JP2007091872A - 柔軟性樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】 柔軟性と弾性回復性に優れるだけでなく、表面外観性、耐ブリードアウト性に優れた柔軟性樹脂組成物およびそれからなる成形品の提供。
【解決手段】 (A)ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、(B)スチレン系共重合体1〜150重量部および(C)下記式(a)で表される構造を有するエステル系可塑剤0.1〜50重量部を配合してなる柔軟性樹脂組成物。
−COO−(CHCOO)m−(RO)n−R (a)
((a)式中、mは0〜5の整数を表し、nは0〜6の整数を表し、Rは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜15のアリールアルキル基もしくは炭素数7〜15のアルキルアリール基を表す。ただし、m+n≧1である。)
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリ乳酸樹脂、スチレン系共重合体および特定の構造を有するエステル系可塑剤を配合してなり、柔軟性と弾性回復性に優れた柔軟性樹脂組成物およびそれからなる成形品に関するものである。
ポリ乳酸樹脂は、高い融点を持ち、また溶融成形可能であることから、実用上優れた生分解性樹脂として期待されている。また、将来的にはバイオ原料から作られる汎用ポリマーとしての利用も期待され、射出成形、押出成形などにより種々の成形品とされる。
しかしながら、ポリ乳酸樹脂は、剛性が高いため柔軟性を必要とする成形品として用いるには限界があった。
この問題を改良するための方法のとして、可塑剤を配合する方法やさらにゴムを配合する方法が検討されている。
例えば、特許文献1には可塑剤を配合する方法が検討されており、通常、柔軟化するために可塑剤を添加する場合には、ブリードアウトが発生しやすいが、特許文献1記載の発明によれば、耐ブリードアウト性が大幅に改善されることが記載されている。しかし、特許文献1に具体的に記載された樹脂組成物を用いた成形品は、弾性回復性が少ないために変形し易いという問題があった。
また、特許文献2には、可塑剤の他にゴムとして酢酸ビニルを配合する方法が検討されている。しかし、特許文献1と同じく、特許文献2に具体的に記載された樹脂組成物を用いた成形品は、弾性回復性が少ないために変形し易いという問題があった。
特許第3421769号公報(第3−5頁) 特開平9−151310号公報(第3−5頁)
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
従って、本発明は、柔軟性と弾性回復性に優れるだけでなく、表面外観性、耐ブリードアウト性に優れた樹脂組成物およびそれからなる成形品を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリ乳酸樹脂、スチレン系共重合体および特定の構造を有するエステル系可塑剤を配合してなる樹脂組成物が、上記の目的に合致した優れた特性を発揮することを見い出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、
(1)(A)ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、(B)スチレン系共重合体1〜150重量部および(C)下記式(a)で表される構造を有するエステル系可塑剤0.1〜50重量部を配合してなる柔軟性樹脂組成物、
−COO−(CHCOO)m−(RO)n−R (a)
((a)式中、mは0〜5の整数を表し、nは0〜6の整数を表し、Rは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜15のアリールアルキル基もしくは炭素数7〜15のアルキルアリール基を表す。ただし、m+n≧1である。)
(2)前記(B)スチレン系共重合体がゴム成分を含有するスチレン系共重合体である(1)に記載の柔軟性樹脂組成物、
(3)前記(C)エステル系可塑剤が、メチルジグリコールブチルジグリコールアジペート、ベンジルメチルジグリコールアジペート、ベンジルブチルジグリコールアジペート、エトキシカルボニルメチルジブチルサイトレートから選ばれる少なくとも1種である(1)〜(2)のいずれか1項に記載の柔軟性樹脂組成物、
(4)さらに(D)無機充填剤を配合してなる(1)〜(3)のいずれか1項に記載の柔軟性樹脂組成物、
(5)さらに(E)難燃剤を配合してなる(1)〜(4)のいずれか1項に記載の柔軟性樹脂組成物、
(6)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の柔軟性樹脂組成物からなる成形品、
(7)前記成形品が、パッキング、カバー、フィルム、シートである(6)に記載の成形品である。
本発明の柔軟性樹脂組成物は、柔軟性、弾性回復性、表面外観性、耐ブリードアウト性に優れている。また、この樹脂組成物から得られる成形品は、上記の特性を生かして、土木資材、建材、家具部材、遊技機用資材、電気・電子部品、自動車部品、各種日用品など各種用途に利用することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に用いられる(A)ポリ乳酸樹脂とは、L−乳酸及び/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。他のモノマー単位としては、エチレングリコール、ブロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、およびカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。このような共重合成分は、全単量体成分中、通常0〜30モル%の含有量とするのが好ましく、0〜10モル%であることが好ましい。
本発明においては、耐熱性の観点から、乳酸成分の光学純度が高いポリ乳酸樹脂を用いることが好ましい。すなわち、ポリ乳酸樹脂の総乳酸成分の内、L体が80%以上含まれるかあるいはD体が80%以上含まれることが好ましく、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることが特に好ましく、L体が95%以上含まれるかあるいはD体が95%以上含まれることが更に好ましく、L体が98%以上含まれるかあるいはD体が98%以上含まれることがさらに好ましい。また、L体またはD体の含有量の上限は通常100%以下である。
(A)ポリ乳酸樹脂の融点は、特に制限されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、さらに150℃以上であることが好ましく、特に160℃以上であることが好ましい。(A)ポリ乳酸樹脂の融点は、通常乳酸成分の光学純度を高くすることにより高くなり、融点が120℃以上のポリ乳酸樹脂は、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることにより、また融点が150℃以上のポリ乳酸樹脂は、L体が95%以上含まれるかあるいはD体が95%以上含まれることにより、得ることができる。なお、本発明において、(A)ポリ乳酸樹脂の融点は、示差走査熱量計(DSC)により昇温速度20℃/分で測定した値である。
(A)ポリ乳酸樹脂の分子量や分子量分布については、実質的に成形加工が可能であれば、特に制限されるものではないが、重量平均分子量としては、通常1万以上、好ましくは4万以上、さらに8万以上であることが望ましい。上限としては特に制限はないが、成形性の観点から好ましくは、50万以下である。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の分子量をいう。また、異なる分子量のポリ乳酸樹脂を混合して用いても良い。
(A)ポリ乳酸樹脂は、変性したものを用いてもよく、例えば、無水マレイン酸変性ポリ乳酸樹脂、エポキシ変性ポリ乳酸樹脂、アミン変性ポリ乳酸樹脂などを用いることにより、耐熱性だけでなく、機械特性も向上する傾向にあり好ましい。
(A)ポリ乳酸樹脂の製造方法としては、公知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、およびラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。
本発明における(B)スチレン系共重合体としては、スチレンあるいはαーメチルスチレンに芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、およびマレイミド系単量体から選択される一種以上の単量体を重合してなる樹脂、あるいは、ポリブタジエン系ゴムなどのゴム系成分にこれら単量体をグラフト重合したもの、あるいは、共重合したものなどが挙げられる(以下これらを「共重合体」と総称することがある)。
上記芳香族ビニル化合物としては、ビニルトルエン、および、ジビニルベンゼンなどが挙げられ、シアン化ビニル化合物としてはアクリロニトリル、およびメタクリロニトリルなどが挙げられ、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸nーブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸nーブチル、およびアクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられ、マレイミド系単量体としては、マレイミド、Nーメチルマレイミド、Nーエチルマレイミド、Nーフェニルマレイミド、Nーシクロヘキシルマレイミド、およびその誘導体などのN−置換マレイミドなどが挙げられる。さらに、(B)スチレン系共重合体と共重合が可能な下記の成分との共重合体も本発明に含まれる。かかる共重合が可能な成分の具体例としては、ジエン化合物、マレイン酸ジアルキルエステル、アリルアルキルエーテル、不飽和アミノ化合物、およびビニルアルキルエーテルなどが挙げられる。
(B)スチレン系共重合体の好ましい共重合体の例としては、メタクリル酸メチル/アクリロニトリル/スチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン樹脂(AS樹脂)、スチレン/ブタジエン樹脂、アクリレート/アクリロニトリル/スチレン樹脂(AAS樹脂)、塩素化ポリエチレン/アクリロニトリル/スチレン樹脂(ACS樹脂)、アクリロニトリル/エチレン/スチレン樹脂(AES樹脂)、スチレン/Nーフェニルマレイミド樹脂、スチレン/アクリロニトリル/Nーフェニルマレイミド樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/メタクリル酸メチル/スチレン樹脂(MABS樹脂)、ハイインパクト−ポリスチレン樹脂(HI−PS樹脂)、スチレン/ブタジエン/スチレン樹脂(SBS樹脂)、スチレン/イソプレン/スチレン樹脂(SIS樹脂)、スチレン/エチレン/プロピレン樹脂(SEP樹脂)、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン樹脂(SEBS樹脂)などが挙げられ、それらは二種以上の混合物として用いても良く、前記の(B)スチレン系共重合体の好ましい共重合体の例の中ではとくに、アクリロニトリル/スチレン樹脂およびアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/メタクリル酸メチル/スチレン樹脂(MABS樹脂)、ハイインパクト−ポリスチレン樹脂(HI−PS樹脂)、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン樹脂(SEBS樹脂)等が好ましく、さらには、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/メタクリル酸メチル/スチレン樹脂(MABS樹脂)、ハイインパクト−ポリスチレン樹脂(HI−PS樹脂)、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン樹脂(SEBS樹脂)等のゴム質重合体で変性されたスチレン系共重合体がより好ましくさらには、ブタジエン含量が30%以上のアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/メタクリル酸メチル/スチレン樹脂(MABS樹脂)等のゴム質重合体で変性されたスチレン系共重合体がとくに好ましく用いられる(/は共重合を示す)。
また、前記の(B)スチレン系共重合体には、共重合可能なマレイミド系単量体等のその他の単量体を本発明の効果を損なわない範囲で共重合しても良い。
また、前記の(B)スチレン系共重合体にさらに不飽和モノカルボン酸類、不飽和ジカルボン酸類、不飽和酸無水物あるいはエポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合もしくは共重合されたスチレン系共重合体であっても良い。なかでも不飽和酸無水物あるいはエポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合もしくは共重合されたスチレン系共重合体であることが好ましい。
かかるエポキシ基含有ビニル系単量体は、一分子中にラジカル重合可能なビニル基とエポキシ基の両者を共有する化合物であり、具体例としてはアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジルなどの不飽和有機酸のグリシジルエステル類、アリルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類および2−メチルグリシジルメタクリレートなどの上記の誘導体類が挙げられ、なかでもアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルが好ましく使用でき、これらは単独ないし2種以上を組み合わせて使用することができる。中でもメタクリル酸グリシジルをグラフト重合もしくは共重合したスチレン系共重合体がより好ましく用いられる。
また、不飽和酸無水物類は、一分子中にラジカル重合可能なビニル基と酸無水物の両者を共有する化合物であり、具体例としては無水マレイン酸等が好ましく挙げられる。
そして上記不飽和モノカルボン酸類、不飽和ジカルボン酸類、不飽和酸無水物あるいはエポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合もしくは共重合したスチレン系共重合体を製造する方法としては、通常公知の方法が採用できるが、スチレンあるいはαーメチルスチレンに芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、およびマレイミド系単量体から選択される一種以上の単量体を重合してなる樹脂およびこれと共重合可能なその他の単量体と、不飽和モノカルボン酸類、不飽和ジカルボン酸類、不飽和酸無水物あるいはエポキシ基含有ビニル系単量体とを共重合する方法、前記スチレン系共重合体に、不飽和モノカルボン酸類、不飽和ジカルボン酸類、不飽和酸無水物あるいはエポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合する方法が挙げられる。かかる共重合、グラフト重合も公知の方法により行うことができる。
不飽和モノカルボン酸類、不飽和ジカルボン酸類、不飽和酸無水物あるいはエポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合もしくは共重合する際の使用量は、(A)成分と(B)スチレン系共重合体の相溶性を向上させるのに有効であれば特に限定されるものではないが、(B)スチレン系共重合体に対して0.05重量%以上であることが好ましい。多量に共重合すると流動性低下やゲル化の傾向があり、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
また、前記の(B)スチレン系共重合体に過酸化物類、過ギ酸、過酢酸、および過安息香酸などのエポキシ化剤でエポキシ変性したスチレン系共重合体であっても良い。この場合、エポキシ変性を有効に行わせるためにスチレン系共重合体にはジエン系のモノマーがランダム共重合もしくはブロック共重合されていることが好ましい。ジエン系のモノマーの例としては、ブタジエン、イソプレン等が好ましく用いられる。これらのエポキシ変性スチレン系共重合体の好適な製造法の例は、特開平6−256417、特開平6−220124等に示されている。
またエポキシ化剤を用いるエポキシ基導入法における、(B)スチレン系共重合体へのエポキシ基導入量は、(A)成分と(B)スチレン系樹脂の相溶性を向上させるのに有効であれば特に限定されるものではないが、エポキシ当量が100g/当量以上10000g/当量以下が好ましく、さらに好ましくは200以上5000g/当量以下であり、さらに好ましくは特に250以上3000g/当量以下である。これらの樹脂のエポキシ当量は特開平6−256417に記載の方法で測定できる。
また、前記の(B)スチレン系共重合体が最内層(コア層)とそれを覆う外層(シェル層)からなる多層構造体のいずれか一層に用いられていればよく、さらに3層以上の多層構造体の場合は中間層に用いられていてもよく、その多層構造体も本発明のスチレン系共重合体として用いることができ、多層構造体を構成する層の数は、特に限定されるものではなく、2層以上であればよく、3層以上であってもよい。
また、前記の多層構造体の好ましい例としては、コア層がジメチルシロキサン/アクリル酸ブチル重合体などの他の樹脂で最外層が(B)スチレン系共重合体であるもの、コア層が(B)スチレン系共重合体で最外層も(B)スチレン系共重合体であるもの、およびコア層が(B)スチレン系共重合体で最外層がジメチルシロキサン/アクリル酸ブチル重合体などの他の樹脂であるものなどが挙げられ、いずれかの層がメタクリル酸グリシジルや酸無水物などで変性されていても良い。
また、多層構造体の粒子径については、特に限定されるものではないが、0.01μm以上、1000μm以下であることが好ましく、さらに、0.02μm以上、100μm以下であることがより好ましく、特に0.05μm以上、10μm以下であることが最も好ましい。
また、多層構造体において、コアとシェルの重量比は、特に限定されるものではないが、多層構造重合体全体に対して、コア層が10重量部以上、90重量部以下であることが好ましく、さらに、30重量部以上、80重量部以下であることがより好ましい。
また、多層構造体としては、前記した条件を満たす市販品を用いてもよく、また公知の方法により作製して用いることもできる。
また、多層構造体の市販品としては、例えば、三菱レイヨン社製”メタブレン”、鐘淵化学工業社製”カネエース”、呉羽化学工業社製”パラロイド”、ロームアンドハース社製”アクリロイド”、武田薬品工業社製”スタフィロイド”およびクラレ社製”パラペットSA”などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができ、前記の(B)スチレン系共重合体で述べた好ましい共重合体の例などと混合して用いても良い。
また、前記の(B)スチレン系共重合体をグラフト共重合体の分岐鎖として含む樹脂であっても良く、主鎖となる樹脂の例としてはポリオレフィン、アクリル系樹脂、およびポリカーボネート樹脂などを挙げることができ、分岐鎖および主鎖のいずれかがメタクリル酸グリシジルや酸無水物などで変性されていても良い。
また、前記の市販品としては、例えば、日本油脂社製”モディパー”などが挙げられ、、単独ないし(B)スチレン系共重合体で述べた好ましい共重合体の例などと混合して用いることができる。
また、(B)スチレン系共重合体の添加量は、得られる柔軟性樹脂組成物の柔軟性と弾性回復性の点から(A)成分100重量部に対して1〜150重量部であり、好ましくは5〜140重量部、10〜120重量部がさらに好ましく、15〜100重量部が最も好ましい。上記の(B)スチレン系共重合体が、1重量部未満もしくは150重量部を超える場合には、ポリ乳酸樹脂の弾性回復性効果が小さくなる傾向にある。
本発明における(C)下記式(a)で表される構造を有するエステル系可塑剤とは、
−COO−(CHCOO)m−(RO)n−R (a)
((a)式中、mは0〜5の整数を表し、nは0〜6の整数を表し、Rは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜15のアリールアルキル基もしくは炭素数7〜15のアルキルアリール基を表す。ただし、m+n≧1である。)
なかでも上記式中、mは0〜4の整数であることが好ましく、0〜2の整数であることがより好ましく、0〜1の整数であることがさらに好ましく、nは0〜5の整数であることが好ましく、0〜4の整数であることがより好ましく、0〜3であることが更に好ましく、Rは炭素数2〜5のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜4のアルキレン基であることがさらに好ましく、Rは炭素数1〜7の直鎖状または分岐状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜12のアリールアルキル基もしくは炭素数7〜12のアルキルアリール基であることが好ましく、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数7〜9のアリールアルキル基もしくは炭素数7〜9のアルキルアリール基であることが更に好ましい。
本発明において、(C)(a)で表される構造を有するエステル系可塑剤としては、上記式で表される構造を一つ以上有するものを用いることができるが、上記式で表される構造を2つ以上、好ましくは3つ以上有するものを用いることがより好ましい。
このような構造を有するエステル系可塑剤の具体例としては、メチルジグリコールブチルジグリコールサクシネート、エチルジグリコールブチルジグリコールサクシネート、プロピルジグリコールブチルジグリコールサクシネート、ベンジルメチルジグリコールサクシネート、メトキシカルボニルメチルメチルジグリコールサクシネート、エトキシカルボニルメチルメチルジグリコールサクシネート、ベンジルブチルジグリコールサクシネート、メチルジグリコールブチルジグリコールアジペート、エチルジグリコールブチルジグリコールアジペート、プロピルジグリコールブチルジグリコールアジペート、ベンジルメチルジグリコールアジペート、ベンジルブチルジグリコールアジペート、メトキシカルボニルメチルメチルジグリコールアジペート、メトキシカルボニルメチルブチルジグリコールアジペート、エトキシカルボニルメチルメチルジグリコールアジペート、エトキシカルボニルメチルブチルジグリコールアジペート、ジメチルジグリコールモノブチルジグリコールサイトレート、ベンジルジメチルジグリコールサイトレート、メトキシカルボニルメチルジメチルサイトレート、メトキシカルボニルメチルジエチルサイトレート、メトキシカルボニルメチルジブチルサイトレート、エトキシカルボニルメチルジメチルサイトレート、エトキシカルボニルメチルジブチルサイトレート、エトキシカルボニルメチルジオクチルサイトレート、ブトキシカルボニルメチルジメチルサイトレート、ブトキシカルボニルメチルジエチルサイトレート、ブトキシカルボニルメチルジブチルサイトレート、ジメトキシカルボニルメチルモノメチルサイトレート、ジメトキシカルボニルメチルモノエチルサイトレート、ジメトキシカルボニルメチルモノブチルサイトレート、ジエトキシカルボニルメチルモノメチルサイトレート、ジエトキシカルボニルメチルモノブチルサイトレート、ジエトキシカルボニルメチルモノオクチルサイトレート、ジブトキシカルボニルメチルモノメチルサイトレート、ジブトキシカルボニルメチルモノエチルサイトレート、ジブトキシカルボニルメチルモノブチルサイトレート、エトキシカルボニルメチルジメチルジグリコールサイトレート、エトキシカルボニルメチルジブチルジグリコールサイトレート、ジエトキシカルボニルメチルモノメチルジグリコールサイトレート、ジエトキシカルボニルメチルモノブチルジグリコールサイトレートなどが挙げられ、なかでもメチルジグリコールブチルジグリコールサクシネート、ベンジルメチルジグリコールサクシネート、ベンジルブチルジグリコールサクシネート、メチルジグリコールブチルジグリコールアジペート、ベンジルメチルジグリコールアジペート、ベンジルブチルジグリコールアジペート、メトキシカルボニルメチルジブチルサイトレート、エトキシカルボニルメチルジブチルサイトレート、ブトキシカルボニルメチルジブチルサイトレート、ジメトキシカルボニルメチルモノブチルサイトレート、ジエトキシカルボニルメチルモノブチルサイトレート、ジブトキシカルボニルメチルモノブチルサイトレートが好ましい。
上記エステル系可塑剤の中でも、メチルジグリコールブチルジグリコールアジペート、ベンジルメチルジグリコールアジペート、ベンジルブチルジグリコールアジペート、エトキシカルボニルメチルジブチルサイトレートが最も好ましく、上記の(C)(a)で表される構造を有するエステル系可塑剤を1種または2種以上で用いることができる。
また、上記エステル系可塑剤の市販品としては、大八化学社製“DAIFATTY”などが挙げられる。
また、上記の(C)(a)で表される構造を有するエステル系可塑剤の配合量は、特に限定されるものではないが、耐熱性の観点から、(A)ポリ乳酸樹脂を100重量部としたときに、0.1〜50重量部であることが好ましく、0.5〜45重量部であることがより好ましく、1〜40重量部がさらに好ましく、2〜30重量部が最も好ましい。上記の(C)(a)で表される構造を有するエステル系可塑剤が、0.1重量部未満もしくは50重量部を超える場合には、ポリ乳酸樹脂の弾性回復性効果が小さくなる傾向にある。
また、上記の(C)(a)で表される構造を有するエステル系可塑剤の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、200〜1500が好ましく、300〜1000がより好ましい。数平均分子量が200未満であると、ブリードアウトが発生しブロッキングなどを起こしやすくなる傾向にあり、1500を超える場合には、ポリ乳酸樹脂の弾性回復性効果が小さくなる傾向にある。
本発明における(D)無機充填剤とは、本発明の樹脂組成物の耐熱性や成形品外観を向上させる効果がある。(D)無機充填剤としては、例えば板状、針状、繊維状あるいは粒状のものが挙げられ、(A)成分、(B)成分および(C)成分中で均一に分散可能な無機充填剤が好ましく、珪酸鉱物、珪酸塩鉱物や種々の鉱物類を粉砕などの加工により微粉化した板状、針状、および粒状ものが好ましく用いられる。具体例としては、ベントナイト、ドロマイト、モンモリロナイト、バーライト、微粉ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、ドーソナイト、シラスバルーン、クレー、セリサイト、長石粉、カオリン、ゼオライト(合成ゼオライトも含む)、滑石、マイカ、合成マイカおよびワラステナイト(合成ワラステナイトも含む)、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ハイドロタルサイトおよびシリカなどが挙げられ、滑石やシリカは得られる成形品の白色性が高く好ましく用いられる。また、滑石、カオリン、モンモリロナイト、合成マイカ、クレー、ゼオライト、シリカなどの無機充填剤は、無機系結晶核剤としても有用であり、無機系結晶核剤を配合することで、(A)ポリ乳酸樹脂の結晶化速度を高める効果があり、射出成形性に優れた柔軟性樹脂組成物を得ることができ、柔軟性樹脂組成物中での分散性を高めるために、脂肪酸、シランカッフプリング剤などの有機物で修飾されていることが好ましい。
前記の板状無機物、針状無機物、および粒状無機物の平均粒径は、10μm以下であることが機械的性質の低下が少なく、より好ましくは5μm以下であることが好ましい。下限としては、製造時のハンドリング性の点から0.5μm以上の平均粒径であることが好ましく、1μm以上の平均粒径であることがより好ましい。また、平均粒径の測定はレーザー回折散乱式の方法で測定される累積分布50%平均粒子径とする。
また、ワラステナイト、カオリンなど針状無機物は、アスペクト比(平均長さ/平均径)が3〜20が好ましく、平均径は10μm以下であることが機械的性質の低下が少なく、より好ましくは平均径が5μm以下であることが好ましい。
なお、ガラス繊維、ホウ酸アルミニウムウイスカーなどの繊維状無機充填剤は、熱変形温度を高める効果があり、高温で使用される成形品に有用な充填剤である。しかしながら、多量に配合すると柔軟性が大きく損なわれるため好ましくない。
また、(D)無機充填剤の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、0.5重量部〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.7重量部〜40重量部、とくに好ましくは1重量部〜30重量部であり、0.5重量部未満では剛性を上げる効果が小さく、50重量部を越すと柔軟性が低下するため好ましくない。
本発明で使用する(E)難燃剤とは、樹脂に難燃性を付与する目的で添加される物質であれば特に限定されるものではなく、具体的には、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤、およびその他の無機系難燃剤などが挙げられ、これら少なくとも一種以上を選択して用いることができる。
本発明で用いられる臭素系難燃剤の具体例としては、デカブロモジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモ無水フタル酸、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモベンゼン、1,1−スルホニル[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)]ベンゼン、ポリジブロモフェニレンオキサイド、テトラブロムビスフェノール−S、トリス(2,3−ジブロモプロピル−1)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、トリブロモフェニルアリルエーテル、トリブロモネオペンチルアルコール、ブロム化ポリスチレン、ブロム化ポリエチレン、テトラブロムビスフェノール−A、テトラブロムビスフェノール−A誘導体、テトラブロムビスフェノール−A−エポキシオリゴマーまたはポリマー、テトラブロムビスフェノール−A−カーボネートオリゴマーまたはポリマー、ブロム化フェノールノボラックエポキシなどのブロム化エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2−ヒドロキシジエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモシクロオクタン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ジブロモネオペンチルグリコール、ペンタブロモベンジルポリアクリレート、ジブロモクレジルグリシジルエーテル、N,N′−エチレン−ビス−テトラブロモフタルイミドなどが挙げられる。なかでも、テトラブロムビスフェノール−A−エポキシオリゴマー、テトラブロムビスフェノール−A−カーボネートオリゴマー、ブロム化エポキシ樹脂が好ましい。
本発明で用いられるリン系難燃剤は特に限定されることはなく、通常一般に用いられるリン系難燃剤を用いることができ、代表的にはリン酸エステル、ポリリン酸塩などの有機リン系化合物や赤リンが挙げられる。
上記の有機リン系化合物におけるリン酸エステルの具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェートならびにこれらの縮合物などの縮合リン酸エステルを挙げることができる。市販の縮合リン酸エステルとしては、例えば大八化学社製PX−200、PX−201、PX−202、CR−733S、CR−741、CR747などを挙げることができる。
また、リン酸、ポリリン酸と周期律表IA族〜IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミンとの塩からなるリン酸塩、ポリリン酸塩を挙げることもできる。ポリリン酸塩の代表的な塩として、金属塩としてリチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、鉄(II)塩、鉄(III)塩、アルミニウム塩など、脂肪族アミン塩としてメチルアミン塩、エチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、エチレンジアミン塩、ピペラジン塩などがあり、芳香族アミン塩としてはピリジン塩、トリアジン塩、メラミン塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
また、上記の他、トリスクロロエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート)などの含ハロゲンリン酸エステル、また、リン原子と窒素原子が二重結合で結ばれた構造を有するホスファゼン化合物、リン酸エステルアミドを挙げることができる。
また、赤リンとしては、未処理の赤リンのみでなく、熱硬化性樹脂被膜、金属水酸化物被膜、金属メッキ被膜から成る群より選ばれる1種以上の化合物被膜により処理された赤リンを好ましく使用することができる。熱硬化性樹脂被膜の熱硬化性樹脂としては、赤リンを被膜できる樹脂であれば特に制限はなく、例えば、フェノール−ホルマリン系樹脂、尿素−ホルマリン系樹脂、メラミン−ホルマリン系樹脂、アルキッド系樹脂などが挙げられる。金属水酸化物被膜の金属水酸化物としては、赤リンを被膜できるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタンなどを挙げることができる。金属メッキ被膜の金属としては、赤リンを被膜できるものであれば特に制限はなく、Fe、Ni、Co、Cu、Zn、Mn、Ti、Zr、Alまたはこれらの合金などが挙げられる。さらに、これらの被膜は2種以上組み合わせて、あるいは2種以上に積層されていてもよい。
本発明で用いられる窒素化合物系難燃剤としては、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミド、芳香族アミド、尿素、チオ尿素などを挙げることができる。なお、上記リン系難燃剤で例示したようなポリリン酸アンモニウムなど含窒素リン系難燃剤はここでいう窒素化合物系難燃剤には含まない。脂肪族アミンとしては、エチルアミン、ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロオクタンなどを挙げることができる。芳香族アミンとしては、アニリン、フェニレンジアミンなどを挙げることができる。含窒素複素環化合物としては、尿酸、アデニン、グアニン、2,6−ジアミノプリン、2,4,6−トリアミノピリジン、トリアジン化合物などを挙げることができる。シアン化合物としては、ジシアンジアミドなどを挙げることができる。脂肪族アミドとしては、N,N−ジメチルアセトアミドなどを挙げることができる。芳香族アミドとしては、N,N−ジフェニルアセトアミドなどを挙げることができる。
上記において例示したトリアジン化合物は、トリアジン骨格を有する含窒素複素環化合物であり、トリアジン、メラミン、ベンゾグアナミン、メチルグアナミン、シアヌル酸、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート、トリメチルトリアジン、トリフェニルトリアジン、アメリン、アメリド、チオシアヌル酸、ジアミノメルカプトトリアジン、ジアミノメチルトリアジン、ジアミノフェニルトリアジン、ジアミノイソプロポキシトリアジンなどを挙げることができる。
メラミンシアヌレートまたはメラミンイソシアヌレートとしては、シアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン化合物との付加物が好ましく、通常は1対1(モル比)、場合により1対2(モル比)の組成を有する付加物を挙げることができる。また、公知の方法で製造されるが、例えば、メラミンとシアヌール酸またはイソシアヌール酸の混合物を水スラリーとし、良く混合して両者の塩を微粒子状に形成させた後、このスラリーを濾過、乾燥後に一般には粉末状で得られる。また、上記の塩は完全に純粋である必要は無く、多少未反応のメラミンないしシアヌール酸、イソシアヌール酸が残存していても良い。また、樹脂に配合される前の平均粒径は、成形品の難燃性、機械的強度、表面性の点から100〜0.01μmが好ましく、更に好ましくは80〜1μmである。
窒素化合物系難燃剤の中では、含窒素複素環化合物が好ましく、中でもトリアジン化合物が好ましく、さらにメラミンシアヌレートが好ましい。
また、上記窒素化合物系難燃剤の分散性が悪い場合には、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの分散剤やポリビニルアルコール、金属酸化物などの公知の表面処理剤などを併用してもよい。
本発明で用いられるシリコーン系難燃剤としては、シリコーン樹脂、シリコーンオイルを挙げることができる。前記シリコーン樹脂は、SiO2、RSiO3/2、R2SiO、R3SiO1/2の構造単位を組み合わせてできる三次元網状構造を有する樹脂などを挙げることができる。ここで、Rはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、または、フェニル基、ベンジル基等の芳香族基、または上記置換基にビニル基を含有した置換基を示す。前記シリコーンオイルは、ポリジメチルシロキサン、およびポリジメチルシロキサンの側鎖あるいは末端の少なくとも1つのメチル基が、水素元素、アルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、アミノ基、エポキシ基、ポリエーテル基、カルボキシル基、メルカプト基、クロロアルキル基、アルキル高級アルコールエステル基、アルコール基、アラルキル基、ビニル基、またはトリフロロメチル基の選ばれる少なくとも1つの基により変性された変性ポリシロキサン、またはこれらの混合物を挙げることができる。
本発明で用いられるその他の無機系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、メタスズ酸、酸化スズ、酸化スズ塩、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化第一錫、酸化第二スズ、ホウ酸亜鉛、ホウ酸カルシウム、ホウ酸アンモニウム、オクタモリブデン酸アンモニウム、タングステン酸の金属塩、タングステンとメタロイドとの複合酸化物酸、スルファミン酸アンモニウム、臭化アンモニウム、ジルコニウム系化合物、グアニジン系化合物、黒鉛、膨潤性黒鉛などを挙げることができる。中でも、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛、膨潤性黒鉛が好ましい。
前記(E)難燃剤は、1種で用いても、2種以上併用して用いてもかまわない。
前記(E)難燃剤の中では、ハロゲンを全く含有しないリン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤およびその他の無機系難燃剤から選択される少なくとも1種または2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。上記において難燃剤を2種以上併用する場合、リン系難燃剤と他の難燃剤を併用することが好ましい。リン系難燃剤と併用する窒素化合物系難燃剤としては、含窒素複素環化合物が好ましく、中でもトリアジン化合物が好ましく、さらにメラミンシアヌレートが好ましい。また、リン系難燃剤と併用するシリコーン系難燃剤としては、シリコーン樹脂が好ましい。また、リン系難燃剤と併用するその他の無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛および膨潤性黒鉛が好ましい。また、リン系難燃剤との配合比率は任意の量を組み合わせることができ、とくに難燃剤100重量%中のリン系難燃剤の量は5重量%以上であることが好ましく、5〜95重量%であることがより好ましい。
さらに好ましい難燃剤としては、前記(E)難燃剤の中で、ハロゲン化合物とリン化合物とを全く含有しない窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤およびその他の無機系難燃剤から選択される少なくとも1種または2種以上を組み合わせて用いることがとくに好ましい。
(E)難燃剤の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、1〜50重量部であり、さらには2〜45重量部が好ましく、とくに好ましくは3重量部〜40重量部であり、1重量部未満では難燃性を与える効果が小さく、50重量部を越すと機械的性質が低下するため好ましくない。
また、前記の(E)難燃剤に特定のフッ素系樹脂を組み合わせて用いることにより、燃焼時のドリップを改善する効果があり、より高度な難燃性を得ることができる。かかる特定のフッ素系樹脂とは、物質分子中にフッ素を含有する樹脂であり、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ビニリデンフルオライド/エチレン共重合体などが挙げられるが、中でもポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライドが好ましく、特にポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体が好ましく、さらにはポリテトラフルオロエチレンが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体も好ましく用いられる。ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂の分子量は10万〜1000万の範囲のものが好ましく、とくに10万〜100万の範囲のものがより好ましく、本発明の押出成形性と難燃性にとくに効果がある。ポリテトラフルオロエチレンの市販品としては、三井・デュポンフロロケミカル(株)製の“テフロン(登録商標)”6−J、“テフロン(登録商標)”6C−J、“テフロン(登録商標)”62−J、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製の“フルオン”CD1やCD076などが市販されている。また、ポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体の市販品としては、三菱レイヨン(株)から、“メタブレン(登録商標)”Aシリーズとして市販され、“メタブレン(登録商標)”A−3000、“メタブレン(登録商標)”A−3800などが市販されている。また、ポリテトラフルオロエチレンの“テフロン(登録商標)”6−Jなどは凝集し易いため、他の樹脂組成物と共にヘンシェルミキサーなどで機械的に強く混合すると凝集により塊が生じる場合があり、混合条件によってはハンドリング性や分散性に課題がある。一方、ポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体は前記のハンドリング性や分散性に優れ、とくに好ましく用いられる。前記のポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体とは、限定されるものではないが、特開2000−226523号公報で開示されているポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体などが挙げられ、前記の有機系重合体としては芳香族ビニル系単量体、アクリル酸エステル系単量体、およびシアン化ビニル系単量体を10重量%以上含有する有機系重合体などであり、それらの混合物でもよく、ポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体中のポリテトラフルオロエチレンの含有量は0.1重量%〜90重量%であることが好ましい。また、特定のフッ素系樹脂の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部であり、好ましくは0.02〜4重量部が好ましく、より好ましくは0.03〜3重量部が好ましく、フッ素系樹脂の配合量が3重量部を越すと本発明の流動性や難燃性が逆に低下し、0.01重量部未満では難燃性向上に効果が認められない。
前記(E)難燃剤および(E)難燃剤と特定のフッ素系樹脂を配合した柔軟性樹脂組成物の難燃性としては、アメリカUL規格サブジェクト94(UL−94規格)での難燃性が厚み1.6mm(1/16インチ)以上の成形品でV−2、V−1、V−0の難燃性を持つ柔軟性樹脂組成物を得ることが可能である。
ここで、アメリカUL規格サブジェクト94(UL−94規格)の難燃性について説明すると、難燃性の試験方法には水平試験と垂直試験があり、水平試験をクリアする材料は難燃性ランクHBとして評価される。また、試験材料を垂直に固定して炎を材料の下部に当てて試験を行う垂直試験は水平試験より燃えやすくなるため、材料としては高度な難燃性が要求され、難燃性ランクとしてV−2、V−1、V−0が定められ、数字が小さい程難燃性に優れ、ここではV−0が最も高度な難燃性ランクとなる。
本発明においては、さらに熱可塑性樹脂を配合することができ、表面外観性、成形性、機械特性、耐熱性および靭性などに優れた柔軟性樹脂組成物およびそれからなる成形品を得ることができる。本発明の熱可塑性樹脂は特に限定されるものではなく、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)スチレン系共重合体以外熱可塑性樹脂以外の樹脂であり、具体例としてはポリ乳酸樹脂以外のポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、芳香族および脂肪族ポリケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、熱可塑性澱粉樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリエーテルイミド樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などの熱可塑性樹脂を挙げることができ、中でもポリアセタール樹脂、ポリ乳酸樹脂以外のポリエステル樹脂(ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリエチレン(テレフタレート/サクシネート)樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリカプロラクトン樹脂およびセルロースアセテート、セルロースジアセテートセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレートなどのセルロースエステル樹脂など)、ポリアミド樹脂から選ばれる少なくとも1種を配合することが好ましい。
本発明においては、さらにカルボキシル基反応性末端封鎖剤を配合することが好ましい。本発明で用いるカルボキシル基反応性末端封鎖剤としては、ポリマーのカルボキシル末端基を封鎖することのできる化合物であれば特に制限はなく、ポリマーのカルボキシル末端の封鎖剤として用いられているものを用いることができる。本発明においてかかるカルボキシル基反応性末端封鎖剤は、ポリ乳酸樹脂の末端を封鎖するのみではなく、ポリ乳酸樹脂や天然由来の有機充填剤の熱分解や加水分解などで生成する乳酸やギ酸などの酸性低分子化合物のカルボキシル基も封鎖することができる。また、上記末端封鎖剤は、熱分解により酸性低分子化合物が生成する水酸基末端も封鎖できる化合物であることがさらに好ましい。このようなカルボキシル基反応性末端封鎖剤としては、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、カルボジイミド化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を使用することが好ましく、なかでもエポキシ化合物および/またはカルボジイミド化合物が好ましい。カルボキシル基反応性末端封鎖剤の量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、0.01〜5重量部が好ましく、0.05〜3重量部がさらに好ましい。
本発明においては、安定剤を配合することが好ましい。本発明で使用する安定剤としては、通常熱可塑性樹脂の安定剤に用いられるものを用いることができる。具体的には、酸化防止剤、光安定剤などを挙げることができる。これらを配合することで、機械特性、成形性、耐熱性および耐久性に優れた成形品を得ることができる。
本発明で使用する酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物などをあげることができる。
ヒンダードフェノール系化合物の例としては、トリエチレングリコール‐ビス‐[3‐(3‐t‐ブチル‐5‐メチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]及びテトラキス[メチレン‐3‐(3’,5’‐ジ‐t‐ブチル‐4’‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。
ホスファイト系化合物としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスホナイトなどが好ましく使用できる。
チオエーテル系化合物の具体的な例としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)などが挙げられる。
本発明で使用する光安定剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、芳香族ベンゾエート系化合物、蓚酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物及びヒンダードアミン系化合物などを挙げることができる。
本発明において上記安定剤は、1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合せて用いても良い。また、安定剤としてはヒンダードフェノール系化合物および/またはベンゾトリアゾール系化合物を用いることが好ましい
また、安定剤の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.01〜3重量部が好ましく、0.03〜2重量部がさらに好ましい。
本発明においては、離型剤を配合することが好ましい。本発明で使用する離型剤としては、通常熱可塑性樹脂の離型剤に用いられるものを用いることができる。具体的には、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変成シリコーンなどを挙げることができる。これらを配合することで、機械特性、成形性、耐熱性および耐久性に優れた成形品を得ることができる。
脂肪酸としては、炭素数6〜40のものが好ましく、具体的には、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、アラキドン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸およびこれらの混合物などが挙げられる。脂肪酸金属塩としては、炭素数6〜40の脂肪酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩が好ましく、具体的にはステアリン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウムなどが挙げられる。オキシ脂肪酸としては1,2−オキシステアリン酸などが挙げられ、脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、アジピン酸エステル、ベヘン酸エステル、アラキジン酸エステル、モンタン酸エステル、イソステアリン酸エステル、重合酸のエステル、脂肪族部分鹸化エステルとしてはモンタン酸部分鹸化エステルなどが挙げられる。パラフィンとしては、炭素数18以上のものが好ましく、流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムなどが挙げられ、低分子量ポリオレフィンとしては例えば分子量5000以下のものが好ましく、具体的にはポリエチレンワックス、マレイン酸変性ポリエチレンワックス、酸化タイプポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどが挙げられ、脂肪酸アミドとしては、炭素数6以上のものが好ましく、具体的にはオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミドなどが挙げられ、アルキレンビス脂肪酸アミドとしては、 炭素数6以上のものが好ましく、具体的にはメチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリン酸アミドなどが挙げられ、脂肪族ケトンとしては、高級脂肪族ケトンなどが挙げられ、脂肪酸低級アルコールエステルとしては、 炭素数6以上のものが好ましく、エチルステアレートブチルステアレート、エチルベヘネート、ライスワックスなどが挙げられ、脂肪酸多価アルコールエステルとしては、グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールアジピン酸ステアレート、ジペンタエリスリトールアジピン酸ステアリン酸、ソルビタンモノベヘネートなどが挙げられ、脂肪酸ポリグリコールエステルとしては、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルやポリプロピレングリコール脂肪酸エスエルが挙げられ、変成シリコーンとしては、チルスチリル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、高級脂肪酸アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸含有シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、フッ素変性シリコーンなどを挙げることができる。
上記のうち、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪族アミド、アルキレンビス脂肪酸アミドが好ましく、脂肪酸部分鹸化エステルおよび/またはアルキレンビス脂肪酸アミドがより好ましい。
なかでも、モンタン酸エステル、モンタン酸部分鹸化エステル、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ソルビタン脂肪酸エステル、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドが好ましく、特にモンタン酸部分鹸化エステル、エチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。
本発明において上記離型剤は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
また、離型剤の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.01〜3重量部が好ましく、0.03〜2重量部がさらに好ましい。
本発明においては、制電性を付与できるという点で、さらに帯電防止剤を配合することが好ましい。本発明で使用する帯電防止剤としては、公知のものをいずれも用いることができ、そのイオン性は特に限定されるものではなく、カチオン性、アニオン性、両性イオン性、非イオン性のいずれを用いてもよいが、(A)ポリ乳酸樹脂の熱分解を抑制できるという点で、両性イオン系、非イオン系が好ましく、非イオン系がより好ましい。
上記の帯電防止剤の配合量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜5重量部がさらに好ましい。
本発明においては、さらに、カーボンブラック、酸化チタン、弁柄、群青、焼成イエローおよびさらに種々の色の顔料や染料を1種以上配合することにより種々の色に樹脂を調色、耐候(光)性、および導電性を改良することも可能であり、顔料や染料の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、0.01〜10重量部、好ましくは0.02〜9重量部、より好ましくは0.03〜8重量部である。
また、前記のカーボンブラックとしては、限定されるものではないが、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、アントラセンブラック、油煙、松煙、および、黒鉛などが挙げられ、平均粒径500nm以下、ジブチルフタレート吸油量50〜400cm3/100gのカーボンブラックが好ましく用いられ、処理剤として酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ポリオール、シランカップリング剤などで処理されていても良い。
また、前記の酸化チタンとしては、ルチル形、あるいはアナターゼ形などの結晶形を持ち、平均粒子径5μm以下の酸化チタンが好ましく用いられ、処理剤として酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ポリオール、シランカップリング剤などで処理されていても良い。また、上記のカーボンブラック、酸化チタン、および種々の色の顔料や染料は、本発明の難燃性樹脂組成物との分散性向上や製造時のハンドリング性の向上のため、種々の熱可塑性樹脂と溶融ブレンドあるいは単にブレンドした混合材料として用いても良い。とくに、前記の熱可塑性樹脂としては、ポリ乳酸樹脂などのポリエステル樹脂が好ましく、ポリ乳酸樹脂がとくに好ましく用いられる。
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、摺動性改良剤(グラファイト、摺動性改良用のフッ素樹脂など)、天然由来の有機充填剤(籾殻、木材チップ、おから、古紙粉砕材、衣料粉砕材などのチップ状のもの、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ヘンプ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナッツ繊維などの植物繊維もしくはこれらの植物繊維から加工されたパルプやセルロース繊維および絹、羊毛、アンゴラ、カシミヤ、ラクダなどの動物繊維などの繊維状のもの、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質、澱粉などの粉末状のものが挙げられ、耐熱性の観点から、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質粉末、澱粉などの粉末状のもの、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ヘンプ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナッツ繊維などの植物繊維が好ましく、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、ケナフ繊維、ヘンプ繊維がとくに好ましい)、抗菌剤、有機系結晶核剤(安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、シュウ酸カルシウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウムなどの有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウムなどの有機スルホン酸塩、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)などの有機カルボン酸アミド、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸コポリマーのナトリウム塩などのカルボキシル基を有する重合体のナトリウム塩またはカリウム塩(いわゆるアイオノマー)、ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートなどのリン化合物金属塩など)および本発明で配合するエステル系可塑剤以外の可塑剤などの成分を1種以上添加することができる。
本発明の柔軟性樹脂組成物の製造方法は、本発明で規定する要件を満たす限り特に限定されるものではないが、例えば、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)スチレン系共重合体および(C)特定の構造を有するエステル系可塑剤および必要に応じてその他の添加剤を予めブレンドした後、(A)ポリ乳酸樹脂の融点以上において、単軸またはニ軸押出機で、均一に溶融混練する方法や、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などが好ましく用いられる。
本発明の柔軟性樹脂組成物を製造する際の、溶融混練温度は、170〜240℃が好ましく、175℃〜230℃がさらに好ましく、180〜220℃が特に好ましい。
本発明の樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、シート成形、フィルム成形および未延伸糸、延伸糸、超延伸糸など各種繊維への紡糸などの方法によって、各種製品形状に加工され、機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品、光学機器、建築部材および日用品など各種用途の成形品として利用することができる。とくに、柔軟性という特徴から、各種用途のパッキング、カバー、フィルム、シートなどにより好ましく用いられる。
また、限定されるものではないが、前記の各種用途のパッキング、カバーの中で小物の成形品の場合は、射出成形で得ることが簡便であり、大物のパッキング、カバー、フィルム、シートの場合は押出成形、シート成形、フィルム成形で得ることが簡便であり、得られた製品を所望の形状に切削加工や延伸加工などにより後加工して用いることができる。
本発明の柔軟性樹脂組成物の効果のひとつである弾性回復性は引張永久歪み試験などで求めることができ、引張永久歪みの値としては、50%以下、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下であることが好ましく、引張永久歪みが50%越す材料は弾性回復性に劣り好ましくない。前記の引張永久歪みの測定方法は、JIS−K−6262(引張永久歪み試験方法)に準拠し、初期歪み25%、処理温度23℃の条件で測定した。
また、本発明の柔軟性樹脂組成物から得られる成形品は、特徴のある弾性回復性を示す成形品である。例えば、本発明の柔軟性樹脂組成物と同じ柔軟性を持つポリブチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコールからなるブロック共重合体のポリエステルエラストマーと比較した場合、ポリエステルエラストマーより弾性回復性の回復速度が遅いという特徴を持つ成形品である。具体的には、本発明の硬さ47D(硬さ47Dとは、JIS−K−6253のデュロメータ硬さ試験のタイプDで測定される値である)の柔軟性樹脂組成物と硬さ47Dのポリエステルエラストマー(東レ・デュポン社製“ハイトレル”4767)の厚み1.6mm(1/16インチ)の難燃性試験片を用い、それぞれ直角に折り曲げて回復性を比較したところ、“ハイトレル”4767は瞬時に折り曲げる前の元の形状にもどるが、本発明の成形品は徐徐に元の形状にもどり、手で元の形状にもどすと曲げ跡なく綺麗に元の形状にもどる性質を示す。つまり、本発明の成形品は、変形を受けた場合、徐徐に元の形状に復元可能な成形品であり、このような特徴のある性能を活かす成形品用途への展開も期待できる。
また、本発明の成形品は、植物由来の(A)ポリ乳酸樹脂を主成分とすることから、石油由来の樹脂と比較すると自然環境保護という観点からも有用な成形品として好適に使用できる。
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
[実施例1〜9、比較例1〜6][実施例10〜14]
ポリ乳酸樹脂は、D体の含有量が2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が17万であるポリL乳酸樹脂を用い、表1あるいは表2に示すスチレン系共重合体、表1あるいは表2に示す各種可塑剤を表1あるいは表2に示した割合で混合し、30mm径の2軸押出機で、シリンダー温度190℃、回転数100rpmの条件で溶融混練を行い、柔軟性樹脂組成物を得た。なお、実施例の本発明のスチレン系共重合体A−1のブタジエン含量30%以上のMABS樹脂とは、アクリロニトリル(2%)/ポリブタジエン(55%)/メタクリル酸メチル(32%)/スチレン(11%)の仕込み組成で、公知の乳化重合法を用いてパウダー状に乾燥して得られたもの、スチレン系共重合体A−2〜A−4は表1に示す市販のスチレン系共重合体である。また、実施例の本発明の特定のエステル系可塑剤C−1〜C−4は、特許第3421769号公報に記載されている合成方法に従い、合成して得られたもの、本発明の特定のエステル系可塑剤以外の可塑剤C−5は表1に示す市販の可塑剤である。
得られた柔軟性樹脂組成物について、(株)東芝機械製IS55EPN射出成形機を用い、シリンダー温度190℃、金型温度40℃で射出成形を行い、種々の射出成形品を得た。得られた射出成形品を用い、下記の(1)〜(6)に示す性能評価を行い、結果を表1あるいは表2に示した。
(1)柔軟性(デュロメーター硬さ)
JIS−K−6253のデュロメータ硬さ試験のタイプDで測定される値
(2)柔軟性(引張り弾性率)
射出成形により作製したJIS−2号ダンベルを用い、JIS−K−7113に準拠して測定した。
(3)弾性回復性(引張り永久歪み)
JIS−K−6262(引張永久歪み試験方法)に準拠し、初期歪み25%、処理温度23℃の条件で測定した。
(4)耐ブリードアウト性
射出成形により作製したJIS−2号ダンベルに、寺西化学製青マジックM500−T3青を使用してサンプル名を記載し、熱風乾燥機を用いて、70℃で1時間熱処理し、下記の判定方法を用い、耐ブリードアウト性を目視で観察した。
◎:ブリードアウトなし、寺西化学製青マジックM500−T3青の字に変化なし
○:ブリードアウトなし、寺西化学製青マジックM500−T3青の字が滲む
×:ブリードアウトあり
(5)表面外観性
射出成形により作製したJIS−2号ダンベルの成形品の表面外観を下記の判定方法を用い、目視で観察した。
◎:成形品の平滑性と白色性に優れる
○:成形品の平滑性には優れるが、白色性に劣る
△:成形品の一部に凹凸状のヒケがある
×:成形品全体に凹凸状のヒケがある
(6)難燃性
射出成形により作製した127mm×12.7mm×1.6mm(5インチ×1/2インチ×1/16インチ)の試験片を用いて、アメリカUL規格サブジェクト94(UL94)の垂直燃焼試験法に準拠して燃焼試験を行い、難燃性ランクを求めた。前記の難燃性ランクに合格しなかった材料は規格外とした。
Figure 2007091872
Figure 2007091872
表1の実施例1〜9から、本発明の柔軟性樹脂組成物は、柔軟性、弾性回復性、耐ブリードアウト性および表面外観性に優れていることがわかる。また、表1の比較例1〜6から、スチレン系共重合体と特定のエステル系可塑剤を用いない樹脂組成物は、柔軟性、弾性回復性、耐ブリードアウト性および表面外観性のいずれかの性能あるいは複数の性能に劣ることがわかる。
さらに、表2の実施例10〜14から、本発明の(D)無機充填剤と(E)難燃剤を配合した表2に示す本発明の柔軟性樹脂組成物は、(D)無機充填剤の配合により白色性に優れる成形品が得られ、(E)難燃剤の配合により難燃性が付与された成形品得られることがわかる。さらに、(D)と(E)成分を併用配合により白色性と難燃性に優れる成形品が得られることがわかる。

Claims (7)

  1. (A)ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、(B)スチレン系共重合体1〜150重量部および(C)下記式(a)で表される構造を有するエステル系可塑剤0.1〜50重量部を配合してなる柔軟性樹脂組成物。
    −COO−(CHCOO)m−(RO)n−R (a)
    ((a)式中、mは0〜5の整数を表し、nは0〜6の整数を表し、Rは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜15のアリールアルキル基もしくは炭素数7〜15のアルキルアリール基を表す。ただし、m+n≧1である。)
  2. 前記(B)スチレン系共重合体がゴム成分を含有するビニル系樹脂である請求項1に記載の柔軟性樹脂組成物。
  3. 前記(C)エステル系可塑剤が、メチルジグリコールブチルジグリコールアジペート、ベンジルメチルジグリコールアジペート、ベンジルブチルジグリコールアジペート、エトキシカルボニルメチルジブチルサイトレートから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜2のいずれか1項に記載の柔軟性樹脂組成物。
  4. さらに(D)無機充填剤を配合してなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の柔軟性樹脂組成物。
  5. さらに(E)難燃剤を配合してなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の柔軟性樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる成形品。
  7. 前記成形品が、パッキング、カバー、フィルム、シートである請求項6に記載の成形品。
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