JP2009237075A - プラスチックレンズの染色方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】短時間で染色可能なプラスチックレンズの染色方法を提供すること。
【解決手段】染色液には、染料と、媒体となるオイルと、が使用される。染料としては、特に限定されず、油溶染料、分散染料などを使用することができる。これらの中でも、油浴中での染色を行うという点から、特に油溶染料を用いることが好ましい。オイルとしては、特に種類は限定されず、植物油、鉱物油、合成油等が使用できる。中でも、油の耐熱性、粘度の安定性などの観点から、シリコーンオイルが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、プラスチックレンズの染色方法に関する。
従来、眼鏡用などのプラスチックレンズの着色方法としては、レンズ基材を直接染色する方法や、レンズ基材に被染色層を形成した後に染色する方法など多数存在する。
具体的には、90℃程度の温水中に、分散染料、必要に応じて界面活性剤および染色キャリアを添加した水ベースの染色ポットを用意し、攪拌しながらレンズ基材を染色ポットに浸漬することによって直接染色している(例えば、特許文献1、2および3参照)。
また、温水での染色を可能としてハードコート層が加工されたレンズ基材を上記の染色ポットに浸漬して染色を行っている場合もある。
近年では、プラスチックレンズの薄型化が行われており、高屈折率素材の開発および商品化がなされている。例えば、屈折率n=1.69以下の素材としてはチオウレタン系樹脂が主流であり、屈折率n=1.70以上の素材としてはエピスルフィド系樹脂が主流となっている。
特開平10−259580号公報 特開平6−313801号公報 特開平6−347602号公報
チオウレタン系樹脂は、適度な吸水性を備えているため、チオウレタン系樹脂からなるプラスチックレンズを水ベースの染色ポットに浸漬することで容易に染色することができる。一方、エピスルフィド系樹脂は、吸水性が極端に小さく、エピスルフィド系樹脂からなるプラスチックレンズを水ベースの染色ポットに浸漬して染色することは非常に困難である。浸漬時間を長くしたとしても、染色濃度はほとんど濃くならない。
染色スピードを上げるには、染色ポットの温度を上げるのが一般的である。しかしながら、水ベースの染色ポットでは100℃以上に上げることはできない。なお、染色ポット全体を圧力容器等で覆って密閉することで100℃以上に上げることも可能ではあるが、装置が大型化したり、染色途中での色調の確認ができないなどの問題点も多い。
また、水ベースの染色ポットは、90℃前後の温度に加温しておく必要があるため、時間の経過とともに、水や染色キャリアなどが揮発してしまい、染色特性が変化するという問題もある。
さらに、ハードコート層を形成したプラスチックレンズを染色する場合、一般的にハードコート層に用いられる材料は染色が困難であるため、吸水性の高い化合物が添加されている。したがって、ハードコート層としての硬度が低下し、耐擦傷性が悪化するという問題がある。
そこで、本発明の目的は、短時間で染色可能なプラスチックレンズの染色方法を提供することにある。
本発明のプラスチックレンズの染色方法は、染料を添加した油浴中にプラスチックレンズを浸漬することを特徴とする。
この発明によれば、染色ポットをオイルベースとすることにより、吸水性の低い材料からなるプラスチックレンズの染色性を向上させることができる。したがって、染色時間を短縮することができる。
また、オイルベースであれば染色ポットの温度を高温、例えば100℃以上にすることができるため、染色性がさらに向上する。したがって、プラスチックレンズの染色時間を大幅に短縮することができ、製造性に優れる。
そして、高温下で染色を行っても染色後のプラスチックレンズの表面は均一にきれいに染色されるため、プラスチックレンズとしての品質を維持することができる。
また、オイルは揮発しにくいため、時間が経過しても染色ポットの染色特性の変化を抑制することができる。
本発明のプラスチックレンズの染色方法において、前記プラスチックレンズがエピスルフィド系の材料であることが好ましい。
エピスルフィド系の材料は吸水性が低く親油性が強いため、水ベースの染色ポットでは染色しにくく、染色時間を長くしてもなかなか染色しなかった。
この発明では、オイルベースの染色ポットを使用することにより、エピスルフィド系樹脂のレンズ基材が染色しやすくなり、染色時間を大幅に短縮することができる。したがって、エピスルフィド系樹脂のレンズ基材に対する染色時間を大幅に短くすることができるので、製造性に優れている。
本発明のプラスチックレンズの染色方法において、前記プラスチックレンズは、単層または2層以上からなるハードコート層を有していることが好ましい。
ハードコート層は、一般的に、吸水性が低く親油性が強い。
この発明では、オイルベースの染色ポットを使用することにより、ハードコート層が染色しやすくなる。したがって、ハードコート層が形成されたレンズ基材の染色時間を大幅に短縮することができる。
また、従来の方法においてハードコート層を染色可能とするために添加されていた吸水性の高い化合物を添加する必要がない。したがって、ハードコート層の本来の硬度を維持することができ、耐擦傷性に優れた染色レンズを提供することができる。
本発明のプラスチックレンズの染色方法において、前記ハードコート層は、下記(A)および(B)を含むことが好ましい。
(A)無機酸化物微粒子
(B)一般式(1)で表される有機ケイ素化合物
SiX 3−n (1)
式中、Rは重合可能な反応基を有する有機基であり、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり、Xは加水分解基であり、nは0または1である。
成分(A)としては、例えば、酸化チタン及び酸化スズ、又は酸化チタン、酸化スズ及び酸化ケイ素からなるルチル型の結晶構造を有する複合酸化物を含む平均粒径1〜200nmの無機酸化物微粒子を挙げることができる。ハードコート層は、干渉縞を抑制する目的で、高い屈折率が要求される。ハードコート層の高屈折率化への対応は、高屈折率を有する無機酸化物微粒子を用いる方法が一般的であり、具体的には、Al、Sn、Sb、Ta、CE、La、FE、Zn、W、Zr、In、Tiから選ばれる1種又は2種以上の金属の酸化物(これらの混合物を含む)、及び/又は2種以上の金属を含む複合酸化物からなる無色透明の無機酸化物微粒子が用いられる。このうち、屈折率、透明性、分散安定性等の点から酸化チタンを含有する無機酸化物微粒子が一般的に用いられる。
成分(B)である有機ケイ素化合物は、いわゆるシランカップリング剤であり、ハードコート層のバインダー樹脂としての役割を果たす。上記式(1)で示す化合物を用いると、ハードコート層における無機酸化物微粒子の強固なバインダー樹脂となるため好ましい。
本発明のプラスチックレンズの染色方法において、前記染料は、油溶染料であることが好ましい。
この発明では、オイルベースの染色ポットに油溶染料を添加して染色液を調整する。
油溶染料はオイルに分散しやすいため、オイル中に均等に分散し、染料としての機能を十分に発揮することができる。
また、従来から水ベースで染色しにくいレンズ基材またはハードコート層は、吸水性が低く親油性が強いものがほとんどである。油溶染料は、親油性の強いレンズ基材またはハードコート層に染み込みやすいため、染色性が向上する。すなわち、染色時間を短縮することができる。
本発明のプラスチックレンズの染色方法において、前記油浴は、前記プラスチックレンズを浸漬したときの温度が100℃以上であることが好ましい。
この発明では、オイルベースの染色ポットの温度を100℃以上に設定して染色を行う。すなわち、染色ポットをオイルベースとしたことにより、100℃以上の温度に設定することが可能となった。なお、レンズ基材の染色性は、高温であるほど向上する。
したがって、より高温で染色を行うことができるため、レンズ基材の染色時間を大幅に短縮することができる。
本発明のプラスチックレンズの染色方法において、前記油浴に使用されるオイルは、シリコーンオイルであることが好ましい。
染色ポットに使用するオイルとしては、植物油、鉱物油、合成油等を使用することができる。これらの中でも、シリコーンオイルは、油の耐熱性および粘度の安定性に優れている。
したがって、シリコーンオイルを使用することにより、より染色ポットの温度をより高温に設定することができ、染色時間をより短縮することができる。また、高温によるオイルの劣化が特に小さく、長時間にわたって染色ポットの染色性を安定させることが可能となる。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態におけるプラスチックレンズの染色方法により染色されるレンズは、眼鏡用のプラスチックレンズである。
[レンズの構成]
レンズは、レンズ基材の表面にハードコート層を備えている。なお、レンズ基材とハードコート層との間にプライマー層を備えていてもよい。
〔レンズ基材の構成〕
レンズ基材の材質としては、特に限定されないが、屈折率が1.6以上の透明なプラスチック素材を使用することがレンズの軽量化の点で好ましい。例えば、イソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物と、メルカプト基を持つ化合物を反応させることによって製造されるチオウレタン系プラスチックや、エピスルフィド基を持つ化合物を含む原料モノマーを重合硬化して製造されるエピスルフィド系プラスチックをレンズ基材の素材として使用することができる。
チオウレタン系プラスチックの主成分となるイソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物としては、公知の化合物が何ら制限なく使用できる。
イソシアネート基を持つ化合物の具体例としては、エチレンジイソシアナート、トリメチレンジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、m−キシリレンジイソシアナート等が挙げられる。
また、メルカプト基を持つ化合物としても、公知の物を用いることができる。例えば、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール等の脂肪族ポリチオール、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン等の芳香族ポリチオールが挙げられる。また、プラスチックレンズの高屈折率化のためには、メルカプト基以外にも、硫黄原子を含むポリチオールがより好ましく用いられ、その具体例としては、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2−ビス((2−メルカプトエチル)チオ)−3−メルカプトプロパン等が挙げられる。
また、エピスルフィド系プラスチックの原料モノマーとして用いられる、エピスルフィド基を持つ化合物の具体例としては、公知のエピスルフィド基を持つ化合物が何ら制限なく使用できる。既存のエポキシ化合物のエポキシ基の一部あるいは全部の酸素を硫黄で置き換えることによって得られるエピスルフィド化合物が挙げられる。また、プラスチックレンズの高屈折率化のためには、エピスルフィド基以外にも硫黄原子を含有する化合物がより好ましい。具体例としては、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、ビス−(β−エピチオプロピル)スルフィド、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、ビス−(β−エピチオプロピル)ジスルフィド等が挙げられる。
実際に、チオウレタン系プラスチックレンズやエピスルフィド系プラスチックレンズを重合する際には、上記に挙げた原料モノマーを1種、または2種以上を秤量して混合し、さらに必要に応じて、原料モノマーと反応可能な、他の官能基を持つ化合物を添加しても良い。その他に、必要に応じて紫外線吸収剤、酸化防止剤、内部離型剤、ブルーイング剤等を添加することも可能である。さらに、重合触媒等を添加し、混合して均一にし、プラスチックレンズ用の重合性組成物を調合する。
このようにして調合した重合性組成物を、ガラスモールド等に囲まれた空隙に注入し、密閉した後、熱風オーブン等に入れ、10〜30℃程度の温度からスタートし、100℃〜150℃程度まで10時間〜100時間かけて昇温して重合を完了させる。その後、室温まで冷却し、ガラスモールド等からプラスチックレンズを離型することで、各種プラスチックレンズを製造することができる。重合後のプラスチックレンズは内部応力を緩和させるために、必要に応じて、80℃〜130℃で10分〜5時間程度、アニール処理を行うこともある。
これらのような高屈折率の素材は、一般に難染色性であるが、これらの中でも特にエピスルフィド系のレンズ基材は染色しにくい。本発明においては、後述するようにオイルベースの染色ポットで染色を行うため、カラーレンズ用のレンズ基材として好適に用いることができる。
〔ハードコート層の構成〕
ハードコート層に用いられる組成物は特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、以下の式(1)で示される有機ケイ素化合物をバインダー剤として、ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する無機酸化物粒子を含有しているものを使用することができる。
SiX 3−n (1)
式中、R1は重合可能な反応基を有する有機基であり、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり、X1は、加水分解性基であり、nは0または1である。
具体的には、R1は、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、1−メチルビニル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基等の重合可能な反応基を有する。また、Xは、加水分解可能な官能基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等があげられる。
上記式(1)で表される有機ケイ素化合物としては、例えば、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、アリルトリアルコキシシラン、アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン等があげられる。
この有機ケイ素化合物は、2種類以上を混合して用いてもよい。
無機酸化物粒子は、酸化チタンのみを含有するものであってもよく、酸化チタンと他の無機酸化物とを含有するものであってもよい。例えば、酸化チタンと、Si、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In等金属の酸化物を混合して使用してもよい。さらに、無機酸化物粒子は、酸化チタンと他の無機酸化物との複合粒子であってもよい。複合粒子を使用する場合には、例えば、Si、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In等の金属の酸化物と、酸化チタンとが複合したものを使用すればよい。
さらに、ハードコート層には必要に応じて、過塩素酸塩類、金属アセチルアセトネート類などの硬化触媒を添加することもできる。
硬化触媒としては、例えば、過塩素酸、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸マグネシウム等の過塩素酸類、Cu(II)、Zn(II)、Co(II)、Ni(II)、Be(II)、Ce(III)、Ta(III)、Ti(III)、Mn(III)、La(III)、Cr(III)、V(III)、Co(III)、Fe(III)、Al(III)、Ce(IV)、Zr(IV)、V(IV)等を中心金属原子とするアセチルアセトナート、アミン、グリシン等のアミノ酸、ルイス酸、有機酸金属塩等が挙げられる。
これらの成分からなるコーティング組成物は、必要に応じて、溶剤で希釈して用いることができる。溶剤としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、芳香族類等の溶剤が用いられる。また、必要に応じて、少量の金属キレート化合物、界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、分散染料、油溶染料、顔料、フォトクロミック化合物、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール系等の耐光耐熱安定剤等を添加し、コーティング組成物の塗布性、硬化速度および硬化後の被膜性能を改良することもできる。
また、コーティング組成物の塗布・硬化方法としては、ディッピング法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、あるいは、フローコート法によりコーティング組成物を塗布した後、40〜200℃の温度で数時間加熱乾燥することにより、被膜を形成する。なお、ハードコート層の膜厚は、0.05〜30μmであることが好ましい。膜厚が0.05μm未満では、ハードコート層としての基本性能が実現できない。また、膜厚が30μmを越えると表面の平滑性が損なわれたり、光学歪みが発生してしまう場合がある。なお、ハードコート層の屈折率は、干渉縞の発生を避けるため、基材、プライマー層の屈折率に合わせることが好ましい。
[染色液の調整]
次に、染色液の調整について説明する。
染色液には、染料と、媒体となるオイルと、が使用される。
染料としては、特に限定されず、油溶染料、分散染料などを使用することができる。これらの中でも、油浴中での染色を行うという点から、特に油溶染料を用いることが好ましい。
油溶染料としては、アンスラキノン系、モノアゾ系、複素環系等の多くのタイプが挙げられる。具体的には、「Diaresin Blue J(C.I.Solvent Blue 33)」(商品名)、「Diaresin Blue G(C.I.Solvent Blue 90)」(商品名)、「Diaresin Blue N(C.I.Solvent Blue 94)」(商品名)、「Diaresin Green C(C.I.Solvent Green 26)」(商品名)、「Diaresin Red A(C.I.Solvent Red 179)」(商品名)、「Diaresin Red S(C.I.Solvent Red 152)」(商品名)、「Diaresin Violet A(C.I.Solvent Violet 32)」(商品名)、「Diaresin Yellow F(C.I.Solvent Yellow 104)」(商品名)、「Diaresin Orange G(C.I.Solvent Orange 68)」(商品名)、(以上、三菱化学(株)製)、「OIL BLUE613(C.I.Solvent Blue 5)」(商品名)、「OIL BLUE630(C.I.Solvent Blue 36)」(商品名)、(以上、オリエント化学工業(株)製)等が挙げられる。これらの染料は、目的の色に応じて、単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。
本発明における染料の使用方法としては、通常、オイル1リットルに対して、染料の合計量が0.01g以上50g以下の範囲となるように添加することが好ましい。染料が0.01g未満であると、染料の量が少なすぎて目的の色に染色することができない。また、染料が50gを超えると、レンズに染色ムラが発生するおそれがある。
オイルとしては、特に種類は限定されず、植物油、鉱物油、合成油等が使用できる。中でも、油の耐熱性、粘度の安定性などの観点から、シリコーンオイルが好ましい。
シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、変性シリコーンオイル等があり、耐熱性と粘度の観点で適宜選択することが可能である。例えば、「TSF451−20」(商品名)、「TSF451−30」(商品名)、(以上、東芝シリコーン(株)製)、「KF965−1−100」(商品名)、「KF968−1−100」(商品名)(以上、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
また、染色液には、さらに、染色キャリア剤を添加することもできる。
染色キャリア剤としては、例えば、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等の芳香環を持ったアルコール類、p−フェニルフェノール、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノールなどのフェニルフェノール類が挙げられる。
染色キャリア剤は、染色浴中のオイルに対して0.1質量%以上5質量%以下の範囲内で添加される。染色キャリアの添加量が0.1質量%未満であると、染色キャリアの濃度が極端に薄くなるため、染色キャリアとしての効果を発揮できず、染色性が悪くなってしまう。また、染色キャリアの添加量が5質量%を超えると、レンズに染色ムラが発生するおそれがある。
さらに、必要に応じて、酸化防止剤、消泡剤、界面活性剤等の各種添加剤を添加することも可能である。
[染色方法]
オイルバスにシリコーンオイルを1リットル、油溶染料として「Diaresin Blue J」(商品名、三菱化学(株)製)5gを添加し、オイルバスの温度を100℃に設定し、加温しながら、オイルバスの温度が安定するまで十分に攪拌して染色液を調整する。
そして、染色を開始する直前にオイルバスの温度を120℃に設定し、オイルバスの温度が安定した後に、エピスルフィド系のレンズ基材をオイルバスの染色液に完全に沈める。10分後、レンズ基材をオイルバスから取り出し、染色レンズが作製される。
以上の本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
(1)本実施形態では、オイルベースの染色液を調整している。
これにより、温度を高温、例えば100℃以上に加温することができる。一般に、温度が高いほどレンズ基材は染色されやすいので、レンズ基材の染色時間を大幅に短縮することができる。
(2)また、オイルベースの染色液として油溶染料を使用している。
ハードコート層は親油性が強いため、油溶染料を用いることで染色しやすくなる。そして、オイルベースの染色液により高温に加温することができるため、染色時間をより短縮することができる。
(3)さらに、水ベースの染色液では染色しづらかったエピスルフィド系のレンズ基材は親油性であるため、油溶染料によって染色しやすい。したがって、エピスルフィド系のレンズ基材に対して、染色時間の大幅な短縮という優れた効果を奏することができる。
(4)ハードコート層を、(A)無機酸化物微粒子と(B)有機ケイ素化合物とを含有する組成物で形成している。
したがって、これらの成分(A)および(B)を含有するハードコート層が形成されたレンズ基材は、硬度が高く、耐擦傷性に優れている。
(5)染色ポットのオイルとして、シリコーンオイルを使用した。シリコーンオイルは、耐熱性に優れ、粘度も安定していることから、高温にしても安定した染色特性を維持することができる。
[本発明の変形例]
本発明は、以上述べた実施形態には限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で種々の改良および変形を行うことが可能である。
例えば、前記実施形態では、表面にハードコート層を形成したレンズ基材を使用したが、ハードコート層を形成していないレンズ基材に対してそのまま染色することもできる。
特に、エピスルフィド系樹脂からなるレンズ基材は親油性が強いため、染色時間を大幅に短縮することができる。
なお、チオウレタン系樹脂からなるレンズ基材に対しても、染色ポットの温度を高温(100℃以上)にすることができるので、染色時間を短縮することができる。
また、前記実施形態では、レンズ基材の上に直接ハードコート層を形成したが、レンズ基材とハードコート層との密着性の向上、耐衝撃性の向上を目的として、レンズ基材の上にプライマー層を形成してもよい。
プライマー層としては、例えば、極性基を有する有機樹脂ポリマーや酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化珪素等の金属酸化物微粒子を含むことが好ましい。
極性基を有する有機樹脂ポリマーとしては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂等の各種樹脂を使用することが可能である。この内、硫黄原子を含むレンズ基材に対する密着性とフィラーとなる金属酸化物微粒子の分散性の点から、ポリエステル樹脂を好ましく用いることができる。
さらに、前記実施形態では、油溶染料を用いたが、水溶性の染料を用いてもよい。ただし、この場合は界面活性剤などの添加剤を添加する必要がある。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
まず、以下に示す方法でレンズ基材(L1、L2)を作成し、得られたレンズ基材の表面にハードコート層を形成して、ハードコート層付きのレンズ基材(L3、L4)を作成した。
そして、以下の実施例1〜10および比較例1〜7に示す染色浴を調整し、ハードコート層付のレンズ基材を染色浴中に浸漬することにより染色を行い、染色性の評価を行った。
[1.レンズ基材L1の作製]
(1−1)原料モノマーの調合
撹拌子を備えたガラス容器に、レンズ原料モノマーとして、ビス−(2,3エピチオプロピル)ジスルフィドを90質量部、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、あるいは、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、あるいは、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンのいずれか1種、または、これら2種あるいは3種を混合した化合物を10質量部、紫外線吸収剤(ジプロ化成工業製「SEESORB701」)1.0質量部を添加し、十分に撹拌して、完全に溶解させた。その後、この混合液に、触媒としてN,N−ジメチルシクロヘキシルアミン 0.02質量部、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン 0.10質量部を添加し、20℃で撹拌して均一液とした。
(1−2)注型重合
対向する2枚のガラス型を封止用テープで保持してなるレンズモールドの中に、前記(1−1)で得られた混合液(モノマー)を注入した。レンズモールドを温風加熱炉により30℃から130℃まで20時間かけて昇温し、130℃で2時間保持した後、2時間で70℃まで放冷させて、重合体をレンズモールドから離型し、エピスルフィド系樹脂系のレンズ基材L1を得た。レンズ基材L1の屈折率をアッベ屈折率計で測定したところ、1.74であった。
[2.レンズ基材L2の作製]
(2−1)原料モノマーの調合
撹拌子を備えたガラス容器に、m−キシリレンジイソシアネートを50.6質量部、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、あるいは、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、あるいは、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンのいずれか1種、または、これら2種あるいは3種を混合した化合物を49.4質量部、紫外線吸収剤(ジプロ化成工業製「SEESORB701」)を1.2質量部、および内部離型剤(Stepan社製「ゼレックUN」)を0.1質量部入れた後、十分に撹拌・混合して均一に分散または溶解させた。その後、この混合液にさらにジブチル錫ジクロライド0.005質量部とN,N−ジメチルシクロヘキシルアミン0.005質量部を添加し、30℃に保持しながら十分に撹拌して溶解させた後、5mmHgに減圧して撹拌を続けながら30分間脱気を行った。
(2−2)注型重合
対向する2枚のガラス型を封止用テープで保持してなるレンズモールドの中に、前記(1)で得られた混合液(モノマー)を注入した。レンズモールドを温風加熱炉により30℃から120℃まで20時間かけて昇温し、120℃で0.5時間保持した後、2時間で70℃まで放冷させて、重合体をレンズモールドから離型し、チオウレタン樹脂系のレンズ基材L2を得た。レンズ基材L2の屈折率をアッベ屈折率計で測定したところ、1.67であった。
[3.ハードコート層付きレンズ基材L3の作製]
(3−1)プライマー層用組成物の調整およびプライマー層の形成
市販のポリエステル樹脂「ペスレジンA−160P」(商品名、高松油脂製、水分散エマルション、固形分濃度25%)100部に酸化チタン系複合微粒子「オプトレイク1130F−2(A−8)」(商品名、触媒化成工業製、Fe/TiO=0.02、SiO/TiO=0.11、粒径10nm、固形分濃度30%、分散溶媒メチルアルコール、表面処理テトラエトキシシラン)84部、希釈溶剤としてメチルアルコール640部、レベリング剤としてシリコーン系界面活性剤「SILWET L−77」(商品名、日本ユニカー製)1部を混合し、3時間攪拌し、これをプライマー層用組成物とした。
このプライマー層用組成物を、レンズ基材L1上に浸漬法(引き上げ速度20cm/min)にて塗布し、塗布したレンズを100℃で15分間加熱硬化処理してレンズ上に膜厚0.8〜0.9μmのプライマー層を形成させた。
(3−2)ハ一ドコート層用組成物の調製およびハードコート層の形成
ブチルセロソルブ100部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン155部を混合し十分に撹拌して均一にした。この混合液に0.1N塩酸水溶液43部を撹拌しながら滴下し、さらに室温で4時間撹拌後、冷蔵庫に入れて一昼夜熟成させた。
その後、シリコン系界面活性剤「L−7001」(商品名、日本ユニカー製)0.3部を添加して撹拌した後、メタノール分散二酸化チタン/二酸化ジルコニウム/二酸化ケイ素複合微粒子ゾル「オプトレイク1120Z・S25−A8」(商品名、触媒化成工業製、固形分濃度20重量%)700部を混合して、十分に撹拌した。
さらに、Fe(III)アセチルアセトネート0.2部を添加した後、室温で3時間撹拌し、その後冷蔵庫で一昼夜熟成させた物をハードコート層用組成物として使用した。
このハードコート層組成物を、(1)で得られたプライマー層を形成したレンズ基材L1上に浸漬法(引き上げ速度18cm/min)にて塗布し、塗布したレンズを80℃で20分間風乾した後、125℃で120分間焼成を行い、プライマー層上に膜厚2.0〜2.2μm、屈折率1.67のハードコート層を形成した。
このようにして、レンズ基材L1上に、プライマー層、ハードコート層の2層構造をもった表面処理を行い、ハードコート層付きのレンズ基材L3を作製した。
[4.ハードコート層付きレンズ基材L4の作製]
レンズ基材L2を用いて、前述の(3−2)と同様のハードコート層用組成物を調整し、同条件で塗布硬化を行った。
レンズ基材L2上に作製されたハードコート層は、膜厚1.8〜2.1μm、屈折率1.67であった。このようにして、レンズ基材L2上に、単層のハードコート層を付与し、ハードコート層付きのレンズ基材L4を作製した。
[5.染色浴の作製]
(5−1)染色浴A
市販のマグネチックスターラー付きのオイルバスを用意し、オイルバス内をシリコーンオイル「KF968−1−100」(商品名、信越シリコーン(株)製)で満たした。さらに、オイルバスの内側に1リットルのビーカーを入れ、ビーカー内部に、シリコーンオイル「KF−968−1−100」(商品名、信越シリコーン(株)製)を1リットル、油溶染料として、「Daiaresin Blue J」(商品名、三菱化学(株)製)4gを添加した。オイルバスの温度を100℃に設定し、加温しながら、撹拌子を入れて十分に撹拌して、オイルバスの温度が安定するのを待ち、染色浴Aを作製した。レンズを染色する際には、別に示す所定の温度まで、オイルバスの設定値を変更し、温度が安定するのを待って、染色を行った。
(5−2)染色浴B
染色浴Aと同様の染色浴を作製し、油溶染料として、「Daiaresin Blue J」(商品名、三菱化学(株)製)2g、「Diarejin Red S」(商品名、三菱化学(株)製)1g、「Diaresin Yellow F」(商品名、三菱化学(株)製)1gを添加した。以下、染色浴Aと同様の操作を行い、染色浴Bを作製した。
(5−3)染色浴C
オイルバス、ビーカーは染色浴Aと同様のものを用意し、ビーカーの内部に、大豆油(関東化学(株)製)1リットルを入れた以外は、染色浴Aと同様の操作を行い、染色浴Cを作製した。
(5−4)染色浴D
市販のマグネチックスターラー付きのウォーターバスを用意し、ウォーターバス内を水でみたした。さらに、ウォーターバスの内側に1リットルのビーカーを入れ、ビーカー内部に、純水1リットルを入れた。この中に、界面活性剤として、「ネオノール20」(商品名、山川薬品工業製)を5cc添加し、次に、染色浴Aと同様の油溶染料を添加した。ウォーターバスの温度設定は95℃として温度が安定するまで待ち、撹拌子で、ビーカー内の水溶液を撹拌して、染色浴Dを作製した。
[実施例1〜10、比較例1〜7]
以下の表1に示すレンズ基材、染色浴、温度、時間の条件下で、レンズ基材を染色浴中に浸漬することで、レンズの染色を行った。
[評価方法]
上記実施例1〜10および比較例1〜7において、染色後のレンズの透過率をBPIフォトメーターを用いて測定し、染色後の透過率の値から、以下のように染色性の評価を行った。
(染色後の透過率による評価)
◎ :濃い色に着色している(BPIフォトメーターで50以下)
○ :中程度の濃度に着色している(同様の測定で51〜70)
△ :薄く着色している (同様の測定で71〜80)
× :全く着色していない、または極薄く着色している(同様の測定で81以上)
なお、上記のように評価する際、判断基準を以下のようにした。
60分程度の染色時間で、フォトメーター測定50以下にならないと、実際の工程では、濃い色調まで染色することは時間がかかりすぎてしまい、問題あり。51〜70なら、長時間(4〜5時間以上)染色することで何とか対応も可能だが、△の71以上では、例え長時間染色しても、濃い色まで対応することは難しい。
評価結果を以下の表1に示す。
Figure 2009237075
表1に示すように、実施例1〜4、8はエピスルフィド系樹脂のレンズ基材に対して、油浴と油溶染料を用いているため、良好な染色結果が得られている。また、実施例1〜3を見ると、染色温度が高いほど染色性が良好であることがわかる。
実施例5〜7は、チオウレタン系樹脂のレンズ基材に対して、油浴と油溶染料を用いているため、良好な染色結果が得られている。
実施例9、10はハードコート層付きのレンズ基材に対して染色を行ったが、同様に良好な染色結果が得られている。
一方、比較例1、2は、染色温度が100℃未満であるため、実施例1および4に比べて染色性が劣っている。
比較例3〜7は、温水による染色液で染色実験を行ったため、いずれも染色スピードが極端に遅くなり、ほとんど染色されていない。また、油溶染料が温水中で均一に分散せず、レンズに染色ムラが発生した。特に、比較例4、6のように、染色時間を10倍にしても、大幅な改善は得られなかった。
本発明は、光学レンズや眼鏡レンズに利用することができる。

Claims (7)

  1. 染料を添加した油浴中にプラスチックレンズを浸漬することを特徴とするプラスチックレンズの染色方法。
  2. 請求項1に記載のプラスチックレンズの染色方法において、
    前記プラスチックレンズがエピスルフィド系の材料であることを特徴とするプラスチックレンズの染色方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載のプラスチックレンズの染色方法において、
    前記プラスチックレンズは、単層または2層以上からなるハードコート層を有していることを特徴とするプラスチックレンズの染色方法。
  4. 請求項3に記載のプラスチックレンズの染色方法において、
    前記ハードコート層は、下記(A)および(B)を含むことを特徴とするプラスチックレンズの染色方法。
    (A)無機酸化物微粒子
    (B)一般式(1)で表される有機ケイ素化合物
    SiX 3−n (1)
    (式中、Rは重合可能な反応基を有する有機基であり、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり、Xは加水分解基であり、nは0または1である。)
  5. 請求項1から請求項4のいずれかに記載のプラスチックレンズの染色方法において、
    前記染料は、油溶染料であることを特徴とするプラスチックレンズの染色方法。
  6. 請求項1から請求項5のいずれかに記載のプラスチックレンズの染色方法において、
    前記油浴は、前記プラスチックレンズを浸漬したときの温度が100℃以上であることを特徴とするプラスチックレンズの染色方法。
  7. 請求項1から請求項6のいずれかに記載のプラスチックレンズの染色方法において、
    前記油浴に使用されるオイルは、シリコーンオイルであることを特徴とするプラスチックレンズの染色方法。
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