JP2019123251A - 発泡断熱紙容器用紙基材、発泡断熱紙容器用シートおよび発泡断熱紙容器 - Google Patents
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Abstract
【課題】紙基材から発生する水蒸気の透過量の場所によるばらつきを低減し、熱可塑性樹脂層を均一に発泡させることによって、断熱性と表面の美麗性に優れた発泡断熱紙容器およびその製造に用いる発泡断熱紙容器用紙基材と発泡断熱紙容器用シートを提供する。【解決手段】紙基材1の少なくとも片面に架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層2を有する発泡断熱紙容器用紙基材3である。また、紙基材と熱可塑性樹脂層との間に、架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層を有する発泡断熱紙容器用シートである。また、胴部材および底板部材の少なくとも一方に発泡断熱紙を用いた発泡断熱紙容器であって、発泡断熱紙は、紙基材の少なくとも片面に熱可塑性樹脂からなる発泡樹脂層を有し、紙基材と発泡樹脂層との間に、架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層を有する発泡断熱紙容器である。【選択図】図1
Description
本発明は、発泡断熱紙容器およびその製造に用いる発泡断熱紙容器用紙基材と発泡断熱紙容器用シートに関する。
ファーストフード店、列車内、自動販売機などにおいて、コーヒーなどの温飲料やスープなどの温食品を購入者に提供するための容器として、あるいはカップ入り即席ラーメンの容器などとして、断熱性容器が広く使用されている。
従来、このような用途に使用される断熱性容器としては、発泡ポリスチレン製容器が知られている。発泡ポリスチレン製容器は、ポリスチレンに発泡剤を加えた原料をモールド内に注入し、原料に熱と圧力を加えて発泡させ、成形することによって製造される。このようにして得られた発泡ポリスチレン製容器は、容器全体を発泡させているため、嵩高であり、断熱性の点では非常に優れているものの、使用後のゴミの量が多くなるという問題がある。また、発泡ポリスチレン製容器は、焼却処分する際に高熱を発するため、焼却炉への影響が懸念される。さらに、石油資源の節約という観点からもその使用の見直しが求められている。
また、発泡ポリスチレン製容器の外表面には微小な凹凸が多数存在するため、容器の外表面に模様、文字、記号などを印刷しても鮮明に表現されにくいという問題がある。さらに、紙製の断熱性容器と比べると、強度が弱いため、カップ入り即席ラーメン用などの比較的大きな容器の場合には、輸送中に割れたりするなどの問題があった。
これらの問題に対して、いくつかの先行技術が開示されている。特許文献1には、ポリエチレン等の熱可塑性合成樹脂フィルムをラミネートした紙製容器を加熱し、紙に含まれている水分を利用してフィルムを発泡させる技術が開示されている。また、特許文献2には、低融点の熱可塑性樹脂の発泡内層とこれよりも高い融点を有する熱可塑性樹脂の非発泡外層とからなる2層構造断熱膜が被着されている紙製容器が開示されている。また、特許文献3には、紙基材の少なくとも片面にポリエチレン等の熱可塑性樹脂層を積層した発泡断熱紙製容器用シートにおいて、該紙基材の表面がカレンダーサイズプレスによって処理されている発泡断熱紙製容器用シートが開示されている。
特許文献1および特許文献2に記載の容器の基材の主体は紙であるため、全体が発泡ポリスチレンからなる容器に比べて石油の使用量が少なく、環境負荷が小さい。しかし、特許文献1および特許文献2に記載の容器は、紙基材から発生する水蒸気の透過量が場所によってばらつくため、発泡の均一性に欠け、容器の表面外観に凹凸が発生して、表面の美麗性に欠けるといった問題が存在した。
また、特許文献3に記載の発泡断熱紙製容器では、同様の理由で環境負荷は小さいものの、加熱発泡時に紙基材から発生する水蒸気の透過量が場所によって均一ではないため、熱可塑性樹脂層の発泡が不均一となり、表面の美麗性において改善の余地を有するものであった。
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、紙基材から発生する水蒸気の透過量の場所によるばらつきを低減し、熱可塑性樹脂層を均一に発泡させることによって、断熱性と表面の美麗性に優れた発泡断熱紙容器を提供することを課題とする。また、当該発泡断熱紙容器の製造に用いる発泡断熱紙容器用紙基材と発泡断熱紙容器用シートを提供することを課題とする。
本発明者らは、発泡樹脂層となる熱可塑性樹脂層を積層する前の紙基材の表面処理方法について検討を加えた。その結果、紙基材の表面に架橋されたポリビニルアルコール層を予め設けると、紙基材から発生する水蒸気の透過を適度にバリアして、水蒸気が特定の場所から噴出することを抑制し、水蒸気の透過量の場所によるばらつきを低減できることを見出した。そして、そのことによって発泡断熱紙容器の断熱性や美麗性を改善できることを見出して、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下のような構成を有している。
本発明は、以下のような構成を有している。
(1)紙基材の少なくとも片面に架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層を有する発泡断熱紙容器用紙基材。
(2)前記架橋エチレン変性ポリビニルアルコールの架橋剤が、ホウ砂、ホウ酸およびホウ酸塩の少なくとも1つであることを特徴とする(1)に記載の発泡断熱紙容器用紙基材。
(3)坪量あたりの透気抵抗度が0.3〜4.0s/g/m2であることを特徴とする(1)または(2)に記載の発泡断熱紙容器用紙基材。
(4)前記架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層の形成量が片面で0.2〜4.0g/m2であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の発泡断熱紙容器用紙基材。
(5)紙基材の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を有する発泡断熱紙容器用シートであって、前記紙基材と前記熱可塑性樹脂層との間に、架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層を有することを特徴とする発泡断熱紙容器用シート。
(6)前記架橋エチレン変性ポリビニルアルコールの架橋剤が、ホウ砂、ホウ酸およびホウ酸塩の少なくとも1つであることを特徴とする(5)に記載の発泡断熱紙容器用シート。
(7)前記熱可塑性樹脂層の厚さが30〜80μmであることを特徴とする(5)または(6)に記載の発泡断熱紙容器用シート。
(8)前記熱可塑性樹脂がポリエチレンであることを特徴とする(5)〜(7)のいずれか1項に記載の発泡断熱紙容器用シート。
(9)胴部材および底板部材の少なくとも一方に発泡断熱紙を用いた発泡断熱紙容器であって、前記発泡断熱紙は、紙基材の少なくとも片面に熱可塑性樹脂からなる発泡樹脂層を有し、前記紙基材と前記発泡樹脂層との間に、架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層を有することを特徴とする発泡断熱紙容器。
(10)前記架橋エチレン変性ポリビニルアルコールの架橋剤が、ホウ砂、ホウ酸およびホウ酸塩の少なくとも1つであることを特徴とする(9)に記載の発泡断熱紙容器。
本発明の発泡断熱紙容器は、紙基材から発生する水蒸気の透過量の場所によるばらつきが少ないため、熱可塑性樹脂層が均一に発泡し、断熱性と表面の美麗性に優れている。また、本発明の発泡断熱紙容器用紙基材および発泡断熱紙容器用シートは、紙基材から発生する水蒸気の透過量の場所によるばらつきが少ないため、熱可塑性樹脂層が均一に発泡し、断熱性と表面の美麗性に優れた発泡断熱紙容器を製造することができる。
本発明の実施形態について以下説明する。但し、本発明の実施形態は、以下の実施形態に限定されるものではない。
図3は、本実施形態の発泡断熱紙容器の模式的断面図である。また、図4は、図3のAで示された部分の拡大断面図である。本実施形態において、発泡断熱紙容器8とは、胴部材6および底板部材7の少なくとも一方に発泡断熱紙を用いた発泡断熱紙容器8であり、当該発泡断熱紙は、紙基材1の少なくとも片面に熱可塑性樹脂からなる発泡樹脂層9を有している。本実施形態の発泡断熱紙容器8は、当該紙基材1と当該発泡樹脂層9との間に、架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層2を有することを特徴としている。図4において、架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層2は、紙基材1の両方の面に形成されている。さらに、発泡断熱紙容器8は、その外壁面側に発泡樹脂層9を有し、その内壁面側に後記する高融点熱可塑性樹脂層10を有している。
図2は、本実施形態の発泡断熱紙容器用シートの模式的断面図である。本実施形態の発泡断熱紙容器用シート5は、上記の発泡断熱紙容器8を製造するために用いられるものである。本実施形態の発泡断熱紙容器用シート5は、紙基材1の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層4を有し、当該紙基材1と当該熱可塑性樹脂層4との間に、架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層2を有している。当該熱可塑性樹脂層4は、加熱処理によって発泡して、発泡樹脂層9となる。
図1は、本実施形態の発泡断熱紙容器用紙基材の模式的断面図である。本実施形態の発泡断熱紙容器用紙基材3は、上記の発泡断熱紙容器用シート5を製造するために用いられるものである。本実施形態の発泡断熱紙容器用紙基材3は、紙基材1の少なくとも片面に架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層2を有している。架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層2上に熱可塑性樹脂層4を設けることによって、上記の発泡断熱紙容器用シート5が形成される。
発泡断熱紙容器用シート5を胴部材6や底板部材7に用いて、紙容器を成形する。その後、当該紙容器を加熱することによって、紙基材1や架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層2中に含まれる水分が気化して水蒸気となる。発生した水蒸気は、架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層2を透過して、加熱された熱可塑性樹脂層4中に浸透し、熱可塑性樹脂を発泡させて、熱可塑性樹脂層4は発泡樹脂層9へと変わる。その結果、前記紙容器は断熱性を有した発泡断熱紙容器8となる。
本発明者らの検討によると、紙基材1の表面に樹脂等による皮膜が形成されていないと、加熱したときに、水蒸気が紙基材1から直接放出されるため、水蒸気の透過量が紙基材1の場所によって不均一となり、熱可塑性樹脂層4の発泡において部分的に過発泡が発生し易い傾向にある。過発泡部分が存在すると、発泡形態が不均一となり、表面に凹凸が生じるため、断熱性と表面の美麗性が共に低下する。
本発明者らは、紙基材1の表面に形成する皮膜の材料について検討を重ねた結果、架橋エチレン変性ポリビニルアルコールが皮膜の材料として優れていることを見出した。
以下、本実施形態を構成する各部材について説明する。
以下、本実施形態を構成する各部材について説明する。
(エチレン変性ポリビニルアルコール)
エチレン変性ポリビニルアルコールとは、ポリビニルアルコール中の主鎖にエチレン基を導入することによって変性させたポリビニルアルコールである。エチレン変性ポリビニルアルコールは、ポリマー分子中に親水性と疎水性の官能基が適度に共存していることから、紙基材上に強固に密着した皮膜を形成すると同時に、水蒸気の適度のバリア性能にも優れている。紙基材上に強固に密着したエチレン変性ポリビニルアルコールの皮膜が形成されると、水蒸気の透過量を適度に制御して、水蒸気の透過量が場所によってばらつくことを抑制することができる。その結果、熱可塑性樹脂層の発泡状態を均一にさせることができ、断熱性と美麗性を向上させることができる。
エチレン変性ポリビニルアルコールとは、ポリビニルアルコール中の主鎖にエチレン基を導入することによって変性させたポリビニルアルコールである。エチレン変性ポリビニルアルコールは、ポリマー分子中に親水性と疎水性の官能基が適度に共存していることから、紙基材上に強固に密着した皮膜を形成すると同時に、水蒸気の適度のバリア性能にも優れている。紙基材上に強固に密着したエチレン変性ポリビニルアルコールの皮膜が形成されると、水蒸気の透過量を適度に制御して、水蒸気の透過量が場所によってばらつくことを抑制することができる。その結果、熱可塑性樹脂層の発泡状態を均一にさせることができ、断熱性と美麗性を向上させることができる。
エチレン変性ポリビニルアルコールは、さらに、エチレン変性度を変えることによって、親水性と疎水性のバランスを変化させて、水蒸気のバリア性能をより精密に制御することが可能である。エチレン変性ポリビニルアルコールのエチレン変性度は、モノマー単位全体(エチレン単位+ビニルアルコール単位)に対するエチレン単位のモル%で表される。但し、ビニルアルコール単位には、鹸化されていない酢酸ビニル単位も含まれる。エチレン変性度は、2〜12モル%が好ましく、4〜8モル%がさらに好ましい。このようなエチレン変性ポリビニルアルコールは、例えば(株)クラレ製の「エクセバール」シリーズとして市販されており、容易に入手し利用することができる。
エチレン変性ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K 6726−1994に準拠して測定した場合には、800〜1500が好ましい。平均重合度を800以上とすることによって、成膜性が向上する。一方、平均重合度を1500以下とすることによって、水への溶解性が向上し、溶融粘度が高くならず、塗工することが容易となる。
エチレン変性ポリビニルアルコールの鹸化度は、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上が更に好ましい。鹸化度を80モル%以上とすると、水溶性が高まり、成膜性が向上する。
(架橋エチレン変性ポリビニルアルコール)
本実施形態において、架橋エチレン変性ポリビニルアルコールとは、エチレン変性ポリビニルアルコール中の主鎖が、架橋剤によって架橋された構造を有するものである。エチレン変性ポリビニルアルコールを架橋することによって、エチレン変性ポリビニルアルコールの皮膜の密着強度、耐熱性、耐水性等が向上し、加熱発泡の際に、水蒸気の透過量を均一に制御して、熱可塑性樹脂層をより一層均一に発泡させることが可能となる。
本実施形態において、架橋エチレン変性ポリビニルアルコールとは、エチレン変性ポリビニルアルコール中の主鎖が、架橋剤によって架橋された構造を有するものである。エチレン変性ポリビニルアルコールを架橋することによって、エチレン変性ポリビニルアルコールの皮膜の密着強度、耐熱性、耐水性等が向上し、加熱発泡の際に、水蒸気の透過量を均一に制御して、熱可塑性樹脂層をより一層均一に発泡させることが可能となる。
架橋エチレン変性ポリビニルアルコールの架橋は、共有結合であっても、水素結合、配位結合、キレート結合等であっても、特に限定されない。しかし、架橋反応のための加熱工程を特に必要とせず、副生成物が発生せず、取扱いがし易いといった理由から、水素結合、配位結合またはキレート結合による架橋が好ましく、水素結合による架橋がより好ましい。
(架橋剤)
エチレン変性ポリビニルアルコールの架橋剤としては、ホウ素化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、ポリカルボン酸、ポリイソシアネート化合物、ビスビニルスルホン化合物、グルタルアルデヒド等が知られている。
エチレン変性ポリビニルアルコールの架橋剤としては、ホウ素化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、ポリカルボン酸、ポリイソシアネート化合物、ビスビニルスルホン化合物、グルタルアルデヒド等が知られている。
これらの中で、エチレン変性ポリビニルアルコールを水素結合によって架橋させる架橋剤としては、ホウ素化合物がある。ホウ素化合物としては、ホウ砂、ホウ酸、ホウ酸塩、有機ホウ素化合物等があるが、エチレン変性ポリビニルアルコールの架橋反応が室温で迅速に進行することから、ホウ砂、ホウ酸およびホウ酸塩の少なくとも1つであることが好ましい。ホウ素化合物は、ホウ素元素を介してエチレン変性ポリビニルアルコールが有する水酸基同士を架橋させて、安定な三次元網目構造を形成する。
ホウ砂、ホウ酸およびホウ酸塩は、いずれか1種を使用してもよいし、複数の種類を混合して使用してもよい。ホウ砂は、メタホウ酸ナトリウムともいい、Na2[B4O5(OH)4]・8H20という化学式で表される。ホウ酸塩には、オルトホウ酸塩、二ホウ酸塩、メタホウ酸塩、四ホウ酸塩、五ホウ酸塩等があるが、特に限定されない。
エチレン変性ポリビニルアルコールを配位結合やキレート結合によって架橋させる架橋剤としては、チタン、ジルコニウム等の金属化合物がある。これらの金属化合物を使用したときも、架橋反応は室温で比較的迅速に進行する。
チタン化合物としては、例えば、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンジエタノールアミネート、チタンアミノエチルアミノエタノレート等が挙げられる。
エチレン変性ポリビニルアルコールに対する架橋剤の添加量は、架橋剤の種類にも依るが、通常は、10〜100質量%が好ましく、40〜60質量%がより好ましい。
(架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層)
紙基材上に強固に密着した架橋エチレン変性ポリビニルアルコールの皮膜が形成されると、水蒸気の透過量を適度に制御して、水蒸気の透過量の場所によるばらつきを抑制することができる。その結果、熱可塑性樹脂層の発泡状態を均一にさせることができ、断熱性を向上させることができる。
紙基材上に強固に密着した架橋エチレン変性ポリビニルアルコールの皮膜が形成されると、水蒸気の透過量を適度に制御して、水蒸気の透過量の場所によるばらつきを抑制することができる。その結果、熱可塑性樹脂層の発泡状態を均一にさせることができ、断熱性を向上させることができる。
また、後記するように、発泡樹脂層となる熱可塑性樹脂としてはポリエチレンが使用されることが多い。紙基材の表面に架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層が存在することによって、後工程で積層されるポリエチレンが紙基材に強固に密着する。その結果、発泡時の紙基材からの水蒸気の透過量がより一層均一となり、過発泡が抑えられ、発泡形態が均一となる。
架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層は、エチレン変性ポリビニルアルコールを主成分とする層であるが、必要に応じて、発明の効果を妨げない範囲で適宜他の樹脂成分を含有させてもよい。
架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層を形成する方法については、特に限定されない。塗布法、転写法、含浸法、噴射法等の種々の公知の方法を用いることができる。
架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層は、次の3つの製造方法で形成することが考えられる。
(1)まず架橋剤を含有する塗工液を塗工した後に、ポリビニルアルコールを含有する塗工液を塗工する方法。
(2)まずポリビニルアルコールを含有する塗工液を塗工した後に、架橋剤を含有する塗工液を塗工する方法。
(3)ポリビニルアルコールと架橋剤とを予め混合し、架橋反応が始まる前に塗工する方法。
これらの製造方法の中では、(1)の方法が一般的であり、より好ましい方法である。
(1)まず架橋剤を含有する塗工液を塗工した後に、ポリビニルアルコールを含有する塗工液を塗工する方法。
(2)まずポリビニルアルコールを含有する塗工液を塗工した後に、架橋剤を含有する塗工液を塗工する方法。
(3)ポリビニルアルコールと架橋剤とを予め混合し、架橋反応が始まる前に塗工する方法。
これらの製造方法の中では、(1)の方法が一般的であり、より好ましい方法である。
例えば、ポリビニルアルコールをホウ砂、ホウ酸およびホウ酸塩の少なくとも1つで架橋させた架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層を形成するときは、架橋反応は少量のホウ酸化合物で室温で速やかに進行するため、上記(1)の方法を採用することができる。また、最初の塗工液を塗工した後に、次の塗工液を塗工する前に、必要に応じて、最初の塗工液を乾燥させたり、活性化させたり、洗浄する工程を設けてもよい。また、2番目の塗工液を塗工した後に、必要に応じて、乾燥や洗浄する工程を設けてもよい。
塗工液には、必要に応じて、架橋助剤、界面活性剤、消泡剤、染料、顔料、サイズ剤、耐水化剤、紙力増強剤、分散剤、可塑剤、pH調整剤、消泡剤、保水剤、防腐剤、着色染料、着色顔料、紫外線防止剤等の各種公知の助剤を併用してもよい。
塗工液を紙基材に塗布または含浸する装置としては、特に限定されず、一般に公知の装置を用いることができる。塗布または含浸する装置としては、例えば、バーコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、ブラシコーター、スライドビードコーター、カレンダーサイズプレス、ツーロールあるいはメータリングブレード方式のサイズプレスコーター、ビルブレードコーター、ショートドウェルコーター、ゲートロールコーター、キャレンダーによるニップコーター等が挙げられる。
架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層の形成量は、紙基材の片面あたり固形分で、0.2〜4.0g/m2の範囲であることが好ましく、0.3〜2.0g/m2の範囲であることがより好ましく、0.4〜2.0g/m2の範囲であることが更に好ましい。形成量を0.2g/m2以上とすることにより、成膜性と密着性を高めることができ、その結果、断熱性をより一層高めることができる。一方、形成量を4.0g/m2以下とすることにより、塗工液を塗布するときに抄紙工程または乾燥工程における設備汚れを軽減でき、汚れが脱落して発泡断熱紙容器に異物となって混入することを防ぐことができる。架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層は、紙基材の少なくとも片面に設けるものであるが、両面に設けることもできる。
塗工液を塗布した後に、塗工層を乾燥させる方法は、特に限定されず、公知の抄紙工程または乾燥工程において用いられる方法の中から適宜選択すればよい。また、架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層を形成した後に、必要に応じて平滑化処理を行うことができる。平滑化処理は、通常のスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー等の平滑化処理装置を用いて、オンマシンまたはオフマシンで行われる。
[紙基材]
(パルプ)
本実施形態において、紙基材を構成するパルプの種類は特に限定されない。パルプの種類としては、例えば、針葉樹材の晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹材の晒クラフトパルプ(LBKP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、脱墨パルプ(DIP)等の木材系パルプ、靭皮パルプ、リンターパルプ、麻パルプ等の非木材パルプ等の天然パルプが挙げられる。これらのパルプは、1種単独、または2種以上を組合せて使用することができる。なかでも、品質やコストの面から木材パルプを使用することが好ましい。
(パルプ)
本実施形態において、紙基材を構成するパルプの種類は特に限定されない。パルプの種類としては、例えば、針葉樹材の晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹材の晒クラフトパルプ(LBKP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、脱墨パルプ(DIP)等の木材系パルプ、靭皮パルプ、リンターパルプ、麻パルプ等の非木材パルプ等の天然パルプが挙げられる。これらのパルプは、1種単独、または2種以上を組合せて使用することができる。なかでも、品質やコストの面から木材パルプを使用することが好ましい。
紙基材を構成するパルプのJIS P 8121−2012に準じて測定した濾水度(カナダ標準濾水度、C.S.F.)は、300〜600mlに調整することが好ましい。パルプの濾水度は、前記した少なくとも1種のパルプを叩解して上記範囲に調整すればよい。2種類以上のパルプを使用する場合には、別々に叩解したパルプを混合して上記範囲にしてもよいし、予め混合したパルプを叩解して上記範囲に調整してもよい。パルプの濾水度が300ml未満になると、抄紙工程での脱水が遅く、操業性が劣ることがある。一方、パルプの濾水度が600mlを超えると、紙力が低下することがある。パルプの濾水度は、より好ましくは300〜450mlである。
(抄紙)
紙基材の抄紙方法および抄紙機の型式は、特に限定されるものではなく、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、ギャップフォーマー、ハイブリッドフォーマー(オントップフォーマー)等の公知の抄紙方法および抄紙機が選択可能である。
また、抄紙時のpHは酸性領域(酸性抄紙)、疑似中性領域(疑似中性抄紙)、中性領域(中性抄紙)、アルカリ性領域(アルカリ性抄紙)のいずれでもよく、酸性領域で抄紙した後、紙基材の表面にアルカリ性薬剤を塗布してもよい。
紙基材の抄紙方法および抄紙機の型式は、特に限定されるものではなく、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、ギャップフォーマー、ハイブリッドフォーマー(オントップフォーマー)等の公知の抄紙方法および抄紙機が選択可能である。
また、抄紙時のpHは酸性領域(酸性抄紙)、疑似中性領域(疑似中性抄紙)、中性領域(中性抄紙)、アルカリ性領域(アルカリ性抄紙)のいずれでもよく、酸性領域で抄紙した後、紙基材の表面にアルカリ性薬剤を塗布してもよい。
(填料)
紙基材を抄紙する際に配合する填料は、製紙分野で一般に使用されている填料が使用可能であり、特に限定されない。填料の例としては、クレー、焼成カオリン、デラミネートカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などの無機填料、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子などの有機填料が例示できる。これらの填料は単独または2種類以上を適宜組み合わせて使用することができる。前記の酸性抄紙であれば一般に、これらの填料から酸溶解性のものを除いたものが使用される。
紙基材を抄紙する際に配合する填料は、製紙分野で一般に使用されている填料が使用可能であり、特に限定されない。填料の例としては、クレー、焼成カオリン、デラミネートカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などの無機填料、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子などの有機填料が例示できる。これらの填料は単独または2種類以上を適宜組み合わせて使用することができる。前記の酸性抄紙であれば一般に、これらの填料から酸溶解性のものを除いたものが使用される。
紙基材を抄紙する際に、填料は無配合とすることも可能である。紙基材の填料を無配合とすると、紙基材中に含まれる水分によって熱可塑性樹脂層を発泡させる際に、発泡性が向上する。一方、紙基材に填料を配合すると、得られる発泡断熱紙容器用シート及びそれを用いた発泡断熱紙容器の不透明度が向上する。
(内添助剤)
紙基材を抄紙する際に、各種内添助剤を必要に応じて適宜選択して使用することが可能である。内添助剤の例としては、ロジン、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニルこはく酸無水物(ASA)等の各種の内添サイズ剤、ノニオン性、カチオン性、両性の各種歩留まり向上剤、濾水度向上剤、紙力向上剤、各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド、ポリアミン樹脂、ポリアミン、ポリエチレンイミン、植物ガム、ポリビニルアルコール、ラテックス、ポリエチレンオキサイド、親水性架橋ポリマー粒子分散物及びこれらの誘導体あるいは変性物等、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性塩化アルミニウム、塩基性ポリ水酸化アルミニウム等の塩基性アルミニウム化合物、水に易分解性のアルミナゾル等の水溶性アルミニウム化合物、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄等の多価金属化合物、シリカゾル、消泡剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、pH調整剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等が挙げられる。
紙基材を抄紙する際に、各種内添助剤を必要に応じて適宜選択して使用することが可能である。内添助剤の例としては、ロジン、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニルこはく酸無水物(ASA)等の各種の内添サイズ剤、ノニオン性、カチオン性、両性の各種歩留まり向上剤、濾水度向上剤、紙力向上剤、各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド、ポリアミン樹脂、ポリアミン、ポリエチレンイミン、植物ガム、ポリビニルアルコール、ラテックス、ポリエチレンオキサイド、親水性架橋ポリマー粒子分散物及びこれらの誘導体あるいは変性物等、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性塩化アルミニウム、塩基性ポリ水酸化アルミニウム等の塩基性アルミニウム化合物、水に易分解性のアルミナゾル等の水溶性アルミニウム化合物、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄等の多価金属化合物、シリカゾル、消泡剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、pH調整剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等が挙げられる。
(表面pH)
紙基材表面のpHは、6以下とすることが好ましい。紙基材表面のpHが6以下の酸性側であると、パルプから水が放出され易い状態となるため、熱可塑性樹脂の発泡性が良好になると考えられる。紙面pHの測定は、JAPAN TAPPI No.49−2(塗布法)に準じて測定される。
紙基材表面のpHは、6以下とすることが好ましい。紙基材表面のpHが6以下の酸性側であると、パルプから水が放出され易い状態となるため、熱可塑性樹脂の発泡性が良好になると考えられる。紙面pHの測定は、JAPAN TAPPI No.49−2(塗布法)に準じて測定される。
[発泡断熱紙容器用紙基材]
本実施形態の発泡断熱紙容器用紙基材は、前記したように、紙基材の少なくとも片面に架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層を有しており、以下に説明する特性を有している。
本実施形態の発泡断熱紙容器用紙基材は、前記したように、紙基材の少なくとも片面に架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層を有しており、以下に説明する特性を有している。
(透気抵抗度)
発泡断熱紙容器用紙基材の坪量あたりの透気抵抗度(透気抵抗度/坪量)は、0.3〜4.0s/g/m2であることが好ましい。坪量あたりの透気抵抗度がこの範囲にあると、得られる発泡断熱紙容器用シート及びそれを用いた発泡断熱紙容器において、水蒸気の透過量を適度に抑制して、熱可塑性樹脂層の発泡状態が均一となるため、断熱性と美麗性のバランスが良好となる。坪量あたりの透気抵抗度は、より好ましくは0.5〜4.0s/g/m2、更に好ましくは1・3〜3.5s/g/m2である。透気抵抗度は、JIS P8117;2009に記載の王研式試験機法に準じて測定される。
発泡断熱紙容器用紙基材の坪量あたりの透気抵抗度(透気抵抗度/坪量)は、0.3〜4.0s/g/m2であることが好ましい。坪量あたりの透気抵抗度がこの範囲にあると、得られる発泡断熱紙容器用シート及びそれを用いた発泡断熱紙容器において、水蒸気の透過量を適度に抑制して、熱可塑性樹脂層の発泡状態が均一となるため、断熱性と美麗性のバランスが良好となる。坪量あたりの透気抵抗度は、より好ましくは0.5〜4.0s/g/m2、更に好ましくは1・3〜3.5s/g/m2である。透気抵抗度は、JIS P8117;2009に記載の王研式試験機法に準じて測定される。
(水分量)
発泡断熱紙容器用紙基材の水分量は、紙基材が含有する水分量と架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層が含有する水分量の合計となる。紙基材が含有する水分量は、紙基材の坪量及び含水率によって決定される。発泡断熱紙容器用紙基材の水分量は、好ましくは5〜60g/m2であり、より好ましくは10〜40g/m2であり、さらに好ましくは15〜40g/m2である。水分量は、調湿後、JIS P8127;2010に準じて測定される。
発泡断熱紙容器用紙基材の水分量は、紙基材が含有する水分量と架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層が含有する水分量の合計となる。紙基材が含有する水分量は、紙基材の坪量及び含水率によって決定される。発泡断熱紙容器用紙基材の水分量は、好ましくは5〜60g/m2であり、より好ましくは10〜40g/m2であり、さらに好ましくは15〜40g/m2である。水分量は、調湿後、JIS P8127;2010に準じて測定される。
(坪量)
発泡断熱紙容器用紙基材の坪量は、好ましくは100〜400g/m2であり、より好ましくは200〜400g/m2であり、さらに好ましくは220〜400g/m2である。坪量が100g/m2未満であると、水分量の関係から発泡が不十分になりやすく、得られた発泡断熱紙容器を手で把持したときに熱さを感じやすい。一方、坪量が400g/m2を超えると、発泡断熱紙容器の成形加工適性が低下する傾向がある。
発泡断熱紙容器用紙基材の坪量は、好ましくは100〜400g/m2であり、より好ましくは200〜400g/m2であり、さらに好ましくは220〜400g/m2である。坪量が100g/m2未満であると、水分量の関係から発泡が不十分になりやすく、得られた発泡断熱紙容器を手で把持したときに熱さを感じやすい。一方、坪量が400g/m2を超えると、発泡断熱紙容器の成形加工適性が低下する傾向がある。
(密度)
発泡断熱紙容器用紙基材の密度は、所望に応じて適宜設定すればよく、特に限定されることはないが、0.60〜0.99g/cm3とすることが好ましい。発泡断熱紙容器用紙基材の密度が低いと、熱可塑性樹脂層を発泡させる際に水蒸気が紙基材を通りやすくなり、発泡性が向上する傾向が見られる。しかし、発泡断熱紙容器用紙基材の密度が0.60g/cm3未満であると、発泡断熱紙容器に必要な紙力が得られないことがある。一方、発泡断熱紙容器用紙基材の密度が0.99g/cm3を超えると、熱可塑性樹脂層を発泡させる際に水蒸気が紙基材を通りにくくなり、発泡性が低下する傾向がある。
発泡断熱紙容器用紙基材の密度は、所望に応じて適宜設定すればよく、特に限定されることはないが、0.60〜0.99g/cm3とすることが好ましい。発泡断熱紙容器用紙基材の密度が低いと、熱可塑性樹脂層を発泡させる際に水蒸気が紙基材を通りやすくなり、発泡性が向上する傾向が見られる。しかし、発泡断熱紙容器用紙基材の密度が0.60g/cm3未満であると、発泡断熱紙容器に必要な紙力が得られないことがある。一方、発泡断熱紙容器用紙基材の密度が0.99g/cm3を超えると、熱可塑性樹脂層を発泡させる際に水蒸気が紙基材を通りにくくなり、発泡性が低下する傾向がある。
[発泡断熱紙容器用シート]
本実施形態の発泡断熱紙容器用シートは、前記したように、紙基材の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を有し、紙基材と熱可塑性樹脂層との間に、架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層を有している。上記の発泡断熱紙容器用紙基材の架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層が形成されている表面上に熱可塑性樹脂層を設けることによって形成される。発泡断熱紙容器用シートを加熱処理することによって、紙基材と架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層に含まれる水分が加熱蒸発して、発生した水蒸気によって熱可塑性樹脂層は発泡樹脂層となる。
本実施形態の発泡断熱紙容器用シートは、前記したように、紙基材の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を有し、紙基材と熱可塑性樹脂層との間に、架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層を有している。上記の発泡断熱紙容器用紙基材の架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層が形成されている表面上に熱可塑性樹脂層を設けることによって形成される。発泡断熱紙容器用シートを加熱処理することによって、紙基材と架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層に含まれる水分が加熱蒸発して、発生した水蒸気によって熱可塑性樹脂層は発泡樹脂層となる。
(熱可塑性樹脂層)
熱可塑性樹脂層に使用する熱可塑性樹脂は、架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層上に形成可能であり、かつ発泡させることが可能であれば特に制限されず、結晶性樹脂および非結晶性樹脂のいずれの熱可塑性樹脂も使用することが可能である。
熱可塑性樹脂層に使用する熱可塑性樹脂は、架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層上に形成可能であり、かつ発泡させることが可能であれば特に制限されず、結晶性樹脂および非結晶性樹脂のいずれの熱可塑性樹脂も使用することが可能である。
結晶性樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、PPS樹脂等が挙げられる。非結晶性樹脂の例としては、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、アクリル樹脂、変性PPE、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、非結晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単一の樹脂を単層で使用してもよいし、複数の樹脂を混合したり、複層で使用してもよい。
上記の熱可塑性樹脂の中では、押出しラミネート性および発泡性が優れることからポリエチレンが好ましい。ポリエチレンは、大きくは直鎖状低密度ポリエチレン(密度:910〜930kg/m3、融点:102℃〜122℃)、低密度ポリエチレン(密度:910〜930kg/m3、融点:102℃〜122℃)、中密度ポリエチレン(密度:930〜942kg/m3、融点:110〜133℃)、高密度ポリエチレン(密度:942〜970kg/m3、融点:127〜135℃)のように区分される。これらの中では、押出しラミネート性及び発泡性に特に優れることから、低密度ポリエチレンが好ましい。
熱可塑性樹脂層の厚さは、所望する断熱性を有する発泡断熱紙容器が得られればよく特に限定されないが、断熱性や加工性の観点から、発泡前の厚さは30〜80μmであることが好ましい。
(高融点熱可塑性樹脂層、金属層)
本実施形態の発泡断熱紙容器用シートは、紙基材の熱可塑性樹脂層を形成した面とは反対側の面に、熱可塑性樹脂層よりも融点の高い高融点熱可塑性樹脂層やアルミニウム箔等の金属層を積層してもよい。このような高融点熱可塑性樹脂層や金属層を有すると、発泡断熱紙容器用シートを加熱して熱可塑性樹脂層を発泡させる際に、紙基材の熱可塑性樹脂層を形成した面と反対側の面から水蒸気が蒸散することが抑制され、熱可塑性樹脂層の発泡性が向上する。
本実施形態の発泡断熱紙容器用シートは、紙基材の熱可塑性樹脂層を形成した面とは反対側の面に、熱可塑性樹脂層よりも融点の高い高融点熱可塑性樹脂層やアルミニウム箔等の金属層を積層してもよい。このような高融点熱可塑性樹脂層や金属層を有すると、発泡断熱紙容器用シートを加熱して熱可塑性樹脂層を発泡させる際に、紙基材の熱可塑性樹脂層を形成した面と反対側の面から水蒸気が蒸散することが抑制され、熱可塑性樹脂層の発泡性が向上する。
このとき、高融点熱可塑性樹脂層に使用する熱可塑性樹脂の融点は、紙基材中に含まれる水分を加熱蒸発させる際の加熱温度において溶融せず、水蒸気の拡散を防止できればよく、特に制限されないが、125℃以上であることが好ましい。また、紙基材の表面に金属層を形成するためには、金属箔を積層してもよいし、金属層を蒸着法等の気相法で形成してもよい。
さらに、高融点熱可塑性樹脂層や金属層が発泡断熱紙容器の胴部材および底板部材の少なくとも一方の内壁面側に存在すると、容器に充填した液体等が紙基材中へ浸透することを抑制できるため好ましい。
また、発泡断熱紙容器用シートの熱可塑性樹脂層の上に高融点熱可塑性樹脂層を積層してもよい。熱可塑性樹脂層の上に高融点熱可塑性樹脂層を積層すると、発泡断熱紙容器用シートを加熱して熱可塑性樹脂層を発泡させる際に、熱可塑性樹脂層を貫通して水蒸気が蒸散することが抑制されるので、発泡性が向上する。
熱可塑性樹脂層が発泡断熱紙容器の胴部材の外壁面側に存在する場合、一般にその表面は、発泡による凹凸が発生するため平滑ではない。熱可塑性樹脂層の上に高融点熱可塑性樹脂層を積層すると、発泡断熱紙容器の胴部表面を平滑にすることができるため、特に美麗性に優れた発泡断熱紙容器を得ることができる。
高融点熱可塑性樹脂層に使用する熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂層に使用する熱可塑性樹脂と同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。例えば、熱可塑性樹脂層に使用する熱可塑性樹脂と高融点熱可塑性樹脂層に使用する熱可塑性樹脂の両方にポリエチレンを選択する場合、熱可塑性樹脂層は低密度ポリエチレンを、高融点熱可塑性樹脂層は中密度ポリエチレンまたは高密度ポリエチレンを選択することで、高融点熱可塑性樹脂層の融点を熱可塑性樹脂層より高くすることが可能となる。
熱可塑性樹脂層と高融点熱可塑性樹脂層の融点の差、即ち、熱可塑性樹脂層に使用する熱可塑性樹脂と高融点熱可塑性樹脂層に使用する熱可塑性樹脂の融点の差は5℃以上あることが好ましい。熱可塑性樹脂層または高融点熱可塑性樹脂層において複数の種類の樹脂を積層して使用した場合は、熱可塑性樹脂層に使用した樹脂のうち最も高い融点を有する樹脂と、高融点熱可塑性樹脂層に使用した樹脂のうち最も低い融点を有する樹脂について、融点の差が5℃以上あることが好ましい。
高融点熱可塑性樹脂層の厚さは、紙基材の熱可塑性樹脂層を積層した面と反対側の面から水蒸気が蒸散することを抑制したり、熱可塑性樹脂層を貫通して水蒸気が蒸散することを抑制できればよく、特に限定されないが、20〜50μm程度である。特に、高融点熱可塑性樹脂層が発泡断熱紙容器の胴部材および底板部材の少なくとも一方の内壁面側に存在する場合、高融点熱可塑性樹脂層の厚さが20μm以上であると、容器に充填した液体等が紙基材中へ浸透することを効果的に抑制することが可能である。
[熱可塑性樹脂層の形成方法]
熱可塑性樹脂層および高融点熱可塑性樹脂層の形成方法は特に制限されず、押出しラミネート法、ウェットラミネート法、ドライラミネート法等の各種方法を適宜使用して紙基材上に積層すればよい。押出しラミネート法とは、紙基材の表面に、熱可塑性樹脂をTダイから溶融樹脂膜の状態で押出し、クーリングロールとこれに対向するニップロールとの間で冷却しつつ押圧・圧着する方法である。紙基材と熱可塑性樹脂層との密着性、および熱可塑性樹脂層の発泡性が良好となるため、押出しラミネート法が好ましい。
熱可塑性樹脂層および高融点熱可塑性樹脂層の形成方法は特に制限されず、押出しラミネート法、ウェットラミネート法、ドライラミネート法等の各種方法を適宜使用して紙基材上に積層すればよい。押出しラミネート法とは、紙基材の表面に、熱可塑性樹脂をTダイから溶融樹脂膜の状態で押出し、クーリングロールとこれに対向するニップロールとの間で冷却しつつ押圧・圧着する方法である。紙基材と熱可塑性樹脂層との密着性、および熱可塑性樹脂層の発泡性が良好となるため、押出しラミネート法が好ましい。
押出しラミネート法の操業条件、即ち、熱可塑性樹脂の溶融温度、積層速度等は、使用する熱可塑性樹脂の種類や装置により適宜設定すればよく特に制限されない。一般に、溶融温度は200〜370℃程度、積層速度は30〜200m/分程度である。
熱可塑性樹脂層上に高融点熱可塑性樹脂層を積層する場合や、熱可塑性樹脂層を複数の熱可塑性樹脂層で形成する場合には、複数の熱可塑性樹脂層が積層される。複数の熱可塑性樹脂層を積層する場合は、各熱可塑性樹脂層間の密着性や生産効率の観点から、いわゆる共押出しラミネート法が好ましい。共押出しラミネート法は、複数台の押出機を用いて各熱可塑性樹脂を溶融状態でそれぞれのTダイに導き、各Tダイから各熱可塑性樹脂を同時に押出して積層する方法である。
さらに、熱可塑性樹脂層同士の接着性を向上させるために、熱可塑性樹脂層同士の間に接着性樹脂層を挟んでもよい。また、紙基材と熱可塑性樹脂層との接着性を向上させるために、予め紙基材に対して、コロナ放電処理、オゾン処理等を行うなどしてもよい。
[発泡断熱紙容器の成形]
発泡断熱紙容器用シートを用いて発泡断熱紙容器を成形する方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を用いて製造することができる。具体例としては、以下に説明する一般的なカップ成形機によって成形する方法がある。
発泡断熱紙容器用シートを用いて発泡断熱紙容器を成形する方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を用いて製造することができる。具体例としては、以下に説明する一般的なカップ成形機によって成形する方法がある。
まず、発泡断熱紙容器用シートの所定箇所に、各種絵柄やバーコード等の胴部材ブランクに必要な印刷を施した後、胴部材ブランクを所定の形状に打ち抜く。印刷部分の位置決めなどは常用の方法によって行うことができる。
次に、胴部材ブランクとは別に、底板部材ブランクを用意する。底板部材ブランクは、胴部材ブランクと同様に、発泡断熱紙容器用シートを打ち抜いて製造することができる。また、容器に充填した液体等が紙基材中へ浸透することを防止するため、底板部材ブランクを本実施形態の発泡断熱紙容器用シートとは異なる構成にすることもできる。底板部材ブランクに用いるシートとして、例えば、紙基材上に熱可塑性樹脂を積層したシートやアルミ箔等で被覆したシートなどを用いることができる。
底板部材ブランクに用いる熱可塑性樹脂は、胴部材ブランクに用いる熱可塑性樹脂と同じ種類の樹脂であってもよいし、異なる樹脂であってもよい。両者の熱可塑性樹脂として同種の樹脂を用いたり、両者を同一の発泡断熱紙容器用シートから作製して用いると、胴部材と底板部材とが同時に発泡するため、発泡断熱紙容器の断熱性が一層良好となる。特に、屋外や冬場、寒冷地で発泡断熱紙容器を使用する場合、あるいはカップ麺など湯を注入後しばらく放置するものに発泡断熱紙容器を使用する場合に、前記の構成の発泡断熱紙容器は有効である。
次に、カップ成形機で胴部材ブランクと底板部材ブランクとを組み立てて容器の形とする。カップ成形機で胴部材ブランクと底板部材ブランクを組み立てて容器の形とする際に、熱可塑性樹脂層は、胴部材の外側及び内側のどちらか一方あるいは両方に存在すればよく、所望する断熱性、美麗性、手触り等に応じて適宜決定すればよい。
[加熱処理による発泡]
本実施形態では、胴部材ブランクと底板部材ブランクを組み立てて容器の形とした後、加熱処理を行う。加熱処理を行うと、胴部材ブランクや底板部材ブランクの紙基材等に含まれる水分が気化し、発生した水蒸気によって熱可塑性樹脂層が発泡されて、発泡断熱紙容器となる。発泡断熱紙容器は、胴部材および底板部材の少なくとも一方に発泡断熱紙を用いており、当該発泡断熱紙は、紙基材の少なくとも片面に熱可塑性樹脂からなる発泡樹脂層を有している。
本実施形態では、胴部材ブランクと底板部材ブランクを組み立てて容器の形とした後、加熱処理を行う。加熱処理を行うと、胴部材ブランクや底板部材ブランクの紙基材等に含まれる水分が気化し、発生した水蒸気によって熱可塑性樹脂層が発泡されて、発泡断熱紙容器となる。発泡断熱紙容器は、胴部材および底板部材の少なくとも一方に発泡断熱紙を用いており、当該発泡断熱紙は、紙基材の少なくとも片面に熱可塑性樹脂からなる発泡樹脂層を有している。
加熱処理の条件(加熱温度、加熱時間)は、紙基材および熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜設定すればよく、特に制限されない。加熱温度は熱可塑性樹脂の融点よりもやや高い温度(融点+5℃〜融点+10℃程度)が好ましく、高融点熱可塑性樹脂層に使用する熱可塑性樹脂の融点よりも低い温度がより好ましい。一般的に、加熱温度は100〜200℃程度、加熱時間は1〜6分間程度である。
加熱処理には、熱風、電熱、電子線など任意の手段を使用することが可能である。コンベヤによる搬送手段を備えたトンネル内で、連続的に加熱処理すると、発泡断熱紙容器を安価かつ高い生産性で製造することができる。
本実施形態の発泡断熱紙容器では、必要に応じて、所望の効果を損なわない範囲で紙製容器の分野で公知の技術を適用することができる。例えば、胴部材の外側の一部に合成樹脂成分を5〜40wt%含有する塗料を塗布し、部分的に発泡を抑制する技術(特許第3014629号公報)、胴部材の外側、即ち発泡断熱紙容器の外壁面に発泡と同調して滑らかな印刷面を形成する同調インキを塗布する技術(特許第3408156号公報)、胴部材の開口上縁に断面角型に強制加工した上部フランジ部を設け、その内側巻き込み端をフランジ部の上部に重合させて二重構造にする技術(特開2001−354226号公報)等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。また、美麗性を高めるために、発泡断熱紙容器の外壁面となる胴部材の最表層に、顔料とバインダーを主成分とするインキ受理層を設けてもよい。
また、発泡断熱紙容器に使用する蓋材については、前記底板部材ブランクと同様に、発泡断熱紙容器用シートを打ち抜いたものを用いることができる。また、容器に充填した液体等が紙基材中へ浸透することを防止するため、蓋材を本実施形態の発泡断熱紙容器用シートとは異なる構成にすることもできる。蓋材に用いるシートとして、例えば、紙基材上に熱可塑性樹脂を積層したシートやアルミ箔等で被覆したシートなどを用いることができる。
本実施形態の発泡断熱紙容器は、自動販売機等に利用されるホットコーヒーなどの充填用の発泡断熱紙容器、熱湯を注入するインスタント食品用の発泡断熱紙容器、電子レンジによる調理用の容器等として使用することができる。
以下、実施例により本発明の効果を詳細に説明する。なお、特に断らない限り、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」を示す。パルプのカナダ標準ろ水度(C.S.F.)はJIS P8121に準じて測定した。
[実施例1]
(発泡断熱紙容器用紙基材)
パルプとして広葉樹晒クラフトパルプLBKP(C.S.F.380ml)を使用し、固形分換算でパルプ原料100部に対し、硫酸アルミニウム2部、ロジンサイズ剤0.35部を添加した紙料スラリーを長網抄紙機で抄紙して紙基材(原紙)を得た。その後、得られた紙基材(原紙)の両面に、ツーロールサイズプレスによりホウ酸の3%水溶液を片面あたり固形分で0.3g/m2(両面で0.6g/m2)となるように塗工(第1回塗工)、乾燥した。次いで、カレンダーサイズプレスによりエチレン変性ポリビニルアルコール(クラレ社製RS2817、鹸化度95.5〜97.5%)の2.5%水溶液を片面あたり固形分で0.3g/m2(両面で0.6g/m2)となるように塗工(第2回塗工)、乾燥して、実施例1の発泡断熱紙容器用紙基材を得た。実施例1の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、坪量あたりの透気抵抗度1.50s/g/m2であった。
(発泡断熱紙容器用紙基材)
パルプとして広葉樹晒クラフトパルプLBKP(C.S.F.380ml)を使用し、固形分換算でパルプ原料100部に対し、硫酸アルミニウム2部、ロジンサイズ剤0.35部を添加した紙料スラリーを長網抄紙機で抄紙して紙基材(原紙)を得た。その後、得られた紙基材(原紙)の両面に、ツーロールサイズプレスによりホウ酸の3%水溶液を片面あたり固形分で0.3g/m2(両面で0.6g/m2)となるように塗工(第1回塗工)、乾燥した。次いで、カレンダーサイズプレスによりエチレン変性ポリビニルアルコール(クラレ社製RS2817、鹸化度95.5〜97.5%)の2.5%水溶液を片面あたり固形分で0.3g/m2(両面で0.6g/m2)となるように塗工(第2回塗工)、乾燥して、実施例1の発泡断熱紙容器用紙基材を得た。実施例1の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、坪量あたりの透気抵抗度1.50s/g/m2であった。
(発泡断熱紙容器用シート)
上記発泡断熱紙容器用紙基材の一方の面に、厚さ40μmとなるように高融点の熱可塑性樹脂(中密度ポリエチレン、密度940kg/m3、融点133℃)を溶融温度330℃、積層速度50m/分で押出した。その後、クーリングロールとニップロール(JIS−A硬度:90)を用いて、線圧20kgf/cmで押圧・圧着し、高融点熱可塑性樹脂層を形成した。
上記発泡断熱紙容器用紙基材の一方の面に、厚さ40μmとなるように高融点の熱可塑性樹脂(中密度ポリエチレン、密度940kg/m3、融点133℃)を溶融温度330℃、積層速度50m/分で押出した。その後、クーリングロールとニップロール(JIS−A硬度:90)を用いて、線圧20kgf/cmで押圧・圧着し、高融点熱可塑性樹脂層を形成した。
次いで、発泡断熱紙容器用紙基材の他方の面に、厚さ50μmとなるように熱可塑性樹脂(低密度ポリエチレン、密度918kg/m3、融点103℃)を溶融温度330℃、積層速度50m/分で押出した。その後、クーリングロールとニップロール(JIS−A硬度:90)を用いて、線圧20kgf/cmで押圧・圧着し、熱可塑性樹脂層を形成して、実施例1の発泡断熱紙容器用シートを得た。
[実施例2]
実施例2の発泡断熱紙容器用紙基材では、第2回塗工において、エチレン変性ポリビニルアルコールの4.5%水溶液を使用し、エチレン変性ポリビニルアルコールの塗工量を片面あたり固形分で0.5g/m2(両面で1.0g/m2)とした。それ以外は実施例1と同様である。実施例2の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、坪量あたりの透気抵抗度3.50s/g/m2であった。その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、実施例2の発泡断熱紙容器用シートを得た。
実施例2の発泡断熱紙容器用紙基材では、第2回塗工において、エチレン変性ポリビニルアルコールの4.5%水溶液を使用し、エチレン変性ポリビニルアルコールの塗工量を片面あたり固形分で0.5g/m2(両面で1.0g/m2)とした。それ以外は実施例1と同様である。実施例2の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、坪量あたりの透気抵抗度3.50s/g/m2であった。その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、実施例2の発泡断熱紙容器用シートを得た。
[実施例3]
実施例3の発泡断熱紙容器用紙基材では、第1回塗工において、ホウ酸水溶液の代わりに、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)の3%水溶液を使用し、片面あたり固形分で0.3g/m2(両面で0.6g/m2)となるように塗工した。また、第2回塗工において、エチレン変性ポリビニルアルコールの4.5%水溶液を使用し、エチレン変性ポリビニルアルコールの塗工量を片面あたり固形分で0.5g/m2(両面で1.0g/m2)とした。それ以外は実施例1と同様である。実施例3の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、坪量あたりの透気抵抗度1.50s/g/m2であった。その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、実施例3の発泡断熱紙容器用シートを得た。
実施例3の発泡断熱紙容器用紙基材では、第1回塗工において、ホウ酸水溶液の代わりに、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)の3%水溶液を使用し、片面あたり固形分で0.3g/m2(両面で0.6g/m2)となるように塗工した。また、第2回塗工において、エチレン変性ポリビニルアルコールの4.5%水溶液を使用し、エチレン変性ポリビニルアルコールの塗工量を片面あたり固形分で0.5g/m2(両面で1.0g/m2)とした。それ以外は実施例1と同様である。実施例3の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、坪量あたりの透気抵抗度1.50s/g/m2であった。その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、実施例3の発泡断熱紙容器用シートを得た。
[比較例1]
比較例1の発泡断熱紙容器用紙基材では、第1回塗工において、ホウ酸水溶液の代わりに澱粉の3%水溶液を使用し、片面あたり固形分で0.3g/m2(両面で0.6g/m2)となるように塗工した。また、第2回塗工において、エチレン変性ポリビニルアルコールの2%水溶液を使用し、エチレン変性ポリビニルアルコールの塗工量を片面あたり固形分で0.2g/m2(両面で0.4g/m2)とした。それ以外は実施例1と同様である。比較例1の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、坪量あたりの透気抵抗度0.21s/g/m2であった。その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、比較例1の発泡断熱紙容器用シートを得た。
比較例1の発泡断熱紙容器用紙基材では、第1回塗工において、ホウ酸水溶液の代わりに澱粉の3%水溶液を使用し、片面あたり固形分で0.3g/m2(両面で0.6g/m2)となるように塗工した。また、第2回塗工において、エチレン変性ポリビニルアルコールの2%水溶液を使用し、エチレン変性ポリビニルアルコールの塗工量を片面あたり固形分で0.2g/m2(両面で0.4g/m2)とした。それ以外は実施例1と同様である。比較例1の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、坪量あたりの透気抵抗度0.21s/g/m2であった。その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、比較例1の発泡断熱紙容器用シートを得た。
[比較例2]
比較例2の発泡断熱紙容器用紙基材では、第2回塗工において、エチレン変性ポリビニルアルコールの代わりに、無変性ポリビニルアルコール(完全ケン化ポリビニルアルコール、クラレ社製、製品名:PVA117)の4.5%水溶液を使用し、片面あたり固形分で0.5g/m2(両面で1.0g/m2)となるように塗工した。それ以外は実施例1と同様である。比較例2の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、坪量あたりの透気抵抗度0.25s/g/m2であった。その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、比較例2の発泡断熱紙容器用シートを得た。
比較例2の発泡断熱紙容器用紙基材では、第2回塗工において、エチレン変性ポリビニルアルコールの代わりに、無変性ポリビニルアルコール(完全ケン化ポリビニルアルコール、クラレ社製、製品名:PVA117)の4.5%水溶液を使用し、片面あたり固形分で0.5g/m2(両面で1.0g/m2)となるように塗工した。それ以外は実施例1と同様である。比較例2の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、坪量あたりの透気抵抗度0.25s/g/m2であった。その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、比較例2の発泡断熱紙容器用シートを得た。
[比較例3]
比較例3の発泡断熱紙容器用紙基材では、第2回塗工において、エチレン変性ポリビニルアルコールの代わりに、澱粉の5%水溶液を使用し、片面あたり固形分で0.5g/m2(両面で1.0g/m2)となるように塗工した。それ以外は実施例1と同様である。比較例3の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、坪量あたりの透気抵抗度0.11s/g/m2であった。その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、比較例3の発泡断熱紙容器用シートを得た。
比較例3の発泡断熱紙容器用紙基材では、第2回塗工において、エチレン変性ポリビニルアルコールの代わりに、澱粉の5%水溶液を使用し、片面あたり固形分で0.5g/m2(両面で1.0g/m2)となるように塗工した。それ以外は実施例1と同様である。比較例3の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m2、坪量あたりの透気抵抗度0.11s/g/m2であった。その後、実施例1と同様に高融点熱可塑性樹脂層および熱可塑性樹脂層を形成して、比較例3の発泡断熱紙容器用シートを得た。
以上のようにして得られた発泡断熱紙容器用シートについて以下の評価を行った。評価結果は表1に記載した。
(断熱性)
得られた発泡断熱紙容器用シートから、A4サイズのサンプルを切り出した。熱可塑性樹脂層が外側となるようにして、円筒を作成した。その後、熱風を使用して、加熱温度120℃、加熱時間6分間で、円筒の外側の熱可塑性樹脂層を発泡させた。
得られた発泡断熱紙の発泡前後の厚さから、発泡倍率を算出し、以下の基準で評価した。
◎:発泡倍率21倍以上で、断熱性は十分である。
○:発泡倍率19倍以上、21倍未満で、断熱性が十分である。
△:発泡倍率15倍以上、19倍未満で、断熱性はある。
×:発泡倍率15倍未満で、断熱性が不十分である。
(断熱性)
得られた発泡断熱紙容器用シートから、A4サイズのサンプルを切り出した。熱可塑性樹脂層が外側となるようにして、円筒を作成した。その後、熱風を使用して、加熱温度120℃、加熱時間6分間で、円筒の外側の熱可塑性樹脂層を発泡させた。
得られた発泡断熱紙の発泡前後の厚さから、発泡倍率を算出し、以下の基準で評価した。
◎:発泡倍率21倍以上で、断熱性は十分である。
○:発泡倍率19倍以上、21倍未満で、断熱性が十分である。
△:発泡倍率15倍以上、19倍未満で、断熱性はある。
×:発泡倍率15倍未満で、断熱性が不十分である。
(美麗性)
得られた発泡断熱紙容器用シートから、1辺100mmの正方形の試験片を切り出した。その後、熱風を使用して、加熱温度120℃、加熱時間6分間で、熱可塑性樹脂層を発泡させた。発泡後の熱可塑性樹脂層の表面を目視で観察し、以下の基準で美麗性を評価した。
◎:過発泡が見られず、形成された発泡セルは小さく均質であり、表面は概ね平坦である。
○:過発泡が見られず、形成された発泡セルは小さく表面も概ね平坦であるが、発泡セルの大きさにバラツキが見られる。
△:形成された発泡セルがやや大きく、大きさにバラツキも見られるが、表面の凹凸は小さく過発泡は見られない。
×:過発泡が発生しているなど、表面に大きな凹凸がある。
得られた発泡断熱紙容器用シートから、1辺100mmの正方形の試験片を切り出した。その後、熱風を使用して、加熱温度120℃、加熱時間6分間で、熱可塑性樹脂層を発泡させた。発泡後の熱可塑性樹脂層の表面を目視で観察し、以下の基準で美麗性を評価した。
◎:過発泡が見られず、形成された発泡セルは小さく均質であり、表面は概ね平坦である。
○:過発泡が見られず、形成された発泡セルは小さく表面も概ね平坦であるが、発泡セルの大きさにバラツキが見られる。
△:形成された発泡セルがやや大きく、大きさにバラツキも見られるが、表面の凹凸は小さく過発泡は見られない。
×:過発泡が発生しているなど、表面に大きな凹凸がある。
表1から分かるように、実施例1〜実施例3の発泡断熱紙容器用シートは、断熱性、美麗性のいずれの性能においても優れていた。特に実施例2は、断熱性、美麗性のいずれの性能においても他の実施例よりも優れていた。比較例1の発泡断熱紙容器用シートは、ホウ酸の代わりに澱粉を使用しているため、エチレン変性ポリビニルアルコール層は架橋されていない。そのため、坪量あたりの透気抵抗度が低下し、発泡樹脂層の発泡の均一性に劣り、断熱性と美麗性が共に劣るものであった。比較例2の発泡断熱紙容器用シートは、紙基材の表面に無変性ポリビニルアルコール層が形成されているものであるが、坪量あたりの透気抵抗度がやや低く、水蒸気の透過量の場所によるばらつきがあり、発泡樹脂層の発泡の均一性に劣るため、断熱性に劣り、美麗性にもやや劣っていた。比較例3の発泡断熱紙容器用シートは、エチレン変性ポリビニルアルコールの代わりに澱粉を用いているため、架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層は形成されていない。そのため、坪量あたりの透気抵抗度が大きく低下し、発泡樹脂層の発泡の均一性に劣り、断熱性と美麗性が共に劣るものであった。
1 紙基材
2 架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層
3 発泡断熱紙容器用紙基材
4 熱可塑性樹脂層
5 発泡断熱紙容器用シート
6 胴部材
7 底板部材
8 発泡断熱紙容器
9 発泡樹脂層
10 高融点熱可塑性樹脂層
2 架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層
3 発泡断熱紙容器用紙基材
4 熱可塑性樹脂層
5 発泡断熱紙容器用シート
6 胴部材
7 底板部材
8 発泡断熱紙容器
9 発泡樹脂層
10 高融点熱可塑性樹脂層
Claims (10)
- 紙基材の少なくとも片面に架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層を有する発泡断熱紙容器用紙基材。
- 前記架橋エチレン変性ポリビニルアルコールの架橋剤が、ホウ砂、ホウ酸およびホウ酸塩の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の発泡断熱紙容器用紙基材。
- 坪量あたりの透気抵抗度が0.3〜4.0s/g/m2であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発泡断熱紙容器用紙基材。
- 前記架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層の形成量が片面で0.2〜4.0g/m2であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発泡断熱紙容器用紙基材。
- 紙基材の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を有する発泡断熱紙容器用シートであって、
前記紙基材と前記熱可塑性樹脂層との間に、架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層を有することを特徴とする発泡断熱紙容器用シート。 - 前記架橋エチレン変性ポリビニルアルコールの架橋剤が、ホウ砂、ホウ酸およびホウ酸塩の少なくとも1つであることを特徴とする請求項5に記載の発泡断熱紙容器用シート。
- 前記熱可塑性樹脂層の厚さが30〜80μmであることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の発泡断熱紙容器用シート。
- 前記熱可塑性樹脂がポリエチレンであることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の発泡断熱紙容器用シート。
- 胴部材および底板部材の少なくとも一方に発泡断熱紙を用いた発泡断熱紙容器であって、
前記発泡断熱紙は、紙基材の少なくとも片面に熱可塑性樹脂からなる発泡樹脂層を有し、
前記紙基材と前記発泡樹脂層との間に、架橋エチレン変性ポリビニルアルコール層を有することを特徴とする発泡断熱紙容器。 - 前記架橋エチレン変性ポリビニルアルコールの架橋剤が、ホウ砂、ホウ酸およびホウ酸塩の少なくとも1つであることを特徴とする請求項9に記載の発泡断熱紙容器。
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