JP5753776B2 - 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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Description
また、近年では製品の高性能化及び高精度化が進み、成形品の良質な表面性状、反りの低減及び高い寸法精度の達成も求められている。
これまでに、難燃性を向上させることを目的として、芳香族ポリカーボネート樹脂、白色顔料及び特定の処理がなされたタルクをそれぞれ特定比率で含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が開発されている(特許文献1参照)。白色顔料として酸化チタンが用いられており、該酸化チタンが難燃性の向上に寄与している。
また、成形品の良質な表面性状、反りの低減及び高い寸法精度等を達成すべく、流動性を改善することを目的として、芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体、脂肪族ポリエステル、天然由来の有機充填剤及びナノポーラスカーボンを含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が開発されている(特許文献2参照)。脂肪族ポリエステルとして乳酸等が用いられており、該乳酸が流動性の改善に寄与している。また、ナノポーラスカーボンを含有させることによって、難燃性が改善されている。
そこで、本発明の課題は、高い耐衝撃性を有すると共に、高い難燃性と優れた賦形性とを共に有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
[1](A)ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(a−1)5〜100質量%及び芳香族ポリカーボネート樹脂(a−2)95〜0質量%からなるポリカーボネート樹脂40〜95質量部、及び
(B)酸化チタン5〜60質量部
からなる組成物100質量部に対して、
(C)ポリブチレンアジペート系共重合ポリエステル0.5〜4.5質量部
を含有してなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[2](a−1)成分中のポリオルガノシロキサン由来の構成単位の含有量が、前記(A)成分の全構成単位に対して0.1〜20質量%である、上記[1]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[3]金属塩系難燃剤を含まない、上記[1]又は[2]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[4]さらに(D)シリコーン化合物0.1〜4質量部を含有してなる、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[5](D)成分がオルガノポリシロキサンである、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形体。
[7]UL94に準拠した難燃性試験(成形体の厚み:0.8mm)による評価がV−0である、上記[6]に記載の成形体。
本発明は、(A)ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(a−1)5〜100質量%及び芳香族ポリカーボネート樹脂(a−2)95〜0質量%からなるポリカーボネート樹脂40〜95質量部、及び
(B)酸化チタン5〜60質量部
からなる組成物100質量部に対して、
(C)ポリブチレンアジペート系共重合ポリエステル0.5〜4.5質量部
を含有してなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物である。
以下、各成分について順に説明する。
(ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(a−1))
(a−1)成分であるポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体は、主鎖が下記一般式(I)で表される繰り返し単位及び下記一般式(II)で表される構成単位を有するポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を用いることが好ましい。なお、(a−1)成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。(a−1)成分を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、難燃性に優れる。
R3〜R6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基を示す。Yは、単結合、脂肪族又は芳香族を含む有機残基を示す。nは平均繰り返し数である。]
R1及びR2がそれぞれ独立して示すアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基(「各種」とは、直鎖状及びあらゆる分岐鎖状のものを含むことを示し、以下、同様である。)、各種ペンチル基、各種ヘキシル基が挙げられる。R1及びR2がそれぞれ独立して示すアルコキシ基としては、アルキル基部位が前記アルキル基である場合が挙げられる。
Xが表すアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基などが挙げられ、炭素数1〜5のアルキレン基が好ましい。Xが表すアルキリデン基としては、エチリデン基、イソプロピリデン基などが挙げられる。Xが表すシクロアルキレン基としては、シクロペンタンジイル基やシクロヘキサンジイル基、シクロオクタンジイル基などが挙げられ、炭素数5〜10のシクロアルキレン基が好ましい。Xが表すシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロヘキシリデン基、3,5,5−トリメチルシクロヘキシリデン基、2−アダマンチリデン基などが挙げられ、炭素数5〜10のシクロアルキリデン基が好ましく、炭素数5〜8のシクロアルキリデン基がより好ましい。
a及びbは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、好ましくは0〜2、より好ましくは0又は1である。
Yが示す脂肪族を含む有機残基としては、例えば、炭素数1〜10(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜3)のアルキレン基などが挙げられる。また、Yが示す芳香族を含む有機残基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニルジイル基などの環形成炭素数6〜12のアリーレン基などが挙げられる。
また、(a−1)成分において、上記一般式(II)で表される構成単位における平均繰り返し数nは、好ましくは10〜1,000、より好ましくは10〜300、より好ましくは10〜200、より好ましくは20〜100、より好ましくは20〜50、さらに好ましくは30〜50、特に好ましくは35〜50である。(a−1)成分においては、nが10以上であれば耐衝撃性向上の効果に優れる。
(a−1)成分の粘度平均分子量(Mv)は、好ましくは16,000〜30,000であり、より好ましくは16,000〜25,000であり、さらに好ましくは16,500〜23,000、特に好ましくは16,500〜20,000である。(a−1)成分の粘度平均分子量がこの範囲であれば、成形品の強度が十分となり、共重合体の粘度が大きくなり過ぎずに製造時の生産性が安定的になる。
ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(a−1)の製造方法に特に制限はなく、公知の方法、例えば特開2010−241943号公報などに記載の方法によって容易に製造することができる。具体的には、予め製造された芳香族ポリカーボネートオリゴマーと、末端に反応性基を有するポリオルガノシロキサンとを、非水溶性有機溶媒(塩化メチレン等)に溶解させ、二価フェノール系化合物(ビスフェノールA等)のアルカリ性化合物水溶液(水酸化ナトリウム水溶液等)を加え、重合触媒として第三級アミン(トリエチルアミン等)や第四級アンモニウム塩(トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等)を用い、末端停止剤(p−t−ブチルフェノール等の1価フェノール)の存在下、界面重縮合反応させることにより製造できる。
上記界面重縮合反応後、適宜静置して水相と非水溶性有機溶媒相とに分離し[分離工程]、非水溶性有機溶媒相を洗浄(好ましくは塩基性水溶液、酸性水溶液、水の順に洗浄)し[洗浄工程]、得られた有機相を濃縮[濃縮工程]、粉砕[粉砕工程]及び乾燥する[乾燥工程]ことによって、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(a−1)を得ることができる。
(a−2)成分である芳香族ポリカーボネート樹脂は、前記(a−1)成分以外の芳香族ポリカーボネート樹脂であり、一般的な芳香族ポリカーボネート樹脂を用いることができる。特に、前記一般式(II)で表される構成単位を有していないものであり、主鎖が下記一般式(I’)で表される繰り返し単位からなるものであることが好ましい。このような(a−2)成分としては、特に制限はなく種々の公知の芳香族ポリカーボネート樹脂を使用できる。
R7及びR8の具体例としては、前記R1及びR2と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。X’の具体例としては、前記Xと同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。c及びdは、それぞれ独立に、好ましくは0〜2、より好ましくは0又は1である。
上記の反応に際し、必要に応じて、分子量調節剤(末端停止剤)、分岐化剤などが使用される。
二価フェノール系化合物としては、下記一般式(1)で表されるものが挙げられる。
該2価フェノール系化合物の具体例としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシフェニル)アルカリ系、4,4'−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンなどが挙げられる。
これらの中でも、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系2価フェノールが好ましく、ビスフェノールAがより好ましい。
分子量調節剤は、2種以上を併用してもよい。
また、分岐化剤としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4'−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、α,α',α''−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1−[α−メチル−α−(4'−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α',α'−ビス(4''−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、フロログリシン、トリメリト酸、イサチンビス(o−クレゾール)等の官能基を3つ以上有する化合物を用いることができる。
なお、耐衝撃性、難燃性及び賦形性の観点から、(A)成分全体に対して、(a−1)成分中のポリオルガノシロキサン由来の構成単位の含有量が0.1〜7質量%(より好ましくは0.5〜6.5質量%、さらに好ましくは1〜6質量%)となるように(a−1)成分と(a−2)成分の配合比を調整することが好ましい。
(B)成分である酸化チタンとしては、ルチル型、アナターゼ型のいずれであってもよいが、熱安定性及び耐候性に優れるルチル型酸化チタンを用いるのが好ましい。酸化チタンは、(A)成分の熱分解抑制の観点から、その表面が、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、スズ、セリウム、チタン及び亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属の含水酸化物及び/又は酸化物で被覆されたものであることが好ましい。
酸化チタンの平均粒子径は、好ましくは0.1〜0.5μm程度であり、好ましくは0.1〜0.3μmである。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、(A)成分40〜95質量部と(B)成分5〜60質量部からなる組成物(合計100質量部)を含有してなるものである。好ましくは、(A)成分45〜95質量部と(B)成分5〜55質量部からなる組成物(合計100質量部)を含有してなるものである。(A)成分と(B)成分の合計100質量部中、(B)成分が5質量部未満であると、難燃性が不十分となる。一方、(A)成分と(B)成分の合計100質量部中、(B)成分が60質量部を超えると、衝撃強度が低下する。
(C)成分である脂肪族−芳香族ポリエステルは、ジカルボン酸単位として、脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位とを併せ持つものである。脂肪族−芳香族ポリエステルは、当然のことながらジオール単位も有しており、ジオール単位としては、脂肪族及び/又は脂環式ジオール単位であることが好ましい。
該(C)成分によって、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の賦形性が改善する。これは、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)を低下させることができたためと推測する。該ガラス転移温度(Tg)の低下により、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形する際に、金型形状の再現性が良いだけでなく、金型温度を下げて成形することもでき、製造コストを低減でき、樹脂組成物の物性変化も抑制することができる。
ジカルボン酸単位の由来となるジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体(以下、「脂肪族ジカルボン酸成分」と称することがある。)と、芳香族ジカルボン酸又はその誘導体(以下、「芳香族ジカルボン酸成分」と称することがある。)とがある。
脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,6−シクロヘキサンジカルボン酸等、及びこれらの酸無水物、さらにはこれらの低級アルキルエステル等が挙げられる。これらの中でも、コハク酸、グルタル酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカン二酸、これらの低級アルキル(例えば炭素数1〜4のアルキル)エステル誘導体が好ましく、アジピン酸、アジピン酸の低級アルキルエステル誘導体、又はこれらの混合物がより好ましい。脂肪族ジカルボン酸成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等、及びこれらの酸無水物、さらにはこれらの低級アルキルエステル等が挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸、イソフタル酸、これらの低級アルキル(例えば炭素数1〜4のアルキル)エステル誘導体が好ましく、テレフタル酸及び/又はテレフタル酸のメチルエステルか、テレフタル酸及び/又はテレフタル酸のメチルエステルとイソフタル酸及び/又はイソフタル酸のメチルエステルとを含有する混合物がより好ましい。芳香族ジカルボン酸成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
脂肪族ジカルボン酸単位の割合が少なすぎると(芳香族ジカルボン酸単位が多過ぎると)、脂肪族芳香族ポリエステルの生分解性が損なわれる。また、脂肪族ジカルボン酸単位の割合が多過ぎると(芳香族ジカルボン酸単位が少な過ぎると)、生分解速度が速すぎ、熱分解温度が低下するために好ましくない。
脂肪族−芳香族ポリエステル中の脂肪族及び/又は脂環式ジオール単位の含有割合は、通常、脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位の合計と実質的に等モルである。
脂肪族−芳香族ポリエステルは、該共重合体に対し0.01〜10質量%のポリイソシアネートで高分子量化されていてもよい。該ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシネート等及びこれらのブロック化イソシアネート等が挙げられる。
また、脂肪族−芳香族ポリエステルは、通常、重量平均分子量5,000〜500,000のものが用いられる。
脂肪族−芳香族ポリエステルのメルトボリュームレート(MVR)に特に制限は無いが、好ましくは1〜20cm3/10分、より好ましくは1〜10cm3/10分である。脂肪族−芳香族ポリエステルの融点に特に制限は無いが、好ましくは80〜130℃、より好ましくは90〜125℃、さらに好ましくは100〜120℃である。
なお、(C)成分の代わりに、乳酸等の脂肪族ポリエステルを用いた場合、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性に大きな変化は無いが、ガラス転移温度(Tg)の低減効果が不十分であるためか、賦形性が不十分となる(比較例3参照)。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、必要に応じて、さらに(D)成分としてシリコーン化合物を含有してなるものであってもよい。該(D)成分は、前記(C)成分によってポリカーボネート樹脂の分解が進行する場合に、その分解を抑制する効果を発揮する。特に、(C)成分が、シリコーン等で表面処理されていない酸化チタンである場合に有効である。また併せて、(C)成分の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中での分散性を良好にする効果も有する。
シリコーン化合物としては、オルガノポリシロキサンが好ましく、オルガノポリシロキサンの中でも、アルキル水素シリコーンやアルコキシシリコーンが好ましい。例えば、例えば、東レ・ダウコーニング社製のSH1107、SR2402、BY16−160、BY16−161、BY16−160E、BY16−161E等が挙げられる。
オルガノポリシロキサンとしては、アルコキシシリコーンが、シリコーン主鎖に対してメチレン基を介してアルコキシ基と結合する分子構造を有するオルガノポリシロキサンであるもの(BY16−161)が、特に好ましく用いられる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が(D)成分を含有してなるものである場合、(D)成分の含有量は、(C)成分に対して0.01〜0.1倍質量部であることが好ましく、そのため、(A)成分及び(B)成分からなる組成物100質量部に対して、おおよそ0.1〜4質量部が好ましく、0.5〜4質量部がより好ましく、0.5〜3質量部がさらに好ましい。(D)成分を所定量以上配合することにより、(C)成分の影響で(A)成分が劣化して分子量が低下するのを抑制することができ、所定量以下とすることにより、成形体表面にシルバーが発生して製品外観を低下させるおそれがない。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、必要に応じて、さらに(E)成分として酸化防止剤を含有してなるものであってもよい。
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤やフェノール系酸化防止剤等が好適に用いられる。
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルノニルホスファイト、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(イソデシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、ジブチルハイドロジェンホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンジホスホナイト、4,4'−イソプロピリデンジフェノールドデシルホスファイト、4,4'−イソプロピリデンジフェノールトリデシルホスファイト、4,4'−イソプロピリデンジフェノールテトラデシルホスファイト、4,4'−イソプロピリデンジフェノールペンタデシルホスファイト、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジトリデシルホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリル−ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、3,4,5,6−ジベンゾ−1,2−オキサホスファン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルブチルホスフィン、ジフェニルオクタデシルホスフィン、トリス−(p−トリル)ホスフィン、トリス−(p−ノニルフェニル)ホスフィン、トリス−(ナフチル)ホスフィン、ジフェニル−(ヒドロキシメチル)−ホスフィン、ジフェニル−(アセトキシメチル)−ホスフィン、ジフェニル−(β−エチルカルボキシエチル)−ホスフィン、トリス−(p−クロロフェニル)ホスフィン、トリス−(p−フルオロフェニル)ホスフィン、ジフェニルベンジルホスフィン、ジフェニル−β−シアノエチルホスフィン、ジフェニル−(p−ヒドロキシフェニル)−ホスフィン、ジフェニル−1,4−ジヒドロキシフェニル−2−ホスフィン、フェニルナフチルベンジルホスフィン等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤は市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、Irganox1010(チバ・ジャパン株式会社製、商標)、Irganox1076(チバ・ジャパン株式会社製、商標)、Irganox1330(チバ・ジャパン株式会社製、商標)、Irganox3114(チバ・ジャパン株式会社製、商標)、Irganox3125(チバ・ジャパン株式会社製、商標)、BHT(武田薬品工業株式会社製、商標)、Cyanox1790(サイアナミド社製、商標)及びSumilizerGA−80(住友化学株式会社製、商標)等が挙げられる。
酸化防止剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が(E)成分を含有してなるものである場合、(E)成分の含有量は、酸化防止能の観点から、(A)成分及び(B)成分からなる組成物100質量部に対して、おおよそ0.01〜3質量部が好ましく、0.01〜1質量部がより好ましく、0.05〜0.5質量部がさらに好ましい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、必要に応じて、さらに(F)成分としてポリフルオロオレフィンを含有してなるものであってもよい。
ポリフルオロオレフィンを含有させることにより、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に、難燃性試験等における燃焼時の溶融滴下防止効果を与えることができる。ここで、ポリフルオロオレフィンとしては、通常、フルオロエチレン構造を含む重合体または共重合体であり、例えば、ジフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ素を含まないエチレン系モノマーとの共重合体である。好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、その平均分子量は、500,000以上であることが好ましく、より好ましくは500,000〜10,000,000である。本発明で用いることができるポリテトラフルオロエチレンとしては、現在知られている全ての種類のものを用いることができる。
なお、ポリテトラフルオロエチレンのうち、フィブリル形成能を有するものを用いると、さらに高い溶融滴下防止性を付与することができる。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)には特に制限はないが、例えば、ASTM規格において、タイプ3に分類されるものが挙げられる。具体的には、例えば、テフロン6−J(三井・デュポンフロロケミカル社製)、ポリフロンD−1、ポリフロンF−103、ポリフロンF201(ダイキン工業社製)、CD076(旭硝子フロロポリマーズ社製)等を挙げることができる。
また、上記タイプ3に分類されるもの以外では、例えば、アルゴフロンF5(モンテフルオス社製)、ポリフロンMPA、ポリフロンFA−100(ダイキン工業社製)等を挙げることができる。これらのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。上記のようなフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、例えばテトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウム、アンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、6.9〜689.5kPaの圧力下、温度0〜200℃、好ましくは20〜100℃で重合させることによって得られる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が(F)成分を含有してなるものである場合、(F)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分からなる組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜2質量部であり、より好ましくは0.05〜1質量部、さらに好ましくは0.1〜1質量部である。(F)成分を所定量以上配合することにより、難燃性試験等における燃焼時の溶融滴下防止効果が充分となる。また、所定量以下の配合量とすることにより、配合量に見合った効果が得られ、耐衝撃性および成形品外観に好影響を与える。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、前記(A)成分〜(F)成分以外のその他の成分を含有させてなるものであってもよい。該その他の成分としては、ポリカーボネート樹脂組成物に通常用いられる各種添加剤を挙げることができ、例えば、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、難燃剤(金属塩系難燃剤を除く。)等が挙げられる。
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物が、当該その他の成分を含有してなるものである場合、その含有量は、(A)成分及び(B)成分からなる組成物100質量部に対して、それぞれ好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、特に好ましくは2質量部以下である。
該配合及び混練は、通常、用いられている方法、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等を用いる方法により行うことができる。
なお、混練に際しての加熱温度は、通常、250〜320℃の範囲で選択される。
こうして得られる本発明の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物は、メルトボリュームレート(MVR)が10〜20cm3/10分程度であり、ガラス転移温度(Tg)が143℃以下、詳細には130〜143℃程度であり、より好ましいものでは130〜140℃、さらに好ましいものでは130〜137℃である。また、こうして得られる本発明の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物は、耐衝撃性に優れ、難燃性が高く、かつ賦形性に優れている。
NMR測定によって、1.7ppmに見られるビスフェノールAのイソプロピルのメチル基のピークと、0.2ppmに見られるジメチルシロキサンのメチル基のピークとの強度比を基にしてポリジメチルシロキサン(PDMS)残基の量を求めた。
(2.粘度平均分子量(Mv)の測定方法)
ウベローデ型粘度管にて、20℃における塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これにより極限粘度〔η〕を求め、次の関係式(Schnellの式)より計算した。
〔η〕=1.23×10-5×Mv0.83
ISO 1133に準拠して、300℃、荷重1.2kgfにて測定を行った。
(4.ガラス転移温度(Tg)の測定)
示差走査熱量分析装置「DSC8500」(パーキンエルマー社製)を用いてガラス転移温度(Tg)を測定した。
(5.Izod衝撃強度(耐衝撃性)の測定)
ASTM D790に準拠して、23℃にてIzod衝撃試験(ノッチ付)を行った。
(6.難燃性の評価)
UL94に準拠して、成形温度300℃、金型温度80℃にて、127mm×12mm×厚み0.8mmの試験片を作成し、難燃性を評価した。
(7.賦形性の評価)
図1に示す波板状の表面を有する金型を用いて、下記条件にて成形体を作成し、該成形体の中央部をデジタルマイクロスコープ「KH−7700」(株式会社ハイロックス製)にて観察し、下記評価基準に従って評価した。
−成形条件−
成形機:「AZ7000」(日精樹脂工業株式会社製)
成形温度:330℃
金型温度:120℃
充填速度:140cc/秒
保圧設定:40MPa
冷却時間:60秒
−評価基準−
○:波板状の金型表面の波の頂点部位がシャープである
×:波板状の金型表面の波の頂点部位が丸い
(1)ポリカーボネートオリゴマーの製造
5.6質量%水酸化ナトリウム水溶液に後から溶解するビスフェノールA(BPA)に対して2,000質量ppmの亜二チオン酸ナトリウムを加え、これにBPA濃度が13.5質量%になるようにBPAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
このBPAの水酸化ナトリウム水溶液40L/hr、塩化メチレン15L/hrの流量で、かつホスゲンを4.0kg/hrの流量で内径6mm、管長30mの管型反応機に連続的に通した。
管型反応器はジャケット部分を有しており、ジャケットに冷却水を通して反応液の温度を40℃以下に保った。
管型反応器を出た反応液は後退翼を備えた内容積40Lのバッフル付き槽型反応器へ連続的に導入され、ここにさらにBPAの水酸化ナトリウム水溶液2.8L/hr、25質量%水酸化ナトリウム水溶液0.07L/hr、水17L/hr、1質量%トリエチルアミン水溶液を0.64L/hr添加して反応を行った。
槽型反応器から溢れ出る反応液を連続的に抜き出し、静置することで水相を分離除去し、塩化メチレン相を採取した。
このようにして得られたポリカーボネートオリゴマーは、濃度329g/L、クロロホーメート基濃度0.74mol/Lであった。
邪魔板、パドル型撹拌翼及び冷却用ジャケットを備えた50L槽型反応器に上記(1)で製造したポリカーボネートオリゴマー溶液15L、塩化メチレン9.0L、ジメチルシロキサン単位の繰返し数が38であるアリルフェノール末端変性ポリジメチルシロキサン(PDMS)393g及びトリエチルアミン8.8mLを仕込み、撹拌下でここに6.4質量%水酸化ナトリウム水溶液1389gを加え、10分間ポリカーボネートオリゴマーとアリルフェノール末端変性PDMSの反応を行った。
この重合液に、p−t−ブチルフェノール(PTBP)の塩化メチレン溶液(PTBP140gを塩化メチレン2.0Lに溶解したもの)、BPAの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH577gと亜二チオン酸ナトリウム2.0gを水8.4Lに溶解した水溶液にBPA1012gを溶解させたもの)を添加し50分間重合反応を行った。
希釈のため塩化メチレン10Lを加え10分間撹拌した後、ポリカーボネートポリジメチルシロキサン共重合体を含む有機相と過剰のBPA及びNaOHを含む水相に分離し、有機相を単離した。
こうして得られたポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体の塩化メチレン溶液を、その溶液に対して順次、15溶液%の0.03mol/LNaOH水溶液、0.2モル/L塩酸で洗浄し、次いで洗浄後の水相中の電気伝導度が0.01μS/m以下になるまで純水で洗浄を繰り返した。
洗浄により得られたポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体1(PDMS−PC1)の塩化メチレン溶液を濃縮・粉砕し、得られたフレークを減圧下120℃で乾燥した。
得られたポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体の核磁気共鳴(NMR)により求めたPDMS残基量(PDMS共重合量)は6.0質量%、ISO1628−4(1999)に準拠して測定した粘度数は46.9、粘度平均分子量(Mv)は17,400であった。
製造例1において、ジメチルシロキサン単位の繰返し数が90であるアリルフェノール末端変性ポリジメチルシロキサン(PDMS)393gの代わりに、ジメチルシロキサン単位の繰返し数が90であるアリルフェノール末端変性ポリジメチルシロキサン(PDMS)393gを用いた以外は同様に実施し、ポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体2(PDMS−PC2)を得た。PDMS残基量(PDMS共重合量)は6.0質量%、粘度数は48.0、粘度平均分子量(Mv)は17,900であった。
製造例1において、ジメチルシロキサン単位の繰返し数が38であるアリルフェノール末端変性ポリジメチルシロキサン(PDMS)量を229gに変更した以外は同様に実施し、ポリカーボネート−ポリジメチルシロキサン共重合体3(PDMS−PC3)を得た。PDMS残基(PDMS共重合量)は3.5質量%、粘度数は47.0、粘度平均分子量(Mv)は17,500であった。
二軸押出成形機「TEM35」(機種名、東芝機械株式会社製)を用いて表1に記載の各成分を温度260℃で混練し、ペレットを得た。
該ペレットを用い、射出成形機「IS100EN」(機種名、東芝機械株式会社製)によって、温度240℃で試験片を作成した。
*1:製造例1で得られたPDMS−PC1、粘度平均分子量:17,400
*2:製造例2で得られたPDMS−PC2、粘度平均分子量:17,900
*3:製造例3で得られたPDMS−PC3、粘度平均分子量:17,500
*4:芳香族ポリカーボネート樹脂:タフロンA1700(粘度平均分子量:17,000、出光興産株式会社製)
*5:芳香族ポリカーボネート樹脂:タフロンA1900(粘度平均分子量:26,000、出光興産株式会社製)
*6:PF−726、ルチル型、酸化チタン含量94%、平均粒子径0.21μm、石原産業株式会社製
*7:PC−3、ルチル型、酸化チタン含量92%、平均粒子径0.21μm、表面処理品、石原産業株式会社製
*8:Ecoflex F BX7011、BASFジャパン株式会社製
*9:LACEA H−100、ポリ乳酸、三井化学株式会社製
*10:BY16−161、オルガノポリシロキサン、東レダウコーニング株式会社製
*11:JC−263、トリフェニルホスフィン、城北化学工業株式会社製
*12:CD076、ポリテトラフルオロエチレン、旭硝子株式会社製
*13:エフトップKFBS、主成分:ペルフルオロブタンスルホン酸カリウム、株式会社ジェコム製
一方、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(a−1)を用いていない比較例1では、難燃性が大幅に低下し、賦形性も悪化した。(C)成分として、脂肪族−芳香族ポリエステルを使用しなかった比較例2、及び脂肪族−芳香族ポリエステルの代わりに脂肪族ポリエステルを用いた比較例3では、いずれの場合もガラス転移温度(Tg)が高くなって、賦形性が悪化した。実施例8の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に、難燃性のさらなる改善効果を望んでさらに金属塩系難燃剤を加えた比較例4では、予想に反して耐衝撃性と共に難燃性も低下し、さらにTgが高くなって賦形性が悪化した。また、(C)成分を多く使用した比較例5では、Tgをかなり低下させることができたが、難燃性が低下した。(B)成分が少なすぎる比較例6及び(B)成分が多すぎる比較例7では、いずれも難燃性が低下し、また比較例7では耐衝撃性も大幅に低下した。
Claims (7)
- (A)ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(a−1)5〜100質量%及び芳香族ポリカーボネート樹脂(a−2)95〜0質量%からなるポリカーボネート樹脂40〜95質量部、及び
(B)酸化チタン5〜60質量部
からなる組成物100質量部に対して、
(C)ポリブチレンアジペート系共重合ポリエステル0.5〜4.5質量部
を含有してなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。 - (a−1)成分中のポリオルガノシロキサン由来の構成単位の含有量が、前記(A)成分の全構成単位に対して0.1〜20質量%である、請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 金属塩系難燃剤を含まない、請求項1又は2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- さらに(D)シリコーン化合物0.1〜4質量部を含有してなる、請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- (D)成分がオルガノポリシロキサンである、請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形体。
- UL94に準拠した難燃性試験(成形体の厚み:0.8mm)による評価がV−0である、請求項6に記載の成形体。
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