500Lであり、好ましくは10L〜450Lであり、特に好ましくは50L〜400Lである。形状は円柱状、角柱状、樽状など適宜選択できる。
ガスバリア層の厚みは、ホース又は貯蔵容器の厚みの通常5〜60%、特に好ましくは8〜45%の範囲で選択することができる。
本発明の高圧ガス用ホース又は貯蔵容器におけるガスバリア層は、水素、ヘリウム、酸素、窒素、空気等のガスに対して、好ましくは分子量が10未満であるガス成分に対して優れたガスバリア性を有する。分子量が10未満であるガス成分としては水素やヘリウム等が挙げられ、水素が好ましい。また、ガスバリア層は、水素バリア性が高いので、層構成にもよるが、ガスバリア層を積層することで、積層体が水素脆化しにくく、初期の機械的強度を長期間にわたって保持することができる。
また、ガスバリア層は、高圧の水素の曝露、脱圧が繰り返されてもブリスタの発生を抑制できるので、多層構造を有するホース又は貯蔵容器において、ガスバリア層と隣接する層(例えば、補強層、水分不透過性熱可塑性樹脂層)との界面での接着強度の低下やコラプスの生成も防止できる。
よって、本発明の高圧ガス用ホース又は貯蔵容器は、高圧の水素の曝露、脱圧が繰り返され、水素脆化に対する優れた耐久性が要求される、水素ステーションでの高圧水素供給用ホースあるいはTypeIV貯蔵容器等の貯蔵容器、燃料電池の水素ガス燃料貯蔵容器やホースとして、好適に用いることができる。
高圧ガス用ホースの常用圧力は、通常35MPa〜90MPa、好ましくは50MPa〜90MPa、特に好ましくは80〜90MPa、更に好ましくは82MPa〜87.5MPaである。
また、高圧ガス用貯蔵容器の常用圧力は、通常35〜70MPaである。
また、高圧ガス用ホースの設計圧力の例としては、圧力の低いものから例示すると、86MPa超、95MPa超、97MPa超、98.4MPa超などがある。
なお、以上の説明は、水素ガスを中心に説明したが、本発明にかかるガスバリア層が優れたガスバリア性を発揮できる対象のガスは、高圧水素ガスに限定されない。水素ガスのほか、ヘリウム、窒素、酸素、空気などの高圧ガス供給用ホース又は貯蔵容器としても好ましく用いることができる。とりわけ、水素、ヘリウムといった分子量10未満のガスに対しては、ガスバリア性と耐水素性の双方を満足させることは、従来公知の材料では困難であったが、本発明にかかるガスバリア層は双方の要求を満足することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中「%」および「部」とあるのは重量基準を意味する。
〔測定評価方法〕
はじめに、以下の実施例及び比較例で採用した測定評価方法について説明する。
(1)下記式(1a)で示される側鎖1,2−ジオール構造単位の含有量
H−NMR(400MHzプロトンNMR、d6−DMSO溶液)にて測定した積分値より算出した。
Figure 0006468775
(2)ケン化度
残存酢酸ビニル及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの加水分解に要するアルカリ消費量より算出した。
(3)溶融粘度
220℃、せん断速度122sec−1での溶融粘度を、東洋精機社製の「キャピログラフ1B」を用いて測定した。
(4)融点
昇温および降温速度10℃/minにて、パーキンエルマー社製の「Diamond
DSC」を用いて測定した。
(5)耐水素性
高圧水素ガス曝露−脱圧サイクル試験後のブリスタ発生の有無
図3に示すように構成された水素高圧ガス設備を用いて、「試験体」と記載された部分に、図2に示すダンベル状試験片(ISO 527−3に準拠し、b1=6、b2=25、L=25、l=33、L=80、l=115、h=1、単位はいずれもmm)をセットして、0.5時間で水素ガスを82MPa又は98.4MPaまで昇圧し、かかる高圧水素環境下に20時間曝露し、30秒間で脱圧後0.5時間静置するという圧力パターンを1サイクルとして、20サイクル(82MPa下)、又は5サイクル(98.4MPa下)繰り返した。
高圧水素ガス曝露−脱圧サイクル試験後、試験片を取り出し、試験片におけるブリスタの発生の有無をX線CT及び目視で観察した。なお、通常、ブリスタはダンベル部分に発生する。
ダンベル部分にブリスタが発生しなかった場合(ブリスタ発生個数:0個)に「○」、ブリスタ発生個数が50個以上300個未満の場合に「△」、ブリスタ発生個数が300個以上の場合に「×」で表中に表記した。
(6)水素透過係数
厚み300μmのフィルム試験片を、図1に示す水素透過度測定装置のサンプル部分にセットし、41℃雰囲気下で、水素圧0.3MPa、0.5MPaの加圧水素をフィルムサンプルに向けて送り、透過した水素を回収し、透過係数(cc・20μm/m・day・atm)を求めた。
図1中、TIは温度計(Temperature Indicator )、PIは圧力計(Pressure Indicator)、MFCは流量制御装置(Mass Flow Controller)を表す。
(7)溶解度試験(耐水性)
225ml容マヨネーズ瓶中で、厚さ100μmのサンプルフィルムをステンレス金網(材質SUS316、400メッシュ、線径0.03mm)で包み、水溶液に対してサンプルフィルムが1重量%となるように蒸留水を入れ調整した。その後、撹拌翼を取り付け、撹拌速度200rpm、3時間、25℃及び60℃にて撹拌を行った。その後、その溶液をアルミカップに量りとり、105℃、3時間、送風乾燥器中にて乾燥し、乾燥前後の重量変化から溶液中に含まれる樹脂分を計算し、以下の式よりサンプルフィルムの水への溶解度を算出した。
溶解度(重量%)={(溶液の重量(g)×溶液中の樹脂分(重量%)/100)/サンプルフィルムの重量(g)}×100
〔実施例1:使用した樹脂の種類及び調製〕
側鎖1,2−ジオール含有EVOH樹脂
反応容器に、酢酸ビニルを500部、メタノールを135部、t−ブチルペルオキシネオデカノエートを334ppm(対酢酸ビニル)、クエン酸を30ppm(対酢酸ビニル)、及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを45部仕込み、反応系を窒素ガスで一旦置換した。その後、エチレンで置換して、エチレン圧が2MPaとなるまで圧入して、攪拌しながら、67℃まで昇温して、重合率が61%になるまで7時間重合した。
その後、重合反応を停止してエチレン含有量16.7モル%、MFRが4.1(g/10min)のエチレン−酢酸ビニル−ジアセトキシブテン三元共重合体を得た。次いで、エバポレータを用い、水浴温度65℃、真空度−0.09MPa(700mmHg)にて脱モノマーを行った。重合ペーストに、メタノールを追加し、蒸留操作を行い、未反応酢酸ビニルを除去し、エチレン−酢酸ビニル−ジアセトキシブテン三元共重合のメタノール溶液を得た。
該エチレン−酢酸ビニル−ジアセトキシブテン三元共重合体のメタノール溶液に、メタノールを投入し、樹脂30%、メタノール70%に調整した。かかる溶液を下記の2段階ケン化に供した。
一次ケン化:該共重合体中の残存酢酸基に対して150mmol当量の水酸化ナトリウムを45℃にてニーダーを用いて混練した。2時間経過後、100%酢酸を投入し、中和を行った。その後、ヌッチェを用いて固液分離後、メタノール洗浄を行なった。かかる樹脂のケン化度は98.4モル%〜98.7モル%程度であった。
二次ケン化:反応容器に、一次ケン化後の樹脂ペースト(樹脂分約40%)に対して、樹脂分20%になるようメタノールを投入し、50℃で、残存酢酸基に対して4000mmol当量の水酸化ナトリウムを投入した。2時間経過後、100%酢酸を投入した。中和を確認後、ヌッチェを用いて固液分離後、得られた樹脂をメタノールにて洗浄した。
次に、容器を用い、得られた樹脂1部に対し、4部のメタノールを投入後、反応温度35℃で、残酢酸ナトリウムに対して2.3mol当量の酢酸を投入し、撹拌を行った。
次に、イナートオーブンを用い、N2雰囲気下で、40℃で1時間、40℃から120℃までの昇温を6時間、120℃で10時間、120℃から80℃までの冷却を1時間行ない、乾燥を行った。得られた側鎖1,2−ジオール含有EVOH樹脂のMFRは、4.1g/10分(210℃、荷重2160g)、溶融粘度は、1335(220℃、Pa・s)であり、DSC測定より算出した結晶化度は21.1%であった。
〔ペレット及びフィルムの作製〕
使用した樹脂は、二軸押出機(テクノベル社製)を用いて、下記条件でペレット化した。
スクリュー径:15mm
L/D=60mm
回転方向:同方向
スクリューパターン:3か所練り
スクリーンメッシュ:90/90メッシュ
スクリュー回転数 :200rpm
温度パターン:C1/C2/C3/C4/C5/C6/C7/C8/D=180/200/210/210/210/210/210/210/210℃
樹脂温度:210℃
吐出量:1.2kg/hr
〔比較例〕
比較例として、下記のPVOH、EVOH1、EVOH2、及び側鎖1,2−ジオール含有PVOHを用いた。
PVOH(日本合成化学工業(株)製PVOH 「NL−o5」エチレン含有量:0モル%、側鎖1,2−ジオール含有量:0モル%、4%水溶液粘度 5.5mPa・s)
EVOH1(エチレン含有量:25モル%、側鎖1,2−ジオール含有量:0モル%、MFR:4.0g/10分(210℃、荷重2160g))
EVOH2(エチレン含有量:44モル%、側鎖1,2−ジオール含有量:0モル%、MFR:3.5g/10分(210℃、荷重2160g))
側鎖1,2−ジオール含有PVOH(エチレン含有量:0モル%、側鎖1,2−ジオール含有量:6モル%、MFR:4.7g/10分(210℃、荷重2160g))
〔融点の比較〕
上記で調製した実施例1、側鎖1,2−ジオールを含有しない通常のPVOH、EVOH1及びEVOH2の融点を測定し、比較した。結果を表1に示す。
Figure 0006468775
表1の結果から、比較例ではエチレンの含有量が減少するに従って融点が上昇し、PVOHの融点に近づく傾向にあることがわかる。なお、側鎖1,2−ジオールを含有せず、エチレン含有量が16.7モル%のEVOHの場合、融点は210℃となる(POLYVINYL ALCOHOL-DEVELOPMENTS, Edited by C.A.FINCH,P205, Fig.8.4参照) 。
実施例1では、側鎖1,2−ジオールを含有することで、エチレン含有量が16.7モル%であるにもかかわらず、融点が173℃と低く、熱分解温度との差が大きいことで、成形加工性が向上していることが分かる。
〔耐水素性、水素透過度係数、耐水性の比較〕
実施例1、EVOH1、EVOH2、及び側鎖1,2−ジオール含有PVOHの各ペレットを用いて、二軸押出機(テクノベル社)にて下記条件で製膜し、厚さ30μmのフィルムを得た。
各フィルムについて、耐水素性、水素透過度係数、耐水性を測定し、比較した。結果を表2に示す。
直径(D):15mm
L/D=60
スクリュー:練り3か所
ベント:=C7オーブン
設定温度:C1/C2/C3/C4/C5/C6/C7/C8/D=180/200/210/210/215/215/220/220/220℃
スクリーンメッシュ:90/90メッシュ
スクリュー回転数:200rpm
樹脂温度:225℃
吐出量:1.5kg/hr
ダイ:幅300mm、コートハンガータイプ
引取速度:2.6m/min
ロール温度:50℃
エアーギャップ:1cm
Figure 0006468775
実施例1では、超高圧下の98.4MPaでの耐水素性が良好であり、水素透過度係数も比較例1〜3と比較して低く、水素に対するガスバリア性も良好であった。また、水への溶解度も側鎖1,2−ジオール含有PVOHと比べて低く、耐水性が向上していることが明らかである。
比較例1〜3では、超高圧下の98.4MPaでの耐水素性に問題があることがわかった。また、41℃における水素透過度係数(cc・20μm/m・day・atm)においても、実施例1と比較して高いことがわかる。
本発明の高圧ガス用ホース又は貯蔵容器は、例えば、水素ガスステーション等で自動車用の燃料電池等へ高圧水素ガスを供給や充填するためのホース又は高圧水素ガスの貯蔵容器として好適に利用することができる。
また、本発明のエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物は、例えば、本発明の高圧ガス用ホースが有する層の構成材料として、又は高圧ガス用貯蔵容器が有する層の構成材料として好適に利用することができる。

Claims (6)

  1. エチレン構造単位が10モル%以上20モル%未満であり、かつ側鎖に一級水酸基を有する構造単位(A)を含み、該構造単位(A)の含有量が0.5モル%〜15モル%であり、該構造単位(A)が下記一般式(1)の構造単位であるエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物。
    Figure 0006468775
    〔式中、R 〜R 3 はそれぞれ独立して水素原子又は有機基を表し、Xは単結合又は結合鎖を示し、R 4 は水素原子又は有機基を示し、R 5 およびR は水素原子を示す〕
  2. 請求項1に記載のエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物又はその組成物からなる層を少なくとも1層有する高圧ガス用ホース又は貯蔵容器。
  3. 請求項1に記載のエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物又はその組成物からなる層が、他の樹脂を含有しないことを特徴とする請求項に記載の高圧ガス用ホース又は貯蔵容器。
  4. 高圧ガスの常用圧力が35MPa〜90MPaであることを特徴とする請求項又はに記載の高圧ガス用ホース又は貯蔵容器。
  5. 高圧ガスの設計圧力が86MPa超であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の高圧ガス用ホース又は貯蔵容器。
  6. 高圧ガスのガス成分の分子量が10未満であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の高圧ガス用ホース又は貯蔵容器。
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