JP2012087194A - 金属成形加工用潤滑剤、それを塗布した金属加工材、及び金属成形加工方法 - Google Patents

金属成形加工用潤滑剤、それを塗布した金属加工材、及び金属成形加工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高温の被塗物への塗装を行う際の付着性に優れ、金属成形加工を行う際に高温での潤滑性及び焼付き防止性能に優れ、加工時の破断、座屈、及び表面の疵を防ぐと共に、成形加工後は容易に除去することができる金属成形加工用潤滑剤、それを塗布した金属加工材、及び金属成形加工方法を提供する。
【解決手段】油性剤、3〜30%を含有し、残部がウレタン樹脂、分子量5000〜100000のアクリル樹脂のうち1種以上からなる可溶型水性樹脂よりなる潤滑剤。油性剤は、エーテルエステル型、アミノアルコール型の1種又は2種以上からなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属部材を成形加工する際に使用する潤滑剤、それを塗布した金属加工材、及び金属成形加工方法に関する。
近年、自動車部品等において、アルミニウム押出材あるいは抽伸材を用いたアルミニウム成形加工製品が採用されはじめている。アルミニウム押出材や抽伸材は、高精度の成形が可能であり、また得られる成形加工製品は軽量である。そのため、部品の軽量化と部品点数の削減によるコストダウンが可能となり、自動車部品等への適用が進行しつつある。
一般に、アルミニウム成形加工の良否は、アルミニウム押出材あるいは抽伸材が破断や座屈を起こさずに成形できるかどうか、加工部の肉厚分布の均一性や表面の擦り傷発生状況(カジリ発生状況)等により評価される。
したがって、アルミニウム押出材あるいは抽伸材の加工性に加えて、金型と接触する材料表面の潤滑特性が成形加工の重要な要素となる。
特に、アルミニウム又はアルミニウム合金(以下、アルミニウム合金)は、鋼に比較して一般的に延性が低いため、成形加工を行う場合にはより良好な潤滑特性が要求される。
高成形性については、アルミニウム合金成分及びプロセス条件の見直し等による、材料特性からの改善には限界がある。
そこで、アルミニウム成形加工に供する潤滑油の粘度の向上、油性を強くする、あるいは潤滑油量を増やすという方法がある。
特開2002−363591号公報 特許3872969号
しかしながら、潤滑油の粘度の向上や、油性を強めると、成形後の潤滑油の除去がし難くなる。その結果として、次工程での洗浄を強める必要があり、製造コストの増大や洗浄時間が長くなる等の問題が生じ、生産効率を悪化させる。
また、高温の被塗物への塗装を行う際には、沸騰膜を形成しやすくなり、潤滑油の塗布が困難になる等の問題がある。
また、アルミニウム押出材あるいは抽伸材をポリエチレンなどの樹脂フィルムで被覆し、潤滑特性を向上させる方法もあるが、成形に伴う変形によりフィルムの皺が金属管に転写されるという問題があり、加工後に表面に表面研磨工程を追加する等、生産効率を悪化するという問題がある。
このような問題は、アルミニウム合金に限らず、銅等の他の金属を成形加工する場合においても問題となる。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、高温での金属成形加工を行う際に、潤滑性及び焼付き防止性能に優れ、加工時の破断、座屈、及び表面の疵を防ぐと共に、成形加工後は容易に除去することができる金属成形加工用潤滑剤、それを塗布した金属加工材、及び金属成形加工方法を提供しようとするものである。
第1の発明は、油性剤を3〜30%含有し、残部がウレタン樹脂、分子量5000〜100000のアクリル樹脂のうち1種又は2種以上からなる可溶型水性樹脂よりなる潤滑剤であって、上記油性剤は、アミノアルコール型もしくはエーテル−エステル型の1種又は2種からなり、200℃での動摩擦係数が0.15以下であり、金属加工材の表面に塗布し乾燥することによって潤滑皮膜となり、さらにpH5〜12の水溶液に接することにより上記潤滑皮膜が上記金属加工材より除去可能であることを特徴とする金属加工用潤滑剤である。(請求項1)。
本発明の金属成形加工用潤滑剤は、例えば、押出しあるいは抽伸を行った金属加工材に成形加工を施す際に、上記金属加工材の外面に潤滑皮膜を形成するためのものである。
上記金属成形加工用潤滑剤は、特定の組成を有し、かつ、高温での動摩擦係数を規定することにより、金属成形加工を行う際に、たとえば、絞り加工といった強度の加工を行い、金属加工材の温度が上昇しても、潤滑性及び焼付き防止性能に優れ、加工時の破断、座屈、及び表面の疵を防ぐと共に、成形加工後は容易に除去することができる。
上記金属加工用潤滑剤は、油性剤として、アミノアルコール系、エーテル−エステル系のうち、1種又は2種からなる油性剤を3〜30%含有する。これにより、高潤滑性を有することができる。そのため、これを用いて金属加工材に潤滑皮膜を形成すると、該材料表面に安定した高潤滑性を付与することができる。それ故、高温での成形加工時においても、優れた潤滑性で、破断、座屈、表面の疵等の不良を抑制することができ、歩留まりを向上することができる。
上記油性剤の含有量が3%未満の場合には、成形加工を行うための十分な潤滑性を得ることができず、成形加工の際に、材料の破断、座屈、疵を生じさせるおそれがある。一方、上記油性剤の含有量が30%を超える場合には、常温において乾燥皮膜を形成できなくなる、または、油脂性物質が過剰となり、可溶型水性樹脂による脱膜性が十分に得られず、成形加工後にpH5〜12の水溶液と接触させた際に、潤滑皮膜の除去を行うことが容易ではなくなるという問題がある。
アミノアルコール系油性剤としては、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンなどがあげられる。中でも、N−メチルエタノールアミンが、Nの孤立電子対でのアルミニウム表面への吸着が強固であり、より高温での加工性が良好である。
エーテル−エステル系油性剤としては、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノイソステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンソルビット・ソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレンラウリルエーテル、イソステアリン酸ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ステアリン酸ポリオキシエチレンセチルエーテル、ステアリン酸ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリオレイン酸ポリオキシエチレングリセリル、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ジイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ポリオキシエチレントリミリスチン酸トリメチロールプロパン、ポリオキシエチレンジステアリン酸トリメチロールプロパン、ポリオキシエチレントリステアリン酸トリメチロールプロパン、ポリオキシエチレンイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ラウリン酸ポリオキシエチレン硬化ひまし油、イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ジイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ひまし油、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ひまし油などが挙げられる。
また、本発明の金属加工用潤滑剤は、残部がウレタン樹脂、分子量5000〜100000のアクリル樹脂のうち1種又は2種以上からなる可溶型水性樹脂よりなる。すなわち、上記可溶型水性樹脂の含有量は70〜97%である。
上記可溶型水性樹脂としては、水に溶解するあるいは乳化分散するウレタン樹脂、及び分子量5000〜100000のアクリル樹脂であれば多種のものを用いることができる。
可溶型水性樹脂の含有量が70%未満の場合には、pH5〜12の水溶液と接触した際に、上述の可溶型水性樹脂の効果を十分に得ることができず、除去され難くなるという問題がある。一方、可溶型水性樹脂の含有量が97%を超える場合には、潤滑性が得られず、成形の際に、材料の破断、座屈、疵を生じさせるおそれがある。
また、上記ウレタン系樹脂としては、例えば、ポリエーテル系ウレタン樹脂、無黄変性ポリエーテル系ウレタン樹脂、芳香族イソシアネート系エーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、無黄変性ポリエステル系ウレタン樹脂、芳香族イソシアネート系エステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル・ポリエステル系ウレタン樹脂、無黄変性ポリエーテル・ポリエステル系ウレタン樹脂等が挙げられる。
アクリル樹脂の分子量が5000未満の場合には、潤滑性を満足することができないおそれがあり、一方、アクリル樹脂の分子量が100000を超える場合には、成型加工後にpH5〜12の水溶液と接触した際に除去され難くなるおそれがある。
上記アクリル樹脂は、主としてアクリル酸やメタクリル酸の誘導体を主成分とする樹脂であり、代表的なものは、アクリル酸、アクリル酸エステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル等の単独重合体、あるいは共重合体である。
上記アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸nブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸2ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
上記メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸nブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸nヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
なお、上記可溶型水性樹脂としてウレタン樹脂を用いる場合には、いかなる分子量であってもよい。
また、上記可溶型水性樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。
このように、本発明によれば、金属成形加工を行う際に、潤滑性及び焼付き防止性能に優れ、加工時の破断、座屈、及び表面の疵を防ぐと共に、成形加工後は容易に除去することができる潤滑皮膜を有する金属加工材を提供することができる。
第1の発明の金属成形加工用潤滑剤は、上述したように、アミノアルコール系もしくはエーテルエステル系油性剤を3〜30%含有する。
また、上記金属加工材の上記金属成形加工用潤滑剤には界面活性剤、極圧剤、及び固形潤滑剤から選ばれる1種以上を含むことが好ましい(請求項2)。
上記潤滑皮膜は、このような潤滑剤を塗布していなくても高い潤滑性を発揮することができるが、この場合には、上記潤滑皮膜の潤滑性を更に向上することができ、極めて過酷な成形にも適用することができる。さらに上述の界面活性剤を、0.01〜3%含有することにより、上記金属成形加工用潤滑剤の表面張力を低下させることができ、高温の被塗物に対しても濡れ性をより向上させることができる。そのため、沸騰膜が形成されにくく、溶媒の蒸発が促進されることで、高温の被塗物への上記潤滑剤の塗布が可能となる。
上記界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸ナトリウム塩、パーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。
また、上記極圧剤としては、例えば、塩素系、硫黄系、及びリン酸系等が挙げられる。塩素系極圧剤としては、塩素化パラフィン、メチルトリクロロステアレート等が挙げられる。硫黄系極圧剤としては、ジベンジルジサルファイド、アルキルポリサルファイド、オレフィンポリサルファイド、ザンチックサルファイド、硫化油脂、硫化エステル等が挙げられる。リン系極圧剤としては、トリクレジルホスフェート(TCP)、ラウリルアシッドホスフェート、トリブチルホスファイト、ジラウリルホスファイト、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリルジチオリン酸亜鉛、リン酸エステルのアミン塩、ジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛が挙げられる。作業環境の観点から、上記極圧剤としては、硫黄系、リン酸系を用いることが好ましい。
上記ワックスとしては、カルナウバワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの、融点が45℃から110℃であるワックスが上げられる。融点が45℃未満の場合には、夏場気温が高くなるとワックスが溶融するため、材料表面がべとつきハンドリングが悪くなり、また、潤滑性が悪くなるという問題がある。
また、融点が110℃を超えると、試料作製が極めて困難であり、pH5〜12の水溶液に接触した場合の除去性が悪くなる。
また、上記ワックスは、少量でも含有していれば、潤滑性向上効果を得ることができる。上記ワックス含有量が20%を超える場合には、油脂性物質が過剰となり、成型加工後に、pH5〜12の水溶液と接触した際に皮膜の除去が困難となる。
上記固形潤滑剤としては、例えば、金属石けん及びグリース等が挙げられる。
また、成形加工後に加工材表面に残存した潤滑剤とpH5〜12の水溶液とを接触させると、上記界面活性剤が上記洗浄液と乳化すると同時に、残存した潤滑剤も溶解し易くなる。そのため、上記潤滑剤を用いて金属材料の表面に形成された潤滑皮膜を除去する場合には、上述の界面活性剤の働きにより、上記金属材料から上記潤滑皮膜を容易に乳化分離することができ、容易に潤滑皮膜の除去を行うことができる。
そして、このように、上記材料表面は、優れた脱膜性を有する潤滑皮膜により高潤滑性を確保することができるため、別途潤滑剤を準備したり、その洗浄を行う必要がなく、低コスト化、環境改善の点で優れている。
また、上記成形加工品は、潤滑皮膜を除去した後には、レーザー加工、焼鈍を行うこともできる。
また、上記金属成形加工用潤滑剤は、アルミニウム合金、鋼、銅等の成形加工に適用することができるが、より好ましくは、アルミニウム合金からなるアルミニウム合金管の成形加工に適用することが好ましい。
鋼管と比較して一般的に延性が低い上記アルミニウム合金管であっても、効果的に、優れた潤滑性及び焼付き防止性能を有し、加工時の破断、座屈、及び表面の疵を防ぐことができる。
なお、本発明の金属成形加工用潤滑剤は、高温での加工性に優れるものであるが、低温での加工に対しても、優れた加工性を発揮することができる。
第2の発明の金属加工材は、上述したように、押出しあるいは抽伸を行った金属加工材の外面に、請求項1または2に記載の金属成形加工用潤滑剤を用いた、膜厚0.4〜1000μmの潤滑皮膜が形成されている。(請求項3)
上記潤滑皮膜の膜厚が0.4μm未満の場合には、金属加工材の表面粗さのために上記潤滑皮膜を均一に成形することができないという問題がある。一方、上記膜厚が1000μmを超える場合には、潤滑皮膜を除去し難くなるという問題があり、また、金型への樹脂粉やワックス成分の堆積が増加するという問題がある。
また、上記金属加工材と上記潤滑皮膜との間には、下地処理層が形成されていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記金属加工材と上記潤滑皮膜との密着性が向上し、成形加工時の成形性をより高めることができると共に、疵防止効果を得ることができる。
上記下地処理層としては、例えば、リン酸クロメート、クロム酸クロメート等のクロム処理、また、クロム化合物以外のリン酸チタン、リン酸ジルコニウム、リン酸モリブデン、リン酸亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム等によるノンクロメート処理等の化学皮膜処理(化成処理)により得られる皮膜が挙げられる。
上記化学皮膜処理方法には、反応型及び塗布型等があるが、本発明においては、いずれの手法が採用されてもよい。
また、押出直後あるいは抽伸直後の材料温度が80〜200℃の状態で、上記潤滑剤の1〜50vol%水溶液を、スプレー塗装により塗布し、材料の余熱で該水溶液中を乾燥させてなる潤滑皮膜が形成されていることが好ましい(請求項5)。
材料温度が80℃未満の場合には、十分な乾燥ができず、潤滑皮膜が形成される前に、材料同士、又は装置構造物との接触等にすることにより、潤滑剤が剥離または不均一となるおそれがある。一方、材料温度が200℃を超える場合には、媒体となっている水が沸騰膜を作ることにより、潤滑剤が付着せず、付着効率が低下するとともに、不均一となるおそれがある。
潤滑剤の水溶液が1vol%未満の場合には、乾燥前に流れ落ちてしまい付着量が不足し、潤滑不良の原因となる。一方、潤滑剤の水溶液が50vol%超えの水溶液の場合には、粘度が高くなりスプレーが困難になるとともに、潤滑皮膜の膜厚が不均一となり十分な潤滑が得られない原因となる。
潤滑剤の塗布をスプレー塗装とする理由としては、押出後の高温物質へ、ロールや刷毛等で直接塗装をする場合は、ロールや刷毛の耐熱性が必要であること、また、様々な押出材の形状や寸法に対応するためには、非接触法での塗装が望ましいことがある。そして、非接触の塗装として、静電塗装方法も考えられるが、これは高価な設備が必要である。そのため、スプレー(一流体または二流体)塗装が最も安価で均一性が得られ、好ましい。
第3の発明は、第2の発明の金属加工材を成形加工した後に、潤滑皮膜を洗浄する洗浄工程を有することを特徴とする金属成形加工方法にある(請求項6)。
上記金属加工材の成形加工としては、例えば、抽伸加工、押出し加工、鍛造加工、プレス加工等が挙げられる。
上記金属成形加工方法における上記洗浄工程は、pH5〜12の水溶液に接触させることにより上記潤滑皮膜を上記金属加工材から除去する。
上記水溶液がpH5未満の場合には、上記潤滑皮膜を除去するのに必要な時間が長くなるおそれがある。一方、上記水溶液がpH12を超える場合には、上記潤滑皮膜が除去された後の金属管の表面が必要以上に溶解するおそれがある。
pH5〜12のアルカリ水溶液に接触させて上記潤滑皮膜を除去する方法としては、例えば、上記成形加工品をpH5〜12の水溶液に浸漬した後、水洗いを行う方法等がある。
(実施例1)
本例は、本発明の実施例にかかる金属成型加工用潤滑剤、及びそれを塗布した金属加工材について説明するが、本発明はこれらの実施例によってのみ限定されるものではない。
本例では、本発明の実施例として28種類の試料(試料E1〜試料E28)を作製し、比較例として4種類の試料(試料C1〜試料C4)を作製し、それらの特性を評価した。
各試料を作製するに当たっては、まず、基材として、調質がH24、厚さ2mmの住友軽金属製A1050アルミニウム板材(付着性、脱膜性評価用)と、調質がO、外形30.6mm×肉厚1.5mm×長さ170mmのAA
7021よりなる押出材(成形性評価用)の2種類の基材を準備した。
そして、上記基材に、アセトンを用いて脱脂処理を施した。
次に、上記脱脂処理後の上記基材を80℃に加熱し、該基材に対して、所定の金属成形加工用潤滑剤(10vol%水溶液)を塗布し、150℃の温度で2分間乾燥することにより潤滑皮膜を形成し、各試料を得た。上記潤滑剤の塗布は、アルミニウム板材にはバーコート法、押出材にはスプレー法により行った。
上記金属成形加工用潤滑剤は、ワックス、界面活性剤、及び可溶型水性樹脂を用い、これらの種類・含有量を調整して作製した。表1及び表2に、各試料の潤滑皮膜の形成に用いた潤滑剤の組成、及び潤滑皮膜の膜厚を示す。
Figure 2012087194
Figure 2012087194
表1より知られるごとく、実施例としての試料E1〜試料E17は、油性剤を3〜30%含有し、残部がウレタン樹脂、分子量5000〜100000のアクリル樹脂のうち1種又は2種以上からなる可溶型水性樹脂よりなる潤滑皮膜が形成されている。また、試料E18〜試料E26はさらに界面活性剤、ワックスまたは極圧剤から選ばれる1種以上を含む潤滑剤からなる潤滑皮膜が形成されている。試料E27、E28は、下地皮膜の上に潤滑皮膜が形成されている。
そして、各試料について、潤滑性、成形性及び脱膜性についての評価を実施した。結果を表3に示す。
<潤滑性>
上記塗装後のアルミニウム板材を用いて、バウデンーレーベン試験装置により摩擦係数を測定した。荷重は3kgとし、鋼球はSUJ2(3/16インチ)を用いた。摺動距離は20mmとし、摺動回数は5回とし、5回目の摩擦係数を測定した。温度は、25℃、200℃、250℃とし、250℃での摩擦係数が0.15以下のものを◎、200℃での摩擦係数が0.15以下のものを○とし、200℃での摩擦係数が0.15を超えるものをを×とした。◎と○を合格とした。
<成形性>
成形性は、外径:幅380mm×奥行き200mm×高さ235mm、内径寸法:内径30.7mmの金型を使用し、基材としてAA 7021を用いて作製した試料に対して、内圧力:40MPa、軸押し量:両サイド各40mm(合計80mm)、パンチ速度:5mm/sにて、成形加工を施し、図1に示す、母管部2(外径30.6mm)と母管部2の中央に形成された隆起部3(外径30.6mm)とからなる成形品1を成形した。
成形できる隆起部3の母管部2の管表面から頂点35までの高さHの評価を実施し、高さHが5mm以上の場合を合格(評価○)、高さHが5mm未満を不合格(評価×)とした。
<脱膜性>
脱膜性は、100mm×50mmとしたアルミニウム板材を幅方向の中心で90°に曲げ、マグネチックスターラーで攪拌したアルカリ溶液(水酸化ナトリウム水溶液、pH9.5、液温60℃)中に20秒間浸漬した後、水洗いを行い、乾燥後の潤滑皮膜残存の有無を目視にて確認し評価を行った。潤滑皮膜残存が確認されなかったものを合格(評価○)とし、潤滑皮膜残存が確認されたものを不合格(評価×)とした。
<付着性>
付着性は、アルカリ洗浄したアルミニウム板材を200℃に加熱し、アルミニウム板材に対して潤滑剤のスプレー塗装を0.1秒間行った後の外観および付着量により評価を行った。付着量は1g/m2を超え、外観は均一なものを良好○とした。
Figure 2012087194
表3より知られるごとく、試料E1〜試料E28は、200℃までの潤滑性、成形性、脱膜性及び付着性のいずれの評価項目においても良好な結果を示した。
このように、本発明による潤滑剤は、低温だけでなく、高温での金属成形加工を行う際に、潤滑性及び焼付き防止性能に優れ、加工時の破断、座屈、及び表面の疵を防ぐと共に、成形加工後は容易に除去することができることが分かる。
また、比較例としての試料C1は、油性剤の含有量が本発明の下限を下回るため、潤滑性が不足し、成形性が不合格であった。
また、比較例としての試料C2は、金属成形加工用潤滑剤における油性剤の含有量が本発明の上限を上回るため、油脂性物質が過剰となり、可溶型水性樹脂や界面活性剤による脱膜性が十分に得られず、脱膜性が不合格であった。
また、比較例としての試料C3は、金属成形加工用潤滑剤におけるアクリル樹脂の分子量が本発明の下限を下回るため、成形性を満足できず、不合格であった。
また、比較例としての試料C4は、金属成形加工用潤滑剤におけるアクリル樹脂の分子量が本発明の上限を上回るため、脱膜性が低く、不合格であった。
(実施例2)
本例では、上記実施例1において試料E4を作製する際に用いた金属成形加工用潤滑剤について、1vol%水溶液、及び50vol%水溶液を用意し、表5に示す試料E29、及び試料E30を作製した。
各試料を作製するに当たっては、実施例1と同様に、基材として、調質がH24、厚さ2mmの住友軽金属製A1050アルミニウム板材(付着性、脱膜性評価用)と、調質がO、外形30.6mm×肉厚1.5mm×長さ170mmのAA
7021よりなる押出材(成形性評価用)の2種類の基材を準備した。
そして、上記基材に、アセトンを用いて脱脂処理を施した。
次に、上記脱脂処理後の上記基材を80℃に加熱し、該基材に対して、上記実施例1において試料E4の作製に用いた金属成形加工用潤滑剤の1vol%水溶液、及び50vol%水溶液をそれぞれ塗布し、150℃の温度で2分間乾燥することにより潤滑皮膜を形成し、各試料を得た。上記潤滑剤の塗布は、アルミニウム板材にはバーコート法、押出材にはスプレー法により行った。
表4に、各試料の潤滑皮膜の形成に用いた潤滑剤の組成、水溶液の濃度、及び潤滑皮膜の膜厚を示す。
Figure 2012087194
そして、得られた試料E29、及び試料E30について、実施例1と同様の方法で成形性及び脱膜性を評価し、また、用いた金属成形加工用潤滑剤の水溶液の潤滑性についての評価を実施した。結果を表5に示す。
Figure 2012087194
表5より、本発明の金属成形加工用潤滑剤の1〜50vol%水溶液は、低温だけでなく高温での加工性が優れていることがわかる。また、金属成形加工用潤滑剤の1〜50vol%水溶液を塗布することにより形成された潤滑皮膜を有する金属加工材は、金属成形加工を行う際に潤滑性及び焼付き防止性能に優れ、加工時の破断、座屈、及び表面の疵を防ぐと共に、成形加工後は容易に除去することができることがわかる。
実施例における、成形品を示す説明図。
1 成形品
2 母管部
3 隆起部
35 頂点


Claims (6)

  1. 油性剤を3〜30%含有し、残部がウレタン樹脂、分子量5000〜100000のアクリル樹脂のうち1種又は2種以上からなる可溶型水性樹脂よりなる潤滑剤であって、上記油性剤は、アミノアルコール型もしくはエーテル−エステル型の1種又は2種以上からなり、200℃での動摩擦係数が0.15以下であり、金属加工材の表面に塗布し乾燥することによって潤滑皮膜となり、さらにpH5〜12の水溶液に接触させることにより上記潤滑皮膜を上記金属加工材から除去可能であることを特徴とする金属成形加工用潤滑剤。
  2. 請求項1において、界面活性剤、極圧剤、ワックス及び固形潤滑剤から選ばれる1種以上を含む金属加工用潤滑剤。
  3. 押出しあるいは抽伸を行った金属加工材の外面に、請求項1または2に記載の金属成形加工用潤滑剤を用いた、膜厚0.4〜1000μmの潤滑皮膜が形成されていることを特徴とする金属加工材。
  4. 請求項3において、上記金属加工材と上記潤滑皮膜との間には、下地処理層が形成されていることを特徴とする金属加工材。
  5. 請求項3および4のいずれか1項において、押出直後あるいは抽伸直後の材料温度が80〜200℃の状態で、上記潤滑剤の1〜50vol%水溶液を、スプレー塗装により塗布し、材料の余熱で該水溶液中を乾燥させてなる潤滑皮膜が形成されていることを特徴とする金属加工材。
  6. 請求項3〜5のいずれか1項に記載の金属加工材を成形加工した後に、潤滑皮膜をpH5〜12の水溶液に接触させることにより、上記金属加工材から除去することを特徴とする金属成形加工方法。



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