JP5198811B2 - ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents
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Description
また近年では、PC樹脂に植物由来成分を配合することによって、製品中の植物比率を向上させ、環境に配慮したプラスチック製品の開発も進んでいる。植物由来プラスチックは、脂肪族ポリエステル、及びそれらの共重合体が主流であり、植物由来プラスチックをポリカーボネート樹脂に添加することで耐薬品性が向上することが知られている。脂肪族ポリエステルの中でも、耐熱性、耐久性の面から、ポリ乳酸をブレンドした樹脂組成物の開発が進んでいる。
特許文献1には、PC樹脂にポリ乳酸をブレンドし、流動性、機械的物性を向上させる技術が開示されている。ポリ乳酸をブレンドすることで、流動性の大幅な向上が可能となるが、PC樹脂とポリ乳酸の屈折率の差が大きいため、成形品には真珠光沢が生じてしまい、透明性を有する成形体を得ることが困難であった。
また特許文献2には、PC樹脂とポリ乳酸を非せん断下でスピノーダル分解させることによって耐熱性、機械強度を向上させる技術が開示されている。しかし、ポリ乳酸中におけるPC樹脂の構造周期・粒子間距離が可視光の波長領域に含まれるため、透明性を安定的に発現できないというおそれがある。
また、特許文献3には、PC樹脂にポリ乳酸、オキサゾリン化合物等をブレンドした、真珠光沢のない樹脂組成物が開示されている。しかし、ポリ乳酸が配合されているために、透明性を発現できないという問題がある。
すなわち、本発明は、以下のポリカーボネート脂組成物及びその成形体を提供するものである。
1. (A)芳香族ポリカーボネート樹脂95〜10質量%と(B)ポリブチレンアジペート系樹脂5〜90質量%からなる樹脂成分100質量部、及び(C)カルボジイミド化合物、エポキシ化合物及びオキサゾリン化合物から選ばれる一種以上の化合物0.05〜10質量部を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
2. (B)成分のポリブチレンアジペート系樹脂が、ポリブチレンアジペートとポリブチレンテレフタレートとの共重合体である上記1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
3. ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形体の厚さ2mmにおけるヘーズが、JIS K7105に準拠して測定した値で3.0%以下である上記1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
4. ペレット状である上記1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
5. 上記1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物から得られた成形体。
6. 透明シート状物である上記5に記載の成形体。
なお、粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ型粘度計を用いて、20℃における塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これより極限粘度[η]を求め、[η]=1.23×10-5Mv0.83の式により算出した値である。
本発明のPC樹脂組成物は、(A)成分の芳香族ポリカーボネート樹脂95〜10質量%と(B)成分のポリブチレンアジペート系樹脂5〜90質量%からなる樹脂成分を含む。(B)成分のポリブチレンアジペート系樹脂の含有量が5質量%以上であると、十分な耐薬品性が得られ、また、90質量%以下であると、耐熱性や透明性が保たれる。このような観点から、(A)成分90〜40質量%と(B)成分10〜60質量%からなる樹脂成分が好ましい。
カルボジイミド化合物は、分子中に一個以上のカルボジイミド基を有する化合物であり、ポリカルボジイミド化合物をも含む。カルボジイミド化合物の製造方法としては、例えば、触媒として、例えば、O,O−ジメチル−O−(3−メチル−4−ニトロフェニル)ホスホロチオエート、O,O−ジメチル−O−(3−メチル−4−(メチルチオ)フェニル)ホスホロチオエート、O,O−ジエチル−O−2−イソプロピル−6−メチルピリミジン−4−イルホスホロチオエート等の有機リン系化合物、又は、例えばロジウム錯体、チタン錯体、タングステン錯体、パラジウム錯体等の有機金属化合物を用い、各種ポリイソシアネート化合物を約70℃以上の温度で、無溶媒又は不活性溶媒(例えば、ヘキサン、ベンゼン、ジオキサン、クロロホルム等)中で脱炭酸重縮合により製造する方法を挙げることができる。
この成形体は、該成形体の厚さ2mmにおけるヘーズが、JIS K7105に準拠して測定した値で3.0%以下であることが好ましい。このヘーズが3.0%以下であると、透明性に優れる成形体となる。
上記成形体は、透明フィルム又は透明シートとして好適に用いられ。ここで、上記透明フィルムとは、通常、厚さが5〜500μm程度の透明シート状物を指し、透明シートとは、通常、厚さが500〜1000μm程度の透明シート状物を指す。
(1)ヘーズ
JIS K7105に記載の測定方法に準拠し、射出成形により得られた厚さ2mmの試験片を用いて温度23℃にて測定した。
(2)アッベ数
温度220〜320℃で熱プレス成形することにより、厚さ3mmの試験片を作製した。得られた試験片について、アタゴ社製のアッベ屈折率計を用いて20℃にてナトリウムD線(波長589.3nm)におけるアッベ数(νd)を測定した。
(3)全光線透過率
JIS K7105に記載の測定方法に準拠し、日本電色工業株式会社製のSZシグマ90を用いて測定した。
(4)耐熱性
荷重撓み温度をJIS K7191に記載の測定方法に従い、荷重1.8MPa、温度23℃で測定した。
(5)耐薬品性
耐薬品性評価法(1/4楕円による限界歪み)に準拠した。図1(斜視図)に示す治具(1/4楕円の面)に試料片(厚み3mm)を固定し、試料片にガソリン(ゼアス、出光興産株式会社製)を塗布し、48時間保持した。クラックが発生する最小長さ(X)を読み取り、下記式(1)より限界歪み(%)を求めた。下記式(1)において、tは試験片肉厚である。
特開2002−12755号公報の製造例4に準拠し、以下のようにしてPC−PDMS(ポリジメチルシロキサン)共重合体を製造した。
(1)PCオリゴマーの製造
400リットルの5質量%水酸化ナトリウム水溶液に、60kgのビスフェノールAを溶解させ、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
次いで、室温に保持したこのビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液を138L/時間の流量で、また、塩化メチレンを69L/時間の流量で、内径10mm、管長10mの管型反応器にオリフィス板を通して導入し、これにホスゲンを並流して10.7kg/時間の流量で吹き込み、3時間連続的に反応させた。ここで用いた管型反応器は二重管となっており、ジャケット部分には冷却水を通して反応液の排出温度を25℃に保った。また、排出液のpHは10〜11となるように調整した。
このようにして得られた反応液を静置することにより、水相を分離、除去し、塩化メチレン相(220L)を採取して、PCオリゴマー(濃度317g/L)を得た。ここで得られたPCオリゴマーの重合度は2〜4であり、クロロホーメイト基の濃度は0.7mol/Lであった。
オクタメチルシクロテトラシロキサン1,483g、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン96g及び86質量%硫酸35gを混合し、室温で17時間攪拌した。その後、オイル相を分離し、炭酸水素ナトリウム25gを加え1時間攪拌した。濾過した後、150℃、4×102Pa(3torr)で真空蒸留し、低沸点物を除きオイルを得た。
2−アリルフェノール60gと塩化白金−アルコラート錯体としてのプラチナ0.0014gとの混合物に、上記で得られたオイル294gを90℃の温度で添加した。この混合物を90〜115℃の温度に保ちながら3時間攪拌した。生成物を塩化メチレンで抽出し、80質量%の水性メタノールで3回洗浄し、過剰の2−アリルフェノールを除いた。その生成物を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で115℃に加熱して溶剤を留去した。得られた末端フェノールPDMSは、NMRの測定により、ジメチルシラノオキシ単位の繰り返し数30のものであった。
上記(2)で得られた反応性PDMS182gを塩化メチレン2Lに溶解させ、上記(1)で得られたPCオリゴマー10Lを混合した。そこへ、水酸化ナトリウム26gを水1Lに溶解させたものと、トリエチルアミン5.7mlを加え、500rpmで室温にて1時間攪拌、反応させた。
反応終了後、上記反応系に、5.2質量%の水酸化ナトリウム水溶液LにビスフェノールA600gを溶解させたもの、塩化メチレン8リットル及びp−t−ブチルフェノ−ル96gを加え、500rpmで室温にて2時間攪拌、反応させた。
反応終了後、塩化メチレン5Lを加え、さらに、水5Lでの水洗、0.03mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液5Lでのアルカリ洗浄、0.2mol/Lの塩酸5Lで酸洗浄、及び水5リットルでの水洗2回を順次行い、最後に塩化メチレンを除去し、フレーク状のPC−PDMS共重合体を得た。得られたPC−PDMS共重合体を120℃で24時間真空乾燥した。粘度平均分子量は17,000であり、PDMS含有率は4.0質量%であった。
(1)粘度平均分子量 (Mv)
ウベローデ型粘度計にて、20℃における塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これより極限粘度[η]を求めた
後、次式にて算出した。
[η]=1.23×10-5Mv0.83
(2)PDMS含有率
1H−NMRで1.7ppmに見られるビスフェノールAのイソプロピルのメチル基のピークと、0.2ppmに見られるジメチルシロキサンのメチル基のピークとの強度比を基に求めた。
第1表及び第2表に示す配合成分は、下記のとおりである。
A−1:粘度平均分子量19,000のビスフェノールAポリカーボネート(A1900、出光興産株式会社製)
A−2:製造例1で得られたPC−PDMS共重合体、粘度平均分子量は17,000、PDMS含有量4.0質量%
B−1:ポリブチレンアジペート/テレフタレート共重合体(エコフレックス、BASF社製、共重合モル比50/50)
B−2:ポリブチレンアジペート/テレフタレート共重合体(エンポールG8000、イレケミカル社製)
B−3:ポリ乳酸樹脂(レイシアH−100、三井化学株式会社製)
C−1:ジシクロヘキシルカルボジイミド(カルボジライトLA−1、日清紡績株式会社製)
C−2:オキサゾリン基含有反応性ポリスチレン(エポクロスRPS−1005、株式会社日本触媒製)
C−3:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピクロンAM−040−P、大日本インキ化学工業株式会社製)
得られたペレットを80℃で5時間乾燥させた後、射出成形機を用いて、シリンダー温度240℃、金型40℃で射出成形し、所望の試験片を得た。この試験片を用いて各種測定を行った。結果を第1表及び第2表に示す。
比較例1から、(B)成分を含まないと、耐薬品性が低いことがわかる。比較例2〜6から、(C)成分を含まないと、透明性が低下することがわかる。比較例7〜9から、(A)成分及び(B)成分の配合割合が本発明の範囲外であると、耐薬品性が向上せず、透明性も低下することがわかる。比較例10〜13から、(C)成分の配合割合が本発明の範囲外であると、樹脂のゲル化が起こり不透明になる他、耐薬品性の向上効果が少ないことがわかる。比較例14及び15から、ポリ乳酸が配合されると、成形体は真珠光沢もしくは白濁を有し、透明性が発現しないことがわかる。比較例16から、(A)成分を含まないと、不透明であり、耐熱性が低いことがわかる。
Claims (7)
- (A)芳香族ポリカーボネート樹脂95〜10質量%と(B)ポリブチレンアジペート系樹脂5〜90質量%からなる樹脂成分100質量部、及び(C)カルボジイミド化合物、エポキシ化合物及びオキサゾリン化合物から選ばれる一種以上の化合物0.05〜10質量部を含むポリカーボネート樹脂組成物であって、(B)成分のポリブチレンアジペート系樹脂が、ポリブチレンアジペートとポリブチレンテレフタレートとの共重合体であり、前記ポリカーボネート樹脂組成物中にポリ乳酸を含有しないことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
- (B)成分の前記共重合体におけるポリブチレンアジペートとポリブチレンテレフタレートとの共重合モル比が25/75〜80/20である、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- (C)成分が、カルボジイミド化合物である、請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形体の厚さ2mmにおけるヘーズが、JIS K7105に準拠して測定した値で3.0%以下である請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- ペレット状である請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物から得られた成形体。
- 透明シート状物である請求項6に記載の成形体。
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