JP2006079046A - 染色レンズおよび染色レンズの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 染色性が良く、さらに密着性および耐擦傷性といった耐久性の高い染色レンズを提供する。
【解決手段】 ステップ32において、金属酸化物微粒子、シラン化合物に加え、多官能エポキシ化合物の含有量H1が以下の条件を満たす第1層を形成し、ステップ33で染色した後に、ステップ34において、金属酸化物微粒子、シラン化合物に加え、多官能エポキシ化合物の含有量H2が以下の条件を満たす第2層を形成する。
H1>H2 (1)
5重量%≦H1≦50重量% (2)
0重量%≦H2≦15重量% (3)
【選択図】 図1
【解決手段】 ステップ32において、金属酸化物微粒子、シラン化合物に加え、多官能エポキシ化合物の含有量H1が以下の条件を満たす第1層を形成し、ステップ33で染色した後に、ステップ34において、金属酸化物微粒子、シラン化合物に加え、多官能エポキシ化合物の含有量H2が以下の条件を満たす第2層を形成する。
H1>H2 (1)
5重量%≦H1≦50重量% (2)
0重量%≦H2≦15重量% (3)
【選択図】 図1
Description
本発明は、眼鏡などに用いられるプラスチック製またはガラス製の染色レンズおよびその製造方法に関するものである。
視力矯正用レンズおよびサングラス等の眼鏡レンズとして、基材あるいは基板を構成するプラスチックレンズあるいはガラスレンズを染色する代わりに、基板に積層された機能層、例えば、ハードコート層を染色した染色レンズが用いられている。この染色レンズは、レンズ基板に影響を与えずに色を付けることができ、その濃度調整も可能なので、在庫の問題がなく、ユーザの要望に合わせて多種多様な色の眼鏡レンズを提供し、ユーザの好みにあった色の眼鏡を低コストで、また、短期間に提供できる。
特開2001−295185号公報
特許文献1には、プラスチックレンズ基材上に染色層を形成し、この染色層の上にハードコート層を設け、このハードコート層を通して染色層を染色(着色)する方法が開示されている。この方法であれば、ハードコート層の他に染色用の層を設けているという点で、ハードコート層に積極的な染色性を持たせる必要がなく、ハードコート層の本来の機能である耐擦傷性などを維持し易いというメリットを備えている。層を染色するには、その層に染料を保持したり、層全体の色を均一にするという点では染料を透過したりする成分を含有させておく必要がある。そのような機能を備えた成分は、ポリウレタン系あるいはエポキシ系などであり、それらは一般的にハードコート層として要求される耐擦傷性などの機能を低下させる方向に働く。したがって、染色層をハードコート層と別に設け、さらに、染色層をハードコート層で覆うという構成は、ハードコート層の機能を確保すると共に、強度が低い染色層を含めてハードコート層でカバーすることにより耐擦傷性も維持できるというメリットを備えている。
しかしながら、耐久性および耐擦傷性をさらに向上しようとしたり、着色の均一性がさらに高いレベルで求められたりする場合には、この染色方法では対応できない可能性がある。まず、ハードコート層を通して染色層を染色する方法であるため、ハードコート層が染料を保持しなくて良いとしても、少なくとも染料を通過させる必要があり、そのための成分あるいは染料を通過させるのに適した構造である必要がある。例えば、特許文献1では、ハードコート層に染料を透過させるために多官能エポキシ化合物を多く含有させているが、その分、硬さを実現するのに効果的なシラン化合物などの含有量が低下する傾向となる。したがって、耐久性のいっそうの向上を図ろうとすると、多官能エポキシ化合物などの染色に寄与する成分を含有せざるを得ないことは障害となる。
また、染色層としては、ハードコート層を通して染色層を染色する方法であるため、直に染料で染色される場合よりも染色性の高いものが要求される。このことは、逆に、染色速度が速すぎ、染色ムラが発生し易いという傾向があることに繋がる。また、ハードコート層の厚みや、密度などの製膜条件にも染色状態が左右されやすく、ハードコード層の精度が染色結果に影響を及ぼす可能性があり、色ムラなどに対してさらに高い精度が要求されると歩留まりを維持することが難しくなる。
さらに、染色層は、ハードコート層の下地となるべき層であるが、上述したように、耐久性あるいは耐擦傷性を発揮させるための硬度と、染色性とを両立させることは難しく、より高いレベルで耐擦傷性と色性能とを求められる製品には、対応することができない。
そこで、本発明では、染色性がさらに良く、耐擦傷性および耐久性のさらに高い染色レンズおよびその製造方法を提供し、さらに高いレベルで耐久性と色性能とを満足させることができる染色レンズを提供することを目的としている。
本発明においては、基板と、この基板上に積層され、染色された下地層と、この下地層の上に積層され、染色されていない機能層とを有する染色レンズを提供する。
本発明において、下地層は、ハードコート層などの機能層とその下の層あるいは基板との間の密着性を保持することを主眼として形成される層を示す。この下地層は、機能層の機能をさらに高めるために形成されるものであり、下地層との密着性などを考慮し、下地層と機能層とは連続して形成されるものである。これに対し、本発明においては、あえて下地層を形成した後に、下地層を染色し、その後に下地層の上に機能層を形成するという製造方法を採用している。
すなわち、染色レンズの製造方法は、基板の上に、下地層を形成する第1の工程と、下地層を染色する染色工程と、下地層の上に機能層を形成する第2の工程とを有する。
本発明においては、下地層は染色され、機能層は染色されず、また、下地層を染色するために染料を透過する必要もない。したがって、機能層は、染色性も染料の透過性も持つ必要がなく、その機能のみに適した、例えば、ハードコート層であれば、硬度を考量し、耐久性および耐擦傷性などのハードコート層として要求される機械的あるいは物理的性質を満足するための組成で形成できる。本発明において、機能層は染色されないので、ほとんどのケースは透明であるが、機能層を形成する組成により発色する場合は、機能層は色つきの層であって良い。
一方、下地層は、直に染色されるので、その範囲で要求される最低限必要な染色性を備えた組成を採用できる。したがって、過度の染色性が要求されないので、染色ムラを低減でき、染色性にかかわる成分を少なくして、下地層としての本来の機能を発揮する成分を主体に構成することが可能となる。すなわち、下地層を形成する第1の工程と、機能層を形成する第2の工程とを分け、その間に染色工程を設けることにより、下地層としては、染色性にかかわる成分を低減できるので、機能層をサポートする、例えば、機能層との密着性を向上する成分を十分に含有することができる。したがって、第1の工程と第2の工程とを分割することにより、染色レンズにおいては、かえって下地層と機能層との密着性を高めることが可能となり、耐久性の向上を図ることが可能となり、それと共に、染色性の向上も図ることが可能となる。
例えば、下地層として、染料の保持能力を多くは要求されないので、染色性もあり、硬度も比較的高い多官能エポキシ化合物を含み、それも含めて、他の成分は機能層であるハードコート層と同じ組成の層を形成することが可能となる。したがって、下地層と機能層との間で成分間の結合が十分に確保でき、その結果、下地層の硬さも確保され、膜(層)全体の硬さも確保できるので、傷が付きにくく、耐久性の高い染色レンズを本発明により提供できる。下地層と機能層とが染料の保持能力に寄与する多官能エポキシ化合物を除いてほぼ同じ組成である場合は、機能層を上下2層に分けて、下層を下地層として染色した後に、上層をさらにハードコートなどの機能に特化した層として製膜することが可能となっている。そして、染料の保持能力に優れた多官能エポキシ化合物は、シラン化合物などのように硬度に寄与する成分というよりは柔軟性あるいは接着性に寄与する成分となるので、基板などの下地層が塗布される基層との密着性が高くなり、下地層がプライマーとしての機能を発揮し易いという相乗効果をもたらす。したがって、本発明は、下地層の下にさらに基板と下地層との密着性に向上する層が形成されることを排除するものではない。
機能層の上には、さらに、反射防止層を形成したり、その表面に撥水層を形成したりすることにより、さらに優れた性能の染色レンズを提供できる。
さらに、本発明の染色レンズは、下地層に染色するタイプであるので、ガラスや難染色性の樹脂性のプラスチックを基板とするレンズであっても、種々の色の染色レンズを提供できる。また、本発明の染色レンズおよびその製造方法であれば、下地層もある程度の強度があり、また、下地層と機能層とは別工程で製膜するので、下地層を塗布し硬化した段階で保管することができる。そして、この状態であればレンズ生地(基板)を保管するよりも、キズに強い等のメリットがある。さらに、また、この状態で中間在庫にすることで、多様化しているオーダに対して、受注後に染色工程から行うことができ、第2の被覆層や反射防止層を加工することで、短納期を実現できる。
下地層および前記機能層の一例は、金属酸化物微粒子およびシラン化合物に加えて染色性に寄与する多官能エポキシ化合物を主成分として含むものである。下地層の多官能エポキシ化合物の含有量H1と、機能層の多官能エポキシ化合物の含有量H2とは次の条件を満たすことが望ましい。
H1>H2 ・・・(1)
5重量%≦H1≦50重量% ・・・(2)
0重量%≦H2≦15重量% ・・・(3)
H1>H2 ・・・(1)
5重量%≦H1≦50重量% ・・・(2)
0重量%≦H2≦15重量% ・・・(3)
下地層においては、多官能エポキシ化合物の含有量H1を、焼成後の固形分として、(2)式の条件にすることで、十分な染色性を確保できる。含有量H1が5重量%より少ないと十分な染色性、特に染色速度が不十分であり、また、含有量H1が50重量%より多いと、下地層の硬さが低く、染色時に色ムラが生じることがある。下地層の多官能エポキシ化合物の含有量H1のより好ましい条件は、20重量%≦H1≦40重量%を含有する範囲である。本発明では、染色に寄与する下地層の多官能エポキシ化合物の可含有範囲が広く、多官能エポキシ化合物の含有量を調整することによって、染色スピードをコントロールでき、染色ムラを減らせるというメリットもある。
機能層においては、多官能エポキシ化合物の含有量H2を、焼成後の固形分として、(3)式の条件にすることで、十分な硬度および耐擦傷性を得ることができる。含有量H2が15重量%より多いと、機能層の表面の硬化性が向上せず、ハードコート層の機能向上が望めない。
多官能性エポキシ化合物としては、例えば、過酸化法で合成されるポリオレフィン系エポキシ樹脂、シクロペンタジエンオキシドやシクロヘキセンオキシドあるいはヘキサヒドロフタル酸とエピクロルヒドリンから得られるポリグリシジルエステルなどの脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールAやカテコール、レゾシノールなどの多価フェノールあるいは(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ソルビトールなどの多価アルコールとエピクロルヒドリンから得られるポリグリシジルエーテル、エポキシ化植物油、ノボラック型フェノール樹脂とエピクロルヒドリンから得られるエポキシノボラック、フェノールフタレインとエピクロルヒドリンから得られるエポキシ樹脂、グリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートアクリル系モノマーあるいはスチレンなどの共重合体、さらには上記エポキシ化合物とモノカルボン酸含有(メタ)アクリル酸とのグリシジル基開環反応により得られるエポキシアクリレートなどが挙げられる。
さらに、多官能性エポキシ化合物としては、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ノナプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールヒドロキシヒバリン酸エステルのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールジグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリグリシジルエーテル、等の脂肪族エポキシ化合物、イソホロンジオールジグリシジルエーテル、ビス−2,2−ヒドロキシシクロヘキシルプロパンジグリシジルエーテル等の脂環族エポキシ化合物、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、オルトフタル酸ジグリシジルエステル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ化合物等が挙げられる。
金属酸化物としては、メタノール分散アンチモン酸化物被覆酸化チタン含有複合酸化物ゾル、あるいは、Si,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In,Tiから選ばれる1種以上の金属酸化物からなる、微粒子または複合微粒子を使用できる。金属酸化物微粒子の最外表面を有機ケイ素化合物で改質処理を施した微粒子であっても良く、混合物、固溶状態、他の複合状態で含んでいるものが挙げられる。酸化チタンは無定型であっても、アナタース型、ルチル型、ブルッカイト型或いはペロブスカイト型チタン化合物であっても良い。これらは分散媒たとえば水やアルコール系もしくはその他の有機溶媒にコロイド状に分散させたものである。また複合酸化物微粒子は、その表面が有機珪素化合物又はアミン系化合物で処理され改質されていても良い。この際用いられる有機ケイ素化合物としては、単官能性シラン、あるいは二官能性シラン、三官能性シラン、四官能性シラン等がある。処理に際しては加水分解性基を未処理で行ってもあるいは加水分解して行ってもよい。また処理後は、加水分解性基が微粒子の−OH基と反応した状態が好ましいが、一部残存した状態でも安定性には何ら問題がない。またアミン系化合物としてはアンモニウムまたはエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン等のアルキルアミン、ベンジルアミン等のアラルキルアミン、ピペリジン等の脂環式アミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンがある。これら有機ケイ素化合物とアミン化合物の添加量は微粒子の重量に対して1から15%程度の範囲内で加える必要がある。いずれも粒子径は約1〜300ミリミクロンが好適である。
下地層および機能層に用いられるシラン化合物は、下記の一般式(A)で表される有機ケイ素化合物である成分を含有する組成物を用いて形成することが好ましい。
R1R2 nSiX1 3−n (A)
(式中、nは0または1である。)
R1R2 nSiX1 3−n (A)
(式中、nは0または1である。)
ここで、R1は、重合可能な反応基または加水分解可能な官能基をもつ有機基であり、重合可能な反応基の具体例としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、アミノ基等が挙げられ、加水分解可能な官能基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等が挙げられる。
R2は炭素数1〜6の炭化水素基であり、具体例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ビニル基、フェニル基等が挙げられる。また、X1は加水分解可能な官能基であり、その具体例は、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等が挙げられる。
具体例としては、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトシキ)シラン、アリルトリアルコキシシラン、アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルジアルコキシメチルシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、テトラメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは2種以上を混合して用いてもかまわない。また、加水分解を行ってから用いた方がより有効である。
上述したように、機能層は染色性が不要であるため、染色性確保のための多官能エポキシ化合物を大量に含有する必要がなく、その分、硬さに有効なシラン化合物の含有量を増やすことが可能であり、ハードコート層としてより適した層を形成できる。機能層のシラン化合物の含有量は、焼成後の固形分が30重量%以上50重量%以下であることが望ましい。シラン化合物の含有量が30重量%より少ないと十分な硬度が得られない。また、機能層の上にさらに、反射防止層(無機蒸着層)などを形成した場合に、密着性が低下するのを未然に防止するには、シラン化合物の含有量が50重量%以下であることが望ましい。
染料としては、色ムラを抑制するために分散染料を用いることが望ましい。染色工程では、レンズを染色助剤水溶液で含浸した後、浴から引き上げたレンズを水洗し、乾燥した後、染色浴で染色する浸染を行う。この際に使用する染料には、特に制限はないが、堅牢性の高いものが好ましい。
例えば、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料、ニトロジフェニルアミン系染料、アゾ系染料などの分散染料を使用することができる。この分散染料の具体例としては、p−アニシジン、アニリン、p−アミノアセトアニリド、p−アミノフェノール、1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、o−クロロニトロベンゼン、ジフェニルアミン、m−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アニリン、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン、フェノール等のベンゼン系中間物、p−クレシジン(6−メトキシ−m−トルイジン)、m−クレゾール、p−クレゾール、m−トルイジン、2−ニトロ−p−トルイジン、p−ニトロトルエン等のトルエン系中間物、1−ナフチルアミン、2−ナフトール等のナフタレン系中間物、1−アミノ−4−ブロモアントラキノン−2−スルホン酸(ブロマミン酸)、1−アントラキノンスルホン酸、1,4−ジアミノアントラキノン、1,5−ジクロロアントラキノン、1,4−ジヒドロキシアントラキノン(キニザリン)、1,5−ジヒドロキシアントラキノン(アントラルフィン)、1,2,4−トリヒドロキシアントラキノン(プルプリン)、2−メチルアントラキノン等の無水フタル酸、アントラキノン系中間物などが挙げられる。また、分散染料は単独で又は2種以上混合して使用してもよい。分散染料は、通常、水に分散して染色浴とされるが、溶媒としてメタノール、エタノール、ベンジルアルコールなどの有機溶媒を併用してもよい。
また、染色浴には、染料に対する分散剤としてさらに界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ラウリル硫酸塩などの陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチルアルキルエーテル、アルキルアミンエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤などが挙げられる。これらの界面活性剤は、レンズの着色濃度に応じて、使用する染料の量に対して5〜200重量%の範囲で使用するのが好ましい。浸染は、分散染料及び界面活性剤を水又は水と有機溶媒との混合物中に分散させて染色浴を調製し、この染色浴中にプラスチックレンズを浸漬し、所定温度で所定時間染色を行う。染色温度及び時間は、所望の着色濃度により変動するが、通常、95℃以下で数分〜30分程度でよく、染色浴の染料濃度は0.01〜5重量%であるのが好ましい。
さらに、上記の成分を主成分とした下地層および機能層を備えた染色レンズは、再生を考慮した場合もメリットがある。すなわち、染色工程で染色ムラなどの不良が発生した場合や、下地層の外観上の不良が発生した場合には、下地層をアルカリ処理液で剥離した後、再度、下地層を形成し、染色することでレンズの再生が可能である。特許文献1に記載したタイプの染色層は、樹脂成分を多く含有しているのでアルカリ処理液による膜(層)の剥離がかなり困難であったのに対して、本発明の染色レンズでは、上記の式(1)および(2)のような組成で下地層を形成することで剥離もかなり容易になる。
下地層および機能層に含まれる成分は、上記に限定されない。例えば、下地層および機能層を形成するときに、上記成分の他に必要に応じて添加剤を用いることが可能である。硬化触媒として、過塩素酸,過塩素酸アンモニウム,過塩素酸マグネシウム等の過塩素酸類、Cu(II),Zn(II),Co(II),Ni(II),Be(II),Ce(III),Ta(III),Ti(III),Mn(III),La(III),Cr(III),V(III),Co(III),Fe(III),Al(III),Ce(IV),Zr(IV),V(IV)等を中心金属原子とするアセチルアセトネ−ト、アミン、グリシン等のアミノ酸、ルイス酸、有機酸金属塩等が挙げられる。この中でも最も好ましい硬化触媒としては、過塩素酸マグネシウム、Al(III),Fe(III)のアセチルアセトネ−トが挙げられる。添加量は、固形分濃度の0.01〜5.0重量%の範囲内が望ましい。
また、製造過程においては、上記成分に加えて溶剤などが用いられる。希釈に用いられる溶剤としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、芳香族類等がある。また、必要に応じて、少量の界面活性剤、帯電防止剤、分散染料・油溶染料・蛍光染料・顔料、フォトクロミック化合物等を添加し、層を形成するコーティング液の塗布性および硬化後の被膜性能を改良することもできる。
本発明のレンズの製造方法の反射防止層を形成する工程は、無機系の反射防止層を形成する工程に加えて、有機系の反射防止層を形成する工程を含む。有機系の反射防止層の形成方法の1つは、中空シリカ微粒子およびシラン化合物を主成分とする反射防止層形成用の塗布液を、ディッピング方式およびスピンコート方式を含む湿式により塗布する方法である。シラン化合物としては、上記にて説明したものが含まれる。
(実施例1)
図1に、本発明の実施例におけるレンズの製造工程の概要を示してある。先ず、ステップ31で、セイコーエプソン(株)製、セイコースーパーソブリン用レンズ生地(以下SSVと略す。)、を用いて屈折率1.67のプラスチックレンズ基材を形成する。次に、ステップ32で、このプラスチック製の基材に、浸漬法により第1層を下地層(プライマー層)として積層し、その後、アニールする(第1の工程)。
図1に、本発明の実施例におけるレンズの製造工程の概要を示してある。先ず、ステップ31で、セイコーエプソン(株)製、セイコースーパーソブリン用レンズ生地(以下SSVと略す。)、を用いて屈折率1.67のプラスチックレンズ基材を形成する。次に、ステップ32で、このプラスチック製の基材に、浸漬法により第1層を下地層(プライマー層)として積層し、その後、アニールする(第1の工程)。
実施例1における第1層用の第1塗液C11は次のように調製した。ブチルセロソルブ103.2g、およびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン35.3gを混合した。この混合液に0.1N塩酸水溶液9.7gを攪拌しながら滴下した。さらに3時間攪拌後、一昼夜熟成させた。この液にメタノール分散酸化チタン含有複合酸化物ゾル(触媒化成工業株式会社製、商品名「オプトレイク特殊品(62)」固形分20%品312.5g、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコールEX−421」)37.5g、過塩素酸マグネシウム1.7g、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7604」)0.15g、フェノール系酸化防止剤(川口化学工業株式会社製、商品名「アンテージクリスタル」)0.6gを添加し4時間撹拌後、一昼夜熟成させて第1塗液とした。
ステップ32においては、この第1塗液C11を、プラスチックレンズ基材に浸漬法(引き上げ速度20cm/min)により塗布した。塗布した基材レンズは120℃で20分間加熱硬化処理して基材上に膜厚1.0μmの第1層を形成した。第1塗液C11による第1層の焼成後固形分比は、金属酸化物:シラン化合物:多官能エポキシ化合物で約50:20:30となる。したがって、第1層は、30重量%の多官能エポキシ化合物と、20重量%のシラン化合物を含んでいる。
次に、ステップ33で、硬化した第1層を備えたレンズを、94℃の分散染料浴中に10分間浸漬し、染色を行った(染色工程)。分散染料は、例えば、セイコープラックスダイヤコート用染色剤アンバーDを用いることができる。
次に、ステップ34で、染色された第1層の表面に、浸漬法によりハードコートとして主に機能する第2層(機能層)を積層し、その後、アニールする(第2の工程)。
実施例1においては、第2層用の第2塗液C21を次のように調製した。ブチルセロソルブ73.6g、およびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン88.3gを混合した。この混合液に0.1N塩酸水溶液24.3gを攪拌しながら滴下した。さらに3時間攪拌後、一昼夜熟成させた。この液にメタノール分散酸化チタン含有複合酸化物ゾル(触媒化成工業株式会社製、商品名「オプトレイク特殊品(62)」312.5g、過塩素酸マグネシウム1.32g、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7001」)0.15g、フェノール系酸化防止剤(川口化学工業株式会社製、商品名「アンテージクリスタル」)0.6gを添加し4時間撹拌後、一昼夜熟成させて第2塗液C21とした。
ステップ34では、この第2塗液C21を、染色後のレンズに浸漬法(引き上げ速度35cm/min)にて塗布した。塗布されたレンズは、120℃で60分間加熱硬化処理して、基材上に膜厚1.8μmの第2層を形成した。この第2塗布液C21による第2層の固形分比は、金属酸化物:シラン化合物:多官能エポキシ化合物で約50:50:0である。したがって、第2層は、多官能エポキシ化合物を含まず、50重量%のシラン化合物を含んでいる。
このようにして製造された染色レンズについて、以下に述べるような試験を行い、各性能をチェックした。なお、実施例1においては、図1に示した製造方法の内、第2層の上に反射防止層を形成するステップ35、および、その表面に、撥水性の防汚層(撥水層)を積層するステップ36を省いたもの製造している。
(実施例2)
実施例2では、実施例1で形成した染色レンズの第2層の上に、ステップ35により反射防止層を形成し、さらにステップ36により撥水層を形成した。まず、ステップ35では、第2層の上に基板側から順に、SiO2層とTiO2層を交互に積層させ、7層の反射防止層(多層膜)を形成した。SiO2層の形成は、真空蒸着法(真空度5.0×10−4Pa)で行った。TiO2層の形成は、イオンアシスト蒸着法(真空度4.0×10−3Pa)で行った。TiO2層をイオンアシスト蒸着で形成するときのイオンアシスト条件は加速電圧520V、加速電流値270mAで、真空度は酸素を導入して4.0×10−3Paで保持するようにした。本例では、基板側から数えて、第1層は0.083λの光学膜厚を持つSiO2層、第2層は0.07λの光学膜厚を持つTiO2層、第3層は0.10λの光学膜厚を持つSiO2層、第4層は0.18λの光学膜厚を持つTiO2層、第5層は0.065λの光学膜厚を持つSiO2層、第6層は0.14λの光学膜厚を持つTiO2層、第7層は0.26λの光学膜厚を持つSiO2層を順次積層して反射防止層としている。設計波長λは520nmであり、得られた多層膜の反射干渉色は緑色を呈した。
実施例2では、実施例1で形成した染色レンズの第2層の上に、ステップ35により反射防止層を形成し、さらにステップ36により撥水層を形成した。まず、ステップ35では、第2層の上に基板側から順に、SiO2層とTiO2層を交互に積層させ、7層の反射防止層(多層膜)を形成した。SiO2層の形成は、真空蒸着法(真空度5.0×10−4Pa)で行った。TiO2層の形成は、イオンアシスト蒸着法(真空度4.0×10−3Pa)で行った。TiO2層をイオンアシスト蒸着で形成するときのイオンアシスト条件は加速電圧520V、加速電流値270mAで、真空度は酸素を導入して4.0×10−3Paで保持するようにした。本例では、基板側から数えて、第1層は0.083λの光学膜厚を持つSiO2層、第2層は0.07λの光学膜厚を持つTiO2層、第3層は0.10λの光学膜厚を持つSiO2層、第4層は0.18λの光学膜厚を持つTiO2層、第5層は0.065λの光学膜厚を持つSiO2層、第6層は0.14λの光学膜厚を持つTiO2層、第7層は0.26λの光学膜厚を持つSiO2層を順次積層して反射防止層としている。設計波長λは520nmであり、得られた多層膜の反射干渉色は緑色を呈した。
ステップ36では、反射防止層の上に含フッ素シラン化合物からなる撥水層を真空蒸着法にて形成した。このようにして製造された染色レンズについて、以下に述べるような試験を行い、各性能をチェックした。
(実施例3)
実施例3では、実施例1と同様の工程により、配合比(組成比)が異なる第1塗料C12および第2塗料C22を用い、第1および第2層を有し、反射防止膜および撥水層を備えていない染色レンズを製造した。
実施例3では、実施例1と同様の工程により、配合比(組成比)が異なる第1塗料C12および第2塗料C22を用い、第1および第2層を有し、反射防止膜および撥水層を備えていない染色レンズを製造した。
本例の第1塗液C12は以下のように調製した。ブチルセロソルブ112.7g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン17.7gを混合した。この混合液に0.1N塩酸水溶液4.9gを攪拌しながら滴下した。さらに3時間攪拌後、一昼夜熟成させた。この液にメタノール分散酸化チタン含有複合酸化物ゾル(触媒化成工業株式会社製、商品名「オプトレイク特殊品(62)」312.5g、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコールEX−421」)50g、過塩素酸マグネシウム1.1g、Fe(III)アセチルアセトネート1.2g、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7604」)0.15g、フェノール系酸化防止剤(川口化学工業株式会社製、商品名「アンテージクリスタル」)0.6gを添加し4時間撹拌後、一昼夜熟成させて第1塗液C12とした。
ステップ32により、実施例1と同く第1塗料C12を基板の上に浸漬法(引き上げ速度20cm/min)にて塗布した。塗布したレンズは120℃で20分間加熱硬化処理して基板の上に膜厚1.0μmの第1層を形成できた。第1塗布液C12の焼成後固形分比は、金属酸化物:シラン化合物:多官能エポキシ化合物で約50:10:40となる。したがって、第1層は、40重量%の多官能エポキシ化合物と、10重量%のシラン化合物を含んでいる。
このレンズに、実施例1と同じ条件で、ステップ33において染色を行った。続いて、第2層用の第2塗液C22を調整した。ブチルセロソルブ83.1g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン70.7gを混合した。この混合液に0.1N塩酸水溶液19.4gを攪拌しながら滴下した。さらに3時間攪拌後、一昼夜熟成させた。この液にメタノール分散酸化チタン含有複合酸化物ゾル(触媒化成工業株式会社製、商品名「オプトレイク特殊品(62)」312.5g、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコールEX−421」)12.5g、過塩素酸マグネシウム0.87g、Fe(III)アセチルアセトネート0.92g、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7001」)0.15g、フェノール系酸化防止剤(川口化学工業株式会社製、商品名「アンテージクリスタル」)0.6gを添加し4時間撹拌後、一昼夜熟成させて第2塗液C22とした。
ステップ34で、この第2塗液C22を染色後のレンズに浸漬法(引き上げ速度30cm/min)にて塗布した。その後、実施例1と同じ条件でアニールし、膜厚1.8μmの第2層を形成できた。この第2塗液C22の焼成後固形分比は、金属酸化物:シラン化合物:多官能エポキシ化合物で約50:40:10となる。したがって、第2層は、10重量%の多官能エポキシ化合物と、40重量%のシラン化合物を含んでいる。このようにして製造された染色レンズについて、以下に述べるような試験を行い、各性能をチェックした。
(実施例4)
実施例4では、実施例1と同様の工程により、配合比(組成比)が異なる第1塗料C13および第2塗料C23を用い、第1および第2層を有し、反射防止膜および撥水層を備えていない染色レンズを製造した。
実施例4では、実施例1と同様の工程により、配合比(組成比)が異なる第1塗料C13および第2塗料C23を用い、第1および第2層を有し、反射防止膜および撥水層を備えていない染色レンズを製造した。
本例の第1塗液C13は、以下のように調製した。ブチルセロソルブ105.8g、テトラメトキシシラン31.7g、およびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン53.0gを混合した。この混合液に0.1N塩酸水溶液32.6gを攪拌しながら滴下した。さらに3時間攪拌後、一昼夜熟成させた。この液にメタノール分散酸化チタン含有複合酸化物ゾル(触媒化成工業株式会社製、商品名「オプトレイク特殊品(62)」250g、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコールEX−421」)25.0g、過塩素酸マグネシウム0.95g、Fe(III)アセチルアセトネート1.00g、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7604」)0.15g、フェノール系酸化防止剤(川口化学工業株式会社製、商品名「アンテージクリスタル」)0.6gを添加し4時間撹拌後、一昼夜熟成させて第1塗液C13とした。
ステップ32により、第1塗料C13を実施例1と同じく基板の上に浸漬法(引き上げ速度20cm/min)にて塗布した。塗布したレンズは120℃で20分間加熱硬化処理し、基板の上に膜厚1.0μmの第1のハードコート層を形成した。第1塗液C13の焼成後の固形分比は、金属酸化物:シラン化合物:多官能エポキシ化合物で約40:40:20となる。したがって、第1層は、20重量%の多官能エポキシ化合物と、40重量%のシラン化合物を含んでいる。
このレンズに、実施例1と同じ条件で、ステップ33において染色を行った。続いて、第2層用の第2塗液C23を調整した。ブチルセロソルブ32.4g、テトラメトキシシラン95.0g、およびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン53.0gを混合した。この混合液に0.1N塩酸水溶液68.6gを攪拌しながら滴下した。さらに3時間攪拌後、一昼夜熟成させた。この液にメタノール分散酸化チタン含有複合酸化物ゾル(触媒化成工業株式会社製、商品名「オプトレイク特殊品(62)」250g、過塩素酸マグネシウム0.48g、Fe(III)アセチルアセトネート0.50g、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7001」)0.15g、フェノール系酸化防止剤(川口化学工業株式会社製、商品名「アンテージクリスタル」)0.6gを添加し4時間撹拌後、一昼夜熟成させて第2塗液C23とした。
ステップ34で、この第2塗液C23を染色後のレンズに浸漬法(引き上げ速度40cm/min)にて塗布した。塗布したレンズは120℃で60分間加熱硬化処理して基材上に膜厚1.8μmの第2層を形成できた。この第2の塗液C23の焼成後の固形分比は、金属酸化物:シラン化合物:多官能エポキシ化合物で約40:60:0となる。したがって、第2層は、多官能エポキシ化合物を含まず、60重量%のシラン化合物を含んでいる。このようにして製造された染色レンズについて、以下に述べるような試験を行い、各性能をチェックした。
(実施例5)
実施例5では、実施例1と同様の工程により、配合比(組成比)が異なる第1塗料C14および第2塗料C24を用い、第1および第2層を有し、反射防止層および撥水層を備えていない染色レンズを製造した。
実施例5では、実施例1と同様の工程により、配合比(組成比)が異なる第1塗料C14および第2塗料C24を用い、第1および第2層を有し、反射防止層および撥水層を備えていない染色レンズを製造した。
先ず、本例の第1塗液C14は、以下のように調製した。ブチルセロソルブ63.6g、およびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン61.8gを混合した。この混合液に0.1N塩酸水溶液17.0gを攪拌しながら滴下した。さらに3時間攪拌後、一昼夜熟成させた。この液にメタノール分散酸化チタン含有複合酸化物ゾル(触媒化成工業株式会社製、商品名「オプトレイク特殊品(62)」343.8g、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコールEX−421」)12.5g、過塩素酸マグネシウム1.32g、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7604」)0.15g、フェノール系酸化防止剤(川口化学工業株式会社製、商品名「アンテージクリスタル」)0.6gを添加し4時間撹拌後、一昼夜熟成させて第1塗液C14とした。
ステップ32により、実施例1と同く、この第1塗液14を、基板の上に浸漬法(引き上げ速度20cm/min)にて塗布した。塗布したレンズは120℃で20分間加熱硬化処理して基板の上に膜厚1.0μmの第1のハードコート層を形成した。第1塗液C14の焼成後固形分比は、金属酸化物:シラン化合物:多官能エポキシ化合物で約55:35:10となる。したがって、第1層は、10重量%の多官能エポキシ化合物と、35重量%のシラン化合物を含んでいる。
このレンズに、実施例1と同じ条件で、ステップ33において染色を行った。続いて、第2層用の第2塗液C24を調製した。ブチルセロソルブ13.4g、テトラメトキシシラン47.5g、およびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン53.0gを混合した。この混合液に0.1N塩酸水溶液41.6gを攪拌しながら滴下した。さらに3時間攪拌後、一昼夜熟成させた。この液にメタノール分散酸化チタン含有複合酸化物ゾル(触媒化成工業株式会社製、商品名「オプトレイク特殊品(62)」343.8g、過塩素酸マグネシウム0.79g、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7001」)0.15g、フェノール系酸化防止剤(川口化学工業株式会社製、商品名「アンテージクリスタル」)0.6gを添加し4時間撹拌後、一昼夜熟成させて第2塗液C24とした。
ステップ34で、この第2塗液C24を染色後のレンズに浸漬法(引き上げ速度40cm/min)にて塗布した。その後、実施例1と同じ条件でアニールし、膜厚1.8μmの第2層を形成できた。この第2の塗液C24の焼成後固形分比は、金属酸化物:シラン化合物:多官能エポキシ化合物で約55:45:0となる。したがって、第2層は、多官能エポキシ化合物を含まず、45重量%のシラン化合物を含んでいる。このようにして製造された染色レンズについて、以下に述べるような試験を行い、各性能をチェックした。
(実施例6)
実施例6では、実施例1で形成した染色レンズの第2層の上に、実施例2とは異なる方法により反射防止層を形成し(ステップ35)さらにステップ36により撥水層を形成した。
実施例6では、実施例1で形成した染色レンズの第2層の上に、実施例2とは異なる方法により反射防止層を形成し(ステップ35)さらにステップ36により撥水層を形成した。
本例のステップ35では、有機系の反射防止層を湿式で形成する。そのため、反射防止層形成用の塗布液(低屈折率液)AR1を次のように調製した。先ず、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン14部、テトラメトキシシラン15部を混合したものに0.1N塩酸水溶液13部を撹拌しながら滴下し、さらに4時間撹拌後一昼夜熟成させた。この混合液にプロピレングリコールメチルエーテル878部、中空シリカゾル(触媒化成工業(株)製、商品名オスカル特殊品)80部、過塩素酸マグネシウム0.04部、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名L−7001)0.3部を添加した。
この塗布液AR1により反射防止層を形成する前に、レンズ表面(ハードコート層の表面)をプラズマ処理で親水化した。この後、塗布液AR1を湿式(ディッピング方式(引き上げ速度15cm毎分))で、実施例1で形成された染色レンズの第2層の上に塗布した。塗布後80℃で30分間風乾した後、120℃で60分焼成を行い、約100nm厚の多孔性の反射防止層(低屈折率層)の付いたレンズを得た。
塗布液AR1による反射防止層の焼成後固形分は、25%重量のγ―グリシドキシプロピルトリメトキシシランと、15重量%のテトラメトキシシランと、60%重量の中空シリカゾルを含んでいる。
ステップ36では、この反射防止層付きレンズの表面をフッ素系シラン化合物で撥水処理し、撥水層付きのレンズを得た。このようにして製造された染色レンズについて、以下に述べるような試験を行い、各性能をチェックした。
(比較例1)
比較例1では、実施例1と同様の工程により、配合比(組成比)が異なる第1塗料C15と、実施例3と同じ第2塗料C22を用い、第1および第2層を有し、反射防止層および撥水層を備えていない染色レンズを製造した。
比較例1では、実施例1と同様の工程により、配合比(組成比)が異なる第1塗料C15と、実施例3と同じ第2塗料C22を用い、第1および第2層を有し、反射防止層および撥水層を備えていない染色レンズを製造した。
第1塗液C15は以下のように調製した。ブチルセロソルブ167.7g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン8.8gを混合した。この混合液に0.1N塩酸水溶液2.4gを攪拌しながら滴下した。さらに3時間攪拌後、一昼夜熟成させた。この液にメタノール分散酸化チタン含有複合酸化物ゾル(触媒化成工業株式会社製、商品名「オプトレイク特殊品(62)」250g、過塩素酸マグネシウム2.3g、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7604」)0.15g、フェノール系酸化防止剤(川口化学工業株式会社製、商品名「アンテージクリスタル」)0.6gを添加し4時間撹拌後、一昼夜熟成させて第1塗液C15とした。
ステップ32により、実施例1と同じ塗布方法、条件およびアニール条件で、基板の上に膜厚1.0μmの第1層を形成できた。この第1塗液C15による第1層の固形分比は、金属酸化物:シラン化合物:多官能エポキシ化合物で約40:5:55となる。したがって、第1層は、55重量%の多官能エポキシ化合物と、5重量%のシラン化合物を含んでいる。このレンズに、実施例1と同じ条件で、ステップ33において染色を行った。
続いて、ステップ34で、実施例3と同じ第2塗液C22を、染色後のレンズに浸漬法(引き上げ速度35cm/min)にて塗布した。塗布したレンズは、120℃で120分間加熱硬化処理し、基板の上に膜厚2.0μmの第2層を形成した。
この第2塗液C22の焼成後固形分比は、金属酸化物:シラン化合物:多官能エポキシ化合物で約50:40:10である。したがって、第2層は、10重量%の多官能エポキシ化合物と、40重量%のシラン化合物を含んでいる。このようにして製造された染色レンズについて、以下に述べるような試験を行い、各性能をチェックした。
(比較例2)
比較例2では、実施例1と同様の工程により、実施例1の第1塗料C11と、配合比(組成比)が異なる第2塗料C25を用い、第1および第2層を有し、反射防止膜および撥水層を備えていない染色レンズを製造した。
比較例2では、実施例1と同様の工程により、実施例1の第1塗料C11と、配合比(組成比)が異なる第2塗料C25を用い、第1および第2層を有し、反射防止膜および撥水層を備えていない染色レンズを製造した。
ステップ32により、実施例1の第1塗料C11を用い、実施例1と同じ塗布方法、条件およびアニール条件で、基板の上に膜厚1.0μmの第1層を形成できた。この第1塗液C11による第1層の固形分比は、金属酸化物:シラン化合物:多官能エポキシ化合物で約50:20:30となる。したがって、第1層は、30重量%の多官能エポキシ化合物と、20重量%のシラン化合物を含んでいる。このレンズに、実施例1と同じ条件で、ステップ33において染色を行った。
第2層用の第2塗液C25を次のように調製した。ブチルセロソルブ97.9g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン44.2gを混合した。この混合液に0.1N塩酸水溶液12.1gを攪拌しながら滴下した。さらに3時間攪拌後、一昼夜熟成させた。この液にメタノール分散酸化チタン含有複合酸化物ゾル(触媒化成工業株式会社製、商品名「オプトレイク特殊品(62)」312.5g、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコールEX−421」)31.3g、過塩素酸マグネシウム1.0g、Fe(III)アセチルアセトネート1.1g、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7604」)0.15g、フェノール系酸化防止剤(川口化学工業株式会社製、商品名「アンテージクリスタル」)0.6gを添加し4時間撹拌後、一昼夜熟成させて第2塗液C25とした。
ステップ34では、この第2塗液C25を染色後のレンズに浸漬法(引き上げ速度30cm/min)にて塗布した。塗布した基材レンズは120℃で120分間加熱硬化処理して基材上に膜厚1.8μmの第2層を形成した。この第2塗液C25による第2層の固形分比は、金属酸化物:シラン化合物:多官能エポキシ化合物で約50:25:25である。したがって、第2層は、25重量%の多官能エポキシ化合物と、25重量%のシラン化合物を含んでいる。このようにして製造された染色レンズについて、以下に述べるような試験を行い、各性能をチェックした。
(比較例3)
比較例3では、実施例1と同様の工程により、多官能エポキシ化合物を含まない第1塗料C16と、実施例1の第2塗料C21とを用い、第1および第2層を有し、反射防止膜および撥水層を備えていない染色レンズを製造した。
比較例3では、実施例1と同様の工程により、多官能エポキシ化合物を含まない第1塗料C16と、実施例1の第2塗料C21とを用い、第1および第2層を有し、反射防止膜および撥水層を備えていない染色レンズを製造した。
第1塗液C16は、次のように調製した。ブチルセロソルブ46.7g、テトラメトキシシラン31.7g、およびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン70.7gを混合した。この混合液に0.1N塩酸水溶液37.4gを攪拌しながら滴下した。さらに3時間攪拌後、一昼夜熟成させた。この液にメタノール分散酸化チタン含有複合酸化物ゾル(触媒化成工業株式会社製、商品名「オプトレイク特殊品(62)」312.5g、過塩素酸マグネシウム1.1g、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7604」)0.15g、フェノール系酸化防止剤(川口化学工業株式会社製、商品名「アンテージクリスタル」)0.6gを添加し4時間撹拌後、一昼夜熟成させて第1塗液C16とした。
ステップ32により、実施例1と同じ塗布方法、条件およびアニール条件で、基板の上に膜厚1.0μmの第1層を形成できた。この第1塗液C16による第1層の固形分比は、金属酸化物:シラン化合物:多官能エポキシ化合物で約50:50:0となる。したがって、第1層は、多官能エポキシ化合物を含まず、50重量%のシラン化合物を含んでいる。このレンズに、実施例1と同じ条件で、ステップ33において染色を行った。
続いて、ステップ34で、実施例1の第2塗液C21を、染色後のレンズに浸漬法(引き上げ速度35cm/min)にて塗布した。塗布した基材レンズは120℃で120分間加熱硬化処理して基材上に膜厚2.0μmの第2層を形成できた。この第2塗布液C21による第2層の固形分比は、金属酸化物:シラン化合物:多官能エポキシ化合物で約50:50:0である。したがって、第2層は、多官能エポキシ化合物を含まず、50重量%のシラン化合物を含んでいる。このようにして製造された染色レンズについて、以下に述べるような試験を行い、各性能をチェックした。
(比較例4)
比較例4では、図2に示すように、ステップ41で基板を形成した後、ステップ42で、第1塗料C17を用いて第1層を形成し、さらに、ステップ43で実施例3の第2塗料C22を用い第2層を形成する。この後、ステップ44により染色し、染色レンズを製造する。なお、比較例4においては、図2に示した製造方法の内、第2層の上に反射防止層を形成するステップ45、および、その表面に、撥水性の防汚層(撥水層)を積層するステップ46を省いたもの製造している。
比較例4では、図2に示すように、ステップ41で基板を形成した後、ステップ42で、第1塗料C17を用いて第1層を形成し、さらに、ステップ43で実施例3の第2塗料C22を用い第2層を形成する。この後、ステップ44により染色し、染色レンズを製造する。なお、比較例4においては、図2に示した製造方法の内、第2層の上に反射防止層を形成するステップ45、および、その表面に、撥水性の防汚層(撥水層)を積層するステップ46を省いたもの製造している。
第1塗液C17は、以下のように調製した。市販の水性ポリエステル「A−160P」(高松油脂株式会社製、固形分濃度25%)186g、メタノール257g、水15g、ブチルセロソルブ37gを混合し、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー株式会社製、商品名「L−7604」)0.1gを加え3時間攪拌し調合した。ステップ42においては、この第1塗液C17を、ステップ41で形成したセイコースーパーソブリン(商品名)用プラスチックレンズ基材(セイコーエプソン株式会社製、屈折率1.67)上に浸漬法(引き上げ速度15cm/min)にて塗布した。塗布した基材レンズは、さらに、100℃で20分間加熱硬化処理して基材上に膜厚1.0μmの第1層を形成した。
ステップ43では、この第1層を形成した基材レンズ上に、実施例3の第2塗液C22を浸漬法(引き上げ速度35cm/min)にて塗布した。塗布した基材レンズは120℃で120分間加熱硬化処理して基材上に膜厚2.0μmの第2層を形成した。
その後、ステップ44において、第1および第2層を有するレンズを94℃の分散染料浴中に10分間浸漬し、染色した。このようにして製造された染色レンズについて、以下に述べるような試験を行い、各性能をチェックした。
(比較例5)
比較例5は、比較例4で得られた染色レンズに、図2のステップ45および46により反射防止層と撥水層を形成し、製造された染色レンズについて、以下に述べるような試験を行い、各性能をチェックした。ステップ45および46における反射防止層と撥水層の製造方法は、実施例2における反射防止層と撥水層の製造方法と同じである。すなわち、真空蒸着法で染色レンズ上に基板側から順に、SiO2層とTiO2層を交互に積層させた7層の反射防止層を形成し、その反射防止層上に含フッ素シラン化合物の撥水層を真空蒸着法で形成した。
比較例5は、比較例4で得られた染色レンズに、図2のステップ45および46により反射防止層と撥水層を形成し、製造された染色レンズについて、以下に述べるような試験を行い、各性能をチェックした。ステップ45および46における反射防止層と撥水層の製造方法は、実施例2における反射防止層と撥水層の製造方法と同じである。すなわち、真空蒸着法で染色レンズ上に基板側から順に、SiO2層とTiO2層を交互に積層させた7層の反射防止層を形成し、その反射防止層上に含フッ素シラン化合物の撥水層を真空蒸着法で形成した。
(評価方法・評価基準)
実施例1から6および比較例1から5として説明した製造方法で得られた染色レンズに対して、耐擦傷性、耐候性、耐湿性、耐候性後の密着性、耐湿性後の密着性、染色性(染色速度・染色ムラ)に関する試験を行った。その結果を図3に纏めてある。
実施例1から6および比較例1から5として説明した製造方法で得られた染色レンズに対して、耐擦傷性、耐候性、耐湿性、耐候性後の密着性、耐湿性後の密着性、染色性(染色速度・染色ムラ)に関する試験を行った。その結果を図3に纏めてある。
耐擦傷性の試験は、染色レンズ(ワーク)に、ボンスター#0000 スチールウール(日本スチールウール(株)製)で1kgの荷重をかけ、10 往復表面を摩擦し、傷ついた程度を目視で観察した。この耐擦傷性の評価基準は、傷の程度を目視の観察により10段階(1(悪)〜10(良))にランク付けし、「◎」は段階10〜8で非常に耐擦傷性が高く、「〇」は段階7〜6で耐擦傷性が高く、「△」は段階5〜4で耐擦傷性は若干低く、「×」は段階3〜1で耐擦傷性が低いことを示している。
耐候性の試験は、染色レンズ(ワーク)を、キセノンランプによるサンシャインウェザーメーターに250時間暴露した後の表面状態の変化を目視により観察した。この耐候性の評価基準は、表面状態の変化の程度を目視により次の4段階に分けて評価した。「◎」は変化が認められない状態で耐侯性が高く、「〇」は白濁が発生した状態では耐侯性が良く、「△」はクラックが発生した状態で耐候性が若干低く、「×」はハガレが発生した状態で耐候性が低いことを示している。
耐湿性の試験は、60℃×99%雰囲気に10日間放置した後、表面状態の変化を目視により観察した。この評価基準は、耐侯性の評価基準と同じである。
密着性の試験は、レンズ基材と表面処理層(ハードコート層および反射防止層)の密着性について、耐候性と耐湿性の試験を行った後に、すなわち耐候性後密着性・耐湿性後密着性を試験した。これは、JISD−0202に準じてクロスカットテープ試験によって行った。即ち、ナイフを用い基材表面に1mm 間隔に切れ目を入れ、1平方mmのマス目を100個形成させ、次に、その上ヘセロファン粘着テープ(ニチバン(株)製:商品名「セロテープ(登録商標)」)を強く押し付けた後、表面から90度方向へ急に引っ張り剥離した後コート被層(膜)の残っているマス目を密着性指標として、目視で観察した。密着性の評価基準は、「◎」はコ−ト膜の残った面積が100%であり、密着性が非常に高いことを示し、「〇」はコ−ト膜の残った面積が95%以上〜100%未満であり、密着性が高いことを示し、「△」はコ−ト膜の残った面積が50%以上〜95%未満であり、密着性が若干劣っていることを示し、「×」はコ−ト膜の残った面積が50%未満であり、密着性が劣っていることを示している。
染色性の試験は、94℃の分散染料浴中に10分間浸漬し染色したレンズの染色速度と色ムラを目視で評価した。染色速度の評価は、94℃の分散染料浴中に10分間浸漬させ、分光光度形で視感透過率を測定し、「◎」は視感透過率30%以下であり染色速度が最適で非常に染色性が高いことを示し、「〇」は視感透過率50%以下であり染色速度が良好で染色性が良いことを示し、「△」は視感透過率70%以下であり染色速度が若干悪く染色性が若干劣っていることを示し、「×」は視感透過率70%以上で染色速度が速すぎ染色性が劣ることを示している。
染色の色ムラの評価は、94℃の分散染料浴中に浸漬させ、分光光度形で視感透過率が60%になった時の色むらの程度を目視の観察により10段階((1(悪)〜10(良)))にランク付けした。「◎」は段階10〜8で、色ムラがなく染色性が非常に高いことを示し、「〇」は段階7〜6で、色ムラがなく染色性が高いことを示し、「△」は段階5〜4で、色ムラが若干あり染色性が若干劣ることを示し、「×」は段階3〜1で、色ムラがあり染色性が劣ることを示している。
実施例1から6により製造された染色レンズは、いずれも、上述した条件(1)から(3)を満たしている。すなわち、第1層の多官能エポキシの含有量H1および第2層の多官能エポキシの含有量H2を比較した場合、第1層の含有量H1が第2層の含有量H2よりも少なく、第1層の含有量H1は、5重量%以上、50重量%以下であり、第2層の含有量H2は、含まれていないか、または15重量%以下である。図3から分かるように、実施例1から6により製造された染色レンズは、耐擦傷性、耐侯性、耐湿性、耐侯性後の密着性、耐湿性後の密着性、染色速度および染色ムラの全ての試験で「◎」という最上級の評価が示されている。したがって、染色性が非常に良く、耐擦傷性も非常に高く、耐久性能と色性能とを両立して得ることができる染色レンズである。
比較例1により製造された染色レンズは、第1層の多官能エポキシ化合物の含有量H1が55重量%であり、条件(2)よりも多く配合されている。したがって、第1層の硬度が若干低いことが懸念され、実際の評価としても、耐擦傷性、耐侯性後の密着性および耐湿性後の密着性は「〇」で実施例1から6の染色レンズに対して多少性能が低いことが分かる。さらに、染色ムラの評価が「×」と低く、多官能エポキシ化合物の含有量H1が高いために染色性が高すぎることを示している。
比較例2により得られた染色レンズは、第2層の多官能エポキシ化合物の含有量H2が25重量%であり、条件(3)よりも多く配合されている。このため、耐擦傷性が「×」と低く、機能層である第2層の硬度が不足している結果となっている。
比較例3により得られた染色レンズは、第1層に多官能エポキシ化合物が含まれておらず、条件(2)の範囲から外れている。このため、染色速度の評価が「×」と低く、第1層の染色性が低すぎることを示している。また、耐侯性後の密着性および耐湿性後の密着性の評価が「〇」が若干低くなっており、第2層に対する下地層としての機能も低下していることを示している。
比較例4により得られた染色レンズは、図3に示したように、染色ムラ、耐擦傷性、耐侯性後の密着性、および耐湿性後の密着性が「△」と低い。比較例4は、第2層を形成した後に染色する製造方法であり、第2層は10重量%の多官能エポキシ化合物を含有している。したがって、第2層の染色性はある程度あるが、第1層の染色性はなく、それが色ムラとして現れていると考えられる。また、第1層はシラン化合物が含まれておらず、硬度が不足するために機械的強度が低くなっている。
比較例5により得られた染色レンズの評価は、染色ムラの評価は比較例4と同じ「△」であるが、耐擦傷性、耐侯性後の密着性および耐湿性後の密着性は「〇」に改善されている。これらの性能の向上は、反射防止層および撥水層によるものであると考えられ、反射防止層および撥水層を形成することにより機械的強度も向上できることを示している。
このように、ハードコート層を第1層と第2層とにより形成し、さらに、第1層を、多官能エポキシ化合物を含む上述したような組成にすることにより、可染性を高める共に、第2層を積層する前に、この第1層を直に染色することで過度の染色性を持たせることなく染色ムラを低減した状態で着色することができる。さらに、染色した後に第1層の上に第2層を直に積層することで、ハードコート層全体の膜硬度をさらに高めることが可能となる。
この製造方法は、レンズ基材を染めずに、染色レンズが作ることができる。特に、基材がガラスレンズの場合や難染色性の樹脂性のプラスチックレンズは染色性がかなり低いが、本発明においては、下地層として機能する第1層を設けることで染色が可能となると共に、ハードコート層の密着性も確保できるという相乗効果をもたらす。
さらに、第1層自体に硬さがあるので、第1層を塗布、硬化した段階の中間在庫が可能となり、レンズ生地を保管するよりもキズに強く保管が容易になる。そして、受注後に、染色し、第2層、さらには反射防止層などを形成するコートを加工することで、短納期を実現できる。また、染色工程で不良が発生した場合や、プライマー層の外観上の不良が発生した場合には、該第1層をアルカリ処理液で剥離後、再度、第1層層を設け、染色を行うことによって、再生が可能であることは上述した通りである。
なお、上記では基板がプラスチックレンズを例に説明しているが、ガラスレンズであっても同様の効果を得ることができる。さらに、上記では、眼鏡に用いるプラスチックレンズを染色レンズとして製造し、染色性の他に、密着性や耐擦傷性などの耐久性を評価しているが、本発明に適用可能な染色レンズ(光学素子)は、眼鏡レンズに限らず、カメラ用ンレンズであっても良く、さらに、本発明は、その他の光学素子、例えば、プリズムなどにも適用できる。
また、実施例2では、無機被膜の多層で構成され反射防止層を説明したが、これに限らず、無機被膜の単層で反射防止層を構成したものも本発明に含まれる。無機被膜の材質としては、上述したSiO2およびTiO2に限らず、例えばSiO 、ZrO2 、TiO 、Ti2O3 、Ti2O5、Al2O3 、Ta2O5 、CeO2 、MgO、Y2O3 、SnO2 、MgF2 、WO3等の無機物が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。プラスチックレンズの場合は、低温で真空蒸着が可能なSiO2、ZrO2、TiO2、Ta2O5が好ましい。また、多層膜構成とした場合は、最外層はSiO2とすることが好ましい。無機被膜の形成方法は、例えば真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法、飽和溶液中での化学反応により析出させる方法等を採用することができる。真空蒸着法においては、蒸着中にイオンビームを同時に照射するイオンビームアシスト法を用いてもよい。
さらに、実施例6では、有機系の反射防止層を湿式で形成する際にディッピング方式を用いているが、スピンコート法などの他の方法により反射防止層を形成することも可能である。
また、ステップ35において、反射防止層を形成する際には、第2層の表面処理を行うことが望ましい。この表面処理の具体的例としては、酸処理、アルカリ処理、紫外線照射処理、アルゴンもしくは酸素雰囲気中での高周波放電によるプラズマ処理、アルゴンや酸素もしくは窒素などのイオンビーム照射処理などが挙げられる。さらに、反射防止層の表面を汚れ難く、あるいは汚れを拭き取りやすくするために、パーフルオロアルキル基等を含む含フッ素シラン化合物などを用いて反射防止層の表面に撥水層を形成することができる。
Claims (9)
- 基板と、この基板上に積層され、染色された下地層と、
この下地層に積層され、染色されていない機能層とを有する染色レンズ。 - 請求項1において、前記下地層および前記機能層は、金属酸化物微粒子、シラン化合物および多官能エポキシ化合物を主成分として含み、
前記下地層の前記多官能エポキシ化合物の含有量H1と、前記機能層の前記多官能エポキシ化合物の含有量H2とは次の条件を満たす染色レンズ。
H1>H2
5重量%≦H1≦50重量%
0重量%≦H2≦15重量% - 請求項1または2において、前記機能層は、30重量%から50重量%のシラン化合物を含む、染色レンズ。
- 請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記下地層は、分散染料で染色されている染色レンズ。
- 請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記基板がプラスチックレンズまたはガラスである染色レンズ。
- 基板の上に、下地層を形成する第1の工程と、
前記下地層を染色する染色工程と、
前記下地層の上に機能層を形成する第2の工程とを有する染色レンズの製造方法。 - 請求項6において、前記第1の工程および第2の工程では、前記下地層および前記機能層は、金属酸化物微粒子、シラン化合物および多官能エポキシ化合物を主成分として含む前記下地層および前記機能層をそれぞれ形成し、
前記下地層の前記多官能エポキシ化合物の含有量H1と、前記機能層の前記多官能エポキシ化合物の含有量H2とは次の条件を満たす染色レンズの製造方法。
H1>H2
5重量%≦H1≦50重量%
0重量%≦H2≦15重量% - 請求項6または7において、前記第2の工程の後に、前記機能層の上に反射防止層を形成する工程と、その表面に撥水層を形成する工程とを有する染色レンズの製造方法。
- 請求項8において、前記反射防止層を形成する工程では、中空シリカ微粒子およびシラン化合物を主成分とする反射防止層形成用の塗布液を、ディッピング方式およびスピンコート方式を含む湿式により塗布する、染色レンズの製造方法。
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JP2009237075A (ja) * | 2008-03-26 | 2009-10-15 | Seiko Epson Corp | プラスチックレンズの染色方法 |
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WO2019208426A1 (ja) * | 2018-04-27 | 2019-10-31 | コニカミノルタ株式会社 | 光学薄膜、光学部材及び光学薄膜の製造方法 |
-
2004
- 2004-12-14 JP JP2004361000A patent/JP2006079046A/ja not_active Withdrawn
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