JP2009057512A - アルミニウム用親水性潤滑塗料、及びそれを用いた被塗物 - Google Patents

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Abstract

【課題】被加工材をプレス潤滑油を供給することなくプレス加工を行うことを可能とするために、予め被加工材の最表面に、潤滑性、水による除去性に優れ、且つ、プレコートアルミニウム板の塗膜に与えられた機能を阻害しない潤滑塗膜を形成するためのアルミニウム用親水性潤滑塗料、それを用いた被塗物を提供すること。
【解決手段】分子量4000〜400000の水溶性ポリエーテルと潤滑添加剤からなる。潤滑添加剤はH.L.B.が3〜20である1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物のハイドロカルビルエーテル、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステル、カルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、脂肪酸アルカノールアミドの1種以上よりなり、含有量は親水性潤滑塗料の固形分全体を100質量%として1.0〜50%。
【選択図】図1

Description

本発明は、アルミニウム板あるいはプレコートアルミニウム板からなる被加工材を、プレス潤滑油を供給することなくプレス加工を行うことを可能とするために、予め上記被加工材の最表面に潤滑塗膜を形成するための親水性潤滑塗料、及びそれを用いた被塗物に関する。
従来から、家庭用エアコン、自動車用エアコン、パッケージエアコン等の空調機器や、冷蔵庫等には、蒸発機又は凝縮機として作動する熱交換器が用いられている。そして、家庭用室内エアコンや業務用パッケージエアコンに、最も一般的に用いられているのが、クロスフィンチューブ熱交換器(プレートフィンチューブ熱交換器)である。このクロスフィンチューブ熱交換器を構成するクロスフィンチューブは、空気側のアルミニウムプレートフィンと冷媒側の伝熱管(銅管)から構成されている。
上記アルミニウムプレートフィンは、樹脂、シリカ微粉、水ガラス等の塗装により、親水性又は撥水性等の各種機能皮膜を形成させる場合がある。
上記アルミニウムプレートフィンは、アルミニウムプレートフィン材の表面に加工油を浸漬塗油あるいはスプレー塗油した後に、打ち抜き、張り出し、絞り、しごき、剪断等が複合された加工によって、伝熱管を通すためのフィンカラーや表面の熱伝達率を向上させるための表面加工を施すことにより得られる。
上記アルミニウムプレートフィン材は、プレス加工の際に加工油を使用しないと、打ち抜きパンチ、張り出しパンチ、あるいはしごきパンチの表面にアルミニウムの凝着が生じる。そのため、アルミニウムフィンが所定の形状にならなかったり、フレアー割れ等の成形不具合により、アルミニウムプレートフィンと伝熱管の密着性が低下し、それに起因した熱交換器の性能が低下するという問題や、金型自体の破損に至る等の致命的な問題が生じる。
上記加工油としては、塩素系溶剤での脱脂が不必要であると共に、自己揮発性を有する動粘度1〜3cSt程度の低粘度のプレス油を使用することが一般となっている。このような加工油を用いる場合には、プレス加工後に、アルミニウムプレートフィンに伝熱管を通し、伝熱管を拡管してアルミニウムプレートフィンと伝熱管とを固着させて熱交換器とした後、50〜200℃の雰囲気に10分程度さらすことにより上記加工油を蒸発揮散させている。
ところが、使用される加工油中には、例えば親水性を阻害する油性剤等の物質が種々添加されており、これによりアルミニウムフィン材に必要な親水性能の低下が生じる場合がある。また、アルミニウムフィン材に塗装された塗膜樹脂自体を膨潤させて劣化させるものもある。このようなアルミニウムフィン材を使用して熱交換器を作製すると、結露水の流動・排出が阻害されるため、熱交換器性能が低下する。
また、上記加工油は低粘度のため潤滑性に劣り、フィンカラーを加工する場合に、材料破断をきたす場合が多く、また、工具へのアルミ凝着が生じやすいために、金型のメンテナンス頻度も多くなっている。
さらには、熱交換器を加熱して加工油を蒸発揮散させるために乾燥炉を通す必要があり、乾燥炉操業にかかわるCO2排出量の増加や、揮散した油が大気中に放出される等、地球環境に悪影響を与えるという問題がある。
このように、従来使用していたアルミニウムフィン材では、プレス加工の際に低粘度加工油を使用しても、上述の問題が発生する。
また、フィン材に限らず、他のアルミニウム板のプレス加工を行う場合も同様の問題が生じうる。
特開平6−39347号公報 特開平7−43093号公報 特開平9−145281号公報 特開平10−103885号公報 特開平10−306997号公報 特開2003−287394号公報 特開2005−344144号公報
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、アルミニウム板あるいはプレコートアルミニウム板からなる被加工材を、プレス潤滑油を供給することなくプレス加工を行うことを可能とするために、予め上記被加工材の最表面に、潤滑性、水による除去性に優れ、且つ、プレコートアルミニウム板の塗膜に与えられた機能を阻害しない潤滑塗膜を形成するためのアルミニウム用親水性潤滑塗料、及びそれを用いた被塗物を提供しようとするものである。
第1の発明は、アルミニウム板あるいはプレコートアルミニウム板からなる被加工材を、プレス潤滑油を供給することなくプレス加工を行うことを可能とするために、予め上記被加工材の最表面に潤滑塗膜を形成するための親水性潤滑塗料であって、
該親水性潤滑塗料は、分子量4000〜400000の水溶性ポリエーテルと潤滑添加剤とからなり、
上記潤滑添加剤は、H.L.B.が3〜20の範囲にある1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物のハイドロカルビルエーテル、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステル、カルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、脂肪酸アルカノールアミドの1種又は2種以上よりなり、
上記潤滑添加剤の含有量は、上記親水性潤滑塗料の固形分全体を100%(質量%、以下同様)として1.0〜50%であることを特徴とするアルミニウム用親水性潤滑塗料にある(請求項1)。
上記アルミニウム用親水性潤滑塗料は、分子量4000〜400000の水溶性ポリエーテルと特定の潤滑添加剤とを含有するものである。そのため、このアルミニウム用親水性潤滑塗料を用いて上記被加工材の表面に潤滑塗膜を形成した場合には、上記被加工材に潤滑性を付与することができ、プレス油を用いることなく、良好にプレス成形を行うことができる。
このため、プレス油の購入コスト、乾燥コストを削減することができ、また大気中への有機物の排出を削減することができ、環境への影響を低減することができる。
また、分子量4000〜400000の水溶性ポリエーテルと、特定の潤滑添加剤とからなるため、水によって容易に除去可能であり、また、除去後に基材表面の親水性能、撥水性能等の機能を阻害することがない。
また、上記アルミニウム用親水性潤滑塗料は、上記水溶性ポリエーテルと潤滑添加剤とにより100%になるものであるが、実使用に際して、上述の優れた効果を安定的に操業するために、上記水溶性ポリエーテルと上記潤滑添加剤のほかに、必要に応じて、後述する水溶性樹脂、第2添加剤、コロイダルシリカ、酸化防止剤、錆止め剤、腐食防止剤、消泡剤等の1種又は2種以上をさらに添加することも勿論可能である。
このように、本発明によれば、アルミニウム板あるいはプレコートアルミニウム板からなる被加工材を、プレス潤滑油を供給することなくプレス加工を行うことを可能とするために、予め上記被加工材の最表面に、潤滑性、水による除去性に優れ、且つ、プレコートアルミニウム板の塗膜に与えられた機能を阻害しない潤滑塗膜を形成するためのアルミニウム用親水性潤滑塗料を提供することができる。
第2の発明は、アルミニウム板あるいはプレコートアルミニウム板からなる被加工材と、該被加工材の表面に形成された第1の発明のアルミニウム親水性潤滑塗料よりなる潤滑塗膜とからなり、
上記潤滑塗膜の膜厚は、10〜10000mg/m2であることを特徴とする被塗物にある(請求項7)。
上記被塗物は、上記第1の発明のアルミニウム用親水性潤滑塗料を用いて、被加工材に潤滑塗膜を形成してなる。これにより、被加工材は、プレス加工性に優れた潤滑性を有することができ、プレス油を用いなくとも加工を行うことが可能となる。このため、プレス油の購入コスト・乾燥コストを削減することができ、また大気中への有機物の排出を削減することができ環境への影響を低減することができる。
また、上記潤滑塗膜は、分子量4000〜400000の水溶性ポリエーテルと特定の潤滑添加剤とからなる上記アルミニウム用親水性潤滑塗料を用いるため、水によって容易に除去可能であり、被加工材が親水性能、撥水性能等の機能を有する塗膜を設けたプレコートアルミニウム板からなる場合に、除去後に被加工材表面の機能を阻害することがない。
このように、本発明によれば、アルミニウム板あるいはプレコートアルミニウム板からなる被加工材を、プレス潤滑油を供給することなくプレス加工を行うことを可能とするために、上記被加工材の最表面に、潤滑性、水による除去性に優れ、且つ、プレコートアルミニウム板の塗膜に与えられた機能を阻害しない潤滑塗膜を有する被塗物を提供することができる。
第1の発明のアルミニウム用親水性潤滑塗料は、上述したように、分子量4000〜400000の水溶性ポリエーテルと潤滑添加剤とを含有する。
上記水溶性ポリエーテルの分子量が4000未満の場合には、プレス加工の際に塗膜粉が金型表面に堆積するという問題や、潤滑塗膜の融点が低くなり塗装後の材料同士の潤滑塗膜が融着しやすくなり、塗装後の材料同士がくっつき作業性が低下するという問題がある。一方、上記水溶性ポリエーテルの分子量が400000を超える場合には、コストが上がるという問題がある。
そして、上記アルミニウム用親水性潤滑塗料を構成する上記水溶性ポリエーテルは、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールアリールエーテル、脂肪族ポリアルキレングリコールエステル、脂肪族ポリアルキレングリコールソルビタンエステルの1種又は2種以上よりなるポリエーテル、及び上記ポリエーテルのうち1種又は2種以上のウレタン結合による重合物から選ばれる1種又は2種以上からなることが好ましい(請求項2)。
すなわち、上記水溶性ポリエーテルは、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールアリールエーテル、脂肪族ポリアルキレングリコールエステル、脂肪族ポリアルキレングリコールソルビタンエステル、これらの1種又は2種以上のウレタン結合による重合物から選ばれる1種を単独で用いても、複数種類の混合物であっても良い。
上記ポリエーテルは、例えば、アルキレンオキサイドを重合させ、水酸基をアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等で置換することにより得ることができる。上記ポリエーテルを構成するアルキレンオキサイドとしては、具体的には、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−エポキシブタン(α−ブチレンオキサイド)、2,3−エポキシブタン(β−ブチレンオキサイド)、1,2−エポキシ−1−メチルプロパン、1,2−エポキシヘプタン等が挙げられる。
上記アルキレンオキシド等の重合形態は特に限定されず、1種類のアルキレンオキサイドの単独重合、2種類以上のアルキレンオキサイド等のランダム共重合、ブロック共重合、ランダム/ブロック共重合等であってよい。
また、上記ポリエーテルのウレタン結合による重合物は、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールアリールエーテル、脂肪族ポリアルキレングリコールエステル、脂肪族ポリアルキレングリコールソルビタンエステルのうち1種又は2種以上を、イソシアネートを用いて反応させることにより得ることができる。
また、上記潤滑添加剤は、H.L.B.が3〜20の範囲にある1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物のハイドロカルビルエーテル、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステル、カルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、脂肪酸アルカノールアミドの1種又は2種以上よりなる。すなわち、上記潤滑添加剤は、列挙した中から選ばれる1種を単独で用いても良いし、異なる構造を有する2種以上の混合物を用いても良い。
上記潤滑添加剤のH.L.B.が3未満の場合には、潤滑添加剤が析出分離し易いという問題がある。
なお、H.L.B.(Hydrophile−Lipophile Balance)とは、界面活性剤の水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表す値のことである。
上記1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物のハイドロカルビルエーテル、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステルを構成するアルコールは、水酸基を1〜6個有する。
このようなアルコールとしては、1価のものであれば、炭素数8〜23のものが挙げられ、分子内に分子鎖あるいは不飽和結合、環状構造を有していてもよい。具体的には、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、エチルフェノール、ノニルフェノール、等が挙げられ、単体で用いでも、これらの混合物を用いても良い。また、2価以上のものであれば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
また、潤滑性、水による除去性の点より、上記アルコールとしては、炭素数12〜18の範囲のものが好ましい。
上記1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物のハイドロカルビルエーテル、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステルを構成するアルキレンオキサイド付加物は、炭素数2〜6のアルキレンオキサイドを付加重合することにより得ることが好ましく、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加重合することがより好ましい。
炭素数2〜6のアルキレンオキサイドとしては、具体的には、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−エポキシブタン(α−ブチレンオキサイド)、2,3−エポキシブタン(β−ブチレンオキサイド)、1,2−エポキシ−1−メチルプロパン、1,2−エポキシヘプタン等が挙げられる。
なお、アルキレンオキシド等の重合形態は特に限定されず、1種類のアルキレンオキサイドの単独重合、2種類以上のアルキレンオキサイド等のランダム共重合、ブロック共重合、ランダム/ブロック共重合等であってよい。
また、水酸基を2〜6個有する多価アルコールにアルキレンオキサイドを付加させる際は、すべての水酸基に付加させてもよいし、一部の水酸基にのみ付加させてもよい。
上記1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物のハイドロカルビルエーテル、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステルを構成するアルキレンオキサイド付加物の末端水酸基の一部又は全てを、ハイドロカルビルエーテル化させたものが使用できる。
ここで、ハイドロカルビル基とは、炭素数1〜24の炭化水素基である。
炭化水素基としては、たとえば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、及びアリールアルキル基等がある。
炭素数1〜24のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖又は分枝のペンチル基、直鎖又は分枝のヘキシル基、直鎖又は分枝のヘプチル基、直鎖又は分枝のオクチル基、直鎖又は分枝のノニル基、直鎖又は分枝のデシル基、直鎖又は分枝のウンデシル基、直鎖又は分枝のドデシル基、直鎖又は分枝のトリデシル基、直鎖又は分枝のテトラデシル基、直鎖又は分枝のペンタデシル基、直鎖又は分枝のヘキサデシル基、直鎖又は分枝のヘプタデシル基、直鎖又は分枝のオクタデシル基、直鎖又は分枝のノナデシル基、直鎖又は分枝のイコシル基、直鎖又は分枝のヘンイコシル基、直鎖又は分枝のドコシル基、直鎖又は分枝のトリコシル基、及び直鎖又は分枝のテトライコシル基等がある。
炭素数2〜24のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、直鎖又は分枝のプロペニル基、直鎖又は分枝のブテニル基、直鎖又は分枝のペンテニル基、直鎖又は分枝のヘキセニル基、直鎖又は分枝のヘプテニル基、直鎖又は分枝のオクテニル基、直鎖又は分枝のノネニル基、直鎖又は分枝のデセニル基、直鎖又は分枝のウンデセニル基、直鎖又は分枝のドデセニル基、直鎖又は分枝のトリデセニル基、直鎖又は分枝のテトラデセニル基、直鎖又は分枝のペンタデセニル基、直鎖又は分枝のヘキサデセニル基、直鎖又は分枝のヘプタデセニル基、直鎖又は分枝のオクタデセニル基、直鎖又は分枝のノナデセニル基、直鎖又は分枝のイコセニル基、直鎖又は分枝のヘンイコセイル基、直鎖又は分枝のドコセニル基、直鎖又は分枝のトリコセニル基、及び直鎖又は分枝のテトラコセニル基等がある。
炭素数5〜7のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等がある。
炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む)、メチルエチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む)、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む)、メチルエチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む)、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む)、メチルエチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む)、及びジエチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む)等がある。
炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等がある。
炭素数7〜18のアルキルアリール基としては、例えば、トリル基(全ての構造異性体を含む)、キシリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のプロピルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝のブチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のペンチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のヘキシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のヘプチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のオクチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のノニルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のウンデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、及び直鎖又は分枝のドデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)等がある。
炭素数7〜12のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基(プロピル基の異性体を含む)、フェニルブチル基(ブチル基の異性体も含む)、フェニルペンチル基(ペンチル基の異性体も含む)、及びフェニルヘキシル基(ヘキシル基の異性体も含む)等がある。
上記1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステル、そのハイドロカルビルエーテルを構成する脂肪酸としては、直鎖飽和脂肪酸、分岐飽和脂肪酸、直鎖不飽和脂肪酸、分岐不飽和脂肪酸のいずれを使用してもよい。炭素数で言えば、C数7〜22を有するものが好ましく、具体的には、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エイコサン酸等が挙げられる。
上記カルボン酸塩としては、例えば、ポリオキシエチレン・アルキルエーテル・カルボン酸塩、N−アシルサルコシン酸塩、N−アシルグルタミン酸塩等が挙げられる。塩を形成するカチオン性対イオンとしては、例えば、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウム等)イオン、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウム等)イオン等の金属イオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。
上記アルキルスルホン酸塩としては、例えば、ジアルキルスルホ・こはく酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルファオレフィン・スルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼン・スルホン酸塩、分子鎖アルキルベンゼン・スルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレン・スルホン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリン等が挙げられる。塩を形成するカチオン性対イオンとしては、例えば、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウム等)イオン、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウム等)イオン等の金属イオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。
上記アルキル硫酸塩としては、例えば、ポリオキシエチレン・アルキルエーテル・硫酸塩、油脂硫酸エステル塩等が挙げられる。塩を形成するカチオン性対イオンとしては、例えば、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウム等)イオン、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウム等)イオン等の金属イオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。
上記リン酸塩としては、例えば、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレン・アルキルエーテル・リン酸塩、ポリオキシエチレン・アルキルフェニルエーテル・リン酸塩等が挙げられる。塩を形成するカチオン性対イオンとしては、例えば、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウム等)イオン、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウム等)イオン等の金属イオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。
上記潤滑添加剤の含有量は、上記親水性潤滑塗料の固形分全体を100%として1.0〜50%である。
上記潤滑添加剤の含有量が、上記親水性潤滑塗料の固形分全体を100%として1.0%未満の場合には、潤滑性が不足し、プレス金型の折損や、加工材の形状不良等の問題が生じる。一方、上記潤滑添加剤の含有量が50%を超える場合には、潤滑塗膜の水による除去性が低下するという問題や、プレコートアルミニウム板よりなる被加工材の表面に親水性潤滑塗料からなる潤滑塗膜を形成し、その後、水により潤滑塗膜を除去した後に、プレコートアルミニウム板の塗膜に与えられた機能を阻害するおそれがある。
また、さらに、水溶性樹脂を、親水性潤滑塗料の固形分全体を100%として1.0〜50%含有することが好ましい(請求項3)。
この場合には、潤滑塗膜形成後に、基材の搬送ロール、加工金型等への潤滑塗膜の移着、堆積を抑制することができる。
上記水溶性樹脂の含有量が、1.0%未満の場合には、上述の効果が十分に得られないおそれがある。一方、上記水溶性樹脂の含有量が50%を超える場合には、水により潤滑塗膜が除去され難くなるおそれがある。
また、上記水溶性樹脂としては、水に溶解する樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えば、水溶性アルキド樹脂、水溶性アクリル変性アルキド樹脂、水溶性エポキシエステル樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリビニルアルコール、ポリウレタン、メラミン樹脂等が挙げられる。
また、第2添加剤として、さらに、添加剤として、アミン誘導体、数平均分子量200以上1000未満であると共に水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、そのハイドロカルビルエーテル、数平均分子量120以上1000未満のポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテル、及び炭素数2〜10の2価アルコールから選ばれる1種又は2種以上を、上記親水性潤滑塗料の固形分全体を100%として0.01〜2.0%含有することが好ましい(請求項4)。
この場合には、プレス工具への金属粉の凝着を抑制するという効果を得ることができる。
また、上記アミン誘導体は、アルカノールアミン、脂肪酸ポリアミン、芳香族アミン、脂環式アミン、複素環アミン、及びそれらのアルキレンオキシド付加物であることが好ましい(請求項5)。
また、上記アミン誘導体には、ヒドロキシル基、エーテル基が含まれていても良い。
上記脂肪族アミンとしては、具体的には、例えば、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、カプリルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、牛脂アミンジメチルアミン、ジエチルアミン、ジオクチルアミン、ブチルオクチルアミン、ジステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、トリオクチルアミン等を用いることができる。
上記アルカノールアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、N,N−ジイソプロピルエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチルイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルイソプロパノールアミン、N−エチルイソプロパノールアミン、N,N−ジエチルイソプロパノールアミン、N−イソプロピルイソプロパノールアミン、N,N−ジイソプロピルイソプロパノールアミン、モノn−プロパノールアミン、ジn−プロパノールアミン、トリn−プロパノールアミン、N−メチルn−プロパノールアミン、N,N−ジメチルn−プロパノールアミン、N−エチルn−プロパノールアミン、N,N−ジエチルn−プロパノールアミン、N−イソプロピルn−プロパノールアミン、N,N−ジイソプロピルn−プロパノールアミン、モノブタノールアミン、ジブタノールアミン、トリブタノールアミン、N−メチルブタノールアミン、N,N−ジメチルブタノールアミン、N−エチルブタノールアミン、N,N−ジエチルブタノールアミン、N−イソプロピルブタノールアミン、N,N−ジイソプロピルブタノールアミン等を用いることができる。
上記脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ヘキサメチレンジアミン、硬化牛脂プロピレンジアミン等を用いることができる。
上記芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン等を用いることができる。
上記脂環式アミンとしては、例えば、N−シクロヘキシルアミン、N,N−ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチル−シクロヘキシルアミン、N,N−ジエチル−シクロヘキシルアミン、N,N−ジ(3−メチル−シクロヘキシル)アミン、N,N−ジ(2−メトキシ−シクロヘキシル)アミン、N,N−ジ(4−ブロモーシクロヘキシル)アミン等を用いることができる。
上記複素環アミンとしては、例えば、ピロリジン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、ピペラジン、ホモピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、N−プロピルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、N−アセチルピペラジン、N−アセチルホモピペラジン、1−(クロロフェニル)ピペラジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノエチルピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、1,4−ビス(アミノプロピル)ピペラジン等を用いることができる。
また、上記アルキレンオキシド付加物は、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、α−オレフィンオキシド、スチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加重合することにより得ることができる。付加されるアルキレンオキシドの重合形態は特に限定されず、1種類のアルキレンオキシドの単独重合、2種類以上のアルキレンオキシドのランダム共重合、ブロック共重合又はランダム/ブロック共重合等であってよい。
また、上記数平均分子量200以上1000未満であると共に水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物を構成する数平均分子量200以上1000未満であると共に水酸基を3〜6個有する多価アルコールとしては、例えば、具体的には、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜4量体、例えば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等)、トリメチロールアルカン(例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)及びこの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトラオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アニドール、アラビトール、キシリトールマンニトール、イジリトール、タリトール、ズルシトール、アリトール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロース等が挙げられる。
また、上記アルキレンオキシド付加物は、上述のポリエーテルを構成するアルキレンオキサイドとして列挙したものと同様のアルキレンオキサイド等を付加重合することにより得ることができる。付加されるアルキレンオキシドの重合形態は特に限定されず、1種類のアルキレンオキシドの単独重合、2種類以上のアルキレンオキシドのランダム共重合、ブロック共重合又はランダム/ブロック共重合等であってよい。
また、水酸基を3〜6個有する多価アルコールにアルキレンオキシドを付加させる際、付加される水酸基は、全ての水酸基であっても、一部の水酸基であってもよい。
また、上記多価アルコールのアルキレンオキシド付加物を構成するアルキレンオキサイド付加物の末端水酸基の一部又は全てを、ハイドロカルビルエーテル化させたものを使用することもできる。
ハイドロカルビル基としては、上述の1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物のハイドロカルビルエーテル、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステルを構成するアルキレンオキサイド付加物の末端水酸基の一部又は全てを、ハイドロカルビルエーテル化させたものを構成するハイドロカルビル基として列挙したものと同様のもの等がある。
また、上記数平均分子量120以上1000未満のポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテルとしては、ポリアルキレングリコールの末端水酸基の一部又は全てをハイドロカルビルエーテル化させたものを用いることができる。
また、数平均分子量120以上1000未満のポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテルを構成するアルキレンオキシドは、炭素数2〜6が好ましい。
このようなアルキレンオキシドとしては、上述のポリエーテルを構成するアルキレンオキサイドとして列挙したものと同様のもの等がある。
ハイドロカルビル基としては、例えば、上述の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物及びそのハイドロカルビルエーテルを構成するハイドロカルビル基として列挙した各基等がある。
また上記炭素数2〜10の2価アルコールは、分子中にエーテル結合を有しておらず、炭素数2〜10のものであり、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、及び1,10−デカンジオール等が挙げられる。
上記第2添加剤の含有量が、上記アルミニウム用親水性潤滑塗料の固形分全体を100%として0.01%未満の場合には、上述の効果を十分に得られないおそれがある。一方、上記第2添加剤の含有量が2.0%を超える場合には、潤滑塗膜除去後に親水性が低下するおそれがある。
また、さらに、アルカリ可溶型の粒径50μm以下のシリカ微粒子のコロイド溶液からなるコロイダルシリカを、上記親水性潤滑塗料の固形分全体を100%として1〜30%含有することが好ましい(請求項6)。
この場合には、潤滑塗膜形成後に、搬送ロールや加工金型への樹脂分の付着、堆積を防ぐという効果を得ることができる。
上記シリカ微粒子の粒径が50μmを超える場合には、粒子が潤滑塗膜から脱落し、効果が得られないおそれがある。
また、上記コロイダルシリカの含有量が1%未満の場合には、上述の効果を十分に得られないおそれがある。一方、上記コロイダルシリカの含有量が30%を超える場合には、潤滑性が低下するおそれがある。
第2の発明の被塗物は、上述したように、アルミニウム板あるいはプレコートアルミニウム板からなる被加工材と、該被加工材の表面に形成された請求項1に記載のアルミニウム親水性潤滑塗料よりなる潤滑塗膜とからなり、上記潤滑塗膜の膜厚は、10〜10000mg/m2である。
上記潤滑塗膜の膜厚が10mg/m2未満の場合には、潤滑性を十分に得ることができないという問題があり、一方、上記潤滑塗膜の膜厚が10000mg/m2を超える場合には、潤滑塗膜が脆く剥離しやすくなって金型上に堆積し、プレス加工を阻害するという問題がある。
また、上記被加工材が、樹脂、シリカ微粉、水ガラス等の塗装により、用途に合わせて親水性、撥水性等の各種機能皮膜を有するプレコートアルミニウム板である場合には、アルミニウム板と塗膜の間に、化成皮膜を形成することが好ましい。
また、上記化成皮膜としては、リン酸クロメート、クロム酸クロメート等のクロメート処理、クロム化合物以外のリン酸チタンやリン酸ジルコニウム、リン酸モリブデン、リン酸亜鉛、酸化ジルコニウム等によるノンクロメート処理等の化学皮膜処理、いわゆる化成処理により得られる皮膜が採用される。
この化成皮膜よりなる下地処理層の存在によって、アルミニウム板とプレコート塗膜との密着性を効果的に向上させることができる。また、優れた耐食性が実現されて、水、塩素化合物等の腐食性物質がアルミニウム板の表面に浸透した際に惹起される塗膜下腐食が抑制され、塗膜割れや塗膜剥離の防止を図ることができる。
なお、上記クロメート処理やノンクロメート処理等の化成処理方法には、反応型及び塗布型があるが、本発明においてはいずれの手法が採用されても何ら差し支えない。
また、上記プレコートアルミニウム板は、アルミニウム板の表面上にプレコート層を形成しており、該プレコート層の最外層は親水性皮膜よりなることが好ましい(請求項8)。
上記プレコート層は、アルミニウム板の表面に直接親水性皮膜が形成された親水性皮膜のみからなるプレコート層であっても良いし、アルミニウム板と親水性皮膜との間に化成皮膜等からなる層が形成された複数種類の層からなるプレコート層であっても良い。
また、上記プレコート層は、アルミニウム板の表面上に形成されたクロメート皮膜、ジルコニウム皮膜、耐食性樹脂皮膜のいずれかよりなる下地層と、該下地層上にさらに形成された親水性皮膜よりなることが好ましい(請求項9)。
この場合には、上述したように、アルミニウム板と親水性皮膜との密着性を効果的に向上させることができる。また、優れた耐食性が実現されて、水、塩素化合物等の腐食性物質がアルミニウム板の表面に浸透した際に惹起される塗膜下腐食が抑制され、塗膜割れや塗膜剥離の防止を図ることができる。
また、上記プレコート層は、アルミニウム板の表面上に形成されたクロメート皮膜或いはジルコニウム皮膜からなる下地層と、該下地層上にさらに形成された耐食性樹脂皮膜からなる中間層と、該中間層状にさらに形成された親水性樹脂皮膜とからなることが好ましい(請求項10)。
この場合にも、アルミニウム板に優れた密着性でプレコート層を形成することができ、また、耐食性に優れたプレコートアルミニウム板とすることができる。
また、上記親水性皮膜は、水酸基、カルボキシル基、エステル基、エーテル基のうち1種又は2種以上を含む有機樹脂を含むことが好ましい(請求項11)。
上記親水性皮膜は、上記水酸基、カルボキシル基、エステル基、エーテル基のうち1種又は2種以上を含む有機樹脂のみから構成されても良いし、上記有機樹脂に界面活性剤等を添加したものから構成されても良い。
また、上記親水性皮膜は、さらに、ケイ酸塩及び/又はコロイダルシリカを含有してもよい(請求項12)。
この場合には、上記親水性皮膜に、さらに、優れた親水性を付与することができる。
また、上記被塗物は、熱交換器用フィン材に用いられることが好ましい(請求項13)。
この場合には、最表面に形成された潤滑塗膜の、潤滑性、水による除去性に優れ、且つ、プレコートアルミニウム板の塗膜に与えられた機能を阻害しない特長を生かして、優れた熱交換器用フィンを得ることができる。
(実施例1)
本例は、本発明にかかる実施例として、表1及び表2に示す被塗物(試料E1〜試料E23)、及び本発明にかかる比較例として、表3に示す被塗物(試料C1〜試料C5)を作製した。
図1に示すように、本例において作製した被塗物1は、被加工材2と、該被加工材2の表面に形成された潤滑塗膜3とからなる。
以下、これを詳説する。
まず、アルミニウム板21として、A1050−H26、厚さ0.100mmのアルミニウム板を用意した。
そして、上記アルミニウム板21に対して、必要に応じて、市販の弱アルカリ系脱脂剤にて、脱脂処理を行い、次いで、クロム酸、リン酸、フッ化水素酸よりなる液でリン酸、フッ化水素酸よりなる液でリン酸クロメートを主体とする化成皮膜22を形成させた。このときの化成皮膜中のクロム量は20mg/m2であった。次いで、この化成処理を行ったアルミニウム板に対して、必要に応じて、親水性塗料組成物をロールコーターを用いて塗装し、その後、200℃×20秒間の加熱処理を行うことにより、所定の親水性皮膜23を焼きつけ、硬化せしめた。これによりプレコートアルミニウム板(被加工材)2を作製した。
上記親水性塗料組成物は、下記の6種類の親水性塗料組成物を用意した。
A1:水ガラス系親水性塗料、
アルカリケイ酸塩(SiO2:Na2O=3:5)10重量部、ヒドロキシエチルアクリレート−アクリル酸共重合体2重量部、炭酸アンモニウムジルコニウム塩0.5重量部。A2:樹脂系親水性塗料+シリカ系親水性塗料、
アクリル樹脂70重量部、メラミン樹脂15重量部、ポリオキシエチレンンアルキルフェニルエーテル(界面活性剤)10重量部、コロイダルシリカ5重量部。
A3:樹脂系親水性塗料、
ヒドロキシエチルセルロース(水溶性セルロース樹脂)10重量部、アクリル酸−アクリルアミド共重合体(水溶性アクリル樹脂)10重量部。
A4:樹脂系親水性塗料、
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸20重量部、メタクリル酸60重量部、メタクリル酸メチル15重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート5重量部。
A5:樹脂系親水性塗料、
カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩25重量部、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩50重量部、N−メチロールアクリルアミド25重量部、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(界面活性剤)5重量部。
A6:樹脂系親水性塗料、
ポリビニールアルコール50重量部、カルボキシメチルセルロース50重量部、ジルコニウムキレート化合物5重量部、ジアルキルスルホこはく酸エステル塩(界面活性剤)5重量部。
そして、上記アルミニウム板あるいは上記プレコートアルミニウム板よりなる被加工材2の表面に、表1〜表3に示す組成のアルミニウム用親水性塗料をロールコーター法により塗布し、その後、120℃×30秒間の加熱処理を施して、表1〜表3に示す膜厚を有する潤滑塗膜3を形成した。このようにして被塗物1(試料E1〜試料E23、及び試料C1〜試料C5)を作製した。なお、表1〜表3において、潤滑添加剤、水溶性樹脂分、添加剤、シリカの含有量は、親水性潤滑塗料の固形分全体を100質量%としたときの含有量である。
Figure 2009057512
Figure 2009057512
Figure 2009057512
ここで、表1〜表3の記号を説明する。
A1〜A6:上述の親水性塗料組成物
B1:ポリエチレングリコール
B2:ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロックコポリマー(エチレングリコール80%)
B3:ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロックコポリマー(エチレングリコール70%)
D1:トリメチロールプロパントリミリスチン酸エチレンオキサイド5モル付加物(H.L.B.:3)
D2:2−ブチル−2−エチル−β−1,3−ヒドロキシエトキ−エトキシ−シプロパン(H.L.B.:13)
D3:ヘキサエチレングリコールモノオレイン酸エステル(H.L.B.:9)
D4:デカエチレングリコールモノラウリルエーテル(H.L.B.:12)
D5:石油スルホネート(Na塩)(H.L.B.:11)
D6:オレイン酸ナトリウム(H.L.B.:20)
D7:カルナウバワックス(H.L.B.:1)
D8:トリメチロールプロパントリミリスチン酸エチレンオキサイド3モル付加物(H.L.B.:2)
F1:ポリアクリル酸メチル
G1:N,N−シクロヘキシルアミンエチレンオキシド2モル付加物
表1、2より知られるごとく、実施例としての試料E1〜試料E23は、分子量4000〜400000の水溶性ポリエーテルと、H.L.B.が3〜20の範囲にある1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物のハイドロカルビルエーテル、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステル、カルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、脂肪酸アルカノールアミドの1種又は2種以上よりなる潤滑添加剤とからなり、上記潤滑添加剤の含有量は、上記親水性潤滑塗料の固形分全体を100質量%として1.0〜50質量%であることが分かる。
次に、得られた被塗物(試料E1〜試料E23、及び試料C1〜試料C5)について、アルミ凝着、塗膜堆積、潤滑塗膜の水による除去性の評価を行った。
まず、被塗物に対して、9.52mmφのドローレス金型(日高製機社製)を用いて、プレス加工を施した。プレス加工の条件を表4に示す。なお、加工速度は250spm、評価ショット数は20000ショットとした。
Figure 2009057512
<アルミ凝着>
アルミ凝着は、プレス加工を20000ショット行った後の、ピアスパンチ表面、及び第2アイアニングパンチ表面におけるアルミ凝着面積より、下記の式を用いて評価した。結果を表5に示す。
Figure 2009057512
評価点が10〜9点の場合を評価○とし、評価点が8〜6点の場合を評価△とし、評価点が5〜0点の場合を評価×とし、評価が○及び△の場合を合格、評価が×の場合を不合格とした。
<塗膜堆積>
塗膜堆積は、プレス加工を20000ショット行った後に、金型表面を目視にて観察し、塗膜粉の堆積が確認されない場合を合格(評価○)とし、塗膜粉の堆積が認められた場合を不合格(評価×)とした。結果を表5に併せて示す。
<潤滑塗膜の水による除去性>
潤滑塗膜の水による除去性は、まず、被加工材としてプレコートアルミニウム板を用いた被塗物(試料E1〜試料E22、及び試料C1〜試料C5)を室温の水中に2分間浸漬し、次いで6分間冷風乾燥することの組み合わせを1サイクルとし、それを500サイクル行った。その後、被加工材表面の水との接触角を測定することにより潤滑塗膜の水による除去性を評価した。
上記試料E1〜試料E22、及び試料C1〜試料C5は、潤滑塗膜の下に親水性塗膜を形成しているため、500サイクル後に水との接触角が30°以下であれば、潤滑塗膜が除去され親水性が発現したといえる。そのため、接触角が30°以下の場合を合格(評価○)、接触角が30°を超える場合を不合格(評価×)とした。結果を表5に併せて示す。
Figure 2009057512
表5より知られるごとく、実施例としての試料E1〜試料E22は、アルミ凝着、塗膜堆積、潤滑塗膜の水による除去性の全ての項目において良好な結果を示した。
また、実施例としての試料E23は、試料E1の潤滑塗膜と同一の潤滑塗膜を形成しているため、同様の性能を有すると考えられるため、潤滑塗膜の水による除去性も良好であるということができる。
これにより、本発明によれば、被加工材をプレス潤滑油を供給することなくプレス加工を行ことを可能とするために、予め被加工材の最表面に、潤滑性、水による除去性に優れ、且つ、プレコートアルミニウム板の塗膜に与えられた機能を阻害しない潤滑塗膜を形成するためのアルミニウム用親水性潤滑塗料、及びそれを用いた被塗物を提供することができることがわかる。
また、表5より知られるごとく、比較例としての試料C1は、潤滑塗膜が、分子量が本発明の下限を下回る水溶性ポリエーテルからなるアルミニウム用親水性塗料よりなるため、プレス加工の際に塗膜粉が金型表面に堆積し、塗膜堆積が不合格であった。
また、比較例としての試料C2は、潤滑塗膜が、潤滑添加剤としてカルナウバワックスを含有するアルミニウム用親水性潤滑塗料よりなるため、潤滑塗膜の水による除去性が不合格であった。
また、比較例としての試料C3は、潤滑塗膜が、潤滑添加剤の含有量が本発明の上限を上回るアルミニウム用親水性潤滑塗料よりなるため、潤滑塗膜の水による除去性が不合格であった。
また、比較例としての試料C4は、潤滑塗膜が、潤滑添加剤を含有していないアルミニウム用親水性潤滑塗料よりなるため、潤滑性を得ることができず、アルミ凝着が不合格であった。
また、比較例としての試料C5は、潤滑塗膜が、潤滑添加剤としてH.L.B.が本発明の下限を下回るトリメチロールプロパントリミリスチン酸エチレンオキサイド3モル付加物を含有するアルミニウム用親水性潤滑塗料よりなるため、潤滑添加剤が析出分離し、塗膜堆積、潤滑塗膜の水による除去性が不合格であった。
実施例1における、被塗物を示す説明図。
符号の説明
1 被塗物
2 被加工材
3 潤滑塗膜

Claims (13)

  1. アルミニウム板あるいはプレコートアルミニウム板からなる被加工材を、プレス潤滑油を供給することなくプレス加工を行うことを可能とするために、予め上記被加工材の最表面に潤滑塗膜を形成するための親水性潤滑塗料であって、
    該親水性潤滑塗料は、分子量4000〜400000の水溶性ポリエーテルと潤滑添加剤とからなり、
    上記潤滑添加剤は、H.L.B.が3〜20の範囲にある1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物のハイドロカルビルエーテル、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステル、カルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、脂肪酸アルカノールアミドの1種又は2種以上よりなり、
    上記潤滑添加剤の含有量は、上記親水性潤滑塗料の固形分全体を100%(質量%、以下同様)として1.0〜50%であることを特徴とするアルミニウム用親水性潤滑塗料。
  2. 請求項1において、上記水溶性ポリエーテルが、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールアリールエーテル、脂肪族ポリアルキレングリコールエステル、脂肪族ポリアルキレングリコールソルビタンエステルの1種又は2種以上よりなるポリエーテル、及び上記ポリエーテルのうち1種又は2種以上のウレタン結合による重合物から選ばれる1種又は2種以上からなることを特徴とするアルミニウム用親水性潤滑塗料。
  3. 請求項1又2において、さらに、水溶性樹脂を、上記親水性潤滑塗料の固形分全体を100%として1.0〜50%含有することを特徴とするアルミニウム用親水性潤滑塗料。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項において、さらに、添加剤として、アミン誘導体、数平均分子量200以上1000未満であると共に水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、そのハイドロカルビルエーテル、数平均分子量120以上1000未満のポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテル、及び炭素数2〜10の2価アルコールから選ばれる1種又は2種以上を、上記親水性潤滑塗料の固形分全体を100%として0.01〜2.0%含有することを特徴とするアルミニウム用親水性潤滑塗料。
  5. 請求項4において、上記アミン誘導体は、アルカノールアミン、脂肪酸ポリアミン、芳香族アミン、脂環式アミン、複素環アミン、及びそれらのアルキレンオキシド付加物であることを特徴とするアルミニウム用親水性潤滑塗料。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項において、さらに、アルカリ可溶型の粒径50μm以下のシリカ微粒子のコロイド溶液からなるコロイダルシリカを、上記親水性潤滑塗料の固形分全体を100%として1〜30%含有することを特徴とするアルミニウム用親水性潤滑塗料。
  7. アルミニウム板あるいはプレコートアルミニウム板からなる被加工材と、該被加工材の表面に形成された請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルミニウム親水性潤滑塗料よりなる潤滑塗膜とからなり、
    上記潤滑塗膜の膜厚は、10〜10000mg/m2であることを特徴とする被塗物。
  8. 請求項7において、上記プレコートアルミニウム板は、アルミニウム板の表面上にプレコート層を形成しており、該プレコート層の最外層は親水性皮膜よりなることを特徴とする被塗物。
  9. 請求項8において、上記プレコート層は、アルミニウム板の表面上に形成されたクロメート皮膜、ジルコニウム皮膜、耐食性樹脂皮膜のいずれかよりなる下地層と、該下地層上にさらに形成された親水性皮膜とよりなることを特徴とする被塗物。
  10. 請求項8において、上記プレコート層は、アルミニウム板の表面上に形成されたクロメート皮膜或いはジルコニウム皮膜からなる下地層と、該下地層上にさらに形成された耐食性樹脂皮膜からなる中間層と、該中間層上にさらに形成された親水性樹脂皮膜とよりなることを特徴とする被塗物。
  11. 請求項8〜10のいずれか1項において、上記親水性皮膜は、水酸基、カルボキシル基、エステル基、エーテル基のうち1種又は2種以上を含む有機樹脂を含むことを特徴とする被塗物。
  12. 請求項11において、上記親水性皮膜は、さらに、ケイ酸塩及び/又はコロイダルシリカを含有することを特徴とする被塗物。
  13. 請求項7〜12のいずれか一項において、上記被塗物は、熱交換器用フィン材に用いられることを特徴とする被塗物。
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