JP2009197079A - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 生分解性樹脂(A)1〜89重量%、ゴム強化スチレン系樹脂(B)98〜10重量%および塊状重合法、懸濁重合法または溶液重合法により製造されたエポキシ基含有スチレン系重合体0.5〜40重量%、必要に応じて(D)(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(C)0.5〜40重量%からなる熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
一方、ABS樹脂は、優れた物性バランスおよび成形加工性を有しており、広範な分野に利用されている。
このため、例えば特開2000−327847号公報(特許文献1)には、脂肪族ポリエステル構造を持つ重合体とABS樹脂を含むポリオレフィンを配合して、自然環境の中で崩壊する高分子の改良技術が提案されている。しかしながら、これら組成物は、成形品の成形及び使用において樹脂の崩壊や劣化が危惧されるほか、耐衝撃性等の物性バランス面で必ずしも満足できる材料とは言い難い。
また、特開2004−269720号公報(特許文献2)、特開2005−171204号公報(特許文献3)には、ポリ乳酸とメタアクリル酸エステル系重合体からなる樹脂組成物が提案されているが、耐衝撃性が不十分であり、また十分な耐熱性を得るためには、メタクリル酸エステル系重合体が過剰に必要となり、結果として物性バランスが低下するという問題が発生する。
さらに特開2007−211206(特許文献4)では、ポリ乳酸とABS樹脂の相溶化剤として、ポリメタクリル酸メチルを使用することが提案されているが、ポリ乳酸とABS樹脂の分散性が充分でなく、成型物の外観において充分な結果が得られていない。
また、特開2007−291171(特許文献5)では、ポリ乳酸とABS樹脂の組成物に耐加水分解剤として、ポリ乳酸の末端基と反応する官能基を有する重合体を用いることが提案されているが、成型物の外観改良において十分とはいえない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成する生分解性樹脂(A)としては、ポリエステル系の樹脂であり、乳酸ポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリブチレンサクシネート・テレフタレート、ポリエチレンサクシネート、およびポリブチレンサクシネート・カーボネート等のポリアルキレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸共重合体等が挙げられる。これらのうち、乳酸ポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリブチレンサクシネート・テレフタレート、ポリエチレンサクシネートが好ましい。市販されているこれら生分解性樹脂としては、例えば三井化学(株)製 商品名:レイシア、ユニチカ(株)製 商品名:テラマック、昭和高分子(株)製 商品名:ビオノーレ、BASF社製 商品名:エコフレックス、デュポン社製 商品名バイオマックス、(株)日本触媒製 商品名:ルナーレ、三菱瓦斯化学(株)製 商品名:ユーペック等が挙げられる。
ゴム強化スチレン系樹脂(B)を構成することのできるゴム状重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエンースチレン共重合体、イソプレン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−イソプレン−スチレン共重合体、ポリクロロプレンなどのジエン系ゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1−非共役ジエン共重合体、またポリブチルアクリレートなどのアクリル系ゴム、ポリオルガノシロキサン系ゴム、さらにはこれらの2種以上のゴムからなる複合ゴム等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。これらのうち、特にジエン系ゴムが好ましい。
スチレン系単量体と共に用いることのできるシアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、またスチレン系単量体とシアン化ビニル系単量体と共に用いることのできる他の共重合可能な単量体としては、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等の不飽和酸系単量体、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系単量体などが挙げられ、それらはそれぞれ一種又は二種以上用いることができる。
また、ゴム強化スチレン系樹脂(B)の重合方法についても特に制限はなく、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合またはこれらの組み合わせにより製造することができるが、これらのうち、乳化重合法では、重合後の洗浄工程を強化することが好ましく、さらに懸濁重合、塊状重合、溶液重合またはこれらの組み合わせにより製造することが好ましい。
スチレン系単量体、スチレン系単量体と共に用いることのできるシアン化ビニル系単量体、およびスチレン系単量体とシアン化ビニル系単量体と共に用いることのできる他の共重合可能な単量体としては、上述のゴム強化スチレン系樹脂(B)で記載のものが挙げられる。またエポキシ基含有ビニル系単量体としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルが挙げられる。
また別の種類としては、エポキシ基含有非スチレン系樹脂の主鎖にスチレン系単量体またはスチレン系単量体とシアン化ビニル系単量体および必要に応じて他の共重合可能な単量体の1種または2種以上とをグラフト共重合してなる樹脂(c−2)である。
エポキシ基含有非スチレン系樹脂とは、主に、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、オレフィン系樹脂、脂肪酸ビニルエステル系樹脂、またはそれぞれの共重合体の置換基としてエポキシ基を有する重合体であり、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・酢酸ビニル(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体等が挙げられる。
グラフト共重合させるスチレン系単量体またはスチレン系単量体とシアン化ビニル系単量体および必要に応じて他の共重合可能な単量体としては、上述のゴム強化スチレン系樹脂(B)で記載のものが挙げられる。
エポキシ基含有スチレン系重合体(C)を構成するエポキシ基含有ビニル系単量体成分とその他の単量体合計(スチレン系単量体、シアン化ビニル系単量体および他の共重合可能な単量体)との組成比率には制限はないが、物性のバランス面、ゴム強化スチレン系樹脂(B)との親和性から、エポキシ基含有ビニル系単量体成分が1〜20重量%であることが好ましい。
また、エポキシ基含有スチレン系重合体(C)の重合方法については、懸濁重合、塊状重合、溶液重合またはこれらの組み合わせにより製造することが必要である。乳化重合法で得られた重合体では、耐衝撃性、成形物の外観、耐加水分解性が低下するため好ましくない。
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられる。
スチレン系単量体またはスチレン系単量体とシアン化ビニル系単量体および必要に応じて他の共重合可能な単量体としては、上記ゴム強化スチレン系樹脂(B)の構成成分として挙げたものが挙げられ、ゴム強化スチレン系樹脂(B)の構成成分として同様組成でも別の組成でも可能である。さらに耐熱性付与のために、スチレン系単量体としては、α−メチルスチレンが好ましく、またN−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系単量体を用いることが好ましい。
またさらに本発明においては、上述の可塑性樹脂組成物100重量部に対し、カルボジイミド基を含有する重合体(F)0.01〜10重量部を配合することが、本発明の目的とする耐衝撃性と耐熱性および高温高湿度環境下での耐久性の面より好ましい。
カルボジイミド基を有する重合体としては、下記多価イソシアナート化合物の1種または二種以上用いた(共)重合体であるポリカルボジミドが挙げられる。多価イソシアナート化合物としては、脂肪族ジイソシアナート、芳香族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートおよびこれらのジイソシアネートの変性物が挙げられる。このような多価イソシアネートの具体例としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ピリジンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネートおよびこれらの混合物が挙げられる。
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
A−1:ポリ乳酸(三井化学(株)社製 LACEA H−400)
ゴム強化スチレン系樹脂:B−1〜B−4を、それぞれ以下の方法により製造した。
B−1:容積が15リットルのプラグフロー塔型反応槽(「新ポリマー製造プロセス」(工業調査会、佐伯康治/尾見信三著)185頁、図7.5(b)記載の三井東圧タイプと同種の反応槽で10段に仕切られたC1/C0=0.955を示すもの。)に10リットルの完全混合槽2基を直列に接続した連続的重合装置を用いて熱可塑性樹脂を製造した。プラグフロー塔型反応槽が粒子形成工程を、第2反応器である1基目の完全混合槽が粒子径調整工程を、第3反応器が後重合工程を構成する。
プラグフロー塔型反応槽にスチレン62.2重量部、アクリロニトリル10.3重量部、エチルベンゼン17.5重量部、日本ゼオン社製Nipol NS310Sを10.0重量部、t−ドデシルメルカプタン0.20重量部、1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3、3、5−トリメチルシクロヘキサン0.055重量部からなる原料を調整し、プラグフロー塔型反応槽に供給した以外は、上記製法と同様におこない、ゴム強化スチレン系樹脂B−1を得た。
B−4:B−3において、凝固及び洗浄工程を以下のように変更した以外は、B−3と同様にしてゴム強化スチレン系樹脂B−4を得た。すなわち、凝固剤として硫酸1.0重量部を使用して凝固させ、さらにゴム強化スチレン系樹脂粒子の2.5倍体積の水を加えて攪拌してから脱水する洗浄操作を3回繰り返した。
C−1:スチレン70部、アクリロニトリル25部およびメタアクリル酸グリシジル3部を公知の塊状重合法により重合し、エポキシ基含有スチレン・アクリロニトリル共重合体(C−1)を得た。
C−2:スチレン100部およびメタアクリル酸グリシジル3部を公知の塊状重合法により重合し、エポキシ基含有スチレン共重合体(C−2)を得た。
C−3:懸濁重合法により製造したスチレン・アクリロニトリル・メタクリル酸グリシジル(日油(株)マープルーフ G−1005SA)
C−4:溶液重合法により製造したスチレン・アクリロニトリルグラフト共重合エチレン・メタクリル酸グリシジル(日油(株)製モディパー A−4400)
C−5:スチレン70部、アクリロニトリル25部およびメタアクリル酸グリシジル5部を公知の乳化重合法により重合した。その後、得られた重合体ラテックスを塩析、脱水、乾燥処理し、エポキシ基含有スチレン・アクリロニトリル共重合体(C−5)を得た。
D−1:ポリメタクリル酸メチル(住友化学(株)製 スミペックスMG−SS)
E−1:スチレン・N−フェニルマレイミド共重合体(電気化学(株)製 デンカIP MS−NC)
E−2:スチレン75重量部およびアクリロニトリル25重量部を公知の塊状重合法により共重合を行い共重合体D−2を製造した。
カルボジイミド含有樹脂(F)
F−1:ポリカルボジイミド(日清紡績(株)製カルボジライト LA−1)
上記、生分解性樹脂(A−1)、ゴム強化スチレン系樹脂(B−1〜4)、エポキシ基含有スチレン系重合体(C−1〜5)、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(D−1)、スチレン系共重合体樹脂(E−1〜2)、およびポリカルボジイミド(F−1)を表1に示す配合割合で混合し、30mmニ軸押出機を用いて220℃で溶融混合し、ペレット化した後、射出成形機にて各種試験片を作成し、物性を評価した結果を表1に示す。なお、それぞれの評価方法を以下に示す。
○耐衝撃性
ISO 179に準拠し、ノッチ付きのシャルピー衝撃値を測定した。
○耐熱性
ISO 75に準拠し、荷重0.45MPaの荷重たわみ温度を測定した。
○耐久性:65℃、95%RHにて湿熱テストを実施し、耐衝撃性の保持率が90%以下になる時間を耐久性能とした。
○ウエルド外観:
2点ゲートの90mm×150mm×3mm(厚)の射出成型品中央部を、目視にてウェルドが確認できないものを○、確認できるものを×とした。
Claims (5)
- 生分解性樹脂(A)1〜89.5重量%、ゴム強化スチレン系樹脂(B)98.5〜10重量%および塊状重合法、懸濁重合法または溶液重合法により製造されたエポキシ基含有スチレン系重合体(C)0.5〜40重量%からなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
- 生分解性樹脂(A)1〜89重量%、ゴム強化スチレン系樹脂(B)98〜10重量%、塊状重合法、懸濁重合法または溶液重合法により製造されたエポキシ基含有スチレン系重合体(C)0.5〜40重量%および(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(D)0.5〜40重量%からなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
- ゴム強化スチレン系樹脂(B)が、塊状重合法、懸濁重合法、溶液重合法、または重合後の洗浄工程を強化した乳化重合法により製造した樹脂である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 生分解性樹脂(A)がポリエステル系の生分解性樹脂である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 生分解性樹脂(A)がポリ乳酸である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
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