以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図3〜図9は本発明の第1実施形態に係る自動二輪車を説明するための図であり、図3,図4はエンジン搭載状態を示す側面図、図5,図6はエンジン搭載状態を示す平面図、図7,図8はエンジンのシリンダヘッド部分の断面側面図,断面正面図、図9は自動二輪車の要部構成を示す断面図である。なお、図9に示す破線22zは、吸気管にインジェクタが取り付けられた構成のエンジンを搭載した際の収納ボックス22の底面を示す。また、本実施形態において前,後、左,右とは上記自動二輪車のシートに着座した状態で見た場合の前,後、左,右を意味している。
図において、参照番号20はスクータ(自動二輪車)のアンダーボーン型車体フレームである。この車体フレーム20は、下端部で前輪を軸支する前フォークを左右操向自在に支持するヘッドパイプ(図示せず)に固定された左,右一対のメインパイプ20a,20aを備えている(図6参照。)。
この左,右のメインパイプ20aは、上,下パイプを複数の連結部材(図示せず)で結合してなる梯子状のものであり、上,下パイプ20e,20eの後端部同士は板金製で閉断面を有するエンジン支持ブラケット20bにより接続されている。また、このエンジン支持ブラケット20bの後端部にはシート支持部材20fが後斜め上方に延びるように配設されている。
上記左,右のメインパイプ20aの後部間から上記左,右のシート支持部材20f間に渡る部分の上側に二人乗り用のシート21が搭載されている。
このシート21は、運転者用の前部シート21aと同乗者用の後部シート21bとからなり、後部シート21bは前部シート21aより高所に位置し、全体として段付き形状をなしている。
上記シート21の下側には収納ボックス22が配設されている。この収納ボックス22は、上記前部シート21aの前半部下方に位置する部分を下方に大きく膨出させて収納容積を確保した前部22aと、上記後部シート21bの下方に位置する部分を上記段付き形状にあわせて上方に膨出させて収納容積を確保した後部22b(図9参照)と、上記前部22aと後部22bとを接続するように位置し、比較的底の浅い中間部22cとを有する。上記収納ボックス22の上部開口は、上記シート21により開閉されるようになっている。
そして、上記収納ボックス22の下方にユニットスイング式エンジンユニット1が、気筒軸Aを前後方向に向けて、詳細には水平から僅かに前上がりに傾斜するように前方に向け、かつクランク軸を車幅方向に向けて上下揺動自在に配設されている。
上記エンジンユニット1のクランクケース23の上壁の前端部に形成された左,右ボス部23a,23aが、1組の揺動ブラケット24を介して上記左,右のエンジン支持ブラケット20b,20b間に支持されている。
詳細には、上記揺動ブラケット24は、図5に示すように、二股状のものであり、左,右脚部の先端部に形成された左,右筒部24a,24aがゴム製ダンパ26aを介して上記エンジン支持ブラケット20bのボス部20eにボルト26bで固定されている。
また、揺動ブラケット24は、中心部に形成された略クランクケース23の全幅に渡る長さの中心筒部24bが左,右のベアリング24c,24cを介して上記左,右のボス部23a,23aに挿通された支持軸26cを軸支している。
また、一方のボス部23aは、当該ボス部23aの外側に配置された固定ブラケット25を介して一方のエンジン支持ブラケット20bのボス部20dにボルト27で連結されている。
ここで側面視で、上記揺動ブラケット24,固定ブラケット25,及びこれらの固定ボルト26b,27により三角形が形成されており、該三角形の頂点により上記エンジンユニット1を支持している。
このようにして、上記エンジンユニット1は上記中心筒部24bを中心に上下揺動可能となっており、またエンジン振動が車体フレームに伝わるのを上記ゴム製ダンパ26aにより抑制している。
図3に示すように、上記エンジンユニット1は、水冷式4サイクル単気筒型のもので、クランク軸を内蔵する上記クランクケース23の前壁にシリンダブロック2,シリンダヘッド3を積層締結し、該シリンダヘッド3の前合面3aにヘッドカバー4を装着して成る。また、上記クランクケース23の左側にVベルト式無段変速機構を内蔵する伝動ケースが一体に形成されている。なお、参照番号28はリヤアームであり、該リヤアーム28は上記クランクケース23の右側に固定されて後方に延び、後輪29車軸の右端を支持する。
図7に示すように、上記シリンダブロック2のシリンダボア2b内には図示しないピストンが摺動自在に挿入配置されており、該ピストンはコンロッドによりクランク軸に連結されている。
上記シリンダヘッド3の後合面3bには、シリンダボア2b内のピストンとで燃焼室を構成する燃焼凹部3cが凹設されている。この燃焼凹部3cには、燃焼室に連通する排気弁開口3dと吸気弁開口3eとが2つずつ形成されている。
上記各排気弁開口3dは、シリンダヘッド3に形成された排気ポート3fに接続され、排気弁開口3dからの排気は、排気ポート3fによりシリンダヘッド3の下壁側に導出される。
また、上記各吸気弁開口3eは、シリンダヘッド3に形成された吸気ポート3gに接続され、吸気弁開口3eへの吸気は、吸気ポート3gによりシリンダヘッド3の上壁側から案内される。
上記各排気弁開口3dは、当該排気弁開口3dの開口平面に対して鉛直方向に進退動する排気弁6の弁頭6aで開閉される。排気弁6は、シリンダヘッド3に配設されており、この排気弁6の弁軸6bは気筒軸Aとθ1の角度をなすようエンジン下側に傾斜配置されている。また、弁軸6bの基端部にリテーナ6cが装着され、このリテーナ6cとシリンダヘッド3に形成されたばね座3kとの間に弁ばね6dが介装されている。この弁ばね6dにより、排気弁6は、軸部7bが吸気弁開口3eから離間する方向、つまり、弁頭7aが上記排気弁開口3dを閉じる方向に付勢されている。
また、各吸気弁開口3eは、当該吸気弁開口3eの開口平面に対して鉛直方向に進退動する吸気弁7の弁頭7aで開閉される。吸気弁7は、シリンダヘッド3に配設され、この吸気弁7の弁軸7bは気筒軸線Aとθ2の角度をなすようエンジン上側に傾斜配置されている。また、弁軸7bの基端部にリテーナ7cが装着され、このリテーナ7cとシリンダヘッド3に形成されたばね座3kとの間に弁ばね7dが介装されている。この弁ばね7dにより吸気弁7は、軸部7bが吸気弁開口3eから離間する方向、つまり、弁頭7aが上記吸気弁開口3eを閉じる方向に付勢されている。
さらに、上記シリンダヘッド3の上記吸気弁7,排気弁6の弁ばね7d,6dとの間に位置するように吸,排気共用のカムを備えるカム軸8が回転自在に配設されている。
また、カム軸8と排気弁6との間の前側には排気ロッカアーム9が配置され、排気ロッカアーム9は、排気ロッカ軸9aにより回転自在に支持されている。
さらに、カム軸8と吸気弁7との間の前側には吸気ロッカアーム10が配置され、吸気ロッカアーム10は、吸気ロッカ軸10aにより回転自在に支持されている。これらロッカアーム9、10は、それぞれ一端部でカム8軸のカムと接触し、カム軸8の回転により他端部で軸部6b、7bの上端をそれぞれ押圧し、軸部6b、7bをそれぞれ付勢方向に抗して移動させる。なお、上記排気,吸気ロッカ軸9a,10aはヘッドカバー4の内面に突設されたボス部により支持されている。
ここで、上記カム軸8は気筒軸線Aに対して排気側にaだけ偏位配置されており、これに伴って吸気弁7の気筒軸線Aとなす角度θ2は排気弁6の気筒軸線Aとなす角度θ1より小さく設定されている。即ち、吸気弁7は排気弁6に比較して気筒軸線Aにより近づく起立状態に配置されている。その結果、吸気弁7からエンジン上側部分により大きなスペースが確保され、このスペースを用いて、後述するインジェクタ11の設置を自由に行うことができる。
上記吸気ポート3gは、シリンダヘッド3において、上記吸気弁開口3eから上記気筒軸線Aに略直交する方向に屈曲された後そのまま上方に延長されており、外気を燃焼室内に導入する吸気通路の一部を構成している。
上記吸気ポート3gの下流端の屈曲部は、隔壁3hにより上記左,右の吸気弁開口3e,3eに連通する分岐通路3i,3iに分岐されている。また、吸気ポート3gの上流端の外部接続口3jには、吸気通路の一部を構成するスロットルボディ5が接続されている。
上記スロットルボディ5は、下流側から順に第1,第2スロットル弁5a,5bを備え、吸気ポート3gに近接配置されている。
第2スロットル弁5bの弁軸に固定された駆動プーリ5cにはスロットル操作ケーブル30の一端が連結され、該ケーブル30の他端は操向ハンドルのスロットルグリップに連結されている。
また、第2スロットル弁5bの駆動プーリ5cと第1スロットル弁5aとは、リンク式の遅れ機構5dを介して連結されている。
上記第1,第2スロットル弁5a,5bの開度は負荷(スロットル操作量)の変化に伴って以下のように制御される。上記下流側に配置された第1スロットル弁5aは、無負荷(アイドル)運転域から所定の部分負荷運転域までは全閉位置に保持される。
これにより、スロットルボディ5は、噴射された燃料の微粒化を促進するための微粒化用空気を副通路13を介してインジェクタ11の噴射ノズル11a付近に大量に供給するようになっている。このようにスロットルボディ5では、噴射ノズル11a付近へ大量な微粒化用空気を供給することにより、低負荷運転時における噴射燃料のガス化を促進する。
また、上流側に配置された第2スロットル弁5bはスロットル操作に応じて通路面積を制御する通常のスロットル弁である。
そして、図7に示すように、上記吸気ポート3gの前壁側に上記インジェクタ11が、前面視で吸気ポート3gの中心線Bに一致し、かつカム軸方向視で上記気筒軸線Aに対して(θ2+θ3)の角度でエンジン上側に傾斜するように配設されている。このインジェクタ11の配置位置,角度等の設定に当たっては、燃料と微粒化用空気との混合気が吸気弁開口3eと開位置にある吸気弁7の弁頭7aとの環状の隙間の主として気筒軸線A側部分を通ってシリンダボア2b内面の排気弁開口側部分に沿って、かつ気筒軸線A方向に噴射されるように設定されている。
すなわち、インジェクタ11は、吸気弁開口3eに燃料噴射口である噴射ノズル11aを対向させ、且つ、噴射ノズル11aから噴射された燃料とエアとの混合気がシリンダ内でタンブルなどのエアーモーションを発生させる角度でシリンダヘッド3に配設されている。
つまり、インジェクタ11は、図7に示すように、噴射ノズル11aの燃料噴射口から噴射された燃料とエアとの混合気の吸気弁開口3eにおける実効スポットの直径が吸気弁開口の半径よりも小であり、且つ、実効スポットの軸線が吸気弁開口3eを通りシリンダの内周壁と交差する位置に配設されている。
言い換えれば、インジェクタ11は、その噴射ノズル11aが、図7において、吸気弁開口3eが弁頭7aにより閉塞された状態における弁軸7bの基端と、吸気弁7の軸線と吸気ポート3gの中心線Bとの交点と、吸気ポート3gの中心線Bとシリンダヘッド3の上流端の外部接続口3jとの交点とを結んだ領域内に位置するように配置されている。
なお、このインジェクタ11は、吸気弁開口3eの開口面から噴射ノズル11aまでの距離が4.0cm以下となる位置に配置されることが望ましい。
またインジェクタ11は、燃料噴射中に開口する吸気弁3eからシリンダボア2b内に燃料を直接噴射する。例えば、インジェクタ11の吸気弁開口3eに対する噴射タイミングは、ECU(Engine Control Unit)などの制御装置により制御される。
上記吸気ポート3gの前壁部分には装着穴3mが外部から吸気ポート3g内に連通するように貫通形成されている。
この装着穴3mの吸気ポート連通部付近は噴射された燃料を上記吸気ポート3gから吸気弁開口を通してシリンダボア2b内に案内する噴射通路14となっており、該噴射通路14には筒状のホルダ12が嵌合されることにより装着されている。
このホルダ12の軸方向外側に位置する支持穴12a内には、上記インジェクタ11の噴射ノズル11a部分が挿入された状態で嵌合されている。
これにより噴射ノズル11aは、吸気弁7の軸と吸気ポート3gの中心軸Bとの間であり、且つ、吸気ポート3gの吸気弁側端部に近接する位置に配置される。
なお、この噴射ノズル11aの燃料噴射孔は、燃料を左,右の吸気弁開口3e,3eに向かう分岐流として噴射する形状を有している。
また、上記ホルダ12の軸方向内側部分は噴射口12bとなっている。よって、上記インジェクタ11の噴射ノズル11aから2方向に分岐するように噴射された燃料は、上記噴射口12b内で微粒化用空気と混合され、該噴射口12bから吸気ポート3gの分岐通路3i,3iを通って燃焼室(シリンダボア2b)内に供給される。
なお、上記ホルダ12の噴射口12bは上記隔壁3hに対向しており、該隔壁3hには上記インジェクタ11から噴射された燃料が衝突するのを回避するための逃げ部3nが切欠き形成されている。
上記ホルダ12の噴射口12bの外周部の小径に形成された部分と上記装着穴3mとの間には環状のエアチャンバ12cが形成されており、該エアチャンバ12cは上記ホルダ12に等角度間隔毎に径方向に貫通形成された複数(この実施形態では4個)の連通孔12dにより噴射口12b内に連通している。
また、上記エアチャンバ12cには副通路13の下流端開口(接続口)13aが連通している。この副通路13は、上記吸気ポート3gに沿って上流側に延び、その上流端開口13bは上記スロットルボディ5の第1,第2スロットル弁5a,5bの間に連通している。
この実施の形態における4個の連通孔12dのうち、上記下流端開口13a側に位置する2つの連通孔12dの軸線は下流端開口13aの軸線に対して45°をなしている。即ち、上記連通孔12dは、上記下流端開口13aからずらした方向に向けて形成されている。
上記スロットルボディ5には、吸気通路の残りの部分を構成する吸気管31が接続されている。この吸気管31は、上記スロットルボディ5から上方に延びた後、上記揺動ブラケット24の左,右脚部の間を通って、かつ上記収納ボックス22の中間部22cの底面形状に沿うように円弧状に曲がって車両後方に延在している。そして、その後端部は、エアクリーナ32の前壁32aに接続されている。
このエアクリーナ32は、上記収納ボックス22の中間部22cの下方でかつ上記シリンダヘッド3の後方に位置する上記クランクケース23の上壁に配設されている(図9参照。)。
なお、上記エアクリーナの配置位置は上記クランクケース23の上側に限定されるものではなく、上記収納ボックス22の下方でかつ上記エンジンユニット1の伝動ケースの上面に配設しても良い。
また、図6に示す参照番号33は、上記インジェクタ11に接続された燃料供給ホースであり、この燃料供給ホース33は、上記吸気管31と上記揺動ブラケット24の一方の脚部との間を通って燃料タンク内に配設された燃料ポンプに接続されている。なお、この燃料タンクは、上記収納ボックス22の後側に配設されているが、上記左,右のメインパイプ20aの間に配置しても良い。
このように本実施の形態では、シート21の下部に、シリンダヘッド3を車両前方側に位置させてエンジンを配置し、エンジンの上部に、シリンダヘッド3の上方から車両後方に延伸する吸気管31を配置した自動二輪車において、エンジンは、シリンダ内への吸気を行う吸気弁7を取り付ける吸気弁配設部と、前記シリンダ内からの排気を行う排気弁6を取り付ける排気弁配設部と、吸気管31に接続され、外部エアを吸気弁7(詳細には、吸気弁開口3e)に供給する吸気ポート3gと、燃料を噴出するインジェクタ11を取り付けるとともに、燃料噴射口を、吸気弁7の軸と吸気ポート3gの中心軸との間であり、且つ、吸気ポート3gの吸気弁側端部に近接した位置に配置するインジェクタ配設部と、前記吸気弁配設部と前記排気弁配設部と前記吸気ポートと前記インジェクタ配設部とを一体的に形成してなるシリンダヘッド3とを具備し、吸気管31とインジェクタ11とを相互に干渉しない位置に配置してなる。
次に本実施形態装置の作用効果について説明する。
無負荷運転域から所定の部分負荷運転域においては、下流側の第1スロットル弁5aは全閉とされ、第2スロットル弁5bはスロットル操作に応じて開閉制御される。上記部分負荷運転域より負荷の小さい運転域では、エンジン側の吸気負圧が副通路13にそのまま作用し、吸入空気の全量がスロットルボディ5内から副通路13を通ってエアチャンバ12cに導入される。次いで、このエアチャンバ12cに導入された吸入空気は、連通孔12dを通って噴射口12b内に噴射され、ここで噴射ノズル11aから噴射された燃料を微粒化しつつ該燃料と良く混合される。次いで、この混合気は、隔壁3hの逃げ部3nの左,右を通って左,右の吸気弁開口3eから燃焼室内に供給される。
この場合、インジェクタの噴射ノズル11aを吸気弁開口3eに近接する位置に、つまり、噴射ノズル11aが、吸気弁7の軸と吸気ポート3gの中心軸Bとの間であり、且つ、吸気ポート3gの吸気弁側端部に近接する位置に配置されている。具体的には噴射ノズル11aの燃料噴射孔をシリンダ軸線Aと平行で動弁機構の吸気側端部を通る直線Cより気筒軸A側に位置させ、ている。この噴射ノズル11aと吸気弁開口3eとが近接しているため、噴射ノズル11aが噴射する燃料がエアと混合させて、吸気弁開口3eに直接噴射される。よって、燃料が付着し得る壁面積自体が小さくなり、それに伴って燃料の壁面付着量が減少し、冷間運転時の燃費を改善できるとともに燃料カット時やアイドルストップ時に未燃焼燃料が排出されることによる排気ガス性状の悪化を改善できる。また、急なスロットル操作に対してもエンジン回転速度の増加に遅れが生じない等のスロットル応答性を改善できる。
また上記混合気は吸気弁開口3eと開いている吸気弁7の弁頭7aとの環状の隙間の主として排気側部分からシリンダボアの内面に沿って軸方向に供給され、そのためにシリンダボア2a内においてタンブル(縦渦)が確実に発生し、上述の燃料の微粒化と相まって燃焼性が向上する。
本実施形態では、カム軸8を気筒軸線Aより排気側に偏位させて配置し、気筒軸線Aと吸気弁7とのなす角度θ2を気筒軸線Aと排気弁6とのなす角度θ1より小さく設定している。つまり、吸気弁7を気筒軸線A側に寄り添うように起立させている。
すなわち、エンジン1のシリンダヘッド3は、吸気弁配設部と、排気弁配設部と、吸気ポートと、燃料噴射口を、吸気弁の軸と吸気ポートの中心軸との間であり、且つ、前記吸気ポートの吸気弁側端部に近接した位置に配置するインジェクタ配設部とを一体的に形成してなる。
これにより、シリンダヘッド3の吸気側部分に、インジェクタ11を吸気弁開口3eに近づけて配置するためのスペースを確保でき、上述の燃料の壁面付着量を低減し、応答性を改善できるとともに、燃焼性を向上できる。
また、噴射通路の噴射ノズル11aが位置する部分とスロットルボディ(吸気通路の一部)5の第1,第2スロットル弁5a,5bの間の部分とを副通路13で連通し、無負荷から所定の部分負荷運転域までは第1スロットル弁5aを全閉としたので、大量の吸入空気を噴射ノズル11a部分に微粒化用空気として確実に供給でき、そのため上述の燃料微粒化を促進できる。
さらに、上記実施形態1では、気筒軸を中心に対称に配設された排気弁6と吸気弁7、さらにシリンダボア2bの軸に対して直交するように配置される吸気ポート3gのそれぞれが一体的に配設されたシリンダヘッド2において、インジェクタ11先端の噴射ノズル11aは、吸気弁7の軸と吸気ポート3gの中心軸Bとの間であり、且つ、吸気ポート3gの吸気弁側端部に近接する位置に配置されている。このため、ヘッドシリンダ3において、インジェクタ11は、噴射ノズル11aの燃料噴射口から噴射された燃料とエアとの混合気の吸気弁開口における実効スポットの直径が吸気弁開口3eの半径よりも小であり、且つ、実効スポットの軸線が吸気弁開口3eを通りシリンダボア2bの内周壁と鋭角に交差する位置に容易に配設される。
また、スロットルボディ5が吸気ポート3gに近接するように吸気管25に接続されているため、スロットルボディ5内の第1及び第2スロットル弁5a、5bの開閉に迅速に応答してエアを吸気弁開口3eを介してシリンダボア2bに吸入させることができる。つまり、スロットル開度に対するレスポンスを向上することができる。
さらにまた、左,右の分岐通路3i,3iを画成する隔壁3hに噴射された燃料が衝突するのを防止する逃げ部3nを形成したので、2つの分岐通路3i,3iの中心にインジェクタ11を配置した場合でも、2つの吸気弁開口3e,3eに向けた分岐流として噴射された噴射燃料が隔壁3hに衝突付着するのを回避できる。
そして本実施形態では、インジェクタ11をシリンダヘッド3の吸気弁開口3eの直近に配設したので、エンジンユニット1を収納ボックス22の下側に上下揺動自在に配設する際に上記インジェクタ11の上方突出量が、インジェクタを吸気マニホールドに設ける場合に比較して大幅に削減される。
つまり、シート21と吸気管31との間の空間、ここでは収納ボックス21が設けられている空間、を広くとることができる。
これにより、インジェクタ11が収納ボックス22の中間部22cの底面と干渉し難くなり、収納ボックス22の容量が犠牲になるといった問題を回避できる。
すなわち、本実施の形態では、吸気マニホールドである吸気管31にインジェクタ11が取り付けられていないため、吸気管にインジェクタが取り付けられた構成と比較して、吸気管31に対向する収納ボックス22部分の容量を大きくすることができる。詳細には、図9に示すように、吸気管にインジェクタが取り付けられた従来構成のものと比較して、シリンダヘッド3の前方およびエンジン1の上方の領域22yの分、広く収納空間(収納ボックス)を形成することができる。
スロットルボディ5をシリンダヘッド3の上面に直接配置したので、スロットルボディ5とインジェクタ11とが近接し、インジェクタ11とスロットル弁上流側とを接続する副通路13が短くて済み、構造を簡単にできる。
またシリンダヘッド2の上壁とメインパイプ20bとの間にスロットルボディ5の配置スペースを容易に確保でき、また吸気管31の曲げ箇所数が1つだけで済み、しかも曲げRを大きくとることができ、吸気抵抗を軽減できる。
なお、上記第1実施形態では、スロットルボディ5をシリンダヘッド2の上壁に直接接続したが、図10に第2実施形態を示すように、シリンダヘッド3の上壁にジョイント部材31aを介在させてその上流側にスロットルボディ5を配設し、該スロットルボディ5を吸気管でエアクリーナに接続しても良い。
このように構成した場合には、吸気管31をシリンダヘッド3の上壁直近で後方に屈曲させることができ、吸気経路と収納ボックス22の中間部22cの底壁との隙間を大きくでき、この隙間を利用して収納容積を拡大することができる。
また、本実施の形態では、シート21の下部と、吸気管31を上部に配置したエンジンとの間に収納ボックス22が配置された構成としたが、収納ボックス22に代えて燃料タンクを配置してもよい。収納ボックス22を燃料タンクとした場合、吸気管31にインジェクタ11を取り付けた構成と異なり、インジェクタ11がシリンダヘッド3に取り付けられ、吸気管31と干渉しない位置に配置されているため、燃料タンクの容量を増加させることができる。
本明細書は、2002年10月25日出願の特願2002−311487に基づく。この内容はすべてここに含めておく。