JP3681285B2 - メタクリル酸メチルの製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、メタクリル酸メチルの製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、イソブチレン及びtert−ブタノールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の出発物質を、触媒の存在下で分子状酸素と気相接触酸化反応させてメタクロレインガス及び水蒸気を含有するガス(a)を得、ガス(a)、ならびに液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(I)を脱水塔の下部及び上部にそれぞれ導入し、流下する液状混合物(I)をガス(a)と脱水塔中で向流接触させて、メタクロレインガス及びメタノールガスを含む脱水混合ガス(b)を得、脱水混合ガス(b)、ならびに液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(II)を吸収塔の下部及び上部にそれぞれ導入し、流下する液状混合物(II)を脱水混合ガス(b)と吸収塔中で向流接触させて、脱水混合ガス(b)中のメタクロレインガスとメタノールガスの実質的に全量を液状混合物(II)に吸収させ、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(III )を得、液状混合物(III )を反応器に導入し、反応器内で液状混合物(III )に含まれる液状メタクロレイン及び液状メタノールを、パラジウム系触媒の存在下でメタノール及び分子状酸素と酸化的エステル化反応させることを包含するメタクリル酸メチルの製造方法に関する。
【0002】
本発明により、従来法に比べより高濃度のメタクロレインを含有する液状混合物を反応器に導入し、メタクリル酸メチルを効率的に製造することが可能となる。また、本発明においては、それぞれ脱水塔及び吸収塔に導入する該液状混合物(I )及び(II)からなる群より選ばれる少なくとも一つの液状混合物として、該酸化的エステル化反応によって得られる該反応混合物から分離して得られる、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(IV)を用いることができる。そのため本発明において、上記液状混合物(IV)を該酸化的エステル化反応物から分離・リサイクルして液状混合物(I )及び/又は(II)として用いることによって、メタクリル酸メチルを連続的に製造すると、従来法に比してメタノールの使用量が少なくて済み、かつ、従来法では必要であったメタノールの分離回収のための設備が不要となるため、メタクリル酸メチルの製造に要する費用を大幅に削減することができる。同時に、上記のメタノールの分離回収のための設備に関連したトラブルが回避されるため、メタクリル酸メチルを安定に製造することが可能となる。
【0003】
【従来の技術】
工業的に有用な化合物であるメタクリル酸メチルを製造する方法としては、イソブチレンとtert−ブタノールから選ばれる少なくとも一つの出発物質を、触媒の存在下で分子状酸素と気相接触酸化反応させてメタクロレインを製造し、得られたメタクロレインを触媒の存在下気相接触酸化してメタクリル酸を製造し、得られたメタクリル酸をさらにメタクリル酸メチルに変換するという、直酸法(via methacrylic acid process)と呼ばれる方法が工業化されている。
【0004】
一方、近年、メタクロレインを触媒の存在下でメタノール(MeOH)及び分子状酸素と酸化的エステル化反応させて、メタクロレイン(ML)からメタクリル酸メチル(MMA)を直接生ぜしめることによりメタクリル酸メチル(MMA)を製造する新しい方法[以下、しばしば直メタ法(direct ML-to-MMA process)と呼ぶ。また、上記酸化的エステル化反応を、しばしば直メタ反応(direct ML-to-MMA synthesis reaction )と呼ぶ。]について鋭意研究がなされている。この製造方法(直メタ法)では、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物を反応器に供給しながら、分子状酸素の存在下、パラジウム系触媒を用いて反応を行うが、このパラジウム系触媒は、反応系に含まれる水分によって活性が阻害されやすい。したがって、直メタ法におけるメタクリル酸メチルの生産性の向上を図るためには、上記液状混合物中のメタクロレイン濃度を高めるだけでなく、上記液状混合物中の水分含有量を可能な限り少なくすることが必要である。
【0005】
しかし、現在メタクロレインは、上記の通りイソブチレンとtert−ブタノールから選ばれる少なくとも一つの出発物質を、触媒の存在下で分子状酸素と気相接触酸化反応(この反応をしばしばメタクロレイン合成反応と呼ぶ)させることにより製造されており、このメタクロレインは、副生物の他に、相当量の水分を含んでいる。この水分は、メタクロレイン合成反応で生成する水、反応希釈剤として用いられる水蒸気、さらに、tert−ブタノールを原料として用いる場合は、tert−ブタノールの脱水反応生成水や、用いるtert−ブタノールの製造法によってはtert−ブタノール中に含まれる共沸水に由来するものである。したがって、何らかの脱水処理を行ってメタクロレインの水分含有量を減少させなければ、直メタ法による効率的なメタクリル酸メチルの製造は不可能となる。
【0006】
上記の通り、気相接触酸化反応により得られるメタクロレインは通常メタクロレインガス及び水蒸気を含有するガスとして得られるが、このようなガスから水分含有量の低いメタクロレインを得るには、まず、上記のガスの水分含有量を減少させ、次いで、このガスに含まれるメタクロレインガスを、液状メタクロレインを含む液状混合物として分離回収する。なお、メタクロレイン及び水分を含有するガスを一般的に知られている乾燥剤、例えば、シリカアルミナ、ゼオライト、塩化カルシウム等で処理する方法では、上記乾燥剤の脱水能力が低い上に、上記乾燥剤表面でメタクロレインが重合するので、工業的方法とは成り得ない。
【0007】
水分含有量の低いメタクロレインを得る手段として、その製造工程においてメタクロレインの水分含有量の低下を行う方法に関しては、数多くの提案がなされている。
例えば、特開昭49−92007号公報には、メタクロレインガス及び水蒸気を含有するガス中のメタクロレインガスをアルコール類に吸収させ、次いで、得られた液状メタクロレイン及び液状アルコールを含む液状混合物を、水を抽出剤として用いる抽出蒸留に付すことにより、メタクロレインを分離回収する方法が開示されている。しかし、この方法では、水を抽出剤として用いているため、分離回収されたメタクロレインは、実際にはメタクロレインと水の共沸混合物[共沸点63.6℃、メタクロレイン/水:100/7.9(重量比)]であり、水分含有量をメタクロレイン/水共沸混合物の水分含有量より下げることは不可能である。また、米国特許第2,514,966号明細書には、メタクロレインガス及び水蒸気を含有するガス中のメタクロレインガスを水に吸収させて回収する方法が開示されているが、上記と同様の理由で、水分含有量をメタクロレイン/水共沸混合物の水分含有量より下げることは不可能である。
【0008】
特開昭55−19213号公報には、アルキルナフタレン類等の高沸点有機化合物を溶媒として用い、その溶媒にメタクロレイン及び水分を含有するガス中のメタクロレインを吸収させることにより、メタクロレインを分離回収する方法が開示されている。しかし、この方法では、メタクロレインと上記の溶媒とを分離する際に、両者の混合物が加熱状態に保たれるため、メタクロレインが重合しやすく、メタクロレインの損失が著しい。
【0009】
特開昭56−87530号公報(米国特許第4, 329, 513号に対応)には、プロピレン、イソブチレン及びtert−ブタノールから選ばれる少なくとも一つの出発物質を気相接触酸化して得られる不飽和アルデヒド及び水蒸気を含有するガスの脱水方法として、脱水塔下部から上記不飽和アルデヒド及び水蒸気を含有するガスを供給し、脱水塔上部より殆ど全てが気化し得る量のメタノールを供給し、脱水塔中で上記のガスとメタノールを向流接触させて、上記のガスを脱水して脱水不飽和アルデヒド含有ガスとし、脱水不飽和アルデヒド含有ガスと液状メタノールとを吸収塔に導き、不飽和アルデヒドを液状メタノールに吸収させて、不飽和アルデヒドを液状不飽和アルデヒド及び液状メタノールを含む液状混合物として回収する方法が開示されている。
【0010】
しかし、この方法では、不飽和アルデヒド(メタクロレイン)ガスを含有するガスに脱水塔、吸収塔の両方でメタノールを添加しているため、不飽和アルデヒド(メタクロレイン)が希釈されてしまい、吸収塔出口で得られる液状不飽和アルデヒド及び液状メタノールを含む液状混合物の不飽和アルデヒド(メタクロレイン)含有量は高々18重量%にしかならない。これに対し、直メタ法により工業的にメタクリル酸メチルを製造するための原料としては、メタクロレイン含有量が25重量%以上であり、かつ、メタクロレイン/メタノール重量比が0.33以上である液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物が好ましい。すなわち、特開昭56−87530号公報の方法には、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物の水分含有量は低減できても、メタクロレイン含有量を直メタ法によるメタクリル酸メチルの生産性を向上するのに充分なレベルにすることができないという問題があった。
【0011】
特開昭56−87530号公報の方法で得られる液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物のメタクロレイン含有量を高めるために、吸収塔にて得られた液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物を蒸留塔に供給し、濃縮することは可能である。しかし、この方法では、メタクロレインとメタノールの共沸混合物[共沸点58.0℃、メタクロレイン/メタノール=72.2/27.7(重量比)]が得られるのみで、それ以上メタクロレイン含有量を上げることはできない。しかも、この操作には、蒸留塔が必要であるため、メタクリル酸メチル製造のための工程が長くなる上、蒸留塔中でのメタクロレインの重合によるトラブルの発生により、メタクリル酸メチルの安定した製造が妨げられる恐れがある。
【0012】
また、特開昭56−87530号公報に記載の直メタ法によるメタクリル酸メチルの合成プロセスでは、直メタ反応で消費される量より遥かに過剰な量のメタノールを使用している。メタノールの量が過剰となる理由は、脱水塔においてメタクロレインガス及び水蒸気を含有するガスを脱水したり、吸収塔においてメタクロレインガスをメタノールに吸収させるために相当量のメタノールが必要なためである。このため、大量の未反応メタノールを、生成したメタクリル酸メチルから分離、リサイクルする必要があり、そのためのエネルギー消費量が過大なものとなってしまう。一方、直メタ法によるメタクリル酸メチルの合成プロセスにおけるメタノールの使用量を減少すると、直メタ反応におけるメタクロレイン転化率やメタクリル酸メチル選択性が低下しやすいという問題がある。
【0013】
一方、メタクロレインガス及び水蒸気を含有するガスの脱水及びメタクロレインガスの吸収に用いるメタノールを得るための方法として、以下のような方法により、直メタ反応によって得られた反応混合物から分離することにより得られるメタノールを、脱水塔及び吸収塔へリサイクルすることが提案されている。
【0014】
先ず、特開昭58−157740号公報に記載の如く、上記直メタ反応によって得られる、メタクリル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを含有する反応混合物を蒸留塔に供給し、その蒸留塔塔底から液状メタクリル酸メチル及び未反応液状メタノールを含む液状混合物を得、塔頂又は塔上部段から未反応液状メタクロレイン及び未反応液状メタノールを含む液状混合物を得る。この方法では、上記未反応液状メタクロレイン及び未反応液状メタノールを含む液状混合物は、直メタ反応器へリサイクルされる。
【0015】
次に、上記液状メタクリル酸メチル及び未反応液状メタノールを含む液状混合物からメタノールを得る。そのための方法として、特開昭57−9739号公報(米国特許第4, 518, 462号に対応)及び特開昭57−9740号公報記載の方法が提示されている。すなわち、上記液状メタクリル酸メチル及び未反応液状メタノールを含む液状混合物を、炭素数6〜8の飽和炭化水素と共に、第1の蒸留塔に供給し、未反応液状メタノールの実質的全量を炭素数6〜8の飽和炭化水素と共沸させ、塔頂より共沸混合物として留出させる。次いで、上記共沸混合物を層分離槽で層分離させ、上層に分離された主に炭素数6〜8の飽和炭化水素からなる層は、第1の蒸留塔にリサイクル供給し、下層に分離された主にメタノールからなる層を第2の蒸留塔に供給して蒸留を行い、塔底よりメタノールを抜き出すことによって、脱水及び吸収に用いるメタノールを得る。さらに、この第2の蒸留塔の塔頂から、炭素数6〜8の飽和炭化水素を、これと共沸する一部のメタノールと共に回収して再度層分離槽にリサイクルさせる。しかし、この方法と上記特開昭58−157740号公報に記載の方法とを組み合わせると、合計3基の蒸留塔での蒸留操作に加え、層分離操作を組み合わせることが必要であり、複数のリサイクル工程を含み、全工程が複雑で長いという欠点があった。
【0016】
また、上記の方法では、上記第1の蒸留塔に炭素数6〜8の飽和炭化水素及び液状メタクリル酸メチル及び未反応液状メタノールを含む液状混合物を供給するが、この時、上記飽和炭化水素が上記液状混合物の供給段より実質的に上部のみに存在するように、上記飽和炭化水素の塔内存在量、上記液状混合物の供給量、蒸留塔の操作温度、加熱量、塔頂及び塔底からの抜き出し量等を制御することが必要である。上記飽和炭化水素が上記液状混合物の供給段より下部に存在すると、上記第1の蒸留塔に供給された上記液状混合物中に含まれている水が、上記飽和炭化水素と共沸留出して、分離回収されるメタノール中に混入するため、分離回収されるメタノール中の水分含有量が3重量%を越えてしまう。そのような水分含有量の高いメタノールを脱水塔及び吸収塔に供給すると、吸収塔から得られる液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物の水分含有量が増加するため、直メタ反応のための原料として不適切なものとなってしまう。
【0017】
さらに、上記第1の蒸留塔の運転条件が変動した時や、運転開始/停止時のような非定常運転時に、上記飽和炭化水素が上記第1の蒸留塔における上記液状混合物の供給部から底部までの段部域に流下すると、上記飽和炭化水素は上記液状混合物中に含まれる副生重合物や上記第1の蒸留塔内で生成した重合物の貧溶媒であるため、それらの重合物が析出し、上記第1の蒸留塔の棚段や配管等を閉塞し、甚だしきは蒸留塔の運転継続が不可能となる。
【0018】
一方、上記のメタクロレインガス及び水蒸気を含有するガスの脱水及びメタクロレインガスの吸収に用いるメタノールを得るために、上記直メタ反応によって得られる反応混合物(メタクリル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを含有する)からのメタノールの分離操作を行う各蒸留塔内、すなわち、特開昭58−157740号公報に記載の方法で用いられる、上記反応混合物を分離し、未反応液状メタクロレイン及び未反応液状メタノールを含有する液状混合物を得るための蒸留塔内、及び特開昭57−9739号公報及び特開昭57−9740号公報に記載の方法で用いられる、第1及び第2の蒸留塔内には比較的沸点の近い複数の共沸系が存在するため、これらの蒸留塔の安定運転が困難であるという問題点もあった。すなわち、特開昭58−157740号公報の方法で用いられる、上記反応混合物を分離し、未反応液状メタクロレイン及び未反応液状メタノールを含む液状混合物を得るための蒸留塔内には、次のような共沸系が存在する。(括弧内の温度は共沸点を示す。)
メタノール/アセトン(55.5℃)、
メタクロレイン/メタノール(58.0℃)、
水/メタクロレイン(63.6℃)、
メタクリル酸メチル/メタノール(64.5℃)、
メタクリル酸メチル/水(83.0℃)、及び
メタクリル酸/水(99.3℃)。
【0019】
また、特開昭57−9739号公報及び特開昭57−9740号公報記載の方法において、飽和炭化水素としてn−ヘキサンを用いた場合、上記第1の蒸留塔内には、上記液状混合物中の主成分が関与する共沸系として次のようなものが存在する。(括弧内の温度は共沸点を示す。)
n−ヘキサン/メタノール(49.9℃)、
水/n−ヘキサン(61.6℃)、
メタクリル酸メチル/メタノール(64.5℃)、
メタクリル酸メチル/水(83.0℃)、及び
メタクリル酸/水(99.3℃)。
【0020】
また、上記第2の蒸留塔内には、上記メタノール層中の主成分が関与する共沸系として次のようなものが存在する。(括弧内の温度は共沸点を示す。)
n−ヘキサン/メタノール(49.9℃)、及び
水/n−ヘキサン(61.6℃)。
【0021】
さらに、これらの蒸留塔中には、副生物等の微量成分が関与する共沸系として、次のようなものが存在する可能性がある。(括弧内は共沸点を示す。)
メタクロレイン/n−ヘキサン(56.1℃)、
水/イソブチルアルデヒド(64.3℃)、
メタノール/イソブチルアルデヒド(62.7℃)、
水/メタクロレイン(63.6℃)、
イソ酪酸メチル/メタノール(64.0℃)、及び
水/イソ酪酸メチル(77.7℃)。
【0022】
したがって、蒸留塔内の条件、例えば、蒸留塔内の温度が数度℃変化すると、留出液の組成が変化してしまうため、蒸留塔の安定運転が困難であった。また、成分との共沸によりリサイクル系内に上記微量成分が混入蓄積するために、留出液の組成が変化し、蒸留塔の安定運転が困難になることもあった。例えば、特開昭57−9739号及び特開昭57−9740号の方法において、第1の蒸留塔から微量のメタクロレインがn−ヘキサンと共沸し、層分離槽に混入すると、層分離槽で得られる上層液及び下層液の組成が変化し、しかも、メタクロレインが層分離槽に蓄積するために、時間と共に上層液及び下層液の組成の変化が増幅される。この結果、蒸留塔の安定運転が困難になる。
【0023】
以上のような理由で、メタクロレインガス及び水蒸気を含有するガスの脱水及びメタクロレインガスの吸収にメタノールのみを用いて、メタクロレイン濃度が高く、かつ、水分含有量が低く、直メタ反応の原料として好適な液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物を得ようとすると、大量のメタノールが必要となり、メタクリル酸メチルの製造工程が複雑、かつ、長くなる上、メタクリル酸メチル製造プラントの安定運転が難しくなるため、直メタ法を工業的に実施する上で難点があった。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況下において、本発明の課題は、メタクロレインガス及び水蒸気を含有するガス(a)を脱水塔及び続いて吸収塔を用いて処理することにより、水分含有量の低い、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物を調製し、これを酸化的エステル化反応器に導入して上記酸化的エステル化(直メタ)反応を行って、メタクリル酸メチルを製造する方法について、水分含有量が低いのみでなく、メタクロレイン含有量が高いメタクロレイン/メタノール液状混合物を得ることができ、所望のメタクリル酸メチルを効率的、かつ、安定に製造する改良方法を開発することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を行った。その結果、意外にも、上記ガス(a)、ならびに液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(I)を脱水塔の下部及び上部にそれぞれ導入し、液状混合物(I)をガス(a)と向流接触させてメタクロレインガス及びメタノールガスを含む脱水混合ガス(b)を得、脱水混合ガス(b)、ならびに液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(II)を吸収塔の下部及び上部にそれぞれ導入し、脱水混合ガス(b)中のメタクロレインガスとメタノールガスの実質的に全量を液状混合物(II)に吸収させることによって、メタクロレイン含有量が高く、かつ、水分含有量の低い、上記直メタ反応の原料として優れて好適な液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(III )が吸収塔より得られ、これを反応器に導入し、上記直メタ反応を行うことにより、メタクリル酸メチルの効率的な製造が可能となることを見出した。更にまた意外にも、上記液状混合物(I)及び/又は(II)として、上記直メタ反応により得られる反応混合物から分離して得られる液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(IV)をリサイクルして用いることにより、従来法で用いていたメタノールのみを分離しリサイクルするための設備が不要となり、前記したようなこのメタノールの分離・リサイクル設備に関連したトラブルが解消され、メタクリル酸メチルの安定した製造が可能となることを見出し、本発明を完成した。
【0026】
したがって、本発明の主な目的は、メタクロレイン濃度が高く、かつ、水分含有量の低い、直メタ反応の原料として優れて好適な液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物を酸化的エステル化反応器に供給でき、メタクリル酸メチルを効率的、かつ、安定に製造する方法を提供することにある。
【0027】
本発明によれば、(1)イソブチレン及びtert−ブタノールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の出発物質を触媒の存在下で分子状酸素と気相接触酸化反応させて、メタクロレインガス及び水蒸気を含有するガス(a)を得、
(2)ガス(a)を脱水塔の下部に、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(I)を脱水塔の上部にそれぞれ導入し、流下する液状混合物(I)をガス(a)と脱水塔中で向流接触させて、液状混合物(I)を気化してメタクロレインガス及びメタノールガスを含む混合ガス(I ’)を発生させると共に、ガス(a)に含まれる水蒸気を凝縮させ、生成した凝縮水を脱水塔底部より抜き出してガス(a)を脱水する一方、ガス(a)の脱水によって得られる脱水メタクロレイン含有ガス(a’)を混合ガス(I ’)と共に、メタクロレインガス及びメタノールガスを含む脱水混合ガス(b)として脱水塔最上部から抜き出し、
【0028】
(3)脱水混合ガス(b)を吸収塔の下部に導入すると共に、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(II)の、脱水混合ガス(b)中のメタクロレインガスとメタノールガスの実質的に全量を吸収するのに十分の量を吸収塔の上部に導入し、流下する液状混合物(II)を脱水混合ガス(b)と吸収塔中で向流接触させて、脱水混合ガス(b)中のメタクロレインガスとメタノールガスの実質的に全量を液状混合物(II)に吸収させ、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(III )を得、液状混合物(III )を吸収塔底部から抜き出し、
(4)抜き出された液状混合物(III )を酸化的エステル化反応器に導入し、反応器中で液状混合物(III )に含まれる液状メタクロレイン及び液状メタノールを、分子状酸素及びパラジウム系触媒の存在下で酸化的エステル化反応させることにより、メタクリル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを含有する反応混合物としてメタクロレインを製造する
ことを包含するメタクリル酸メチルの製造方法が提供される。
【0029】
次に、本発明の理解を容易にするために、まず、本発明の基本的諸特徴及び好ましい態様を列挙する。
1.(1)イソブチレン及びtert−ブタノールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の出発物質を触媒の存在下で分子状酸素と気相接触酸化反応させて、メタクロレインガス及び水蒸気を含有するガス(a)を得、
(2)ガス(a)を脱水塔の下部に、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(I)を脱水塔の上部にそれぞれ導入し、流下する液状混合物(I)をガス(a)と脱水塔中で向流接触させて、液状混合物(I)を気化してメタクロレインガス及びメタノールガスを含む混合ガス(I ’)を発生させると共に、ガス(a)に含まれる水蒸気を凝縮させ、生成した凝縮水を脱水塔底部より抜き出してガス(a)を脱水する一方、ガス(a)の脱水によって得られる脱水メタクロレイン含有ガス(a’)を混合ガス(I ’)と共に、メタクロレインガス及びメタノールガスを含む脱水混合ガス(b)として脱水塔最上部から抜き出し、
【0030】
(3)脱水混合ガス(b)を吸収塔の下部に導入すると共に、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(II)の、脱水混合ガス(b)中のメタクロレインガスとメタノールガスの実質的に全量を吸収するのに十分の量を吸収塔の上部に導入し、流下する液状混合物(II)を脱水混合ガス(b)と吸収塔中で向流接触させて脱水混合ガス(b)中のメタクロレインガスとメタノールガスの実質的に全量を液状混合物(II)に吸収させ、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(III )を得、液状混合物(III )を吸収塔底部から抜き出し、
(4)抜き出された液状混合物(III )を酸化的エステル化反応器に導入し、反応器中で液状混合物(III )に含まれる液状メタクロレイン及び液状メタノールを、分子状酸素及びパラジウム系触媒の存在下で酸化的エステル化反応させることにより、メタクリル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを含有する反応混合物としてメタクリル酸メチルを製造する
ことを包含するメタクリル酸メチルの製造方法。
【0031】
2.液状混合物(I)及び/又は(II)が、酸化的エステル化反応によって得られる反応混合物から分離して得られる、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(IV)であることを特徴とする前項1に記載の方法。
3.脱水塔内における液状混合物(I)とガス(a)の向流接触を、温度が10〜60℃、圧力が0.2〜3.0kg/cm2 条件下で行うことを特徴とする前項1または2に記載の方法。
4.吸収塔内における液状混合物(II)と脱水混合ガス(b)の向流接触を、温度が−25〜10℃、圧力が0.2〜3.0kg/cm2 の条件下で行うことを特徴とする前項1〜3のいずれかに記載の方法。
5.脱水塔における液状混合物(I)の供給量が、ガス(a)1Nm3 (Nm3 は、標準条件である0℃、1気圧で測定したm3 値を示す)に対し10〜500gであることを特徴とする前項1〜4のいずれかに記載の方法。
【0032】
6.吸収塔における液状混合物(II)の供給量が、ガス(b)1Nm3 (Nm3 は、標準条件である0℃、1気圧で測定したm3 値を示す)に対し50〜1000gであることを特徴とする前項1〜5のいずれかに記載の方法。
7.液状混合物(I)中の液状メタクロレイン及び液状メタノールの含有量が、液状混合物(I)に対してそれぞれ5〜60重量%及び40〜95重量%であり、液状混合物(II)中の液状メタクロレイン及び液状メタノールの含有量が、液状混合物(II)に対してそれぞれ5〜60重量%及び40〜95重量%であることを特徴とする前項1〜6のいずれかに記載の方法。
8.該液状混合物(IV)が、該液状混合物(IV)に対して25重量%を超えない量のメタクリル酸メチルを更に含有することを特徴とする前項2〜7のいずれかに記載の方法。
9.液状混合物(III )中の液状メタクロレインの含有量が液状混合物(III )に対して25〜69重量%であり、かつ、液状混合物(III )における液状メタクロレインの液状メタノールに対する重量比が0.33〜2.2であることを特徴とする前項1〜8のいずれかに記載の方法。
【0033】
以下、本発明について詳細に述べる。
まず、液状混合物(I)、(II)、(III )及び(IV)について、それらの定義を以下に示す。
液状混合物(I):本発明の方法において、脱水塔の上部に供給され、メタクロレイン及び水蒸気を含むガス(a)の脱水のために用いられる、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物。この液状混合物(I)は、下記の液状混合物(IV)であることができる。
液状混合物(II):本発明の方法において、吸収塔の上部に供給され、脱水混合ガス(b)中のメタクロレインガスとメタノールガスの実質的に全量を吸収させるために用いられる、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物。この液状混合物(II)は、下記の液状混合物(IV)であることができる。
【0034】
液状混合物(III ):本発明の方法において、吸収塔中で脱水混合ガス(b)中のメタクロレインガスとメタノールガスの実質的に全量を、上記液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(II)に吸収させることによって得られ、吸収塔底部から抜き出された後、上記酸化的エステル化(直メタ)反応の原料として用いられる、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物。
液状混合物(IV):本発明において、上記直メタ反応により得られる、メタクリル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを含む反応混合物から分離して得られる、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物。この液状混合物(IV)は、リサイクルして、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む上記液状混合物(I)及び/又は(II)として脱水塔の上部及び/又は吸収塔の上部に供給することができる。
【0035】
本発明においては、まず、イソブチレン及びtert−ブタノールよりなる群から選ばれる少なくとも1つの出発物質を触媒の存在下で分子状酸素と気相接触酸化反応させて、メタクロレイン及び水蒸気を含有するガス(a)を調製する。このようなガス(a)の調製法としては、種々の常法が知られているので、それらの中から適切なものを選択することができる。
【0036】
次いで、上記ガス(a)を脱水塔の下部に、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(I)を脱水塔の上部にそれぞれ導入し、ガス(a)を液状混合物(I)と脱水塔中で向流接触させる。この向流接触によって、液状混合物(I)は気化し、メタクロレインガス及びメタノールガスを含む混合ガス(I ’)となる。この時、ガス(a)に含まれる水蒸気から気化潜熱が奪われるために、この水蒸気は凝縮し、ガス(a)から分離されて流下し、脱水塔底部より分離水として抜き出される。その結果、ガス(a)は脱水され、脱水メタクロレイン含有ガス(a’)が得られる。以上のようにして得られたガス(a’)を、混合ガス(I ’)と共に上記脱水塔最上部よりメタクロレインガス及びメタノールガスを含む脱水混合ガス(b)として抜き出す。
【0037】
本発明で用いられる脱水塔の形式については、通常の蒸留塔として用いられるものであれば特に制限はなく、棚段塔、充填塔何れでも使用することができる。本発明では、脱水塔に易重合性物質であるメタクロレインが導入されることから、重合物で閉塞し難い構造、又は重合物で閉塞した場合、閉塞物除去が容易な形式が好ましい。具体的にはシーブトレー、カスケードトレー、ターボグリッドトレー、リップルトレー等を装着した棚段塔及びメラパック、スルーザーパック(共に日本国、住友重機械工業製)等を規則的に充填した充填塔が挙げられる。
【0038】
本発明の方法においては、上記脱水塔内における上記液状混合物(I)とガス(a)の向流接触を、温度が10〜60℃、圧力が0.2〜3.0kg/cm2 の条件下で行うことが好ましく、温度が10〜40℃、圧力が0.5〜2.0kg/cm2 の条件下で行うことが更に好ましい。このような条件であれば、メタクロレインの含有量がメタクロレイン/メタノールの重量比で1.0〜4.9と高い、メタクロレイン及びメタノールガスを含む脱水混合ガス(b)を脱水塔最上部より得ることが可能である。脱水塔内での向流接触を温度が60℃を超えるか、圧力が3.0kg/cm2 を超える条件下で行うと、脱水塔を小型化できる点では好ましいが、温度上昇によりメタクロレインの重合物が増加し、重合によるメタクロレインの損失の増加や、重合物による装置の閉塞を来たす傾向があるため好ましくない。
【0039】
さらに、本発明の方法において、上記メタクロレイン合成反応を行うための反応器と上記脱水塔を配管で接続し、反応器で調製されたガス(a)を直接、連続的に脱水塔下部に導入する場合、脱水塔内の圧力が3.0kg/cm2 を超える条件下で上記向流接触を行うと、メタクロレイン合成反応におけるメタクロレインの選択率が低下するため好ましくない。
【0040】
一方、脱水塔内での向流接触を温度が10℃より低いか、圧力が0.2kg/cm2 より低い条件下で行うと、重合によるメタクロレインの損失が減少し、上記脱水混合ガス(b)中のメタクロレイン含有量が増加する点では好ましいが、脱水塔が大型化するとともに、脱水塔の温度を下げるための冷凍機の負荷が増加し好ましくない。
【0041】
上記液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(I)中の液状メタクロレイン及び液状メタノールの含有量は、液状混合物(I)に対し液状メタクロレイン5〜60重量%、液状メタノール40〜95重量%が好ましく、さらに好ましくは液状メタクロレイン10〜50重量%、液状メタノール40〜75重量%である。なお、本発明の方法においては、直メタ反応により得られる、メタクリル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを含む反応混合物を分離操作にかけ、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(IV)を得てリサイクルし、これを液状混合物(I)として脱水塔に供給することができる。
【0042】
また、液状混合物(I)の水分含有量は、可能な限り低いことが望ましい。本発明の方法における液状混合物(I)中の水分含有量は、好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.2重量%以下である。液状混合物(IV)を液状混合物(I)として脱水塔に供給する場合、直メタ反応によって得られるメタクリル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを含有する反応混合物を、例えば、後述する図3に示すように、蒸留塔に供給し、通常の操作で蒸留することにより、分離されて得られる液状混合物(IV)中の水分含有量は、通常上記の範囲内にある。
【0043】
また、液状混合物(I)は、直メタ反応に大きな影響を与えるものでない限り、メタクロレイン及びメタノール以外の物質を含有していてもよい。例えば、液状混合物(IV)を液状混合物(I)として脱水塔に供給する場合、液状混合物(IV)は、メタクロレインの合成反応における副生物に加え、通常1〜25重量%のメタクリル酸メチル及び若干量の直メタ反応における副生物を含有する。これらの副生物の主なものは、アセトン、蟻酸メチル、酢酸メチル、アクリル酸メチル等であるが、液状混合物(I)がこれらを含有しても、直メタ反応の原料となる液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(III )中のメタクロレイン及びメタノールの含有量を若干低下させるのみで、直メタ反応に影響を与えることはない。
【0044】
また、脱水塔に供給されるメタクロレイン及び水蒸気を含有するガス及び液状混合物(I)の成分であるメタクロレインは、易重合性物質として知られるものであるので、その重合を抑制し、重合物による塔槽類、熱交換器、配管等の閉塞や汚れを防止するため、ハイドロキノン等の重合禁止剤を脱水塔内の液相に添加してもよい。添加する場合、重合禁止剤の濃度は10重量ppm〜1,000重量ppmが好ましい。この重合禁止剤は、脱水塔の上部から供給してもよいし、液状混合物(I)に必要量混合し供給してもよい。
【0045】
本発明において、液状混合物(I)の脱水塔への供給量は、ガス(a)の脱水に係る諸条件、すなわち、脱水塔内での向流接触の温度及び圧力条件、ガス(a)の水分含有量及び供給量等により異なり、一義的には決められないが、供給された液状混合物(I)の殆どが気化し得る量であることが必要である。この条件を満足するためには、通常、液状混合物(I)の供給量は、ガス(a)1Nm3 に対し10〜500gとすることが好ましく、より好ましくは30〜200gである。
“Nm3 ”は、標準条件である0℃、1気圧で測定したm3 を意味する。液状混合物(I)の供給量をこの適正な範囲に保つことによって、脱水塔最上部より抜き出されるメタクロレイン及びメタノールガスを含む脱水混合ガス(b)の水分含有量を、水/メタクロレインの重量比で0.001〜0.03まで減少させ、同時にメタクロレイン含有量を、メタクロレイン/メタノールの重量比で1.0〜4.9まで高めることができる。液状混合物(I)の供給量がガス(a)1Nm3 に対し500gを超えると、脱水混合ガス(b)の水分含有量は減少するが、液状混合物(I )中のメタクロレイン及びメタノールの一部が脱水塔底部に流下し、脱水塔底部から抜き出される分離水に混入するため、分離水からメタクロレイン及びメタノールを回収する操作工程が必要となり好ましくない。逆に、液状混合物(I)の供給量がガス(a)1Nm3 に対し10gに満たないと、脱水混合ガス(b)の水分含有量が増加してしまい好ましくない。
【0046】
また、本発明においては、メタクロレイン及び水蒸気を含有するガス(a)を、脱水塔に導入する前に、所定の温度まで間接的及び/又は直接的に冷却することが好ましい。冷却する場合、ガス(a)の圧力が1.0kg/cm2 の場合で30〜60℃まで冷却することが好ましく、40〜50℃まで冷却することがより好ましい。ガス(a)には、メタクロレイン及び水蒸気の他、メタクロレイン合成反応における高沸点副生物等が含まれているが、この冷却により水蒸気の大半や高沸点副生物等が脱水塔に供給されるのを簡便に抑制することができる。ガス(a)を冷却することなくそのまま脱水塔に直接供給し、液状混合物(I)と向流接触させると、ガス(a)の脱水に必要な液状混合物(I)の量が増大する結果、後述する液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(III )のメタクロレイン含有量が低下するため好ましくない。
【0047】
ガス(a)の冷却を行う方法の具体的な例として、次の方法を挙げることができる。すなわち、上部及び下部よりクエンチ水を供給可能な急冷塔の底部にガス(a)を供給し、急冷塔下部より供給されたクエンチ水と接触させて冷却する。冷却によりガス(a)に含まれる水蒸気の大半が凝縮して凝縮水となり、急冷塔底部に流下する。凝縮水は急冷塔底部より系外へ排出する。ガス(a)中の高沸点物質(メタクロレイン合成反応の際に副生する、メタクリル酸、アクリル酸、酢酸、マレイン酸等の水溶性の有機酸、及びそれら副生有機酸、あるいは合成されるメタクロレイン等の環状2量化反応で生成する、例えば、フルフラール、テレフタル酸等)も凝縮水と共に系外へ排出される。この凝縮水を冷却用熱交換器等にて冷却後、クエンチ水としてリサイクルすることもできるが、この凝縮水中の高沸点物質により、凝縮水の冷却のための冷却用熱交換器等の熱交換部が汚れ、甚だしい場合は熱交換器等の閉塞に至る恐れがある。このため、凝縮水をクエンチ水としてリサイクルする場合、急冷塔の下部と上部でクエンチ水の供給源を別にし、急冷塔底部より抜き出し、リサイクルした凝縮水は急冷塔下部のみに供給し、急冷塔上部より供給するクエンチ水は、急冷塔中間部より抜き出した凝縮水及び/又は他から供給されたクエンチ水を冷却し供給することが好ましい。また、工業的に意味のある連続運転をするために、フラッシング水等で析出物の付着を低減したり、付着物を除去することは好ましい態様である。このような操作を行いやすくするため、急冷塔の底部は気液接触の効率を向上させるための棚段、又は充填物段等を設けず、空塔又は槽型式とすることが好ましい。この場合、気液接触は急冷塔下部から供給したクエンチ水をガス(a)に直接スプレーすることによって行う。なお、上記脱水塔の底部より抜き出される分離水をクエンチ水として使用し、分離水中に少量含まれるメタノール、メタクロレイン及びメタクリル酸メチルをガス(a)中に気化せしめて、これらの損失を減少させることは好ましい。
【0048】
この急冷塔底部における急冷工程で、ガス(a)は好ましくは室温〜95℃、より好ましくは30〜80℃に速やかに冷却され、部分的に脱水される。ガス(a)の温度が95℃を超えるとメタクロレインの重合が起こり、逆に、室温未満であるとテレフタル酸のような高沸点物質が急冷塔底部の器壁や配管に析出する。
【0049】
この後、冷却され、部分的に脱水されたガス(a)は、急冷塔最上部に向かって上昇する際にクエンチ水と向流接触し、圧力1.0kg/cm2 の場合、急冷塔最上部における温度が好ましくは30〜60℃、より好ましくは40〜50℃となるよう更に冷却され、急冷塔最上部より抜き出された後、脱水塔下部に供給される。
【0050】
急冷塔中の、クエンチ水と部分的に脱水されたガス(a)の向流接触が起こる領域の形式については、通常の蒸留塔において用いられるものであれば特に制限はなく、棚段塔、充填塔何れでも使用することができる。本発明では、急冷塔に易重合性物質であるメタクロレインが導入され、また、高沸点物質(テレフタル酸等)の析出が起こりやすいことから、重合物や析出物で閉塞し難い構造、又は重合物や析出物で閉塞した場合、閉塞物除去が容易な形式が好ましい。具体的にはシーブトレー、カスケードトレー、ターボグリッドトレー、リップルトレー等を装着した棚段塔及びメラパック、スルーザーパック(共に日本国、住友重機械工業製)等を規則的に充填した充填塔が挙げられる。
【0051】
上記したように、ガス(a)を、もし望まれるならば、まず急冷塔を用いて冷却した後、脱水塔を用いて脱水し、メタクロレインガス及びメタノールガスを含む脱水混合ガス(b)を得ることができる。
なお、一本の塔の下部を急冷塔、上部を脱水塔として機能させることもできる。
【0052】
次に、脱水塔最上部から抜き出されたメタクロレインガス及びメタノールガスを含む脱水混合ガス(b)を吸収塔の下部に導入すると共に、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(II)の、脱水混合ガス(b)中のメタクロレインガスとメタノールガスの実質的に全量を吸収するのに十分の量を吸収塔の上部に導入し、流下する液状混合物(II)を脱水混合ガス(b)と吸収塔中で向流接触させる。これにより、ガス(b)中のメタクロレインガスとメタノールガスの実質的に全量が液状混合物(II)に吸収されて、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(III )が得られる。得られた液状混合物(III )は、吸収塔底部から抜き出される。
【0053】
本発明で用いられる吸収塔の形式については、通常の蒸留塔として用いられるものであれば特に制限はなく、棚段塔、充填塔何れでも使用することができる。本発明では、吸収塔に易重合性物質であるメタクロレインが導入されることから、重合物で閉塞し難い構造、又は重合物で閉塞した場合、閉塞物除去が容易な形式が好ましい。具体的にはシーブトレー、カスケードトレー、ターボグリッドトレー、リップルトレー等を装着した棚段塔及びメラパック、スルーザーパック(共に日本国、住友重機械工業製)等を規則的に充填した充填塔が挙げられる。この吸収塔内における液状混合物(II)と脱水混合ガス(b)の向流接触は、温度が−25℃〜10℃、圧力が0.2〜3.0kg/cm2 の条件下で行うことが好ましい。
【0054】
液状混合物(II)中の液状メタクロレイン及び液状メタノールの含有量は、メタクロレイン5〜60重量%、メタノール40〜95重量%が好ましく、さらに好ましくは液状メタクロレイン10〜50重量%、液状メタノール40〜75重量%である。なお、本発明の方法においては、直メタ反応により得られる、メタクリル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを含む反応混合物を分離操作に付し、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(IV)を得てリサイクルし、これを液状混合物(II)として吸収塔に供給することができる。
【0055】
また、液状混合物(II)の水分含有量は、可能な限り低いことが望ましい。本発明における液状混合物(II)中の水分含有量は、好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.2重量%以下である。液状混合物(IV)を液状混合物(II)として吸収塔に供給する場合、直メタ反応によって得られるメタクリル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを含有する反応混合物を、例えば、図3に示すように、蒸留塔に供給し、通常の操作で蒸留して得られる液状混合物(IV)中の水分含有量は、上記の好ましい水分含有量の範囲に入る。
【0056】
また、液状混合物(II)は直メタ反応に大きな影響を与えるものでない限り、メタクロレイン及びメタノール以外の物質を含有していてもよい。例えば、液状混合物(IV)を液状混合物(II)として吸収塔に供給する場合、液状混合物(IV)はメタクロレイン合成反応における副生物に加え、通常1〜25重量%のメタクリル酸メチル及び若干量の直メタ反応における副生物を含有する。これらの副生物の主なものは、アセトン、蟻酸メチル、酢酸メチル、アクリル酸メチル等であるが、液状混合物(II)がこれらを含有しても、直メタ反応の原料となる液状混合物(III )のメタクロレイン及びメタノールの含有量を若干低下させるのみで、直メタ反応に影響を与えることはない。
【0057】
なお、後述する通り、液状混合物(III )のメタクロレイン含有量が高すぎると、直メタ反応に用いるパラジウム系触媒の活性の低下や、直メタ反応におけるメタクリル酸メチル選択率の低下が起こり好ましくない。そのため、吸収塔に液状混合物(II)を導入した場合に得られる液状混合物(III )のメタクロレイン含有量が高すぎる場合には、液状混合物(II)の代わりに、メタノールを液状混合物(II)に添加して得られる液状混合物を吸収塔に供給することが望ましい。その場合には、液状混合物(III )のメタクロレイン含有量が直メタ反応用の原料として好ましい範囲(メタクロレイン含有量が25重量%以上であり、かつ、メタクロレイン/メタノールの重量比が0.33以上)を下回ることのないようにすることが好ましい。
【0058】
本発明の方法において、液状混合物(II)の吸収塔への供給量は、メタクロレイン含有ガスの吸収に係る諸条件、すなわち、吸収塔内の温度及び圧力、ガス(b)の供給量等により異なり、一義的には決められないが、通常、ガス(b)1Nm3 に対し50〜1000gとすることが好ましく、より好ましくは100〜500gである。
以上の方法で得られた液状混合物(III )に含まれる液状メタクロレイン及び液状メタノールを、分子状酸素及びパラジウム系触媒の存在下で酸化的エステル化反応(直メタ反応)させることにより、メタクリル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを含有する反応混合物としてメタクリル酸メチルを製造する。
【0059】
液状混合物(III )の水分含有量は、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下、更に好ましくは1.0重量%以下である。また、液状混合物(III )のメタクロレイン含有量は25重量%以上であり、かつ、メタクロレイン/メタノールの重量比が0.33以上であることが好ましい。液状混合物(III )のメタクロレイン含有量の上限は、直メタ反応におけるメタクロレイン/メタノールの化学量論的量比に相当する量であるが、メタクロレイン含有量が高すぎるとパラジウム系触媒の活性の低下と共にメタクリル酸メチル選択率の低下をもたらすため、通常液状混合物(III )のメタクロレイン含有量は69重量%以下であり、かつ、メタクロレイン/メタノールの重量比が2.2以下であることが好ましい。それ故、液状混合物(III )のメタクロレイン含有量が高すぎる場合は、液状混合物(III )をメタノール又はメタノールを含有する液状混合物で希釈して、メタクロレイン含有量とメタクロレイン/メタノール重量比が上記の範囲に含まれるようにした液状混合物を直メタ反応器に供給し、直メタ反応を行うことが望ましい。
【0060】
酸化的エステル化反応(直メタ反応)によりメタクリル酸メチルを合成する方法は、公知の方法、例えば、特公昭57−035856号、特公昭57−035857号、特公昭57−035859号、特公昭62−007902号、特公平5−069813号等に開示された方法から適宜選択すればよい(特公昭57−035856号、特公昭57−035857号及び特公昭57−035859号は米国特許第4, 249, 019号に対応。特公昭62−007902号はオーストラリア国特許第518930号に対応。)
【0061】
本発明に用いられるパラジウム系触媒としては、例えば、パラジウムと鉛を担体に担持して得られる担持触媒を用いることができる。
触媒成分としてはパラジウム、鉛の他に異種元素として、例えば、水銀、タリウム、ビスマス、テルル等を含んでもよい。これらの異種元素を5重量%を超えない範囲で含むことが好ましく、1重量%を超えない範囲で含むことがより好ましい。
【0062】
さらに、上記触媒はアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物を含んでいてもよい。アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を0.01〜30重量%含むことが好ましく、0.01〜5重量%含むことがより好ましい。アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物は、触媒調製時にパラジウム化合物あるいは鉛化合物を含む溶液に加えておき、担体に吸着あるいは付着させてもよいし、予めこれらを担持した担体を用いることもできる。また、その代りに、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を含む溶液を、直メタ反応液中に添加することもできる。
【0063】
担体は活性炭、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、マグネシア、シリカ−アルミナ−マグネシアなどから広く選ぶことができる。
担体へのパラジウム担持量は特に制限はないが、好ましくは担体重量に対して通常0.1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%である。鉛の担持量も特に制限はないが、好ましくは担体重量に対して0.05〜17重量%、より好ましくは0.45〜8.5重量%である。パラジウム/鉛の原子比は、好ましくは3/0.7〜3/1.3の範囲、より好ましくは3/0.9〜3/1.1である。
【0064】
触媒の使用量は、反応原料の組成、触媒の組成、反応条件、反応型式などにより異なるため、一義的には決められないが、触媒をスラリー状態で反応させる場合は、反応液1リットル中に0.04〜0.5kg使用するのが好ましい。
直メタ反応は気相反応、液相反応、灌液反応などの任意の従来公知の方法で実施できる。例えば、液相で実施する際には、気泡塔反応器、ドラフトチューブ型反応器、攪拌槽反応器などの任意の反応器を用いることができる。
直メタ反応では分子状酸素を使用する。分子状酸素としては、酸素ガス自体または酸素ガスを反応に不活性な希釈剤、例えば、窒素、炭酸ガスなどで希釈した混合ガスを用いることができ、空気を用いることもできる。
【0065】
また、この反応を連続的に実施する際には、鉛化合物を溶解含有する溶液を反応器に加えながら反応を行うことで、パラジウム系触媒の劣化を抑制できる。鉛化合物を溶解含有する溶液中の鉛濃度は、反応原料の組成、触媒の組成、反応条件、反応型式などにより異なるため、一義的には決められないが、反応器のガス排出口から排出されるガスの酸素分圧に合わせて鉛化合物の添加量を決定して反応器に供給することで、パラジウム系触媒のパラジウム/鉛の原子比を反応中でも安定に3/0.7〜3/1.3の範囲に維持することができる。例えば、鉛化合物の添加量は、反応器のガス排出口から排出されるガスの酸素分圧を0.02〜0.8kg/cm2 に設定し、これに合わせて反応器に添加する鉛化合物を溶解含有する溶液中の鉛濃度を0.1〜2000重量ppmの範囲で必要最小限の濃度とすることにより決定できる。設定する酸素分圧が低いほど、鉛濃度を低くすることができる。鉛化合物の添加量が多過ぎると、排水中の鉛を無害化するための処理コストが高くなったり、反応副生物の蟻酸メチルの量が多くなるなど好ましくないため、反応器のガス排出口から排出されるガスの酸素分圧を0.4kg/cm2 以下として、鉛化合物の添加量を減らすことが好ましい。さらに好ましくは酸素分圧を0.2kg/cm2 以下にすることもできるが、酸素が不足すればメタクロレイン転化率が低下したり、不都合な副生物が生成するため、これらの悪影響が出ない範囲で選べばよい。なお、反応器のガス排出口から排出されるガスの酸素濃度は、爆発限界(8体積%)を超えない範囲とする。
【0066】
反応圧力は、減圧下から加圧下までの任意の広い範囲から選ぶことができるが、通常は0.5〜20kg/cm2 である。
また、反応系にアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の化合物、例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩などから選ばれる少なくとも一つの化合物を添加し、反応系のpHを6〜9に保持することが好ましい。
また、反応はメタクロレイン濃度が高い場合、100℃を超える高温でも実施できるが、好ましくは30〜100℃であり、より好ましくは60〜90℃である。
反応時間は特に限定されるものではなく、設定した条件により異なるので一義的には決められないが、通常1〜20時間である。
【0067】
以上の条件で直メタ反応を行うことにより、主反応生成物としてのメタクリル酸メチルを含む反応混合物が得られる。この反応混合物は、メタクリル酸メチルの他に、未反応メタクロレイン、未反応メタノールを含み、副生物として若干量の水及びメタクリル酸を含む。この反応混合物中には更に、微量副生物として蟻酸メチル、イソ酪酸メチル、イソブチルアルデヒド、酢酸メチル、アクリル酸メチル等が含まれる。
【0068】
この反応混合物を蒸留塔(図3に示すJ)の中間部に供給し蒸留を行うと、メタクロレイン及びメタノールの共沸混合物(常圧で共沸点58℃、メタノール/メタクロレイン=45.7モル%/54.3モル%)が蒸留塔上部より留出する。この時、蒸留塔内に過剰のメタノールが存在すると、過剰のメタノールと直メタ反応で生成したメタクリル酸メチルの一部が共沸混合物(常圧で共沸点64.5℃、メタノール/メタクリル酸メチル=93.4モル%/6.6モル%)となって、上記のメタクロレイン/メタノール共沸混合物と共に留出する。この蒸留において、蒸留塔上部より留出する液体が液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(IV)である。必要であれば液状混合物(IV)を脱水塔及び/又は吸収塔にリサイクルし、液状混合物(I )及び又は(II)として用いることができる。
【0069】
メタノールとメタクリル酸メチルの共沸が起こる場合、液状混合物(IV)中にメタクリル酸メチルが混入する。この液状混合物(IV)が液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(I )及び/又は(II)として用いられ、上記脱水塔の上部及び/又は吸収塔の上部に供給される場合、液状混合物(IV)中に混入したメタクリル酸メチルも、脱水塔の上部及び/又は吸収塔の上部に供給されるが、特に問題は生じない。
【0070】
一方、上記の蒸留塔(図3に示すJ)の底部からは、液状メタクリル酸メチル及び水を含む液状混合物が得られる。この液状混合物を公知の精製方法にて精製することにより、メタクリル酸メチルを得ることができる。例えば、上記の液状メタクリル酸メチル及び水を含む液状混合物を層分離槽に導入し、上層と下層に分離させた後、メタクリル酸メチルを含む上層を別の蒸留塔に導入して蒸留し、この蒸留により上層に含まれる高沸点物質及び低沸点物質を除去し、メタクリル酸メチルを分離することにより、高純度メタクリル酸メチルを得ることができる。なお、上記の液状メタクリル酸メチル及び水を含む液状混合物は、上記微量副生物(イソ酪酸メチル、イソブチルアルデヒド、酢酸メチル、アクリル酸メチル等)を含むが、これらはメタクリル酸メチルを精製する際に系外へ分離除去される。
【0071】
また、上記微量副生物の一部は、上記液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(IV)にも混入する。したがって、液状混合物(IV)を上記脱水塔及び/又は吸収塔へリサイクルして液状混合物(I)及び/又は(II)として用いる場合に、上記微量副生物が液状混合物(I)及び/又は(II)にも混入することになるが、その量は、脱水塔や吸収塔の操作条件に影響を与えるほど多くはない。また、上記微量副生物は、液状混合物(IV)の蒸留による分離の条件にも影響を与えない。
【0072】
本発明の方法で用いられる、液状混合物(IV)を塔上部より得、上記の液状メタクリル酸メチル及び水を含む液状混合物を塔下部より得るための蒸留塔(図3に示すJ)の形式については、通常の蒸留塔として用いられるものであれば特に制限はなく、棚段塔、充填塔何れでも使用することができる。本発明の方法では、蒸留塔に易重合性物質であるメタクロレイン、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸が導入されることから、重合物で閉塞し難い構造、又は重合物で閉塞した場合、閉塞物除去が容易な形式が好ましい。具体的にはシーブトレー、カスケードトレー、ターボグリッドトレー、リップルトレー等を装着した棚段塔及びメラパック、スルーザーパック(共に日本国、住友重機械工業製)等を規則的に充填した充填塔が挙げられる。
【0073】
上記の蒸留塔( 図3に示すJ)の操作温度は、蒸留塔操作圧力、液組成、段数等により異なり、一義的に決められないが、易重合性物質であるメタクロレイン、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸に由来する重合物の生成や、高沸物生成によるメタクロレイン及びメタクリル酸メチルのロスを最小限に抑制するためには、より低温であることが望ましい。しかし、操作温度が低過ぎると、操作圧力の低下に伴い蒸留塔が大型化したり、塔頂気相部における凝縮に冷媒が必要となるため好ましくない。蒸留塔の操作温度は、塔底液の温度が好ましくは70〜100℃、より好ましくは70〜85℃となる温度であり、操作圧力は500Torr程度の減圧から2kg/cm2 であることが好ましい。
【0074】
上述した如く、液状混合物(IV)を塔上部より得、上記の液状メタクリル酸メチル及び水を含む液状混合物を塔下部より得るために用いられる蒸留塔(図3に示すJ)内に、易重合性物質であるメタクロレイン、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸が導入されるため、蒸留塔内の液相に重合禁止剤を10〜1,000重量ppm添加するのが好ましい。この重合禁止剤は、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(IV)を脱水塔の上部及び/又は吸収塔の上部にリサイクルする場合、液状混合物(IV)中のメタクロレインのリサイクル配管中での重合を抑制するのにも役立つ。通常、重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、フェノチアジン等が用いられる。
【0075】
次に、図1及び図3に基づいて本発明の一態様を説明する。
図1に示すように、イソブチレン及びtert−ブタノールよりなる群から選ばれる少なくとも1つの出発物質を触媒の存在下で分子状酸素と気相接触酸化反応させて得られた、メタクロレイン及び水蒸気を含有するガス(a)(1)を急冷塔(A)の底部に供給し、急冷塔下部より供給されるクエンチ水(2)と接触させて冷却する。冷却により生じた凝縮水は、廃水(3)として系外へ排出する。ガス(a)中の高沸点物質(メタクロレイン合成反応の際に副生する、メタクリル酸、アクリル酸、酢酸、マレイン酸等の水溶性の有機酸、及びそれら副生有機酸、あるいは合成されるメタクロレイン等の環状2量化反応で生成する、例えば、フルフラール、テレフタル酸等)も凝縮水と共に廃水(3)として系外へ排出される。この急冷工程で、ガス(a)は好ましくは室温〜95℃、より好ましくは30〜80℃に速やかに冷却される。
【0076】
この後、冷却されたガス(a)は急冷塔最上部に向かって上昇する際に、急冷塔(A)上部より供給されて流下するクエンチ水(2’)と向流接触し、圧力1.0kg/cm2 の場合、急冷塔最上部における温度が好ましくは30〜60℃、より好ましくは40〜50℃となるよう更に冷却されて、部分的に脱水されたメタクロレイン及び水蒸気を含有するガス(4)として、脱水塔(B)下部に供給される。
【0077】
一方、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(I)(5)を脱水塔(B)上部に供給して流下させ、部分的に脱水されたガス(4)と向流接触させる。この向流接触により液状混合物(I)(5)は、殆どが気化してメタクロレインガス及びメタノールガスを含む混合ガス(I ’)となる。この時、部分的に脱水されたガス(4)中の水蒸気は、気化潜熱を奪われて凝縮し、底部に移行し、脱水塔(B)の底部より分離水(6)として排出される。この脱水により、部分的に脱水されたガス(4)は、脱水メタクロレイン含有ガス(a’)となり、混合ガス(I ’)と共に、メタクロレインガス及びメタノールガスを含む脱水混合ガス(b)(7)として脱水塔(B)最上部より抜き出され、吸収塔下部へ供給される。
【0078】
脱水塔底部より抜き出される分離水(6)は、そのまま系外に排出してもよいが、分離水中に少量含まれるメタノール、メタクロレイン及びメタクリル酸メチルをガス(a)中に気化せしめて、これらの損失を減少させるために、クエンチ水(2)として使用することが好ましい。
なお、本発明の具体例を示すフローシートにおいて、急冷塔(A)と脱水塔(B)を分けて二本の塔としているが、一本の塔の下部を急冷塔(A)、上部を脱水塔(B)として機能させることもできる。
【0079】
脱水塔(B)の最上部より得られた脱水混合ガス(b)(7)は、吸収塔(C)の下部に供給される。吸収塔(C)ではガス(b)を吸収塔の上部より供給される液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(II)(9)と向流接触させ、ガス(b)中のメタクロレインガスとメタノールガスの実質的に全量を液状混合物(II)に吸収させ、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(III )(8)を吸収塔塔底から得る。
【0080】
液状混合物(II)に吸収されなかった、ロスとなる極微量のメタクロレインを含むガスは、ベントガス(10)として吸収塔(C)の最上部から排出される。このベントガス中には、窒素、酸素、反応副生二酸化炭素、未反応イソブチレン、未反応メタクロレイン等が含まれるが、これらのうち二酸化炭素に変換できるものは、二酸化炭素に変換しメタクロレイン合成反応の反応希釈剤の一部として使用することができる。吸収塔(C)底部から得られる液状混合物(III )(8)は、直メタ反応用の原料として用いられる。
液状混合物(III )(8)のメタクロレイン含有量が直メタ反応に必要な化学量論的量を越える場合は、必要に応じ、メタノール、メタノール及びメタクロレインの混合液又はメタノール、メタクロレイン及びメタクリル酸メチルの混合液で希釈し、所望のメタクロレイン含有量に調整することができる。
【0081】
以上のようにして得られた液状混合物(III )(8)及び分子状酸素(11)を酸化的エステル化(直メタ)反応器(D)に導入し、反応器(D)中で液状混合物(III )(8)に含まれる液状メタクロレイン及び液状メタノールを、分子状酸素及びパラジウム系触媒の存在下で酸化的エステル化反応させることにより、メタクリル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを含有する反応混合物として、メタクリル酸メチルを製造することができる。なお、分子状酸素の希釈に用いた窒素及び未反応酸素は、ベントガス(12)として系外へ排出される。
【0082】
また、もし望まれるならば、図3に示すように、直メタ反応により得られる反応混合物(メタクリル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを含有する)(13)を、メタクロレイン及びメタノールを分離するための分離塔(蒸留塔)(J)に供給して蒸留し、蒸留塔の上部から液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(IV)(25)を分離する。その際、液状メタクリル酸メチル及び水を含む液状混合物(24)は底部から回収され、低沸点副生物(15)は最上部から排出される。得られた液状混合物(IV)を、脱水塔(B)及び/又は吸収塔(C)にリサイクルし、液状混合物(I)及び/又は(II)として用いることができる。
【0083】
次に、メタクロレインをメタノールによって脱水及び吸収し液状混合物として回収し、直メタ反応用の原料として反応器に供給する方法において、直メタ反応により得られる反応混合物からメタノールを分離する従来の方法に用いるシステムの一態様を図2に示す。上記の方法は、特開昭56−87530号公報、特開昭58−157740号公報、特開昭57−9739号公報及び特開昭57−9740号公報に記載されている方法を組み合わせたものである。
図2に示すシステムにおいては、直メタ反応により得られる反応混合物(13)を未反応メタクロレイン分離塔(蒸留塔)( E)の下部へ供給する。未反応メタクロレイン分離塔(E)で分離された未反応液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(16)を直メタ法反応器へリサイクルする。
【0084】
分離塔(E)での蒸留により得られる低沸点副生物(15)は、未反応メタクロレイン分離塔(E)の塔頂から系外に排出される。さらに、液状メタクリル酸メチル及び液状メタノールを含む液状混合物(14)を、未反応メタクロレイン分離塔(E)の底部から未反応メタノール分離塔(F)の下部に供給するとともに、炭素数6〜8の飽和炭化水素(19)を未反応メタノール分離塔(F)の上部から供給し、未反応メタノールの実質的全量と炭素数6〜8の飽和炭化水素(19)とを共沸させ、未反応メタノール分離塔(F)の塔頂から共沸混合物(18)として留出させる。未反応メタノール分離塔(F)の塔底からは、粗メタクリル酸メチル(17)が回収される。
【0085】
次いで、留出してきた上記共沸混合物(18)を層分離槽(G)で層分離させ、上層に分離された主として炭素数6〜8の飽和炭化水素(20)からなる層は、未反応メタノール分離塔(F)にリサイクル供給し、下層に分離された主としてメタノールからなる層(21)を未反応メタノール回収塔(H)に供給して蒸留を行い、塔底からメタノールを抜き出すことによって、脱水及び吸収に用いる回収メタノール(22)を得る。さらに、この未反応メタノール回収塔(H)の塔頂から、炭素数6〜8の飽和炭化水素を、これと共沸する一部のメタノールとともに共沸混合物(23)として回収し、再度層分離槽(G)にリサイクルさせる。前述の操作により、メタノールを分離、回収する。
【0086】
本発明の方法においては、図2に示された未反応メタノール分離塔(F)、層分離槽(G)、未反応メタノール回収塔(H)及びこれを接続する配管が不要になる。このように、直メタ法でメタクリル酸メチルを製造する工程を短縮、簡略化できることの効果は極めて大なるものがある。また、複数の共沸系が存在する未反応メタノール回収塔(H)での運転操作、運転条件変動に伴う重合物による蒸留塔の閉塞、系内蓄積物による層分離条件の変動に伴う層分離物の組成変動等の、メタクリル酸メチル製造プラントの安定運転阻害因子が除去され、直メタ法の工業的実施における難点が払拭される。
【0087】
【発明の実施の形態】
以下に実施例及び比較例によって、本発明を具体的に説明するが、これらは、本発明の範囲を限定するものではない。
実施例及び比較例において用いた測定方法は以、下の通りである。
a)ガス試料中のメタクロレイン、アセトン、イソブチレン及び二酸化炭素の定量は、以下の条件下で、ガスクロマトグラフィーにより行った。
・クロマトグラフ:GC-3BT(日本国、島津製作所製)
・カラム
担体( サポート) :Porapak-QS(米国、Waters社製)
充填カラム長 :5 m
カラム温度 :75℃
・キャリヤーガス:ヘリウム
・検出器:熱伝導型検出器(TCD)
【0088】
b)ガス試料中の酸素、窒素及び一酸化炭素の定量は、以下の条件下で、ガスクロマトグラフィーにより行った。
・クロマトグラフ:GC-3BT(日本国、島津製作所製)
・カラム
担体 :Molecular Sieve 5A(日本国、島津製作所製)
充填カラム長:3 m
カラム温度 :70℃
・キャリヤーガス:アルゴン
・検出器:TCD
【0089】
c)液体試料中のメタクロレイン、メタノール及びメタクリル酸メチルの定量は、以下の条件下で、ガスクロマトグラフィーにより行った。
・クロマトグラフ:GC-9A (日本国、島津製作所製)
・カラム
担体 :Chromosorb 101(米国、Manvile corporation 製、日本国、島津GLCセンターより発売)
充填カラム長:4 m
カラム温度 :120〜180℃まで昇温
・キャリヤーガス:ヘリウム
・検出器:水素炎検出器(FID)
【0090】
d)液体試料中のメタクリル酸の定量は、以下の条件下で、ガスクロマトグラフィーにより行った。
・クロマトグラフ:GC-4CPTF(日本国、島津製作所製)
・カラム
固定相液体/担体:FFAP20/Chromosorb W(日本国、信和化工製、日本国、島津GLCセンターより発売)
充填カラム長 :2 m
カラム温度 :145℃
・キャリヤーガス:ヘリウム
・検出器:FID
【0091】
e)水分含有量は、カールフィッシャー電量法水分計VA-02 (日本国、三菱化成製)を用いて測定した。
f)メタクロレイン転化率(%)は、次の式により求めた。
メタクロレイン転化率(%)=[1−{反応器から排出された反応混合物中のメタクロレインの量(mol )}/{反応器に供給されたメタクロレインの量(mol )}]×100
【0092】
g)メタクリル酸メチル選択率(%)は、次の式により求めた。
メタクリル酸メチル選択率(%)={反応器から排出された反応混合物中のメタクリル酸メチルの量(mol )}×100 /[{反応器に供給されたメタクロレインの量(mol )}−{反応器から排出された反応混合物中のメタクロレインの量(mol )}]
以下の実施例及び比較例では、図1,2及び3を参照して説明する。
【0093】
【実施例1】
常法に従って触媒の存在下イソブチレンの気相接触酸化反応を行い、メタクロレイン及び水蒸気を含有するガス(a)(1)を調製した。このガス(a)(1)を急冷塔(A)に導入し、クエンチ水(2、2’)を用いて44℃に冷却し、含有する水蒸気の大半、酸類及び高沸点物質を除去することにより、部分脱水メタクロレイン含有ガス(4)を得た。得られた部分脱水メタクロレイン含有ガス(4)の組成は、メタクロレイン4.8モル%、水2.7モル%、アセトン等の液状副生物合計0.2モル%、及び窒素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、未反応イソブチレン等の気体合計92.3モル%であった。部分脱水メタクロレイン含有ガス(4)の水分含有量は、水/メタクロレインの重量比で0.14であった。
【0094】
部分脱水メタクロレイン含有ガス(4)を、内径10cm、高さ5m、実段数30のシーブトレイを装着した棚段塔型式の脱水塔(B)の塔底気相部へ、流量3.6Nm3 /hrで供給した。脱水塔(B)の最上段からは、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(I)(5)[組成:メタクロレイン30.0重量%、メタノール69.8重量%、水分含有量(水/メタクロレインの重量比)0.006]にハイドロキノン100重量ppmを加えた溶液を200g/hrで供給した。脱水塔(B)内におけるガス温度は、底部で44℃、最上部で18℃に制御し、上記溶液の温度は25℃に制御した。脱水塔(B)の最上部圧力は1.5kg/cm2 に制御した。以上の条件で部分脱水メタクロレイン含有ガス(4)を更に脱水し、メタクロレイン及びメタノールガスを含む脱水混合ガス(b)(7)を脱水塔(B)の最上部より得た。同時に脱水塔(B)の底部から分離水(6)を抜き出した。
脱水混合ガス(b)(7)の水分含有量は水/メタクロレインの重量比で0.015、メタクロレイン含有量はメタクロレイン/メタノールの重量比で4.3であった。また、分離水(6)中に含まれるメタクロレインの量は、気相接触酸化反応により生成したメタクロレイン量の0.7重量%であった。
【0095】
次いで、上記脱水混合ガス(b)(7)を内径10cm、高さ5m、実段数30のシーブトレイを装着した棚段塔型式の吸収塔(C)の塔底気相部に供給し、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(II)(9)[組成は上記液状混合物(I)(5)に同じ]にハイドロキノン100重量ppmを添加した溶液を吸収塔(C)の最上段から900g/hrで供給した。吸収塔(C)内の塔底液温度は−6℃、最上段の液温度は−3℃に制御し、上記溶液の温度は−3℃に制御した。また、塔最上部圧力は1.4kg/cm2 に制御した。以上の条件で、上記脱水混合ガス(b)(7)中のメタクロレインガスとメタノールガスの実質的に全量を液状混合物(II)(9)に吸収させ、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(III )(8)を吸収塔(C)の底部より得た。 液状混合物(III )(8)の組成は、メタクロレイン53.6重量%、メタノール44.9重量%、水0.7重量%、アセトン等の副生物0.8重量%であった。
【0096】
液状混合物(III )(8)を、液相部が1.2リットルの外部循環型ステンレス製気泡塔型反応器(D)に供給した。この反応器(D)には、シリカ−アルミナ−マグネシア担体にPd及びPbを担持させた触媒[Pdの担体に対する重量比:5重量%、Pd/Pbの組成(原子比):3/1.03]を300g仕込み、上記液状混合物(III )(8)を450g/hrで供給した。また、反応器(D)内液のpHが6.1、反応器(D)内液の鉛濃度が20重量ppmになるように水酸化ナトリウムのメタノール溶液及び酢酸鉛のメタノール溶液を各々反応器(D)に供給した。反応温度は80℃、反応圧力3.0kg/cm2 、反応器(D)のガス排出口より排出されるガス(12)中の酸素分圧は0.095kg/cm2 であった。以上の条件下でメタクロレインの酸化的エステル化反応を行い、メタクリル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを含有する反応混合物(13)を反応器(D)の排出口より得た。この反応におけるメタクロレイン転化率は55.5%、メタクリル酸メチル選択率は86.4%であった。
【0097】
【実施例2】
後述するメタクリル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを含有する反応混合物を分離することにより得られた、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(IV)(25)を、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(I)(5)及び(II)(9)の代わりに脱水塔(B)及び吸収塔(C)にそれぞれ供給した以外は、実施例1と本質的に同様の方法で行った。
後述する反応混合物(13)を、径10cm、高さ6m、実段数45段のシーブトレーを装着した棚段塔形式の蒸留塔(J)の最上段より30段目に供給し、最上部から流下液中のハイドロキノン濃度が100重量ppm以上になるようにハイドロキノンを供給しながら、塔最上部温度30℃、塔底部温度82℃、大気圧で蒸留し、最上段より5段目から液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(IV)(25)を抜き出した。液状混合物(IV)(25)の組成は、メタクロレイン14.1重量%、メタノール70.6重量%、メタクリル酸メチル11.7重量%、アセトン等の液状副生物合計3.5重量%、水1000重量ppm(水分含有量は水/メタクロレインの重量比で0.007)であった。
【0098】
一方、実施例1と同様の方法で得た部分脱水メタクロレイン含有ガス(4)を、実施例1で用いたものと同じ脱水塔(B)に、実施例1と同様の方法で供給した。脱水塔(B)の最上段からは、上記液状混合物(IV)(25)にハイドロキノン100重量ppmを加えた溶液を200g/hrで供給した。脱水塔(B)内におけるガス温度は、脱水塔底部で44℃、塔最上部で13℃に制御し、上記溶液の温度は20℃に制御した。また、脱水塔(B)の最上部圧力は1.5kg/cm2 に制御した。以上の条件で、部分脱水メタクロレイン含有ガス(4)を更に脱水し、メタクロレインガス及びメタノールガスを含む脱水混合ガス(b)(7)を脱水塔(B)の最上部より得た。同時に脱水塔(B)の底部から分離水(6)を抜き出した。脱水混合ガス(b)(7)の水分含有量は水/メタクロレインの重量比で0.014、メタクロレイン含有量はメタクロレイン/メタノールの重量比で4.0であった。また、上記分離水(6)中に含まれるメタクロレインの量は、気相接触酸化反応により生成したメタクロレイン量の0.7重量%であった。
【0099】
次いで、脱水混合ガス(b)(7)を、実施例1で用いたものと同じ吸収塔(C)に、実施例1と同様の方法で供給した。吸収塔(C)の最上段からは、上記液状混合物(IV)(25)にハイドロキノン100重量ppmを加えた溶液を1100g/hrで供給した。吸収塔(C)内の塔底液温度は0℃、塔頂段液の温度は−11℃に制御し、上記溶液の温度は−10℃に制御した。また、塔最上部圧力は1.4kg/cm2 に制御した。以上の条件で、脱水混合ガス(b)(7)中のメタクロレインガスとメタノールガスの実質的に全量を液状混合物(IV)(25)に吸収させ、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(III )(8)を吸収塔(C)の底部より得た。
液状混合物(III )(8)中のメタクロレイン含有率は40.0重量%、メタノールは48.5重量%、メタクリル酸メチルは8.6重量%、アセトン等の副生物は2.4重量%、水は0.5重量%であった。
【0100】
上記液状混合物(III )(8)を、液相部が1.2リットルの外部循環型ステンレス製気泡塔型反応器(D)に、直メタ反応用の原料として供給した。この反応器には、シリカ−アルミナ−マグネシア担体にPd及びPbを担持させた触媒[Pdの担体に対する重量比:5重量%、Pd/Pbの組成(原子比):3/0.99]を300g仕込み、上記液状混合物(III )(8)を450g/hrで供給した。また、反応器(D)内液のpHが6.1、反応器(D)内液の鉛濃度が25重量ppmになるように水酸化ナトリウムのメタノール溶液及び酢酸鉛のメタノール溶液を各々反応器に供給した。反応温度は75℃、反応圧力3.0kg/cm2 、反応器(D)のガス排出口より排出されるガス(12)中の酸素分圧は0.105kg/cm2 であった。以上の条件下でメタクロレインの酸化的エステル化反応を行い、メタクリル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを含有する反応混合物(13)を反応器(D)の排出口より得た。この反応におけるメタクロレイン転化率は58.4%、メタクリル酸メチル選択率は87.8%であった。
【0101】
【比較例1】
常法に従って触媒の存在下イソブチレンの気相接触酸化反応を行い、メタクロレイン及び水蒸気を含有するガス(a)(1)を調製した。このガス(a)(1)を、急冷塔(A)に導入し、クエンチ水(2,2’)を用いて35℃に冷却し、水蒸気の大半、酸類及び高沸点物質を除去することにより、部分脱水メタクロレイン含有ガス(4)を得た。得られた部分脱水メタクロレイン含有ガス(4)の組成は、メタクロレイン4.3モル%、水6.9モル%、アセトン等の液状副生物合計0.1モル%、窒素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素及び未反応イソブチレン等の気体合計88.7モル%であった(水/メタクロレインの重量比:0.39)。
【0102】
部分脱水メタクロレイン含有ガス(4)を内径40mm、長さ60cmの脱水塔(B)(外径3mmφ、長さ4mmのラシヒリングが充填された充填塔)下部の充填物の装着されていない領域の気相部より、流量13Nl/min.(Nlは、標準条件である0℃・1気圧で測定したリットル値を示す)で供給した。脱水塔(B)上部の充填物のない領域より、ハイドロキノン100重量ppmを含有するメタノールを88g/hrで供給した。脱水塔(B)内のガス温度は底部で35℃、最上部で15℃に制御した。以上の条件で部分脱水メタクロレイン含有ガス(4)を更に脱水し、メタクロレインガス及びメタノールガスを含む脱水混合ガス(7)を脱水塔(B)の最上部より得た。同時に脱水塔(B)の底部から分離水(6)を抜き出した。脱水メタクロレイン含有ガス(7)の水/メタクロレインの重量比は0.006であった。
【0103】
脱水混合ガス(7)を内径32mm、30段のオルダーショー型吸収塔(C)の塔底気相部に供給した。また、メタノールを吸収塔(C)の最上段に供給した。吸収塔(C)内における塔底液の温度は10℃、塔最上段液の温度は−11℃に制御し、メタノールの温度は−10℃に制御した。また、塔最上部圧力は1.03kg/cm2 に制御した。以上の条件下で、脱水混合ガス(7)中のメタクロレインガスとメタノールガスの実質的に全量をメタノールに吸収させ、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(8)を吸収塔(C)の底部より得た。
液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(8)の組成は、メタノール81.7重量%、メタクロレイン18重量%、アセトン等の副生物0.1重量%、水0.13重量%であった。
なお、脱水塔(B)の底部より抜き出した分離水(6)中のメタノール及びメタクロレインの量は、それぞれ脱水塔(B)上部より供給したメタノールの0.6重量%、吸収塔(C)で回収されたメタクロレインの0.5重量%であった。
【0104】
【比較例2】
実施例1と同様の方法で得られたメタクリル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを含有する反応混合物(13)を、内径32mm、50段のオルダーショー型蒸留塔(E)の最上段から30段目に184g/hrで供給し、塔底温度76℃、塔最上部温度37℃、塔最上部圧力760torrで蒸留を行い、蒸留塔(E)の底部からメタクリル酸メチル24.3重量%、メタノール65.7重量%、メタクリル酸1.5重量%、水8.5重量%からなる組成の液状混合物(14)を得た。
【0105】
次いで、この液状混合物(14)に重合禁止剤としてフェノチアジン300重量ppmを添加し、内径32mm、60段のオルダーショー型蒸留塔(F)の最上段から20段目に160g/hrで供給し、塔底温度76℃、塔最上部温度40℃、塔最上部圧力520Torrで蒸留を行った。また、蒸留塔(F)中にn−ヘキサン45gが存在するようにn−ヘキサンを蒸留塔(F)の最上段から7段目に供給した。n−ヘキサンの供給段の温度は、59℃にコントロールした。この時、n−ヘキサンは供給段[蒸留塔(F)の最上段から7段目]より上部にしか存在しなかった。しかし、蒸留塔(F)内のn−ヘキサンの存在量が70gとなるよう、n−ヘキサンの供給量を増やしたところ、蒸留塔(F)の圧力損失が増加し、蒸留の継続が不可能になった。オルダーショー型蒸留塔(F)を開放し観察した結果、蒸留塔(F)の供給段の直ぐ下部の段に重合物の存在が認められた。
【0106】
【発明の効果】
本発明のメタクリル酸メチルの製造方法は、従来の製造方法の場合に比してメタクロレイン含有量の高い、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物を酸化的エステル化反応器に導入し、メタクリル酸メチルを効率的に製造することを可能とする。また、従来法に比してメタノールの使用量が少なくて済み、かつ、従来法では必要であったメタノールの分離回収のための設備が不要となるため、メタクリル酸メチルの製造に要する費用を大幅に削減することができる。同時に、上記のメタノールの分離回収のための設備に関連したトラブルが回避されるため、メタクリル酸メチルを安定に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を実施するためのシステムの一例を示す概略図である。
【図2】従来の方法において用いる、直メタ反応によって得られた反応混合物からメタノールを分離回収し、リサイクルすることにより直メタ反応を連続的に行うためのシステムの一例を示す概略図である。
【図3】本発明において用いることができる、直メタ反応により得られた反応混合物からメタクロレイン及びメタノールを分離し、液状混合物(IV)を得るための分離塔の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
A 急冷塔
B 脱水塔
C 吸収塔
D 直メタ反応器
E 未反応メタクロレイン分離塔
F 未反応メタノール分離塔
G 層分離槽
H 未反応メタノール回収塔
J 直メタ反応で得られる反応混合物からのメタクロレイン及びメタノールの分離塔
1 メタクロレイン及び水蒸気を含有するガス[ガス(a)]
2、2’ クエンチ水
3 廃水
4 急冷塔Aで冷却され部分的に脱水された、メタクロレイン及び水蒸気を含有するガス
5 液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(I )[これは、直メタ反応により得られた反応混合物から分離した液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(IV)であることができる]
6 分離水
7 メタクロレインガス及びメタノールガスを含む脱水混合ガス(b)
8 液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(III )(直メタ反応に付される)
9 液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(II)[これは、直メタ反応により得られた反応混合物から分離した液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(IV)であることができる]
10 ベントガス
11 分子状酸素(酸素又は酸素含有ガス)
12 ベントガス
13 直メタ反応により得られた反応混合物
14 液状メタクリル酸メチル及び液状メタノールを含む液状混合物
15 低沸点副生物
16 回収液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物
17 粗メタクリル酸メチル
18 メタノール/炭素数6〜8の飽和炭化水素よりなる共沸混合物
19 炭素数6〜8の飽和炭化水素
20 層分離上層軽液の主に炭素数6〜8の飽和炭化水素からなるリサイクル液
21 層分離下層重液の主にメタノールからなる層
22 回収メタノール
23 メタノール/炭素数6から8の飽和炭化水素共沸混合物
24 液状メタクリル酸メチル及び水を含む液状混合物
25 液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(IV)
Claims (9)
- (1)イソブチレン及びtert−ブタノールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の出発物質を触媒の存在下で分子状酸素と気相接触酸化反応させて、メタクロレインガス及び水蒸気を含有するガス(a)を得、
(2)ガス(a)を脱水塔の下部に、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(I)を脱水塔の上部にそれぞれ導入し、流下する液状混合物(I)をガス(a)と脱水塔中で向流接触させて、液状混合物(I)を気化してメタクロレインガス及びメタノールガスを含む混合ガス(I’)を発生させると共に、ガス(a)に含まれる水蒸気を凝縮させ、生成した凝縮水を脱水塔底部より抜き出してガス(a)を脱水する一方、ガス(a)の脱水によって得られる脱水メタクロレイン含有ガス(a’)を混合ガス(I’)と共に、メタクロレインガス及びメタノールガスを含む脱水混合ガス(b)として脱水塔最上部から抜き出し、
(3)脱水混合ガス(b)を吸収塔の下部に導入すると共に、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(II)の、脱水混合ガス(b)中のメタクロレインガスとメタノールガスの実質的に全量を吸収するのに十分の量を吸収塔の上部に導入し、流下する液状混合物(II)を脱水混合ガス(b)と吸収塔中で向流接触させて,脱水混合ガス(b)中のメタクロレインガスとメタノールガスの実質的に全量を液状混合物(II)に吸収させ、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(III )を得、液状混合物(III )を吸収塔底部から抜き出し、
(4)抜き出された液状混合物(III )を酸化的エステル化反応器に導入し、反応器中で液状混合物(III )に含まれる液状メタクロレイン及び液状メタノールを、分子状酸素及びパラジウム系触媒の存在下で酸化的エステル化反応させることにより、メタクリル酸メチル、水、メタクロレイン及びメタノールを含有する反応混合物としてメタクリル酸メチルを製造することを包含するメタクリル酸メチルの製造方法。 - 液状混合物(I)及び(II)よりなる群から選ばれる少なくとも1つの液状混合物が、酸化的エステル化反応によって得られる反応混合物から分離して得られる、液状メタクロレイン及び液状メタノールを含む液状混合物(IV)であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 脱水塔内における液状混合物(I)とガス(a)の向流接触を、温度が10〜60℃、圧力が0.2〜3.0kg/cm2 の条件下で行うことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
- 吸収塔内における液状混合物(II)と脱水混合ガス(b)の向流接触を、温度が−25〜10℃、圧力が0.2〜3.0kg/cm2 の条件下で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 脱水塔における液状混合物(I)の供給量が、ガス(a)1Nm3 (Nm3 は、標準条件である0℃、1気圧で測定したm3 値を示す)に対し10〜500gであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 吸収塔における液状混合物(II)の供給量が、脱水混合ガス(b)1Nm3 (Nm3 は、標準条件である0℃、1気圧で測定したm3 値を示す)に対し50〜1000gであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- 液状混合物(I)中の液状メタクロレイン及び液状メタノールの含有量が、液状混合物(I)に対してそれぞれ5〜60重量%及び40〜95重量%であり、液状混合物(II)中の液状メタクロレイン及び液状メタノールの含有量が、液状混合物(II)に対してそれぞれ5〜60重量%及び40〜95重量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
- 液状混合物(IV) が、液状混合物(IV) に対して25重量%を超えない量のメタクリル酸メチルを更に含有することを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の方法。
- 液状混合物(III )中の液状メタクロレインの含有量が,液状混合物(III )に対して25〜69重量%であり、かつ、液状混合物(III )における液状メタクロレインの液状メタノールに対する重量比が0.33〜2.2であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
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