以下、種々の実施形態に基づいて本発明を説明するが、実施形態の一つとして晶析工程を有するアクリル酸の製造プロセスを採用する場合、各工程の装置仕様および運転条件は、たとえば特開2001−199931号公報、特開2004−359615号公報または特開2005-15478号公報などに記載のものを用いることができる。
本発明を、特開2005-15478号公報に記載された方法に準拠した晶析工程を有するアクリル酸製造プロセスに適用する場合の実施態様の一つを図1に示すフローシート等に基づいて以下説明する。
まず、空気3などの分子状酸素含有ガス、プロピレンおよび/またはアクロレインなどのアクリル酸原料1、および希釈ガス5とを混合する。アクリル酸捕集工程を経た後は、アクリル酸捕集塔30の塔頂から排出されるリサイクルガス34も、この混合工程において、空気、プロピレンおよび/またはアクロレインならびに希釈ガスに混合することができる(工程b1)。
この混合ガス(以下、原料ガスとも称する。)を、接触気相酸化触媒10を充填した反応器20に供給し、接触気相酸化反応によってアクリル酸含有ガス25を得る(工程A)。
このガス25をアクリル酸捕集塔30の塔底に供給し、この捕集塔30の塔頂から捕集用水溶液33を供給してアクリル酸含有ガス25と捕集用水溶液33とを接触させる(工程B)。
この捕集塔30には、後述する蒸留塔70からの留出液71および、同じく後述する晶折装置50からの残留母液が供給されている。
捕集塔30の塔頂からの排出ガス32の内、リサイクルガス34のみを冷却塔36に導入して、新たに系内に供給するための捕集用水33’と気液接触してガス34を冷却し、リサイクルガス34に含まれる凝縮性物質を凝縮した後に反応器20に循環する。この凝縮液は、捕集用水33’と混合されて捕集用水溶液33として捕集塔30に供給してもよい。
なお、本実施形態では、捕集塔30の塔頂からの排出ガス32のうち、反応器に循環させる排出ガスを「リサイクルガス」と、系外に排出されるガスを「廃ガス」と定義する。このように、蒸留塔留出液71を循環させ、かつリサイクルガス34を冷却することで、捕集塔30の塔底より高濃度にアクリル酸を含有するアクリル酸含有溶液35が得られる。
本実施形態では前記捕集塔30の塔底液35の抜き出しライン上に近赤外分光分析計(図示せず)を設けオンラインで前記塔底液35中の不純物濃度、例えば水分濃度、酢酸濃度あるいは主成分のアクリル酸自体の濃度を分析し、この分析結果を指標として前記塔底液中の分析対象成分が安定して所望の値を維持できる様に捕集塔30の塔頂温度を調整する。この構成により分析結果を見て迅速に前記捕集塔30の運転条件の調整に反映させることができるため、前記捕集塔30の長期運転を安定して継続させることができ前記捕集塔30内における重合物の発生も防止できる。
アクリル酸含有溶液35はアクロレイン分離塔31に供給し、含まれるアクロレインを分離処理し、塔底からアクロレイン量を低減させたアクリル酸含有溶液35’を得る。なお、分離塔31の塔頂留出液は、捕集塔30の塔底に循環させると、アクロレインと共に留出したアクリル酸を有効に回収することができる。
次いで、前記アクリル酸含有溶液35’を晶析装置50に供給すると製品アクリル酸60が得られる。一方、晶析装置50からの残留母液の少なくとも一部を蒸留塔70の中段に供給し、前記残留母液中に含まれる低沸点物質およびアクリル酸を塔頂から留出させ、この留出液71を前記捕集塔30に循環させる。残りの残留母液は直接捕集塔30に循環させる(工程c1)。
また、蒸留塔70の塔底液に含まれる高沸点物質にはアクリル酸二量体が含まれているため、これを薄膜蒸発器73を経て熱分解槽75に滞留させてアクリル酸に熱分解する。このアクリル酸を薄膜蒸発器73に戻すと蒸留塔70の塔頂から留出して留出液71となり、これを捕集塔30に循環させると最終的に製品アクリル酸60としての回収が可能となる。
上記のように水溶液捕集して得たアクリル酸含有溶液35をそのまま、またはアクロレイン分離処理によってアクロレインを除去した後に晶析処理する本実施態様においては、前記アクリル酸含有溶液35(または35’)から製品アクリル酸60を安定して収率よく回収するためにアクリル酸含有溶液35(または35’)中の不純物濃度、例えば水分濃度を出来る限り一定に保つことが好ましい。
このためには前記近赤外分光分析計を用いたオンライン分析によりアクリル酸含有溶液中の水分濃度を分析し、この分析結果を指標として前記アクリル酸含有溶液中の水分量を安定して所望の値に維持できる様にアクリル酸捕集塔30の塔頂温度あるいは中段温度を調整すればよい。
更に好ましくは、前記近赤外分光分析計を用いたオンライン分析で得られる分析値を制御コンピュータに転送して制御情報を得、この制御情報により上記捕集塔30の運転条件を自動制御すれば良い。具体的にはアクリル酸捕集塔30の塔底液抜き出しライン上に設置した近赤外分光分析計を用いたオンライン分析によりアクリル酸含有溶液中の水分濃度を分析し、この分析で得られる水分濃度値を制御コンピュータに転送して制御情報を得、この制御情報により捕集塔30の塔頂温度あるいは中段温度を制御しながら捕集塔30の自動制御を行う。捕集塔30の場合、制御する運転条件として上記塔頂温度などの他、捕集用水溶液33の量を制御しても良い。
アクリル酸含有溶液中の水分濃度が安定しない場合には、捕集塔30の塔内に目的物とは異なる重合物が発生し、装置の安定稼動が困難になるとともに、晶析操作によりアクリル酸を収率よく回収することが困難になる。
なお、アクリル酸捕集塔30は、常圧以上で操作するのが一般的である。本実施形態では、塔頂圧力(ゲージ圧)としては、0〜0.4MPa、好ましくは0〜0.1MPa、特には0〜0.03MPaが好ましい。0MPa(ゲージ圧)より低いと減圧装置が必要となり設備費やランニングコストがかかる一方、0.4MPa(ゲージ圧)より高いと塔頂から低沸点物質を排出させるために捕集塔30の運転温度をかなり上げる必要が生じ、捕集効率が低下する場合がある。
また、塔頂温度としては、一般には30〜85℃、特には40〜80℃であることが好ましい。本実施形態では、このような捕集条件によって、アクリル酸:80〜98質量%、水:1〜19質量%、およびその他の不純物(酢酸、マレイン酸、プロピオン酸などの酸類およびフルフラール、アクロレイン、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類など):1〜10質量%のアクリル酸含有溶液35(または35’)が得られる。
本実施形態の晶析装置50で使用される結晶化法には特に制限はなく、連続式または回分式のいずれでもよく、1段または2段以上で実施することが可能である。連続式晶析装置としては例えば、結晶化部、固液分離部、結晶精製部が一体となった塔型のBMC(Backmixing Column Crystallizer)型晶析器(新日鉄化学社:日本)や、結晶化部として例えばCDC(Cooling Disk Crystallizer)晶析装置(GOUDA社:オランダ)などと、固液分離部として例えば遠心分離器またはベルトフィルターなどと、結晶精製部として例えばKCP(Kureha Crystal Purifier)精製装置(呉羽テクノエンジ社:日本)などを適宜組み合わせた晶析装置を使用することができる。
回分式晶析装置を用いる方法としては、例えば Sulzer Chemtech 社:スイスの層結晶化装置(動的結晶化装置)、BEFSPROKEM社:フランスの静的結晶化装置などを使用することができる。回分式においては、必要となる結晶化段数の数は、どの程度の純度が要求されるかに依存する。本実施形態においては、高い純度のアクリル酸を製造するために、精製工程(動的結晶化工程)は1〜6回、好ましくは2〜5回、さらに好ましくは2〜4回、ストリッピング工程(動的結晶化工程および/または静的晶析化工程)は0〜5回、好ましくは0〜3回行うことが好ましい。取り出された残さは、一部を系外に取り出してもよい。
晶析装置50からの残留母液には高濃度のアクリル酸のほか、酢酸、水などの低沸点物質、アクリル酸二量体や重合防止剤などの高沸点物質が含まれている。本実施形態では、これら残留母液を有効利用するためにこの残留母液の少なくとも一部を蒸留塔70に供給し、塔底から高沸点物質を、塔頂から低沸点物質およびアクリル酸を留出させる。このような目的で使用される蒸留塔70は、充填塔、棚段塔(トレイ塔)等を用いることができる。
また、蒸留条件は、水や酢酸などの低沸点物質およびアクリル酸を留出させる条件で蒸留するが、導入する残留母液のアクリル酸濃度や水濃度、酢酸濃度などによって適宜選択することができる。一般には、塔頂圧力(絶対圧)は10〜400hPa、好ましくは15〜300hPa、特には20〜200hPaとすることが好ましい。10hPa(絶対圧)より低いと、塔、コンデンサ、真空装置が大型化し設備費がかかり不利である。一方、400hPa(絶対圧)より高いと蒸留塔70内の温度が高くなり重合の危険性が増すため不利である。
また、塔頂温度は、一般には30〜70℃、特には40〜60℃である。一方、塔底温度は、一般には50〜140℃、特には60〜120℃である。このような蒸留条件によって、酢酸の濃度が残留母液の酢酸濃度よりも高い留出液71を得ることができる。なお、この留出液71は捕集塔30に循環させる。
蒸留時にはアクリル酸などの重合性物質の重合を防止するために、還流液に重合防止剤を添加することができる。
本発明の各工程においては、メトキノン、酢酸マンガン、ニトロソフェノール、クペロン、N−オキシル化合物、ジブチルチオカルバミン酸銅、フェノチアジン、またはハイドロキノンなどの公知の重合防止剤を使用することができる。各重合防止剤の添加方法は特に限定されない。たとえば、固体または粉体等の形で直接添加してもよいし、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、水、有機溶剤、適当な溶剤に溶解した形で添加してもよい。また、重合防止剤は、各工程の原料液、環流液、捕集液などのプロセス液に溶解してもよい。
蒸留塔70の塔底液には、アクリル酸二量体が含まれており、これを分解することによりアクリル酸を回収することができる。ここで、アクリル酸二量体分解方法は、アクリル酸二量体などを分解し、アクリル酸として回収するものであれば特に限定されない。例えばアクリル酸二量体分解とアクリル酸の留出とを同時に行うものであってもよく(特公昭61−35977号公報、特公昭61−36501号公報など参照)、好ましくは、熱分解槽と段塔を併設した薄膜蒸発器を備えたアクリル酸回収塔を用いたものが挙げられる(特開平11−12222号公報など参照)。
上記アクリル酸二量体分解装置は、蒸留塔70とは別に新たに用いることができるが、好ましくは、薄膜蒸発器を備えた蒸留塔70に熱分解槽を併設した形態で実施することができる。
すなわち、蒸留塔70の塔底液(薄膜蒸発器73の缶出液)を熱分解槽75に導入して含まれるアクリル酸二量体を分解する。前記分解槽75では、アクリル酸二量体を120〜220℃の範囲の温度で分解し、滞留時間(熱分解槽溶量/廃油量)は熱分解温度によって変わるが、通常0.1〜60時間とすることが好ましい。アクリル酸二量体がアクリル酸に分解された後、これを薄膜蒸発器73に循環することで蒸留塔70の塔頂よりアクリル酸を回収することができる。
また、蒸留塔70とは別に、新たに熱分解槽と段塔を併設した薄膜蒸発器を備えたアクリル酸回収塔を用いる場合には、アクリル酸回収塔の塔頂部より得られる回収アクリル酸は、蒸留塔70および/または捕集塔30に循環することができる。
次に、アクリル酸を捕集した後、蒸留工程を施すことで高濃度のアクリル酸含有溶液を得、これを結晶化工程に供してさらに高純度のアクリル酸を得る製造プロセスを採用する場合について説明する。各工程の装置仕様および運転条件は、たとえば特開2004−359615号、特開2001−199931号などの公報に記載の方法を用いることができる。かかる実施形態のアクリル酸製造プロセスを、図2に示すフローシート等に基づいて以下説明する。
上述の工程B)で得られたアクリル酸含有溶液35または35’を第一蒸留塔40の中段に供給し、塔底から高沸点物質を、塔頂から低沸点物質を排出させた後、塔底流および/ または塔側流として実質的に水を含まない粗製アクリル酸41を得る(工程c2)。
第一蒸留塔40は、粗製アクリル酸41を回収できれば特に限定はされないが、充填塔、棚段塔(トレイ塔)等を用いることができる。
本実施形態では、特に塔底流および/ または塔側流として粗製アクリル酸41を得る。この場合、水や酢酸などの低沸点物質を分離する条件で蒸留すればよいが、導入するアクリル酸含有溶液のアクリル酸濃度や、目的とする粗アクリル酸の純度などによって適宜選択することができる。一般には、塔頂圧力(絶対圧)は20〜400hPa、好ましくは30〜300hPa、特には30〜200hPaとすることが好ましい。20hPa(絶対圧)より低いと、塔、コンデンサ、真空装置が大型化し設備費がかかり不利である。
一方、400hPa(絶対圧)より高いと蒸留塔40内の温度が高くなり重合の危険性が増すため不利である。また、塔頂温度は、一般には30〜70℃、特には40〜60℃である。一方、塔底温度は、一般には70〜120℃、特には80〜110℃である。このような蒸留条件によって、実質的に水を含まず、酢酸の含有量が0〜1.0質量%の粗アクリル酸が、蒸留塔の塔底流および/または塔側流として得られる。
この粗製アクリル酸41を晶析装置50に供給すると製品アクリル酸60が得られる。なお、第一蒸留塔40の塔底液43に含まれる高沸点物質にはアクリル酸二量体が含まれるため、これを塔底に薄膜蒸発器73を併設した第二蒸留塔72に供給してアクリル酸二量体を濃縮し、次いでこの二量体を熱分解槽75に滞留させてアクリル酸に熱分解する。このアクリル酸は第二蒸留塔72を介して第一蒸留塔40に循環させ、製品として回収することができる。
上記と同様に本実施態様においても、前記アクリル酸含有溶液から製品アクリル酸を安定して収率よく回収するためにアクリル酸含有溶液中の不純物濃度、例えば水分濃度を出来る限り一定に保つことが好ましい。
このためには前記近赤外分光分析計(図示せず)を用いたオンライン分析によりアクリル酸含有溶液中の水分濃度を分析し、この分析結果を指標として前記アクリル酸含有溶液中の水分量を安定して所望の値に維持できる様にアクリル酸捕集塔30の塔頂温度あるいは中段温度を調整しても良い。
更に好ましくは、上記と同様に、前記近赤外分光分析計(図示せず)を用いたオンライン分析で得られる分析値を制御コンピュータに転送して制御情報を得、この制御情報により上記捕集塔30の運転条件を自動制御することが好ましい。たとえば捕集塔30の場合、制御する運転条件として上記塔頂温度などの他、捕集用水溶液の量を制御しても良い。
アクリル酸含有液中の水分濃度が安定しない場合には、捕集塔30や第一蒸留塔40の塔内に目的物とは異なる重合物が発生し、装置の安定稼動が困難になるとともに、晶析操作によりアクリル酸を収率よく回収することが困難になる。
次に、共沸分離工程を有するアクリル酸の製造プロセスについて説明する。各工程の装置仕様および運転条件は、たとえば特開平5−246941号公報に記載の方法を用いることができる。かかる共沸分離工程を有するアクリル酸製造プロセスに適用する場合の代表的な実施形態を、図3に示すフローシート等に基づいて以下説明する。
プロピレン等を分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化して得た混合ガスをライン701からアクリル酸捕集塔101に導き、ライン702から導かれる水と接触させてライン704からアクリル酸および酢酸等の副生物を含むアクリル酸水溶液を得る。ライン702からアクリル酸捕集塔101に供給する水としては、ライン713から水を供給して用いてもよいが、後述する様に溶剤回収塔103の塔底から排出する酢酸水溶液を用いるのが好適である。
図3のフローシートの場合、アクリル酸捕集塔101の塔底からライン704を経て排出するアクリル酸水溶液をそのまま共沸分離塔102に供給する。しかし、必要であればアクロレイン放散塔(図示せず)を設置して、ライン704からのアクリル酸水溶液をアクロレイン放散塔に供給し、アクリル酸水溶液中に溶解しているアクロレインを放散させ、その後アクリル酸水溶液を共沸分離塔102に供給してもよい。この場合、放散したアクロレインを回収して接触気相酸化反応系に循環するのがよい。
共沸分離塔102では、アクリル酸水溶液をライン704から、共沸溶剤をライン705から夫々供給して共沸蒸留し、塔頂から共沸溶剤、酢酸および水を留出させ、塔底からアクリル酸を得る。
本実施形態で共沸分離工程を採用する場合、共沸分離塔102中のアクリル酸水溶液の組成は、ライン702からアクリル酸捕集塔101に供給する水の量やその他の運転条件で異なるが、通常行われているアクリル酸合成の生産条件の下では、アクリル酸50〜80質量%、酢酸2〜5質量%、残部水の範囲内のものが一般的である。
また、共沸分離塔において用いる共沸溶剤は少なくとも水と共沸するものであれば採用可能である。水および酢酸と共沸する共沸溶剤、前記難水溶性の溶剤などを用いても良いが、以下に示す溶剤Aと溶剤Bとの混合溶剤を採用すると、水と共に酢酸も分離できるので好ましい。
ここで溶剤Aは、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−tert−ブチルケトン、酢酸n−プロピル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ビニル、酢酸アリル、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸ビニルおよびクロトン酸メチルの中から選ばれた一種または二種以上の溶剤を挙げることができる。
また、溶剤Bとしては、トルエン、ヘプタン、1−ヘプテン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロヘプタトリエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、メチルシクロヘキセンおよびメチルシクロヘキサンの中から選ばれた一種または二種以上の溶剤を挙げることができる。
この特定の共沸溶剤を用いることによって、共沸分離塔102の塔頂から実質的に酢酸、水、共沸溶剤からなる混合物を留出させ、塔底から実質的に酢酸、水、共沸溶剤を含まないアクリル酸を得ることができる(工程c3)。
ライン705から供給される共沸溶剤の溶剤Aと溶剤Bとの混合比率は質量比で50:50〜75:25の範囲内が好適である。溶剤Aが多過ぎると塔底での酢酸濃度が高くなり、溶剤Bが多過ぎると、塔頂から留出するアクリル酸が増えてくると共に前記共沸分離塔内で液が油相および水相に分離して、アクリル酸の重合性が高くなるので好ましくない。
本実施形態ではアクリル酸捕集塔101の塔底液抜き出しライン上に近赤外分光分析計(図示せず)を設けオンラインで前記塔底液中の水分濃度を分析し、この分析結果を指標として共沸分離塔102の全留出液重量に対する水の割合が所望の割合となる様に前記共沸分離塔102の還流液量を調整する。これにより分析結果を見て迅速に前記共沸分離塔102の運転条件の調整に反映させることができるため、前記共沸分離塔102の長期運転を安定して継続させることができ前記共沸分離塔102内における重合物の発生も防止できる。
好ましくは、アクリル酸捕集塔101の塔底液抜き出しライン上に設置した近赤外分光分析計を用いたオンライン分析によりアクリル酸含有液中の水分濃度を分析し、この分析で得られる水分濃度値を制御コンピュータに転送して制御情報を得、この制御情報により上記共沸分離塔102の還流液量を制御しながら共沸分離塔102の自動制御を行う。
共沸分離塔102の塔頂から留出した実質的に酢酸、水、共沸溶剤からなる混合物は貯槽90に受け、ここで主として共沸溶剤からなる有機相と、主として酢酸および水からなる水相とに分離する。有機相はライン705を経て共沸分離塔102に循環する。一方、水相はライン708を経て溶剤回収塔103に導いて蒸留し、溶剤回収塔103の塔頂から共沸溶剤を留出させライン709を経て貯槽90に戻し、溶剤回収塔103の塔底からはライン714を経て実質的に酢酸および水からなる酢酸水溶液を抜き出し系外に排出する。また、この酢酸水溶液はライン710からアクリル酸捕集塔101に循環させて接触気相酸化して得た混合ガスに接触させる水として用いることによって有効に活用することもできる。
こうすることにより、単に酢酸水溶液を回収・循環しているだけでなく、接触気相酸化して得た混合ガスに接触させる水として酢酸水溶液を用いる方が、ライン713からの水のみを用いるよりもアクリル酸の捕集効率が高くなるので、アクリル酸捕集塔101の必要段数が少なくてすむ利点が得られる。これは酢酸水溶液中の酢酸がアクリル酸に対して良好な親和性を示す為であると理解される。
なお、系内を循環させるうちに酢酸濃度が高まり過ぎない様にライン713からの水の供給量、ライン714からの酢酸水溶液の抜き出し量を制御して全体のバランスを保つことが望まれるため、上記と同様にして、近赤外分光分析計で酢酸濃度を分析し、水の供給量や酢酸水溶液の抜き出し量を制御しても良い。
共沸分離塔102の塔底から抜き出したアクリル酸はライン715を経てエステル化工程に送り、そのままアクリル酸エステルの製造原料として用いることができる。また、高純度のアクリル酸製品を得るには、ライン707を経て高沸分離塔104に導いて蒸留してもよく、塔底からライン712を経て重合物などの高沸点物を抜き出し、塔頂からはライン711を経てアクリル酸製品を得ることができる。
次に、上記実施形態とは異なる共沸脱水工程を有するアクリル酸の製造プロセスについて説明する。各工程の装置仕様および運転条件は、たとえば特開2001−247510号公報に記載の方法を用いることができる。かかる共沸脱水工程を有するアクリル酸製造プロセスに適用する場合の代表的な実施形態を、図4に示すフローシートに基づいて以下説明する。
本実施形態においては、前述の工程B)で用いる捕集用溶剤が水である場合、工程B)で得られるアクリル酸含有水溶液をアクリル酸含有水溶液供給口201から共沸脱水塔202に導き、この共沸脱水塔202に水および酢酸と共沸する共沸溶剤を添加して蒸留し、かつこの共沸脱水塔202の塔頂にある共沸脱水塔塔頂ガスライン203に付属するコンデンサー209により凝縮しアクリル酸濃度を0.06〜0.80質量%に調整することによって、前記共沸脱水塔202の塔底液として共沸溶剤および水を実質的に含まないアクリル酸を得る(工程c4)。
なお、図4中の、204は環流液、205は油水分離槽、206は水槽、208は酢酸分離塔、209はコンデンサー、213はリボイラーである。
本実施形態では、たとえば図1に示したものと同様の反応器、アクリル酸捕集塔、アクロレイン放散塔(図示せず)等を用い、プロピレンを分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化して得た混合ガスをアクリル酸捕集塔に導いて水と接触させて得た水溶液をアクロレイン放散塔に導いてアクロレインを放散させ、水、酢酸を含むアクリル酸水溶液を得た。
本実施形態では、たとえば、アクリル酸捕集塔の塔底液抜き出しライン上に近赤外分光分析計を設け、オンラインで前記塔底液中の水分濃度を分析し、この分析結果を指標として図4に示す共沸脱水塔202の全留出液質量に対する水の割合が所望の割合となる様に前記共沸脱水塔202の還流液量を調整する。これにより分析結果を見て迅速に前記共沸脱水塔202の運転条件の調整に反映させることができるため、前記共沸脱水塔202の長期運転を安定して継続させることができ前記共沸脱水塔内202における重合物の発生も防止できる。
好ましくは、アクリル酸捕集塔の塔底液抜き出しライン上に設置した前記近赤外分光分析計を用いたオンライン分析によりアクリル酸含有液中の水分濃度を分析し、この分析で得られる水分濃度値を制御コンピュータに転送して制御情報を得、この制御情報により上記共沸脱水塔202の還流液量を制御しながら共沸脱水塔202の自動制御を行う。
また、さらに別の実施形態において、共沸分離工程を有するアクリル酸の製造プロセスについて説明する。各工程の装置仕様および運転条件は、たとえば特開平09−157213号公報に記載の方法を用いることができる。かかる共沸分離工程を有するアクリル酸製造プロセスに適用する場合の代表的な実施形態を、図5に示すフローシートに基づいて以下説明する。
本実施形態においては、前述の工程B)と同様の装置構成において用いられる捕集用溶剤がアクリル酸0.5〜5.0質量%、酢酸3.0〜10.0質量%および難水溶性の溶剤0.01〜0.5質量%を含有する捕集液(残部水)である場合、前述の工程B)と同様に、アクリル酸捕集塔101で得られるアクリル酸含有溶液を共沸分離塔102に導いて難水溶性の溶剤を用いて蒸留し、前記共沸分離塔102の塔底から実質的に酢酸、水および前記難水溶性の溶剤を含まないアクリル酸を得、一方、前記共沸分離塔102の塔頂から酢酸、アクリル酸、水および前記難水溶性の溶剤からなる混合物を留出させ、留出したこの混合物を貯槽90において実質的に溶剤のみからなる有機相と、アクリル酸、酢酸、難水溶性の溶剤および水からなる水相とに分離し、前記有機相は前記共沸分離塔102へと循環させる(工程c5)。
ここで、難水溶性の溶剤とは、常温における水への溶解度が0.5重量%以下のもの、好ましくは、0.2重量%以下のものであり、具体的には、炭素数(単に「C」と略すこともある)7〜8の脂肪族炭化水素、C7〜8の芳香族炭化水素およびC2〜6のハロゲン化炭化水素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶剤である。更に詳しくは、C7〜8の脂肪族炭化水素としては、ヘプタン、ヘプテン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロヘプタトリエン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロペンタン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられる。C7〜8の芳香族炭化水素としては、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等が挙げられる。C2〜C6のハロゲン化炭化水素としては、テトラクロロエチレン、トリクロロプロペン、ジクロロブタン、クロロペンタン、クロロヘキサン、クロロベンゼン等が挙げられる。該難水溶性の溶剤は、好ましくはヘプタン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶剤であり、より好ましくはヘプタン、トルエン、エチルベンゼンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。
上記のようにすることで、捕集して得られるアクリル酸水溶液を、共沸分離塔102に導くことにより、塔底より粗製のアクリル酸製品を得ることが可能になり好ましい。
本実施形態では、図5に示すアクリル酸捕集塔101の塔底液抜き出しライン上に近赤外分光分析計(図示せず)を設け、オンラインで前記塔底液中の水分濃度を分析し、この分析結果を指標として共沸分離塔102の全留出液重量に対する水の割合が所望の割合となる様に前記共沸分離塔102の還流液量を調整する。これにより分析結果を見て迅速に前記共沸分離塔102の運転条件の調整に反映させることができるため、前記共沸分離塔102の長期運転を安定して継続させることができ前記共沸脱水塔内における重合物の発生も防止できる。
好ましくは、アクリル酸捕集塔101の塔底液抜き出しライン上に設置した前記近赤外分光分析計を用いたオンライン分析によりアクリル酸含有液中の水分濃度を分析し、この分析で得られる水分濃度値を制御コンピュータに転送して制御情報を得、この制御情報により上記共沸分離塔102の還流液量を制御しながら共沸分離塔102の自動制御を行う。
別の実施形態においては、また、不純物を効率よく除去する工程を有するアクリル酸の製造プロセスについて説明する。各工程の装置仕様および運転条件は、たとえば特開2001−181232号公報に記載の方法を用いることができる。かかる不純物除去工程を有するアクリル酸製造プロセスに適用する場合の代表的な実施形態を以下に説明する。
本実施形態は、不純物としてフルフラールおよびアクロレインを含有する粗製アクリル酸を効率よく精製するものであって、前記粗製アクリル酸中に含まれるフルフラールおよびアクロレインの各々の含有量は、特に制限されないが、フルフラールとアクロレインの総量が5000ppm以下であるのが好ましく、1000ppm以下であるのがさらに好ましい。
本実施形態においては、上述の工程B)で得られるアクリル酸含有溶液に蒸留工程を施して塔底流および/または塔側流より抜き出す形で、実質的に捕集用溶剤を含まず、かつ、不純物としてフルフラールおよびアクロレインを含有する粗製アクリル酸を得、この粗製アクリル酸にアルデヒド処理剤を添加した後、蒸留を行う際に、前記粗製アクリル酸に
含まれるフルフラールとアクロレインとの質量濃度比を、
(フルフラール質量濃度/アクロレイン質量濃度)≦100
となるように調整する(工程c6)。
前記粗製アクリル酸に含まれるフルフラールとアクロレインとを前記の質量濃度比に調整する方法としては、具体的には、プロピレンまたはアクロレインの気相酸化法によって製造された粗製アクリル酸中のフルフラールおよびアクロレインの各質量濃度を測定し、前記の質量濃度比になるようにフルフラールまたはアクロレインをさらに添加して調整する方法か、あるいは、粗製アクリル酸製造プロセスにおける各工程、例えば、酸化反応工程、軽沸分物分離工程、溶剤回収工程、高沸分物分離工程等での操作条件により、フルフラールまたはアクロレインの質量濃度を調整する方法等があるが、好ましくは、後述の方法、すなわち粗製アクリル酸製造プロセスにおける各工程の操作条件等により調整する方法がよい。
この方法として、粗製アクリル酸製造プロセスにおいてフルフラールとアクロレインとの質量濃度比を調整する場合、フルフラールとアクロレインの両成分を増減させて調整することもできるし、どちらか一方の成分のみを増減させて調整することもできるのであるが、好ましくはアクロレインの増減で調整を行う方がよい。なぜなら、アクロレインはアクリル酸生成反応の原料成分であり、しかも、アクロレインはアクリル酸と沸点が離れているので各工程の操作条件で増減させやすいからである。より具体的には、酸化反応工程においてアクロレインの質量濃度を調整するには、例えば、反応器の反応温度を低くする(または高くする)ことにより原料アクロレインからアクリル酸への転化率を下げ(または上げ)、未反応の原料アクロレインが増加(または減少)するようにすればよい。軽沸分カット工程および溶剤回収工程においてアクロレインの質量濃度を調整するには、例えば、軽沸分離塔や溶剤回収塔の運転蒸留温度を低くする(または高くする)ことにより、系外へのアクロレインの流出を抑制し(または促進し)、粗アクリル酸中のアクロレイン濃度を高く(または低く)するようにすればよい。高沸分カット工程においてアクロレインの質量濃度を調整するには、高沸分離塔の塔頂成分にはフルフラールよりもアクロレインが多く含まれる傾向があるのに対し、中段成分にはアクロレインよりもフルフラールが多く含まれる傾向があることを考慮して、例えば、高沸分離塔での粗アクリル酸の抜き出し位置を調整するか、あるいは塔頂成分と中段成分とをブレンドして所望の質量濃度比となるように調整すればよい。
本実施形態において、アルデヒド処理剤としては、例えば、ヒドラジン化合物、アミン類等が挙げられ、これらの中でも特に、ヒドラジン化合物がフルフラールの除去に有効であるため好ましい。ヒドラジン化合物としては、具体的には、例えば、ヒドラジンヒドラート、フェニルヒドラジン、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン等が挙げられる。なお、アルデヒド処理剤は、通常、液体として添加されるが、粉体等の固体で添加されてもよい。
本実施形態において、アルデヒド処理剤の添加量は、前記粗製アクリル酸に含まれるフルフラール1モルに対して8.0モル以下とすることが好ましく、さらに好ましくは6.0モル以下、最も好ましくは4.0モル以下とするのがよい。粗製アクリル酸に含まれるフルフラール1モルに対して8.0モルを越える量のアルデヒド処理剤を添加すると、蒸留の際に重合物の生成を十分に抑制しきれず、蒸留塔内にポリマーが付着する等の問題を生じることがある。
前記アルデヒド処理剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、例えば、前記粗製アクリル酸に直接添加する方法や、適当な溶媒に溶解して添加する方法等が採用される。また、添加の際の温度も、適宜設定すればよく、制限されるものではない。
アルデヒド処理剤の添加時期については、例えば粗製アクリル酸の製造直後に添加しておいてもよいが、好ましくは、蒸留を行う直前に添加するのがよい。具体的には、蒸留装置へ供給される粗製アクリル酸中に溶解させて供給することの方が、工業的にはより一般的である。
本実施形態において、蒸留の方法としては蒸留塔などの蒸留装置を用いて連続式で行うのが好ましい。蒸留の際の条件については、特に制限されるものではないが、たとえば、滞留時間が0.5〜20時間、蒸留温度が50〜100℃となるように設定してもよい。
本実施形態では、前記蒸留装置の原料液である粗製アクリル酸の供給ライン上に近赤外分光分析計を設け、この分析計を用いてオンラインで前記粗製アクリル酸中のフルフラールを分析し、この分析結果を指標としてフルフラールと、フルフラール除去に有効なヒドラジン化合物との比率が所望の割合となる様に、前記ヒドラジン化合物の添加量を調整する。
これにより分析結果を見て迅速に前記ヒドラジン化合物の添加条件の調整に反映させることができるため、前記蒸留装置の長期運転を安定して継続させることができ、前記蒸留装置内における重合物の発生も防止できる。
好ましくは、前記蒸留装置の原料液である粗製アクリル酸の供給ライン上に設置した前記近赤外分光分析計を用いたオンライン分析により、前記粗製アクリル酸中のフルフラール濃度を分析し、この分析で得られる濃度値を制御コンピュータに転送して制御情報を得、この制御情報により前記ヒドラジン化合物の添加量の自動制御を行う。
さらに別の実施形態において、リサイクルガスを反応器に循環する工程を有するアクリル酸の製造プロセスについて説明する。各工程の装置仕様および運転条件は、たとえば特開2004−359611号公報に記載の方法を用いることができる。かかる循環工程を有するアクリル酸製造プロセスに適用する場合の代表的な実施形態を、図1に示すフローシートに基づいて以下説明する。
本実施形態においては、上述の工程B)にあって、前記捕集塔30から排出するガス32の少なくとも一部をリサイクルガス34として反応器20に循環し、かつ前記排出ガス32の残部を廃ガスとして系外に廃棄する工程を含み、前記リサイクルガス34に含まれる凝縮性物質の濃度が、前記廃ガスに含まれる凝縮性物質の濃度よりも低いことが好ましい(工程b1)。
本実施形態では、リサイクルガス34を冷却して凝縮性物質を凝縮した後に、反応器20に導入してもよく、このようなリサイクルガス34を使用する場合には、反応器20に供給する原料ガス中の水分濃度が0〜10体積%、より好ましくは0〜7体積%、特には0〜6体積%となるように予めリサイクルガス34中の水分を除去する。リサイクルガス34を使用せず、分子状酸素含有ガスの水分を除去する場合は、反応器20に供給する原料ガスの水分濃度が0〜5体積%、より好ましくは0〜3体積%、特に好ましくは0〜1体積%となるようにする。10体積%を超えると反応器20を経て捕集塔30に供給される水分によって、アクリル酸ロス率が増加する場合がある。
また、全酸濃度は、0〜0.2体積%、より好ましくは0〜0.1体積%とする。全酸濃度が0.2体積%を超えると触媒の酸化による劣化を促進する場合がある。
リサイクルガス34には、水分や酸成分のほかに、未反応のプロピレンやアクロレイン、酸素、希釈ガス等も含まれている。原料ガス中の水分濃度や全酸濃度が上記至適範囲になるようにリサイクルガス34に含まれる水分量及び原料ガスへの配合量を算出し、リ
サイクルガス34に含まれるプロピレン濃度および酸素濃度を算出し、新たに反応器20に供給するプロピレン濃度と空気量とを決定すれば、上記プロピレン、酸素、水分濃
度、全酸濃度を容易に調整することができる。なお、「全酸」とは、カルボキシル基を有する化合物であり、リサイクルガス中には、アクリル酸、ギ酸、酢酸等が含まれる。
上記と同様に本実施態様においては、前記アクリル酸含有溶液から製品アクリル酸を安定して収率よく回収するためにアクリル酸含有液中の不純物濃度、例えば水分濃度を出来る限り一定に保つことが好ましい。
このためには前記近赤外分光分析計(図示せず)を用いたオンライン分析によりアクリル酸含有液中の水分濃度を分析し、この分析結果を指標として前記アクリル酸含有液中の水分量を安定して所望の値に維持できる様にアクリル酸捕集塔30の塔頂温度あるいは中段温度を調整しても良い。
更に好ましくは、上記と同様に、前記近赤外分光分析計(図示せず)を用いたオンライン分析で得られる分析値を制御コンピュータに転送して制御情報を得、この制御情報により上記捕集塔の運転条件を自動制御することが好ましい。たとえばアクリル酸捕集塔の場合、制御する運転条件として上記塔頂温度などの他、捕集用水の量を制御しても良い。
アクリル酸含有液中の水濃度が安定しない場合には、捕集塔30の塔内に目的物とは異なる重合物が発生し装置の安定稼動が困難になるとともに、晶析操作によりアクリル酸を収率よく回収することが困難になる。
また、別の実施形態において、蒸留工程を有するアクリル酸の製造プロセスについて説明する。各工程の装置仕様および運転条件は、たとえば特開2004−359614号公報に記載の方法を用いることができる。かかる蒸留工程を有するアクリル酸製造プロセスに適用する場合の代表的な実施形態を、図2に示すフローシートに基づいて以下説明する。
本実施形態においては、上述の工程B)で得られたガス25を、塔頂以外、すなわち中段に低沸点物質含有溶液31を供給するアクリル酸捕集塔30の塔底に供給し、前記捕集塔30の塔頂からは捕集用水溶液33を供給してアクリル酸含有ガス25と捕集用水溶液33とを接触させる。ここで「塔頂以外」とは塔頂を理論段数1とし、塔底を理論段数100とした場合に、理論段数2〜100段の範囲をいう。
低沸点物質含有溶液には、後記する第一蒸留塔40の塔頂留出液45の全量または一部を使用することができる。なお、捕集塔30の塔底液であるアクリル酸含有溶液35は、冷却器37で冷却したのち捕集塔30に循環させてもよい。これによって高濃度にアクリル酸を含有するアクリル酸含有溶液35が得られる。次いで、前記アクリル酸含有溶液35を第一蒸留塔40に供給し、含まれる水などの低沸点物質を除去した後、粗製アクリル酸41を得る。この粗製アクリル酸41を晶析器50に供給すると製品アクリル酸60が得られる。なお、第一蒸留塔40の塔底液43に含まれる高沸点物質にはアクリル酸二量体が含まれるため、これを塔底に薄膜蒸発器73を併設した第二蒸留塔70に供給してアクリル酸二量体を濃縮し、次いでこの二量体を熱分解槽75に滞留させてアクリル酸に熱分解する。
このアクリル酸を薄膜蒸発器73に戻し、更に第二蒸留塔70を介して第一蒸留塔40および/または捕集塔30に循環させ、製品として回収することができる。前記空気が水分を含んでいる場合には、反応器20に供給する前に予め除湿することが好ましい。反応器に導入する水分量、ひいては捕集塔に導入される水分量を低減させることができるからである。
本実施形態では、前記アクリル酸含有ガス25を捕集用水溶液33と接触させてアクリル酸を捕集する際に、低沸点物質含有溶液31を捕集塔30の中段に供給しつつアクリル酸を捕集することを特徴とする。アクリル酸は、塔頂から降る捕集用水溶液33に吸収されるが、この際に捕集塔30の塔頂以外の箇所から水以外の低沸点物質、例えば酢酸を導入すると、アクリル酸捕集率が向上するからである。
その原理については明確ではないが、捕集塔30のいずれかから酢酸を投入すると酢酸供給位置近傍に占める酢酸ガスの層が増加し、親和性、圧力関係の変化が起こり、酢酸層の上部により低沸点物質ガス層が、下部により高沸点物質ガス層が形成されるように捕集塔内のガス分布が変化し、塔底側にアクリル酸が移行するためと考えられる。特に、塔頂から数えて理論段数2以上、より好ましくは塔頂から数えて{捕集塔全理論段数×0.25}段以上、特には{捕集塔全理論段数×0.5}段以上の位置から酢酸含有溶液を導入することが好ましい。塔頂ではもはや酢酸ガス層の増加によるアクリル酸捕集効率の向上効果が少なく、むしろアクリル酸捕集効率が低下する。
この効果は、酢酸に限定されず、水以外の低沸点物質であればよく、特に沸点が標準状態で141℃以下、好ましくは60〜141℃、特に好ましくは100.5〜141℃の化合物を使用した場合にも同様に観察される。本実施形態において、アクリル酸捕集塔30に、塔頂以外から導入する低沸点物質としては、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、アクロレインなどがある。なお、これらの化合物は、アクリル酸製造工程において、他の低沸点物質と同様に、捕集塔30の塔頂や第一蒸留塔40の塔頂から系外に除去することができる
「塔頂以外」とは塔頂を理論段数1とし、塔底を理論段数100とした場合に、理論段数2〜100段の範囲をいう。
本実施形態においては、上述の工程B)にあって、アクリル酸含有溶液35を第一蒸留塔40に供給し、含まれる水などの低沸点物質を除去した後、粗製アクリル酸41を得る。この粗製アクリル酸41を晶析器50に供給すると製品アクリル酸60が得られる。なお、第一蒸留塔40の塔底液43に含まれる高沸点物質にはアクリル酸二量体が含まれるため、これを塔底に薄膜蒸発器73を併設した第二蒸留塔70に供給してアクリル酸二量体を濃縮し、次いでこの二量体を熱分解槽75に滞留させてアクリル酸に熱分解する。
このアクリル酸を薄膜蒸発器73に戻し、更に第二蒸留塔70を介して第一蒸留塔40および/または捕集塔30に循環させ、製品として回収することができる。
上記と同様に本実施態様においては、前記アクリル酸含有溶液から製品アクリル酸を安定して収率よく回収するためにアクリル酸含有液中の不純物濃度、例えば水分濃度を出来る限り一定に保つことが好ましい。
このためには前記近赤外分光分析計(図示せず)を用いたオンライン分析によりアクリル酸含有液中の水分濃度を分析し、この分析結果を指標として前記アクリル酸含有液中の水分量を安定して所望の値に維持できる様にアクリル酸捕集塔30の塔頂温度あるいは中段温度を調整しても良い。
また、捕集塔30に導入される第一蒸留塔40の塔頂留出液45中の水分、酢酸、アクリル酸の濃度を分析し、捕集塔30の運転条件を調製しても良い。
更に好ましくは、上記と同様に、前記近赤外分光分析計(図示せず)を用いたオンライン分析で得られる分析値を制御コンピュータに転送して制御情報を得、この制御情報により上記捕集塔の運転条件を自動制御することが好ましい。たとえばアクリル酸捕集塔の場合、制御する運転条件として上記塔頂温度などの他、捕集用水の量を制御しても良い。
アクリル酸含有液中の水濃度が安定しない場合には、捕集塔30の塔内に目的物とは異なる重合物が発生し装置の安定稼動が困難になるとともに、晶析操作によりアクリル酸を収率よく回収することが困難になる。
一方、本実施形態において、(メタ)アクリル酸エステルの製造プロセスを採用する場合、各工程の装置仕様および運転条件は、たとえば特開昭58−192851号公報(特許第1436805号)、特開平2−279654号公報(特許第2068361号)、特開平2−279655号公報(特許第2128623号)などに記載のものを用いることができる。
さらに別の実施形態として、エステル化反応触媒として強酸性陽イオン交換樹脂を用いて、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜4の脂肪族アルコールあるいは脂環式アルコールとから(メタ)アクリル酸エステルを製造するプロセスについて説明する。各工程の装置仕様および運転条件は、たとえば特開平02−279655号公報に記載の方法を用いることができる。かかるアクリル酸製造プロセスに適用する場合の代表的な実施形態を、図6に示すフローシートに基づいて以下説明する。
エステル化反応器301では、(メタ)アクリル酸と、炭素数1〜4の脂肪族アルコール(メタノール、エタノールなど)とを、強酸性陽イオン交換樹脂(図示せず)の存在下にエステル化反応に供して(メタ)アクリル酸エステルを得る。エステル化反応器301で得られる(メタ)アクリル酸エステルを含有した混合物は、アクリル酸分離塔302に導入され、ここで未反応の(メタ)アクリル酸を塔底より分離してエステル化反応器301に循環すると共に、残りの生成(メタ)アクリル酸エステル、未反応アルコール、水などを含む混合物を塔頂から回収する。
この混合物を油水分離し、油相分は軽沸物分離塔303に導入し、ここで塔頂より生成(メタ)アクリル酸エステルの一部、未反応アルコール、水などを留出させ、塔底から残りの粗製(メタ)アクリル酸エステルを回収する。
軽沸物分離塔303の塔頂より留出した未反応アルコールを含む混合物は、回収アルコールとしてライン813によりエステル化反応器301に付属した蒸留塔に導入される。
次に、上記粗製(メタ)アクリル酸エステルを精留塔304に供給して、塔頂から製品(メタ)アクリル酸エステルを回収する。
なお、エステル化反応器301に付属した蒸留塔においては、塔頂からの留出物を蒸留塔に付属する油水分離器306によりエステル化反応の生成水と有機相とに分離する。この有機相は環流液として蒸留塔に循環される。また、酸分離塔302の塔底液の一部を高沸物分離塔305に導入し、塔頂よりアクリル酸等を回収すると共に、塔底より高沸点不純物を廃油として抜き出す。
このような(メタ)アクリル酸エステルの製造において、本実施形態では軽沸物分離塔303の塔頂液から得られる液をエステル化反応器301に循環させるライン813上に近赤外分光分析計(図示せず)を設け、オンラインで、前記塔頂液中の(メタ)アクリル酸、アルコールなどの濃度を分析し、この分析結果を指標としてエステル化反応工程の(メタ)アクリル酸とアルコールのモル比が所望の割合となる様に前記塔頂液の循環量を調整する。これにより、分析結果を見て迅速にエステル化反応工程の運転条件の調製に反映させることができるため、エステル化反応器への供給液の組成が実質的に一定になり、エステル化反応の転化率を、長期間安定して継続させることができ、このエステル化反応における不純物の発生量の増加を防止することもできる。
また、エステル化反応器301からエステル化反応生成物を抜き出すライン上に前記近赤外分光分析計を設けてオンラインで前記エステル化反応生成物中のエステル、(メタ)アクリル酸、アルコールなどの濃度を分析し、この分析結果を指標としてエステル化反応の転化率が所定の値になる様に、温度、圧力等の反応条件を調製する。
エステル化反応器を長期に稼働した場合、強酸性陽イオン交換樹脂の劣化によりエステル化反応の転化率が低下し、前記エステル化反応生成物中の(メタ)アクリル酸濃度が増加する可能性があり、従来より反応時間の経過とともに反応温度を上昇させる必要があったが、上記の様に、オンラインで分析することで、この(メタ)アクリル酸濃度の変化を防止し、従来よりも反応温度の上昇を緩やかにすることができるため、長期に安定した(メタ)アクリル酸エステルの製造が可能になる。
本実施形態の方法により、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜4の低級脂肪族アルコールまたは脂環式アルコールとを反応させて、対応するエステル類を製造するにあたっては、エステル化反応器としては固定床、流動床のいずれを用いても良く、たとえば図6に示すような流動床型の反応器を用いても良い。
また、上記実施形態とは異なる(メタ)アクリル酸エステルの製造プロセスについて説明する。各工程の装置仕様および運転条件は、たとえば特開昭58−192851などの方法を用いて(メタ)アクリル酸エステルの製造プロセスに適用する場合の実施態様の一つを図7に示すフローシート等に基づいて以下説明する。
原料の一つである(メタ)アクリル酸は、ライン901を経て、強酸性陽イオン交換樹脂を充填したエステル化反応器301に供給する。炭素数6〜10の高級アルコールは、ライン902を経て、蒸留塔200に供給して蒸留し、塔頂からライン903を経て、受器300に導入する。
またエステル化反応器301から遊離するアルコールや反応生成水は、ライン904を経て、蒸留塔200にて蒸留した後、塔頂からライン903を経て、受器300に導入する。受器300では、水相と、アルコールを主成分とする有機相とに分離させる。そして、有機相の一部は、ライン905を経て、エステル化反応器301に供給し、有機相の残部は、ライン906を経て、廃油として廃油処理工程に送る。他方、水相は、ライン907を経て、プロセス廃水槽400に貯留させ、ライン908を経て廃水としてアルコール回収工程または廃水処理工程に送る。
生成エステル、未反応(メタ)アクリル酸、未反応アルコールおよび生成水を含むエステル化反応生成物は、反応器301からライン909を経て、軽沸分離塔303に供給して蒸留する。軽沸分離塔303の塔底液は、実質的に全量の(メタ)アクリル酸エステルを含んでおり、ライン910を経て、精製塔600に供給する。軽沸分離塔303の塔頂液は、未反応(メタ)アクリル酸、未反応アルコールおよび生成水を含んでおり、ライン911を経て排出され、その一部は、循環液として、ライン912を経て、エステル化反応器301に循環させ、残部は、ライン913を経て、軽沸分離塔303に還流液として循環させる。他方、水相は、図示していないラインを経て、廃水としてアルコール回収工程または廃水処理工程に送る。
精製塔600に供給した(メタ)アクリル酸エステルは、精留した後、精製塔600の塔預からライン914を経て排出し、その一部はライン915を経て製品とされ、残部はライン916を経て精製塔600に循環させる。精製塔600の塔底液は、少量の(メタ)アクリル酸エステルと共に、マレイン酸やβ−アクリロキシプロピオン酸などの高沸点酸分を含む高沸物であり、図示していないラインを経て高沸分離工程に送り(メタ)アクリル酸エステルを回収する。回収された(メタ)アクリル酸エステルは反応器301、軽沸分離塔303、精製塔600のいずれかに循環することができる。
このような(メタ)アクリル酸エステルの製造において、本発明では軽沸分離塔303の塔頂液から得られる有機相をエステル化反応器301に循環させるライン912上に近赤外分光分析計(図示せず)を設けオンラインで前記塔底液中の(メタ)アクリル酸、アルコールなどの濃度を分析し、この分析結果を指標としてエステル化反応工程の(メタ)アクリル酸とアルコールのモル比が所望の割合となる様に前記有機相の循環量を調整する。
これにより分析結果を見て迅速にエステル化反応工程の運転条件の調整に反映させることができるため、このエステル化反応の転化率を長期間安定して継続させることができ、前記エステル化反応における不純物の発生量の増加を防止することもできる。
また、エステル化反応器301からエステル化反応生成物を抜き出すライン909上に近赤外分光分析計(図示せず)を設けオンラインで前記エステル化反応生成物中のエステル、(メタ)アクリル酸、アルコールなどの濃度を分析し、この分析結果を指標としてエステル化反応の転化率が所定の値になる様に温度、圧力等の反応条件を調整する。
エステル化反応器を長期に稼動した場合、強酸性陽イオン交換樹脂の劣化によりエステル化反応の転化率が低下しこのエステル化反応生成物中の(メタ)アクリル酸濃度が増加する可能性があるが、上記の様にオンラインで分析して前記(メタ)アクリル酸濃度の変化を防止することができ、長期に安定した(メタ)アクリル酸エステルの製造が可能になる。
本実施形態の方法により(メタ)アクリル酸と炭素数6〜10の高級アルコールとを反応させて、対応するエステル類を製造するにあたっては、エステル化反応器301としては固定床、流動床のいずれを用いても良い。エステル化反応器301として固定床を用いる場合、反応器から抜き出されるエステル化反応生成物を蒸留塔200に導入し、塔頂よりアルコールが主成分の有機相と、エステル化反応生成水が主成分の水相を得る。
前記水相には実質的に(メタ)アクリル酸は含有されずほぼ完全に分離回収されるため前記水相をそのまま廃棄処理しても(メタ)アクリル酸のロスは極めて小さい。前記蒸留塔の塔底より得られるエステルを主成分とする液はその後、軽沸分離塔303、精製塔600に順次導入され、精製塔600の塔頂より製品エステルを得ることができる。
一方、図7の様にエステル化反応器301として流動床を用いる場合、エステル化反応生成水を分離する蒸留塔200は直接エステル化反応器301に繋がれる。反応器で加熱、気化されたエステル化反応生成水を主成分とする蒸気に蒸留塔200においてアルコールを接触還流せしめることにより前記蒸気に同伴する(メタ)アクリル酸を蒸留塔200の塔底側に分離し、反応器の抜き出しライン909よりエステル化反応生成物中に前記(メタ)アクリル酸を回収することができる。
これまで説明した各実施形態においては、近赤外分光分析計として多変量解析装置を装備したフーリエ変換近赤外分光分析装置が好ましく、分析に際しては事前に用意した予備サンプルの分析により得られた近赤外吸収スペクトルを2次微分処理したものを使用して検量線を作成し、この検量線を用いて前記工程液をオンラインで組成分析することが推奨される。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
<多変量解析手法>
実施例1〜8の各実施例においてオンラインでの近赤外分光分析計を用いる際、以下の前操作を施した後、オンライン分析を行った。
乱数表を用いて各成分濃度を無作為に決定して調合したサンプルを複数作成し、このサンプルを近赤外分光分析計(メーカー;横河電機株式会社、型番;NR−800)を用いてオフラインで分析した。この分析データを多変量解析ソフトウエアを用いて計算処理することにより各成分濃度を予測する検量線を作成するが、多変量解析手法による検量線作成方法については、例えばCAMO社の多変量解析ソフトウエア(Unscrambler)を用いて、部分最小二乗法(Partial Least Square)により、吸光度スペクトルデータから対象成分濃度の予測検量線を作成し、この作成した検量線情報を用いてオンラインによる近赤外分光分析を実施した。
[実施例1]
図1に示す装置を使用して特開2005-15478号公報に記載された方法に準拠し、アクリル酸を製造した。
熱媒循環用ジャケットを外周に備え、内部に内径25mm、長さ7,000mmの反応管を収納し、ジャケット下部から3,500mmの位置に熱媒ジャケットを上下に2分割する厚さ75mmの穴あき管板を設けた反応器20を使用した。反応器20の下部(第一反応ゾーン)および上部(第二反応ゾーン)はそれぞれ熱媒を循環させて温度を制御し、反応管下部から上部に向かって(1)平均径5mmのセラミックボール、(2)触媒(I)と平均径5mmのセラミックボールとを容量比70:30の割合で混合した混合物、(3)触媒(I)、(4)外径5mm、内径4.5mm、長さ6mmのステンレス製ラシヒリング、(5)触媒(II)と平均径5mmのセラミックボールとを容量比75:25の割合で混合した混合物、(6)触媒(II)の順に、各層長が250mm、700mm、2,300mm、500mm、600mm、1,900mmになるように充填した。
前記反応器20の第一反応ゾーンに、プロピレン、空気(水分濃度2質量%)、および捕集塔からの排出ガスの一部(リサイクルガス)を循環させ、プロピレン:8.0体積%、O2:14.4体積%、H2O:2.0体積%(残りはN2、プロパン、COx、アクリル酸、酢酸等)、第一反応ゾーンの空間速度が1,250hr−1(STP)となるように各流量およびリサイクルガスの冷却温度を調整し供給した。
第二反応ゾーンの出口圧力0.15MPa(絶対圧)におけるプロピレン転化率が97±0.5モル%、アクロレイン収率が1±0.5モル%になるように、第一反応ゾーン、第二反応ゾーンそれぞれの熱媒温度を調整して、16.62質量%のアクリル酸を含むアクリル酸含有ガスを18.77kg/時で得た。
次に、得られたアクリル酸含有ガスを予冷器で200℃に冷却した後,アクリル酸捕集塔30に導きアクリル酸含有液として捕集した。
前記捕集塔30は、規則充填物を充填した充填塔で計算上の理論段が21段であり、塔底部にアクリル酸含有ガス25の供給口および塔底液の抜き出し口、塔頂部に捕集用水溶液33の導入口およびガスの排出口、塔側部(理論段第19段)に蒸留塔70からの留出液71の供給管などを備え、さらに塔頂部より排出されるガスの一部を冷却するための
冷却塔36とを備えるものである。
捕集用水33’として、捕集塔30に導入するアクリル酸含有ガス中のアクリル酸量に対して200質量ppmに相当するハイドロキノンを含む水を1.01kg/時供給した。アクリル酸捕集塔30の運転方法として、塔頂温度は66.9℃、塔頂圧力は0.11Mpa(絶対圧)、リサイクルガスの冷却温度は40.6℃、リサイクル率は29.0%で行った。
また、塔底液抜き出しライン上に設けた近赤外分光分析計(図示せず)を用いてオンラインで前記塔底液中の水分濃度を分析し、この分析結果を指標として前記塔底液中の水分が3.2±0.2質量%となる様にアクリル酸捕集塔30の塔頂温度を連続的に66〜68℃の間で調整した。分析はオンラインでしかも解析時間も短いために約1分程で分析することができ、分析結果を見て迅速に前記捕集塔の運転条件の調整に反映させることができた。なお、リサイクルガス34の冷却によって得られた凝縮液は全量、捕集塔30に循環した。
塔側部から、蒸留塔70の留出液71および晶析装置50からの残留母液とからなる循環液として、アクリル酸77.5質量%、水8.5質量%、酢酸4.8質量%、マレイン酸2.1質量%、フルフラール0.2質量%、ベンズアルデヒド0.6質量%、ホルムアルデヒド0.2質量%、アクリル酸二量体2.5質量%、その他の不純物3.6質量%の組成をもつ留出液71および残留母液とからなる循環液を1.90kg/時で供給した。
これにより、塔底部より、アクリル酸89.6質量%、水3.2質量%、酢酸1.9質量%、マレイン酸1.1質量%、フルフラール0.06質量%、ベンズアルデヒド0.2質量%、ホルムアルデヒド0.06質量%、アクリル酸二量体1.6質量%、その他の不純物2.28質量%、を含むアクリル酸水溶液を5.05kg/時で得た。
この時の捕集塔30におけるアクリル酸の吸収効率は、98.21%であった。
上記の条件にて前記捕集塔30を運転したところ3ヶ月間連続して安定稼動し、停止後の塔内点検においても重合物の発生は認められず、そのまま更なる稼動の継続が可能な状態であった。
[比較例1]
近赤外分光分析計を用いず、塔底液を1週間に3回採取し、採取したサンプル中の水分濃度をカールフィッシャー分析計を用いて分析し、この分析結果を元にアクリル酸捕集塔30の塔頂温度を1週間に3回調整した以外は実施例1と同様にしてアクリル酸の製造を行った。
この条件にて前記捕集塔を3ヶ月間連続して運転したところ、停止後の点検において塔内に重合物の発生が認められた。
[実施例2]
実施例1に示した捕集塔30より得られたアクリル酸水溶液を以下に示す晶析装置に供給し、4回の動的結晶化工程により精製した。
動的結晶化は、特公昭53−41637号公報に記載される晶析装置に準じた晶析装置50で行った。すなわち、下部に貯蔵器を備えた、長さ6m、内径70mmの金属管で、循環ポンプにより貯蔵器中の液体を管上部へ移送し、液体を管内壁面に落下皮膜(falling film)状に流すことができるようになっている。管の表面は二重のジャケットから構成され、このジャケットはサーモスタットで、ある一定の温度になるように制御されている。アクリル酸水溶液の貯蔵器への供給は5.9kg/時で行い、1回の動的結晶化は以下の手順で行った。
1.結晶化:貯蔵器に供給したアクリル酸水溶液を、循環ポンプにより管壁面に落下皮膜状に流し、ジャケットの温度を凝固点以下に降下させ、約60〜80質量%を壁面に結晶化させた。
2.発汗:循環ポンプを停止させ、ジャケットの温度を凝固点付近まで上昇させ、約2〜5質量%を発汗させた。発汗後、残留融解液をポンプで汲み出した。
3.融解:ジャケットの温度を凝固点以上に上昇させ、結晶を融解し、ポンプで汲み出した。以上の操作において、温度、および凝固点は実施されるそれぞれの工程に依存させた。
上記動的結晶操作により、99.90質量%の純度を有する高純度のアクリル酸を3.02kg/時で得た。この時、水20質量ppm、酢酸485質量ppm、マレイン酸2質量ppm、フルフラール0.1質量ppm、ベンズアルデヒド0.3質量ppm、ホルムアルデヒド0.0質量ppm、アクリル酸二量体15質量ppmであった。また、アクリル酸の精製収率は98.5%であった。
上記の条件にて前記晶析装置50を3ヶ月間連続して運転したところ、アクリル酸の精製収率が98.5±0.5%である安定した精製を行うことができた。また、上記3ヶ月間の連続運転において得られた高純度のアクリル酸中の酢酸濃度は常に500ppm以下であり安定した精製を行うことができた。
[比較例2]
比較例1により得られたアクリル酸水溶液を晶析装置50に供給した以外は実施例2と同様にしてアクリル酸の精製を行った。
この条件にて前記晶析装置を3ヶ月間連続して運転したところ、アクリル酸の精製収率は98.5±1.5%となり、ばらつきの点で実施例2に比べて劣る結果となった。また、得られた高純度のアクリル酸中の酢酸濃度は、しばしば500ppmを超える結果となった。
[実施例3]
実施例1と同様の反応器を用い、プロピレンを分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化して得た混合ガスを、図3に示すアクリル酸捕集塔101に導いて水と接触させて得た水溶液をアクロレイン放散塔(図示せず)に導いてアクロレインを放散させ、水30質量%、酢酸3.0質量%を含むアクリル酸水溶液を得た。段数60段、段間隔147mmのシーブトレーを備え、塔頂部に留出管、中央部に原料供給管、塔底部に塔底液抜き出し管を備えた共沸分離塔102を用い、共沸溶剤としてメチルイソブチルケトンとトルエンとの混合溶剤(混合質量比65:35)を用いて、特開平5−246941号公報に記載の方法に準拠して、このアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行なった。
また、上記アクリル酸捕集塔101の塔底液抜き出しライン上に設けた近赤外分光分析計(図示せず)を用いてオンラインで前記塔底液抜き出し液の水分濃度を分析し、この分析結果を指標として前記共沸分離塔102の全留出液質量に対する水の割合が14.5±0.1%となる様に前記共沸蒸留塔102の還流液量を調整した。分析はオンラインでしかも解析時間も短いために約1分程で分析することができ、分析結果を見て迅速に前記共沸蒸留塔の運転条件の調整に反映させることができた。
なお、共沸分離に際してはアクリル酸蒸発蒸気量に対して、ジブチルジチオカルバミン酸銅が30ppm、酢酸マンガンが45ppm、ハイドロキノンが150ppm、フェノチアジンが150ppmとなるようにこれらの重合防止剤を使用した。
酢酸マンガンは原料供給管より原料に溶解した形で、その他は塔頂より還流液に溶解した形で塔内に供給した。また、アクリル酸蒸発蒸気量に対して0.3体積%の分子状酸素を塔底部に供給した。なお、ここにいう蒸発蒸気量とは、蒸留塔のリボイラーから加えられた熱量に相当して、塔底から蒸発するモノマーの蒸気の総量を意味する。
定常運転時における運転状態は、共沸分離塔102の塔頂温度47℃、塔底温度98℃、塔頂圧力100mmHg、還流比(単位時間当りの還流液の全モル数/単位時間当りの留出液の全モル数)1.42、ライン704からの原料供給量7.59リットル/時であった。ライン708の水相は酢酸6.7質量%、アクリル酸0.5質量%を含み、一方共沸分離塔102の塔底からライン715を経て抜き出される液はアクリル酸97.0質量%、酢酸0.03質量%、溶剤0.001質量%、その他2.97質量%を含んでいた。
上記の条件にて前記共沸分離塔102を運転したところ3ヶ月間連続して安定稼動し、停止後の塔内点検においても重合物の発生は認められず、そのまま更なる稼動の継続が可能な状態であった。
[比較例3]
近赤外分光分析計を用いず、アクリル酸捕集塔の塔底液抜き出し液を1週間に3回採取し、採取したサンプル中の水分濃度をカールフィッシャー分析計を用いて分析し、この分析結果を元に前記共沸分離塔102の還流液量を1週間に3回調整した以外は実施例3と同様にしてアクリル酸の製造を行った。
この条件にて前記共沸分離塔102を3ヶ月間連続して運転したところ、停止後の点検において塔内に重合物の発生が認められた。
[実施例4]
実施例1と同様の反応器を用い、プロピレンを分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化して得た混合ガスをアクリル酸捕集塔に導いて水と接触させて得た水溶液をアクロレイン放散塔に導いてアクロレインを放散させ、水30質量%、酢酸3.0質量%を含むアクリル酸水溶液を得た。
次いで、前記捕集塔塔底液を、図4に示すシーブトレイ40段を有する共沸脱水塔202の上から18段目に10kg/hで供給した。また、前記共沸脱水塔202にはこれに連続する酢酸分離塔208からの塔頂液(アクリル酸含有凝縮液)の一部を1.6kg/hで同じ18段目の前記塔頂液供給口201から供給した。
また、上記アクリル酸捕集塔の塔底液抜き出しライン上に設けた近赤外分光分析計(図示せず)を用いてオンラインで前記塔底液抜き出し液の水分濃度を分析し、この分析結果を指標として前記共沸脱水塔202の全留出液重量に対する水の割合が14.1±0.1%となる様に前記共沸脱水塔202の還流液量を調整した。分析はオンラインでしかも解析時間も短いために約1分程で分析することができ、分析結果を見て迅速に前記共沸脱水塔202の運転条件の調整に反映させることができた。
この実施例で使用した重合防止剤の量は、アクリル酸蒸発蒸気量に対して、ジブチルジチオカルバミン酸銅が30ppm、ハイドロキノンが100ppmであり、ハイドロキノンは原料供給管より原料に溶解した形で、その他は塔頂より還流液に溶解した形で塔内に供給した。また、アクリル酸蒸発蒸気量に対して0.3体積%の分子状酸素を塔底部に供給した。なお、ここにいう蒸発蒸気量とは、共沸脱水塔202のリボイラーから加えられた熱量に相当して、塔底から蒸発するモノマーの蒸気の総量を意味する。
定常状態における運転状態は、共沸脱水塔202の塔頂圧力を絶対圧187hPaとし、15段目の温度65℃で蒸留し、共沸溶剤としてトルエンを用い、塔頂留出液を共沸脱水塔塔頂ガスライン203に付属するコンデンサー209で凝縮し、二相分離して得たトルエン相(共沸溶剤含有相)204を19.5kg/hで全量を還流するものであり、共沸脱水塔202の塔頂ガスのアクリル酸濃度は0.2質量%となった。塔底液の酢酸濃度は0.8質量%であった。尚、前記塔底液には、トルエン及び水は含まれていなかった。前記塔底液は8.1kg/hで得られた。
次いで、シーブトレイ35段を有する酢酸分離塔208の、塔頂から18段目に上記共沸脱水塔塔底液を供給した。塔頂圧力は絶対圧53hPa、塔底から分子状酸素を15Nリットル/hで供給し、還流比を2.0として運転した。塔頂より酢酸4質量%を含むアクリル酸含有凝縮液4.8kg/hを付属するコンデンサー209の冷却によって凝縮して得て、このうち1.6kg/hを上記のように共沸脱水塔202に戻した。コンデンサー209からの還流液には重合防止剤としてハイドロキノンを100ppmになるように添加した。塔底からは、酢酸500ppm以下のアクリル酸が、6.5kg/hで得られた。なお、共沸脱水塔202のリボイラ蒸気量は10.2kg/hであり、酢酸分離塔では1.5kg/hであり、必要なリボイラ蒸気量は合計11.7kg/hであった。
上記条件にて、共沸脱水塔202と酢酸分離塔208を3ヶ月間連続運転した後に塔内点検したところ、共沸脱水塔202の回収部にわずかに付着物があったのみで、他には重合物は全くみられなかった。
[比較例4]
近赤外分光分析計を用いず、アクリル酸捕集塔の塔底液抜き出し液を1週間に3回採取し、採取したサンプル中の水分濃度をカールフィッシャー分析計を用いて分析し、この分析結果を元に前記共沸蒸留塔202の還流液量を1週間に3回調整した以外は実施例4と同様にしてアクリル酸の製造を行った。
この条件にて前記共沸脱水塔202を3ヶ月間連続して運転したところ、停止後の点検において共沸脱水塔202の回収部に約5リットルの重合物の発生が認められた。
[実施例5]
実施例1と同様の反応器を用い、プロピレンを分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化して得た混合ガスを、図5に示したアクリル酸捕集塔101に導いてアクリル酸3.2質量%、酢酸7.9質量%、トルエン0.1質量%を含む吸収水と接触させて得た水溶液をアクロレイン放散塔(図示せず)に導いてアクロレインを放散させ、水30質量%、酢酸3.0質量%を含むアクリル酸水溶液を得た。
前記アクリル酸水溶液を共沸分離塔102に導いた。また、上記アクリル酸捕集塔101の塔底液抜き出しライン上に設けた近赤外分光分析計(図示せず)を用いてオンラインで前記塔底液抜き出し液の水分濃度を分析し、この分析結果を指標として前記共沸分離塔102の全留出液質量に対する水の割合が11.1±0.1%となる様に前記共沸分離塔102の還流液量を調整した。
分析はオンラインでしかも解析時間も短いために約1分程で分析することができ、分析結果を見て迅速に前記共沸蒸留塔の運転条件の調整に反映させることができた。
この実施例で使用した重合防止剤の量はアクリル酸蒸発蒸気量に対して、ジブチルジチオカルバミン酸銅が10ppm、酢酸マンガンが10ppm、ハイドロキノンが100ppm、フェノチアジンが100ppmであり、酢酸マンガンは原料供給管より原料に溶解した形で、その他は塔頂より還流液に溶解した形で塔内に供給した。
また、アクリル酸蒸発蒸気量に対して0.3体積%の分子状酸素を塔底部に供給した。なお、ここにいう蒸発蒸気量とは、共沸分離塔102のリボイラーから加えられた熱量に相当して、塔底から蒸発するモノマーの蒸気の総量を意味する。
前記共沸分離塔102は、段数60段、段間隔147mmのシーブトレーを備え、塔頂部に留出管、中央部に原料供給管、塔底部に塔底液抜き出し管を備えたものである。分離手順は共沸溶剤としてトルエンを用いて、塔頂圧力を140mmHg、還流比(単位時間当りの還流液の全モル数/単位時間当りの留出液の全モル数)を1.35、原料供給量を8.12リットル/時にして、アクリル酸水溶液の共沸分離運転を行った。
前記共沸分離塔102の塔頂から得られるものは貯槽90に導き、有機相と水相に分離した。なお、貯槽90において、定常運転時における留出混合物から分離した水相はアクリル酸3.2質量%、酢酸7.9質量%、トルエン0.1質量%を含み、実施例5に記載した前記アクリル酸捕集塔101の吸収水として循環使用した。一方塔底より抜き出される液はアクリル酸97.5質量%、酢酸0.03質量%、水0.02質量%、その他2.45質量%を含み、トルエンは検出限界(1ppm)以下であった。
上記の条件にて前記共沸分離塔102を運転したところ14日間連続して安定稼動し、停止後の塔内点検においても重合物の発生は認めらなかった。
[比較例5]
近赤外分光分析計を用いず、アクリル酸捕集塔101の塔底液抜き出し液を1週間に3回採取し、採取したサンプル中の水分濃度をカールフィッシャー分析計を用いて分析し、この分析結果を元に前記共沸分離塔102の還流液量を1週間に2回調整した以外は実施例5と同様にしてアクリル酸の製造を行った。
この条件にて前記共沸分離塔102を14日間連続して運転したところ、停止後の点検において塔内に重合物の発生が認められた。
[実施例6]
実施例1と同様の反応器を用い、プロピレンを分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化して得た混合ガスをアクリル酸捕集塔に導いて水と接触させて得た水溶液を共沸分離塔および高沸物分離塔に導き、不純物としてフルフラール、アクロレインなどを含む粗製アクリル酸を得た。
前記粗製アクリル酸にヒドラジンヒドラート(ヒドラジン1水和物)をアルデヒド処理剤として連続的に添加し、次いで、充填塔蒸留装置に導入して連続蒸留した。連続蒸留は、供給した液の99質量%を連続的に留出させ、留出液の一部を還流液として塔頂より還流比0.3で塔内に導入して行った。なお、連続蒸留に際しては、蒸留塔に導入される液量に対して100質量ppmに相当するメトキノンを、重合防止剤として、前記還流液に溶かして塔内に導入した。
また、上記蒸留装置の原料液(粗製アクリル酸)供給ライン上に設けた近赤外分光分析計を用いてオンラインで前記粗製アクリル酸中のフルフラールを分析し、この分析結果を指標としてフルフラール1モルに対して3.0モルのヒドラジンヒドラートの比率となる様にヒドラジンヒドラートの添加量を調整した。
分析はオンラインでしかも解析時間も短いために約1分程で分析することができ、分析結果を見て迅速にヒドラジンヒドラートの添加量の調整に反映させることができた。なお、前記粗製アクリル酸中のフルフラール/アクロレイン質量濃度比は2〜30の間に保たれていた。
この条件にて前記蒸留装置を7日間連続して運転したところ、蒸留留出液として得られた精製アクリル酸中のフルフラールおよびアクロレインの含有量は、常に0.5質量ppm以下であった。
[比較例6]
近赤外分光分析計を用いず、粗製アクリル酸を7日間に3回採取し、採取したサンプル中のフルフラール濃度をガスクロマトグラフを用いて分析し、この分析結果を元にヒドラジンヒドラートの添加量を7日間に3回調整した以外は実施例6と同様にして連続蒸留を行った。
この条件にて前記蒸留装置を7日間連続して運転したところ、得られた精製アクリル酸中フルフラールの含有量がしばしば0.5質量ppmを超える結果となった。
[実施例7]
図6に従って、アクリル酸ブチルの製造を行った。アクリル酸750kg/h、n−ブタノール780kg/hおよび酸分離塔302の塔底液と、その一部を導入した高沸物分離塔305の塔頂液とを混合した、アクリル酸ブチル56.2質量%、アクリル酸25.3質量%、n−ブタノール7.1質量%、水2.0質量%、およびフェノチアジンを含む高沸物9.4質量%の循環液6700kg/hを、触媒として強酸性陽イオン交換樹脂を入れたエステル化反応器301に導入し、軽沸物分離塔303の塔頂より回収されたn−ブタノールを含有する回収液はエステル化反応器301に付属した蒸留塔に導入した。
反応温度75℃、反応圧力170hPaの条件にてエステル化反応を行い、塔頂から反応により生成する水を除去しながら、エステル化反応器301からアクリル酸ブチル60.2質量%、アクリル酸20.0質量%、n−ブタノール9.4質量%、水2.3質量%、およびフェノチアジンを含む高沸物8.1質量%の反応液8500kg/hを得た。
この反応液を酸分離塔302の塔底に導入し、塔頂より実質的にアクリル酸を含有しないアクリル酸ブチル、n−ブタノール、水の混合物を留出させた。
次に、酸分離塔302の留出液は、酸分離塔302に付属した油水分離器306で油相と水相とに分離され、油相は軽沸物分離塔303の中段に導入した。軽沸物分離塔303の塔頂から回収されるアクリル酸ブチル76.1質量%、n−ブタノール13.3質量%、水10.6質量%の液400kg/hをエステル化反応器301に付属している蒸留塔に戻し、塔底からは実質的にn−ブタノールを含まない粗製アクリル酸ブチル1300kg/hを抜き出し、精留塔304の塔底に導入した。
酸分離塔302の塔底からはアクリル酸ブチル55.8質量%、アクリル酸25.1質量%、n−ブタノール7.0質量%、水2.0質量%、およびフェノチアジンを含む高沸物10.1質量%の液を6800kg/hで抜き出し、一部を高沸物分離塔305の塔頂に導入し、塔底より高沸物を廃棄し、留出液は酸分離塔302からの残りの塔底液とともにエステル化反応器301に戻した。精留塔304の塔頂から製品としてのアクリル酸ブチルを1250kg/hで得た。
また、ライン813上に設けた近赤外分光分析計(図示せず)を用いてオンラインで循環中のアクリル酸、n−ブタノールの濃度を分析し、この分析結果を指標としてアクリル酸とアルコールとの反応系におけるモル比が一定になる様に軽沸物分離塔303の塔頂液のエステル化反応器301への循環量を調整した。分析はオンラインで、しかも解析時間も短いため、約1分程で分析を終了することができ、この分析結果を見て迅速にエステル化反応の運転条件の調整に反映させることができた。
上記の条件にて60日間連続して運転したところ、反応温度を上昇させることなくエステル化反応におけるアクリル酸の転化率が45.0±1.2%と、安定した反応を継続することができた。更に30日間連続運転した際も、反応温度を77℃に上昇させるのみで反応を継続することができ、引き続き運転を継続することが可能であった。
[比較例7]
近赤外分光分析計を用いず、ライン813より得られる循環液を1週間に3回採取し、採取したサンプル中のアクリル酸、n−ブタノールの濃度をガスクロマトグラフを用いて分析し、この分析結果を元に前記循環液量を1週間に3回調整した以外は、実施例7と同様にしてアクリル酸ブチルの製造を行った。
この条件にて60日間連続して運転したところ、エステル化反応におけるアクリル酸の転化率が30日目頃より低下傾向を示したため、反応温度を78℃に上昇させて転化率の低下を抑える必要が生じた。
また、全体を通じて転化率が45.0±5.9%となり、実施例7と比べて不安定な結果となった。更に連続運転を継続した際には、反応温度を55日目に81℃、78日目に84℃に上昇させる必要があり、90日目にはイオン交換樹脂を交換する必要性が生じた。この様に、実施例7に比べて樹脂触媒の寿命が短くなることが分る。
[実施例8]
図7に示すエステル化反応プロセスによりアクリル酸2−エチルヘキシルの製造を行った。アクリル酸400kg/hと、2−エチルヘキサノール740kg/hと、軽沸分離塔303の塔頂液の一部とを、エステル化反応器301に供給し、強酸性陽イオン交換樹脂を触媒として、反応温度85℃、アクリル酸の転化率50%で反応させた。エステル化反応器301からライン909を経て抜き出されるエステル化反応生成物を軽沸分離塔303に導入して塔頂より未反応アクリル酸、未反応アルコールを分離した後、軽沸分離塔303の塔底液を精製塔600に導入し、塔頂から製品のアクリル酸2−エチルヘキシルを収量990kg/hで得た。軽沸分離塔303の塔頂液はライン12を経てエステル化反応器301に循環した。
また、ライン912上に設けた近赤外分光分析計(図示せず)を用いてオンラインで循環液中のアクリル酸、2−エチルヘキサノールの濃度を分析し、この分析結果を指標としてアクリル酸とアルコールとの反応系におけるモル比が1:0.5〜1:1となる様に軽沸分離塔303の塔頂液のエステル化反応器301への循環量を調整した。分析はオンラインでしかも解析時間も短いために約1分程で分析することができ、分析結果を見て迅速にエステル化反応の運転条件の調整に反映させることができた。
上記の条件にて60日間連続して運転したところ、エステル化反応におけるアクリル酸の転化率が50.0±1.1%と安定した反応を継続することができた。
[比較例8]
近赤外分光分析計を用いず、ライン912より得られる循環液を1週間に3回採取し、採取したサンプル中のアクリル酸、2−エチルヘキサノールの濃度をガスクロマトグラフを用いて分析し、この分析結果を元に前記循環液量を1週間に3回調整した以外は実施例7と同様にしてアクリル酸2−エチルヘキシルの製造を行なった。
この条件にて60日間連続して運転したところ、エステル化反応におけるアクリル酸の転化率が40日目頃より低下傾向を示したため、反応温度を上昇させて転化率の低下を抑える必要が生じた。また全体を通じて転化率が50.0±6.7%となり実施例8に比べ安定しない結果となった。