JP2012136604A - 水性ポリウレタン樹脂組成物及びフィルム - Google Patents

水性ポリウレタン樹脂組成物及びフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】 直接浸漬成型法において安定な離型性が確保された、高強度で耐溶剤性に優れたポリウレタンフィルムを得ることができるポリウレタン系水性分散体組成物を提供するものである。
【解決手段】 ポリウレタン樹脂粒子の水性分散体(A)とポリ塩化ビニル樹脂粒子の水性分散体(B)とを混合して得られる水性ポリウレタン樹脂組成物であって、(A)/(B)が、樹脂固形分換算の重量比で、80/20〜99/1の範囲であること、並びにポリウレタン樹脂粒子の水性分散体(A)が、ジフェニルメタンジイソシアネートを50重量%以上含むポリイソシアネート成分(a1)、ポリエステルポリオールを50重量%以上含むポリオール成分(a2)、及び活性水素を有する親水基含有化合物(a3)の反応により得られるものであることを特徴とする水性ポリウレタン樹脂組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、水性ポリウレタン樹脂組成物及びそれを用いたフィルムに関する。
引火性、作業環境、取扱の容易性の観点から、従来は溶剤系のポリウレタン樹脂が用いられていた塗料、接着剤、フィルム等の用途で、水性ポリウレタン樹脂への代替が進んでいる。
これらのうちフィルム用途としては、例えば、手袋、指サック、コンドーム等が挙げられるが、通常これらは塩凝固法で製造される(例えば、特許文献1〜3参照)。
塩凝固法では、それぞれの形状の金型を硝酸カルシウム水溶液等の凝固液に浸漬して凝固液層を形成した後、エマルジョンに浸漬して皮膜を形成させ、水洗後に加熱乾燥するという煩雑な作業が必要である。このため生産効率が悪く、また残留した凝固剤を洗浄又は浸出によって除去する必要があるため、その廃水処理のため生産コストが増加するという問題があった。
そこで、凝固剤を用いずに、金型をポリウレタンエマルジョンに浸漬するだけで水性皮膜を形成し、加熱乾燥により水分を除去することでポリウレタンフィルムを得る方法(直接浸漬法)が提案されている(例えば、特許文献4参照)。この方法は、凝固法に比べて工程が短く、廃水処理を必要としない。また、凝固剤によるエマルジョンの劣化や濃度変化がないので、原料エマルジョンを有効に使い切ることが可能である。
ところで、水性ポリウレタン樹脂は、一般に、
(1)溶剤系ウレタン樹脂をベースに、水中で乳化剤を多量に用いて強制乳化を行なう方法(強制乳化法)や、
(2)末端イソシアネート基を含有するプレポリマーを水中で多量の乳化剤を用いて乳化させた後、活性水素化合物を持つ鎖延長剤で鎖伸長する方法(プレポリマー強制乳化法)、
(3)ポリウレンタン又はプレポリマーの構造内に親水基を導入しアイオノマー化し、イオン基の中和を行った後、水分散させ、活性水素化合物を持つ鎖延長剤で鎖伸長する方法(自己乳化法)等により得られる。より高強度で耐溶剤性に優れるポリウレタンフィルムを得ようとする場合、ポリイソシアネート成分としては芳香族系のイソシアネート、特にジフェニルメタンジイソシアネートを使用することが好ましく、ポリオール成分としては、結晶性を有するポリエステルポリオールの使用が好ましい。しかしながら、これらの成分を導入したポリウレタンエマルジョンを用いて直接浸漬法を適用すると、その強力な皮膜形成力によりフィルム離型性が低下し、特に薄膜部分においてフィルムの破損が発生しやすくなるという問題があった。また、上記の組成のポリウレタン樹脂を水性分散体化して調製されたフィルムは、溶剤系又はバルクで調製されたフィルムに比べ、耐溶剤性が低下するという問題もあった。
特開2001−11254号公報 特表2002−542320号公報 特表2005−526889号公報 特開2002−363250号公報
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、直接浸漬法において安定な離型性が確保された、高強度で耐溶剤性に優れるポリウレタンフィルムを得ることができる水性ポリウレタン樹脂組成物を提供するものである。
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、特定の水性ポリウレタン樹脂組成物、及びそれを直接浸漬法で金型にコーティングして加熱乾燥することにより得られるフィルムが上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下に示すとおりの水性ポリウレタン樹脂組成物及びそれを用いたフィルムである。
[1]ポリウレタン樹脂粒子の水性分散体(A)とポリ塩化ビニル樹脂粒子の水性分散体(B)とを混合して得られる水性ポリウレタン樹脂組成物であって、(A)/(B)が、樹脂固形分換算の重量比で、80/20〜99/1の範囲であること、並びにポリウレタン樹脂粒子の水性分散体(A)が、ジフェニルメタンジイソシアネートを50重量%以上含むポリイソシアネート成分(a1)、ポリエステルポリオールを50重量%以上含むポリオール成分(a2)、及び活性水素を有する親水基含有化合物(a3)の反応により得られるものであることを特徴とする水性ポリウレタン樹脂組成物。
[2]ポリ塩化ビニル樹脂粒子のメジアン径が0.05〜0.50μmの範囲であることを特徴とする上記[1]に記載の水性ポリウレタン樹脂組成物。
[3]ポリオール成分(a2)が、分子量400以上のポリエステルポリオールを50重量%以上含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水性ポリウレタン樹脂組成物。
[4]上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂組成物を乾燥させて得られるフィルム。
[5]上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂組成物中に金型を浸漬した後、当該金型を取り出してその表面に付着した水性ポリウレタン樹脂組成物を加熱乾燥することを特徴とするフィルムの製造方法。
本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物は、直接浸漬法において成型した場合であっても、安定な離型性が確保された、高強度で耐溶剤性に優れるポリウレタンフィルムを得ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物は、
ポリウレタン樹脂粒子の水性分散体(A)とポリ塩化ビニル樹脂粒子の水性分散体(B)とを混合して得られる水性ポリウレタン樹脂組成物であって、(A)/(B)が、樹脂固形分換算の重量比で、80/20〜99/1の範囲であること、並びに
ポリウレタン樹脂粒子の水性分散体(A)が、ジフェニルメタンジイソシアネートを50重量%以上含むポリイソシアネート成分(a1)、ポリエステルポリオールを50重量%以上含むポリオール成分(a2)、及び活性水素を有する親水基含有化合物(a3)の反応により得られるものであること、
をその特徴とする。
まず、本発明におけるポリウレタン樹脂粒子の水性分散体(A)について説明する。
本発明において、ポリウレタン樹脂粒子の水性分散体(A)は、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートを50重量%以上含むポリイソシアネート成分(a1)、ポリエステルポリオールを50重量%以上含むポリオール成分(a2)、及び活性水素を有する親水基含有化合物(a3)の反応により得られる。具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネートを50重量%以上含むポリイソシアネート成分(a1)、ポリエステルポリオールを50重量%以上含むポリオール成分(a2)、及び活性水素を有する親水基含有化合物(a3)を反応させて、プレポリマーを合成した後、それを乳化することが好ましい。
本発明で使用されるポリイソシアネート成分(a1)は、ポリイソシアネート成分全体に対して、50重量%以上、好ましくは70重量%以上のジフェニルメタンジイソシアネートを含有する。
ジフェニルメタンジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックMDI、及びこれらの混合物が含まれる。
ポリイソシアネート成分中のジフェニルメタンジイソシアネートの含有量を50重量%以上とすることで、得られるフィルムの強度や耐溶剤性が十分なレベルに保たれる。
ジフェニルメタンジイソシアネート以外のポリイソシアネート成分としては、通常入手できる各種の脂肪族、脂環族、芳香族のイソシアネート化合物を用いることが可能である。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、3−イソシアナトメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
本発明においてポリオールとは、イソシアネート基に対して反応性を有する水酸基を2個以上含む化合物をいう。
本発明で使用されるポリオール成分(a2)は、ポリオール成分全体に対し、ポリエステルポリオールを50重量%以上含有し、好ましくは、分子量400以上のポリエステルポリオールを50重量%以上含有する。ポリエステルポリオールの含有量が50重量%以上とすることで、得られるフィルムの強度や耐溶剤性が満足なレベルに保たれる。
ここで、ポリエステルポリオールとしては、例えば、縮合ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオール等が挙げられる。
縮合ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のジオール類と、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸との反応物が挙げられる。具体的には、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチレンアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペートジオール、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートジオール等のアジペート系縮合ポリエステルジオール、ポリエチレンアゼレートジオール、ポリブチレンアゼレートジオール等のアゼレート系縮合ポリエステルジオール等が例示される。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記したジオール類と、ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類との反応物等が挙げられる、具体的には、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリ3−メチルペンタメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等が例示される。
ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン及びこれらの2種以上の混合物の開環重合物等が挙げられ、具体的にはポリカプロラクトンジオール等が例示される。
ポリエステルポリオール以外のポリオール成分としては、通常入手可能なポリエーテルポリオールや、物性調整を目的として導入される分子量400未満の低分子ポリオールを使用することができる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA等の活性水素原子を少なくとも2個有する化合物の1種又は2種以上を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等のモノマーの1種又は2種以上を付加重合させた反応物があげられ、モノマーの2種以上を付加重合させた反応物の場合は、ブロック付加、ランダム付加又は両者の混合系でも良い。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等を例示できる。
分子量400未満の低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の脂肪族ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリロトール等の多官能脂肪族ポリオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環族ジオール、ビスフェノールA、ハイドロキノン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族ジオール、これらのアルキレンオキシド付加体のポリオール等が挙げられる。
本発明で使用される活性水素を有する親水基含有化合物(a3)としては、例えば、カルボキシル基を有するジオールを使用することができ、具体的には、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸等が挙げられる。また、これらを原料の一部として製造したカルボン酸基含有ポリエステルポリオールも好適に用いることができる。さらに、5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸等によってスルホン酸基が導入されたポリエステルポリオールを使用しても良い。これらの親水基が導入された活性水素を有する親水基含有化合物を、アンモニア、トリエチルアミン等の有機アミンやNa、K、Li等の金属塩基等によって中和することで、得られるポリウレタン樹脂を水中に分散することができる。
また、本発明においては、活性水素としてアミノ基を有する親水基含有化合物を使用することもでき、例えば、2−(2−アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とエチレンジアミンとの付加反応物のナトリウム塩、リジン、1,3−プロピレンジアミン−β−エチルスルホン酸等が挙げられる。
本発明において、これらの活性水素を有する親水基含有化合物(a3)によって導入される親水基の量は、ポリウレタン樹脂固形分1gに対して0.03〜0.3mmolとなるように調整することが好ましい。
本発明において、ジフェニルメタンジイソシアネートを50重量%以上含むポリイソシアネート成分(a1)、ポリエステルポリオールを50重量%以上含むポリオール成分(a2)、及び活性水素を有する親水基含有化合物(a3)を反応させて、プレポリマーの合成を行う際に、反応を均一に進行させるため、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、酢酸エチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のイソシアネート基に不活性な有機溶剤を、反応中又は反応終了後に添加してもよい。
プレポリマーの合成する際の温度範囲は、特に限定するものではないが、プレポリマーの粘度上昇を防止し、かつウレタン化を十分に進行させるため、好ましくは30〜120℃、さらに好ましくは40〜100℃、特に好ましくは45〜90℃の範囲である。
プレポリマーを合成する際の反応時間は、反応温度等の条件に依存するため、規定することが困難ではあるが、通常0.1〜10時間反応させることでプレポリマーを得ることができる。
プレポリマーがカルボン酸基やスルホン酸基等の塩形成可能な親水基を含む場合は、中和剤を用いて親水化(中和)させることが望ましい。中和剤としては、例えば、塩基性化合物が使用でき、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基類、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルアミノエタノール、N−メチルモルホリン等の第3級アミン類、アンモニア水等が例示される。
親水化(中和)の方法としては、特に限定するものではないが、例えば、(1)プレポリマーの合成前、合成中又は合成後に中和剤と反応させる方法、(2)乳化の際に用いる水に中和剤を添加する方法等が挙げられる。
本発明において、ポリウレタン樹脂粒子の水性分散体(A)は、例えば、プレポリマーに水を分散しながら水性ポリウレタン樹脂を得る転相乳化や、非イオン性界面活性剤を含む水中のプレポリマーを乳化し水性ポリウレタン樹脂を得る強制乳化等の乳化方法によって得られる。
乳化に用いられる界面活性剤としては、一般に非イオン性界面活性剤が用いられ、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アセチレンジオールの酸化エチレン付加物、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤の添加法については、特に限定するものではないが、例えば(1)乳化前に添加する方法、(2)乳化中に使用する水と共に添加する方法等が挙げられる。
本発明において、乳化前、乳化中又は乳化後に鎖延長剤を添加して、プレポリマーを高分子量化することが望ましい。本発明において、鎖延長剤とは、水又は1級若しくは2級のアミノ基を2個以上含有するポリアミン化合物をいう。プレポリマーの残イソシアネート基を鎖延長剤により鎖延長することでプレポリマーの高分子量化が達成できる。このようなポリアミン化合物として、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ピペラジン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
ポリウレタン樹脂粒子の水性分散体(A)が低沸点の有機溶剤を含有する場合は、減圧下、30〜80℃で有機溶剤を留去することが望ましい。また、水を追加又は留去することで、水性ポリウレタン樹脂組成物中の樹脂固形分濃度を調整することも可能である。
本発明において、ポリウレタン樹脂粒子の水性分散体(A)を製造する際に、更に耐久性を向上させる目的で、架橋剤を配合することもできる。架橋剤としては、通常に使用されるものでよく、特に限定するものではないが、例えば、アミノ樹脂、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物等を挙げることができる。
本発明において、ポリウレタン樹脂粒子の水性分散体(A)には、凝集性を阻害しない範囲で通常に使用される添加剤を加えてもよい。具体的には、可塑剤、粘着付与剤(ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂石油樹脂、クマロン樹脂等)、充填剤、顔料、増粘剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、防腐剤等が例示される。
次に、本発明におけるポリ塩化ビニル樹脂粒子の水性分散体(B)について説明する。
本発明で使用されるポリ塩化ビニル樹脂粒子は、メジアン径が0.05〜0.5μmの範囲であることが好ましい。メジアン径を0.05μm以上とすることで、耐溶剤性向上と離型性の改善効果をともに得ることができる。一方、メジアン径を0.5μm以下とすることで、得られるフィルムの強度の満足できるレベルに保つことができる。また、メジアン径が0.5μmよりも大きくなると、経時で混合エマルジョンにポリ塩化ビニル樹脂粒子の沈降が認められることから、長期保存上の問題となるおそれがある。
ポリ塩化ビニル樹脂粒子の水性分散体(B)に使用されるポリ塩化ビニル樹脂粒子としては、通常の重合条件で製造できるK値50〜80のポリ塩化ビニル粒子を使用することができる。
ポリ塩化ビニル樹脂粒子の水性分散体(B)の製造方法としては、例えば、一般的に知られている懸濁重合、乳化重合、シード重合を利用することができるが、メジアン径0.05〜0.5μmのポリ塩化ビニル樹脂粒子を効率的に得るためには、乳化重合、又は乳化重合によって得られたポリ塩化ビニル樹脂粒子を種粒子としたシード重合の適用が好ましい。
このようにして得られるポリ塩化ビニル樹脂の数平均分子量としては、1万〜20万の範囲であることが好ましい。
次に本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物について説明する。
本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂粒子の水性分散体(A)とポリ塩化ビニル樹脂粒子の水性分散体(B)とを混合して得られるものであって、[ポリウレタン樹脂粒子の水性分散体(A)]/[ポリ塩化ビニル樹脂粒子の水性分散体(B)]が、樹脂固形分換算の重量比で、80/20〜99/1の範囲である。(A)/(B)の樹脂固形分換算の重量比が、99/1未満では、離型性改善の効果は認められず、逆に80/20を超えると、フィルムの伸びが低下するため柔軟性が失われ、また金型離型性も損なわれる。
本発明において、ポリウレタン樹脂粒子の水性分散体(A)とポリ塩化ビニル樹脂粒子の水性分散体(B)とを混合する方法としては、特に限定するものではないが、攪拌翼による混合分散、マグネッチクスターラーによる混合分散、ホモジナイザー等による混合分散等が挙げられる。
本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物には、必要に応じて、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、親水性基含有合成樹脂エマルション、ウレタン変性ポリエーテル系シックナー、変性ポリアクリル酸系シックナー等の増粘剤、フェノール系老化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、シリコーン系等の帯電防止剤や離型剤、コロイダルシリカ等の無機充填剤、着色剤、顔料、滑剤等の添加剤をフィルム成型時の配合剤として加えても構わない。
本発明においては、水性ポリウレタン樹脂組成物が低沸点の有機溶剤を含有する場合、減圧下、30〜80℃で有機溶剤を留去することが望ましい。また、水を追加又は留去することで、水性ポリウレタン樹脂組成物中の樹脂固形分濃度を調整することも可能である。
本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物を乾燥することにより、塗膜や、フィルム、シート等の形状に成型することが可能である。
具体的には、本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物中に金型を浸漬した後、当該金型を取り出してその表面に付着した水性ポリウレタン樹脂組成物を加熱乾燥することにより、フィルムやシートとして成型することができる。
本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物は、手袋、指サック、コンドーム等の浸漬成型用途で使用されるとともに、従来は溶剤系のポリウレタン樹脂が使用されてきた用途、例えば、塗料、コーティング材、シーラント等の広範な用途に使用される。
以下の実施例、比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何らの制限を受けるものではない。
なお、以下の実施例、比較例における水性ポリウレタン樹脂組成物及びそれを成型したフィルムの評価法は以下のとおりである。
<メジアン径の測定方法>
ポリウレタン樹脂粒子の水性分散体及びポリ塩化ビニル樹脂粒子の水性分散体の粒子径は、マイクロトラックUPA150(日機装社製)を用い、分散媒の屈折率を1.33に設定し粒径分布を測定して、メジアン径を求めた。
<フィルム成型方法>
離型紙上に水性ポリウレタン樹脂組成物を4g置き、厚み300μmのコーターで均等に展延し130℃の乾燥機内で10分間乾燥し、乾燥フィルムを得た。
<フィルム強度の測定>
恒温室で乾燥フィルムを状態調整後、JIS4号ダンベルで打ち抜いて試験片を得た。この試験片について、引張り試験機(東洋ボールドウイン社製、テンシロンUTM−4−100型)を用い、引張り速度200(mm/分)で引張り試験を行った。
<フィルム耐アルコール性の評価>
恒温室で乾燥フィルムを状態調整後、JIS4号ダンベルで打ち抜いて試験片を得た。イソプロパノール入り密閉容器にこの試験片を30分間浸漬し、その直後のフィルム強度の測定を上記と同様に行った。
<フィルム離型性の評価>
直径5cmの磁製円筒金型を水性ポリウレタン樹脂組成物に浸漬後、130℃の乾燥機内で10分間乾燥した。フィルム剥離性は金型が80〜60℃の高温時剥離性及び25℃の常温時の金型剥離性を評価した。
高温剥離性は非接触型温度計を用いフィルムの表面温度を測定し、80〜60℃の温度範囲でフィルムの剥離状態を観察した。
離型性の判定は、フィルムが80℃〜60℃へ低下する時の高温時の円筒金型からのフィルムの剥離性を以下のとおり評価した。
+:フィルムは金型から剥がし難く剥離性が劣り、水に浸漬した後剥離できた。
++:フィルムは僅かに金型から剥がし易くなったが、剥離性はやや劣った。水に浸漬後剥離する必要はなかった。
+++:フィルムは金型から剥がし易くなり、離型性は改善された。水に浸漬後剥離する必要はなかった。
++++:フィルムは金型から剥離できた。
+++++:フィルムは金型から容易に剥離できた。
調製例1 ポリウレタン樹脂粒子の水性分散体の調製.
<ウレタンプレポリマー溶液の合成>
還流冷却器を備えた反応器に、ポリイソシアネート成分として、ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリレタン社製、ミリオネートMT−F)及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(東京化成社製)、ポリエステルポリオールとして、ポリブチレンアジペート(日本ポリウレタン社製、ニッポラン4010)、ポリエチレンアジペート(日本ポリウレタン社製、ニッポラン4040)及びポリプロピレングリコール(三洋化成工業社製、サンニックスPP−2000)、ジメチロールプロピオン酸、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン及びメチルエチルケトンについて表1に示す量を加え、反応温度80(℃)で表1に示す固形分70重量%のプレポリマー有機溶剤溶液1〜6を調製した。
Figure 2012136604
<ポリウレタン樹脂水性分散体の合成>
ホモジナイザー(TK.ホモミキサーMARKII、PRIMIX社製)に、純水60g、苛性ソーダ0.22g、ノニオン乳化剤ポリオキシエチレンラウリルエーテル(日油社製、K220)1.08g、消泡剤(サンノプコ社製、デフォーマー440)0.3gを入れた分散水を乳化槽に入れ、攪拌回転数6000rpmで乳化循環した。その後、表2に示す固形分70重量%プレポリマー有機溶剤溶液を用い、それをメチルエチルケトンで更に固形分60重量%に希釈した100gのプレポリマー溶液を5分〜10分間滴下し乳化循環を行なった後、同一攪拌回転数で乳化液を10分間循環しエマルションの熟成を行なった。鎖延長反応はピペラジンを水に溶解した鎖延長剤溶液を、マグネッチクスターラーで攪拌しながら乳化槽中のポリウレタンエマルションに加えた。そして、乳化槽中のポリウレタンエマルションから、エバポレーターを用いて45℃で減圧条件下攪拌しながら有機溶剤を蒸留除去し、表2に示すポリウレタン樹脂水性分散体1〜6を得た。
Figure 2012136604
調製例2 ポリ塩化ビニル樹脂水性分散体1の調製.
2.5L重合缶内に脱イオン水800g、塩化ビニル単量体700g、15重量%ラウリン酸カリウム水溶液4g及び15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液10gを仕込み、温度を56℃に上げて重合を進めた。そして、圧力が低下した後、未反応塩化ビニル単量体を回収し、K値67でメジアン径0.15μmのポリ塩化ビニル樹脂水性分散体1を得た。
調製例3 ポリ塩化ビニル樹脂水性分散体2の調製.
2.5L重合缶内に脱イオン水720g、塩化ビニル単量体600g、過酸化ラウロイル0.6g及び15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液60gを仕込み、該重合液をホモミキサーにて75分間均質化処理後、温度を64℃に上げて重合を進めた。圧力が低下した後、未反応塩化ビニル単量体を回収することにより、K値63でメジアン径0.8μmを有するポリ塩化ビニル樹脂水性分散体2を得た。
調製例4 ポリ塩化ビニル樹脂水性分散体3の調製.
ポリ塩化ビニル樹脂水性分散体1を10000rpmで60分間の条件で遠心沈降させ、その上澄み液を回収し、ポリ塩化ビニル樹脂水性分散体3を得た。ポリ塩化ビニル樹脂水性分散体3中に含まれるポリ塩化ビニル樹脂のメジアン径は0.03μmであった。
調製例5. ポリエステル系ポリオールの調製.
留出塔を備えた反応器にアジピン酸146.14g、エチレングリコール124.14g加え、窒素ガス雰囲気中で反応温度150(℃)、常圧でエステル化反応させた。縮合水が出なくなったら、テトラブチルチタネートを0.05g仕込み、反応器内の温度徐々に180(℃)、反応器内の圧力を徐々に0.07KPaまで減圧し反応を続けた。得られた低分子量ポリエステルポリオールの数平均分子量は380、水酸基価は441mg/gであった。
実施例1.
水性ポリウレタン樹脂分散体1と水性ポリ塩化ビニル樹脂1とを、[水性ポリウレタン樹脂分散体1]/[水性ポリ塩化ビニル樹脂1]の樹脂固形分換算の重量比が85/15となるように、100mLビーカーに入れ、マグネチックスターラーで30分間攪拌して、ポリウレタン樹脂水性分散体1とポリ塩化ビニル樹脂水性分散体2からなる水性ポリウレタン樹脂組成物を調製し、上記したとおり評価した。結果を表3に示す。
Figure 2012136604
表3から明らかなとおり、実施例1の水性ポリウレタン樹脂組成物を加熱乾燥したフィルム成型体は、安定な離型性が確保され、かつ高強度で耐溶剤性に優れていた。
実施例2〜実施例5.
実施例1と同じ条件で、表3に示すポリウレタン樹脂水性分散体とポリ塩化ビニル樹脂水性分散体からなる水性樹脂分散体組成物を調製し、上記したとおり評価した。結果を表3に併せて示す。
表3から明らかなとおり、これら実施例の水性ポリウレタン樹脂組成物を加熱乾燥したフィルム成型体は、安定な離型性が確保され、かつ高強度で耐溶剤性に優れていた。
比較例1〜比較例9.
実施例1と同様の条件で、表4に示すポリウレタン樹脂水性分散体とポリ塩化ビニル樹脂水性分散体からなる水性樹脂分散体組成物を調製し、上記したとおり評価した。結果を表4に併せて示す。
Figure 2012136604
表4から明らかなとおり、これら比較例の水性樹脂分散体組成物を加熱乾燥して得られるフィルム成型体は、安定な離型性が得られず、強度や耐溶剤性の点で劣るものであった。

Claims (5)

  1. ポリウレタン樹脂粒子の水性分散体(A)とポリ塩化ビニル樹脂粒子の水性分散体(B)とを混合して得られる水性ポリウレタン樹脂組成物であって、(A)/(B)が、樹脂固形分換算の重量比で、80/20〜99/1の範囲であること、並びにポリウレタン樹脂粒子の水性分散体(A)が、ジフェニルメタンジイソシアネートを50重量%以上含むポリイソシアネート成分(a1)、ポリエステルポリオールを50重量%以上含むポリオール成分(a2)、及び活性水素を有する親水基含有化合物(a3)の反応により得られるものであることを特徴とする水性ポリウレタン樹脂組成物。
  2. ポリ塩化ビニル樹脂粒子のメジアン径が0.05〜0.50μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の水性ポリウレタン樹脂組成物。
  3. ポリオール成分(a2)が、分子量400以上のポリエステルポリオールを50重量%以上含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水性ポリウレタン樹脂組成物。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂組成物を乾燥させて得られるフィルム。
  5. 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂組成物中に金型を浸漬した後、当該金型を取り出してその表面に付着した水性ポリウレタン樹脂組成物を加熱乾燥することを特徴とするフィルムの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2015060406A1 (ja) * 2013-10-25 2015-04-30 東ソー株式会社 塩化ビニルポリマーラテックス、ポリオール組成物及びその製造方法

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