JP2009139973A - 偏光解析装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】光軸方向あるいは波長特性の異なる微小領域からなる薄型の偏光子アレイおよび波長板アレイを高消光比かつ挿入損失で実現し、それを用いた偏光解析装置を提供する。
【解決手段】基板上に微細な周期的溝列を、領域毎に方向を変えて形成する。次にSiあるいはTaなどの高屈折率材とSiOのような低屈折率材の交互多層膜をバイアススパッタ法で積層する。各層が周期的な凹凸形状を保存するように条件を選ぶことで、アレイ状のフォトニック結晶偏光子を形成する。これを光受光素子アレイに搭載することにより、小型で可動部分のない、部品点数の少ない高精度測定が可能な偏光解析装置が構成できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、複数の微小領域からなり光軸方向が異なる偏光子や波長板のアレイを用いた偏光解析装置に関するものである。
偏光制御素子の一つである偏光子は、不特定の方向に電磁界が振動する無偏光または楕円偏光を、ある特定方向の振動成分だけを透過させて直線偏光にするための素子である。これは光素子の中でも最も基本的なものであって、光通信デバイス、光ディスクのピックアップ、液晶ディスプレイ、光応用計測などに広く利用されている。偏光子は、動作形態によって、1不要な偏波を吸収させるもの、2同一の光路で入射する直交する二つの偏波成分を別々の光路に分けるもの、の二つに大別される。
現在実用に供されている偏光子で、上記1の動作をするものは高分子フィルムにヨウ素などの二色性分子を入れたもの、針状金属粒子を一方向に配置させたガラスなどがある。他方、上記2のタイプの偏光子には、方解石など複屈折率の大きい材料で作られた偏光プリズムがある。
もう一つの偏光制御素子は、偏波により遅延を与える位相板である。即ち、方位により屈折率の異なる異方性材料が用いられる。一般的には、水晶やルチルなどの異方性結晶、ポリイミドを延伸したフィルムが用いられている。
上に挙げたいずれも、通常は開口面内で偏光子あるいは波長板としての特性は作製誤差の範囲で一定である。即ち、動作する波長、光軸は開口面の中で一様である。これは製法上、異方性の単結晶材料を研磨する、あるいはフィルムやガラスを一方向に引き伸ばすため、ミリメートルからセンチメートル以上の大きさのものしか作ることができないからである。個別の素子を微細なサイズに切り出して、軸を変えて貼り合せることも可能ではあるが、一つの素子の面積を小さくすること、素子の数を多くすることには限界がある。また、微細なチップの軸を正確に合わせることも困難である。
最近、リソグラフィ技術を駆使することで微小な偏光制御素子をアレイ配置させる手法が報告されている。
例えば金属膜にラインアンドスペースを加工して偏光子が形成されている。例えば、2000年応用物理学会春季全国大会31a−W−2で示されているもの、米国特許6,122,103に示されているもの、次の論文に示されているもの(Applied
Physics Letters,vol.77,no.7,pp.927−929,August 2000.)が挙げられる。これらは、金属細線内の電子が細線に平行な方向には移動できるのに対して、金属細線の垂直方向には移動しにくいため、入射光のうち細線に平行な偏波が垂直方向な偏波より多く吸収するという原理に基づいている。低損失で且つ高消光比を実現するためには、金属細線のアスペクト比を無限に大きくすることが要求される。しかしながら、実際には有限の幅があるため、挿入損失は原理的に0にはならない。
また同様に、透明材料のラインアンドスペースにより、波長板が形成される。しかし溝の深さが位相差に直接影響するので、アスペクト比の高い溝を再現性高く加工することは困難である。また、一度のプロセスで加工される溝の深さは領域毎に変えることはできないので、位相差は場所に対して一定である。即ち1/4波長板と1/2波長板を同時に形成することはできない。また位相板と偏光子を組み合わせたアレイを作ることはできない。
以上のことから、光軸や動作波長が異なる偏光子や波長板を複数組み合わせる場合には、光ビームを分岐し、個別の素子を用いるなど装置が大型になっていた。特に従来の偏光解析装置では、図3のように、光ビームスプリッター301、偏光ビームスプリッター302、偏光子303、1/4波長板304、受光素子305など多数の個別素子を使うなど、部品点数が多く、装置が複雑で、高精度な軸合わせが必要となっていた。実際には、これらの全ての素子を角度0.1°のオーダーで貼り合わせることは不可能である。また、前記の金属ラインアンドスペースからなる偏光子アレイをCCDカメラなどに搭載し偏光画像解析を行なうことは、偏光子の消光比が高くないなど特性が不十分であること、生産性が低いなどの理由で実現されていなかった。
米国特許6122103号明細書 特開2002−116085号公報 特開平11−211654号公報 特開2000−056133号公報 特開2001−051122号公報
Applied PhysicsLetters,vol.77,no.7,pp.927−929,August 2000.
本発明は上記の問題点を解決するために、多層膜スパッタ形成法(日本特許公報第3325825で示された手法。以下自己クローニング法と呼ぶ。)に基づいたフォトニック結晶を利用することで、高性能な偏光子や位相板を方位や波長特性が異なる微小アレイとして形成すること、およびそれを利用した簡単な構成の偏光解析装置を提供する。
偏光子の概要はすでに述べたが、最近になって、これまでとは全く異なるタイプのフォトニック結晶偏光子(日本特許公報第3288976)やフォトニック結晶複屈折率材料(日本特開2000−51122)。が開発され、その可能性が多方面から注目を集めている。これらのフォトニツク結晶偏光制御素子の概念を説明する。図1のような周期的な溝列を形成したガラス基板101上に、透明で高屈折率の媒質102と低屈折率の媒質103とを界面の形状を保存しながら、交互に積層する。各層はx方向とz方向に周期性があるが、y方向は一様であってもよいし、x軸方向より大きい長さの周期的または非周期的な構造を有していてもよい。
このようにして得られた周期構造体にz方向から無偏波光または楕円偏光を入射すると、溝列と平行な偏波即ちy偏波と、それに直交するx偏波とに対して、TEモードまたはTMモードの光がそれぞれ周期構造体の内部に励起される。図2は、高屈折率材料102をSi、低屈折率材料103をSiOとした場合の、伝搬特性を表わすバンド図である。横軸は伝搬定数を表わし、z方向に1周期伝搬するときの位相変化量をπで規格化した値と一致する。縦軸はz方向の周期で規格化した波長の逆数を示す。入射する光の周波数が、バンドギャップの中にあれば、そのモードは周期構造体の中で伝搬することができず、入射光は反射または回折される。一方、光の周波数がエネルギーバンド内にあれば、周期構造体の中を光は透過する。図2によると、TEモードがバンドギャップ内にあり、TMモードがエネルギーバンド内に存在する周波数領域201、TEモードがエネルギーバンド内にあり、TMモードがバンドギャップ内に存在する周波数領域202、両方のモードがエネルギーバンド内にある周波数領域203がある。201と202の周波数帯では、反射型の偏光子もしくは偏光分離素子として動作し、203の場合は波長板として動作する。
当該フォトニツク結晶からなる偏光子や波長板は、構成する材料の屈折率、充填率、溝列の周期Lx、積層方向の周期Lzを調整することで、動作波長域を自由に設定することができる。低屈折率媒質としてはSiO2を主成分とする材料が最も一般的であり、透明波長領域が広く、化学的、熱的、機械的にも安定であり、成膜も容易に行なえる。しかしながらその他の光学ガラスでもよく、MgFのようにより屈折率の低い材料を用いてもよい。高屈折率材料としては、Si、Geなどの半導体や、Ta、TiO、Nb、HfO、Siなどの酸化物や窒化物が使用でき、透明波長範囲が広く、可視光領域でも使用できる。一方、半導体は、近赤外域に限定されるが、屈折率が大きい利点がある。
作製方法は、まず、図1に示すように、石英ガラス基板上に電子ビームリソグラフィとドライエッチングにより周期的な溝を形成する。この基板上に、SiOおよびSiのターゲットを用い、バイアス・スパッタリング法(あるいはスパッタ成膜とスパッタエッチングを組み合わせたプロセス)により、SiO層とSi層を交互に積層する。そのとき、各層のx軸方向に周期的な凹凸の形状を保存しながら成膜を行なうことが肝要である。これは、日本特許公報第3325825に示されている自己クローニング技術と呼ばれており、再現性、均一性が高く、工業的に微細な周期構造(フォトニック結晶)を作製する優れた手法である。基板の上に規則的な積層構造が生成される理由は、1ターゲットからの中性粒子の分散入射による堆積、2Arイオンの垂直入射によるスパッタエッチング、それと、3堆積粒子の再付着の3つの作用の重ね合わせによって説明することができる。
図1の構造体が偏光子として動作するのは、図2における201と202の周波数領域である。本構造の偏光子の特長は、透過光の消光比が高い、薄型軽量、任意の基板に形成可能、などが挙げられる。これまで数値シミュレーションと実験により、特に高周波数側の201の領域を利用したもので、高い消光比50dBを少ない積層数10周期で実現している。
また、図1のような構造体で材料や周期構造の単位セルの形や周期を選ぶことによって、波長領域203を利用する波長板を実現できる。溝に平行な偏光であるTE波も、溝に垂直なTM波も伝搬するが、その伝搬定数が異なるために、位相差をもたせるものである。高周波数側で設計する場合、一周期あたりの位相差が大きいため、少ない周期で所望の位相差を実現できること、面内の周期が比較的大きいので、短波長で使う場合でも加工精度が厳しくならない、という利点がある。一方、低周波数側で設計する場合は、より高精度の位相差制御を行なうのに適している。動作させる波長帯、求められる特性などから設計することが重要である。
上述した偏光子および位相板の開口面積や方位は、はじめに基板に加工する溝パターンの大きさや方向で自由に設計することができる。パターン形成は、電子ビームリソグラフィ、フォトリソグラフィ、干渉露光法、ナノプリンティングなど様々な方法で行なうことができる。いずれの場合でも、微小領域ごとに溝の方向を高精度に定めることができる。そのため、方位の異なる微小偏光子アレイあるいは微小位相板アレイを形成することが可能となる。また、凹凸パターンを持つ特定の領域のみが偏光子や位相板の動作をするため、その周辺の領域を平坦あるいは、面内で等方的な凹凸パターンにしておけば偏波依存性のない媒質として光は透過する。従って、特定の領域にのみ偏光子や位相板を作りこむことができる。
さらに、図1の構造体は面内の凹凸パターンの周期を変えることにより、積層の周期が一定であっても、伝搬特性は異なる。従って、領域毎に面内の周期を変えることでも、光軸や波長特性の異なる偏波制御素子(偏光子や波長板)のアレイを作製することができる。
図1は、フォトニック結晶偏光制御素子本体の概念図である。 図2は、第図1に示すフォトニック結晶の伝搬特性を表わすバンド図である。 図3は、従来の偏光解析装置の構成図である。 図4は、4つの領域をもつ偏光子の説明図である。 図5は、波長板、偏光子、受光素子を組み合わせた偏光解析装置の構造図である。 図6は、波長板と偏光子を一体形成した構造図である。 図7は、波長板、偏光子、受光素子を組み合わせた偏光解析装置の構造図である。 図8は、偏光解析装置の光路への組みこみ方法の一例である。 図9は、偏光解析装置の光路への組みこみ方法の一例である。 図10は、偏光解析装置の光路への組みこみ方法の一例である。 図11は、偏光解析装置の光路への組みこみ方法の一例である。 図12は、光学軸が3種類の微小偏光子アレイの構成図である。 図13は、光学軸が3種類の微小偏光子アレイと受光素子アレイからなる偏光解析装置の一例である。 図14は、光学軸が3種類の微小偏光子アレイ、1/4波長板、受光素子アレイからなる偏光解析装置の一例である。 図15は、波長板、偏光子、受光素子を組み合わせた偏光解析装置の構造図である。 図16は、波長板、偏光子、受光素子を組み合わせた偏光解析装置の構造図である。 図17は、偏光子アレイと受光素子アレイを組み合わせた偏光解析装置の構造図である。 図18は、偏光解析装置を使った(a)偏波スタビライザと(b)偏波モード分散補償器の構造図である。
自己クローニング型フォトニック結晶からなり光軸方向が異なる微小偏光子アレイと受光素子アレイからなる偏光解析装置、あるいは更に1/4波長板を付与した偏光解析装置について説明する。これは光通信の信号光の偏波を制御する際に使用する偏光解析装置、あるいは各種光センサーに用いることができる。
はじめに図4に示す偏光子アレイ401から説明する。偏光子は図1の構造からなり、SiとSiOの交互多層膜からなる。xy面内は4つの領域に分かれている。各領域で各膜は凹凸形状を有しており、領域毎に定まるxy面内の一つの方向に周期的に繰り返されている。第一の領域402は溝の方向はx軸に対して0°であり、第二の領域403は90°、第三と第四の領域404、405は45°となっている。但し、配列は限定されるものではなく、自由に配置することができる。例えば、2つの45°の領域404と405が隣り合っていても良いし、0°、90°、±45°の4つでも良い。
それぞれの領域は、先に述べたフォトニック結晶偏光子として動作する。ここで動作波長は光通信用として1.55μmとする。面内の周期は0.5μm、積層周期は0.63μmである。SiとSiOの膜厚比は4:6である。それぞれの大きさは200μm角である。積層周期は12周期で、波長1.55μmにおいて、消光比は45dB以上、挿入損失は0.15dB以下である。
しかしながら、材料の選定や構造パラメータの選定には自由度がある。例えば、高屈折率材料としては、Ta、TiO、Nbでもよく、低屈折率としてはパイレックス(登録商標)ガラス、MgF、その他光学ガラスでもよい。動作波長が赤外であれば高屈折率材料としてGe、SiGeなどを使うこともできる。また、膜厚比、面内周期、積層周期、斜面の角度に各偏波の分散関係は依存し、偏光子として動作する波長帯が変化する。従って、可視・紫外から赤外までの任意の波長帯に対して設計、作製できる。
図5は、上述の偏光子アレイ401に、1/4波長板として動作する領域を一部に含む素子501と受光素子アレイ502を組み合わせた偏光解析装置の概念図である。
波長板は、1/4波長板動作をする領域503と、位相差が生じない領域504からなる。波長板動作をする領域は、図1の構造のフォトニック結晶からなる。即ち、膜はx軸に平行な凹凸形状を有しており、y軸方向に繰り返される。位相板として動作しない領域504は、平坦な多層膜である。ここで、溝の周期は0.52μmとした。膜の材料はTaとSiOであり、膜厚比は4:6、積層周期は0.62μmであった。従って、基板には503の領域にのみ凹凸形状を加工しておけばよい。
ここで波長板として動作させない部分は、平坦としたが、等方的な周期パターンをもつ凹凸形状であってもよい。また、若干の手間はかかるが、一端1/4波長板領域を一面に加工してから、必要部分だけをエッチングで除去しても良い。
偏光子アレイと波長板を作製したのち、偏光子の軸が45°の領域405と、1/4波長板領域503とが重なるように貼りつける。ここで、それぞれの基板の膜面が上側になるように貼り合わせても良いが、膜側の面を合わせるように重ねても良い。
図6は、偏光子アレイと波長板を一体化させる例を示す。図6(a)は偏光子をなす多層膜601を積層した後、最終層(ここではSiO層)602をやや厚く積層する。そのとき、スパッタエッチングを強く作用させると、表面に形成されていた凹凸パターンは消滅し、平らになる。機械的な研磨を用いても特段問題はない。その後、再度リソグラフィで波長板を形成する部分にのみラインアンドスペースの凹凸パターンを形成する。パターンの位置合わせには、予め基板の一部に位置決め用のマーカーをつけておけばよい。その後、1/4波長板動作する領域604を形成するための多層膜603を積層すればよい。このようにして偏光子アレイと波長板を一体形成ができる。
図6(b)は、偏光子アレイを形成した基板の裏側に、波長板を形成した例である。偏光子用の多層膜を積層した後、基板の裏側に波長板のパターニングを行う。パターンの位置合わせには、基板にマーカーをつけておけばよい。その後、1/4波長板動作をする領域604を形成するための多層膜603を積層すればよい。
あるいは、各領域の大きさが比較的大きい場合、図7のように1/4波長板については、従来の異方性結晶もしくは異方性フィルムからなる個別の1/4波長板701を貼り合わせても良い。例えば有機材料であるポリイミドフィルムを延伸して、屈折率異方性を与えた波長板は厚さが+μm程度と極めて薄い。これを素子701として用いて、さらに上からガラス基板を張り合わせることでも良い。また例えば水晶のような異方性結晶を用いても良い。
図5に示した偏光解析装置は、偏光子アレイと波長板を一体化させたのち、偏光子の4つの領域を透過した光を独立に受光することのできる受光素子アレイを偏光子の裏面に設置する。各受光素子で光強度を測定する。受光素子はここではフォトディテクタとする。これらは1枚の基板上に、500μmの開口で4つ設置されている。この大きさは、入射する光ビームの径によって、受光パワーを十分とれるように、より大きくても小さくても構わない。
それぞれの受光素子で検出する光は、対応する偏光子を透過した光であること、すなわちクロストークが小さいことが重要である。偏光子の境界近傍を透過した光は回折により広がるため、クロストークを高くするためには、偏光子を受光素子にできるだけ近接させる、あるいは図15のように偏光子の境界に光の不透過領域702を設けても良い。
これにより、光の偏波状態を表わすストークスパラメータを求めることができ、偏光度を含めた完全な偏光解析を行うことができる。即ち、4つのストークスパラメータS〜Sは、x偏波成分I、y偏波成分I、45°の偏波成分I45、x軸方向に光軸を有する1/4波長板を通過した後の45°の偏波成分IQ45の4つの光強度を用いると以下のように表わされる。
=I+I
=I−I
=2I45−(I+I
=2IQ45−(I+I
従って、偏光子402を透過した光パワーがI、偏光子403を透過した光パワーがI、偏光子404を透過した光パワーがI45、波長板と偏光子405を透過した光がIQ45となる。これらの測定値からストークスパラメータを求めることができる。
これまで偏光子の軸方向は、0°、90°、45°の3種類で説明したが、その他の組み合わせでもストークスパラメータを求めることができる。例えば、図16に示すように、1箇所は平坦な部分を入れてもよい。その部分の受光パワーをIとするとI=I+Iとして上記の式を置き換えることができる。
図3に示した従来の偏光解析装置と比べると、部品点数が少ない、小型化の他に、高精度な測定が行える偏光解析装置を容易に実現できる。従来の偏光解析装置の精度低下原因の一つは、偏光子の角度ずれであった。一方、本発明の偏光子は、光軸方向、即ち溝の方向は高精度にあわせることができる。例えば、電子ビームリソグラフィで描いたパターンは、1mrad(0.057°)の精度である。
この偏光解析装置を伝送線路に組み込む例を図8から図11に示す。
図8は、光ビームの分岐に光ビームスプリッタ801を用いた例である。分岐した光を、図5などで示した偏光子アレイ、波長板、受光素子アレイからなる偏光解析装置802に導く。メインの光ビームが軸ずれなく伝搬する。ここでビームスプリッタはできるだけ偏波依存性がないものが適している。しかしながら、一般のビームスプリッタでは、広い波長範囲では偏波依存性が生じる場合がある。その場合には次の構成が良い。
図9は、ビームスプリッターの偏波依存性を十分小さくする構成を示す。例えば厚さ5mmのガラス板901をコリメートされた光ビームに入射角4°となるように配置する。一般に光を斜めに入射した場合の反射率は偏波依存性がある。しかしながら、入射角が十分小さければその差は測定には問題にならない。例えば、空気からガラス基板(屈折率1.5)に入射する場合を考えると、入射角が4°の場合、反射率はS偏波(入射面に垂直偏波)で4.026%、P偏波(入射面に平行)で3.974%となり、その差は0.052%と十分小さい。
入射側の面には反射防止膜を形成し、裏面には反射率が例えば10%となるような膜902を形成する。反射膜の反射率は必要に応じて変える必要があり、また十分な反射率が得られれば反射膜がなくても良い。ガラス901に入射された光は、裏面で反射され、上述の波長板、偏光子、フォトディテクタを一体化した偏光解析装置802に導かれる。一方、透過した光は、伝送路に戻される。偏光解析装置はガラスから離しても良いが、密着されても良い。ここで4枚の偏光子の中心に光ビームが照射されるように、調整することが必要である。
図10はもう一つの構成例である。厚さ1mmの石英ガラス901の入射側にARコートを施し、裏面に反射率が例えば90%のミラー902を形成する。裏面側に、波長板、偏光子、フォトディテクタからなる偏光解析装置802を設置する。石英ガラスの裏面で反射した光が伝送線路に導かれる。この場合、ガラス基板が薄くてすむ利点がある。
図11はもう一つの構成例である。信号光は、平行に近接して置かれた2本の光ファイバ1101のうち1本から出射される。コリメートレンズ1102を通して、ガラス基板901に照射される。表面には誘電体ミラーからなる反射膜902が形成されており、一部の光パワーは反射され、残りは透過する。透過光は偏光解析装置802に照射される。反射される光は再びレンズを通り、もう1本の光ファイバに結合される。このように、インライン型の偏光解析装置を小型集積化が可能である。また、ガラス基板への入射角を小さくすることができるので、反射率の偏波依存性を小さくすることができるので適している。
図5では4つの偏光子領域をもつ構成を説明した。図8から図11で示したように、光ビームの中心が、4つの領域の中心に合うように調整する。しかしながら、ビームの位置変動がパワー変動となり、測定誤差になる。これを解決する方法は次の実施例で示すが、領域を細かく設定すれば良く、同じ偏波の光の受光強度を合計すれば、位置変動の誤差を低減することができる。
このような偏光解析装置は応用例を様々な用途で使われるが、光通信システムにおける応用を示す。図18(a)は偏波スタビライザー(安定化装置)として利用する例である。1801は前記の偏光解析装置である。1802は偏波コントローラであり、1/2波長の位相差を与える手段1803と1/4波長の位相差を与える手段1804、制御部1805からなる。これらは例えば液晶回転波長板(大寺康夫、千葉貴史、川上彰二郎、“液晶回転波長板の提案と実験、”電子情報通信学会ソサイエティ大会、C−173、1995年9月.)を用いることができる。偏波コントローラから出射された光の一部を偏光解析装置に導き、偏波状態を測定する。得られたストークスパラメータから、所望の偏波状態からのずれ量を計算し、制御部から補正量の電気信号を各回転波長板に与える。偏光解析装置の後段には、偏波依存性のある光デバイスを接続する。光ファイバを伝送する光は偏波が一定でないため、通常は接続される光デバイスは偏波無依存であることが要求され、ときには大きな障害となっている。しかしながら、本発明で示された小型・高精度の偏光解析装置からなる偏波スタビライザが利用できれば、バイアスは特定偏波で動作すれば十分である。
図18(b)は、高速ビットレート(例えば40Gb/s)の光通信で必要となる偏波モード分散補償(PMDC)システムに利用する例である。光信号の受光装置1808の前段において、伝送光は偏波モード分散補償器1807(直交する2つの偏波の間に遅延を与える装置)を通り、一部の光が本発明の偏光解析装置1806に導かれる。ここで得られたストークスパラメータから、偏光度(DOP:Degree
of polarization)を求める。DOPが最大となるように、偏波モード分散の補償量を制御する。PMDCは波長多重通信において、各波長に対して必要となるため、小型で高精度は偏光解析装置が極めて有用である。
次にその他の実施形態を示す。
本実施例では、自己クローニング型フォトニック結晶からなる、光軸方向が異なる微小偏光子アレイと、それを用いた偏光解析装置の例を示す。図12は微小偏光子アレイの概念図である。それぞれの偏光子の領域は図1に示すような、TaとSiOの多層膜からなり、周期的な表面凹凸形状を有している。ここでは波長0.8μm帯で動作するように、面内周期は0.44μm、積層周期は0.44μm、TaとSiOの膜厚比は4:6とした。図1の構造体に光を垂直方向から入射したとき、溝に平行な偏光は反射され、透過方向には減衰され、その減衰率は15周期で30dB程度である。一方、溝に垂直な偏光は伝搬し、その透過損失は10周期で0.1dB以下である。
偏光子アレイ1201の基板に形成する溝の方向は、図12のようにx軸に対して0°の領域1202、x軸に対して90°の領域1203、x軸に対して45°領域1204の3種類を網の目状に形成しておく。配置の順序は特に限定されるものではなく、入れ替わっていても良い。ここで基板表面の溝形成は電子ビームリソグラフィと反応性エッチングを用いた。その他、フォトリソグラフィでもピッチに対して適した光の波長を選んでおけば形成可能である。微小領域の大きさは、50μm角であるが、それよりも大きくても(例えば1000μm角)、小さくても(例えば5μm角)良い。また、正方形のパターンだけでなく、三角形、長方形、六角形など任意である。このように、領域毎に透過偏光方向の異なる偏光子アレイを形成できる。
この偏光子アレイ1201を、図13に示すように、画素が同じ周期で配列された光受光素子アレイ1301の上に搭載することにより、偏光状態を測定する。光受光素子は、CCD、半導体フォトダイオードや撮像管でも良い。波長板アレイは使わない構造は、得られる情報は制約される(楕円偏光の回転方向は分からない)が、構造が簡単であるため有用である。
CCDの場合では、一つの領域(画素)の大きさが数μmから数十μmであるので、微小偏光子アレイと組み合わせることで、高精度な画像情報として、光の偏光状態を観測できる。これは物質からの反射光や透過光、地表、水面などの反射光の偏波状態を観測することが可能である。例えばガラスや光ディスク、その他の構造物に光を透過あるは反射させ、歪により誘起される複屈折率により偏波状態が変化する大きさを計測することも可能である。また、顕微鏡に組みこむことで、ミクロな偏波解析を行なうことも可能である。
図13の例では偏光子の方位は3種類であるが、凹凸の軸方向は0°と90°の2種類でも良いし、4方向以上であっても良い。これらの場合は、楕円偏波(直線偏波を含む)の長軸方向を計測することはできるが、位相差や回転方向は観測できない。すなわち、縦の偏光と横の偏光のどちらの位相が進んでいるかを決めることができない。
先に述べたように、すべてのストークスパラメータを求めるためには、1/4波長板を45°の方位をもつ偏光子領域に重ねることが必要である。
図14は全てのストークスパラメータを測定できる、偏光解析装置の概念図である。偏光子アレイ1401では、4つの領域を一つの単位とする。ただし1つの単位となる領域の種類はこれ以上であっても良い。凹凸の軸方向がx軸に対して0°の領域を第一の領域1402、x軸に対して90°の領域を第二の領域1403、x軸に対して45°の領域を第三の領域1404と第四の領域1405とする。偏光子アレイの前段(光の入射側)に位相板アレイを置く。ただし、偏光子の第四の領域の上にだけ、凹凸パターンからなる1/4波長板の動作をする領域1406を合わせ、偏光子の第一から第三の領域の上には、波長板アレイは位相差を与えない構造1407が合うようにする。即ち、平坦な多層膜からなる偏波依存性のない構造とする。
次に当該偏光解析装置の作製方法を述べる。偏光子アレイ1401の作製方法は基本的に先に述べた方法と同じである。但し、溝のパターンは4領域を一つの単位とする。それぞれの大きさは40μm角とする。ただし、それ以上であってもそれ以下であっても良い。x軸に対する溝の方向(反射する偏波の方位)は、0°の領域1402、90°の領域1403を各1領域分、45°の領域1404と1405を形成する。配置は特に限定されるものではなく、1404と1405の領域は隣り合っていても良いし、離れていても良い。その後、TaとSiOの多層膜を形成する。構造のパラメータは図12で説明した値と同じとする。偏光子の最終層が積層されたのち、必要に応じてARコートを施す。
次に、λ/4板アレイ1406について説明する。偏光子の4つの領域に対して1つの部分にのみ、x軸に平行な溝パターンを形成する。その後、TaとSiOを交互に自己クローニング法により積層する。ここで面内の周期は0.30μm、積層周期は0.36μmである。1周期0.031πの位相差が得られるので、λ/4板の場合16周期積層すればよい。パターンがある部分1406がλ/4板となり、パターンのない部分1407には平坦な多層膜が積層されるので、位相差は生じない。このように4つの領域の1つにだけ、波長板を形成することができる。
このように作製した偏光子アレイと位相板アレイをそれぞれの膜面が合わせるように張り合わせる。ここで重要なのは偏光子の軸が45°の領域の1つと、位相板アレイのλ/4板領域とが重なるようにする。たとえば、偏光子アレイを積層した基板と、波長板を形成した基板とを、顕微鏡で観測しながら接着剤で固定しても良い。
偏光子アレイと波長板とを一体化する際は、先に示したように、偏光子の最終層であるSiO層を積層した後、スパッタエッチングもしくは機械的な研磨により表面を平坦化し、その後、再度リソグラフィで波長板を形成する部分にのみラインアンドスペースの凹凸パターンを形成する。パターンの位置合わせには、予め基板の一部に位置決め用のマーカーをつけておけばよい。その後、波長板を形成するための多層膜を積層すればよい。このようにして偏光子アレイと波長板を一体形成ができる。あるいは、偏光子アレイを形成した基板の裏側に、波長板アレイを形成しても良い。
更に、それぞれの偏光子領域を透過した光を独立に受光することのできる受光素子アレイを設置する。受光素子はCCDでも良いし、半導体フォトダイオードでも、撮像管でもよい。図13の偏光解析装置では、位相差情報は計測することができなかったが、図14の偏光解析装置では可能である。被計測物体からの反射、透過光の位相変化を画像的に計測することにより、大きな面積の偏波解析をすることが可能になる。
次にもう一つの実施例を示す。ここでは偏光角の詳細なセンサーとして用いる例を述べる。図17(a)に構造の例を示す。1701は入射光の偏光を揃えるための偏光子である。これはフォトニック結晶偏光子であってもよいし、あるいは既存の偏光子であっても良い。1702はアナライザとして用いる偏光子アレイである。これは前記のフォトニック結晶偏光子を用いている。複数の領域、ここでは5つの領域に分かれており、透過する偏光の向きが僅かに異なるように作られている。すなわち、溝の方向が僅かに変えてある。中央の偏光子ではクロスニコルとなるように、溝方向は入射側偏光子とほぼ90°をなしている。1703は受光素子アレイであり、偏光子アレイのそれぞれの領域を透過した光を受光できるように配置されている。2枚の偏光子の間に測定試料1704を設置する前後で、各受光素子アレイの出力値を読み、試料の損失、偏光方向の変化量Δθ、位相変化量Δφを未知数として、透過率の角度特性の理論曲線にフィッティングすることにより求める。これより、可動部なしで偏光を測定することが可能になる。偏光子アレイの角度ピッチと領域数はΔθやΔφの測定レンジと精度によって適切に設定する。図17(b)はアナライザの角度と透過率の関係を示している。ここで破線は試料を入れる前のリファレンスであり、入射側偏光子の消光比は約47dBでる。実線は試料を入れた後の透過率である(ここでは損失は十分小さいとした)。例えば、予め偏波回転角が十分小さいことが予測されれば、アナライザとして用いる偏光子の角度ピッチを0.5°として、44°から46°まで5つの値を設定しておく。実線で示した0.29°のΔθを十分測定することが分かる。このような測定は、高消光比の偏光子を、光軸を高精度に多数配列させることで初めて実現できる。
ここでは小さいΔθを精度良く測定する例を示したが、より広いレンジで測定するためには、偏光子の角度を広い範囲に設定しておくことが必要となる。例えば30°のピッチで6領域、即ち180°の範囲で測定すればよい。
本発明の構造からなる偏波制御素子アレイは、1枚の基板上に異なる光軸をもつ複数の偏光子あるいは波長板領域を、高性能で、任意の大きさ、形で形成することを可能としたものである。この構造で構成した偏光子、あるいは偏光子と波長板を組み合わせ、更に受光素子アレイと一体化することで、従来複雑であった偏光解析装置を簡単な構造で構成し、1回の光ビームの分岐で偏光解析装置することが可能になる。アレイ化する素子のサイズを小さくし、数を増やすことで、偏光解析を画像処理で行なうことも可能になる。このような偏光解析装置は工業用途は広く、従来の偏光解析装置を置き換えることが可能になる。
102 高屈折率材料
103 低屈折率材料

Claims (1)

  1. 直交座標系x、y、zにおいて、xy面に平行な1つの基板の上に2種以上の透明材料をz方向に交互に積層した多層構造体であって、xy面内において少なくとも3つの領域に分かれており、各層は領域毎に定まるxy面内の一方向に繰り返される1次元周期的な凹凸形状を有し、xy面に垂直もしくは斜め方向から入射される光に対して、各領域の凹凸形状に平行または垂直方向の偏波成分だけを透過させることを特徴とする偏光子アレイ。
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