JP5201787B2 - 成形用アルミニウム合金板及びその製造方法、並びに成形用アルミニウム合金板の加工方法 - Google Patents

成形用アルミニウム合金板及びその製造方法、並びに成形用アルミニウム合金板の加工方法 Download PDF

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Description

本発明は、表面に水和酸化物皮膜を有する成形用アルミニウム合金板及びその製造方法、並びに成形用アルミニウム合金板の加工方法に関する。
従来は、自動車などの輸送パネル材、あるいは家電、IT筐体等の材料には鋼が使われてきた。しかしながら、近年では、環境あるいは省エネルギー対策の一環として、それらの軽量化あるいは小型化の要求が強くなっている。そのため、材料としては鋼からアルミニウム(以下、アルミニウム合金を含む)に変わりつつあり、特にIT筐体では主流になりつつある。
一般に、アルミニウムをこれらの用途に適用するためには、鋼と同様、処理材に加工潤滑油を予め塗布あるいはプレス成形時に供給し、プレス金型との摩擦潤滑性を向上させてプレス成形性を高めているのが現状である。
しかし、アルミニウムは、鋼ほど材料自身に伸びがなく、その成形性が鋼に比べて劣るという欠点がある。これを補うため、成形時に用いる潤滑油の改良がなされてきている。しかし、一般に、潤滑性に優れた潤滑油は、より高粘度化あるいは高油性化する傾向がある。このような潤滑油を用いると、作業性が悪くなるだけでなく、後工程の洗浄で洗浄が困難となり、品質を劣化させるおそれがあった。さらに、生産能率を下げ、環境負荷が多くなるおそれがあった。したがって、潤滑油の改良は、必ずしも好ましい対策とはいえなかった。
一方、高成形性を得るため、樹脂皮膜を予めアルミニウムに付与する方法、すなわち通称プレコートアルミニウム板と称される板材が開発されている(特許文献1〜4参照)。
しかしながら、プレコートアルミニウム板においては、成形後にプレコート皮膜が不要になるが、該プレコート皮膜を容易に除去するための適当な手段が未だ開発されていないという問題があった。そのため、特に、成形後に塗装や焼き付け等を行う必要がある自動車パネル等の用途に適用することが困難であった。
このように、アルミニウム板材のプレス成形性を、後工程の洗浄工程に負荷をかけることなく向上させるには工業的にはかなり困難な状態にあった。
特開2004−17454号公報 特開2004−17455号公報 特開2005−66439号公報 特開2005−74790号公報
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、潤滑油の洗浄性を悪化させることなく、潤滑油を供給したときにおける潤滑性を向上させて成形性を向上させることができる成形用アルミニウム合金板及びその製造方法、ならびに該アルミニウム合金板の加工方法を提供しようとするものである。
第1の発明は、アルミニウム合金板と、該アルミニウム合金板の表面に形成されたAlの水和酸化物皮膜とを有する成形用アルミニウム合金板であって、
上記水和酸化物皮膜は、フーリエ変換赤外分光分析測定(FT−IR)において、波数1100cm-1近傍及び波数1350cm-1近傍に吸収スペクトルのピークを示し、1100cm-1近傍における上記吸収スペクトルのピークにおける吸光度の最大値をA1、1350cm-1近傍における上記吸収スペクトルのピークにおける吸光度の最大値をA2とすると、A2/A1≧1という関係を満足し、
上記水和酸化物皮膜上に、潤滑油、固体潤滑剤、及びワックスから選ばれる1種以上からなる潤滑性皮膜を有し、該潤滑性皮膜の付着量は0.1〜10g/m 2 であることを特徴とする成形用アルミニウム合金板にある(請求項1)。
上記第1の発明において、最も注目すべき点は、上記水和酸化物皮膜は、フーリエ変換赤外分光分析測定(FT−IR)において、波数1100cm-1近傍及び波数1350cm-1近傍に吸収スペクトルのピークを示し、1100cm-1近傍における上記吸収スペクトルのピークにおける吸光度の最大値をA1、1350cm-1近傍における上記吸収スペクトルのピークにおける吸光度の最大値をA2とすると、A2/A1≧という関係を満足することにある。このように、FT−IRにおいて、上述のごとく特徴的なピークを示す水和酸化物皮膜を上記アルミニウム合金板の表面に有する上記成形用アルミニウム合金板は、表面の摩擦係数が低くなる。そのため、上記成形用アルミニウム合金板は、潤滑油を用いなくても、例えばプレス成形等における成形性を向上させることができる。また、潤滑油を用いなくても成形性を向上できるため、成形後に洗浄により潤滑油を除去する必要がなくなる。
また、上記成形用アルミニウム合金板は、潤滑油を塗布して成形に供することもできる。この場合には、上記水和酸化物皮膜が潤滑油と優れた親和性を示し、比較的少量の潤滑油でも上記成形用アルミニウム合金板の成形性を向上させることができる。また、潤滑油の量を抑えることができるため、成形後に潤滑油を洗浄等によって除去することが容易になる。
第2の発明は、アルミニウム合金板と、該アルミニウム合金板の表面に形成されたAlの水和酸化物皮膜とを有する成形用アルミニウム合金板を製造する方法であって、
アルミニウム合金板の表面にアルカリ性水溶液よりなるアルカリ処理液を接触させて自然酸化皮膜を除去すると共にスマットを生成させるアルカリ処理工程と、
該アルカリ処理工程において上記アルミニウム合金板の表面に生成した上記スマットを除去するデスマット処理を行わずに、上記アルミニウム合金板に温度50℃以上の水又はアルカリ性水溶液よりなる熱水処理液を接触させて、上記アルミニウム合金板の表面に上記水和酸化物皮膜を形成させる熱水処理工程と
上記水和酸化物皮膜上に、潤滑油、固体潤滑剤、及びワックスから選ばれる1種以上からなる潤滑性皮膜形成剤を塗布し、0.1〜10g/m 2 の潤滑性皮膜を形成する潤滑性皮膜形成工程とを有することを特徴とする成形用アルミニウム合金板の製造方法にある(請求項)。
従来において、水和酸化物皮膜を形成する際には、アルカリ処理によりアルミニウム合金板の自然酸化皮膜を除去したときに生じるスマットを酸処理等によって除去し、その後、水等と反応させて水和酸化物皮膜を生成していた。これに対し、本発明においては、上記スマットを除去せずに上記水和酸化物を形成させている。
即ち、上記アルカリ処理工程においては、アルミニウム合金板の表面にアルカリ性水溶液よりなるアルカリ処理液を接触させて自然酸化皮膜を除去すると共にスマットを生成させる。また、上記熱水処理工程においては、上記アルカリ処理工程において上記アルミニウム合金板の表面に生成した上記スマットを除去するデスマット処理を行わずに、上記アルミニウム合金板に温度50℃以上の水又はアルカリ性水溶液よりなる熱水処理液を接触させて、上記アルミニウム合金板の表面に上記水和酸化物皮膜を形成させる。
このようにして形成した上記水和酸化物は、上記アルミニウム合金板の表面の摩擦係数を低くすることができる。そのため、上記成形用アルミニウム合金板は、潤滑油を用いなくても、例えばプレス成形等における成形性を向上させることができる。また、潤滑油を用いなくても成形性を向上できるため、成形後に洗浄により潤滑油を除去する必要がなくなる。
また、本発明の製造方法によって得られる上記成形用アルミニウム合金板は、上記水和酸化物皮膜が潤滑油と優れた親和性を示すことができる。そのため、潤滑油を塗布して成形に供する場合には、比較的少量の潤滑油でも上記成形用アルミニウム合金板の成形性を向上させることができる。また、潤滑油の量を抑えることができるため、成形後に潤滑油を洗浄等によって除去することが容易になる。
第3の発明は、上記第1の発明の上記成形用アルミニウム合金板をプレス成形に供することを特徴とする成形用アルミニウム合金板の加工方法にある(請求項14)。
本発明の加工方法においては、上記第1の発明の成形用アルミニウム合金板を用いてプレス成形を行っている。そのため、上記成形用アルミニウム合金板が有する上述の優れた成形性を生かしてより高い延伸率で上記成形用アルミニウム合金板を成形することができる。また、潤滑油を用いて成形を行う場合には、潤滑油の量を低減することができるため、成形後の潤滑油の除去を容易に行うことができる。
次に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
本発明の成形用アルミニウム合金板は、アルミニウム合金板と、該アルミニウム合金板の表面に形成されたAlの水和酸化物皮膜とを有する。アルミニウム合金板は、所定の厚みまで圧延することにより得ることができる。
また、上記第1の発明において、上記水和酸化物皮膜は、フーリエ変換赤外分光分析測定(FT−IR)において、波数1100cm-1近傍及び波数1350cm-1近傍に吸収スペクトルのピークを示す。1100cm-1近傍における上記吸収スペクトルのピークにおける吸光度の最大値をA1、1350cm-1近傍における上記吸収スペクトルのピークにおける吸光度の最大値をA2とすると、A2/A1≧0.1という関係を満足する。
上記波数1100cm-1近傍は、波数1100±50cm-1を意味する。また、上記波数1350cm1近傍は、波数1350±50cm1を意味する。
上記特定波数に吸収スペクトルのピークを示さない場合又はA2/A1<0.1の場合には、上記水和酸化物皮膜が上記アルミニウム合金板の表面の摩擦係数を充分に低減できなくなるおそれがある。またこの場合には、上記水和酸化物皮膜と潤滑油との親和性を充分に向上させることができなくなるおそれがある。その結果、成形性を充分に向上させることが困難になるおそれがある。より好ましくは、A2/A1≧1以上がよく、さらに好ましくはA2/A1≧1.5がよい。
また、第2の発明においては、上記アルカリ処理工程と、上記熱水処理工程とを行うことにより上記成形用アルミニウム合金板を製造する。
上記アルカリ処理工程においては、上記アルミニウム合金板の表面にアルカリ性水溶液よりなるアルカリ処理液を接触させて自然酸化皮膜を除去すると共にスマットを生成させる。
上記アルカリ処理工程は、例えばアルミニウム合金板の製造工程に連続して行うことができる。この場合には、上記アルミニウム合金板の表面には、圧延油等の潤滑油が存在するが、上記アルカリ処理工程を行うことにより、上述のごとく自然酸化皮膜を除去できると共に、これらの油成分を脱脂することができる。もちろん、上記アルミニウム合金板としては、例えば市販のアルミニウム合金板のように、油成分が予め除去された合金板を用いることもできる。
また、上記アルカリ処理液は、アルカリ性水溶液からなる。具体的には、例えば水酸化ナトリウム水溶液、ケイ酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム等を用いることができる。
また、上記アルカリ処理液としては、pHが8以上のアルカリ水溶液を用いることが好ましい。この場合には、上記アルカリ処理工程において、上記アルカリ処理液を用いて上記自然酸化皮膜を除去し、スマットを生成させることがより容易になる。
また、上記熱水処理工程においては、上記アルミニウム合金板の表面に生成した上記スマットを除去するデスマット処理を行わずに、上記アルミニウム合金板に温度50℃以上の水又はアルカリ性水溶液よりなる熱水処理液を接触させて、上記アルミニウム合金板の表面に上記水和酸化物皮膜を形成させる。
上記のごとく上記熱水処理工程においては、上記デスマット処理を行わずに上記水和酸化物皮膜を形成しているため、上記水和酸化物皮膜は、スマットを含有することができる。上記スマットは、連続的又は不連続的な層(スマット層)を形成することができる。上記水和酸化物皮膜は該スマット層上に形成されていてもよいし、上記水和酸化物皮膜とスマット層とが入り交じった状態で形成されていてもよい。また、スマットは層状でなく、上記水和酸化物皮膜に分散して存在していてもよい。
上記熱水処理工程により、フーリエ変換赤外分光分析測定(FT−IR)において、波数1100cm-1近傍及び波数1350cm-1近傍に吸収スペクトルのピークを示し、かつ1100cm-1近傍における上記吸収スペクトルのピークにおける吸光度の最大値をA1、1350cm-1近傍における上記吸収スペクトルのピークにおける吸光度の最大値をA2とすると、A2/A1≧0.1という関係を満足する水和酸化物皮膜を形成することができる。
上記熱水処理液は、温度50℃以上の水又は温度50℃以上のアルカリ性水溶液からなる。
上記熱水処理液の温度が50℃未満の場合には、水和酸化物皮膜を充分に形成させることが困難になるおそれがある。より好ましくは、温度80℃以上の水又はアルカリ性水溶液を用いることがよい。
また、上記水和酸化物皮膜をより早く成長させるために、上記熱水処理工程においては、アルカリ性水溶液からなる熱水処理液を用いることが好ましい。該アルカリ性水溶液としては、例えばトリエタノールアミン水溶液、アンモニア水溶液、アルミン酸ナトリウム水溶液等を用いることができる。また、上記熱水処理液として用いるアルカリ水溶液としては、pHが8以下であることが好ましい。
本発明において、上記水和酸化物皮膜の厚みは、0.6〜10μmであることが好ましい(請求項2)。
また、上記熱水処理工程においては、厚み0.6〜10μmの上記水和酸化物皮膜を形成させることが好ましい(請求項)。
上記水和酸化物皮膜の厚みが0.6μm未満の場合には、該水和酸化物皮膜による上述の成形性の向上効果が充分に得られないおそれがある。一方、厚み10μmを越えて上記水和酸化物皮膜を形成しても成形性等の向上効果はもはやほとんど得られず、上記熱水処理を行う時間が必要以上に長くなり、生産能率が低下するおそれがある。
上記成形用アルミニウム合金板には、潤滑油、固形潤滑剤、ワックス等からなる潤滑性皮膜を形成することができる。また、上記成形用アルミニウム合金板は、成形時に潤滑油を供給しながら成形させることができる。
上記のごとく、潤滑性皮膜形成したり、成形時に潤滑油を用いると、上記成形用アルミニウム合金板の上記水和酸化物皮膜が潤滑成分を強固に吸着できるため、より一層成形性を向上させることができる。上記水和酸化物皮膜は、表面にμオーダーでの凹凸を有している(図4参照)ため、潤滑油、固形潤滑剤、ワックス等をトラップしやすく、成形時の潤滑性を向上できるからである。また、上記水和酸化物皮膜の水酸基が潤滑油、固形潤滑剤、ワックス中に含まれる極性の強い潤滑成分を強固に吸着し、過酷な成形条件においても潤滑性分が脱離し難く、優れた潤滑性を維持できるからである。
上記潤滑油としては、鉱油や合成油等を含有するものを用いることができる。また、固体潤滑剤としては、例えばグラファイト、二硫化モリブデン、PbO、Na2MoO4、四フッ化エチレン樹脂、及びフタロシアニン等から選ばれる1種以上を用いることができる。また、ワックスとしては、例えばカルナウバ、ラノリン、ポリエチレン、パラフィン、及びマイクロスタリン等から選ばれる1種以上を用いることができる。
また、上記潤滑性皮膜を形成する場合には、その付着量は、0.1〜10g/m2であることが好ましい。
潤滑性皮膜の付着量が0.1g/m2未満の場合には、潤滑性皮膜を形成することによるメリットが充分に発揮されなくなるおそれがある。一方10g/m2を越える場合には、成形後の洗浄等により、潤滑性皮膜を除去することが困難になるおそれがある。
よって、上記成形用アルミニウム合金板は、上記水和酸化物皮膜上に、潤滑油、固体潤滑剤、及びワックスから選ばれる1種以上からなる潤滑性皮膜を有し、該潤滑性皮膜の付着量は0.1〜10g/m2であることが好ましいまた、上記水和酸化物皮膜上に、潤滑油、固体潤滑剤、及びワックスから選ばれる1種以上からなる潤滑性皮膜形成剤を塗布し、0.1〜10g/m2の潤滑性皮膜を形成する潤滑性皮膜形成工程を有することが好ましい
また、上記潤滑油は、油性剤として、エステル、脂肪酸、アルコール、油脂から選ばれる1種以上を含有することが好ましい(請求項及び請求項)。
また、上記潤滑油は、極圧剤として、硫黄系化合物又は/及びリン系化合物を含有することが好ましい(請求項及び請求項10)。
上記潤滑油が上記油性剤又は/及び上記極圧剤を含有する場合には、極性を有する上記油性剤又は/及び上記極圧剤が上記水和酸化物皮膜の水酸基と強い吸着力で吸着し、境界潤滑性に優れた強固な上記潤滑性皮膜を形成することができる。その結果、上記成形用アルミニウム合金板の成形性をより向上させることができる。また、成形時におけるアルミニウム磨耗粉の凝着を抑制することができる。
上記油性剤に用いられるアルコールとしては、例えばアルキル基の全炭素数が12〜18のアルコールを用いることができる。具体的には、例えばラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチンアルコール、オレイルアルコール、及びステアリルアルコール等がある。これらは単独で用いることもできるが、2種以上を混合して用いることもできる。上記全炭素数が11未満の場合には、臭いがきつくなり作業環境を悪化させるおそれがある。また、境界潤滑性を充分に向上させることができないおそれがある。一方、全炭素数が18を超えると、冬季に固まり易くなり、取り扱いが困難になるおそれがある。境界潤滑性、環境、取り扱い、価格等の観点から、ラウリルアルコールあるいはオレイルアルコールがより好ましい。
また、脂肪酸としては、例えばアルキル基の全炭素数が11〜17の高級脂肪酸を用いることができる。具体的には、例えば、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、デミスリチン酸、ペンタデカン酸、パルチミン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の直鎖飽和酸や、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノル酸、リノレン酸、リシノール酸等の不飽和脂肪酸がある。より好ましくは、潤滑性、作業性、長期安定性およびコストの面を考慮して、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸等がよい。上記脂肪酸において、全炭素数が11未満の場合には、境界潤滑性を充分に向上させることが困難になるおそれがある。一方、17を超える場合には、冬季に固まり易く、取り扱いが困難になるおそれがある。
油脂としては、例えば大豆油、なたね油、パーム油、やし油、豚脂、及び牛脂等がある。これらのなかでも、操業性の点からは、パーム油、やし油が好ましい。
また、エステルとしては、例えば脂肪酸エステル、合成エステル等を用いることができる。
脂肪酸エステルとしては、例えば一般式R3−COO−R4(ただし、R3は炭素数7〜17のアルキル基、R4は炭素数1〜4のアルキル基)により示される脂肪酸エステルを用いることができる。
R3の炭素数が7未満の場合には,潤滑性を充分に向上させることが困難になるおそれがある。また、アルミニウム磨耗粉の凝着を充分に抑制することができなくなるおそれがある。さらに、臭気がきつくなり、作業環境を悪化させるおそれがある。一方,R3の炭素数が17を超える場合には,乾燥性が悪化して乾燥し難くくなり、かつ融点が高くなって常温で固化し易くなり、作業性が悪化するおそれがある。最も好ましくはR3の炭素数は17がよい。
また,上記R4の炭素数が4を超える場合には,乾燥性が悪化し,かつ融点が高くなり常温で固化し易くなるおそれがある。そのためこの場合には、加熱設備の追加が必要となり、作業性が悪化するおそれがある。
脂肪酸エステルの具体例としては、例えばカプリル酸メチル,カプリル酸エチル,カプリル酸プロピル,カプリル酸ブチル,ペラルゴン酸メチル,ペラルゴン酸エチル,ペラルゴン酸プロピル,ペラルゴン酸ブチル,カプリン酸メチル,カプリン酸エチル,カプリン酸プロピル,カプリン酸ブチル,ラウリン酸メチル,ラウリン酸エチル,ラウリン酸プロピル,ラウリン酸ブチル,ミリスチン酸メチル,ミリスチン酸エチル,ミリスチン酸プロピル,ミリスチン酸ブチル,パルミチン酸メチル,パルミチン酸エチル,パルミチン酸プロピル,パルミチン酸ブチル,ステアリン酸メチル,ステアリン酸エチル,ステアリン酸プロピル,ステアリン酸ブチル,オレイン酸メチル,オレイン酸エチル,オレイン酸プロピル,及びオレイン酸ブチル等がある。
また、上記合成エステルとしては、例えばネオペンチルグリコールエステル、トリメチロールプロパンエステル、及びペンタエリストールエステル等を用いることができる。これらは、単独で用いることもできるが、2種以上を混合して用いることもできる。
なお、これらの合成エステルを構成する脂肪酸は直鎖のものであっても、分枝を有するものであってもよい。また、合成エステルはフルエステルあるいは部分エステルのどちらでもよい。
上記のネオペンチルグリコールエステルとしては、具体的には、例えばネオペンチルグリコールカプリン酸モノエステル、ネオペンチルグリコールカプリン酸ジエステル、ネオペンチルグリコールエステル、ネオペンチルグリコールリノレン酸モノエステル、ネオペンチルグリコールリノレン酸ジエステル、ネオペンチルグリコールステアリン酸モノエステル、ネオペンチルグリコールステアリン酸ジエステル、ネオペンチルグリコールオレイン酸モノエステル、ネオペンチルグリコールオレイン酸ジエステルネオペンチルグリコールエステル、ネオペンチルグリコールイソステアリン酸モノエステル、ネオペンチルグリコールイソステアリン酸ジエステル、ネオペンチルグリコールやし油脂肪酸モノエステル、ネオペンチルグリコールやし油脂肪酸ジエステル、ネオペンチルグリコール牛脂脂肪酸モノエステル、ネオペンチルグリコール牛脂脂肪酸ジエステル、ネオペンチルグリコールパーム油脂肪酸モノエステル、ネオペンチルグリコールパーム油脂肪酸ジエステルネオペンチルグリコールエステル、ネオペンチルグリコール2モル・ダイマ酸1モル・オレイン酸2モルの複合エステル等がある。
また、トリメチロールプロパンエステルとしては、例えばトリメチロールプロパンカプリン酸モノエステル、トリメチロールプロパンカプリン酸ジエステル、トリメチロールプロパンカプリン酸トリエステル、トリメチロールプロパンリノレン酸モノエステル、トリメチロールプロパンリノレン酸ジエステル、トリメチロールプロパンリノレン酸トリエステル、トリメチロールプロパンステアリン酸モノエステル、トリメチロールプロパンステアリン酸ジエステル、トリメチロールプロパンステアリン酸トリエステル、トリメチロールプロパンオレイン酸モノエステル、トリメチロールプロパンオレイン酸ジエステル、トリメチロールプロパンオレイン酸トリエステル、トリメチロールプロパンイソステアリン酸モノエステル、トリメチロールプロパンイソステアリン酸ジエステル、トリメチロールプロパンイソステアリン酸トリエステル、トリメチロールプロパンやし油脂肪酸モノエステル、トリメチロールプロパンやし油脂肪酸ジエステル、トリメチロールプロパンやし油脂肪酸トリエステル、トリメチロールプロパン牛脂脂肪酸モノエステル、トリメチロールプロパン牛脂脂肪酸ジエステル、トリメチロールプロパン牛脂脂肪酸トリエステル、トリメチロールプロパンパーム油脂肪酸モノエステル、トリメチロールプロパンパーム油脂肪酸ジエステル、トリメチロールプロパンパーム油脂肪酸トリエステル、トリメチロールプロパン2モル・ダイマ酸1モル・オレイン酸4モルの複合エステル等がある。
また、ペンタエリスリトールとしては、例えばペンタエリスリトールカプリン酸モノエステル、ペンタエリスリトールカプリン酸ジエステル、ペンタエリスリトールカプリン酸トリエステル、ペンタエリスリトールカプリン酸テトラエステル、ペンタエリスリトールリノレン酸モノエステル、ペンタエリスリトールリノレン酸ジエステル、ペンタエリスリトールリノレン酸トリエステル、ペンタエリスリトールリノレン酸テトラエステル、ペンタエリスリトールステアリン酸モノエステル、ペンタエリスリトールステアリン酸ジエステル、ペンタエリスリトールステアリン酸トリエステル、ペンタエリスリトールステアリン酸テトラエステル、ペンタエリスリトールオレイン酸モノエステル、ペンタエリスリトールオレイン酸ジエステル、ペンタエリスリトールオレイン酸トリエステル、ペンタエリスリトールオレイン酸テトラエステル、ペンタエリスリトールイソステアリン酸モノエステル、ペンタエリスリトールイソステアリン酸ジエステル、ペンタエリスリトールイソステアリン酸トリエステル、ペンタエリスリトールイソステアリン酸テトラエステル、ペンタエリスリトールやし油脂肪酸モノエステル、ペンタエリスリトールやし油脂肪酸ジエステル、ペンタエリスリトールやし油脂肪酸トリエステル、ペンタエリスリトールやし油脂肪酸テトラエステル、ペンタエリスリトール牛脂脂肪酸モノエステル、ペンタエリスリトール牛脂脂肪酸ジエステル、ペンタエリスリトール牛脂脂肪酸トリエステル、ペンタエリスリトール牛脂脂肪酸テトラエステル、ペンタエリスリトールパーム油脂肪酸モノエステル、ペンタエリスリトールパーム油脂肪酸ジエステル、ペンタエリスリトールパーム油脂肪酸トリエステル、ペンタエリスリトールパーム油脂肪酸テトラエステル、トリメチロールプロパン2モル・ダイマ酸1モル・オレイン酸6モルの複合エステル等がある。
上述のネオペンチルグリコールエステル、トリメチロールプロパンエステル、及びペンタエリストールエステル等の各種合成エステルのうちで、より好ましくは、オレイン酸、イソステアリン酸、やし油脂肪酸、牛脂脂肪酸のエステルがよい。
また、上記合成エステルは、脂肪酸側の炭素数が11〜17であることが好ましい。
炭素数が11未満の場合には、潤滑性が低下するおそれがある。
一方、炭素数が17を越える場合には、冬季等にはさらに粘度が上昇し、場合によっては固化してしまうおそれがあるため混合時に加温して溶解させる必要が生じるおそれがある。
また、上記極圧剤としては、例えば硫化エステル、硫化ラード等の硫黄化合物、燐酸エステルまたはこれらのチオ化合物、炭素数1〜8のアルキル基、アルキルアリル基またはアルリ基を有するホスホン酸、アルキルフォスフォン酸エステル、リン酸トリトリル(トリクレジルフォスフェート)の1種あるいは2種以上を用いることができる。上記潤滑油中の上記極圧剤の含有率は1〜10wt%であることが好ましい。
次に、上記潤滑油は、アミン、アルカノールアミン、脂肪族ポリアミン、芳香族アミン、脂環式アミン、複素環アミン、及びそれらのアルキレンオキシド付加物から選ばれる1種以上のアミン誘導体を0.01〜2.0重量%含有することが好ましい(請求項及び請求項11)。
上記アミン誘導体は、アルミ磨耗粉の分散性を向上させる効果を有すると共に、金型へのアルミ磨耗粉の凝着を抑制する効果を有する。そのため、上述のごとく上記潤滑油が上記アミン誘導体を含有する場合には、アルミ磨耗粉を金型から除去したりする金型の手入れ作業の頻度を減らすことができ、生産能率を向上できる。
上記アミン誘導体としては、例えば脂肪族アミン、脂肪族ポリアミン、芳香族アミン、脂環式アミン、複素環アミン及びそれらのアルキレンオキシド付加物等を用いることができる。また、ヒドロキシル基、エーテル基が含まれていても良い。また、付加されるアルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、α−オレフィンオキシド、スチレンオキシド等のアルキレンオキシド等を付加重合することにより得ることができる。付加させるアルキレンオキシド等の重合形態は特に限定されず、1種類のアルキレンオキシド等の単独重合、2種類以上のアルキレンオキシド等のランダム共重合、ブロック共重合又はランダム/ブロック共重合等であってよい。
上記アミン誘導体の具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、カプリルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、牛脂アミンジメチルアミン、ジエチルアミン、ジオクチルアミン、ブチルオクチルアミン、ジステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、トリオクチルアミン等の脂肪族アミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、N,N−ジイソプロピルエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチルイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルイソプロパノールアミン、N−エチルイソプロパノールアミン、N,N−ジエチルイソプロパノールアミン、N−イソプロピルイソプロパノールアミン、N,N−ジイソプロピルイソプロパノールアミン、モノn−プロパノールアミン、ジn−プロパノールアミン、トリn−プロパノールアミン、N−メチルn−プロパノールアミン、N,N−ジメチルn−プロパノールアミン、N−エチルn−プロパノールアミン、N,N−ジエチルn−プロパノールアミン、N−イソプロピルn−プロパノールアミン、N,N−ジイソプロピルn−プロパノールアミン、モノブタノールアミン、ジブタノールアミン、トリブタノールアミン、N−メチルブタノールアミン、N,N−ジメチルブタノールアミン、N−エチルブタノールアミン、N,N−ジエチルブタノールアミン、N−イソプロピルブタノールアミン、N,N−ジイソプロピルブタノールアミン等のアルカノールアミン、エチレンジアミン
、ジエチレントリアミン 、トリエチレンテトラアミン、ヘキサメチレンジアミン、硬化牛脂プロピレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン、アニリン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリンなどの芳香族アミン、N−シクロヘキシルアミン、N,N−ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチル−シクロヘキシルアミン、N,N−ジエチル−シクロヘキシルアミン、N,N−ジ(3−メチル−シクロヘキシル)アミン、N,N−ジ(2−メトキシ−シクロヘキシル)アミン、N,N−ジ(4−ブロモーシクロヘキシル)アミン等の脂環式アミン、ピロリジン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ピペコリン、2,6−ピペコリン、3,5−ルペチジン、ピペラジン、ホモピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、N−プロピルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、N−アセチルピペラジン、N−アセチルホモピペラジン、1−(クロロフェニル)ピペラジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノエチルピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、1,4−ビス(アミノプロピル)ピペラジン等の複素環アミンなどが挙げらる。
上記アミン誘導体は、油に対する溶解性の面から分枝鎖を有する全炭素数4以上の炭化水素基を有していることが好ましい。また、全炭素数が20を超えた場合には、後工程での残油量が増えるおそれがある。そのため、上記アミン誘導体の炭素数は、4〜20であることが好ましい。また、上記アミン誘導体としてアルキレンオキシド付加物を用いる場合には、アルキレンオキシドの付加モル数は通常1〜6が好ましい。より好ましくは1〜4がよい。アルキレンオキシドの付加モル数が6を越えると基油への溶解性が悪くなるおそれがある。
上記アミン誘導体の上記潤滑油中の含有量が0.01重量%未満の場合、アルミ摩耗粉の凝着を抑制する効果が充分に得られなくなるおそれがある。一方、2.0重量%を越える場合には、アルミ摩耗粉の凝着抑制効果をより持続させることができるが、上記潤滑油中に含有させることができる上記油性剤あるいは上記極圧剤の効果を損ねてしまうおそれがある。
また、上記潤滑油は、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム又は/及び分子内に四級炭素を一つ以上有する含酸素化合物を0.1〜5.0重量%含有することが好ましい(請求項及び請求項12)。
上記ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム及び上記含酸素化合物は、上記アミン誘導体と同様に、アルミ磨耗粉の分散性を向上させる効果を有すると共に、金型へのアルミ磨耗粉の凝着を抑制する効果を有する。そのため、上記潤滑油が、上述のごとくジオクチルスルホコハク酸ナトリウム又は/及び分子内に四級炭素を一つ以上有する含酸素化合物を含有する場合には、アルミ磨耗粉を金型から除去したりする金型の手入れ作業の頻度を減らすことができ、生産能率を向上できる。
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムとしては、具体的には例えばジ−2−エチルへキシルスルホコハク酸ナトリウム等がある。
また、分子内に四級炭素を一つ以上有する含酸素化合物としては、例えば多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物、またはそのハイドロカルビルエーテル等がある。また、上記含酸素化合物としては、これらの中から選ばれる1種の含酸素化合物を単独で用いても良いし、異なる構造を有する2種以上の含酸素化合物の混合物を用いても良い。
また、分子内に四級炭素を一つ以上有している多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物及びそのハイドロカルビルエーテルを構成する多価アルコールとしては、水酸基を2〜6個有するものが好ましい。
このような多価アルコールとしては、具体的には例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、2−ブチル−2−エチル−1.3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
上記多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物及びそのハイドロカルビルエーテルを構成するアルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜6のものが好ましい。より好ましくは炭素数2〜4のものがよい。炭素数2〜6のアルキレンオキサイドとしては、具体的には例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−エポキシブタン(α−ブチレンオキサイド)、2,3−エポキシブタン(β−ブチレンオキサイド)、1,2−エポキシ−1−メチルプロパン、1,2−エポキシヘプタンおよび1,2−エポキシヘキサン等が挙げられる。
なお、アルキレンオキシド等の重合形態は特に限定されず、1種類のアルキレンオキシド等の単独重合、2種類以上のアルキレンオキシド等のランダム共重合、ブロック共重合又はランダム/ブロック共重合等であってよい。また、水酸基を2〜6個有する多価アルコールにアルキレンオキサイドを付加させる際は、全ての水酸基に付加させてもよいし、一部の水酸基のみに付加させてもよい。
分子内に四級炭素を一つ以上有している多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物及びそのハイドロカルビルエーテルを構成するアルキレンオキサイド付加物の末端水酸基の一部または全てを、ハイドロカルビルエーテル化させたものが使用できる。ここで言うハイドロカルビル基とは、炭素数1〜24の炭化水素基を表す。
炭素数1〜24の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜18のアルキルアリール基、炭素数7〜12のアリールアルキル基等がある。
上記炭素数1〜24のアルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖または分枝のペンチル基、直鎖または分枝のヘキシル基、直鎖または分枝のヘプチル基、直鎖または分枝のオクチル基、直鎖または分枝のノニル基、直鎖または分枝のデシル基、直鎖または分枝のウンデシル基、直鎖または分枝のドデシル基、直鎖または分枝のトリデシル基、直鎖または分枝のテトラデシル基、直鎖または分枝のペンタデシル基、直鎖または分枝のヘキサデシル基、直鎖または分枝のヘプタデシル基、直鎖または分枝のオクタデシル基、直鎖または分枝のノナデシル基、直鎖または分枝のイコシル基、直鎖または分枝のヘンイコシル基、直鎖または分枝のドコシル基、直鎖または分枝のトリコシル基、直鎖または分枝のテトラコシル基等がある。
また、炭素数2〜24のアルケニル基としては、例えばビニル基、直鎖または分岐のプロペニル基、直鎖または分枝のブテニル基、直鎖または分枝のペンテニル基、直鎖または分枝のヘキセニル基、直鎖または分枝のヘプテニル基、直鎖または分枝のオクテニル基、直鎖または分枝のノネニル基、直鎖または分枝のデセニル基、直鎖または分枝のウンデセニル基、直鎖または分枝のドデセニル基、直鎖または分枝のトリデセニル基、直鎖または分枝のテトラデセニル基、直鎖または分枝のペンタデセニル基、直鎖または分枝のヘキサデセニル基、直鎖または分枝のヘプタデセニル基、直鎖または分枝のオクタデセニル基、直鎖または分枝のノナデセニル基、直鎖または分枝のイコセニル基、直鎖または分枝のヘンイコセニル基、直鎖または分枝のドコセニル基、直鎖または分枝のトリコセニル基、直鎖または分枝のテトラコセニル基等がある。
炭素数5〜7のシクロアルキル基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等がある。
炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基としては、例えばメチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む)、メチルエチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む)、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む)、メチルエチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む)、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む)、メチルエチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む)等がある。
炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等がある。
炭素数7〜18のアルキルアリール基としては、トリル基(全ての構造異性体を含む)、キシリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝のプロピルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝のブチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝のペンチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝のヘキシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝のヘプチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝のオクチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝のノニルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝のデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝のウンデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝のドデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)等がある。
炭素数7〜12のアリールアルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基(プロピル基の異性体を含む)、フェニルブチル基(ブチル基の異性体を含む)、フェニルペンチル基(ペンチル基の異性体を含む)、フェニルヘキシル基(ヘキシル基の異性体を含む)等がある。
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム及び分子内に四級炭素を一つ以上有する上記含酸素化合物の上記潤滑油中の含有量が0.1重量%未満の場合には、アルミ磨耗粉の凝着を抑制する効果が充分に得られなくなるおそれがある。一方、5.0重量%を越える場合又は上記含酸素化合物が四級炭素を含まない場合には、潤滑性に悪影響を及ぼす可能性がある。またこの場合には、基油揮発後の残留分が多くなり、成形後のアルミニウム成形品の品質を悪化させるおそれがある。
また、上記成形用アルミニウム合金板の製造にあたっては、上記潤滑性皮膜形成工程後に、上記成形用アルミニウム合金板を温度100℃以上300℃未満で加熱する加熱工程を行うことが好ましい(請求項13)。
この場合には、上記水和酸化物被膜と上記潤滑性皮膜との吸着をより強固にすることができ、上記アルミニウム合金板の境界潤滑性をより向上させることができる。特に、上記潤滑性皮膜が上記油性剤又は/及び極圧剤を含有する場合に、上述の境界潤滑性の向上効果をより顕著に発揮させることができる。上記加熱工程における加熱温度が100℃未満の場合には、上記水和酸化物皮膜と上記潤滑性被膜との吸着力を向上させる効果が充分に得られないおそれがある。一方、加熱温度が300℃以上になると上記潤滑性皮膜に含まれる油性剤等が分解し始めるおそれがある。
次に、上記第3の発明においては、上記第1の発明の成形用アルミニウム合金板を用いてプレス成形を行う。
上記成形用アルミニウム合金板のプレス成形の際には、上記成形用アルミニウム合金板に潤滑油を供給しながらプレス成形を行うことができる。上記成形用アルミニウム合金板として、上記水和酸化物皮膜上に上記潤滑性皮膜を有する合金板を用いる場合には、上記成形用アルミニウム合金板に潤滑油を供給することなくプレス成形を行うことができる。
(実施例1)
次に、本発明の成形用アルミニウム合金板の製造方法について、図1〜図5を用いて説明する。
図1に示すごとく、本例の成形用アルミニウム合金板1は、アルミニウム合金板2と、その表面に形成されたAlの水和酸化物皮膜3とを有する。水和酸化物皮膜3は、図2に示すごとく、フーリエ変換赤外分光分析測定(FT−IR)において、波数1100cm-1近傍及び波数1350cm-1近傍に吸収スペクトルのピークを示す。また、水和酸化物皮膜3のFT−IRにおいて、1100cm-1近傍のピークにおける吸光度の最大値をA1、1350cm-1近傍のピークにおける吸光度の最大値をA2とすると、A2/A1≧0.1という関係を満足する。
本例において、アルミニウム合金板2は、アルミニウムを主成分とし、さらに合金元素としてMg等を含有する5000系(Al−Mg系)合金からなる。また、水和酸化物被膜3の膜厚は2.0μmである。
本例の成形用アルミニウム合金板1は、下記のアルカリ処理工程と熱水処理工程とを行うことにより製造できる。アルカリ処理工程においては、アルミニウム合金板2の表面にアルカリ性水溶液よりなるアルカリ処理液を接触させて自然酸化皮膜を除去すると共にスマットを生成させる。次いで、熱水処理工程においては、アルミニウム合金板2の表面に生成したスマットを除去するデスマット処理を行わずに、アルミニウム合金板2に温度50℃以上の水又はアルカリ性水溶液からなる熱水処理液を接触させて、アルミニウム合金板2の表面に水和酸化物皮膜3を形成させる。
以下、本例の成形用アルミニウム合金板の製造方法について、詳細に説明する。
まず、アルミニウム合金板2として、住友軽金属工業(株)製のアルミニウム合金板GC55−O(JIS5052、板厚1.0mm、φ120mm)を準備した。このアルミニウム合金板2を、10wt%水酸化ナトリウム水溶液を用いて洗浄し、アルミニウム合金板2の表面の自然酸化皮膜を除去すると共に、スマットを生成させた(アルカリ処理工程)。次いで、アルミニウム合金板2を、温度80℃で、濃度3wt%のトリエタノールアミン水溶液に浸漬し、アルミニウム合金板2の表面に水和酸化物皮膜3を形成させた(熱水処理工程)。このようにして成形用アルミニウム合金板1を得た。これを供試材D1とする。
次に、供試材D1上に形成された水和酸化物皮膜について、フーリエ変換赤外分光分析測定(FT−IR)を行った。FT−IRは、堀場製作所製のFREEXACT−III(登録商標)、FT−720を用いて行った。その結果を図2に示す。
同図より知られるごとく、供試材D1における水和酸化物皮膜は、波数1100cm-1近傍と、波数1350cm-1近傍とにそれぞれ吸収スペクトルのピークを示した。また、1100cm-1近傍における吸収スペクトルのピークにおける吸光度の最大値をA1、1350cm-1近傍における吸収スペクトルのピークにおける吸光度の最大値をA2とすると、吸光度比A2/A1は2.8であった。
次いで、供試材D1の表面の水和酸化物皮膜3を走査型電子顕微鏡で観察した。その写真を図4に示す。同図より知られるごとく、μオーダーの凹凸を有する水和酸化物皮膜が形成されていた。
また、供試材D1の表面の水和酸化物皮膜3の膜厚をFischer製パーマスコープを用いて測定した。その結果、供試材D1においては水和酸化物が厚み2.0μmで形成されていた。
次に、本例においては、供試材D1の比較用として、4種類の成形用アルミニウム合金板(試料B1、供試材D2〜D4)を作製した。
試料B1は、供試材D1の水和酸化物皮膜上に潤滑性皮膜を形成した成形用アルミニウム合金板である。
試料B1の作製にあたっては、まず、供試材D1と同様にして、アルミニウム合金板の表面に水和酸化物皮膜を形成した成形用アルミニウム合金板を作製した。次いで、潤滑油B1を準備した。潤滑油B1は、温度40℃における粘度が2.1mm2/sのパラフィン系鉱油にラウリン酸メチル10wt%を添加した潤滑油である。この潤滑油B1を成形用アルミニウム合金板の水和酸化物被膜上に、付着量が0.4g/m2となるように塗布し、潤滑性皮膜を形成した(潤滑性被膜形成工程)。このようにして、アルミニウム合金板2の表面上に形成された水和酸化物皮膜3の表面に、さらに潤滑性皮膜4が形成された成形用アルミニウム合金板1(試料B1)を作製した(図5参照)。
また、供試材D2は、吸光度比A2/A1が上記供試材D1とは異なる水和酸化物皮膜をアルミニウム合金板の表面に形成したものである。
供試材D2の作製にあたっては、まず、上記供試材D1と同様に、住友軽金属工業(株)製のアルミニウム合金板GC55−O(JIS5052、板厚1.0mm、φ120mm)を準備し、このアルミニウム合金板を10wt%水酸化ナトリウム水溶液にて洗浄し、アルミニウム合金板2の表面の自然酸化皮膜を除去した。次いで、温度25℃、かつ濃度30wt%の硝酸水溶液を用いてアルミニウム合金板を洗浄し、表面のスマットを除去した(デスマット処理)。その後、上記供試材D1と同様に、温度80℃、かつ濃度3wt%のトリエタノールアミン水溶液にアルミニウム合金板を浸漬し、アルミニウム合金板の表面に水和酸化物皮膜を形成させた。このようにして成形用アルミニウム合金板を得た(供試材D2)。
次に、供試材D2上に形成された水和酸化物皮膜について、供試材D1と同様にしてFT−IRを行った。その結果を図3に示す。FT−IR測定の結果、供試材D2における水和酸化物皮膜の吸光度比A2/A1は0.05以下(検出限界以下)であった。
次いで、供試材D1と同様にして供試材D2の水和酸化物皮膜3の膜厚を測定した。その結果、供試材D2においては水和酸化物が厚み2.0μmで形成されていた。
また、供試材D3は、水和酸化物皮膜を有していないアルミニウム合金板である。
供試材D3としては、住友軽金属工業(株)製のアルミニウム合金板GC55−O(JIS5052、板厚1.0mm、φ120mm)を採用した。
また、供試材D4は、水和酸化物皮膜の吸光度比A2/A1が0.1である点を除いては、供試材D1と同様の成形用アルミニウム合金板である。供試材D4は、供試材D1とほぼ同様の方法によって作製した。
次に、上記のように作製した各供試材(供試材D1、試料B1、供試材D2〜供試材D4)について、表面の滑り性を以下のようにして評価した。
「滑り性」
バウデンレーベン式摩擦試験機を用いて、各供試材に対して、3/16インチSUJ−2製鋼球を荷重3kg、摺動速度4mm/秒で摺動させた。そのときの摩擦係数を測定した。摩擦係数が0.35を上回る場合を×とし、0.35〜0.15の場合を○とし、0.15を下回る場合を◎として評価した。その結果を表1に示す。
Figure 0005201787
表1より知られるごとく、吸光度比A2/A1が2.8の水和酸化物皮膜が形成された供試材D1は、滑り性が良好であることがわかる。そのため、供試材D1は、成形性が優れている。また、供試材D1上に潤滑性皮膜を形成した試料B1においては、供試材D1に比べてさらに滑り性が向上していた。また、吸光度比A2/A1が0.1の水和酸化物皮膜が形成された供試材D4も、供試材D1と同様に滑り性が良好であった。
これに対し、吸光度比A2/A1が0.05以下の供試材D2及び水和酸化物皮膜を形成していない供試材D3は、滑り性が悪く、成形に適していなかった。
(実施例2)
次に、本例においては、上記実施例1で作製した上記試料B1と同様に、アルミニウム合金板の表面に形成した水和酸化物皮膜と、さらに該水和酸化物皮膜上に形成した潤滑性皮膜とを有する成形用アルミニウム合金板を作製し、その成形性、アルミニウム粉の凝着性、洗浄性等の評価を行う。即ち、本例は、水和酸化物皮膜を有する成形用アルミニウム合金板に潤滑性皮膜を形成したときにおける成形性等の特性を評価する例である。
まず、本例においては、水和酸化物皮膜の吸光度比、膜厚、潤滑性皮膜の形成に用いる潤滑油の種類、付着させる潤滑油の量等を変えて、21種類の成形用アルミニウム合金板(試料B1〜試料B21)を作製した。
各試料(試料B1〜試料B21)の成形用アルミニウム合金板は、表2及び表3に示すごとく、実施例1と同様の供試材D1、供試材D2、又は供試材D4の水和酸化物皮膜上に、各種潤滑油を塗布し、潤滑性皮膜を形成して作製した。試料B1は、実施例1において作製した試料B1と同様のものである。また、試料B14、試料B15、及び試料B17は、潤滑性皮膜の形成後に、温度100℃〜300℃で加熱する加熱工程を行って作製したものである。
表2及び表3中の記号の意味は次の通りである。
「水和酸化物のFT−IR吸収スペクトル」
A1:1100cm-1近傍に現れる吸収スペクトルのピークにおける吸光度の最大値
A2:1350cm-1近傍に現れる吸収スペクトルのピークにおける吸光度の最大値
「潤滑油」
B1:温度40℃における粘度2.1mm2/sのパラフィン系鉱油にラウリン酸メチル10wt%を添加した潤滑油
B2:温度40℃における粘度2.1mm2/sのパラフィン系鉱油にラウリルアルコール10wt%を添加した潤滑油
B3:温度40℃における粘度2.1mm2/sのパラフィン系鉱油にオレイン酸10wt%を添加した潤滑油
「添加剤」
下記の各種添加剤は、潤滑油に添加して用いた。
C1:ジ−2−エチルへキシルスルホコハク酸ナトリウム
C2:N−エチルイソプロパノールアミン
C3:2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールエチレンオキシド2モル付加物
「供試材」
D1:アルミニウム合金板上に水和酸化物皮膜(A2/A1=2.8)を形成してなる、実施例1において作製した成形用アルミニウム合金板(供試材D1)
D2:アルミニウム合金板上に水和酸化物皮膜(A2/A1=0.05以下)を形成してなる、実施例1において作製した成形用アルミニウム合金板(供試材D2)
D4:アルミニウム合金板上に水和酸化物皮膜(A2/A1=0.1)を形成してなる、実施例1において作製した成形用アルミニウム合金板(供試材D4)
また、各種評価は次のようにして行った。
「成形性」
各試料に条件に応じて、熱処理を加えた後、φ50mm、R=25の球頭ポンチを用いて、成形速度2.0mm/sで各試料の張出成形を行った。このとき各試料に割れが生じたときの高さを「成形高さ」をとした。成形性を成形高さの大小にて評価し、成形高さが18mm未満の場合を「×」とし、18.0mm〜18.5mmの場合を「△」とし、18.5mm〜19mmの場合を「○」とし、19mmを越えるの場合を「◎」として評価した。その結果を表2及び表3に示す。
「凝着量」
上述の成形性の評価試験と同条件で、各試料の張出成形加工を行った。張出成形加工は各試料につき100枚ずつ行った。その後、ポンチ表面に凝着しているアルミニウム磨耗粉を10wt%水酸化ナトリウム水溶液を用いて溶解し、原子吸光法によって定量した。凝着量が5mg/m2未満の場合を「◎」とし、5〜20mg/m2の場合を「○」として評価し、20mg/m2を超える場合を「×」として評価した。その結果を表2及び表3に示す。
「洗浄性」
各試料をpH10.5、温度40℃のアルカリ水溶液からなる脱脂液中に浸漬し、浸漬してから10秒毎に、各試料の全面が純水に濡れるかを目視にて確認した。全面が純水に濡れた時間を脱脂完了時間とし、その大小で洗浄性を評価した。脱脂完了時間120秒以下の場合を「○」とし、120秒を超える場合を「×」として評価した。その結果を表2及び表3に示す。
Figure 0005201787
Figure 0005201787
表2及び表3より知られるごとく、供試材D1は、潤滑性皮膜を形成することにより、より優れた成形性を発揮できることがわかる。
また、供試材の種類を除いては同条件で潤滑性皮膜を形成してなる試料B1と試料B21とを比較すると、試料B21においては、成形性やアルミニウム磨耗粉の凝着量の点で試料B1よりも劣っていた。これは、試料B1においては供試材D1を用い、試料B21においては供試材D2を用いたことに帰因すると考えられる。そして、供試材D1と供試材D2は、FT−IRにおける吸光度比A2/A1が相違する。また、水和酸化物皮膜の吸光度比A2/A1が0.1である供試材D4を用いた試料B20も、試料B21に比べて成形性が向上し、凝着量が少なくなっていた。
よって、FT−IRにおいてA2/A1≧0.1となる水和酸化物皮膜を有する成形用アルミニウム合金板(供試材D1及び供試材D4)を用いることにより、成形性を向上でき、凝着量を低減できると考えられる。
また、表2及び表3より、水和酸化物皮膜の厚みは、0.6〜10μmであることが好ましいことがわかる。また、潤滑性皮膜の付着量は0.1〜10g/m2が好ましいことがわかる。さらに、添加剤(C1〜C3)を加えると凝着量を低減できるが、添加量が多くなると成形性に悪影響を及ぼすおそれがあることがわかる。
また、潤滑皮膜形成後に熱処理を行うことにより、成形性を向上できるが、その温度は100℃以上、300℃未満が好ましいことがわかる。
実施例1にかかる、成形用アルミニウム合金板(供試材D1)の断面を示す説明図。 実施例1にかかる、成形用アルミニウム合金板(供試材D1)の水和酸化物皮膜のFT−IR測定の結果を示す説明図。 実施例1にかかる、成形用アルミニウム合金板(供試材D2)の水和酸化物皮膜のFT−IR測定の結果を示す説明図。 実施例1にかかる、成形用アルミニウム合金板(供試材D1)の水和酸化物皮膜の表面を表す電子顕微鏡写真図。 実施例1にかかる、成形用アルミニウム合金板(試料B1)の断面を示す説明図。
符号の説明
1 成形用アルミニウム合金板
2 アルミニウム合金板
3 水和酸化物皮膜
4 潤滑性皮膜

Claims (14)

  1. アルミニウム合金板と、該アルミニウム合金板の表面に形成されたAlの水和酸化物皮膜とを有する成形用アルミニウム合金板であって、
    上記水和酸化物皮膜は、フーリエ変換赤外分光分析測定(FT−IR)において、波数1100cm-1近傍及び波数1350cm-1近傍に吸収スペクトルのピークを示し、1100cm-1近傍における上記吸収スペクトルのピークにおける吸光度の最大値をA1、1350cm-1近傍における上記吸収スペクトルのピークにおける吸光度の最大値をA2とすると、A2/A1≧1という関係を満足し、
    上記水和酸化物皮膜上に、潤滑油、固体潤滑剤、及びワックスから選ばれる1種以上からなる潤滑性皮膜を有し、該潤滑性皮膜の付着量は0.1〜10g/m 2 であることを特徴とする成形用アルミニウム合金板。
  2. 請求項1において、上記水和酸化物皮膜の厚みは、0.6〜10μmであることを特徴とする成形用アルミニウム合金板。
  3. 請求項1又は2において、上記潤滑油は、油性剤として、エステル、脂肪酸、アルコール、油脂から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする成形用アルミニウム合金板。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項において、上記潤滑油は、極圧剤として、硫黄系化合物又は/及びリン系化合物を含有することを特徴とする成形用アルミニウム合金板。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項において、上記潤滑油は、アミン、アルカノールアミン、脂肪族ポリアミン、芳香族アミン、脂環式アミン、複素環アミン、及びそれらのアルキレンオキシド付加物から選ばれる1種以上のアミン誘導体を0.01〜2.0重量%含有することを特徴とする成形用アルミニウム合金板。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項において、上記潤滑油は、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム又は/及び分子内に四級炭素を一つ以上有する含酸素化合物を0.1〜5.0重量%含有することを特徴とする成形用アルミニウム合金板。
  7. アルミニウム合金板と、該アルミニウム合金板の表面に形成されたAlの水和酸化物皮膜とを有する成形用アルミニウム合金板を製造する方法であって、
    アルミニウム合金板の表面にアルカリ性水溶液よりなるアルカリ処理液を接触させて自然酸化皮膜を除去すると共にスマットを生成させるアルカリ処理工程と、
    該アルカリ処理工程において上記アルミニウム合金板の表面に生成した上記スマットを除去するデスマット処理を行わずに、上記アルミニウム合金板に温度50℃以上の水又はアルカリ性水溶液よりなる熱水処理液を接触させて、上記アルミニウム合金板の表面に上記水和酸化物皮膜を形成させる熱水処理工程と
    上記水和酸化物皮膜上に、潤滑油、固体潤滑剤、及びワックスから選ばれる1種以上からなる潤滑性皮膜形成剤を塗布し、0.1〜10g/m 2 の潤滑性皮膜を形成する潤滑性皮膜形成工程とを有することを特徴とする成形用アルミニウム合金板の製造方法。
  8. 請求項7において、上記熱水処理工程においては、上記水和酸化物皮膜を厚み0.6〜10μmで形成させることを特徴とする成形用アルミニウム合金板の製造方法。
  9. 請求項7又は8において、上記潤滑油は、油性剤として、エステル、脂肪酸、アルコール、油脂から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする成形用アルミニウム合金板の製造方法。
  10. 請求項7〜9のいずれか一項において、上記潤滑油は、極圧剤として、硫黄系化合物又は/及びリン系化合物を含有することを特徴とする成形用アルミニウム合金板の製造方法。
  11. 請求項7〜10のいずれか一項において、上記潤滑油は、アミン、アルカノールアミン、脂肪族ポリアミン、芳香族アミン、脂環式アミン、複素環アミン、及びそれらのアルキレンオキシド付加物から選ばれる1種以上のアミン誘導体を0.01〜2.0重量%含有することを特徴とする成形用アルミニウム合金板の製造方法。
  12. 請求項7〜11のいずれか一項において、上記潤滑油は、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム又は/及び分子内に四級炭素を一つ以上有する含酸素化合物を0.1〜5.0重量%含有することを特徴とする成形用アルミニウム合金板の製造方法。
  13. 請求項7〜12のいずれか一項において、上記潤滑性皮膜形成工程後に、上記成形用アルミニウム合金板を温度100℃以上300℃未満で加熱する加熱工程を行うことを特徴とする成形用アルミニウム合金板の製造方法。
  14. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の上記成形用アルミニウム合金板をプレス成形に供することを特徴とする成形用アルミニウム合金板の加工方法。
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