JP2014034647A - 変性エチレン−ビニルアルコール共重合体及び多層構造体 - Google Patents
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Abstract
Description
18≦a≦55 (1)
0.01≦c≦0.5 (2)
[100−(a+c)]×0.9≦b≦[100−(a+c)] (3)
DS=[(X、Y及びZのうち水素原子であるものの合計モル数)/(X、Y及びZの合計モル数)]×100 (4)
18≦a≦55 (1)
0.01≦c≦0.5 (2)
[100−(a+c)]×0.9≦b≦[100−(a+c)] (3)
[100−(a+c)]×0.9≦b≦[100−(a+c)] (3)
すなわち、本発明の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体においては、エチレン単位と式(I)中で右端に示された単量体単位以外の単量体単位のうちの90%以上がビニルアルコール単位又はビニルエステル単位であるということである。式(3)を満足しない場合、ガスバリア性が不十分となる。より好適には下記式(3’)を満足し、さらに好適には下記式(3”)を満足する。
[100−(a+c)]×0.95≦b≦[100−(a+c)] (3’)
[100−(a+c)]×0.98≦b≦[100−(a+c)] (3”)
DS=[(X、Y及びZのうち水素原子であるものの合計モル数)/(X、Y及びZの合計モル数)]×100 (4)
ここで、「X、Y及びZのうち水素原子であるものの合計モル数」は、水酸基のモル数を示し、「X、Y及びZの合計モル数」は、水酸基とエステル基の合計モル数を示す。ケン化度(DS)が低下すると、バリア性能が低下する傾向があるとともに、熱安定性も低下して高温成形時のロングラン成形性が低下する傾向がある。特に優れたバリア性及び熱安定性を有するためには、ケン化度(DS)は、99モル%以上であり、好適には99.5モル%以上であり、より好適には99.8モル%以上である。
(1)変性EVAcの合成
ジャケット、撹拌機、窒素導入口、エチレン導入口及び開始剤添加口を備えた50L加圧反応槽に、酢酸ビニル(式(II)において、R5がメチル基:以下、VAcと称する)を21kg、メタノール(以下、MeOHと称する)を6.6kg、2−メチレン−1,3−プロパンジオールジアセテート(式(III)において、R1、R2、R3及びR4が水素原子で、R6及びR7がメチル基:以下、MPDAcと称する)を29.7g仕込み、60℃に昇温した後、30分間窒素バブリングして反応槽内を窒素置換した。次いで反応槽圧力(エチレン圧力)が3.8MPaとなるようにエチレンを導入した。反応槽内の温度を60℃に調整した後、開始剤として8.4gの2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製「V−65」)をメタノール溶液として添加し、重合を開始した。重合中はエチレン圧力を3.8MPaに、重合温度を60℃に維持した。4時間後にVAcの重合率が42%となったところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで減圧下で未反応のVAcを除去した後、MPDAc由来の構造単位が共重合により導入された変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(本明細書中、変性EVAcと称することがある)にMeOHを添加して20質量%MeOH溶液とした。
ジャケット、撹拌機、窒素導入口、還流冷却器及び溶液添加口を備えた10L反応槽に(1)で得た変性EVAcの20質量%MeOH溶液4715gを仕込んだ。この溶液に窒素を吹き込みながら60℃に昇温し、水酸化ナトリウムの濃度が2規定のMeOH溶液を14.7mL/分の速度で2時間添加した。水酸化ナトリウムMeOH溶液の添加終了後、系内温度を60℃に保ちながら2時間撹拌してケン化反応を進行させた。その後酢酸を254g添加してケン化反応を停止した。その後、80℃で加熱攪拌しながら、イオン交換水3Lを添加し、反応槽外にMeOHを流出させ、変性エチレンービニルアルコール共重合体(以下、変性EVOHと称する)を析出させた。デカンテーションにより析出した変性EVOHを収集し、ミキサーで粉砕した。得られた変性EVOH粉末を1g/Lの酢酸水溶液(浴比20:粉末1kgに対して水溶液20Lの割合)に投入して2時間攪拌洗浄した。これを脱液し、さらに1g/Lの酢酸水溶液(浴比20)に投入して2時間攪拌洗浄した。これを脱液したものを、イオン交換水(浴比20)に投入して攪拌洗浄を2時間行い脱液する操作を3回繰り返して精製を行った。次いで、酢酸0.5g/L及び酢酸ナトリウム0.1g/Lを含有する水溶液10Lに4時間攪拌浸漬してから脱液し、これを60℃で16時間乾燥させることで変性EVOHの粗乾燥物を543g得た。
ジャケット、撹拌機及び還流冷却器を備えた3L撹拌槽に、(2)を2回繰返して得た変性EVOHの粗乾燥物758g、水398g及びMeOH739gを仕込み、85℃に昇温して溶解させた。この溶解液を径4mmのガラス管を通して5℃に冷却した水/MeOH=90/10の混合液中に押し出してストランド状に析出させ、このストランドをストランドカッターでペレット状にカットすることで変性EVOHの含水ペレットを得た。得られた変性EVOHの含水ペレットの含水率をメトラー社製ハロゲン水分計「HR73」で測定したところ、55質量%であった。
上記(3)で得た変性EVOHの含水ペレット1577gを1g/Lの酢酸水溶液(浴比20)に投入して2時間撹拌洗浄した。これを脱液し、さらに1g/Lの酢酸水溶液(浴比20)に投入して2時間撹拌洗浄した。脱液後、酢酸水溶液を更新し同様の操作を行った。酢酸水溶液で洗浄してから脱液したものを、イオン交換水(浴比20)に投入して撹拌洗浄を2時間行い脱液する操作を3回繰り返して精製を行い、ケン化反応時の触媒残渣が除去された、変性EVOHの含水ペレットを得た。当該含水ペレットを酢酸ナトリウム濃度0.525g/L、酢酸濃度0.8g/L、リン酸濃度0.007g/Lの水溶液(浴比20)に投入し、定期的に撹拌しながら4時間浸漬させた。これを脱液し、80℃で3時間、及び105℃で16時間乾燥させることによって、酢酸、ナトリウム塩及びリン酸化合物を含有した変性EVOH組成物ペレットを得た。
変性EVAc中の、エチレン含有量(式(IV)におけるaモル%)、酢酸ビニル由来の構造単位の含有量(式(IV)におけるbモル%)及びMPDAc由来の構造単位の含有量(式(IV)におけるcモル%)は、ケン化前の変性EVAcを1H−NMR測定して算出した。
・0.6〜1.0ppm:末端部位エチレン単位のメチレンプロトン(4H)
・1.0〜1.85ppm:中間部位エチレン単位のメチレンプロトン(4H)、MPDAc由来の構造単位の主鎖部位メチレンプロトン(2H)、酢酸ビニル単位のメチレンプロトン(2H)
・1.85−2.1ppm:MPDAc由来の構造単位のメチルプロトン(6H)と酢酸ビニル単位のメチルプロトン(3H)
・3.7−4.1ppm:MPDAc由来の構造単位の側鎖部位メチレンプロトン(4H)
・4.4−5.3ppm:酢酸ビニル単位のメチンプロトン(1H)
a=(2x+2y−z−4w)/(2x+2y+z+4w)×100
b=8w/(2x+2y+z+4w)×100
c=2z/(2x+2y+z+4w)×100
上記方法により算出した結果、エチレン単位の含有量(a)は32.0モル%、ビニルエステル単位の含有量(b)は67.8モル%、MPDAc由来の構造単位の含有量(c)は0.2モル%であった。変性EVAcにおけるa、b及びcの値は、ケン化処理後の変性EVOHにおけるa、b及びcの値と同じである。
ケン化後の変性EVOHについても同様に1H−NMR測定を行った。上記(2)で得られた変性EVOHの粗乾燥物を、内部標準物質としてテトラメチルシラン、添加剤としてテトラフルオロ酢酸(TFA)を含むジメチルスルホキシド(DMSO)−d6に溶解し、500MHzの1H−NMR(日本電子株式会社製:「GX−500」)を用いて80℃で測定した。図2に、実施例1で得られた変性EVOHの1H−NMRスペクトルを示す。1.85〜2.1ppmのピーク強度が大幅に減少していることから、酢酸ビニルに含まれるエステル基に加え、MPDAc由来の構造単位に含まれるエステル基もケン化されて水酸基になっていることは明らかである。ケン化度は酢酸ビニル単位のメチルプロトン(1.85〜2.1ppm)と、ビニルアルコール単位のメチンプロトン(3.15〜4.15ppm)のピーク強度比より算出した。変性EVOHのケン化度は99.9モル%以上であった。
上記(4)で得られた変性EVOH組成物ペレットについて、JIS K7121に準じて、30℃から215℃まで10℃/分の速度にて昇温した後100℃/分で−35℃まで急冷して再度−35℃から195℃まで10℃/分の昇温速度にて測定を実施した(セイコー電子工業株式会社製示差走査熱量計(DSC)「RDC220/SSC5200H」)。温度の校正にはインジウムと鉛を用いた。2ndランのチャートから前記JISにしたがって融解ピーク温度(Tpm)を求め、これを変性EVOHの融点とした。融点は182℃であった。
上記(4)で得られた変性EVOH組成物ペレット0.5gをテフロン(登録商標)製圧力容器に入れ、ここに濃硝酸5mLを加えて室温で30分間分解させた。30分後蓋をし、湿式分解装置(株式会社アクタック製:「MWS−2」)により150℃で10分間、次いで180℃で5分間加熱することで分解を行い、その後室温まで冷却した。この処理液を50mLのメスフラスコ(TPX製)に移し純水でメスアップした。この溶液について、ICP発光分光分析装置(パーキンエルマー社製「OPTIMA4300DV」)により含有金属の分析を行い、ナトリウム元素及びリン元素の含有量を求めた。ナトリウム塩含有量は、ナトリウム元素換算値で150ppmであり、リン酸化合物含有量は、リン酸根換算値で10ppmであった。
上記(4)で得られた変性EVOH組成物ペレットを用いて、株式会社東洋精機製作所製20mm押出機「D2020」(D(mm)=20、L/D=20、圧縮比=2.0、スクリュー:フルフライト)を用いて以下の条件にて単層製膜を行い、変性EVOH組成物の単層フィルムを得た。
シリンダー温度:供給部175℃、圧縮部215℃、計量部215℃
ダイ温度:215℃
スクリュー回転数:40〜100rpm
吐出量:0.4〜1.5kg/時間
引取りロール温度:80℃
引取りロール速度:0.8〜3.2m/分
フィルム厚み:20〜150μm
シリンダー温度:
供給部:175℃
圧縮部:変性EVOHの融点+30〜45℃
計量部:変性EVOHの融点+30〜45℃
ダイ温度:変性EVOHの融点+30〜45℃
上記(9)で得られた厚さ20μmの単層フィルムを20℃、85%RHの条件下で3日間調湿後、同条件下で酸素透過速度の測定(Mocon社製「OX−TORAN MODEL 2/21」)を行った。その結果、酸素透過速度(OTR)は1.7cc・20μm/m2・day・atmであった。
得られた変性EVOH組成物を原料とし、3種5層共押出機を用いて、ポリプロピレン層/接着性樹脂層/変性EVOH層/接着性樹脂層/ポリプロピレン層の5層構成になるように製膜し、多層フィルムを作製した。ここで、接着性樹脂としては無水マレイン酸変性ポリプロピレンを用い、ポリプロピレン層を200μm、接着性樹脂層を25μm、変性EVOH層を50μmとした。
上記(11)で作製された多層構造体について、接着性樹脂層と変性EVOH層との層間接着性の指標として、下記条件で剥離強度を測定した。すなわち、23℃、50%RHの雰囲気下で7日間調湿したのち、15mm×200mmの短冊状の試験片を切出したサンプルについて、島津製作所製オートグラフAGS−H型にて、チャック間隔200mm、引張速度250mm/分の条件で引張破断点強度(gf/15mm)の測定を行った。測定は10サンプルについて行い、接着性を以下の基準で判定した。
A:全てが500gf/15mm
B:一つでも500gf/15mm未満
上記(9)における、変性EVOH組成物の単層フィルムについて、押出機を用いて溶融押出を行った際の熱安定性について以下のように判定した。
A :良好
B :ゲル発生、着色
実施例1の(1)において、MeOHの量を6.3kgにし、MPDAcの仕込量を98gにした以外は、同様の方法で重合を行った。4時間後にVAcの重合率が47%となったところで冷却し重合を停止した。引き続き、実施例1と同様に変性EVOHを合成して評価した結果を、表1にまとめて示す。
実施例1の(1)において、MeOHの量を2.1kgにし、エチレン圧力を4.2MPaにし、MPDAcの仕込量を0.5kgにした以外は、同様の方法で重合を行った。6時間後にVAcの重合率が52%となったところで冷却し重合を停止した。引き続き、実施例1と同様に変性EVOHを合成して評価した結果を、表1にまとめて示す。
実施例1の(1)において、MeOHの量を6.3kgにし、エチレン圧力を3.7MPaにし、開始剤の量を4.2gにし、MPDAcを仕込まなかった以外は、同様の方法で重合を行った。4時間後にVAcの重合率が44%となったところで冷却し重合を停止した。引き続き、実施例1と同様に変性EVOHを合成して評価した結果を、表1にまとめて示す。
比較例2と同様にして未変性のEVAcを合成し、EVAcのメタノール溶液を得た。引き続き、水酸化ナトリウムのMeOH溶液を2.2mL/分の速度で添加した以外は、実施例1の(2)と同様の方法でケン化処理した。こうして得られた未変性EVOHを評価した結果を、表1にまとめて示す。
実施例1の(1)において、MeOHの量を6.3kgにし、開始剤の量を8.4gにし、エチレン圧力を3.0MPaにし、MPDAcの仕込量を29.7gにした以外は、同様の方法で重合を行った。4時間後にVAcの重合率が45%となったところで冷却し重合を停止した。引き続き、実施例1と同様に変性EVOHを合成して評価した結果を、表1にまとめて示す。
実施例1の(1)において、MeOHの量を4.2kgにし、開始剤の量を16.8gにし、エチレン圧力を5.5MPaにし、MPDAcの仕込量を7.2gにした以外は、同様の方法で重合を行った。3時間後にVAcの重合率が30%となったところで冷却し重合を停止した。引き続き、実施例1と同様に変性EVOHを合成して評価した結果を、表1にまとめて示す。
実施例1の(1)において、MeOHの量を6.3kgにし、開始剤の量を4.2gにし、エチレン圧力を2.9MPaにし、MPDAcを添加しなかった以外は、同様の方法で重合を行った。4時間後にVAcの重合率が50%となったところで冷却し重合を停止した。引き続き、実施例1と同様に変性EVOHを合成して評価した結果を、表1にまとめて示す。
実施例1の(1)において、MeOH量を4.2kgにし、開始剤の量を4.2gにし、エチレン圧力を5.3MPaにし、MPDAcを添加しなかった以外は、同様の方法で重合を行った。3時間後にVAcの重合率が29.3%となったところで冷却し重合を停止した。引き続き、実施例1と同様に変性EVOHを合成して評価した結果を、表1にまとめて示す。
Claims (10)
- 下記式(I)で表され、全単量体単位に対するa、b及びcの含有率(モル%)が下記式(1)〜(3)を満足し、かつ下記式(4)で定義されるケン化度(DS)が99モル%以上である変性エチレン−ビニルアルコール共重合体。
18≦a≦55 (1)
0.01≦c≦0.5 (2)
[100−(a+c)]×0.9≦b≦[100−(a+c)] (3)
DS=[(X、Y及びZのうち水素原子であるものの合計モル数)/(X、Y及びZの合計モル数)]×100 (4) - R1、R2、R3及びR4が水素原子である請求項1に記載の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体。
- X、Y及びZが、それぞれ独立に水素原子又はアセチル基である請求項1又は2に記載の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体。
- 20℃、65%RHにおける酸素透過速度が100cc・20μm/m2・day・atm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を含むバリア材。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む樹脂組成物。
- 前記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体とアルカリ金属塩を含有し、該アルカリ金属塩をアルカリ金属元素換算で10〜500ppm含有する請求項6に記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体の層と他の熱可塑性樹脂の層とを含む多層構造体。
- 前記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体の層と前記他の熱可塑性樹脂の層とが接着性樹脂の層を介して接着されてなる請求項8記載の多層構造体。
- 前記接着性樹脂が、カルボキシル基、カルボン酸無水物基又はエポキシ基を有するポリオレフィンである請求項9記載の多層構造体。
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