JP2009221462A - ビニルアルコール系重合体フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 粘度平均重合度4000〜8000;ケン化度99.50〜99.97モル%;1,2−グリコール結合単位含有量1〜1.5モル%;粘度1000mPa・sのビニルアルコール系重合体水溶液が10℃で粘度20000mPa・sまで増粘する時間が50〜250分;並びにPVA系重合体水溶液の光路長30mmのセルを使用してなる波長280nm及び320nmにおける濃度補正後の吸光度(測定温度20℃)が0.02L/g以下であるビニルアルコール系重合体を用いて形成したフィルム。
【選択図】 なし
Description
本発明者らが、この特許文献1のポリビニルアルコールフィルムについて検討したところ、現在の高精細化が進んだLCD用偏光板の製造に用いるには、この特許文献1の出願当時の製品レベルでは問題視されなかったような微小な欠点をも除去する必要があり、欠点数をより少なくして、品質を一層向上させる必要があることが判明した。
さらに、シリカなどの無機物(無機微粒子)を含有させたビニルアルコール系重合体フィルムは、コンポスト用フィルムなどの用途に用いられているが、水膨潤度が小さくて耐水性に優れる無機物含有ビニルアルコール系重合体フィルムが求められている。
さらに、本発明の目的は、水膨潤度が小さく、耐水性に優れる無機物含有ビニルアルコール系重合体フィルムを提供することである。
また、本発明者らは、前記ビニルアルコール系重合体を用いると無機物との混合溶液が容易に調製でき、当該混合溶液を用いて無機物含有ビニルアルコール系重合体フィルムを製造すると、水に対する膨潤度が小さく耐水性に優れる無機物含有ビニルアルコール系重合体フィルムが得られることなどを見出して本発明を完成した。
(1) 下記の要件《1》〜《5》を満足するビニルアルコール系重合体を用いて形成したことを特徴とするビニルアルコール系重合体フィルムである。
《1》粘度平均重合度(P)が4000〜8000である;
《2》ケン化度が99.50〜99.97モル%である;
《3》1,2−グリコール結合単位の含有量が1〜1.5モル%である;
《4》当該ビニルアルコール系重合体を水に溶解して10℃での粘度が10000mPa・sであるビニルアルコール系重合体水溶液を調製し、その水溶液を10℃で静置したときに、粘度が20000mPa・sまで増加するのに要する時間が50〜250分である;および、
《5》当該ビニルアルコール系重合体を水に溶解して調製した濃度30g/Lのビニルアルコール系重合体水溶液[粘度平均重合度(P)が6000未満のビニルアルコール系重合体の場合]または濃度10g/Lのビニルアルコール系重合体水溶液[粘度平均重合度(P)が6000以上のビニルアルコール系重合体の場合]の、光路長30mmのセルを用いて測定してなる、波長280nmおよび320nmにおける濃度補正後の吸光度(測定温度20℃)が、いずれも0.02L/g以下である。
(2) 10cm角に切り出したビニルアルコール系重合体フィルムを、50℃、1リットルの水中に4時間放置した時のビニルアルコール系重合体の溶出液濃度a(ppm)と、30℃、1リットルの水中に4時間放置した時のビニルアルコール系重合体の溶出液濃度b(ppm)の比(a/b)が15〜50である、前記(1)のビニルアルコール系重合体フィルム;
(3) 10cm角に切り出したビニルアルコール系重合体フィルムを、50℃、1リットルの水中に4時間放置した時のビニルアルコール系重合体の溶出液濃度aが10〜50ppmである、前記(1)または(2)のビニルアルコール系重合体フィルム;
(4) 膨潤度が200〜240%である、前記(1)〜(3)のいずれかのビニルアルコール系重合体フィルム;
(5) レターデーションが10〜40nmである、前記(1)〜(4)のいずれかのビニルアルコール系重合体フィルム;
(6) さらに可塑剤を含有する、前記(1)〜(5)のいずれかのビニルアルコール系重合体フィルム;および、
(7) フィルム幅が2m以上である、前記(1)〜(6)のいずれかのビニルアルコール系重合体フィルム;
である。
特に、本発明のビニルアルコール系重合体フィルム(無機物を含有させない透明なビニルアルコール系重合体フィルム)は、偏光フィルムを作製するときの各工程(染色、固定処理、膨潤、延伸などの工程)でのビニルアルコール系重合体の溶出量が小さいため、本発明のビニルアルコール系重合体フィルムを原反として用いることにより、大面積でありながら欠点の少ない高性能の偏光フィルムを得ることができる。
また、上記の要件《1》〜《5》を満足するビニルアルコール系重合体中に無機物を含有させて調製した本発明の無機物含有ビニルアルコール系重合体フィルムは、水に対する膨潤度が小さく耐水性に優れており、コンポスト用フィルムなどの用途に有効に使用することができる。
本発明のビニルアルコール系重合体フィルムは、下記の要件《1》〜《5》、即ち、
《1》粘度平均重合度(P)が4000〜8000である;
《2》ケン化度が99.50〜99.97モル%である;
《3》1,2−グリコール結合単位の含有量が1〜1.5モル%である;
《4》当該ビニルアルコール系重合体を水に溶解して10℃での粘度が10000mPa・sであるビニルアルコール系重合体水溶液を調製し、その水溶液を10℃で静置したときに、粘度が20000mPa・sまで増加するのに要する時間が50〜250分である;および、
《5》当該ビニルアルコール系重合体を水に溶解して調製した濃度30g/Lのビニルアルコール系重合体水溶液[粘度平均重合度(P)が6000未満のビニルアルコール系重合体の場合]または濃度10g/Lのビニルアルコール系重合体水溶液[粘度平均重合度(P)が6000以上のビニルアルコール系重合体の場合]の、光路長30mmのセルを用いて測定してなる、波長280nmおよび320nmにおける濃度補正後の吸光度(測定温度20℃)が、いずれも0.02L/g以下である;
という5つの要件を満足するビニルアルコール系重合体を用いて形成されている。
本発明のビニルアルコール系重合体フィルムを形成するビニルアルコール系重合体は、フィルムの耐水性や取り扱い性、フィルムを製造するためのビニルアルコール系重合体溶液の粘度安定性、無機物含有ビニルアルコール系重合体フィルムを製造するためのビニルアルコール系重合体と無機物を含有する混合溶液の調製の容易性などの点から、粘度平均重合度(P)が4200〜7500であることが好ましく、4500〜7000であることがより好ましい。
粘度平均重合度(P)=([η]×1000/8.29)(1/0.62) (I)
ビニルアルコール系重合体のケン化度が99.50モル%未満であると、ビニルアルコール系重合体を水に溶解して10℃での粘度が10000mPa・sであるビニルアルコール系重合体水溶液を調製し、その水溶液を10℃で静置したときに、粘度が20000mPa・sまで増加するのに要する時間が250分を超えるようになり、当該ビニルアルコール系重合体の溶液から形成したフィルム(無機物を含有しないビニルアルコール系重合体フィルム)、ビニルアルコール系重合体と無機物を含有する混合溶液から形成した無機物含有ビニルアルコール系重合体フィルムの水膨潤度が大きくなって、耐水性が低下する。一方、ビニルアルコール系重合体のケン化度が99.97モル%を超えると、ビニルアルコール系重合体フィルムの製造に用いるビニルアルコール系重合体の溶液や、ビニルアルコール系重合体と無機物を含有する混合溶液の調製が困難になり、しかも当該溶液の経時増粘が大きくなり、溶液の安定性および取り扱い性が不良になる。
本発明のフィルムを形成するビニルアルコール系重合体のケン化度は、フィルムの耐水性、フィルムの製造に用いるビニルアルコール系重合体溶液や、ビニルアルコール系重合体と無機物を含有する混合溶液の調製の容易性、ビニルアルコール系重合体溶液の粘度安定性、取り扱い性などの点から、99.58〜99.96モル%であることが好ましく、99.65〜99.95モル%であることがより好ましい。
ビニルアルコール系重合体における1,2−グリコール結合単位の含有量が1モル%未満であると、ビニルアルコール系重合体溶液の粘度安定性が低下し、経時増粘が大きくなり易く、またビニルアルコール系重合体と無機物を含有する混合溶液の調製が困難になり易い。一方、ビニルアルコール系重合体における1,2−グリコール結合単位の含有量が1.5モル%を超えると、ビニルアルコール系重合体フィルム(無機物を含有しないビニルアルコール系重合体フィルムおよび無機物含有ビニルアルコール系重合体フィルム)の耐水性が低下したものになり易い。
本発明のビニルアルコール系重合体は、耐水性、ビニルアルコール系重合体水溶液の調製の容易性、ビニルアルコール系重合体から調製した水溶液の粘度安定性、ビニルアルコール系重合体と無機物との混合水溶液の調製の容易性などの点から、1,2−グリコール結合単位をビニルアルコール系重合体を構成する全構造単位の合計モル数に基づいて、1.2〜1.5モル%の割合で有することが好ましい。
1,2−グリコール結合単位の含有量は、以下の実施例に記載するように、NMRを使用して求めることができる。
粘度10000mPa・sのビニルアルコール系重合体水溶液の粘度が10℃で20000mPa・sまで増加するのに要する時間が50分未満であるビニルアルコール系重合体は、無機物との混合溶液を調製した際に早期にゲル化が生じて、安定な混合溶液を調製することができない。一方、粘度10000mPa・sのビニルアルコール系重合体水溶液の粘度が10℃で20000mPa・sまで増加するのに要する時間が250分を超えるビニルアルコール系重合体は、無機物とビニルアルコール系重合体の混合溶液を用いて形成したフィルムの耐水性が低下し、水に膨潤し易くなる。
本発明のフィルムを形成するビニルアルコール系重合体は、当該ビニルアルコール系重合体を水に溶解して10℃での粘度が10000mPa・sであるビニルアルコール系重合体水溶液を調製し、その水溶液を10℃で静置したときに、粘度が20000mPa・sまで増加するのに要する時間が60〜240分であることが好ましい。
また、ビニルアルコール系重合体における酢酸ナトリウムなどの含有量を調整することによっても、上記の要件《4》を満足する水溶液粘度挙動を示すビニルアルコール系重合体を得ることができる。すなわち、酢酸ナトリウムの含有量が多いとビニルアルコール系重合体水溶液の増粘速度が増加し、一方酢酸ナトリウムの含有量が少ないとビニルアルコール系重合体水溶液の増粘速度が低下する。そのため、本発明のフィルムを形成するビニルアルコール系重合体では、要件《4》を満足する限りは酢酸ナトリウムの含有量は特に制限されないが、酢酸ナトリウムの含有量をビニルアルコール系重合体の質量に基づいて2質量%以下、更には1質量%以下、特に0.5質量%以下にすることによって、上記の要件《4》を満足する水溶液挙動を有するビニルアルコール系重合体をより円滑に得ることができる。
ここで、本明細書でいう、『ビニルアルコール系重合体を水に溶解して調製した濃度30g/Lのビニルアルコール系重合体水溶液[粘度平均重合度(P)が6000未満のビニルアルコール系重合体の場合]または濃度10g/Lのビニルアルコール系重合体水溶液[粘度平均重合度(P)が6000以上のビニルアルコール系重合体の場合]の、光路長30mmのセルを用いて測定してなる、波長280nmおよび320nmにおける濃度補正後の吸光度(測定温度20℃)』とは、前記した濃度30g/Lまたは濃度10g/Lのビニルアルコール系重合体水溶液の吸光度を、光路長30mmのセルを用いて測定して得られる、波長280nmにおける吸光度および波長320nmにおける吸光度の値を、測定に使用したビニルアルコール系重合体水溶液の濃度(単位g/L)で除した値(単位L/g)をいう。
以下、当該濃度補正後の吸光度を、「波長280nmおよび320nmにおける濃度補正後の吸光度(セル光路長30mm)」というように記載することがある。
前記濃度のビニルアルコール系重合体水溶液の、波長280nmおよび320nmにおける濃度補正後の吸光度(セル光路長30mm)が0.02L/gを超えると、ビニルアルコール系重合体フィルムに着色が生じたり、耐候性が低下する。
本発明のフィルムを形成するビニルアルコール系重合体では、当該ビニルアルコール系重合体を水に溶解して調製した前記濃度のビニルアルコール系重合体水溶液の、波長280nmおよび320nmにおける濃度補正後の吸光度(セル光路長30mm)(測定温度20℃)が、いずれも0.018L/g以下であることが好ましい。
前記ビニルアルコール系重合体水溶液の、波長280nmおよび320nmにおける濃度補正後の吸光度(セル光路長30mm)の下限値は特に制限されないが、前記吸光度が0.008L/g未満となるビニルアルコール系重合体は、ビニルアルコール系重合体の製造工程中に生じる不純物除去などに手間やコストがかかるので、前記吸光度は0.008L/g以上であることが実用的である。
後述する製造方法を採用することによって、前記濃度のビニルアルコール系重合体水溶液の、波長280nmおよび320nmにおける濃度補正後の吸光度(セル光路長30mm)(測定温度20℃)がいずれも0.02L/g以下となるビニルアルコール系重合体を円滑に製造することができる。
そのうちでも、本発明のフィルムを形成するビニルアルコール系重合体は、(i)ビニルエステル系単量体100質量部に対してアルコールを2.5〜10質量部の割合で含むビニルエステル系単量体混合物を重合槽内に仕込み、当該ビニルエステル系単量体混合物の大気圧下での沸点以下の温度で、重合槽内の圧力を減圧状態に保ちながら沸騰状態で、重合率8〜30質量%でビニルエステル系単量体を重合して、ケン化後に粘度平均重合度(P)が4000〜8000のビニルアルコール系重合体となる重合度を有するビニルエステル系重合体を製造し、次いで(ii)前記(i)の工程で得られるビニルエステル系重合体を含む反応生成物に重合禁止剤を添加し、反応生成物中に残存するビニルエステル系単量体をアルコールで置換して除去した後、アルカリ性物質の存在下に、ビニルエステル系重合体を、ケン化度99.50〜99.97モル%でビニルアルコール系重合体を生成する条件下でケン化する、という製造方法によって円滑に製造することができる。
その際に、重合槽へのビニルエステル系単量体を主体とする単量体およびアルコールの供給量と反応生成物の重合槽からの取り出し量(単位時間当たりの供給量と取り出し量)、重合槽内での滞留時間などは、ビニルエステル系単量体とアルコールの質量比、重合温度、重合率、重合槽の規模、重合速度などに応じて調整する。重合率を8〜30質量%の範囲内にするためには、重合槽内での滞留時間は、一般的に1〜12時間、特に2〜6時間であることが好ましい。
ビニルエステル系単量体混合物が含有し得る他の共重合性単量体の種類としては、本発明のビニルアルコール系重合体が必要に応じて有していてもよい他の共重合単量体に由来する構造単位を構成する単量体として、上記の段落0026に例示したものを挙げることができ、それらの1種または2種以上を用いることができる。
重合開始剤の使用量は、一般に、ビニルエステル系単量体をも含めた全重合性単量体の合計質量に対して、0.0001〜0.02質量%(1〜200質量ppm)、特に0.0005〜0.01質量%(5〜100質量ppm)程度とすることが、上記の要件《1》〜《5》を満足するビニルアルコール系重合体が円滑に得られる点から好ましい。
前記ビニルエステル系単量体混合物中のアルコールの含有割合が、ビニルエステル系単量体100質量部に対して2.5質量部未満であると、上記の要件《5》で規定する水溶液吸光度を満足するビニルアルコール系重合体が得られなくなり、得られるビニルアルコール系重合体は着色が生じていて、色調に劣り、しかも耐候性にも劣ったものとなる。一方、ビニルエステル系単量体100質量部に対してアルコールの含有量が10質量部を超えると、ビニルエステル系重合体の生産効率、ひいてはビニルアルコール系重合体の生産効率が大きく低下すると共に、ビニルアルコール系重合体と無機物との混合水溶液から形成したフィルムが水に膨潤し易くなり、耐水性が低下する。
ビニルエステル系単量体の重合時の温度が、ビニルエステル系単量体混合物の大気圧下での沸点よりも高い温度であると、ビニルアルコール系重合体における1,2−グリコール結合単位の含有量が1.5モル%を超えてしまい、要件《1》〜《5》を満足するビニルアルコール系重合体を得ることが困難になり易い。その上、それによって得られるビニルアルコール系重合体と無機物を含有する混合溶液から形成したフィルムは、水に膨潤し易くなり、耐水性に劣るようになる。
また、ビニルエステル系単量体の重合時の温度が、ビニルエステル系単量体混合物の大気圧下での沸点以下の温度であっても、減圧状態にせず(沸騰させず)に重合を行った場合には、ビニルアルコール系重合体水溶液の、波長280nmおよび320nmにおける濃度補正後の吸光度(セル光路長30mm)(測定温度20℃)がいずれも0.02L/gを超えることがあり、要件《1》〜《5》を満足するビニルアルコール系重合体を得ることが困難になり易い。その結果、当該ビニルアルコール系重合体から成形したフィルムの耐候性が低下するようになる。
また、前記した温度における重合槽内のビニルエステル系単量体混合物を沸騰状態にするために、重合槽内の圧力(絶対圧)は1〜100KPa、特に20〜90KPaであることが好ましい。
酢酸ビニルの大気圧下での沸点は73℃、メタノールの大気圧下での沸点は64℃であることから、ビニルエステル系単量体として酢酸ビニルを用い、アルコールとしてメタノールを用いて重合工程(i)でビニルエステル系重合体を製造する場合には、重合工程(i)での重合槽内の温度(重合温度)を5〜60℃、特に20〜50℃とし、且つ重合槽内の圧力(絶対圧)を1〜100KPa、特に30〜90KPaにしてビニルエステル系重合体を製造することが好ましい。
重合工程(i)において、ビニルエステル系単量体の重合率が8質量%未満であると、生産効率が低下し、一方ビニルエステル系単量体の重合率が30質量%を超えると、得られるビニルアルコール系重合体の重合度が4000未満であったり、1,2−グリコール結合単位の含有量が1.5モル%を超えたり、また上記の要件《5》を満足する水溶液吸光度を示すビニルアルコール系重合体を得ることが困難になったり、ビニルアルコール系重合体と無機物を含有する混合溶液から形成したフィルムの耐水性が低下することがある。
重合工程(i)では、ビニルエステル系単量体の重合率が10〜20質量%の範囲になるようにして重合を行うことが好ましい。
ビニルエステル系単量体混合物中に乳酸、酒石酸などの有機酸類を添加する場合は、当該有機酸類の添加量は、ビニルエステル系単量体の質量に基づいて、0.0001〜0.02質量%(1〜200質量ppm)であることが好ましく、0.0001〜0.01質量%(1〜100質量ppm)であることがより好ましい。
重合禁止剤として用い得る共役二重結合を有する化合物の具体例としては、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3−エチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1−メトキシ−1,3−ブタジエン、2−メトキシ−1,3−ブタジエン、1−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−ニトロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、2−ブロモ−1,3−ブタジエン、フルベン、トロポン、オシメン、フェランドレン、ミルセン、ファルネセン、センブレン、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩、アビエチン酸などの炭素−炭素二重結合2個の共役構造よりなる共役ジエン;1,3,5−ヘキサトリエン、2,4,6−オクタトリエン−1−カルボン酸、エレオステアリン酸、桐油、コレカルシフェロールなどの炭素−炭素二重結合3個の共役構造からなる共役トリエン;シクロオクタテトラエン、2,4,6,8−デカテトラエン−1−カルボン酸、レチノール、レチノイン酸などの炭素−炭素二重結合4個以上の共役構造からなる共役ポリエンなどが挙げられる。なお、1,3−ペンタジエン、ミルセン、ファルネセンのように、複数の立体異性体を有するものについては、そのいずれを用いてもよい。
重合工程(i)で用いる重合開始剤の種類などに応じて、上記した重合禁止剤の1種または2種以上を用いることができる。
そのうちでも、重合禁止剤としては、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩が、ビニルアルコール系重合体フィルムの耐候性の点から好ましく用いられる。
重合禁止剤を添加した反応生成物に含まれる未反応のビニルエステル系単量体類をアルコールで置換して除く方法としては、(1)反応生成物をアルコール蒸気と接触させる方法、(2)反応生成物にアルコールを添加して減圧操作で未反応のビニルエステル系単量体類と添加したアルコールを共沸させる方法、(3)反応生成物に含まれる未反応のビニルエステル系単量体類を直接蒸発留去する方法、などを挙げることができる。その中でも(1)の方法が経済性および操作性の点から好ましく採用される。
ビニルエステル系重合体のケン化用触媒であるアルカリ性物質としては、ビニルエステル系重合体のケン化用触媒として従来から知られているアルカリ性物質のいずれもが使用でき、そのうちでも、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物およびナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドの1種または2種以上が好ましく用いられ、特に水酸化ナトリウムが、汎用性、取り扱い性の点からより好ましく用いられる。
ケン化用触媒であるアルカリ性物質の使用量は、ビニルエステル系重合体中のビニルエステル系単量体単位1モルに対して0.005〜0.2モルの範囲内であることが好ましく、0.007〜0.1モルの範囲内であることがより好ましい。ケン化用触媒であるアルカリ性物質は、ケン化反応の初期に一括して添加してもよいし、またはケン化反応の初期に一部を添加し、残りをケン化反応の途中で追加して添加してもよい。
ケン化度が99.50〜99.97モル%のビニルアルコール系重合体を得るために、ケン化処理に用いるビニルエステル系重合体の重合度、ケン化処理溶液中でのビニルエステル系重合体の濃度、含水率などに応じて、上記したアルカリ性物質の濃度、温度、処理時間の範囲から、ケン化度が99.50〜99.97モル%のビニルアルコール系重合体を得るのに適した条件を採用する。
上記した条件のうちでも、アルカリ性物質(特に水酸化ナトリウム)の濃度をビニルエステル系単量体1モルに対して0.007〜0.100モル、特に0.010〜0.050モルにし、温度を20〜70℃、特に30〜60℃にし、ケン化処理時間を10分〜5時間、特に20分〜4時間にしてケン化処理を行なうと、ケン化度が99.50〜99.97モル%のビニルアルコール系重合体を円滑に製造することができる。
ケン化処理の終了後に、必要に応じて、残存するケン化触媒(アルカリ性物質)を中和してもよく、使用可能な中和剤として、例えば、酢酸、乳酸などの有機酸、酢酸メチルなどのエステル化合物などを挙げることができる。
本発明のフィルムを形成するビニルアルコール系重合体は、上記の要件《1》〜《5》を満足することにより、耐水性、耐候性、力学的特性に優れるフィルム(無機物を含有しないビニルアルコール系重合体フィルムおよび無機物含有ビニルアルコール系重合体フィルム)を形成、更に着色がなく無色透明性に優れるフィルム(無機物を含有しないフィルム)を形成し、しかもフィルムの製造に用いるビニルアルコール系重合体溶液の経時増粘が適度な範囲にあって取り扱い性に優れ、また無機物との親和性が高く耐水性に優れる無機物含有フィルムを形成する。
透明なビニルアルコール系重合体は、偏光フィルム、位相差フィルムなどの光学用途、繊維製品の包装フィルム、熱硬化性樹脂を用いて成形品を製造する際の離型フィルムなどとして用いることができる。
また、無機物含有ビニルアルコール系重合体フィルムは、例えばコンポスト用フィルムなどに用いられる。
本発明のビニルアルコール系重合体フィルムのうち、透明なフィルムは、特に偏光板の製造に用いられる偏光フィルム用の原反として好ましく用いられる。
ビニルアルコール系重合体フィルムを一軸延伸して偏光フィルムなどを製造する場合に、フィルムが薄すぎると(特に20μm未満であると)、延伸工程においてフィルムの破断が発生し易くなり、また厚すぎると(一般に120μmを超えると)、延伸時にフィルムにかかる応力が大きくなり、延伸を十分に行いにくくなる。
ビニルアルコール系重合体フィルムを偏光フィルム用の原反フィルムとして用いる場合には、フィルム幅を2m以上、特に3m以上にすると、大型の偏光板の製造に有効に使用することができる。
具体的には、ビニルアルコール系重合体フィルムから切り出した10cm角のフィルム片(試験片)の、50℃、1リットルの水中に4時間放置した時のビニルアルコール系重合体の溶出液濃度a(ppm)と、30℃、1リットルの水中に4時間放置した時のビニルアルコール系重合体の溶出液濃度b(ppm)の比(a/b)が、15〜50であることが好ましい。
溶出液濃度aと溶出液濃度bの比(a/b)が前記した15〜50の範囲内であることによって、偏光フィルムの製造工程における各処理槽での溶出を抑制することができるため望ましい。当該比(a/b)が前記範囲よりも小さくても、また大きくても、各処理時の溶出物が多量に後工程へ持ち込まれることとなり、処理温度の変化により多量に析出してしまう恐れがある。
その際に、前記10cm角のフィルム片(試験片)の、50℃、1リットルの水中に4時間放置した時のビニルアルコール系重合体の溶出液濃度aは、10〜50ppmであることが、特に高温で処理する延伸槽での溶出量を抑制する点から好ましい。
ビニルアルコール系重合体フィルムの膨潤度が前記範囲にあると、偏光フィルムなどを製造するために当該フィルムを一軸延伸する際に、延伸を円滑に行うことができ、また偏光フィルムを製造する際に皺や端部カールなどを生ずることなく、偏光フィルムの製造工程を円滑に行うことができる。
ビニルアルコール系重合体フィルムの膨潤度が前記範囲よりも小さいと、延伸時の張力が大きくなりすぎて、充分な延伸を行うことが困難となる恐れがあり、一方ビニルアルコール系重合体フィルムの膨潤度が前記範囲よりも大きいと、吸水性が高いために、偏光フィルムの製造工程においてフィルムにしわや端部カールが発生しやすくなり、延伸時の破断の原因となる恐れがある。
ビニルアルコール系重合体フィルムのレターデーションが前記範囲よりも小さいと(特に10nm未満であると)、偏光フィルムを製造する際の染色速度が遅くなるため染色斑が発生しやすくなる恐れがある。一方、ビニルアルコール系重合体フィルムのレターデーションが前記範囲よりも大きいと(特に40nmを超えると)、低い延伸倍率で切断が発生する恐れがある。
本発明におけるビニルアルコール系重合体フィルムのレターデーションは、以下の実施例に記載する方法で測定される。
限定されるものではないが、一般的には以下の方法が好ましく採用される。
偏光フィルムの製造工程は、水分調整、染色、延伸、色調整などの工程を含む。このとき、硼酸水溶液による架橋処理を行う前に染色液(ヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液)中で染色を行うことが好ましい。染色時に延伸(一軸延伸)を行ってもよい。その後さらに、硼酸水溶液中で延伸を行うことが好ましい。また、硼酸水溶液中での延伸を行った後に、必要に応じて、硼酸、ヨウ化カリウムを含む水溶液中で色調整を行ってもよい。このような処理を行った後に乾燥処理を行うことにより、偏光フィルムが得られる。
無機物含有ビニルアルコール系重合体フィルムにおける無機物の含有量は、ビニルアルコール系重合体100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましい。無機物の含有量が多すぎると、フィルムを製造する際の製膜性、厚み精度などが劣ったものになり易い。
その際に、ビニルアルコール系重合体と無機物を含有する混合溶液におけるビニルアルコール系重合体の含有量を5〜40質量%、特に10〜30質量%、無機物の含有量を0.05〜10質量%、特に0.2〜5質量%とし、当該混合溶液における全固形分濃度を5〜50質量%、特に10〜40質量%とすることが好ましい。
以下の製造例および比較製造例において、重合率、反応生成物からの未反応の酢酸ビニル単量体の除去率(追出し率)、ビニルアルコール系重合体(ポリビニルアルコール)の重合度(粘度平均重合度)、ケン化度、1,2−グリコール結合単位の含有量および酢酸ナトリウムの含有量、ビニルアルコール系重合体水溶液(ポリビニルアルコール水溶液)の粘度安定性、並びにビニルアルコール系重合体水溶液(ポリビニルアルコール水溶液)の波長280nmおよび320nmにおける濃度補正後の吸光度(セル光路長30mm)は、以下のようにして算出または評価した(以後「ポリビニルアルコール」を「PVA」ということがある)。
重合槽から取り出したポリ酢酸ビニルを含む反応生成物の1〜2gを採取して、その質量(A)(g)を正確に測定する。測定後に重合禁止剤であるヒドロキノンの0.25質量%メタノール溶液1mlを加えて、160〜170℃の乾燥機内で30分間乾燥して未反応の酢酸ビニルおよびメタノールを除去し、乾燥後の残留物(ポリ酢酸ビニル)の質量(B)(g)を測定して、下記の数式(II)から重合率を求める。
重合率(質量%)={B/A(100−C)}×100 (II)
[式中、Cは反応生成物に含まれているメタノール量(質量%)を示す。]
(i)重合槽より取り出した反応生成物にソルビン酸を添加して重合反応を停止させた後、メタノール蒸気と向流的に接触させて未反応の酢酸ビニルを除去する処理(追い出し処理)を行って得られる、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液を4〜6g採取して、その質量(D)(g)を測定する。測定後にメタノールを添加して溶解し、臭素の1.7質量%酢酸溶液を5ml加え、さらにヨウ化カリウムの5質量%水溶液を10ml加える。指示薬として澱粉の0.5質量%水溶液を2〜4ml加え、0.1Nチオ硫酸ナトリウム水溶液で無色になるまで滴定して滴定量を(E1)とする。別に、メタノールのみを用いて同様の操作を行い、その時の0.1Nチオ硫酸ナトリウム水溶液で無色になるまでの滴定量を(E0)(ml)とする。次式(III) に従って、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液中に残存する酢酸ビニル[F](質量%)を求める。
酢酸ビニルの含有量(F)(質量%)=0.0043×(E0−E1)×100/D (III)
(ii)(i)と同様に追い出し処理後のポリ酢酸ビニルのメタノール溶液を用いて、ポリ酢酸ビニルの含有量を求めるために、該メタノール溶液を1〜2g採取して、その質量(G)(g)を測定する。160〜170℃の乾燥機内で30分間乾燥する。乾燥後の質量(H)(g)を測定して、次式(IV)に従ってポリ酢酸ビニル[P](質量%)を求める。
ポリ酢酸ビニル[P](質量%)=(H/G)×100 (IV)
(iii)上述の(i)及び(ii)より得られた、酢酸ビニルの含有量(F)及びポリ酢酸ビニル(P)を用い、次式(V)に従って、追い出し率を求める。
追い出し率(%)={P/(P+F)}×100 (V)
JIS−K6726に準じて、上記した数式(I)により、以下の製造例および比較製造例で得られたPVAの重合度[粘度平均重合度(P)]を求めた。
JIS−K6726に記載されている方法に従って、以下の製造例および比較製造例で得られたPVAのケン化度(モル%)を求めた。
(i) 以下の製造例または比較製造例で得られたPVAに、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を、PVA中のビニルアルコール単位1モルに対して水酸化ナトリウム量が0.1モルとなる量で加え、60℃で5時間再ケン化し、得られたPVAをメタノールにて1週間ソックスレー抽出することで、ケン化度が99.9モル%以上の精製PVAを得る。
(ii) 上記(i)で得られるケン化度が99.9モル%以上の精製PVAを90℃で2日間減圧乾燥してメタノールを完全に除去した後、ジメチルスルホキシド−d6(DMSO−d6)に溶解して0.1質量%溶液にし、当該溶液にトリフルオロ酢酸を数滴(約0.1ml)加えて、80℃で核磁気共鳴装置(日本電子社製「AL−400」)を使用して、そのプロトンNMRを測定した。
PVA(PVA)に含まれる1,2−グリコール結合単位の含有量は、ビニルアルコール単位のメチンに由来する3.2〜4.0ppmのピーク(積分値α)と、1,2−グリコール結合単位の1つのメチンに由来する3.25ppmのピーク(積分値β)とから、次の数式(V)に従って算出される。
PVAの1,2−グリコール結合単位の含有量(モル%)=100×β/α (VI)
JIS−K6726に記載の溶解電導法に従って、PVAの酢酸ナトリウムの含有量を求めた。
以下の製造例および比較製造例で得られたPVAのそれぞれを用いて、濃度を調整して10℃での水溶液の粘度がB型粘度計(東京計器社製「B型粘度計」)にて10000mPa・sであるPVA水溶液をそれぞれ調製し、当該PVA水溶液を10℃の恒温槽中に放置して、所定時間ごとに当該PVA水溶液の粘度をB型粘度計にて測定して、横軸に時間を、縦軸に粘度をプロットし、それによって得られたグラフからPVA水溶液の粘度が10℃で20000mPa・sに到達した時間を求めて、粘度安定性の評価を行なった。なお、PVA水溶液の粘度の測定は最大で360分まで行なった。
具体的には、上記で調製した1つの製造例または比較製造例のPVA水溶液を13個のトールビーカー(容量300ml)に等分に分注し、13個のトールビーカーの全てを10℃の恒温水槽中に同時に入れて放置しながら、1番目のビーカー内のPVA水溶液の粘度を測定開始時に測定し、2番目のビーカー内のPVA水溶液の粘度を測定開始から30分後に測定し、3番目のビーカー内のPVA水溶液の粘度を測定開始から60分後に測定し、4番目のビーカー内のPVA水溶液の粘度を測定開始から90分後に測定し、以後5〜13番目のビーカー内のPVA水溶液について30分毎に測定して、横軸に時間を、縦軸に粘度をプロットし、それによって得られたグラフから粘度が20000mPa・sに到達した時間を求めた。
なお、ビーカー内のPVA水溶液の粘度が測定開始から360分を経過する前に20000mPa・sに到達した場合には、その時点で粘度の測定を終了した。
(i) 以下の製造例および比較製造例で得られたPVAのそれぞれを用いて、PVA水溶液を調製し、JIS−K0115に記載の分光光度計(島津製作所製「UV−1700」)を使用し、光路長30mmの石英製セル(島津製作所製「S10−UV30」)を用いて、温度20℃で波長190〜400nmの紫外線領域での吸光度を測定し、波長280nmにおける吸光度(Aa280)および波長320nmにおける吸光度(Aa320)を求めた。
前記した吸光度(Aa280)および吸光度(Aa320)の測定に使用したPVA水溶液の濃度は、重合度が6000未満のPVAでは30g/Lとし、重合度が6000以上のPVAでは10g/Lとした。その際にPVA水溶液の濃度の測定は、JIS−K6726に記載の方法により行なった。
(ii) 前記(i)と同じ分光光度計および石英製セルを使用して、温度20℃で、PVA水溶液の調製に使用した水の波長190〜400nmの紫外線領域での吸光度を測定し、波長280nmにおける水の吸光度(Ab280)および波長320nmにおける水の吸光度(Ab320)を求めた。
(iii) 下記の数式(VII−1)および(VII−2)から、PVA水溶液の波長280nmおよび320nmにおける水質補正した吸光度(A280)および吸光度(A320)を求めた。
水質補正した吸光度(A280)=吸光度(Aa280)−吸光度(Ab280) (VII−1)
水質補正した吸光度(A320)=吸光度(Aa320)−吸光度(Ab320) (VII−2)
(iv) 上記の数式(VII−1)で得られた水質補正した吸光度(A280)を、測定に使用したPVA水溶液の濃度(C)(g/L)で除し、それにより得られた値[吸光度(A280)/C](L/g)を、本発明における「PVA水溶液の波長280nmにおける濃度補正後の吸光度(セル光路長30mm)」とした。
また、上記の数式(VII−2)で得られた水質補正した吸光度(A320)を、測定に使用したPVA水溶液の濃度(C)(g/L)で除し、それにより得られた値[吸光度(A320)/C](L/g)を、本発明における「PVA水溶液の波長320nmにおける濃度補正後の吸光度(セル光路長30mm)」とした。
(1) 撹拌機、温度計、温水ジャケットおよび水冷コンデンサーを備え付けた内容積6600リットル、高さ3m、塔径(内径)1.8mの重合槽に、予め脱酸素した酢酸ビニルを679.5kg/毎時、メタノールを22.9kg/毎時、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)の0.5質量%メタノール溶液を7.0kg/毎時、および酢酸ビニルに対する酒石酸の添加量が20ppmとなるように酒石酸の0.3質量%メタノール溶液を連続的に仕込み(4.5kg/毎時)、重合槽内での滞留時間が4.5時間となるように重合槽内に維持しながら酢酸ビニルを重合させると共に、重合槽内の内容物(反応生成物)をギヤーポンプで連続的に重合槽から取り出した。このときの重合槽内における全メタノール量は、酢酸ビニル100質量部に対して5.06質量部であった。
その際に、重合槽内およびコンデンサー内を36±1KPa(絶対圧)の減圧状態に保って内容物を沸騰させると、内容物の温度は40±0.5℃に保持され、重合槽から取り出した内容物(反応生成物)中の酢酸ビニルの重合率は12質量%であった。
(2) 重合槽より取り出した反応生成物に、ソルビン酸の0.26質量%メタノール溶液を7.0kg/毎時の割合で添加して重合反応を停止させた後、反応生成物をトレイを備えた塔の頂部から常温の状態で且つ716.8kg/毎時の割合で流下させ、一方塔の下部から温度90℃および圧力(ゲージ圧)190KPaのメタノール蒸気を600kg/毎時の量で吹き込んで、反応生成物に含まれている未反応の酢酸ビニルを反応生成物から向流的に追い出して[未反応の酢酸ビニルの除去率(追出し率)99.9%]、塔の下部からポリ酢酸ビニルを21質量%の割合で含有するメタノール溶液を回収した。
(4) 上記(3)で得られた「PVA−1a」の重合度は5500、ケン化度は99.51モル%、1,2−グリコール結合単位の含有量は1.4モル%、酢酸ナトリウムの含有量は0.4質量%であった。
また、上記(3)で得られた「PVA−1a」の水溶液の粘度安定性並びに波長280nmおよび320nmにおける濃度補正後の吸光度(セル光路長30mm)を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(1) 下記の表1に示す条件を採用した以外は製造例1と同様にして、「PVA−2a」〜「PVA−6a」をそれぞれ製造した。なお、「PVA−2a」〜「PVA−6a」を製造するための、酢酸ビニルの重合工程では、製造例1と同様に、酢酸ビニルに対する酒石酸の添加量が20ppmとなるように酒石酸の0.3質量%メタノール溶液を重合槽に連続的に仕込んだ。
(2) 上記(1)で得られた「PVA−2a」〜「PVA−6a」の重合度、ケン化度、1,2−グリコール結合単位の含有量および酢酸ナトリウムの含有量は下記の表1に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた「PVA−2a」〜「PVA−6a]の水溶液の粘度安定性並びに波長280nmおよび320nmにおける濃度補正後の吸光度(セル光路長30mm)を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(1) 下記の表2に示す条件を採用した以外は製造例1と同様にして、「PVA−7a」〜「PVA−12a」をそれぞれ製造した。なお、「PVA−7a」〜「PVA−12a」を製造するための、酢酸ビニルの重合工程では、製造例1と同様に、酢酸ビニルに対する酒石酸の添加量が20ppmとなるように酒石酸の0.3質量%メタノール溶液を重合槽に連続的に仕込んだ。
(2) 上記(1)で得られた「PVA−7a」〜「PVA−12a」の重合度、ケン化度、1,2−グリコール結合単位の含有量および酢酸ナトリウムの含有量は下記の表2に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた「PVA−7a」〜「PVA−12a]の水溶液の粘度安定性、並びに波長280nmおよび320nmにおける濃度補正後の吸光度(セル光路長30mm)を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(1) 下記の表3に示す条件を採用した以外は製造例1と同様にして、「PVA−1b」〜「PVA−7b」をそれぞれ製造した。なお、「PVA−1b」〜「PVA−7b」を製造するための、酢酸ビニルの重合工程では、製造例1と同様に、酢酸ビニルに対する酒石酸の添加量が20ppmとなるように酒石酸の0.3質量%メタノール溶液を重合槽に連続的に仕込んだ。
(2) 上記(1)で得られた「PVA−1b」〜「PVA−7b」の重合度、ケン化度、1,2−グリコール結合単位の含有量および酢酸ナトリウムの含有量は下記の表3に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた「PVA−1b」〜「PVA−7b]の水溶液の粘度安定性並びに波長280nmおよび320nmにおける濃度補正後の吸光度(セル光路長30mm)を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
(1) 下記の表4に示す条件を採用した以外は製造例1と同様にして、「PVA−8b」〜「PVA−13b」をそれぞれ製造した。なお、「PVA−8b」〜「PVA−13b」を製造するための、酢酸ビニルの重合工程では、製造例1と同様に、酢酸ビニルに対する酒石酸の添加量が20ppmとなるように酒石酸の0.3質量%メタノール溶液を重合槽に連続的に仕込んだ。
(2) 上記(1)で得られた「PVA−8b」〜「PVA−13b」の重合度、ケン化度、1,2−グリコール結合単位の含有量および酢酸ナトリウムの含有量は下記の表4に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた「PVA−8b」〜「PVA−13b」の水溶液の粘度安定性、並びに波長280nmおよび320nmにおける濃度補正後の吸光度(セル光路長30mm)を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表4に示すとおりであった。
(1) 特許文献2(特開平5−117307号公報)の実施例1と同様にしてPVA(PVA−14b)を製造した。
すなわち、撹拌機、温度計、窒素導入管およびドライアイス冷却管を取り付けた反応器にイオン交換水100質量部、酢酸ビニル1000質量部、ポリオキシエチレン[POE(40)]ノニルフェニルエーテル(三洋化成株式会社製「ノニポール400」)40質量部、ロンガリット1.25質量部およびFeSO4・7H2Oを0.12質量部の割合で仕込み、30分間煮沸した後、窒素を導入しながら5℃まで冷却し、別途脱気したイオン交換水を用いて調製した0.07質量%の過酸化水素水を10質量部/毎時で均一に連続添加しながら減圧度35Torr(絶対圧)(4.7KPa)で重合を開始した。重合中は、酢酸ビニルを絶えず還流していた。重合率が64.7質量%に達した時点(重合開始4.1時間後)に過酸化水素の添加を停止して重合を停止した。
(2) 上記(1)で得られたポリ酢酸ビニルのエマルジヨンを、室温下でメタノール25000質量部にヒドロキノンモノメチルエーテル1質量部を溶解した液に投入し、撹拌しながら溶解した。減圧下でメタノールを添加しながら、未反応の酢酸ビニルを除去し、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液を得た。
(3) 上記(2)で得られたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液を、濃度6質量%、[NaOH]/[酢酸ビニル単位](モル比)=0.15および温度40℃の条件下でケン化してPVAにした。ケン化反応の進行に伴って生成したゲル化物を粉砕してメタノールで膨潤したPVAを得た。PVAをその5質量倍のメタノールで洗浄し、次いで55℃で1時間、100℃で2時間乾燥してPVA(「PVA−14b」という)を得た。
また、上記(3)で得られた「PVA−14b」の水溶液の粘度安定性、並びに波長280nmおよび320nmにおける濃度補正後の吸光度(セル光路長30mm)を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表4に示すとおりであった。
《実施例1》
(1)PVAフィルムの製造および耐水性の評価(PVAフィルムの水溶出率):
(i) 上記の製造例1で得られた「PVA−1a」を蒸留水に溶解して、「PVA−1a」の2質量%水溶液を調製し、この水溶液を20℃で膜状に流延した後、20℃で1週間乾燥して厚さ40μmのPVAフィルム(無機物を含有しないPVAフィルム)を製造した。
(ii) 上記(i)で得られたPVAフィルムを、120℃で10分間熱処理した後、縦×横=10cm×10cmの大きさに切り出して試験片を作製し、その質量(W0)を測定した。
(iii) 上記(ii)で作製した試験片を20℃の蒸留水に24時間浸漬した後、取り出し(回収し)、表面に付着した水分をガーゼで拭き取り、105℃で16時間乾燥した後、乾燥時の質量(W1)を測定し、下記の数式(VIII)からPVAフィルムの水溶出率(質量%)を求めて、下記の表5に示す評価基準にしたがってPVAフィルムの耐水性を評価した。
その結果を、下記の表7に示す。
PVAフィルムの水溶出率(質量%)={(W0−W1)/W0}×100 (VIII)
(i) 上記の製造例1で得られた「PVA−1a」を蒸留水に溶解して「PVA−1a」の2質量%水溶液を調製し、この水溶液を20℃で膜状に流延した後、20℃で4週間乾燥して厚さ150μmのPVAフィルムを製造した。
(ii) 上記(i)で得られたPVAフィルムを120℃で10分間熱処理した後、縦×横=20cm×20cmの大きさに切り出して試験片を作製した。
(iii) 上記(ii)で作製した試験片を用いて、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機製「S80」)を使用して、ブラックパネル温度63℃、湿度50%の条件で2000時間放置し、放置前後のb値の変化量(Δb)を求めて、耐候性の評価を行なった
その結果を、下記の表7に示す。
なお、b値はSMカラーコンピューター(スガ試験機製)で測定した。b値の変化量(Δb)の値が大きいほど黄変し易く、耐候性に劣ることを示す。
(i) 上記の製造例1で得られた「PVA−1a」を蒸留水に溶解して「PVA−1a」の2質量%水溶液を調製し、この水溶液に、「PVA−1a」:コロイダルシリカの質量比が100:50となるように、コロイダルシリカ(日産化学工業製「スノーテックスST−O」)の20質量%水分散液を加えてPVA/コロイダルシリカ混合液を調製した後、当該PVA/コロイダルシリカ混合液を20℃で膜状に流延し、次いで温度20℃で1週間乾燥して厚さ40μmの無機物含有PVAフィルムを製造した。
(ii) 上記(i)で得られた無機物含有PVAフィルムを120℃で10分間熱処理した後、縦×横=10cm×10cmの大きさに切り出して試験片を作製した。
(iii) 上記(ii)で作製した試験片を20℃の蒸留水に24時間浸漬した後、取り出し(回収し)、表面に付着した水分をガーゼで拭き取り、水膨潤時の質量(W2)を測定した。水膨潤時の質量を測定した試験片を105℃で16時間乾燥し、乾燥時の質量(W3)を測定し、下記の数式(IX)から無機物含有PVAフィルムの水膨潤度(倍)を求めて、下記の表6に示す評価基準にしたがって無機物含有PVAフィルムの耐水性を評価した。
その結果を下記の表7に示す。
無機物含有PVAフィルムの水膨潤度(倍)=W2/W3 (IX)
(1) PVAとして、「PVA−1a」の代りに、上記の製造例2〜12で得られた「PVA−2a」〜「PVA−12a」のそれぞれを用いた以外は、実施例1の(1)と同様に行って、厚さ40μmのPVAフィルム(無機物を含有しないPVAフィルム)をそれぞれ製造し、それらのPVAフィルムを用いて、実施例1の(1)と同様にしてPVAフィルムの耐水性の評価(水溶出率)を行った。その結果を下記の表7に示す。
(2) PVAとして、「PVA−1a」の代りに、上記の製造例2〜12で得られた「PVA−2a」〜「PVA−12a」のそれぞれを用いた以外は、実施例1の(2)と同様に行って、厚さ150μmのPVAフィルム(無機物を含有しないPVAフィルム)をそれぞれ製造し、それらのPVAフィルムを用いて、実施例1の(2)と同様にしてPVAフィルムの耐候性の評価を行った。その結果を下記の表7に示す。
(3) PVAとして、「PVA−1a」の代りに、上記の製造例2〜12で得られた「PVA−2a」〜「PVA−12a」のそれぞれを用いた以外は、実施例1の(3)と同様に行って、厚さ40μmの無機物含有PVAフィルムをそれぞれ製造し、それらの無機物含有PVAフィルムを用いて、実施例1の(3)と同様にして無機物含有PVAフィルムの耐水性(水膨潤度)の評価を行った。その結果を下記の表7に示す。
(1) PVAとして、「PVA−1a」の代りに、上記の比較製造例1〜14で得られた「PVA−1b」〜「PVA−14b」のそれぞれを用いた以外は、実施例1の(1)と同様に行って、厚さ40μmのPVAフィルム(無機物を含有しないPVAフィルム)をそれぞれ製造し、それらのPVAフィルムを用いて、実施例1の(1)と同様にしてPVAフィルムの耐水性の評価(水溶出率)を行った。その結果を下記の表7に示す。
(2) PVAとして、「PVA−1a」の代りに、上記の比較製造例1〜14で得られた「PVA−1b」〜「PVA−14b」のそれぞれを用いた以外は、実施例1の(2)と同様に行って、厚さ150μmのPVAフィルム(無機物を含有しないPVAフィルム)をそれぞれ製造し、それらのPVAフィルムを用いて、実施例1の(2)と同様にしてPVAフィルムの耐候性の評価を行った。その結果を下記の表7に示す。
(3) PVAとして、「PVA−1a」の代りに、上記の比較製造例1〜14で得られた「PVA−1b」〜「PVA−14b」のそれぞれを用いた以外は、実施例1の(3)と同様に行って、厚さ40μmの無機物含有PVAフィルムをそれぞれ製造し、それらの無機物含有PVAフィルムを用いて、実施例1の(3)と同様にして無機物含有PVAフィルムの耐水性(水膨潤度)の評価を行った。その結果を下記の表7に示す。
なお、比較例2、4、6、7および14では、PVA/無機物(コロイダルシリカ)の混合液の調製時にゲルが生じて、フィルムを製造することができなかった。
さらに、要件《1》〜《5》を満足するPVAを用いて無機物含有PVAフィルムを形成した実施例1〜12では、ゲル化を生ずることなく、水膨潤度が小さくて耐水性に優れる無機物含有PVAフィルムが得られている。
しかも、PVA−4bを用いて形成した比較例4のPVAフィルム(無機物を含有しないPVAフィルム)は、Δbの値が大きく、耐候性に劣っている。
また、比較例14のPVAフィルムは、重合度が19800と高すぎて上記の要件《1》を満足しておらず、1,2−グリコール結合単位の含有量が0.5モル%で上記の要件《3》を満足しておらず、しかもPVA水溶液の波長280nmおよび320nmにおける濃度補正後の吸光度(セル光路長30mm)(測定温度20℃)がいずれも0.02L/gを超えているPVA(PVA−14b)を用いて形成されているために、Δb値が大きく、耐候性に劣っている。しかも、当該PVA−14bを用いた比較例14では、PVA/無機物の混合液の調製時にゲル化が生じて無機物含有PVAフィルムを製造することができない。
《実施例13》
(1)PVAフィルムの製造:
上記の製造例1で得られた「PVA−1a」(チップ)を、温度40℃の温水により、質量浴比3で15分間洗浄した。洗浄後の「PVA−1a」の100質量部、グリセリン10質量部および水440質量部を一軸押出機に供給し、融解して製膜原液[揮発分率(水分率)80質量%]を調製し、当該製膜原液をT型ダイからドラム型ロール(ロール表面温度85℃)上に吐出した後、複数の金属ロール上で乾燥し、ロール間ドローをトータル0.985にすることで、幅3m、厚さ40μmのPVAフィルムを製造した。
(2)溶出液濃度aおよび溶出液濃度bの測定:
(i) 上記(1)で得られたPVAフィルムを、縦×横=10cm×10cmの大きさに切り出して試験片を作製し、50℃の蒸留水1リットル中に4時間静置し、その抽出液に対して以下に示す方法にてヨウ素−ヨウ化カリウム溶液による発色操作を行い、所定時間放置後に10分以内に株式会社島津製作所製の分光光度計「UVmini−1240V」を使用して665nmにおける吸光度を測定した。なお、予めPVAフィルムより添加剤などを除去・精製したPVAまたは原料PVAを用いて検量線を作成しておき、試料より得られた吸光度からPVA溶出液濃度(抽出液中のPVA濃度)を定量して、溶出液濃度a(ppm)を求めた。
(ii) 試験片を30℃の蒸留水1リットル中に4時間静置する以外は、上記(i)と同様の操作にて溶出液濃度b(ppm)を求めた。
(iii) 上記(i)で求めた溶出液濃度a(ppm)と上記(ii)で求めた溶出液濃度b(ppm)の値から溶出液濃度aと溶出液濃度bの比(a/b)を求めた。その結果を下記の表8に示す。
ヨウ素−ヨウ化カリウム溶液による発色操作は以下のとおりである。
すなわち、40gの硼酸を蒸留水に溶解後、1000ミリリットルにメスアップしたものを発色液1とする。次に12.7gのヨウ素と、25gのヨウ化カリウムを蒸留水に溶解後、1000ミリリットルにメスアップしたものを発色液2とする。発色液1を450ミリリットル、発色液2を90ミリリットル、それぞれホールピペットにて秤量して混合し、さらに蒸留水300ミリリットルをホールピペットで秤量して混合して、それを20℃に調温したものを発色試薬とする。続いて、共栓付き三角フラスコに、20℃に冷却した10ミリリットルの抽出液と、10ミリリットルの発色試薬をそれぞれホールピペットで秤量して混合し、20℃の恒温槽中に20分間放置して発色させる。なお、抽出液中のPVA濃度が高すぎる場合には、必要に応じて蒸留水で希釈してもよい。
上記(1)で得られたPVAフィルムから約40cm×30cmの試料フィルムをサンプリングし、幅3mm、長さ5cmにカットしてナイロンメッシュ(100メッシュ)(縦×横=20cm×20cm)の中央に入れて包み、巾着状に綿紐で結んで、30℃の温水に15分間浸漬した。その後、ナイロンメッシュで包んだ試料フィルムを温水から取り出し、軽く絞り、さらに3000rpmで5分間遠心脱水した後、試料フィルムをナイロンメッシュから取り出し、秤量瓶に入れて電子天秤で質量(Wα、風袋質量を除く)を測定した。さらにこの試料フィルムを105℃で16時間乾燥した後の質量(Wβ、風袋質量を除く)を同様に測定した。下記の数式(X)からPVAフィルムの膨潤度を求めた。その結果を下記の表8に示す。
膨潤度(%)=(Wα/Wβ)×100 (X)
上記(1)で得られたPVAフィルムから、長さ方向に40mmの全幅の試料フィルムを採取し、王子計測機器株式会社製の位相差測定器(KOBRA−WFD)を用いて、波長λ=590nmで、フィルム幅方向に50mmピッチで測定し、測定点の数で平均したものを、そのフィルムのレターデーション値とした。なお、測定は、波長板の方位(遅相軸)を0°にした状態で常に試料との合わせ測定をし、その結果得られる見かけ上のレターデーション(R’)と配向角(Φ’)から、以下の数式(XI)に従ってレターデーション(Rs)を算出した。その結果を下記の表8に示す。
Rs={(R’−R0)2+Di2×Φ’2}1/2 (XI)
R0:波長板のレターデーション
Di:測定波長とR0 によって決まる係数
上記(1)で得られたPVAフィルムを用い、これに、膨潤、染色、延伸、固定、乾燥の各処理工程をこの順番で施し、ロール状の偏光フィルムを連続的に作製した。各処理を施すに当って採用した条件は下記のとおりである。
〈膨潤処理工程〉30℃の純水中に3分間浸漬した。
〈染色処理工程〉33℃のヨウ素/ヨウ化カリウムの濃度比1/33の水溶液中に、5分間浸漬した。
〈延伸処理工程〉55℃のヨウ化カリウム4質量%+硼酸4質量%水溶液中において、総延伸倍率6.0倍まで一軸延伸を行った。
〈固定処理工程〉40℃のヨウ化カリウム4質量%+硼酸2質量%水溶液中に30秒間浸漬した。
〈乾燥処理工程〉張力を保持したまま60℃で2分間乾燥した。
上記(5)の製造方法で得られた偏光フィルムにおけるPVAの析出による欠点発生頻度の測定を以下のようにして行った。
すなわち、透過光、反射光および偏光フィルムのフィルム面と平行に、検査用偏光子をクロスニコルに配置し、偏光フィルムの外側から投光した際の透過光について、それぞれの方向により受光した輝度信号から欠陥を検出して欠陥部への自動マーキングを施し、その部分を後からサンプリングして、PVAの析出による欠点か、それ以外の原因による欠点かを判定して、測長あたりのPVAの析出による欠点発生頻度(個/m)を求めた、
この実施例13では、下記の表8に示すように、欠点発生頻度は0.045個/mであり、大型テレビ用の偏光板の作製に十分使用可能なレベルであった。
(1) 上記の製造例1で得られた「PVA−1a」(チップ)を、温度35℃の温水により質量浴比15で30分間洗浄した以外は、実施例13の(1)と同様にして、幅3m、厚さ40μmのPVAフィルムを製造した。
(2) 上記(1)で得られたPVAフィルムの溶出液濃度a、溶出液濃度b、溶出液濃度aと溶出液濃度bの比(a/b)、膨潤度およびレターデーションを、実施例13の(2)〜(4)と同じようにして求めたところ、下記の表8に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られたPVAフィルムを用いて、一軸延伸時の温度を57.5℃とした以外は、実施例13の(5)と同様にして、連続的に偏光フィルムを製造した。
これにより得られた偏光フィルムにおける欠点発生頻度を実施例13の(5)と同様にして測定したところ、下記の表8に示すように0.020個/mであり、大型テレビ用の偏光板の作製に十分使用可能なレベルであった。
(1) ケン化度99.90モル%、粘度平均重合度1750のPVA(チップ)を使用し、温度40℃の温水により質量浴比3で、15分間洗浄した。このPVAを100質量部、グリセリン10質量部および水165質量部を一軸押出機に供給し、融解して製膜原液[揮発分率(水分率)60質量%]を調製し、当該製膜原液をT型ダイからドラム型ロール(ロール表面温度90℃)上に吐出した後、複数の金属ロール上で乾燥し、さらに100℃の金属ロールで乾燥して、幅3m、厚さ40μmのPVAフィルムを製造した。
(2) 上記(1)で得られたPVAフィルムの溶出液濃度a、溶出液濃度b、溶出液濃度aと溶出液濃度bの比(a/b)、膨潤度およびレターデーションを、実施例13の(2)〜(4)と同じようにして求めたところ、下記の表8に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られたPVAフィルムを30℃の水中に5分間浸漬して予備膨潤し、ヨウ素/ヨウ化カリウムの濃度比が1/100の35℃の水溶液中に3分間浸漬した。次いで、硼酸濃度40g/リットルの40℃の水溶液中で5.3倍に一軸延伸し、続いてヨウ化カリウム濃度40g/リットル、硼酸濃度40g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。その後、フィルムを取り出し、40℃で熱風乾燥し、さらに100℃で熱処理を施して偏光フィルムを製造した。
これにより得られた偏光フィルムにおけるPVAの析出による欠点発生頻度を実施例13の(5)と同様にして測定したところ、下記の表8に示すように0.100個/mであり、大型テレビ用と偏光板の作製に使用するためには不十分なレベルであった。
(1) 製造例1で得られた「PVA−1a」の代りに、上記の製造例2〜12で得られた「PVA−2a」〜「PVA−12a」(チップ)を用いた以外は、実施例14の(1)と同様にして、幅3m、厚さ40μmのPVAフィルムをそれぞれ製造した。
(2) 上記(1)で得られたそれぞれのPVAフィルムの溶出液濃度a、溶出液濃度b、溶出液濃度aと溶出液濃度bの比(a/b)、膨潤度およびレターデーションを、実施例13の(2)〜(4)と同じようにして求めたところ、下記の表8に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られたそれぞれのPVAフィルムを用いて、実施例13の(5)と同様にして偏光フィルムを製造した。
これにより得られたそれぞれの偏光フィルムにおける欠点発生頻度を実施例13の(5)と同様にして測定したところ、下記の表8に示すとおりであった。
(1) 製造例1で得られた「PVA−1a」の代りに、上記の比較製造例1〜14で得られた「PVA−1b」〜「PVA−14b」(チップ)を用いた以外は実施例14の(1)と同様にして、幅3m、厚さ40μmのPVAフィルムをそれぞれ製造した。
(2) 上記(1)で得られたそれぞれのPVAフィルムの溶出液濃度a、溶出液濃度b、溶出液濃度aと溶出液濃度bの比(a/b)、膨潤度およびレターデーションを、実施例13の(2)〜(4)と同じようにして求めたところ、下記の表8に示すとおりであった。
(3) 上記(1)で得られたそれぞれのPVAフィルムを用いて、実施例13の(5)と同様にして偏光フィルムを製造した。
これにより得られたそれぞれの偏光フィルムにおける欠点発生頻度を実施例13の(5)と同様にして測定したところ、下記の表8に示すとおりであった。
また、本発明のビニルアルコール系重合体フィルムのうち、無機物を含有する重合体複合物は、水に対する膨潤度が小さく耐水性に優れており、コンポスト用フィルムなどの用途に有効に使用することができる。
Claims (7)
- 下記の要件《1》〜《5》を満足するビニルアルコール系重合体を用いて形成したことを特徴とするビニルアルコール系重合体フィルム。
《1》粘度平均重合度(P)が4000〜8000である;
《2》ケン化度が99.50〜99.97モル%である;
《3》1,2−グリコール結合単位の含有量が1〜1.5モル%である;
《4》当該ビニルアルコール系重合体を水に溶解して10℃での粘度が10000mPa・sであるビニルアルコール系重合体水溶液を調製し、その水溶液を10℃で静置したときに、粘度が20000mPa・sまで増加するのに要する時間が50〜250分である;および、
《5》当該ビニルアルコール系重合体を水に溶解して調製した濃度30g/Lのビニルアルコール系重合体水溶液[粘度平均重合度(P)が6000未満のビニルアルコール系重合体の場合]または濃度10g/Lのビニルアルコール系重合体水溶液[粘度平均重合度(P)が6000以上のビニルアルコール系重合体の場合]の、光路長30mmのセルを用いて測定してなる、波長280nmおよび320nmにおける濃度補正後の吸光度(測定温度20℃)が、いずれも0.02L/g以下である。 - 10cm角に切り出したビニルアルコール系重合体フィルムを、50℃、1リットルの水中に4時間放置した時のビニルアルコール系重合体の溶出液濃度a(ppm)と、30℃、1リットルの水中に4時間放置した時のビニルアルコール系重合体の溶出液濃度b(ppm)の比(a/b)が15〜50である、請求項1に記載のビニルアルコール系重合体フィルム。
- 10cm角に切り出したビニルアルコール系重合体フィルムを、50℃、1リットルの水中に4時間放置した時のビニルアルコール系重合体の溶出液濃度aが10〜50ppmである、請求項1または2に記載のビニルアルコール系重合体フィルム。
- 膨潤度が200〜240%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のビニルアルコール系重合体フィルム。
- レターデーションが10〜40nmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のビニルアルコール系重合体フィルム。
- さらに可塑剤を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のビニルアルコール系重合体フィルム。
- フィルム幅が2m以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のビニルアルコール系重合体フィルム。
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