JP2010195963A - 熱可塑性樹脂組成物、その製造方法ならびにそれらからなる成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物、その製造方法ならびにそれらからなる成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】ウエルドライン、フローマーク、真珠光沢、表面荒れ等が大幅に改善された表面外観を有し、かつ耐衝撃性、耐熱性に優れ、好ましい態様としては難燃性にも優れる熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法、それらからなる成形品を提供するものである。
【解決手段】(A)ポリ乳酸樹脂5〜95重量%、(B)ポリカーボネート樹脂95〜5重量%、ならびに(A)および(B)の合計100重量部に対して、(C)(i)ポリカーボネート樹脂セグメントおよび(ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントとをグラフト化したグラフト共重合体0.1〜50重量部を含有してなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ウエルドライン、フローマーク、真珠光沢、表面荒れ等が大幅に改善された表面外観を有し、かつ耐衝撃性、耐熱性に優れ、好ましい態様としては難燃性にも優れる熱可塑性樹脂組成物、その製造方法、ならびにそれらからなる成形品に関するものである。
ポリ乳酸樹脂は、高い融点を持ち、また溶融成形可能であることから、実用上優れた生分解性ポリマーとして期待されている。また、将来的には、バイオマス原料から製造される汎用ポリマーとしての利用も期待されており、射出成形や押出成形などの成形により、成形品としての利用も拡大しつつある、環境低負荷の熱可塑性樹脂である。しかしながら、ポリ乳酸樹脂は、耐衝撃性に劣るという課題があり、その改良が望まれていた。
一方、ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐熱性に優れ、耐衝撃性にも極めて優れるエンジニアリングプラスチックの一つであり、現在様々な用途に使用されている。
ポリ乳酸樹脂の耐衝撃性を改良するために、ポリ乳酸樹脂とポリカーボネート樹脂のアロイ化による検討が進められている。例えば、特許文献1には、架橋ポリカーボネート樹脂を含有するポリ乳酸系樹脂組成物が開示されており、ポリ乳酸樹脂の耐衝撃性を向上せしめているが、単純な二成分系の混合物であるため、その効果は十分ではなく、また、その成形品においては、ウエルドラインやフローマーク、真珠光沢といった外観不良が見られるという課題があった。一方、特許文献2には、ポリ乳酸樹脂と芳香族ポリカーボネート樹脂のアロイに、アクリル樹脂あるいはスチレン樹脂ユニットをグラフトにより含む高分子化合物および難燃剤を配合してなる難燃性樹脂組成物が開示されている。確かに、アクリル樹脂あるいはスチレン樹脂ユニットをグラフトにより含む高分子化合物を配合することにより、真珠光沢やフローマークが低減し、耐衝撃性が向上するものの、その効果は十分ではなく、さらにウエルドラインなどの外観不良を改善するまでには至らないという課題があった。
一方、特許文献3には、ポリカーボネート樹脂とその他の熱可塑性樹脂として、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリアリーレンスルフィド系樹脂からなる群より選択された1種以上の樹脂の混合物に、ポリカーボネート系樹脂セグメントとビニル系樹脂セグメントからなり、一方のセグメントにより形成された連続相中に、他方のセグメントにより形成された分散相が微細に分散している多層構造を示すグラフト共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物が開示されている。確かに、該グラフト共重合体を配合することにより、耐衝撃性および耐熱性が向上し、成形品のフローマークは低減する傾向にある。しかしながら、本特許文献の実施例に開示されているグラフト共重合体のビニル系樹脂セグメントは、スチレン単独重合体セグメントあるいはスチレン−アクリロニトリル共重合体セグメントであり、実施例で開示されているポリカーボネート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物、ポリカーボネート樹脂とポリアミド樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物、ポリカーボネート樹脂とポリフェニレンスルフィド樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物には、耐衝撃性や耐熱性の向上効果およびフローマーク低減効果は見られるものの、ポリカーボネート樹脂とポリ乳酸樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物に関しては、一切記載が無いとともに、耐衝撃性や耐熱性の向上効果およびフローマーク低減効果が顕著に発現しないという課題があった。さらに、ビニル系樹脂セグメントが、スチレン単独重合体セグメントあるいはスチレン−アクリロニトリル共重合体セグメントであるグラフト共重合体の添加では、ポリカーボネート樹脂とポリ乳酸樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物の成形品のウエルドラインや真珠光沢といった外観不良には改良効果が見られないという課題があった。
また、特許文献4には、ポリカーボネート樹脂セグメントとエポキシ基含有ビニル共重合体セグメントからなり、一方のセグメントにより形成された連続相中に、他方のセグメントにより形成された分散相が微細に分散している多層構造を示すグラフト共重合体が開示されているとともに、該グラフト共重合体と、ポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂およびポリアリーレンスルフィド系樹脂からなる群より選択された少なくとも1種の樹脂と、スチレン系樹脂よりなる熱可塑性樹脂組成物が開示されている。確かに、ポリカーボネート樹脂セグメントとエポキシ基含有ビニル共重合体セグメントからなるグラフト共重合体の使用により、本特許文献の実施例で開示されているポリカーボネート樹脂とハイインパクトポリスチレン樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物、ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂組成物、ポリブチレンテレフタレート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂組成物、ポリアミド樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂組成物およびポリフェニレンスルフィド樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂組成物に関しては、耐衝撃性および耐熱性に優れ、フローマークは低減する傾向にあるものの、ポリカーボネート樹脂とポリ乳酸樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物に関しては、一切記載が無いとともに、耐衝撃性や耐熱性の向上効果およびフローマーク低減効果が顕著に発現しないという課題があった。さらに、ビニル系樹脂セグメントが、実施例に開示されているように、スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体セグメントあるいはスチレン−アクリロニトリル−グリシジルメタクリレート共重合体セグメントであるグラフト共重合体の添加では、ポリカーボネート樹脂とポリ乳酸樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物の成形品のウエルドラインや真珠光沢といった外観不良には改良効果が見られないという課題があった。
特開平11−140292号公報(第1−2頁、実施例) 特開2007−56247号公報(第1−2頁、実施例) 特開平8−333501号公報(第1−2頁、実施例) 特開平11−80287号公報(第1−2頁、実施例)
本発明は、上述した従来技術における課題であった、ポリ乳酸樹脂およびポリカーボネート樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、耐熱性を向上させるとともに、ウエルドライン、フローマーク、真珠光沢、表面荒れなどの外観不良を改善し、好ましい態様としては難燃性に優れた熱可塑性樹脂組成物、その製造方法ならびにそれらからなる成形品を提供するものである。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリ乳酸樹脂およびポリカーボネート樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物に、特定構造のグラフト共重合体を含有せしめることにより、上記課題を解決し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
(1)(A)と(B)の合計を100重量%として、(A)ポリ乳酸樹脂5〜95重量%、(B)ポリカーボネート樹脂95〜5重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、(C)(i)ポリカーボネート樹脂セグメントおよび(ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントとをグラフト化したグラフト共重合体0.1〜50重量部を配合してなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物、
(2)(ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメント100重量%中に、不飽和エポキシ化合物を0.1〜30重量%含有することを特徴とする上記(1)記載の熱可塑性樹脂組成物、
(3)(ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントの重量平均分子量が1万〜50万であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物、
(4)(D)難燃剤を配合してなることを特徴とする上記(1)〜(3)いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物、
(5)(E)無機充填剤を配合してなることを特徴とする上記(1)〜(4)いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物、
(6)(F)フッ素系樹脂を配合してなることを特徴とする上記(1)〜(5)いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物、
(7)(A)ポリ乳酸樹脂ならびに(C)(i)ポリカーボネート樹脂セグメントおよび(ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントとをグラフト化したグラフト共重合体を、溶融混練した後、さらに(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂を溶融混練することを特徴とする上記(1)〜(6)いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法、
(8)(A)ポリ乳酸樹脂ならびに(C)(i)ポリカーボネート樹脂セグメントおよび(ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントとをグラフト化したグラフト共重合体を予め溶融混練し、ペレット状としたマスターバッチを製造し、そのマスターバッチと(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂とを、さらに溶融混練することを特徴とする上記(1)〜(6)いずれか1項記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法、
(9)上記(7)あるいは(8)いずれか記載の製造方法により得られることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物、
(10)上記(1)〜(6)および(9)いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品を提供するものである。
本発明は、ウエルドライン、フローマーク、真珠光沢、表面荒れ等が大幅に改善された表面外観を有し、かつ耐熱性、耐衝撃性に優れ、好ましい態様としては難燃性にも優れる熱可塑性樹脂組成物、その製造方法ならびにそれらからなる成形品を提供するものであり、本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品は、上記特性を活かして、自動車部品、電気・電子機器部品、OA機器部品、建築部材および日用品などの各種用途に、有効に利用することが可能となる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明における(A)ポリ乳酸樹脂とは、L−乳酸及び/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。他のモノマー単位としては、エチレングリコール、ブロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、およびカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。このような他の共重合成分は、全単量体成分に対し、0〜30モル%であることが好ましく、0〜10モル%であることがさらに好ましい。
本発明においては、機械特性、熱特性の観点から、乳酸成分の光学純度が高い(A)ポリ乳酸樹脂を用いることが好ましい。すなわち、(A)ポリ乳酸樹脂の総乳酸成分の内、L体が80%以上含まれるかあるいはD体が80%以上含まれることが好ましく、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることがより好ましく、L体が95%以上含まれるかあるいはD体が95%以上含まれることが最も好ましい。
また、L体が80%以上含まれるポリ乳酸とD体が80%以上含まれるポリ乳酸を併用して用いることも好ましく、L体が90%以上含まれるポリ乳酸とD体が90%以上含まれるポリ乳酸を併用して用いることがより好ましい。
本発明における(A)ポリ乳酸樹脂は、変性したものを用いてもよく、例えば、無水マレイン酸変性ポリ乳酸樹脂、エポキシ変性ポリ乳酸樹脂、アミン変性ポリ乳酸樹脂などを用いることにより、耐熱性だけでなく、機械特性も向上する傾向にあり好ましい。
本発明における(A)ポリ乳酸樹脂の製造方法としては、公知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、およびラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。
本発明における(A)ポリ乳酸樹脂の分子量や分子量分布については、実質的に成形加工が可能であれば特に制限されるものではないが、重量平均分子量としては、好ましくは5万以上、より好ましくは8万以上、最も好ましくは10万以上である。上限としては、成形時の流動性の点から35万以下であることが好ましい。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の重量平均分子量をいう。
本発明における(A)ポリ乳酸樹脂の融点については、特に制限されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。(A)ポリ乳酸樹脂の融点は光学純度が高いほど高くなる傾向にあるため、上記融点の高いポリ乳酸樹脂は、光学純度の高いポリ乳酸樹脂を用いればよい。
また、本発明で用いる(A)ポリ乳酸樹脂としては、耐熱性の点で、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを用いることが好ましい。ポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成させる方法としては、例えば、L体が90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上のポリ−L−乳酸とD体が90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上のポリ−D−乳酸を溶融混練、溶液混練または固相混練などにより混合する方法が挙げられる。混合によりポリ乳酸ステレオコンプレックスを得る方法においては、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸のいずれの重量平均分子量も10万以上であってもよいが、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸のいずれか一方の重量平均分子量が10万以下、好ましくは5万以下であり、他方の重量平均分子量が10万超、好ましくは12万以上である組合せを適用することが好ましい。また、別の方法として、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸をブロック共重合体、すなわちステレオブロックポリ乳酸とする方法も挙げることができ、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを容易に形成させることができるという点で、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸をブロック共重合体とする方法が好ましい。
本発明における(B)ポリカーボネート樹脂とは、具体的には、2価以上のフェノール系化合物と、ホスゲンあるいはジフェニルカーボネートのような炭酸ジエステル化合物とを反応させて得られる熱可塑性樹脂である。
前記2価以上のフェノール系化合物としては、特に制限はないが、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(4−イソプロピルフェニル)メタン、ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1−ナフチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2−メチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1−エチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4−メチル−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのジヒドロキシジアリールアルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカンなどのジヒドロキシジアリールシクロアルカン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのジヒドロキシジアリールスルホン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテルなどのジヒドロキシアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンなどのジヒドロキシジアリールケトン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドなどのジヒドロキシジアリールスルフィド類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシドなどのジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルなどのジヒドロキシジフェニル類、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのジヒドロキシアリールフルオレン類などが挙げられる。また、上記2価フェノール化合物以外に、ヒドロキノン、レゾルシノール、メチルヒドロキノンなどのジヒドロキシベンゼン類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレンなどのジヒドロキシナフタレン類などが2価のフェノール系化合物として使用できる。
なお、3価以上のフェノール系化合物も、得られる(B)ポリカーボネート樹脂が熱可塑性を維持する範囲で使用できる。前記3価以上のフェノール系化合物の例としては、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシフェニルエーテル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシフェニルエーテル、2,4,4’−トリヒドロキシジフェニル−2−プロパン、2,2’−ビス(2,4−ジヒドロキシ)プロパン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシジフェニルメタン、2,4,4’−トリヒドロキシジフェニルメタン、1−[α−メチル−α−(4’−ジヒドロキシフェニル)エチル]−3−[α’,α’−ビス(4”−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1−[α−メチル−α−(4’−ジヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α’,α’−ビス(4”−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプタン、1,3,5−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−5’−イソプロピルベンジル)−4−イソプロピルフェノール、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシ−5’−イソプロピルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン、2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン、1,3−ビス(2’,4’−ジヒドロキシフェニルイソプロピル)ベンゼン、トリス(4’−ヒドロキシフェニル)−アミル−s−トリアジンなどが挙げられる。
これらの2価以上のフェノール系化合物は、それぞれ単独で用いても良く、2種以上を組み合わせても良い。
本発明における(B)ポリカーボネート樹脂には、必要に応じて、3価以上のフェノール系化合物以外にも分岐ポリカーボネート系樹脂にするための成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。前記分岐ポリカーボネート系樹脂を得るために用いられる3価以上のフェノール系化合物以外の成分(分岐剤)としては、例えば、フロログルシン、メリット酸、トリメリット酸、トリメリット酸クロリド、無水トリメリット酸、没食子酸、没食子酸n−プロピル、プロトカテク酸、ピロメリット酸、ピロメリット酸二無水物、α−レゾルシン酸、β−レゾルシン酸、レゾルシンアルデヒド、トリメチルクロリド、イサチンビス(o−クレゾール)、トリメチルトリクロリド、4−クロロホルミルフタル酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などが挙げられる。
本発明における(B)ポリカーボネート樹脂の共重合成分として、この他に、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などの直鎖状脂肪族2価カルボン酸を用いても良い。
本発明における(B)ポリカーボネート樹脂の成分として、必要に応じて、重合時の末端停止剤として使用される公知の各種のものを、本発明の効果を損なわない範囲で用いることができる。具体的には、1価フェノール系化合物である、フェノール、p−クレゾール、p−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、ブロモフェノール、トリブロモフェノール、ノニルフェノールなどが挙げられる。
本発明における(B)ポリカーボネート樹脂の原料として使用する炭酸ジエステル化合物としては、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネートや、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートが挙げられる。
本発明における(B)ポリカーボネート樹脂の具体例としては、例えば、ビスフェノールAとホスゲンとを反応させて得られるポリカーボネート樹脂、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネート樹脂、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンとジフェニルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
本発明における(B)ポリカーボネート樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは3,000〜80,000、より好ましくは4,000〜50,000、最も好ましくは5,000〜30,000である。ここでいう数平均分子量(Mn)は、ポリカーボネート樹脂をテトラヒドロフランに溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したPMMA換算の数平均分子量のことである。
本発明における(B)ポリカーボネート樹脂の骨格中に、ビスフェノールA骨格が含まれる場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様である難燃性の向上の点から、(B)ポリカーボネート樹脂のフェノール性水酸基末端量は、ビスフェノールA骨格1mol当たり、0.5×10−2mol以上が好ましく、より好ましくは0.7×10−2mol以上、さらに好ましくは0.9×10−2mol以上である。ビスフェノールA骨格1mol当たりの(B)ポリカーボネート樹脂のフェノール性水酸基末端量は、H−NMRなどの測定により算出することができる。すなわち、H−NMRスペクトルにおいて、δ1.66〜1.70ppmの範囲にビスフェノールAのメチル基のピークが現れ、δ4.70〜4.80ppmの範囲にフェノール性水酸基末端のピークが現れる。それらピーク強度の比から、ビスフェノールA骨格1mol当たりの(B)ポリカーボネート樹脂のフェノール性水酸基末端量を求めることができる。フェノール性水酸基末端量が前記範囲にあるポリカーボネート樹脂は、例えば、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートとを反応させ、末端停止剤を使用しない溶融重合法などの製造方法により得ることができる。
本発明における(A)ポリ乳酸樹脂と(B)ポリカーボネート樹脂の配合比(重量比)は、(A)と(B)の合計を100重量%として、(A)5〜95重量%、(B)95〜5重量%であり、より好ましくは、(A)10〜90重量%、(B)90〜10重量%、最も好ましくは、(A)15〜85重量%、(B)85〜15重量%である。(B)ポリカーボネート樹脂が5重量%未満であると、本発明の効果である耐衝撃性、耐熱性の向上効果が顕著に発現しない傾向があり、95重量%を超えると、流動性が低下し、溶融成形加工性が悪化する傾向がある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、本発明の効果を発現させる観点から、(C)(i)ポリカーボネート樹脂セグメントおよび(ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントとをグラフト化したグラフト共重合体の存在が必要であり、該グラフト共重合体は、本発明の熱可塑性樹脂組成物において、(A)ポリ乳酸樹脂と(B)ポリカーボネート樹脂との界面張力を低下させる相溶化剤としての役割を有する。
本発明における(C)グラフト共重合体中の(i)ポリカーボネート樹脂セグメントを構成するポリカーボネート樹脂は、前記の本発明における(B)ポリカーボネート樹脂と同構造・同製造手法であっても、異なった構造・製造手法であってもよいが、好ましくは、同構造・同製造手法のポリカーボネート樹脂である。
また、本発明における(C)グラフト共重合体中の(ii)エポキシ基含有アクリル共重合体セグメントを構成するのは、不飽和エポキシ化合物の単独重合体、あるいはこの不飽和エポキシ化合物およびこれと共重合性を有するアクリル系単量体との共重合体であり、好ましくは、不飽和エポキシ化合物およびこれと共重合性を有するアクリル系単量体との共重合体である。ここでいう不飽和エポキシ化合物とは、分子骨格中に、その他のアクリル系単量体と共重合可能な不飽和基およびエポキシ基を有する化合物のことである。
前記不飽和エポキシ化合物としては、その他のアクリル系単量体と共重合可能な不飽和基およびエポキシ基を有していれば、特に制限はないが、好ましい具体例としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルエタクリレート、イタコン酸グリシジルエステル類、ブテンカルボン酸グリシジルエステル類などの不飽和グリシジルエステル類、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテル類、3,4−エポキシブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、3,4−エポキシ−3−メチルペンテン、5,6−エポキシ−1−ヘキセンなどのエポキシアルケン類、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、p−グリシジルスチレンなどが挙げられ、これらは一種以上を併用して用いることができる。これらの中で最も好ましくは、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルエタクリレートである。
また、前記不飽和エポキシ化合物と共重合性を有するアクリル系単量体としては、具体例として、アクリル酸の炭素数1〜20のアルキルエステル、メタクリル酸の炭素数1〜20のアルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などが挙げられ、これらは一種以上を併用して用いることができる。これらの中で最も好ましくは、アクリル酸の炭素数1〜20のアルキルエステル、メタクリル酸の炭素数1〜20のアルキルエステルである。
また、本発明における(C)グラフト共重合体中の(ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメント100重量%における不飽和エポキシ化合物の含有量は、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは0.5〜25重量%、最も好ましくは1〜20重量%である。不飽和エポキシ化合物の含有量が0.1%未満であると、本発明の効果である耐衝撃性、耐熱性の向上効果およびウエルドライン、フローマーク、真珠光沢等の外観不良改善効果が小さくなる傾向があり、30重量%を超えると、不飽和エポキシ化合物中のエポキシ基同士の反応量が多くなり、ゲル化する傾向があり、成形品の表面荒れなどの発生が起こりやすくなる傾向がある。
本発明において、(C)(i)ポリカーボネート樹脂セグメントおよび(ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントとをグラフト化したグラフト共重合体の各成分の比率((i)の重量%/(ii)の重量%)は、好ましくは、10/90〜90/10、より好ましくは、15/85〜85/15、最も好ましくは20/80〜80/20である。(i)ポリカーボネート樹脂セグメントが10重量%未満であると、本発明の効果である耐衝撃性、耐熱性、外観不良改善効果が十分ではない傾向にあり、90重量%を超えると、成形加工性が悪化する傾向がある。
本発明において(C)グラフト共重合体中の(ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントの重量平均分子量は、好ましくは1万〜50万、より好ましくは3万〜40万、最も好ましくは、5万〜30万である。(ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントの重量平均分子量が1万未満であると、本発明の効果である耐衝撃性、耐熱性、外観不良改善効果が十分ではない傾向にあり、50万を超えると、成形加工性が悪化する傾向がある。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物における(C)(i)ポリカーボネート樹脂セグメントおよび(ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントとをグラフト化したグラフト共重合体の含有量は、(A)ポリ乳酸樹脂と(B)ポリカーボネート樹脂の合計100重量部に対し、0.1〜50重量部であり、好ましくは0.5〜40重量部、より好ましくは1〜30重量部である。(C)グラフト共重合体の含有量が0.1重量部未満であると、本発明の効果である耐衝撃性、耐熱性、外観不良改善効果がほとんどなく、また50重量部を超えると、不飽和エポキシ化合物によるゲル化が促進し、成形品の表面荒れなどの課題が生じる。
本発明における(C)(i)ポリカーボネート樹脂セグメントおよび(ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントとをグラフト化したグラフト共重合体は、公知の方法、すなわち連鎖移動法や電離性放射線照射法などの方法によって製造することが可能であるが、グラフト効率の向上や利便性等の観点から、下記の方法によって製造することが最も好ましい。すなわち、ポリカーボネート樹脂粒子を水に懸濁せしめ、その懸濁液に不飽和エポキシ化合物、不飽和エポキシ化合物と共重合可能なアクリル系単量体、ラジカル共重合性有機過酸化物およびラジカル重合開始剤を加える。その後、ラジカル重合開始剤の分解が起こらない条件下で加熱し、不飽和エポキシ化合物、アクリル系単量体、ラジカル共重合性有機過酸化物およびラジカル重合開始剤をポリカーボネート樹脂に含浸せしめる。その後、この懸濁液の温度を上昇させ、不飽和エポキシ化合物とアクリル系単量体およびラジカル共重合性有機過酸化物を、ポリカーボネート樹脂中で共重合させて、(C)’グラフト化前駆体を製造する。そこで得られた(C)’グラフト化前駆体を、押出機などの加熱溶融混練装置で溶融混練し、グラフト化反応せしめることにより、グラフト共重合体を製造する。
ここで、前記ラジカル共重合性有機過酸化物の好ましい具体例として、t−ブチルパーオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、t−ブチルパーオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−ブチルパーオキシメタリルカーボネートなどが挙げられ、これらは一種以上を併用して用いることができる。
また、前記ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、ベンゾイルパーオキシド、ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド等の重合開始剤が用いられ、これらは一種以上を併用して用いることができる。
なお、前記(C)グラフト共重合体中の(ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメント100重量%における不飽和エポキシ化合物の含有量とは、(C)’グラフト化前駆体中の(ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメント100重量%における不飽和エポキシ化合物の含有量のことを表し、前記(C)’グラフト化前駆体からエポキシ基含有アクリル系共重合体を溶媒で抽出することにより採取し、H−NMR測定や13C−NMR測定などにより、算出することができる。
また、前記(C)(i)ポリカーボネート樹脂セグメントおよび(ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントとをグラフト化したグラフト共重合体の各成分の比率((i)の重量%/(ii)の重量%)とは、前記(C)’グラフト化前駆体を製造する際の、各成分の仕込み量の比率のことを表す。
また、前記(C)グラフト共重合体中の(ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントの重量平均分子量とは、(C)’グラフト化前駆体中の(ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントの重量平均分子量のことを表し、前記(C)’グラフト化前駆体からエポキシ基含有アクリル系共重合体を溶媒で抽出することにより採取し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することにより得られる。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物に、好ましい態様として、(D)難燃剤を含有せしめることができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物に含有せしめることができる(D)難燃剤とは、樹脂に難燃性を付与する目的で添加される物質であれば特に限定されるものではなく、具体的には、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤、およびその他の無機系難燃剤などが挙げられ、これら少なくとも一種以上を選択して用いることができる。
本発明で好適に用いられる臭素系難燃剤の具体例としては、デカブロモジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモ無水フタル酸、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモベンゼン、1,1−スルホニル[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)]ベンゼン、ポリジブロモフェニレンオキサイド、テトラブロムビスフェノール−S、トリス(2,3−ジブロモプロピル−1)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、トリブロモフェニルアリルエーテル、トリブロモネオペンチルアルコール、ブロム化ポリスチレン、ブロム化ポリエチレン、テトラブロムビスフェノール−A、テトラブロムビスフェノール−A誘導体、テトラブロムビスフェノール−A−エポキシオリゴマーまたはポリマー、テトラブロムビスフェノール−A−カーボネートオリゴマーまたはポリマー、ブロム化フェノールノボラックエポキシなどのブロム化エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2−ヒドロキシジエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモシクロオクタン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ジブロモネオペンチルグリコール、ペンタブロモベンジルポリアクリレート、ジブロモクレジルグリシジルエーテル、N,N′−エチレン−ビス−テトラブロモフタルイミドなどが挙げられる。なかでも、テトラブロムビスフェノール−A−エポキシオリゴマー、テトラブロムビスフェノール−A−カーボネートオリゴマー、ブロム化エポキシ樹脂が好ましい。
本発明で好適に用いられるリン系難燃剤は特に限定されることはなく、通常一般に用いられるリン系難燃剤を用いることができ、代表的にはリン酸エステル、ポリリン酸塩などの有機リン系化合物や赤リンが挙げられる。
上記の有機リン系化合物におけるリン酸エステルの具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェートならびにこれらの縮合物などの縮合リン酸エステルを挙げることができる。市販の縮合リン酸エステルとしては、例えば大八化学社製PX−200、PX−201、PX−202、CR−733S、CR−741、CR747などを挙げることができる。特に、下記(1)式で示される縮合リン酸エステルが加水分解性の面から好ましく用いることができる。
Figure 2010195963
(上式において、Ar、Ar、Ar、Arは、同一または相異なる、ハロゲンを含有しない芳香族基を表す。また、Xは下記の(2)〜(4)式から選択される構造を示し、下記(2)〜(4)式中、R〜Rは同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、Yは直接結合、O、S、SO、C(CH、CH、CHPhを表し、Phはフェニル基を表す。また、(1)式のnは0以上の整数である。また、(1)式のk、mはそれぞれ0以上2以下の整数であり、かつ(k+m)は0以上2以下の整数である。)なお、かかる芳香族縮合リン酸エステルは、異なるnや、異なる構造を有する芳香族縮合リン酸エステルの混合物であってもよい。
Figure 2010195963
Figure 2010195963
Figure 2010195963
前記式(1)の式中nは0以上の整数であり、上限は難燃性の点から40以下が好ましい。好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜5である。
またk、mは、それぞれ0以上2以下の整数であり、かつk+mは、0以上2以下の整数であるが、好ましくはk、mはそれぞれ0以上1以下の整数、特に好ましくはk、mはそれぞれ1である。
また前記式(2)〜(4)の式中、R〜Rは同一または相異なる水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す。ここで炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基などが挙げられるが、水素、メチル基、エチル基が好ましく、とりわけ水素が好ましい。
またAr、Ar、Ar、Arは同一または相異なる、ハロゲンを含有しない芳香族基を表す。かかる芳香族基としては、ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、インデン骨格、アントラセン骨格を有する芳香族基が挙げられ、なかでもベンゼン骨格、あるいはナフタレン骨格を有するものが好ましい。これらはハロゲンを含有しない有機残基(好ましくは炭素数1〜8の有機残基)で置換されていてもよく、置換基の数にも特に制限はないが、1〜3個であることが好ましい。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、インデニル基、アントリル基などの芳香族基が挙げられるが、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基が好ましく、特にフェニル基、トリル基、キシリル基が好ましい。
なかでも下記化合物(5)、(6)が好ましく、特に化合物(5)が好ましい。
Figure 2010195963
Figure 2010195963
また、リン酸、ポリリン酸と周期律表IA族〜IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミンとの塩からなるリン酸塩、ポリリン酸塩を挙げることもできる。ポリリン酸塩の代表的な塩として、金属塩としてリチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、鉄(II)塩、鉄(III)塩、アルミニウム塩など、脂肪族アミン塩としてメチルアミン塩、エチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、エチレンジアミン塩、ピペラジン塩などがあり、芳香族アミン塩としてはピリジン塩、トリアジン塩、メラミン塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
また、上記の他、トリスクロロエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート)などの含ハロゲンリン酸エステル、また、リン原子と窒素原子が二重結合で結ばれた構造を有するホスファゼン化合物、リン酸エステルアミドを挙げることができる。
また、赤リンとしては、未処理の赤リンのみでなく、熱硬化性樹脂被膜、金属水酸化物被膜、金属メッキ被膜から成る群より選ばれる1種以上の化合物被膜により処理された赤リンを好ましく使用することができる。熱硬化性樹脂被膜の熱硬化性樹脂としては、赤リンを被膜できる樹脂であれば特に制限はなく、例えば、フェノール−ホルマリン系樹脂、尿素−ホルマリン系樹脂、メラミン−ホルマリン系樹脂、アルキッド系樹脂などが挙げられる。金属水酸化物被膜の金属水酸化物としては、赤リンを被膜できるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタンなどを挙げることができる。金属メッキ被膜の金属としては、赤リンを被膜できるものであれば特に制限はなく、Fe、Ni、Co、Cu、Zn、Mn、Ti、Zr、Alまたはこれらの合金などが挙げられる。さらに、これらの被膜は2種以上組み合わせて、あるいは2種以上に積層されていてもよい。
本発明で好適に用いられる窒素化合物系難燃剤としては、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミド、芳香族アミド、尿素、チオ尿素などを挙げることができる。なお、上記リン系難燃剤で例示したようなポリリン酸アンモニウムなど含窒素リン系難燃剤はここでいう窒素化合物系難燃剤には含まない。脂肪族アミンとしては、エチルアミン、ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロオクタンなどを挙げることができる。芳香族アミンとしては、アニリン、フェニレンジアミンなどを挙げることができる。含窒素複素環化合物としては、尿酸、アデニン、グアニン、2,6−ジアミノプリン、2,4,6−トリアミノピリジン、トリアジン化合物などを挙げることができる。シアン化合物としては、ジシアンジアミドなどを挙げることができる。脂肪族アミドとしては、N,N−ジメチルアセトアミドなどを挙げることができる。芳香族アミドとしては、N,N−ジフェニルアセトアミドなどを挙げることができる。
上記において例示したトリアジン化合物は、トリアジン骨格を有する含窒素複素環化合物であり、トリアジン、メラミン、ベンゾグアナミン、メチルグアナミン、シアヌル酸、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート、トリメチルトリアジン、トリフェニルトリアジン、アメリン、アメリド、チオシアヌル酸、ジアミノメルカプトトリアジン、ジアミノメチルトリアジン、ジアミノフェニルトリアジン、ジアミノイソプロポキシトリアジンなどを挙げることができる。
メラミンシアヌレートまたはメラミンイソシアヌレートとしては、シアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン化合物との付加物が好ましく、通常は1対1(モル比)、場合により1対2(モル比)の組成を有する付加物を挙げることができる。また、公知の方法で製造されるが、例えば、メラミンとシアヌール酸またはイソシアヌール酸の混合物を水スラリーとし、良く混合して両者の塩を微粒子状に形成させた後、このスラリーを濾過、乾燥後に一般には粉末状で得られる。また、上記の塩は完全に純粋である必要は無く、多少未反応のメラミンないしシアヌール酸、イソシアヌール酸が残存していても良い。また、樹脂に配合される前の平均粒径は、成形品の難燃性、機械的強度、表面性の点から100〜0.01μmが好ましく、更に好ましくは80〜1μmである。
窒素化合物系難燃剤の中では、含窒素複素環化合物が好ましく、中でもトリアジン化合物が好ましく、さらにメラミンシアヌレートが好ましい。
また、上記窒素化合物系難燃剤の分散性が悪い場合には、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの分散剤やポリビニルアルコール、金属酸化物などの公知の表面処理剤などを併用してもよい。
本発明で好適に用いられるシリコーン系難燃剤としては、シリコーン樹脂、シリコーンオイルを挙げることができる。前記シリコーン樹脂は、SiO、RSiO3/2、RSiO、RSiO1/2の構造単位を組み合わせてできる三次元網状構造を有する樹脂などを挙げることができる。ここで、Rはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、または、フェニル基、ベンジル基等の芳香族基、または上記置換基にビニル基を含有した置換基を示す。前記シリコーンオイルは、ポリジメチルシロキサン、およびポリジメチルシロキサンの側鎖あるいは末端の少なくとも1つのメチル基が、水素元素、アルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、アミノ基、エポキシ基、ポリエーテル基、カルボキシル基、メルカプト基、クロロアルキル基、アルキル高級アルコールエステル基、アルコール基、アラルキル基、ビニル基、またはトリフロロメチル基の選ばれる少なくとも1つの基により変性された変性ポリシロキサン、またはこれらの混合物を挙げることができる。さらには、(B)ポリカーボネート樹脂にシリコーン系樹脂やポリジメチルシロキサンなどのシリコーン化合物を共重合させた樹脂を用いても良い。
本発明で好適に用いられるその他の無機系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、メタスズ酸、酸化スズ、酸化スズ塩、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化第一錫、酸化第二スズ、ホウ酸亜鉛、ホウ酸カルシウム、ホウ酸アンモニウム、オクタモリブデン酸アンモニウム、タングステン酸の金属塩、タングステンとメタロイドとの複合酸化物酸、スルファミン酸アンモニウム、黒鉛、膨潤性黒鉛などを挙げることができる。中でも、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛、膨潤性黒鉛が好ましい。
前記(D)難燃剤は、1種で用いても、2種以上併用して用いてもかまわない。なお、水酸化アルミニウムを用いる場合は、(A)ポリ乳酸樹脂と(B)ポリカーボネート樹脂を予め混練し、混練温度210℃以下で溶融混合して用いることが好ましい。
前記(D)難燃剤の中では、ハロゲンを全く含有しないリン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤およびその他の無機系難燃剤から選択される少なくとも1種または2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。上記において難燃剤を2種以上併用する場合、リン系難燃剤と他の難燃剤を併用することが好ましい。リン系難燃剤と併用する窒素化合物系難燃剤としては、含窒素複素環化合物が好ましく、中でもトリアジン化合物が好ましく、さらにメラミンシアヌレートが好ましい。また、リン系難燃剤と併用するシリコーン系難燃剤としては、シリコーン樹脂やポリジメチルシロキサンなどのシリコーン化合物を共重合した(B)ポリカーボネート樹脂が好ましい。また、リン系難燃剤と併用するその他の無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛および膨潤性黒鉛が好ましい。また、リン系難燃剤との配合比率は任意の量を組み合わせることができ、とくに難燃剤100重量%中のリン系難燃剤の量は5重量%以上であることが好ましく、5〜95重量%であることがより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に(D)難燃剤を含有せしめる場合、(D)難燃剤の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂の合計量100重量部に対して、好ましくは1〜50重量部であり、さらに好ましくは3〜40重量部であり、最も好ましくは5〜30重量部である。1重量部未満では難燃性を与える効果が小さく、50重量部を越えると耐衝撃性や耐熱性などの特性が低下する傾向にあるため好ましくない。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物に、好ましい態様として、(E)無機充填剤を含有せしめることもできる。(E)無機充填剤としては、例えば板状、粒状あるいは粉末状のものが挙げられ、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂および(C)グラフト共重合体中で均一に分散可能な無機充填剤が好ましく、珪酸鉱物、珪酸塩鉱物や種々の鉱物類を粉砕などの加工により微粉化したものが好ましく用いられる。具体例としては、ベントナイト、ドロマイト、バーライト、微粉ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、ドーソナイト、シラスバルーン、クレー、セリサイト、長石粉、カオリナイト、ゼオライト(合成ゼオライトも含む)、タルク、マイカ(合成マイカも含む)、ガラスフレーク、ガラスビーズ、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、チタン酸カリウム、石膏、ノバキュライト、白土、ハイドロタルサイトおよびシリカなどが挙げられ、タルクやシリカは得られる成形品の白色性が高く好ましく用いられる。
前記の(E)無機充填剤は、特に平均粒径は10μm以下であることが機械的性質の低下が少なく、より好ましくは5μm以下であることが好ましい。下限としては、製造時のハンドリング性の点から0.5μm以上の平均粒径であることが好ましく、1μm以上の平均粒径であることがより好ましい。また、平均粒径の測定はレーザー回折散乱式の方法で測定される累積分布50%平均粒子径とする。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物に、(E)無機充填剤を含有せしめる場合、(E)無機充填剤の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂の合計量100重量部に対し、0.5重量部〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.7重量部〜40重量部、最も好ましくは1重量部〜30重量部であり、0.5重量部未満では外観不良改善効果が小さくなる傾向が有り、50重量部を越えると耐衝撃性などの機械的性質が低下する傾向にあるため好ましくない。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物に、好ましい態様として、(F)フッ素系樹脂を含有せしめることができる。ここでいう(F)フッ素系樹脂とは、物質分子中にフッ素を含有する樹脂であり、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ビニリデンフルオライド/エチレン共重合体などが挙げられるが、中でもポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライドが好ましく、特にポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体が好ましく、さらにはポリテトラフルオロエチレンが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体も好ましく用いられる。ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂の分子量は10万〜1000万の範囲のものが好ましく、とくに10万〜100万の範囲のものがより好ましく、本発明の熱可塑性樹脂組成物の押出成形性と難燃性向上にとくに効果がある。ポリテトラフルオロエチレンの市販品としては、三井・デュポンフロロケミカル(株)製の“テフロン(登録商標)”6−J、“テフロン(登録商標)”6C−J、“テフロン(登録商標)”62−J、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製の“フルオン”CD1やCD076などが市販されている。また、ポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体の市販品としては、三菱レイヨン(株)から、“メタブレン(登録商標)”Aシリーズとして市販され、“メタブレン(登録商標)”A−3000、“メタブレン(登録商標)”A−3800などが市販されている。また、ポリテトラフルオロエチレンの“テフロン(登録商標)”6−Jなどは凝集し易いため、他の樹脂組成物と共にヘンシェルミキサーなどで機械的に強く混合すると凝集により塊が生じる場合があり、混合条件によってはハンドリング性や分散性に課題がある。一方、ポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体は前記のハンドリング性や分散性に優れ、とくに好ましく用いられる。前記のポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体とは、限定されるものではないが、特開2000−226523号公報で開示されているポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体などが挙げられ、前記の有機系重合体としては芳香族ビニル系単量体、アクリル酸エステル系単量体、およびシアン化ビニル系単量体を10重量%以上含有する有機系重合体などであり、それらの混合物でもよく、ポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体中のポリテトラフルオロエチレンの含有量は0.1重量%〜90重量%であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に、(F)フッ素系樹脂を含有せしめる場合、(F)フッ素系樹脂の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂の合計量100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部であり、より好ましくは0.02〜4重量部が好ましく、さらに好ましくは0.03〜3重量部である。(F)フッ素系樹脂の配合量が0.01重量部未満である場合、難燃性向上等に効果が見られない傾向があり、5重量部を越えると本発明の熱可塑性樹脂組成物の流動性や難燃性が逆に低下する傾向がある。
また、本発明において、好ましい態様として、コアシェル型ゴムを含有せしめることができる。前記コアシェル型ゴムとは、コア層(最内層)とそれを覆う1以上の層(シェル層)から構成され、また、隣接し合った層が異種の重合体から構成される構造を有する重合体である。前記コアシェル型ゴムを構成する層の数は、特に限定されるものではなく、2層以上であればよく、3層以上または4層以上であってもよい。前記コアシェル型ゴムとしては、内部に少なくとも1層以上のゴム層を有することが好ましい。
前記コアシェル型ゴムにおいて、ゴム層の種類は、特に限定されるものではなく、ゴム弾性を有する重合体成分から構成されるものであればよい。例えば、アクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分、ウレタン成分またはエチレンプロピレン成分などを重合させたものから構成されるゴムが挙げられる。好ましいゴムとしては、例えば、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分、スチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン成分、アクリロニトリル単位やメタクリロニトリル単位などのニトリル成分またはブタンジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン成分を重合させたものから構成されるゴムである。また、これらの成分を2種以上組み合わせて共重合させたものから構成されるゴムも好ましく、例えば、(1)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分およびジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分を共重合した成分から構成されるゴム、(2)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分およびスチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン成分を共重合した成分から構成されるゴム、(3)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分およびブタンジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン成分を共重合した成分から構成されるゴム、(4)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分およびジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分およびスチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン成分を共重合した成分から構成されるゴムなどが挙げられる。また、これらの成分の他に、ジビニルベンゼン単位、アリルアクリレート単位またはブチレングリコールジアクリレート単位などの架橋性成分を共重合し架橋させたゴムも好ましい。
前記コアシェル型ゴムにおいて、ゴム層以外の層の種類は、熱可塑性を有する重合体成分から構成されるものであれば特に限定されるものではないが、ゴム層よりもガラス転移温度が高い重合体成分が好ましい。熱可塑性を有する重合体としては、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、グリシジル基含有ビニル系単位、不飽和ジカルボン酸無水物系単位、脂肪族ビニル系単位、芳香族ビニル系単位、シアン化ビニル系単位、マレイミド系単位、不飽和ジカルボン酸系単位またはその他のビニル系単位などから選ばれる少なくとも1種以上の単位を含有する重合体が挙げられ、中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、不飽和グリシジル基含有単位または不飽和ジカルボン酸無水物系単位から選ばれる少なくとも1種以上の単位を含有する重合体が好ましく、さらに不飽和グリシジル基含有単位または不飽和ジカルボン酸無水物系単位から選ばれる少なくとも1種以上の単位を含有する重合体がより好ましい。
不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位としては、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく使用される。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチルまたはメタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、(メタ)アクリル酸メチルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
グリシジル基含有ビニル系単位としては、特に限定されるものではなく、(メタ)アクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテルまたは4−グリシジルスチレンなどが挙げられ、耐衝撃性や外観不良改善効果を向上する効果が大きいという観点から、(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
不飽和ジカルボン酸無水物系単位としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸または無水アコニット酸などが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、無水マレイン酸が好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
また、脂肪族ビニル系単位としては、エチレン、プロピレンまたはブタジエンなど、芳香族ビニル系単位としては、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンまたはハロゲン化スチレンなど、シアン化ビニル系単位としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルまたはエタクリロニトリルなど、マレイミド系単位としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミドまたはN−(クロロフェニル)マレイミドなど、不飽和ジカルボン酸系単位として、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、フタル酸など、その他のビニル系単位としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンまたは2−スチリル−オキサゾリンなどを挙げることができ、これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
前記コアシェル型ゴムにおいて、最外層の種類は、特に限定されるものではなく、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、グリシジル基含有ビニル系単位、脂肪族ビニル系単位、芳香族ビニル系単位、シアン化ビニル系単位、マレイミド系単位、不飽和ジカルボン酸系単位、不飽和ジカルボン酸無水物系単位および/またはその他のビニル系単位などを含有する重合体が挙げられ、中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、不飽和グリシジル基含有単位および/または不飽和ジカルボン酸無水物系単位を含有する重合体が好ましく、最も好ましくは、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位および不飽和グリシジル基含有単位を含有する重合体である。不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位としては、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、さらに、(メタ)アクリル酸メチルがより好ましく使用される。不飽和グリシジル基含有単位としては、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸グリシジルが最も好ましい。
前記コアシェル型ゴムの好ましい具体例としては、コア層がアクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体、コア層がジメチルシロキサン/アクリル酸ブチル共重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体、コア層がブタンジエン/スチレン共重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体、コア層がアクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、コア層がジメチルシロキサン/アクリル酸ブチル共重合体で最外層がメタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、コア層がブタンジエン/スチレン共重合体で最外層がメタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で最外層がメタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体などが挙げられ、これらの中でも、最外層にメタクリル酸グリシジル単位を含有する共重合体であることが、外観不良改善効果が顕著である点から、最も好ましい。
前記コアシェル型ゴムの粒子径は、特に限定されるものではないが、一次粒子径として、0.01〜100μmであることが好ましく、0.05〜10μmであることがさらに好ましく、0.1〜1μm以下であることが最も好ましい。
前記コアシェル型ゴムにおいて、コアとシェルの重量比は、特に限定されるものではないが、コアシェル型ゴム全体に対して、コア層が50〜95重量部であることが好ましく、55〜93重量部であることがより好ましく、60〜90重量部であることが最も好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に、前記コアシェル型ゴムを含有せしめる場合、コアシェル型ゴムの配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂の合計量100重量部に対して、0.1〜50重量部であり、好ましくは0.5〜40重量部が好ましく、より好ましくは1〜30重量部が好ましい。前記コアシェル型ゴムの配合量が0.1重量部未満である場合、耐衝撃性や外観不良改善効果が顕著に発現しない傾向があり、50重量部を越えると耐熱性が低下する傾向がある。
前記コアシェル型ゴムとしては、上述した条件を満たすものとして、市販品を用いてもよく、また、公知の方法により作製することもできる。
市販品としては、例えば、三菱レイヨン製”メタブレン”、鐘淵化学工業製”カネエース”、ロームアンドハース製”パラロイド”、武田薬品工業製”スタフィロイド”またはクラレ製”パラペットSA”などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。中でも、最外層にメタクリル酸グリシジル単位を含有する三菱レイヨン製”メタブレンS2200”やロームアンドハース製”パラロイドEXL2314”などが好適に使用できる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、さらに(C)(i)ポリカーボネート樹脂セグメントおよび(ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントとをグラフト化したグラフト共重合体以外のエポキシ化合物を配合することができる。エポキシ化合物としては、単官能のエポキシ化合物であっても2官能以上のエポキシ化合物であってもよく、特に制限はないが、グリシジル基を有するエポキシ化合物であることが好ましく、例えばグリシジルエステル化合物、グリシジルエーテル化合物、およびグリシジルエステルエーテル化合物が挙げられる。これらのエポキシ化合物は1種以上で用いることができる。前記のグリシジルエステル化合物としては、限定されるものではないが、具体例として、安息香酸グリシジルエステル、t−Bu−安息香酸グリシジルエステル、P−トルイル酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ペラルゴン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、ベヘン酸グリシジルエステル、バーサティク酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレイン酸グリシジルエステル、ベヘノール酸グリシジルエステル、ステアロール酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、ビ安息香酸ジグリシジルエステル、メチルテレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、オクタデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
また、前記のグリシジルエーテル化合物としては、限定されるものではないが、具体例として、フェニルグリシジルエーテル、P−フェニルフェニルグリシジルエーテル、1,4−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ブタン、1,6−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ヘキサン、1,4−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ベンゼン、1−(β,γ−エポキシプロポキシ)−2−エトキシエタン、1−(β,γ−エポキシプロポキシ)−2−ベンジルオキシエタン、2,2−ビス−[р−(β,γ−エポキシプロポキシ)フェニル]プロパンおよびビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタンなどのその他のビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応で得られるジグリシジルエーテルなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
また、その他グリシジル基を有するエポキシ化合物としては、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
前記エポキシ化合物のエポキシ当量は、500未満のエポキシ化合物が好ましく、さらにはエポキシ当量400未満のエポキシ化合物が特に好ましい。ここで、エポキシ当量とは、1当量のエポキシ基を含むエポキシ化合物のグラム数であり、エポキシ化合物をピリジンに溶解し、0.05N塩酸を加え45℃で加熱後、指示薬にチモールブルーとクレゾールレツドの混合液を用い、0.05N苛性ソーダで逆滴定する方法により求めることができる。
前記エポキシ化合物は粘度安定性と機械特性を阻害せずに(A)ポリ乳酸樹脂の耐加水分解性を向上させることに大きな効果があり、エポキシ化合物の配合量は粘度安定性と耐加水分解性の面から、(A)ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.05〜9重量部、最も好ましくは0.1〜8重量部である。
前記エポキシ化合物の添加方法としては、本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する際に、(A)ポリ乳酸樹脂や(B)ポリカーボネート樹脂などとともに押出機などの加熱溶融混練装置に添加する方法や、予め(A)ポリ乳酸樹脂と前記エポキシ化合物を押出機などの加熱溶融混練装置で加熱溶融混練しておき、その後、それと(B)ポリカーボネート樹脂とを加熱溶融混練する方法などが挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、さらにアルカリ土類金属化合物を含有せしめることができ、アルカリ土類金属化合物としては、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、およびバリウム化合物などのアルカリ土類金属化合物が好ましく挙げられる。また、前記アルカリ土類金属化合物としては、アルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、乳酸塩、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびモンタン酸などの有機酸塩が挙げられる。また、前記アルカリ土類金属化合物の具体例としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、乳酸マグネシウム、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、さらにはオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびモンタン酸などの有機酸のマグネシウム塩、カルシウム塩、およびバリウム塩などが挙げられる。この中で、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩が好ましく用いられ、特に、水酸化マグネシウムおよび炭酸カルシウムが好ましく用いられ、より好ましくは炭酸カルシウムが用いられる。かかるアルカリ土類金属は1種または2種以上で用いることができる。また、上記の炭酸カルシウムは製造方法により、コロライド炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、湿式粉砕微粉重質炭酸カルシウム、湿式重質炭酸カルシウム(白亜)などが知られており、いずれも炭酸カルシウムに包含される。これらのアルカリ土類金属化合物は、シランカップリング剤、有機物および無機物などの一種以上の表面処理剤で処理されていても良く、形状は粉末状、板状あるいは繊維状であっても構わないが、平均粒径10μm以下の粉末状で用いることが分散性などから好ましい。さらに粒径が細かいと耐加水分解性の向上効果が大きく好ましい。
前記アルカリ土類金属化合物を配合する効果としては、難燃剤、とくにリン系難燃剤は加水分解され易いため、ポリ乳酸樹脂の耐加水分解性に悪影響を与えるが、エポキシ化合物に加えてアルカリ土類金属化合物を併用して添加することにより、前記の加水分解されたリン系難燃剤から生じるリン酸をアルカリ土類金属化合物で中和することによって、より一層耐加水分解性を向上しているものと推定される。また、アルカリ土類金属化合物の代わりに、アルカリ金属化合物を用いる場合、アルカリ金属化合物は、アルカリ性を有する場合が多く通常はポリ乳酸樹脂の加水分解を促進するため好ましくない。前記アルカリ土類金属化合物は、中性状態では水に難溶性であり、リン酸エステルが分解して系が酸性になった場合に酸性環境下で溶解し中和作用を示すものが好ましく用いられる。中性状態の溶解度は、例えば化学便覧、丸善株式会社発行(昭和41年)等の便覧に記載されており、水への溶解度が1g/100g水以下が好ましく、さらに好ましくは10−1g/100g水以下である。ちなみに最も好ましく用いられる炭酸カルシウムの水に対する溶解度は5.2×10−3g/100g水である。
また、アルカリ土類金属化合物の配合量は、機械特性と耐加水分解性の面から、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂の合計量100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜9重量部、より好ましくは0.1〜8重量部である。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、さらに(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂、および(C)グラフト共重合体に含まれる樹脂以外の熱可塑性樹脂を含有せしめることができる。前記熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、スチレン系樹脂、スチレン系樹脂エラストマー、アイオノマー樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニルスルフィド樹脂、フェノール樹脂などが挙げられ、ポリエステル樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン系樹脂が、特に好ましく用いられる。
前記熱可塑性樹脂の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂および(B)ポリカーボネート樹脂の合計量100重量部に対して、好ましくは0.5〜200重量部であり、1〜150重量部であることがさらに好ましく、一種以上を併用して用いることができる。
前記熱可塑性樹脂の中で好ましく用いられるポリエステル樹脂とは、(イ)ジカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体とジオールあるいはそのエステル形成性誘導体、(ロ)ヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体、(ハ)ラクトンから選択された一種以上を重縮合してなる重合体または共重合体であり、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性ポリエステル樹脂である。
前記ジカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸単位およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
また、前記ジオールあるいはそのエステル形成性誘導体としては、炭素数2〜20の脂肪族グリコールすなわち、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ダイマージオールなど、あるいは分子量200〜100000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど、芳香族ジオキシ化合物すなわち、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなど、及びこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
また、前記ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。前記ラクトンとしてはカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどを挙げることができる。これらの重合体ないしは共重合体の具体例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリプロピレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ビスフェノールA(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレンナフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/ナフタレ−ト)、ポリプロピレンナフタレート、ポリプロピレン(テレフタレート/ナフタレート)、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリ(シクロヘキサンジメチレン/エチレン)テレフタレート、ポリ(シクロヘキサンジメチレン/エチレン)(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)/ビスフェノールA、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)/ビスフェノールAなどの芳香族ポリエステルや、ポリブチレン(テレフタレート/サクシネート)、ポリプロピレン(テレフタレート/サクシネート)、ポリエチレン(テレフタレート/サクシネート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリプロピレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/スルホイソフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/スルホイソフタレート/サクシネート)、ポリプロピレン(テレフタレート/スルホイソフタレート/サクシネート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバテート)、ポリプロピレン(テレフタレート/セバテート)、ポリエチレン(テレフタレート/セバテート)、ポリブチレンテレフタレート・ポリエチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート・ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート・ポリエチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリプロピレンテレフタレート・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリプロピレン(テレフタレート/イソフタレート)・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリブチレンテレフタレート・ポリ(プロピレンオキシド/エチレンオキシド)グリコール、ポリプロピレンテレフタレート・ポリ(プロピレンオキシド/エチレンオキシド)グリコール、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)・ポリ(プロピレンオキシド/エチレンオキシド)グリコール、ポリプロピレン(テレフタレート/イソフタレート)・ポリ(プロピレンオキシド/エチレンオキシド)グリコール、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリプロピレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレンテレフタレート・ポリ−ε−カプロラクトンなどポリエーテルあるいは脂肪族ポリエステルを芳香族ポリエステルに共重合した共重合体やポリエチレンオキサレート、ポリプロピレンオキサレート、ポリブチレンオキサレート、ポリネオペンチルグリコールオキサレート、ポリエチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレン(サクシネート/アジペート)、ポリプロピレン(サクシネート/アジペート)、ポリエチレン(サクシネート/アジペート)、ポリヒドロキシ酪酸及びβ−ヒドロキシ酪酸とβ−ヒドロキシ吉草酸とのコポリマーなどのポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸などの脂肪族ポリエステル、ポリブチレンサクシネート・カーボネートなどの脂肪族ポリエステルカーボネート、p−オキシ安息香酸/ポリエチレンテレフタレート、p−オキシ安息香酸/6−オキシ−2−ナフトエ酸などの共重合ポリエステルなどの液晶性ポリエステルが挙げられる。
これらの中で、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主成分として重縮合してなる重合体が好ましく、具体的には、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(シクロヘキサンジメチレン/エチレン)テレフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリプロピレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレンテレフタレート・ポリエチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート・ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート・ポリエチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリプロピレンテレフタレート・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリエチレンテレフタレート・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリプロピレン(テレフタレート/イソフタレート)・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリプロピレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/サクシネート)、ポリプロピレン(テレフタレート/サクシネート)、ポリエチレン(テレフタレート/サクシネート)を好ましく挙げることができる。前記芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主成分として重縮合してなる重合体中の全ジカルボン酸に対する芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体の割合が30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがさらに好ましい。
また、これらの中では、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールから選ばれる脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主成分として重縮合してなる重合体がさらに好ましく、具体的には、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリプロピレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレンテレフタレート・ポリエチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート・ポリエチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート・ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリプロピレンテレフタレート・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリブチレンテレフタレート・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリプロピレン(テレフタレート/イソフタレート)・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリエチレン(テレフタレート/サクシネート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリプロピレン(テレフタレート/サクシネート)、ポリプロピレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/サクシネート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)を好ましく挙げることができる。前記テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とブタンジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主成分として重縮合してなる重合体中の全ジカルボン酸に対するテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体の割合が30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがさらに好ましい。
前記ポリエステル樹脂の好ましい例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/サクシネート)、ポリブチレン(テレフタレート/サクシネート)、ポリエステルエラストマー、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリブチレンサクシネートを挙げることができ、特に好ましい例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート・ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリエチレン(テレフタレート/サクシネート)、ポリブチレンサクシネートから選択される少なくとも1種を挙げることができ、単独で使用しても良いし、2種以上混合して用いても良く、ポリエステル樹脂を配合することにより、難燃性、成形性、耐熱性、機械特性のいずれかが改善された樹脂組成物ならびに成形品を得ることができる。
前記熱可塑性樹脂の中で好ましく用いられるセルロースエステル樹脂とは、セルロースの水酸基がエステル化剤によって封鎖されているものを言う。具体的なエステル化剤としは、塩化アセチル、塩化プロピオニルなどの酸塩基物、無水酢酸、無水ピロピオン酸、無水酪酸などの酸無水物、アミド化合物、エステル化合物などのカルボン酸化合物誘導体、およびε−カプロラクトンなどの環状エステルなどが挙げられる。
前記セルロースエステル樹脂の好ましい例としては、セルロースアセテート、セルロースジアセテートセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレートなどが挙げられ、(A)ポリ乳酸樹脂との相溶性または混和性の観点から、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレートが好ましく、さらにはセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートがより好ましい。また、セルロースにおける水酸基の置換度(セルロースエステルに置換された水酸基の平均個数)は、グルコース単位あたり0.5〜2.9であることが好ましい。また、(A)ポリ乳酸樹脂とのより良好な相溶性または混和性の観点から、置換度は1.5〜2.9であることが好ましく、また2.0〜2.8であることがより好ましい。また、上記の置換度は、アルカリ加水分解により生成したエステル化剤を高速液体クロマトグラフィーに供し定量することによって求めることができる。
前記熱可塑性樹脂の中で好ましく用いられるポリアミド樹脂とは、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を出発原料としたアミド結合を有する熱可塑性重合体である。
アミノ酸としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などが挙げられ、ラクタムとしてはε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどが挙げられる。
ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,4−ジメチルオクタメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどが挙げられる。
ジカルボン酸としてはアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ジグリコール酸などが挙げられる。
前記ポリアミド樹脂の好ましい例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6/10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6/12)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン11/6)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリヘキサメチレンテレフタル/イソフタルアミド(ナイロン6T/6I)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ナイロン11T(H))及びこれらのポリアルキレングリコールなどとの共重合体などの共重合ポリアミド、混合ポリアミド、ポリアミドエラストマーなどである。これらの中で、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/10、ナイロン6/12、ナイロン11/6及びこれらとポリエチレングリコールなどとの共重合などの共重合ポリアミド、混合ポリアミド、ポリアミドエラストマーが好ましく、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/ポリエチレングリコール、ポリアミドエラストマーがさらに好ましく、ナイロン6、ナイロン6/ポリエチレングリコールが特に好ましい。
また、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂の熱安定性の問題から、使用するポリアミド樹脂の融点は90℃以上280℃以下であることが好ましく、100℃以上270℃以下であることがさらに好ましい。
前記ポリアミド樹脂は単独で使用しても良いし、2種以上混合して用いても良く、ポリアミド樹脂を配合することで、本発明の樹脂組成物の成形性、機械特性、耐熱性を改質した樹脂組成物ならびに成形品を得ることができる。
前記熱可塑性樹脂の中で好ましく用いられるスチレン系樹脂とは、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、マレイミド、Nーメチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系単量体、ジエン化合物、マレイン酸ジアルキルエステル、アリルアルキルエーテル、不飽和アミノ化合物、ビニルアルキルエーテルなどをさらに共重合してもよく、限定されるものではないが、スチレンを含有するスチレン系樹脂の具体例としては、ポリスチレン樹脂、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(ハイインパクトポリスチレン樹脂)、アクリロニトリル/スチレン共重合体(以下AS樹脂と略す)、ABS樹脂、アクリレート/スチレン/アクリロニトリル共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル/エチレン/スチレン(AES樹脂)などが挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、さらに繊維状強化材を含有せしめることができ、耐熱性とくに熱変形温度の向上を図ることができる。
前記繊維状強化材としては、通常熱可塑性樹脂の強化に用いられるものを用いることができる。具体的には、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ウォラストナイト、セピオライト、アスベスト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維および硼素繊維などの無機繊維状強化材、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、再生セルロース繊維、アセテート繊維、ケナフ、ラミー、木綿、ジュート、麻、サイザル、亜麻、リネン、絹、マニラ麻、さとうきび、木材パルプ、紙屑、古紙およびウールなどの有機繊維状強化材が挙げられ、これらの繊維強化材の中では、無機繊維状強化材が好ましく、特にガラス繊維やホウ酸アルミニウムウイスカー、ウォラストナイトが好ましい。また、有機繊維状強化材の使用も好ましく、(A)ポリ乳酸樹脂の生分解性を活かすという観点からは天然繊維や再生繊維がさらに好ましく、特にケナフが好ましい。また、配合に供する繊維状強化材のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は5以上であることが好ましく、10以上であることがさらに好ましく、20以上であることが熱変形温度を向上させる観点からは最も好ましい。
前記繊維状強化材は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆または集束処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシランなどのカップリング剤などで処理されていても良い。
前記繊維状強化材の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂の合計量100重量部に対して、0.1〜200重量部が好ましく、0.5〜100重量部がさらに好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、さらに可塑剤を配合することができ、可塑剤としては、一般にポリマーの可塑剤として用いられる公知のものを特に制限なく用いることができ、例えばポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤およびエポキシ系可塑剤などを挙げることができる。
ポリエステル系可塑剤の具体例としては、アジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ロジンなどの酸成分と、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのジオール成分からなるポリエステルや、ポリカプロラクトンなどのヒドロキシカルボン酸からなるポリエステルなどを挙げることができる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸もしくは単官能アルコールで末端封鎖されていてもよく、またエポキシ化合物などで末端封鎖されていてもよい。
グリセリン系可塑剤の具体例としては、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレートおよびグリセリンモノアセトモノモンタネートなどを挙げることができる。
多価カルボン酸系可塑剤の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシルなどのトリメリット酸エステル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸n−オクチル−n−デシル、アジピン酸メチルジグリコールブチルジグリコール、アジピン酸ベンジルメチルジグリコール、アジピン酸ベンジルブチルジグリコールなどのアジピン酸エステル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸エステル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、およびセバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのセバシン酸エステルなどを挙げることができる。
ポリアルキレングリコール系可塑剤の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロックおよび/又はランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体などのポリアルキレングリコールあるいはその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物、および末端エーテル変性化合物などの末端封鎖化合物などを挙げることができる。
エポキシ系可塑剤とは、一般にはエポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリドなどを指すが、その他にも、主にビスフェノールAとエピクロロヒドリンを原料とするような、いわゆるエポキシ樹脂も使用することができる。
その他の可塑剤の具体例としては、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレートなどの脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチルなどのオキシ酸エステル、ペンタエリスリトール、ポリアクリル酸エステルおよびパラフィン類などを挙げることができる。前記可塑剤としては、上記に例示したものの中でも、特にポリエステル系可塑剤およびポリアルキレングリコール系可塑剤から選択した少なくとも1種が好ましく、2種以上の併用を行ってもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に、前記可塑剤を含有せしめる場合、前記可塑剤の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂の合計量100重量部に対して、0.01〜30重量部の範囲が好ましく、0.1〜20重量部の範囲がさらに好ましく、0.5〜10重量部の範囲が特に好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に、前記可塑剤を含有せしめることで、成形性、耐熱性が向上するので好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、さらに結晶核剤を配合することができ、結晶核剤としては、公知の窒化物などの無機系核剤、有機カルボン酸金属塩などの有機系核剤、ソルビトール類、および(A)ポリ乳酸樹脂より融点の高い高分子核剤などが挙げられ、1種のみでもよくまた2種以上の併用を行ってもよい。
また、結晶核剤の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂の合計量100重量部に対して、0.01〜30重量部が好ましく、0.05〜20重量部がさらに好ましく、0.1〜10重量部が特に好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に、前記結晶核剤を配合することで、成形性、耐熱性が向上するので好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、前記可塑剤と前記結晶核剤とを各々単独で用いてもよいが、両者を併用して用いることが成形性の点において好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、さらに層状珪酸塩を含有せしめることができ、成形性の向上が可能である。また、前記層状珪酸塩は層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩を配合することがさらに好ましい。層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩とは、交換性の陽イオンを層間に有する層状珪酸塩の交換性の陽イオンを、有機オニウムイオンで置き換えた包接化合物である。
交換性の陽イオンを層間に有する層状珪酸塩は、幅0.05〜0.5μm、厚さ6〜15オングストロームの板状物が積層した構造を持ち、その板状物の層間に交換性の陽イオンを有している。そのカチオン交換容量は0.2〜3meq/gのものが挙げられ、好ましくはカチオン交換容量が0.8〜1.5meq/gのものである。
また、前記層状珪酸塩の具体例としてはモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性雲母等が挙げられ、天然のものであっても合成されたものであっても良い。これらのなかでもモンモリロナイト、ヘクトライトなどのスメクタイト系粘土鉱物やNa型四珪素フッ素雲母、Li型フッ素テニオライトなどの膨潤性合成雲母が好ましい。
また、前記有機オニウムイオンとしてはアンモニウムイオンやホスホニウムイオン、スルホニウムイオンなどが挙げられる。これらのなかではアンモニウムイオンとホスホニウムイオンが好ましく、特にアンモニウムイオンが好んで用いられる。アンモニウムイオンとしては、1級アンモニウム、2級アンモニウム、3級アンモニウム、4級アンモニウムのいずれでも良く、1級アンモニウムイオンとしてはデシルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム、オレイルアンモニウム、ベンジルアンモニウムなどが挙げられ、2級アンモニウムイオンとしてはメチルドデシルアンモニウム、メチルオクタデシルアンモニウムなどが挙げられ、3級アンモニウムイオンとしてはジメチルドデシルアンモニウム、ジメチルオクタデシルアンモニウムなどが挙げられ、4級アンモニウムイオンとしてはベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム、ベンザルコニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウムイオン、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウムなどのアルキルトリメチルアンモニウムイオン、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウムなどのジメチルジアルキルアンモニウムイオン、トリオクチルメチルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウムなどのトリアルキルメチルアンモニウムイオン、ベンゼン環を2個有するベンゼトニウムイオンなどが挙げられる。また、これらの他にもアニリン、p−フェニレンジアミン、α−ナフチルアミン、p−アミノジメチルアニリン、ベンジジン、ピリジン、ピペリジン、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、末端にアミノ基を有するポリアルキレングリコールなどから誘導されるアンモニウムイオンなども挙げられる。これらのアンモニウムイオンの中でも、好ましい化合物としては、トリオクチルメチルアンモニウム、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム、ベンザルコニウムなどが挙げられる。これらのアンモニウムイオンは、一般的には、混合物として入手可能であり、前記の化合物名称は少量の類縁体を含む代表化合物の名称である。これらは、1種類で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。
また、反応性の官能基を持つものや親和性の高いものが好ましく、12−アミノドデカン酸、末端にアミノ基を有するポリアルキレングリコールなどから誘導されるアンモニウムイオンなども好ましい。
前記層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩は交換性の陽イオンを層間に有する層状珪酸塩と有機オニウムイオンを公知の方法で反応させることにより製造することができる。具体的には、水、メタノール、エタノールなどの極性溶媒中でのイオン交換反応による方法か、層状珪酸塩に液状あるいは溶融させたアンモニウム塩を直接反応させることによる方法などが挙げられる。
前記層状珪酸塩に対する有機オニウムイオンの量は、層状珪酸塩の分散性、溶融時の熱安定性、成形時のガス、臭気の発生抑制などの点から、層状珪酸塩の陽イオン交換容量に対し通常、0.4〜2.0当量の範囲であるが、0.8〜1.2当量であることが好ましい。
また、前記層状珪酸塩は上記の有機オニウム塩に加え、反応性官能基を有するカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得るために好ましい。かかる反応性官能基を有するカップリング剤としては、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などが挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に、前記層状珪酸塩を含有せしめる場合、その配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂の合計量100重量部に対して、0.1〜40重量部が好ましく、0.5〜30重量部がさらに好ましく、1〜20重量部が特に好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、さらに、カーボンブラック、酸化チタン、弁柄、群青、焼成イエローおよびさらに種々の色の顔料や染料を1種以上含有せしめることにより種々の色に樹脂を調色せしめ、耐候(光)性、および導電性を改良することも可能である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に、前記顔料や染料を配合せしめる場合、その配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂の合計量100重量部に対し、0.01〜10重量部、好ましくは0.02〜9重量部、より好ましくは0.03〜8重量部である。
また、前記カーボンブラックとしては、限定されるものではないが、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、アントラセンブラック、油煙、松煙、および、黒鉛などが挙げられ、平均粒径500nm以下、ジブチルフタレート吸油量50〜400cm3/100gのカーボンブラックが好ましく用いられ、処理剤として酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ポリオール、シランカップリング剤などで処理されていても良い。
また、前記酸化チタンとしては、ルチル形、あるいはアナターゼ形などの結晶形を持ち、平均粒子径5μm以下の酸化チタンが好ましく用いられ、処理剤として酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ポリオール、シランカップリング剤などで処理されていても良い。また、前記カーボンブラック、酸化チタン、および種々の色の顔料や染料は、本発明の熱可塑性樹脂組成物との分散性向上や製造時のハンドリング性の向上のため、種々の熱可塑性樹脂と溶融ブレンドあるいは単にブレンドした混合材料として用いても良い。とくに、前記熱可塑性樹脂としては、ポリ乳酸樹脂などのポリエステル樹脂が好ましく、ポリ乳酸樹脂がとくに好ましく用いられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様として、UL規格の難燃性が、厚み2.0mmの成形品でV−2、V−1およびV−0のいずれかの難燃性能、あるいはUL規格5Vの難燃性能を有するものである。ここでUL規格とは、アメリカUL規格サブジェクト94(UL−94規格)での難燃性が、厚み2.0mmの成形品でV−2、V−1、V−0の性能を持つ難燃性樹脂組成物、さらには前記のV−2、V−1、V−0の性能を持ちながら5Vの性能を併せ持つ難燃性樹脂組成物である。とくに、好ましい態様においてはV−1、V−0の性能と5Vの性能を併せ持つことが可能であり、より好ましい態様においてはV−0の性能と5Vの性能を併せ持つことが可能な熱可塑性樹脂組成物である。
ここで、UL−94規格の難燃性について説明すると、難燃性の試験方法には水平試験と垂直試験があり、水平試験をクリアする材料は難燃性ランクHBとして評価される。また、試験材料を垂直に固定して炎を材料の下部に当てて試験を行う垂直試験は水平試験より燃えやすくなるため、材料としては高度な難燃性が要求され、難燃性ランクとしてV−2、V−1、V−0が定められ、数字が小さい程難燃性に優れ、ここではV−0が最も高度な難燃性ランクとなる。さらに、前記の垂直試験の規格を満足する材料は12.7cm(5インチ)の炎で垂直試験を行う5V試験を行うことができる。前記のV−2、V−1、V−0を定める垂直試験の炎は1.9cm(3/4インチ)であることから、さらに高度な難燃性が要求される。また、UL−94規格は、前記の難燃性試験の規格を満足した試験片厚みと水平試験あるいは垂直試験の結果で定められる。一例としては、2.0mm厚みの材料がV−0を示せば、2.0mm厚みV−0として定められ、さらに、その材料が5V規格もクリアした場合は2.0mm厚みV−0、かつ2.0mm厚み5Vとして定められる。なお、V−2、V−1、V−0を定める垂直試験と5V試験において試験片の肉厚は異なっていてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、さらに本発明の目的を損なわない範囲で、安定剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、耐光剤、紫外線吸収剤、銅害防止剤など)、離型剤(脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変成シリコーン)などを必要に応じて添加することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法として、特に制限はないが、好ましくは押出機やニーダーなどの加熱溶融混練装置を使用することにより、製造する手法が用いられ、より好ましくは押出機を使用することにより製造する手法である。押出機としては、単軸押出機、二軸押出機、三軸以上の多軸押出機、二軸・単軸複合押出機などが挙げられるが、好ましくは、混練性および利便性の点から、二軸押出機である。
例えば、好ましい製造方法として、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂、(C)(i)ポリカーボネート樹脂セグメントおよび(ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントとをグラフト化したグラフト共重合体および必要に応じその他の添加剤を、押出機などの溶融混練装置に供し、その溶融混練装置の原料供給口から、同時に供給し加熱溶融混練する方法や、(A)ポリ乳酸樹脂および(C)グラフト共重合体および必要に応じその他の添加剤を、溶融混練装置に供し溶融混練した後、さらに(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂および必要に応じその他の添加剤を溶融混練する方法、(A)ポリ乳酸樹脂および(C)グラフト共重合体および必要に応じその他の添加剤を予め溶融混練し、ペレット状としたマスターバッチを製造し、そのマスターバッチと(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂および必要に応じその他の添加剤とを、さらに溶融混練する方法などが挙げられる。
なかでも、本発明の効果である耐衝撃性、耐熱性、外観不良改善効果をより向上せしめるために、より好ましい製造方法として、(A)ポリ乳酸樹脂および(C)グラフト共重合体および必要に応じその他の添加剤を、溶融混練装置に供し溶融混練した後、さらに(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂および必要に応じその他の添加剤を溶融混練する方法や(A)ポリ乳酸樹脂および(C)グラフト共重合体および必要に応じその他の添加剤を予め溶融混練し、ペレット状としたマスターバッチを製造し、そのマスターバッチと(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂および必要に応じその他の添加剤とを、さらに溶融混練する方法などが挙げられる。
(A)ポリ乳酸樹脂および(C)グラフト共重合体および必要に応じその他の添加剤を予め溶融混練し、ペレット状としたマスターバッチを製造する際、そのマスターバッチ中の(A)ポリ乳酸樹脂と(C)グラフト共重合体の重量比は、マスターバッチを100重量%とし、好ましくは(A)30〜99重量%、(C)70〜1重量%、より好ましくは(A)40〜97重量%、(C)60〜3重量%、さらに好ましくは(A)50〜95重量%、(C)50〜5重量%である。マスターバッチ中の(C)グラフト共重合体が1重量%未満である場合、本発明の効果である外観不良改善効果が顕著ではなくなる傾向があり、70重量%を超えると(C)グラフト共重合体に含有されるエポキシ基の影響により、ゲル化が促進し、成形品の表面荒れなどが生じる傾向がある。
前記マスターバッチと(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂および必要に応じてその他の添加剤とをさらに溶融混練する場合(二度目の溶融混練という)、得られた熱可塑性樹脂組成物中の(A)ポリ乳酸樹脂の量は、前記マスターバッチ中のポリ乳酸樹脂の量と二度目の溶融混練時に添加するポリ乳酸樹脂の量の合計量となる。本発明では、二度目の溶融混練後の熱可塑性樹脂組成物中の重量比が、(A)ポリ乳酸樹脂5〜95重量%、(B)ポリカーボネート樹脂95〜5重量%、(A)および(B)の合計100重量部に対して、(C)グラフト共重合体0.1〜50重量部となるように溶融混練する。好ましくは、(A)10〜90重量%、(B)90〜10重量%、より好ましくは、(A)15〜85重量%、(B)85〜15重量%となるように溶融混練する。(B)ポリカーボネート樹脂が5重量%未満であると、本発明の効果である耐衝撃性、耐熱性の向上効果が顕著に発現しない傾向があり、95重量%を超えると、流動性が低下し、溶融成形加工性が悪化する傾向がある。また、(C)グラフト共重合体の量が、(A)および(B)の合計100重量部に対して、好ましくは0.5〜40重量部、より好ましくは1〜30重量部となるように溶融混練する。(C)グラフト共重合体の量が0.1重量部未満であると、本発明の効果である耐衝撃性、耐熱性、外観不良改善効果がほとんどなく、また50重量部を超えると、不飽和エポキシ化合物によるゲル化が促進し、成形品の表面荒れなどが生じる傾向がある。
(A)ポリ乳酸樹脂および(C)グラフト共重合体および必要に応じその他の添加剤を、溶融混練装置に供し溶融混練した後、さらに(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂および必要に応じその他の添加剤を溶融混練する方法として、一例を挙げれば、(A)ポリ乳酸樹脂および(C)グラフト共重合体および必要に応じその他の添加剤を、押出機の原料供給口から先に投入・溶融混練するとともに、押出機の途中に設けたサイドフィーダーなどを使用することにより、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂およびその他の添加剤を押出機の途中から投入・溶融混練する方法などがある。
また、(A)ポリ乳酸樹脂および(C)グラフト共重合体および必要に応じその他の添加剤を予め溶融混練し、ペレット状としたマスターバッチを製造し、そのマスターバッチと(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂および必要に応じその他の添加剤とを、さらに溶融混練する方法として、一例を挙げれば、(A)ポリ乳酸樹脂および(C)グラフト共重合体および必要に応じその他の添加剤を、先に押出機で溶融混練し、ペレタイザーなどを使用することによりペレット状としたマスターバッチを製造しておき、そのマスターバッチと(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂および必要に応じその他の添加剤とを、さらに押出機で溶融混練する方法などがある。
前記溶融混練温度は、本発明で使用される(A)ポリ乳酸樹脂の融点以上であれば、特に制限はないが、好ましくは150℃〜300℃、より好ましくは160℃〜290℃、更に好ましくは170℃〜280℃である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、押出成形、射出成形、ブロー成形、および未延伸糸、延伸糸、超延伸糸など各種繊維への紡糸などの方法によって、各種製品形状に加工し利用することができ、とくに機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品、光学機器、建築・土木部材および日用品など各種用途の成形品として利用することができ、特に機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品の成形品として好ましく用いられる。
上記の押出成形により得られる押出成形品としては、フイルム、インフレフィルム、シート、チューブおよび丸棒など各種形状の棒などの押出成形品が挙げられ、延伸されて使用することもでき、機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品、光学機器、建築部材および日用品などの各種用途の成形品にさらに加工されて、利用することができる。
前記機械機構部品としては、例えば、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどを挙げることができる。
前記電機・電子部品としては、電気機器のハウジング、OA機器のハウジング、各種カバーや筐体、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、ブレーカー、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、CDトレイ、カートリッジ、カセット、ソーター、ACアダプター、充電台、配電盤、コンセントカバー、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、パソコン筐体および内部部品、CRTディスプレイ筐体および内部部品、液晶ディスプレイ筐体および内部部品、プリンター筐体および内部部品、携帯電話、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末筐体および内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブの筐体および内部部品、複写機の筐体および内部部品、ファクシミリの筐体および内部部品、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などの筐体および内部部品、パラボラアンテナなどを挙げることができる。
前記自動車部品としては、内装部品、外装部品、アンダーフード部品を挙げることができ、具体的にはインストルメントパネル、トリム、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、コンソールボックス、トランクカバー、スペアタイヤカバー、天井材、床材、内板、シート材、ドアパネル、ドアボード、ステアリングホイール、バックミラーハウジング、エアーダクトパネル、ウィンドモールファスナー、スピードケーブルライナー、サンバイザーブラケット、ヘッドレストロッドホルダー、各種モーターハウジング、各種プレート、各種パネル、ルーフレール、フェイシア、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、バンパーコーナー、バンパースカートラジエーターグリル、ボンネット、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドル、ドアパネル、サイドミラーハウジング、センターピラー、エアーアウトレットルーバー、エンブレム、外装用トリム・モール、スライドルーフ、テールランプリム、精密機械関連部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエターグリル、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ソレノイドボビンなどを挙げることができる。
前記光学機器としては、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計、ディスプレイなどの関連部品を挙げることができる。
また、ブロー成形品としては、ジャバラ、ブーツ、ボトルおよび異径管・筒類として必要な形状に成形加工され、機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品、光学機器、建築部材および日用品などの成形品として各種用途に利用することができる。
以下、実施例により、本発明に関し、さらに詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
<参考例1> (C−1)ポリカーボネート樹脂セグメントおよびエポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントとをグラフト化したグラフト共重合体の合成
内容積10Lのステンレス製オートクレーブに、純水5000gを入れ、さらに懸濁剤としてポリビニルアルコール5gを溶解させた。この中に、ポリカーボネート樹脂粉末「FN1700A」(出光社製)1400gを入れ、攪拌して分散させた。別途、ラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキシド純度75%含水品「ナイパーBW」(日油社製)4g、ラジカル共重合性有機過酸化物としてt−ブチルパーオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート12g、不飽和エポキシ化合物としてグリシジルメタクリレート60g、アクリル系単量体として、メチルメタクリレート528gおよびブチルアクリレート12g、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン0.6gの混合溶液を作成し、この溶液を前記ポリカーボネート樹脂粉末の分散溶液に投入・攪拌した。
その後、オートクレーブを60〜65℃に昇温し、2時間攪拌することにより、ラジカル重合開始剤、ラジカル共重合性有機過酸化物、不飽和エポキシ化合物、アクリル系単量体をポリカーボネート樹脂粉末に含浸させた。続いて、オートクレーブの温度を80〜85℃に昇温し、その温度で5時間維持して重合を完結させ、水洗および乾燥して、(C−1)’グラフト化前駆体を得た。この(C−1)’グラフト化前駆体中のエポキシ基含有アクリル系共重合体を抽出後、重量平均分子量をGPCにより測定した結果、PMMA換算で15万であった。また、H−NMR測定および13C−NMR測定によりエポキシ基含有アクリル系共重合体中に含有される不飽和エポキシ化合物量を算出した結果、10重量%であった。
その後、得られた(C−1)’グラフト化前駆体を、二軸押出機(日本製鋼所社製TEX30α)に供し、230℃で溶融混練・グラフト化反応せしめることにより、(C−1)グラフト共重合体を得た。
<参考例2>
(C−2)ポリカーボネート樹脂セグメントおよびエポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントとをグラフト化したグラフト共重合体の合成
連鎖移動剤として、n−ドデシルメルカプタンの量を1.2gに変更した以外は、参考例1と同様にして、(C−2)’グラフト化前駆体を得た。この(C−2)’グラフト化前駆体中のエポキシ基含有アクリル系共重合体を抽出後、重量平均分子量をGPCにより測定した結果、PMMA換算で7万であった。また、H−NMR測定および13C−NMR測定によりエポキシ基含有アクリル系共重合体中に含有される不飽和エポキシ化合物量を算出した結果、10重量%であった。
<参考例3>
(C−3)ポリカーボネート樹脂セグメントおよびエポキシ基を含有しないアクリル系共重合体セグメントとをグラフト化したグラフト共重合体の合成
不飽和エポキシ化合物であるグリシジルメタクリレートを配合せず、アクリル系単量体として、メチルメタクリレート588gおよびブチルアクリレート12g、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン1.2gに変更した以外は、参考例1と同様にして、(C−3)グラフト化前駆体を得た。この(C−3)’グラフト化前駆体中のエポキシ基含有アクリル系共重合体を抽出後、重量平均分子量をGPCにより測定した結果、PMMA換算で7万であった。
<参考例4>
(C−6)ポリカーボネート樹脂セグメントおよびエポキシ基含有スチレン/アクリロニトリル系共重合体セグメントとをグラフト化したグラフト共重合体の合成
内容積10Lのステンレス製オートクレーブに、純水5000gを入れ、さらに懸濁剤としてポリビニルアルコール5gを溶解させた。この中に、ポリカーボネート樹脂粉末「FN1700A」(出光社製)1400gを入れ、攪拌して分散させた。別途、ラジカル重合開始剤として、ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド純度75%シェルゾール希釈品「パーロイル355」(日油社製)8g、ラジカル共重合性有機過酸化物としてt−ブチルパーオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート12g、不飽和エポキシ化合物としてグリシジルメタクリレート60g、ビニル系単量体として、スチレン378gおよびアクリロニトリル162g、連鎖移動剤としてα−メチルスチレンダイマー「ノフマーMSD」(日油社製)0.6gの混合溶液を作成し、この溶液を前記ポリカーボネート樹脂粉末の分散溶液に投入・攪拌した。
その後、オートクレーブを60〜65℃に昇温し、2時間攪拌することにより、ラジカル重合開始剤、ラジカル共重合性有機過酸化物、不飽和エポキシ化合物、ビニル系単量体をポリカーボネート樹脂粉末に含浸させた。続いて、オートクレーブの温度を80〜85℃に昇温し、その温度で5時間維持して重合を完結させ、水洗および乾燥して、(C−6)’グラフト化前駆体を得た。この(C−6)’グラフト化前駆体中のエポキシ基含有スチレン/アクリロニトリル系共重合体を抽出後、重量平均分子量をGPCにより測定した結果、PMMA換算で10万であった。また、H−NMR測定および13C−NMR測定によりエポキシ基含有スチレン/アクリロニトリル系共重合体中に含有される不飽和エポキシ化合物量を算出した結果、9重量%であった。
その後、得られた(C−6)’グラフト化前駆体を、二軸押出機(日本製鋼所社製TEX30α)に供し、230℃で溶融混練・グラフト化反応せしめることにより、(C−6)グラフト共重合体を得た。
また、本発明の実施に当たり、上記参考例にて製造した以外に使用した原料を下記する。
(A)ポリ乳酸樹脂:D体量が4%であり、PMMA換算の重量平均分子量が22万であるポリ乳酸樹脂
(B)ポリカーボネート樹脂:出光興産社製「タフロンA1700」
(C−4):ポリカーボネート樹脂にスチレン/アクリロニトリル共重合体をグラフト化したグラフト共重合体「モディパーC−L430D」(日油社製)
(C−5):ポリカーボネート樹脂に無水マレイン酸/スチレン/アクリロニトリル共重合体をグラフト化したグラフト共重合体「モディパーC−L440−G」(日油社製)
ABS樹脂:東レ社製「トヨラック100」
(D−1)難燃剤:大八化学工業社製縮合リン酸エステル「PX−200」
(E−1)無機充填剤:日本タルク社製タルク「P−6」
(F−1)フッ素系樹脂:三菱レイヨン社製アクリル変性テトラフルオロエチレン「メタブレンA3800」。
<実施例1〜5>
混練手法(イ)
前記原料のうち、(A)ポリ乳酸樹脂および参考例1および2で製造した(C−1)および(C−2)を、(A)ポリ乳酸樹脂の配合量/(C−1)あるいは(C−2)の配合量の比が85重量%/15重量%となるように配合した。その配合した(A)ポリ乳酸樹脂および(C−1)あるいは(C−2)を、スクリュー径:30mmφ、スクリュー長さLとスクリュー径Dの比L/D=45.5のベント付き二軸押出機「TEX30α」(日本製鋼所社製)の原料供給口から供給し、設定温度:250℃、スクリュー回転数:200rpm、供給量:15kg/hの条件にて、溶融混練し、ペレタイザーにてペレット化し、(A)ポリ乳酸樹脂と(C−1)あるいは(C−2)のマスターバッチを製造した。そのマスターバッチを80℃で一晩熱風乾燥後、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂、マスターバッチ中の(A)ポリ乳酸樹脂、(C−1)あるいは(C−2)が、表1の配合比となるように配合量を調整した。その配合した原料を、前記二軸押出機「TEX30α」の原料供給口から供給し、設定温度:250℃、スクリュー回転数:200rpm、供給量:15kg/hの条件にて、溶融混練し、ペレタイザーにてペレット化した。得られたペレットを、80℃で一晩熱風乾燥後、小松社製射出成形機「FKS80」に供し、設定温度:250℃、金型温度:40℃にて、射出成形を実施し、種々の形状の成形片を得て、下記(1)〜(3)の成形品外観、耐衝撃性、耐熱性を評価した。結果を表1に示す。
<実施例6>
混練手法(ロ)
前記原料のうち、(A)ポリ乳酸樹脂および参考例1で製造した(C−1)を、(A)ポリ乳酸樹脂の配合量/(C−1)の配合量の比が85重量%/15重量%となるように配合した。その配合した(A)ポリ乳酸樹脂および(C−1)を、L/D=30の箇所にサイドフィーダーを付けた前記二軸押出機「TEX30α」の原料供給口から供給し、設定温度:250℃、スクリュー回転数:200rpm、供給量:15kg/hの条件にて、溶融混練するとともに、サイドフィーダーより、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂を供給し、表1の配合比となるように、配合量・供給量を調整し、溶融混練し、ペレタイザーにてペレット化した。得られたペレットを、80℃で一晩熱風乾燥後、小松社製射出成形機「FKS80」に供し、設定温度:250℃、金型温度:40℃にて、射出成形を実施し、種々の形状の成形片を得て、下記(1)〜(3)の成形品外観、耐衝撃性、耐熱性を評価した。結果を表1に示す。
<実施例7>
混練手法(ハ)
前記原料のうち、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂、参考例1で製造した(C−1)を、表1の配合比となるようにまとめて配合し、その配合した原料を前記二軸押出機「TEX30α」の原料供給口から一括で供給し、設定温度:250℃、スクリュー回転数:200rpm、供給量:15kg/hの条件にて、溶融混練し、ペレタイザーにてペレット化した。得られたペレットを、80℃で一晩熱風乾燥後、小松社製射出成形機「FKS80」に供し、設定温度:250℃、金型温度:40℃にて、射出成形を実施し、種々の形状の成形片を得て、下記(1)〜(3)の成形品外観、耐衝撃性、耐熱性を評価した。結果を表1に示す。
<比較例1>
混練手法(ハ)
前記原料のうち、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂を表2の配合比となるようにまとめて配合した以外は、実施例7と同様に溶融混練および射出成形を行い、下記(1)〜(3)の成形品外観、耐衝撃性、耐熱性を評価した。結果を表2に示す。
<比較例2>
混練手法(イ)
前記原料のうち、(A)ポリ乳酸樹脂および参考例1で製造した(C−1)を、(A)ポリ乳酸樹脂の配合量/(C−1)の配合量の比が15重量%/85重量%となるように配合した以外は、実施例1〜5と同様に溶融混練および射出成形を行い、下記(1)〜(3)の成形品外観、耐衝撃性、耐熱性を評価した。結果を表2に示す。
<比較例3〜8>
混練手法(イ)
前記原料のうち、参考例3、4で製造した(C−3)、(C−6)および(C−4)、(C−5)を使用した以外は、実施例1〜5と同様に溶融混練および射出成形を行い、下記(1)〜(3)の成形品外観、耐衝撃性、耐熱性を評価した。結果を表2に示す。
<比較例9〜11>
混練手法(ハ)
前記原料のうち、表3に示す(A)ポリ乳酸樹脂、ABS樹脂および参考例1、2で製造した(C−1)、(C−2)を使用した以外は、実施例7と同様に溶融混練および射出成形を行い、下記(1)〜(3)の成形品外観、耐衝撃性、耐熱性を評価した。結果を表3に示す。
<実施例8、9>
混練手法(イ)
前記原料のうち、(A)ポリ乳酸樹脂および参考例1および2で製造した(C−1)および(C−2)を、(A)ポリ乳酸樹脂の配合量/(C−1)あるいは(C−2)の配合量の比が85重量%/15重量%となるように配合した。その配合した(A)ポリ乳酸樹脂および(C−1)あるいは(C−2)を、スクリュー径:30mmφ、スクリュー長さLとスクリュー径Dの比L/D=45.5のベント付き二軸押出機「TEX30α」(日本製鋼所社製)の原料供給口から供給し、設定温度:250℃、スクリュー回転数:200rpm、供給量:15kg/hの条件にて、溶融混練し、ペレタイザーにてペレット化し、(A)ポリ乳酸樹脂と(C−1)あるいは(C−2)のマスターバッチを製造した。そのマスターバッチを80℃で一晩熱風乾燥後、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂、(D−1)、(E−1)、(F−1)、マスターバッチ中の(A)ポリ乳酸樹脂、(C−1)あるいは(C−2)が、表4の配合比となるように配合量を調整した。その配合した原料を、前記二軸押出機「TEX30α」の原料供給口から供給し、設定温度:250℃、スクリュー回転数:200rpm、供給量:15kg/hの条件にて、溶融混練し、ペレタイザーにてペレット化した。得られたペレットを、80℃で一晩熱風乾燥後、小松社製射出成形機「FKS80」に供し、設定温度:250℃、金型温度:40℃にて、射出成形を実施し、種々の形状の成形片を得て、下記(1)〜(4)の成形品外観、耐衝撃性、耐熱性、難燃性を評価した。結果を表4に示す。
<実施例10>
混練手法(ロ)
前記原料のうち、(A)ポリ乳酸樹脂および参考例1で製造した(C−1)を、(A)ポリ乳酸樹脂の配合量/(C−1)の配合量の比が85重量%/15重量%となるように配合した。その配合した(A)ポリ乳酸樹脂および(C−1)を、L/D=30の箇所にサイドフィーダーを付けた前記二軸押出機「TEX30α」の原料供給口から供給し、設定温度:250℃、スクリュー回転数:200rpm、供給量:15kg/hの条件にて、溶融混練するとともに、サイドフィーダーより、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂、(D−1)、(E−1)、(F−1)を供給し、表4の配合比となるように、配合量・供給量を調整し、溶融混練し、ペレタイザーにてペレット化した。得られたペレットを、80℃で一晩熱風乾燥後、小松社製射出成形機「FKS80」に供し、設定温度:250℃、金型温度:40℃にて、射出成形を実施し、種々の形状の成形片を得て下記(1)〜(4)の成形品外観、耐衝撃性、耐熱性、難燃性を評価した。結果を表4に示す。
<実施例11>
混練手法(ハ)
前記原料のうち、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂、参考例1で製造した(C−1)および(D−1)、(E−1)、(F−1)を、表4の配合比となるようにまとめて配合し、その配合した原料を前記二軸押出機「TEX30α」の原料供給口から一括で供給し、設定温度:250℃、スクリュー回転数:200rpm、供給量:15kg/hの条件にて、溶融混練し、ペレタイザーにてペレット化した。得られたペレットを、80℃で一晩熱風乾燥後、小松社製射出成形機「FKS80」に供し、設定温度:250℃、金型温度:40℃にて、射出成形を実施し、種々の形状の成形片を得て、下記(1)〜(4)の成形品外観、耐衝撃性、耐熱性、難燃性を評価した。結果を表4に示す。
<実施例12、13>
混練手法(イ)
前記原料のうち、表4に示した原料および配合比に変更した以外は、実施例8、9と同様に、溶融混練および射出成形を行い、下記(1)〜(4)の成形品外観、耐衝撃性、耐熱性、難燃性を評価した。結果を表4に示す。
<比較例12>
混練手法(ハ)
前記原料のうち、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂、および(D−1)、(E−1)、(F−1)を表5の配合比となるようにまとめて配合した以外は、実施例11と同様に溶融混練および射出成形を行い、下記(1)〜(4)の成形品外観、耐衝撃性、耐熱性、難燃性を評価した。結果を表5に示す。
<比較例13〜16>
混練手法(イ)
前記原料のうち、参考例3、4で製造した(C−3)、(C−6)および(C−4)、(C−5)を使用した以外は、実施例8、9と同様に溶融混練および射出成形を行い、下記(1)〜(4)の成形品外観、耐衝撃性、耐熱性、難燃性を評価した。結果を表5に示す。
<比較例17、18>
前記原料のうち、表5に示した原料および配合比に変更した以外は、比較例13〜16と同様に、溶融混練および射出成形を行い、下記(1)〜(4)の成形品外観、耐衝撃性、耐熱性、難燃性を評価した。結果を表5に示す。
(1)成形品外観の評価
成形品として、80mm×120mm×2mm厚の平板状であり、成形品中央部に8mmφの穴が空いた射出評価品を成形し、その穴から樹脂流れ方向に生じるウエルドラインおよびフローマーク、真珠光沢、成形品表面荒れの外観評価を目視にて行った。目視による評価は、5点満点の点数(最高点:5点、最低点:1点)による下記評価およびそれらのトータル点数で行った。
ウエルドライン:点数が高いほどウエルドラインは確認されず、点数が低いほどウエルドラインが確認された。
フローマーク:点数が高いほどフローマークは確認されず、点数が低いほどフローマークが確認された。
真珠光沢:点数が高いほど真珠光沢は確認されず、点数が低いほど真珠光沢が確認された。
表面荒れ:点数が高いほど表面荒れは確認されず、点数が低いほど表面荒れが確認された。
(2)耐衝撃性評価(ノッチ付きシャルピー衝撃強度)
ISO179に準拠した成形品を成形し、成形品にVノッチを入れた後、ISO179に準拠し、シャルピー衝撃強度を測定した。
(3)耐熱性評価(低荷重:0.45MPaにおける荷重たわみ温度)
ISO75に準拠した成形品を成形し、ISO75に準拠し、低荷重の荷重たわみ温度(DTUL)を測定した。
(4)難燃性評価(UL−94燃焼試験)
成形した127mm×12.7mm×2mm厚の試験片を用いて、アメリカUL規格サブジェクト94(UL94)の垂直燃焼試験法に準拠して燃焼試験を行い、難燃性を評価した。その評価ランクを、難燃性が優れる順に、V−0、V−1、V−2で示し、さらに同規格の5V試験を行い、規格を満たす材料を合格とした。
実施例1〜7の結果から、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂セグメントにエポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントをグラフト化したグラフト共重合体を含有せしめることにより、ウエルドライン、フローマーク、真珠光沢、表面荒れなどの外観不良が改善され、耐衝撃性および耐熱性に優れることがわかる。
一方、比較例1より、ポリカーボネート樹脂セグメントにエポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントをグラフト化したグラフト共重合体を含有せしめない場合、外観不良が大きく悪化し、耐衝撃性、耐熱性にも劣ることがわかる。また、比較例2より、ポリカーボネート樹脂セグメントにエポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントをグラフト化したグラフト共重合体を含有せしめても、ポリ乳酸樹脂およびポリカーボネート樹脂の合計100重量部に対して、該グラフト共重合体を100重量部もの多量に含有せしめる場合、ウエルドライン、フローマーク、真珠光沢などの外観不良は改善されるものの、成形品の表面荒れが大幅に悪化し、耐衝撃性、耐熱性などの向上効果も十分ではないことがわかる。また、比較例3より、ポリカーボネート樹脂セグメントにエポキシ基を含有しないアクリル系共重合体セグメントをグラフト化したグラフト共重合体を含有せしめても、外観不良改善効果、耐衝撃性、耐熱性向上効果は十分ではないことがわかる。また、比較例4〜8より、ポリカーボネート樹脂セグメントにスチレン/アクリロニトリル共重合体セグメントをグラフト化したグラフト共重合体、ポリカーボネート樹脂セグメントに無水マレイン酸/スチレン/アクリロニトリル共重合体セグメントをグラフト化したグラフト共重合体、ポリカーボネート樹脂セグメントにエポキシ基含有スチレン/アクリロニトリル共重合体セグメントをグラフト化したグラフト共重合体を含有せしめることにより、確かに、フローマークや真珠光沢などの外観不良の改善は見られるが、その効果は十分ではなく、また外観不良の一つであるウエルドラインの改善にまでは至っていないことがわかる。さらに、耐衝撃性、耐熱性の向上効果も不十分である。また、実施例1、6および7とを比較すると、ポリ乳酸樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリカーボネート樹脂セグメントにエポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントをグラフト化したグラフト共重合体を、押出機の原料供給口からまとめて一括で供給し、溶融混練した場合(実施例7)と比較し、先にポリ乳酸樹脂とポリカーボネート樹脂セグメントにエポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントをグラフト化したグラフト共重合体とを押出機で溶融混練し、ペレタイザーによりペレット状としたマスターバッチを製造しておき、そのマスターバッチとポリ乳酸樹脂、ポリカーボネート樹脂とを、さらに押出機で溶融混練した場合(実施例1)、およびポリ乳酸樹脂と該グラフト共重合体を、押出機の原料供給口から先に投入・溶融混練するとともに、押出機の途中に設けたサイドフィーダーを使用することにより、ポリ乳酸樹脂、ポリカーボネート樹脂を押出機の途中から投入・溶融混練した場合(実施例6)の方が、ウエルドラインや表面荒れなどの外観不良の改善効果が、より顕著であることがわかる。
また、比較例9〜11より、ポリ乳酸樹脂およびABS樹脂等のスチレン系樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物に、ポリカーボネート樹脂セグメントにエポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントをグラフト化したグラフト共重合体を含有せしめても、外観不良改善効果はほとんど見られず、本発明のポリ乳酸樹脂およびポリカーボネート樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物に含有せしめた場合に卓越した効果を発揮することがわかる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様として、難燃剤を含有せしめる難燃性樹脂組成物が挙げられる。実施例8〜13および比較例12〜18との比較により、本発明のポリカーボネート樹脂セグメントにエポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントをグラフト化したグラフト共重合体および難燃剤を含有せしめた熱可塑性樹脂組成物は、難燃性に優れるとともに、ウエルドライン、フローマーク、真珠光沢、表面荒れなどの外観不良を大幅に改善し、かつ耐衝撃性、耐熱性にも優れる。なかでも、実施例12および13との比較により、無機充填剤(タルク)を含有せしめることにより、さらに難燃性および外観不良改善効果が向上し、実施例13と実施例8との比較により、フッ素系樹脂(アクリル変性テトラフルオロエチレン)を添加することにより、さらに難燃性が向上することがわかる。
また、実施例8、10、11の比較により、ポリ乳酸樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂セグメントにエポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントをグラフト化したグラフト共重合体および難燃剤を含むその他添加剤を、押出機の原料供給口からまとめて一括で供給し、溶融混練した場合(実施例11)と比較し、先にポリ乳酸樹脂と該グラフト共重合体とを押出機で溶融混練し、ペレタイザーによりペレット状としたマスターバッチを製造しておき、そのマスターバッチとポリ乳酸樹脂、ポリカーボネート樹脂および難燃剤を含むその他添加剤とを、さらに押出機で溶融混練した場合(実施例8)、およびポリ乳酸樹脂と該グラフト共重合体を、押出機の原料供給口から先に投入・溶融混練するとともに、押出機の途中に設けたサイドフィーダーを使用することにより、ポリ乳酸樹脂、ポリカーボネート樹脂および難燃剤を含むその他添加剤を押出機の途中から投入・溶融混練した場合(実施例10)の方が、ウエルドラインやフローマーク、表面荒れなどの外観不良の改善効果が、より顕著であることがわかる。
Figure 2010195963
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Claims (10)

  1. (A)と(B)の合計を100重量%として、(A)ポリ乳酸樹脂5〜95重量%、(B)ポリカーボネート樹脂95〜5重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、(C)(i)ポリカーボネート樹脂セグメントおよび(ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントとをグラフト化したグラフト共重合体0.1〜50重量部を配合してなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. (ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメント100重量%中に、不飽和エポキシ化合物を0.1〜30重量%含有することを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. (ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントの重量平均分子量が1万〜50万であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. (D)難燃剤を配合してなることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. (E)無機充填剤を配合してなることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. (F)フッ素系樹脂を配合してなることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. (A)ポリ乳酸樹脂ならびに(C)(i)ポリカーボネート樹脂セグメントおよび(ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントとをグラフト化したグラフト共重合体を溶融混練した後、さらに(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂を溶融混練することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  8. (A)ポリ乳酸樹脂ならびに(C)(i)ポリカーボネート樹脂セグメントおよび(ii)エポキシ基含有アクリル系共重合体セグメントとをグラフト化したグラフト共重合体を予め溶融混練し、ペレット状としたマスターバッチを製造し、そのマスターバッチと(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂とを、さらに溶融混練することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  9. 請求項7あるいは8いずれか1項記載の製造方法により得られることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  10. 請求項1〜6および請求項9いずれか1項記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
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