JP2004170500A - プラスチックレンズ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プラスチックレンズ基材と、プラスチックレンズ基材上に形成されたプライマー層と、プライマー層上に形成されたハードコート層とを有するプラスチックレンズにおいて、ハードコート層が、(A)粒径1〜100ミリミクロンの無機微粒子、(B)特定の一般式(1)で示される有機ケイ素化合物、(C)多官能性エポキシ化合物、(D)硬化触媒を含有するハードコート組成物から形成されているプラスチックレンズとする。
【選択図】 無し
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチックレンズに関し、特に、染色が可能なハードコート層を有すると共に、耐衝撃性に優れたプラスチックレンズに関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックレンズはガラスレンズに比べ軽量で、成形性、加工性、染色性が良く、割れにくく安全性も高いため、眼鏡レンズの分野で広く用いられている。
【0003】
しかし、プラスチックレンズは軟質で非常に傷つきやすい為、プラスチックレンズの表面に硬度の高いハードコート層をもうけ、耐擦傷性の向上をはかっている。さらには表面反射を防止する目的でハードコート層の表面に無機物質を蒸着した反射防止膜をもうけている場合もある。こうしたプラスチックレンズの表面処理層により、プラスチックレンズの品質は高いものとなっている。
【0004】
ところが、ハードコート層や反射防止膜の表面処理を施したプラスチックレンズは、いっさい表面処理層を有さないプラスチックレンズと比較して、耐衝撃性が低下するという欠点がある。特にレンズの中心厚が薄いマイナス度数レンズの場合は耐衝撃性が著しく低下し、割れやすいという欠点をもつ。これを改善するために中心厚を厚くすると、レンズの周辺部の厚さ(コバ厚)は非常に厚くなり、外観上好ましくない。またレンズの重量も重くなり、眼鏡の使用感は.低下し、実用上好ましくない。近年は屈折率の高いプラスチックレンズ基材の開発が進み、これによりレンズの中心厚、コバ厚を薄くすることが可能であるが、屈折率の高いプラスチックレンズ基材は耐衝撃性が低く、割れやすいという欠点をもつ。
【0005】
この課題を解決するために、プラスチックレンズ基材とハードコート層との間にプライマー層を設けることが提案されている。もともとプライマー層はプラスチックレンズ基材とハードコート層との間の密着性を改善することを目的とする層であるが、このプライマー層として特定の樹脂を選択することにより、プラスチックレンズの耐衝撃性を改善することができる。
このようなプライマー層については、次のような先行技術文献がある。
【0006】
【特許技術文献1】
特開昭61−114203号公報
【特許技術文献2】
特開昭63−87223号公報
【特許技術文献3】
特開昭63−141001号公報
【特許技術文献4】
特開平3−109502号公報
【特許技術文献5】
特開2000−144048号公報
【特許技術文献6】
特開2002−55202号公報
【0007】
また、ハードコート層には、染色が可能な可染タイプと染色ができない非染タイプがある。可染タイプのハードコート層は、染色していない完成したプラスチックレンズが販売者に納入された後、購入者の希望に応じてハードコート層を染色することにより、プラスチックレンズを自由に染色できる利点がある。
【0008】
そのため、仕向先によっては、可染タイプのハードコート層を有するプラスチックレンズが要望されている。これに加えて、耐衝撃性に優れていることも要望されている。
【0009】
このように、可染タイプのハードコート層を有し、かつ耐衝撃性に優れたプラスチックレンズが市場で要請されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したプライマー層をプラスチックレンズ基材と可染タイプのハードコート層との間に介在させ、染色性を有すると共に耐衝撃性を改善したプラスチックレンズには、次のような欠点がある。
【0011】
まず、可染タイプのハードコート層は、染色成分を含有するため、硬度が低く、耐擦傷性が非染タイプのハードコート層と比較して劣るという問題がある。染色成分の配合量を少なくすれば硬度は増すが、染色性が劣ってしまう。
【0012】
また、染色する際にハードコート層は高温の染色液に長時間浸漬される場合がある。この際に、耐水性、耐温水性が劣るハードコート層ではクラックが発生してしまうという問題がある。
【0013】
更に、プライマー層とハードコート層との密着性、更にハードコート層と反射防止膜との密着性が不十分であり、その結果、プラスチックレンズの耐久性が劣るという問題がある。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、プライマー層を設けて耐衝撃性に優れると共に、可染タイプのハードコート層の染色性を保ちながら耐擦傷性、耐水性、耐久性の向上を図ることができるプラスチックレンズを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するため、鋭意検討した結果、プラスチックレンズ基材上に形成されたプライマー層と、プライマー層上に形成されたハードコート層とを有するプラスチックレンズにおけるハードコート層を、無機微粒子、ビヒクルとしての有機ケイ素化合物、染色成分としての多官能性エポキシ化合物及び硬化触媒を含有するハードコート組成物を用いて形成することが有効であることを見い出した。
【0016】
即ち、可染タイプのハードコート層を単層でプラスチックレンズ基材上に形成した場合よりも、プライマー層を介してハードコート層をプラスチックレンズ基材上に形成した場合の方が、可染タイプのハードコート層の染色性が非常に高くなる。そのため、プライマー層を設けた場合は、可染タイプのハードコート層中の染色成分を減らすことが可能で、十分な染色性を確保した上で、より硬さ、即ち耐擦傷性の向上したプラスチックレンズが得られる。この場合、多官能性エポキシ化合物のハードコート組成物の固形分中における含有量は、0.1〜25重量%の範囲で十分な染色性が得られる。
【0017】
染色成分としての多官能性エポキシ化合物は、ハードコート層の耐水性、耐温水性を向上させることが可能であり、染色時のクラックの発生を効果的に抑制することができる。
【0018】
また、多官能性エポキシ化合物を配合したハードコート層は、特に水性化アクリル−ウレタン樹脂またはポリエステル系熱可塑性エラストマーを主成分とするプライマー層との密着性に優れるため、耐久性に優れたプラスチックレンズとすることができる。また、多官能性エポキシ化合物の分子中に水酸基が存在すると、プライマー層との密着性や染色性が向上することが認められる。従って、一分子中に一個以上の水酸基を含む多官能性エポキシ化合物を用いることによって、この多官能性エポキシ化合物の配合量を更に減らすことが可能であるため、更に耐擦傷性を向上させることができる。更に、多官能性エポキシ化合物を含むハードコート層は、プラスチックレンズの耐衝撃性を改善することができる。
【0019】
水性化アクリル−ウレタン樹脂またはポリエステル系熱可塑性エラストマーを主成分とするプライマー層は、プラスチックレンズに優れた耐衝撃性を付与できると共に、耐水性、耐候性が良好である。また、多官能性エポキシ化合物を含有するハードコート層との密着性が特異的に良好である。
【0020】
従って、請求項1記載の発明は、プラスチックレンズ基材と、前記プラスチックレンズ基材上に形成されたプライマー層と、前記プライマー層上に形成されたハードコート層とを有するプラスチックレンズにおいて、前記ハードコート層が、下記の成分(A)粒径1〜100ミリミクロンの無機微粒子、(B)一般式(1)
【0021】
【化3】
【0022】
(式中、R1は重合可能な反応基を有する有機基、R2は炭素数1〜6の炭化水素基、Xは加水分解性基であり、nは0または1である。)で表される有機ケイ素化合物、(C)多官能性エポキシ化合物、(D)硬化触媒、を含有するハードコート組成物から形成されていることを特徴とするプラスチックレンズを提供する。
【0023】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のプラスチックレンズにおいて、前記ハードコート組成物の固形分中における前記多官能性エポキシ化合物の含有量が、0.1〜25重量%であることを特徴とするプラスチックレンズを提供する。
【0024】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のプラスチックレンズにおいて、前記プライマー層が、水性化アクリル−ウレタン樹脂を主成分とすることを特徴とするプラスチックレンズを提供する。
【0025】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2記載のプラスチックレンズにおいて、前記プライマー層が、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを主成分とすることを特徴とするプラスチックレンズを提供する。
【0026】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4いずれかに記載のプラスチックレンズにおいて、前記多官能性エポキシ化合物が、一分子中に一個以上の水酸基を含むことを特徴とするプラスチックレンズを提供する。
【0027】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5いずれかに記載のプラスチックレンズにおいて、前記ハードコート層上に反射防止膜を有することを特徴とするプラスチックレンズを提供する。
【0028】
請求項7記載の発明は、プラスチックレンズ基材にプライマー層を形成する工程と、前記プライマー層上に下記の成分(A)粒径1〜100ミリミクロンの無機微粒子、(B)一般式(1)
【0029】
【化4】
【0030】
(式中、R1 は重合可能な反応基を有する有機基、R2 は炭素数1〜6の炭化水素基、Xは加水分解性基であり、nは0または1である。)で表される有機ケイ素化合物、(C)多官能性エポキシ化合物、(D)硬化触媒、を含有するハードコート組成物からハードコート層を形成する工程とを有することを特徴とするプラスチックレンズの製造方法を提供する。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のプラスチックレンズ及びその製造方法の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0032】
本発明のプラスチックレンズは、上述したように、プラスチックレンズ基材上にプライマー層が形成され、プライマー層の上に可染タイプのハードコート層が形成された構造を有する。
【0033】
プラスチックレンズ基材としては、特に制限されないが、(メタ)アクリル樹脂をはじめとしてスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アリル樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)等のアリルカーボネート樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、イソシアネート化合物とジエチレングリコールなどのヒドロキシ化合物との反応で得られたウレタン樹脂、イソシアネート化合物とポリチオール化合物とを反応させたチオウレタン樹脂、分子内に1つ以上のジスルフィド結合を有する(チオ)エポキシ化合物を含有する重合性組成物を硬化して得られる透明樹脂等を例示することができる。
【0034】
プライマー層としては、プラスチックレンズの耐衝撃性を大幅に改善できる上、耐水性、耐光性に優れ、しかも、後述する可染タイプのハードコート層との密着性に優れる水性化アクリル−ウレタン樹脂又はポリエステル系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0035】
水性化アクリル−ウレタン樹脂とは、アクリルポリオールと多官能性イソシアネート化合物との共重合体、又はアクリルポリオールと水性化ポリウレタン樹脂との複合体であり、水に分散されたものである。
【0036】
アクリルポリオールは、水酸基をもつアクリルモノマーとこの水酸基をもつアクリルモノマーとアクリル酸エステル等の共重合可能なモノマーとの共重合アクリル樹脂である。水性化ポリウレタン樹脂は、水性ウレタン樹脂又は水分散型ポリウレタンともよばれ、多官能イソシアネート化合物とポリオールとの反応によって得られたウレタン樹脂が水溶液中にエマルジョンとして分散されているものである。
【0037】
アクリルポリオールの原料である水酸基をもつアクリルモノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、5,6−ジヒドロキシヘキシルメタクリレートなどが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
また、水酸基をもつアクリルモノマーと共重合可能なモノマーとしては、メチル(メタ)クリレート、エチル(メタ)クリレート、n−プロピル(メタ)クリレート、n−ブチル(メタ)クリレート、イソプロピル(メタ)クリレート、イソブチル(メタ)クリレート、n−アミル(メタ)クリレート、n−ヘキシル(メタ)クリレート、イソアミル(メタ)クリレート、トリフルオロエチル(メタ)クリレート、ベンジル(メタ)クリレート、2−n−ブトキシエチル(メタ)クリレート、2−クロロエチル(メタ)クリレート、sec−ブチル(メタ)クリレート、tert−ブチル(メタ)クリレート、2−エチルブチル(メタ)クリレート、シンナミル(メタ)クリレート、シクロヘキシル(メタ)クリレート、シクロペンチル(メタ)クリレート、2−エトキシエチル(メタ)クリレート、フルフリル(メタ)クリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)クリレート、3−メトキシブチル(メタ)クリレート、2−メトキシブチル(メタ)クリレート、2−ニトロ−2−メチルプロピル(メタ)クリレート、n−オクチル(メタ)クリレート、2−エチルヘキシル(メタ)クリレート、2−フェノキシエチル(メタ)クリレート、2−フェニルエチル(メタ)クリレート、フェニル(メタ)クリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)クリレート、テトラピラニル(メタ)クリレート、アクリル酸、メタクリル酸などのアクリル系単量体、さらにはアクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、メチルクロトナート、無水マレイン酸、スチレン、α−メチルスチレンなどのエチレン性単量体などが例示できる。なお、(メタ)クリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0039】
アクリルポリオールは、これらの水酸基をもつアクリルモノマーとこれと共重合可能なモノマーとを塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法等の公知の重合法で重合させることにより得ることができる。とりわけ、乳化重合法は、水性化アクリルポリオールを直接製造できることに加え、溶液重合では製造が困難な巨大分子量のものが得られる点で好ましい。
【0040】
また、自己乳化型の水性化ポリウレタン樹脂を得るために、アクリルポリオールと共に、分子中にカルボキシル基と少くとも2個の活性水素とを有する化合物を用いることが好ましい。このような化合物としては、例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸、ジオキシマレイン酸、2,2−ジメチロールブタン酸などを挙げることができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
一方、多官能イソシアネート化合物としては、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボランジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、t−シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等のジイソシアネートと、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート、リジンエステルトリイソシアネート、2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等のトリイソシアネートがあげられる。さらにこれらジイソシアネート、トリイソシアネートから得られるウレタン変性体が使用可能である。ウレタン変性体としては、アダクト体、ウレチジオン体(二量体)、イソシアヌレート体(三量体)、カルボジイミド、アロハネート変性体、ウレア変性ポリイソシアネート、ビュレット変性ポリイソシアネート、イソシアネートプレポリマー(セミプレポリマー)があげられる。さらにこれらポリイソシアネートをアセチルアセトン、ジメチルマロネート、ジエチルマロネート、2,4−ヘキサンジオン、3,5−ヘプタンジオン、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、プクノンオキシム、カプロラクタムなどのブロッキング剤でブロックしたブロックイソシアネートがあげられる。
【0042】
これらの中でも、脂肪族ジイソシアネート化合物及び脂環式ジイソシアネートが耐候性の面から好ましく、例えば、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボランジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0043】
水性化アクリル−ウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、アクリルポリオール、必要によりその他のポリオール、上記カルボキシル基と少なくとも2個の活性水素とを有する化合物、多官能イソシアネート化合物及び触媒を水酸基に対して化学量論的に過剰の多官能イソシアネート化合物を用いて有機溶媒中で反応させてカルボキシル基を有し、末端にイソシアネート基を有するアクリル変性ウレタンプレポリマーを製造した後、中和剤で中和して水性化し、この水性化ウレタンプレポリマーを水に分散させ、更に鎖伸長剤で高分子化して自己乳化型の水性化アクリル−ウレタン共重合組成物を得る方法がある。
【0044】
アクリルポリオール以外のポリオールとしては、例えばポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール及びポリエーテル系ポリオールを挙げることができ、これらのポリオールの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
ポリエステル系ポリオールとして、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンイソフタレートアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリ−3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート、1,6−ヘキサンジオールとダイマー酸の重縮合物などが挙げられる。
【0046】
また、ポリカーボネート系ポリオールとしては、例えばポリヘキサメチレンカーボネートジオールなどを挙げることができる。
【0047】
さらに、ポリエーテル系ポリオールとして、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの単独重合体、ブロック共重合体、及びランダム共重体などが挙げられる。
【0048】
上記触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、スタナスオクトエート、ジブチル錫−2−エチルヘキソエート、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリンなどの1種又は2種以上を用いることができる。
【0049】
また、中和剤としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニアを例示することができる。
【0050】
また、鎖伸長剤としては、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの低分子量多官能アルコール、さらには、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの低分子量ポリアミンなどが挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
カルボキシル基と少なくとも2個の活性水素とを有する化合物の配合量は、カルボキシル基の樹脂中の含有量が、0.3〜5重量%、特に0.5〜1.5重量%の範囲が好ましい。
【0052】
自己乳化型の水性化アクリル−ウレタン樹脂の市販品として、例えばネオステッカー400、ネオステッカー700、X−7200(いずれも日華化学株式会社製、商品名)を例示することができる。この水分散型ポリウレタンは、カルボキシル基と反応する水系オキサゾリン系架橋剤、水系(ポリ)カルボジイミド系架橋剤、水系エポキシ樹脂系架橋剤などの架橋剤を添加することにより、更に耐水性が向上する。
【0053】
また、カルボキシル基と少なくとも2個の活性水素を有する化合物を用いずに、アクリルポリオール、必要によりその他のポリオール、多官能イソシアネート化合物及び触媒を水酸基に対して化学量論的に過剰の多官能イソシアネート化合物を用いて有機溶媒中で反応させて末端にイソシアネート基を有するアクリル変性ウレタンプレポリマーを製造した後、このウレタンプレポリマーを界面活性剤を用いて水に分散させ、更に鎖伸長剤で高分子化して強制乳化型の水性化アクリル−ウレタン共重合組成物を得る方法がある。
【0054】
更に、水性化アクリル−ウレタン樹脂を得る他の方法としては、上記カルボキシル基と少なくとも2個の活性水素を有する化合物を上記割合で含むアクリルポリオールと多官能イソシアネート化合物とをイソシアネート基と活性水素基の当量比を0.8/1〜1.2/1の割合で反応させ、カルボキシル基を上記中和剤で中和した後、ポリウレタンを水分散化する方法がある。
【0055】
また、カルボキシル基と少なくとも2個の活性水素を有する化合物を用いずに、アクリルポリオールと多官能イソシアネート化合物とをイソシアネート基と活性水素基の当量比を0.8/1〜1.2/1の割合で反応させた後、得られたポリウレタン樹脂を界面活性剤を用いて水に分散させて水性化アクリル−ウレタン樹脂を得る方法がある。
【0056】
更にまた、例えば、水性化ポリウレタン樹脂の存在下でアクリルモノマーを乳化重合させてコア−シェル構造のアクリルポリオールと水性化ポリウレタン樹脂との複合体である複合エマルジョンを得る方法がある。
【0057】
この方法は、例えば上記カルボキシル基と少なくとも2個の活性水素を有する化合物を上記割合で含むポリオールと多官能イソシアネート化合物とをイソシアネート基と活性水素基の当量比を0.8/1〜1.2/1の割合で反応させ、カルボキシル基を上記中和剤で中和した後、ポリウレタンを水分散化する。この水分散化ポリウレタンの存在する水性媒体中にアクリルモノマーを混合し、重合開始剤によって重合させてコア−シェル構造の水性化アクリル−ウレタン樹脂を得ることができる。
【0058】
更に、水性化ポリウレタン樹脂と乳化重合法によって得られたアクリルポリオールエマルジョンとを単に混合することによっても水性化アクリル−ウレタン樹脂を得ることができる。
【0059】
水性化アクリル−ウレタン樹脂の屈折率は、約1.5程度であるため、近年のプラスチックレンズ基材の高屈折率化により、屈折率が1.7前後のプラスチックレンズ基材にプライマー層としてそのまま水性化アクリル−ウレタン樹脂を塗布すると、プライマー層により干渉縞が生じる。そのため、金属酸化物微粒子をプライマー層に配合して屈折率調整をすることが好ましい。
【0060】
このような金属酸化物微粒子としては、Si,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In,Tiから選ばれる金属の1種又は2種以上の酸化物微粒子又は複合微粒子を例示することができる。具体的には、SiO2,SnO2,Sb2O5,CeO2,ZrO2,TiO2等の無機酸化物微粒子を、分散媒たとえば水、アルコール系もしくはその他の有機溶媒にコロイド状に分散させたもの、または、Si,A1,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In,Tiの無機酸化物の2種以上によって構成される複合微粒子を水、アルコール系もしくはその他の有機溶媒にコロイド状に分散したものを例示することができる。いずれも粒子径は約1〜300mμが好適である。
【0061】
さらにコーティング液中での分散安定性を高めるためにこれらの微粒子表面を有機ケイ素化合物またはアミン系化合物で処理したものを使用することも可能である。
【0062】
この際用いられる有機ケイ素化合物としては、単官能性シラン、あるいは二官能性シラン、三官能性シラン、四官能性シラン等がある。処理に際しては加水分解性基を未処理で行ってもあるいは加水分解して行ってもよい。また処理後は、加水分解性基が微粒子の−OH基と反応した状態が好ましいが、一部残存した状態でも安定性には何ら問題がない。
【0063】
またアミン系化合物としてはアンモニウムまたはエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン等のアルキルアミン、ベンジルアミン等のアラルキルアミン、ピペリジン等の脂環式アミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンがある。
【0064】
これら有機ケイ素化合物とアミン化合物の添加量は微粒子の重量に対して1〜15%程度の範囲内で加えることが好ましい。
【0065】
金属酸化物微粒子のプライマー液中の固形分に占める割合として、0〜65重量%、特に55重量%以下であることが望ましい。65重量%を超えると、プライマー層が白濁し外観が悪化する場合がある。
【0066】
プラスチック基材上へプライマー層を形成する方法は、例えば水性化アクリル−ウレタン樹脂を含む水溶液に必要により金属酸化物微粒子を配合し、必要により溶剤に希釈してプライマー液を調製して用いることができる。溶剤としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、芳香族類等の溶剤が用いられる。なお、レベリング剤などの従来公知の各種添加剤を含むことが可能である。調製したプライマー液をスピンコート、ディッピングなどの方法でプラスチック基材に塗布し、乾燥後、硬化させる方法で行うことができる。
【0067】
一方、プライマー層を構成するポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、特開2000−144048に記載されているものを例示することができる。
【0068】
ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントにポリエステル、ソフトセグメントにポリエーテルまたはポリエステルを使用したマルチブロック共重合体である。ハードセグメント(H)とソフトセグメント(S)との重量比率は、H/S=30/70〜90/10、望ましくは40/60〜80/20である。
【0069】
ハードセグメント構成成分としてのポリエステルは、基本的には、ジカルボン酸類と低分子グリコールよりなる。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、デカメチレンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸等の炭素数4〜20の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、ε−オキシカプロン酸等の脂肪族オキソカルボン酸、ダイマー酸(二重結合を有する脂肪族モノカルボン酸を二量重合させた二塩基酸)等、及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でもテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が使用に際して望ましい。
【0070】
また、低分子グリコールとしては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、1,6−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族グリコール等、及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でもエチレングリコール、1,4−ブタンジオールが使用に際して望ましい。
【0071】
ソフトセグメント構成成分としてのポリエステルは、ジカルボン酸類と長鎖グリコールよりなり、ジカルボン酸類としては、前記のものが挙げられる。長鎖グリコールとしては、ポリ(1,2−ブタジエングリコール)、ポリ(1,4−ブタジエングリコール)及びその水素添加物等が挙げられる。また、ε−カプロラクトン(C6)、エナントラクトン(C7)及びカプロリロラクトン(C8)もポリエステル成分として有用である。これらの中でε−カプロラクトンが使用に際して望ましい。
【0072】
ソフトセグメント構成成分のポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(1,2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール等のポリ(アルキレンオキシド)グリコール類が挙げられ、これらの中でポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールが使用に際して望ましい。
【0073】
ポリエステル系熱可塑性エラストマーの製造方法としては、例えばジカルボン酸の低級アルキルエステルを脂肪族長鎖グリコール及び過剰の低分子グリコールをテトラブチルチタネート等の触媒の存在下で150〜200℃の温度で加熱し、エステル交換反応を行い、まず低重合体を形成し、さらにこの低重合体を高真空下、220〜280℃で加熱攪拌し、重縮合を行いポリエステル系熱可塑性エラストマーを得る。前記低重合体は、ジカルボン酸と長鎖グリコール及び低分子グリコールとの直接エステル化反応によっても得ることができる。
【0074】
ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、他のポリマーと混合して使用が可能であり、例えば通常のエステル系樹脂(PBT、PET等)、アミド系樹脂、さらには、アミド系熱可塑性エラストマー等任意であり、通常、ポリマー全体に占める割合は、50%未満、望ましくは30%未満とする。
【0075】
ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、溶液タイプのプライマー組成物に調製することができる。しかし、加工性及び環境保護の観点より水性エマルジョンのプライマー組成物として使用することが望ましい。この水性エマルジョン化は慣用の方法により行うことができるが、具体的には、ポリマーを界面活性剤(外部乳化剤)の存在下、高い機械的剪断をかけて強制的に乳化させる強制乳化法が望ましい。
【0076】
プライマー組成物は、屈折率の調整や強度の向上等を目的として金属酸化物微粒子(複合微粒子を含む。)を含有させることが望ましい。金属酸化物微粒子としては、上述した水性化アクリル−ウレタン樹脂で例示したものが同様に使用可能である。
【0077】
調製したプライマー液をスピンコート、ディッピングなどの方法でプラスチック基材に塗布し、乾燥後、硬化させる方法で行うことができる。
【0078】
水性化アクリル−ウレタン樹脂またはポリエステル系熱可塑性エラストマーを主成分とするプライマー層の膜厚は0.01〜50μm、特に0.1〜30μmの範囲が好ましい。プライマー層が薄すぎると可染タイプのハードコート層の染色性の向上や耐衝撃性の改善効果は少なく、逆に厚すぎると、表面の平滑性が損なわれたり、光学的歪が発生する場合がある。
【0079】
次に、ハードコート層について説明する。本発明のプラスチックレンズにおけるハードコート層は、下記の成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有するハードコート組成物から形成されている。
【0080】
(A)粒径1〜100ミリミクロンの無機微粒子、(B)一般式(1)
【0081】
【化5】
【0082】
(式中、R1 は重合可能な反応基を有する有機基、R2 は炭素数1〜6の炭化水素基、Xは加水分解性基であり、nは0または1である。)で表される有機ケイ素化合物、(C)多官能性エポキシ化合物、(D)硬化触媒。
【0083】
(A)成分の無機微粒子は、Si,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In,Tiから選ばれる金属の1種又は2種以上の酸化物微粒子又は複合微粒子を例示することができる。具体的には、SiO2,SnO2,Sb2O5,CeO2,ZrO2,TiO2等の無機酸化物微粒子を、分散媒たとえば水、アルコール系もしくはその他の有機溶媒にコロイド状に分散させたもの、または、Si,A1,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In,Tiの無機酸化物の2種以上によって構成される複合微粒子を水、アルコール系もしくはその他の有機溶媒にコロイド状に分散したものを例示することができる。この発明の目的のためには平均粒径1〜100ミリミクロンの径のものが使用されるが、好ましくは5〜30ミリミクロンの径の範囲が望ましい。さらにコーティング液中での分散安定性を高めるために、上述したように、これらの微粒子表面を有機ケイ素化合物またはアミン系化合物で処理したものを使用することも可能である。
【0084】
無機微粒子の種類や配合量は、目的とする硬度や屈折率等により決定されるものであるが、配合量はハードコート組成物中の固形分の5〜80重量%、特に10〜50重量%の範囲であることが望ましい。配合量が少なすぎると、反射防止膜との密着性が不十分となるか、もしくは、塗膜の耐摩耗性が不十分となる場合がある。また、配合量が多すぎると、塗膜にクラックが生じ、染色性も不十分となる場合がある。
【0085】
(B)成分の有機ケイ素化合物は、ビヒクル成分として機能するものである。上記一般式(1)において、R1は重合可能な反応基を有する有機基であり、重合可能な反応基としては、例えばビニル基,アリル基,アクリル基,メタクリル基,エポキシ基,メルカプト基,シアノ基,イソシアノ基,アミノ基等を例示することができる。R2は炭素数1〜6の炭化水素基であり、その具体例としては、メチル基,エチル基,ブチル基,ビニル基,フェニル基等が挙げられる。また、Xは加水分解可能な官能基であり、その具体的なものとして、メトキシ基,エトキシ基,メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基,ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等が挙げられる。
【0086】
(B)成分の有機ケイ素化合物としては、例えば、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、アリルトリアルコキシシラン、アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルジアルコキシメチルシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン等がある。この(B)成分は、2種以上混合して用いてもかまわない。また、加水分解を行なってから用いた方がより有効である。
【0087】
(B)成分の使用量は、ハードコート組成物中の固形分の10〜70重量%、特に20〜60重量%の範囲であることが望ましい。配合量が少なすぎると、反射防止膜との密着性が不十分となりやすい場合がある。一方、配合量が多すぎると、硬化被膜にクラックを生じさせる原因となる場合がある。
【0088】
(C)成分の多官能性エポキシ化合物は、ハードコート層の染色成分として機能するものである。多官能性エポキシ化合物は、上述したプライマー層の水性化アクリル−ウレタン樹脂及びポリエステル系熱可塑性エラストマーに対して特異的に密着性に優れる。更に、プライマー層の存在により、可染タイプのハードコート層を単層でプラスチックレンズ基材上に形成した場合よりも、染色性が非常に高くなる。そのため、プライマー層を設けた場合は、可染タイプのハードコート中の多官能性エポキシ化合物の配合量を減らすことが可能で、十分な染色性を確保した上で、より硬さ、即ち耐擦傷性の向上したプラスチックレンズが得られる。また、多官能性エポキシ化合物は、ハードコート層の耐水性、耐温水性を向上させることが可能であり、染色時に高温の染色液に長時間浸漬されても、クラックの発生を効果的に抑制することができる。更に、多官能性エポキシ化合物を含むハードコート層は、プラスチックレンズの耐衝撃性を改善することができる。
【0089】
多官能性エポキシ化合物は、接着剤、注型用などに広く実用されており、例えば過酸化法で合成されるポリオレフィン系エポキシ樹脂、シクロペンタジエンオキシドやシクロヘキセンオキシドあるいはヘキサヒドロフタル酸とエピクロルヒドリンから得られるポリグリシジルエステルなどの脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールAやカテコール、レゾシノールなどの多価フェノールあるいは(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ソルビトールなどの多価アルコールとエピクロルヒドリンから得られるポリグリシジルエーテル、エポキシ化植物油、ノボラック型フェノール樹脂とエピクロルヒドリンから得られるエポキシノボラック、フェノールフタレインとエピクロルヒドリンから得られるエポキシ樹脂、グリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートアクリル系モノマーあるいはスチレンなどの共重合体、さらには上記エポキシ化合物とモノカルボン酸含有(メタ)アクリル酸とのグリシジル基開環反応により得られるエポキシアクリレートなどが挙げられる。
【0090】
多官能性エポキシ化合物の具体例としては、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ノナプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールヒドロキシヒバリン酸エステルのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールジグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ化合物、イソホロンジオールジグリシジルエーテル、ビス−2,2−ヒドロキシシクロヘキシルプロパンジグリシジルエーテル等の脂環族エポキシ化合物、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、オルトフタル酸ジグリシジルエステル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ化合物等が挙げられる。
【0091】
本発明における(C)成分の多官能性エポキシ化合物の分子中に水酸基が存在すると、プライマー層との密着性や染色性が向上することが認められる。そのため、多官能性エポキシ化合物として、一分子中に複数のエポキシ基と一個以上の水酸基とを含むものが好ましい。例えば、上記例中、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル等を好ましく用いることができる。本発明では、これらの一分子中に複数個のエポキシ基と一個以上の水酸基を有する多官能性エポキシ化合物の一種を単独で又は2種以上を併用し、更に、一分子中に水酸基を有さない多官能性エポキシ化合物と併用して用いることができる。
【0092】
(C)成分の多官能性エポキシ化合物の配合量は、プラスチックレンズ基材にハードコート層を直接形成する場合はハードコート組成物中の固形分の5〜40重量%であるが、プライマー層を介して形成する場合は、プライマー層の存在により染色性が向上するため、0.1〜25重量%、好ましくは0.5〜20重量%の範囲に減少させることが可能である。配合量が少なすぎると塗膜の耐水性が不十分となる場合がある。一方、配合量が多すぎると反射防止膜との密着性が不十分となりやすい場合がある。
【0093】
(D)成分の硬化触媒は、シラノールあるいは、エポキシ化合物の硬化触媒として添加するが、好ましいものには過塩素酸,過塩素酸アンモニウム,過塩素酸マグネシウム等の過塩素酸類、Cu(II),Zn(II),Co(II),Ni(II),Be(II),Ce(III),Ta(III),Ti(III),Mn(III),La(III),Cr(III),V(III),Co(III),Fe(III),Al(III),Ce(IV),Zr(IV),V(IV)等を中心金属原子とするアセチルアセトネート、アミン,グリシン等のアミノ酸、ルイス酸、有機酸金属塩等が挙げられる。この中でも、本発明の組成においては、硬化条件、塗液のポットライフなどにおいて過塩素酸マグネシウム、Al(III),Fe(III)のアセチルアセトネートがより好ましい。添加量は、固形分濃度の0.01〜5.0%の範囲内が望ましい。
【0094】
このようにして得られるハードコート用組成物は、必要に応じ、溶剤に希釈して用いることができる。溶剤としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、芳香族類等の溶剤が用いられる。
【0095】
尚、本発明のハードコート組成物は上記成分の他に必要に応じて、少量の界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、分散染料・油溶染料・蛍光染料・顔料、フォトクロミック化合物、ヒンダードアミン・ヒンダードフェノール系等の耐光耐熱安定剤等を添加しハードコート液の塗布性および硬化後の被膜性能を改良することもできる。特に紫外線吸収剤、酸化防止剤やヒンダードアミン、ヒンダードフェノール系等の耐光耐熱安定剤から選ばれる1種、もしくは2種以上を添加することによりハードコート被膜に優れた耐候性を付与することが可能である。
【0096】
ハードコート組成物の塗布・硬化方法としては、ディッピング法、スピンナー法、スプレー法あるいはフロー法によりプライマー層を形成したプラスチックレンズ基材にハードコート組成物を塗布した後、40〜200℃の温度で数時間加熱乾燥することにより、被膜を形成することができる。
【0097】
ハードコート層の膜厚としては0.05〜30μm、特に0.1〜20μm程度の範囲がよい。薄くなりすぎると基本的な性能が発現しない場合があり、一方厚すぎると、光学的歪みが発生する場合がある。
【0098】
本発明のプラスチックレンズにおいては、ハードコート層の上に反射防止膜を形成することができる。
【0099】
反射防止膜は、無機被膜、有機被膜の単層または多層で構成される。無機被膜の材質としては、SiO2、SiO、ZrO2、TiO2、TiO、Ti2O3、Ti2O5、Al2O3、Ta2O5、CeO2、MgO、Y2O3、SnO2、MgF2、WO3等の無機物が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。プラスチックレンズの場合は、低温で真空蒸着が可能なSiO2、ZrO2、TiO2、Ta2O5が好ましい。また、多層膜構成とした場合は、最外層はSiO2とすることが好ましい。
【0100】
無機被膜の成膜方法は、例えば真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法、飽和溶液中での化学反応により析出させる方法等を採用することができる。真空蒸着法においては、蒸着中にイオンビームを同時に照射するイオンビームアシスト法を用いてもよい。
【0101】
有機被膜の材質は、プラスチックレンズやハードコート層の屈折率を考慮して選定され、真空蒸着法の他、スピンコート法、ディップコート法などの量産性に優れた塗装方法で成膜することができる。
【0102】
また、反射防止膜を形成する際には、ハードコート層の表面処理を行なうことが望ましい。この表面処理の具体的例としては、酸処理,アルカリ処理,紫外線照射処理,アルゴンもしくは酸素雰囲気中での高周波放電によるプラズマ処理,アルゴンや酸素もしくは窒素などのイオンビーム照射処理などが挙げられる。
【0103】
更に、反射防止膜の表面を汚れ難く、あるいは汚れを拭き取りやすくするために、パーフルオロアルキル基等を含む含フッ素シラン化合物などを用いて反射防止膜の表面に撥水膜を形成することができる。
【0104】
【実施例】
以下、実施例により更に詳細に説明する。
<実施例1>
(1)プライマー層の形成
市販の水性ポリエステル「A−160P」(高松油脂株式会社製、固形分濃度25%)186g、メタノール257g、水15g、ブチルセロソルブ37gを混合し、さらにγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5g、シリコン系界面活性剤(日本ユニカー株式会社製、商品名「L−7604」)0.1gを加え3時間攪拌した。このプライマー組成物をセイコースーパーソブリン(商品名)用プラスチックレンズ基材(セイコーエプソン株式会社製、屈折率1.67)上に浸漬法(引き上げ速度15cm/min)にて塗布した。塗布した基材レンズは100℃で20分間加熱硬化処理して基材上に膜厚1.0μmのプライマー層を形成した。
【0105】
(2)ハードコート層の形成
ブチルセロソルブ73g、メタノール148g、およびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン57gを混合した。この混合液に0.1N塩酸水溶液18gを攪拌しながら滴下した。さらに3時間攪拌後、一昼夜熟成させた。この液にメタノール分散SiO2微粒子ゾル(触媒化成工業株式会社製、商品名「オスカル1132」固形分濃度30%)146g、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコールEX−421」)50g、過塩素酸マグネシウム3g、シリコン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7001」)0.16g、フェノール系酸化防止剤(川口化学工業株式会社製、商品名「アンテージクリスタル」)0.6gを添加し4時間撹拌後、一昼夜熟成させて塗液とした。このハードコート組成物を(1)で得られたプライマー層を形成したプラスチックレンズ基材上に浸漬法(引き上げ速度30cm/min)にて塗布した。塗布した基材レンズは125℃で3時間加熱硬化処理して基材上に膜厚2.5μmのハードコート層を形成させた。
【0106】
<実施例2>
実施例1で得られたプラスチックレンズに、以下の方法で無機物質からなる反射防止膜および撥水膜の形成を行なった。
(1)反射防止膜および撥水膜の形成
プラスチックレンズ上に、基板側から順に、SiO2層とTiO2層を交互に積層させた7層からなる反射防止多層膜を構築した。反射防止膜SiO2層の成膜は、真空蒸着法(真空度5.0×10−4Pa)で行った。TiO2層の成膜は、イオンアシスト蒸着法(真空度4.0×10−3Pa)で行った。TiO2層をイオンアシスト蒸着で成膜するときのイオンアシスト条件は加速電圧520V、加速電流値270mAで、真空度は酸素を導入して4.0×10−3Paで保持するようにした。基材側から数えて、第1層は0.083λの光学膜厚を持つSiO2層、第2層は0.07λの光学膜厚を持つTiO2層、第3層は0.10λの光学膜厚を持つSiO2層、第4層は0.18λの光学膜厚を持つTiO2層、第5層は0.065λの光学膜厚を持つSiO2層、第6層は0.14λの光学膜厚を持つTiO2層、第7層は0.26λの光学膜厚を持つSiO2層を順次積層してなる反射防止膜を構築した。設計波長λは520nmとした。得られた多層膜の反射干渉色は緑色を呈し、全光線透過率は99%であった。
さらに反射防止膜上に含フッ素シラン化合物からなる撥水膜を真空蒸着法にて成膜を行った。
【0107】
<実施例3>
(1)プライマー層の形成
実施例1と同様の方法でプライマー層の形成を行った。
【0108】
(2)ハードコート層の形成
ブチルセロソルブ68g、メタノール139g、およびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン61gを混合した。この混合液に0.1N塩酸水溶液17gを攪拌しながら滴下した。さらに3時間攪拌後、一昼夜熟成させた。この液にメタノール分散SiO2微粒子ゾル(触媒化成工業株式会社製、商品名「オスカル1132」固形分濃度30%)181g、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコールEX−421」)26g、過塩素酸マグネシウム3g、シリコン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7001」)0.15g、シリコン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7604」)0.05g、フェノール系酸化防止剤(川口化学工業株式会社製、商品名「アンテージクリスタル」)0.6g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、商品名「TINUVIN213」)3.7gを添加し4時間撹拌後、一昼夜熟成させて塗液とした。このハードコート組成物を(1)で得られたプライマー層を形成したプラスチックレンズ基材上に浸漬法(引き上げ速度35cm/min)にて塗布した。塗布した基材レンズは125℃で3時間加熱硬化処理して基材上に膜厚2.5μmのハードコート層を形成させた。
【0109】
<実施例4>
実施例3で得られたプラスチックレンズに、実施例2と同様の方法で反射防止膜および撥水膜の形成を行なった。
【0110】
<実施例5>
(1)プライマー層の形成
実施例1と同様の方法でプライマー層の形成を行った。
【0111】
(2)ハードコート層の形成
実施例3においてジグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコールEX−421」)を1,6−へキサンジオールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコールEX−212」)に変えた以外はすべて同様の方法でハードコート層の形成を行った。
【0112】
<実施例6>
(1)プライマー層の形成
市販の水性エマルジョンポリウレタン「ネオステッカー700」(日華化学株式会社製、固形分濃度37%、アクリル変性ポリウレタン)126g、メタノール258g、水74g、ブチルセロソルブ37gを混合し、さらにγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5g、シリコン系界面活性剤(日本ユニカー株式会社製、商品名「L−7604」)0.1gを加え3時間攪拌した。このプライマー組成物をセイコースーパーソブリン(商品名)用プラスチックレンズ基材(セイコーエプソン株式会社製、屈折率1.67)上に浸漬法(引き上げ速度15cm/min)にて塗布した。塗布した基材レンズは100℃で20分間加熱硬化処理して基材上に膜厚1.0μmのプライマー層を形成させた。
【0113】
(2)ハードコート層の形成
実施例3と同様の方法でハードコート層の形成を行った。
【0114】
<実施例7>
実施例6で得られたプラスチックレンズに、実施例2と同様の方法で反射防止膜および撥水膜の形成を行なった。
【0115】
<実施例8>
(1)プライマー層の形成
実施例6においてプラスチックレンズ基材をセイコースーパールーシャス(商品名)用プラスチックレンズ基材(セイコーエプソン株式会社製、屈折率1.60)に変えた以外はすべて同様の方法でプライマー層の形成を行った。
【0116】
(2)ハードコート層の形成
実施例3においてジグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコールEX−421」)をグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコールEX−313」)に変えた以外はすべて同様の方法でハードコート層の形成を行った。
【0117】
(3)反射防止膜および撥水膜の形成
(2)で得られたプラスチックレンズに、プラズマ処理(アルゴンプラズマ400W×60秒)を行なった後、基板側から順に、SiO2層とZrO2層を交互に積層させた5層からなる反射防止多層膜を構築した。各層の光学的膜厚は、最初のSiO2層、次のZrO2とSiO2の等価膜層および次のZrO2層、最上層のSiO2層がそれぞれλ/4となる様に形成した。なお、設計波長λは520nmとした。得られた多層膜の反射干渉色は緑色を呈し、全光線透過率は98%であった。
さらに反射防止膜上に含フッ素シラン化合物からなる撥水膜を真空蒸着法にて成膜を行った。
【0118】
<実施例9>
(1)プライマー層の形成
実施例6においてプラスチックレンズ基材をセイコープレステージ(商品名)用プラスチックレンズ基材(セイコーエプソン株式会社製、屈折率1.74)に変えた以外はすべて同様の方法でプライマー層の形成を行った。
【0119】
(2)ハードコート層の形成
実施例3と同様の方法でハードコート層の形成を行った。
【0120】
(3)反射防止膜および撥水膜の形成
実施例2と同様の方法で反射防止膜および撥水膜の形成を行なった。
【0121】
<実施例10>
(1)プライマー層の形成
実施例1においてプラスチックレンズ基材をセイコースーパールーシャス(商品名)用プラスチックレンズ基材(セイコーエプソン株式会社製、屈折率1.60)に変えた以外はすべて同様の方法でプライマー層の形成を行った。
【0122】
(2)ハードコート層の形成
実施例3と同様の方法でハードコート層の形成を行った。
【0123】
(3)反射防止膜および撥水膜の形成
実施例2と同様の方法で反射防止膜および撥水膜の形成を行なった。
【0124】
<実施例11>
(1)プライマー層の形成
実施例1においてプラスチックレンズ基材をセイコープレステージ(商品名)用プラスチックレンズ基材(セイコーエプソン株式会社製、屈折率1.74)に変えた以外はすべて同様の方法でプライマー層の形成を行った。
【0125】
(2)ハードコート層の形成
実施例3においてジグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコールEX−421」)をグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコールEX−313」)に変えた以外はすべて同様の方法でハードコート層の形成を行った。
【0126】
(3)反射防止膜および撥水膜の形成
実施例8と同様の方法で反射防止膜および撥水膜の形成を行なった。
【0127】
<比較例1>
実施例3においてプライマー層を形成せずに、プラスチックレンズ基材上にハードコート層を単層で形成した以外はすべて同様の方法でプラスチックレンズの作成をした。
【0128】
<比較例2>
比較例1で得られたプラスチックレンズに、実施例2と同様の方法で無機物質からなる反射防止膜および撥水膜の形成を行なった。
【0129】
<比較例3>
(1)プライマー層の形成
実施例1と同様の方法でプライマー層の形成を行った。
【0130】
(2)ハードコート層の形成
実施例3においてジグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコールEX−421」)をN,N−ビス〔(メチルジメトキシシリル)プロピル〕アミンの加水分解物に変えた以外はすべて同様の方法でハードコート層の形成を行った。
【0131】
<比較例4>
(1)プライマー層の形成
実施例1と同様の方法でプライマー層の形成を行った。
【0132】
(2)ハードコート層の形成
実施例3においてジグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコールEX−421」)を添加しなかった以外はすべて同様の方法でハードコート層の形成を行った。
【0133】
<比較例5>
比較例4で得られたプラスチックレンズに、実施例2と同様の方法で無機物質からなる反射防止膜および撥水膜の形成を行なった。
【0134】
これらの実施例、比較例で得られたプラスチックレンズについて、次の評価方法を行った。
(a)外観:暗箱中で黒色の背景と蛍光灯を用いて、透過光、反射光で白濁、クラック、白化等について観察した。
【0135】
(b)耐擦傷性:ボンスター#0000スチールウール(日本スチールウール(株)製)で1kgの荷重をかけ、10往復表面を摩擦し、傷ついた程度を目視で観察した。
【0136】
(c)耐候性:キセノンランプによるサンシャインウェザーメーターに250時間暴露した後の表面状態に変化のないものを良とした。
【0137】
(d)耐湿性:60℃×99%雰囲気に10日間放置した後、表面状態に変化のないものを良とした。
【0138】
(e)表面処理層の密着性:レンズ基材と表面処理層(ハードコート層および反射防止膜)の密着性は(c)と(d)の試験を行なったものについて、JIS D−0202に準じてクロスカットテープ試験によって行なった。即ち、ナイフを用い基材表面に1mm間隔に切れ目を入れ、1平方mmのマス目を100個形成させる。次に、その上ヘセロファン粘着テープ(ニチバン(株)製:商品名「セロテープ(登録商標)」)を強く押し付けた後、表面から90度方向へ急に引っ張り剥離した後コート被層の残っているマス目を密着性指標として、目視で観察した。
【0139】
(f)耐衝撃性:16.3gの硬球を127cmの高さからレンズの凸面中心に自然落下させ、レンズの割れを確認し、割れ及びひびのないものを○とした。なお本試験に使用したレンズの中心厚はすべて1.1mmのものとした。また硬球の重量を2倍にしても、割れ及びひびのないものを◎とした。
【0140】
(g)染色性:最表層がハードコート層のプラスチックレンズについて試験を行った。94℃の分散染料浴中に10分間浸漬させ、分光光度形で視感透過率を測定し30%以下のものを◎、50%以下のものを○、70%以下のものを△、70%以上のものを×にした。
【0141】
(h)耐温水性:プラスチックレンズを90℃の温水中に60分間浸漬させ、クラック、白化等の発生を目視で観察した。
【0142】
実施例、比較例の処理層の構成とその成分の一覧を表1に、試験結果を表2に示す。
【0143】
【表1】
【0144】
【表2】
【0145】
実施例1のプラスチックレンズは、ハードコート中の多官能性エポキシ化合物の含有量が多い(約32重量%)ため、染色性は良好であるが耐擦傷性は十分ではない。また実施例1のプラスチックレンズに反射防止膜を設けた実施例2では、耐衝撃性は十分である、実施例3のプラスチックレンズに反射防止膜を設けた実施例4、実施例6のプラスチックレンズに反射防止膜を設けた実施例7、更に実施例8、実施例9、実施例10及び実施例11の反射防止膜を設けたプラスチックレンズは、耐衝撃性の低下が見られる。ハードコート層と反射防止膜との密着性が十分ではないと考えられる。実施例3のレンズは各種耐久性、染色性のバランスのとれたレンズである。実施例3のプラスチックレンズに反射防止膜を設けた実施例4においては、耐擦傷性、耐候性がさらに向上する。耐衝撃性は若干低下するものの十分なレベルである。実施例5においては、多官能性エポキシ化合物が水酸基を含まない構造のため、若干染色性、密着性が低下している。実施例6〜11も同様にバランスのとれたレンズである。
【0146】
比較例1、2はプライマー層がないため、耐衝撃性が低い。また実施例3のプラスチックレンズからプライマー層を除いた構造の比較例1と実施例3を比較すると、プライマー層が染色性に大きく影響していることがわかる。比較例3においては、染色性成分として多官能性エポキシ化合物以外の成分を用いているが、プライマー層との密着性が得られていない。比較例4については、多官能性エポキシ化合物を用いていないため染色性がほとんど無い。また耐温水性も低いものとなっている。比較例4のプラスチックレンズに反射防止膜を設けた比較例5では、反射防止膜を設けてもハードコートにクラックが入りやすく耐温水性は低いことが認められる。
Claims (7)
- 請求項1記載のプラスチックレンズにおいて、
前記ハードコート組成物の固形分中における前記多官能性エポキシ化合物の含有量が、0.1〜25重量%であることを特徴とするプラスチックレンズ。 - 請求項1又は2記載のプラスチックレンズにおいて、
前記プライマー層が、水性化アクリル−ウレタン樹脂を主成分とすることを特徴とするプラスチックレンズ。 - 請求項1又は2記載のプラスチックレンズにおいて、
前記プライマー層が、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを主成分とすることを特徴とするプラスチックレンズ。 - 請求項1〜4いずれかに記載のプラスチックレンズにおいて、
前記多官能性エポキシ化合物が、一分子中に一個以上の水酸基を含むことを特徴とするプラスチックレンズ。 - 請求項1〜5いずれかに記載のプラスチックレンズにおいて、
前記ハードコート層上に反射防止膜を有することを特徴とするプラスチックレンズ。
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