JP2008115295A - 超加工性高分子材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた耐衝撃性を有するとともに品質安定化を向上させることができるポリエステル系樹脂からなる超加工性高分子材料を提供する。
【解決手段】本発明の超加工性高分子材料は、(A)ポリエステル系樹脂を50〜90重量%、(B)ポリカーボネート系樹脂及びポリエチレン系樹脂から選ばれる少なくとも一種を5〜40重量%、(C)成分としてカルボキシル基と反応する官能基を持ったオレフィン共重合体である相溶化剤1〜30重量%、並びに(D)スチレン系エラストマー1〜40重量%からなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、カルボキシル基と反応する官能基を持ったオレフィン共重合体である相溶化剤等を含有する超加工性高分子材料に係り、詳しくは優れた耐衝撃性を有するとともに品質安定化を向上させることができるポリエステル系樹脂からなる超加工性高分子材料に関する。
一般にポリエチレンテレフタレート(以下「PET」という)やポリプチレンテレフタレート(以下「PBT」という)等のポリエステル系樹脂は耐薬品性、電気的特性、ガスバリア性、機械的性質に優れることからエンジニアプラスチックとして幅広い用途で利用されている。特にPETは、その延伸強度の高さから、繊維やフィルム、ボトル等に大量に使用され紡糸、ブロー成形等の分野での用途が拡大している。しかしながら、射出・押出成形の分野においては、ポリエステル樹脂は成形中に加水分解が生じ、機械的強度が低下することがあるため、小型の成形部品に用途が限られている。特に廃棄された樹脂成形品を再利用する場合、樹脂の加水分解等の劣化がひどく、再利用により成形された成形品の機械強度の低下は著しかった。これらの成形品の耐衝撃性はエラストマーを単に配合するのみでは十分改善されないため、新規の分野での実用途発展開拓の障害ともなっている。特に近年、樹脂開発(ポリマーアロイ)における新規の分野として、金属からプラスチックへの代替が望まれている。リサイクル時の分別の容易さや軽量化という観点から自動車部品から針金を利用している小物まで大小様々な用途において開発が進められてきている。
ポリエステル樹脂の耐衝撃性を高めるため、特許文献1,2に開示されるようなポリエステル系樹脂組成物が知られている。特許文献1に開示される樹脂組成物は、ポリエステル樹脂にエラストマー、オレフィン樹脂、相溶化剤としてオレフィン共重合体とビニル系共重合体(スチレン系ポリマー)のグラフト共重合体をせん断混練することにより得られる。また、特許文献2に開示されるポリエステル系樹脂組成物は、反応性の試薬として多官能性イソシアネート化合物をPETボトル粉砕品とPC光ディスク粉砕品との混合物に添加し、エラストマーとせん断混練することにより得られる。かかる反応性の試薬によりイソシアネート化合物との架橋反応により化学的に樹脂同士を結合することができる。
特開2005−15677号公報 特開2003−231796号公報
ところが、特許文献1に開示される樹脂組成物は、相溶化剤がオレフィン樹脂やエラストマーとファンデルワールス結合(分子間力)により混ざり合っているため、結合力が弱く常に安定した構造が取ることができない場合があるという問題があった。そのため衝撃特性や引張特性等の物性試験結果では物性にバラつきが生じることがあった。常に一定した品質が得られないため、特に長期の耐久性等の高品質性が要求される電気・電子部品や自動車部品等の用途への展開を困難にしていた。
また、引用文献2に開示される樹脂組成物は、混練する過程で架橋反応が過度に進みゴムのように硬くなり成形不能となる場合があるという問題があった。イソシアネート化合物の反応を制御することは非常に難しく、工業化・実用化は容易ではなかった。
また、これらの特許文献1,2に開示される樹脂組成物はPETの加水分解を防ぐために20〜220℃での設定温度(PETの融点未満)で未溶融せん断混練して得る方法を採用している。しかしながら、未溶融の状態で混練するため、混練装置への負荷が大きく、さらには、十分な混練がされない場合もあり各成分のPETへの分散が不均一となり品質がばらつく場合があった。
本発明は、本発明者らの鋭意研究の結果、ポリエステル系樹脂組成物においてスチレン系エラストマー等の樹脂成分と特定の相溶化剤を併用することにより優れた耐衝撃性を有するとともに品質安定化を向上させることを見出したことによりなされたものである。また、例えばシリンダ温度と剪断加熱により適正な樹脂温度(融点以上)で溶融混練することによりさらに優れた耐衝撃性を有するとともに品質安定化を向上させることを見出したことによりなされたものである。本発明の目的とするところは、優れた耐衝撃性を有するとともに品質安定化を向上させることができるポリエステル系樹脂からなる超加工性高分子材料を提供することにある。
上記の目的を達成するために請求項1記載の発明は、超加工性高分子材料において(A)ポリエステル系樹脂を50〜90重量%、(B)ポリカーボネート系樹脂及びポリエチレン系樹脂から選ばれる少なくとも一種を5〜40重量%、(C)成分としてカルボキシル基と反応する官能基を持ったオレフィン共重合体である相溶化剤1〜30重量%、並びに(D)スチレン系エラストマー1〜40重量%からなる。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の超加工性高分子材料において、前記(C)相溶化剤は、前記官能基としてエポキシ基及びエステル基から選ばれる少なくとも一種を有する単量体とオレフィン系重合体との共重合体である。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の超加工性高分子材料において、前記単量体はグリシジルメタクリレートである。
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項記載の超加工性高分子材料において、前記(A)ポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)から選ばれる少なくとも一種である。
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項記載の超加工性高分子材料において、前記(D)スチレン系エラストマーは、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、及びスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)から選ばれる少なくとも一種である。
本発明によれば、ポリエステル系樹脂からなる超加工性高分子材料において優れた耐衝撃性を有するとともに品質安定化を向上させることができる。
以下、本発明の超加工性高分子材料をポリエステル系樹脂組成物に具体化した一実施形態を説明する。
本実施形態において超加工性高分子材料としてのポリエステル系樹脂組成物は、(A)成分としてポリエステル系樹脂、(B)成分としてポリカーボネート系樹脂及びポリエチレン系樹脂から選ばれる少なくとも一種の成分、(C)成分として相溶化剤、並びに(D)成分としてスチレン系エラストマーから構成される。本実施形態において(C)相溶化剤は、(A)ポリエステル系樹脂の末端に由来するカルボキシル基と反応する官能基を持ったオレフィン共重合体が使用される。
(A)成分としてのポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸単位又はエステル形成能を持つそれら誘導体、ジオール単位又はエステル形成能を持つそれら誘導体を合成原料として公知の方法で重縮合して得ることができる。
ジカルボン酸単位として、具体的にはテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,2′−ビフェニルジカルボン酸、3,3′−ビフェニルジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウム等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、アゼライン酸、マロン酸、蓚酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸及びそれらのエステル形成性誘導体(例えばメチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステル等)等から誘導されるジカルボン酸単位を挙げることができる。
ジオール単位として、具体的にはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパンジオール、1,5−ペンタジオール等の炭素数2〜10の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の分子量6000以下のポリアルキレングルコールなどから誘導されるジオール成分を挙げることができる。
これらジカルボン酸単位及びジオール単位は共に上記化合物を単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。更に、本発明の(A)ポリエステル系樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲においてその他の成分として、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3官能以上のモノマーから誘導される構造成分を有していてもよい。
上記合成原料により得られる(A)ポリエステル系樹脂として具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリカプロラクトン、p−ヒドロキシ安息香酸系ポリエステル、ポリアリレート系樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、ジオール成分として、エチレングリコールを使用したポリエチレンテレフタレートがその結晶化挙動、熱的性質、機械的性質等の物性バランスの面から特に好ましい。また、ジオール成分として、ブチレングリコールを使用したポリブチレンテレフタレートも成形性、機械的性質等のバランスがよく好ましい。また、これと前記ポリエチレンテレフタレートの混合物も好適に使用できる。
(A)成分のポリエステル系樹脂は、ポリエステル系樹脂組成物において、50〜90重量%、好ましくは54〜80重量%、より好ましくは60〜75重量%の範囲で配合する。50重量%未満であると、ポリエステル樹脂の特性である耐薬品性、電気的特性、ガスバリア性、機械的性質等の性質が低下するおそれがある。一方、90重量%を越えると他の成分によって得られる耐衝撃性及び物性安定性等の性質の低下を招くおそれがある。
(B)成分としてポリカーボネート系樹脂及びポリエチレン系樹脂から選ばれる少なくとも一種の成分がポリエステル系樹脂組成物に配合される。それらの成分は後述する(C)相溶化剤と反応又は相溶することにより樹脂組成物に安定した耐衝撃性を付与する。
ポリカーボネート系樹脂とは、二価フェノールとカーボネート前駆体を合成原料として公知の方法により反応させることによって得ることができる。例えば、二価フェノールにホスゲン等のカーボネート前駆体を直接反応させる方法(界面重合法)、又は二価フェノールとジフェニルカーボネート等のカーボネート前駆体とを溶融状態でエステル交換反応させる方法(溶液法)などが知られている。
二価フェノールとして、例えばハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)ベンゼン及び核にアルキル基やハロゲン原子などが置換しているこれらの誘導体等を挙げることができる。特に好適な二価フェノールの代表例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス{(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシ)フェニル}スルホンなどが挙げられ、これらは単独又はそれ以上を混合して使用できる。これらの中で、特にビスフェノールAの使用が好ましい。
カーボネート前駆体として、例えばジフェニルカーボネート、ジトルイルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート等のジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、ホスゲン等のカルボニルハライド、二価フェノールのジハロホルメート等のハロホルメート等が挙げられる。これらの中で、好ましくはジフェニルカーボネートが挙げられる。これらカーボネート前駆体は、単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリカーボネート系樹脂としては、例えば1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンや1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンのような三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であってもよい。また、芳香族又は脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよい。また、得られたポリカーボネート樹脂の2種又はそれ以上を混合した混合物であってもよい。
ポリエチレン系樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度あるいは高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)の他、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等が挙げられる。
(B)成分であるポリカーボネート系樹脂及びポリエチレン系樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂は、ポリエステル系樹脂組成物において、5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは15〜25重量%配合される。配合量が5重量%未満であると樹脂組成物の耐衝撃性が低下するおそれがある。一方、40重量%を超えて配合しても曲げ強度や機械特性等の性質の低下を招くおそれがある。
(D)成分であるスチレン系エラストマーは、ポリエステル系樹脂組成物に対し耐衝撃性および延伸性付与のために配合される。スチレン系エラストマーとは、少なくとも1個のビニル芳香族化合物の重合体を含むブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物の重合体を含むブロックを有する共重合体である。スチレン系エラストマーの構成単位であるビニル芳香族化合物としては、芳香族部が単環でも多環でもよく、例えばスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等から1種またはそれ以上選択でき、これらの中でもスチレンおよび/またはα−メチルスチレンが好ましい。また、スチレン系エラストマーのもうひとつの構成単位である共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(通称、イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等のうちから1種又はそれ以上が選択でき、これらの中でも1,3−ブタジエン、イソプレン及びこれらの組み合わせが好ましい。そして、そのブロックにおけるミクロ構造を任意に選ぶことができ、例えばポリブタジエンブロックにおいては、1,2−ビニル結合含有量が20〜50%、好ましくは25〜40%である。
このようなスチレン系エラストマーにおけるビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン化合物重合体ブロックとの結合形態は特に限定されず、直鎖状、分岐状、放射状、またはそれらの二つ以上が組み合わさった結合形態のいずれであってもよいが、これらの中でも直鎖状の結合形態が好ましい。(D)スチレン系エラストマーの形態例としては、ビニル芳香族化合物重合体ブロックをXで、共役ジエン化合物重合体ブロックをYで表したときに、X(YX)m、(XY)n又はY(XY)p(ここでm、n及びpは1以上の整数)で示される結合形態を有するブロック共重合体を挙げることができる。その中でも、2個以上のビニル芳香族化合物重合体ブロックXと1個以上の共役ジエン化合物重合体ブロックYが直鎖状に結合したブロック共重合体、特にX−Y−X型のトリブロック共重合体が好ましく用いられる。このようなスチレン系エラストマーとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン共重合体(SIR)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)等が挙げられる。さらに、加熱溶融時の熱安定性や成形加工品の耐熱老化性向上、耐候性低下防止の観点から、共役ジエン化合物に基づく残留不飽和結合の少なくとも一部が水素添加処理(水素化処理)により飽和されているスチレン系エラストマーが好適に使用できる。なかでも残留する不飽和結合の50%以上、好ましくは80%以上が水素添加され、共役ジエン化合物を主体とする重合ブロックを形態的にオレフィン性化合物重合体ブロックに変換させたものが好ましい。具体的には、例えば部分水素化・スチレン−ブタジエンブロック共重合体、部分水素化・スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素化・スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体)、水素化・スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体)、水素化・スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体)等が挙げられ、これらの中でもSEBS、SEPS、SBS等の直鎖状のX−Y−X型結合形態のブロック共重合体が最も好ましい。
本発明で用いる(D)スチレン系エラストマーは、上記した構造を有するものであれば、公知の製造方法を適宜適用することができる。全構造単位に対して、ビニル芳香族化合物に由来する構造単位の含有量が10〜60重量%(即ち、共役ジエンに由来する構造単位の含有量が90〜40重量%)であることが好ましく、15〜40重量%(即ち、共役ジエンに由来する構造単位の含有量が85〜60重量%)であることがさらに好ましい。この範囲を逸脱すると、本発明のポリエステル系樹脂組成物の相構造が不安定化し耐衝撃性が低下する。また、(D)スチレン系エラストマーの分子量としては、小さすぎるとブロック共重合体自体の破断時の強度、伸度等の機械的性質が低下し、組成物とした場合にその強度を低下させるおそれがある。一方、大きすぎると加工性が悪くなり、十分な性能を有する組成物が得られないおそれがあるので、通常、数平均分子量で30,000〜500,000の範囲にあるのが好ましく、さらに好ましくは50,000〜300,000の範囲である。
これらスチレン系エラストマーは単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、カルボキシル基、酸無水物、カルボン酸エステル、水酸基、エポキシ基等の極性基を有する変性剤により一部又は全部を変性されてもよい。特に好ましい極性基は酸無水物とエポキシ基であり、酸無水物の中では無水マレイン酸基が挙げられる。さらには、他のスチレン系樹脂、例えばホモポリスチレン、スチレン−メチルスチレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(ABS)、スチレン−無水マレイン酸共重合体などを含有してもよい。ホモポリスチレンは、アタクチック構造、アイソタクチック構造およびシンジオタクチック構造のものを包含する。
(D)成分のスチレン系エラストマーは、ポリエステル系樹脂組成物中において、1〜40重量%、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは8〜15重量%の範囲で配合される。(D)成分が1重量%未満では得られるポリエステル系樹脂組成物の耐衝撃性、延伸性が十分ではなく、一方40重量%を超えると、該ポリエステル系樹脂組成物が柔軟化し、機械的強度、耐熱性が低下するおそれがある。
(C)成分としての相溶化剤は、ポリエステル系樹脂組成物に対し耐衝撃性を向上させるとともに品質安定化の向上のために配合される。本実施形態において(C)相溶化剤としては、(A)ポリエステル系樹脂に由来する未端カルボキシル基と反応する官能基を有するオレフィン共重合体が使用される。官能基としては、エポキシ基、カルボン酸エステル等のエステル基、酸無水物、カルボキシル基等が挙げられる。これらの中で(A)ポリエステル系樹脂等との反応性の高いエポキシ基及びエステル基が好ましい。オレフィン共重合体は、官能基として上述したエポキシ基等を有する単量体と主鎖としてのオレフィン系重合体とを共重合させることによって合成される。主鎖として使用されるオレフィン系重合体としては、(B)成分のポリエチレンや(D)スチレン系エラストマーと相溶性の良いオレフィン系重合体であれば特に限定されず、例えばエチレン、プロピレン、ブテン等の単独重合体やそれらの共重合体が挙げられる。
カルボキシル基と反応する官能基を有するオレフィン共重合体としては、オレフィン重合体と不飽和カルボン酸又はその誘導体との共重合体、オレフィン重合体と不飽和エポキシ化合物との共重合体、オレフィン重合体と不飽和カルボン酸、その誘導体、又は不飽和エポキシ化合物をグラフトさせたグラフト重合体等の変性オレフィン共重合体が挙げられる。
不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、アクリル酸、メタクリル酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のジ力ルボン酸無水物、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等のカルボン酸アルキルエステル等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
不飽和エポキシ化合物としては、分子中のオレフィンと共重合し得る不飽和基とエポキシ基をそれぞれ有する化合物である。具体的にはグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸グリシジルエステル、ブテンカルボン酸エステル類、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
官能基をオレフィンに共重合させる方法としては、例えばオレフィンを重合する際に官能基を有する化合物を添加して共重合する方法、押し出し機を用いてグラフトする方法等が挙げられる。共重合又はグラフトする官能基としては、特に耐衝撃性の向上効果が優れるグリシジルメタクリレート等の不飽和エポキシ化合物が好ましく使用される。
(C)成分の相溶化剤は、ポリエステル系樹脂組成物中において、1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは3〜10重量%の範囲で配合される。(C)成分が1重量%未満では得られるポリエステル系樹脂組成物の耐衝撃性、延伸性、物性安定性の向上効果が十分ではない。一方30重量%を超えると、PET中のカルボキシル基との反応が過度に起こり、過度に反応した架橋体は溶融混練によっても均一に分散することが困難となるため、ポリエステル系樹脂組成物の外観を損ない成形加工性、機械的強度等が低下するおそれがある。
本実施形態で用いられる混練装置としては、上記各成分を剪断加熱と設定温度によって樹脂加工に適した樹脂温度で溶融混練できるものであれば特に制限はなく、押出機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダー等を挙げることができる。例えば押出機では、単軸押出機、二軸押出機などのスクリュ押出機、エラスティック押出機、ハイドロダイナミック押出機、ラム式連続押出機、ロール式押出機、ギア式押出機などを挙げることができる。各成分の混合順は特に限定されない。
押出機等を用いた樹脂の混練は、混練装置のモータへの過負荷、スクリュの摩耗や破損を抑制するために、樹脂を高温下(融点以上)で溶融させた状態で行う溶融混練が好ましく用いられる。尚、樹脂原料の加水分解等の劣化を防止するために、融点以下の温度で混練することもできる。その際、混練装置の過負荷を防止するために樹脂原料のガラス転移温度以上で行なうことが好ましい。
本実施形態で使用される(C)相溶化剤は、例えば官能基としてエポキシ基が使用される場合、様々な官能基と反応することができる。そのため様々な用途に応じて、他の物性を得るために本発明の効果を阻害しない範囲内においてその他の成分を配合することができる。その他の成分として、例えばナイロン等のエンジニアリングプラスチック、アイオノマー、超高分子量ポリエチレン、各種エラストマー(エステル系及びオレフィン系等)等を挙げることができる。
例えば、剛性及び流動性が良好なナイロンを配合することにより、ポリエステル系樹脂組成物に対しても流動性及び剛性を向上させることができる。尚、ナイロン中のアミド結合は(C)相溶化剤(例えばエポキシ基)と反応するため(A)ポリエステル系樹脂材料中に分散される。
また、耐寒性が優れ、強靭かつ適度な弾力性、柔軟性を有するアイオノマーを配合することにより、低温での耐衝撃性を改良することができる。尚、アイオノマーもカルボキシル基を持つため(C)相溶化剤(例えばエポキシ基)と反応して(A)ポリエステル系樹脂材料中に分散される。
また、分子量の大きい超高分子ポリエチレンを配合することにより粘度を上昇させ、押出成形性を向上させることができる。(C)相溶化剤の主鎖がポリエチレンと相溶する。この結果、成形性が良くなりさらに、分子量が大きくなることにより衝撃特性も向上する。
また、スチレン系以外のエンジニアリングプラスチックの性質(例えば耐熱性、寸法精度、耐油性等)とゴムの性質(例えば低温屈曲性、防音性、反発弾性等)の両方の特性を持ったエラストマーも、耐衝撃性のさらなる改質のために添加することができる。
本実施形態のポリエステル系樹脂組成物によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、超加工性高分子材料としてのポリエステル系樹脂組成物において(A)ポリエステル系樹脂を50〜90重量%、(B)ポリカーボネート系樹脂及びポリエチレン系樹脂から選ばれる少なくとも一種を5〜40重量%を配合した。そしてさらに(C)成分としてカルボキシル基と反応する官能基を持ったオレフィン共重合体である相溶化剤1〜30重量%及び(D)スチレン系エラストマー1〜40重量%配合することにより構成される。したがって、従来より優れた耐衝撃性を有するとともに品質安定化を向上させることができる。
(2)また、本実施形態のポリエステル系樹脂組成物は、他のエンジニアリングプラスチックでは見られない塑性変形の挙動を有する。つまり、外力が加わり変形(歪み)し始めると変形させるために必要な力(応力)の関係がほぼ一定となる。公知のエンジニアリングプラスチックは、変形が大きくなるとそれに応じて大きな応力が必要となるため、そのような特徴は有しない。一方、本発明のポリエステル系樹脂組成物では一定の力(応力)で変形し続ける。
本実施形態のポリエステル系樹脂組成物は、衝撃力を一定の力で緩和することから衝撃吸収部材、自由に変形しやすいことから針金の代替品等の分野に適用することができる。
(3)(C)相溶化剤として、官能基としてエポキシ基を有するグリシジルメタクリレートとオレフィン系重合体としてポリエチレンとの共重合体を使用した場合、より優れた耐衝撃性及び品質安定化効果を得ることができる。
PE等のポリオレフィンと相溶性が良いグリシジルエーテル、反応基としてエポキシ基を持つ相溶化剤を使用すると、エポキシ基の開環反応により化学的に樹脂同士が結合するため反応接着性が向上する。そのため従来の相溶化剤を使用したときよりも構造が安定化され物性も一定したものが得られる。例えば、衝撃試験では常温で未破断、引張伸び値は250%以上という結果が得られる。エポキシ基は開環反応としてPETの末端カルボキシル基と反応して、−C(OH)−C−OCO〜(PET)〜の結合を生じる。かかる結合により樹脂同士の化学的な接着性と構造安定性が向上する。
(4)樹脂組成物を未溶融せん断混練して得る方法を採用する場合、混練装置のモータに過負荷がかかったり、スクリュを摩耗させたりと機械の耐久性が低下するという問題が生ずる。本実施形態において押出機等を用いた樹脂の混練において、樹脂を適正温度(融点以上)で溶融させた状態で行う溶融混練を適用することができる。混練装置のモータへの過負荷、スクリュの摩耗や破損を抑制することができる。
(5)本実施形態において、(A)ポリエステル系樹脂を使用した。通常ポリエステル系樹脂は、溶融混練や成形加工時に加水分解による劣化を防止するために樹脂原料の乾燥処理により水分含有量を極力少なくして使用する必要がある。一方、本願発明においては、(A)ポリエステル系樹脂を乾燥処理することなく使用しても耐衝撃性等の物性値の低下を伴うことがない。尚、さらに高品質の物性が要求される場合においては十分に乾燥することが好ましい。
(6)本実施形態のポリエステル系樹脂組成物は、ナイロンやポリカーボネート等の他のエンジニアリングプラスチックと比較して耐衝撃性が高いため、釘等を打ち込んでも割れやひび等が生じない。また、上述したように外力を受けても応力が一定となり変形し易いため、打ち抜き加工、延伸加工、曲げ加工等の様々な二次加工を容易に行なうことができ、超加工性高分子材料として建築材料、自動車、電子部品等の様々な分野に適用することができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態のポリエステル系樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲内においてその他一般に用いられる各種の添加剤を添加しても良く、添加剤として、例えば酸化防止剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、光拡散剤、難燃剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤、染顔料などが挙げられる。
・上記実施形態において使用される(A)ポリエステル系樹脂及び(B)成分としてポリカーボネート(PC)やポリエチレン(PE)の樹脂原料としてはバージンペレット、廃材より再生されたリサイクルペレット、リサイクルフレーク、廃材等の成形品の粉砕物のいずれを使用してもよい。リサイクルペレットや廃材等を使用した場合、環境対策としてリサイクル率の向上を図ることができる。
・上記実施形態において使用される(A)〜(D)成分の入手方法は特に限定されず、合成したものを使用しても市販品を使用してもよい。
・上記実施形態のポリエステル系樹脂組成物が適用される分野は耐衝撃性又は品質安定化が要求される成形品であれば特に限定されない。例えば、自動車部品、電子部品、衣類や包装材料等の日用品、建築材料等の分野において適用することができる。
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(試験例1)
表1に示されるように各実施例及び比較例に記載される樹脂原料を二軸押出機(スクリュ径46mm、L/D=35)にて溶融混練後、成形することにより超加工性高分子材料としてのポリエステル系樹脂組成物を得た。そして得られた各実施例及び比較例の樹脂組成物に対して引張試験及び衝撃試験について評価した。
(A)ポリエステル系樹脂として、ポリエチレンテレフタレートを使用した。また、実施例1,3及び比較例1においては、公知の樹脂乾燥機を用いて120℃×5時間乾燥処理を行なった。
(B)ポリカーボネート系樹脂として、ポリカーボネートを使用した。(B)ポリエチレン系樹脂としてLLDPE(線状低密度ポリエチレン)を使用した。
(C)相溶化剤Aとして、不飽和エポキシ化合物としてグリシジルメタクリレート及びオレフィンとしてエチレンとの共重合体を使用した。比較例において使用される(c)相溶化剤Bは、EGMA−g−PS(エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体とポリスチレンのグラフト共重合体)を使用した。
(D)スチレン系エラストマーとして、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体)を使用した。
<引張特性及び耐衝撃性>
射出成形機を用いて、シリンダ設定温度260℃、金型温度40℃で、JIS1号形引張試験片および100mm×10mm×4mmの短冊試験片を成形した。該引張試験片を用いて引張試験(JIS K7113に準拠)行なった。
耐衝撃性は、アイゾット衝撃強度についてJISK7110にしたがって評価した。試験片の厚み1/8インチ、測定温度23℃、Vノッチ付きで行なった。
Figure 2008115295
表1に示されるように、実施例1〜3のポリエステル系樹脂組成物は、比較例1,2と比較して各試作数内における引張試験数値において大きな差は認められなかった。一方、各比較例の引張試験の数値は各試作数内において大きな差が認められた。例えば引張降伏応力では比較例1が4.9MPa、比較例2が5.2MPaの差が生じた。また、引張破断伸びでは比較例2が222%の差が生じた。本実施例のポリエステル系樹脂組成物は品質安定化を向上させることができるものと思料される。また、衝撃試験においては、各実施例においては最終的に未破断であった。一方、各比較例は各試作物において破断するものとしないものとが生じ、品質に差が生じた。かかる点から本実施例のポリエステル系樹脂組成物は、従来より優れた耐衝撃性を有するとともに品質安定化を向上させることができる。
比較例において使用される相溶化剤は、変性オレフィン共重合体にビニル系共重合体がグラフト重合(枝分かれ)されたものが使用される。スチレン系のエラストマーとの親和性向上のためポリスチレン等のビニル系共重合体をグラフト重合するものであるため、その分骨格の変性オレフィン共重合体の反応性が弱まっている。したがって高い反応性を持たせるには、多量の相溶化剤の添加が必要となる。かかる場合、粘度が増大することによる成形加工性の悪化や満足する機械的物性が得られないという不都合が生ずる可能性がある。それに対し、本実施例のポリエステル系樹脂組成物は、変性オレフィン共重合体のみを相溶化剤として使用している。高い反応性を持った変性オレフィン共重合体を使用することによって、少量でも樹脂成分であるポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エラストマー成分の全ての成分との反応性、親和性を向上させることができる。その結果、それぞれの成分を安定して分散させることができ、成形加工性、機械的強度に優れた樹脂組成物が得られる。
尚、本実施例において(A)ポリエステル系樹脂を乾燥処理した実施例1と乾燥処理しなかった実施例2とでは引張試験及び衝撃試験において大きな差は見られなかった。一方、(A)ポリエステル系樹脂を乾燥処理した比較例1と乾燥処理しなかった比較例2とでは特に引張り破断伸びにおいて大きな差が見られた。
(試験例2)
上記実施例1記載のポリエステル系樹脂組成物と比較例3として市販のエンジニアリングプラスチックとしてポリエチレンテレフタレートを使用した。上述した引張試験により応力と歪みの関係を測定した。結果を図1に示す。
比較例3のエンジニアリングプラスチックは、通常剛性が高く、外力に対する抵抗力が強い。しかしながら、図1に示されるようにいったん変形が始まると(弾性変形から塑性変形に変わる降伏点以降)、その強い抵抗力が急に弱まるので応力が急激に下がる。尚、他のエンジニアリングプラスチック(例えばポリカーボネート)でも同様の挙動を示した。一方、実施例1の樹脂組成物は、比較例よりも降伏点を過ぎてからの応力の落ち込みが小さく、変形しやすいことが確認される。
図2に示されるように実施例1のポリエステル系樹脂組成物11は、ポリエチレンテレフタレート(PET)12が連続相(海)を形成し、ポリエチレン(PE)13が分散相(島)となり、さらにポリエチレン(PE)13の中にエラストマー14が分散したサラミ型分散構造(海‐島−湖構造)となる。そしてPET12とPE13の海面は相溶化剤15が介在し、ピンポイントで化学結合されている。つまり、外力が加えられ変形する際、剛性の低い弾性力のあるPE13とエラストマー14の相が柔軟に変形し、力を緩和している。さらにPET12とPE13の界面が、相溶化剤15で化学結合されているところまで剥離することでも力を緩和している。そのために、応力の急激な変化が小さくなっていると考えられる。PET12とPE13の界面は、相溶化剤15で化学結合されているところまで剥離するが、完全には剥離せず破断には至らない。
また、実施例1のポリエステル系樹脂組成物は、引張の伸度が大きくなっても応力の上昇が小さくほぼ一定の応力で伸びることが特徴的である。図1に示されるように引張試験により応力を加え続けると歪みはゆるやかに上昇し伸び続ける。そして、装置の稼動域限界まで伸び、そのときの引張伸び値は300%以上という結果が得られている。通常、図2の比較例3に示されるようにエンジニアリングプラスチックに応力を加え続けると、繊維が糸まり状に絡み合っていた分子鎖が伸びきってしまい、その後歪みは急激に上昇して最終的に破断する。一方、本実施例の超加工性高分子材料は、PEの相とPETの分子鎖との間にネットワーク(架橋)が形成される。そして柔軟なPEとエラストマーの相が大きく変形するため、破断しにくく伸び続ける。そのため歪みが大きくなっても応力はゆるやかに上昇していく。
以上のような特徴によって外力を受けても急激な力を緩和することから衝撃特性も大幅に向上しており、釘を打っても割れないほど耐衝撃性が高い。
試験例2における樹脂組成物の応力と歪みの関係を示すグラフ。 本実施例のポリエステル系樹脂組成物に応力を加えた際の各成分の構造変化を分子レベルで見た場合の予想図。
符号の説明
11…超加工性高分子材料としてのポリエステル系樹脂組成物、12…ポリエチレンテレフタレート、13…ポリエチレン、14…エラストマー、15…相溶化剤。

Claims (5)

  1. (A)ポリエステル系樹脂を50〜90重量%、(B)ポリカーボネート系樹脂及びポリエチレン系樹脂から選ばれる少なくとも一種を5〜40重量%、(C)成分としてカルボキシル基と反応する官能基を持ったオレフィン共重合体である相溶化剤1〜30重量%、並びに(D)スチレン系エラストマー1〜40重量%からなる超加工性高分子材料。
  2. 前記(C)相溶化剤は、前記官能基としてエポキシ基及びエステル基から選ばれる少なくとも一種を有する単量体とオレフィン系重合体との共重合体である請求項1記載の超加工性高分子材料。
  3. 前記単量体はグリシジルメタクリレートである請求項2記載の超加工性高分子材料。
  4. 前記(A)ポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)から選ばれる少なくとも一種である請求項1から請求項3のいずれか一項記載の超加工性高分子材料。
  5. 前記(D)スチレン系エラストマーは、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、及びスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)から選ばれる少なくとも一種である請求項1から請求項4のいずれか一項記載の超加工性高分子材料。
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