JP2009138182A - ポリウレタンエラストマーおよび成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリウレタンエラストマーに、イソシアネート基の総モル数に対して、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアネート基を、50モル%を超過する割合で含有し、かつ、加水分解性塩素の含有量が700ppm以下であるポリイソシアネートと、鎖伸長剤との反応により形成されるハードセグメントを含有させる。
【選択図】なし
Description
このような弾性成形品には、従来から、イソシアネート成分として、例えば、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略する。)などの芳香族ジイソシアネートが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
また、イソシアネート成分として、例えば、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの混合物が用いられるポリウレタンから製造される成形物品が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
また、特許文献2および特許文献3に記載の弾性繊維は、特許文献1に記載の線状ポリウレタン弾性体よりも黄変しにくいものの、その弾性性能が、特許文献1に記載の線状ポリウレタン弾性体より不十分であるという不具合がある。具体的には、繰り返して変形(伸縮)させると、残留歪みが生じ、さらには、伸長過程における機械的強度が低下するという不具合がある。
本発明の目的は、繰返し変形下における、機械的強度の低下および残留歪みを抑制することができ、さらには、耐黄変性および熱安定性に優れるポリウレタンエラストマーおよびその成形品を提供することにある。
また、本発明のポリウレタンエラストマーは、さらに、スルホンアミド基を有するスルホンアミド基含有化合物を含有することが好適である。
また、本発明のポリウレタンエラストマーは、前記スルホンアミド基含有化合物を、1〜10000ppm含有することが好適である。
さらに、本発明の成形品は、上記ポリウレタンエラストマーが用いられていることを特徴としている。
ポリウレタンエラストマーは、上記ポリイソシアネートおよび鎖伸長剤からなるハードセグメントを含んでいれば、特に制限されず、例えば、上記ポリイソシアネート、高分子量ポリオール(すなわち、マクロポリオール)および鎖伸長剤の反応により得られるポリウレタンエラストマーが挙げられる。
本発明において、ポリイソシアネートは、イソシアネート基の総モル数に対して、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアネート基を、50モル%を超過し、好ましくは、70モル%以上、さらに好ましくは、80モル%以上、とりわけ好ましくは、90モル%の割合で含有している。最も好ましくは、100モル%含有している。
1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンには、シス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、シス1,4体とする。)、および、トランス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、トランス1,4体とする。)の立体異性体があり、本発明では、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、トランス1,4体を、好ましくは、50質量%以上、さらに好ましくは、70質量%、とりわけ好ましくは、80質量%以上含有する。最も好ましくは、90質量%含有している。
また、上記ポリイソシアネートにおいて、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと併用できるポリイソシアネートとして、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、2,5−または2,6−ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンおよびその混合物などの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。また、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。また、ポリウレタンエラストマーの紡糸、フィルム成形に関わる成形性を損なわない範囲で、これらポリイソシアネートのイソシアヌレート、アロファネート、ビュレット、カルボジイミド、オキサジアジントリオンおよびウレトジオン変性体を併用することもできる。
1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと併用できるポリイソシアネートとして、好ましくは、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソフォロンジイソシアネート(IPDI))、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,5−または2,6−ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンおよびその混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、ならびに上記した、これらポリイソシアネートの変性体が挙げられる。
高分子量ポリオールの数平均分子量(標準ポリエチレングリコールを検量線とするGPC測定による数平均分子量)は、例えば、400〜5000、好ましくは、1400〜3000、さらに好ましくは、1500〜2500であり、その水酸基価は、例えば、10〜125mgKOH/gである。
ポリプロピレングリコールとしては、例えば、低分子量ポリオールまたは低分子量ポリアミンを開始剤とする、主としてプロピレンオキサイドの付加重合物であって、必要によりエチレンオキサイドが併用される(つまり、プロピレンオキサイドおよびエチレンオキサイドのランダムおよび/またはブロック共重合体を含む。)。好ましくは、特許第3905638号公報記載のホスファゼニウム化合物を触媒とする、モノオール副生量が少ないポリオキシアルキレンポリオールなどが挙げられる。
ポリテトラメチレンエーテルグリコールとしては、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物、テトラヒドロフランの重合単位に上記した2価アルコールを共重合した非晶性(常温液状)ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフランとアルキレンオキシド(例えば、プロピレンオキシド、エチレンオキシドなど)との共重合により得られる共重合物などが挙げられる。
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1−ジメチル−1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバチン酸、その他の脂肪族ジカルボン酸(炭素数11〜13)、スベリン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、メチルヘキサン二酸、シトラコン酸、水添ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ダイマー酸、ヘット酸などのカルボン酸、および、それらカルボン酸から誘導される酸無水物、酸ハライド、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などが挙げられる。
さらには、ひまし油ポリオール、あるいは、ひまし油ポリオールとポリプロピレングリコールとを反応させて得られる変性ひまし油ポリオールなどが挙げられる。
本発明において、鎖伸長剤としては、例えば、上記した2価アルコール、上記した3価アルコールなどの低分子量ポリオール、例えば、モノアミン、例えば、脂環族ジアミン、脂肪族ジアミンなどのジアミンなどが挙げられる。
さらには、本発明のポリウレタンエラストマーの成形性や伸長性を損なわない範囲で、例えば、ビス−(4−アミノ−3−クロロフェニル)メタン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、トリメチレン−ビス(4−アミノベンゼート)、4,4´−ジアミノ−3,3−ジエチル−5,5−ジメチルジフェニルメタンなどのアミン化合物が挙げられる。
そして、本発明のポリウレタンエラストマーは、上記各成分(すなわち、必須成分として、ポリイソシアネート、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤、任意成分として、低分子量ポリオール)を、例えば、ワンショット法やプレポリマー法などの公知の合成方法により、合成することができる。好ましくは、ポリウレタンエラストマーをプレポリマー法により合成する。
また、反応には、必要により、アミン類や有機金属化合物などの触媒や、溶媒を添加することができる。
また、溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのアルキルエステル類、例えば、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N´−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの極性非プロトン類などが挙げられる。
プレポリマー法では、まず、上記ポリイソシアネートと、鎖伸長剤以外のポリオール成分(すなわち、必須成分として、上記ポリイソシアネートおよび高分子量ポリオール、任意成分として、低分子量ポリオール)とを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを合成し、次いで、そのイソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを反応させる。
次いで、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基に対する鎖伸長剤の活性水素基(アミノ基および水酸基)の当量比(活性水素基/イソシアネート基)が、実質的に等量となる割合、例えば、0.9〜1.1、好ましくは、0.98〜1.05となる割合で配合して、鎖伸長反応させることにより、ポリウレタンエラストマーを得る。
溶媒としては、上記した溶媒が挙げられ、好ましくは、メチルエチルケトン、酢酸エチルなどのケトン類、あるいはN,N´−ジメチルアセトアミドが挙げられる。
イソシアネート基末端プレポリマーを溶媒に溶解させるには、例えば、攪拌下、イソシアネート基末端プレポリマーに溶媒を徐々に添加する。溶媒は、イソシアネート基末端プレポリマー100質量部に対して、好ましくは180〜900質量部の割合となるように添加される。より具体的には、イソシアネート基末端プレポリマーの濃度が、例えば、10〜35質量%となるように添加する。
次いで、プレポリマー溶液に鎖伸長剤を、上記した割合となるように添加する。ポリアミンを鎖伸長剤として用いる場合、好ましくは、20℃以下の温度で鎖伸長剤を添加し、添加終了後は、さらに撹拌しつつ、例えば、25〜80℃にて反応を完結させる。一方、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールなどの低分子量ポリオールを鎖伸長剤として用いる場合、好ましくは、40〜90℃の温度で鎖伸長剤を滴下し、該温度範囲で反応を完結させる。また、鎖伸長剤は、溶媒の鎖伸長剤溶液として添加することもできる。
また、ポリウレタンエラストマーにおいて、上記ポリイソシアネートと鎖伸長剤との反応により形成されるハードセグメント濃度は、好ましくは、2〜30質量%、さらに好ましくは、3〜20質量%、とりわけ好ましくは3〜10質量%である。
[鎖伸長剤(g)+(鎖伸長剤(g)/鎖伸長剤の分子量(g/mol))×ポリイソシアネートの平均分子量(g/mol)]÷(高分子量ポリオール(g)+ポリイソシアネート(g)+鎖伸長剤(g)+任意成分(低分子量ポリオール(g))×100
また、ハードセグメント濃度は、例えば、ポリウレタンエラストマーを、固体NMRや溶液NMR測定することなどにより、実測することもできる。具体的な実測方法は、例えば、Satoshi Yamasaki et.al「Effect of aggregation structure on rheological properties of thermoplastic polyurethanes」雑誌名Polymer, 48巻, 4793〜4803ページ,2007年に記載されている。
スルホンアミド基含有化合物を含有させることにより、ポリウレタンエラストマーの熱安定性を向上させることができる。
そのため、本発明のポリウレタンエラストマーを、例えば、加熱処理(例えば、乾燥処理など)される弾性成形品、例えば、洋服、靴下などの弾性繊維に用いる場合には、そのポリウレタンエラストマーにスルホンアミド基含有化合物を含有させれば、熱安定性に優れる弾性繊維、フィルムおよびシートなどを得ることができる。
また、本発明のポリウレタンエラストマーがスルホンアミド基含有化合物を含有する場合、ポリウレタンエラストマーに対するスルホンアミド基含有化合物の含有量は、質量基準で、例えば、好ましくは、1〜10000ppmであり、さらに好ましくは、10〜8000ppmであり、とりわけ好ましくは、100〜3000ppmである。
なお、本発明のポリウレタンエラストマーには、必要に応じて、他の公知の添加剤、例えば、可塑剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、離型剤、さらには、顔料、染料、滑剤、フィラー、加水分解防止剤などを添加することができる。これら添加剤は、各成分の合成時に添加してもよく、あるいは、各成分の混合・溶解時に添加してもよく、さらには、ポリウレタンエラストマーの分離・乾燥後に添加することもできる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−ベンジル)イソシアネート、テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコールビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、2,2´−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2´−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4´−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどが挙げられる。
耐光安定剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤、ニッケルないしコバルト錯塩系紫外線吸収剤などが挙げられ、好ましくは、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、エチル−2−シアノ−3,3´−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート、ブチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレートなどが挙げられる。
そのため、本発明の成形品は、繰返し変形下においても、機械的強度の低下および残留歪みが生じにくく、さらには、耐黄変性および熱安定性に優れる。
弾性繊維を溶融紡糸で作製する場合においては、溶融成形性を向上させる観点から、低分子量ポリオールを鎖伸長剤として用いる反応により得られるポリウレタンエラストマーを用いることが好ましい。また、具体的な紡糸条件としては、例えば、紡糸温度160〜230℃であり、20〜50デニールの繊維が得られる紡糸速度に調整する。そして、紡糸される弾性繊維は、例えば、カバリング糸や裸糸の状態で使用される。
弾性フィルムをTダイキャスト法およびインフレーション法で作製する場合において、具体的なフィルム成形条件としては、例えば、ダイ温度160〜230℃であり、20〜100μmのフィルム厚みが得られる巻取り速度に調整する。また、弾性シートを作製する場合においては、ダイのリップ幅や巻取り速度を調整する。これにより、100μmを超過する厚みの成形品(弾性シート)を得ることができる。
(ポリイソシアネートの加水分解性塩素濃度の測定)
各1,3−/1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンに含有される加水分解性塩素の濃度(以下、HCと略する。)は、JIS K−1556(2000)の附属書3に記載されている加水分解性塩素の試験方法に準拠して測定した。
13C−NMR測定によるトランス/シス比が93/7の1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(三菱瓦斯化学社製)を原料として、冷熱2段ホスゲン化法を常圧下で実施した。
次いで、減圧下で溶媒のオルトジクロルベンゼンを留去した後、ガラス製フラスコに、充填物(住友重機械工業株式会社製、商品名:住友/スルザーラボパッキングEX型)を4エレメント充填した蒸留管、還流比調節タイマーを装着した蒸留塔(柴田科学株式会社製、商品名:蒸留頭K型)および冷却器を装備する精留装置を用いて、138〜143℃、0.7〜1KPaの条件下、さらに還流しながら精留した。そして、精留塔から採取条件(1)〜(5)の留分を採取した。なお、以下の留出率とは、フラスコに仕込んだオルトジクロルベンゼンを留去した反応液に対する留出率を示す。
採取条件(1):還流比10、留出率10.1%
採取条件(2):還流比10、留出率15.3%
採取条件(3):還流比1、留出率81.7%
採取条件(4):還流比1、留出率93.4%
採取条件(5):採取条件(3)および採取条件(4)の1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンをそれぞれ41および59の質量比で混合した。
1,4−BIC(2):HC:121ppm(採取条件(2))
1,4−BIC(3):HC:21ppm (採取条件(3))
1,4−BIC(4):HC:795ppm(採取条件(4))
1,4−BIC(5):HC:476ppm(採取条件(5))
製造例2(1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの調製)
13C−NMR測定によるシス/トランス比が74/26の1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(三菱瓦斯化学社製)を用いた以外は、製造例1記載の方法に準拠して、ホスゲン化反応を行なった後、減圧下で溶媒のオルトジクロルベンゼンを留去した。
窒素雰囲気下、撹拌翼、温度計および水冷式コンデンサーを装着した反応機に、予め減圧脱水処理した、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(保土ヶ谷化学株式会社製、商品名:PTG2000SN)(以下、PTMGと略する。)86.16質量部と、PTMG中の水酸基に対する1,4−BIC(1)のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)が1.48となるように、1,4−BIC(1)12.49質量部とを仕込み、80℃まで昇温した。
次いで、同温度にてイソシアネート基含量が1.78質量%になるまで反応させ、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマー (以下、プレポリマーと略する。) (A)を得た。
その後、プレポリマー(A)のDMAc溶液の温度が20℃を越えないように、1.19質量部のエチレンジアミン(以下、EDAと略する。)と0.15質量部のジエチルアミン(以下、DEAと略する。)との混合アミンの1.13質量%のDMAc溶液(以下、アミン溶液と略する。)を滴下して、鎖伸長反応させた。EDAとDEAの比率は、それぞれ90.5モル%および9.5モル%であり、プレポリマー(A)のDMAc溶液中のイソシアネート基に対する、混合アミンのアミノ基の当量比は0.995である。
そして、ガラス板上に、厚みが100μmとなるようにポリウレタンエラストマー(A)のDMAc溶液を注ぎ、窒素雰囲気下、40℃で24時間、常圧でDMAcを留去させた。
実施例2(ポリウレタンエラストマー(B)の合成)
窒素雰囲気下、撹拌翼、温度計および水冷式コンデンサーを装着した反応機に、実施例1で使用したPTMG85.79質量部と、PTMG中の水酸基に対する1,4−BIC(2)とH12MDI(7)(後述)との混合ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)が1.48となるように、1,4−BIC(2)11.19質量部、および4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(デグサ社製、商品名:ベスタナットH12MDI)(以下、H12MDI(7)と略する。)1.68質量部を仕込み、80℃まで昇温した。
次いで、同温度にてイソシアネート基含量が1.76質量%になるまで反応させ、プレポリマー(B)を得た。
その後、実施例1と同様の配合処方および操作にて、EDAとDEAとの混合アミンの1.13質量%のDMAc溶液(アミン溶液)をプレポリマー(B)のDMAc溶液に滴下し、鎖伸長反応させた。
実施例3(ポリウレタンエラストマー(C)の合成)
500ppmとなるo−トルエンスルホンアミド(和光純薬工業株式会社製)を溶解した、1,4−BIC(3)を用いた以外は、実施例1と同様の配合処方および操作にて、プレポリマー(C)の調製および鎖伸長反応を行なうことにより、ポリウレタンエラストマー(C)のDMAc溶液を得た。そして、得られたポリウレタンエラストマー(C)のDMAc溶液を用いて、実施例1のポリウレタンエラストマーフィルム(A)を作製する場合と同様の操作により、厚みが100μmのポリウレタンエラストマーフィルム(C)を作製した。
3000ppmとなるp−トルエンスルホンアミド(和光純薬工業株式会社製)を溶解した、1,4−BIC(3)を用いた以外は、実施例1と同様の配合処方および操作にて、プレポリマーの調製および鎖伸長反応を行なうことにより、ポリウレタンエラストマー(D)のDMAc溶液を得た。そして、得られたポリウレタンエラストマー(D)のDMAc溶液を用いて、実施例1のポリウレタンエラストマーフィルム(A)を作製する場合と同様の操作により、厚みが100μmのポリウレタンエラストマーフィルム(D)を作製した。
1,4−BIC(3)を用いた以外は、実施例1と同様の配合処方および操作にて、プレポリマー(E)の調製および鎖伸長反応を行なうことにより、ポリウレタンエラストマー(E)のDMAc溶液を得た。そして、得られたポリウレタンエラストマー(E)のDMAc溶液を用いて、実施例1のポリウレタンエラストマーフィルム(A)を作製する場合と同様の操作により、厚みが100μmのポリウレタンエラストマーフィルム(E)を作製した。
1,4−BIC(5)を用いた以外は、実施例1と同様の配合処方および操作にて、プレポリマー(F)の調製および鎖伸長反応を行なうことにより、ポリウレタンエラストマー(F)のDMAc溶液を得た。そして、得られたポリウレタンエラストマー(F)のDMAc溶液を用いて、実施例1のポリウレタンエラストマーフィルム(A)を作製する場合と同様の操作により、厚みが100μmのポリウレタンエラストマーフィルム(F)を調製した。
イソシアネート基濃度を基準として、1,3−BIC(6)と1,4−BIC(3)とのモル比が55/45となるように、1,3−BIC(6)と1,4−BIC(3)とを混合して、混合ポリイソシアネートを得た。
次いで、窒素雰囲気下、撹拌翼、温度計および水冷式コンデンサーを装着した反応機に、実施例1で使用したPTMG86.16質量部と、PTMG中の水酸基に対する混合ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)が1.48となるように、混合ポリイソシアネートとを仕込んだ。
1,3−BIC(6)を用いた以外は、実施例1と同様の配合処方および操作にて、プレポリマー(H)の調製および鎖伸長反応を行なうことにより、ポリウレタンエラストマー(H)のDMAc溶液を得た。そして、得られたポリウレタンエラストマー(H)のDMAc溶液を用いて、実施例1のポリウレタンエラストマーフィルム(A)を作製する場合と同様の操作により、厚みが100μmのポリウレタンエラストマーフィルム(H)を作製した。
1,4−BIC(4)を用いた以外は、実施例1と同様の配合処方および操作にて、プレポリマー(I)の調製および鎖伸長反応を行なうことにより、ポリウレタンエラストマー(I)のDMAc溶液を得た。そして、得られたポリウレタンエラストマー(I)のDMAc溶液を用いて、実施例1のポリウレタンエラストマーフィルム(A)を作製する場合と同様の操作により、厚みが100μmのポリウレタンエラストマーフィルム(I)を作製した。
各実施例および各比較例で得られたポリウレタンエラストマーフィルム(以下、各ポリウレタンエラストマーフィルムと略する。)の繰返し伸長変形後の残留歪み、繰返し伸長変形後の1000%応力、耐黄変性および耐熱性を以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
<繰返し伸長変形後の残留歪み(単位:%)>
短冊状の各ポリウレタンエラストマーフィルムに対して、23℃、相対湿度55%の実験室内に設置した引張試験機(株式会社インテスコ製、モデル:205型)を用いて、引張試験を行なった。より具体的には、引張方向に30mmの試料長(L1)であるフィルムを、引張速度500mm/minで300%まで伸長する操作を5回繰り返した。
そして、以下の式を用いて繰返し伸長変形後の残留歪みを算出した。
{(L2−L1)/L1}×100
<繰返し伸長変形後の1000%応力(単位:MPa)>
上記「繰返し伸長変形後の残留歪み」の項において試料長(L2)を測定した後、フィルムが破断するまで、引張速度500mm/minで伸長した。
<耐黄変性(Δb/単位:なし)>
色彩色素計(ミノルタカメラ社製、モデル:CR−200)を用いて、短冊状の各ポリウレタンエラストマーフィルムのb値(b1)を測定後、キセノン照射試験を行なった。
なお、キセノン照射試験は、スーパーキセノンウエザーメーター(スガ試験機株式会社製、型式:SX75−AP)を用いて、ブラックパネル温度89℃、相対湿度50%、キセノンランプ放射照度100W/m2(照射波長300〜400nm)の条件にて、67
2時間行なった。
<耐熱性/熱処理後の歪み率(単位:%)>
短冊状の各ポリウレタンエラストマーフィルムを、100℃近くに沸騰した熱水中に2時間浸漬させた後、23℃、相対湿度55%の実験室内に24時間静置し、乾燥させた。
次いで、伸長した状態のフィルムを、前記した100℃近い熱水中に10分間浸漬させた後、予め130℃に調整したオーブン中に、そのまま静置し、同温度で5分間乾燥させた。
そして、以下の式を用いて、熱処理後の歪み率を算出した。なお、熱処理後の歪み率が低いほど、耐熱性が良好と判断した。
{(L4−L3)/L3}×100
Claims (6)
- イソシアネート基の総モル数に対して、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアネート基を、50モル%を超過する割合で含有し、かつ、加水分解性塩素の含有量が700ppm以下であるポリイソシアネートと、鎖伸長剤との反応により形成されるハードセグメントを含有することを特徴とする、ポリウレタンエラストマー。
- 1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが、トランス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを50質量%以上含有することを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタンエラストマー。
- さらに、スルホンアミド基を有するスルホンアミド基含有化合物を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載のポリウレタンエラストマー。
- 前記スルホンアミド基含有化合物が、芳香族スルホンアミド類から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項3に記載のポリウレタンエラストマー。
- 前記スルホンアミド基含有化合物を、1〜10000ppm含有することを特徴とする、請求項3または4に記載のポリウレタンエラストマー。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタンエラストマーが用いられていることを特徴とする、成形品。
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