JP2005008975A - 金属表面処理方法、表面処理アルミニウム系金属、及び、親水処理の前処理方法 - Google Patents
金属表面処理方法、表面処理アルミニウム系金属、及び、親水処理の前処理方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】密着性、耐食性、耐湿性、プレス成形性等に優れる親水複層塗膜を形成する金属表面処理方法を提供する。
【解決手段】化成処理剤を塗布して化成皮膜を形成する工程(I)、及び、上記工程(I)により得られた化成皮膜の上に親水性樹脂からなる親水処理剤を塗布して親水皮膜を形成する工程(II)からなる金属表面処理方法であって、上記化成処理剤は、10〜10000ppmのジルコニウム及び/又はチタン、並びに、10〜10000ppmのフェノール性水酸基含有化合物からなり、pHが1.5〜5.0である金属表面処理方法。
【選択図】 なし
【解決手段】化成処理剤を塗布して化成皮膜を形成する工程(I)、及び、上記工程(I)により得られた化成皮膜の上に親水性樹脂からなる親水処理剤を塗布して親水皮膜を形成する工程(II)からなる金属表面処理方法であって、上記化成処理剤は、10〜10000ppmのジルコニウム及び/又はチタン、並びに、10〜10000ppmのフェノール性水酸基含有化合物からなり、pHが1.5〜5.0である金属表面処理方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属表面処理方法、表面処理アルミニウム系金属、及び、親水処理の前処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エバポレータや熱交換器は、通常、熱交換を行うためのアルミニウムフィンが狭い間隔で保持され、更に、これらのフィンに冷媒を供給するためのアルミニウムチューブが入り組んで配置された複雑な構造となっている。このため、アルミニウムフィンの表面を親水化することにより、冷房時に凝縮された水の排出を容易にしている。しかし、親水性だけではなく、防錆性も有することが要求されるため、親水性と防錆性の両方に優れた表面処理が要求されている。
【0003】
また、このようなアルミニウムフィンの表面処理は、一般的に、フィン成形前の板材の段階で行うプレコート方式で行われている。このため、プレス加工性、つまり、張り出し加工性や抜き打ち加工性もアルミニウムフィンの表面処理の効果として重要となる。
【0004】
これらの効果を得るため、リン酸クロメート皮膜を形成後、更にリン酸クロメート皮膜の上に親水皮膜を形成するアルミニウムフィン材が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このようなリン酸クロメート皮膜は、有害物質であるクロムを含むため、人体への影響、排水処理等の観点から好ましくない。
【0005】
また、チタン又はジルコニウムからなる耐食性皮膜を形成後、更に耐食性皮膜の上に親水皮膜を形成するアルミニウムフィン材が開示されている(例えば、特許文献2)。しかしながら、このような耐食性皮膜と親水皮膜との密着性が不充分なために、良好な耐食性、耐湿性が得られなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−125555号公報
【特許文献2】
特開2002−162186号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑み、密着性、耐食性、耐湿性、プレス加工性等に優れる親水複層塗膜を形成する金属表面処理方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、化成処理剤を塗布して化成皮膜を形成する工程(I)、及び、上記工程(I)により得られた化成皮膜の上に親水性樹脂からなる親水処理剤を塗布して親水皮膜を形成する工程(II)からなる金属表面処理方法であって、上記化成処理剤は、10〜10000ppmのジルコニウム及び/又はチタン、並びに、10〜10000ppmのフェノール性水酸基含有化合物からなり、pHが1.5〜5.0であることを特徴とする金属表面処理方法である。
上記フェノール性水酸基含有化合物は、下記一般式(1):
【0009】
【化3】
【0010】
(R1は、H又はCH3を表わす。R2及びR3は、同一又は異なってCH3又はCnHmOHを表わす。nは、1〜3の整数を表わす。)で表わされるアミン変性フェノール化合物及びアミン変性クレゾール化合物、並びに、フェノール酸の一方のカルボキシル基と他方の水酸基とでエステル結合したデプシドより選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記デプシドは、レカノール酸、ジロホール酸、タンニン酸、及び、それらの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
上記親水性樹脂は、100以上の酸価及び/又は水酸基価を有することが好ましい。
上記親水性樹脂は、カルボキシル基及び/又は水酸基含有不飽和重合性水性高分子、カルボキシル基及び/又は水酸基含有天然高分子、それらの塩、及び、それらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
上記カルボキシル基及び/又は水酸基含有不飽和重合性水性高分子は、ポリ(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合物、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及び(メタ)アクリルアミド誘導体の重合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、上記カルボキシル基及び/又は水酸基含有天然高分子は、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース及びエチルヒドロキシエチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記親水処理剤は、更に、下記一般式(2):
【0013】
【化4】
【0014】
(R4は、−H又は−CH3を表わす。nは、正の整数を表わす。)で表わされる構造を有するポリアルキレンオキサイド含有水性化合物を含有するものであることが好ましい。
上記ポリアルキレンオキサイド含有水性化合物は、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド又はポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド共重合物であることが好ましい。
【0015】
本発明は、上記金属表面処理方法を用いて処理されたことを特徴とする表面処理アルミニウム系金属でもある。
本発明は、化成処理剤を塗布して化成皮膜を形成する工程からなる親水処理の前処理方法であって、上記化成処理剤は、10〜10000ppmのジルコニウム及び/又はチタン、並びに、10〜10000ppmのフェノール性水酸基含有化合物からなり、pHが1.5〜5.0であることを特徴とする親水処理の前処理方法でもある。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の金属表面処理方法は、ジルコニウム及び/又はチタン、並びに、フェノール性水酸基含有化合物からなる化成処理剤を塗布して化成皮膜を形成する工程(I)、及び、上記工程(I)により得られた化成皮膜の上に親水処理剤を塗布して親水皮膜を形成する工程(II)からなる方法である。上記化成皮膜に含まれるフェノール性水酸基と親水皮膜に含まれる親水性樹脂の親水基との水素結合が生じることにより、密着性に優れた化成皮膜と親水皮膜からなる親水複層塗膜を得ることができるものである。
【0017】
また、上記フェノール性水酸基含有化合物が乾燥工程で自己縮合して高バリアー性のバインダーとして作用するため、得られる化成皮膜は、酸やアルカリ及び有機溶剤に対して極めて浸透しにくい高耐食性を有することができる。従って、本発明の金属表面処理方法は、優れた耐食性、耐湿性等を付与することができるものである。
【0018】
本発明の金属表面処理方法は、先ず、工程(I)として上記化成処理剤を被処理物に塗布し、化成皮膜を形成するものである。上記化成処理剤に含まれるフェノール性水酸基含有化合物としては特に限定されず、例えば、フェノール化合物、クレゾール化合物、天然物由来のポリフェノール化合物等を挙げることができる。なかでも、親水基との反応性及び耐食性付与の観点から、一般式(1):
【0019】
【化5】
【0020】
(R1は、H又はCH3を表わす。R2及びR3は、同一又は異なってCH3又はCnHmOHを表わす。nは、1〜3の整数を表わす。)で表わされるアミン変性フェノール化合物及びアミン変性クレゾール化合物、並びに、フェノール酸の一方のカルボキシル基と他方の水酸基とでエステル結合したデプシドより選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0021】
上記アミン変性フェノール化合物及び/又はアミン変性クレゾール化合物としては特に限定されず、例えば、レジトップPL−4012(群栄化学社製)、スミライトレジンNPK−238(住友化学社製)等の市販の製品を使用することができる。
【0022】
上記デプシドは、フェノール酸の一方のカルボキシル基と他方の水酸基とでエステル結合したものである。上記デプシドとしては特に限定されないが、化成処理剤の安定性等の観点からジデプシド、トリデプシドであることが好ましい。
上記ジデプシド及びトリデプシドとしては特に限定されず、例えばレカノール酸、ジロホール酸、タンニン酸、及び、それらの類縁体を挙げることが出来る。レカノール酸の類縁体としては、4−o−デメチルバルバチン酸、ベオミケス酸、スカマート酸等を挙げることができる。ジロホール酸の類縁体としてはウンビリカール酸等を挙げることができる。なかでも入手が容易であることからタンニン酸及びその類縁体が好ましい。上記タンニン酸の類縁体としては特に限定されず、例えば密着性付与効果、化成処理剤の安定性に影響しない範囲で水酸基又はカルボキシル基にメチル等を付加させたもの、加水分解等の方法によって分解したタンニン分解物を挙げることができる。
【0023】
上記タンニン酸は、広く植物界に分布する多数のフェノール性水酸基を有する複雑な構造の芳香族化合物の総称である。上記タンニン酸は、加水分解性タンニン酸でも縮合型タンニン酸でもよい。上記タンニン酸としては特に限定されず、例えば、ハマメリタンニン、カキタンニン、チャタンニン、五倍子タンニン、没食子タンニン、ミロバランタンニン、ジビジビタンニン、アルガロビラタンニン、バロニアタンニン、カテキンタンニン等を挙げることができる。
【0024】
上記タンニン酸としては、市販のもの、例えば、「タンニン酸エキスA」、「Bタンニン酸」、「Nタンニン酸」、「工用タンニン酸」、「精製タンニン酸」、「Hiタンニン酸」、「Fタンニン酸」、「局タンニン酸」(いずれも大日本製薬株式会社製)、「タンニン酸:AL」(富士化学工業株式会社製)等を使用することもできる。
上記フェノール性水酸基含有化合物としては、上述の化合物の1種又は2種以上を併用してもよい
【0025】
上記化成処理剤における上記フェノール性水酸基含有化合物の含有量は、下限10ppm、上限10000ppmの範囲内である。上記含有量が10ppm未満であると、耐食性、耐湿性、密着性向上効果が不充分となり、10000ppmを超えると、それ以上の効果が望めず不経済である。上記含有量の下限は、100ppmが好ましく、上限は、3000ppmが好ましい。
【0026】
本発明で使用する化成処理剤は、ジルコニウム及び/又はチタンを有するものである。上記ジルコニウム及び/又はチタンは、化成皮膜形成成分であり、被処理物にジルコニウム及び/又はチタンを含む化成皮膜が形成されることにより、耐食性や耐磨耗性を向上させることができる。本発明の金属表面処理方法は、クロム等の有害な重金属を含む化成処理剤を使用しないことから環境に優しい方法である。
【0027】
上記ジルコニウムの供給源としては特に限定されず、例えば、K2ZrF6等のアルカリ金属フルオロジルコネート;(NH4)2ZrF6等のフルオロジルコネート;H2ZrF6等のフルオロジルコネート酸等の可溶性フルオロジルコネート等;フッ化ジルコニウム;酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
【0028】
上記チタンの供給源としては特に限定されず、例えば、アルカリ金属フルオロチタネート、(NH4)2TiF6等のフルオロチタネート;H2TiF6等のフルオロチタネート酸等の可溶性フルオロジルコネート等;フッ化チタン;酸化チタン等を挙げることができる。
【0029】
上記化成処理剤における上記ジルコニウム及び/又はチタンの合計量は、金属イオン濃度として下限10ppm、上限10000ppmの範囲内である。上記合計量が10ppm未満であると化成皮膜の性能が不充分であり、上記上限を超えると、それ以上の効果は望めず経済的に不利である。上記下限は、200ppmが好ましく、上記上限は、2000ppmが好ましい。
【0030】
上記化成処理剤のpH範囲は、下限1.5、上限5.0の範囲内であることが好ましい。pHが1.5未満の場合は金属表面のエッチングが促進されすぎるため、得られた皮膜の耐食性、耐湿性が低下する。pHが5.0を超えると処理液の安定性が悪くなり、化成反応が満足に進行せず、皮膜が形成されにくくなる。上記下限は、2.5であることがより好ましく、3.0であることが更に好ましい。また、上記上限は、4.2であることがより好ましく、4.0であることが更に好ましい。
【0031】
上記化成処理剤は、上記成分の他に必要に応じて、更に、エッチング助剤、キレート剤、pH調整剤を使用することができる。
上記エッチング助剤としては、例えば、フッ化水素酸、フッ化水素酸塩、フッ化硼素酸等を挙げることができる。
【0032】
上記キレート剤としては、例えば、クエン酸、酒石酸、グルコン酸等、アルミニウムと錯体を形成する酸及びそれらの金属塩等を挙げることができる。
【0033】
上記pH調整剤としては、例えば、硝酸、過塩素酸、硫酸、硝酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、アンモニア等の化成処理に悪影響を与えない酸又は塩基を挙げることができる。
上記化成処理剤を塗布して化成皮膜を形成する工程からなる親水処理の前処理方法も本発明の一つである。
【0034】
本発明の金属表面処理方法は、次に、工程(II)として上記化成処理剤により得られた化成皮膜の上に、親水性樹脂からなる親水処理剤を塗布して親水皮膜を形成するものである。上記工程(II)において親水基を有する親水皮膜が形成されることにより、親水基と化成皮膜に含まれるフェノール性水酸基との水素結合が生じ、優れた密着性を得ることができるものである。
【0035】
上記親水処理剤は、親水性樹脂を含有することにより、皮膜に親水性を付与するものである。上記親水性樹脂としては、水溶性又は水分散性の親水性樹脂であれば特に限定されないが、親水性付与の観点から、100以上の酸価及び/又は水酸基価を有することが好ましい。なお、ここでいう酸価及び水酸基価は固形分基準である。
【0036】
上記親水性樹脂としては、具体的には、カルボキシル基及び/又は水酸基含有不飽和重合性水性高分子、カルボキシル基及び/又は水酸基含有天然高分子、水性アルキド樹脂、水性ポリエステル樹脂、水性ポリブタジエン樹脂、水性ポリアミド樹脂、水性エポキシ樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性フェノール樹脂、水性アミノ樹脂、これらの塩及び誘導体等を挙げることができる。なかでも、フェノール性水酸基との水素結合の観点から、カルボキシル基及び/又は水酸基含有不飽和重合性水性高分子、並びに、カルボキシル基及び/又は水酸基含有天然高分子が好ましい。上記親水性樹脂は、これらの樹脂のうち1種又は2種以上を併用するものであってもよい。
【0037】
上記カルボキシル基及び/又は水酸基含有不飽和重合性水性高分子としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合物、ポリ酢酸ビニル樹脂を一部ケン化したポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、N−(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体の重合物等を挙げることができる。ここで、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合物は、耐アルカリ性及び耐食性の向上に寄与する。また、ポリ酢酸ビニル樹脂を一部ケン化したポリビニルアルコールは、臭気防止と親水性を付与する作用を有する。また、ポリビニルピロリドンは、親水持続性を若干向上させる作用がある。なお、本発明の効果を損ねない範囲で、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合物等を添加してもよい。なかでも、親水皮膜に親水持続性を付与する効果が高い、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールが好ましい。
【0038】
上記カルボキシル基及び/又は水酸基を含有する天然性高分子化合物又はその誘導体としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)等のセルロース誘導体、メチルセルロース誘導体等を挙げることができる。なお、セルロース誘導体はこれに限るものではなく、セルロースのカルボキシルメチルエーテル、カルボキシルエチルエーテル、ヒドロキシメチルエーテル、ヒドロキシエチルエーテルでもよく、酢酸澱粉、リン酸澱粉でもよい。また、メチルセルロース誘導体はこれに限るものではなく、メチルセルロースにヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基を付加した付加物でもよい。更に、カルボキシル基含有、又はエチレンオキサイド(EO)又はプロピレンオキサイド(PO)を付加したガム類、多糖類の誘導体を用いてもよい。また、リグニンスルホン酸、アルギン酸、ヒアルロン酸等を用いても良い。また、ポリグルタミン酸(PGA)を用いても良く、ポリグルタミン酸を用いると、親水持続性が著しく向上する。なお、ポリグルタミン酸は、γ−PGAとα−PGAがあり、どちらを用いても良い。なかでも、親水皮膜に親水持続性を付与する効果が高い、カルボキシルメチルセルロース、γ−PGAが好ましい。
【0039】
上記水性アルキド樹脂としては、例えば、グルセリン、ペンタエリトリトール、エチレングルコール、トリメチロールエタン等のポリオールと、油脂から得られる高級脂肪酸、例えば、パルミチン酸、無水フタル酸、無水マレイン酸等の二塩基酸を縮合させて得られるものを挙げることができる。
【0040】
上記水性ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂中の水酸基をトリメリット酸の無水物とハーフエステル化反応させ、残ったカルボン酸基をアミン等で中和し、水性化して得られるものを挙げることができる。また、ポリエチレングリコールを多塩基酸と反応させ、ポリエステル樹脂を水性化したものがある。
【0041】
上記水性ポリブタジエン樹脂としては、例えば、ブタジエンを触媒を用いて重合したもので、1,2−結合型、1,4−結合型が挙げられ、共に用いることができる。これらは熱、パーオキサイド、硫黄等により造膜させることができる。
【0042】
上記水性ポリアミド樹脂としては、(1)ε−カプロラクタムの開環重合によるもの(2)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合によるもの(3)ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の縮重合によるもの(4)11−アミノウンデカン酸の縮重合によるもの(5)ω−ラウムラクタムの開環重合または12−アミノドデカン酸の縮重合によるものこれらを水溶化したもの等を挙げることができる。
【0043】
上記水性エポキシ樹脂としては、例えば、水溶性エポキシ樹脂として、脂肪族多価アルコールのジまたはポリグリシジルエーテル、ジカルボン酸ジクリシジルエステル、含窒素ヘテロ環を含むエポキシ化合物を挙げることができる。また、水分酸性エポキシ樹脂として、水または水と有機溶剤の混合液に適当な乳化剤を加え、エポキシ樹脂を分散乳化させたもの、エポキシ樹脂を変性させることによって、水に溶解または分散乳化させたもの、具体的には、エポキシ樹脂に親水基を導入したり、カルボキシル基等のアニオン基やアミノ基等のカチオン基を導入し、それを水酸基または酸で中和し、高分子電解質とに水性化したものを挙げることができる。
【0044】
上記水性ポリウレタン樹脂としては、例えば、分子中にアニオンまたはカチオン性基を導入し、水性化したものを挙げることができる。また、末端基がイソシアネート基のウレタンプレポリマーに重亜硫酸塩を付加させ、イソシアネート基とブロックするとともに、スルフォネートの親水性により水性化したものを挙げることができる。また、ポリウレタンプレポリマーをブロック剤で封鎖した後、強制的に乳化分散したものを挙げることができる。
【0045】
上記水性フェノール樹脂としては、例えば、フェノール、キシレノール、p−アルキルフェノール、p−フェニルフェノール、クロロフェノール、ビスフェノールA、フェノールスルホン酸、レゾルシン等のフェノール性−OH基を有するものに、ホルマリン、フルフラール等のアルデヒド類を付加、縮合した高分子物を水性化したものを挙げることができる。これらは、一般にフェノール・ホルマリン樹脂、クレゾール・ホルマリン樹脂、フェノール・フルフラール樹脂、レゾルシン樹脂等として分類される。上記水性フェノール樹脂は、樹脂間に架橋を形成し、造膜性の向上に作用する。
【0046】
上記水性アミノ樹脂としては、例えば、n−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂等のメラミン樹脂や、尿素樹脂等を水溶化したものを挙げることができる。これらの樹脂は通常メラミン、ベンゾグアナミン等のアミノ化合物に、ホルムアルデヒド、バラホルムアルデヒド等のアルデヒドを付加反応又は付加縮合反応させて得たものを、炭素数1〜4の1価アルコールでエーテル化して得られる。上記水性アミノ樹脂は、樹脂間に架橋を形成し、造膜性の向上に作用する。上記メラミン樹脂としては、例えば、アルコキシ基がメトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基、i−水性ブトキシ基等であるアルコキシメチルメラミン樹脂を挙げることができる。
【0047】
上記親水処理剤における上記親水性樹脂の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましい。0.1質量%未満であると、充分な造膜性及び親水性が得られない。上記下限は、0.2質量%がより好ましく、上記上限は、0.8質量%がより好ましい。
【0048】
上記親水処理剤は、更に、一般式(2):
【0049】
【化6】
【0050】
(R4は、−H又は−CH3を表わす。nは、正の整数を表わす。)で表わされる構造を有するポリアルキレンオキサイド含有水性化合物を含有することが好ましい。上記ポリアルキレンオキサイド含有水性化合物を親水処理剤に配合することにより、得られる親水皮膜に良好なプレス加工性及び親水持続性を付与することができるものである。
【0051】
上記ポリアルキレンオキサイド含有水性化合物としては特に限定されず、例えば、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合物、エチレンオキサイド−メチレンオキサイド共重合物、側鎖にポリアルキレンオキサイド含有水性化合物が結合しているアクリル樹脂等を挙げることができる。なかでも、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合物が好ましい。
【0052】
上記ポリアルキレンオキサイド含有水性化合物は、ポリアルキレンオキサイドを固形分換算で10質量%以上含有することが好ましい。上記ポリアルキレンオキサイドの含有量が10質量%未満の場合は、充分なプレス加工性が得られないおそれがある。また、上記ポリアルキレンオキサイド含有水性化合物は、質量平均分子量が下限10000、上限2000000の範囲内であることが好ましい。上記質量分子量が10,000未満の場合は、親水持続性が不充分となってしまい、一方2,000,000を超えると、親水処理剤の粘度が高くなり、作業性が劣る。上記質量分子量の下限は、20000がより好ましく、上限は、1000000がより好ましい。
【0053】
上記ポリアルキレンオキサイド含有水性化合物がプレス加工性及び親水持続性に影響を与える機構をポリエチレンオキサイドを例に挙げて説明する。ポリエチレンオキサイドは、水性でかつ熱可塑性を有しており、上記分子量の範囲では結晶性が極めて高く、結晶系は単斜晶系に属する(図1参照)。このため、ポリエチレンオキサイド鎖は滑り易く、加工性に優れる。
【0054】
また、ポリエチレンオキサイドのポリマー鎖は、C軸に沿って伸びており、その単位鎖(−O−CH2 −CH2 −O−)を構成するO−C単結合、C−C単結合、C−O単結合のまわりのコンフォーメイション(立体配座)は、それぞれアンチ(anti)、ゴーシュ(gauche)、アンチ型の配置を有し、結果として、CH2 −CH2 −O−CH2 −CH2 鎖の4つの単結合は同一平面上でW型になっている(図2参照)。従って、ポリマー鎖はC軸の−CH2 −CH2 −O−単位が螺旋状に配列し(図3参照)、水素結合による種々の化合物との会合体を形成しやすい構造を有する。したがって、ポリエチレンオキサイドは、親水性樹脂に含まれるカルボキシル基及び/又は水酸基含有化合物等と会合体を形成し、この会合体は水に不溶となり造膜後の親水持続性を向上させることができるものである。なお、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合物でも同様の効果がある。
【0055】
上記親水処理剤における上記ポリアルキレンオキサイド含有水性化合物と上記親水性樹脂との配合量の比(ポリアルキレンオキサイド含有水性化合物/ポリアルキレンオキサイド含有水性化合物と親水性樹脂との合計)は、下限0.1、上限0.9の範囲内であることが好ましい。上記配合量の比が、0.1未満の場合は、プレス加工性が不充分となり、一方、0.9を超えると親水皮膜の造膜性が劣化する。上記下限は、0.2がより好ましく、上記上限は、0.5であることがより好ましい。
【0056】
本発明の親水処理剤の溶媒としては特に限定されないが、廃液処理等の観点から水を主体とするものが好ましい。又、造膜性を向上させ、より均一で平滑な皮膜を形成するために有機溶媒を併用してもよい。有機溶媒としては、塗料に一般的に用いられ、水と均一に混合することができるものであれば特に限定されず、例えば、アルコール系、ケトン系、エステル系、エーテル系の有機溶媒等を挙げることができる。上記有機溶媒の使用量は、上記親水処理剤に対して、下限0.5質量%、上限4.5質量%の範囲内であることが好ましい。
【0057】
本発明の親水処理剤は、更に、他の添加剤を含有するものであってもよい。上記他の添加剤としては特に限定されず、例えば、硬化剤、分散剤、防錆添加剤、顔料、シランカップリング剤、抗菌剤、界面活性剤、潤滑剤、消臭剤等を挙げることができる。
【0058】
上記硬化剤としては、特に限定されず、例えば、メラミン樹脂、ブロックイソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物等を挙げることができる。
上記分散剤としては特に限定されず、界面活性剤、分散樹脂等を挙げることができる。
【0059】
上記防錆添加剤としては特に限定されず、例えば、イミダゾール化合物、トリアジン化合物、トリアゾール化合物、グアニン化合物、ヒドラジン化合物、ジルコニウム化合物等を挙げることができる。
【0060】
上記顔料としては、例えば酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、炭酸カルシウム(CaCO3)、硫酸バリウム(BaSO4)、アルミナ(Al2O3)、カオリンクレー、カーボンブラック、酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4)等、酸化アルミニウム(Al2O3)の無機顔料や、有機顔料等の各種着色顔料等を挙げることができる。
【0061】
上記シランカップリング剤を含有させると、上記樹脂と上記顔料との親和性が向上し、密着性等を向上させることができる点で好ましい。
上記シランカップリング剤としては特に限定されず、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−〔2−(ビニルベンジルアミノ)エチル〕−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
上記抗菌剤としては特に限定されず、例えば、2−(4−チアゾニル)−ベンスイミダゾール、ジンクピリチオン等の従来公知の抗菌剤を使用することができる。
【0062】
本発明における上記工程(I)は、化成処理剤を塗布して化成皮膜を形成する工程であって、化成処理及び化成後水洗処理からなるものである。化成処理を行う際の上記化成処理剤の温度は、下限30℃、上限80℃の範囲内であることが好ましい。30℃未満であると、反応速度が低下し、皮膜の析出性が悪くなるため、充分な皮膜量を得るために処理時間を延長する必要が生じ、生産性を低下させる。80℃を超えると、エネルギーのロスが大きくなる場合がある。上記下限は、40℃であることがより好ましい。上記上限は、60℃であることがより好ましい。
【0063】
上記化成処理をスプレー法で行う場合は、処理時間が下限1秒、上限20秒の範囲内であることが好ましい。1秒未満であると、形成される皮膜量が充分でなく、耐食性や密着性が低下するおそれがあり、20秒を超えると、皮膜形成時のエッチングが過度に進行し、密着性、耐食性が低下するおそれがある。上記下限は、3秒であることがより好ましい。上記上限は、8秒であることがより好ましい。
【0064】
上記化成後水洗処理は、その後の各種塗装後の密着性、耐食性等に悪影響を及ぼさないようにするために、1回又はそれ以上により行われるものである。この場合、最終の水洗は、純水で行われることが適当である。この化成後水洗処理においては、スプレー水洗又は浸漬水洗のどちらでもよく、これらの方法を組み合わせて水洗することもできる。
【0065】
本発明の金属表面処理方法における被処理物は、脱脂処理、脱脂後水洗処理を行ったものであることが好ましい。
上記脱脂処理は、被処理物表面に付着している油分や汚れを除去するために行われるものであり、無リン・無窒素脱脂洗浄液等の脱脂剤により、通常40〜80℃において1〜20秒程度のスプレー処理がなされる。所望により、脱脂処理の前に、予備脱脂処理を行うことも可能である。
上記脱脂後水洗処理は、脱脂処理後の脱脂剤を水洗するために、大量の水洗水によって1回又はそれ以上スプレー処理を行うことにより行われるものである。
【0066】
上記工程(I)により得られる化成皮膜は、水洗後に乾燥させることが好ましい。上記化成皮膜を乾燥する方法としては加熱乾燥が好ましく、例えば、オーブン乾燥及び/又は熱空気の強制的循環による加熱乾燥を挙げることができる。これらの加熱乾燥は、通常、40〜120℃で6秒〜60秒間行われる。
【0067】
上記工程(I)により形成される化成皮膜の皮膜量は、ジルコニウム及び/又はチタン原子換算で下限5mg/m2、上限50mg/m2、フェノール性水酸基含有化合物が炭素原子換算で下限5mg/m2、上限50mg/m2の範囲内であることが好ましい。
上記下限は、ジルコニウム及び/又はチタン原子換算で8mg/m2であることがより好ましく、上記上限は、ジルコニウム及び/又はチタン原子換算で30mg/m2であることがより好ましい。
上記下限は、炭素原子換算で8mg/m2であることがより好ましく、上記上限は、炭素原子換算で40mg/m2であることがより好ましい。
【0068】
上記ジルコニウム及び/又はチタン原子換算、及び、炭素原子換算の皮膜量が、8mg/m2未満であると皮膜量が少ないため耐食性、耐湿性が低下するおそれがある。また、上記ジルコニウム及び/又はチタン原子換算の皮膜量が30mg/m2を超える場合、及び、上記炭素原子換算の皮膜量が40mg/m2を超える場合、それ以上の効果が望めず不経済である。なお、ジルコニウム及び/又はチタン量は蛍光X線分析装置で、フェノール性水酸基含有化合物量は形態別炭素/水分分析装置によって測定することが出来る。
【0069】
本発明における工程(II)は、親水処理剤を塗布して親水皮膜を形成する工程である。上記親水処理剤を適用する方法としては特に限定されず、例えば、ロールコート、エアスプレー、エアレススプレー、浸漬等を挙げることができる。上記親水処理剤によって形成された親水皮膜の硬化性を高めるために、あらかじめ被処理物を加熱しておくか、コーティング後に被処理物を熱乾燥させることが好ましい。被処理物の加熱温度は、下限100℃、上限300℃の範囲内であることが好ましい。上記下限は、120℃であることが好ましく、上記上限は、250℃であることが好ましい。加熱温度が100℃未満では、水分の蒸発速度が遅く充分な成膜性が得られないため、耐溶剤性や耐アルカリ性が低下する。一方、300℃を超えると樹脂の熱分解が生じて耐溶剤性や耐アルカリ性が低下し、また黄変のため外観が悪くなる。コーティング後に熱乾燥させる場合の乾燥時間は1秒〜5分が好ましい。
【0070】
上記工程(II)により形成される親水皮膜の皮膜量は、下限0.1g/m2、上限3g/m2の範囲内であることが好ましい。0.1g/m2未満であると、親水性、プレス加工性が低下するおそれがある。一方、3g/m2であるとそれ以上の効果が望めず不経済である。上記下限は、0.3g/m2であることがより好ましく、上記上限は、1.5g/m2であることがより好ましい。
【0071】
本発明の金属表面処理方法は、優れた親水性、密着性、耐水性、耐食性、プレス加工性等を得ることができるため、アルミニウムフィンとして使用されるアルミニウム系金属を処理した際に優れた効果を発揮することができる。上記アルミニウム系金属としては特に限定されず、例えば、アルミニウム、及び、JIS−A1100、JIS−A1200等の1000番系アルミニウム合金を挙げることができる。本発明の金属表面処理方法により処理されたアルミニウム系金属も本発明の一つである。
【0072】
本発明の金属表面処理方法は、フェノール性水酸基含有化合物からなる化成処理剤により化成皮膜を形成し、更に、親水性樹脂からなる親水処理剤により親水皮膜を形成する方法であって、密着性、耐水性、耐湿性に優れた親水複層塗膜を得ることができる方法である。また、上記親水処理剤にポリアルキレンオキサイド含有水性化合物を配合することにより、優れたプレス加工性を付与することができるものである。
【0073】
【実施例】
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
【0074】
実施例1
市販のアルミニウム板;(JIS−A1100、200mm×250mm×0.11mm)に、下記の条件で、表面処理を施した。
(1)化成処理
脱脂処理:1.5質量%「サーフクリーナーEC370」(日本ペイント社製)で70℃、5秒間スプレー処理した。
脱脂後水洗処理:水道水で10秒間スプレー処理した。
化成処理:表1に示した組成からなる化成処理剤を調製した。得られた化成処理剤の温度を55℃とし、アルミニウム板を5秒間スプレー処理した。なお、ジルコニウムの供給源として日本軽金属(株)製の「フッ化ジルコニウム水素酸」、チタンの供給源として森田化学工業(株)製の「フッ化チタン水素酸」、タンニン酸として大日本製薬(株)製の「タンニン酸エキスA」、フェノール性水酸基含有化合物として群栄化学工業(株)製の「レジトップPL−4012」を使用した。なお、皮膜中のジルコニウム及びチタンは、「XRF1700」(島津製作所製蛍光X線分析装置)を用いて分析し、炭素量は、「RC412」(LECO社製水分分析装置)を用いて分析した。
【0075】
化成後水洗処理:水道水で10秒間スプレー処理した。
純水水洗処理:純水による流水洗、30秒間スプレー処理した。
乾燥処理:水洗処理後のアルミニウム板を熱風循環型電気乾燥炉において、80℃で1分間乾燥した。
【0076】
(2)親水処理
親水処理:親水処理剤を調製し、バーコーターで乾燥膜厚1.0g/m2になるように塗布した。更にアルミニウム板を熱風循環型電気乾燥炉において、220℃で20秒間焼き付けて試験板を作成した。得られた親水皮膜の成分組成を表1に示す。なお、表中のPAAは、ポリアクリル酸(日本触媒(株)製、アクアリックHL415)、PVAは、ポリビニルアルコール((株)クラレ製、クラレポバールPVA−102)、CMCは、カルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)製、セロゲンWS−A)、PEOは、ポリエチレンオキサイド(ダウ・ケミカル日本(株)製、POLYOX N80)である。
【0077】
実施例2〜22、比較例1〜10
化成処理剤及び親水処理剤を表1に示した組成に変更したこと以外は、実施例1と同様にして試験板を作成した。
【0078】
比較例11
化成処理剤としてリン酸クロメート処理剤(アルサーフ401/45、日本ペイント社製)を使用し、45℃で5秒間処理したこと以外は、実施例1と同様にして試験板を作成した。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例及び比較例で得られた化成処理剤を40℃で30日間保管して安定性を目視で評価し、表2に示した。白濁等の問題がみられなかったものを〇とした。
【0081】
試験板の物性評価
得られた試験板について、以下に示した評価方法によって耐食性、耐湿性、密着性、親水性を評価した。この結果を表2に示す。
<耐食性>
JIS Z 2371に基づき、5%の食塩水を35℃で噴霧し、500時間後の錆発生面積を下記の評価基準で目視で評価した。
5:0%
4:0%を含まず20%未満
3:20%以上50%未満
2:50%以上80%未満
1:80%以上
【0082】
<耐湿性>
試験板を、50℃、湿度98%以上の環境下に静置し、500時間後の変色面積を下記の評価基準で目視で評価した。
5:0%
4:0%を含まず20%未満
3:20%以上50%未満
2:50%以上80%未満
1:80%以上
【0083】
<密着性>
純水を霧吹きし、500g荷重下の紙で皮膜を擦り、1往復1回として素地が露出するまでの回数を評価した。
5:30以上
4:30未満20以上
3:20未満10以上
2:10未満5以上
1:5未満
【0084】
<親水性>
試験板を流水に8時間接触させた後、80℃で16時間保つサイクルを1サイクルとして10サイクル後に純水5μlを滴下し、滴下30秒後の水滴との接触角を測定した。接触角が小さい程、親水性が高いと考えられる。測定は、FACE自動接触角計(CA−Z型、協和界面科学(株)製、測定温度;室温)を用いて行った。
5:15゜未満
4:15゜以上30゜未満
3:30゜以上45゜未満
2:45゜以上60゜未満
1:60゜以上
【0085】
<潤滑性>
5mm鋼球、荷重50g、引き速度300mm/minの条件で表面性測定機(HEIDON−14型、新東科学社製)を用いて摩擦係数を測定した。
5:0.1未満
4:0.1以上0.15未満
3:0.15以上0.2未満
2:0.2以上0.3未満
1:0.3以上
【0086】
【表2】
【0087】
表2より、本発明に基づき得られたアルミニウム板は、耐食性、耐湿性、密着性、親水性及び潤滑性の全ての評価項目において、優れた性能を有することが示された。
【0088】
【発明の効果】
本発明の金属表面処理方法により、密着性、耐食性、耐湿性に優れ、更に、良好なプレス加工性を有する親水複層塗膜を得ることができる。また、本発明の金属表面処理方法を用いて処理されたアルミニウム系金属は、アルミニウムフィンとして好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポリエチレンオキサイドの結晶の単位格子。
【図2】ポリエチレンオキサイドのポリマー鎖の立体配座。
【図3】ポリエチレンオキサイドのポリマー鎖の螺旋構造。
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属表面処理方法、表面処理アルミニウム系金属、及び、親水処理の前処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エバポレータや熱交換器は、通常、熱交換を行うためのアルミニウムフィンが狭い間隔で保持され、更に、これらのフィンに冷媒を供給するためのアルミニウムチューブが入り組んで配置された複雑な構造となっている。このため、アルミニウムフィンの表面を親水化することにより、冷房時に凝縮された水の排出を容易にしている。しかし、親水性だけではなく、防錆性も有することが要求されるため、親水性と防錆性の両方に優れた表面処理が要求されている。
【0003】
また、このようなアルミニウムフィンの表面処理は、一般的に、フィン成形前の板材の段階で行うプレコート方式で行われている。このため、プレス加工性、つまり、張り出し加工性や抜き打ち加工性もアルミニウムフィンの表面処理の効果として重要となる。
【0004】
これらの効果を得るため、リン酸クロメート皮膜を形成後、更にリン酸クロメート皮膜の上に親水皮膜を形成するアルミニウムフィン材が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このようなリン酸クロメート皮膜は、有害物質であるクロムを含むため、人体への影響、排水処理等の観点から好ましくない。
【0005】
また、チタン又はジルコニウムからなる耐食性皮膜を形成後、更に耐食性皮膜の上に親水皮膜を形成するアルミニウムフィン材が開示されている(例えば、特許文献2)。しかしながら、このような耐食性皮膜と親水皮膜との密着性が不充分なために、良好な耐食性、耐湿性が得られなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−125555号公報
【特許文献2】
特開2002−162186号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑み、密着性、耐食性、耐湿性、プレス加工性等に優れる親水複層塗膜を形成する金属表面処理方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、化成処理剤を塗布して化成皮膜を形成する工程(I)、及び、上記工程(I)により得られた化成皮膜の上に親水性樹脂からなる親水処理剤を塗布して親水皮膜を形成する工程(II)からなる金属表面処理方法であって、上記化成処理剤は、10〜10000ppmのジルコニウム及び/又はチタン、並びに、10〜10000ppmのフェノール性水酸基含有化合物からなり、pHが1.5〜5.0であることを特徴とする金属表面処理方法である。
上記フェノール性水酸基含有化合物は、下記一般式(1):
【0009】
【化3】
【0010】
(R1は、H又はCH3を表わす。R2及びR3は、同一又は異なってCH3又はCnHmOHを表わす。nは、1〜3の整数を表わす。)で表わされるアミン変性フェノール化合物及びアミン変性クレゾール化合物、並びに、フェノール酸の一方のカルボキシル基と他方の水酸基とでエステル結合したデプシドより選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記デプシドは、レカノール酸、ジロホール酸、タンニン酸、及び、それらの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
上記親水性樹脂は、100以上の酸価及び/又は水酸基価を有することが好ましい。
上記親水性樹脂は、カルボキシル基及び/又は水酸基含有不飽和重合性水性高分子、カルボキシル基及び/又は水酸基含有天然高分子、それらの塩、及び、それらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
上記カルボキシル基及び/又は水酸基含有不飽和重合性水性高分子は、ポリ(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合物、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及び(メタ)アクリルアミド誘導体の重合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、上記カルボキシル基及び/又は水酸基含有天然高分子は、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース及びエチルヒドロキシエチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記親水処理剤は、更に、下記一般式(2):
【0013】
【化4】
【0014】
(R4は、−H又は−CH3を表わす。nは、正の整数を表わす。)で表わされる構造を有するポリアルキレンオキサイド含有水性化合物を含有するものであることが好ましい。
上記ポリアルキレンオキサイド含有水性化合物は、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド又はポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド共重合物であることが好ましい。
【0015】
本発明は、上記金属表面処理方法を用いて処理されたことを特徴とする表面処理アルミニウム系金属でもある。
本発明は、化成処理剤を塗布して化成皮膜を形成する工程からなる親水処理の前処理方法であって、上記化成処理剤は、10〜10000ppmのジルコニウム及び/又はチタン、並びに、10〜10000ppmのフェノール性水酸基含有化合物からなり、pHが1.5〜5.0であることを特徴とする親水処理の前処理方法でもある。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の金属表面処理方法は、ジルコニウム及び/又はチタン、並びに、フェノール性水酸基含有化合物からなる化成処理剤を塗布して化成皮膜を形成する工程(I)、及び、上記工程(I)により得られた化成皮膜の上に親水処理剤を塗布して親水皮膜を形成する工程(II)からなる方法である。上記化成皮膜に含まれるフェノール性水酸基と親水皮膜に含まれる親水性樹脂の親水基との水素結合が生じることにより、密着性に優れた化成皮膜と親水皮膜からなる親水複層塗膜を得ることができるものである。
【0017】
また、上記フェノール性水酸基含有化合物が乾燥工程で自己縮合して高バリアー性のバインダーとして作用するため、得られる化成皮膜は、酸やアルカリ及び有機溶剤に対して極めて浸透しにくい高耐食性を有することができる。従って、本発明の金属表面処理方法は、優れた耐食性、耐湿性等を付与することができるものである。
【0018】
本発明の金属表面処理方法は、先ず、工程(I)として上記化成処理剤を被処理物に塗布し、化成皮膜を形成するものである。上記化成処理剤に含まれるフェノール性水酸基含有化合物としては特に限定されず、例えば、フェノール化合物、クレゾール化合物、天然物由来のポリフェノール化合物等を挙げることができる。なかでも、親水基との反応性及び耐食性付与の観点から、一般式(1):
【0019】
【化5】
【0020】
(R1は、H又はCH3を表わす。R2及びR3は、同一又は異なってCH3又はCnHmOHを表わす。nは、1〜3の整数を表わす。)で表わされるアミン変性フェノール化合物及びアミン変性クレゾール化合物、並びに、フェノール酸の一方のカルボキシル基と他方の水酸基とでエステル結合したデプシドより選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0021】
上記アミン変性フェノール化合物及び/又はアミン変性クレゾール化合物としては特に限定されず、例えば、レジトップPL−4012(群栄化学社製)、スミライトレジンNPK−238(住友化学社製)等の市販の製品を使用することができる。
【0022】
上記デプシドは、フェノール酸の一方のカルボキシル基と他方の水酸基とでエステル結合したものである。上記デプシドとしては特に限定されないが、化成処理剤の安定性等の観点からジデプシド、トリデプシドであることが好ましい。
上記ジデプシド及びトリデプシドとしては特に限定されず、例えばレカノール酸、ジロホール酸、タンニン酸、及び、それらの類縁体を挙げることが出来る。レカノール酸の類縁体としては、4−o−デメチルバルバチン酸、ベオミケス酸、スカマート酸等を挙げることができる。ジロホール酸の類縁体としてはウンビリカール酸等を挙げることができる。なかでも入手が容易であることからタンニン酸及びその類縁体が好ましい。上記タンニン酸の類縁体としては特に限定されず、例えば密着性付与効果、化成処理剤の安定性に影響しない範囲で水酸基又はカルボキシル基にメチル等を付加させたもの、加水分解等の方法によって分解したタンニン分解物を挙げることができる。
【0023】
上記タンニン酸は、広く植物界に分布する多数のフェノール性水酸基を有する複雑な構造の芳香族化合物の総称である。上記タンニン酸は、加水分解性タンニン酸でも縮合型タンニン酸でもよい。上記タンニン酸としては特に限定されず、例えば、ハマメリタンニン、カキタンニン、チャタンニン、五倍子タンニン、没食子タンニン、ミロバランタンニン、ジビジビタンニン、アルガロビラタンニン、バロニアタンニン、カテキンタンニン等を挙げることができる。
【0024】
上記タンニン酸としては、市販のもの、例えば、「タンニン酸エキスA」、「Bタンニン酸」、「Nタンニン酸」、「工用タンニン酸」、「精製タンニン酸」、「Hiタンニン酸」、「Fタンニン酸」、「局タンニン酸」(いずれも大日本製薬株式会社製)、「タンニン酸:AL」(富士化学工業株式会社製)等を使用することもできる。
上記フェノール性水酸基含有化合物としては、上述の化合物の1種又は2種以上を併用してもよい
【0025】
上記化成処理剤における上記フェノール性水酸基含有化合物の含有量は、下限10ppm、上限10000ppmの範囲内である。上記含有量が10ppm未満であると、耐食性、耐湿性、密着性向上効果が不充分となり、10000ppmを超えると、それ以上の効果が望めず不経済である。上記含有量の下限は、100ppmが好ましく、上限は、3000ppmが好ましい。
【0026】
本発明で使用する化成処理剤は、ジルコニウム及び/又はチタンを有するものである。上記ジルコニウム及び/又はチタンは、化成皮膜形成成分であり、被処理物にジルコニウム及び/又はチタンを含む化成皮膜が形成されることにより、耐食性や耐磨耗性を向上させることができる。本発明の金属表面処理方法は、クロム等の有害な重金属を含む化成処理剤を使用しないことから環境に優しい方法である。
【0027】
上記ジルコニウムの供給源としては特に限定されず、例えば、K2ZrF6等のアルカリ金属フルオロジルコネート;(NH4)2ZrF6等のフルオロジルコネート;H2ZrF6等のフルオロジルコネート酸等の可溶性フルオロジルコネート等;フッ化ジルコニウム;酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
【0028】
上記チタンの供給源としては特に限定されず、例えば、アルカリ金属フルオロチタネート、(NH4)2TiF6等のフルオロチタネート;H2TiF6等のフルオロチタネート酸等の可溶性フルオロジルコネート等;フッ化チタン;酸化チタン等を挙げることができる。
【0029】
上記化成処理剤における上記ジルコニウム及び/又はチタンの合計量は、金属イオン濃度として下限10ppm、上限10000ppmの範囲内である。上記合計量が10ppm未満であると化成皮膜の性能が不充分であり、上記上限を超えると、それ以上の効果は望めず経済的に不利である。上記下限は、200ppmが好ましく、上記上限は、2000ppmが好ましい。
【0030】
上記化成処理剤のpH範囲は、下限1.5、上限5.0の範囲内であることが好ましい。pHが1.5未満の場合は金属表面のエッチングが促進されすぎるため、得られた皮膜の耐食性、耐湿性が低下する。pHが5.0を超えると処理液の安定性が悪くなり、化成反応が満足に進行せず、皮膜が形成されにくくなる。上記下限は、2.5であることがより好ましく、3.0であることが更に好ましい。また、上記上限は、4.2であることがより好ましく、4.0であることが更に好ましい。
【0031】
上記化成処理剤は、上記成分の他に必要に応じて、更に、エッチング助剤、キレート剤、pH調整剤を使用することができる。
上記エッチング助剤としては、例えば、フッ化水素酸、フッ化水素酸塩、フッ化硼素酸等を挙げることができる。
【0032】
上記キレート剤としては、例えば、クエン酸、酒石酸、グルコン酸等、アルミニウムと錯体を形成する酸及びそれらの金属塩等を挙げることができる。
【0033】
上記pH調整剤としては、例えば、硝酸、過塩素酸、硫酸、硝酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、アンモニア等の化成処理に悪影響を与えない酸又は塩基を挙げることができる。
上記化成処理剤を塗布して化成皮膜を形成する工程からなる親水処理の前処理方法も本発明の一つである。
【0034】
本発明の金属表面処理方法は、次に、工程(II)として上記化成処理剤により得られた化成皮膜の上に、親水性樹脂からなる親水処理剤を塗布して親水皮膜を形成するものである。上記工程(II)において親水基を有する親水皮膜が形成されることにより、親水基と化成皮膜に含まれるフェノール性水酸基との水素結合が生じ、優れた密着性を得ることができるものである。
【0035】
上記親水処理剤は、親水性樹脂を含有することにより、皮膜に親水性を付与するものである。上記親水性樹脂としては、水溶性又は水分散性の親水性樹脂であれば特に限定されないが、親水性付与の観点から、100以上の酸価及び/又は水酸基価を有することが好ましい。なお、ここでいう酸価及び水酸基価は固形分基準である。
【0036】
上記親水性樹脂としては、具体的には、カルボキシル基及び/又は水酸基含有不飽和重合性水性高分子、カルボキシル基及び/又は水酸基含有天然高分子、水性アルキド樹脂、水性ポリエステル樹脂、水性ポリブタジエン樹脂、水性ポリアミド樹脂、水性エポキシ樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性フェノール樹脂、水性アミノ樹脂、これらの塩及び誘導体等を挙げることができる。なかでも、フェノール性水酸基との水素結合の観点から、カルボキシル基及び/又は水酸基含有不飽和重合性水性高分子、並びに、カルボキシル基及び/又は水酸基含有天然高分子が好ましい。上記親水性樹脂は、これらの樹脂のうち1種又は2種以上を併用するものであってもよい。
【0037】
上記カルボキシル基及び/又は水酸基含有不飽和重合性水性高分子としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合物、ポリ酢酸ビニル樹脂を一部ケン化したポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、N−(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体の重合物等を挙げることができる。ここで、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合物は、耐アルカリ性及び耐食性の向上に寄与する。また、ポリ酢酸ビニル樹脂を一部ケン化したポリビニルアルコールは、臭気防止と親水性を付与する作用を有する。また、ポリビニルピロリドンは、親水持続性を若干向上させる作用がある。なお、本発明の効果を損ねない範囲で、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合物等を添加してもよい。なかでも、親水皮膜に親水持続性を付与する効果が高い、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールが好ましい。
【0038】
上記カルボキシル基及び/又は水酸基を含有する天然性高分子化合物又はその誘導体としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)等のセルロース誘導体、メチルセルロース誘導体等を挙げることができる。なお、セルロース誘導体はこれに限るものではなく、セルロースのカルボキシルメチルエーテル、カルボキシルエチルエーテル、ヒドロキシメチルエーテル、ヒドロキシエチルエーテルでもよく、酢酸澱粉、リン酸澱粉でもよい。また、メチルセルロース誘導体はこれに限るものではなく、メチルセルロースにヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基を付加した付加物でもよい。更に、カルボキシル基含有、又はエチレンオキサイド(EO)又はプロピレンオキサイド(PO)を付加したガム類、多糖類の誘導体を用いてもよい。また、リグニンスルホン酸、アルギン酸、ヒアルロン酸等を用いても良い。また、ポリグルタミン酸(PGA)を用いても良く、ポリグルタミン酸を用いると、親水持続性が著しく向上する。なお、ポリグルタミン酸は、γ−PGAとα−PGAがあり、どちらを用いても良い。なかでも、親水皮膜に親水持続性を付与する効果が高い、カルボキシルメチルセルロース、γ−PGAが好ましい。
【0039】
上記水性アルキド樹脂としては、例えば、グルセリン、ペンタエリトリトール、エチレングルコール、トリメチロールエタン等のポリオールと、油脂から得られる高級脂肪酸、例えば、パルミチン酸、無水フタル酸、無水マレイン酸等の二塩基酸を縮合させて得られるものを挙げることができる。
【0040】
上記水性ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂中の水酸基をトリメリット酸の無水物とハーフエステル化反応させ、残ったカルボン酸基をアミン等で中和し、水性化して得られるものを挙げることができる。また、ポリエチレングリコールを多塩基酸と反応させ、ポリエステル樹脂を水性化したものがある。
【0041】
上記水性ポリブタジエン樹脂としては、例えば、ブタジエンを触媒を用いて重合したもので、1,2−結合型、1,4−結合型が挙げられ、共に用いることができる。これらは熱、パーオキサイド、硫黄等により造膜させることができる。
【0042】
上記水性ポリアミド樹脂としては、(1)ε−カプロラクタムの開環重合によるもの(2)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合によるもの(3)ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の縮重合によるもの(4)11−アミノウンデカン酸の縮重合によるもの(5)ω−ラウムラクタムの開環重合または12−アミノドデカン酸の縮重合によるものこれらを水溶化したもの等を挙げることができる。
【0043】
上記水性エポキシ樹脂としては、例えば、水溶性エポキシ樹脂として、脂肪族多価アルコールのジまたはポリグリシジルエーテル、ジカルボン酸ジクリシジルエステル、含窒素ヘテロ環を含むエポキシ化合物を挙げることができる。また、水分酸性エポキシ樹脂として、水または水と有機溶剤の混合液に適当な乳化剤を加え、エポキシ樹脂を分散乳化させたもの、エポキシ樹脂を変性させることによって、水に溶解または分散乳化させたもの、具体的には、エポキシ樹脂に親水基を導入したり、カルボキシル基等のアニオン基やアミノ基等のカチオン基を導入し、それを水酸基または酸で中和し、高分子電解質とに水性化したものを挙げることができる。
【0044】
上記水性ポリウレタン樹脂としては、例えば、分子中にアニオンまたはカチオン性基を導入し、水性化したものを挙げることができる。また、末端基がイソシアネート基のウレタンプレポリマーに重亜硫酸塩を付加させ、イソシアネート基とブロックするとともに、スルフォネートの親水性により水性化したものを挙げることができる。また、ポリウレタンプレポリマーをブロック剤で封鎖した後、強制的に乳化分散したものを挙げることができる。
【0045】
上記水性フェノール樹脂としては、例えば、フェノール、キシレノール、p−アルキルフェノール、p−フェニルフェノール、クロロフェノール、ビスフェノールA、フェノールスルホン酸、レゾルシン等のフェノール性−OH基を有するものに、ホルマリン、フルフラール等のアルデヒド類を付加、縮合した高分子物を水性化したものを挙げることができる。これらは、一般にフェノール・ホルマリン樹脂、クレゾール・ホルマリン樹脂、フェノール・フルフラール樹脂、レゾルシン樹脂等として分類される。上記水性フェノール樹脂は、樹脂間に架橋を形成し、造膜性の向上に作用する。
【0046】
上記水性アミノ樹脂としては、例えば、n−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂等のメラミン樹脂や、尿素樹脂等を水溶化したものを挙げることができる。これらの樹脂は通常メラミン、ベンゾグアナミン等のアミノ化合物に、ホルムアルデヒド、バラホルムアルデヒド等のアルデヒドを付加反応又は付加縮合反応させて得たものを、炭素数1〜4の1価アルコールでエーテル化して得られる。上記水性アミノ樹脂は、樹脂間に架橋を形成し、造膜性の向上に作用する。上記メラミン樹脂としては、例えば、アルコキシ基がメトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基、i−水性ブトキシ基等であるアルコキシメチルメラミン樹脂を挙げることができる。
【0047】
上記親水処理剤における上記親水性樹脂の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましい。0.1質量%未満であると、充分な造膜性及び親水性が得られない。上記下限は、0.2質量%がより好ましく、上記上限は、0.8質量%がより好ましい。
【0048】
上記親水処理剤は、更に、一般式(2):
【0049】
【化6】
【0050】
(R4は、−H又は−CH3を表わす。nは、正の整数を表わす。)で表わされる構造を有するポリアルキレンオキサイド含有水性化合物を含有することが好ましい。上記ポリアルキレンオキサイド含有水性化合物を親水処理剤に配合することにより、得られる親水皮膜に良好なプレス加工性及び親水持続性を付与することができるものである。
【0051】
上記ポリアルキレンオキサイド含有水性化合物としては特に限定されず、例えば、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合物、エチレンオキサイド−メチレンオキサイド共重合物、側鎖にポリアルキレンオキサイド含有水性化合物が結合しているアクリル樹脂等を挙げることができる。なかでも、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合物が好ましい。
【0052】
上記ポリアルキレンオキサイド含有水性化合物は、ポリアルキレンオキサイドを固形分換算で10質量%以上含有することが好ましい。上記ポリアルキレンオキサイドの含有量が10質量%未満の場合は、充分なプレス加工性が得られないおそれがある。また、上記ポリアルキレンオキサイド含有水性化合物は、質量平均分子量が下限10000、上限2000000の範囲内であることが好ましい。上記質量分子量が10,000未満の場合は、親水持続性が不充分となってしまい、一方2,000,000を超えると、親水処理剤の粘度が高くなり、作業性が劣る。上記質量分子量の下限は、20000がより好ましく、上限は、1000000がより好ましい。
【0053】
上記ポリアルキレンオキサイド含有水性化合物がプレス加工性及び親水持続性に影響を与える機構をポリエチレンオキサイドを例に挙げて説明する。ポリエチレンオキサイドは、水性でかつ熱可塑性を有しており、上記分子量の範囲では結晶性が極めて高く、結晶系は単斜晶系に属する(図1参照)。このため、ポリエチレンオキサイド鎖は滑り易く、加工性に優れる。
【0054】
また、ポリエチレンオキサイドのポリマー鎖は、C軸に沿って伸びており、その単位鎖(−O−CH2 −CH2 −O−)を構成するO−C単結合、C−C単結合、C−O単結合のまわりのコンフォーメイション(立体配座)は、それぞれアンチ(anti)、ゴーシュ(gauche)、アンチ型の配置を有し、結果として、CH2 −CH2 −O−CH2 −CH2 鎖の4つの単結合は同一平面上でW型になっている(図2参照)。従って、ポリマー鎖はC軸の−CH2 −CH2 −O−単位が螺旋状に配列し(図3参照)、水素結合による種々の化合物との会合体を形成しやすい構造を有する。したがって、ポリエチレンオキサイドは、親水性樹脂に含まれるカルボキシル基及び/又は水酸基含有化合物等と会合体を形成し、この会合体は水に不溶となり造膜後の親水持続性を向上させることができるものである。なお、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合物でも同様の効果がある。
【0055】
上記親水処理剤における上記ポリアルキレンオキサイド含有水性化合物と上記親水性樹脂との配合量の比(ポリアルキレンオキサイド含有水性化合物/ポリアルキレンオキサイド含有水性化合物と親水性樹脂との合計)は、下限0.1、上限0.9の範囲内であることが好ましい。上記配合量の比が、0.1未満の場合は、プレス加工性が不充分となり、一方、0.9を超えると親水皮膜の造膜性が劣化する。上記下限は、0.2がより好ましく、上記上限は、0.5であることがより好ましい。
【0056】
本発明の親水処理剤の溶媒としては特に限定されないが、廃液処理等の観点から水を主体とするものが好ましい。又、造膜性を向上させ、より均一で平滑な皮膜を形成するために有機溶媒を併用してもよい。有機溶媒としては、塗料に一般的に用いられ、水と均一に混合することができるものであれば特に限定されず、例えば、アルコール系、ケトン系、エステル系、エーテル系の有機溶媒等を挙げることができる。上記有機溶媒の使用量は、上記親水処理剤に対して、下限0.5質量%、上限4.5質量%の範囲内であることが好ましい。
【0057】
本発明の親水処理剤は、更に、他の添加剤を含有するものであってもよい。上記他の添加剤としては特に限定されず、例えば、硬化剤、分散剤、防錆添加剤、顔料、シランカップリング剤、抗菌剤、界面活性剤、潤滑剤、消臭剤等を挙げることができる。
【0058】
上記硬化剤としては、特に限定されず、例えば、メラミン樹脂、ブロックイソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物等を挙げることができる。
上記分散剤としては特に限定されず、界面活性剤、分散樹脂等を挙げることができる。
【0059】
上記防錆添加剤としては特に限定されず、例えば、イミダゾール化合物、トリアジン化合物、トリアゾール化合物、グアニン化合物、ヒドラジン化合物、ジルコニウム化合物等を挙げることができる。
【0060】
上記顔料としては、例えば酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、炭酸カルシウム(CaCO3)、硫酸バリウム(BaSO4)、アルミナ(Al2O3)、カオリンクレー、カーボンブラック、酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4)等、酸化アルミニウム(Al2O3)の無機顔料や、有機顔料等の各種着色顔料等を挙げることができる。
【0061】
上記シランカップリング剤を含有させると、上記樹脂と上記顔料との親和性が向上し、密着性等を向上させることができる点で好ましい。
上記シランカップリング剤としては特に限定されず、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−〔2−(ビニルベンジルアミノ)エチル〕−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
上記抗菌剤としては特に限定されず、例えば、2−(4−チアゾニル)−ベンスイミダゾール、ジンクピリチオン等の従来公知の抗菌剤を使用することができる。
【0062】
本発明における上記工程(I)は、化成処理剤を塗布して化成皮膜を形成する工程であって、化成処理及び化成後水洗処理からなるものである。化成処理を行う際の上記化成処理剤の温度は、下限30℃、上限80℃の範囲内であることが好ましい。30℃未満であると、反応速度が低下し、皮膜の析出性が悪くなるため、充分な皮膜量を得るために処理時間を延長する必要が生じ、生産性を低下させる。80℃を超えると、エネルギーのロスが大きくなる場合がある。上記下限は、40℃であることがより好ましい。上記上限は、60℃であることがより好ましい。
【0063】
上記化成処理をスプレー法で行う場合は、処理時間が下限1秒、上限20秒の範囲内であることが好ましい。1秒未満であると、形成される皮膜量が充分でなく、耐食性や密着性が低下するおそれがあり、20秒を超えると、皮膜形成時のエッチングが過度に進行し、密着性、耐食性が低下するおそれがある。上記下限は、3秒であることがより好ましい。上記上限は、8秒であることがより好ましい。
【0064】
上記化成後水洗処理は、その後の各種塗装後の密着性、耐食性等に悪影響を及ぼさないようにするために、1回又はそれ以上により行われるものである。この場合、最終の水洗は、純水で行われることが適当である。この化成後水洗処理においては、スプレー水洗又は浸漬水洗のどちらでもよく、これらの方法を組み合わせて水洗することもできる。
【0065】
本発明の金属表面処理方法における被処理物は、脱脂処理、脱脂後水洗処理を行ったものであることが好ましい。
上記脱脂処理は、被処理物表面に付着している油分や汚れを除去するために行われるものであり、無リン・無窒素脱脂洗浄液等の脱脂剤により、通常40〜80℃において1〜20秒程度のスプレー処理がなされる。所望により、脱脂処理の前に、予備脱脂処理を行うことも可能である。
上記脱脂後水洗処理は、脱脂処理後の脱脂剤を水洗するために、大量の水洗水によって1回又はそれ以上スプレー処理を行うことにより行われるものである。
【0066】
上記工程(I)により得られる化成皮膜は、水洗後に乾燥させることが好ましい。上記化成皮膜を乾燥する方法としては加熱乾燥が好ましく、例えば、オーブン乾燥及び/又は熱空気の強制的循環による加熱乾燥を挙げることができる。これらの加熱乾燥は、通常、40〜120℃で6秒〜60秒間行われる。
【0067】
上記工程(I)により形成される化成皮膜の皮膜量は、ジルコニウム及び/又はチタン原子換算で下限5mg/m2、上限50mg/m2、フェノール性水酸基含有化合物が炭素原子換算で下限5mg/m2、上限50mg/m2の範囲内であることが好ましい。
上記下限は、ジルコニウム及び/又はチタン原子換算で8mg/m2であることがより好ましく、上記上限は、ジルコニウム及び/又はチタン原子換算で30mg/m2であることがより好ましい。
上記下限は、炭素原子換算で8mg/m2であることがより好ましく、上記上限は、炭素原子換算で40mg/m2であることがより好ましい。
【0068】
上記ジルコニウム及び/又はチタン原子換算、及び、炭素原子換算の皮膜量が、8mg/m2未満であると皮膜量が少ないため耐食性、耐湿性が低下するおそれがある。また、上記ジルコニウム及び/又はチタン原子換算の皮膜量が30mg/m2を超える場合、及び、上記炭素原子換算の皮膜量が40mg/m2を超える場合、それ以上の効果が望めず不経済である。なお、ジルコニウム及び/又はチタン量は蛍光X線分析装置で、フェノール性水酸基含有化合物量は形態別炭素/水分分析装置によって測定することが出来る。
【0069】
本発明における工程(II)は、親水処理剤を塗布して親水皮膜を形成する工程である。上記親水処理剤を適用する方法としては特に限定されず、例えば、ロールコート、エアスプレー、エアレススプレー、浸漬等を挙げることができる。上記親水処理剤によって形成された親水皮膜の硬化性を高めるために、あらかじめ被処理物を加熱しておくか、コーティング後に被処理物を熱乾燥させることが好ましい。被処理物の加熱温度は、下限100℃、上限300℃の範囲内であることが好ましい。上記下限は、120℃であることが好ましく、上記上限は、250℃であることが好ましい。加熱温度が100℃未満では、水分の蒸発速度が遅く充分な成膜性が得られないため、耐溶剤性や耐アルカリ性が低下する。一方、300℃を超えると樹脂の熱分解が生じて耐溶剤性や耐アルカリ性が低下し、また黄変のため外観が悪くなる。コーティング後に熱乾燥させる場合の乾燥時間は1秒〜5分が好ましい。
【0070】
上記工程(II)により形成される親水皮膜の皮膜量は、下限0.1g/m2、上限3g/m2の範囲内であることが好ましい。0.1g/m2未満であると、親水性、プレス加工性が低下するおそれがある。一方、3g/m2であるとそれ以上の効果が望めず不経済である。上記下限は、0.3g/m2であることがより好ましく、上記上限は、1.5g/m2であることがより好ましい。
【0071】
本発明の金属表面処理方法は、優れた親水性、密着性、耐水性、耐食性、プレス加工性等を得ることができるため、アルミニウムフィンとして使用されるアルミニウム系金属を処理した際に優れた効果を発揮することができる。上記アルミニウム系金属としては特に限定されず、例えば、アルミニウム、及び、JIS−A1100、JIS−A1200等の1000番系アルミニウム合金を挙げることができる。本発明の金属表面処理方法により処理されたアルミニウム系金属も本発明の一つである。
【0072】
本発明の金属表面処理方法は、フェノール性水酸基含有化合物からなる化成処理剤により化成皮膜を形成し、更に、親水性樹脂からなる親水処理剤により親水皮膜を形成する方法であって、密着性、耐水性、耐湿性に優れた親水複層塗膜を得ることができる方法である。また、上記親水処理剤にポリアルキレンオキサイド含有水性化合物を配合することにより、優れたプレス加工性を付与することができるものである。
【0073】
【実施例】
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
【0074】
実施例1
市販のアルミニウム板;(JIS−A1100、200mm×250mm×0.11mm)に、下記の条件で、表面処理を施した。
(1)化成処理
脱脂処理:1.5質量%「サーフクリーナーEC370」(日本ペイント社製)で70℃、5秒間スプレー処理した。
脱脂後水洗処理:水道水で10秒間スプレー処理した。
化成処理:表1に示した組成からなる化成処理剤を調製した。得られた化成処理剤の温度を55℃とし、アルミニウム板を5秒間スプレー処理した。なお、ジルコニウムの供給源として日本軽金属(株)製の「フッ化ジルコニウム水素酸」、チタンの供給源として森田化学工業(株)製の「フッ化チタン水素酸」、タンニン酸として大日本製薬(株)製の「タンニン酸エキスA」、フェノール性水酸基含有化合物として群栄化学工業(株)製の「レジトップPL−4012」を使用した。なお、皮膜中のジルコニウム及びチタンは、「XRF1700」(島津製作所製蛍光X線分析装置)を用いて分析し、炭素量は、「RC412」(LECO社製水分分析装置)を用いて分析した。
【0075】
化成後水洗処理:水道水で10秒間スプレー処理した。
純水水洗処理:純水による流水洗、30秒間スプレー処理した。
乾燥処理:水洗処理後のアルミニウム板を熱風循環型電気乾燥炉において、80℃で1分間乾燥した。
【0076】
(2)親水処理
親水処理:親水処理剤を調製し、バーコーターで乾燥膜厚1.0g/m2になるように塗布した。更にアルミニウム板を熱風循環型電気乾燥炉において、220℃で20秒間焼き付けて試験板を作成した。得られた親水皮膜の成分組成を表1に示す。なお、表中のPAAは、ポリアクリル酸(日本触媒(株)製、アクアリックHL415)、PVAは、ポリビニルアルコール((株)クラレ製、クラレポバールPVA−102)、CMCは、カルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)製、セロゲンWS−A)、PEOは、ポリエチレンオキサイド(ダウ・ケミカル日本(株)製、POLYOX N80)である。
【0077】
実施例2〜22、比較例1〜10
化成処理剤及び親水処理剤を表1に示した組成に変更したこと以外は、実施例1と同様にして試験板を作成した。
【0078】
比較例11
化成処理剤としてリン酸クロメート処理剤(アルサーフ401/45、日本ペイント社製)を使用し、45℃で5秒間処理したこと以外は、実施例1と同様にして試験板を作成した。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例及び比較例で得られた化成処理剤を40℃で30日間保管して安定性を目視で評価し、表2に示した。白濁等の問題がみられなかったものを〇とした。
【0081】
試験板の物性評価
得られた試験板について、以下に示した評価方法によって耐食性、耐湿性、密着性、親水性を評価した。この結果を表2に示す。
<耐食性>
JIS Z 2371に基づき、5%の食塩水を35℃で噴霧し、500時間後の錆発生面積を下記の評価基準で目視で評価した。
5:0%
4:0%を含まず20%未満
3:20%以上50%未満
2:50%以上80%未満
1:80%以上
【0082】
<耐湿性>
試験板を、50℃、湿度98%以上の環境下に静置し、500時間後の変色面積を下記の評価基準で目視で評価した。
5:0%
4:0%を含まず20%未満
3:20%以上50%未満
2:50%以上80%未満
1:80%以上
【0083】
<密着性>
純水を霧吹きし、500g荷重下の紙で皮膜を擦り、1往復1回として素地が露出するまでの回数を評価した。
5:30以上
4:30未満20以上
3:20未満10以上
2:10未満5以上
1:5未満
【0084】
<親水性>
試験板を流水に8時間接触させた後、80℃で16時間保つサイクルを1サイクルとして10サイクル後に純水5μlを滴下し、滴下30秒後の水滴との接触角を測定した。接触角が小さい程、親水性が高いと考えられる。測定は、FACE自動接触角計(CA−Z型、協和界面科学(株)製、測定温度;室温)を用いて行った。
5:15゜未満
4:15゜以上30゜未満
3:30゜以上45゜未満
2:45゜以上60゜未満
1:60゜以上
【0085】
<潤滑性>
5mm鋼球、荷重50g、引き速度300mm/minの条件で表面性測定機(HEIDON−14型、新東科学社製)を用いて摩擦係数を測定した。
5:0.1未満
4:0.1以上0.15未満
3:0.15以上0.2未満
2:0.2以上0.3未満
1:0.3以上
【0086】
【表2】
【0087】
表2より、本発明に基づき得られたアルミニウム板は、耐食性、耐湿性、密着性、親水性及び潤滑性の全ての評価項目において、優れた性能を有することが示された。
【0088】
【発明の効果】
本発明の金属表面処理方法により、密着性、耐食性、耐湿性に優れ、更に、良好なプレス加工性を有する親水複層塗膜を得ることができる。また、本発明の金属表面処理方法を用いて処理されたアルミニウム系金属は、アルミニウムフィンとして好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポリエチレンオキサイドの結晶の単位格子。
【図2】ポリエチレンオキサイドのポリマー鎖の立体配座。
【図3】ポリエチレンオキサイドのポリマー鎖の螺旋構造。
Claims (10)
- 化成処理剤を塗布して化成皮膜を形成する工程(I)、及び、前記工程(I)により得られた化成皮膜の上に親水性樹脂からなる親水処理剤を塗布して親水皮膜を形成する工程(II)からなる金属表面処理方法であって、
前記化成処理剤は、10〜10000ppmのジルコニウム及び/又はチタン、並びに、10〜10000ppmのフェノール性水酸基含有化合物からなり、pHが1.5〜5.0である
ことを特徴とする金属表面処理方法。 - デプシドは、レカノール酸、ジロホール酸、タンニン酸、及び、それらの類縁体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項2記載の金属表面処理方法。
- 親水性樹脂は、100以上の酸価及び/又は水酸基価を有する請求項1、2又は3記載の金属表面処理方法。
- 親水性樹脂は、カルボキシル基及び/又は水酸基含有不飽和重合性水性高分子、カルボキシル基及び/又は水酸基含有天然高分子、それらの塩、及び、それらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項4記載の金属表面処理方法。
- カルボキシル基及び/又は水酸基含有不飽和重合性水性高分子は、ポリ(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合物、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及び(メタ)アクリルアミド誘導体の重合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、
カルボキシル基及び/又は水酸基含有天然高分子は、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース及びエチルヒドロキシエチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種である請求項5記載の金属表面処理方法。 - ポリアルキレンオキサイド含有水性化合物は、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド又はポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド共重合物である請求項7記載の金属表面処理方法。
- 請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の金属表面処理方法を用いて処理された
ことを特徴とする表面処理アルミニウム系金属。 - 化成処理剤を塗布して化成皮膜を形成する工程からなる親水処理の前処理方法であって、
前記化成処理剤は、10〜10000ppmのジルコニウム及び/又はチタン、並びに、10〜10000ppmのフェノール性水酸基含有化合物からなり、pHが1.5〜5.0である
ことを特徴とする親水処理の前処理方法。
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