一つの実施態様では、熱可塑性組成物は、A)熱可塑性樹脂;B)機能性シェルポリマーを含まない、機能性シェルポリマーと反応するこができる衝撃改質剤;およびC)コアシェル形態であり、機能性シェルポリマーを含んでなる衝撃改質剤を含んでなる。
別の実施態様では、熱可塑性組成物は、熱可塑性樹脂および粒子の低凝集体(loose agglomeration)を含んでなり、当該低凝集体が空間を含んでなり、当該低凝集体の少なくとも50%が、該低凝集体の面積の31〜60%の空間を含んでなり、かつ、当該低凝集体がコアシェル形態である粒子を含んでなる。
さらに別の実施態様では、熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、およびポリブチレンテレフタレートからなる群から選択されるポリエステルを含んでなる。
さらに別の実施態様では、熱可塑性樹脂は、組成物に約40〜約90重量%、好ましくは約60〜約80重量%、最も好ましくは約65〜約75重量%含まれてなる。
未だに開示されていない実施態様では、低凝集体は成分Bとして衝撃改質剤および成分Cとして第2の衝撃改質剤をふくんでなる。
別の実施態様では、成分Bはコアシェル形態である。異なる実施態様では、成分Bはシロキサンを含んでなり得る。さらに別の実施態様では、成分Bは、シリコーンゴムを10〜70重量%、特に好ましくは20〜60重量%含んでなるグラフトベース(graft base)を含んでなり得る。さらに別の実施態様では、成分Bはアクリルを含んでなる。未だに開示されていないさらに別の実施態様では、成分Bはエポキシ官能性を含まない、エポキシ官能性と反応するこができる衝撃改質剤を含んでなる。
異なる実施態様では、成分Bまたは成分Cは、炭素−炭素二重結合を有さないコアを含んでなる。別の異なる実施態様では、成分Bまたは成分Cはアクリレート、好ましくはメタクリル酸メチルを含んでなる。
さらに別の実施態様では、成分Cの機能性シェルポリマーはエポキシ官能性であり、成分Cのエポキシ官能性は(メタ)クリル酸グリシジルであってもよい。
未だに開示されていない別の実施態様では、成分Bまたは成分Cのガラス転移温度は−40℃以下、好ましくは−50℃以下である。
異なる実施態様では、成分Bまたは成分Cは、衝撃改質剤のコアおよびシェルの総重量に対する割合として、約60〜約95重量%、好ましくは約70〜約80重量%のコアを含んでなる。
さらに別の実施態様では、成分Bは、組成物中に約5〜約20重量%、好ましくは約7.5〜約15重量%の量で存在し、一方でまたは代替的に、成分Cは、組成物中に約1〜約10重量%、好ましくは約2〜約7.5重量%の量で存在していてもよい。
新しい実施態様では、熱可塑性組成物は、さらに成分Dとしてビニル(コ)ポリマーを含んでなる。この実施態様では、ビニル(コ)ポリマーはスチレンアクリロニトリルであってもよく、そうでなくてもよい。さらに、成分Dは、熱可塑性組成物に約5〜約20重量%含まれてなり得る。
さらに別の実施態様では、熱可塑性組成物は、難燃剤、難燃共力剤、防滴剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光吸収剤、充填剤、補強剤、追加的衝撃改質剤、滑沢剤、可塑剤、蛍光増白剤、顔料、染料、着色剤、静電防止剤、離型剤、発泡剤およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤である成分Eをさらに含んでなる。
この実施態様では、成分Eは、熱可塑性組成物に約0.02〜約1.64重量%含まれてなり得る。
別の実施態様では、成分Bおよび成分Cは、粒子の低凝集体を形成し、低凝集体の少なくとも50%が、低凝集体の面積の31〜60%の空間を含んでなる。異なる実施態様では、低凝集体が、直径0.4〜4.0ミクロンの粒子を含んでなる。
未だに開示されていない別の実施態様では、成形部品は、上記の実施態様のいずれか1つの熱可塑性組成物を含んでなり得る。別の実施態様では、成形部品は、熱可塑性樹脂および粒子の低凝集体を含んでなり、当該低凝集体の少なくとも50%が、該低凝集体の面積の31〜60%の空間を含んでなる。さらに別の実施態様では、射出成形、押出し、およびブロー成形の方法の少なくとも1つを含んでなる、上で開示された熱可塑性組成物を含んでなる成形部品の製造方法が存在する。
発明の具体的説明
本発明を限定する目的ではなく、例示する目的で記載する。本明細書全体での「種々の非制限的な実施態様」、「特定の実施態様」等の言及は、特定の特徴または特性が一実施態様に含まれているかもしれないことを意味する。したがって、本明細書での「種々の非制限的な実施態様では」、「特定の実施態様では」という句の使用は、共通の実施態様に必ずしも言及しているわけではなく、異なる実施態様に言及していることがある。さらに、特定の特徴または特性は、1つ以上の実施態様で好適な方法にて組合せてもよい。したがって、種々の実施態様または特定の実施態様に関連して例示または記載された特別の特徴または特性は、限定することなく、全体的または部分的に、1つ以上の他の実施態様の特徴または特性と組合せてもよい。そのような改良および変種は、本発明の範囲内に含まれることが意図されている。
本明細書に開示または記載された、種々の非限定的な実施態様は、部分的には、熱可塑性樹脂、第1の衝撃改質剤および第2の衝撃改質剤を含んでなる熱可塑性組成物に関する。本発明の別の実施態様では、熱可塑性組成物は、熱可塑性樹脂、ならびに第1の衝撃改質剤および第2の衝撃改質剤を含んでなる粒子の低凝集体を含んでなる。本発明の熱可塑性組成物は、流動改質剤、および酸化防止剤、紫外線吸収剤、光吸収剤、充填剤、補強剤、追加的衝撃改質剤、滑沢剤、可塑剤、蛍光増白剤、顔料、染料、着色剤、難燃剤、静電防止剤、離型剤、発泡剤およびそれらの任意の組合せなどの添加剤をさらに含んでいてもよい。
成分A
成分Aは、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、およびポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、または1つ以上のポリエステル樹脂のブレンド物を好ましくは含んでなる熱可塑性樹脂である。好ましい実施態様では、熱可塑性樹脂はポリカーボネートを含んでなる。
本発明に好適な成分Aによる芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートは、文献で知られていて、または文献で知られた方法によって調製することができる(例えば、芳香族ポリカーボネートの調製については、Schnell, “Chemistry and Physics of Polycarbonates”, Interscience Publishers, 1964およびDE−AS1495626、DE−A2232877、DE−A2703376、DE−A2714544、DE−A3000610、DE−A3832396を参照のこと;芳香族ポリエステルカーボネートについては、例えばDE−A3077934を参照のこと)。
芳香族ポリカーボネートの調製は、例えば、相界面法に従い、場合により鎖停止剤(例えば、モノフェノール)の使用に従い、かつ場合により三官能性または三官能性以上の分岐形成剤(例えば、トリフェノールまたはテトラフェノール)の使用に従い、ジフェノールの、炭酸ハロゲン化物、好ましくはホスゲンおよび/または芳香族二カルボン酸二ハロゲン化物、好ましくはベンゼン二カルボン酸二ハロゲン化物との反応を行うことによって実行することができる。同様に、ジフェノールの、例えば炭酸ジフェニルとの反応によるメルト重合法による調製も可能である。
芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートを調製するためのジフェノールは、好ましくは式(I)のものを含む:
[式中、
Aは、単一結合、場合によりヘテロ原子を含有しているさらなる芳香族環が融合することができる、C
1〜C
5−アルキレン、C
2〜C
5−アルキリデン、C
5〜C
6−シクロアルキリデン、O−、SO−、−CO−、−S−、−SO
2−、C
6〜C
12−アリーレンであり、または式(II)もしくは(III)の基であり:
Bは、各々の場合に、C1〜C12−アルキル、好ましくはメチル、ハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素であり、
xは、各々互いに独立に0、1または2であり、
pは、1または0であり、かつ
R
5およびR
6は、各X
1に対して個々に選択することができ、各々は互いに独立に水素またはC
1〜C
6−アルキル、好ましくは水素、メチルまたはエチルであり、 X
1は炭素であり、かつ
mは、4〜7、好ましくは4または5の整数であるが、但し、少なくとも1つのX
1原子では、R
5およびR
6は、同時にアルキルであることを条件とする]。
好ましいジフェノールには、ハイドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフノール、ビス−(ヒドロキシフェニル)−C1 C5−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−C5−C6−シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス−(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホン、およびα,α’−ビス−(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、ならびに環上で臭素化および/または塩素化したそれらの誘導体が含まれる。
特に好ましいジフェノールには、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンならびにそれらのジ−およびテトラ−臭素化または塩素化の誘導体、例えば、2,2−ビス−(3−クロロ−4−ヒドロキシ−フェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、または2,2−ビス−(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンが含まれ、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。
ジフェノールは、単独でおよび/または任意の混合物の形態で使用することができる。
ジフェノールは文献で知られているか、または文献から当業者に知られた方法に従い入手可能である。
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの調製に好適な鎖停止剤としては、例えば、フェノール、p−クロロフェノール、p−tert−ブチルフェノールまたは2,4,6−トリブロモフェノールだけでなく、DE−A2842005による、4−[2−(2,4,4−トリメチルペンチル)]−フェノール、4−(1,3テトラメチル−ブチル)−フェノールまたはアルキル置換基中に炭素原子を合計で8〜20個有しているモノアルキルフェノールまたはジアルキルフェノール、例えば、3,5−ジ−tert−ブチル−フェノール、p−イソオクチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−ドデシル−フェノールおよび2−(3,5−ジメチル−ヘプチル)−フェノールおよび4−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノールなどが挙げられる。使用する鎖停止剤の量は、通常、特定の事例で使用されるジフェノールの合計モルに対して、0.5mol%〜10mol%である。
熱可塑性の芳香族ポリカーボネートは、既知のやり方で分岐させることができ、好ましくは、使用されるジフェノールの合計に基づき、有利的には三官能性または三官能性以上の化合物(例えば、フェノール基を3つ以上有するもの)を0.05〜2.0mol%取り込むことによって分岐させることができる。
ホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートはともに好適である。本発明による成分Aのコポリカーボネートの調製のために、ヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサンを、使用されるジフェノールの合計量に対して、1〜25重量%、好ましくは2.5〜25重量%使用することも可能である。これらは知られており(US3419634)、この文献で知られている方法に従い調製することができる。ポリジオルガノシロキサンを含有しているコポリカーボネートの調製はDE−A3334782に記載されている。
ビスフェノールAホモポリカーボネートに加えて好ましいポリカーボネートには、有利的には、好ましいまたは特に好ましいと言及されたもの以外のジフェノール、特に2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンが、ジフェノールの合計モルに対して最大で15mol%含まれる。
芳香族ポリエステルカーボネートを調製するための芳香族二カルボン酸二ハロゲン化物は、好ましくはイソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル4,4’−ジカルボン酸およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸の二酸ジクロリドであってもよい。
特に好ましいのは、イソフタル酸とテレフタル酸の比が1:20〜20:1である、二酸ジクロリドの混合物である。
ポリエステルカーボネートの調製では、二官能性酸誘導体として、炭酸ハロゲン化物、好ましくはホスゲンが追加で付随的に使用される。
芳香族ポリエステルカーボネートの調製に好適な鎖停止剤には、既に言及したモノフェノールに加えて、さらに、それらのクロロカルボン酸エステル、およびC1〜C22アルキル基またはハロゲン原子によって置換されていてもよい芳香族モノカルボン酸の酸塩化物、同様に脂肪族C2〜C22−モノカルボン酸塩化物も含まれる。
鎖停止剤の量は、有利的には、フェノール系鎖停止剤の場合にはジフェノールのモルに対して、およびモノカルボン酸塩化物鎖停止剤の場合にはジカルボン酸ジクロリドのモルに対して、各場合に0.1〜10mol%である。
芳香族ポリエステルカーボネートは、場合によりその中に組み込まれている芳香族ヒドロキシカルボン酸を含有し得る。
芳香族ポリエステルカーボネートは、任意の既知の方法で、直鎖状でも分岐状でもよい(これに関してはDE−A2940024およびDE−A3007934を参照のこと)。
分岐形成剤として場合により使用することができるものは、例えば、0.01〜1.0mol%の量(使用されるジカルボン酸ジクロリドに対して)での、トリメシン酸トリクロリド、シアヌル酸トリクロリド、3,3’,4,4’−ベンゾフェノン−テトラカルボン酸テトラクロリド、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸テトラクロリドまたはピロメリット酸テトラクロリドなどの三官能性以上のカルボン酸塩化物、あるいは使用されるジフェノールに対して0.01〜1.0mol%の量での、フロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプト−2−エン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシ−フェニル)−シクロヘキシル]−プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェノール、テトラ−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチル−ベンジル)−4−メチル−フェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、テトラ−(4−[4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル]−フェノキシ)−メタン、1,4−ビス[4,4’−ジヒドロキシトリフェニル)−メチル]−ベンゼンなどの三官能性以上のフェノールである。フェノール系分岐剤はジフェノールと一緒に容器内に置くことができ;酸塩化物分岐剤は任意の理由で所望されるならば酸二塩化物と一緒に導入することができる。
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネート中のカーボネート構造単位の含量は所望に応じて変化することがある。カーボネート基の含量は、エステル基およびカーボネート基の合計に対して、好ましくは最大100mol%、特に最大80mol%、特に好ましくは最大50mol%である。芳香族ポリエステルカーボネート中に含有されているエステルおよびカーボネートの両方は、ブロック状および/またはランダムに分布されて重縮合製品中に存在することができる。
本発明の好ましい実施態様では、芳香族ポリカーボネートおよび芳香族ポリエステルカーボネートは、例えば、ポリカーボネート数を報告するユニバーサル較正法を使用するポリスチレン標準に基づくGPCによって測定される重量平均分子量(Mv)を有することが有利である。Waters Allianceのゲル浸透クロマトグラフを使用して分離を行う。データ解析は、EmpowerPro3ソフトウェアを使用して行う。クロマトグラフィーの条件は次のとおりである:温度:カラムおよび検出器で35℃;溶媒はテトラヒドロフラン(THF);流量は1.0ml/分;流標準はトルエン;射出容積は75μl;操作圧力は760psi;サンプル濃度は、の0.5%(is 0.5%)of )、22,000〜32,000g/mol、特に好ましくは24,000〜28,000g/molである。
熱可塑性芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートは、それらを単独で使用することも、および/または任意の混合物で使用することもできる。
種々の非制限的な実施態様では、市販のポリカーボネート樹脂をポリカーボネート組成物中に使用してもよい。好適なポリカーボネート樹脂の非制限的な例としては、Covestroから商品名MAKROLONで入手可能なビスフェノールに基づくポリカーボネート樹脂が挙げられる。種々の非制限的な実施態様で使用してもよい追加のポリカーボネート樹脂は、すべて本明細書に参照することにより組み込まれている、米国特許第3,030,331号;第3,169,121号;第3,395,119号;第3,729,447号;第4,255,556号;第4,260,731号;第4,369,303号;第4,714,746号;第5,693,697および同様にすべて本明細書に参照することにより組み込まれている、米国特許出願第2007/0123634号;第2008/0132617号;第2010/0160508号および;第2011/0003918号に記載されている。
成分Aは、組成物の総重量に対して、熱可塑性組成物に、約40.0重量%〜約90.0重量%、好ましくは組成物に約60.0重量%〜約80.0重量%、最も好ましくは組成物に約65.0重量%〜約75.0重量%含まれてなる。
成分B
成分BはグラフトコポリマーBである衝撃改質剤である。一般にグラフトコポリマーBは、例えば、乳化重合、懸濁重合、溶液重合または塊状重合、好ましくは乳化重合によって、ラジカル重合により調製することができる。成分BはモノマーB.1および場合によりグラフトベースB.2を含んでなる。
好適なモノマーB.1には、ビニル芳香族化合物および/または環で置換されたビニル芳香族化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等)、メタクリル酸(C1〜C8)−アルキルエステル(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸アリル等)、アクリル酸(C1〜C8)−アルキルエステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル等)、有機酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸等)、および/またはシアン化ビニル(例えば、アクリロニトリルおよびメタアクリロニトリル等)および/または不飽和カルボン酸(例えば、無水マレイン酸およびN−フェニル−マレイミド)の誘導体(例えば、無水物およびイミド等)が含まれる。これらのビニルモノマーは、それらを単独で使用することも、または少なくとも2つのモノマーの混合物で使用することもできる。
好ましいモノマーB.1は、モノマースチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチルおよびアクリロニトリルの少なくとも1つから選択することができる。特に好ましいのは、モノマーB.1としてのメタクリル酸メチルまたはスチレンとアクリロニトリルの混合物の使用である。
成分Bは、場合によりグラフトベースB.2を含んでいてもよい。グラフトベースB.2のガラス転移温度は、典型的には<10℃、好ましくは<0℃、特に好ましくは<−20℃である。グラフトベースB.2の平均粒径(d50値)は、一般に0.05〜10μm、好ましくは0.06〜5μm、特に好ましくは0.1〜1μmである。
平均粒径(d50値)は各場合に、粒子の50%が該当する直径の上の値および下の値である。それは超遠心分離測定を用いて決定することができる(W. Scholtan, H. Lange, Kolloid-Z. und Z. Polymere 250 (1972), 782-796)。
グラフトベースB.2は、シリコーンゴムとアクリレートゴムの複合ゴムを含んでなり得、これら2つのタイプのゴムは、例えば物理的な混合物の形態で存在しているか、またはシリコーンゴムおよびアクリレートゴムが、例えば、それらを調製した結果相互に浸透するネットワーク(interpenetrating network)を形成して存在しているか、または、例えばシリコーンゴムおよびアクリレートゴムがコアシェル構造を有するグラフトベースを形成して存在している。好ましいグラフトベースB.2には10〜70重量%、特に好ましくは20〜60重量%のシリコーンゴム、および90〜30重量%、特に好ましくは80〜40重量%のアクリル酸ブチルゴム(ここで示された重量%は、各場合にグラフトベースB.2に基づく)の複合ゴムが含まれる。「純粋」アクリレートゴムに基づく衝撃改質剤と比較して、シリコン成分(silicon component)を含む衝撃改質剤は、さらに結果として生じるブレンド物の低温延性を最適化する可能性を提供する。とりわけ、シリコーンゴム部分のガラス転移温度はアクリレートゴムより著しく低い。例えば、ジメチルシロキサンゴムのガラス転移温度は、アクリレートゴムの−40〜−60℃と比較して、−112℃である。
シリコーン−アクリレートゴムは、好ましくは少なくとも1つのグラフト活性部位(graft-active site)を有する複合ゴムである。シリコーンゴムおよびアクリレートゴムは、それらを互いから本質的に分離することができないように、好ましくは複合ゴム中で相互に浸透している。
シリコーン−アクリレートゴムは知られていて、例えばUS5,807,914、EP430134およびUS4888388に記載されている。
B.2によるシリコーン−アクリレートゴムのシリコーンゴム成分は、シロキサンモノマー構造単位、架橋剤または分岐剤(IV)および場合によりグラフト剤(V)を使用することができる、乳化重合によって好ましくは調製することができる。
シロキサンモノマー構造単位として使用することができるものとしては、例えば、好ましくは、少なくとも3環員、好ましくは3〜6環員のジメチルシロキサンまたは環式オルガノシロキサン、例えば、好ましくは、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチル−シクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチル−シクロヘキサシロキサン、トリメチル−トリフェニル−シクロトリシロキサン、テトラメチル−テトラフェニル−シクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサンである。
オルガノシロキサンモノマーは、それらを単独で使用することも、および/または2つ以上のモノマーの混合物の状態で使用することもできる。シリコーンゴムは、オルガノシロキサンをシリコーンゴム成分の総重量に対して、好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上含有している。
架橋剤または分岐剤(IV)としては、好ましくは、官能性が3〜4、特に好ましくは4であるシランに基づく架橋剤を使用することができる。言及してもよい好ましい例としては次のものが挙げられる:トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシランおよびテトラブトキシシラン。架橋剤は、それらを単独で使用することも、および/または2つ以上の混合物として使用することもできる。テトラエトキシシランが特に好ましい事例もある。
架橋剤は、例えば、シリコーンゴム成分の総重量に対して、0.1〜40重量%の範囲で使用することができる。架橋剤の量は、トルエン中で測定されたシリコーンゴムの膨潤度が、好ましくは3〜30、好ましくは3〜25、特に好ましくは3〜15となるように選択されることが好ましい。膨潤度は、それが25℃にてトルエンで飽和された際の、シリコーンゴムによって吸収されたトルエンの量と、乾燥状態のシリコーンゴムの量の重量比として定義される。膨潤度の測定は、本明細書に参照することによって組み込まれているEP249964で詳細に記載されている。
上記の範囲内で膨潤度をより容易に制御することができるために、四官能性分岐剤が三官能性分岐剤よりも好まれることが多い。
好適なグラフト剤(V)は、以下の式の構造を形成することができる化合物である。
CH2=C(R2)−COO−(CH2)P−SiR1 nO(3−n)/2 (V−1)
CH2=CH−SiR1 nO(3−n)/2 (V−2)または
HS−(CH2)P−SiR1 nO(3−n)/2 (V−3)
[式中、
R1は、C1〜C4−アルキル、好ましくはメチル、エチルまたはプロピル、またはフェニルを表し、
R2は、水素またはメチルを表わし、
nは、0、1または2を表わし、
pは、1〜6までの整数を表わす。]
アクリロイル−またはメタアクリロイル−オキシランは、前述の構造(V−1)を形成するのに特に好適であり、グラフト効率が高い。それにより、グラフト鎖の形成が効率的に確保されることが多く、このため結果として生じる樹脂組成物の衝撃強度は典型的には促進される。言及してもよい好ましい例には次のものが挙げられる:β−メタアクリロイルオキシ−エチルジメトキシメチル−シラン、γ−メタアクリロイルオキシ−プロピル−メトキシジメチル−シラン、γ−メタアクリロイルオキシ−プロピルジメトキシ−メチル−シラン、γ−メタアクリロイルオキシ−プロピルトリメトキシ−シラン、γ−メタアクリロイルオキシ−プロピルエトキシ−ジエチル−シラン、γ−メタアクリロイルオキシ−プロピルジエトキシメチル−シラン、δ−メタアクリロイル−オキシ−ブチルジエトキシメチル−シランまたはそれらの混合物。
好ましくは、シリコーンゴムの総重量に対して好適なグラフト剤を0〜20重量%使用する。
シリコーンゴムは、例えば、US2891920およびUS3294725に記載されているような乳化重合などの任意の方法によって調製することができる。シリコーンゴムはそこから水性ラテックスの形態で得られる。その目的を達成するために、オルガノシロキサン、架橋剤および場合によりグラフト剤を含有している混合物を、例えば、好ましい実施態様ではアルキルベンゼンスルホン酸またはアルキルスルホン酸などのスルホン酸に基づく乳化剤の存在下にて、均質化により、せん断しながら水と混合し、混合物を完全に重合させてシリコーンゴムラテックスを得る。アルキルベンゼンスルホン酸が特に好適であり、その理由としては、乳化剤だけでなく重合開始剤としての役割も果たすためである。この場合、アルキルベンゼンスルホン酸の金属塩、またはアルキルスルホン酸の金属塩とのスルホン酸の組合せが有利であり、その理由としては、それによってその後のグラフト重合の間にポリマーが安定するためである。
重合後、反応は、アルカリ性水溶液を加えることにより、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは炭酸ナトリウムの水溶液を加えることにより、反応液を中性化することで終了する。
B.2によるシリコーン−アクリレートゴムの好適なポリ(メタ)クリル酸アルキルゴム成分は、例えば、メタクリル酸アルキルエステルおよび/またはアクリル酸アルキルエステル、架橋剤(VI)およびグラフト剤(VII)から調製することができる。好ましいメタクリル酸アルキルエステルおよび/またはアクリル酸アルキルエステルの例としては、C1〜C8−アルキルエステル、例えば、メチル、エチル、n−ブチル、tert−ブチル、n−プロピル、n−ヘキシル、n−オクチル、n−ラウリルおよび2−エチルヘキシルエステル;ハロアルキルエステル、好ましくはクロロエチルアクリレートなどのハロ−C1〜C8−アルキルエステルおよびこれらのモノマーの混合物が挙げられる。n−アクリル酸ブチルが特に好ましい。
好ましいゴムグラフトベースB.2は、ABSのような−ジエン化合ブルに存在しているものなどの、炭素−炭素二重結合を有さないものである。炭素−炭素二重結合は炭素−炭素単結合ほど安定していなく、日光への曝露を通じて不安定になることがある。したがって、好ましいグラフトベースB.2は炭素−炭素二重結合を有さない。
シリコーン−アクリレートゴムのポリ(メタ)クリル酸アルキルゴム成分の架橋剤(VI)としては、1つよりも多い重合可能な二重結合を有するモノマーを使用することができる。架橋モノマーの好ましい例としては、炭素原子を3〜8個有する不飽和モノカルボン酸のエステルおよび炭素原子を3〜12個有する不飽和一価アルコール、またはジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸プロピレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコールおよびジメタクリル酸1,4−ブチレングリコールなどの、OH基を2〜4個および炭素原子を2〜20個有する飽和ポリオールが挙げられる。架橋剤は、それらを単独で使用することも、および/または少なくとも2つ以上の架橋剤の混合物として使用することもできる。
好ましいグラフト剤(VII)の例としては、メタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリルまたはそれらの混合物が挙げられる。メタクリル酸アリルは架橋剤(VI)として使用することもできる。グラフト剤は、それらを単独で使用することも、および/または少なくとも2つ以上のグラフト剤の混合物として使用することもできる。
架橋剤(VI)およびグラフト剤(VII)の量は、シリコーン−アクリレートゴムのポリ(メタ)クリル酸アルキルゴムの総重量に対して、有利的には0.1〜20重量%である。
シリコーン−アクリレートゴムは、例えば、第一に、B.2.1によるシリコーンゴムを水性ラテックスの形態に調製することによって調製することができる。その後、ラテックスを、使用するメタクリル酸アルキルエステル、および/またはアクリル酸アルキルエステル、架橋剤(VI)およびグラフト剤(VII)で富化し、重合を実行する。ラジカル、例えば過酸化物、アゾまたはレドックスの開始剤によって開始される乳化重合が好ましい。特に好ましいのは、レドックス開始剤系、特に、硫酸鉄、エチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム、ロンガリットおよびヒドロペルオキシドの組合せによって調製されたスルフォキシレート開始剤系の使用である。
シリコーンゴムの調製の中で好ましくは使用される移植薬品(V)は、シリコーンゴム成分にポリアルキル(メタ)クリレート部材ゴムを共有結合で接合する効果がある。重合では、2つの部材ゴムは複合ゴムを浸み込みこのように形成する。それは、もはや重合の後にシリコーンゴム成分およびポリアルキル(メタ)クリレート部材ゴムのその構成物質へ分離することができない。
成分Bとして言及したシリコーン−アクリレートグラフトポリマーBの調製のために、モノマーB.1をゴムベースB.2上にグラフトすることができる。
例えば、EP249964、EP430134およびUS4888388に記載された重合方法をそこから使用することができる。
例えば、グラフト重合は、次の重合方法によって有利に実施することができる:ラジカルによって開始された単一または多段階式の乳化重合では、所望のビニルモノマーB.1を、水性ラテックスの形態で存在しているグラフトベース上に重合する。それによるグラフト化効率は可能な限り高い必要があり、好ましくは10%以上である。グラフト化効率は、使用されるグラフト剤(V)または(VII)に著しく依存する。シリコーン(アクリレート)グラフトゴムに重合した後、水性ラテックスは、事前に中に、例えば塩化カルシウムまたは硫酸マグネシウムなどの金属塩を溶解させた熱湯に加える。それによりシリコーン(アクリレート)グラフトゴムは凝結し、後で分離させることができる。
成分Bがコアシェル形態を含んでなる実施態様では、成分Bはコアを約60〜約95重量%、コアB.2を70〜約90重量%含んでなり、成分Bの残りの量はシェルB.1である。成分Bのガラス転移温度は、好ましくは−40℃以下、最も好ましくは−50℃以下である。
成分Bは、限定することなく、上で開示されるようなコアシェル形態を有する衝撃改質剤であってもよい。好ましくは、成分Bは機能性シェルポリマーを含まない。成分Bは、熱可塑性組成物に約5重量%〜約20重量%、好ましくは組成物に約7.5重量%〜約15重量%含まれてなり、ここで重量%は全ての場合にて組成物の総重量に対するものである。
成分C
成分Cも衝撃改質剤であり、上記のグラフトコポリマーBを特徴とする。しかしながら、成分Cは、コアシェル形態を含んでなり、かつ上記のB.1のシェルに対応するシェル中に機能性シェルポリマーを含んでなる点で成分Bと異なる。
上のB.1で記載されたモノマーに加えて、成分Cのシェルも機能性シェルポリマーを含んでいる。本明細書で使用する場合、「機能性シェルポリマー」とは、機能性ポリマーと非機能性ポリマーのブレンド物、または1つ以上の異なる官能基を、ペンダント基としてコポリマー骨格に含有している少なくとも1つのコポリマーのいずれかまたは両方を意味する。当技術分野で知られているように、機能性コポリマーはいくつかの異なる方法で形成してもよい。これらには、1つ以上の機能性モノマーの、非機能性モノマーとの共重合(ランダムまたはブロック)、ポリマーのグラフト化および後重合機能化またはそれらの組合せが含まれる。
シェルポリマーを形成するのに有用な非機能性エチレン性不飽和モノマーは、限定することなく、スチレン、(メタ)クリロニトリル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、ジビニルベンゼン、アクリロニトリル、およびそれらの混合物が含まれる。
コポリマーに官能性を加えるコモノマーとして有用な機能性モノマーは、限定することなく、酸、無水物、ヒドロキシ、エポキシおよびアミン基を含有しているものを含む。有用な機能性コモノマーの例としては、限定することなく次のものが挙げられる:N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)クリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)クリレート、(メタ)クリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチルアミノプロピル(メタ)クリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)クリルアミド、N−エチルアミノプロピル(メタ)クリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)クリルアミド、N−メチルアクリルアミドまたはN−t−ブチルアクリルアミドまたはN−エチル(メタ)クリルアミドまたはそれらの化合物の塩化物、2−ヒドロキシエチル(メタ)クリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)クリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)クリレート、(メタ)クリル酸グリシジル、α−ヒドロキシメタクリル酸エチル、および2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)クリレート、無水マレイン酸、マレイン酸、置換された無水マレイン酸、無水マレイン酸のモノエステル、無水イタコン酸、イタコン酸、置換された無水イタコン酸、無水グルタル酸、イタコン酸のモノエステル、フマル酸、無水フマル酸、フマル酸、置換された無水フマル酸、フマル酸のモノエステル、クロトン酸およびその誘導体、アクリル酸およびメタクリル酸;オメガ−アクリル酸シアノエトキシエチルまたはオメガ−メタクリル酸シアノエトキシエチルなどのシアノアルコキシアルキル(メタ)クリレート類;ビニルフェノール、パラ−ビニルベンジルアルコール、メタ−ビニルフェネチルアルコール、ビニルピロリドンおよびビニルイミダゾールなどの、芳香環および水酸基を含有しているビニルモノマー類;ならびに他の機能性モノマーである、アリルセロソルブ、アリルカルビノール、メチルビニルカルビノール、アリルアルコール、メタリルアルコール(methyllyl alcohol)、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸3,4−エポキシブチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、β−メタクリル酸シアノエチル、β−アクリル酸シアノエチル。本発明で有用な、疎水性部分を有する重合可能界面活性剤またはマクロモノマーの例としては、限定することなく、1−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム、ホスフェートメタクリレートモノマー、メタクリル酸ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル、1−メタクリルアミド、2−イミダゾリジノンエタンが挙げられる。成分Cの好ましい官能性はエポキシ官能性である。
エポキシモノマー、即ち樹脂は、一般的に「エポキシ官能性」と称される反応性のオキシラン構造を含有している。最も一般的なエポキシのモノマーは、水酸化ナトリウムの存在下での、ビス(4−ヒドロキシフェニレン)−2,2プロパン(ビスフェノールAと呼ばれる)と1−クロロプレン2−オキシド(エピクロロヒドリンと呼ばれる)の反応に由来するものである。主製品である、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBAまたはBADGE)およびその縮合形態の構造は、反応物の化学量論に依存する。典型的なモノマー(「樹脂」)はn値の範囲を0.03〜10として販売されている。室温では、これらのモノマーは、n値がゼロに近い場合結晶固体であり、n=0.5までのn値の場合液体であり、より高いn値の場合非晶質固体(ガラス転移温度、Tgは40〜90℃)である。
エピクロロヒドリンに由来するエポキシのモノマーの別の主なグループは、メチレンジアニリン(TGMDA)などの芳香族アミンで合成したモノマーを含んでなる。オキシラン基は、炭素−炭素二重結合の過酸化によって生成することができる。そのような種のオリゴマーはエポキシ化油状物または脂環式酸化物である。機能性オリゴマーの合成に(メタ)クリル酸グリシジルまたはグリシジルオキシスチレンなどのビニル基を含有しているエポキシモノマーを使用することができる。直鎖状または架橋したエポキシポリマーは、エポキシモノマーのコモノマー(「硬化剤」)および/または開始剤との反応によって得ることができる。エポキシポリマーは段階重合または連鎖重合によってか、あるいは両方の機序の組合せで徐々に製造することができる。逐次重合は反応性部位の素反応の段階的な連続によって進行する。独立した各工程は、2つの共反応部位を消滅させ、官能基ペア間に新しい共有結合を作り出す。モノマー1つ当たりの反応性部位の数(官能性)および共反応性部位間のモル比がポリマー構造を成業する主要なパラメーターである。
直鎖状ポリマーを得るために、反応物は二官能性でなければならない(単官能性反応物はポリマー増殖を中断する)。橋架ポリマーを得る条件は、少なくとも1つのモノマーの官能価が2より大きいことである。製品のモル質量は徐々に増加し、多分散性は直鎖状ポリマーでは2になる傾向があり;橋架ポリマーでは質量−平均モル質量は、臨界転化(ゲル化)で無限になる。
鎖−増殖重合は、開始、伝搬、連鎖移動および停止の工程の存在により特徴づけられている。エポキシの場合には、開始工程では、重合の活性中心と呼ばれるイオン(アニオンまたはカチオンのいずれか)が製造される。イオンは、化学反応、または十分な照射源によって製造してもよい。一旦活性中心が生成されると、それらは反応の増殖段階を通じてモノマーの逐次的添加によって一次鎖を製造する。一次鎖の末端に常に活性中心が存在しているために、増殖反応は、それが連鎖移動段階または鎖停止段階によって中断されるまで継続する。ポリマー構造を制御している主要なパラメーターは、モノマーの官能性、開始剤とモノマーの間のモル比、連鎖移動段階に関係する種の濃度、および異なる段階の反応速度に影響する温度(熱サイクル)である。
好ましい実施態様では、成分Cのエポキシ官能性は(メタ)クリル酸グリシジル、またはGMAである。GMAモノマーは、非常に広範囲のモノマーおよび機能化した分子と反応することができ、ポリマー設計の柔軟性および自由度を高め、同様に結果として生じる熱可塑性調合物の性能有益性も与える。GMA機能性ポリマーは、グリシジルエステルモノマーに由来する少なくとも1つの単位を含んでなる。グリシジルエステルポリマーはポリマー、コポリマーまたはターポリマーでもよい。グリシジルエステルモノマーは、α,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステル、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸を意味し、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジルを含む。グリシジルエステルポリマーには、米国特許5,981,661に記載されているグリシジルエステル(コ)ポリマーが含まれる。好適なグリシジルエステルコポリマーは、従来の遊離基で開始する共重合によって作られてもよい。
B.2に関する上での開示に対応する、成分Cで使用される好ましいグラフトベースには、1〜30重量%、特に好ましくは10〜20重量%のシリコーンゴムおよび99〜70重量%、特に好ましくは90〜80重量%のアクリル酸ブチルゴムの複合ゴム(本明細書では示された重量%は、各場合にグラフトベースの総重量に対するものである)を含む。
上で議論されているように、成分BのモノマーB.1はビニル、またはアクリルを含んでなる。これらのモノマーは共有結合を形成するために成分Cの機能性シェルポリマーと反応し得る。機能性シェルポリマーで衝撃改質剤の量を制限することによって、結果として生じる凝集体は、下で議論されるように、自由な内部空間をより多く持ち、かつ共有結合がより少なく、それらの密度がより小さい、即ち「疎性」であることが分かる。
また熱可塑性組成物の微細構造は、加工条件にも大きく依存する。相溶化シェルに囲まれた、架橋性ゴム相の小粒子である「コア/シェル」改質剤と呼ばれる構成要素への関心は高まっている。コア/シェル改質剤は固定粒径を有し、衝撃改質剤として使用されることが多い。
コアシェルエラストマーは、良好な分散性および靭性を有するブレンド物を製造するために具体的に設計されている。弾性コアの化学的組成および架橋密度が粒子のキャビテーション抵抗性を決定する一方で、シェルの組成は、加工中に粒子に剛性を与えるため、ならびに良好な分散性および接着性のためにマトリックスとの適合性を与えるために選択される。ポリ(ブチルアクリルレート)(PBA)コアおよびポリメチルメタクリレート(PMMA)シェルとのコアシェル衝撃改質剤を使用した熱可塑性物の強化は前に報告されている。改質剤のPMMAシェルはPCと混和性である。粒径が変動する衝撃改質剤が使用され、衝撃強度に対するそれらの影響は報告されている。ゴム相含量および二重サイズの粒子の取り込みの影響も示されている。
成分Cはコアを約60〜約95重量%、好ましくはコアを約70〜約90重量%含んでなり、成分Cの残りの量がシェルである。成分Cのガラス転移温度は好ましくは−40℃以下、最も好ましくは−50℃以下である。
成分Cは、熱可塑性組成物に約1重量%〜約10重量%、好ましくは組成物に約2重量%〜約7.5重量%含まれてなり得、この重量%はすべての場合で組成物の総重量に対するものである。
成分D
場合により、熱可塑性組成物は成分Dとしてビニル(コ)ポリマーを含んでいてもよい。ビニル(コ)ポリマーとして好適なものは、ビニル芳香族化合物、シアン化ビニル(不飽和ニトリル)、(メタ)クリル酸(C1〜C8)−アルキルエステル、不飽和カルボン酸、同様に不飽和カルボン酸の誘導体(無水物およびイミドなど)の群から選択される、少なくとも1つのモノマーのポリマーを含んでいる。特に適切なのは次の(コ)ポリマーである。
D.1:ビニル芳香族化合物、および/またはスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレンなどの環上で置換されたビニル芳香族化合物、および/またはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの(メタ)クリル酸(C1〜C8)−アルキルエステル類を、50〜99重量部、好ましくは60〜80重量部、特に72〜78重量部(成分Dに対して)、および
D.2:アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルなどのシアン化ビニル(不飽和ニトリル)、および/またはメタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチルなどの(メタ)クリル酸(C1〜C8)−アルキルエステル、および/またはマレイン酸などの不飽和カルボン酸、および/または不飽和カルボン酸の無水物およびイミド(例えば、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド)を、1〜50重量部、好ましくは20〜40重量部、特に22〜28重量部(成分Dに対して)。
ビニル(コ)ポリマー(D)は一般に樹脂様、熱可塑性であり、かつゴムを含まない。
また、好ましいビニルコポリマーDは、D.1スチレンとD.2アクリロニトリルのコポリマーである。
Dによる(コ)ポリマーは知られていて、例えば、ラジカル重合によって調製することができ、特に、乳化重合、懸濁重合、溶液重合または塊状重合によって調製することができる。(コ)ポリマーの平均分子量Mvは好ましくは15,000〜200,000である。
成分Dは、熱可塑性組成物中に0〜40%の量、好ましくは熱可塑性組成物中に5〜約20%の量で存在していてもよい。熱可塑性組成物で使用するための成分Dを選択する要因は、(1)結果として生じる熱可塑性組成物の流動性能の改善、ならびに(2)熱可塑性組成物の他の成分とのその混和性およびその適合性である。
成分E
熱可塑性組成物は、場合により、難燃剤、難燃共力剤、防滴剤(例えば、シリコーンのフッ素化ポリオレフィンの物質分類の化合物、同様にアラミド繊維)、滑沢剤、および離型剤(例えば、テトラステアリン酸ペンタエリトリトール)、成核剤、安定剤、静電防止剤(例えば、導電性ブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、同様にポリアルキルエンエーテル、スルホン酸アルキルまたはポリアミド含有ポリマーなどの有機静電防止剤)、同様に着色剤、および顔料などのさらなる市販のポリマー添加剤を1つ以上、組成物の機械的特性を、目的の特性プロファイル(−10℃で破砕がない)が充足されない程度に損なわれない量で、含んでなっていてもよい。
成分Eに存在しているのは、難燃剤、好ましくリン含有難燃剤であってもよく、特にモノマーおよびオリゴマーのリン酸エステルおよびホスホン酸エステル、ホスホン酸アミンおよびホスファゼンの群から選択される。成分Eは、難燃剤として使用するために、これらの群の1つ以上から選択される複数の成分の混合物であってもよい。また、他の、好ましくは本明細書に具体的には言及されていないハロゲン非含有リン化合物を、それらを単独で、または好ましくは他のハロゲン非含有リン化合物と組み合わせて使用することも可能である。好適なリン化合物には例えば次のものが含まれる:リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシル、リン酸ジフェニルクレシル、リン酸ジフェニルオクチル、リン酸ジフェニル−2−エチルクレシル、リン酸トリ−(イソプロピルフェニル)、レゾルシノール架橋したジ−およびオリゴ−ホスフェート、ならびにビスフェノールA架橋したジ−およびオリゴ−ホスフェート。ビスフェノールAに由来したオリゴマーのリン酸エステルの使用が特に好ましい。防炎剤として好適なリン化合物は知られているか(例えば、EP−A0363608、EP−A0640655)、または類似の知られた方法(Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie, Vol. 18, p. 301 ff 1979; Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, Vol. 12/1, p. 43; Beilstein Vol. 6, p. 177)によって調製するこができる。
成分Eは、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光吸収剤、充填剤、補強剤、追加的衝撃改質剤、可塑剤、蛍光増白剤、顔料、染料、着色剤、発泡剤およびそれらの任意の組合せなどの当技術分野で知られた、追加の任意の添加剤をさらに含有していてもよい。
一定の実施態様では、組成物は、成分Eを0重量%〜5.0重量%、より好ましくは0.02重量%〜1.64重量%含んでなり得、この重量%はすべての場合で組成物の総重量に対するものである。
凝集体
上で言及されているように、熱可塑性組成物は次の2つ以上の衝撃改質剤を含んでなる:機能性シェルポリマーを有する衝撃改質剤、および機能性シェルポリマーとの反応が可能な成分を有する衝撃改質剤。これらの衝撃改質剤が本明細書に記載されるような熱可塑性成形組成物に組み入れられた場合、衝撃改質剤は組成物内で低凝集体を形成する。低凝集体は機能シェルポリマーの反応を通じて形成されると信じられている。顕著なことには、機能性シェルポリマーを有する衝撃改質剤を有している熱可塑性処方物と有していない熱可塑性処方物のスパイラルフロー測定は、下記の結果から議論されるように、機能性シェルポリマーを有する衝撃改質剤を有する処方物でスパイラルフローが著しくより低かったことが示された。また、下例で記載され示されるように、粒子の低凝集体は、機能性シェルポリマーのエポキシ基によって、粒子のうち、粒子間で空間を許す疎性状で一緒に結合している、衝撃改質剤の分類によって特徴づけられる。疎性状は、エポキシ官能性による衝撃改質剤の明白な結合、同様に起こり得る反応を通じて、かつ衝撃開始剤の組合せであって、その1つが機能性シェルポリマーを有するものであり、他方が機能性シェルポリマーを有しないがそれとの反応が可能である、衝撃開始剤の組合せを用いて達成される。
低凝集体は、例で示されているように、衝撃改質剤の粒子が1インチ当たり0.5ミクロンの規模で可視であるものであって、かつ疎性状で他の粒子と凝集しているのが見られるものである。低凝集体は、さらにそのような直径内に存在する自由空間に加えて、そのような凝集体の直径によって特徴づけられ得る。対照的に、密集した凝集体はそれらの内部の自由空間が比較的小さいものである。凝集体の形成は、それらの内部に広範囲の自由空間を生み出すことが分かった。しかしながら、熱可塑性処方物から作成された凝集体の自由空間は測定して、統計モデルを使用して分析した。直径は測定可能な最長の直径に従い測定した。密集した凝集体であることが観察された凝集体には、機能性シェルポリマーを有するたった一つの衝撃改質剤を有する処方物が含まれていた。低凝集体であることが観察された凝集体には、次の2つの衝撃改質剤を有する処方物が含まれていた:機能性シェルポリマーを有するもの1つ、および機能性シェルポリマーを有しないがそれと反応可能なもの1つ。本明細書で測定された低凝集体は、0.4〜4.0ミクロンの範囲である。平均直径は1.0+/−0.5ミクロンである。低凝集体の自由空間、即ち自由な開きは、測定した結果、全体として20〜60%の範囲であり、低凝集体中の自由空間測定の75%を測定した結果、31〜50%の間であった。下記で概説された有益性を達成するために、凝集体の顕著な量、即ち、50%は自由空間の31〜60%の範囲内であるだろうと考えられている。
ゴム粒子の低凝集体は、有意な有益性を有することが分かった。それは、光を散乱させる大きな疎性ゴム塊状体または疎性ゴム凝集体を形成し、結果として生じる熱可塑性処方物に低光沢性の外観を付与する。またそれは、温度が降下するにつれゴム粒子がより脆くなり、かつ弾性が低くなるので低温延性を提供し、低凝集体は、いずれか1つの衝撃改質剤の単独での使用を通じた延性を越えた付加的な低温延性を提供することが分かった。
成形組成物
本発明による熱可塑性成形組成物は、例えば、内部混練機、押出機および双軸スクリューなどの従来装置にて、知られた方法で構成物質を混合することにより、および混合物を200℃〜340℃、好ましくは240℃〜300℃の温度で溶融化合して溶融押出しすることにより調製することができる。
個々の構成物質の混合は、知られた方法で、連続してまたは同時に、約20℃(室温)またはより高い温度で、実施することができる。
また本発明は、成形組成物の製造方法および成形部品の製造での成形組成物の使用を提供する。
本発明による成形組成物は、例えば、任意の種類の成形部品の製造で使用することができる。これらは、例えば、射出成形、押出しおよびブロー成形の方法によって製造することができる。さらなる加工形態は、以前に製造したシートまたはフィルムからの深絞りによる成形部品の製造である。
そのような成形部品の例としては、フィルム、プロファイル、任意の種類のケース部品、例えば、果汁抽出器、コーヒーメーカー、ミキサーなどの家庭用機器;モニター、フラットスクリーン、ノートブックパソコン、プリンター、コピー機などのオフィス機器;電動設備用シート、チューブ、導管、窓、扉、および建築部門用のさらなるプロファイル(内装フィッテイングおよび外部用途)、同様にスイッチ、プラグおよびソケットなどの電子工学および電気工学用の部品、同様に市販の自動車用、特に自動車部門用の車体部品および内装部品が挙げられる。
本発明による熱可塑性成形組成物は、例えば、次の成形部品または成形品の1つ以上の製造でも使用することができる:鉄道車両、船舶、航空機、バスおよび他の自動車用の内装仕上げ部品、小型変圧器含有の電気装置用のケーシング、情報の流布および送信のための装置用のケーシング、医療用具用のケーシングおよびカバー、マッサージ装置およびそれ用のケーシング、児童用の玩具の車、組立て式壁パネル、セキュリティ装置用のケーシング、断熱輸送コンテナ、衛生および浴室建具用の成形品、換気開口部用のカバーグリッド、および庭設備用のケーシング。他の成形部品および/または成形品も考慮される。
本発明による成形組成物は、光、熱および場合により風化の影響に耐えなければならない、自動車の内装部品および車体部品の製造に特に好適である。
以下に続く非制限的かつ限定的な例は、本明細書に記載された実施多用の範囲を制限することなく、種々の非制限的かつ限定的な実施態様をさらに説明することを意図している。
下記の例では、以下の材料を使用した:
成分A 重量平均分子量MWを25,000g/mol(GPCにより決定)とするビスフェノールAに基づく直鎖状ポリカーボネート。
成分B 約70〜約90%のコアからなる、コアシェル形態であるグラフトポリマーであって、残りはシェルであり、コアが、乳化重合によって調製されたシリコーンゴムを約20〜約60%、およびアクリル酸ブチルゴムを約40〜約80%含んでなり、シリコーンゴム部分が、オルガノシロキサンを少なくとも50%含んでなり、かつシェルがスチレンアクリロニトリルコポリマーを含んでなる。
成分C 約70〜約90%のコアからなる、コアシェル形態であるグラフトポリマーであって、残りはシェルであり、コアが、乳化重合によって調製されたシリコーンゴムを約10〜約20%、およびアクリル酸ブチルゴムを約80〜約90%含んでなり、シリコーンゴム部分が、オルガノシロキサンを少なくとも50%含んでなり、かつシェルがスチレンアクリロニトリルコポリマーおよびエポキシ官能性を含んでなり、エポキシ官能性はGMAである。
成分D スチレン/アクリロニトリル重量比が76:24重量%であり、平均分子量が100,000g/mol(20℃にてジメチルホルムアミド中でGPCによって測定)であるスチレン/アクリロニトリルコポリマー。
成分E1 BASFからTinuvin 329として市販されている紫外線安定剤
成分E2 テトラステアリン酸ペンタエリトリトールの離型剤。
成分E3 Ciba Specialty ChemicalsからIrganox 1076として市販されている、熱安定剤としてのオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert.ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート。
成分E4 Ciba Specialty ChemicalsからIrganox 168市販されている、加水分解安定剤としてのトリス(2,4−ジtert−ブチルフェニル)ホスファイト。
表1に記載のような以下の熱可塑性組成物を作成した。反対の指示がない限り、表1中の値はすべて重量部で列挙している。サンプルの結果は表2でまとめられている。
上に挙げられた例のように、熱可塑性組成物が、コアシェル形態であり、エポキシ官能性を含んでなる第1の衝撃改質剤、およびエポキシ官能性との反応ができる成分を含んでなる第2の衝撃改質剤の両方を含んでなる場合、低温延性が改善され、かつ、組成物に低光沢性があった。
上で言及されるように、衝撃強度はASTM D3763に従い測定された。これは厚さを1/8”インチとした試験片を使用して、室温および−30℃で行われた。各サンプルについては、異なる試験片を5個試験して、各々が延性(ductile:D)または脆性(brittle:B)の不具合を被るか否か判断するために試験を行った。延性不具合は、試験片が破壊する前に可塑性的に変形し、かつ試験片が、割れがなく衝撃点の中心を10mm超えて放射するものである。脆性不具合は、試験片試験区が鋭利な端を持つ2つ以上の欠片に破壊され、したがって低い塑性流を提示するものである。表2で言及された低温延性の最良の測定は、5D評価(5つの試験片各々が延性不具合を示したことを意味)であり、これは次の4つのサンプルのみで達成された:57、58、62および64。他のいくつかのサンプル(59および60)は5B評価を達成したが、所望されていなかった。
60°での鏡面光沢測定によって示されたように光沢は、同様にこれらの成分の各々を有している組成物で顕著により低かった。サンプル57、59、60、62、63および64は各々低光沢性を有することが示された。驚くべきことに、これらサンプルの各々は成分Bと成分Cの両方を含む組成物からのものであった一方で衝撃改質剤をたった一つしか含まない組成物からのサンプルはすべて光沢性がより高かった。最後に、上記のサンプルは各々、成形組成物として使用するには十分に流動可能であることが示された。
Roboshot射出成形機を使用し、型および溶融温度の指定した成形条件を適用してスパイラルフローの測定を行い、それが、どれ程遠くに材料を押すことができるか測定した。型温度は80℃であり、溶融温度を表2に示す。型を、3秒間18,000psiの高圧にかけ、次に6秒間10,000psiの保持圧力にかけ、次に、800psiの背圧で20秒間冷却させた。スクリュー速度は100rpmであった。射出速度は毎秒4インチであった。減圧距離は0.10インチであった。最大圧縮速度(pack velocity)は毎秒0.50インチであった。位置移動(position transfer)は0.10インチであった。ショットサイズは、クッション0.25インチを維持するために設計された。クランプのトン数は110ショートトンに等しかった。スパイラルフローの長さはインチで測定された。
上記の試験に加えて、いくつかのサンプルの凝集体を、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)の使用を通じて特徴づけた。AFM画像は、市販のタッピングモードで操作を行った走査プローブ顕微鏡(Nanoscope IIIa、Digital Instruments、Santa Barbara、カリフォルニア)を用いて空気中で得た。高さおよび相の画像は同時に記録された。測定は、ばね定数50Nm−1および共振周波数284〜362kHzの範囲で長方形型Siプローブを使用して大気条件で行った。チップの半径は10nmであった。結果は下記で論じる。AFMはナノメートル解析能で表面形態の直接的なマッピングを提供することができる強力な技術である。さらに、タッピングモードAFMの相コントラストは、異種材料の個々の成分の特性の差を反映することが多く、ポリマーブレンドとコポリマーでの組成に関するマッピングおよびポリマーコーティングでの異質マッピングに有用である。さらに、AFMには特定の試料調製手順が必要ではなく、大気条件で操作することができ、比較的に非破壊的な方法で試料表面に関する情報が提供される。曝露時間と伴にサンプルの表面特性の変化をモニタリングするためにこの技術を使用することが非常に好適である。
比較のサンプルでは、上記の成分A、DおよびE、ならびに成分Bを10重量%含んでなり、成分Cを含まない熱可塑性処方物を調製した。1インチ当たりに約0.5ミクロンの規模でAFMを使用して、成分Bの粒子はより暗い色で可視的であり、一方で成分AおよびDはより明るい色で可視的である。成分Bの粒子は分散体として見ることができ、粒子は凝集体を形成していない。
本発明の組成物を含んでなるサンプルでは、上記の成分A、DおよびE、ならびに成分Bを10重量%および成分Cを5%含んでなる熱可塑性処方物を調製した。次の条件下で、そこから成形部品を作製した:組成物を280〜305℃に加熱して溶融温度にし、次に、射出速度を毎秒0.4〜1.2インチとして、約80℃で成型を行った。1インチ当たりに約0.5ミクロンの規模でのAFMを使用すると、成分BおよびCの粒子はより暗い色で可視的であり、残りの成分はより明るい色で可視的であり、低凝集体へ結合しているのが見られた。成形部品の薄片から撮影した5つの画像からの合計77個の凝集体を分析した。測定された直径の範囲は、測定可能な最長の直径によれば、0.4〜4.0ミクロンであった。平均直径は1.0+/−0.5ミクロンであった。低凝集体の自由空間、即ち自由な開きは、測定した結果、全体として20〜60%であり、低凝集体中の自由空間測定の75%を測定した結果、31〜50%の間であった。平均自由空間を測定した結果、36%であり、測定結果の平均50%は31〜39%の間であった。
別の比較例では、熱可塑性処方物は、
別の比較例では、熱可塑性処方物は、上記の成分A、DおよびE、ならびに成分Cを10%使用し、成分Bを使用せずに調製した。1インチ当たりに約0.5ミクロンの規模でのAFMを使用すると、成分Cの粒子は、密集した凝集体を形成していることが観察され、個々の衝撃改質剤粒子はもはや見ることができなかった。エポキシ官能性が機能して粒子を互いに強く結合させてそのような密集体が形成されたと考えられている。この密な凝集体のサイズの範囲は0.6〜3.6ミクロンであり、平均して1.5+/−0.7ミクロンであった。密集した凝集体の自由空間を測定した結果、0〜39%であり、75%は0〜26%の間であった。自遊空間の平均を測定した結果、22.5%であり、測定した結果の平均50%が13.8%と26%の間であった。
本明細書に開示された熱可塑性組成物の態様には次のものが含まれる。
A)熱可塑性樹脂;
B)機能性シェルポリマーを含まない、機能性シェルポリマーと反応するこができる衝撃改質剤;および
C)コアシェル形態であり、機能性シェルポリマーを含んでなる衝撃改質剤を含んでなる、熱可塑性組成物。
A)熱可塑性樹脂;および
B)粒子の低凝集体;
を含んでなる、熱可塑性組成物であって、
当該低凝集体の少なくとも50%が、該低凝集体の面積の31〜60%の空間を含んでなり、かつ、該低凝集体がコアシェル形態である粒子を含んでなる、熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、およびポリブチレンテレフタレートからなる群から選択されるポリエステルを含んでなる、熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、熱可塑性樹脂が組成物に約40〜約90重量%、好ましくは約60〜約80重量%、最も好ましくは約65〜約75重量%含まれてなる、熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、低凝集体が成分Bとして衝撃改質剤および成分Cとして第2の衝撃改質剤を含んでなる、熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、成分Bがコアシェル形態である、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、成分Bまたは成分Cが炭素−炭素二重結合を有さないコアを含んでなる、熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、成分Bがシロキサンを含んでなる、熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、成分Bがシリコーンゴムを10〜70重量%、特に好ましくは20〜60重量%含んでなる、グラフトベースを含んでなる、熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、成分Bがアクリルを含んでなる、熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、成分Bが、エポキシ官能性を含まない、エポキシ官能性と反応するこができる衝撃改質剤を含んでなる、熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、成分Bまたは成分Cがアクリレートを含んでなる、熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、成分Bまたは成分Cがメタクリル酸メチルを含んでなる、熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、成分Cの機能性シェルポリマーがエポキシ官能性である、熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、成分Cのエポキシ官能性が(メタ)クリル酸グリシジルである、熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、成分Bまたは成分Cのガラス転移温度が−40℃以下、好ましくは−50℃以下である、熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、成分Bまたは成分Cが、衝撃改質剤のコアおよびシェルの総重量に対する割合として、約60〜約95重量%、好ましくは約70〜約80重量%のコアを含んでなる、熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、成分Bが組成物中に約5〜約20重量%、好ましくは約7.5〜約15重量%の量で存在している、熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、成分Cが組成物中に約1〜約10重量%、好ましくは2〜約7.5重量%の量で存在している、熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、ビニル(コ)ポリマーである成分Dをさらに含んでなる、熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、ビニル(コ)ポリマーがスチレンアクリロニトリルである、熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、成分Dが熱可塑性組成物に約5〜約20重量%含まれてなる、熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、難燃剤、難燃共力剤、防滴剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光吸収剤、充填剤、補強剤、追加的衝撃改質剤、滑沢剤、可塑剤、蛍光増白剤、顔料、染料、着色剤、静電防止剤、離型剤、発泡剤およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤である成分Eをさらに含熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、成分Eが熱可塑性組成物に約0.02〜約1.64重量%含まれてなる、熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、成分Bおよび成分Cが粒子の低凝集体を形成し、当該低凝集体の少なくとも50%が、当該低凝集体の面積の31〜60%の空間を含んでなる、熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物であって、低凝集体が、直径0.4〜4.0ミクロンの粒子を含んでなる、熱可塑性組成物。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物を含んでなる成形部品。
本明細書に開示されている任意の熱可塑性組成物を含んでなる成形部品の製造方法であって、射出成形、押出し、およびブロー成形の方法の少なくとも1つを含んでなる方法。
熱可塑性樹脂および粒子の低凝集体を含んでなる成形部品であって、当該低凝集体の少なくとも50%が、当該低凝集体の面積の31〜60%の空間を含んでなり、かつ、当該低凝集体がコアシェル形態である粒子を含んでなる、成形部品。
熱可塑性樹脂および粒子の低凝集体を含んでなる成形部品の製造方法であって、当該低凝集体の少なくとも50%が、当該低凝集体の面積の31〜60%の空間を含んでなり、かつ、当該粒子の低凝集体がコアシェル形態である粒子を含んでなり、射出成形、押出し、およびブロー成形の方法の少なくとも1つを含んでなる方法。
加えて、以下の熱可塑性成形組成物を開示する。
熱可塑性樹脂 40〜90%、
成分B 5〜20%、
成分C 1〜10%、
成分D 5〜20%、および
成分E 0.02〜1.64%
熱可塑性樹脂 40〜90%、
成分B 7.5〜15%、
成分C 1〜10%、
成分D 5〜20%、および
成分E 0.02〜1.64%
熱可塑性樹脂 40〜90%、
成分B 5〜20%、
成分C 2〜7.5%、
成分D 5〜20%、および
成分E 0.02〜1.64%
熱可塑性樹脂 40〜90%、
成分B 7.5〜15%、
成分C 2〜7.5%、
成分D 5〜20%、および
成分E 0.02〜1.64%
熱可塑性樹脂 60〜80%、
成分B 5〜20%、
成分C 1〜10%、
成分D 5〜20%、および
成分E 0.02〜1.64%
熱可塑性樹脂 60〜80%、
成分B 7.5〜15%、
成分C 1〜10%、
成分D 5〜20%、および
成分E 0.02〜1.64%
熱可塑性樹脂 60〜80%、
成分B 5〜20%、
成分C 2〜7.5%、
成分D 5〜20%、および
成分E 0.02〜1.64%
熱可塑性樹脂 60〜80%、
成分B 7.5〜15%、
成分C 2〜7.5%、
成分D 5〜20%、および
成分E 0.02〜1.64%
熱可塑性樹脂 65〜75%、
成分B 5〜20%、
成分C 1〜10%、
成分D 5〜20%、および
成分E 0.02〜1.64%
熱可塑性樹脂 65〜75%、
成分B 7.5〜15%、
成分C 1〜10%、
成分D 5〜20%、および
成分E 0.02〜1.64%
熱可塑性樹脂 65〜75%、
成分B 5〜20%、
成分C 2〜7.5%、
成分D 5〜20%、および
成分E 0.02〜1.64%
熱可塑性樹脂 65〜75%、
成分B 7.5〜15%、
成分C 2〜7.5%、
成分D 5〜20%、および
成分E 0.02〜1.64%