JP3786611B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な樹脂組成物に関し、更に詳しくは、常温下における圧延性、延伸性、深絞り性及び形状セット性に優れ、しかも靭性、耐衝撃性、剛性、強度に優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。本発明は、更に廃棄物となった熱可塑性樹脂の成形加工製品の再利用技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、ポリエステル系樹脂やポリカーボネート系樹脂などの熱可塑性樹脂又はこれらの熱可塑性樹脂組成物は、その優れた成形加工性、機械物性、耐熱性、耐候性、外観性、衛生性及び経済性等の点から、容器、包装用フィルム、家庭用雑貨、事務機器、AV機器、電気・電子部品、自動車部品などの成形材料として幅広い分野で使用されている。そのため、このような熱可塑性樹脂又はこれらの熱可塑性樹脂組成物の成形加工製品の使用量は多く、現在もなお年々増加の一途を辿っているが、一方では、使用済みで不要となって廃棄される成形加工製品の量も益々増大して深刻な社会問題となっている。
【0003】
前述のような背景の中、近年、容器包装リサイクル法や国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(通称、グリーン購入法)などが相次いで施行され、このような熱可塑性樹脂又はこれらの熱可塑性樹脂組成物の成形加工製品のマテリアルリサイクルに対する関心が高まってきている。中でも、使用量が急速に伸びているポリエチレンテレフタレート(以下、PETということがある)を材料とするPETボトルのマテリアルリサイクル技術の確立は急務となっている。また、CD,CD−R,DVD,MD等のポリカーボネート(以下、PCということがある)を材料とする光学記録媒体製品(光ディスク)の普及に伴い、これらの成形加工時に出る端材の再利用方法や廃棄物となった光ディスクから反射層、記録層等を剥離、粉砕し、透明なPC素材として再利用するための検討が進められている。
【0004】
しかしながら、市場から回収された使用済みのPETボトル等のポリエステル系樹脂や光ディスク等のポリカーボネート系樹脂の成形加工製品は、加水分解や熱分解等により劣化している場合が多く、例えばこれらの成形加工製品を粉砕したものを再度成形しようとしても溶融粘度の低下が著しいため、まったく成形できないか、またはたとえ成形が出来たとしても、機械的強度が脆弱で容易に破損してしまうため、実用に耐える成形加工品への再生利用は極めて困難なのが実情である。
【0005】
廃棄された成形加工製品からリサイクル用樹脂を回収する方法として、例えば、PETやPC等の熱可塑性樹脂又はこれら熱可塑性樹脂組成物の成形加工製品の粉砕片に、エポキシ基含有エチレン共重合体を溶融混練する方法(特開平5−247328号公報、特開平6−298991号公報など)やエポキシ化ジエン系共重合体を溶融混練する方法(特開平8−245756号公報)などが提案されている。これらの技術によって溶融粘度の増強や機械物性の向上はなし得るものの、例えば耐衝撃性を高めようとすると、これらエポキシ基含有化合物を多めに添加しなければならず、それに伴い、剛性や耐熱性の低下、更にはゲル化物生成による成形性や表面外観の不良などを生じることがあり、用途拡大の障害になっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、上記事情に鑑み、まず代表的なポリエステル系樹脂製回収素材であるPETボトルの粉砕品について実用に耐える再生方法を鋭意検討し、次いでそこから得られた知見をもとに、ポリカーボネート系樹脂製である光ディスク粉砕品の利用方法についても検討を加えた。その結果、PETボトル粉砕品とPC光ディスク粉砕品との混合物に、特定のビニル芳香族化合物重合体と共役ジエン化合物重合体からなるブロック共重合体(以下、単にブロック共重合体ということがある)及び多官能性イソシアネート化合物を特定の割合で配合し、そのポリエステル系樹脂の融点よりも低い温度で剪断混練することにより得られる樹脂組成物が、優れた耐衝撃性を示すことを見出すとともに、驚くべきことに、この樹脂組成物が常温下でも優れた圧延性、延伸性、深絞り性及び形状セット性を発現することを見出した。そして、このような特性はPETボトル粉砕品やPC光ディスク粉砕品を用いた場合に限らず、通常のバージンのPETやPCを用いた場合にも発現されることが判明し、本発明を完成させた。
【0007】
上記のような金属材料に近い常温塑性変形挙動を示す樹脂組成物はこれまでにはなく、かかる樹脂組成物は広範な新規用途展開が期待できるものである。従って、本発明の目的とするところは、これまでのプラスチック製品には見られない性質、すなわち、常温下における圧延性、延伸性、深絞り性及び形状セット性に優れ、しかも靭性、耐衝撃性、剛性、強度に優れた新規な熱可塑性樹脂組成物を提供することにあり、更には廃棄物となったポリエステル系樹脂やポリカーボネート系樹脂などの熱可塑性樹脂の成形加工製品を新たに再利用できるようにすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明の樹脂組成物は、(A)ポリエステル系樹脂50〜90重量%及び(B)ポリカーボネート系樹脂50〜10重量%の合計100重量部、(C)少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体を含むブロック及び少なくとも1個の共役ジエン化合物重合体を含むブロックを有するブロック共重合体5〜100重量部並びに(D)多官能性イソシアネート化合物0.1〜5重量部を含有する混合物を、室温以上、前記成分(A)の融点未満の温度で、剪断混練装置を用いて混練することによって得られる熱可塑性樹脂組成物である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。本発明で用いられる(A)成分のポリエステル系樹脂は特に限定されるものではなく、ジカルボン酸単位又はエステル形成能を持つそれら誘導体、ジオール単位又はエステル形成能を持つそれら誘導体とを公知の方法で重縮合して得られるポリエステル樹脂である。
【0010】
ジカルボン酸単位の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,2′−ビフェニルジカルボン酸、3,3′−ビフェニルジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウム等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、こはく酸、アゼライン酸、マロン酸、蓚酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸及びそれらのエステル形成性誘導体(例えばメチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステル等)などから誘導されるジカルボン酸単位を挙げることができる。
【0011】
また、ジオール単位の例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパンジオール、1,5−ペンタジオール等の炭素数2〜10の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の分子量6000以下のポリアルキレングルコールなどから誘導されるジオール成分を挙げることができる。
【0012】
これらジカルボン酸単位及びジオール単位は共に上記化合物を各々単独で使用しても2種又はそれ以上組み合わせて使用してもよい。更に、本発明のポリエステル系樹脂は、全構造単位に基づいて1モル%以下であれば、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3官能以上のモノマーから誘導される構造成分を有していてもよい。
【0013】
かかるポリエステル系樹脂の具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(以下、これをPBTということがある)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリカプロラクトン、p−ヒドロキシ安息香酸系ポリエステル、ポリアリレート系樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、ジオール成分として、エチレングリコールを使用したポリエチレンテレフタレートがその結晶化挙動、熱的性質、機械的性質等の物性バランスの面から特に好ましく、またジオール成分として、ブチレングリコールを使用したポリブチレンテレフタレートも成形性、機械的性質等のバランスがとれ好ましく、これと前記ポリエチレンテレフタレートの混合物も好適に使用できる。更には、ポリエチレンナフタレート又はこれとポリエチレンテレフタレートとの混合物(好ましくはPETが50重量%以上の混合物)も好ましい。
【0014】
上記ポリエステル樹脂の固有粘度に特に制限はないが、本発明においては、好ましくは0.60〜1.20dl/g、更に好ましくは0.65〜1.10dl/gの範囲である。固有粘度が小さすぎると十分な耐衝撃性、延伸性が得られず、また耐薬品性も低下するおそれがある。逆に固有粘度が大きすぎると流動粘度の増大に伴い常温下での圧延性が低下するおそれがある。ここで固有粘度はフェノール/テトラクロロエタン(重量比:1/1)混合溶媒を用いて30℃で測定したときの値である。
【0015】
固有粘度が上記範囲にあるPETであれば、使用済みの廃棄PETボトル等のPET製品の粉砕品も好適に用いることができる。廃棄物として回収されたPET製品であるボトル、シート、衣類、それにこれら成形品を成形した時に出た成形屑や繊維屑などを、適当な大きさに粉砕したものを使用することができ、中でも、量的に多い飲料用ボトルの粉砕品を好適に使用することができる。一般に、PETボトルは分別回収後、異材質除去、粉砕、洗浄工程を経て大きさ5〜10mmの透明なクリアフレークに再生される。通常、かかるクリアフレークの固有粘度の範囲は概ね0.65〜0.75dl/gである。
【0016】
本発明で使用する(B)成分のポリカーボネート系樹脂とは、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させることによって得られる芳香族ポリカーボネートであって、その製造方法自体は公知であり、二価フェノールにホスゲン等のカーボネート前駆体を直接反応させる方法(界面重合法)、又は二価フェノールとジフェニルカーボネート等のカーボネート前駆体とを溶融状態でエステル交換反応させる方法(溶液法)などが知られている。
【0017】
二価フェノールとしては、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)ベンゼン及び核にアルキル基やハロゲン原子などが置換しているこれらの誘導体などが挙げられる。特に好適な二価フェノールの代表例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス{(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシ)フェニル}スルホンなどが挙げられ、これらは単独又はそれ以上を混合して使用できる。これらの中で、特にビスフェノールAの使用が好ましい。
【0018】
カーボネート前駆体としては、ジフェニルカーボネート、ジトルイルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート等のジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、ホスゲン等のカルボニルハライド、二価フェノールのジハロホルメート等のハロホルメート等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、ジフェニルカーボネートを使用する。これらカーボネート前駆体もまた、単独でもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
また、本発明のポリカーボネート系樹脂は、例えば1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンや1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンのような三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族又は脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよい。また、得られたポリカーボネート樹脂の2種又はそれ以上を混合した混合物であってもよい。
【0020】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、通常、粘度平均分子量で1×104 〜1×105 程度であるが、本発明で用いるポリカーボネート樹脂の分子量は12,000〜30,000程度が好ましく、13,000〜25,000が更に好ましい。
【0021】
上記分子量の範囲にある本発明において使用するのに好適なポリカーボネートとしては、廃棄された光ディスク等の粉砕品を挙げることができる。CD,CD−R,DVD,MD等の光ディスクや光学レンズを成形加工した時に出る端材や廃棄物となった光ディスクから反射層、記録層等を剥離したものなどを10mm以下の適当な大きさに粉砕した樹脂片であれば特に限定なく、本発明において使用できる。一般に、これら光ディスク用のポリカーボネート樹脂は高流動タイプで、分子量が13,000〜18,000の低分子量のものが用いられている。また、樹脂片の形状としては、例えばフレーク状、ブロック状、粉状及びペレット状などが好ましく、特に好ましい形状はフレーク状である。
【0022】
本発明において使用する(A)ポリエステル系樹脂及び(B)ポリカーボネート系樹脂の配合割合は(A)/(B)=50〜90/50〜10(重量%)、好ましくは60〜80/40〜20(重量%)である。ポリエステル系樹脂が50重量%未満では(即ちポリカーボネート系樹脂が50重量%を超えると)、本発明の樹脂組成物の形状セット性、圧延、延伸及び深絞り性が低下し、また耐薬品性も損なわれるので好ましくない。逆にポリエステル系樹脂が90重量%を超えると(即ちポリカーボネート系樹脂が10重量%未満では)、本発明の樹脂組成物の耐衝撃性及び耐熱性が低下し、また成形品の反りが生じやすくなるので好ましくない。
【0023】
本発明において使用する(C)ブロック共重合体は、本発明の樹脂組成物の耐衝撃性及び延伸性付与のために必要な成分であって、少なくとも1個のビニル芳香族化合物の重合体を含むブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物の重合体を含むブロックを有し、共役ジエン化合物重合体ブロックの少なくとも一部が水素添加により飽和されているブロック共重合体であるのが好ましい。
【0024】
本発明のブロック共重合体の構成単位であるビニル芳香族化合物としては、芳香族部が単環でも多環でもよく、例えばスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン,2−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等から1種又はそれ以上選択でき、これらの中でもスチレン及び/又はα−メチルスチレンが好ましい。
【0025】
本発明のブロック共重合体の構成単位である共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(通称、イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等のうちから1種又はそれ以上が選択でき、これらの中でも1,3−ブタジエン、イソプレン及びこれらの組み合わせが好ましい。そして、そのブロックにおけるミクロ構造を任意に選ぶことができ、例えばポリブタジエンブロックにおいては、1,2−ビニル結合含有量が20〜50%、好ましくは25〜40%である。
【0026】
本発明のブロック共重合体におけるビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン化合物重合体ブロックとの結合形態は特に限定されず、直鎖状、分岐状、放射状、又はそれらの2つ以上が組み合わさった結合形態のいずれであってもよいが、これらの中でも直鎖状の結合形態が好ましい。ブロック共重合体の例としては、ビニル芳香族化合物重合体ブロックをXで、共役ジエン化合物重合体ブロックをYで表したときに、X(YX)m,(XY)n又はY(XY)p(ここでm,n及びpは1以上の整数)で示される結合形態を有するブロック共重合体を挙げることができる。その中でも、2個以上のビニル芳香族化合物重合体ブロックXと1個以上の共役ジエン化合物重合体ブロックYが直鎖状に結合したブロック共重合体、特にX−Y−X型のトリブロック共重合体が好ましく用いられる。
【0027】
上記したブロックYにおいては、共役ジエン化合物に基づく残留不飽和結合の水素添加による飽和は特に必要ではないが、加熱溶融時の熱安定性や成形加工品の耐熱性、耐候性低下防止の観点から、その少なくとも一部が水素添加されているのが好ましい。残留する不飽和結合の50%以上、好ましくは80%以上が水素添加され、共役ジエン化合物を主体とする重合ブロックを形態的にオレフィン性化合物重合体ブロックに変換させたものが好適に使用できる。具体的には、例えば部分水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体、部分水添スチレン−イソプレンブロック共重合体、水添スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体)、水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体)、水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体)等が挙げられ、これらの中でもSEBSやSEPS等の直鎖状のX−Y−X型結合形態のブロック共重合体が最も好ましい。また、ビニル芳香族化合物又は共役ジエン化合物に基づく残留不飽和結合が水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基等の官能基を有する化合物又はそれらの誘導体で変性されたブロック共重合体であってもよく、これらの中でも少なくとも一方の末端が水酸基又はカルボキシル基で変性されたブロック共重合体が好ましい。
【0028】
本発明のブロック共重合体においては、全構造単位に対して、ビニル芳香族化合物に由来する構造単位の含有量が10〜60重量%(即ち、共役ジエンに由来する構造単位の含有量が90〜40重量%)であることが好ましく、15〜40重量%(即ち共役ジエンに由来する構造単位の含有量が85〜60重量%)であることが更に好ましい。この範囲を逸脱すると、本発明の樹脂組成物のモルフォロジーが不安定化し耐衝撃性が低下する。
【0029】
成分(C)のブロック共重合体の数平均分子量は、小さすぎるとブロック共重合体自体の破断時の強度、伸度等の機械的性質が低下し、組成物とした場合にその強度を低下させるおそれがあり、また大きすぎると加工性が悪くなり、十分な性能を有する組成物が得られないおそれがあるので、数平均分子量は30,000〜500,000の範囲にあるのが好ましく、更に好ましくは50,000〜300,000の範囲である。
【0030】
これらブロック共重合体の製造方法としては、上記した構造を有するものであれば、どのような製造方法で得られるものであってもかまわない。また成分(C)は、上記のブロック共重合体を一種又はそれ以上含むことが出来る。
【0031】
本発明において使用する成分(C)のブロック共重合体は、(A)ポリエステル系樹脂及び(B)ポリカーボネート系樹脂の合計100重量部に対して、5〜100重量部、好ましくは7〜60重量部、より好ましくは10〜45重量部の範囲で配合する。成分(C)が5重量部未満では組成物の耐衝撃強度が十分ではなく、100重量部より多くなると、組成物が柔軟化し、機械的強度、耐熱性が低下する。
【0032】
本発明において用いる成分(D)の多官能性イソシアネート化合物は、分子内に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を意味し、ポリイソシアネート化合物とポリオール、ポリエステル系又はポリカーボネート系のジオールとを反応させたポリイソシアネート変性化合物等も含まれる。かかるポリイソシアネート化合物としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、m−トリメチルキシレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシレンジイソシアネート、ビス−(4,4′−イソシアナトフェニル)メタン、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートなどのようなトリレン、ジフェニルメタン、ナフチレン、トリジン、キシレン、トリフェニルメタン等を骨格とする芳香族ポリイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ビス(4,4′−イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネートメチルなどのようなイソホロン、水素化ジフェニルメタン等を骨格とする脂環族ポリイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどのようなヘキサメチレン、リジン等を骨格とする脂肪族ポリイソシアネートが挙げられ、これらはいずれも使用可能であり、1種又はそれ以上を混合して使用することができる。これらの中でも、より強靭でかつ延伸性及び深絞り性に優れた組成物が得られることから、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートなどのようなイソシアネート基を3個又はそれ以上有するポリイソシアネート、又はこれらと前記ジイソシアネートの混合物が好ましく使用される。
【0033】
また、イソシアネート基を3個又はそれ以上有するポリイソシアネートとしては、イソシアヌレート変性体、特にイソシアヌレート環含有トリイソシアネートも好ましく使用できる。具体例としては、イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート、イソシアヌレート変性イソホロンジイソシアネート、イソシアヌレート変性トリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0034】
本発明において使用する成分(D)の多官能性イソシアネート化合物の配合量は、成分(A)及び(B)の合計100重量部に対して、0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜3重量部である。成分(D)の配合量が0.1重量部未満では本発明の樹脂組成物の耐衝撃性が損なわれ、逆に5重量部を超えると、(A)及び/又は(B)が有する水酸基等との反応による分子鎖延長や架橋が過度に進み、大幅な増粘現象を起したりゲル化物が多量に生成したりするので好ましくない。多官能性イソシアネート化合物がかかる配合範囲にあることにより、適度な架橋によるネットワークが形成され、また、加水分解及び熱分解の補償効果及びポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂との相溶効果がバランスよく発現され、圧延性、延伸性、深絞り性及び耐衝撃性の向上に寄与するものと考えられる。
【0035】
また、本発明の樹脂組成物には、その物性を損なわない限りにおいて、その目的に応じて樹脂成分の混合時に、慣用の他の添加剤、例えば顔料、染料、補強材(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、マイカ、粘土鉱物、チタン酸カリウム繊維など)、充填剤(カーボンブラック、シリカ、アルミナ、酸化チタン、金属粉、木粉、籾殻など)、熱安定剤、酸化劣化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤等を配合することができる。これらの中でも、本発明の樹脂組成物においては、ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂のエステル交換反応や熱分解を抑える観点からも、熱安定剤や酸化劣化防止剤などの安定剤の添加が好適である。
【0036】
本発明において用いることができる安定剤としては、リン系、ヒンダードフェノール系、アミン系、チオエーテル系等の化合物が使用できる。リン系化合物としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸及びこれらのエステル等が挙げられ、例えばトリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンホスホナイト、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル等が挙げられる。ヒンダードフェノール系化合物としては、1,6−ヘキサンジオールビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコールビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。アミン系化合物としては、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、4,4′−ビス−(4−α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、ジフェニルアミンとアセトンとの縮合反応物、N−フェニルナフチルアミン、N,N′−ジ−β−ナフチルフェニレンジアミンなどが挙げられる。また、チオエーテル系等の化合物としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、テトラキス〔メチレン−3−(ドデシルチオ)プロピオネート〕メタンなどが挙げられる。これらの安定剤の添加量は本発明の樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.001〜1重量部であり、更に好ましくは0.01〜0.5重量部である。
【0037】
本発明で用いられる混練装置としては、上記各成分を剪断混練できるものであれば特に制限はなく、押出機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダー等を挙げることができる。例えば押出機では、単軸押出機、二軸押出機などのスクリュー押出機、エラスティック押出機、ハイドロダイナミック押出機、ラム式連続押出機、ロール式押出機、ギア式押出機などを挙げることができるが、これらの中でスクリュー押出機、特に二軸押出機が好ましく、より好ましくは脱気効率のよいベント(脱気口)を1つ以上備える二軸押出機である。成分の混合順は特に限定されない。
【0038】
一般に押出機等を用いた樹脂の混練は、樹脂を高温下で溶融させた状態で行う、いわゆる溶融混練を指すのが常識であるが、本発明者らは、使用済みの廃棄PETボトル粉砕品を用いた押出混練方法を検討する中で、適当な剪断力さえ加えることができれば、PETが融点未満の未溶融状態(固相状態)でも十分に混練が可能なこと、また、このことによってPETの加水分解反応も抑えられる事を見出した。
【0039】
したがって、本発明においては、前記混練装置を用いて混練する際の混練温度は、室温以上、成分(A)のポリエステル系樹脂の融点未満の温度であるのが好ましい(以下、低温混練ということがある)。より好ましくは成分(A)ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上であって、その樹脂の融点未満である。混練温度がポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上であると、樹脂が軟化することによって混練装置への負荷が低減できるので好ましい。特に、ポリエステル系樹脂が結晶化度の高いペレット状の形態である場合には、ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上で混練するのが好ましい。なお、ここで融点とは、示差走査熱量計(DSC)による昇温測定時に発現する結晶融解吸熱ピークの終点温度をいい、またガラス転移点とはベースラインが階段状に変化した部分の温度のことをいい、更に詳しくは階段状に変化している部分の前後の各ベースラインから延長した直線から縦方向に等距離にある直線と、階段状変化部分との曲線とが交わる点の温度のことをいう。本発明の樹脂組成物は、原材料(即ち成分(A),(B)及び(C))の混練前の予備乾燥を十分に行っていれば、通常の溶融混練でも得ることが可能であるが、ポリエステル系樹脂の加水分解反応及びポリエステル系樹脂とポリカーボネート系樹脂のエステル交換反応を抑制させる観点から、本発明に従った低温混練のほうが好適である。なお、成分(D)の多官能性イソシアネート化合物は反応性が高いために、低温混練でも十分に反応し、本発明の樹脂組成物の特性を損なうことはない。特に、上記回収されたPET粉砕品とPC粉砕品を用いる場合には、前記低温混練が最も好ましく適用することができ、勿論、この場合においても、加水分解反応が抑制されるので、混練前の原材料の予備乾燥は特に必要としない。更に、形状がフレーク状の粉砕品が、剪断力を効率良く受けることができ、混練装置への負荷も少なく、より効果的である。一般に、バージンのポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂はペレット状の形態で市販されているが、これらをガラス転移温度以上の温度でプレスしたり、押出機等で一旦溶融させ、溶融ストランドを冷却水中でローラーに通して押し潰し、通常のペレタイザーでカッティングすることで、これらバージンペレットからも、低温混練に好適な扁平なフレーク状の形態を得ることができる。
【0040】
二軸スクリュー押出機を用いて低温混練する場合、混練物が実質的にポリエステル樹脂の融点を超えない未溶融状態から半溶融状態で吐出される場合があり、この場合、押出しはダイヘッドを開放した状態で行ってもよいし、またダイヘッドを閉じた状態でも、ダイヘッドをポリエステル樹脂の融点近傍に設定することで、混練物を一時的に溶融させてストランドとして引くことが可能であり、これを公知の方法でペレタイズすることができる。ダイヘッドを開放状態で行った場合には、吐出物を粉砕機に通すことによって容易に成形可能な粒子状に変えることができる。例えば押出機先端の吐出口直下に粉砕機を設置することによって、連続的に破片粒子化処理まで行うことができる。
【0041】
【実施例】
以下、本発明の実施例及び比較例を説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例によりその範囲が限定されるものではないことはいうまでもない。
【0042】
実施例1〜6及び比較例1〜6
先ず、以下の実施例及び比較例で用いた原材料及び剪断混練装置について説明する。
【0043】
(A)成分:ポリエステル系樹脂
R−PET(回収ポリエチレンテレフタレート):固有粘度0.68dl/gの使用済みの廃棄PETボトルの大きさ2〜8mmのフレーク状粉砕品(洗浄品)。なお、このPETフレークの昇温速度20℃/分におけるDSC法(パーキンエルマー社製DSC7使用)による結晶融解ピークの終点の温度は263℃であった。また、同DSC法によるガラス転移温度は68℃であった。
PET−1:固有粘度0.75dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット。前記同様のDSC法によるこのPETの融点は267℃で、ガラス転移温度は75℃であった。
PET−2:固有粘度0.95dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット。前記同様のDSC法によるこのPETの融点は272℃で、ガラス転移温度は78℃であった。
PBT:固有粘度0.85dl/gのポリブチレンテレフタレート樹脂ペレット。前記同様DSC法によるこのPBTの融点は230℃で、ガラス転移温度は27℃であった。
【0044】
(B)成分:ポリカーボネート系樹脂
R−PC(回収ポリカーボネート):廃棄コンパクトディスクより反射層、記録層等を剥離後、大きさ1〜5mmのフレーク状に粉砕したもの(基板のPCは三菱エンジニアリングプラスチック(株)製ユーピロンH4000、分子量約15,000)。
PC:タフロンA2500(出光石油化学(株)製、分子量約23,500)。
【0045】
(C)成分:ブロック共重合体
SEBS:Septon8006((株)クラレ製、スチレン含有量33重量%、トルエン溶液粘度42 mPa・S(30℃、5wt%))
【0046】
(D)成分:多官能性イソシアネート化合物
ミリオネートMR−200(日本ポリウレタン工業(株)製、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートとメチレンジフェニルジイソシアネート(40%)混合物、イソシアネート基2.7〜2.8当量/モル)
【0047】
比較例に用いた化合物
エポキシ基含有エチレン共重合体:ボンドファーストE(住友化学工業(株)製、ポリエチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体)
【0048】
混練装置は(株)日本製鋼所製の減圧ベント付き二軸押出機TEX30α(2条スクリュー、口径32mm、L/D=42)を用いた。この装置のシリンダ部は温調ブロックごとにC1〜C12の12ブロックから成り、C1部に原材料供給口を、C6部及びC11部にベントを設置し、またスクリューの混練部(ニーディングゾーン)をC4及びC10の位置になるように配した。
【0049】
次に、実施例及び比較例における結果は以下の方法で評価した。
(1)樹脂組成物の機械物性
射出成形機((株)日本製鋼所製、J55ELII)を用いて、シリンダ設定温度260℃(PCのみは300℃)、金型温度40℃(PCのみは100℃)で、100mm×10mm×4mmの短冊型試験片を成形した。しかるのちJIS−K7111に準拠してシャルピー衝撃試験(Uノッチ、R=1mm)を、JIS−K7171に準拠して曲げ試験を、またJIS−K7191に準拠して荷重たわみ温度の試験を行った。
【0050】
(2)圧延性
前記射出成形試験片から10mm×10mm×4mmの大きさに試験片を切り出し、この試験片をプレス機(東洋精機(株)製、ミニテストプレス10)を用いて、常温下(23℃)、ゲージ圧力で50 kgf/cm2 の圧力を加え30秒間プレスした。プレス前後の試験片の厚さを測定し、下記式の圧延倍率より圧延性を評価した。圧延倍率が高いほど圧延性がよい事を示す。
圧延倍率(%)=(プレス前の試験片の厚さ/プレス後の試験片の厚さ)×100
【0051】
(3)延伸性及び深絞り性
上記(1)と同様の成形条件で50mm×50mm×1mmのシートを射出成形した後、油圧式疲労試験機((株)島津製作所製、サーボパルサーEHF−EB5−10L)を用いて、直径20mm、先端半径10mmの先端が丸い棒状のプランジャー(突っ込み棒)によるシート成形品の常温押込み試験を行った。試験条件は温度23℃にて、押込み速度1m/分、押込みストローク25mm、試料固定支持台のウィンドウ径30mm(シートを支持台の上に載せ、ウィンドウの周囲を把持板で支持台に固定。よって試料の変形できる領域はこのウィンドウ内の範囲に限られる。)で行った。試験後のサンプルの状態から、下記判断基準にて評価を行った。
○:シートは破損することなく、プランジャーで押し込まれた部分だけがホール状に延伸され、プランジャーの先端形状を型取った薄肉の縁付き帽子状の形態に変形、セットされた。縁部を基点として押し込まれた突起先端部までの高さは約25mm。
×:プランジャーがシートを突き抜けたり、シートに亀裂や破れなどの損傷が生じた。
尚、○となったシートに関しては、プランジャー先端部に当る部分の肉厚を測定し、初期厚さとの比から、下記式に従い、絞り率(延伸率)を求めた。
絞り率(%)=(試験前の厚さ/試験後の厚さ)×100
【0052】
表Iに示す量(重量部)の各成分を、二軸押出機の原材料供給口から投入し、下記混練条件にて、混練押出してペレットを作成し、射出成形を行った。尚、混練前の原材料の予備乾燥は行わなかった。また射出成形前には予備乾燥として、ペレットを100℃、4時間の乾燥を行った。
【0053】
比較例1〜2
押出混練は行わず、粉砕フレークをそのまま用いて射出成形を行った。
実施例1〜6及び比較例3〜5
シリンダ設定温度:C1〜C8/C9〜C10/C11〜C12/ダイ=100/220/240/250℃
スクリュー回転数:250rpm
【0054】
比較例6
シリンダ設定温度:C1〜ダイ=280℃
スクリュー回転数:250rpm
【0055】
以上の評価結果を表Iに示した。
【0056】
【表1】
【0057】
実施例1〜6は、それぞれ成分(A)〜(D)の配合量を本発明の範囲内で一定にして、成分(A)及び(B)の種類を変えたものである。成分(A)及び(C)の分子量(固有粘度)が変わっても、本発明に従う樹脂組成物は、いずれの場合においても高い衝撃強度を有し、常温下における圧延性、延伸性及び深絞り性も優れていることが判る。特に、実施例1に示すように、PETボトル粉砕フレーク(比較例1)及びCD粉砕フレーク(比較例2)のような低分子量で衝撃強度の低い材料を用いても、このような高衝撃強度のものが得られることは驚くべきことである。また、これら実施例の押し込み試験で得られた帽子状成形品の突起部は、約5倍(500%)に延伸され、厚みが0.2mm程度の薄肉になっているのにもかかわらず、一般のフィルムのような柔軟な感触ではなく、剛直な感触のものであった。このように、補強材が未充填であるのにもかかわらず、薄肉でかつ高剛性であることもまた驚くべきことである。
【0058】
比較例3は実施例1の配合より成分(C)を省いた例であるが、耐衝撃強度が低く、かつ延伸性及び深絞り性がよくない。また比較例4は実施例1の配合より成分(D)を省いた例であるが、この場合、圧延性、延伸性及び深絞り性は実施例1に比較し若干劣る程度であったが、耐衝撃性の低下が顕著であった。比較例5は成分(D)の代わりに、エポキシ基含有エチレン共重合体を用いた例であるが、耐衝撃性、延伸性及び深絞り性は満足できるものではなかった。比較例6は実施例1と同一配合であるが、混練温度を280℃とした場合で、加水分解劣化によるとみられる耐衝撃性、延伸性及び深絞り性の低下が認められた。
【0059】
本発明の樹脂組成物は(A)成分が連続相をなし、その連続相中に(B)成分単独相からなるミセル粒状分散相(I)と(C)成分を含有した(B)成分からなる分散相(II)が共存する形態を有する。そして、現段階ではまだ明らかにはなっていないが、このような(I)と(II)の共存分散構造が、本発明の熱可塑性樹脂組成物の優れた耐衝撃性や常温塑性変形等を発現する一因になっているものと考えられる。
【0060】
【発明の効果】
以上の通り、本発明に従う熱可塑性樹脂組成物は靭性、耐衝撃性、剛性及び強度に優れ、しかも常温下における圧延性、延伸性、深絞り性、いわゆる金属材料のような冷間塑性加工性を有し、広範な新規用途展開が期待できるものである。さらに本発明は、ポリエステル系樹脂やポリカーボネート系樹脂の再生技術の向上にも著しく寄与する。
Claims (6)
- (A)ポリエステル系樹脂50〜90重量%及び(B)ポリカーボネート系樹脂50〜10重量%の合計100重量部、(C)少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体を含むブロック及び少なくとも1個の共役ジエン化合物重合体を含むブロックを有するブロック共重合体5〜100重量部並びに(D)多官能性イソシアネート化合物0.1〜5重量部を含む混合物を、剪断混練装置を用いて、室温以上、前記ポリエステル系樹脂の融点未満の温度で混練することによって得られる熱可塑性樹脂組成物。
- ポリエステル系樹脂(A)がポリエチレンテレフタレート及び/又はポリブチレンテレフタレートである請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ポリエステル系樹脂(A)が使用済みの廃棄ポリエチレンテレフタレート樹脂製品を粉砕して得られる樹脂片である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ポリカーボネート系樹脂(B)が使用済みの廃棄ポリカーボネート樹脂製品を粉砕して得られる樹脂片である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記樹脂片の形状がフレーク状である請求項3又は4に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記(C)成分の共役ジエン化合物重合体ブロックの少なくとも一部が水素添加により飽和されているブロック共重合体である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
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