JP2022011733A - 蓄熱材用ポリウレタン、それを含む蓄熱材料及び蓄熱成形体 - Google Patents

蓄熱材用ポリウレタン、それを含む蓄熱材料及び蓄熱成形体 Download PDF

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浩司 西口
Koji Nishiguchi
光治 小林
Mitsuharu Kobayashi
一彰 白井
Kazuaki Shirai
祥 田村
Sho Tamura
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Abstract

【課題】蓄熱性、耐熱性が良好であり、成形性に優れ、加熱、冷熱による形状保持性が良好な蓄熱材用ポリウレタン、それを含む蓄熱材料、及び蓄熱成形体を提供する。【解決手段】複数のイソシアネート基を有する芳香族系化合物に由来する構造単位(A)と、ポリオール及び/又はポリアミンに由来する構造単位(B)と、ポリアルキレンエーテルグリコールに由来する構造単位(C)と、を含む蓄熱材用ポリウレタン、それを含む蓄熱材料、及び蓄熱成形体である。構造単位(C)の数平均分子量は、2300以上5000以下の範囲内である。構造単位(A)に対する、構造単位(C)の含有比率は15モル%以上80モル%以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、蓄熱材用ポリウレタン、それを含む蓄熱材料及び蓄熱成形体に関する。
ポリウレタンには、加熱すると軟化および溶融し、その後冷却すると固化する熱可塑性ポリウレタンと、加熱により硬化する熱硬化性ポリウレタンとがある。いずれのポリウレタンも優れた弾性、機械的強度、低温特性、耐摩擦性、耐候性、耐油性を持ち、加工性にも優れ、様々な形状に容易に加工することができることから、ロール、キャスター等の工業部品、ソリッドタイヤ、ベルト等の自動車部品、紙送りロール、複写機用ロール等のOA機器部品の他、スポーツ、レジャー用品など広範囲に利用されている。
近年、蓄熱機能、すなわち、外部の温度変化に対して形状変化が小さい蓄熱材用ポリウレタンを含む材料及び蓄熱成形体が注目されている。例えば、特許文献1には、蓄熱作用のあるコート剤として、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含有する主剤(A)と、蓄熱材を内包するマイクロカプセルと水とを含有する硬化剤(B)からなる2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物が提案されている。
特許文献2には、温熱・冷熱の蓄積(つまり、蓄熱蓄冷)機能を有するポリウレタン発泡体として、ポリウレタン発泡基体の内部に、相転移材を含有する浸透層を備えるポリウレタン発泡体が開示されている。
特許文献3には、蓄熱ボード、電子機器部品用の蓄熱材、保冷材、保温材等に用いることができる蓄熱性ウレタン系樹脂シート状成形体として、特定のウレタン系樹脂中に、少なくとも蓄熱剤を内包するマイクロカプセルを配合してなる成形体が開示されている。
特許文献4では、ポリウレタンを製造する工程において、相変化材料を添加してポリウレタンを製造する技術が提案されている。
特開2014-129467号公報 特開2019-1973号公報 特開2009-79115号公報 特開2020-66738号公報
しかしながら、従前知られた蓄熱材用ポリウレタン、それを含む蓄熱材料、及び蓄熱材料から構成された成形体(つまり、蓄熱成形体)は、蓄熱性能が不十分であり、加熱、冷熱により形状変化を起こしやすい。さらに、耐熱性に改良の余地があり、蓄熱機能を有する添加剤等が蓄熱材用ポリウレタンから分離することが避けられず、蓄熱成形体が加熱・冷熱にさらされると外観不良が生じやすい。
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであって、蓄熱性、耐熱性が良好であり、成形性に優れ、加熱、冷熱による形状保持性が良好な蓄熱材用ポリウレタン、それを含む蓄熱材料、及び蓄熱成形体を提供しようとするものである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の芳香族系化合物に由来する構造単位(A)と、ポリオール及び/又はポリアミンに由来する構造単位(B)と、ポリアルキレンエーテルグリコールに由来し、所定範囲の数平均分子量を有する構造単位(C)とを含み、構造単位(C)の含有比率が所定範囲内になる蓄熱材用ポリウレタンが、前記課題を解決することができることを見出した。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] 複数のイソシアネート基を有する芳香族系化合物に由来する構造単位(A)と、ポリオール及び/又はポリアミンに由来する構造単位(B)と、ポリアルキレンエーテルグリコールに由来する構造単位(C)と、を含む蓄熱材用ポリウレタンであって、
前記構造単位(C)の数平均分子量が2300以上5000以下の範囲内であり、
前記構造単位(A)に対する、前記構造単位(C)の含有比率が15モル%以上80モル%以下である、蓄熱材用ポリウレタン。
[2] 前記構造単位(A)及び前記構造単位(B)の総量が、前記蓄熱材用ポリウレタンに対し、10質量%以上40質量%以下である、[1]に記載の蓄熱材用ポリウレタン。
[3] 前記ポリアルキレンエーテルグリコールが、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを含む、[1]又は[2]に記載の蓄熱材用ポリウレタン。
[4] 前記芳香族系化合物が、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートよりなる群から選ばれた少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれかに記載の蓄熱材用ポリウレタン。
[5] 前記構造単位(B)が、少なくともポリオールに由来し、該ポリオールが、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールよりなる群から選ばれた少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれかに記載の蓄熱材用ポリウレタン。
[6] 前記蓄熱材用ポリウレタンがポリウレタンエラストマーである、[1]~[5]のいずれかに記載の蓄熱材用ポリウレタン。
[7] 前記蓄熱材用ポリウレタンエラストマーが熱可塑性である、[6]に記載の蓄熱材用ポリウレタン。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の蓄熱材用ポリウレタンを含む蓄熱材料。
[9] [8]に記載の蓄熱材料から構成された蓄熱成形体。
[10] 示差走査熱量測定により観測される吸熱ピーク温度が10℃以上30℃以下である、[9]に記載の蓄熱成形体。
[11] 示差走査熱量測定により-50℃以上50℃以下で観測される融解エンタルピーが10J/g以上である、[9]又は[10]に記載の蓄熱成形体。
本発明によれば、蓄熱性、耐熱性が良好であり、成形性に優れ、加熱、冷熱による形状保持性が良好な蓄熱材用ポリウレタン、それを含む蓄熱材料、及び蓄熱成形体を提供することができる。
図1は、実施例1のDSC曲線である。 図2は、実施例2のDSC曲線である。 図3は、実施例3のDSC曲線である。 図4は、実施例4のDSC曲線である。 図5は、実施例5のDSC曲線である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後に記載される数値あるいは物理値を含む意味で用いることとする。また、上限、下限として記載した数値あるいは物理値は、その値を含む意味で用いることとする。また、本明細書において、「重量部」と「質量部」、「重量%」と「質量%」は、実質的に同義である。
[蓄熱材用ポリウレタン]
前記蓄熱材用ポリウレタンは、複数のイソシアネート基を有する芳香族系化合物に由来する構造単位(A)と、ポリオール及び/又はポリアミンに由来する構造単位(B)と、ポリアルキレンエーテルグリコールに由来する構造単位(C)とを有する。構造単位(A)に対する構造単位(C)の含有比率が15モル%以上80モル%以下である。また、構造単位(C)の数平均分子量は、2300以上5000以下の範囲内である。なお、以降の説明では、芳香族系化合物のことを「芳香族ポリイソシアネート化合物」、ポリオール及び/又はポリアミンに属する化合物のことを「鎖延長剤」と称す場合がある。また、構造単位(A)に対する構造単位(C)の含有比率のことを「ポリアルキレンエーテルグリコール/芳香族イソシアネート比」と称する場合がある。
蓄熱材用ポリウレタンは、例えば、芳香族ポリイソシアネート化合物、鎖延長剤、及びポリアルキレンエーテルグリコールを原料としてポリウレタンを製造するにあたり、ポリアルキレンエーテルグリコール/芳香族イソシアネート比が所定範囲内の割合となるように調整して製造される。アルキレンエーテルグリコール/芳香族イソシアネート比の調整は、例えば、芳香族ポリイソシアネート化合物とポリアルキレンエーテルグリコールの使用割合を調整することにより行われる。
前記蓄熱材用ポリウレタンにおいて、ポリアルキレンエーテルグリコールに由来する構造単位(C)の数平均分子量は2300以上5000以下である。数平均分子量が前記範囲内であることにより、蓄熱材用ポリウレタンは、蓄熱性、耐熱性が良好となり、成形性に優れる。この効果が向上するという観点から、下限は好ましくは2500であり、より好ましくは2700であり、さらに好ましくは3000である。同様の観点から、上限は好ましくは4800であり、より好ましくは4600であり、さらに好ましくは4400である。尚、ポリアルキレンエーテルグリコールに由来する構造単位(C)の数平均分子量は核磁気共鳴(NMR)分析により求めることができる。
前記蓄熱材用ポリウレタンにおいて、ポリアルキレンエーテルグリコール/芳香族イソシアネート比は15モル%以上80モル%以下である。ポリアルキレンエーテルグリコール/芳香族イソシアネート比が前記範囲内であることにより、蓄熱材用ポリウレタンは、蓄熱性、耐熱性が良好となり、成形安定性に優れるポリウレタンとすることができる。この効果が向上するという観点から、下限は好ましくは17モル%であり、より好ましくは19モル%であり、さらに好ましくは21モル%である。同様の観点から、上限は好ましくは70モル%であり、より好ましくは60モル%であり、さらに好ましくは55モル%である。尚、ポリアルキレンエーテルグリコール/芳香族イソシアネート比は核磁気共鳴(NMR)分析により求めることができる。
前記蓄熱材用ポリウレタン中の構造単位(A)と構造単位(B)の総量(以下、「ハードセグメント含有量」と称する場合がある。)は、10質量%以上40質量%以下であることが好ましい。この場合には、蓄熱性、耐熱性、成形安定性の向上が可能になる。この効果がより向上するという観点から、下限はより好ましくは11質量%であり、さらに好ましくは12質量%であり、さらにより好ましくは13質量%である。同様の観点から、上限は好ましくは38質量%であり、より好ましくは36質量%であり、さらに好ましくは34質量%である。
<芳香族ポリイソシアネート化合物>
前記蓄熱材用ポリウレタンの製造原料として使用される芳香族ポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基を2以上有する芳香族化合物であればよく、芳香族系の公知の各種ポリイソシアネート化合物が挙げられる。
例えば、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、トルエンジイソシアネート(2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート)、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、鎖延長剤やポリアルキレンエーテルグリコールとの反応性や得られるポリウレタンの硬化性の高さの観点、工業的に安価に多量に入手が可能であるという観点から、芳香族ポリイソシアネート化合物は、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と称する場合がある)、トルエンジイソシアネート(TDI)及びキシリレンジイソシアネートよりなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、MDIがより好ましい。
<鎖延長剤>
前記蓄熱材用ポリウレタンの製造原料として使用される鎖延長剤は、例えば、イソシアネート基と反応する活性水素を少なくとも2個有する低分子量化合物であり、ポリオール及びポリアミンから選ばれる。
その具体例としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の直鎖ジオール類;2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,4-ヘプタンジオール、1,4-ジメチロールヘキサン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ダイマージオール等の分岐鎖を有するジオール類;ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のエーテル基を有するジオール類;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジヒドロキシエチルシクロヘキサン等の脂環構造を有するジオール類、キシリレングリコール、1,4-ジヒドロキシエチルベンゼン、4,4’-メチレンビス(ヒドロキシエチルベンゼン)等の芳香族基を有するジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール類;N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン等のヒドロキシアミン類;エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、メチレンビス(o-クロロアニリン)、キシリレンジアミン、ジフェニルジアミン、トリレンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン、N,N’-ジアミノピペラジン等のポリアミン類;等を挙げることができる。 これらの鎖延長剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールよりなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、1,4-ブタンジオールがより好ましい。この場合には、蓄熱材用ポリウレタンにおけるポリアルキレンエーテルグリコールに由来する構造単位(C)に起因するソフトセグメントと、複数のイソシアネート基を有する芳香族系化合物に由来する構造単位(A)、並びに、ポリオール及び/又はポリアミンに由来する構造単位(B)に起因するハードセグメントとの相分離性が向上し、蓄熱材用ポリウレタンの柔軟性と弾性回復性が向上する。また、この場合には、原料を工業的に多量に入手することができる。
<ポリアルキレンエーテルグリコール>
前記蓄熱材用ポリウレタンの製造原料として用いるポリアルキレンエーテルグリコールは、通常、分子内の主骨格中に1つ以上のエーテル結合を有するヒドロキシ化合物である。主骨格中の繰り返し単位としては、飽和炭化水素又は不飽和炭化水素のどちらでもよく、又、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。
主骨格中の繰り返し単位としては、例えば、1,2-エチレングリコール単位、1,2-プロピレングリコール単位、1,3-プロパンジオール(トリメチレングリコール)単位、2-メチル-1,3-プロパンジオール単位、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール単位、1,4-ブタンジオール(テトラメチルングリコール)単位、2-メチル-1,4-ブタンジオール単位、3-メチル-1,4-ブタンジオール単位、3-メチル-1,5-ペンタンジオール単位、ネオペンチルグリコール単位、1,6-ヘキサンジオール単位、1,7-ヘプタンジオール単位、1,8-オクタンジオール単位、1,9-ノナンジオール単位、1,10-デカンジオール単位及び1,4-シクロヘキサンジメタノール単位等が挙げられる。
これらのなかでも、蓄熱材用ポリウレタンの蓄熱性、耐熱性、成形性が向上するという観点から、繰り返し単位が1,4-ブタンジオール単位であるポリテトラメチレンエーテルグリコールを含むことが好ましい。換言すれば、ポリアルキレンエーテルグリコールが、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを含むことが好ましい。この効果がより向上するという観点から、ポリテトラメチレンエーテルグリコールの含有量は、ポリアルキレンエーテルグリコール総量に対して、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましく、100重量%であことが特に好ましい。
さらに、ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量は、2300以上5000以下が好ましい。ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量の下限は、より好ましくは2500であり、さらに好ましくは2700であり、さらにより好ましくは3000である。上限は、より好ましくは4800であり、さらに好ましくは4600であり、さらにより好ましくは4400である。尚、ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量は水酸基価より求めることができる。
[蓄熱材用ポリウレタンの製造方法-溶媒なしの場合]
前記蓄熱材用ポリウレタンの製造にあたっては、例えば、ポリウレタン原料として、ポリアルキレンエーテルグリコールと芳香族ポリイソシアネート化合物と鎖延長剤とが用いられる。ポリアルキレンエーテルグリコールと芳香族ポリイソシアネート化合物との仕込み組成は、例えば、ポリウレタンが前述のポリアルキレンエーテルグリコール/芳香族イソシアネート比を満たすような化学量論比とすることができる。その他の点は、通常のポリウレタン化反応により蓄熱材用ポリウレタンを製造することができる。
前記蓄熱材用ポリウレタンの製造にあたり、溶媒を使用すると成形時に溶媒を除去する工程が必要となるため工業的に有利ではない。また、溶媒は環境への負荷が大きいため、ポリウレタン化反応は溶媒を使用することなく(つまり、溶媒の不存在下)で行うことが好ましい。
前記蓄熱材用ポリウレタンの製造においては、例えば、前述のような特定のポリアルキレンエーテルグリコールを用いることにより、ウレタン化反応の均質性が向上する。そのため、無溶媒条件でも均一かつ物性バランスに優れた蓄熱材用ポリウレタンを得ることができる。
例えば、ポリアルキレンエーテルグリコールと芳香族ポリイソシアネート化合物と鎖延長剤とを常温から200℃の範囲で反応させることにより、前記蓄熱材用ポリウレタンを製造することができる。
また、まず、ポリアルキレンエーテルグリコールと過剰の芳香族ポリイソシアネート化合物とを反応させることにより、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを製造し、さらに鎖延長剤を用いて重合度を上げることにより、前記蓄熱材用ポリウレタンを製造することができる。
<鎖停止剤>
前記蓄熱材用ポリウレタンを製造する際には、得られるポリウレタンの分子量を制御する目的で、必要に応じて1個の活性水素基を持つ鎖停止剤を使用することができる。
これらの鎖停止剤としては、一個の水酸基を有するメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族モノオール類、一個のアミノ基を有するジエチルアミン、ジブチルアミン、n-ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モルフォホリン等の脂肪族モノアミン類が例示される。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<触媒>
前記蓄熱材用ポリウレタンを製造する際のポリウレタン形成反応において、トリエチルアミン、N-エチルモルホリン、トリエチレンジアミンなどのアミン系触媒、又は、酢酸、リン酸、硫酸、塩酸、スルホン酸等の酸系触媒を用いることができる。また、ポリウレタンの形成反応においては、有機金属塩などに代表される公知のウレタン重合触媒を用いることもできる。有機金属塩としては、例えばトリメチルチンラウレート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジオクチルチンジネオデカネートなどのスズ系の化合物、チタン系化合物などを用いることができる。ウレタン重合触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<ポリアルキレンエーテルグリコール以外のポリオール>
前記蓄熱材用ポリウレタンを製造する際のポリウレタン形成反応においては、ポリアルキレンエーテルグリコールと共に、必要に応じてそれ以外のポリオールを併用してもよい。ここで、ポリアルキレンエーテルグリコール以外のポリオールは、通常のポリウレタン製造の際に用いるものであれば特に限定されず、例えばポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオールが挙げられる。ここで、ポリアルキレンエーテルグリコールとそれ以外のポリオールを合わせた重量に対する、ポリアルキレンエーテルグリコールの重量割合は30%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。この場合には、蓄熱材用ポリウレタンの蓄熱性が向上する。
<蓄熱材用ポリウレタンの製造方法-溶媒ありの場合>
溶媒を用いて前記蓄熱材用ポリウレタンを製造する方法としては、一般的に実験ないし工業的に用いられる製造方法が使用できる。
その例としては、ポリアルキレンエーテルグリコール、必要に応じて用いられるそれ以外のポリオール、芳香族ポリイソシアネート化合物、及び鎖延長剤を一括に混合して反応させる方法(以下、「一段法」と称する場合がある)や、まずポリアルキレンエーテルグリコール、必要に応じて用いられるそれ以外のポリオール及び芳香族ポリイソシアネート化合物を反応させて両末端がイソシアネート基のプレポリマーを調製した後に、そのプレポリマーと鎖延長剤を反応させる方法(以下、「二段法」と称する場合がある)等がある。
二段法は、ポリアルキレンエーテルグリコールとそれ以外のポリオールとを予め1当量以上の芳香族ポリイソシアネート化合物と反応させることにより、ポリウレタンのソフトセグメントに相当する部分の両末端イソシアネート中間体を調製する工程を経るものである。このように、プレポリマーを一旦調製した後に鎖延長剤と反応させると、ソフトセグメント部分の分子量の調整が行いやすい場合があり、ソフトセグメントとハードセグメントの相分離を確実に行う必要がある場合には有用である。
<一段法>
一段法とは、ワンショット法とも呼ばれ、ポリアルキレンエーテルグリコール、それ以外のポリオール、芳香族ポリイソシアネート化合物及び鎖延長剤を一括に仕込むことで反応を行う方法である。
一段法における芳香族ポリイソシアネート化合物の使用量は、特に限定はされないが、ポリアルキレンエーテルグリコールの水酸基とそれ以外のポリオールの水酸基との総数N1と、鎖延長剤の水酸基数N2と、アミノ基数Nとの総計(つまり、N1+N2+N3)を1当量とした場合、使用量の下限は、好ましくは0.7当量、より好ましくは0.8当量、さらに好ましくは0.9当量、さらにより好ましくは0.95当量である。前記総計を1当量とした場合、使用量の上限は、好ましくは3.0当量、より好ましくは2.0当量、さらに好ましくは1.5当量、さらにより好ましくは1.1当量である。
芳香族ポリイソシアネート化合物の使用量を前記上限以下に調整することにより、未反応のイソシアネート基が副反応を起こすことを抑制でき、ポリウレタンの粘度が高くなりすぎることを防止できる。これにより、ポリウレタンの取り扱い性が良好になったり、柔軟性が向上する。一方、使用量を前記下限以上とすることにより、ポリウレタンの分子量が十分に高くなり、強度が向上する。
また、鎖延長剤の使用量は、特に限定されないが、ポリアルキレンエーテルグリコールの水酸基とそれ以外のポリオールの水酸基との総数を芳香族ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基数から引いた数を1当量とした場合、使用量の下限は、好ましくは0.7当量、より好ましくは0.8当量、さらに好ましくは0.9当量、さらにより好ましくは0.95当量である。使用量の上限は、好ましくは3.0当量、より好ましくは2.0当量、さらに好ましくは1.5当量、さらにより好ましくは1.1当量である。鎖延長剤の使用量を前記上限以下にすることにより、ポリウレタンが溶媒に溶けにくく加工が困難になることを防止できる。使用量を前記下限以上とすることにより、ポリウレタンが軟らかくなりすぎることを防止できる。これにより、ポリウレタンの強度、硬度、弾性回復性能、弾性保持性能が向上したり、ポリウレタンの耐熱性が向上する。
<二段法>
二段法は、プレポリマー法ともよばれ、主に以下の方法がある。
(a法)まず、予めポリアルキレンエーテルグリコールと、それ以外のポリオールと、過剰の芳香族ポリイソシアネート化合物とを、下記の式(I)により算出される反応当量比が1を超え10.0以下となるように反応させることにより、分子鎖末端がイソシアネート基であるプレポリマーを製造する。次いで、プレポリマーに鎖延長剤を加えることによりポリウレタン(つまり、蓄熱材用ポリウレタン)を製造する。
芳香族ポリイソシアネート化合物の反応当量/(ポリアルキレンエーテルグリコールの反応当量とそれ以外のポリオールの反応当量との合計) ・・・(I)
(b法)芳香族ポリイソシアネート化合物と、過剰のポリアルキレンエーテルグリコール及びそれ以外のポリオールとを、前記式(I)により算出される反応当量比が0.1以上1.0未満となるように反応させることにより、分子鎖末端が水酸基であるプレポリマーを製造する。次いで、プレポリマーに鎖延長剤として末端がイソシアネート基の芳香族ポリイソシアネート化合物を反応させることにより、ポリウレタン(つまり、蓄熱材用ポリウレタン)を製造する。
二段法は、無溶媒でも溶媒共存下でも実施することができる。
二段法による蓄熱材用ポリウレタン製造は以、例えば下に記載の(1)~(3)のいずれかの方法によって行うことができる。
(1) 溶媒を使用せず、まず芳香族ポリイソシアネート化合物とポリアルキレンエーテルグリコールとそれ以外のポリオールとを直接反応させてプレポリマーを合成する。次いで、プレポリマーをそのまま鎖延長反応に使用する。
(2) (1)に記載の方法でプレポリマーを合成する。その後、プレポリマーを溶媒に溶解し、溶解物を鎖延長反応に使用する。
(3) 溶媒を使用し、芳香族ポリイソシアネート化合物とポリアルキレンエーテルグリコールとそれ以外のポリオールとを反応させ、その後鎖延長反応を行う。
(1)の方法の場合には、鎖延長反応にあたり、鎖延長剤を溶媒に溶かしたり、溶媒に同時にプレポリマー及び鎖延長剤を溶解したりするなどの方法により、ポリウレタンを溶媒と共存する形で得ることが重要である。
二段法(a法)における芳香族ポリイソシアネート化合物の使用量は、特に限定されないが、ポリアルキレンエーテルグリコールの水酸基とそれ以外のポリオールとの水酸基との総数を1当量とした場合のイソシアネート基の数が、好ましくは1.0当量を超え、より好ましくは1.2当量以上、さらに好ましくは1.5当量以上となるように調整することができる。各範囲を、適宜「下限規定」と称する。また、芳香族ポリイソシアネート化合物の使用量は、ポリアルキレンエーテルグリコールの水酸基とそれ以外のポリオールとの水酸基との総数を1当量とした場合のイソシアネート基の数が、好ましくは10.0当量以下、より好ましくは5.0当量以下、さらに好ましくは3.0当量以下となるように調整することができる。各範囲を、適宜「上限規定」と称する。
芳香族ポリイソシアネート化合物の使用量が前述の上限規定を満足する場合には、過剰のイソシアネート基が副反応を起こすことを抑制できる。これにより、所望物性の蓄熱材用ポリウレタンが得られ易くなる傾向がある。使用量が前述の下限規定を満足する場合には、蓄熱材用ポリウレタンの分子量がより高くなり、強度、熱安定性をより向上させることができる。
鎖延長剤の使用量については特に限定されないが、プレポリマーに含まれるイソシアネート基の数1当量に対して、使用量の下限は、好ましくは0.1当量、より好ましくは0.5当量、さらに好ましくは0.8当量である。使用量の上限は、好ましくは5.0当量、より好ましくは3.0当量、さらに好ましくは2.0当量である。
前述のような鎖延長反応を行う際には、分子量を調整する目的で、一官能性の有機アミン類やアルコール類を共存させてもよい。
また、二段法(b法)における末端が水酸基であるプレポリマーを製造する際の芳香族ポリイソシアネート化合物の使用量は、特に限定はされないが、ポリアルキレンエーテルグリコールの水酸基とそれ以外のポリオールの水酸基との総数を1当量とした場合のイソシアネート基の数の下限が好ましくは0.1当量、より好ましくは0.5当量、さらに好ましくは0.7当量となるように調整することができる。また、芳香族ポリイソシアネート化合物の使用量は、ポリアルキレンエーテルグリコールの水酸基とそれ以外のポリオールの水酸基との総数を1当量とした場合のイソシアネート基の数の上限が好ましくは0.99当量、より好ましくは0.98当量、さらに好ましくは0.97当量となるように調整することができる。
芳香族ポリイソシアネート化合物の使用量が前記下限以上である場合には、鎖延長反応で所望の分子量を得るまでの反応時間を短縮することができ、生産効率が向上する傾向にある。芳香族ポリイソシアネート化合物の使用量が前記上限以下である場合には、粘度が高くなりすぎることを防止できる。これにより、ポリウレタンの柔軟性が向上したり、取扱いが良好になって生産性が向上する傾向にある。
鎖延長剤の使用量については、特に限定されないが、プレポリマーに使用したポリアルキレンエーテルグリコールの水酸基とそれ以外のポリオールの水酸基との総数を1当量とした場合、プレポリマーに使用したイソシアネート基の当量を加えた総当量として、使用量は、好ましくは0.7当量以上、より好ましくは0.8当量以上、さらに好ましくは0.9当量以上である。一方、鎖延長剤の使用量は、好ましくは1.0当量未満、より好ましくは0.99当量以下、さらに好ましくは0.98当量以下である。
前記鎖延長反応を行う際に、分子量を調整する目的で、一官能性の有機アミン類やアルコール類を共存させてもよい。
鎖延長反応は、通常、例えば0℃~250℃で行われるが、この温度は溶剤の量、使用原料の反応性、反応設備等により異なり、特に制限されない。温度が低すぎると反応の進行が遅くなったり、原料や重合物の溶解性が低い為に製造時間が長くなることがあり、また高すぎると副反応や得られるポリウレタンの分解が起こることがある。鎖延長反応は、減圧下で脱泡しながら行ってもよい。
また、鎖延長反応には必要に応じて、触媒や安定剤等を添加することもできる。
触媒としては例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸、スルホン酸等の化合物が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。安定剤としては、例えば、2,6-ジブチル-4-メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネート、N,N’-ジ-2-ナフチル-1,4-フェニレンジアミン、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト等の化合物が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。尚、鎖延長剤が短鎖脂肪族アミン等の反応性の高いものの場合は、触媒を添加せずに鎖延長反応を実施してもよい。
また、亜リン酸トリス(2-エチルヘキシル)等の反応抑制剤を用いることもできる。以上のようにして、蓄熱材用ポリウレタンを製造することができる。
前記蓄熱材用ポリウレタンは、ポリウレタンエラストマー(換言すれば、蓄熱材用ポリウレタンエラストマー)であることが好ましい。この場合には、伸縮性に優れた蓄熱成形体を得ることが可能になる。また、このような蓄熱成形体は、加熱、冷熱による形状保持性も良好である。
また、ポリウレタンエラストマーは、熱可塑性であることが好ましい。つまり、蓄熱材用ポリウレタンは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーであることが好ましい。この場合には、成形性が向上する。
[蓄熱材用ポリウレタンの用途]
蓄熱材用ポリウレタンは、蓄熱性、耐熱性、成形性、形状保持性等に優れることから、蓄熱材料として好適に用いられる。
[蓄熱材用ポリウレタン組成物]
蓄熱材用ポリウレタン組成物は、例えば、蓄熱材用ポリウレタンと、その他の成分とを含有する。その他の成分としては、添加剤、蓄熱材用ポリウレタン以外の樹脂(以下、適宜、「他の樹脂」という)が挙げられる。具体的には、蓄熱材用ポリウレタンには、効果を損なわない範囲で、各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、フィラーなどの充填剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、架橋剤、架橋助剤、金属不活性化剤、分子量調整剤、防菌剤、防黴材、蛍光増白剤、有機拡散剤や無機拡散剤等の光拡散剤等が挙げられる。
また、蓄熱材用ポリウレタンには、効果を損なわない範囲で、他の樹脂をブレンドすることができる。他の樹脂としては、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、芳香族系ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ABS、PMMA、PET等が挙げられる。例えば、形状保持性を向上できるという観点に基づいて、他の樹脂をブレンドすることができる。
[蓄熱材用ポリウレタン組成物の製造方法]
蓄熱材用ポリウレタン組成物は、例えば、該組成物を構成する前述の各成分を機械的に溶融混練する方法によって製造される。溶融混練機としては、例えば単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダー、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、ロールミル等を用いることができる。混練に際しては、各成分を一括して混練してもよいし、また、多段分割混練法と呼ばれる方法にしたがって、任意の成分を混練した後、他の残りの成分を添加して混練してもよい。中でも真空ベントを備えた二軸押出機を用いて、各成分を連続的に押出機に投入し、連続的にポリウレタン組成物を取得する方法が生産性や品質均一性の観点で好ましい。
[蓄熱材料]
蓄熱材料は、前記蓄熱材用ポリウレタンを含有する限り、特段の限定はされないが、蓄熱材用ポリウレタン組成物であることが好ましい。
[蓄熱成形体]
蓄熱成形体は、蓄熱材料から構成されており、例えば蓄熱材料を成形して得られる。具体的には、蓄熱材料をシート状、板状、粒状、ペレット状、管状等の各種の形状に成形して製造される。成形の際には、一般の成形法が用いられ、具体的には、押出成形、射出成形(具体的には、インサート成形法、二色成形法、サンドイッチ成形法、ガスインジェクション成形法等)、ブロー成形、真空成形、圧空成形、プレス成形等が用いられる。より具体的には、蓄熱材料の製造時に各成分が混合され溶融状態となったものを、そのままで(例えば、溶融状態の温度のままで)、あるいは若干冷却して型に流し込み所望のシート状、板状とする方法が挙げられる。また、蓄熱材料は、例えばその流動開始温度より低い温度で固化するので、ブロック状に成形した後、切断してシート状や板状としてもよい。更に、フィルム、布、繊維、パーティクルボード等の上に蓄熱材料を付着、塗布、或いは含浸させてシート状、板状としてもよい。また、ポリエチレン等の袋に蓄熱材料をパック詰めにして冷却過程でシート状、板状、棒状とすることもできる。また、押出機を用いてシート状、板状に押出成形してもよい。押出機により棒状、パイプ状に成形したものを裁断して粒状、ペレット状とすることもできる。それぞれの成形方法において、装置および加工条件は特に限定されない。
蓄熱成形体の形状には特に制限はなく、シート、フィルム、板状、粒子状、塊状体、繊維、棒状、多孔体、発泡体等が挙げられ、好ましくはシート、フィルム、板状である。また、成形されたフィルムは一軸あるいは二軸延伸することも可能である。延伸法としては、ロール法、テンター法、チューブラー法等が挙げられる。さらに、通常工業的に利用される、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理を施すこともできる。
前記蓄熱成形体は、示差走査熱量測定(つまり、DSC)により観測される吸熱ピーク温度が10℃以上30℃以下であることが好ましい。吸熱ピーク温度の下限は12℃がより好ましく、14℃がさらに好ましい。また、上限は、28℃がより好ましく、26℃がさらに好ましい。吸熱ピーク温度が前記範囲内であることにより、加熱、冷熱における成形体の形状保持性が向上する。
吸熱ピーク温度の測定は、示差走査熱量計を用いて行われる。具体的は、次のようにして行われる。まず、窒素雰囲気下での加熱により、試料約5mgを封入したアルミパンを、25℃から200℃まで昇温速度10℃/minで昇温させる。次いで、降温速度10℃/minで-100℃まで冷却させる。その後、再度昇温速度10℃/minで200℃まで昇温させる。2回目の昇温で得られたDSCデータ(つまり、DSC曲線)より、吸熱ピーク温度を決定することができる。具体的には、10℃~30℃の範囲にある吸熱曲線の極大点を求め、この極大点での温度を吸熱ピーク温度とする。
前記蓄熱成形体は、示差走査熱量測定により-50℃以上50℃以下で観測される融解エンタルピーが10J/g以上であることが好ましく、12J/g以上であることがより好ましく、14J/g以上であることがさらに好ましい。また、融解エンタルピーの上限は特に限定されないが、70J/g以下が好ましい。蓄熱成形体の融解エンタルピーが前記範囲内であることにより、加熱、冷熱における成形体の形状保持性が向上する。
前記融解エンタルピーとは、示差走査熱量測定により測定される融解曲線の、-50℃以上50℃以下の温度範囲内の部分での融解熱のことであり、例えば下記方法により得られる。
該融解エンタルピーの測定は、前記吸熱ピーク温度と同様に示差走査熱量計を用いて測定される。具体的な測定も、吸熱ピーク温度と同様にして行われる。そして、2回目の昇温で得られるDSCデータ(つまり、DSC曲線)を測定曲線とする。測定曲線における-50℃における測定点と、50℃における測定点とを直線で結ぶ。該直線よりも吸熱側にある部分の総量(総量は、直線とDSC曲線とで囲まれる領域の面積で表される)を融解エンタルピーとする。尚、-50℃から50℃までの間の測定曲線においてピークを有さない場合、融解エンタルピーは0とみなす。
押出成形によって成形体を得る場合には、成形体は、例えば次のようにして製造される。まず、蓄熱材料が十分に溶融する温度に達した押出機に、蓄熱材を投入し、溶融させながら混練する。各種形状の口金から溶融混練物を吐出させ、その後、空冷または水冷によって吐出物を冷却させることにより、所望の成形体を得る。押出機としては、単軸押出機と二軸押出機のどちらを用いても良いが、分散性の観点から、二軸押出機を用いることが好ましい。
射出成形によって成形体を得る場合には、蓄熱材料が十分に溶融する温度に達した押出機に蓄熱材料を投入し、各種形状の金型に射出することにより、所望の成形体を得る。この際の成形温度についても、押出成形の場合と同様の範囲が好ましい。
また、発泡ポリウレタンエラストマー、又はポリウレタンフォームから蓄熱成形体を形成させることができる。具体的には、蓄熱材料は、発泡ポリウレタンエラストマーであっても、ポリウレタンフォームであってもよい。発泡方法としては、例えば、水などを用いた化学発泡やメカニカルフロスなどの機械発泡のいずれでもよい。また、硬質フォームは、例えば、スプレー発泡、スラブ成形、注入成形、モールド成形で得られるし、軟質フォームは、例えば、スラブ成形、モールド成形で得られる。
[蓄熱成形体の用途]
蓄熱成形体の用途は、特に限定されないが、蓄熱成形体は、蓄熱性能、耐熱性、成形性、形状保持性に優れるため、例えば、保温・保冷性能が直接的または間接的に要求される製品またはその部材として好適に用いられる。
保温・保冷性能が直接的または間接的に要求される製品またはその部材としては、例えば、建築材料、家具、インテリア用品、寝具、浴室材料、車輌、空調設備、電化製品、保温容器、食品包装フィルム、衣類、日用品、農業資材、発酵システム、熱電変換システム、熱搬送媒体が挙げられる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例では、蓄熱材用ポリウレタンとして、蓄熱材用ポリウレタンエラストマーを製造する。
〔評価方法〕
以下の実施例及び比較例で得られた蓄熱材用ポリウレタンエラストマー、それを含む蓄熱材料及び蓄熱成形体の評価方法は下記の通りである。
[ポリアルキレンエーテルグリコールの評価]
<水酸基価・数平均分子量>
JIS K1557-1:2007に準拠して、アセチル化試薬を用いた方法にてポリアルキレンエーテルグリコールの水酸基価を測定した。
また、水酸基価から、下記式(II)により数平均分子量(Mn)を求めた。
数平均分子量=2×56.1/(水酸基価×10-3) …(II)
[蓄熱材用ポリウレタンエラストマーの評価]
<重量平均分子量>
蓄熱材用ポリウレタンエラストマーをジメチルアセトアミドに溶解し、濃度が0.14重量%のジメチルアセトアミド溶液とした。GPC装置〔東ソー社製、製品名「HLC-8220」(カラム:TskgelGMH-XL・2本)〕を用いて、該ジメチルアセトアミド溶液を注入し、標準ポリスチレン換算で、ポリウレタンエラストマーの重量平均分子量(Mw)を測定した。
<構造単位(C)の数平均分子量>
蓄熱材用ポリウレタンエラストマーをCDCl3に溶解し、400MHz
1H-NMR(日本電子株式会社製AL-400)を測定し、各成分のシグナル位置より、ポリアルキレンエーテルグリコールに由来する構造単位(C)の数平均分子量を求めることができる。
<ポリアルキレンエーテルグリコール/芳香族イソシアネート比>
蓄熱材用ポリウレタンエラストマーをCDCl3に溶解し、400MHz 1H-NMR(日本電子株式会社製AL-400)を測定した。各成分のシグナル位置より、ポリアルキレンエーテルグリコール/芳香族イソシアネート比を求めることができる。
[蓄熱成形体の評価]
<吸熱ピーク温度>
窒素雰囲気下での加熱により、試料約5mgを封入したアルミパンを、25℃から200℃まで昇温速度10℃/minで昇温させた。次いで、降温速度10℃/minで-100℃まで冷却させた。その後、再度昇温速度10℃/minで200℃まで昇温させた。2回目の昇温で得られたDSCデータ(つまり、DSC曲線)より、吸熱ピーク温度を決定した。具体的には、10℃~30℃の範囲にある吸熱曲線の極大点を求め、この極大点での温度を吸熱ピーク温度とした。
<融解エンタルピー>
前記吸熱ピーク温度測定と同様の方法により、DSCデータ(つまり、DSC曲線)を得た。このDSCデータを測定曲線とした。測定曲線における-50℃における測定点と、50℃における測定点とを直線で結んだ。この直線よりも吸熱側にある部分の総量を融解エンタルピーとした。なお、総量は、直線とDSC曲線とで囲まれる領域の面積で表される。また、-50℃から50℃までの間の測定曲線においてピークを有さない場合、融解エンタルピーは0とみなした。図1~図5に、実施例1~5のDSC曲線をそれぞれ示す。
〔蓄熱材用ポリウレタンエラストマー及び蓄熱成形体の製造と評価〕
[実施例1]
<蓄熱材用ポリウレタンエラストマーの製造>
予め80℃に加熱した300mLのSUSタイプの攪拌機を具備した反応器に、60℃に加熱した水酸基価基準の分子量が3000の市販のポリアルキレンエーテルグリコールである三菱ケミカル(株)製ポリテトラメチレンエーテルグリコールであるPTMG3000:90.0gと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「MDI」と称する):24.8gおよび、ウレタン化反応への抑制剤として亜リン酸トリス(2-エチルヘキシル):0.86gを仕込んだ。次いで反応器に蓋をして減圧条件下(10torr以下)、2000rpmで撹拌混合しながら60分程度反応した。反応後、発熱が収まってから反応器へ1,4-ブタンジオール:9.2gを徐々に添加し、2分間撹拌した後に反応器の蓋を外した。ガラス板の上にフッ素樹脂シート(フッ素テープ ニトフロン900、厚さ0.1mm、日東電工株式会社製)を張り付け、さらにその上にシリコン製の型(寸法:10cm×10cm、厚さ2mm)を設置した。反応液をこのシリコン製の型へ注入し、下側にフッ素樹脂シートを張り付けたガラス板によりシリコン製の型上部を覆った。次いで型上部のガラス板の上に重りを載せ、乾燥器内に挿入した。該乾燥器内で窒素雰囲気下、加熱(110℃×1時間)することにより硬化した。一晩放置後、該シリコン型から取り出し、蓄熱材用ポリウレタンエラストマー(寸法10cm×10cm、厚さ2mm)を得た。
<圧縮成形>
予め190℃に加熱しておいた加熱プレス機(東洋精機製作所製、製品名「ミニテストプレス」)のプレートの上にフッ素樹脂シート、圧縮成形用の金型の順に設置した。圧縮成形用の金型は4cm×4cm×厚さ2mmのものを用いた。金型に前記蓄熱材用ポリウレタンエラストマーを入れ、その上からフッ素樹脂シートで覆った。加熱プレス機のプレートを用いてポリウレタンエラストマーを加圧した(圧力:0.5MPa×温度:180℃×時間:4分間)。その後加熱プレス機の圧力設定を徐々に上げ、最大で13MPaで4分間加熱し成形した。その後、加熱プレス機の圧力を下げてポリウレタンエラストマー成形品を取り外し、予め冷却水を流して冷やしておいた冷却用プレス機(東洋精機製作所製、製品名「ミニテストプレス」)に設置して急冷(圧力10MPa×時間2分)することでシート状の蓄熱成形体を得た。該蓄熱成形体の物性の評価結果を表1に示す。
[実施例2~5、比較例1,2]
用いる原料を表1に記載の種類及び量に変更する以外は実施例1と同様にして蓄熱材用ポリウレタンエラストマーを得た。尚、表1中、PTMG1000とは水酸基価基準の分子量が1000の市販のポリアルキレンエーテルグリコールである三菱ケミカル(株)製ポリテトラメチレンエーテルグリコールである。PTMG2000とは水酸基価基準の分子量が2000の市販のポリアルキレンエーテルグリコールである三菱ケミカル(株)製ポリテトラメチレンエーテルグリコールである。PTMG4000とは水酸基価基準の分子量が4000の市販のポリアルキレンエーテルグリコールである三菱ケミカル(株)製ポリテトラメチレンエーテルグリコールである。
実施例2,3、比較例1,2においては実施例1と同様にしてシート状の蓄熱成形体とした。実施例4においては、冷却用プレス機にて急冷後、80℃で12時間熱処理を行った以外は実施例1と同様にしてシート状の蓄熱成形体とした。実施例5においては、冷却用プレス機にて急冷後、100℃で12時間熱処理を行った以外は実施例1と同様にしてシート状の蓄熱成形体とした。該蓄熱成形体の物性の評価結果を表1に示す。
Figure 2022011733000002
表1から解るように、特定の構造単位を有する実施例1~5の蓄熱材用ポリウレタン及びその蓄熱成形体は、蓄熱性、耐熱性に優れており、当然、形状保持性に優れていることは明らかである。これに対し、特定の構造単位を含有していない比較例1、2では、蓄熱性が不十分であった。特に、熱処理を施すことなく高い蓄熱性を示した実施例1~3は、製造時の工数削減およびエネルギー削減に寄与するため、非常にエコロジーな材料であると考えられる。

Claims (11)

  1. 複数のイソシアネート基を有する芳香族系化合物に由来する構造単位(A)と、ポリオール及び/又はポリアミンに由来する構造単位(B)と、ポリアルキレンエーテルグリコールに由来する構造単位(C)と、を含む蓄熱材用ポリウレタンであって、
    前記構造単位(C)の数平均分子量が2300以上5000以下の範囲内であり、
    前記構造単位(A)に対する、前記構造単位(C)の含有比率が15モル%以上80モル%以下である、蓄熱材用ポリウレタン。
  2. 前記構造単位(A)及び前記構造単位(B)の総量が、前記蓄熱材用ポリウレタンに対し、10質量%以上40質量%以下である、請求項1に記載の蓄熱材用ポリウレタン。
  3. 前記ポリアルキレンエーテルグリコールが、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを含む、請求項1又は2に記載の蓄熱材用ポリウレタン。
  4. 前記芳香族系化合物が、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートよりなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄熱材用ポリウレタン。
  5. 前記構造単位(B)が、少なくともポリオールに由来し、該ポリオールが、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールよりなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄熱材用ポリウレタン。
  6. 前記蓄熱材用ポリウレタンがポリウレタンエラストマーである、請求項1~5のいずれか1項に記載の蓄熱材用ポリウレタン。
  7. 前記ポリウレタンエラストマーが熱可塑性である、請求項6に記載の蓄熱材用ポリウレタン。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の蓄熱材用ポリウレタンを含む蓄熱材料。
  9. 請求項8に記載の蓄熱材料から構成された蓄熱成形体。
  10. 示差走査熱量測定により観測される吸熱ピーク温度が10℃以上30℃以下である、請求項9に記載の蓄熱成形体。
  11. 示差走査熱量測定により-50℃以上50℃以下で観測される融解エンタルピーが10J/g以上である、請求項9又は10に記載の蓄熱成形体。
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