以下、本発明について詳細に説明する。
本発明における(A)ポリ乳酸樹脂とは、L−乳酸及び/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。他のモノマー単位としては、エチレングリコール、ブロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、およびカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。このような他の共重合成分は、全単量体成分に対し、0〜30モル%であることが好ましく、0〜10モル%であることがさらに好ましい。
本発明においては、機械特性、熱特性の観点から、乳酸成分の光学純度が高い(A)ポリ乳酸樹脂を用いることが好ましい。すなわち、(A)ポリ乳酸樹脂の総乳酸成分の内、L体が80%以上含まれるかあるいはD体が80%以上含まれることが好ましく、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることがより好ましく、L体が95%以上含まれるかあるいはD体が95%以上含まれることが最も好ましい。
また、L体が80%以上含まれるポリ乳酸とD体が80%以上含まれるポリ乳酸を併用して用いることも好ましく、L体が90%以上含まれるポリ乳酸とD体が90%以上含まれるポリ乳酸を併用して用いることがより好ましい。
本発明における(A)ポリ乳酸樹脂は、変性したものを用いてもよく、例えば、無水マレイン酸変性ポリ乳酸樹脂、エポキシ変性ポリ乳酸樹脂、アミン変性ポリ乳酸樹脂などを用いることにより、耐熱性だけでなく、機械特性も向上する傾向にあり好ましい。
本発明における(A)ポリ乳酸樹脂の製造方法としては、公知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、およびラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。
本発明における(A)ポリ乳酸樹脂の分子量や分子量分布については、せん断速度243sec−1の条件における(A)ポリ乳酸樹脂の溶融粘度(VA)および(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融粘度(VB)の比VA/VBが、0.1〜10であれば、特に制限されるものではないが、重量平均分子量としては、好ましくは10万以上、より好ましくは15万以上、最も好ましくは18万以上である。上限としては、成形時の流動性の点から40万以下であることが好ましい。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の重量平均分子量をいう。
本発明における(A)ポリ乳酸樹脂の融点については、特に制限されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。(A)ポリ乳酸樹脂の融点は光学純度が高いほど高くなる傾向にあるため、上記融点の高いポリ乳酸樹脂は、光学純度の高いポリ乳酸樹脂を用いればよい。
また、本発明で用いる(A)ポリ乳酸樹脂としては、耐熱性の点で、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを用いることが好ましい。ポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成させる方法としては、例えば、L体が90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上のポリ−L−乳酸とD体が90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上のポリ−D−乳酸を溶融混練、溶液混練または固相混練などにより混合する方法が挙げられる。混合によりポリ乳酸ステレオコンプレックスを得る方法においては、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸のいずれの重量平均分子量も10万以上であってもよいが、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸のいずれか一方の重量平均分子量が10万以下、好ましくは5万以下であり、他方の重量平均分子量が10万超、好ましくは12万以上である組合せを適用することが好ましい。また、別の方法として、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸をブロック共重合体、すなわちステレオブロックポリ乳酸とする方法も挙げることができ、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを容易に形成させることができるという点で、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸をブロック共重合体とする方法が好ましい。
本発明における(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂とは、ポリ乳酸樹脂以外の樹脂であって、加熱すると流動性を示し、これを利用して成形加工できる樹脂のことである。
この具体例としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン/α−オレフィン共重合体(“/”は共重合を示す。)等のオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン/アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、(メタ)アクリル酸メチル/スチレン共重合体などのスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂、ポリアクリル酸ブチル樹脂などのアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ乳酸樹脂以外のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、変性ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー等のエラストマーなどが挙げられ、本発明の効果である耐衝撃性、耐熱性の観点から、ポリカーボネート樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ乳酸樹脂以外のポリエステル系樹脂が好ましく、中でも、本発明の好ましい態様として難燃性の観点から、ポリカーボネート樹脂が最も好ましい。なお、(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂は、一種のみでもよく、二種以上を併用して用いることもできる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における(A)ポリ乳酸樹脂と(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の配合比(重量比)は、(A)と(B)の合計を100重量%として、(A)5〜95重量%、(B)95〜5重量%であり、より好ましくは、(A)10〜90重量%、(B)90〜10重量%、最も好ましくは、(A)15〜85重量%、(B)85〜15重量%である。(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂が5重量%未満であると、本発明の効果である耐衝撃性、耐熱性の向上効果が顕著に発現しない傾向があり、95重量%を超えると、流動性が低下し、溶融成形加工性が悪化する傾向がある。
本発明における(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である場合、ここでいうポリカーボネート樹脂とは、具体的には、2価以上のフェノール系化合物と、ホスゲンあるいはジフェニルカーボネートのような炭酸ジエステル化合物とを反応させて得られる熱可塑性樹脂のことである。
前記2価以上のフェノール系化合物としては、特に制限はないが、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(4−イソプロピルフェニル)メタン、ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1−ナフチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2−メチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1−エチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4−メチル−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのジヒドロキシジアリールアルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカンなどのジヒドロキシジアリールシクロアルカン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのジヒドロキシジアリールスルホン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテルなどのジヒドロキシアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンなどのジヒドロキシジアリールケトン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドなどのジヒドロキシジアリールスルフィド類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシドなどのジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルなどのジヒドロキシジフェニル類、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのジヒドロキシアリールフルオレン類などが挙げられる。また、上記2価フェノール化合物以外に、ヒドロキノン、レゾルシノール、メチルヒドロキノンなどのジヒドロキシベンゼン類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレンなどのジヒドロキシナフタレン類などが2価のフェノール系化合物として使用できる。
なお、3価以上のフェノール系化合物も、得られるポリカーボネート樹脂が熱可塑性を維持する範囲で使用できる。前記3価以上のフェノール系化合物の例としては、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシフェニルエーテル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシフェニルエーテル、2,4,4’−トリヒドロキシジフェニル−2−プロパン、2,2’−ビス(2,4−ジヒドロキシ)プロパン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシジフェニルメタン、2,4,4’−トリヒドロキシジフェニルメタン、1−[α−メチル−α−(4’−ジヒドロキシフェニル)エチル]−3−[α’,α’−ビス(4”−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1−[α−メチル−α−(4’−ジヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α’,α’−ビス(4”−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプタン、1,3,5−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−5’−イソプロピルベンジル)−4−イソプロピルフェノール、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシ−5’−イソプロピルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン、2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン、1,3−ビス(2’,4’−ジヒドロキシフェニルイソプロピル)ベンゼン、トリス(4’−ヒドロキシフェニル)−アミル−s−トリアジンなどが挙げられる。
これらの2価以上のフェノール系化合物は、それぞれ単独で用いても良く、2種以上を組み合わせても良い。
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂には、必要に応じて、3価以上のフェノール系化合物以外にも分岐ポリカーボネート系樹脂にするための成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。前記分岐ポリカーボネート系樹脂を得るために用いられる3価以上のフェノール系化合物以外の成分(分岐剤)としては、例えば、フロログルシン、メリット酸、トリメリット酸、トリメリット酸クロリド、無水トリメリット酸、没食子酸、没食子酸n−プロピル、プロトカテク酸、ピロメリット酸、ピロメリット酸二無水物、α−レゾルシン酸、β−レゾルシン酸、レゾルシンアルデヒド、トリメチルクロリド、イサチンビス(o−クレゾール)、トリメチルトリクロリド、4−クロロホルミルフタル酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などが挙げられる。
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂の共重合成分として、この他に、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などの直鎖状脂肪族2価カルボン酸を用いても良い。
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂の成分として、必要に応じて、重合時の末端停止剤として使用される公知の各種のものを、本発明の効果を損なわない範囲で用いることができる。具体的には、1価フェノール系化合物である、フェノール、p−クレゾール、p−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、ブロモフェノール、トリブロモフェノール、ノニルフェノールなどが挙げられる。
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂の原料として使用する炭酸ジエステル化合物としては、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネートや、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートが挙げられる。
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂の好ましい具体例としては、例えば、ビスフェノールAとホスゲンとを反応させる界面重縮合法により得られるポリカーボネート樹脂、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートとを反応させる溶融重合法により得られるポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂の骨格中に、ビスフェノールA骨格が含まれる場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様である難燃性の向上の点から、ポリカーボネート樹脂のフェノール性水酸基末端量は、ビスフェノールA骨格1mol当たり、0.5×10−2mol以上が好ましく、より好ましくは0.7×10−2mol以上、さらに好ましくは0.9×10−2mol以上である。ビスフェノールA骨格1mol当たりのポリカーボネート樹脂のフェノール性水酸基末端量は、1H−NMRなどの測定により算出することができる。すなわち、1H−NMRスペクトルにおいて、δ1.66〜1.70ppmの範囲にビスフェノールAのメチル基のピークが現れ、δ4.70〜4.80ppmの範囲にフェノール性水酸基末端のピークが現れる。それらピーク強度の比から、ビスフェノールA骨格1mol当たりのポリカーボネート樹脂のフェノール性水酸基末端量を求めることができる。
フェノール性水酸基末端量が前記範囲にあるポリカーボネート樹脂は、例えば、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートとを反応させ、末端停止剤を使用しない溶融重合法などの製造方法により得ることができる。
具体的な製造方法として、例えば、反応容器にビスフェノールA、ジフェニルカーボネート、塩基性触媒および塩基性触媒を中和する酸性化合物を導入し、不活性ガス雰囲気下で溶融させ、攪拌しながら徐々に減圧・昇温し、生成するフェノールを除去しながら重合を進行させる方法などがある。
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは3,000〜30,000、より好ましくは4,000〜25,000、最も好ましくは5,000〜20,000である。ここでいう数平均分子量(Mn)は、ポリカーボネート樹脂をテトラヒドロフランに溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したPMMA換算の数平均分子量のことである。
本発明において、せん断速度243sec−1の条件における(A)ポリ乳酸樹脂の溶融粘度(VA)および(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融粘度(VB)の比VA/VBは、0.1〜10であり、VA/VBが、0.1未満および10を超えると、本発明の効果であるウエルドライン、フローマーク、真珠光沢などの外観不良改善効果がなくなるという課題が生じる。なお、(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である場合、VA/VBは、より好ましくは0.2〜2.0、さらに好ましくは0.3〜1.5である。
ここでいうせん断速度243sec−1の条件における溶融粘度とは、東洋精機社製「キャピログラフ1C」に供し、長さ:10mm、径:1mmのキャピラリーを用い、所定の温度で5分間滞留させた後、せん断速度243sec−1の条件で測定した溶融粘度のことである。
なお、溶融粘度の測定温度条件は、(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の種類により異なり、融点の存在する結晶性樹脂の場合、(A)ポリ乳酸樹脂の融点、(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の融点のいずれか高い方の融点+40℃の温度であり、融点の存在しないあるいは明確でない非晶性樹脂の場合、(A)ポリ乳酸樹脂の融点+40℃と(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂のガラス転移温度+100℃とで、より高い方の温度である。なお、(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である場合、250℃の温度条件である。
また、(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である場合、温度250℃、せん断速度243sec−1の条件における(A)ポリ乳酸樹脂の溶融粘度(VA)は、好ましくは、100〜1000Pa・sであり、より好ましくは、150〜900Pa・sであり、さらに好ましくは200〜800Pa・sである。100Pa・s未満であると、本発明の熱可塑性樹脂組成物の機械的特性が劣る傾向にあり、1000Pa・sを超えると、流動性が悪くなり、成形加工性が悪化する傾向がある。また、(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である場合、温度250℃、せん断速度243sec−1の条件における(B)ポリカーボネート樹脂の溶融粘度(VB)は、好ましくは、100〜1500Pa・sであり、より好ましくは、200〜1300Pa・sであり、さらに好ましくは、300〜1000Pa・sである。100Pa・s未満であると、本発明の熱可塑性樹脂組成物の機械的特性が劣る傾向にあり、1500Pa・sを超えると、流動性が悪くなり、成形加工性が悪化する傾向がある。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)ポリ乳酸樹脂および(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の合計100重量部に対して、(C−イ)最外層にグリシジル基を含有するコアシェル型ゴム0.1〜50重量部を配合してなるものである。より好ましくは、(A)ポリ乳酸樹脂および(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の合計100重量部に対して、さらに(C−ロ)最外層にグリシジル基を含有しないコアシェル型ゴム0.1〜50重量部を配合してなるものである。
前記(C−イ)および(C−ロ)コアシェル型ゴムとは、コア層(最内層)とそれを覆う1以上の層(シェル層)から構成され、また、隣接し合った層が異種の重合体から構成される構造を有する重合体である。前記コアシェル型ゴムを構成する層の数は、特に限定されるものではなく、2層以上であればよく、3層以上または4層以上であってもよい。前記コアシェル型ゴムとしては、内部に少なくとも1層以上のゴム層を有することが好ましく、コア層(最内層)にゴム層を有することがさらに好ましい。
本発明においては、本発明の効果である外観不良改善効果を顕著に発現させるために、(C−イ)最外層にグリシジル基を含有するコアシェル型ゴムを含有せしめる必要がある。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記(C−イ)コアシェル型ゴムを配合せしめることにより、(A)ポリ乳酸樹脂相中に(C−イ)コアシェル型ゴムを顕著に偏在化せしめることが可能となり、これにより外観不良改善効果が顕著に発現する。
最外層にグリシジル基を含有するコアシェル型ゴムであれば、特に制限はないが、最外層に含有されるグリシジル基含有化合物として、グリシジル基含有ビニル系単位の重合体が挙げられる。グリシジル基含有ビニル系単位の具体例として、(メタ)アクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテルまたは4−グリシジルスチレンなどが挙げられ、耐衝撃性や外観不良改善効果が大きいという観点から、(メタ)アクリル酸グリシジルが最も好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
また、前記(C−イ)および(C−ロ)コアシェル型ゴムにおいて、ゴム層の種類は、特に限定されるものではなく、ゴム弾性を有する重合体成分から構成されるものであればよい。例えば、アクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分、ウレタン成分またはエチレンプロピレン成分などを重合させたものから構成されるゴムが挙げられる。好ましいゴムとしては、例えば、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分、スチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン成分、アクリロニトリル単位やメタクリロニトリル単位などのニトリル成分またはブタンジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン成分を重合させたものから構成されるゴムである。また、これらの成分を2種以上組み合わせて共重合させたものから構成されるゴムも好ましく、例えば、(1)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分およびジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分を共重合した成分から構成されるゴム、(2)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分およびスチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン成分を共重合した成分から構成されるゴム、(3)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分およびブタンジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン成分を共重合した成分から構成されるゴム、(4)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分およびジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分およびスチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン成分を共重合した成分から構成されるゴムなどが挙げられる。また、これらの成分の他に、ジビニルベンゼン単位、アリルアクリレート単位またはブチレングリコールジアクリレート単位などの架橋性成分を共重合し架橋させたゴムも好ましい。
ゴム層のさらに好ましい具体例としては、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分を重合した成分から構成されるゴム、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分を重合した成分から構成されるゴム、またこれらの組み合わせ、すなわち、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分およびジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分を共重合した成分から構成されるゴムが好ましい。最も好ましいゴム層は、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分を重合した成分から構成されるゴムである。
前記(C−イ)最外層にグリシジル基を含有するコアシェル型ゴムにおいて、最外層を含むシェル層には、グリシジル基含有ビニル系単位の重合体以外に、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、不飽和ジカルボン酸無水物系単位、脂肪族ビニル系単位、芳香族ビニル系単位、シアン化ビニル系単位、マレイミド系単位、不飽和ジカルボン酸系単位またはその他のビニル系単位などから選ばれる少なくとも1種以上の単位を含有する重合体が含有されていても良く、中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位または不飽和ジカルボン酸無水物系単位から選ばれる少なくとも1種以上の単位を含有する重合体が含有されていることが好ましい。
また、前記(C−ロ)最外層にグリシジル基を含有しないコアシェル型ゴムにおいて、最外層を含むシェル層には、グリシジル基含有ビニル系単位の重合体を除いた、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、不飽和ジカルボン酸無水物系単位、脂肪族ビニル系単位、芳香族ビニル系単位、シアン化ビニル系単位、マレイミド系単位、不飽和ジカルボン酸系単位またはその他のビニル系単位などから選ばれる少なくとも1種以上の単位を含有する重合体が含有されていても良く、中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位または不飽和ジカルボン酸無水物系単位から選ばれる少なくとも1種以上の単位を含有する重合体が含有されていることが好ましい。
不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位としては、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく使用される。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチルまたはメタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、(メタ)アクリル酸メチルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
不飽和ジカルボン酸無水物系単位としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸または無水アコニット酸などが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、無水マレイン酸が好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
また、脂肪族ビニル系単位としては、エチレン、プロピレンまたはブタジエンなど、芳香族ビニル系単位としては、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンまたはハロゲン化スチレンなど、シアン化ビニル系単位としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルまたはエタクリロニトリルなど、マレイミド系単位としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミドまたはN−(クロロフェニル)マレイミドなど、不飽和ジカルボン酸系単位として、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、フタル酸など、その他のビニル系単位としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンまたは2−スチリル−オキサゾリンなどを挙げることができ、これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
前記(C−イ)最外層にグリシジル基を含有するコアシェル型ゴムの好ましい具体例としては、コア層がアクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、コア層がジメチルシロキサン/アクリル酸ブチル共重合体で最外層がメタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体などが挙げられ、これらの中でも、最も好ましくは、外観不良改善効果が顕著である点から、コア層がアクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体である。
また、前記(C−ロ)最外層にグリシジル基を含有しないコアシェル型ゴムの好ましい具体例としては、コア層がアクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体、コア層がジメチルシロキサン/アクリル酸ブチル共重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体などが挙げられ、これらの中でも、最も好ましくは、外観不良改善効果のバランスの観点から、コア層がアクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体である。
前記(C−イ)および(C−ロ)コアシェル型ゴムの粒子径は、特に限定されるものではないが、一次粒子径として、0.05〜1μmであることが好ましく、0.1〜0.8μmであることがさらに好ましく、0.2〜0.6μmであることが最も好ましい。
前記(C−イ)および(C−ロ)コアシェル型ゴムにおいて、コアとシェルの重量比は、特に限定されるものではないが、コアシェル型ゴム全体に対して、コア層が50〜95重量部であることが好ましく、55〜93重量部であることがより好ましく、60〜90重量部であることが最も好ましい。
前記(C−イ)および(C−ロ)コアシェル型ゴムの配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の合計量100重量部に対して、それぞれ0.1〜50重量部であり、好ましくは0.3〜40重量部、より好ましくは0.4〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。前記(C−イ)および(C−ロ)コアシェル型ゴムの配合量が0.1重量部未満である場合、耐衝撃性や外観不良改善効果が顕著に発現しない傾向があり、50重量部を越えると、機械特性や耐熱性が低下する傾向がある。
前記コアシェル型ゴムとしては、上述した条件を満たすものとして、市販品を用いてもよく、また、公知の方法により作製することもできる。
市販品としては、例えば、三菱レイヨン製”メタブレン”、鐘淵化学工業製”カネエース”、ロームアンドハース製”パラロイド”、武田薬品工業製”スタフィロイド”またはクラレ製”パラフェイス”などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。中でも、前記(C−イ)最外層にグリシジル基を含有するコアシェル型ゴムとしては、コア層にアクリル酸ブチル単位、最外層にメタクリル酸グリシジル単位を含有するロームアンドハース製”パラロイドEXL2314”などが好適に使用できるが、これに限定されない。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物に、好ましい態様として、(D)酸化チタンを含有せしめることができる。前記(D)酸化チタンとしては、ルチル形、あるいはアナターゼ形などの結晶形を持ち、平均粒子径5μm以下の酸化チタンが好ましく用いられるが、より好ましくは、ルチル形の結晶形であり、より好ましい平均粒子径は3μm以下、さらに好ましい平均粒子径は1μm以下である。
前記(D)酸化チタンの配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂と(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の合計量100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.3〜9重量部、さらに好ましくは0.5〜8重量部である。前記(D)酸化チタンの配合量が0.1重量部未満である場合、本発明の効果である外観不良改善効果が顕著に発現しない傾向があり、10重量部を越える場合、耐熱性、耐衝撃性などの物性や本発明の好ましい態様である難燃性などが低下する傾向がある。
前記(D)酸化チタンは、表面処理してなることが好ましく、表面処理剤としては、公知の無機化合物および/または有機化合物を1種以上用いることができる。表面処理に用いることのできる無機化合物としては、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、スズ、チタニウム、アンチモンなどの酸化物、水酸化物、水和酸化物などが挙げられ、これらを1種以上用いて表面処理することができる。また、表面処理に用いることができる有機化合物としては、多価アルコール、アルカノールアミンまたはその誘導体、有機ケイ素化合物、高級脂肪酸またはその金属塩などが挙げられる。具体的には、例えば、多価アルコールとしてはトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが、アルカノールアミンとしてはトリエチルアミンなどが、有機ケイ素化合物としてはジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどのポリシロキサン類やヘキシルトリメトキシシランなどのアルキルシラン類、およびアミノシラン、ビニルシランなどのシランカップリング剤などのオルガノシラン類、高級脂肪酸としては、ステアリン酸などが、高級脂肪酸の金属塩としてはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛などが挙げられ、これらを1種以上用いて表面処理することができる。特に、本発明の熱可塑性樹脂組成物において、前記有機化合物により表面処理した酸化チタンを配合せしめることにより、(A)ポリ乳酸樹脂相中に酸化チタンを顕著に偏在化せしめることが可能となり、これにより外観不良改善効果が顕著に発現する。
より好ましくは、(A)ポリ乳酸樹脂相中への酸化チタンの顕著な偏在化の観点から、前記無機化合物および有機化合物を1種以上組み合わせて表面処理した酸化チタンを含有せしめることが好ましい。具体的な好ましい態様としては、無機化合物としてアルミニウムおよび有機化合物として多価アルコールを用いて表面処理した酸化チタン、無機化合物としてアルミニウム、ケイ素および有機化合物としてポリシロキサン類を用いて表面処理した酸化チタンなどが挙げられる。
これら無機化合物および有機化合物を1種以上組み合わせて表面処理した酸化チタンは、公知の方法により製造することも可能であり、また市販品を用いることも可能である。市販品としては、例えば、石原産業製”タイペークCR−60−2”、”タイペークCR−63”、”タイペークPC−3”などを好ましく挙げることができるが、これに限定されない。
また、前記(D)酸化チタンは、分散性向上や製造時のハンドリング性の向上のため、種々の熱可塑性樹脂と溶融ブレンドあるいは単にブレンドした混合材料として用いても良い。とくに、前記熱可塑性樹脂としては、ポリ乳酸樹脂などのポリエステル樹脂が好ましく、ポリ乳酸樹脂がとくに好ましく用いられる。
さらに本発明の熱可塑性樹脂組成物に、好ましい態様として、(E)相溶化剤を含有せしめることができる。ここでいう相溶化剤とは、(A)ポリ乳酸樹脂および(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の界面張力を低下させ、これら2成分の相溶性を向上させることができ、耐衝撃性や耐熱性を向上させることができる。
前記(E)相溶化剤としては、グリシジル化合物または酸無水物をグラフトまたは共重合した高分子化合物、アクリル樹脂あるいはスチレン樹脂ユニットをグラフトにより含む高分子化合物などが挙げられ、一種または2種以上で用いてもよい。
また、前記(E)相溶化剤の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂および(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の合計量100重量部に対し、0.5重量部〜30重量部が好ましく、より好ましくは0.8重量部〜25重量部、とくに好ましくは1重量部〜20重量部であり、0.5重量部未満では相溶化剤としての効果が小さく、30重量部を越えると機械特性が低下する傾向がある。
前記のグリシジル化合物または酸無水物をグラフトまたは共重合した高分子化合物におけるグリシジル化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジルなどの不飽和有機酸のグリシジルエステル類、アリルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類およびそれらの誘導体(例えば2−メチルグリシジルメタクリレートなど)が挙げられ、なかでもアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルが好ましく使用でき、これらは単独ないし2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、酸無水物としては、無水マレイン酸等が好ましく挙げられる。
また、グリシジル化合物または酸無水物を高分子化合物にグラフトまたは共重合する際の使用量は、特に限定されるものではないが、高分子化合物に対して0.05〜20重量%であることが好ましく、0.1〜15重量%がさらに好ましい。
グリシジル化合物または酸無水物をグラフトまたは共重合した高分子化合物としては、限定されるものではないが、アクリロニトリル/スチレン、ビニル系共重合体、ポリアミド樹脂およびポリエステル樹脂などに前記のグリシジル化合物または酸無水物をグラフトまたは共重合により含む高分子化合物であり、その中から選ばれる一種または2種以上で使用される。具体的には、アクリロニトリル/スチレン/グリシジルメタクリレート、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸、エチレン/グリシジルメタクリレート、エチレンエチルアクリレート−g−無水マレイン酸、エチレン/ブテン1−g−無水マレイン酸などが挙げられる。なお、ここで、“/”は共重合を表し、“−g−”はグラフトを表す。
前記アクリル樹脂あるいはスチレン樹脂ユニットをグラフトにより含む高分子化合物とは、少なくとも一種以上のアクリル樹脂あるいはスチレン樹脂ユニットをグラフト共重合体の分岐鎖として含む高分子化合物であり、この場合、主鎖となる高分子の例としてはポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル系樹脂、およびポリカーボネート樹脂などをあげることができる。
前記のポリオレフィンとは、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などのα−オレフィンの単独重合体、ランダムまたはブロックなどの形態をなす相互共重合体、これらα−オレフィンの過半重量と他の不飽和単量体とのランダム、ブロックもしくはグラフトなどの共重合体化したものを指し、ここで他の不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、グリシジルメタクリル酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミドなどの不飽和有機酸またはその誘導体、あるいは酢酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル、あるいはスチレン、メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、あるいはビニルトリメチルメトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどのビニルシラン、あるいはジシクロペンタジエン、4−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエンなどを用いることができ、共重合の場合には、α−オレフィンや他の単量体は、2種に限らず、複数種からなるものであってもよい。
また、前記のポリスチレンとは、スチレン、メチルスチレン、グリシジル置換スチレンなどのスチレン系モノマーの単独重合体、ランダムまたはブロックなどの形態をなす相互共重合体、これらの過半重量と他の不飽和単量体とのランダム、ブロックもしくはグラフトなどの共重合体化したものを指し、ここで他の不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、グリシジルメタクリル酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミドなどの不飽和有機酸またはその誘導体、あるいは酢酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル、あるいはスチレン、メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、あるいはビニルトリメチルメトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどのビニルシラン、あるいはジシクロペンタジエン、4−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエンなどを用いることができ、共重合の場合には、α−オレフィンや他の単量体は、2種に限らず、複数種からなるものであってもよい。
また、前記のアクリル系樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、グリシジルメタクリル酸などのアクリル系樹脂モノマーの単独重合体、ランダムまたはブロックなどの形態をなす相互共重合体、これらの過半重量と他の不飽和単量体とのランダム、ブロックもしくはグラフトなどの共重合体化したものを指し、ここで他の不飽和単量体としては、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミドなどの不飽和有機酸またはその誘導体、あるいは酢酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル、あるいはスチレン、メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、あるいはビニルトリメチルメトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどのビニルシラン、あるいはジシクロペンタジエン、4−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエンなどを用いることができ、共重合の場合には、α−オレフィンや他の単量体は、2種に限らず、複数種からなるものであってもよい。
前記ポリカーボネート樹脂とは、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリエステルカーボネート樹脂および分岐(架橋)ポリカーボネート樹脂などが挙げられ、これらの過半重量と他の不飽和単量体とのランダム、ブロックもしくはグラフトなどの共重合体化したものを指し、ここで他の不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、グリシジルメタクリル酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミドなどの不飽和有機酸またはその誘導体、あるいは酢酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル、あるいはスチレン、メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、あるいはビニルトリメチルメトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどのビニルシラン、あるいはジシクロペンタジエン、4−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエンなどを用いることができ、共重合の場合には、α−オレフィンや他の単量体は、2種に限らず、複数種からなるものであってもよい。
ここで、グラフトによって導入されるアクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合して、又は(メタ)アクリル酸エステル単量体とこれと共重合可能な単量体とを共重合して得られる重合体であり、(メタ)アクリル酸エステル単量体の例としては、(メタ)アクリル酸と、炭素数1〜12のアルコールとのエステルが挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等を挙げることができる。中でも、メタクリル酸メチル単独(以下、PMMAと略する。)、またはメタクリル酸メチルと他の共重合体性ビニルまたはビニリデン系単量体の混合物を重合して得られるものが好ましく、さらに好ましくは80重量%以上のメタクリル酸メチルを含有するものである。他の共重合体性ビニルまたはビニリデン系単量体としては、好ましくはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどの炭素数1〜8のアクリル酸アルキルエステル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、無水マレイン酸、スチレン、およびアクリロニトリルが挙げられる。導入されるアクリル樹脂は、一種に限らず、複数種でも可能である。
また、グラフトによって導入されるスチレン樹脂は、スチレン単独(以下、PSと略する。)、またはスチレンとアクリロニトリルとの共重合体(以下、ASと略する。)が好ましく用いられる。
また、アクリル樹脂あるいはスチレン樹脂ユニットをグラフトにより含む高分子化合物の具体例としては、ポリエチレン−g−ポリメタクリル酸メチル(PE−g−PMMA)、ポリプロピレン−g−ポリメタクリル酸メチル(PP−g−PMMA)、ポリ(エチレン/プロピレン)−g−ポリメタクリル酸メチル(E/PM−g−PMMA)、ポリ(エチレン/アクリル酸エチル)−g−ポリメタクリル酸メチル(E/EA−g−PMMA)、ポリ(エチレン/酢酸ビニル)−g−ポリメタクリル酸メチル(E/VA−g−PMMA)、ポリ(エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸)−g−ポリメタクリル酸メチル(E/EA/MAH−g−PMMA)、ポリ(エチレン/グシジルメタクリレート)−g−ポリメタクリル酸メチル(E/GMA−g−PMMA)、ポリ(アクリル酸エチル/グリシジルメタクリレート)−g−ポリメタクリル酸メチル(EA/GMA−g−PMMA)、ポリカーボネート−g−ポリメタクリル酸メチル(PC−g−PMMA)、ポリカーボネート−g−ポリメタクリル酸メチル/グリシジルメタクリレート(PC−g−PMMA/GMA)、ポリエチレン−g−ポリスチレン(PE−g−PS)、ポリプロピレン−g−ポリスチレン(PP−g−PS)、ポリ(エチレン/プロピレン)−g−ポリスチレン(E/PM−g−PS)、ポリ(エチレン/アクリル酸エチル)−g−ポリスチレン(E/EA−g−PS)、ポリ(エチレン/酢酸ビニル)−g−ポリスチレン(E/VA−g−PS)、ポリ(エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸)−g−ポリスチレン(E/EA/MAH−g−PS)、ポリ(エチレン/グシジルメタクリレート)−g−ポリスチレン(E/GMA−g−PS)、ポリ(アクリル酸エチル/グリシジルメタクリレート)−g−ポリスチレン(EA/GMA−g−PS)、ポリカーボネート−g−ポリスチレン(PC−g−PS)、ポリカーボネート−g−ポリスチレン/無水マレイン酸(PC−g−PS/MAH)、ポリカーボネート−g−ポリスチレン/グリシジルメタクリレート(PC−g−PS/GMA)、ポリエチレン−g−AS(PE−g−AS)、ポリプロピレン−g−AS(PP−g−AS)、ポリ(エチレン/プロピレン)−g−AS(E/PM−g−AS)、ポリ(エチレン/アクリル酸エチル)−g−AS(E/EA−g−AS)、ポリ(エチレン/酢酸ビニル)−g−AS(E/VA−g−AS)、ポリ(エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸)−g−AS(E/EA/MAH−g−AS)、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−g−AS(E/GMA−g−AS)、ポリ(アクリル酸エチル/グリシジルメタクリレート)−g−AS(EA/GMA−g−AS)、ポリカーボネート−g−AS(PC−g−AS)、ポリカーボネート−g−AS/無水マレイン酸(PC−g−AS/MAH)、ポリカーボネート−g−AS/グリシジルメタクリレート(PC−g−AS/GMA)などが挙げられる。
また、その他の(E)相溶化剤として、ポリメタクリル酸メチル−g−ポリエステルやメタクリル酸メチル/グリシジルメタクリレート−g−ポリエステルなども好適に使用することができる。
(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂の場合、(E)相溶化剤の好ましい具体例は、ポリエチレン/グリシジルメタクリレート、メタクリル酸メチル/グリシジルメタクリレート−g−ポリエステル、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−g−ポリメタクリル酸メチル(E/GMA−g−PMMA)、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−g−ポリスチレン(E/GMA−g−PS)、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−g−AS(E/GMA−g−AS)、ポリカーボネート−g−ポリメタクリル酸メチル(PC−g−PMMA)、ポリカーボネート−g−ポリ(メタクリル酸メチル/グリシジルメタクリレート)(PC−g−PMMA/GMA)、ポリカーボネート−g−ポリスチレン(PC−g−PS)、ポリカーボネート−g−ポリスチレン/無水マレイン酸(PC−g−PS/MAH)、ポリカーボネート−g−ポリスチレン/グリシジルメタクリレート(PC−g−PS/GMA)、ポリカーボネート−g−AS(PC−g−AS)、ポリカーボネート−g−AS/無水マレイン酸(PC−g−AS/MAH)、ポリカーボネート−g−AS/グリシジルメタクリレート(PC−g−AS/GMA)などが好ましい例として挙げられる。より好ましい具体例としては、メタクリル酸メチル/グリシジルメタクリレート−g−ポリエステル、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−g−ポリメタクリル酸メチル(E/GMA−g−PMMA)、ポリカーボネート−g−ポリ(メタクリル酸メチル/グリシジルメタクリレート)(PC−g−PMMA/GMA)などが挙げられる。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物に、好ましい態様として、(F)難燃剤を含有せしめることができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物に含有せしめることができる(F)難燃剤とは、樹脂に難燃性を付与する目的で添加される物質であれば特に限定されるものではなく、具体的には、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤、およびその他の無機系難燃剤などが挙げられ、これら少なくとも一種以上を選択して用いることができる。
本発明で好適に用いられる臭素系難燃剤の具体例としては、デカブロモジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモ無水フタル酸、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモベンゼン、1,1−スルホニル[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)]ベンゼン、ポリジブロモフェニレンオキサイド、テトラブロムビスフェノール−S、トリス(2,3−ジブロモプロピル−1)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、トリブロモフェニルアリルエーテル、トリブロモネオペンチルアルコール、ブロム化ポリスチレン、ブロム化ポリエチレン、テトラブロムビスフェノール−A、テトラブロムビスフェノール−A誘導体、テトラブロムビスフェノール−A−エポキシオリゴマーまたはポリマー、テトラブロムビスフェノール−A−カーボネートオリゴマーまたはポリマー、ブロム化フェノールノボラックエポキシなどのブロム化エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2−ヒドロキシジエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモシクロオクタン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ジブロモネオペンチルグリコール、ペンタブロモベンジルポリアクリレート、ジブロモクレジルグリシジルエーテル、N,N′−エチレン−ビス−テトラブロモフタルイミドなどが挙げられる。なかでも、テトラブロムビスフェノール−A−エポキシオリゴマー、テトラブロムビスフェノール−A−カーボネートオリゴマー、ブロム化エポキシ樹脂が好ましい。
本発明で好適に用いられるリン系難燃剤は特に限定されることはなく、通常一般に用いられるリン系難燃剤を用いることができ、代表的にはリン酸エステル、ポリリン酸塩などの有機リン系化合物や赤リンが挙げられる。
上記の有機リン系化合物におけるリン酸エステルの具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェートならびにこれらの縮合物などの縮合リン酸エステルを挙げることができる。市販の縮合リン酸エステルとしては、例えば大八化学社製PX−200、PX−201、PX−202、CR−733S、CR−741、CR747などを挙げることができる。特に、下記(1)式で示される縮合リン酸エステルが加水分解性の面から好ましく用いることができる。
(上式において、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4は、同一または相異なる、ハロゲンを含有しない芳香族基を表す。また、Xは下記の(2)〜(4)式から選択される構造を示し、下記(2)〜(4)式中、R1〜R8は同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、Yは直接結合、O、S、SO2、C(CH3)2、CH2、CHPhを表し、Phはフェニル基を表す。また、(1)式のnは0以上の整数である。また、(1)式のk、mはそれぞれ0以上2以下の整数であり、かつ(k+m)は0以上2以下の整数である。)なお、かかる芳香族縮合リン酸エステルは、異なるnや、異なる構造を有する芳香族縮合リン酸エステルの混合物であってもよい。
前記式(1)の式中nは0以上の整数であり、上限は難燃性の点から40以下が好ましい。好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜5である。
またk、mは、それぞれ0以上2以下の整数であり、かつk+mは、0以上2以下の整数であるが、好ましくはk、mはそれぞれ0以上1以下の整数、特に好ましくはk、mはそれぞれ1である。
また前記式(2)〜(4)の式中、R1〜R8は同一または相異なる水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す。ここで炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基などが挙げられるが、水素、メチル基、エチル基が好ましく、とりわけ水素が好ましい。
またAr1、Ar2、Ar3、Ar4は同一または相異なる、ハロゲンを含有しない芳香族基を表す。かかる芳香族基としては、ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、インデン骨格、アントラセン骨格を有する芳香族基が挙げられ、なかでもベンゼン骨格、あるいはナフタレン骨格を有するものが好ましい。これらはハロゲンを含有しない有機残基(好ましくは炭素数1〜8の有機残基)で置換されていてもよく、置換基の数にも特に制限はないが、1〜3個であることが好ましい。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、インデニル基、アントリル基などの芳香族基が挙げられるが、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基が好ましく、特にフェニル基、トリル基、キシリル基が好ましい。
なかでも下記化合物(5)、(6)が好ましく、特に化合物(5)が好ましい。
また、リン酸、ポリリン酸と周期律表IA族〜IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミンとの塩からなるリン酸塩、ポリリン酸塩を挙げることもできる。ポリリン酸塩の代表的な塩として、金属塩としてリチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、鉄(II)塩、鉄(III)塩、アルミニウム塩など、脂肪族アミン塩としてメチルアミン塩、エチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、エチレンジアミン塩、ピペラジン塩などがあり、芳香族アミン塩としてはピリジン塩、トリアジン塩、メラミン塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
また、上記の他、トリスクロロエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート)などの含ハロゲンリン酸エステル、また、リン原子と窒素原子が二重結合で結ばれた構造を有するホスファゼン化合物、リン酸エステルアミドを挙げることができる。
また、赤リンとしては、未処理の赤リンのみでなく、熱硬化性樹脂被膜、金属水酸化物被膜、金属メッキ被膜から成る群より選ばれる1種以上の化合物被膜により処理された赤リンを好ましく使用することができる。熱硬化性樹脂被膜の熱硬化性樹脂としては、赤リンを被膜できる樹脂であれば特に制限はなく、例えば、フェノール−ホルマリン系樹脂、尿素−ホルマリン系樹脂、メラミン−ホルマリン系樹脂、アルキッド系樹脂などが挙げられる。金属水酸化物被膜の金属水酸化物としては、赤リンを被膜できるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタンなどを挙げることができる。金属メッキ被膜の金属としては、赤リンを被膜できるものであれば特に制限はなく、Fe、Ni、Co、Cu、Zn、Mn、Ti、Zr、Alまたはこれらの合金などが挙げられる。さらに、これらの被膜は2種以上組み合わせて、あるいは2種以上に積層されていてもよい。
本発明で好適に用いられる窒素化合物系難燃剤としては、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミド、芳香族アミド、尿素、チオ尿素などを挙げることができる。なお、上記リン系難燃剤で例示したようなポリリン酸アンモニウムなど含窒素リン系難燃剤はここでいう窒素化合物系難燃剤には含まない。脂肪族アミンとしては、エチルアミン、ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロオクタンなどを挙げることができる。芳香族アミンとしては、アニリン、フェニレンジアミンなどを挙げることができる。含窒素複素環化合物としては、尿酸、アデニン、グアニン、2,6−ジアミノプリン、2,4,6−トリアミノピリジン、トリアジン化合物などを挙げることができる。シアン化合物としては、ジシアンジアミドなどを挙げることができる。脂肪族アミドとしては、N,N−ジメチルアセトアミドなどを挙げることができる。芳香族アミドとしては、N,N−ジフェニルアセトアミドなどを挙げることができる。
上記において例示したトリアジン化合物は、トリアジン骨格を有する含窒素複素環化合物であり、トリアジン、メラミン、ベンゾグアナミン、メチルグアナミン、シアヌル酸、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート、トリメチルトリアジン、トリフェニルトリアジン、アメリン、アメリド、チオシアヌル酸、ジアミノメルカプトトリアジン、ジアミノメチルトリアジン、ジアミノフェニルトリアジン、ジアミノイソプロポキシトリアジンなどを挙げることができる。
メラミンシアヌレートまたはメラミンイソシアヌレートとしては、シアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン化合物との付加物が好ましく、通常は1対1(モル比)、場合により1対2(モル比)の組成を有する付加物を挙げることができる。また、公知の方法で製造されるが、例えば、メラミンとシアヌール酸またはイソシアヌール酸の混合物を水スラリーとし、良く混合して両者の塩を微粒子状に形成させた後、このスラリーを濾過、乾燥後に一般には粉末状で得られる。また、上記の塩は完全に純粋である必要は無く、多少未反応のメラミンないしシアヌール酸、イソシアヌール酸が残存していても良い。また、樹脂に配合される前の平均粒径は、成形品の難燃性、機械的強度、表面性の点から100〜0.01μmが好ましく、更に好ましくは80〜1μmである。
窒素化合物系難燃剤の中では、含窒素複素環化合物が好ましく、中でもトリアジン化合物が好ましく、さらにメラミンシアヌレートが好ましい。
また、上記窒素化合物系難燃剤の分散性が悪い場合には、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの分散剤やポリビニルアルコール、金属酸化物などの公知の表面処理剤などを併用してもよい。
本発明で好適に用いられるシリコーン系難燃剤としては、シリコーン樹脂、シリコーンオイルを挙げることができる。前記シリコーン樹脂は、SiO2、RSiO3/2、R2SiO、R3SiO1/2の構造単位を組み合わせてできる三次元網状構造を有する樹脂などを挙げることができる。ここで、Rはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、または、フェニル基、ベンジル基等の芳香族基、または上記置換基にビニル基を含有した置換基を示す。前記シリコーンオイルは、ポリジメチルシロキサン、およびポリジメチルシロキサンの側鎖あるいは末端の少なくとも1つのメチル基が、水素元素、アルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、アミノ基、エポキシ基、ポリエーテル基、カルボキシル基、メルカプト基、クロロアルキル基、アルキル高級アルコールエステル基、アルコール基、アラルキル基、ビニル基、またはトリフロロメチル基の選ばれる少なくとも1つの基により変性された変性ポリシロキサン、またはこれらの混合物を挙げることができる。さらには、(B)ポリ乳酸以外の熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂の場合、(B)ポリカーボネート樹脂にシリコーン系樹脂やポリジメチルシロキサンなどのシリコーン化合物を共重合させた樹脂を用いても良い。
本発明で好適に用いられるその他の無機系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、メタスズ酸、酸化スズ、酸化スズ塩、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化第一錫、酸化第二スズ、ホウ酸亜鉛、ホウ酸カルシウム、ホウ酸アンモニウム、オクタモリブデン酸アンモニウム、タングステン酸の金属塩、タングステンとメタロイドとの複合酸化物酸、スルファミン酸アンモニウム、黒鉛、膨潤性黒鉛などを挙げることができる。中でも、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛、膨潤性黒鉛が好ましい。
前記(F)難燃剤は、1種で用いても、2種以上併用して用いてもかまわない。なお、水酸化アルミニウムを用いる場合は、(A)ポリ乳酸樹脂と(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂を予め混練し、混練温度210℃以下で溶融混合して用いることが好ましい。
前記(F)難燃剤の中では、ハロゲンを全く含有しないリン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤およびその他の無機系難燃剤から選択される少なくとも1種または2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。上記において難燃剤を2種以上併用する場合、リン系難燃剤と他の難燃剤を併用することが好ましい。リン系難燃剤と併用する窒素化合物系難燃剤としては、含窒素複素環化合物が好ましく、中でもトリアジン化合物が好ましく、さらにメラミンシアヌレートが好ましい。また、リン系難燃剤と併用するシリコーン系難燃剤としては、シリコーン樹脂やポリジメチルシロキサンなどのシリコーン化合物を共重合したポリカーボネート樹脂が好ましい。また、リン系難燃剤と併用するその他の無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛および膨潤性黒鉛が好ましい。また、リン系難燃剤との配合比率は任意の量を組み合わせることができ、とくに難燃剤100重量%中のリン系難燃剤の量は5重量%以上であることが好ましく、5〜95重量%であることがより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に(F)難燃剤を含有せしめる場合、(F)難燃剤の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の合計量100重量部に対して、好ましくは1〜50重量部であり、さらに好ましくは3〜40重量部であり、最も好ましくは5〜30重量部である。1重量部未満では難燃性を与える効果が小さく、50重量部を越えると耐衝撃性や耐熱性などの特性が低下する傾向にあるため好ましくない。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物に、好ましい態様として、(G)無機充填剤を含有せしめることもできる。(G)無機充填剤としては、例えば板状、粒状あるいは粉末状のものが挙げられ、(A)ポリ乳酸樹脂および(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂中で均一に分散可能な無機充填剤が好ましく、珪酸鉱物、珪酸塩鉱物や種々の鉱物類を粉砕などの加工により微粉化したものが好ましく用いられる。具体例としては、ベントナイト、ドロマイト、バーライト、微粉ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、ドーソナイト、シラスバルーン、クレー、セリサイト、長石粉、カオリナイト、ゼオライト(合成ゼオライトも含む)、タルク、マイカ(合成マイカも含む)、ガラスフレーク、ガラスビーズ、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、チタン酸カリウム、石膏、ノバキュライト、白土、ハイドロタルサイトおよびシリカなどが挙げられ、タルクやシリカは得られる成形品の白色性が高く好ましく用いられる。
前記の(G)無機充填剤は、特に平均粒径は10μm以下であることが機械的性質の低下が少なく、外観不良改善効果の向上の点から、より好ましくは5μm以下である。下限としては、製造時のハンドリング性の点から0.5μm以上の平均粒径であることが好ましく、0.8μm以上の平均粒径であることがより好ましい。また、平均粒径の測定はレーザー回折散乱式の方法で測定される累積分布50%平均粒子径とする。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物に、(G)無機充填剤を含有せしめる場合、(G)無機充填剤の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の合計量100重量部に対し、0.5重量部〜30重量部が好ましく、より好ましくは0.8重量部〜25重量部、最も好ましくは1重量部〜20重量部であり、0.5重量部未満では外観不良改善効果が小さくなる傾向が有り、30重量部を越えると耐衝撃性などの機械的性質が低下する傾向にあるため好ましくない。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物に、好ましい態様として、(H)フッ素系樹脂を含有せしめることができる。ここでいう(H)フッ素系樹脂とは、物質分子中にフッ素を含有する樹脂であり、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ビニリデンフルオライド/エチレン共重合体などが挙げられるが、中でもポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライドが好ましく、特にポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体が好ましく、さらにはポリテトラフルオロエチレンが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体も好ましく用いられる。ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂の分子量は10万〜1000万の範囲のものが好ましく、とくに10万〜100万の範囲のものがより好ましく、本発明の熱可塑性樹脂組成物の押出成形性と難燃性向上にとくに効果がある。ポリテトラフルオロエチレンの市販品としては、三井・デュポンフロロケミカル(株)製の“テフロン(登録商標)”6−J、“テフロン(登録商標)”6C−J、“テフロン(登録商標)”62−J、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製の“フルオン”CD1やCD076などが市販されている。また、ポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体の市販品としては、三菱レイヨン(株)から、“メタブレン(登録商標)”Aシリーズとして市販され、“メタブレン(登録商標)”A−3000、“メタブレン(登録商標)”A−3800などが市販されている。また、ポリテトラフルオロエチレンの“テフロン(登録商標)”6−Jなどは凝集し易いため、他の樹脂組成物と共にヘンシェルミキサーなどで機械的に強く混合すると凝集により塊が生じる場合があり、混合条件によってはハンドリング性や分散性に課題がある。一方、ポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体は前記のハンドリング性や分散性に優れ、とくに好ましく用いられる。前記のポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体とは、限定されるものではないが、特開2000−226523号公報で開示されているポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体などが挙げられ、前記の有機系重合体としては芳香族ビニル系単量体、アクリル酸エステル系単量体、およびシアン化ビニル系単量体を10重量%以上含有する有機系重合体などであり、それらの混合物でもよく、ポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体中のポリテトラフルオロエチレンの含有量は0.1重量%〜90重量%であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に、(H)フッ素系樹脂を含有せしめる場合、(H)フッ素系樹脂の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の合計量100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部であり、より好ましくは0.02〜4重量部が好ましく、さらに好ましくは0.03〜3重量部である。(H)フッ素系樹脂の配合量が0.01重量部未満である場合、難燃性向上等に効果が見られない傾向があり、5重量部を越えると本発明の熱可塑性樹脂組成物の流動性や難燃性が逆に低下する傾向がある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、さらに(E)相溶化剤以外のエポキシ化合物を配合することができる。エポキシ化合物としては、単官能のエポキシ化合物であっても2官能以上のエポキシ化合物であってもよく、特に制限はないが、グリシジル基を有するエポキシ化合物であることが好ましく、例えばグリシジルエステル化合物、グリシジルエーテル化合物、およびグリシジルエステルエーテル化合物が挙げられる。これらのエポキシ化合物は1種以上で用いることができる。前記のグリシジルエステル化合物としては、限定されるものではないが、具体例として、安息香酸グリシジルエステル、t−Bu−安息香酸グリシジルエステル、P−トルイル酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ペラルゴン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、ベヘン酸グリシジルエステル、バーサティク酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレイン酸グリシジルエステル、ベヘノール酸グリシジルエステル、ステアロール酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、ビ安息香酸ジグリシジルエステル、メチルテレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、オクタデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
また、前記のグリシジルエーテル化合物としては、限定されるものではないが、具体例として、フェニルグリシジルエーテル、P−フェニルフェニルグリシジルエーテル、1,4−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ブタン、1,6−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ヘキサン、1,4−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ベンゼン、1−(β,γ−エポキシプロポキシ)−2−エトキシエタン、1−(β,γ−エポキシプロポキシ)−2−ベンジルオキシエタン、2,2−ビス−[р−(β,γ−エポキシプロポキシ)フェニル]プロパンおよびビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタンなどのその他のビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応で得られるジグリシジルエーテルなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
また、その他グリシジル基を有するエポキシ化合物としては、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
前記エポキシ化合物のエポキシ当量は、500未満のエポキシ化合物が好ましく、さらにはエポキシ当量400未満のエポキシ化合物が特に好ましい。ここで、エポキシ当量とは、1当量のエポキシ基を含むエポキシ化合物のグラム数であり、エポキシ化合物をピリジンに溶解し、0.05N塩酸を加え45℃で加熱後、指示薬にチモールブルーとクレゾールレツドの混合液を用い、0.05N苛性ソーダで逆滴定する方法により求めることができる。
前記エポキシ化合物は粘度安定性と機械特性を阻害せずに(A)ポリ乳酸樹脂の耐加水分解性を向上させることに大きな効果があり、エポキシ化合物の配合量は粘度安定性と耐加水分解性の面から、(A)ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.05〜9重量部、最も好ましくは0.1〜8重量部である。
前記エポキシ化合物の添加方法としては、本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する際に、(A)ポリ乳酸樹脂や(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂などとともに押出機などの加熱溶融混練装置に添加する方法や、予め(A)ポリ乳酸樹脂と前記エポキシ化合物を押出機などの加熱溶融混練装置で加熱溶融混練しておき、その後、それと(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂とを加熱溶融混練する方法などが挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、さらにアルカリ土類金属化合物を含有せしめることができ、アルカリ土類金属化合物としては、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、およびバリウム化合物などのアルカリ土類金属化合物が好ましく挙げられる。また、前記アルカリ土類金属化合物としては、アルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、乳酸塩、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびモンタン酸などの有機酸塩が挙げられる。また、前記アルカリ土類金属化合物の具体例としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、乳酸マグネシウム、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、さらにはオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびモンタン酸などの有機酸のマグネシウム塩、カルシウム塩、およびバリウム塩などが挙げられる。この中で、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩が好ましく用いられ、特に、水酸化マグネシウムおよび炭酸カルシウムが好ましく用いられ、より好ましくは炭酸カルシウムが用いられる。かかるアルカリ土類金属は1種または2種以上で用いることができる。また、上記の炭酸カルシウムは製造方法により、コロライド炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、湿式粉砕微粉重質炭酸カルシウム、湿式重質炭酸カルシウム(白亜)などが知られており、いずれも炭酸カルシウムに包含される。これらのアルカリ土類金属化合物は、シランカップリング剤、有機物および無機物などの一種以上の表面処理剤で処理されていても良く、形状は粉末状、板状あるいは繊維状であっても構わないが、平均粒径10μm以下の粉末状で用いることが分散性などから好ましい。さらに粒径が細かいと耐加水分解性の向上効果が大きく好ましい。
前記アルカリ土類金属化合物を配合する効果としては、難燃剤、とくにリン系難燃剤は加水分解され易いため、ポリ乳酸樹脂の耐加水分解性に悪影響を与えるが、エポキシ化合物に加えてアルカリ土類金属化合物を併用して添加することにより、前記の加水分解されたリン系難燃剤から生じるリン酸をアルカリ土類金属化合物で中和することによって、より一層耐加水分解性を向上しているものと推定される。また、アルカリ土類金属化合物の代わりに、アルカリ金属化合物を用いる場合、アルカリ金属化合物は、アルカリ性を有する場合が多く通常はポリ乳酸樹脂の加水分解を促進するため好ましくない。前記アルカリ土類金属化合物は、中性状態では水に難溶性であり、リン酸エステルが分解して系が酸性になった場合に酸性環境下で溶解し中和作用を示すものが好ましく用いられる。中性状態の溶解度は、例えば化学便覧、丸善株式会社発行(昭和41年)等の便覧に記載されており、水への溶解度が1g/100g水以下が好ましく、さらに好ましくは10−1g/100g水以下である。ちなみに最も好ましく用いられる炭酸カルシウムの水に対する溶解度は5.2×10−3g/100g水である。
また、アルカリ土類金属化合物の配合量は、機械特性と耐加水分解性の面から、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリ乳酸以外の熱可塑性樹脂の合計量100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜9重量部、より好ましくは0.1〜8重量部である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、さらに繊維状強化材を含有せしめることができ、耐熱性とくに熱変形温度の向上を図ることができる。
前記繊維状強化材としては、通常熱可塑性樹脂の強化に用いられるものを用いることができる。具体的には、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ウォラストナイト、セピオライト、アスベスト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維および硼素繊維などの無機繊維状強化材、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、再生セルロース繊維、アセテート繊維、ケナフ、ラミー、木綿、ジュート、麻、サイザル、亜麻、リネン、絹、マニラ麻、さとうきび、木材パルプ、紙屑、古紙およびウールなどの有機繊維状強化材が挙げられ、これらの繊維強化材の中では、無機繊維状強化材が好ましく、特にガラス繊維やホウ酸アルミニウムウイスカー、ウォラストナイトが好ましい。また、有機繊維状強化材の使用も好ましく、(A)ポリ乳酸樹脂の生分解性を活かすという観点からは天然繊維や再生繊維がさらに好ましく、特にケナフが好ましい。また、配合に供する繊維状強化材のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は5以上であることが好ましく、10以上であることがさらに好ましく、20以上であることが熱変形温度を向上させる観点からは最も好ましい。
前記繊維状強化材は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆または集束処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシランなどのカップリング剤などで処理されていても良い。
前記繊維状強化材の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の合計量100重量部に対して、0.1〜200重量部が好ましく、0.5〜100重量部がさらに好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、さらに可塑剤を配合することができ、可塑剤としては、一般にポリマーの可塑剤として用いられる公知のものを特に制限なく用いることができ、例えばポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤およびエポキシ系可塑剤などを挙げることができる。
ポリエステル系可塑剤の具体例としては、アジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ロジンなどの酸成分と、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのジオール成分からなるポリエステルや、ポリカプロラクトンなどのヒドロキシカルボン酸からなるポリエステルなどを挙げることができる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸もしくは単官能アルコールで末端封鎖されていてもよく、またエポキシ化合物などで末端封鎖されていてもよい。
グリセリン系可塑剤の具体例としては、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレートおよびグリセリンモノアセトモノモンタネートなどを挙げることができる。
多価カルボン酸系可塑剤の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシルなどのトリメリット酸エステル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸n−オクチル−n−デシル、アジピン酸メチルジグリコールブチルジグリコール、アジピン酸ベンジルメチルジグリコール、アジピン酸ベンジルブチルジグリコールなどのアジピン酸エステル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸エステル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、およびセバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのセバシン酸エステルなどを挙げることができる。
ポリアルキレングリコール系可塑剤の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロックおよび/又はランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体などのポリアルキレングリコールあるいはその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物、および末端エーテル変性化合物などの末端封鎖化合物などを挙げることができる。
エポキシ系可塑剤とは、一般にはエポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリドなどを指すが、その他にも、主にビスフェノールAとエピクロロヒドリンを原料とするような、いわゆるエポキシ樹脂も使用することができる。
その他の可塑剤の具体例としては、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレートなどの脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチルなどのオキシ酸エステル、ペンタエリスリトール、ポリアクリル酸エステルおよびパラフィン類などを挙げることができる。前記可塑剤としては、上記に例示したものの中でも、特にポリエステル系可塑剤およびポリアルキレングリコール系可塑剤から選択した少なくとも1種が好ましく、2種以上の併用を行ってもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に、前記可塑剤を含有せしめる場合、前記可塑剤の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の合計量100重量部に対して、0.01〜30重量部の範囲が好ましく、0.1〜20重量部の範囲がさらに好ましく、0.5〜10重量部の範囲が特に好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に、前記可塑剤を含有せしめることで、成形性、耐熱性が向上するので好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、さらに結晶核剤を配合することができ、結晶核剤としては、公知の窒化物などの無機系核剤、有機カルボン酸金属塩などの有機系核剤、ソルビトール類、および(A)ポリ乳酸樹脂より融点の高い高分子核剤などが挙げられ、1種のみでもよくまた2種以上の併用を行ってもよい。
また、結晶核剤の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の合計量100重量部に対して、0.01〜30重量部が好ましく、0.05〜20重量部がさらに好ましく、0.1〜10重量部が特に好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に、前記結晶核剤を配合することで、成形性、耐熱性が向上するので好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、前記可塑剤と前記結晶核剤とを各々単独で用いてもよいが、両者を併用して用いることが成形性の点において好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、さらに層状珪酸塩を含有せしめることができ、成形性の向上が可能である。また、前記層状珪酸塩は層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩を配合することがさらに好ましい。層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩とは、交換性の陽イオンを層間に有する層状珪酸塩の交換性の陽イオンを、有機オニウムイオンで置き換えた包接化合物である。
交換性の陽イオンを層間に有する層状珪酸塩は、幅0.05〜0.5μm、厚さ6〜15オングストロームの板状物が積層した構造を持ち、その板状物の層間に交換性の陽イオンを有している。そのカチオン交換容量は0.2〜3meq/gのものが挙げられ、好ましくはカチオン交換容量が0.8〜1.5meq/gのものである。
また、前記層状珪酸塩の具体例としてはモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性雲母等が挙げられ、天然のものであっても合成されたものであっても良い。これらのなかでもモンモリロナイト、ヘクトライトなどのスメクタイト系粘土鉱物やNa型四珪素フッ素雲母、Li型フッ素テニオライトなどの膨潤性合成雲母が好ましい。
また、前記有機オニウムイオンとしてはアンモニウムイオンやホスホニウムイオン、スルホニウムイオンなどが挙げられる。これらのなかではアンモニウムイオンとホスホニウムイオンが好ましく、特にアンモニウムイオンが好んで用いられる。アンモニウムイオンとしては、1級アンモニウム、2級アンモニウム、3級アンモニウム、4級アンモニウムのいずれでも良く、1級アンモニウムイオンとしてはデシルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム、オレイルアンモニウム、ベンジルアンモニウムなどが挙げられ、2級アンモニウムイオンとしてはメチルドデシルアンモニウム、メチルオクタデシルアンモニウムなどが挙げられ、3級アンモニウムイオンとしてはジメチルドデシルアンモニウム、ジメチルオクタデシルアンモニウムなどが挙げられ、 4級アンモニウムイオンとしてはベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム、ベンザルコニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウムイオン、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウムなどのアルキルトリメチルアンモニウムイオン、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウムなどのジメチルジアルキルアンモニウムイオン、トリオクチルメチルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウムなどのトリアルキルメチルアンモニウムイオン、ベンゼン環を2個有するベンゼトニウムイオンなどが挙げられる。また、これらの他にもアニリン、p−フェニレンジアミン、α−ナフチルアミン、p−アミノジメチルアニリン、ベンジジン、ピリジン、ピペリジン、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、末端にアミノ基を有するポリアルキレングリコールなどから誘導されるアンモニウムイオンなども挙げられる。これらのアンモニウムイオンの中でも、好ましい化合物としては、トリオクチルメチルアンモニウム、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム、ベンザルコニウムなどが挙げられる。これらのアンモニウムイオンは、一般的には、混合物として入手可能であり、前記の化合物名称は少量の類縁体を含む代表化合物の名称である。これらは、1種類で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。
また、反応性の官能基を持つものや親和性の高いものが好ましく、12−アミノドデカン酸、末端にアミノ基を有するポリアルキレングリコールなどから誘導されるアンモニウムイオンなども好ましい。
前記層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩は交換性の陽イオンを層間に有する層状珪酸塩と有機オニウムイオンを公知の方法で反応させることにより製造することができる。具体的には、水、メタノール、エタノールなどの極性溶媒中でのイオン交換反応による方法か、層状珪酸塩に液状あるいは溶融させたアンモニウム塩を直接反応させることによる方法などが挙げられる。
前記層状珪酸塩に対する有機オニウムイオンの量は、層状珪酸塩の分散性、溶融時の熱安定性、成形時のガス、臭気の発生抑制などの点から、層状珪酸塩の陽イオン交換容量に対し通常、0.4〜2.0当量の範囲であるが、0.8〜1.2当量であることが好ましい。
また、前記層状珪酸塩は上記の有機オニウム塩に加え、反応性官能基を有するカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得るために好ましい。かかる反応性官能基を有するカップリング剤としては、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などが挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に、前記層状珪酸塩を含有せしめる場合、その配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の合計量100重量部に対して、0.1〜40重量部が好ましく、0.5〜30重量部がさらに好ましく、1〜20重量部が特に好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、さらに、カーボンブラック、弁柄、群青、焼成イエローおよびさらに種々の色の顔料や染料を1種以上含有せしめることにより種々の色に樹脂を調色せしめ、耐候(光)性、および導電性を改良することも可能である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に、前記顔料や染料を配合せしめる場合、その配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の合計量100重量部に対し、0.01〜10重量部、好ましくは0.02〜9重量部、より好ましくは0.03〜8重量部である。
また、前記カーボンブラックとしては、限定されるものではないが、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、アントラセンブラック、油煙、松煙、および、黒鉛などが挙げられ、平均粒径500nm以下、ジブチルフタレート吸油量50〜400cm3/100gのカーボンブラックが好ましく用いられ、処理剤として酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ポリオール、シランカップリング剤などで処理されていても良い。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様として、UL規格の難燃性が、厚み2.0mmの成形品でV−2、V−1およびV−0のいずれかの難燃性能、あるいはUL規格5Vの難燃性能を有するものである。ここでUL規格とは、アメリカUL規格サブジェクト94(UL−94規格)での難燃性が、厚み2.0mmの成形品でV−2、V−1、V−0の性能を持つ難燃性樹脂組成物、さらには前記のV−2、V−1、V−0の性能を持ちながら5Vの性能を併せ持つ難燃性樹脂組成物である。とくに、好ましい態様においてはV−1、V−0の性能と5Vの性能を併せ持つことが可能であり、より好ましい態様においてはV−0の性能と5Vの性能を併せ持つことが可能な熱可塑性樹脂組成物である。
ここで、UL−94規格の難燃性について説明すると、難燃性の試験方法には水平試験と垂直試験があり、水平試験をクリアする材料は難燃性ランクHBとして評価される。また、試験材料を垂直に固定して炎を材料の下部に当てて試験を行う垂直試験は水平試験より燃えやすくなるため、材料としては高度な難燃性が要求され、難燃性ランクとしてV−2、V−1、V−0が定められ、数字が小さい程難燃性に優れ、ここではV−0が最も高度な難燃性ランクとなる。さらに、前記の垂直試験の規格を満足する材料は12.7cm(5インチ)の炎で垂直試験を行う5V試験を行うことができる。前記のV−2、V−1、V−0を定める垂直試験の炎は1.9cm(3/4インチ)であることから、さらに高度な難燃性が要求される。また、UL−94規格は、前記の難燃性試験の規格を満足した試験片厚みと水平試験あるいは垂直試験の結果で定められる。一例としては、2.0mm厚みの材料がV−0を示せば、2.0mm厚みV−0として定められ、さらに、その材料が5V規格もクリアした場合は2.0mm厚みV−0、かつ2.0mm厚み5Vとして定められる。なお、V−2、V−1、V−0を定める垂直試験と5V試験において試験片の肉厚は異なっていてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、さらに本発明の目的を損なわない範囲で、安定剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、耐光剤、紫外線吸収剤、銅害防止剤など)、離型剤(脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変成シリコーン)などを必要に応じて添加することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法として、特に制限はないが、好ましくは押出機やニーダーなどの加熱溶融混練装置を使用することにより、製造する手法が用いられ、より好ましくは押出機を使用することにより製造する手法である。押出機としては、単軸押出機、二軸押出機、三軸以上の多軸押出機、二軸・単軸複合押出機などが挙げられるが、好ましくは、混練性および利便性の点から、二軸押出機である。
例えば、好ましい製造方法として、(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂、(C−イ)最外層にグリシジル基を含有するコアシェル型ゴムおよび必要に応じその他の添加剤を、押出機などの溶融混練装置に供し、その溶融混練装置の原料供給口から、同時に供給し加熱溶融混練する方法や、(A)ポリ乳酸樹脂および(C−イ)最外層にグリシジル基を含有するコアシェル型ゴムおよび必要に応じその他の添加剤を、溶融混練装置に供し溶融混練した後、さらに(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂および必要に応じその他の添加剤を溶融混練する方法、(A)ポリ乳酸樹脂および(C−イ)最外層にグリシジル基を含有するコアシェル型ゴムおよび必要に応じその他の添加剤を予め溶融混練し、ペレット状としたマスターバッチを製造し、そのマスターバッチと(A)ポリ乳酸樹脂、(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂および必要に応じその他の添加剤とを、さらに溶融混練する方法などが挙げられる。
また、(A)ポリ乳酸樹脂(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂、ならびに(C−イ)最外層にグリシジル基を含有するコアシェル型ゴムを含有してなる熱可塑性樹脂組成物を製造するに際し、せん断速度243sec−1の条件における(A)ポリ乳酸樹脂の溶融粘度(VA)および(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融粘度(VB)の比VA/VBが、0.1〜10となる(A)ポリ乳酸樹脂および(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂を使用して、溶融混練することが望ましい。(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である場合、VA/VBが、より好ましくは0.2〜2.0、さらに好ましくは0.3〜1.5となる(A)ポリ乳酸樹脂および(B)ポリカーボネート樹脂を使用することが望ましい。
前記溶融混練温度は、本発明で使用される(A)ポリ乳酸樹脂の融点以上であれば、特に制限はないが、好ましくは150℃〜300℃、より好ましくは160℃〜290℃、更に好ましくは170℃〜280℃である。その温度範囲の中で、VA/VBが、0.1〜10となる溶融混練温度が好ましく、(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である場合、VA/VBが、より好ましくは0.2〜2.0、さらに好ましくは0.3〜1.5となる溶融混練温度が好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、押出成形、射出成形、ブロー成形、および未延伸糸、延伸糸、超延伸糸など各種繊維への紡糸などの方法によって、各種製品形状に加工し利用することができ、とくに機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品、光学機器、建築・土木部材および日用品など各種用途の成形品として利用することができ、特に機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品の成形品として好ましく用いられる。
上記の押出成形により得られる押出成形品としては、フイルム、インフレフィルム、シート、チューブおよび丸棒など各種形状の棒などの押出成形品が挙げられ、延伸されて使用することもでき、機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品、光学機器、建築部材および日用品などの各種用途の成形品にさらに加工されて、利用することができる。
前記機械機構部品としては、例えば、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどを挙げることができる。
前記電機・電子部品としては、電気機器のハウジング、OA機器のハウジング、各種カバーや筐体、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、ブレーカー、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、CDトレイ、カートリッジ、カセット、ソーター、ACアダプター、充電台、配電盤、コンセントカバー、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、パソコン筐体および内部部品、CRTディスプレイ筐体および内部部品、液晶ディスプレイ筐体および内部部品、プリンター筐体および内部部品、携帯電話、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末筐体および内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブの筐体および内部部品、複写機の筐体および内部部品、ファクシミリの筐体および内部部品、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などの筐体および内部部品、パラボラアンテナなどを挙げることができる。
前記自動車部品としては、内装部品、外装部品、アンダーフード部品を挙げることができ、具体的にはインストルメントパネル、トリム、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、コンソールボックス、トランクカバー、スペアタイヤカバー、天井材、床材、内板、シート材、ドアパネル、ドアボード、ステアリングホイール、バックミラーハウジング、エアーダクトパネル、ウィンドモールファスナー、スピードケーブルライナー、サンバイザーブラケット、ヘッドレストロッドホルダー、各種モーターハウジング、各種プレート、各種パネル、ルーフレール、フェイシア、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、バンパーコーナー、バンパースカートラジエーターグリル、ボンネット、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドル、ドアパネル、サイドミラーハウジング、センターピラー、エアーアウトレットルーバー、エンブレム、外装用トリム・モール、スライドルーフ、テールランプリム、精密機械関連部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエターグリル、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ソレノイドボビンなどを挙げることができる。
前記光学機器としては、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計、ディスプレイなどの関連部品を挙げることができる。
また、ブロー成形品としては、ジャバラ、ブーツ、ボトルおよび異径管・筒類として必要な形状に成形加工され、機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品、光学機器、建築部材および日用品などの成形品として各種用途に利用することができる。
以下、実施例により、本発明に関し、さらに詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
<参考例1>
(B)ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂
(B−1)溶融重合法によるポリカーボネート樹脂の製造
反応容器に、ビスフェノールAを3.9kg、ジフェニルカーボネートを4.1kg、塩基性触媒としてメタ硼酸リチウム・二水塩15mgの水溶液、および酸性化合物として硼酸0.17gを投入し、窒素雰囲気下、180℃で溶融させた。その後、攪拌しながら減圧・昇温し、生成するフェノールを除去しながら、最終的に、圧力:0.1torr、温度:270℃の条件で重合を行った。重合して得られた(B−1)ポリカーボネート樹脂をテトラヒドロフランに溶解し、PMMA換算の数平均分子量を測定した結果、17,000であった。また、(B−1)ポリカーボネート樹脂の1H−NMR測定を実施した結果、ポリカーボネート樹脂のフェノール性水酸基末端量は、ビスフェノールA骨格1mol当たり、1.0×10−2molであった。また、250℃、243sec−1の溶融粘度を測定した結果、480Pa・sであった。
<参考例2>
(E−2)ポリカーボネート−g−メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジルの合成
内容積10Lのステンレス製オートクレーブに、純水5000gを入れ、さらに懸濁剤としてポリビニルアルコール5gを溶解させた。この中に、ポリカーボネート樹脂粉末「FN1700A」(出光社製)1400gを入れ、攪拌して分散させた。別途、ラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキシド純度75%含水品「ナイパーBW」(日油社製)4g、ラジカル共重合性有機過酸化物としてt−ブチルパーオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート12g、不飽和エポキシ化合物としてグリシジルメタクリレート60g、アクリル系単量体として、メチルメタクリレート528gおよびブチルアクリレート12g、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン0.6gの混合溶液を作成し、この溶液を前記ポリカーボネート樹脂粉末の分散溶液に投入・攪拌した。
その後、オートクレーブを60〜65℃に昇温し、2時間攪拌することにより、ラジカル重合開始剤、ラジカル共重合性有機過酸化物、不飽和エポキシ化合物、アクリル系単量体をポリカーボネート樹脂粉末に含浸させた。続いて、オートクレーブの温度を80〜85℃に昇温し、その温度で5時間維持して重合を完結させ、水洗および乾燥して、グラフト化前駆体を得た。その後、得られたグラフト化前駆体を、二軸押出機(日本製鋼所社製TEX30α)に供し、230℃で溶融混練・グラフト化反応せしめることにより、(E−2)ポリカーボネート−g−メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジルを得た。
また、本発明の実施に当たり、上記参考例にて製造した以外に使用した原料を下記する。
(A―1)ポリ乳酸樹脂:D体量が4%であり、GPC測定によるPMMA換算の重量平均分子量が22万であるポリ乳酸樹脂(250℃、243sec−1の溶融粘度:260Pa・s)
(A−2)ポリ乳酸樹脂:D体量が1.4%であり、GPC測定によるPMMA換算の重量平均分子量が16万であるポリ乳酸樹脂(250℃、243sec−1の溶融粘度:120Pa・s)
(A−3)ポリ乳酸樹脂:三井化学社製「レイシアH100」(250℃、243sec−1の溶融粘度:180Pa・s)
(B−2)ポリカーボネート樹脂:出光興産社製「タフロンA1700」(ホスゲンを使用した界面重縮合法により製造、1H−NMRにより測定したポリカーボネート樹脂のフェノール性水酸基末端量は、ビスフェノールA骨格1mol当たり、0.12×10−2mol、250℃、243sec−1の溶融粘度:1100Pa・s)
(B―3)ポリカーボネート樹脂:出光興産社製「タフロンA1900」(ホスゲンを使用した界面重縮合法により製造、1H−NMRにより測定したポリカーボネート樹脂のフェノール性水酸基末端量は、ビスフェノールA骨格1mol当たり、0.09×10−2mol、250℃、243sec−1の溶融粘度:1550Pa・s)
(C−1)最外層にグリシジル基を含有するコアシェル型ゴム:ロームアンドハース社製「パラロイドEXL2314」(コア:アクリル酸ブチルゴム、シェル:メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体)
(C−2)最外層にグリシジル基を含有しないコアシェル型ゴム:三菱レイヨン社製「メタブレンW450A」(コア:アクリル酸ブチル/2−エチルヘキシルアクリレート共重合体、シェル:ポリメタクリル酸メチル)
(C−3)最外層にグリシジル基を含有しないコアシェル型ゴム:三菱レイヨン社製「メタブレンC223A」(コア:ブタジエンゴム、シェル:メタクリル酸メチル/スチレン共重合体)
(C−4)最外層にグリシジル基を含有しないコアシェル型ゴム:ロームアンドハース社製「パラロイドEXL2315」(コア:アクリル酸ブチルゴム、シェル:メタクリル酸メチル重合体)
(D−1)酸化チタン:石原産業社製「タイペークCR−60」(無機化合物としてアルミニウムで表面処理)
(D−2)酸化チタン:石原産業社製「タイペークCR−63」(無機化合物としてアルミニウム、ケイ素および有機化合物としてポリシロキサン類で表面処理)
(D−3)酸化チタン:石原産業社製「タイペークCR−60−2」(無機化合物としてアルミニウム、有機化合物として多価アルコールで表面処理)
(E−1)相溶化剤:日油社製「モディパーA4200」
(F−1)難燃剤:大八化学工業社製縮合リン酸エステル「PX−200」
(G−1)無機充填剤:日本タルク社製タルク「P−6」(径:4μm)
(G−2)無機充填剤:日本タルク社製タルク「SG2000」(径:1μm)
(H−1)フッ素系樹脂:三菱レイヨン社製アクリル変性テトラフルオロエチレン「メタブレンA3800」。
<実施例1〜17、比較例1〜13>
表1〜表4に示す原料を、表1〜表4に示す配合比で配合し、スクリュー径:30mmφ、スクリュー長さLとスクリュー径Dの比L/D=45.5のベント付き二軸押出機「TEX30α」(日本製鋼所社製)の原料供給口から供給し、設定温度:250℃、スクリュー回転数:200rpm、供給量:15kg/hの条件にて、溶融混練し、ペレタイザーによりペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得て、下記(1)〜(3)の評価を行った。
<実施例18〜30、比較例14〜24>
表5〜表7に示す原料を、表5〜表7に示す配合比で配合し、スクリュー径:30mmφ、スクリュー長さLとスクリュー径Dの比L/D=45.5のベント付き二軸押出機「TEX30α」(日本製鋼所社製)の原料供給口から供給し、設定温度:250℃、スクリュー回転数:200rpm、供給量:15kg/hの条件にて、溶融混練し、ペレタイザーによりペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得て、下記(1)〜(4)の評価を行った。
(1)成形品外観の評価
得られたペレットを、80℃で一晩熱風乾燥後、日本製鋼所社製大型電動射出成形機「J850ELIII」に供し、設定温度:250℃、金型温度:40℃にて、射出成形を実施し、成形品として、四隅に4点ピンポイントゲートのある300mm×400mm×100mm深さ(厚み10mm)の箱形容器を得て、成形品中央部付近に生じるウエルドラインおよびフローマーク(樹脂流動平行方向および樹脂流動垂直方向)、真珠光沢、表面荒れの外観評価を目視にて行った。目視による評価は、5点満点の点数(5点:きわめて良好、4点:良好、3点:やや良好、2点:やや悪い、1点:悪い)による下記評価およびそれらのトータル点数で行った。
ウエルドライン:点数が高いほどウエルドラインは確認されず、点数が低いほどウエルドラインが確認された。
フローマーク(樹脂流動平行方向および樹脂流動垂直方向):点数が高いほどフローマークは確認されず、点数が低いほどフローマークが確認された。
真珠光沢:点数が高いほど真珠光沢は確認されず、点数が低いほど真珠光沢が確認された。
表面荒れ:点数が高いほど表面荒れは確認されず、点数が低いほど表面荒れが確認された。
(2)耐衝撃性評価(ノッチ付きシャルピー衝撃強度)
得られたペレットを、80℃で一晩熱風乾燥後、小松社製射出成形機「FKS80」に供し、設定温度:250℃、金型温度:40℃にて、射出成形を実施し、ISO179に準拠した成形品を成形し、成形品にVノッチを入れた後、ISO179に準拠し、シャルピー衝撃強度を測定した。
(3)耐熱性評価(低荷重:0.45MPaにおける荷重たわみ温度)
得られたペレットを、80℃で一晩熱風乾燥後、小松社製射出成形機「FKS80」に供し、設定温度:250℃、金型温度:40℃にて、射出成形を実施し、ISO75に準拠した成形品を成形し、ISO75に準拠し、低荷重の荷重たわみ温度(DTUL)を測定した。
(4)難燃性評価(UL−94燃焼試験)
得られたペレットを、80℃で一晩熱風乾燥後、小松社製射出成形機「FKS80」に供し、設定温度:250℃、金型温度:40℃にて、射出成形を実施し、成形した127mm×12.7mm×2mm厚の試験片を用いて、アメリカUL規格サブジェクト94(UL94)の垂直燃焼試験法に準拠して燃焼試験を行い、難燃性を評価した。その評価ランクを、難燃性が優れる順に、V−0、V−1、V−2、規格外で示し、さらに同規格の5V試験を行い、規格を満たす材料を合格とした。
実施例1〜6より、ポリ乳酸樹脂およびポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融粘度比が、本発明の範囲内にあり、かつ最外層にグリシジル基を含有するコアシェル型ゴムを本発明の範囲内で含有せしめることにより、大型の成形品の外観に優れ、耐衝撃性、耐熱性にも優れることがわかる。一方、比較例1に示すように、最外層にグリシジル基を含有するコアシェル型ゴムを有しない場合、成形品外観のおよび耐衝撃性、耐熱性は顕著に劣り、また、比較例2に示すように該コアシェル型ゴムを有していても、本発明の範囲を超える多量に含有せしめた場合、耐衝撃性には優れるものの、表面荒れが大きくなり、耐熱性に大きく劣ることがわかる。また、比較例3〜7より、ポリ乳酸樹脂およびポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融粘度比が、本発明の範囲内であり、コアシェル型ゴムを有していても、コアシェル型ゴムの最外層にグリシジル基を有していないことから、成形品の外観に劣り、かつ耐衝撃性、耐熱性にも劣ることがわかる。また、比較例8に示すように、最外層にグリシジル基を含有するコアシェル型ゴムを本発明の範囲内で含有していても、ポリ乳酸樹脂およびポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融粘度比が、本発明の範囲に入らない場合も同様に、成形品の外観に劣り、かつ耐衝撃性、耐熱性にも劣ることがわかる。また、比較例9に示すように、ポリ乳酸樹脂およびポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融粘度比が、本発明の範囲外であり、かつ最外層にグリシジル基を含有しないコアシェル型ゴムを含有する場合、顕著に成形品の外観、耐衝撃性、耐熱性に劣ることがわかる。また、実施例7〜9に示すように、好ましい態様として、本発明の熱可塑性樹脂組成物に相溶化剤を含有せしめた場合、さらに外観不良改善効果が見られ、耐衝撃性、耐熱性にも優れるようになることがわかる。
また、実施例16および17より、本発明の好ましい態様として、最外層にグリシジル基を含有するコアシェル型ゴムおよび最外層にグリシジル基を含有しないゴムを併用することにより、耐衝撃性、耐熱性などの物性を大きく損なうことなく、外観不良改善効果が見られることがわかる。また、実施例10〜15より、本発明の好ましい態様として、酸化チタンを含有せしめることにより、耐衝撃性、耐熱性などの物性を大きく損なうことなく、外観不良改善効果が見られることがわかる。さらに、実施例12〜14より、無機化合物1種以上および有機化合物1種以上を組み合わせて表面処理された酸化チタンを使用することにより、外観不良改善効果がより顕著に見られ、耐衝撃性、耐熱性にも優れる傾向にあることがわかる。
一方、比較例10および12より、ポリ乳酸樹脂およびポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融粘度比が、本発明の範囲内であり、コアシェル型ゴムを有していても、コアシェル型ゴムの最外層にグリシジル基を有していないことから、成形品の外観に劣り、かつ耐衝撃性、耐熱性にも劣り、さらに酸化チタンを添加した場合においても外観改善効果は十分ではないことがわかる。また、比較例11および13より、最外層にグリシジル基を含有するコアシェル型ゴムおよび最外層にグリシジル基を含有しないゴムを併用していても、ポリ乳酸樹脂およびポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融粘度比が、本発明の範囲を外れている場合も、成形品の外観に劣り、かつ耐衝撃性、耐熱性にも劣り、さらに酸化チタンを添加した場合においても外観改善効果は十分ではないことがわかる。
また、実施例22および23に示すように、難燃剤を含有せしめた本発明の熱可塑性樹脂組成物に、さらに無機充填材(タルク)を含有せしめることにより、難燃性が向上し、かつ外観不良改善効果もあることがわかる。さらに、実施例18、20、21よりフッ素系樹脂を含有せしめることにより、難燃性が向上することがわかる。一方、実施例18では、実施例19と比較し、さらに成形品の表面外観、耐衝撃性、耐熱性に優れ、かつ難燃性にも優れることがわかる。この難燃性に優れるのは、本発明のポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂が、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートを使用した溶融重合法により得られたポリカーボネート樹脂であり、ポリカーボネート樹脂のフェノール性水酸基末端量が、本発明の好ましい態様、範囲内に入っているためである。
一方、比較例14〜16に示すように、ポリ乳酸樹脂およびポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融粘度比が、本発明の範囲内であり、コアシェル型ゴムを有していても、コアシェル型ゴムの最外層にグリシジル基を有していないことから、成形品の外観に劣り、かつ耐衝撃性、耐熱性にも劣ることがわかる。また、比較例17に示すように、最外層にグリシジル基を含有するコアシェル型ゴムを本発明の範囲内で含有していても、ポリ乳酸樹脂およびポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融粘度比が、本発明の範囲に入らない場合も同様に、成形品の外観に劣り、かつ耐衝撃性、耐熱性にも劣ることがわかる。また、比較例18に示すように、ポリ乳酸樹脂およびポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融粘度比が、本発明の範囲外であり、かつ最外層にグリシジル基を含有しないコアシェル型ゴムを含有する場合、顕著に成形品の外観、耐衝撃性、耐熱性に劣ることがわかる。
また、実施例29より、本発明の好ましい態様として、最外層にグリシジル基を含有するコアシェル型ゴムおよび最外層にグリシジル基を含有しないゴムを併用することにより、耐衝撃性、耐熱性などの物性を大きく損なうことなく、外観不良改善効果が見られることがわかる。また、実施例24〜26、28より、本発明の好ましい態様として、酸化チタンを含有せしめることにより、耐衝撃性、耐熱性などの物性を大きく損なうことなく、外観不良改善効果が見られることがわかる。さらに、実施例25、26、28より、無機化合物1種以上および有機化合物1種以上を組み合わせて表面処理された酸化チタンを使用することにより、外観不良改善効果がより顕著に見られ、耐衝撃性、耐熱性にも優れる傾向にあることがわかる。
一方、比較例21および23より、ポリ乳酸樹脂およびポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融粘度比が、本発明の範囲内であり、コアシェル型ゴムを有していても、コアシェル型ゴムの最外層にグリシジル基を有していないことから、成形品の外観に劣り、かつ耐衝撃性、耐熱性にも劣り、さらに酸化チタンを添加した場合においても外観改善効果は十分ではないことがわかる。また、比較例22および24より、最外層にグリシジル基を含有するコアシェル型ゴムおよび最外層にグリシジル基を含有しないゴムを併用していても、ポリ乳酸樹脂およびポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の溶融粘度比が、本発明の範囲を外れている場合も、成形品の外観に劣り、かつ耐衝撃性、耐熱性にも劣り、さらに酸化チタンを添加した場合においても外観改善効果は十分ではないことがわかる。