JP3657309B2 - 熱可塑性重合体組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は特定の熱可塑性重合体組成物、該熱可塑性重合体組成物からなるフィルムなどの成形品に関する。詳細には、本発明は、非粘着性で、耐ブロッキング性、離型性、製膜性に優れていて、フィルムなどに成形する際に離型紙を用いなくても円滑に巻き取ることができ、かつ巻き取った製品はブロッキングを生ずることなく円滑に巻き戻すことができる、熱可塑性ポリウレタンから主としてなる熱可塑性重合体組成物、該熱可塑性重合体組成物からなるフィルムなどの成形品に関するものであり、本発明の熱可塑性重合体組成物から得られる上記した成形品は弾性回復性、柔軟性、強伸度などの力学的特性にも優れていて、特にフィルムは伸縮性フィルムとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性ポリウレタンは、高い弾性を有していて強度が大きく、耐摩耗性、耐薬品性、耐油性、耐屈曲性などの諸特性にも優れており、しかも通常の熱可塑性樹脂の成形加工法が適用できることから、従来から種々の分野で広く用いられている。しかしながら、熱可塑性ポリウレタンは粘着性が強くてブロッキングを起こし易いことから、押出成形などによってフィルムを製造した場合に単独で巻き取ることが困難であり、単独で巻き取った場合には巻き取ったフィルムの巻き戻しが困難であったり不可能になって、使用できなくなるというのが現状である。一方、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニルポリマー、エチレン/アクリル酸メチルコポリマーなどのポリオレフィン系樹脂や、ポリスチレンなどの芳香族ビニル化合物系樹脂は熱可塑性ポリウレタンに比較して安価である。そこで、熱可塑性ポリウレタンの優れた性質を保持した熱可塑性樹脂素材を安価に提供する目的で、熱可塑性ポリウレタンにポリオレフィン系樹脂や芳香族ビニル化合物系樹脂をブレンドすることが試みられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、熱可塑性ポリウレタンとポリオレフィン系樹脂や芳香族ビニル化合物系樹脂とは非相溶性であり、両者をブレンドした場合には分散状態はよくない。それらのブレンド物は製膜安定性が悪く、製膜化が困難である。この製膜化の困難性は、熱可塑性ポリウレタンが柔軟である程、特に顕著となる。また、熱可塑性ポリウレタンとポリオレフィン系樹脂や芳香族ビニル化合物系樹脂のブレンド物から得られたフィルムは、弾性回復性、柔軟性、強伸度などの力学的特性が不十分なものとなる。
【0004】
本発明の目的の一つは、熱可塑性ポリウレタンと他の熱可塑性樹脂からなり、熱可塑性ポリウレタンが有する優れた特性、特に弾性回復性、柔軟性および強伸度などの力学的特性を失わずにそのまま保持しており、しかも製膜安定性が高く、フィルムなどを製造する際に高価な離型紙などを使用しなくても円滑に巻き取ることが可能な熱可塑性重合体組成物を提供することにある。そして、本発明の他の目的は、上記した熱可塑性重合体組成物からなるフィルムなどの成形品を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記の目的の一つは、(i)熱可塑性ポリウレタン(A)、芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体および/またはその水添ブロック共重合体(B)〔ただし、共役ジエンブロックのビニル結合量が15%以上であるものを除く〕、ポリオレフィン系樹脂(C)並びにパラフィン系オイル(D)を含有する重合体組成物であって;(ii)(A)〜(D)の合計重量に基づいて、熱可塑性ポリウレタン(A)を50〜90重量%、芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体および/またはその水添ブロック共重合体(B)を3〜25重量%、ポリオレフィン系樹脂(C)を1〜10重量%並びにパラフィン系オイル(D)を3〜25重量%の割合で含有することを特徴とする熱可塑性重合体組成物を提供することによって達成される。
また本発明によれば、上記の他の目的は、上記の熱可塑性重合体組成物からなる成形品を提供することにより達成される。
【0006】
本発明の熱可塑性重合体組成物(以下、これを単に「重合体組成物」という)を構成する熱可塑性ポリウレタン(A)は、一般に高分子ジオール、有機ポリイソシアネートおよび鎖伸長剤を反応させて得られるが、高分子ジオールとして数平均分子量1000〜6000のポリエステルジオールを使用するのが好ましい。この場合、ポリエステルジオールの数平均分子量が1000未満であると、得られる熱可塑性ポリウレタンは低温柔軟性が不十分となり、また耐熱性も劣るために、重合体組成物は柔軟性などの性能が不十分となる。一方、数平均分子量が6000を超えると、重合体組成物は押出し成形時に溶融粘度が上昇する傾向が生じるなど、成形加工性の安定性が不十分となるために好ましくない。
なお、本明細書でいうポリエステルジオールの数平均分子量は、いずれもJIS K−1557に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である。
【0007】
上記のポリエステルジオールを構成するジオール成分としては、分岐を有する炭素数4〜9のジオール成分を全ジオールに対して30〜100重量%の範囲内で含むものを使用するのが、弾性回復性、柔軟性および強度などの力学的特性に優れる重合体組成物が得られることから好ましい。上記の分岐状ジオール成分としては、例えば2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,8−オクタンジオールなどが挙げられる。これらの分岐状ジオール成分は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。またジオール成分として、70モル%以下の割合であれば、上記の分岐状ジオール成分以外の他のジオール成分を有していてもよい。他のジオール成分としては、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオールなどの飽和脂肪族ジオールを挙げることができ、これらは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、分岐状ジオール成分に由来する効果が喪失されにくいことから、エチレングリコールおよび/または1,4−ブタンジオールが好ましい。
【0008】
ポリエステルジオールを構成するジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体のいずれもが使用でき、例えばグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸などの炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸などの芳香族ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体などを挙げることができ、これらのジカルボン酸成分は単独で使用しても、2種以上併用してもよい。そのうちでも、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体を使用するのが、本発明の重合体組成物の弾性回復性、伸度などが良好となり、好ましい。
【0009】
上記したポリエステルジオールの製造法は特に制限されず、上記したジオール成分およびジカルボン酸成分を用いて、従来既知のエステル交換反応、直接エステル化反応などによって重縮合させて製造することができる。その場合に、その重縮合反応を、一般にポリエステル、ポリカーボネート等のエステル系高分子を製造する際に使用し得ることが知られているチタン系またはスズ系の重縮合触媒の存在下に行ってもよい。チタン系重縮合触媒を用いた場合には、重縮合反応の終了後にポリエステルジオールに含まれるチタン系重縮合触媒を失活させておくのが好ましい。チタン系重縮合触媒を失活処理したポリエステルジオールを用いて熱可塑性ポリウレタン(A)を製造することにより、熱可塑性ポリウレタン (A)を高温で溶融滞留させるにしても、熱可塑性ポリウレタン(A)を構成しているハードセグメントとソフトセグメントとのブロック性の低下が抑制されて、熱可塑性ポリウレタン(A)が当初有していた耐熱性、弾性回復性などの諸特性が熱可塑性ポリウレタン(A)を含有する重合体組成物から成形品などにおいてそのまま良好に発揮される。
【0010】
チタン系重縮合触媒を用いて製造されたポリエステルジオール中に含まれるチタン系エステル化触媒の失活方法としては、例えば、重縮合反応により得られたポリエステルジオールを加熱条件下に水と接触させる方法、ポリエステルジオールをリン酸、リン酸エステル、亜リン酸、亜リン酸エステル等のリン化合物で処理する方法を挙げることができ、それらのうちでも加熱条件下に水と接触させる前者の方法が好ましい。水と接触させてチタン系エステル化触媒を失活させる場合は、重縮合反応により得られたポリエステルジオールに対して1〜4重量%の水を加え、80〜150℃の範囲内、好ましくは90〜130℃の範囲内で加熱攪拌する方法、ポリエステルジオールに水蒸気を通しながら、100〜150℃の範囲内で加熱攪拌する方法などを採用することができる。チタン系エステル化触媒の失活処理は常圧下で行っても、また加圧下で行ってもよい。チタン系エステル化触媒を失活させた後に系を減圧にすると、失活に使用した水分を除去することができ、望ましい。
【0011】
そして、熱可塑性ポリウレタン(A)を構成する高分子ジオールとして、上記のポリエステルジオールを単独で使用することが好ましいが、場合により、高分子ジオール成分の30重量%以下であれば、他のポリカーボネートジオール、ポリエーテルジオールなどの高分子ジオールを併用することも好ましい。
【0012】
熱可塑性ポリウレタン(A)の製造に用いられる有機ポリイソシアネートとしては、ポリウレタンの製造に従来用いられている有機ポリイソシアネートのいずれもが使用でき、その種類は特に制限されないが、分子量500以下の芳香族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートのうちの1種または2種以上が好ましく使用される。そのうちでも、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナートなどが好ましく、特に4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0013】
また熱可塑性ポリウレタン(A)の製造に用いられる鎖伸長剤としては、熱可塑性ポリウレタンの製造に従来用いられている鎖伸長剤のいずれもが使用でき、その種類は特に制限されない。そのうちでも、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量300以下の低分子化合物、例えば脂肪族ジオール、脂環式ジオールおよび芳香族ジオールが好ましく用いられる。好ましい鎖伸長剤の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどを挙げることができ、これらの中でも1,4−ブタンジオールが特に好ましい。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0014】
熱可塑性ポリウレタン(A)としては、上記した高分子ジオールと有機ポリイソシアネートと鎖伸長剤とを、有機ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数と高分子ジオールおよび鎖伸長剤が有する水酸基の合計モル数との比(イソシアネート基モル数/水酸基モル数)が、0.90〜1.30になるような範囲内で反応させて得られたものであるのが好ましく、0.95〜1.20になるような範囲内で反応させて得られたものであるのがより好ましい。イソシアネート基モル数/水酸基モル数の比を上記の範囲にすることによって、得られる熱可塑性ポリウレタン(A)の諸特性を高い水準に維持でき、また熱可塑性ポリウレタン(A)より得られる重合体組成物および成形品は柔軟性、弾性回復性、力学物性が良好なものとなる。
【0015】
本発明で使用する熱可塑性ポリウレタン(A)の製造法は特に制限されず、上記した高分子ジオール、有機ポリイソシアネート、鎖伸長剤および必要に応じて他の成分を使用して、溶融重合、溶液重合などの公知のウレタン化反応技術を利用して、プレポリマー法およびワンショット法のいずれで製造してもよい。そのうちでも、実質的に無溶媒下で溶融重合することが好ましく、特に多軸スクリュー型押出機を用いる連続溶融重合法が好ましい。溶融重合は180〜260℃の範囲の温度で行うことが好ましい。
【0016】
なお、熱可塑性ポリウレタン(A)の重合過程または重合後に、必要に応じて着色剤、難燃剤、滑剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐候性改良剤、加水分解防止剤、粘着性付与剤、防黴剤などの添加剤;ガラス繊維、ポリエステル繊維などの各種繊維;マイカ、タルクなどの無機物;各種カップリング剤等の1種または2種以上を適宜加えてもよい。
【0017】
また、熱可塑性ポリウレタン(A)は、その硬度(JIS−A硬度)が90以下であるものが好ましい。熱可塑性ポリウレタン(A)の硬度が90を超える場合には、得られる重合体組成物の柔軟性が不十分となり、好ましくない。
【0018】
本発明の重合体組成物を構成する芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体および/またはその水添ブロック共重合体(芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体を水素添加して得られるブロック共重合体)(B)〔ただし、共役ジエンブロックのビニル結合量が15%以上であるものを除く〕[以下、これをブロック共重合体(B)という]は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックを1個以上、好ましくは2個以上有し、かつ共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックを1個以上有するものである。そして、ブロック共重合体(B)としては、芳香族ビニル化合物成分を5〜50重量%含有するものが好ましい。芳香族ビニル化合物成分の含有量が50重量%を超える場合には、重合体組成物中に分散するブロック共重合体(B)の粒子径が大きくなるなどのために、弾性回復性、強度などが低下するので好ましくない。一方、その含有量が5重量%未満である場合には、重合体組成物から成形されるフィルムの粘着性が増加するなどの不都合が生じるので好ましくない。
【0019】
上記したブロック共重合体(B)としては、重合体組成物の弾性回復性、強度、柔軟性および製膜性が特に良好になる点から、そのメルトフローレート(MI;200℃、10kg荷重)が20以下であるものが好ましく、15以下であるものがより好ましく、10以下であるものが特に好ましい。ブロック共重合体(B)のメルトフローレートの下限については特に制限はないが、メルトフローレートが20を超える場合には、重合体組成物の弾性回復性、強度および柔軟性が低下し、また製膜性が劣る傾向にあり、好ましくない。
【0020】
ブロック共重合体(B)を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられる。また、共役ジエン化合物としては、例えばイソプレン、ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。
【0021】
本発明の重合体組成物を構成するポリオレフィン系樹脂(C)の好適例としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどを挙げることができる。そして、ポリオレフィン系樹脂(C)は、重合体組成物の耐ブロッキング性の点から、そのメルトフローレート(MI;190℃、2.16kg荷重)が0.2〜50の範囲であるものが好ましい。
【0022】
本発明の重合体組成物を構成するパラフィン系オイル(D)としては、パラフィンを60重量%以上含むものであり、その他の成分としてナフテンを含んでいてもよい。
【0023】
そして、本発明の重合体組成物では、熱可塑性ポリウレタン(A)、ブロック共重合体(B)、ポリオレフィン系樹脂(C)およびパラフィン系オイル(D)の合計重量に基づいて、熱可塑性ポリウレタン(A)を50〜90重量%、ブロック共重合体(B)を3〜25重量%、ポリオレフィン系樹脂(C)を1〜10重量%およびパラフィン系オイル(D)を3〜25重量%の割合で含有していることが必要である。
【0024】
本発明の重合体組成物において、熱可塑性ポリウレタン(A)の含有量が50重量%未満であると、重合体組成物およびそれからなるフィルムの耐摩耗性、力学的強度が低下し、かつ熱可塑性ポリウレタン(A)本来の優れた弾性回復性、強度、耐熱性などの特性が失われ、一方90重量%を超えると、重合体組成物に粘着性、ブロッキング性が発現して、フィルムの巻き取り、巻き戻しなどが困難になる。また、ブロック共重合体(B)の含有量が3重量%未満であると、重合体組成物に粘着性、ブロッキング性が発現して、フィルムの巻き取り、巻き戻しなどが困難になり、一方25重量%を超える場合は、重合体組成物の弾性回復性、強度、耐熱性などの性質の低下が起こる。
【0025】
また、本発明の重合体組成物において、ポリオレフィン系樹脂(C)の含有量が1重量%未満であると、重合体組成物に粘着性、ブロッキング性が発現して、フィルムの巻き取り、巻き戻しなどが困難になる。一方、10重量%を超えると、フィルムの成形表面に荒れが生じ、弾性回復性、強度などの特性の低下も大きくなり好ましくない。パラフィン系オイル(D)の含有量が3重量%未満であると、フィルムの成形表面に荒れが生じ、また弾性回復性、強度などの特性の低下が大きくなり好ましくない。一方、25重量%を超えると、重合体組成物に粘着性、ブロッキング性が発現して、フィルムの巻き取り、巻き戻しなどが困難になる。
【0026】
本発明の重合体組成物の製造法は特に制限されず、従来から採用されている通常のポリマーブレンドの手法により製造することができる。熱可塑性ポリウレタン(A)、ブロック共重合体(B)、ポリオレフィン系樹脂(C)およびパラフィン系オイル(D)を、ポリマーの混合に通常用いられる縦型または水平型の混合機を用いて、所定の割合で予備混合した後、1軸または2軸の押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどを用いて回分式または連続式で加熱下に混練して製造することができる。また、予めパラフィン系オイル(D)をブロック共重合体(B)およびポリオレフィン系樹脂(C)と所定の割合で溶融混練した組成物を作製し、この組成物と熱可塑性ポリウレタン(A)とを溶融混練またはドライブレンドして製造することもできる。特に、押出機を使用して加熱混練を行った場合には、ストランド状に押出してから適当な長さに切断してペレットなどの粒状物にしてもよい。また、熱可塑性ポリウレタン(A)の重合時に上記した各成分を配合して、そこで得られた重合体組成物をストランド状に押出してから適当な長さのペレットなどの粒状物にする方法によって本発明の重合体組成物を製造してもよい。
【0027】
本発明の重合体組成物は、上記した成分の他に、必要に応じて耐光性、耐熱性などを向上させるための安定剤、可塑剤、脂肪族アミドなどの滑剤、充填剤、帯電防止剤、顔料などの添加剤の1種または2種以上を本発明の効果を損なわない範囲の量で含有していてもよい。
【0028】
本発明の重合体組成物は熱可塑性であり、熱溶融成形、加熱加工が可能であり、押出成形、射出成形、ブロー成形、カレンダー成形、注型などの任意の成形方法によって、フィルムなどの種々の成形品を円滑に製造することができる。特に、フィルムを製造する方法としては、インフレーション成形、Tダイ成形などの通常の溶融押出成形による製膜方法を採用することが好ましい。本発明の重合体組成物から製造されるフィルムなどの成形品は、非粘着性で、耐ブロッキング性に優れており、製造時に離型紙などを使用することなく、そのまま円滑に巻き取ることができ、かつ巻き取ったフィルムなどの成形品はブロッキングを生じることなく円滑に巻き戻すことができる。また、得られたフィルムなどの成形品は弾性回復性、柔軟性、引張破断強度や引張破断伸度などの力学的特性に優れており、しかも平滑な表面を有していて表面状態も良好であり、それらの特性を活かして生理用、紙おむつ用、目止め用、防塵用などに用いられる伸縮性フィルム用途、一般用コンベアベルト、各種キーボードシート、ラミネート品、各種容器などのシート用途、運動シューズ、スキー用シューズ等の靴底用途などの種々の用途に有効に使用することができる。
【0029】
【実施例】
以下に本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明はそれにより限定されない。以下の例において、重合体組成物より得られたフィルムの耐ブロッキング性、引張強伸度、弾性回復率を、下記の方法により測定または評価した。
【0030】
[耐ブロッキング性]
重合体組成物をTダイ型押出成形機(25mmφ)に供給し、フィルムを30℃に温度調整した冷却ロール上に押出して冷却した後、離型紙を用いずに2.6m/分の速度で巻き取った。巻き取ったフィルムを室温で24時間放置した後、手で巻き戻して、フィルム間の耐ブロッキング性の程度を観察し、下記の表1に示した評価基準で判定した。
【0031】
【表1】
【0032】
[破断強伸度]
重合体組成物を用いてTダイ型押出成形機(25mmφ)を使用して製膜した膜厚50μmのフィルムから試験片を切り出し、この試験片について、JIS
K 7311に準拠して、MD方向の引張強伸度を測定し、破断時の応力を破断強伸度[破断強度(kg/cm2 )、破断伸度(%)]とした。
【0033】
[弾性回復性]
重合体組成物を用いてTダイ型押出成形機(25mmφ)を使用して製膜した膜厚50μmのフィルムから試験片を切り出し、この試験片を温度23℃、湿度65%RHの条件下に、引張速度200mm/分で200%伸長した後、その状態で2分間保持することにより応力を除去し、10分後の戻りを測定した。この試験結果に基づいて、下記の式に従って弾性回復率(%)を算出した。
【0034】
【数1】
弾性回復率(%)=[1−(L’−L)/L]×100
[上記式中、Lは初期の長さ、L’は応力を除去した10分後の長さを表す。]
【0035】
また、下記の実施例および比較例で用いた熱可塑性ポリウレタン(A)、ブロック共重合体(B)、ポリオレフィン系樹脂(C)およびパラフィン系オイル(D)に関する略号とその内容は、次の表2に示すとおりである。
【0036】
【表2】
【0037】
[実施例1]
SIS、PPおよびP系オイルを、SISが35重量部、PPが15重量部およびP系オイルが50重量部の割合となるように単軸スクリュー型押出機(25mmφ、シリンダー温度:200℃)に供給して溶融混練した後、ストランド状に水中に連続的に押出してペレットを作製した。ペレットを乾燥後、乾燥したペレットの20重量部とPU−1の80重量部とを単軸スクリュー型押出機(25mmφ、シリンダー温度およびダイズ温度:200℃)に供給して溶融混練した後、形成された重合体組成物をTダイより押出し、冷却ロールを通して巻き取ることによって、厚さ50μmのフィルムを作製した。製膜安定性は良好であった。得られたフィルムを25℃で3日間放置した後、耐ブロッキング性、破断強度(kg/cm2)、破断伸度(%)、弾性回復率(%)を、前記の方法により測定または評価した。結果を表3に示す。
【0038】
[実施例2〜5および比較例1〜5]
実施例1において表3に記載の割合で熱可塑性ポリウレタン(A)(表3中、これをPU(A)で表す)、SISまたはSEPS、PPおよびP系オイルを配合した以外は同様にして厚さ50μmのフィルムを作製した。得られたフィルムを25℃で3日間放置した後、耐ブロッキング性、破断強度(kg/cm2 )、破断伸度(%)、弾性回復率(%)を、前記の方法により測定または評価した。結果を表3に示す。
【0039】
【表3】
【0040】
表3から明らかなように、実施例1〜5において本発明の重合体組成物から得られたフィルムは耐ブロッキング性に優れ、巻き取りおよび巻き戻しが容易でかつ円滑に行われており、強伸度、弾性回復率などの力学的特性にも優れる。それに対して、比較例1〜5においてブロック共重合体(B)、ポリオレフィン系樹脂(C)およびパラフィン系オイル(D)のうちの1以上を欠いている重合体組成物から得られたフィルムは、粘着性を有しているためブロッキングを生じ、巻き戻しが困難か不能であった。
【0041】
【発明の効果】
本発明は重合体組成物は非粘着性で、耐ブロッキング性に優れており、フィルムなどの成形品を製造する際に離型紙を用いなくても円滑に巻き取ることができ、かつ巻き取った成形品はブロッキングを生ずることなく容易にかつ円滑に巻き戻すことができる。本発明の重合体組成物から得られるフィルムなどの成形品は弾性回復性、柔軟性、強伸度などの力学的特性にも優れていて、特にフィルムは伸縮性フィルムとして有用である。
Claims (3)
- (i)熱可塑性ポリウレタン(A)、芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体および/またはその水添ブロック共重合体(B)〔ただし、共役ジエンブロックのビニル結合量が15%以上であるものを除く〕、ポリオレフィン系樹脂(C)並びにパラフィン系オイル(D)を含有する重合体組成物であって;
(ii)(A)〜(D)の合計重量に基づいて、熱可塑性ポリウレタン(A)を50〜90重量%、芳香族ビニル化合物−共役ジエンブロック共重合体および/またはその水添ブロック共重合体(B)を3〜25重量%、ポリオレフィン系樹脂(C)を1〜10重量%並びにパラフィン系オイル(D)を3〜25重量%の割合で含有することを特徴とする熱可塑性重合体組成物。 - 熱可塑性ポリウレタン(A)が、ポリエステルジオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤の反応により得られた熱可塑性ポリウレタンであり;かつ前記ポリエステルジオールが、分岐を有する炭素数4〜9のジオール成分を全ジオールに対して30〜100重量%の範囲内で含む数平均分子量1000〜6000のポリエステルジオールである請求項1記載の熱可塑性重合体組成物。
- 請求項1または2に記載の熱可塑性重合体組成物からなる成形品。
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JP12634295A JP3657309B2 (ja) | 1995-05-25 | 1995-05-25 | 熱可塑性重合体組成物 |
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JP12634295A JP3657309B2 (ja) | 1995-05-25 | 1995-05-25 | 熱可塑性重合体組成物 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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