JP5200281B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
一方、ABS樹脂に代表されるゴム強化スチレン系樹脂は、優れた物性バランスおよび成形加工性を有しており、広範な分野に利用されている。
このため、近年ゴム強化スチレン系樹脂とポリ乳酸からなる樹脂組成物が多数提案されている。
しかしながら、従来のゴム強化スチレン系樹脂とポリ乳酸からなる樹脂組成物では、一般的な射出成形における金型でピンゲートやファンゲート通過直後に発生するジェッティングと呼ばれる流れむらや、成形品のリブを樹脂が通過した際に発生する流れむらにより成形品外観が損なわれる不具合が発生しやすく、不良率の増大を招いているのが現状である。
また、成形の際にポリ乳酸中のラクチドが過熱により蒸散するため、樹脂焼けが起こったり、サイジングダイや金型の表面にラクチドが付着して成形品外観が損なわる不具合が発生し易いという問題がある。
本発明におけるポリ乳酸(A)とは、ポリ乳酸および乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体を意味する。とうもろこしなどの植物から得られたでんぷんを発酵させて、乳酸とし、化学合成にてポリマー化したものである。
乳酸としては、L−および/またはD−乳酸、乳酸の二量体であるラクトンなどが挙げられる。さらに乳酸と共重合可能なヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸などが挙げられ、1種又は2種以上使用できる。
ポリ乳酸の分子量には特に制限ないが、物理的、熱的特性の面より重量平均分子量3万以上が好ましい。
ポリ乳酸としては、三井化学社製「LACEA」、米国Nature WorksLLC社製「Nature Works」、ユニチカ社製「テラマック」、東レ社製「エコディア」、三菱樹脂社製「エコロージュ」などの名称で市販されているのものを利用できる。
また、共重合可能な他のビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体、メチルメタアクリレート、メチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、マレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等の不飽和エポキシ系単量体、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基含有不飽和単量体等が例示され、それぞれ1種または2種以上混合して使用することができる。
ゴム強化スチレン系樹脂(B)の分子量および分子量分布、ゴム状重合体の含有量やグラフト率、グラフト側鎖の組成や分子量等には特に制限は無く、最終製品の要求性能によって任意の組成・構造のものを使用することが可能である。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、アルキル基の炭素数が1〜18のメタクリル酸エステルや、アルキル基の炭素数が1〜18のアクリル酸エステルが挙げられる。また、このようなメタクリル酸エステル、アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上混合して用いることができる。また、特にメタクリル酸エステルを40〜95重量%およびアクリル酸エステルを5〜60重量%の範囲で用いることが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(C)に用いられる共重合可能な他の単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル等が挙げられる。これらは、単独または2種以上混合して用いることができる。また、これらの使用量は20重量%以下であることが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(C)の重合方法としては、特に制限はなく、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等の公知の方法が用いられるが、乳化重合法が好ましい。
なお、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(C)の重量平均分子量は、重合時に使用する際の分子量調節剤や重合開始剤の添加量、あるいは重合温度を変更することにより適宜調整することが可能である。
また、重量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、それをゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて40℃で測定したポリスチレン換算により求めた。
これらシリコン系化合物(D)の粘度は50〜3,000mm2/sの範囲であることが必要である。シリコン系化合物(D)の粘度が50mm2/s未満あるいは3,000mm2/sを越えると十分な外観改良効果が得られないため好ましくない。
また、シリコン系化合物(D)は、ポリ乳酸樹脂(A)とゴム強化スチレン系樹脂(B)からなる樹脂組成物100重量部に対して0.01〜1重量部配合されるものである。シリコン系化合物(D)の配合割合が0.01重量部未満では、十分な外観改良効果が得られず、また1重量部未満ではブリードアウトによる金型汚染を起こしやすいため好ましくない。好ましくは0.05〜0.8重量部である。
なお、本発明においては、さらには上記の成分以外の光安定剤、酸化防止剤や、その他紫外線吸収剤、加水分解抑制剤、帯電防止剤、滑剤、染料、顔料、可塑剤、難燃剤、離型剤等の公知の添加剤や補強材、充填材等を添加することができる。
なお、樹脂組成物中のラクチド含有量は、熱分解GC−MS(HP社製)を用いサンプル約3mgを240℃で5分間保持して発生したガス量をSTY換算により測定した。樹脂組成物中のラクチド含有量を低下させる方法としては、用いるポリ乳酸系重合体原料中の乳酸オリゴマー成分をあらかじめ低減や除去する方法、成形時や加工時あるいはその後に低減、除去する方法等が上げられる。例えば、ポリ乳酸系重合体などの原料類の合成時に触媒種や量、反応時間、温度等を調整する方法、原料から水あるいは有機溶媒等を用いてオリゴマーを除去する方法、原料使用時の乾燥温度や時間、真空度を調整してオリゴマーを除去する方法、造粒・成形時の押出温度、滞留時間を調整する方法、水あるいは有機溶媒を用いて抽出する方法などが挙げられる。好ましくは、原料を水あるいは有機溶媒を用いて抽出、洗浄する方法や原料乾燥時の乾燥温度を90〜120℃
、乾燥時間をより長く、真空度をより高く調整する方法、造粒の際の押出温度をより低く、滞留時間をより短く、真空度をより高く調整する方法が挙げられる。
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。なお、実施例中にて示す部および%は重量に基づくものである。
A−1:三井化学(株)製 LACEA H−400
ゴム強化スチレン系樹脂(B−1):公知の乳化重合法により、スチレン−ブタジエンゴムラテックス(スチレン5重量%、重量平均粒子径0.25μm)50重量部(固形分)、スチレン35重量部、アクリロニトリル15重量部からなるグラフト重合体ラテックスを得た。その後、硫酸を用いて塩析を行い、洗浄・脱水後乾燥し、ゴム強化スチレン系樹脂(B−1)を得た。
C−1:メタブレンP−530A(三菱レーヨン社製 重量平均分子量310万)
C−2:メタブレンP−531(三菱レーヨン社製 重量平均分子量450万)
C−i:メタブレンP−501A(三菱レーヨン社製 重量平均分子量80万)
D−1:ジメチルポリシロキサン(SH−200−100CS 東レダウコーニング社製 粘度100mm2/s)
D−2:ジメチルポリシロキサン(SH−200−1000CS 東レダウコーニング社製 粘度1000mm2/s)
上記のポリ乳酸樹脂(A)、ゴム強化スチレン系樹脂(B)、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)およびシリコン系化合物(D)、加水分解抑制剤を表1および表2に示す配合割合で混合した。ベント付50mm押出機(オーエヌ機械製)を用い、シリンダー温度210℃にて溶融混合(但し、実施例2はシリンダー温度220℃に変更し、比較例5はシリンダー設定温度はそのままで、ベントを開放した状態で溶融混合を行った)しペレット化し、以下の評価に供した。
なお、樹脂組成物中のラクチド含有量は、熱分解GC−MS(HP社製)を用いサンプル約3mgを240℃で5分間保持して発生したガス量をSTY換算により測定した。
得られたペレットにつき、下記の条件にて平板を作成し、ゲート部から発生したフローマークの長さを測定した。数値が大きいほど不良。
射出成形条件
射出成形機:日本製鋼所製 J−150EP
シリンダー温度:200℃ 金型温度:50℃
射出圧力:MFP+10kg
射出速度:50%
金型:90×150×3mm平板 ゲート:5mm厚のタブゲート1点
縦150mm、横150mm、厚さ3mmの平板試験片を日本製鋼所製J−150EPを用いシリンダー設定温度240℃、金型温度50℃、成形サイクル30秒にて1000ショット射出成形後、下記の判定により金型汚染性の評価を行った。
金型表面に黒色または茶色の箇所が見られ、極めて汚れている;×
金型表面が白く汚れている;△
金型表面に曇りが見られる;○
金型表面に変化が見られない;◎
これらの測定結果を表1および表2に示す。
Claims (2)
- ポリ乳酸樹脂(A)90〜10重量%およびゴム強化スチレン系樹脂(B)10〜90重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、重量平均分子量が100万以上である(メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)を0.05〜4重量部、粘度が50〜3,000mm2/sの範囲であるシリコン系化合物(D)を0.01〜1重量部配合してなる熱可塑性樹脂組成物であって、該樹脂組成物中に含まれるラクチド含有量が300ppm未満であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
- (メタ)アクリル酸エステル系重合体(C)の重量平均分子量が300万以上である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
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