JP4896589B2 - プレコートアルミニウム合金板及びプレス成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、プレス成形に供する潤滑油の粘度の向上、油性を強くする、あるいは潤滑油量を増やすという方法がある。しかしながら、潤滑油の粘度を高めたり、油性を強めると、現在の塗油方法では塗油ができなくなったり、成形後の油の除去を困難にし、結果として、油を除去するための洗浄剤の洗浄性を強める、または長時間化する必要があり、製造コストの増大や、生産効率の悪化につながる。
なお、潤滑性を高めたアルミニウム合金板としては、例えば、固体潤滑材を塗布したものがある(特許文献1)。
上記有機樹脂皮膜は、pH8以上のアルカリ水溶液に接触させることによって上記基板から除去可能であると共に、カルナウバを含有してなり、
上記有機樹脂皮膜における上記カルナウバの含有量は、30重量%超え60重量%以下であり、
上記有機樹脂皮膜を構成する有機樹脂は、分子量20000〜100000のアクリル樹脂、分子量800〜35000のポリアルキレングリコール、又はウレタン樹脂であり、
上記有機樹脂皮膜の厚みは、0.1μm〜30μmであることを特徴とするプレコートアルミニウム合金板にある(請求項1)。
加工穴を有するダイスと、上記加工穴に挿入可能なパンチとを用い、上記第1の発明のプレコートアルミニウム合金板の上記有機樹脂皮膜が形成された面を上記ダイス側に位置させてプレス加工することによりプレス成形品を成形するプレス工程と、
上記プレス成形品をpH8以上のアルカリ水溶液と接触させて上記基板から上記有機樹脂皮膜を除去する脱膜工程とを有することを特徴とするプレス成形品の製造方法にある(請求項10)。
膜厚が0.1μm未満の場合には、アルミニウム合金板の表面の粗さのために皮膜を均一に被覆することができない。また、30μmを超える場合には、膜形成が困難になり、また、脱膜性が劣るという問題がある。また、摩擦攪拌スポット接合の接合強度を低下させることになる。
この場合には、工業製品として入手が容易であり、かつ比較的脱膜工程のコストが低くなるという効果が得られる。
そして、上記アルカリ水溶液は、これらのナトリウム塩のうち1種または2種以上を含有する水溶液からなり、上記ナトリウム塩は、複数種含有することができる。
上記アルカリ水溶液がpH9未満の場合には、有機皮膜を除去するのに必要な時間が長くなるおそれがあり、一方pH12を超える場合には、有機皮膜が除去された後のアルミニウム合金板表面が必要以上に溶解し、脱膜後の板表面が不均一となることから、その後の化成処理性やさらには塗装後耐食性も低下させる原因となる。
この場合には、効率よく脱膜工程を実施することができる。上記接触時間が5秒未満の場合には、脱膜が不十分になり、部分的に有機皮膜が残存する可能性がある。一方、接触時間が5分を超える場合には、脱膜工程で作業効率が低下するおそれがある。また、脱膜工程の効率化の観点から、より好ましくは、5秒以上90秒以内がよい。
この場合には、連続したプレス成形時の、金型への樹脂粉やワックス成分の堆積が抑制されるという効果が得られる。
ポリアルキレングリコールの場合には、分子量が800未満の場合には、常態で固体皮膜を形成することが困難であり、また、35000を超える場合には、塗装や脱膜をし難くなるという問題がある。
ウレタン樹脂の場合には、いかなる分子量でもよい。
このような潤滑剤を塗布していなくても、上記のカルナウバを含有する有機樹脂皮膜によって高い潤滑性が得られるが、上記の潤滑性を塗布した場合には、有機樹脂皮膜の潤滑性を更に向上することができ、極めて過酷な成形にも適用することができる。
また、極圧剤としては、例えば、塩素系、硫黄系、及びリン系等がある。環境の観点から、硫黄系、リン系がより好ましい。
固形潤滑剤としては、例えば、金属石鹸及びグリース等がある。
また、使用環境に応じて、金属に影響を及ぼす油であれば、いかなるものでもよい。
この場合には、さらに潤滑性を向上することができ、非常に難易度の高い形状へのプレス成形を可能とすることができる。
この場合には、成形時の耐傷つき性が向上し、プレス成形されるまでのハンドリング傷が抑えられ、歩留まりの向上に効果がある。
上記粒径が上記有機樹脂皮膜の1倍未満になる場合には、皮膜から樹脂ビーズが頭を出さず効果が小さくなる。また、3倍を超える場合には、皮膜がビーズをトラップし難くなり、樹脂ビーズが脱落しやすくなるというおそれがある。
この場合には、有機樹脂皮膜と基板の密着性が向上し、有機樹脂皮膜の成形性がより高まり、傷防止効果をさらに高めることができる。
上記化学皮膜処理方法には、反応型及び塗布型等があるが、本発明においては、いずれの手法が採用されてもよい。
本例では、本発明の実施例及び比較例として複数種類の試料(プレコートアルミニウム合金板)を作製しその特性を評価した。
また、上記基板に酸性溶液による洗浄を施した。
また、各塗膜の作製にあたっては、樹脂として、アクリル樹脂(AC)、ポリアルキレングリコール(AG)、及びウレタン樹脂(UR)を用い、潤滑剤として、オレイン酸(OA)、オレイン酸メチル(OAM)、トリクレジルフォスフェート(TCP)、及びステアリン酸カルシウム(STCa)を用い、樹脂ビーズとして、ポリテトラフルオロエチレンを用いた。
これらのカルナウバ、有機樹脂、パラフィン、ポリエチレン、樹脂ビーズ、及び潤滑剤を表1〜表3に示す配合割合で混合し、塗膜を形成した。なお、形成された塗膜は表1〜表3に示す。
<成形性>
円筒ポンチの油圧深絞り成形試験機を用いて成形した。試料が破断せずに成形できる最大高さの評価を実施した。評価が◎及び○を合格とし、×を不合格とした。
(加工条件)
ブランク径:φ110mm、ポンチ径:φ50mm、ポンチコーナー:5R、しわ押さえ荷重:10kN、成形速度:100mm/min。
(評価基準)
◎:14mm以上、○:12mm以上14mm未満、×:12mm未満
150mm×70mmの供試材を、マグネチックスターラーで攪拌したアルカリ水溶液(炭酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム水溶液、液温40℃)中に浸漬した後、水洗いを行い、乾燥後の皮膜残存の有無を目視にて確認し、浸漬時間を評価した。評価が◎及び○を合格とし、×を不合格とした。
(評価基準)
◎:1.5分未満、○:1.5分以上5分以下、×:5分超え
各塗装板を3500rpmの攪拌速度で摩擦攪拌スポット接合し、引っ張り試験によるせん断強度を測定し、摩擦攪拌スポット接合性を評価した。評価が◎及び○を合格とし、×を不合格とした。
(評価基準)
◎:2.0kN以上、○:1.45kN以上2.0kN未満、×:1.45kN未満
評価の結果は、表4及び表5に示すとおりである。
また、本発明の比較例としての試料C2は、有機樹脂皮膜の厚みが本発明の上限を上回るため、摩擦攪拌スポット接合性及び脱膜性が不合格であった。
また、本発明の比較例としての試料C4は、カルナウバの含有量が本発明の上限を上回るため、脱膜性が不合格であった。
Claims (10)
- アルミニウム合金板よりなる基板と、該基板の少なくとも一方の面を被覆する有機樹脂皮膜とからなり、プレス加工後に上記有機樹脂皮膜を除去するプレコートアルミニウム合金板において、
上記有機樹脂皮膜は、pH8以上のアルカリ水溶液に接触させることによって上記基板から除去可能であると共に、カルナウバを含有してなり、
上記有機樹脂皮膜における上記カルナウバの含有量は、30重量%超え60重量%以下であり、
上記有機樹脂皮膜を構成する有機樹脂は、分子量20000〜100000のアクリル樹脂、分子量800〜35000のポリアルキレングリコール、又はウレタン樹脂であり、
上記有機樹脂皮膜の厚みは、0.1μm〜30μmであることを特徴とするプレコートアルミニウム合金板。 - 請求項1において、上記アルカリ水溶液はナトリウム塩を含有する水溶液であることを特徴とするプレコートアルミニウム合金板。
- 請求項1又は2において、上記有機樹脂皮膜は、上記アルカリ水溶液との接触時間5秒以上5分以下において上記基板から除去可能であることを特徴とするプレコートアルミニウム合金板。
- 請求項1〜3のいずれか一項において、上記有機樹脂皮膜の膜厚は、10μm以下であることを特徴とするプレコートアルミニウム合金板。
- 請求項1〜4のいずれか一項において、上記有機樹脂皮膜の表面には、油性剤、極圧剤、及び固形潤滑剤から選ばれる1種以上を含む潤滑剤が塗布されていることを特徴とするプレコートアルミニウム合金板。
- 請求項1〜5のいずれか一項において、上記有機樹脂皮膜には、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスの1種あるいは2種が、上記有機樹脂皮膜100重量部に対して、50重量部以下含有されていることを特徴とするプレコートアルミニウム合金板。
- 請求項1〜6のいずれか一項において、上記有機樹脂皮膜には、1〜120μmの範囲内の粒径であって、かつ上記有機樹脂皮膜の厚みの1〜3倍の粒径を有する樹脂ビーズが、上記有機樹脂100重量部に対して1〜100重量部含有されていることを特徴とするプレコートアルミニウム合金板。
- 請求項1〜7のいずれか一項において、上記基盤の表面には、上記有機樹脂皮膜と上記基板との密着性を向上させる下地処理層が形成されていることを特徴とするプレコートアルミニウム合金板。
- アルミニウム合金板のプレス成形品を製造する方法において、
加工穴を有するダイスと、上記加工穴に挿入可能なパンチとを用い、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプレコートアルミニウム合金板の上記有機樹脂皮膜が形成された面を上記ダイス側に位置させてプレス加工することによりプレス成形品を成形するプレス工程と、
上記プレス成形品をpH8以上のアルカリ水溶液と接触させて上記基板から上記有機樹脂皮膜を除去する脱膜工程とを有することを特徴とするプレス成形品の製造方法。 - 請求項9において、上記プレス工程後、他のアルミニウム合金部品と上記プレス成形品とを摩擦攪拌スポット接合によって接合する接合工程を行った後、上記脱膜工程を行うことを特徴とするプレス成形品の製造方法。
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