JPH1180077A - メタクリル酸メチルの製造方法 - Google Patents

メタクリル酸メチルの製造方法

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JPH1180077A
JPH1180077A JP10205817A JP20581798A JPH1180077A JP H1180077 A JPH1180077 A JP H1180077A JP 10205817 A JP10205817 A JP 10205817A JP 20581798 A JP20581798 A JP 20581798A JP H1180077 A JPH1180077 A JP H1180077A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 メタクロレインを触媒の存在下でメタノール
及び分子状酸素と酸化的エステル化反応させて、メタク
ロレインからメタクリル酸メチルを直接生成させるメタ
クリル酸メチルの製造方法において、メタクロレイン濃
度が高く、かつ、水分含有量の低い、液状メタクロレイ
ン及び液状メタノールを含む液状混合物を酸化的エステ
ル化反応原料として供給できる方法を提供する。 【解決手段】 イソブチレン及び/又はtert−ブタ
ノールを気相接触酸化して得られる、メタクロレインガ
ス及び水蒸気を含有するガスと、液状メタクロレイン及
び液状メタノールを含む液状混合物を脱水塔で向流接触
させて、メタクロレインガス及びメタノールガスを含む
脱水混合ガスを得、これと液状メタクロレイン及び液状
メタノールを含む液状混合物を吸収塔中で向流接触させ
て、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状
混合物を得、該液状混合物に含まれる液状メタクロレイ
ン及び液状メタノールを酸化的エステル化反応させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、メタクリル酸メチ
ルの製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、イ
ソブチレン及びtert−ブタノールよりなる群から選
ばれる少なくとも1種の出発物質を、触媒の存在下で分
子状酸素と気相接触酸化反応させてメタクロレインガス
及び水蒸気を含有するガス(a)を得、ガス(a)、な
らびに液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液
状混合物(I)を脱水塔の下部及び上部にそれぞれ導入
し、流下する液状混合物(I)をガス(a)と脱水塔中
で向流接触させて、メタクロレインガス及びメタノール
ガスを含む脱水混合ガス(b)を得、脱水混合ガス
(b)、ならびに液状メタクロレイン及び液状メタノー
ルを含む液状混合物(II)を吸収塔の下部及び上部にそ
れぞれ導入し、流下する液状混合物(II)を脱水混合ガ
ス(b)と吸収塔中で向流接触させて、脱水混合ガス
(b)中のメタクロレインガスとメタノールガスの実質
的に全量を液状混合物(II)に吸収させ、液状メタクロ
レイン及び液状メタノールを含む液状混合物(III )を
得、液状混合物(III )を反応器に導入し、反応器内で
液状混合物(III )に含まれる液状メタクロレイン及び
液状メタノールを、パラジウム系触媒の存在下でメタノ
ール及び分子状酸素と酸化的エステル化反応させること
を包含するメタクリル酸メチルの製造方法に関する。
【0002】本発明により、従来法に比べより高濃度の
メタクロレインを含有する液状混合物を反応器に導入
し、メタクリル酸メチルを効率的に製造することが可能
となる。また、本発明においては、それぞれ脱水塔及び
吸収塔に導入する該液状混合物(I )及び(II)からな
る群より選ばれる少なくとも一つの液状混合物として、
該酸化的エステル化反応によって得られる該反応混合物
から分離して得られる、液状メタクロレイン及び液状メ
タノールを含む液状混合物(IV)を用いることができ
る。そのため本発明において、上記液状混合物(IV)を
該酸化的エステル化反応物から分離・リサイクルして液
状混合物(I )及び/又は(II)として用いることによ
って、メタクリル酸メチルを連続的に製造すると、従来
法に比してメタノールの使用量が少なくて済み、かつ、
従来法では必要であったメタノールの分離回収のための
設備が不要となるため、メタクリル酸メチルの製造に要
する費用を大幅に削減することができる。同時に、上記
のメタノールの分離回収のための設備に関連したトラブ
ルが回避されるため、メタクリル酸メチルを安定に製造
することが可能となる。
【0003】
【従来の技術】工業的に有用な化合物であるメタクリル
酸メチルを製造する方法としては、イソブチレンとte
rt−ブタノールから選ばれる少なくとも一つの出発物
質を、触媒の存在下で分子状酸素と気相接触酸化反応さ
せてメタクロレインを製造し、得られたメタクロレイン
を触媒の存在下気相接触酸化してメタクリル酸を製造
し、得られたメタクリル酸をさらにメタクリル酸メチル
に変換するという、直酸法(via methacrylic acid pro
cess)と呼ばれる方法が工業化されている。
【0004】一方、近年、メタクロレインを触媒の存在
下でメタノール(MeOH)及び分子状酸素と酸化的エ
ステル化反応させて、メタクロレイン(ML)からメタ
クリル酸メチル(MMA)を直接生ぜしめることにより
メタクリル酸メチル(MMA)を製造する新しい方法
[以下、しばしば直メタ法(direct ML-to-MMA proces
s)と呼ぶ。また、上記酸化的エステル化反応を、しば
しば直メタ反応(direct ML-to-MMA synthesis reactio
n )と呼ぶ。]について鋭意研究がなされている。この
製造方法(直メタ法)では、液状メタクロレイン及び液
状メタノールを含む液状混合物を反応器に供給しなが
ら、分子状酸素の存在下、パラジウム系触媒を用いて反
応を行うが、このパラジウム系触媒は、反応系に含まれ
る水分によって活性が阻害されやすい。したがって、直
メタ法におけるメタクリル酸メチルの生産性の向上を図
るためには、上記液状混合物中のメタクロレイン濃度を
高めるだけでなく、上記液状混合物中の水分含有量を可
能な限り少なくすることが必要である。
【0005】しかし、現在メタクロレインは、上記の通
りイソブチレンとtert−ブタノールから選ばれる少
なくとも一つの出発物質を、触媒の存在下で分子状酸素
と気相接触酸化反応(この反応をしばしばメタクロレイ
ン合成反応と呼ぶ)させることにより製造されており、
このメタクロレインは、副生物の他に、相当量の水分を
含んでいる。この水分は、メタクロレイン合成反応で生
成する水、反応希釈剤として用いられる水蒸気、さら
に、tert−ブタノールを原料として用いる場合は、
tert−ブタノールの脱水反応生成水や、用いるte
rt−ブタノールの製造法によってはtert−ブタノ
ール中に含まれる共沸水に由来するものである。したが
って、何らかの脱水処理を行ってメタクロレインの水分
含有量を減少させなければ、直メタ法による効率的なメ
タクリル酸メチルの製造は不可能となる。
【0006】上記の通り、気相接触酸化反応により得ら
れるメタクロレインは通常メタクロレインガス及び水蒸
気を含有するガスとして得られるが、このようなガスか
ら水分含有量の低いメタクロレインを得るには、まず、
上記のガスの水分含有量を減少させ、次いで、このガス
に含まれるメタクロレインガスを、液状メタクロレイン
を含む液状混合物として分離回収する。なお、メタクロ
レイン及び水分を含有するガスを一般的に知られている
乾燥剤、例えば、シリカアルミナ、ゼオライト、塩化カ
ルシウム等で処理する方法では、上記乾燥剤の脱水能力
が低い上に、上記乾燥剤表面でメタクロレインが重合す
るので、工業的方法とは成り得ない。
【0007】水分含有量の低いメタクロレインを得る手
段として、その製造工程においてメタクロレインの水分
含有量の低下を行う方法に関しては、数多くの提案がな
されている。例えば、特開昭49−92007号公報に
は、メタクロレインガス及び水蒸気を含有するガス中の
メタクロレインガスをアルコール類に吸収させ、次い
で、得られた液状メタクロレイン及び液状アルコールを
含む液状混合物を、水を抽出剤として用いる抽出蒸留に
付すことにより、メタクロレインを分離回収する方法が
開示されている。しかし、この方法では、水を抽出剤と
して用いているため、分離回収されたメタクロレイン
は、実際にはメタクロレインと水の共沸混合物[共沸点
63.6℃、メタクロレイン/水:100/7.9(重
量比)]であり、水分含有量をメタクロレイン/水共沸
混合物の水分含有量より下げることは不可能である。ま
た、米国特許第2,514,966号明細書には、メタ
クロレインガス及び水蒸気を含有するガス中のメタクロ
レインガスを水に吸収させて回収する方法が開示されて
いるが、上記と同様の理由で、水分含有量をメタクロレ
イン/水共沸混合物の水分含有量より下げることは不可
能である。
【0008】特開昭55−19213号公報には、アル
キルナフタレン類等の高沸点有機化合物を溶媒として用
い、その溶媒にメタクロレイン及び水分を含有するガス
中のメタクロレインを吸収させることにより、メタクロ
レインを分離回収する方法が開示されている。しかし、
この方法では、メタクロレインと上記の溶媒とを分離す
る際に、両者の混合物が加熱状態に保たれるため、メタ
クロレインが重合しやすく、メタクロレインの損失が著
しい。
【0009】特開昭56−87530号公報(米国特許
第4, 329, 513号に対応)には、プロピレン、イ
ソブチレン及びtert−ブタノールから選ばれる少な
くとも一つの出発物質を気相接触酸化して得られる不飽
和アルデヒド及び水蒸気を含有するガスの脱水方法とし
て、脱水塔下部から上記不飽和アルデヒド及び水蒸気を
含有するガスを供給し、脱水塔上部より殆ど全てが気化
し得る量のメタノールを供給し、脱水塔中で上記のガス
とメタノールを向流接触させて、上記のガスを脱水して
脱水不飽和アルデヒド含有ガスとし、脱水不飽和アルデ
ヒド含有ガスと液状メタノールとを吸収塔に導き、不飽
和アルデヒドを液状メタノールに吸収させて、不飽和ア
ルデヒドを液状不飽和アルデヒド及び液状メタノールを
含む液状混合物として回収する方法が開示されている。
【0010】しかし、この方法では、不飽和アルデヒド
(メタクロレイン)ガスを含有するガスに脱水塔、吸収
塔の両方でメタノールを添加しているため、不飽和アル
デヒド(メタクロレイン)が希釈されてしまい、吸収塔
出口で得られる液状不飽和アルデヒド及び液状メタノー
ルを含む液状混合物の不飽和アルデヒド(メタクロレイ
ン)含有量は高々18重量%にしかならない。これに対
し、直メタ法により工業的にメタクリル酸メチルを製造
するための原料としては、メタクロレイン含有量が25
重量%以上であり、かつ、メタクロレイン/メタノール
重量比が0.33以上である液状メタクロレイン及び液
状メタノールを含む液状混合物が好ましい。すなわち、
特開昭56−87530号公報の方法には、液状メタク
ロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物の水分含
有量は低減できても、メタクロレイン含有量を直メタ法
によるメタクリル酸メチルの生産性を向上するのに充分
なレベルにすることができないという問題があった。
【0011】特開昭56−87530号公報の方法で得
られる液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液
状混合物のメタクロレイン含有量を高めるために、吸収
塔にて得られた液状メタクロレイン及び液状メタノール
を含む液状混合物を蒸留塔に供給し、濃縮することは可
能である。しかし、この方法では、メタクロレインとメ
タノールの共沸混合物[共沸点58.0℃、メタクロレ
イン/メタノール=72.2/27.7(重量比)]が
得られるのみで、それ以上メタクロレイン含有量を上げ
ることはできない。しかも、この操作には、蒸留塔が必
要であるため、メタクリル酸メチル製造のための工程が
長くなる上、蒸留塔中でのメタクロレインの重合による
トラブルの発生により、メタクリル酸メチルの安定した
製造が妨げられる恐れがある。
【0012】また、特開昭56−87530号公報に記
載の直メタ法によるメタクリル酸メチルの合成プロセス
では、直メタ反応で消費される量より遥かに過剰な量の
メタノールを使用している。メタノールの量が過剰とな
る理由は、脱水塔においてメタクロレインガス及び水蒸
気を含有するガスを脱水したり、吸収塔においてメタク
ロレインガスをメタノールに吸収させるために相当量の
メタノールが必要なためである。このため、大量の未反
応メタノールを、生成したメタクリル酸メチルから分
離、リサイクルする必要があり、そのためのエネルギー
消費量が過大なものとなってしまう。一方、直メタ法に
よるメタクリル酸メチルの合成プロセスにおけるメタノ
ールの使用量を減少すると、直メタ反応におけるメタク
ロレイン転化率やメタクリル酸メチル選択性が低下しや
すいという問題がある。
【0013】一方、メタクロレインガス及び水蒸気を含
有するガスの脱水及びメタクロレインガスの吸収に用い
るメタノールを得るための方法として、以下のような方
法により、直メタ反応によって得られた反応混合物から
分離することにより得られるメタノールを、脱水塔及び
吸収塔へリサイクルすることが提案されている。
【0014】先ず、特開昭58−157740号公報に
記載の如く、上記直メタ反応によって得られる、メタク
リル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを含
有する反応混合物を蒸留塔に供給し、その蒸留塔塔底か
ら液状メタクリル酸メチル及び未反応液状メタノールを
含む液状混合物を得、塔頂又は塔上部段から未反応液状
メタクロレイン及び未反応液状メタノールを含む液状混
合物を得る。この方法では、上記未反応液状メタクロレ
イン及び未反応液状メタノールを含む液状混合物は、直
メタ反応器へリサイクルされる。
【0015】次に、上記液状メタクリル酸メチル及び未
反応液状メタノールを含む液状混合物からメタノールを
得る。そのための方法として、特開昭57−9739号
公報(米国特許第4, 518, 462号に対応)及び特
開昭57−9740号公報記載の方法が提示されてい
る。すなわち、上記液状メタクリル酸メチル及び未反応
液状メタノールを含む液状混合物を、炭素数6〜8の飽
和炭化水素と共に、第1の蒸留塔に供給し、未反応液状
メタノールの実質的全量を炭素数6〜8の飽和炭化水素
と共沸させ、塔頂より共沸混合物として留出させる。次
いで、上記共沸混合物を層分離槽で層分離させ、上層に
分離された主に炭素数6〜8の飽和炭化水素からなる層
は、第1の蒸留塔にリサイクル供給し、下層に分離され
た主にメタノールからなる層を第2の蒸留塔に供給して
蒸留を行い、塔底よりメタノールを抜き出すことによっ
て、脱水及び吸収に用いるメタノールを得る。さらに、
この第2の蒸留塔の塔頂から、炭素数6〜8の飽和炭化
水素を、これと共沸する一部のメタノールと共に回収し
て再度層分離槽にリサイクルさせる。しかし、この方法
と上記特開昭58−157740号公報に記載の方法と
を組み合わせると、合計3基の蒸留塔での蒸留操作に加
え、層分離操作を組み合わせることが必要であり、複数
のリサイクル工程を含み、全工程が複雑で長いという欠
点があった。
【0016】また、上記の方法では、上記第1の蒸留塔
に炭素数6〜8の飽和炭化水素及び液状メタクリル酸メ
チル及び未反応液状メタノールを含む液状混合物を供給
するが、この時、上記飽和炭化水素が上記液状混合物の
供給段より実質的に上部のみに存在するように、上記飽
和炭化水素の塔内存在量、上記液状混合物の供給量、蒸
留塔の操作温度、加熱量、塔頂及び塔底からの抜き出し
量等を制御することが必要である。上記飽和炭化水素が
上記液状混合物の供給段より下部に存在すると、上記第
1の蒸留塔に供給された上記液状混合物中に含まれてい
る水が、上記飽和炭化水素と共沸留出して、分離回収さ
れるメタノール中に混入するため、分離回収されるメタ
ノール中の水分含有量が3重量%を越えてしまう。その
ような水分含有量の高いメタノールを脱水塔及び吸収塔
に供給すると、吸収塔から得られる液状メタクロレイン
及び液状メタノールを含む液状混合物の水分含有量が増
加するため、直メタ反応のための原料として不適切なも
のとなってしまう。
【0017】さらに、上記第1の蒸留塔の運転条件が変
動した時や、運転開始/停止時のような非定常運転時
に、上記飽和炭化水素が上記第1の蒸留塔における上記
液状混合物の供給部から底部までの段部域に流下する
と、上記飽和炭化水素は上記液状混合物中に含まれる副
生重合物や上記第1の蒸留塔内で生成した重合物の貧溶
媒であるため、それらの重合物が析出し、上記第1の蒸
留塔の棚段や配管等を閉塞し、甚だしきは蒸留塔の運転
継続が不可能となる。
【0018】一方、上記のメタクロレインガス及び水蒸
気を含有するガスの脱水及びメタクロレインガスの吸収
に用いるメタノールを得るために、上記直メタ反応によ
って得られる反応混合物(メタクリル酸メチル、水、メ
タクロレイン及びメタノールを含有する)からのメタノ
ールの分離操作を行う各蒸留塔内、すなわち、特開昭5
8−157740号公報に記載の方法で用いられる、上
記反応混合物を分離し、未反応液状メタクロレイン及び
未反応液状メタノールを含有する液状混合物を得るため
の蒸留塔内、及び特開昭57−9739号公報及び特開
昭57−9740号公報に記載の方法で用いられる、第
1及び第2の蒸留塔内には比較的沸点の近い複数の共沸
系が存在するため、これらの蒸留塔の安定運転が困難で
あるという問題点もあった。すなわち、特開昭58−1
57740号公報の方法で用いられる、上記反応混合物
を分離し、未反応液状メタクロレイン及び未反応液状メ
タノールを含む液状混合物を得るための蒸留塔内には、
次のような共沸系が存在する。(括弧内の温度は共沸点
を示す。) メタノール/アセトン(55.5℃)、メタクロレイン
/メタノール(58.0℃)、水/メタクロレイン(6
3.6℃)、メタクリル酸メチル/メタノール(64.
5℃)、メタクリル酸メチル/水(83.0℃)、及び
メタクリル酸/水(99.3℃)。
【0019】また、特開昭57−9739号公報及び特
開昭57−9740号公報記載の方法において、飽和炭
化水素としてn−ヘキサンを用いた場合、上記第1の蒸
留塔内には、上記液状混合物中の主成分が関与する共沸
系として次のようなものが存在する。(括弧内の温度は
共沸点を示す。) n−ヘキサン/メタノール(49.9℃)、水/n−ヘ
キサン(61.6℃)、メタクリル酸メチル/メタノー
ル(64.5℃)、メタクリル酸メチル/水(83.0
℃)、及びメタクリル酸/水(99.3℃)。
【0020】また、上記第2の蒸留塔内には、上記メタ
ノール層中の主成分が関与する共沸系として次のような
ものが存在する。(括弧内の温度は共沸点を示す。) n−ヘキサン/メタノール(49.9℃)、及び水/n
−ヘキサン(61.6℃)。
【0021】さらに、これらの蒸留塔中には、副生物等
の微量成分が関与する共沸系として、次のようなものが
存在する可能性がある。(括弧内は共沸点を示す。) メタクロレイン/n−ヘキサン(56.1℃)、水/イ
ソブチルアルデヒド(64.3℃)、メタノール/イソ
ブチルアルデヒド(62.7℃)、水/メタクロレイン
(63.6℃)、イソ酪酸メチル/メタノール(64.
0℃)、及び水/イソ酪酸メチル(77.7℃)。
【0022】したがって、蒸留塔内の条件、例えば、蒸
留塔内の温度が数度℃変化すると、留出液の組成が変化
してしまうため、蒸留塔の安定運転が困難であった。ま
た、成分との共沸によりリサイクル系内に上記微量成分
が混入蓄積するために、留出液の組成が変化し、蒸留塔
の安定運転が困難になることもあった。例えば、特開昭
57−9739号及び特開昭57−9740号の方法に
おいて、第1の蒸留塔から微量のメタクロレインがn−
ヘキサンと共沸し、層分離槽に混入すると、層分離槽で
得られる上層液及び下層液の組成が変化し、しかも、メ
タクロレインが層分離槽に蓄積するために、時間と共に
上層液及び下層液の組成の変化が増幅される。この結
果、蒸留塔の安定運転が困難になる。
【0023】以上のような理由で、メタクロレインガス
及び水蒸気を含有するガスの脱水及びメタクロレインガ
スの吸収にメタノールのみを用いて、メタクロレイン濃
度が高く、かつ、水分含有量が低く、直メタ反応の原料
として好適な液状メタクロレイン及び液状メタノールを
含む液状混合物を得ようとすると、大量のメタノールが
必要となり、メタクリル酸メチルの製造工程が複雑、か
つ、長くなる上、メタクリル酸メチル製造プラントの安
定運転が難しくなるため、直メタ法を工業的に実施する
上で難点があった。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】このような状況下にお
いて、本発明の課題は、メタクロレインガス及び水蒸気
を含有するガス(a)を脱水塔及び続いて吸収塔を用い
て処理することにより、水分含有量の低い、液状メタク
ロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物を調製
し、これを酸化的エステル化反応器に導入して上記酸化
的エステル化(直メタ)反応を行って、メタクリル酸メ
チルを製造する方法について、水分含有量が低いのみで
なく、メタクロレイン含有量が高いメタクロレイン/メ
タノール液状混合物を得ることができ、所望のメタクリ
ル酸メチルを効率的、かつ、安定に製造する改良方法を
開発することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するため鋭意研究を行った。その結果、意外に
も、上記ガス(a)、ならびに液状メタクロレイン及び
液状メタノールを含む液状混合物(I)を脱水塔の下部
及び上部にそれぞれ導入し、液状混合物(I)をガス
(a)と向流接触させてメタクロレインガス及びメタノ
ールガスを含む脱水混合ガス(b)を得、脱水混合ガス
(b)、ならびに液状メタクロレイン及び液状メタノー
ルを含む液状混合物(II)を吸収塔の下部及び上部にそ
れぞれ導入し、脱水混合ガス(b)中のメタクロレイン
ガスとメタノールガスの実質的に全量を液状混合物(I
I)に吸収させることによって、メタクロレイン含有量
が高く、かつ、水分含有量の低い、上記直メタ反応の原
料として優れて好適な液状メタクロレイン及び液状メタ
ノールを含む液状混合物(III )が吸収塔より得られ、
これを反応器に導入し、上記直メタ反応を行うことによ
り、メタクリル酸メチルの効率的な製造が可能となるこ
とを見出した。更にまた意外にも、上記液状混合物
(I)及び/又は(II)として、上記直メタ反応により
得られる反応混合物から分離して得られる液状メタクロ
レイン及び液状メタノールを含む液状混合物(IV)をリ
サイクルして用いることにより、従来法で用いていたメ
タノールのみを分離しリサイクルするための設備が不要
となり、前記したようなこのメタノールの分離・リサイ
クル設備に関連したトラブルが解消され、メタクリル酸
メチルの安定した製造が可能となることを見出し、本発
明を完成した。
【0026】したがって、本発明の主な目的は、メタク
ロレイン濃度が高く、かつ、水分含有量の低い、直メタ
反応の原料として優れて好適な液状メタクロレイン及び
液状メタノールを含む液状混合物を酸化的エステル化反
応器に供給でき、メタクリル酸メチルを効率的、かつ、
安定に製造する方法を提供することにある。
【0027】本発明によれば、(1)イソブチレン及び
tert−ブタノールよりなる群から選ばれる少なくと
も1種の出発物質を触媒の存在下で分子状酸素と気相接
触酸化反応させて、メタクロレインガス及び水蒸気を含
有するガス(a)を得、(2)ガス(a)を脱水塔の下
部に、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液
状混合物(I)を脱水塔の上部にそれぞれ導入し、流下
する液状混合物(I)をガス(a)と脱水塔中で向流接
触させて、液状混合物(I)を気化してメタクロレイン
ガス及びメタノールガスを含む混合ガス(I ’)を発生
させると共に、ガス(a)に含まれる水蒸気を凝縮さ
せ、生成した凝縮水を脱水塔底部より抜き出してガス
(a)を脱水する一方、ガス(a)の脱水によって得ら
れる脱水メタクロレイン含有ガス(a’)を混合ガス
(I ’)と共に、メタクロレインガス及びメタノールガ
スを含む脱水混合ガス(b)として脱水塔最上部から抜
き出し、
【0028】(3)脱水混合ガス(b)を吸収塔の下部
に導入すると共に、液状メタクロレイン及び液状メタノ
ールを含む液状混合物(II)の、脱水混合ガス(b)中
のメタクロレインガスとメタノールガスの実質的に全量
を吸収するのに十分の量を吸収塔の上部に導入し、流下
する液状混合物(II)を脱水混合ガス(b)と吸収塔中
で向流接触させて、脱水混合ガス(b)中のメタクロレ
インガスとメタノールガスの実質的に全量を液状混合物
(II)に吸収させ、液状メタクロレイン及び液状メタノ
ールを含む液状混合物(III )を得、液状混合物(III
)を吸収塔底部から抜き出し、(4)抜き出された液
状混合物(III )を酸化的エステル化反応器に導入し、
反応器中で液状混合物(III )に含まれる液状メタクロ
レイン及び液状メタノールを、分子状酸素及びパラジウ
ム系触媒の存在下で酸化的エステル化反応させることに
より、メタクリル酸メチル、水、メタクロレイン及びメ
タノールを含有する反応混合物としてメタクロレインを
製造することを包含するメタクリル酸メチルの製造方法
が提供される。
【0029】次に、本発明の理解を容易にするために、
まず、本発明の基本的諸特徴及び好ましい態様を列挙す
る。 1.(1)イソブチレン及びtert−ブタノールより
なる群から選ばれる少なくとも1種の出発物質を触媒の
存在下で分子状酸素と気相接触酸化反応させて、メタク
ロレインガス及び水蒸気を含有するガス(a)を得、
(2)ガス(a)を脱水塔の下部に、液状メタクロレイ
ン及び液状メタノールを含む液状混合物(I)を脱水塔
の上部にそれぞれ導入し、流下する液状混合物(I)を
ガス(a)と脱水塔中で向流接触させて、液状混合物
(I)を気化してメタクロレインガス及びメタノールガ
スを含む混合ガス(I ’)を発生させると共に、ガス
(a)に含まれる水蒸気を凝縮させ、生成した凝縮水を
脱水塔底部より抜き出してガス(a)を脱水する一方、
ガス(a)の脱水によって得られる脱水メタクロレイン
含有ガス(a’)を混合ガス(I ’)と共に、メタクロ
レインガス及びメタノールガスを含む脱水混合ガス
(b)として脱水塔最上部から抜き出し、
【0030】(3)脱水混合ガス(b)を吸収塔の下部
に導入すると共に、液状メタクロレイン及び液状メタノ
ールを含む液状混合物(II)の、脱水混合ガス(b)中
のメタクロレインガスとメタノールガスの実質的に全量
を吸収するのに十分の量を吸収塔の上部に導入し、流下
する液状混合物(II)を脱水混合ガス(b)と吸収塔中
で向流接触させて脱水混合ガス(b)中のメタクロレイ
ンガスとメタノールガスの実質的に全量を液状混合物
(II)に吸収させ、液状メタクロレイン及び液状メタノ
ールを含む液状混合物(III )を得、液状混合物(III
)を吸収塔底部から抜き出し、(4)抜き出された液
状混合物(III )を酸化的エステル化反応器に導入し、
反応器中で液状混合物(III )に含まれる液状メタクロ
レイン及び液状メタノールを、分子状酸素及びパラジウ
ム系触媒の存在下で酸化的エステル化反応させることに
より、メタクリル酸メチル、水、メタクロレイン及びメ
タノールを含有する反応混合物としてメタクリル酸メチ
ルを製造することを包含するメタクリル酸メチルの製造
方法。
【0031】2.液状混合物(I)及び/又は(II)
が、酸化的エステル化反応によって得られる反応混合物
から分離して得られる、液状メタクロレイン及び液状メ
タノールを含む液状混合物(IV)であることを特徴とす
る前項1に記載の方法。 3.脱水塔内における液状混合物(I)とガス(a)の
向流接触を、温度が10〜60℃、圧力が0.2〜3.
0kg/cm2 条件下で行うことを特徴とする前項1ま
たは2に記載の方法。 4.吸収塔内における液状混合物(II)と脱水混合ガス
(b)の向流接触を、温度が−25〜10℃、圧力が
0.2〜3.0kg/cm2 の条件下で行うことを特徴
とする前項1〜3のいずれかに記載の方法。 5.脱水塔における液状混合物(I)の供給量が、ガス
(a)1Nm3 (Nm3は、標準条件である0℃、1気
圧で測定したm3 値を示す)に対し10〜500gであ
ることを特徴とする前項1〜4のいずれかに記載の方
法。
【0032】6.吸収塔における液状混合物(II)の供
給量が、ガス(b)1Nm3 (Nm3は、標準条件であ
る0℃、1気圧で測定したm3 値を示す)に対し50〜
1000gであることを特徴とする前項1〜5のいずれ
かに記載の方法。 7.液状混合物(I)中の液状メタクロレイン及び液状
メタノールの含有量が、液状混合物(I)に対してそれ
ぞれ5〜60重量%及び40〜95重量%であり、液状
混合物(II)中の液状メタクロレイン及び液状メタノー
ルの含有量が、液状混合物(II)に対してそれぞれ5〜
60重量%及び40〜95重量%であることを特徴とす
る前項1〜6のいずれかに記載の方法。 8.該液状混合物(IV)が、該液状混合物(IV)に対し
て25重量%を超えない量のメタクリル酸メチルを更に
含有することを特徴とする前項2〜7のいずれかに記載
の方法。 9.液状混合物(III )中の液状メタクロレインの含有
量が液状混合物(III )に対して25〜69重量%であ
り、かつ、液状混合物(III )における液状メタクロレ
インの液状メタノールに対する重量比が0.33〜2.
2であることを特徴とする前項1〜8のいずれかに記載
の方法。
【0033】以下、本発明について詳細に述べる。ま
ず、液状混合物(I)、(II)、(III )及び(IV)に
ついて、それらの定義を以下に示す。 液状混合物(I):本発明の方法において、脱水塔の上
部に供給され、メタクロレイン及び水蒸気を含むガス
(a)の脱水のために用いられる、液状メタクロレイン
及び液状メタノールを含む液状混合物。この液状混合物
(I)は、下記の液状混合物(IV)であることができ
る。 液状混合物(II):本発明の方法において、吸収塔の上
部に供給され、脱水混合ガス(b)中のメタクロレイン
ガスとメタノールガスの実質的に全量を吸収させるため
に用いられる、液状メタクロレイン及び液状メタノール
を含む液状混合物。この液状混合物(II)は、下記の液
状混合物(IV)であることができる。
【0034】液状混合物(III ):本発明の方法におい
て、吸収塔中で脱水混合ガス(b)中のメタクロレイン
ガスとメタノールガスの実質的に全量を、上記液状メタ
クロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(II)
に吸収させることによって得られ、吸収塔底部から抜き
出された後、上記酸化的エステル化(直メタ)反応の原
料として用いられる、液状メタクロレイン及び液状メタ
ノールを含む液状混合物。 液状混合物(IV):本発明において、上記直メタ反応に
より得られる、メタクリル酸メチル、水、メタクロレイ
ン及びメタノールを含む反応混合物から分離して得られ
る、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状
混合物。この液状混合物(IV)は、リサイクルして、液
状メタクロレイン及び液状メタノールを含む上記液状混
合物(I)及び/又は(II)として脱水塔の上部及び/
又は吸収塔の上部に供給することができる。
【0035】本発明においては、まず、イソブチレン及
びtert−ブタノールよりなる群から選ばれる少なく
とも1つの出発物質を触媒の存在下で分子状酸素と気相
接触酸化反応させて、メタクロレイン及び水蒸気を含有
するガス(a)を調製する。このようなガス(a)の調
製法としては、種々の常法が知られているので、それら
の中から適切なものを選択することができる。
【0036】次いで、上記ガス(a)を脱水塔の下部
に、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状
混合物(I)を脱水塔の上部にそれぞれ導入し、ガス
(a)を液状混合物(I)と脱水塔中で向流接触させ
る。この向流接触によって、液状混合物(I)は気化
し、メタクロレインガス及びメタノールガスを含む混合
ガス(I ’)となる。この時、ガス(a)に含まれる水
蒸気から気化潜熱が奪われるために、この水蒸気は凝縮
し、ガス(a)から分離されて流下し、脱水塔底部より
分離水として抜き出される。その結果、ガス(a)は脱
水され、脱水メタクロレイン含有ガス(a’)が得られ
る。以上のようにして得られたガス(a’)を、混合ガ
ス(I ’)と共に上記脱水塔最上部よりメタクロレイン
ガス及びメタノールガスを含む脱水混合ガス(b)とし
て抜き出す。
【0037】本発明で用いられる脱水塔の形式について
は、通常の蒸留塔として用いられるものであれば特に制
限はなく、棚段塔、充填塔何れでも使用することができ
る。本発明では、脱水塔に易重合性物質であるメタクロ
レインが導入されることから、重合物で閉塞し難い構
造、又は重合物で閉塞した場合、閉塞物除去が容易な形
式が好ましい。具体的にはシーブトレー、カスケードト
レー、ターボグリッドトレー、リップルトレー等を装着
した棚段塔及びメラパック、スルーザーパック(共に日
本国、住友重機械工業製)等を規則的に充填した充填塔
が挙げられる。
【0038】本発明の方法においては、上記脱水塔内に
おける上記液状混合物(I)とガス(a)の向流接触
を、温度が10〜60℃、圧力が0.2〜3.0kg/
cm2の条件下で行うことが好ましく、温度が10〜4
0℃、圧力が0.5〜2.0kg/cm2 の条件下で行
うことが更に好ましい。このような条件であれば、メタ
クロレインの含有量がメタクロレイン/メタノールの重
量比で1.0〜4.9と高い、メタクロレイン及びメタ
ノールガスを含む脱水混合ガス(b)を脱水塔最上部よ
り得ることが可能である。脱水塔内での向流接触を温度
が60℃を超えるか、圧力が3.0kg/cm2 を超え
る条件下で行うと、脱水塔を小型化できる点では好まし
いが、温度上昇によりメタクロレインの重合物が増加
し、重合によるメタクロレインの損失の増加や、重合物
による装置の閉塞を来たす傾向があるため好ましくな
い。
【0039】さらに、本発明の方法において、上記メタ
クロレイン合成反応を行うための反応器と上記脱水塔を
配管で接続し、反応器で調製されたガス(a)を直接、
連続的に脱水塔下部に導入する場合、脱水塔内の圧力が
3.0kg/cm2 を超える条件下で上記向流接触を行
うと、メタクロレイン合成反応におけるメタクロレイン
の選択率が低下するため好ましくない。
【0040】一方、脱水塔内での向流接触を温度が10
℃より低いか、圧力が0.2kg/cm2 より低い条件
下で行うと、重合によるメタクロレインの損失が減少
し、上記脱水混合ガス(b)中のメタクロレイン含有量
が増加する点では好ましいが、脱水塔が大型化するとと
もに、脱水塔の温度を下げるための冷凍機の負荷が増加
し好ましくない。
【0041】上記液状メタクロレイン及び液状メタノー
ルを含む液状混合物(I)中の液状メタクロレイン及び
液状メタノールの含有量は、液状混合物(I)に対し液
状メタクロレイン5〜60重量%、液状メタノール40
〜95重量%が好ましく、さらに好ましくは液状メタク
ロレイン10〜50重量%、液状メタノール40〜75
重量%である。なお、本発明の方法においては、直メタ
反応により得られる、メタクリル酸メチル、水、メタク
ロレイン及びメタノールを含む反応混合物を分離操作に
かけ、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液
状混合物(IV)を得てリサイクルし、これを液状混合物
(I)として脱水塔に供給することができる。
【0042】また、液状混合物(I)の水分含有量は、
可能な限り低いことが望ましい。本発明の方法における
液状混合物(I)中の水分含有量は、好ましくは0.5
重量%以下、さらに好ましくは0.2重量%以下であ
る。液状混合物(IV)を液状混合物(I)として脱水塔
に供給する場合、直メタ反応によって得られるメタクリ
ル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを含有
する反応混合物を、例えば、後述する図3に示すよう
に、蒸留塔に供給し、通常の操作で蒸留することによ
り、分離されて得られる液状混合物(IV)中の水分含有
量は、通常上記の範囲内にある。
【0043】また、液状混合物(I)は、直メタ反応に
大きな影響を与えるものでない限り、メタクロレイン及
びメタノール以外の物質を含有していてもよい。例え
ば、液状混合物(IV)を液状混合物(I)として脱水塔
に供給する場合、液状混合物(IV)は、メタクロレイン
の合成反応における副生物に加え、通常1〜25重量%
のメタクリル酸メチル及び若干量の直メタ反応における
副生物を含有する。これらの副生物の主なものは、アセ
トン、蟻酸メチル、酢酸メチル、アクリル酸メチル等で
あるが、液状混合物(I)がこれらを含有しても、直メ
タ反応の原料となる液状メタクロレイン及び液状メタノ
ールを含む液状混合物(III )中のメタクロレイン及び
メタノールの含有量を若干低下させるのみで、直メタ反
応に影響を与えることはない。
【0044】また、脱水塔に供給されるメタクロレイン
及び水蒸気を含有するガス及び液状混合物(I)の成分
であるメタクロレインは、易重合性物質として知られる
ものであるので、その重合を抑制し、重合物による塔槽
類、熱交換器、配管等の閉塞や汚れを防止するため、ハ
イドロキノン等の重合禁止剤を脱水塔内の液相に添加し
てもよい。添加する場合、重合禁止剤の濃度は10重量
ppm〜1,000重量ppmが好ましい。この重合禁
止剤は、脱水塔の上部から供給してもよいし、液状混合
物(I)に必要量混合し供給してもよい。
【0045】本発明において、液状混合物(I)の脱水
塔への供給量は、ガス(a)の脱水に係る諸条件、すな
わち、脱水塔内での向流接触の温度及び圧力条件、ガス
(a)の水分含有量及び供給量等により異なり、一義的
には決められないが、供給された液状混合物(I)の殆
どが気化し得る量であることが必要である。この条件を
満足するためには、通常、液状混合物(I)の供給量
は、ガス(a)1Nm3に対し10〜500gとするこ
とが好ましく、より好ましくは30〜200gである。
“Nm3 ”は、標準条件である0℃、1気圧で測定した
3 を意味する。液状混合物(I)の供給量をこの適正
な範囲に保つことによって、脱水塔最上部より抜き出さ
れるメタクロレイン及びメタノールガスを含む脱水混合
ガス(b)の水分含有量を、水/メタクロレインの重量
比で0.001〜0.03まで減少させ、同時にメタク
ロレイン含有量を、メタクロレイン/メタノールの重量
比で1.0〜4.9まで高めることができる。液状混合
物(I)の供給量がガス(a)1Nm3 に対し500g
を超えると、脱水混合ガス(b)の水分含有量は減少す
るが、液状混合物(I )中のメタクロレイン及びメタノ
ールの一部が脱水塔底部に流下し、脱水塔底部から抜き
出される分離水に混入するため、分離水からメタクロレ
イン及びメタノールを回収する操作工程が必要となり好
ましくない。逆に、液状混合物(I)の供給量がガス
(a)1Nm3 に対し10gに満たないと、脱水混合ガ
ス(b)の水分含有量が増加してしまい好ましくない。
【0046】また、本発明においては、メタクロレイン
及び水蒸気を含有するガス(a)を、脱水塔に導入する
前に、所定の温度まで間接的及び/又は直接的に冷却す
ることが好ましい。冷却する場合、ガス(a)の圧力が
1.0kg/cm2 の場合で30〜60℃まで冷却する
ことが好ましく、40〜50℃まで冷却することがより
好ましい。ガス(a)には、メタクロレイン及び水蒸気
の他、メタクロレイン合成反応における高沸点副生物等
が含まれているが、この冷却により水蒸気の大半や高沸
点副生物等が脱水塔に供給されるのを簡便に抑制するこ
とができる。ガス(a)を冷却することなくそのまま脱
水塔に直接供給し、液状混合物(I)と向流接触させる
と、ガス(a)の脱水に必要な液状混合物(I)の量が
増大する結果、後述する液状メタクロレイン及び液状メ
タノールを含む液状混合物(III)のメタクロレイン含
有量が低下するため好ましくない。
【0047】ガス(a)の冷却を行う方法の具体的な例
として、次の方法を挙げることができる。すなわち、上
部及び下部よりクエンチ水を供給可能な急冷塔の底部に
ガス(a)を供給し、急冷塔下部より供給されたクエン
チ水と接触させて冷却する。冷却によりガス(a)に含
まれる水蒸気の大半が凝縮して凝縮水となり、急冷塔底
部に流下する。凝縮水は急冷塔底部より系外へ排出す
る。ガス(a)中の高沸点物質(メタクロレイン合成反
応の際に副生する、メタクリル酸、アクリル酸、酢酸、
マレイン酸等の水溶性の有機酸、及びそれら副生有機
酸、あるいは合成されるメタクロレイン等の環状2量化
反応で生成する、例えば、フルフラール、テレフタル酸
等)も凝縮水と共に系外へ排出される。この凝縮水を冷
却用熱交換器等にて冷却後、クエンチ水としてリサイク
ルすることもできるが、この凝縮水中の高沸点物質によ
り、凝縮水の冷却のための冷却用熱交換器等の熱交換部
が汚れ、甚だしい場合は熱交換器等の閉塞に至る恐れが
ある。このため、凝縮水をクエンチ水としてリサイクル
する場合、急冷塔の下部と上部でクエンチ水の供給源を
別にし、急冷塔底部より抜き出し、リサイクルした凝縮
水は急冷塔下部のみに供給し、急冷塔上部より供給する
クエンチ水は、急冷塔中間部より抜き出した凝縮水及び
/又は他から供給されたクエンチ水を冷却し供給するこ
とが好ましい。また、工業的に意味のある連続運転をす
るために、フラッシング水等で析出物の付着を低減した
り、付着物を除去することは好ましい態様である。この
ような操作を行いやすくするため、急冷塔の底部は気液
接触の効率を向上させるための棚段、又は充填物段等を
設けず、空塔又は槽型式とすることが好ましい。この場
合、気液接触は急冷塔下部から供給したクエンチ水をガ
ス(a)に直接スプレーすることによって行う。なお、
上記脱水塔の底部より抜き出される分離水をクエンチ水
として使用し、分離水中に少量含まれるメタノール、メ
タクロレイン及びメタクリル酸メチルをガス(a)中に
気化せしめて、これらの損失を減少させることは好まし
い。
【0048】この急冷塔底部における急冷工程で、ガス
(a)は好ましくは室温〜95℃、より好ましくは30
〜80℃に速やかに冷却され、部分的に脱水される。ガ
ス(a)の温度が95℃を超えるとメタクロレインの重
合が起こり、逆に、室温未満であるとテレフタル酸のよ
うな高沸点物質が急冷塔底部の器壁や配管に析出する。
【0049】この後、冷却され、部分的に脱水されたガ
ス(a)は、急冷塔最上部に向かって上昇する際にクエ
ンチ水と向流接触し、圧力1.0kg/cm2 の場合、
急冷塔最上部における温度が好ましくは30〜60℃、
より好ましくは40〜50℃となるよう更に冷却され、
急冷塔最上部より抜き出された後、脱水塔下部に供給さ
れる。
【0050】急冷塔中の、クエンチ水と部分的に脱水さ
れたガス(a)の向流接触が起こる領域の形式について
は、通常の蒸留塔において用いられるものであれば特に
制限はなく、棚段塔、充填塔何れでも使用することがで
きる。本発明では、急冷塔に易重合性物質であるメタク
ロレインが導入され、また、高沸点物質(テレフタル酸
等)の析出が起こりやすいことから、重合物や析出物で
閉塞し難い構造、又は重合物や析出物で閉塞した場合、
閉塞物除去が容易な形式が好ましい。具体的にはシーブ
トレー、カスケードトレー、ターボグリッドトレー、リ
ップルトレー等を装着した棚段塔及びメラパック、スル
ーザーパック(共に日本国、住友重機械工業製)等を規
則的に充填した充填塔が挙げられる。
【0051】上記したように、ガス(a)を、もし望ま
れるならば、まず急冷塔を用いて冷却した後、脱水塔を
用いて脱水し、メタクロレインガス及びメタノールガス
を含む脱水混合ガス(b)を得ることができる。なお、
一本の塔の下部を急冷塔、上部を脱水塔として機能させ
ることもできる。
【0052】次に、脱水塔最上部から抜き出されたメタ
クロレインガス及びメタノールガスを含む脱水混合ガス
(b)を吸収塔の下部に導入すると共に、液状メタクロ
レイン及び液状メタノールを含む液状混合物(II)の、
脱水混合ガス(b)中のメタクロレインガスとメタノー
ルガスの実質的に全量を吸収するのに十分の量を吸収塔
の上部に導入し、流下する液状混合物(II)を脱水混合
ガス(b)と吸収塔中で向流接触させる。これにより、
ガス(b)中のメタクロレインガスとメタノールガスの
実質的に全量が液状混合物(II)に吸収されて、液状メ
タクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(II
I )が得られる。得られた液状混合物(III )は、吸収
塔底部から抜き出される。
【0053】本発明で用いられる吸収塔の形式について
は、通常の蒸留塔として用いられるものであれば特に制
限はなく、棚段塔、充填塔何れでも使用することができ
る。本発明では、吸収塔に易重合性物質であるメタクロ
レインが導入されることから、重合物で閉塞し難い構
造、又は重合物で閉塞した場合、閉塞物除去が容易な形
式が好ましい。具体的にはシーブトレー、カスケードト
レー、ターボグリッドトレー、リップルトレー等を装着
した棚段塔及びメラパック、スルーザーパック(共に日
本国、住友重機械工業製)等を規則的に充填した充填塔
が挙げられる。この吸収塔内における液状混合物(II)
と脱水混合ガス(b)の向流接触は、温度が−25℃〜
10℃、圧力が0.2〜3.0kg/cm2 の条件下で
行うことが好ましい。
【0054】液状混合物(II)中の液状メタクロレイン
及び液状メタノールの含有量は、メタクロレイン5〜6
0重量%、メタノール40〜95重量%が好ましく、さ
らに好ましくは液状メタクロレイン10〜50重量%、
液状メタノール40〜75重量%である。なお、本発明
の方法においては、直メタ反応により得られる、メタク
リル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを含
む反応混合物を分離操作に付し、液状メタクロレイン及
び液状メタノールを含む液状混合物(IV)を得てリサイ
クルし、これを液状混合物(II)として吸収塔に供給す
ることができる。
【0055】また、液状混合物(II)の水分含有量は、
可能な限り低いことが望ましい。本発明における液状混
合物(II)中の水分含有量は、好ましくは0.5重量%
以下、更に好ましくは0.2重量%以下である。液状混
合物(IV)を液状混合物(II)として吸収塔に供給する
場合、直メタ反応によって得られるメタクリル酸メチ
ル、水、メタクロレイン及びメタノールを含有する反応
混合物を、例えば、図3に示すように、蒸留塔に供給
し、通常の操作で蒸留して得られる液状混合物(IV)中
の水分含有量は、上記の好ましい水分含有量の範囲に入
る。
【0056】また、液状混合物(II)は直メタ反応に大
きな影響を与えるものでない限り、メタクロレイン及び
メタノール以外の物質を含有していてもよい。例えば、
液状混合物(IV)を液状混合物(II)として吸収塔に供
給する場合、液状混合物(IV)はメタクロレイン合成反
応における副生物に加え、通常1〜25重量%のメタク
リル酸メチル及び若干量の直メタ反応における副生物を
含有する。これらの副生物の主なものは、アセトン、蟻
酸メチル、酢酸メチル、アクリル酸メチル等であるが、
液状混合物(II)がこれらを含有しても、直メタ反応の
原料となる液状混合物(III )のメタクロレイン及びメ
タノールの含有量を若干低下させるのみで、直メタ反応
に影響を与えることはない。
【0057】なお、後述する通り、液状混合物(III )
のメタクロレイン含有量が高すぎると、直メタ反応に用
いるパラジウム系触媒の活性の低下や、直メタ反応にお
けるメタクリル酸メチル選択率の低下が起こり好ましく
ない。そのため、吸収塔に液状混合物(II)を導入した
場合に得られる液状混合物(III )のメタクロレイン含
有量が高すぎる場合には、液状混合物(II)の代わり
に、メタノールを液状混合物(II)に添加して得られる
液状混合物を吸収塔に供給することが望ましい。その場
合には、液状混合物(III )のメタクロレイン含有量が
直メタ反応用の原料として好ましい範囲(メタクロレイ
ン含有量が25重量%以上であり、かつ、メタクロレイ
ン/メタノールの重量比が0.33以上)を下回ること
のないようにすることが好ましい。
【0058】本発明の方法において、液状混合物(II)
の吸収塔への供給量は、メタクロレイン含有ガスの吸収
に係る諸条件、すなわち、吸収塔内の温度及び圧力、ガ
ス(b)の供給量等により異なり、一義的には決められ
ないが、通常、ガス(b)1Nm3 に対し50〜100
0gとすることが好ましく、より好ましくは100〜5
00gである。以上の方法で得られた液状混合物(III
)に含まれる液状メタクロレイン及び液状メタノール
を、分子状酸素及びパラジウム系触媒の存在下で酸化的
エステル化反応(直メタ反応)させることにより、メタ
クリル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを
含有する反応混合物としてメタクリル酸メチルを製造す
る。
【0059】液状混合物(III )の水分含有量は、好ま
しくは2重量%以下、より好ましくは1.5重量%以
下、更に好ましくは1.0重量%以下である。また、液
状混合物(III )のメタクロレイン含有量は25重量%
以上であり、かつ、メタクロレイン/メタノールの重量
比が0.33以上であることが好ましい。液状混合物
(III )のメタクロレイン含有量の上限は、直メタ反応
におけるメタクロレイン/メタノールの化学量論的量比
に相当する量であるが、メタクロレイン含有量が高すぎ
るとパラジウム系触媒の活性の低下と共にメタクリル酸
メチル選択率の低下をもたらすため、通常液状混合物
(III )のメタクロレイン含有量は69重量%以下であ
り、かつ、メタクロレイン/メタノールの重量比が2.
2以下であることが好ましい。それ故、液状混合物(II
I )のメタクロレイン含有量が高すぎる場合は、液状混
合物(III )をメタノール又はメタノールを含有する液
状混合物で希釈して、メタクロレイン含有量とメタクロ
レイン/メタノール重量比が上記の範囲に含まれるよう
にした液状混合物を直メタ反応器に供給し、直メタ反応
を行うことが望ましい。
【0060】酸化的エステル化反応(直メタ反応)によ
りメタクリル酸メチルを合成する方法は、公知の方法、
例えば、特公昭57−035856号、特公昭57−0
35857号、特公昭57−035859号、特公昭6
2−007902号、特公平5−069813号等に開
示された方法から適宜選択すればよい(特公昭57−0
35856号、特公昭57−035857号及び特公昭
57−035859号は米国特許第4, 249, 019
号に対応。特公昭62−007902号はオーストラリ
ア国特許第518930号に対応。)
【0061】本発明に用いられるパラジウム系触媒とし
ては、例えば、パラジウムと鉛を担体に担持して得られ
る担持触媒を用いることができる。触媒成分としてはパ
ラジウム、鉛の他に異種元素として、例えば、水銀、タ
リウム、ビスマス、テルル等を含んでもよい。これらの
異種元素を5重量%を超えない範囲で含むことが好まし
く、1重量%を超えない範囲で含むことがより好まし
い。
【0062】さらに、上記触媒はアルカリ金属化合物及
びアルカリ土類金属化合物よりなる群から選ばれる少な
くとも一つの化合物を含んでいてもよい。アルカリ金属
化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を0.01〜
30重量%含むことが好ましく、0.01〜5重量%含
むことがより好ましい。アルカリ金属化合物及び/又は
アルカリ土類金属化合物は、触媒調製時にパラジウム化
合物あるいは鉛化合物を含む溶液に加えておき、担体に
吸着あるいは付着させてもよいし、予めこれらを担持し
た担体を用いることもできる。また、その代りに、アル
カリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を含
む溶液を、直メタ反応液中に添加することもできる。
【0063】担体は活性炭、シリカ、アルミナ、シリカ
−アルミナ、ゼオライト、マグネシア、シリカ−アルミ
ナ−マグネシアなどから広く選ぶことができる。担体へ
のパラジウム担持量は特に制限はないが、好ましくは担
体重量に対して通常0.1〜20重量%、より好ましく
は1〜10重量%である。鉛の担持量も特に制限はない
が、好ましくは担体重量に対して0.05〜17重量
%、より好ましくは0.45〜8.5重量%である。パ
ラジウム/鉛の原子比は、好ましくは3/0.7〜3/
1.3の範囲、より好ましくは3/0.9〜3/1.1
である。
【0064】触媒の使用量は、反応原料の組成、触媒の
組成、反応条件、反応型式などにより異なるため、一義
的には決められないが、触媒をスラリー状態で反応させ
る場合は、反応液1リットル中に0.04〜0.5kg
使用するのが好ましい。直メタ反応は気相反応、液相反
応、灌液反応などの任意の従来公知の方法で実施でき
る。例えば、液相で実施する際には、気泡塔反応器、ド
ラフトチューブ型反応器、攪拌槽反応器などの任意の反
応器を用いることができる。直メタ反応では分子状酸素
を使用する。分子状酸素としては、酸素ガス自体または
酸素ガスを反応に不活性な希釈剤、例えば、窒素、炭酸
ガスなどで希釈した混合ガスを用いることができ、空気
を用いることもできる。
【0065】また、この反応を連続的に実施する際に
は、鉛化合物を溶解含有する溶液を反応器に加えながら
反応を行うことで、パラジウム系触媒の劣化を抑制でき
る。鉛化合物を溶解含有する溶液中の鉛濃度は、反応原
料の組成、触媒の組成、反応条件、反応型式などにより
異なるため、一義的には決められないが、反応器のガス
排出口から排出されるガスの酸素分圧に合わせて鉛化合
物の添加量を決定して反応器に供給することで、パラジ
ウム系触媒のパラジウム/鉛の原子比を反応中でも安定
に3/0.7〜3/1.3の範囲に維持することができ
る。例えば、鉛化合物の添加量は、反応器のガス排出口
から排出されるガスの酸素分圧を0.02〜0.8kg
/cm2 に設定し、これに合わせて反応器に添加する鉛
化合物を溶解含有する溶液中の鉛濃度を0.1〜200
0重量ppmの範囲で必要最小限の濃度とすることによ
り決定できる。設定する酸素分圧が低いほど、鉛濃度を
低くすることができる。鉛化合物の添加量が多過ぎる
と、排水中の鉛を無害化するための処理コストが高くな
ったり、反応副生物の蟻酸メチルの量が多くなるなど好
ましくないため、反応器のガス排出口から排出されるガ
スの酸素分圧を0.4kg/cm2 以下として、鉛化合
物の添加量を減らすことが好ましい。さらに好ましくは
酸素分圧を0.2kg/cm2 以下にすることもできる
が、酸素が不足すればメタクロレイン転化率が低下した
り、不都合な副生物が生成するため、これらの悪影響が
出ない範囲で選べばよい。なお、反応器のガス排出口か
ら排出されるガスの酸素濃度は、爆発限界(8体積%)
を超えない範囲とする。
【0066】反応圧力は、減圧下から加圧下までの任意
の広い範囲から選ぶことができるが、通常は0.5〜2
0kg/cm2 である。また、反応系にアルカリ金属及
び/又はアルカリ土類金属の化合物、例えば、酸化物、
水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩などから選ばれる少な
くとも一つの化合物を添加し、反応系のpHを6〜9に
保持することが好ましい。また、反応はメタクロレイン
濃度が高い場合、100℃を超える高温でも実施できる
が、好ましくは30〜100℃であり、より好ましくは
60〜90℃である。反応時間は特に限定されるもので
はなく、設定した条件により異なるので一義的には決め
られないが、通常1〜20時間である。
【0067】以上の条件で直メタ反応を行うことによ
り、主反応生成物としてのメタクリル酸メチルを含む反
応混合物が得られる。この反応混合物は、メタクリル酸
メチルの他に、未反応メタクロレイン、未反応メタノー
ルを含み、副生物として若干量の水及びメタクリル酸を
含む。この反応混合物中には更に、微量副生物として蟻
酸メチル、イソ酪酸メチル、イソブチルアルデヒド、酢
酸メチル、アクリル酸メチル等が含まれる。
【0068】この反応混合物を蒸留塔(図3に示すJ)
の中間部に供給し蒸留を行うと、メタクロレイン及びメ
タノールの共沸混合物(常圧で共沸点58℃、メタノー
ル/メタクロレイン=45.7モル%/54.3モル
%)が蒸留塔上部より留出する。この時、蒸留塔内に過
剰のメタノールが存在すると、過剰のメタノールと直メ
タ反応で生成したメタクリル酸メチルの一部が共沸混合
物(常圧で共沸点64.5℃、メタノール/メタクリル
酸メチル=93.4モル%/6.6モル%)となって、
上記のメタクロレイン/メタノール共沸混合物と共に留
出する。この蒸留において、蒸留塔上部より留出する液
体が液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状
混合物(IV)である。必要であれば液状混合物(IV)を
脱水塔及び/又は吸収塔にリサイクルし、液状混合物
(I )及び又は(II)として用いることができる。
【0069】メタノールとメタクリル酸メチルの共沸が
起こる場合、液状混合物(IV)中にメタクリル酸メチル
が混入する。この液状混合物(IV)が液状メタクロレイ
ン及び液状メタノールを含む液状混合物(I )及び/又
は(II)として用いられ、上記脱水塔の上部及び/又は
吸収塔の上部に供給される場合、液状混合物(IV)中に
混入したメタクリル酸メチルも、脱水塔の上部及び/又
は吸収塔の上部に供給されるが、特に問題は生じない。
【0070】一方、上記の蒸留塔(図3に示すJ)の底
部からは、液状メタクリル酸メチル及び水を含む液状混
合物が得られる。この液状混合物を公知の精製方法にて
精製することにより、メタクリル酸メチルを得ることが
できる。例えば、上記の液状メタクリル酸メチル及び水
を含む液状混合物を層分離槽に導入し、上層と下層に分
離させた後、メタクリル酸メチルを含む上層を別の蒸留
塔に導入して蒸留し、この蒸留により上層に含まれる高
沸点物質及び低沸点物質を除去し、メタクリル酸メチル
を分離することにより、高純度メタクリル酸メチルを得
ることができる。なお、上記の液状メタクリル酸メチル
及び水を含む液状混合物は、上記微量副生物(イソ酪酸
メチル、イソブチルアルデヒド、酢酸メチル、アクリル
酸メチル等)を含むが、これらはメタクリル酸メチルを
精製する際に系外へ分離除去される。
【0071】また、上記微量副生物の一部は、上記液状
メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物
(IV)にも混入する。したがって、液状混合物(IV)を
上記脱水塔及び/又は吸収塔へリサイクルして液状混合
物(I)及び/又は(II)として用いる場合に、上記微
量副生物が液状混合物(I)及び/又は(II)にも混入
することになるが、その量は、脱水塔や吸収塔の操作条
件に影響を与えるほど多くはない。また、上記微量副生
物は、液状混合物(IV)の蒸留による分離の条件にも影
響を与えない。
【0072】本発明の方法で用いられる、液状混合物
(IV)を塔上部より得、上記の液状メタクリル酸メチル
及び水を含む液状混合物を塔下部より得るための蒸留塔
(図3に示すJ)の形式については、通常の蒸留塔とし
て用いられるものであれば特に制限はなく、棚段塔、充
填塔何れでも使用することができる。本発明の方法で
は、蒸留塔に易重合性物質であるメタクロレイン、メタ
クリル酸メチル及びメタクリル酸が導入されることか
ら、重合物で閉塞し難い構造、又は重合物で閉塞した場
合、閉塞物除去が容易な形式が好ましい。具体的にはシ
ーブトレー、カスケードトレー、ターボグリッドトレ
ー、リップルトレー等を装着した棚段塔及びメラパッ
ク、スルーザーパック(共に日本国、住友重機械工業
製)等を規則的に充填した充填塔が挙げられる。
【0073】上記の蒸留塔( 図3に示すJ)の操作温度
は、蒸留塔操作圧力、液組成、段数等により異なり、一
義的に決められないが、易重合性物質であるメタクロレ
イン、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸に由来する
重合物の生成や、高沸物生成によるメタクロレイン及び
メタクリル酸メチルのロスを最小限に抑制するために
は、より低温であることが望ましい。しかし、操作温度
が低過ぎると、操作圧力の低下に伴い蒸留塔が大型化し
たり、塔頂気相部における凝縮に冷媒が必要となるため
好ましくない。蒸留塔の操作温度は、塔底液の温度が好
ましくは70〜100℃、より好ましくは70〜85℃
となる温度であり、操作圧力は500Torr程度の減
圧から2kg/cm2 であることが好ましい。
【0074】上述した如く、液状混合物(IV)を塔上部
より得、上記の液状メタクリル酸メチル及び水を含む液
状混合物を塔下部より得るために用いられる蒸留塔(図
3に示すJ)内に、易重合性物質であるメタクロレイ
ン、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸が導入される
ため、蒸留塔内の液相に重合禁止剤を10〜1,000
重量ppm添加するのが好ましい。この重合禁止剤は、
液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合
物(IV)を脱水塔の上部及び/又は吸収塔の上部にリサ
イクルする場合、液状混合物(IV)中のメタクロレイン
のリサイクル配管中での重合を抑制するのにも役立つ。
通常、重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、
フェノチアジン等が用いられる。
【0075】次に、図1及び図3に基づいて本発明の一
態様を説明する。図1に示すように、イソブチレン及び
tert−ブタノールよりなる群から選ばれる少なくと
も1つの出発物質を触媒の存在下で分子状酸素と気相接
触酸化反応させて得られた、メタクロレイン及び水蒸気
を含有するガス(a)(1)を急冷塔(A)の底部に供
給し、急冷塔下部より供給されるクエンチ水(2)と接
触させて冷却する。冷却により生じた凝縮水は、廃水
(3)として系外へ排出する。ガス(a)中の高沸点物
質(メタクロレイン合成反応の際に副生する、メタクリ
ル酸、アクリル酸、酢酸、マレイン酸等の水溶性の有機
酸、及びそれら副生有機酸、あるいは合成されるメタク
ロレイン等の環状2量化反応で生成する、例えば、フル
フラール、テレフタル酸等)も凝縮水と共に廃水(3)
として系外へ排出される。この急冷工程で、ガス(a)
は好ましくは室温〜95℃、より好ましくは30〜80
℃に速やかに冷却される。
【0076】この後、冷却されたガス(a)は急冷塔最
上部に向かって上昇する際に、急冷塔(A)上部より供
給されて流下するクエンチ水(2’)と向流接触し、圧
力1.0kg/cm2 の場合、急冷塔最上部における温
度が好ましくは30〜60℃、より好ましくは40〜5
0℃となるよう更に冷却されて、部分的に脱水されたメ
タクロレイン及び水蒸気を含有するガス(4)として、
脱水塔(B)下部に供給される。
【0077】一方、液状メタクロレイン及び液状メタノ
ールを含む液状混合物(I)(5)を脱水塔(B)上部
に供給して流下させ、部分的に脱水されたガス(4)と
向流接触させる。この向流接触により液状混合物(I)
(5)は、殆どが気化してメタクロレインガス及びメタ
ノールガスを含む混合ガス(I ’)となる。この時、部
分的に脱水されたガス(4)中の水蒸気は、気化潜熱を
奪われて凝縮し、底部に移行し、脱水塔(B)の底部よ
り分離水(6)として排出される。この脱水により、部
分的に脱水されたガス(4)は、脱水メタクロレイン含
有ガス(a’)となり、混合ガス(I ’)と共に、メタ
クロレインガス及びメタノールガスを含む脱水混合ガス
(b)(7)として脱水塔(B)最上部より抜き出さ
れ、吸収塔下部へ供給される。
【0078】脱水塔底部より抜き出される分離水(6)
は、そのまま系外に排出してもよいが、分離水中に少量
含まれるメタノール、メタクロレイン及びメタクリル酸
メチルをガス(a)中に気化せしめて、これらの損失を
減少させるために、クエンチ水(2)として使用するこ
とが好ましい。なお、本発明の具体例を示すフローシー
トにおいて、急冷塔(A)と脱水塔(B)を分けて二本
の塔としているが、一本の塔の下部を急冷塔(A)、上
部を脱水塔(B)として機能させることもできる。
【0079】脱水塔(B)の最上部より得られた脱水混
合ガス(b)(7)は、吸収塔(C)の下部に供給され
る。吸収塔(C)ではガス(b)を吸収塔の上部より供
給される液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む
液状混合物(II)(9)と向流接触させ、ガス(b)中
のメタクロレインガスとメタノールガスの実質的に全量
を液状混合物(II)に吸収させ、液状メタクロレイン及
び液状メタノールを含む液状混合物(III )(8)を吸
収塔塔底から得る。
【0080】液状混合物(II)に吸収されなかった、ロ
スとなる極微量のメタクロレインを含むガスは、ベント
ガス(10)として吸収塔(C)の最上部から排出され
る。このベントガス中には、窒素、酸素、反応副生二酸
化炭素、未反応イソブチレン、未反応メタクロレイン等
が含まれるが、これらのうち二酸化炭素に変換できるも
のは、二酸化炭素に変換しメタクロレイン合成反応の反
応希釈剤の一部として使用することができる。吸収塔
(C)底部から得られる液状混合物(III )(8)は、
直メタ反応用の原料として用いられる。液状混合物(II
I )(8)のメタクロレイン含有量が直メタ反応に必要
な化学量論的量を越える場合は、必要に応じ、メタノー
ル、メタノール及びメタクロレインの混合液又はメタノ
ール、メタクロレイン及びメタクリル酸メチルの混合液
で希釈し、所望のメタクロレイン含有量に調整すること
ができる。
【0081】以上のようにして得られた液状混合物(II
I )(8)及び分子状酸素(11)を酸化的エステル化
(直メタ)反応器(D)に導入し、反応器(D)中で液
状混合物(III )(8)に含まれる液状メタクロレイン
及び液状メタノールを、分子状酸素及びパラジウム系触
媒の存在下で酸化的エステル化反応させることにより、
メタクリル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノー
ルを含有する反応混合物として、メタクリル酸メチルを
製造することができる。なお、分子状酸素の希釈に用い
た窒素及び未反応酸素は、ベントガス(12)として系
外へ排出される。
【0082】また、もし望まれるならば、図3に示すよ
うに、直メタ反応により得られる反応混合物(メタクリ
ル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを含有
する)(13)を、メタクロレイン及びメタノールを分
離するための分離塔(蒸留塔)(J)に供給して蒸留
し、蒸留塔の上部から液状メタクロレイン及び液状メタ
ノールを含む液状混合物(IV)(25)を分離する。そ
の際、液状メタクリル酸メチル及び水を含む液状混合物
(24)は底部から回収され、低沸点副生物(15)は
最上部から排出される。得られた液状混合物(IV)を、
脱水塔(B)及び/又は吸収塔(C)にリサイクルし、
液状混合物(I)及び/又は(II)として用いることが
できる。
【0083】次に、メタクロレインをメタノールによっ
て脱水及び吸収し液状混合物として回収し、直メタ反応
用の原料として反応器に供給する方法において、直メタ
反応により得られる反応混合物からメタノールを分離す
る従来の方法に用いるシステムの一態様を図2に示す。
上記の方法は、特開昭56−87530号公報、特開昭
58−157740号公報、特開昭57−9739号公
報及び特開昭57−9740号公報に記載されている方
法を組み合わせたものである。図2に示すシステムにお
いては、直メタ反応により得られる反応混合物(13)
を未反応メタクロレイン分離塔(蒸留塔)( E)の下部
へ供給する。未反応メタクロレイン分離塔(E)で分離
された未反応液状メタクロレイン及び液状メタノールを
含む液状混合物(16)を直メタ法反応器へリサイクル
する。
【0084】分離塔(E)での蒸留により得られる低沸
点副生物(15)は、未反応メタクロレイン分離塔
(E)の塔頂から系外に排出される。さらに、液状メタ
クリル酸メチル及び液状メタノールを含む液状混合物
(14)を、未反応メタクロレイン分離塔(E)の底部
から未反応メタノール分離塔(F)の下部に供給すると
ともに、炭素数6〜8の飽和炭化水素(19)を未反応
メタノール分離塔(F)の上部から供給し、未反応メタ
ノールの実質的全量と炭素数6〜8の飽和炭化水素(1
9)とを共沸させ、未反応メタノール分離塔(F)の塔
頂から共沸混合物(18)として留出させる。未反応メ
タノール分離塔(F)の塔底からは、粗メタクリル酸メ
チル(17)が回収される。
【0085】次いで、留出してきた上記共沸混合物(1
8)を層分離槽(G)で層分離させ、上層に分離された
主として炭素数6〜8の飽和炭化水素(20)からなる
層は、未反応メタノール分離塔(F)にリサイクル供給
し、下層に分離された主としてメタノールからなる層
(21)を未反応メタノール回収塔(H)に供給して蒸
留を行い、塔底からメタノールを抜き出すことによっ
て、脱水及び吸収に用いる回収メタノール(22)を得
る。さらに、この未反応メタノール回収塔(H)の塔頂
から、炭素数6〜8の飽和炭化水素を、これと共沸する
一部のメタノールとともに共沸混合物(23)として回
収し、再度層分離槽(G)にリサイクルさせる。前述の
操作により、メタノールを分離、回収する。
【0086】本発明の方法においては、図2に示された
未反応メタノール分離塔(F)、層分離槽(G)、未反
応メタノール回収塔(H)及びこれを接続する配管が不
要になる。このように、直メタ法でメタクリル酸メチル
を製造する工程を短縮、簡略化できることの効果は極め
て大なるものがある。また、複数の共沸系が存在する未
反応メタノール回収塔(H)での運転操作、運転条件変
動に伴う重合物による蒸留塔の閉塞、系内蓄積物による
層分離条件の変動に伴う層分離物の組成変動等の、メタ
クリル酸メチル製造プラントの安定運転阻害因子が除去
され、直メタ法の工業的実施における難点が払拭され
る。
【0087】
【発明の実施の形態】以下に実施例及び比較例によっ
て、本発明を具体的に説明するが、これらは、本発明の
範囲を限定するものではない。実施例及び比較例におい
て用いた測定方法は以、下の通りである。 a)ガス試料中のメタクロレイン、アセトン、イソブチ
レン及び二酸化炭素の定量は、以下の条件下で、ガスク
ロマトグラフィーにより行った。 ・クロマトグラフ:GC-3BT(日本国、島津製作所製) ・カラム 担体( サポート) :Porapak-QS(米国、Waters社製) 充填カラム長 :5 m カラム温度 :75℃ ・キャリヤーガス:ヘリウム ・検出器:熱伝導型検出器(TCD)
【0088】b)ガス試料中の酸素、窒素及び一酸化炭
素の定量は、以下の条件下で、ガスクロマトグラフィー
により行った。 ・クロマトグラフ:GC-3BT(日本国、島津製作所製) ・カラム 担体 :Molecular Sieve 5A(日本国、島津製作
所製) 充填カラム長:3 m カラム温度 :70℃ ・キャリヤーガス:アルゴン ・検出器:TCD
【0089】c)液体試料中のメタクロレイン、メタノ
ール及びメタクリル酸メチルの定量は、以下の条件下
で、ガスクロマトグラフィーにより行った。 ・クロマトグラフ:GC-9A (日本国、島津製作所製) ・カラム 担体 :Chromosorb 101(米国、Manvile corpor
ation 製、日本国、島津GLCセンターより発売) 充填カラム長:4 m カラム温度 :120〜180℃まで昇温 ・キャリヤーガス:ヘリウム ・検出器:水素炎検出器(FID)
【0090】d)液体試料中のメタクリル酸の定量は、
以下の条件下で、ガスクロマトグラフィーにより行っ
た。 ・クロマトグラフ:GC-4CPTF(日本国、島津製作所製) ・カラム 固定相液体/担体:FFAP20/Chromosorb W(日本国、信
和化工製、日本国、島津GLCセンターより発売) 充填カラム長 :2 m カラム温度 :145℃ ・キャリヤーガス:ヘリウム ・検出器:FID
【0091】e)水分含有量は、カールフィッシャー電
量法水分計VA-02 (日本国、三菱化成製)を用いて測定
した。 f)メタクロレイン転化率(%)は、次の式により求め
た。 メタクロレイン転化率(%)=[1−{反応器から排出
された反応混合物中のメタクロレインの量(mol )}/
{反応器に供給されたメタクロレインの量(mol)}]
×100
【0092】g)メタクリル酸メチル選択率(%)は、
次の式により求めた。 メタクリル酸メチル選択率(%)={反応器から排出さ
れた反応混合物中のメタクリル酸メチルの量(mol )}
×100 /[{反応器に供給されたメタクロレインの量
(mol )}−{反応器から排出された反応混合物中のメ
タクロレインの量(mol )}] 以下の実施例及び比較例では、図1,2及び3を参照し
て説明する。
【0093】
【実施例1】常法に従って触媒の存在下イソブチレンの
気相接触酸化反応を行い、メタクロレイン及び水蒸気を
含有するガス(a)(1)を調製した。このガス(a)
(1)を急冷塔(A)に導入し、クエンチ水(2、
2’)を用いて44℃に冷却し、含有する水蒸気の大
半、酸類及び高沸点物質を除去することにより、部分脱
水メタクロレイン含有ガス(4)を得た。得られた部分
脱水メタクロレイン含有ガス(4)の組成は、メタクロ
レイン4.8モル%、水2.7モル%、アセトン等の液
状副生物合計0.2モル%、及び窒素、酸素、二酸化炭
素、一酸化炭素、未反応イソブチレン等の気体合計9
2.3モル%であった。部分脱水メタクロレイン含有ガ
ス(4)の水分含有量は、水/メタクロレインの重量比
で0.14であった。
【0094】部分脱水メタクロレイン含有ガス(4)
を、内径10cm、高さ5m、実段数30のシーブトレ
イを装着した棚段塔型式の脱水塔(B)の塔底気相部
へ、流量3.6Nm3 /hrで供給した。脱水塔(B)
の最上段からは、液状メタクロレイン及び液状メタノー
ルを含む液状混合物(I)(5)[組成:メタクロレイ
ン30.0重量%、メタノール69.8重量%、水分含
有量(水/メタクロレインの重量比)0.006]にハ
イドロキノン100重量ppmを加えた溶液を200g
/hrで供給した。脱水塔(B)内におけるガス温度
は、底部で44℃、最上部で18℃に制御し、上記溶液
の温度は25℃に制御した。脱水塔(B)の最上部圧力
は1.5kg/cm2 に制御した。以上の条件で部分脱
水メタクロレイン含有ガス(4)を更に脱水し、メタク
ロレイン及びメタノールガスを含む脱水混合ガス(b)
(7)を脱水塔(B)の最上部より得た。同時に脱水塔
(B)の底部から分離水(6)を抜き出した。脱水混合
ガス(b)(7)の水分含有量は水/メタクロレインの
重量比で0.015、メタクロレイン含有量はメタクロ
レイン/メタノールの重量比で4.3であった。また、
分離水(6)中に含まれるメタクロレインの量は、気相
接触酸化反応により生成したメタクロレイン量の0.7
重量%であった。
【0095】次いで、上記脱水混合ガス(b)(7)を
内径10cm、高さ5m、実段数30のシーブトレイを
装着した棚段塔型式の吸収塔(C)の塔底気相部に供給
し、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状
混合物(II)(9)[組成は上記液状混合物(I)
(5)に同じ]にハイドロキノン100重量ppmを添
加した溶液を吸収塔(C)の最上段から900g/hr
で供給した。吸収塔(C)内の塔底液温度は−6℃、最
上段の液温度は−3℃に制御し、上記溶液の温度は−3
℃に制御した。また、塔最上部圧力は1.4kg/cm
2 に制御した。以上の条件で、上記脱水混合ガス(b)
(7)中のメタクロレインガスとメタノールガスの実質
的に全量を液状混合物(II)(9)に吸収させ、液状メ
タクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(II
I )(8)を吸収塔(C)の底部より得た。 液状混合
物(III )(8)の組成は、メタクロレイン53.6重
量%、メタノール44.9重量%、水0.7重量%、ア
セトン等の副生物0.8重量%であった。
【0096】液状混合物(III )(8)を、液相部が
1.2リットルの外部循環型ステンレス製気泡塔型反応
器(D)に供給した。この反応器(D)には、シリカ−
アルミナ−マグネシア担体にPd及びPbを担持させた
触媒[Pdの担体に対する重量比:5重量%、Pd/P
bの組成(原子比):3/1.03]を300g仕込
み、上記液状混合物(III )(8)を450g/hrで
供給した。また、反応器(D)内液のpHが6.1、反
応器(D)内液の鉛濃度が20重量ppmになるように
水酸化ナトリウムのメタノール溶液及び酢酸鉛のメタノ
ール溶液を各々反応器(D)に供給した。反応温度は8
0℃、反応圧力3.0kg/cm2 、反応器(D)のガ
ス排出口より排出されるガス(12)中の酸素分圧は
0.095kg/cm2 であった。以上の条件下でメタ
クロレインの酸化的エステル化反応を行い、メタクリル
酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを含有す
る反応混合物(13)を反応器(D)の排出口より得
た。この反応におけるメタクロレイン転化率は55.5
%、メタクリル酸メチル選択率は86.4%であった。
【0097】
【実施例2】後述するメタクリル酸メチル、水、メタク
ロレイン及びメタノールを含有する反応混合物を分離す
ることにより得られた、液状メタクロレイン及び液状メ
タノールを含む液状混合物(IV)(25)を、液状メタ
クロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(I)
(5)及び(II)(9)の代わりに脱水塔(B)及び吸
収塔(C)にそれぞれ供給した以外は、実施例1と本質
的に同様の方法で行った。後述する反応混合物(13)
を、径10cm、高さ6m、実段数45段のシーブトレ
ーを装着した棚段塔形式の蒸留塔(J)の最上段より3
0段目に供給し、最上部から流下液中のハイドロキノン
濃度が100重量ppm以上になるようにハイドロキノ
ンを供給しながら、塔最上部温度30℃、塔底部温度8
2℃、大気圧で蒸留し、最上段より5段目から液状メタ
クロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(IV)
(25)を抜き出した。液状混合物(IV)(25)の組
成は、メタクロレイン14.1重量%、メタノール7
0.6重量%、メタクリル酸メチル11.7重量%、ア
セトン等の液状副生物合計3.5重量%、水1000重
量ppm(水分含有量は水/メタクロレインの重量比で
0.007)であった。
【0098】一方、実施例1と同様の方法で得た部分脱
水メタクロレイン含有ガス(4)を、実施例1で用いた
ものと同じ脱水塔(B)に、実施例1と同様の方法で供
給した。脱水塔(B)の最上段からは、上記液状混合物
(IV)(25)にハイドロキノン100重量ppmを加
えた溶液を200g/hrで供給した。脱水塔(B)内
におけるガス温度は、脱水塔底部で44℃、塔最上部で
13℃に制御し、上記溶液の温度は20℃に制御した。
また、脱水塔(B)の最上部圧力は1.5kg/cm2
に制御した。以上の条件で、部分脱水メタクロレイン含
有ガス(4)を更に脱水し、メタクロレインガス及びメ
タノールガスを含む脱水混合ガス(b)(7)を脱水塔
(B)の最上部より得た。同時に脱水塔(B)の底部か
ら分離水(6)を抜き出した。脱水混合ガス(b)
(7)の水分含有量は水/メタクロレインの重量比で
0.014、メタクロレイン含有量はメタクロレイン/
メタノールの重量比で4.0であった。また、上記分離
水(6)中に含まれるメタクロレインの量は、気相接触
酸化反応により生成したメタクロレイン量の0.7重量
%であった。
【0099】次いで、脱水混合ガス(b)(7)を、実
施例1で用いたものと同じ吸収塔(C)に、実施例1と
同様の方法で供給した。吸収塔(C)の最上段からは、
上記液状混合物(IV)(25)にハイドロキノン100
重量ppmを加えた溶液を1100g/hrで供給し
た。吸収塔(C)内の塔底液温度は0℃、塔頂段液の温
度は−11℃に制御し、上記溶液の温度は−10℃に制
御した。また、塔最上部圧力は1.4kg/cm2 に制
御した。以上の条件で、脱水混合ガス(b)(7)中の
メタクロレインガスとメタノールガスの実質的に全量を
液状混合物(IV)(25)に吸収させ、液状メタクロレ
イン及び液状メタノールを含む液状混合物(III )
(8)を吸収塔(C)の底部より得た。液状混合物(II
I )(8)中のメタクロレイン含有率は40.0重量
%、メタノールは48.5重量%、メタクリル酸メチル
は8.6重量%、アセトン等の副生物は2.4重量%、
水は0.5重量%であった。
【0100】上記液状混合物(III )(8)を、液相部
が1.2リットルの外部循環型ステンレス製気泡塔型反
応器(D)に、直メタ反応用の原料として供給した。こ
の反応器には、シリカ−アルミナ−マグネシア担体にP
d及びPbを担持させた触媒[Pdの担体に対する重量
比:5重量%、Pd/Pbの組成(原子比):3/0.
99]を300g仕込み、上記液状混合物(III )
(8)を450g/hrで供給した。また、反応器
(D)内液のpHが6.1、反応器(D)内液の鉛濃度
が25重量ppmになるように水酸化ナトリウムのメタ
ノール溶液及び酢酸鉛のメタノール溶液を各々反応器に
供給した。反応温度は75℃、反応圧力3.0kg/c
2 、反応器(D)のガス排出口より排出されるガス
(12)中の酸素分圧は0.105kg/cm2 であっ
た。以上の条件下でメタクロレインの酸化的エステル化
反応を行い、メタクリル酸メチル、水、メタクロレイン
及びメタノールを含有する反応混合物(13)を反応器
(D)の排出口より得た。この反応におけるメタクロレ
イン転化率は58.4%、メタクリル酸メチル選択率は
87.8%であった。
【0101】
【比較例1】常法に従って触媒の存在下イソブチレンの
気相接触酸化反応を行い、メタクロレイン及び水蒸気を
含有するガス(a)(1)を調製した。このガス(a)
(1)を、急冷塔(A)に導入し、クエンチ水(2,
2’)を用いて35℃に冷却し、水蒸気の大半、酸類及
び高沸点物質を除去することにより、部分脱水メタクロ
レイン含有ガス(4)を得た。得られた部分脱水メタク
ロレイン含有ガス(4)の組成は、メタクロレイン4.
3モル%、水6.9モル%、アセトン等の液状副生物合
計0.1モル%、窒素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素
及び未反応イソブチレン等の気体合計88.7モル%で
あった(水/メタクロレインの重量比:0.39)。
【0102】部分脱水メタクロレイン含有ガス(4)を
内径40mm、長さ60cmの脱水塔(B)(外径3m
mφ、長さ4mmのラシヒリングが充填された充填塔)
下部の充填物の装着されていない領域の気相部より、流
量13Nl/min.(Nlは、標準条件である0℃・
1気圧で測定したリットル値を示す)で供給した。脱水
塔(B)上部の充填物のない領域より、ハイドロキノン
100重量ppmを含有するメタノールを88g/hr
で供給した。脱水塔(B)内のガス温度は底部で35
℃、最上部で15℃に制御した。以上の条件で部分脱水
メタクロレイン含有ガス(4)を更に脱水し、メタクロ
レインガス及びメタノールガスを含む脱水混合ガス
(7)を脱水塔(B)の最上部より得た。同時に脱水塔
(B)の底部から分離水(6)を抜き出した。脱水メタ
クロレイン含有ガス(7)の水/メタクロレインの重量
比は0.006であった。
【0103】脱水混合ガス(7)を内径32mm、30
段のオルダーショー型吸収塔(C)の塔底気相部に供給
した。また、メタノールを吸収塔(C)の最上段に供給
した。吸収塔(C)内における塔底液の温度は10℃、
塔最上段液の温度は−11℃に制御し、メタノールの温
度は−10℃に制御した。また、塔最上部圧力は1.0
3kg/cm2 に制御した。以上の条件下で、脱水混合
ガス(7)中のメタクロレインガスとメタノールガスの
実質的に全量をメタノールに吸収させ、液状メタクロレ
イン及び液状メタノールを含む液状混合物(8)を吸収
塔(C)の底部より得た。液状メタクロレイン及び液状
メタノールを含む液状混合物(8)の組成は、メタノー
ル81.7重量%、メタクロレイン18重量%、アセト
ン等の副生物0.1重量%、水0.13重量%であっ
た。なお、脱水塔(B)の底部より抜き出した分離水
(6)中のメタノール及びメタクロレインの量は、それ
ぞれ脱水塔(B)上部より供給したメタノールの0.6
重量%、吸収塔(C)で回収されたメタクロレインの
0.5重量%であった。
【0104】
【比較例2】実施例1と同様の方法で得られたメタクリ
ル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを含有
する反応混合物(13)を、内径32mm、50段のオ
ルダーショー型蒸留塔(E)の最上段から30段目に1
84g/hrで供給し、塔底温度76℃、塔最上部温度
37℃、塔最上部圧力760torrで蒸留を行い、蒸
留塔(E)の底部からメタクリル酸メチル24.3重量
%、メタノール65.7重量%、メタクリル酸1.5重
量%、水8.5重量%からなる組成の液状混合物(1
4)を得た。
【0105】次いで、この液状混合物(14)に重合禁
止剤としてフェノチアジン300重量ppmを添加し、
内径32mm、60段のオルダーショー型蒸留塔(F)
の最上段から20段目に160g/hrで供給し、塔底
温度76℃、塔最上部温度40℃、塔最上部圧力520
Torrで蒸留を行った。また、蒸留塔(F)中にn−
ヘキサン45gが存在するようにn−ヘキサンを蒸留塔
(F)の最上段から7段目に供給した。n−ヘキサンの
供給段の温度は、59℃にコントロールした。この時、
n−ヘキサンは供給段[蒸留塔(F)の最上段から7段
目]より上部にしか存在しなかった。しかし、蒸留塔
(F)内のn−ヘキサンの存在量が70gとなるよう、
n−ヘキサンの供給量を増やしたところ、蒸留塔(F)
の圧力損失が増加し、蒸留の継続が不可能になった。オ
ルダーショー型蒸留塔(F)を開放し観察した結果、蒸
留塔(F)の供給段の直ぐ下部の段に重合物の存在が認
められた。
【0106】
【発明の効果】本発明のメタクリル酸メチルの製造方法
は、従来の製造方法の場合に比してメタクロレイン含有
量の高い、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含
む液状混合物を酸化的エステル化反応器に導入し、メタ
クリル酸メチルを効率的に製造することを可能とする。
また、従来法に比してメタノールの使用量が少なくて済
み、かつ、従来法では必要であったメタノールの分離回
収のための設備が不要となるため、メタクリル酸メチル
の製造に要する費用を大幅に削減することができる。同
時に、上記のメタノールの分離回収のための設備に関連
したトラブルが回避されるため、メタクリル酸メチルを
安定に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を実施するためのシステムの一例
を示す概略図である。
【図2】従来の方法において用いる、直メタ反応によっ
て得られた反応混合物からメタノールを分離回収し、リ
サイクルすることにより直メタ反応を連続的に行うため
のシステムの一例を示す概略図である。
【図3】本発明において用いることができる、直メタ反
応により得られた反応混合物からメタクロレイン及びメ
タノールを分離し、液状混合物(IV)を得るための分離
塔の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
A 急冷塔 B 脱水塔 C 吸収塔 D 直メタ反応器 E 未反応メタクロレイン分離塔 F 未反応メタノール分離塔 G 層分離槽 H 未反応メタノール回収塔 J 直メタ反応で得られる反応混合物からのメタクロ
レイン及びメタノールの分離塔 1 メタクロレイン及び水蒸気を含有するガス[ガス
(a)] 2、2’ クエンチ水 3 廃水 4 急冷塔Aで冷却され部分的に脱水された、メタク
ロレイン及び水蒸気を含有するガス 5 液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液
状混合物(I )[これは、直メタ反応により得られた反
応混合物から分離した液状メタクロレイン及び液状メタ
ノールを含む液状混合物(IV)であることができる] 6 分離水 7 メタクロレインガス及びメタノールガスを含む脱
水混合ガス(b) 8 液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液
状混合物(III )(直メタ反応に付される) 9 液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液
状混合物(II)[これは、直メタ反応により得られた反
応混合物から分離した液状メタクロレイン及び液状メタ
ノールを含む液状混合物(IV)であることができる] 10 ベントガス 11 分子状酸素(酸素又は酸素含有ガス) 12 ベントガス 13 直メタ反応により得られた反応混合物 14 液状メタクリル酸メチル及び液状メタノールを
含む液状混合物 15 低沸点副生物 16 回収液状メタクロレイン及び液状メタノールを
含む液状混合物 17 粗メタクリル酸メチル 18 メタノール/炭素数6〜8の飽和炭化水素より
なる共沸混合物 19 炭素数6〜8の飽和炭化水素 20 層分離上層軽液の主に炭素数6〜8の飽和炭化
水素からなるリサイクル液 21 層分離下層重液の主にメタノールからなる層 22 回収メタノール 23 メタノール/炭素数6から8の飽和炭化水素共
沸混合物 24 液状メタクリル酸メチル及び水を含む液状混合
物 25 液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む
液状混合物(IV)

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (1)イソブチレン及びtert−ブタ
    ノールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の出発物
    質を触媒の存在下で分子状酸素と気相接触酸化反応させ
    て、メタクロレインガス及び水蒸気を含有するガス
    (a)を得、 (2)ガス(a)を脱水塔の下部に、液状メタクロレイ
    ン及び液状メタノールを含む液状混合物(I)を脱水塔
    の上部にそれぞれ導入し、流下する液状混合物(I)を
    ガス(a)と脱水塔中で向流接触させて、液状混合物
    (I)を気化してメタクロレインガス及びメタノールガ
    スを含む混合ガス(I’)を発生させると共に、ガス
    (a)に含まれる水蒸気を凝縮させ、生成した凝縮水を
    脱水塔底部より抜き出してガス(a)を脱水する一方、
    ガス(a)の脱水によって得られる脱水メタクロレイン
    含有ガス(a’)を混合ガス(I’)と共に、メタクロ
    レインガス及びメタノールガスを含む脱水混合ガス
    (b)として脱水塔最上部から抜き出し、 (3)脱水混合ガス(b)を吸収塔の下部に導入すると
    共に、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液
    状混合物(II)の、脱水混合ガス(b)中のメタクロレ
    インガスとメタノールガスの実質的に全量を吸収するの
    に十分の量を吸収塔の上部に導入し、流下する液状混合
    物(II)を脱水混合ガス(b)と吸収塔中で向流接触さ
    せて,脱水混合ガス(b)中のメタクロレインガスとメ
    タノールガスの実質的に全量を液状混合物(II)に吸収
    させ、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液
    状混合物(III )を得、液状混合物(III )を吸収塔底
    部から抜き出し、 (4)抜き出された液状混合物(III )を酸化的エステ
    ル化反応器に導入し、反応器中で液状混合物(III )に
    含まれる液状メタクロレイン及び液状メタノールを、分
    子状酸素及びパラジウム系触媒の存在下で酸化的エステ
    ル化反応させることにより、メタクリル酸メチル、水、
    メタクロレイン及びメタノールを含有する反応混合物と
    してメタクリル酸メチルを製造することを包含するメタ
    クリル酸メチルの製造方法。
  2. 【請求項2】 液状混合物(I)及び(II)よりなる群
    から選ばれる少なくとも1つの液状混合物が、酸化的エ
    ステル化反応によって得られる反応混合物から分離して
    得られる、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含
    む液状混合物(IV)であることを特徴とする請求項1に
    記載の方法。
  3. 【請求項3】 脱水塔内における液状混合物(I)とガ
    ス(a)の向流接触を、温度が10〜60℃、圧力が
    0.2〜3.0kg/cm2 の条件下で行うことを特徴
    とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 吸収塔内における液状混合物(II)と脱
    水混合ガス(b)の向流接触を、温度が−25〜10
    ℃、圧力が0.2〜3.0kg/cm2 の条件下で行う
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方
    法。
  5. 【請求項5】 脱水塔における液状混合物(I)の供給
    量が、ガス(a)1Nm3 (Nm3 は、標準条件である
    0℃、1気圧で測定したm3 値を示す)に対し10〜5
    00gであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか
    に記載の方法。
  6. 【請求項6】 吸収塔における液状混合物(II)の供給
    量が、脱水混合ガス(b)1Nm3 (Nm3 は、標準条
    件である0℃、1気圧で測定したm3 値を示す)に対し
    50〜1000gであることを特徴とする請求項1〜5
    のいずれかに記載の方法。
  7. 【請求項7】 液状混合物(I)中の液状メタクロレイ
    ン及び液状メタノールの含有量が、液状混合物(I)に
    対してそれぞれ5〜60重量%及び40〜95重量%で
    あり、液状混合物(II)中の液状メタクロレイン及び液
    状メタノールの含有量が、液状混合物(II)に対してそ
    れぞれ5〜60重量%及び40〜95重量%であること
    を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 【請求項8】 液状混合物(IV) が、液状混合物(IV)
    に対して25重量%を超えない量のメタクリル酸メチル
    を更に含有することを特徴とする請求項2〜7のいずれ
    かに記載の方法。
  9. 【請求項9】 液状混合物(III )中の液状メタクロレ
    インの含有量が,液状混合物(III )に対して25〜6
    9重量%であり、かつ、液状混合物(III )における液
    状メタクロレインの液状メタノールに対する重量比が
    0.33〜2.2であることを特徴とする請求項1〜8
    のいずれかに記載の方法。
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