JP2013163757A - 熱可塑性樹脂組成物およびその成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】スチレン系熱可塑性樹脂とポリ乳酸を混合する際、低下する機械特性と流動性を改善させ、高度な特性が要求される部材にも使用可能で、しかもマテリアルリサイクルが可能であり、埋蔵化石資源の使用量をさらに低減することができる熱可塑性樹脂組成物、およびそれを用いた熱可塑性樹脂成形体を提供する。
【解決手段】スチレン系熱可塑性樹脂(A)と、ポリ乳酸(B)と、前記ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するスチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分からなる重合体、および/または、前記ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するアルキル(メタ)アクリル酸エステルと、スチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分との共重合体(C)と、耐衝撃性改良剤(D)とを含む熱可塑性樹脂組成物、およびそれを用いた熱可塑性樹脂成形体。
【選択図】図1

Description

本発明は、スチレン系熱可塑性樹脂とポリ乳酸の混合物を主成分とする熱可塑性樹脂組成物および熱可塑性樹脂成形体に関するものである。
循環型社会構築のためには、従来の大量生産・大量消費・大量廃棄パラダイムから、循環を考慮した全く新しい生産パラダイムへの転換が求められている。一方で、大量生産・大量消費・大量廃棄パラダイムから脱却すべく始まった、大量生産・大量リサイクルを目指した生産パラダイムは、リサイクル原料の需要・供給のバランスやリサイクル材の品質・コストの面で既に限界を迎えつつあり、リサイクルだけでない持続可能な生産パラダイムへの転換が求められている。すなわち、リサイクルというライフサイクルシナリオのみを考慮するだけでなく、製品の特性に応じて、材料の選択、製品設計、使用方法、廃棄後のシナリオなどを適切に選択する必要がある。特に、循環を考慮した新しい生産パラダイムでは、微生物由来、植物由来をはじめとするバイオマス由来の持続可能な資源を利用することが強く求められている。
持続可能な資源という観点から、バイオマス由来の資源の中でも特に植物由来の資源は、再生可能であり、焼却されても、植物の成長過程で吸収した二酸化炭素を放出するだけなので、植物由来の資源のライフサイクルにおいて二酸化炭素濃度を増加しないとされており、環境にやさしい材料である。環境にやさしい材料である植物由来の資源の利用を拡大し、適切に循環させるよう、近年、様々な分野で植物由来の資源が開発されつつあり、その利用技術のさらなる拡大が重要な課題となっている。
植物由来の資源においては、溶融成形可能であること、燃焼時の燃焼熱量の低さや大量生産された場合のコストなどの点からポリ乳酸が注目されている。しかしながらポリ乳酸は、一般的に硬くて脆い材料であり、耐熱性、成形性は優れず、また、生分解性を有しているため、長期間の使用には不向きである。そこで、このような問題を解決するため、個々のポリマーの欠点を改良する方法として広く知られているポリマーブレンドまたはポリマーアロイという、2種またはそれ以上のポリマー同士を混合することが、ポリ乳酸に対しても検討されている。
ところで、スチレン系熱可塑性樹脂の中でも、ポリスチレン(汎用ポリスチレンや高衝撃性ポリスチレン)は、コストが低く、各種物性性能に優れるため、各種分野で広く用いられている。またポリスチレンなどを混練し成形性を向上させたポリスチレン変性ポリフェニレンエーテル(以下、「変性PPE」とも記載する)は、機械的性質のバランスがよく、電気的性質も良好であるため、近年、耐久性や難燃性が求められるOA機器や電気・電子機器において採用が増加している。従って、これらの樹脂とポリ乳酸をブレンドまたはアロイ化して、広く製品に採用することは、地球環境保全の観点から大きな貢献となることが予想される。
しかしながら、一般に、異なる樹脂同士を混合するポリマーブレンドまたはポリマーアロイでは、単純に混合しただけでは、両者は完全に相容しない。スチレン系熱可塑性樹脂とポリ乳酸は本来相容性に乏しいものであるため、適切な相容化処方が必要である。これにより、スチレン系熱可塑性樹脂とポリ乳酸との間で生じる界面剥離を減少させ、島となる樹脂を海となる樹脂相に微分散させることで、目的の特性改善効果が得られる。
この点に関して、ポリ乳酸と結合する官能基を有する化合物を相容化剤として用いる方法が検討されている。
たとえば、特開2009−96896号公報(特許文献1)では、ポリ乳酸とポリスチレン変性ポリフェニレンエーテルと酸変性芳香族ビニル化合物重合体を含む樹脂組成物が記載されている。特許文献1によれば、酸変性芳香族ビニル化合物重合体を含む樹脂組成物は、耐熱性、耐衝撃性に優れるとされている。
一方で、電気・電子機器などに用いられる成形体の主な成形方法である射出成形では、材料となる樹脂組成物が、その成形温度において、良好な流動性を備えていることが必要不可欠である。しかしながら、酸変性芳香族ビニル共重合体とポリ乳酸が結合し、架橋すれば、樹脂組成物の分子量は、ポリ乳酸本来の分子量よりもはるかに大きくなり、流動性が悪化するために、外観不良(ヤケ、フローマークなど)やウェルド部で脆弱となるという問題がある。また、そのような流動性に劣る樹脂組成物では、薄肉で大型の成形体については成形困難であるために、変性PPEが本来使われるべき用途での代替ができない。
また特開2007−91872号公報(特許文献2)、特開2008−2666432号公報(特許文献3)においては、エポキシ変性したスチレン系共重合体やエポキシ化合物などとポリ乳酸、スチレン系熱可塑性樹脂を配合してなる樹脂組成物について記載されている。しかしながら、ポリ乳酸とスチレン系熱可塑性樹脂を相容させ、良好な機械特性を得るとともに、流動性について十分に検討されたものではなかった。
上記のように、スチレン系熱可塑性樹脂とポリ乳酸は相容性が乏しいために、単純に混合しただけでは互いに相分離し、結果、耐衝撃性などの機械特性が劣るため、変性PPEが使われるような高度な特性が要求されるOA機器や電気・電子部品に使うことが難しいのが現状である。また、そのような課題を克服するために、ポリ乳酸と結合する官能基を有する化合物を相容化剤として用いる方法が検討されているが、ポリ乳酸と相容化剤が結合、架橋することで樹脂組成物の流動性が低下する課題に対しては十分な検討がなされていない。
特開2009−96896号公報 特開2007−91872号公報 特開2008−2666432号公報
本発明の目的は、スチレン系熱可塑性樹脂とポリ乳酸を混合する際、低下する機械特性と流動性を改善させ、高度な特性が要求される部材にも使用可能で、しかもマテリアルリサイクルが可能であり、埋蔵化石資源の使用量をさらに低減することができる熱可塑性樹脂組成物と熱可塑性樹脂成形体を提供することである。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、スチレン系熱可塑性樹脂(A)と、ポリ乳酸(B)と、前記ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するスチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分からなる重合体、および/または、前記ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するアルキル(メタ)アクリル酸エステルと、スチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分との共重合体(C)と、耐衝撃性改良剤(D)とを含むことを特徴とする。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、スチレン系熱可塑性樹脂(A)が、ポリスチレンまたはポリスチレン変性ポリフェニレンエーテルであることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、前記ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するスチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分からなる重合体、および/または、前記ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するアルキル(メタ)アクリル酸エステルと、スチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分との共重合体(C)は、エポキシ基を有し、そのエポキシ価が0.3〜5.0meq/gの範囲であることが、好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、前記ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するスチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分からなる重合体、および/または、前記ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するアルキル(メタ)アクリル酸エステルと、スチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分との共重合体(C)は、重量平均分子量が1000〜50000の範囲内であることが、好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、前記耐衝撃性改良剤(D)は、芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体、またはその水素添加物を主成分とすることが、好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、前記ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するスチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分からなる重合体、および/または、前記ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するアルキル(メタ)アクリル酸エステルと、スチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分との共重合体(C)を0.1〜20重量部、前記耐衝撃性改良剤(D)を1〜30重量部含むことが好ましい。
本発明はまた、上述した本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形加工して得られた成形体(熱可塑性樹脂成形体)についても提供する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、化石資源由来の熱可塑性樹脂であるスチレン系熱可塑性樹脂とバイオマス由来のポリ乳酸を混合する際、埋蔵化石資源を基礎原料として合成する熱可塑性樹脂の使用量を低減することができる環境に配慮した部材、製品を提供できる。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、剛性、強度、耐衝撃性などの初期の機械特性バランスに優れるとともに、良好な流動性を有しているため、家電製品、OA機器、電気・電子部品などの要求特性の高い部材、製品に好適に採用することができる。さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いた熱可塑性樹脂成形体は、長期間使用されても物性低下が少なく、初期の優れた特性バランスを保持するため、マテリアルリサイクルも可能であるという利点を有する。また、本発明の熱可塑性樹脂原料の製造方法、熱可塑性樹脂成形体の製造方法は、通常使用されている設備を用いることができるため、特殊な専用設備を作製することなく、新たな設備投資の低減に貢献できる。
実施例1と比較例1について押出機にて複数回押出を繰り返し、押出回数と物性保持率(%)(曲げ強さ)の相関を示すグラフである。
<熱可塑性樹脂組成物>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、スチレン系熱可塑性樹脂(A)と、ポリ乳酸(B)とを基本的に含む。以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
〔1〕スチレン系熱可塑性樹脂(A)
スチレン系熱可塑性樹脂(A)として用いられるポリスチレンとしては、下記式で表される構成単位を有するものであれば特に制限されるものではない。
Figure 2013163757
具体的には、一般用ポリスチレン(GPPS)のほか、高衝撃ポリスチレン(HIPS)、メチルメタクリレート−スチレン共重合体(MS)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、スチレン−無水マレイン酸共重合体(SMA)、スチレン−メタクリル酸共重合体(SMAA)などが挙げられるが、市販の常用のものを用いればよい。特に、耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物が要求される場合には、高衝撃ポリスチレン(HIPS)を用いるのが好ましい。
また、同じくスチレン系熱可塑性樹脂(A)として用いられるポリスチレン変性ポリフェニレンエーテルは、下記式で表されるようなポリフェニレンエーテルを主成分とし、スチレン系樹脂がグラフトした共重合体である公知のものであれば特に制限されるものではない。
Figure 2013163757
ここで、式中のR、R、R、Rは、水素、ハロゲン、炭化水素、置換炭化水素、アルコキシル基、シアノ基、フェノキシ基、ニトロ基からなる群から選択されるものであり、互いに同一でも異なっていてもよい。このポリフェニレンエーテルの具体例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル)などが好ましく、中でもポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が好ましい。
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるポリスチレン変性ポリフェニレンエーテルは、ポリフェニレンエーテル10〜90重量部に対し、ポリスチレン系樹脂を90〜10重量部含んでいることが好ましい。ポリスチレン系樹脂の配合比率が10重量部未満である場合には、流動性の改善効果が小さくなる傾向にあり、また、ポリスチレン系樹脂の配合比率が90重量部を超える場合には、耐熱性に劣る傾向にあるためである。耐熱性と流動性や成形性のバランスを取る観点からは、本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるポリスチレン変性ポリフェニレンエーテルは、ポリフェニレンエーテル20〜80重量部に対し、ポリスチレン系樹脂を80〜20重量部含んでいることがより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるスチレン系熱可塑性樹脂(A)の重量平均分子量は、通常に成形加工できる範囲内であるならば特に問題はないが、50000〜500000の範囲内が好ましく、80000〜200000の範囲内がさらに好ましい。スチレン系熱可塑性樹脂(A)の重量平均分子量が50000未満であると、本発明の熱可塑性樹脂組成物をマテリアルリサイクルすることを想定した場合、耐久性が低下する虞がある。一方で、スチレン系熱可塑性樹脂(A)の重量平均分子量が500000を超えると、熱可塑性樹脂組成物の流動性が低くなり、大型の成形体を成形できない虞がある。ここでいう「重量平均分子量」とは、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)で測定された、ポリスチレン換算の分子量をいう。
本発明におけるスチレン系熱可塑性樹脂(A)が上述したポリスチレンである場合、そのメルトマスフローレート(MFR:200℃、5kg荷重)は、5〜20g/10分の範囲内が好ましく、10〜15g/10分の範囲内がさらに好ましい。また、本発明におけるスチレン系熱可塑性樹脂(A)が上述したポリスチレン変性ポリフェニレンエーテルである場合、そのメルトマスフローレート(MFR:250℃、10kg荷重)は、40〜180g/10分の範囲内が好ましく、100〜150g/10分の範囲内がさらに好ましい。スチレン系熱可塑性樹脂(A)のMFRが低すぎると、ポリ乳酸(B)との混和性が低下する虞があり、一方でMFRが高すぎると、ポリ乳酸(B)との混和性が低下するとともに、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐熱性が低下する虞がある。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるスチレン系熱可塑性樹脂(A)の少なくとも一部は、市場から回収された家電製品から得られるポリスチレンまたはポリスチレン変性ポリフェニレンエーテルであることが、好ましい。このように市場から回収された家電製品から得られるポリスチレンまたはポリスチレン変性ポリフェニレンエーテルを含むことで、新たに化石資源を使う必要がなく、埋蔵化石資源の使用量を低減することができるという利点がある。なお、市場から回収された家電製品としては、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機から選ばれる家電製品が、回収のインフラができているため繰り返しリサイクルが可能であることから特に好ましい。ただし、家電製品の回収量(供給量)の関係から、市場から回収された家電製品から得られるポリスチレンまたはポリスチレン変性ポリフェニレンエーテルが不足した場合は、未使用のポリスチレンまたはポリスチレン変性ポリフェニレンエーテルを使用してもよい。
〔2〕ポリ乳酸(B)
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるポリ乳酸(B)は、乳酸を直接脱水縮重合する方法、或いはラクチドを開環重合する方法など、公知の手段で得ることができる。ポリ乳酸としては、D体、L体、DL体の3種の光学異性体が存在するが、D体またはL体のみからなる乳酸ホモポリマー、D体とL体とからなる乳酸コポリマーのいずれであってもよい。また、コポリマーはブロックコポリマー、ランダムコポリマーであってもよく、これらを用いることでステレオコンプレックス化によって耐熱性が向上することがある。また、コポリマーは、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の共重合成分を含んだものでも構わない。ポリ乳酸に含まれる共重合成分としては、エステル結合を形成可能な官能基を2個以上有する化合物が挙げられ、たとえば、ジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどや、これらを構成成分とする各種ポリエステル、各種ポリエーテルなどが挙げられる。また、D体とL体の混合物を用いてもよく、その構成重量比は、特に限定されないが、融点を高め、さらに結晶化速度が速めることで成形性、耐熱性が向上することから、L体を90重量部以上含有するものが好ましい。
ポリ乳酸(B)の重量平均分子量としては、50000〜500000の範囲内が好ましく、100000〜250000の範囲内であることがさらに好ましい。ポリ乳酸(B)の重量平均分子量が50000未満であると、本発明の熱可塑性樹脂組成物をマテリアルリサイクルすることを想定した場合、耐久性が低下する虞がある。一方で、ポリ乳酸(B)の重量平均分子量が500000を超えると、後述するポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するスチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分からなる重合体、および/または、ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するアルキル(メタ)アクリル酸エステルと、スチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分との共重合体(C)と結合したときに分子量が大きくなりすぎて、流動性が低くなり、大型の成形体を成形できない虞がある。
また、ポリ乳酸(B)のメルトマスフローレート(MFR:190℃、2.16kg荷重)は、2〜10g/10分の範囲内が好ましく、3〜7g/10分の範囲内がさらに好ましい。MFRが2g/10分未満の場合には、スチレン系熱可塑性樹脂(A)との混和性が低下するおそれがあり、一方で10g/10分を超えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐熱性、耐加水分解性が低下する虞がある。
ここで、本発明の熱可塑性樹脂組成物において、ポリ乳酸(B)の配合比率としては特に制限されないが、スチレン系熱可塑性樹脂(A)とポリ乳酸(B)との合計量100重量部に対し、5〜95重量部であることが好ましい。ポリ乳酸(B)の配合比率が5重量部未満である場合には、化石資源由来の熱可塑性樹脂の比率が高く、埋蔵化石資源の使用量の低減への寄与度が小さくなってしまう傾向にあり、また、ポリ乳酸(B)の配合比率が95重量部を超える場合には、耐衝撃性などに劣り、耐久消費財の部材として使用できるような特性が得られにくくなる傾向にあるためである。環境配慮性と機械物性(剛性−粘性)のバランスの観点からは、スチレン系熱可塑性樹脂(A)とポリ乳酸(B)の合計量100重量部に対し、ポリ乳酸(B)が25〜75重量部となるような比率で配合されてなることがより好ましい。
〔3〕ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するスチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分からなる重合体、および/または、ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するアルキル(メタ)アクリル酸エステルと、スチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分との共重合体(C)
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述したスチレン系熱可塑性樹脂(A)およびポリ乳酸(B)に加え、ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するスチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分からなる重合体、ならびに、ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するアルキル(メタ)アクリル酸エステルと、スチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分との共重合体とからなる群から選ばれる少なくともいずれか(以下、「重合体および/または共重合体(C)」と呼称する場合がある)を含むことが、好ましい。ポリ乳酸(B)は、分子の両末端にヒドロキシル基およびカルボキシル基を有しており、これらと結合しうる官能基の具体例としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、アミド基、アミノ基、カルボジイミド基、イソシアネート基などが挙げられ、中でも反応性の観点から、エポキシ基を有するものが、好ましい。なお、エポキシ基は、グリシジル基などのように他の官能基の一部として存在していてもよい。グリシジル基を有するものとしては、たとえば、不飽和カルボン酸グリシジルエステル、不飽和グリシジルエーテルなどが挙げられ、具体的には、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリジジル、イタコン酸グリシジルエステル、ブテントリカルボン酸トリグリシジルエステル、p−スチレンカルボン酸グリシジルエステル、ビニルグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテルなどが例示される。また、これらの化合物は、単官能のものや2官能以上のものがあるが、反応性制御の観点から、単官能のものが、好ましい。
前記重合体および/または共重合体(C)に含まれるスチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分としては、スチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分であれば、特に制限されない。たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル)などが挙げられるが、スチレン系熱可塑性樹脂(A)との相容性の観点から、スチレンが、好ましい。
前記重合体および/または共重合体(C)に含まれる上述したグリシジル基を有するスチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分としては、スチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル−メタクリル酸グリシジル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−メタクリル酸グリシジル共重合体、メタクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル共重合体などが挙げられるが、スチレン系熱可塑性樹脂(A)およびポリ乳酸(B)との相容性の観点から、スチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル共重合体が特に好ましい。また、上述した共重合体は、ランダム重合体であってもよく、またブロック共重合体であってもよいが、スチレン系熱可塑性樹脂(A)もしくはポリ乳酸(B)を微分散化させるため、ランダム重合体であることが好ましい。さらに、本発明の効果を損なわない範囲内で、他成分によるグラフト共重合体を付与してもよい。
前記重合体および/または共重合体(C)に含まれるコモノマーとしてのスチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分の含有量は、前記共重合体100重量部に対し、15〜95重量部の範囲内であることが好ましく、45〜90重量部の範囲内であることがより好ましい。スチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分の含有量が、前記共重合体100重量部に対し15重量部未満の場合、スチレン系熱可塑性樹脂(A)との親和性が十分でないため機械特性のバランスを崩す虞がある。またスチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分の含有量が、前記共重合体100重量部に対し95重量部を超える場合、ポリ乳酸(B)と結合しうる官能基の価数が少ないため、ポリ乳酸(B)を十分に微分散化できなかったり、添加量が多くなり、コスト的に不利となる虞がある。
また、前記共重合体の場合、コモノマーとしてのアルキル(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、前記共重合体100重量部に対し、70重量部未満が好ましく、より好ましくは45重量部未満である。アルキル(メタ)アクリル酸エステルの含有量が70重量部以上の場合、スチレン系熱可塑性樹脂(A)との親和性が十分でないために機械特性のバランスを崩す虞がある。
前記重合体および/または共重合体(C)のエポキシ価としては、0.3〜5.0meq/gの範囲内が好ましく、より好ましくは、0.6〜3.5meq/gの範囲内である。エポキシ価が0.3meq/g未満の場合、ポリ乳酸(B)の末端基である水酸基およびカルボキシル基と反応するのに十分な価数でないため、スチレン系熱可塑性樹脂(A)とポリ乳酸(B)の親和性を向上させる効果が小さい。また、エポキシ価が5.0meq/gを超える場合、前記重合体および/または共重合体(C)とポリ乳酸(B)との反応性が高くなりすぎて、押出成形時にシリンダ内で局所的に高温となり、ポリ乳酸が分解、発泡してしまう虞がある。なお、エポキシ価は、たとえば、JISK−7236に記載の方法によって求めることができる。
また、前記重合体および/または共重合体(C)の重量平均分子量は、1000〜50000の範囲内が好ましく、より好ましくは10000〜30000の範囲内である。前記重合体および/または共重合体(C)の重量平均分子量が1000未満であると、得られた成形体の表層面に浮き出てしまうブリードアウト現象を起こす虞がある。また、前記重合体および/または共重合体(C)の重量平均分子量が50000を超えると、熱可塑性樹脂組成物の流動性が低くなりすぎて、外観不良(ヤケ、フローマークなど)やウェルド部で脆弱となるという問題がある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物が上述した前記重合体および/または共重合体(C)を含有する場合、その配合比率は特に制限されないが、スチレン系熱可塑性樹脂(A)およびポリ乳酸(B)の合計量100重量部に対し、0.1〜20重量部が好ましく、さらに好ましくは3〜8重量部である。上述した前記重合体および/または共重合体(C)の配合比率がスチレン系熱可塑性樹脂(A)およびポリ乳酸(B)の合計量100重量部に対し0.1重量部未満の場合、スチレン系熱可塑性樹脂(A)およびポリ乳酸(B)の両者の分散が十分発揮されず機械特性や耐久性に乏しいものとなる傾向にある。また、上述した前記重合体および/または共重合体(C)の配合比率がスチレン系熱可塑性樹脂(A)およびポリ乳酸(B)の合計量100重量部に対し20重量部を超える場合には、機械特性のバランスが崩れる虞があり、また、コストが高くなり経済的に不利となる傾向にある。
〔4〕耐衝撃性改良剤(D)
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、また、耐衝撃性改良剤(D)をさらに含むことが、好ましい。このような耐衝撃性改良剤(D)をさらに含有することで、耐衝撃性を改良できるという効果がある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いられる耐衝撃性改良剤(D)は、芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体、またはその水素添加物を主成分とすることが好ましい。芳香族ビニル化合物とはスチレンに代表される化合物であり、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。本発明においては、スチレンが好ましい。また、共役ジエン系化合物とは、ブタジエン、イソプレン、シクロヘキサジエンなどの総称であり、公知の重合法により、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどの共役ジエン系重合体を形成する。
上述した芳香族ビニル化合物であるスチレンと、上述した共役ジエン系化合物であるブタジエン、イソプレンなどとを公知の重合法により共重合させることで、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体などの芳香族ビニル−共役ジエン系重合体を得ることができる。本発明では、中でも芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体、または、分子鎖中の不飽和結合に水素添加された水素添加物が好ましく、特に耐熱性、耐候性などの観点から、芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加物がより好ましい。
本発明における耐衝撃性改良剤(D)においては、共役ジエン系化合物に共重合させる成分として、上述した芳香族ビニル化合物以外に、アクリル酸エチル単位、アクリル酸ブチル単位などのアクリル成分も好適に用いられる。特に、本発明の熱可塑性樹脂組成物において、ポリ乳酸(B)の配合比が50重量部以上のとき、アクリル成分と共役ジエン系化合物との共重合体を配合することが好ましい。また、共役ジエン系化合物と共重合する成分は一種だけでなく、二種以上でも構わない。
本発明における耐衝撃性改良剤(D)における共役ジエン系化合物は、そのガラス転移温度に特に制限はないが、10℃以下であることが好ましく、−10℃以下であることがより好ましく、−30℃以下であることが特に好ましい。共役ジエン系化合物のガラス転移温度が10℃を超える場合には、耐衝撃性改良剤(D)が、低温(10℃以下)領域において弾性を有さず、目的の耐衝撃性改善効果を得られないという傾向にあるためである。
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物が上述した耐衝撃性改良剤(D)を含有する場合、当該耐衝撃性改良剤(D)の配合比率は、スチレン系熱可塑性樹脂(A)とポリ乳酸(B)との合計量100重量部に対し、1〜30重量部が好ましく、さらに3〜20重量部がより好ましい。耐衝撃性改良剤(D)の配合比率が、スチレン系熱可塑性樹脂(A)とポリ乳酸(B)との合計量100重量部に対し1重量部未満である場合には、衝撃性を十分に改善できない傾向にある。また耐衝撃性改良剤(D)の配合比率が、スチレン系熱可塑性樹脂(A)とポリ乳酸(B)との合計量100重量部に対し30重量部を超えると衝撃特性が高くなり、機械特性(剛性−粘性)のバランスが崩れる虞がある。
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、難燃性を付与させる目的で、公知の難燃剤を含んでいてもよい。公知の難燃剤としては、芳香族リン酸エステル系難燃剤、シリコーン系難燃剤、有機金属塩系難燃剤、金属酸化物系難燃剤、金属水酸化物系難燃剤などがあるが、本発明の効果を損なわない範囲内でこれらの難燃剤を使用しても構わない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、各種の添加剤やその他の樹脂を配合することができる。この場合、各種添加剤としては、公知の充填剤(各種フィラー、炭酸カルシウム、ワラストナイトなど)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、安定剤、離型剤、帯電防止剤、着色料(顔料、染料など)、ドリップ防止剤、抗菌剤、抗カビ剤、シリコーンオイル、カップリング剤などの一種または二種以上が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法において、本発明の熱可塑性樹脂組成物の加熱溶融および成形には、たとえば単軸押出成形機、多軸押出成形機などの押出成形機を好適に用いることができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物を上述のようにペレット状に成形する場合には、シートカット、ストランドカット、ホットエアカット、アンダーウォーターカットなどの方法を好適に用いることができる。これらの方法の中でも、後に、射出成形により特定の形状に成形する場合には、熱可塑性樹脂組成物の供給が円滑に行なえ、大量処理にも対応できるアンダーウォーターカットが特に好ましい。
本発明はまた、このような本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法により製造された熱可塑性樹脂成形体についても提供する。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、その形状は特に制限されないが、ペレット状であることが好ましい。本発明の熱可塑性樹脂組成物をペレット状とする場合、その粒径は特に制限されるものではないが、粒径1mm未満である場合には、浮遊するため作業性が低下するという傾向にあることから、粒径は1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましい。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物をペレット状とする場合、粒径が8mmを超える場合には、成形機のシリンダ内で十分に溶融しないため均一に混練されない傾向にあるため、その粒径は8mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。上述したペレット状の熱可塑性樹脂組成物から各種製品の部材に応じた形状に形成する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、たとえばスクリュインライン式射出成形機、プランジャ式射出成形機などの射出成形機を用いることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に適した射出成形条件の一例を挙げれば、シリンダ温度を熱可塑性樹脂組成物の融点または流動開始温度以上、たとえば、180〜280℃とすることが、好ましい。シリンダ温度が180℃未満であると、全ての樹脂が溶融せず、成形体にショートが発生するなどの問題が発生したり、過負荷に陥りやすくなったりする。一方、シリンダ温度が280℃を超える場合には、特にポリ乳酸(B)が分解してしまい、成形体にヤケが発生したり、機械特性の低下を招く虞がある。
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、その用途は特に制限されるものではないが、マテリアルリサイクルされる製品に好適に用いることができる。このようなマテリアルリサイクルされる製品としては、特に制限されるものではなく、たとえば、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機といった家電4品目を含む家電製品、OA機器(パーソナルコンピュータなどの情報機器やプリンタやコピー機などの事務機器を含む)、電気・電子部品などの各種製品が挙げられる。本発明の熱可塑性樹脂成形体は、これら家電製品、OA機器、電気・電子部品などの各種製品が挙げられる。本発明の熱可塑性樹脂成形体は、これら家電製品、OA機器、電気・電子部品などの各種製品の部材として好適に用いることができ、優れた機械特性バランスと、良好な流動性を有するという本発明の熱可塑性樹脂成形体が有する特徴を十分に活用し得る観点からは、中でも、上述した家電4品目の部材として特に好適に用いることができる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下に実施例、比較例で本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造に使用した成分を示す。
〔1〕スチレン系熱可塑性樹脂(A)
ポリスチレン変性ポリフェニレンエーテル FP3060(SABICイノベーティブプラスチックスジャパン合同会社製)(重量平均分子量:90000、MFR(250℃、10kg):141)。
〔2〕ポリ乳酸(B)
レイシアH−400(三井化学株式会社製)(重量平均分子量:160000、MFR(190℃、2.16kg):4)。
〔3〕ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するスチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分からなる重合体、および/または、ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するアルキル(メタ)アクリル酸エステルと、スチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分との共重合体(C)
(1)重量平均分子量:10000、エポキシ価:0.7meq/g、メタクリル酸グリジジル/スチレン/メタクリル酸メチル=10/89/1(C1)、
(2)重量平均分子量:32000、エポキシ価:0.7meq/g、メタクリル酸グリジジル/スチレン/メタクリル酸メチル=10/89/1(C2)、
(3)重量平均分子量:20000、エポキシ価:3.2meq/g、メタクリル酸グリジジル/スチレン/メタクリル酸メチル=50/49/1(C3)、
(4)重量平均分子量:100000、エポキシ価:0.3meq/g、メタクリル酸グリジジル/スチレン=5/95(C4)、
(5)重量平均分子量:100000、エポキシ価:0.6meq/g、メタクリル酸グリジジル/スチレン/メタクリル酸メチル=10/89/1(C5)、
(6)重量平均分子量:130000、エポキシ価:2.5meq/g、メタクリル酸グリジジル/スチレン/メタクリル酸メチル=40/59/1(C6)、
(7)重量平均分子量:30000、エポキシ価:0.08meq/g、メタクリル酸グリジジル/スチレン=1/99(C7)、
(8)重量平均分子量:30000、エポキシ価:5.2meq/g、メタクリル酸グリジジル/スチレン/メタクリル酸メチル=80/19/1(C8)。
(D)耐衝撃性改良剤
芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物(タフテック SEBS H1221(旭化成株式会社製))(ゴム(エチレン・ブタジエン)部ガラス転移点:−20℃)。
<実施例1>
スチレン系熱可塑性樹脂(A)として、ポリスチレン変性ポリフェニレンエーテルと、ポリ乳酸(B)と、ポリ乳酸(B)と結合しうる官能基を有し、スチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分からなる重合体および/またはアルキル(メタ)アクリル酸エステルとスチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分との共重合体(C1)および耐衝撃性改良剤(D)を75:25:7:10の比率(重量比)で、タンブラー混合機を用いて混合し、熱風除湿乾燥機((株)松井製作所製)にて80℃、5時間、除湿乾燥し、熱可塑性樹脂組成物を調製した。次に、熱可塑性樹脂組成物をスクリュー径25mm、L/D=26の二軸溶融混練押出機((株)テクノベル製)を用いて、設定温度220℃で加熱溶融混練するとともに押出成形し、ペレタイザーを用いてカットし、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物を10トン射出成型機(日精樹脂工業(株)製)ホッパーに投入し、設定温度230℃、金型温度40℃、冷却時間30秒の射出成形条件で、後述する引張強度、伸び、曲げ強度、曲げ弾性率およびアイゾット衝撃強度を測定するためのASTM準拠の物性測定用試験片を作製した。また、面衝撃強度測定のため、厚み3mmの物性測定用試験片も作成した。
<実施例2〜9、比較例1〜4、参考例1〜8>
各成分およびその配合量を表1または表2に記載のように変更した以外は実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を調製した。
<評価試験>
実施例1〜9、比較例1〜4、参考例1〜8で作製した各試験片を用いて、以下の各種物性の評価試験を行なった。結果を表1および表2に示す。
(1)メルトマスフローレート
樹脂成分のメルトマスフローレート(MFR)は、JIS K 7210の規定に準拠して測定した。なお、測定は250℃、10kg荷重にて行なった。
(2)引張強度(MPa)および伸び(%)
JIS K 7113の規定に準拠して、引張破断点降伏強さ、引張破断点伸びとしてそれぞれ測定した。なお、「引張強度」、「伸び」とは、材料を一定の速度で引張、応力と歪との関係を求めるもので、伸長された材料は、はじめに弾性変形をし、その後塑性変形をはじめ、極大強度に達し、さらに降伏点を超えるとネッキングを生じ、破断に至る。応力が一番大きいところ(最大点応力)を「引張強度」、破断したときの歪(破断点伸び)を「伸び」としている。
(3)曲げ強度(MPa)および曲げ弾性率(MPa)
JIS K 7203の規定に準拠してそれぞれ測定した。なお、「曲げ強度」、「曲げ弾性率」とは、2点で支えた試験片の中心に応力をかけることにより、応力と歪との関係を求めるものである。応力の一番大きいところを「曲げ強度」、応力−歪曲線の傾きを「曲げ弾性率」としている。
(4)ノッチ付アイゾット衝撃強度(kJ/m
JIS K 7110の規定に準拠して測定した。
(5)面衝撃強度(cm)
JIS K 7211の規定に準拠して測定した。なお、表1中の「>200」は、面衝撃強度が200cm以上、「<5」は5cm以下であることを示す。
なお、以下のような基準で判定した。
(a)機械特性
・曲げ弾性率:2100(MPa)以上
・アイゾット衝撃強度:4.0(kJ/m)以上
・面衝撃強度:40(cm)以上
(b)流動性
・MFR:40〜180(g/10分)
機械特性、流動性のどちらも満たすものを「○」、どちらか一方しか満たさないものを「△」、どちらも満たさないものを「×」と判定した。
Figure 2013163757
Figure 2013163757
表1から、実施例1〜9では、配合した共重合体のエポキシ価と重量平均分子量が適切な範囲内の値であるため、機械特性、流動性の両方において基準を満たす良好な結果となった。重合体および/または共重合体(C)のエポキシ価、重量平均分子量が適切な範囲内の値であれば、スチレン系熱可塑性樹脂(A)とポリ乳酸(B)の配合量が異なっても、機械特性および流動性の両方において良好である熱可塑性樹脂組成物が得られる。なお、比較例1〜3に示すように、スチレン系熱可塑性樹脂(A)とポリ乳酸(B)を単純に混合しただけでは、機械特性が著しく低下することがわかる。
一方で、表2から、参考例1〜3では、配合した重合体および/または共重合体(C4)、(C5)、(C6)のエポキシ価が適切な範囲内の値であるため、機械特性は優れているものの、重量平均分子量が適切な範囲外であり、流動性の判定基準を満たさなかった。参考例4、5では、配合した重合体および/または共重合体(C7)、(C8)の重量平均分子量が適切な範囲内の値であるため、流動性については優れているものの、エポキシ価が適切な範囲外であり、機械特性の基準を満たさなかった。なお、参考例6〜8では、共重合体(C1)および耐衝撃性改良剤(D)の適切な配合量範囲外の例示である。
また図1は、実施例1と比較例1について押出機にて複数回押出を繰り返し、押出回数と物性保持率(%)(曲げ強さ)の相関を示すグラフであり、簡易的なマテリアルリサイクル特性の評価である。図1から、スチレン系熱可塑性樹脂(A)とポリ乳酸(B)を単純に混合した比較例1では、押出2回目から物性が大幅に低下しているのに対し、本発明の熱可塑性樹脂組成物に値する実施例1では、押出を5回繰り返しても、物性がほぼ低下していないことがわかる。
以上のように本発明によれば、スチレン系熱可塑性樹脂(A)とポリ乳酸(B)にエポキシ価、重量平均分子量ともに適切な範囲内の値を有する重合体および/または共重合体(C)、および耐衝撃性改良剤(D)を配合することで、スチレン系熱可塑性樹脂(A)が本来使われるべき用途に採用可能な機械特性および流動性の両方に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供でき、さらにその熱可塑性樹脂組成物は、マテリアルリサイクルされる製品にも好適に用いることができる。
今回開示された実施の形態および実施例は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲内は上記した説明ではなくて特許請求の範囲内によって示され、特許請求の範囲内と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (7)

  1. スチレン系熱可塑性樹脂(A)と、
    ポリ乳酸(B)と、
    前記ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するスチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分からなる重合体、および/または、前記ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するアルキル(メタ)アクリル酸エステルと、スチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分との共重合体(C)と、
    耐衝撃性改良剤(D)とを含む、熱可塑性樹脂組成物。
  2. スチレン系熱可塑性樹脂(A)が、ポリスチレンまたはポリスチレン変性ポリフェニレンエーテルである請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するスチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分からなる重合体、および/または、前記ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するアルキル(メタ)アクリル酸エステルと、スチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分との共重合体(C)は、エポキシ基を有し、そのエポキシ価が0.3〜5.0meq/gの範囲であることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するスチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分からなる重合体、および/または、前記ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するアルキル(メタ)アクリル酸エステルと、スチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分との共重合体(C)は、重量平均分子量が1000〜50000の範囲内であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 前記耐衝撃性改良剤(D)は、芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体、またはその水素添加物を主成分とすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 前記ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するスチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分からなる重合体、および/または、前記ポリ乳酸(B)に結合しうる官能基を有するアルキル(メタ)アクリル酸エステルと、スチレン系熱可塑性樹脂(A)を構成する成分との共重合体(C)を0.1〜20重量部、前記耐衝撃性改良剤(D)を1〜30重量部含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形加工して得られた熱可塑性樹脂成形体。
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