JPH08281209A - プレス成形性及びスポット溶接性が優れたAl材 - Google Patents

プレス成形性及びスポット溶接性が優れたAl材

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JPH08281209A
JPH08281209A JP8571095A JP8571095A JPH08281209A JP H08281209 A JPH08281209 A JP H08281209A JP 8571095 A JP8571095 A JP 8571095A JP 8571095 A JP8571095 A JP 8571095A JP H08281209 A JPH08281209 A JP H08281209A
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知之 杉田
Kuniaki Matsui
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 従来の固形潤滑剤と同等以上の成形性を有す
ると共に、プレス加工後の溶接エ程において、プレス成
形品に潤滑剤が付着していない場合と同等以上の接合強
度を有すると共に、500点以上のスポット電極寿命
と、スポット溶接部の耐食性を得、かつ組み立て後の脱
脂工程において潤滑剤を簡単に除去できるプレス成形性
及びスポット溶接性が優れたAl材を提供する。 【構成】 Al又はAl合金材の表面に、水溶性ワック
ス、このワックスに対して重量比で5〜25%の高級脂
肪酸の金属塩、前記ワックスに対して重量比で2〜20
%の平均粒径5μm以下のアルミニウムパウダー、及び
前記ワックスに対して重量比で0.02〜0.2%の金
属分散剤からなる混合物を、0.2〜2.0g/m2
布して形成した皮膜を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はプレス成形性及びスポッ
ト溶接性が優れたAl又はAl合金材に関し、更に詳述
すれば、プレス加エにより製造されるAl部品、例えば
自動車部品をはじめとして、電機機器部品及び航空機部
品等に好適であって、加工が厳しく、かつ組立工程時に
スポット溶接を行うAl材製品に対して有効な固形潤滑
剤を塗布したAl材料に関する。
【0002】
【従来の技術】Al又はAl合金材(以下、両者を含め
てAl材という)は、その軽量性のほかに、耐食性及び
成形性が優れているため、鉄鋼材料に次ぐ汎用金属材料
として自動車を始め、種々の産業分野で多用されてい
る。最近、自動車の軽量化を図るために、Al材の使用
が次第に増えつつあるが、Al材は鋼板に比較して成形
性が劣るため、成形時に割れが発生しやすいと共に、設
計時に形状が制限されるなどの点で問題が大きい。
【0003】そのため、自動車製造分野においては、A
l材をプレス加工する際に、通常の鉱油潤滑油ではな
く、潤滑性が優れた固形潤滑剤の使用を検討している。
固形潤滑剤は予め素材のAl又はAl合金板に対し、水
又は有機溶剤にワックス又は樹脂等を溶融させた液体を
板表面上に塗布し、乾燥させて潤滑性の皮膜を形成させ
ておき、プレス時の成形性を高めようとするものであ
り、潤滑性が高いほどプレス成形時に割れが発生しにく
い。
【0004】こうしてプレス成形された製品は、その後
の組立工程において固形潤滑剤が除去されない状態で溶
接加工が行われ、組み立て工程が終了した後に脱脂工程
にて除去されている。ところが、固形潤滑剤を使用した
場合はアルミニウム材の表面に固形の潤滑皮膜が形成さ
れているため、これが原因となってスポット溶接時に残
留潤滑剤が溶接電流を阻害して溶接不良の原因となり、
生産性及び製品の品質を劣化させ、作業の安全性を著し
く阻害する原因になっている。こうした状況から、本願
発明者等は成形性・脱脂性・接着性及び溶接性に優れた
固形潤滑剤と塗布されたアルミ板材(特開平5−320
685号公報)と、Al又はAl合金成形加工用潤滑剤
及び成形加工用Al又はAl合金板(特願平5−348
254号)を提案した。
【0005】前者は水済性のワックスと金属石鹸と導電
性物質を適正な比率で混合した固形潤滑剤を使用するこ
とにより、アルミ材の成形性・脱脂性・接着性・溶接性
を向上させようとするものであり、後者は潤滑剤の組成
をポリアルキレンオキサイド又はその誘導体と高級脂肪
酸塩とし、その成分の適正化により同様にアルミニウム
材の成形性・脱脂性・接着性・溶接性を向上させようと
するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者の
場合は、スポット溶接した際に、潤滑剤中に含有される
導電性パウダーであるグラファイトと酸化チタンが、ア
ルミニウムと溶融され、これが腐食を引き起こす原因と
なる。また、導電性パウダーと潤滑剤がうまく混じり合
わず、塗布時にムラになり、成形性及び脱脂性を劣化さ
せる原因にもなる。
【0007】また、後者の場合は、主成分にポリアルキ
レンオキサイド又はその誘導体しか使用できず、得られ
るスポット溶接性も連続打点数で300〜500点程度
である。
【0008】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、従来の固形潤滑剤と同等以上の成形性を有
すると共に、プレス加工後の溶接エ程において、プレス
成形品に潤滑剤が付着していない場合と同等以上の接合
強度を有すると共に、500点以上のスポット電極寿命
と、スポット溶接部の耐食性を得、かつ組み立て後の脱
脂工程において潤滑剤を簡単に除去できるプレス成形性
及びスポット溶接性が優れたAl材を提供することを目
的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明に係るプレス成形
性及びスポット溶接性が優れたAl材は、Al又はAl
合金基材の表面に、水溶性ワックス、このワックスに対
して重量比で5〜25%の高級脂肪酸の金属塩、前記ワ
ックスに対して重量比で2〜20%の平均粒径5μm以
下のアルミニウムパウダー、及び前記ワックスに対して
重量比で0.02〜0.2%の金属分散剤からなる混合
物を、0.2〜2.0g/m2塗布して形成した皮膜を
有することを特徴とする。
【0010】
【作用】本願発明者等は、本願発明の目的を達成できる
Al又はAl合金材の成形方法について研究を重ね、A
l又はAl合金材のプレス時の成形性を向上させなが
ら、組み立て工程におけるスポット溶接性及び脱脂工程
の脱脂性を劣化させないAl用固形潤滑皮膜の組成を種
々実験研究した結果、特許請求の範囲に記載のAl又は
Al合金材によりこれを解決できることを見い出した。
【0011】本発明に係る潤滑剤は水溶性の固形潤滑剤
であって、優れた脱脂性・溶接性を得るため親水性で体
積抵抗率の低い合成ワックスを主成分とし、これに成形
性向上のために高級脂肪酸の金属塩を加え、さらに潤滑
剤中に導電性のアルミバウダーを加え皮膜に電流が流れ
るようにし、高級脂肪酸の金属塩やアルミパウダーを潤
滑剤中に均一に分散させるため、金属分散剤を加える。
このような混合水溶性固形潤滑剤の皮膜を板状等のアル
ミニウム材の表面に設けることにより、成形性・脱脂性
・溶接性を満足するアルミニウム材を得ることができ
る。そしてこれらの潤滑剤は通常は水溶液の状態でロー
ルコーターを用いてAl材表面に塗布され、その後、熱
風等で水分を除去した状態でプレス加工に供される。
【0012】主成分である水溶性合成ワックスは優れた
潤滑性と脱脂性を有しており、かつ体積抵抗率が1010
Ωm以下と小さく導電性もよい。これらの水溶性合成ワ
ックスには、ポリエチレンオキサイド、カーボワック
ス、ヘキストワックス、及びこれらのワックスに酸価を
付与した変成誘導体等が挙げられる。
【0013】高級脂肪酸の金属塩は潤滑性は優れている
ものの、それ単体ではAlと吸着して脱脂性を悪くし、
その後の塗装工程での塗装不良の原因となる。しかし、
高級脂肪酸の金属塩を水溶性合成ワックスに添加し潤滑
剤中に均一に分散させることにより、主成分である水済
性合成ワックスの潤滑性を向上させることができ、プレ
ス加工時の割れを防ぐことができる。これらの高級脂肪
酸の金属塩には、ステアリン酸、パルミチン酸、ミステ
リン酸、ラウリン酸、アラキン酸、べへン酸、ミリスト
レイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール
酸、リノレン酸なとのソーダ塩、カリ塩その他の塩類が
挙げられる。
【0014】高級脂肪酸の金属塩の水溶性合成ワックス
に対する比率を5〜25%に規定する。5%以下ではプ
レス加工時の成形性が不足して割れの原因となり、25
%以上では脱脂性を劣化させ、その後の塗装工程での塗
装不良の原因となる。
【0015】アルミニウムパウダーは成形性の向上には
何ら効果がないが、合成ワックスに対して2〜20%の
アルミパウダーを添加することにより、潤滑皮膜に導電
性を与え、スポット溶接時に電極の損耗をふせぐ効果が
ある。また、アルミニウム材に対し、アルミニウムパウ
ダーを使用するため、溶接時にパウダーがアルミニウム
材に溶着しても同一金属であるため、腐食の原因とはな
りえない。アルミニウムパウダーは、2%以下では量が
少なすぎて溶接性の向上効果が得られず、電極の損耗及
び溶接不良の原因となり、20%以上では成形性に悪影
響を及ぼし、割れの原因となる。
【0016】アルミニウムパウダーの平均粒径を5μm
未満に規定する。平均粒径が5μm以上の場合、塗布す
るために水に溶解する際に沈澱してしまい、塗布時にム
ラとなって表面に偏析し、成形性及び溶接性を劣化させ
る原因になる。
【0017】高級脂肪酸の金属塩及びアルミパウダーは
通常水溶性の合成ワックスと混じりにくく、アルミニウ
ム材の表面に潤滑剤を塗布する際に、これらが偏析し、
皮膜の潤滑性・導電性を劣化させる。金属分散剤を徴量
添加することにより、水溶液の状態での潤滑剤中の高級
脂肪酸の金属塩及びアルミニウムパウダーと水溶性の合
成ワックスが均一に混じることになり、塗布時にこれら
が偏析することはなくなる。
【0018】金属分散剤としてはナフテン酸塩とカルシ
ウムセチルフェネートが挙げられる。金属分散剤の添加
量は、0.02%未満では添加効果が得られず、0.2
%を超えると、脱脂性が劣化するので好ましくない。従
って、金属分散剤の添加量は、主成分である水溶性のワ
ックスに対し0.02〜0.2%の範囲とする。
【0019】上記Al材の表面上の潤滑皮膜の塗布量が
2.0g/m2より多いと組み立て工程終了後の脱脂エ
程で脱脂不良がおこり、その後の塗装エ程での塗装不良
の原因となる。また、塗布量が0.2g/m2未満では
プレス加工時の成形性が不足し、割れの原因となる。従
って乾燥後の固形潤滑皮膜の塗布量は0.2〜2.0g
/m2に規定する。
【0020】成形材料であるAl材の材質等について
は、特に制限はなく、最終製品の要求により適宜の成分
及び組成のものを選択すれば良い。例えば、強度が高い
ものが必要な場合は、Al−高Mg(3〜6%)系が望
ましい。
【0021】
【実施例】以下、本発明の実施例について、その比較例
と比較して説明する。
【0022】実施例1 表1は実施例及び比較例の潤滑皮膜の組成を示す。下記
の試験に用いた試験片は、塗布・乾燥後の潤滑皮膜量が
1.0g/m2となるように固形潤滑剤の水溶液をバー
コーダ−で塗布し、恒温槽にて70℃で5分間保持して
乾燥させたものである。作成した試験片について板表面
に皮膜のムラと、アルミニウム粉の偏析が現れているか
否かを目視で調査し、良好なものについてはプレス加工
時の成形性、脱脂エ程における脱脂性、組立工程におけ
る溶接性、及び溶接部の耐食性を評価した。このとき用
いた供試材、供試潤滑剤及び評価方法を下記に示す。な
お、試験はn=3で行い、その平均値をとった。 A.供試材 JIS5182−O材、板厚lmmのものを使用した。 B.評価方法
【0023】(1)試験片の目視観察 潤滑剤を塗布した試験片を目視観察し、板表面に皮膜の
ムラと、アルミニウム粉の偏析が現れているか否かを調
査した。これらが現れているものについては塗布性不良
(×)と判断し、以下の試験は中止した。
【0024】(2)成形性 エリクセン試験機にて下記の角筒絞り成形試験を行い、
割れが生じるまでの最大成形高さにより評価した。
【0025】 ブランク径 □100mm、加工速度−20mm/分 シワ押さえ力 39.2kN ポンチ怪 口40mm、角頭(ポンチR4.5mm
ダイR3.0mm)
【0026】(3)脱脂性 ケイ酸ソーダ型アルカリ性脱脂液(PH=10.5 4
3℃±2℃)に2分間浸漬し、取り出して水洗した後の
水濡れ面積率にて評価した。
【0027】
【0028】(4)溶接性 スポット溶接時の連続打点性試験を行った。打点時の強
度はJISZ3136の試験法に基づき、強度が150
0N以下になったときまでの打点数で評価し、500点
以上で合格(○)とした。
【0029】(5)溶接部の耐食性試験 JISZ3136の試験法に基づきスポット溶接した試
験片を、100日間JISZ2371に基づいて塩水噴
霧試験を行った後、溶接部の剪断強度を測定し、その時
の強度が1500N以上で合格(○)とした。
【0030】成形性、脱脂性、溶接性の評価結果を下記
表2に示す。比較例である実験No.l0は脂肪酸の金
属塩の量が多すぎて脱脂性が劣り、比較例No.11は
少なすぎて成形性が悪くなる。比較例No.12はアル
ミパウダーの粒径が大きすぎるため、塗布時にムラをお
こし、比較例No.13はアルミパウダ−の量が多すぎ
て成形性及び脱脂性が劣り、比較例No.14は少なす
ぎて溶接性が悪くなる。比較例No.15は金属分散剤
が含まれてないため、試験片に塗装不良をおこした。比
較例No.16〜No.21は成分に問題があり、成形
性・脱脂性・接着性・溶接部の耐食性のいずれかが劣
る。これらに対し、本発明の実施例No.l〜9におい
ては、潤滑剤の成分及び配合比が適正であるため、成形
性・脱脂性・接着性・溶接部の耐食性が優れたものであ
った。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】実施例2 下記表3は、実施例及び比較例の塗布量であり、表3に
示すNo.1〜5に示すように塗布量を変化させたアル
ミニウム合金仮について成形性及び脱脂性を調査した。
下記の試験に用いた潤滑剤は、表1のNo.lと同じも
のを使用し、塗布量はバーコーダーにより調整した。試
験方法は実施例1の成形性及び脱脂性の評価方法と同様
である。
【0034】比較例であるNo.lは塗布量が少なすぎ
て成形性が劣り、比較例No.5は塗布量が多すきて脱
脂性が劣る。それに対し、本発明の実施例No.2〜4
においては、潤滑剤の塗布量が適正であるため、成形性
及び脱脂性が優れている。
【0035】
【表3】
【0036】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係るプレ
ス成形性及びスポット溶接性が優れたAl合金材によれ
ば、良好な成形性が得られ、従来プレス加工が困難であ
った形状でも成形が可能になると共に、プレス後の脱脂
性及び溶接性を向上させることができ、かつ潤滑剤が塗
布していない場合と同等の溶接部の耐食性を得ることが
でき、本発明はその適応範囲が拡大し、極めて有益であ
る。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Al又はAl合金基材の表面に、水溶性
    ワックス、このワックスに対して重量比で5〜25%の
    高級脂肪酸の金属塩、前記ワックスに対して重量比で2
    〜20%の平均粒径5μm以下のアルミニウムパウダ
    ー、及び前記ワックスに対して重量比で0.02〜0.
    2%の金属分散剤からなる混合物を、0.2〜2.0g
    /m2塗布して形成した皮膜を有することを特徴とする
    プレス成形性及びスポット溶接性が優れたAl材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009057512A (ja) * 2007-09-03 2009-03-19 Sumitomo Light Metal Ind Ltd アルミニウム用親水性潤滑塗料、及びそれを用いた被塗物
JP2019058923A (ja) * 2017-09-26 2019-04-18 東洋製罐グループホールディングス株式会社 アルミニウム容器の製造法

Cited By (2)

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JP2009057512A (ja) * 2007-09-03 2009-03-19 Sumitomo Light Metal Ind Ltd アルミニウム用親水性潤滑塗料、及びそれを用いた被塗物
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