JP5260834B2 - 熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物及び透湿性フィルム - Google Patents

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本発明は、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物及び透湿性フィルムに関する。更に詳しくは、有機溶剤を実質的に含有することなく、優れた透湿性と耐熱性とを両立できる透湿性フィルムを得ることのできる熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物及び当該樹脂組成物からなる透湿性フィルムに関する。
従来より、衣料材料分野においては、体内から発生した汗等による水蒸気は透すが、降雨等による水滴は透さないという、透湿性と防水性との両者を兼ね備えた透湿防水性布帛が使用されている。このような透湿防水性布帛は、透湿性を有するフィルムが布帛等に積層された構造を有している。
また、医療材料や衛生材料分野においても、例えば、創傷保護フィルム、女性用ナプキン、及びおむつ等、透湿性が必要な部材には、透湿性フィルムが使用されている。
このような透湿性フィルムの材料としては、人体の動きに追従しやすい柔軟性や伸縮性、及び繰返し使用に対する耐久性が要求されることから、ポリウレタン樹脂が用いられている。
中でも、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、ゴムとプラスチックとの中間領域を埋める製品に位置しており、反発弾性、耐摩耗性、機械強度、耐油性、耐薬品性、耐候性等、多くの特性を有することから、透湿性フィルムの材料として好適に用いることができる。ここで、熱可塑性ポリウレタン樹脂とは、長鎖ポリオール、ポリイソシアネート、鎖延長剤を反応させて得られる、ハードセグメント(硬い剛直なセグメント)及びソフトセグメント(柔軟な可撓なセグメント)からなるブロックポリマーである。
ポリウレタン樹脂を用いた透湿性フィルムの製造方法としては、とりわけ、衣料材料分野における透湿防水性布帛を得る方法としては、湿式又は乾式コーティング法が用いられている。湿式コーティング法とは、ポリウレタン樹脂をジメチルホルムアミド等の有機溶媒に溶解し、得られた溶液を織物や編物等の布帛の上にコーティングした後、コーティングされた織物等を水中に通すことによりポリウレタン樹脂に含まれる有機溶媒を溶出させて微多孔を形成し、ポリウレタン樹脂からなる微多孔皮膜を布帛の表面に形成する方法である。一方、乾式コーティング法とは、ポリウレタン樹脂を有機溶媒に溶解し、得られた溶液を離型紙上にコーティングした後、ポリウレタン樹脂に含まれる有機溶媒を蒸発させてポリウレタン樹脂の無孔皮膜を離型紙上に形成し、これに織物や編物等の布帛を貼り合わせることで透湿防水性布帛を形成する方法である。
このような湿式又は乾式コーティング法によれば、1回のコーティングにより形成される皮膜では十分な物性が発現しない。このため、複数回のコーティングが必要とされる。しかしながら、コーティングの回数が増加すると、製造工程が煩雑になる上、形成される皮膜の厚みにばらつきが生じ、物性が変動するといった問題が生じていた。
また、どちらのコーティング方法を採用する場合であっても、透湿防水素材の製造過程において有機溶媒の除去が必要となる。このため、ろ液の回収、処理等の工程が煩雑となる上、大気汚染の問題が生じていた。また、昨今においては、環境問題や衛生問題への対応として、有機溶剤を含有しない製品が求められている。
上記の問題を解決する手段として、天然又は合成繊維からなる布帛に、透湿性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂の熱成形フィルムを貼り合わせる方法が採用されており、様々な方策により、その改良が行われている。
特許文献1には、特定の平均分子量を有するポリエチレングリコールを特定量使用して、無溶媒で透湿性、及びフィルム又はシートの成形性に優れた熱可塑性ポリウレタン樹脂を、無溶媒で製造できる方法が開示されている。この方法によれば、成形直後のタックが少なく、透湿度の高いフィルムを得ることができる。
また、特許文献2には、有機ジイソシアネート、鎖伸長剤、及び、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール及びポリオキシプロピレンポリオキシエチレン共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種の高分子ジオールを反応させて得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂によるフィルムを、布帛に加熱溶融圧着することにより、撥水、透湿性布帛を得る方法が開示されている。この方法によれば、繊維本来の風合いを損なうことなく、ムラのない撥水性、透湿性を備えた布帛を得ることができる。
特許文献3には、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリエチレングリコール、及び1,4−ブタンジオールの反応生成物を含んでなり、それぞれの当量の比が4:1:3であり、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと1,4−ブタンジオールの量がポリウレタン樹脂の全量の約46重量%である親水性ポリウレタン樹脂が開示されている。この親水性ポリウレタン樹脂は、非常に優れた強靭性、引張強度、及び低い水膨潤性を有し、且つ、高い透湿性を発現することができる。
また、特許文献4には、イソシアネート成分として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、鎖伸長剤として1,4−ブタンジオールを用い、ポリオール成分として分子量1,000〜4,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、及び/又は、分子量1,000〜3,000のポリオキシプロピレンポリオキシエチレン共重合体を用いてなる熱可塑性ポリウレタンから得られる創傷保護フィルムが開示されている。この創傷保護フィルムは、上記の特定の熱可塑性ポリウレタン樹脂を製膜することにより、高い透湿性を有するものとなる。
特許文献5には、ポリウレタン樹脂と熱可塑性生分解性樹脂とをブレンドしてなる透湿性樹脂組成物を用いたフィルムが開示されている。このフィルムは、軟質で伸縮性があり、且つ、透湿性を有するものとなる。また、ポリウレタン樹脂と相溶性のある熱可塑性生分解性樹脂を配合するため、押出成形法、特にインフレーション法によるフィルムの成形加工性を改善することができる。
特許文献6には、繊維布帛に、ポリウレタン樹脂の皮膜をコーティングもしくはラミネートした防水性衣料用のシームテープが開示されている。このシームテープは、耐熱性ウレタン皮膜の上に、ホットメルトウレタン樹脂をコーティングもしくはラミネートした2層構造、又は、トリコット等の編物の上に、耐熱性のウレタン樹脂層をラミネート等の手段により形成し、更にその上に、ホットメルト性のウレタン樹脂をコーティングもしくはラミネートした3層構造を有する。また、耐熱性のウレタン樹脂層を形成する材料として、例えば、固形分30質量%のウレタン樹脂溶液にメチルエチルケトンのような有機溶媒を添加した溶液が使用されており、ウレタン樹脂の軟化温度は少なくとも170℃、更に好ましくは190℃以上であることが記載されている。尚、軟化温度の測定条件については、何ら記載されていない。
特開平9−157409号公報 特開2001−214374号公報 特表平10−505108号公報 特開2002−345946号公報 特開2003−213119号公報 特開2003−176463号公報
ところで、ポリエチレングリコールやポリオキシプロピレンポリオキシエチレン共重合体等のオキシエチレン基を多量に含有したポリオールを使用する場合には、オキシエチレン基の量の増加は、ポリウレタン樹脂の透湿性の向上に寄与する。しかしながら、ポリウレタン樹脂中のオキシエチレン基の含有量が多くなりすぎると、フィルムの成形性が劣り、熱成形が困難となっていた。
これに対し、特許文献1から3には、特定量のオキシエチレン基を含有する熱可塑性ポリウレタン樹脂を用いれば、ポリウレタン樹脂の有する伸縮性、機械物性を保持しつつ、高い透湿性を発現するフィルムを、熱成形により得られることが開示されている。また、特許文献4から5には、特定の分子量のポリエチレングリコールを用い、あるいは、特定の樹脂を併用することにより、フィルムの成形加工性が改善されることが開示されている。
しかしながら、透湿性フィルムを衣料材料分野に用いる際には、熱成形によりポリウレタン樹脂フィルムを得るだけでは満足できるものではなく、その性能として、透湿性の他に、織物や編物等の布帛に得られたフィルムを加熱圧着する際の加熱温度に耐え得る耐熱性が必要とされる。
ここで、一般にポリウレタン樹脂の耐熱性を向上させるためには、ポリウレタン樹脂の鎖延長剤として、グリコールよりもアミンを使用することが好ましい。しかしながら、熱可塑性ポリウレタン樹脂の場合には、熱成形するために、ウレタン基が著しく分解する温度以下で溶融させる必要がある。このため、熱可塑性ポリウレタン樹脂には、鎖延長剤としてアミンを用いることができず、短鎖グリコールを用いたウレタン基からなるハードセグメント構造となるのが一般的である。
また、ポリウレタン樹脂の耐熱性を向上させる別の方法として、ウレタン基よりも凝集力の高いウレア基を用いる方法を挙げることができる。有機溶媒に溶解させて使用するポリウレタン樹脂の場合には、熱をかけてポリマーを溶融させる必要が無いことから、ポリウレタン樹脂を重合する際の鎖延長剤として、ジアミンを用いたウレア基を用い、これをハードセグメントとして導入することができる。しかしながら、ウレア基を導入したポリウレタン樹脂は、溶融が困難となってしまい、このため、有機溶媒に溶解した形態で使用する場合が多くなる。その結果、ウレア基を導入したポリウレタン樹脂は、フィルム等の熱成形用途には、殆ど使用されていないのが現状である。
したがって、天然又は合成繊維等からなる布帛に、熱可塑性ポリウレタン樹脂を熱成形したフィルムを貼り合わせる方法によれば、有機溶媒の使用に伴う諸問題を解決することはできるが、高い透湿性を維持したままで、有機溶媒を用いたポリウレタン樹脂溶液から得られるフィルムに匹敵する程度の耐熱性を発現させることは困難であった。すなわち、熱可塑性ポリウレタン樹脂においては、高い透湿性と耐熱性との両立については、未だ満足できるものではなく、更なる改善が望まれていた。
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、有機溶剤を含有することなく、優れた透湿性と耐熱性とを両立できる透湿性フィルムを得ることのできる熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物及び当該樹脂組成物からなる透湿性フィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、有機溶媒を実質的に用いることなくポリウレタン樹脂組成物の製造を行うことができ、更に、有機溶媒を実質的に用いることなくフィルム等の熱成形を行うことができ、且つ、透湿性と耐熱性とを両立することのできる樹脂組成物について鋭意研究を重ね、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(1) (a1)ポリイソシアネート及び(a2)ポリオールを出発原料として含む(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂を含む組成物であって、前記(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂におけるオキシエチレン基の含有量は、40質量%以上65質量%以下であり、厚み20μmのフィルムとした場合の熱機械分析(TMA)による軟化温度が160℃以上である熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物。
(1)の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、特定量のオキシエチレン基を含むことにより、高い透湿性を有しつつも、高い耐熱性を発現するものである。また、有機溶媒を実質的に用いることなく組成物を製造することができるとともに、有機溶剤を実質的に使用することなく組成物を熱成形することができる。したがって、(1)の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物によれば、高い透湿性と耐熱性との両者を兼ね備えた、無溶剤の成形品を得ることができる。
(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂におけるオキシエチレン基の含有量が40質量%未満であると、十分な透湿性を得ることができず、一方で、オキシエチレン基の含有量が65質量%より多いと、十分な耐熱性を得ることが困難となる。尚、オキシエチレン基の含有量は、(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂の原料である(a2)ポリオール中のオキシエチレン基により制御することができる。
また、厚み20μmのフィルムとした場合の熱機械分析(TMA)による軟化温度が160℃以上であると、例えば、衣料用材料のフィルムとして使用された場合、フィルムを布帛に加熱圧着する温度において、あるいは乾燥、クリーニング時において、フィルムにしわや穴が開きにくく、その結果、意匠性を保つことができる。
(2) 前記(a2)ポリオールは、芳香族ポリオール、芳香族ポリカルボン酸、及び、脂環式ポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の活性水素化合物に、アルキレンオキサイドを付加重合して得られるポリオキシアルキレンポリオールを含み、当該ポリオキシアルキレンポリオールは、前記(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂100質量%に対して、10質量%以上含まれる(1)記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物。
(2)の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、特定構造のポリオキシアルキレンポリオールを10質量%以上含む(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂を含むものである。このような特定の熱可塑性ポリウレタン樹脂を用いることにより、透湿性を維持しつつ、耐熱性を高いものとすることができる。
(3) 更に、(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物全体に対して、0.3質量%以上10質量%以下含む(1)又は(2)記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物。
(3)の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを含有するものである。ポリウレタン樹脂組成物においては、一般に、オキシエチレン基の含有量が高くなると、べとつき感が増加してしまう。そこで、(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを添加すれば、オキシエチレン基に起因するべとつき感を改善することができ、タック性を向上することができる。したがって、(3)の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物からなるフィルム等を、例えば、衣料材料分野に使用する場合には、加工の際のミシン作業等における成形加工性に優れ、また、良好な触感の衣料等を得ることができる。
また、(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットは、それ自体が弾性を有する化合物である。このため、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物に添加することにより、高い弾性率を付与しつつ、高い破断伸びを維持することが可能となる。
また、(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットは、その構造にポリウレタンを含むため、(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂に(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを混合した場合であっても、その比重の上昇を抑制することができる。このため、(3)の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、フィルムに成形された場合、より軽いフィルムを与えることができる。
更に、(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットは、その構造にポリウレタンを含むため、(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂への分散性に優れている。このため、弾性率向上を目的として、タルクや炭酸カルシウム等の無機フィラーを添加する場合と異なり、少量の添加であっても十分な弾性率向上の効果を発現できるとともに、熱可塑性ポリウレタン樹脂が本来有する優れたゴム弾性を損なうことなく維持することができる。
加えて、(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットは、その構造にケイ素を含有することから、熱可塑性ポリウレタン樹脂に添加した場合には、組成物の耐熱性を向上させることができる。
(3)の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物における(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの含有量は、0.3質量%以上10質量%以下である。(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの含有量が0.3質量%より少ない場合には、弾性率等の上記の改善効果が少なくなり、一方で、10質量%よりも多い場合には、熱可塑性ポリウレタン樹脂との相溶性がやや低下する。
(4) 前記(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットは、有機溶剤を実質的に含有しないものである(3)記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物。
ここで、「有機溶剤を実質的に含有しない」とは、(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの製造工程及び保管工程等において、有機溶剤がほとんど或いは全く使用されないことから、(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジット中に極性溶媒が実質的に含まれないことを意味する。ここで、「実質的に含有しない」とは、(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットにおける有機溶媒の含有量が、0.05質量%以下であることを意味する。
(4)の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物に含まれる(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットは、有機溶剤を実質的に含有しないものであることから、(3)の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を得るにあたっては、減圧留去等により有機溶媒を除く工程が必要とならない。このた、熱可塑性エラストマー組成物を得るための製造工程が煩雑とならない。
また、(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットが有機溶剤を実質的に含有しないことから、(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを配合した場合であっても、有機溶媒を含有しない熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を得ることができ、このため、(4)の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、昨今の環境対応等に適した組成物となる。
(5) 前記(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットは、
(b1)親水性基を有するポリウレタンから生成される水分散ポリウレタン、及び/又は、界面活性剤とポリウレタンとから生成される水分散ポリウレタンと、
(b2)ケイ酸エステルと、
を混合し、ポリウレタンとポリケイ酸とを同一系中で同時に析出させてなるものである(3)又は(4)記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物。
(5)の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物に含まれる(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットは、抽出溶剤や無機塩等の原料を使用することなく製造されるものである。このような方法で得られる(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットは、機械的特性に優れ、独特のモルフォロジーを有する。
このため、このような(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを配合した(5)の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、上記(3)又は(4)の効果を容易に実現することができる。
(6) 前記(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットは、
(b1)親水性基を有するポリウレタンから生成される水分散ポリウレタン、及び/又は、界面活性剤とポリウレタンとから生成される水分散ポリウレタン、
(b3)ケイ酸塩、及び、
(b4)酸、
を混合し、ポリウレタンとポリケイ酸とを同一系中で同時に析出させてなるものである(3)又は(4)記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物。
(6)の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物に含まれる(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットは、抽出溶剤や無機塩等の原料を使用することなく製造されるものである。このような方法で得られる(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットは、機械的特性に優れ、独特のモルフォロジーを有する。
このため、このような(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを配合した(5)の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、上記(3)又は(4)の効果を容易に実現することができる。
(7) (1)から(6)いずれか記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物からなり、無溶媒で熱成形されてなる透湿性フィルム。
(7)の透湿性フィルムは、耐熱性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を用いるため、オキシエチレン基の含有量が40質量%以上65質量%以下であっても、熱成形により得ることができる。また、有機溶媒を用いることなくフィルムの成形を行うことができることから、昨今の環境問題や衛生問題に十分に対応することができる。
(8) 熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を無溶剤で熱成形して得られる透湿性フィルムであって、厚み20μmでのJIS L−1099記載のB1法による透湿度が80,000(g/m2・24h)以上であり、厚み20μmでの熱機械分析(TMA)による軟化温度が160℃以上である透湿性フィルム。
フィルムの厚み20μmにおける透湿度が80,000(g/m・24h)以上であると、当該フィルムは高い透湿性を有する。このため、そのフィルムを使用した布帛の透湿度も高くなり、十分な快適性を得ることができる。したがって、(8)の透湿性フィルムは、例えば、衣料材料分野、医療材料や衛生材料分野において要求される透湿性を十分に満足させることができ、様々な用途に用いることができる。
また、フィルムの厚み20μmにおける熱機械分析(TMA)による軟化温度が160℃以上であると、例えば、衣料用材料のフィルムとして使用された場合、フィルムを布帛に加熱圧着する温度において、あるいは乾燥、クリーニング時において、フィルムにしわや穴が開きにくく、その結果、意匠性を保つことができる。
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、従来の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物では達成が困難であった高い透湿性と耐熱性とを両立する組成物となる。このため、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物からは、透湿性と耐熱性を兼ね備えた透湿性フィルムを得ることができる。
また、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、引張強度、破断伸び等の機械物性が優れる。このため、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物から得られるフィルムは、高い機械物性を必要とする分野に好適に用いることができる。
また、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、有機溶媒を実質的に用いることなく組成物を製造することができるとともに、有機溶剤を実質的に使用することなく組成物を熱成形することができる。したがって、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、環境対応あるいは衛生対応等が必要とされる分野においても、十分に使用することができる。
更に、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物が(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを含む場合には、オキシエチレン基に起因するべとつき感を改善することができ、タック性を向上することができる。したがって、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を、例えばフィルムに成形した場合には、たとえ弾性率が低い場合であっても、フィルム表面のタックが少なくなり、その結果、成形加工性に優れ、且つ、触感が良好なフィルムとなる。
また、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物が(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを含む場合には、従来の無機シリカのコンパウンドと異なり、(A)ポリウレタン樹脂の有するゴム弾性的性質を維持したまま、フィルムの耐熱性の向上を図ることができる。
<熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU)>
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、(a1)ポリイソシアネート及び(a2)ポリオールを出発原料として含む(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂を含有するものであって、(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂におけるオキシエチレン基の含有量が40質量%以上65質量%以下であり、厚み20μmのフィルムとした場合の熱機械分析(TMA)による軟化温度が160℃以上である。
[(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂]
本発明の組成物に用いられる(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂は、(a1)ポリイソシアネート及び(a2)ポリオールを出発原料として含む。
〔(a1)ポリイソシアネート〕
本発明に用いられる(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂の出発原料のひとつとなる(a1)ポリイソシアネートは、通常の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造に用いられるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、イソシアネート基を1分子中に2個以上有する芳香族系、脂肪族系、脂環族系等のイソシアネートを挙げることができる。
芳香族系イソシアネートの具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、これらトリレンジイソシアネートの異性体混合物(例えば、2,4体:2,6体=80:20(重量比)の混合物(TDI−80/20)、2,4体:2,6体=65:35(重量比)の混合物(TDI−65/35))、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、上記のジフェニルメタンジイソシアネートの任意の異性体混合物、トルイレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等を挙げることができる。
脂肪族系イソシアネートの具体例としては、エチレンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等を挙げることができる。
脂環族系イソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート等を挙げることができる。
更に、上記のポリイソシアネート化合物のカルボジイミド変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体、イソシアヌレート変性体等の変性イソシアネート化合物を使用することもできる。
尚、これらのポリイソシアネートは、1種単独の使用であっても、また、2種以上の併用であってもよい。
上記のポリイソシアネートの中では、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIともいう)、パラフェニレンジイソシアネート(以下、PPDIともいう)、ナフタレンジイソシアネート(以下、NDIともいう)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI:以下、HMDIともいう)、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIともいう)、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDUともいう)、ノルボルナンジイソシアネート(以下、NBDIともいう)を好ましく用いることができ、最も好ましくは、MDI、NDI、HMDI等の有機ジイソシアネート、及びこれら有機ジイソシアネートのウレタン変性体、アロファネート変性体、ビウレット変性体が特に好ましい。
〔(a2)ポリオール〕
本発明に用いられる(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂の出発原料のひとつとなる(a2)ポリオールは、通常のポリウレタン樹脂の製造に使用されるポリオールであれば特に限定されるものではない。尚、本発明においては、(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂におけるオキシエチレン基の含有量は、原料として用いる(a2)ポリオール中のオキシエチレン基により制御する。
ここで、通常のポリウレタン樹脂の製造に用いられるポリオールとしては、例えば、比較的低分子量の多価アルコール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリオキシアルキレングリコール等を挙げることができる。更に、ポリエーテルポリオールあるいはポリエステルポリオールの変性物、ヒドロキシル基をイソシアネート基に対して化学量論的に過剰量を用いることにより合成される、ヒドロキシル基末端ウレタンプレポリマーを使用することもできる。
本発明に用いる(a2)ポリオールとしては、芳香族ポリオール、芳香族ポリカルボン酸、及び脂環式ポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の活性水素化合物に、アルキレンオキサイドを付加重合して得られるポリオキシアルキレンポリオール(以下、ポリオキシアルキレンポリオールという)を、少なくとも10質量%用いることが好ましく、少なくとも15質量%用いることが更に好ましい。このようなポリオキシアルキレンポリオールを用いることにより、高い透湿性を発現しつつ、フィルムの耐熱性を向上させることができる。尚、ポリオキシアルキレンポリオールは、(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂におけるオキシエチレン基の含有量が40質量%以上65質量%以下となる範囲で使用する。
ポリオキシアルキレンポリオールの重合開始剤として用いる芳香族ポリオール、芳香族ポリカルボン酸、及び脂環式ポリオールからなる活性水素化合物としては、1分子中に少なくとも2個以上の活性水素基を有する化合物を用いることが好ましい。このような化合物としては、例えば、ハイドロキノン(以下、HQともいう)、レゾルシン(以下、RSともいう)、ビスフェノールA、ビスフェノールF等の芳香族ポリオール;ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(以下、BHETともいう)、及びビス(2−ヒドロキシエチル)イソフタレート、フタル酸、トリメリット酸等の芳香族ポリカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、4,4−イソプロピリデンビスシクロヘキサノール等の脂環式ポリオールを挙げることができる。これらのポリオールの中では、HQ、RS、又はBHETを特に好ましく用いることができる。
ポリオキシアルキレンポリオールを得るための、前記した重合開始剤となる活性水素化合物に付加重合するアルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等を挙げることができる。これらの中では、エチレンオキサイドを好ましく用いることができ、単独、もしくは他のアルキレンオキサイドを併用することができる。他のアルキレンオキサイドをエチレンオキサイドと共重合する場合には、(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂におけるオキシエチレン基の含有量が40質量%より少なくならないように併用する。尚、エチレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドを共重合する際には、例えば、プロピレンオキサイドの重合後にエチレンオキサイドを重合するブロック共重合を行うよりも、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとをランダムに共重合する方法を用いることが好ましい。
アルキレンオキサイドの重合触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属化合物、特開平11−106500号公報に記載されたP=N結合を有するホスファゼニウム化合物、EP763555号公報に記載されたホスファゼン化合物等を使用することができる。
重合開始剤となるポリオールにアルキレンオキサイドを付加重合した後の粗製ポリオキシアルキレンポリオールは、リン酸、塩酸等の酸による中和、及び/又は従来公知の吸着剤を用いた精製処理を行うことにより、JIS K−1557で定められるCPR(Controlled Polymerization Rate)が5以下、好ましくは3以下、最も好ましくは1以下に制御することが好ましい。
また、ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価としては、13mgKOH/g以上220mgKOH/g以下が好ましく、28mgKOH/g以上120mgKOH/g以下が更に好ましい。
このようなポリオキシアルキレンポリオールは、単独で用いても、あるいは併用しても構わない。
上述の通り、本発明の(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂におけるオキシエチレン基の含有量は、原料として用いる(a2)ポリオール中のオキシエチレン基により制御する。ここで、オキシエチレン基を含有するポリオールとしては、特に制限されるものではないが、上記のポリオキシアルキレンポリオール以外に、例えば、ポリエチレングリコール(以下、PEGともいう)、ポリエチレングリコール(PEG)を分岐鎖として有するポリエステルポリオール等を挙げることができる。
本発明に用いられる(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂において、オキシエチレン基を有する(a2)ポリオールとしてPEGを用いる場合には、本発明に用いられる(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂におけるオキシエチレン基の含有量が、40質量%より少なくならない範囲で用いれば、PEGの分子量について等は特に制限されるものではない。
オキシエチレン基を有する(a2)ポリオールとなるPEGの水酸基価としては、10mgKOH/g以上220mgKOH/g以下が好ましく、10mgKOH/g以上120mgKOH/g以下が更に好ましい。
また、オキシエチレン基を有する(a2)ポリオールとなる更に別の例である、PEGを分岐鎖として有するポリエステルポリオールとしては、無水トリメリット酸無水物のような酸無水物に、片末端にメトキシ基やラウリル基を導入したポリエチレングリコールモノアルキルエーテルを反応させ、更に、グリコールとの縮合重合により得られるポリオールを例示することができる。ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとしては、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(以下、メトキシPEGともいう)が好ましく用いられる。
尚、本発明の主旨に反しない範囲で、上記のポリオキシアルキレンポリオール等のオキシエチレン基を有するポリオールの他に、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリテトラメチレングリコール等を併せて用いることができる。ポリオキシアルキレンポリオールの他に用いるポリオールの水酸基価は、15mgKOH/g以上220mgKOH/g以下が好ましく、35mgKOH/g以上120mgKOH/g以下が更に好ましい。ポリオキシアルキレンポリオール等のオキシエチレン基を有するポリオールの他に用いるポリオールは、1種単独であってもよいし、2種以上を混合して用いても良い。
ポリオキシアルキレンポリオール等のオキシエチレン基を有するポリオールと併用できるポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等の低分子量ポリオールの1種又は2種以上と、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸あるいはその他のジカルボン酸やオリゴマー酸等のカルボン酸成分となる化合物の1種又は2種以上とを、縮合重合することにより得られるポリエステルポリオール等を挙げることができる。また、ε−カプロラクトンを開環重合して得られるポリカプロラクトンジオール等を例示することができる。
ポリオキシアルキレンポリオール等のオキシエチレン基を有するポリオールと併用できるポリカーボネートジオールとしては、例えば、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の2価アルコールと、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等との縮合反応より得られるポリカーボネートジオールを挙げることができる。
ポリオキシアルキレンポリオール等のオキシエチレン基を有するポリオールと併用できるポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMEGともいう)とは、テトラヒドロフランを開環重合することによって得られるものであり、本発明においては、PTMEGにエチレンオキサイドを付加重合したポリオールを使用することもできる。
〔鎖延長剤〕
本発明に用いられる(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂の原料として用いられる鎖延長剤は、特に限定されるものではないが、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を2個以上有する数平均分子量が500以下の低分子グリコールであって、以下の一般式(I)で表されるジオール、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジオール、キシリレングリコールが好ましく用いられる。
Figure 0005260834
(式中、
a及びbは、同一でも異なっていてもよく、0〜4の整数を示し、
A及びBは、同一でも異なっていてもよく、オキシアルキレン基又は置換オキシアルキレン基を示す。)
本発明において、好ましく用いられる上記一般式(I)におけるa及びbは、a=bの関係となることがより好ましい。また、a+bの最大値は8とすることが好ましく、a+bが0〜6の整数とすることがより好ましく、1〜4の範囲の整数とすることが更に好ましい。最も好ましくは、a+bを2〜4の整数とすることである。a+bをこの範囲とすることにより、耐熱性及び透湿性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
上記一般式(I)におけるA及びBを有する基は、互いに、1,2−位、1,3−位、及び1,4−位に位置する構造をとりうる。熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造、及び溶融物性の観点からは、1,4−位、又は1,3−位の化合物とすることが好ましい。なかでは、1,4−位の化合物が最も好ましく、耐熱性に優れた熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を与えうる。
更に、上記一般式(I)におけるA及びBとなるオキシアルキレン基又は置換オキシアルキレン基は、特に限定されるものではないが、炭素数2以上30以下のものが好ましく、炭素数2以上15以下のものが更に好ましく、炭素数2以上10以下のものが特に好ましい。
上記一般式(I)におけるA及びBとなる基の具体例としては、オキシプロピレン基、オキシエチレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等を挙げることができる。これらの中では、オキシプロピレン基及びオキシエチレン基から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有することが好ましく、オキシエチレン基が含まれていることが最も好ましい。
例えば、Aとして、オキシエチレン基を繰り返し単位とする場合には、a=b=1(a+b=2)であり、1,4−位にヒドロキシル基を有する、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、a=b=1(a+b=2)であり、1,3−位にヒドロキシル基を有する、1,3−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等が挙げられる。
これらの芳香族ジオール、脂環式ジオールは、単独で用いても、複数を混合して用いてもよい。このようなジオールを鎖延長剤として用いることにより、熱可塑性ポリウレタン樹脂の耐熱性を向上することができる。
また、本発明に係わる他の鎖延長剤としては、前記した芳香族ジオール及び/又は脂環式ジオールとともに、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールのような短鎖ジオール、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等の脂環式ジオール、トリメチロールプロパンのような短鎖トリオールを、併用してもよい。
本発明における最も好ましい鎖延長剤としては、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、及び1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとエチレングリコールの併用であり、これらに更に他の鎖延長剤を用いてもよい。
〔(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法〕
本発明に用いられる(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂は、上記の(a1)ポリイソシアネート及び(a2)ポリオールを出発原料の主原料として製造される。
(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造においては、例えば、David Randall and Steve Lee編「The polyurethanes book」(JOHN WILEY&SONS,LTD)第324頁〜第327頁に記載されているような方法が挙げられる。
より具体的には、予め、(a2)ポリオールの全部又は一部と(a1)ポリイソシアネートとを反応させたイソシアネート基末端プレポリマー(以下、プレポリマーと略す)を製造し、これに鎖延長剤と残りの(a2)ポリオールを反応させて得る方法(以下、プレポリマー法と略す)と、(a2)ポリオールと鎖延長剤とを予め混合し、次いで(a1)ポリイソシアネートと反応させる方法(以下、ワンショット法と略す)のいずれを用いても差し支えない。本発明においては、熱可塑性ポリウレタン樹脂の機械強度の発現性やフィッシュアイの減少という観点から、プレポリマー法を用いることが好ましい。
また、プレポリマー法及びワンショット法のいずれの方法においても、(a2)ポリオール及び鎖延長剤は加熱減圧脱水処理を十分に行ない、水分量を低下させておくことが好ましい。(a2)ポリオール及び鎖延長剤の水分量としては、好ましくは0.05質量%以下、更に好ましくは0.03質量%以下、特に好ましくは0.02質量%以下である。
(a1)ポリイソシアネートのイソシアネート基と、(a2)ポリオール及び鎖延長剤のヒドロキシル基とのモル比(イソシアネートインデックス、NCO/OH比)は、好ましくは0.95以上1.20以下、更に好ましくは0.97以上1.10以下、特に好ましくは0.98以上1.05以下である。
通常、プレポリマー法においては、まず、(a2)ポリオールの全部又は一部と(a1)ポリイソシアネートとからプレポリマーを合成し、その後、得られたプレポリマーと鎖延長剤及び/又は残りのポリオールとを攪拌混合し、最後に、攪拌混合したものからポリウレタンの合成を行う。
プレポリマーの合成にあたっては、不活性ガスの存在下、(a2)ポリオールと(a1)ポリイソシアネートとを反応温度40℃以上150℃以下で、30秒以上8時間以下程度攪拌混合し、プレポリマーを製造する。
次いで、得られたプレポリマーと、鎖延長剤及び/又は残りの(a2)ポリオールとを秤量し、両者を混合する。プレポリマーと、鎖延長剤及び/又は残りの(a2)ポリオールとのイソシアネートインデックス(プレポリマー中のイソシアネート基と、鎖延長剤及び/又は残りの(a2)ポリオール中のヒドロキシル基の比)は、0.95以上1.20以下の範囲が好ましく、更に好ましくは0.97以上1.10以下、特に好ましくは0.98以上1.05以下の範囲である。
プレポリマーと鎖延長剤及び/又は残りの(a2)ポリオールとの混合条件は特に限定されないが、好ましくは40℃以上280℃以下、更に好ましくは100℃以上270℃以下、特に好ましくは120℃以上260℃以下で、0.5分以上30分間以下程度、攪拌混合を行なう。
プレポリマーと鎖延長剤及び/又は残りの(a2)ポリオールとを十分に攪拌混合した後の(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂の重合温度は、150℃以上280℃以下が好ましく、更に好ましくは170℃以上260℃以下である。
ワンショット法によって(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂を得る場合においても同様に、予め、混合、脱泡した(a2)ポリオール及び鎖延長剤と(a1)ポリイソシアネートとを、好ましくは40℃以上280℃以下、更に好ましくは100℃以上260℃以下の温度範囲で、0.5分以上1時間以下程度、まずは攪拌混合を行なう。
(a2)ポリオール及び鎖延長剤と(a1)ポリイソシアネートとを十分に攪拌混合した後の(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂の重合温度は、150℃以上280℃以下が好ましく、更に好ましくは170℃以上260℃以下である。
(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造するための混合方法に関しては、プレポリマー法においても、ワンショット法においても、特に限定されるものではない。例えば、ディゾルバーのような混合槽や循環式の低圧、高圧衝突混合装置、高速撹拌ミキサー、スタティックミキサー、ニーダーのような装置を好ましく用いることができる。特に、高速撹拌ミキサーで(a2)ポリオール及び鎖延長剤と(a1)ポリイソシアネート、あるいはプレポリマーとを十分に混合した後、混合液をバット上に流して合成する方法、混合液をベルトコンベア上に流して連続的に合成を行う方法、又は、スタティックミキサー等の静止型混合器を含む装置にて連続的に合成する方法等を用いることが好ましい。
尚、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物から得られる成形品の用途によっては、(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造時に、金属系やアミン系等の公知の触媒を添加してもよい。その使用量としては、(a2)ポリオール100質量部に対して、0.0001質量部以上2.0質量部以下が好ましく、0.001質量部以上1.0重量部以下が更に好ましい。
重合された(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂は、カッターやペレタイザー等を用いて粉砕、細粒化した後、押出機等を用いて、ペレット等の所望の形状に成形することもできる。
本発明に用いられる(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂は、その製造後、例えば、70℃以上120℃以下、好ましくは80以上110℃以下の温度範囲にて、1時間以上24時間以下程度アニールすることが好ましい。アニールすることにより、(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂のハードセグメントの凝集性が上昇し、耐熱性及び機械物性に優れた成形品を得ることができる。
〔(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂の物性〕
(オキシエチレン基の含有量)
(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂におけるオキシエチレン基の含有量は、通常、40質量%以上65質量%以下の範囲であり、45質量%以上65質量%以下がより好ましい。尚、オキシエチレン基の含有量は、(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂の原料である(a2)ポリオール中のオキシエチレン基により制御することができる。
(ハードセグメントの含有量)
本発明に用いられる(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂におけるハードセグメント(硬い剛直なセグメント)の含有量は、35質量%以上50質量%以下の範囲が好ましく、35質量%以上45質量%以下の範囲が更に好ましい。ここで、本発明で定義するハードセグメントの含有量とは、(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂における(a1)ポリイソシアネート化合物と鎖延長剤との合計の質量に対して、(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂の質量で除した後に100をかけた値をいう。ハードセグメントの濃度が35質量%より少ない場合には、本発明に十分な耐熱性を有することができず、一方で、ハードセグメントの濃度が50質量%より多い場合には、本発明に十分な透湿性を得ることが困難となる。
[(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジット]
次に、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物に用いられる(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットについて説明する。
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物における(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの含有量は、好ましくは0.3質量%以上10質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以上5質量%以下、特に好ましくは1質量%以上5質量%以下である。
〔(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの製造方法〕
本発明に係わるポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの製造方法のひとつとしては、
(b1)親水性基を有するポリウレタンから生成される水分散ポリウレタン、及び/又は、界面活性剤とポリウレタンとから生成される水分散ポリウレタンと、
(b2)ケイ酸エステルと、
を混合し、ポリウレタンとポリケイ酸とを同一系中で同時に析出させてなる方法を挙げることができる。
また、本発明に係わるポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの別の製造方法としては、
(b1)親水性基を有するポリウレタンから生成される水分散ポリウレタン、及び/又は界面活性剤とポリウレタンとから生成される水分散ポリウレタン、
(b3)ケイ酸塩、及び、
(b4)酸、
を混合し、ポリウレタンとポリケイ酸とを同一系中で同時に析出させてなる方法を挙げることができる。
〔(b1)水分散ポリウレタン〕
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物に用いられる(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの特徴の一つとしては、その製造にあたって、(b1)水分酸ポリウレタンを用いることである。
(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの原料として用いられる(b1)水分散ポリウレタンの分子量は、特に限定されるものではないが、好ましくは、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)として1万以上50万以下であり、更に好ましくは1万以上45万以下、特に好ましくは1万以上40万以下である。分子量が1万以下では、(A)熱可塑性ポリウレタンエラストマーとの混合性は良好であるものの、ポリマーとしての性能が発揮されない。一方で、重量平均分子量が50万を超えると、(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂との混合性が低下してしまう。
(基体ポリウレタンの製造方法)
(b1)水分散ポリウレタンの基体となるポリウレタンの製造方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。通常、ポリイソシアネート、ポリオール、及び鎖延長剤を、触媒の存在下あるいは非存在下で反応させることにより、基体となるポリウレタンを得ることができる。例えば、G.Oertel編「POLYURETHANE HANDBOOK」第二版(HANSER,1994)には、種々のポリウレタンの製造方法が開示されており、これに従って、ポリウレタンを製造することができる。
(ポリイソシアネート)
基体となるポリウレタンを製造するための原料となるポリイソシアネートとしては、特に限定されるものではなく、上記したポリイソシアネートを使用することができる。本発明の(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを製造するに好ましいポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を挙げることができる。これらは単独で使用しても、また、二種以上を混合して用いてもよい。更には、これらのポリイソシアネートのウレタン変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体、カルボジイミド変性体、イソシアヌレート変性体等の変性多官能イソシアネート等を使用することもできる。
(ポリオール)
基体となるポリウレタンを製造するための原料となるポリオールとしては、特に限定されるものではなく、上記したポリオールを使用することができる。本発明の(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを製造するに好ましいポリオールとしては、アジピン酸等の酸とネオペンチルグリコール等のアルコールとから得られるポリエステルポリオール、環状のエステルから得られるε−ポリカプロラクトン系のポリエステルポリオール、多価アルコールとアルキルカーボネートとから得られるポリカーボネートジオール、テトラハイドロフランのオリゴマーであるポリオキシテトラメチレングリコール、プロピレンオキサイドやエチレンオキサイド等から得られるポリオキシアルキレン系ポリオールを挙げることができる。また、末端に活性水素基を有するオレフィン系ポリオール、あるいはひまし油等の天然物由来のポリオールも使用することができる。
(鎖延長剤)
基体となるポリウレタンを製造するための原料となる鎖延長剤としては、特に限定されるものではなく、ポリウレタンの製造に用いられる公知の化合物を使用することができる。本発明の(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを製造するに好ましい鎖延長剤としては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の2価のアルコール類、水、ヒドラジンやイソホロンジアミン、キシリレンジアミン等のジアミン類、エタノールアミン等のアルカノールアミンを挙げることができる。また、トリメチロールプロパンやジエタノールアミン等の官能基数が3以上の鎖延長剤を使用することもできる。また、触媒として、ジブチルチンジラウレート等を使用することも可能である。
(親水性基)
(b1)水分酸ポリウレタンが、親水性基を有するポリウレタンから生成される場合には、ポリウレタンが水分散型となるように、当該ポリウレタン中の特定の親水性基濃度が、0.04mmol/g以上であることが望ましい。また、製造されるコンポジットの吸水率という観点から、(b1)水分酸ポリウレタンの原料となるポリウレタン中の親水性基濃度の上限値は、16mmol/g程度であることが望ましい。
例えば、カルボン酸、又はその塩を親水性基として用いる場合には、水分散ポリウレタンの原料となるポリウレタン1g当たり、−COO−基換算で0.04mmol以上16mmol/g以下の濃度の親水性基を含有することが好ましい。上記の範囲であればポリウレタンの水への分散性がよいため、分散性の優れたポリケイ酸とのコンポジットを得ることができる。
(b1)水分酸ポリウレタンの原料となるポリウレタンが有する親水性基としては、水に対して親和性がある基、又は、水と反応して親水性基を生成する基であればよい。水に対し親和性がある基としては、具体的には、カルボン酸基(カルボキシル基)、その酸無水物、その酸ハロゲン化物、その塩;スルホン酸基、リン酸基、及びこれらの塩;アミノ基、水酸基、ポリオキシエチレン基、アミドカルボニル基等を挙げることができる。また、水と反応して親水性基を生成する基としては、例えば、ケチミン基、アルジミン基、オキサゾリジン基等を挙げることができる。
〔ポリウレタンへの親水性基の導入方法〕
(b1)水分酸ポリウレタンの原料となるポリウレタンに親水基を導入する方法としては、例えば、上記した親水基を有し、且つ、イソシアネートとの反応性を有する活性水素化合物を、ポリウレタンの原料として用いる方法が挙げられる。この活性水素化合物は、ポリオールとしても、また、鎖延長剤としても用いることが出来る。より具体的には、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、これらの塩や酸無水物、アミノ基、水酸基、ポリオキシエチレン基、アミドカルボニル基等の親水性基を有する活性水素化合物が用いられる。
カルボン酸基を有する活性水素化合物としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸(以下、DMBAともいう)等のジヒドロキシルカルボン酸、リジン等のジアミノカルボン酸等を挙げることができる。
スルホン酸基を有する活性水素化合物としては、例えば、ジヒドロキシブタンスルホン酸、ジヒドロキシプロパンスルホン酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸等を挙げることができる。
水酸基を持つ活性水素化合物としては、例えば、N−(2−アミノエチル)エタノールアミンを挙げることができる。3級のアミノ基を有する活性水素化合物としては、例えば、N−アルキルジエタノールアミンを挙げることができる。
これら親水性基を有する活性水素化合物を(b1)水分散ポリウレタンの原料として用いる場合には、1種単独の使用であっても、また、2種以上の併用であってもよい。
ポリウレタンに親水性基を導入する別の方法としては、例えば、親水性基を有する単量体を用いて製造した、親水性基を有するポリオールを用いて、ポリウレタンに親水性基を導入する方法が挙げられる。
また、親水性基を有する単量体を用いて得られた、親水性基を有するポリオールを用いることによりポリウレタンに親水性基を導入する方法において、親水性基を有するポリオールとしては、例えば、親水性基を有する酸成分とポリオールとを反応させたポリエステルポリオールが例示できる。
ここで、親水性基を有する酸成分としては、スルホン酸含有酸成分単量体が好ましく用いられ、例えば、5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5−(p−スルホフェノキシ)イソフタル酸、5−(スルホプロポキシ)イソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルホプロピルマロン酸、スルホコハク酸、2−スルホ安息香酸、2,3−スルホ安息香酸、5−スルホサリチル酸及びこれらカルボン酸のメチルエステル類、また、これらスルホン酸の金属塩類やアンモニウム塩類、無水トリメリット酸と数平均分子量が500から5,000のメトキシポリオキシエチレングリコールとの付加物等を挙げることができる。これらの中では、5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩、又は5−スルホイソフタル酸ジメチルのナトリウム塩を好適に使用することができる。
また、上記の親水性基を有する酸性分と反応させるポリオールとしては、特に制限はないが、例えば、前述の鎖延長剤として例示したような2価アルコールを挙げることができ、更に、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、これから得られるポリエステルエーテルポリオール等も用いることができる。
また、親水性基を有する別のポリオールとしては、酸成分と親水性基を有するポリオールとを反応させたポリエステルポリオールが例示できる。
ここで、親水性基を有するポリオールとしては、スルホン酸含有アルコール成分単量体を好ましく用いることができ、例えば、先にスルホン酸基を有する活性水素化合物として例示したエポキシ基含有化合物と酸性亜硫酸塩との合成反応で得られるポリオールが挙げられる。中では、ジヒドロキシブタンスルホン酸、ジヒドロキシプロパンスルホン酸、及び/又はこれらの塩を好適に使用することができる。
また、親水性基を有するポリオールとしては、カルボン酸基、スルホン酸基等の親水性基を有するジオールに、カプロラクトン等を開環重合させた親水性基を有するポリエステルポリオールを挙げることもできる。
ここで、親水性基を有するジオールとしては、前述したジヒドロキシカルボン酸、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、2,2−ジメチロールブタン酸(DMBA)、またはジヒドロキシスルホン酸、例えばジヒドロキシブタンスルホン酸、ジヒドロキシプロパンスルホン酸、及び/又はこれらの塩を好適に使用することができる。
親水性基を有するポリオールの別の例としては、親水性基を有するポリエーテルポリオールを挙げることもできる。ここで、親水性基を有するポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレン鎖を有する1官能性のモノオールや2官能性以上のポリオール、あるいは、親水性基を有するアルコール成分にアルキレンオキサイドを付加させて得られるポリエーテルポリオール等が挙げられる。
ポリオキシエチレン鎖を有するポリオールとしては、数平均分子量が500から10,000のポリオキシエチレン系ポリオールや、プロピレンオキサイドとの共重合体であるポリオキシエチレン−プロピレン系ポリオール等が挙げられる。
また、親水性基を有するアルコール成分にアルキレンオキサイドを付加させて得られるポリエーテルポリオールとしては、上記したジヒドロキシカルボン酸やジヒドロキシブタンスルホン酸等に、アルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを挙げることができる。また、アニリンやアンモニア等のアミン化合物にアルキレンオキサイドを付加して得られる3級アミンを有するポリエーテルポリオールも好適に使用できる。
(界面活性剤)
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物に用いられる(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの原料となる(b1)水分散ポリウレタンは、ポリウレタンが界面活性剤により水分散されたものであってもよい。その場合に使用されるポリウレタンとしては、必ずしも親水性基を有する必要はない。勿論、親水性基を有するポリウレタンであってもよい。したがって、界面活性剤により水分散されるポリウレタンは、上記したポリウレタンのいずれを用いてもよい。
(b1)水分散ポリウレタンを生成するための界面活性剤としては、特に限定されるものではない。例えば、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル型ノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンオキシプロピレントリスチリルフェニルエーテル型ノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル型ノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンオキシプロピレンジスチリルフェニルエーテル型ノニオン界面活性剤、オキシエチレン鎖を有するプルロニック型ノニオン界面活性剤、リン酸塩のアニオン型、あるいは、4級アミン塩のカチオン型等の界面活性剤を挙げることができる。また、これらの界面活性剤は、単独で用いても、あるいは組み合わせて用いてもよい。
((b1)水分散ポリウレタンの製造方法)
(b1)水分散ポリウレタンの製造方法としては、公知の方法を採用できる。例えば、G.Oertel編「POLYURETHANE HANDBOOK」第二版(HANSER,1994)第30頁には、種々の水分散ポリウレタンの製造方法が開示されており、本発明においては、これらの方法に従って調製することができる。
(b1)水分散ポリウレタンの製造方法としては、例えば、アセトン等の有機溶媒中において、上記した方法により親水性基を有するポリウレタンを生成させ、この親水性基を有するポリウレタン溶液に水を加えて転相乳化し、有機溶剤を蒸留除去する溶媒除去法を挙げることができる。
また、別の方法として、親水性基を有するイソシアネート末端のポリウレタンに、水を加えて転相乳化し、その後、水あるいは鎖延長剤で分子量を上げるプレポリマー法等を採用することもできる。更に、プレポリマー法においては、界面活性剤を用いることにより、親水性基を有さないポリウレタンによって水分散ポリウレタンを製造することも可能である。
その他、上記の「POLYURETHANE HANDBOOK」において例示されている、溶融分散法、ケチミン法、せん断分散法等により製造することもできる。尚、比較的高分子量のポリウレタンから、界面活性剤の存在下、水分散ポリウレタンを得ようとする場合には、高せん断分散法を好ましく用いることができる。
また、本発明の(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの材料となる(b1)水分散ポリウレタンとしては、入手可能な市販品を使用することもできる。
親水性基を有するポリウレタンから生成される水分散ポリウレタンの市販品としては、例えば、ポリオキシエチレン基を親水性基とするノニオンタイプの水分散ポリウレタン(三井武田ケミカル社製、商品名:タケラックW−635)、及び、アニオンタイプの水分散ポリウレタン(三井武田ケミカル社製、商品名:タケラックW−6010、タケラックW−511、タケラックW−6020、タケラックW−6061、タケラックW−7004、タケラックW−605、タケラックWS−4000、タケラックWS−5000、タケラックWS−5100)等を挙げることができ、これらは、本発明に好適に使用することができる。
また、界面活性剤を使用する水分散ポリウレタンの市販品としては、例えば、ノニオンタイプの界面活性剤を使用して得られる水分散ポリウレタン(三井武田ケミカル社製、商品名:タケラックW−512−A−6)を挙げることができ、本発明に好適に使用することができる。
〔(b2)ケイ酸エステル〕
(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの原料となる(b2)ケイ酸エステルは、ケイ酸の水素原子を炭化水素基で置換した形態を有する。炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル(ペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等が挙げられるほか、フェニル、トリル、メシチル、ベンジル、シクロプロピル、シクロペンチル等の芳香族又は脂環族の炭化水素基であってもよい。
本発明においては、メタノールとケイ酸とのエステルであるケイ酸テトラメチル、ケイ酸テトラメチルの縮合物、エタノールとケイ酸とのエステルであるケイ酸テトラエチル、ケイ酸テトラエチルの縮合物等を好適に用いることができる。
更に、アルコキシ基の一部が、上記のアルキル基やフェニル基等の炭化水素基で置換されたケイ酸エステルを用いることもできる。このようなケイ酸エステルの中では、メチルトリメトキシシランやメチルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を好適に使用することができる。
尚、このような(b2)ケイ酸エステルとしては、入手可能な市販品を使用することもできる。市販品のケイ酸エステルとしては、例えば、テトラメチルケイ酸エステルの縮合物(多摩化学工業社製、商品名:Mシリケート51)、テトラエチルケイ酸エステルの縮合物(多摩化学工業社製、商品名:シリケート40、シリケート48)等を挙げることができる。
〔(b3)ケイ酸塩〕
(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの原料となる(b3)ケイ酸塩としては、例えば、オルトケイ酸(HSiO)、メタケイ酸(HSiO)、メソ二ケイ酸(HSi)、メソ三ケイ酸(HSi)、メソ四ケイ酸(HSi11)、及び、H(Si)、H(Si)、H(Si12)、H12(Si18)等のポリケイ酸の、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属の塩が挙げられる。
アルカリ金属がナトリウムであるアルカリ金属ケイ酸塩は、最も代表的なケイ酸塩であり、このようなケイ酸ナトリウムは、ケイ砂、白土あるいはシリカとナトリウムとの水酸化物あるいは炭酸塩から得ることのできる化合物である。ケイ酸ナトリウムは、水に分散したいわゆる水ガラス、あるいは結晶性ケイ酸ソーダとして工業化されている。水に溶解したケイ酸ナトリウムとしては、ケイ酸イオンモノマーのみならずポリケイ酸イオンが含まれていることが知られている。
また、(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの原料となる(b3)ケイ酸塩としては、アルカリ金属塩以外であっても、塩基性のケイ酸塩であればよく、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属のケイ酸塩が挙げられる。更には、ケイ酸ナトリウムカリウムのようなアルカリ金属同士の複塩、ケイ酸ナトリウムカルシウムのようなアルカリ金属とアルカリ土類金属との複塩であってもよい。
本発明においては、これらの中でも、NaOとSiOとのモル比(NaO/SiO)が0.5以上5以下のものであって、例えば、日本工業規格JIS K1408に規定されたケイ酸ナトリウム1号、2号、3号等のケイ酸ナトリウムを好適に使用することができる。
また、本発明においては、アルカリ金属がリチウムあるいはカリウムであるアルカリ金属ケイ酸塩も好適に使用することができる。好適に用いられるケイ酸リチウムは、LiOとSiOとのモル比が2以上25以下のものである。また、好適に用いられるケイ酸カリウムは、KOとSiOとのモル比が2以上4以下のものである。
〔(b4)酸〕
(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの製造において、(b3)ケイ酸塩を原料とする場合には、(b4)酸を使用する。尚、(b2)ケイ酸エステルを使用する場合には、中性の条件下でも反応は穏やかに進行するため、(b4)酸の存在は特には必要ではない。しかしながら、任意成分として(b4)酸を用いた場合には、(b2)ケイ酸エステルの加水分解を促進する効果があり好ましい。
(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの製造において用いられる(b4)酸としては、特に限定されるものではない。例えば、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、その他、スルホン酸基を有する化合物、例えば、エチルスルホン酸等の有機スルホン酸、あるいはギ酸や酢酸、シュウ酸等の有機カルボン酸、又はカルボン酸型やスルホン酸型のイオン交換樹脂やイオン交換膜等を挙げることができる。これらの中では、硫酸、塩酸、リン酸、有機スルホン酸、及び有機カルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を好適に使用することができる。
〔(b5)アルカリ〕
(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの製造において、(b2)ケイ酸エステルを原料とする場合には、アルカリ性の条件下で製造を行なってもよい。アルカリ条件下とする場合には、(b2)ケイ酸エステルの加水分解を促進する効果がある。ここで使用される(b5)アルカリとしては、特に限定されるものではないが、中でも、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のアミン化合物を好適に使用することができる。
〔(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの製造条件〕
(製造温度)
本発明に用いられる(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの製造は、通常、室温で充分に行うことができる。しかしながら、所望により、加熱して高温で行うことも可能である。加熱する場合には、好ましくは100℃以下、更に好ましくは80℃以下、特に好ましくは50℃以下とすることが望ましい。
(混合時間)
(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを得るための混合時間は、上記の混合温度によって変わりうるものであり、任意に選択することができる。好ましくは、10分以上120時間以下、更に好ましくは20分以上48時間以下、特に好ましくは30分以上30時間以下、最も好ましくは40分以上20時間以下程度である。
(混合装置)
(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを得るための混合装置としては、特に限定されるものではないが、スラリー状態で行われる反応等を扱うのに適した撹拌槽型の混合容器を使用することが好ましい。すなわち、少なくとも撹拌装置と、混合原料の混合容器内(混合系)への供給手段、例えば滴下手段等を備えており、所望により、加熱手段、温度制御手段、還流手段等を備えた槽型の反応容器を好ましく使用することができる。尚、混合容器の下部には、分級脚を設け、粒子状又は粉末状の析出物を沈降分離して混合系から取り出すことも可能である。
(混合方式)
混合は、回分式で実施することも、また、連続式で実施することもできる。撹拌槽型の混合容器を使用して連続式操作を行う場合には、撹拌槽の滞留時間分布関数を押し出し流れである管型混合器に近づける目的で、二槽以上の撹拌槽を直列に結合して、混合を実施することが好ましい。
(原料の供給順序)
(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの原料として、(b1)水分散ポリウレタン、(b2)ケイ酸エステル、及び、必要に応じて(b4)酸を用いる場合には、(b1)水分散ポリウレタン、(b2)ケイ酸エステル、及び、必要に応じて用いる(b4)酸の混合系への供給順序(添加順序)は、親水性基あるいは界面活性剤がノニオンタイプの場合には、特に制限されるものではない。しかしながら、親水性基あるいは界面活性剤がアニオンタイプの場合には、先ず、(b1)水分散ポリウレタンに(b2)ケイ酸エステルを添加して均一に混合した後に、引き続き、(b4)酸を添加する供給順序が好ましい。また、親水性基あるいは界面活性剤がカチオンタイプの場合には、先ず、(b1)水分散ポリウレタンに(b4)酸を添加して均一に混合した後に、引き続き、(b2)ケイ酸エステルを添加する供給順序が好ましい。
また、アルカリ条件下で(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを製造する場合には、原料となる(b1)水分散ポリウレタン、(b2)ケイ酸エステル、及び(b5)アルカリの混合系への供給順序(添加順序)についても、親水性基あるいは界面活性剤がノニオンタイプの場合には、特に制限されるものではない。しかしながら、親水性基あるいは界面活性剤がアニオンタイプの場合には、先ず、(b1)水分散ポリウレタンに(b5)アルカリを添加して均一に混合した後に、引き続き、(b2)ケイ酸エステルを添加する供給順序が好ましい。また、親水性基あるいは界面活性剤がカチオンタイプの場合には、先ず、(b1)水分散ポリウレタンに(b2)ケイ酸エステルを添加して均一に混合した後に、(b5)アルカリを添加する供給順序が好ましい。
(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの原料として、(b1)水分散ポリウレタン、(b3)ケイ酸塩、及び(b4)酸を用いる場合にも、(b1)水分散ポリウレタン、(b3)ケイ酸塩、及び(b4)酸の混合系への供給順序(添加順序)は、親水性基あるいは界面活性剤がノニオンタイプの場合には、特に制限されるものではない。しかしながら、親水性基あるいは界面活性剤がアニオンタイプの場合には、先ず、(b1)水分散ポリウレタンに(b3)ケイ酸塩を添加して均一に混合した後に、引き続き、(b4)酸を添加する供給順序が好ましい。また、親水性基あるいは界面活性剤がカチオンタイプの場合には、先ず、(b1)水分散ポリウレタンに(b4)酸を添加して均一に混合した後に、引き続き、(b3)ケイ酸塩を添加する供給順序が好ましい。
また、連続撹拌槽型混合器を用いて(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを製造する場合には、例えば、主撹拌槽の前に予備の混合槽を設けて、この予備混合槽において、先ず、アニオンタイプの(b1)水分散ポリウレタンと(b2)ケイ酸エステルを供給して均一に混合した後に、引き続き、混合液を主混合槽に供給し、混合液に(b4)酸を供給しながらコンポジットの製造を行なうことが好ましい。
(分散溶媒)
(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを得るための混合は、純粋な水分散系で行うことが好ましいが、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、極性溶媒を僅かに共存させて実施することもできる。
共存させることのできる極性溶媒としては、特に限定されるものではないが、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ヘキサメチルホスホアミド(HMPA)、N−メチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、ジメチルイミダゾリドン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラメチル尿素(TMU)、スルホラン、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等を好適に用いることができる。
これらの極性溶媒は、(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを製造する過程において、濾過洗浄が行なわれることから、生成した(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジット中には、極性溶媒は実質的に含まれない。ここで、「実質的に含まれない」とは、(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットにおける極性溶媒の含有量が、0.05質量%以下であることを意味する。
(析出物の形態)
時間の経過とともに、生成物であるポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットが析出する。当該析出物から得られる(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットは、使用する原料、また、必要に応じて用いる(b4)酸又は(b5)アルカリの種類あるいは濃度、混合系のpH、温度、添加順序等の条件に応じて、全体がゲル状となるもの、粉末状のもの、細かい泡を内包したシート状のもの、あるいは塊状のもの等、様々な形態とすることができる。
粉末状のコンポジットや、泡を内包したシート状のコンポジットは、当該析出物を適当な固液分離手段、例えば、濾過分離、遠心分離、遠心沈降分離等により分離した後に、分離した析出物をウェットケーキ状で、ただちに乾燥処理することにより得ることができる。また、全体がゲル状となるコンポジットは、反応系全体をそのまま乾燥処理することにより得ることができる。
(乾燥時間)
(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを得るための乾燥条件は、特に限定されるものではない。本発明に用いられる(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットにおいては、例えば、40℃以上80℃以下程度の温度で、好ましくは10時間以上100時間以下、更に好ましくは15時間以上50時間以下、特に好ましくは20時間以上30時間以下、真空乾燥する方法、あるいは、乾燥した不活性ガス気流下で乾燥する方法を好適に採用することができる。また、全体がゲル状となるコンポジットについては、エタノールや二酸化炭素等を超臨界状態で用いて乾燥する方法を採用することもできる。
乾燥後の(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの水分は、例えば、カールフィッシャー法により測定した値の場合には、1,000ppm以下が好ましく、更に好ましくは500ppm以下である。
(供給材料の添加量)
尚、(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの生成のために供給される(b1)水分散ポリウレタンと(b2)ケイ酸エステルあるいは(b3)ケイ酸塩との添加量の比は、目的とするコンポジットにおけるポリケイ酸の量に依存し、且つ、当該コンポジットの機械的特性等を考慮して適宜選択することができる。
また、(b3)ケイ酸塩にてコンポジットを製造する場合の(b4)酸の添加量は、当該(b3)ケイ酸塩中に含まれるアルカリ金属当量以上の量が必要である。
一方、(b2)ケイ酸エステルにてコンポジットを製造する場合に、必要に応じて(b4)酸を用いる場合には、添加する(b2)ケイ酸エステルに含まれるシリコン当量の1/1,000当量以上の(b4)酸を用いることが好ましい。
また、(b2)ケイ酸エステルをアルカリ下で混合する場合には、好ましい(b5)アルカリの添加量は、添加する(b2)ケイ酸エステルに含まれるシリコン当量の1/1,000当量以上である。
〔(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの物性〕
(ポリケイ酸の粒子)
本発明に用いられる上記の方法にて得られる(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットから、真空プレス成形にてシートを得た後、当該シートを透過型電子顕微鏡(100,000倍)で観察したところ、コンポジットにおけるポリケイ酸は明確な粒子の像としては観察されなかった。すなわち、本発明に用いられる(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットは、ポリウレタンとポリケイ酸の境界部分が概して不明瞭となっている。一方で、従来公知のゾルゲル法等で得られるシリカのコンポジットにおいては、シリカは粒子として存在するため、シリカ粒子部分とポリウレタン部分とは、明確に区別することができる。したがって、本発明に用いられる(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットは、ポリウレタンとポリケイ酸とが高い水準で相混合されたものといえる。
[熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU)の製造方法]
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、上記した方法により調製した(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを、予め、(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂の原料である(a2)ポリオールに添加し、撹拌混合の後に、(a1)ポリイソシアネートと反応させる方法、あるいは、(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂と(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットとを、押出機、ニーダー等の混練装置に装入し、例えば、150℃以上250℃以下の温度範囲で溶融混練する方法等を適用することができる。(a2)ポリオールに(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを添加することにより、(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂に(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジット分散させる場合には、(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを分散させた後の(a2)ポリオール中の水分は、500ppm以下とすることが好ましく、200ppm以下とすることが更に好ましい。このときの脱水方法としては、常用の方法を用いればよく、例えば、100℃以上120℃以下に加熱し、減圧脱水する方法等を挙げることができる。
また、得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物をろ過することにより、フィッシュアイを低減することができる。熱可塑性ポリウレタン樹脂のろ過方法としては、例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物のペレットを十分に乾燥させた後、先端部に金属製メッシュ、金属製不織布又はポリマーフィルター等のろ材を具備した押出機に通して、フィッシュアイをろ過することができる。このとき用いる押出機は、単軸又は多軸押出機が好ましい。金属製メッシュのメッシュサイズは、通常100メッシュ以上、好ましくは500メッシュ以上、より好ましくは1,000メッシュ以上である。更に、金属製メッシュとしては、同一のメッシュサイズ又は異なるメッシュサイズのものを、複数枚重ねて使用することが好ましい。また、ポリマーフィルターとしては、例えば、フジ・デュープレックス・ポリマーフィルターシステム(富士フィルター工業社製)、アスカポリマーフィルターシステム(アスカ工業社製)、デナフィルター(長瀬産業社製)を挙げることができる。
〔その他配合剤〕
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物には、その製造時あるいは製造後に、必要に応じて、他の樹脂、エラストマー等、あるいは、公知の離型剤、酸化チタン等の着色剤、有機化合物系及び無機化合物系の滑剤、耐光安定剤、酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、充填剤、帯電防止剤等の添加剤を配合してもよい。特に、酸化防止剤、耐光安定剤は、その後の組成物の用途に応じて、適宜、添加することが好ましい。
(酸化防止剤)
本発明に任意に用いられる酸化防止剤としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の商品名:イルガノックス1010、同1076、同1135、同245、同3114、同3790等、旭電化工業社の商品名:アデカスタブAO−60、同AO−70、同AO−80等を挙げることができる。
酸化防止剤を添加する場合には、本発明の組成物に含まれる(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上1質量部以下の範囲で添加することが好ましい。
(リン系加工安定剤)
本発明に任意に用いられるリン系加工熱安定剤としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の商品名:イルガフォス38、同126、同P−EPQ等、旭電化工業社製の商品名:アデカスタブPEP−4C、同11C、同24、同36等を挙げることができる。
リン系加工熱安定剤を添加する場合には、本発明の組成物に含まれる(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上1質量部以下の範囲で添加することが好ましい。
(耐光安定剤)
本発明に任意に用いられる耐光安定剤としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の商品名:チヌビンP、同234、同326、同327、同328、同329、同213、同571、同1577、同622LD、同144、同765、同770、同B75、同B88等、三共社製の商品名:サノールLS−770、同765、同2626、同944等、また、旭電化工業社の商品名:LA−32、同36、同1413、同52、同62、同77、同601、同T−940等の紫外線吸収剤又はヒンダードアミン系光安定剤を挙げることができる。
本発明において耐光安定剤を添加する場合には、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤との併用が好ましく、それぞれ、本発明の組成物に含まれる(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上3質量部以下の範囲で添加することが好ましい。
(滑剤)
本発明においては、有機化合物系又は無機化合物系の滑剤を任意に添加することもできる。滑剤が熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物に添加されると、組成物からなるペレット同士のブロッキングを改善することができる。
有機化合物系の滑剤としては、例えば、脂肪酸アマイドを挙げることができ、市販品としては、日本化成社製の商品名:ニッカアマイド、商品名:ビスアマイド、商品名:スリパックス等、あるいは、クラアリアント社製の商品名:リコワックス、商品名:リコルブ等を挙げることができる。また、無機化合物系の滑剤としては、例えば、タルクやシリカ等を挙げることができる。
本発明において有機化合物系の滑剤を添加する場合には、本発明の組成物に含まれる(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上2質量部以下の範囲で添加することが好ましい。
[熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU)の物性]
〔有機溶媒の含有量〕
本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物(TPU)は、実質的に有機溶媒を含有しない。熱可塑性ポリウレタンエラストマーの原料となる(A)熱可塑性ポリウレタンエラストマー及び(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの両者ともに有機溶媒を実質的に含まないことから、得られる熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物における有機溶剤の含有量は、0.03質量%以下となる。
〔相構造〕
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物が(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを含有する場合には、組成物から得られる成形品において、(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂を多く含有すると考えられる連続相(海相)、及び、連続相中に分散した、(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットに由来するポリケイ酸の含有率の高い分散相(島相)、更に、分散相(島相)内に存在する小粒子(湖相)を有する、いわゆるサラミ状構造を有する。
ここで、分散相(島相)及び湖相の形状は、必ずしも球形である必要はなく、楕円形状や多角形状、その他の形状であってもよい。
分散相(島相)の長径は、好ましくは350μm以下であり、更に好ましくは300μm以下、特に好ましくは250μm以下である。また、小粒子(湖相)の長径は、好ましくは1.5μm以下であり、更に好ましくは1.2μm以下、特に好ましくは1.0μm以下である。分散相(島相)と小粒子(湖相)の長径の下限には特に制限はないが、(A)熱可塑性ポリウレタンエラストマーと(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットとを押出機、ニーダー等の混練装置に装入し、例えば、150〜250℃で溶融混練する方法によれば、分散相(島相)の長径の下限は10nm程度、小粒子(湖相)の長径は1nm程度となる。分散相(島相)及び小粒子(湖相)の長径を上記範囲とすれば、分散相(島相)の分散性が増し、エラストマー組成物の弾性率をより向上させることができる。
[熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU)の用途]
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、透湿性及び耐熱性に優れ、且つ、無溶剤にて熱成形が可能となることから、これらの特性を要求する分野における成形品用の材料として好適に用いることができる。このような成形品としては、例えば、紙おむつ等の衛生材料、キズバンド、手術用衣料、手袋等のメディカル、スポーツ用衣料、テント等の材料、食品等の包装材料等を挙げることができる。
また、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を、厚みが2mm程度のシートに成形すれば、透湿性が要求される各種部材に好適に使用することができる。特に、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、有機溶剤を含有しないため、上記の各分野の中でも、環境問題や衛生問題への対応が強く要求されている分野において好適に用いることができる。
[熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU)の成形方法]
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物の成形方法は、特に限定されるものではなく、例えば、押出機等を用いて所望の形状へ熱成形することができる。熱成形の際の成形温度としては、170℃以上250℃以下が好ましく、更に好ましくは175℃以上240℃以下である。
更に、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、その製造後、例えば、70℃以上120℃以下、好ましくは、80℃以上110℃以下の温度範囲にて、1時間以上24時間以下程度アニールすることが好ましい。アニールすることにより、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物におけるハードセグメントの凝集性が上昇し、耐熱性及び機械物性に優れた成形品を得ることができる。
<透湿性フィルム>
本発明の透湿性フィルムは、無溶媒にて熱成形されるものである。また、フィルムの厚み20μmでのJIS L−1099記載のB1法による透湿度が80,000(g/m・24h)以上であり、厚み20μmでの熱機械分析(TMA)により測定した軟化温度は160℃以上である。
ここで、本発明の透湿性フィルムにおける透湿度とは、JIS L−1099に基づき、「酢酸カリウム法(B−1法)」で測定した値である。一般に、フィルムの厚みが薄くなるに従い、透湿度は上昇することが知られており、本発明の透湿性フィルムも同様の挙動を示す。
[透湿度]
本発明の透湿性フィルムは、その厚み20μmにおける透湿度が、通常80,000(g/m・24h)以上であり、好ましくは、100,000(g/m・24h)以上である。フィルムの厚み20μmにおける透湿度が80,000(g/m・24h)以上であると、そのフィルムを使用した布帛の透湿度も高くなり、十分な快適性を得ることができる。尚、本発明の透湿性フィルムでの透湿度の上限としては、250,000(g/m・24h)程度である。
[軟化温度]
本発明の透湿性フィルムは、その厚み20μmにおける熱機械分析(TMA)により測定した軟化温度が、通常160℃以上であり、好ましくは165℃以上である。本発明における熱機械分析(TMA)の測定条件は、JIS K−7196「熱可塑性プラスチックフィルム及びシートの熱機械分析による軟化温度試験方法」に従うものである。軟化温度が160℃以上であると、例えば、衣料用材料のフィルムとして使用された場合、フィルムを布帛に加熱圧着する温度において、あるいは乾燥、クリーニング時において、フィルムにしわや穴が開きにくく、意匠性を保つことができる。尚、本発明の透湿性フィルムにおける軟化温度の上限としては、220℃程度である。
[膨潤度]
また、本発明の透湿性フィルムの水に対する膨潤度は、20%以下程度が好ましい。ここで、水に対する膨潤度は、水浸漬前後のフィルム長さの変化率を測定する方法によって求められる。水に対する膨潤度が20%程度より大きくなると、洗濯時や雨水に長く晒された場合、フィルムの寸法が変化し、フィルムと布帛との接着面がずれることがある。
[100%モジュラス]
本発明の透湿性フィルムの厚み20μmでの引張物性における100%モジュラスは、JIS K−6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に記載の方法に準拠した引張試験により測定を行う。本発明の透湿性フィルムの100%モジュラスとしては、1MPa以上15MPa以下程度が好ましく、更に好ましくは2MPa以上10MPa以下程度である。100%モジュラスが1MPa以上15MPa以下程度であると、フィルムに柔軟性があり、その触感が良好となる。
[引張強度]
また、本発明の透湿性フィルムの厚み20μmでの引張強度は、JIS K−6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に記載の方法に準拠した引張試験により測定を行う。本発明の透湿性フィルムの引張強度としては、10MPa以上100MPa以下程度が好ましく、更に好ましくは20MPa以上100MPa以下程度である。
[破断伸び]
更に、本発明の透湿性フィルムの厚み20μmでの破断伸びは、JIS K−6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に記載の方法に準拠した引張試験により測定を行う。本発明の透湿性フィルムの破断伸びとしては、200%以上1,000%以下程度が好ましく、更に好ましくは300%以上900%以下程度である。本発明の透湿性フィルムを、例えば、衣料用材料のフィルムとして用いる場合には、人体の動きに無理なく追従する必要があることから、フィルムが柔軟であり、破断に至るまでの伸びが200%以上1,000%以下程度とすることが好ましい。
[透湿性フィルムの製造方法]
本発明の透湿性フィルムの製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の製膜方法を適用することができる。例えば、単軸もしくは二軸押出機により、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を溶融混練後、Tダイ、コートハンガーダイに代表されるフラットダイによる方法、あるいは、サーキュラーダイからのインフレーション法等が適用できる。
特に、本発明の透湿性フィルムをキャスティング工程によって得る場合には、得られる透湿性フィルムの両面もしくは片面を、離型紙、あるいはポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリエチレンテレフタレート系フィルム等で挟み込みながら、巻き取る方法を採用することが好ましい。また、多層押出ダイを用いて、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物と他の樹脂とを同時に押出成形し、本発明の透湿性フィルムを含む積層体として製造することもできる。
フィルムに成形する際の成形温度としては、上記と同様、170℃以上250℃以下が好ましく、更に好ましくは175℃以上240℃以下である。
また、本発明の目的とする透湿性、及び軟化温度の向上をより容易とするために、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物、例えば、そのペレットを成形前に十分に乾燥した後に成形機に供する方法が好ましい。
尚、透湿性フィルムを得る際の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物の水分としては、500ppm以下が好ましく、更に好ましくは200ppm以下である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、特に説明のない限り、「部」数は「質量部」を意味するものとする。
<測定評価>
実施例及び比較例においては、以下のそれぞれの測定項目につき、以下の方法により測定を実施した。
[透湿性フィルムの厚み(単位:μm)]
ヨシトミ社製、商品名:ID−Cデジマチックインジケータを用いて、フィルムの幅方向及びその垂直方向にわたって5個所の厚みを測定し、その算術平均値を求めた。得られた算術平均値を透湿性フィルムの厚みとした。
[透湿性フィルムの透湿度(単位:(g/m・24h))]
JIS L−1099 B−1法(酢酸カリウム法)記載の方法に準拠し、フィルムと水が接する面に、ナイロンタフタを重ねた後に測定を行った。その後、24時間の値に換算した。
[透湿性フィルムの軟化温度(単位:℃)]
Seiko Instruments社製、商品名:TMA/SS6000を用いて、JIS K−7196熱可塑性プラスチックフィルム及びシートの熱機械分析による軟化温度試験方法に従って測定を実施した。尚、圧子の直径は1.0mmのものを使用した。
[透湿性フィルムの100%モジュラス:M100(単位:MPa)]
[透湿性フィルムの引張強度:TS(単位:MPa)]
[透湿性フィルムの破断伸び:EL(単位:%)]
JIS K−6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に記載の方法に準拠して測定を行なった。具体的には、試験片をダンベル状3号形にて打ち抜き、TOYOBALDWIN CO.,LTD.製、商品名:TENSILON/UTM−III−100にて、標線間20mm、引張速度200mm/分の条件で測定を行った。
[透湿性フィルムの水膨潤度(単位:%)]
縦10cm、横3cmの長方形フィルムを、25℃に調整した100mLの純水に30分間浸漬した後、水を拭き、フィルムの縦の長さを測定し、水浸漬前後のフィルム長さの変化率から水膨潤度を求めた。
[ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価(単位:mgKOH/g)]
JIS K−1557記載の方法に準拠して測定を実施した。
[ポリエステルポリオールのアセチル価(単位:mgKOH/g)及び酸価(単位:mgKOH/g)]
JIS K−6901液状不飽和ポリエステル樹脂試験方法に記載の方法に準拠して測定を実施した。
[ポリオキシアルキレンポリオール及びポリエステルポリオールのオキシエチレン基の含有量(単位:質量%)]
重水素化ジメチルスルホキシドを溶媒とし、日本電子社製、商品名:JNM−AL400)を用いて、1H−核磁気共鳴スペクトルスコピー(NMR)測定にて、ポリオール中のオキシエチレン基含有量を測定した。3.5ppm付近のピークをオキシエチレン基由来のピークとして算出した。
[タック性]
成形直後にフィルム同士を貼り合わせ、これを剥がす時の状態を以下の基準にて評価し、タック性として判定した。
5:簡単に剥がすことができる
4:剥がすことができる
3:粘着するが剥がすことができる
2:剥がすことができるが、粘着が大きい
1:粘着し、剥がすことが出来ない
<調製例1>ポリオール(ポリオールA)の調製
耐圧製の反応機に、201.0部のジプロピレングリコール、及び3.1部の水酸化カリウムを仕込み、十分に窒素置換を行った後に、105℃に昇温し、同温度にて1kPa以下の条件で6時間の減圧脱水を行った。次いで、窒素置換を行い、ゲージ圧0.1MPaの条件から、166.3部のプロピレンオキサイドを逐次装入して、プロピレンオキサイドの付加重合を行った。引き続き、反応機の内圧が低下し始めた後、337.3部のエチレンオキサイドを逐次装入し、一部、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとのランダム共重合反応を行い、その後、800.0部のエチレンオキサイドを逐次装入して、エチレンオキサイドの付加重合反応を行った。反応機の内圧が一定になるまで同温度にて反応を継続した後、内温105℃、1kPa以下の条件で減圧処理を行い、粗製ポリオールを得た。
次いで、得られた粗製ポリオール850部に対して、脱イオン水25.5部を加え、80℃に昇温した後、粗製ポリオール中の水酸化カリウム1モルに対して、1.03モルに相当する75(w/w)%のリン酸水溶液を添加し、同温度にて2時間撹拌した。次いで、粗製ポリオール100部に対して、酸化防止剤(旭電化工業社製、商品名:アデカスタブAO−80)を0.05部添加し、減圧しながら脱水を行った。内圧が250kPaになった時に、粗製ポリオール100部に対して、吸着剤(協和化学工業社製、商品名:KW−700SEN)を0.3部添加し、減圧脱水を継続した。最終的に、窒素を液相にバブリングしながら、110℃、1kPa以下の条件で、ポリオールの水分が200ppm以下になるまで減圧脱水を行った。その後、加圧ろ過を行い、ポリオールを回収した。得られたポリオール(以下、ポリオールAと記載する場合がある)の水酸基価は112.1mgKOH/g、オキシエチレン基の含有量は75質量%であった。
<調製例2> ポリオキシアルキレンポリオール(ポリオールB)の調製
耐圧製の反応機に、393.0部のビス(1,4−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン(三井化学ファイン社製、以下、BHEBと略す)、及び24.0部の50(w/w)%の水酸化カリウム水溶液を仕込み、十分に窒素置換を行った後に、115℃に昇温し、同温度にて1kPa以下の条件で7時間の減圧脱水を行った。次いで、窒素を用いてゲージ圧0.1MPaまで加圧し、その後、内温110〜115℃の範囲にてゲージ圧が0.4MPa以下となる条件にて、750.9部のプロピレンオキサイドと2853.1部のエチレンオキサイドとを混合したアルキレンオキサイドを逐次装入し、ランダム共重合反応を行った。反応機の内圧が一定になるまで同温度にて反応を継続した後、内温105℃、1kPa以下の条件で減圧処理を行い、触媒を含有した粗製ポリオキシアルキレンポリオール(以下、粗製ポリオールともいう)を得た。
次いで、得られた粗製ポリオール850部に対して、脱イオン水25.5部を加え、80℃に昇温した後、粗製ポリオール中の水酸化カリウム1モルに対して、1.03モルに相当する75(w/w)%のリン酸水溶液を添加し、同温度にて2時間撹拌した。次いで、粗製ポリオール100部に対して、酸化防止剤(旭電化工業社製、商品名:アデカスタブAO−80)を0.05部添加し、減圧しながら脱水を行った。内圧が250kPaになった時に、粗製ポリオール100部に対して、吸着剤(協和化学工業社製、商品名:KW−700SEN)を0.3部添加した後、減圧脱水を継続した。最終的に、窒素を液相にバブリングしながら、110℃、1kPa以下の条件で、ポリオールの水分が200ppm以下になるまで減圧脱水を行った。その後、加圧ろ過を行い、ポリオキシアルキレンポリオールを回収した。得られたポリオキシアルキレンポリオール(以下、ポリオールBと略す)の水酸基価は56.4mgKOH/g、オキシエチレン基の含有量は71質量%であった。
<調製例3> ポリエステルポリオール(ポリオールC)の調製
蒸留塔、温度計、撹拌機、及び窒素導入口が装着されている反応機に、210.64部の無水トリメリット酸無水物(以下、TMAと略す)、及び103.32部のトルエンを装入し、撹拌した。攪拌の後、2056.33部のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(東邦化学社製、商品名:MPEG2000HQ、水酸基価29.9mgKOH/g)を更に装入した。引き続き、反応機内を窒素で置換した後、内温を180℃に昇温し、トルエンを還流させながら、同温度にて5時間反応させた。その後、同温度にて、液相に窒素をバブリングしながらトルエンを除去し、2時間反応を継続した。最後に、内温を140℃に調整し、1kPaの減圧下、3時間減圧することによりトルエンを除去し、TMAとMPEG2000HQとの反応物であるカルボン酸を得た。酸価は53.7mgKOH/gであった。
514.8部の1,6−ヘキサンジオールと154.4部のネオペンチルグリコールとを仕込んだ後、上記で得られたTMAとMPEG2000HQとの反応物であるカルボン酸を1799.2部仕込み、窒素置換を行った。その後、内温を220℃まで昇温し、同温度にて窒素を液相にバブリングさせながら、7時間反応させた。引き続き、503.1部のアジピン酸を仕込み、同温度にて、留出する水を除去しながら20時間反応させた。更に、同温度にてオクチル酸錫(エーピーアイ コーポレーション社製、商品名:スタノクト)を0.051部添加し、8時間反応を継続し、ポリエステルポリオールを得た。得られたポリエステルポリオール(以下、ポリオールCと略す)の、無水酢酸を用いる方法で測定したアセチル価は56.0mgKOH/g、酸価は0.4mgKOH/gであり、57質量%のオキシエチレン基の含有量は57質量%であった。
<調製例4> ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットの調製
3481.2部のポリオールC、1182.1部のPTG2000(保土ヶ谷化学社製、ポリテトラメチレンエーテルグリコール)、及び450.7部のネオペンチルグリコール1940部を仕込んだ後、554部のN−メチルピロリドンを装入し、撹拌した。その後、1940重量部の水素化キシリレンジイソシアネート(三井武田ケミカル社製、商品名:タケネート600)を仕込み、反応機内を窒素で置換した後、75℃に昇温し、同温度にて5時間の反応を行うことにより、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。得られたイソシアネート基末端プレポリマーのジ−n−ブチルアミン法により測定したNCO%は、4.2であった。
その後、5900部の脱イオン水を仕込み、20℃に調整した後、液温が30℃以下になるように、上記したプレポリマー4006部を滴下した。激しく撹拌しながら、ヒドラジンの10(w/w)%の水溶液95部を素早く滴下し、25〜30℃にて3時間反応させ、ポリウレタン樹脂の水分散体(水分散ポリウレタン)を得た。
得られた水分散ポリウレタン1500部に1/100mol/Lの塩酸水溶液を26.88部、1500部の脱イオン水を添加し、均一に撹拌した後、315.9部のテトラメチルシリケートの4量体(多摩化学工業社製、商品名:Mシリケート)を添加し、25℃にて2時間撹拌した。次いで、1500部の脱イオン水を添加し、同温度にて14時間撹拌した。
攪拌終了後、ポアサイズが4μmのろ紙を用いて、減圧ろ過を行い、固形分を回収した。回収した固形分を脱イオン水にて洗浄し、その後、窒素雰囲気下、40℃で3日間乾燥を行うことにより、ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジット(以下、コンポジットAと略す)を調製した。
<実施例1>
[熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造]
窒素雰囲気下、撹拌機が装着された反応機に、1410部のポリエチレングリコール(東邦化学工業社製、商品名:PEG2000、水酸基価55.7mgKOH/g)、596.8部の上記調製例2で得られたポリオールB、及び9.4部のアデカスタブAO−80を添加し、80℃で1時間溶解した。次いで、775部の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(三井武田ケミカル社製、商品名:コスモネートPH)を添加し、80℃で4時間反応させ、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(以下、プレポリマーと略す)を合成した。
得られたプレポリマーを80℃に調整し、予め110℃で溶解した325.3部のBHEB、及び25.7部の予め脱水したエチレングリコール(三井化学社製)を添加し、気泡が混入しないよう十分に撹拌した。次いで、予め170℃に調整したテフロン(登録商標)でコートした容器に、得られた混合液を素早く注入し、同温度にて1時間反応させた。反応後、120℃に調整した別のオーブンに該容器を移し替え、同温度にて23時間反応させて、熱可塑性ポリウレタン樹脂を得た後、得られた樹脂を粉砕した。粉砕した熱可塑性ポリウレタン樹脂のオキシエチレン基の含有量は59質量%、ハードセグメント濃度は36質量%、ポリオキシアルキレンポリオールの含有量は19質量%であった。
[熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU−1)の製造]
得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂の粉砕物、及び粉砕物に対して4質量%の上記調整例4で得られたコンポジットAを添加し、タンブラーを用いてブレンドを行い、ブレンド樹脂を得た。引き続き、該ブレンド樹脂を除湿乾燥器に入れて、90℃、20時間乾燥し、単軸押出機を用いて、ペレット状に成形した。尚、押出機の設定温度は、ホッパーからダイの先端にかけて、180〜215℃の範囲とした。得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂のオキシエチレン基の含有量、ハードセグメント濃度、及びコンポジットAの添加量等を表1に示す。
[透湿性フィルムの製造]
除湿乾燥器にて、上記で得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物のペレットを、再度、上記した条件で乾燥した後、口径50mmの単軸押出機を用いて、ペレット状に成形した。押出機の設定温度は、ホッパーからダイの先端にかけて、180〜215℃の範囲とした。
再度ペレット化された熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を用いて、除湿乾燥機と連結した幅800mmのTダイを装着した口径50mmの単軸押出機、及びテフロン(登録商標)加工した巻取り機により、離型紙を連続的に供給しながら、離型紙上にフィルムを成形し、巻き取りを行った。押出機の設定温度は、ホッパーからダイの先端にかけて、200〜220℃の範囲とした。
得られた透湿性フィルムの厚み、透湿度、軟化温度、水膨潤度、及び100%モジュラス、引張強度、破断伸び、並びにタック性を表2に示す。
Figure 0005260834
Figure 0005260834
<実施例2>
[熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造]
100.1部のポリオールA、1790.4部のポリオールB、及び8.9部のアデカスタブAO−80を添加し、725部のコスモネートPH、362.2部のBHEBを用いた以外は、実施例1に記載の方法に従い、熱可塑性ポリウレタン樹脂を調製した。
[熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU−2)の製造]
得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂を用いて、実施例1に記載の方法に従って、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU−2)を調製した。得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂のオキシエチレン基の含有量、ハードセグメント濃度、ポリオキシアルキレンポリオールの含有量、及びコンポジットAの添加量等を表1に示す。
[透湿性フィルムの製造]
得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU−2)を用いて、実施例1に記載の方法に従い、透湿性フィルムを成形した。得られた透湿性フィルムの厚み、透湿度、軟化温度、水膨潤度、及び100%モジュラス、引張強度、破断伸び、並びにタック性を表2に示す。
<実施例3>
[熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造]
2040部のポリエチレングリコール(東邦化学工業社製、商品名:PEG4000、水酸基価33mgKOH/g)、198.9部のポリオールC、596.8部のポリオールB、及び14.0部のアデカスタブAO−80を添加し、1150部のコスモネートPH、689.7部のBHEBを用いた以外は、実施例1に記載の方法に従い、熱可塑性ポリウレタン樹脂を調製した。
[熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU−3)の製造]
得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂に対して3質量%のコンポジットAを用いた以外は、実施例1に記載の方法に従って、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU−3)を調製した。得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂のオキシエチレン基の含有量、ハードセグメント濃度、ポリオキシアルキレンポリオールの含有量、及びコンポジットAの添加量等を表1に示す。
[透湿性フィルムの製造]
得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU−3)を用いて、実施例1に記載の方法に従い、透湿性フィルムを成形した。得られた透湿性フィルムの厚み、透湿度、軟化温度、水膨潤度、及び100%モジュラス、引張強度、破断伸び、並びにタック性を表2に示す。
<実施例4>
2040.0部のポリエチレングリコール(東邦化学工業社製、商品名:PEG4000、水酸基価33mgKOH/g)、198.9部のポリオールC、596.8部のポリオールB、及び14.0部のアデカスタブAO−80を添加し、1150部のコスモネートPH、689.7部のBHEBを用いた以外は、実施例1に記載の方法に従い、熱可塑性ポリウレタン樹脂を調製した。
[熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU−4)の製造]
得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂に対して0.5質量%のコンポジットAを用いた以外は、実施例1に記載の方法に従って、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU−4)を調製した。得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂のオキシエチレン基の含有量、ハードセグメント濃度、ポリオキシアルキレンポリオールの含有量、及びコンポジットAの添加量等を表1に示す。
[透湿性フィルムの製造]
得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU−4)を用いて、実施例1に記載の方法に従い、透湿性フィルムを成形した。得られた透湿性フィルムの厚み、透湿度、軟化温度、水膨潤度、及び100%モジュラス、引張強度、破断伸び、並びにタック性を表2に示す。
<比較例1>
975.7部のポリエチレングリコール(東邦化学工業社製、商品名:PEG1000、水酸基価115mgKOH/g)、及び8.3部のアデカスタブAO−80を添加し、1125部のコスモネートPH、679部のBHEBを用いた以外は、実施例1記載の方法に従い、熱可塑性ポリウレタン樹脂を調製した。
[熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU−5)の製造]
得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂に対して12質量%のコンポジットAを用いた以外は、実施例1に記載の方法に従って、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU−5)を調製した。得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂のオキシエチレン基の含有量、ハードセグメント濃度、ポリオキシアルキレンポリオールの含有量、及びコンポジットAの添加量等を表1に示す。
[透湿性フィルムの製造]
得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU−5)を用いて、実施例1に記載の方法に従い、透湿性フィルムを成形した。得られた透湿性フィルムの厚み、透湿度、軟化温度、水膨潤度、及び100%モジュラス、引張強度、破断伸び、並びにタック性を表2に示す。
<比較例2>
1405部のポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学工業社製、商品名:PCL220、水酸基価55.9mgKOH/g)、596.8部のポリオールB、及び8.6部のアデカスタブAO−80を添加し、600部のコスモネートPH、270.4部のBHEBを用いた以外は、実施例1に記載の方法に従い、熱可塑性ポリウレタン樹脂を調製した。
[熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU−6)の製造]
得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂に対して0.1質量%のコンポジットAを用いた以外は、実施例1に記載の方法に従って、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU−6)を調製した。得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂のオキシエチレン基の含有量、ハードセグメント濃度、ポリオキシアルキレンポリオールの含有量、及びコンポジットAの添加量等を表1に示す。
[透湿性フィルムの製造]
得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU−6)を用いて、実施例1に記載の方法に従い、透湿性フィルムを成形した。得られた透湿性フィルムの厚み、透湿度、軟化温度、水膨潤度、及び100%モジュラス、引張強度、破断伸び、並びにタック性を表2に示す。
<比較例3>
3400部のポリエチレングリコール(東邦化学工業社製、商品名:PEG4000、水酸基価33mgKOH/g)、及び13.2部のアデカスタブAO−80を添加し、800部のコスモネートPH、195.2部の1,4−ブタンジオール(三菱化学社製)を用いた以外は、実施例1に記載の方法に従い、熱可塑性ポリウレタン樹脂を調製した。
[熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU−7)の製造]
得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂を用いて、実施例1に記載の方法に従って、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU−7)を調製した。得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂のオキシエチレン基の含有量、ハードセグメント濃度、ポリオキシアルキレンポリオールの含有量、及びコンポジットAの添加量等を表1に示す。
[透湿性フィルムの製造]
得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(TPU−7)を用いて、実施例1に記載の方法に従い、透湿性フィルムを成形した。得られた透湿性フィルムの厚み、透湿度、軟化温度、水膨潤度、及び100%モジュラス、引張強度、破断伸び、並びにタック性を表2に示す。
<結果のまとめ>
表2の実施例に示されるように、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、高い透湿度と高い軟化温度を持つフィルムを与えるものである。また、オキシエチレン基含有ポリオール及び/又は、ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを含むことにより、高い透湿度を維持したまま、より高い軟化温度を持つ優れたフィルムを与えることが判る。
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、透湿性及び耐熱性に優れ、且つ、無溶剤にて熱成形が可能となることから、例えば、紙おむつ等の衛生材料、キズバンド、手術用衣料、手袋等のメディカル、スポーツ用衣料、テント等の材料、食品等の包装材料等に好適に使用することができる。更に、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を、厚みが2mm程度のシートに成形すれば、透湿性が要求される各種部材に好適に使用することができる。

Claims (4)

  1. (a1)ポリイソシアネート及び(a2)ポリオールを出発原料として含む(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂を含み、更に、(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットを、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物全体に対して、0.3質量%以上10質量%以下含む熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物であって、
    前記(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂におけるオキシエチレン基の含有量は、40質量%以上65質量%以下であり、
    前記組成物を厚み20μmのフィルムとした場合の熱機械分析(TMA)による軟化温度が160℃以上であり
    記(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットは、(b1)親水性基を有するポリウレタンから生成される水分散ポリウレタン、及び/又は、界面活性剤とポリウレタンとから生成される水分散ポリウレタンと、(b2)ケイ酸エステルと、を混合し、ポリウレタンとポリケイ酸とを同一系中で同時に析出させてなるものであるか、又は
    (b1)親水性基を有するポリウレタンから生成される水分散ポリウレタン、及び/又は、界面活性剤とポリウレタンとから生成される水分散ポリウレタン、(b3)ケイ酸塩、及び、(b4)酸、を混合し、ポリウレタンとポリケイ酸とを同一系中で同時に析出させてなるものである熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物。
  2. 前記(a2)ポリオールは、芳香族ポリオール、芳香族ポリカルボン酸、及び、脂環式ポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の活性水素化合物に、アルキレンオキサイドを付加重合して得られるポリオキシアルキレンポリオールを含み、
    当該ポリオキシアルキレンポリオールは、前記(A)熱可塑性ポリウレタン樹脂100質量%に対して、10質量%以上含まれる請求項1記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物。
  3. 前記(B)ポリウレタン・ポリケイ酸コンポジットは、有機溶剤を実質的に含有しないものである請求項1又は2記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物。
  4. 請求項1からいずれか記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物からなり、無溶媒で熱成形されてなる透湿性フィルム。
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