JP2008289851A - 超音波診断装置 - Google Patents

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【課題】連続波を利用して目的の位置からドプラ情報を取得する。
【解決手段】FM変調処理が施されたFM連続波に対応する送信波が送信用振動子10から送波される。前置増幅器16は、受信RF信号を形成して受信ミキサ30へ出力する。受信ミキサ30は受信RF信号に対して直交検波を施して複素信号を生成する。受信ミキサ30の各ミキサに供給される参照信号は、FM変調器20から出力されるFM連続波に基づいて生成される。FM変調器20から出力されるFM連続波は、遅延回路25において遅延処理され、一方の信号がミキサ32へ直接的に供給され、他方の信号がπ/2シフト回路26を経由してミキサ34へ供給される。遅延回路25は、FM連続波に対して、生体内の目標位置の深さに応じた遅延処理を施す。これにより、ドプラ情報解析部44において、目標位置からのドプラ情報が選択的に抽出される。
【選択図】図1

Description

本発明は、超音波診断装置に関し、特に、変調された連続波を利用する超音波診断装置に関する。
超音波診断装置の連続波を利用した技術として、連続波ドプラが知られている。連続波ドプラでは、例えば、数MHzの正弦波として構成される送信波が生体内へ連続的に放射され、生体内からの反射波が連続的に受波される。反射波には、生体内における運動体(例えば血流)によるドプラシフト情報が含まれる。そこで、そのドプラシフト情報を抽出して周波数解析することにより、運動体の速度情報を反映させたドプラ波形などを形成することができる。
連続波を利用した連続波ドプラは、パルス波を利用したパルスドプラに比べて一般に高速の速度計測の面で優れている。こうした事情などから、本願発明者は、連続波ドプラに関する研究を重ねてきた。その成果の一つとして、特許文献1において、周波数変調処理を施した連続波ドプラ(FMCWドプラ)に関する技術を提案している。
一方、連続波ドプラでは、連続波を利用していることにより位置計測が困難である。例えば、従来の一般的な連続波ドプラの装置(FMCWドプラを利用しない装置)では、位置計測を行うことができなかった。これに対し、本願発明者は、特許文献2において、FMCWドプラにより生体内組織の速度に加えて生体内組織の位置を計測することができる技術を提案している。
特開2005−253949号公報 特開2006−14916号公報
特許文献1や特許文献2に記載されたFMCWドプラの技術は、それまでにない超音波診断の可能性を秘めた画期的な技術である。本願発明者は、この画期的な技術の改良についてさらに研究を重ねてきた。
本発明は、このような背景において成されたものであり、その目的は、連続波を利用して目的の位置からドプラ情報を取得する技術を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の好適な態様である超音波診断装置は、周波数を周期的に変化させる連続波の変調送信信号を出力する送信信号処理部と、変調送信信号に基づいて超音波を生体に送波して生体からの反射波を受波することにより受信信号を得る送受波部と、実質的に変調送信信号に等しい波形の参照信号を用いて受信信号に対して復調処理を施すことにより復調信号を得る受信信号処理部と、復調信号からドプラ情報を抽出するドプラ情報抽出部と、を有し、生体内の目標位置の深さに応じた遅延処理を施して参照信号と受信信号との間の遅延関係を調整して復調処理を施すことにより、目標位置からのドプラ情報を選択的に抽出することを特徴とする。
上記態様では、参照信号を用いて受信信号に対して復調処理を施しているため、参照信号との相関が比較的大きい信号成分を含んだ復調信号を得ることができる。そして、その復調処理にあたり、目標位置の深さに応じて参照信号と受信信号との間の遅延関係(時間軸方向の関係)が調整される。例えば参照信号と受信信号との間の位相関係が調整される。そのため、例えば、目標位置からの受信信号の位相と参照信号の位相とを揃えることにより、参照信号との相関が比較的大きい信号成分として、目標位置からの受信信号を抽出することができる。さらに、その受信信号から例えばバンドパスフィルタあるいはローパスフィルタなどを用いてドプラ情報を抽出することにより、目標位置からのドプラ情報を選択的に抽出することが可能になる。なお、上記態様において、参照信号と変調送信信号は、完全に等しい波形であることが望ましい。但し、参照信号と変調送信信号は、実質的に等しい波形とみなせる程度の対応関係であってもよい。
望ましい態様において、前記超音波診断装置は、前記送信信号処理部から出力される変調送信信号と受信信号処理部で用いられる参照信号のうちの少なくとも一方の信号を遅延処理し、目標位置からの受信信号と参照信号との相関を強めることにより、目標位置からのドプラ情報を選択的に抽出することを特徴とする。
望ましい態様において、前記超音波診断装置は、目標位置からの受信信号の位相と参照信号の位相が等しくなるように前記少なくとも一方の信号を遅延処理することを特徴とする。
望ましい態様において、前記超音波診断装置は、目標位置からの受信信号の位相と参照信号の位相が等しくなるように、目標位置の深さに応じた遅延量だけ、前記変調送信信号または前記参照信号を遅延処理することを特徴とする。
望ましい態様において、前記超音波診断装置は、前記遅延量を変化させることにより深さ方向に沿って目標位置を移動させつつ目標位置からのドプラ情報を抽出することを特徴とする。
望ましい態様において、前記超音波診断装置は、前記遅延量を周期的に変化させ、深さ方向に沿った対象区間内において目標位置を周期的に移動させることにより、対象区間内に亘って複数の位置からドプラ情報を抽出することを特徴とする。
望ましい態様において、前記超音波診断装置は、前記対象区間内に亘って複数の位置から抽出されるドプラ情報に基づいて、対象区間内における流体の速度分布を形成することを特徴とする。
望ましい態様において、前記超音波診断装置は、生体内の深さに対応した軸と時間に対応した軸と流体の速度に対応した軸とを含み、前記速度分布の時間変化の様子を示した表示画像を形成することを特徴とする。
望ましい態様において、前記ドプラ情報抽出部は、ドプラ情報として、復調信号に含まれる直流信号成分に対応したドプラ信号成分を抽出することを特徴とする。
望ましい態様において、前記送信信号処理部は、搬送波信号に対して周波数変調処理を施すことにより変調送信信号を生成し、前記送信信号処理部による周波数変調処理の変調指数が調整されることにより位置分解能が設定されることを特徴とする。望ましい態様において、前記送信信号処理部による周波数変調処理の変調指数は、最大周波数偏移と変調周波数との比でありその値が例えば1以上に設定される。なお、変調指数は20以上に設定されてもよいし、30以上に設定されてもよい。
望ましい態様において、前記送信信号処理部で生成された変調送信信号を目標位置の深さに応じた遅延量だけ遅延処理することにより前記参照信号が形成されることを特徴とする。望ましい態様において、前記周波数変調処理で用いられる変調信号を目標位置の深さに応じた遅延量だけ遅延処理して得られる遅延変調信号を用いて前記搬送波信号を周波数変調処理することにより前記参照信号が形成されることを特徴とする。
本発明により、連続波を利用して目的の位置からドプラ情報を取得することが可能になる。
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されており、図1はその全体構成を示す機能ブロック図である。送信用振動子10は生体内へ送信波を連続的に送波し、また、受信用振動子12は生体内からの反射波を連続的に受波する。このように、送信および受信がそれぞれ異なる振動子で行われて、いわゆる連続波ドプラ法による送受信が実行される。
電力増幅器14は、送信用振動子10に対し、電力増幅されたFM連続波(FMCW)を供給する。電力増幅器14には、例えば正弦波によるFM変調処理が施されたFM連続波(FMCW波)が入力され、このFM連続波に対応する送信波が送信用振動子10から送波される。FM変調器20は、FM連続波を電力増幅器14に出力する。FM変調器20は、RF波発振器22から供給されるRF波、および、FM変調波発振器24から供給される正弦波の変調波に基づいてFM連続波を発生する。このFM連続波の波形については後の原理説明で詳述する。
前置増幅器16は、受信用振動子12から供給される受波信号に対して低雑音増幅等の受信処理を施し、受信RF信号を形成して受信ミキサ30へ出力する。受信ミキサ30は受信RF信号に対して直交検波を施して複素ベースバンド信号を生成する回路であり、2つのミキサ32,34で構成される。各ミキサは受信RF信号を所定の参照信号と混合する回路である。
受信ミキサ30の各ミキサに供給される参照信号は、FM変調器20から出力されFM連続波に基づいて生成される。つまり、FM変調器20から出力されるFM連続波が遅延回路25において遅延処理され、ミキサ32には遅延処理されたFM連続波が直接供給され、一方、ミキサ34には遅延処理されたFM連続波がπ/2シフト回路26を経由して供給される。π/2シフト回路26は遅延処理されたFM連続波の位相をπ/2だけずらす回路である。この結果、2つのミキサ32,34の一方から同相信号成分(I信号成分)が出力され、他方から直交信号成分(Q信号成分)が出力される。そして、受信ミキサ30の後段に設けられるLPF(ローパスフィルタ)36,38によって、同相信号成分および直交信号成分の各々の高周波数成分がカットされ、検波後の必要な帯域のみの復調信号が抽出される。
なお、FM変調波発振器24から供給される正弦波の変調波に遅延処理を施して遅延変調波を形成し、その遅延変調波によってRF波発振器22から供給されるRF波を周波数変調することにより、参照信号を生成してもよい。
後の原理説明で詳述するが、各ミキサで実行される受信RF信号と参照信号との混合処理の結果である受信ミキサ出力信号(復調信号)には、FM変調波発振器24から供給される変調波の変調波周波数fに関する複数の第n次波成分(nは0以上の自然数)が含まれている。つまり、第0次波成分である直流成分、第1次波成分である基本波成分、さらに、nが2以上の複数の高調波成分が含まれている。つまり、これら複数の第n次波成分を含んだ復調信号が、LPF36,38の各々から出力される。
FFT回路(高速フーリエ変換回路)40,42は、復調信号(同相信号成分および直交信号成分)の各々に対してFFT演算を実行する。その結果、FFT回路40,42において復調信号が周波数スペクトラムに変換される。なお、FFT回路40,42から出力される周波数スペクトラムは、回路の設定条件などにより周波数分解能δfの周波数スペクトラムデータとして出力される。FFT回路40,42から出力される周波数スペクトラムについては、後に図2などを利用して詳述する。
ドプラ情報解析部44は、周波数スペクトラムに変換された復調信号からドプラ情報を抽出する。その際、予め遅延回路25によって生体内の目標位置の深さに応じて参照信号と受信信号との間の位相関係が調整されているため、目標位置からのドプラ情報が選択的に抽出される。位相の調整と目標位置からのドプラ情報の抽出との関連については、後の原理説明において詳述する。ドプラ情報解析部44は、生体内の各深さ(各位置)ごとにドプラ情報を抽出して、例えば、超音波ビーム(音線)上の各深さごとに生体内組織の速度を算出し、リアルタイムで出力する。なお、超音波ビームを走査させて二次元的あるいは三次元的に生体内組織の各位置の速度を算出してもよい。
表示処理部46は、生体組織の深さ(位置)ごとの速度に基づいて、例えばドプラ波形や、深さ速度の情報を含むグラフなどを形成し、形成したドプラ波形やグラフなどを表示部48にリアルタイムで表示させる。なお、図1に示す超音波診断装置内の各部は、システム制御部50によって制御される。つまり、システム制御部50は、送信制御や受信制御や表示制御などを行う。
以上、概説したように、本実施形態では、連続波(CW)を変調波でFM変調した超音波(FMCW波)を送受波して受信信号が得られて、生体内の目標位置の深さに応じて参照信号と受信信号との間の位相関係が調整されて復調処理されることにより、目標位置からのドプラ情報が選択的に抽出される。そこで、目標位置からのドプラ情報が選択的に抽出される原理について詳述する。
周波数fのCWに変調周波数fの正弦波によりFM変調を施したFMCW送信波は次式のように表現できる。
数1において、Δfは周波数変動幅の0−P値(ゼロピーク値:最大周波数偏移)であり、最大周波数偏移Δfと変調周波数fの比であるβはFMの変調指数である。また、ドプラシフトを伴わない場合のFMCW受信波は生体による減衰を無視すると次式で表現できる。
FMCW送信波の周波数スペクトラムは、数1をベッセル級数を用いて展開することで得られる。数1に示すFMCW送信波は次式のように展開できる。
数3において、J(β),J2n(β),J2n+1(β)は、第1種ベッセル関数である。各項の振幅は、変調指数βおよびそれに対応するベッセル関数によって決定される。
また、ドプラシフトを伴わない場合の受信波vR(t)の周波数スペクトラムは、数2を展開することで得られる。数2に示すFMCW受信波は次式のように展開できる。
数4に示されるように、受信波の周波数スペクトラムは送信波と同じ周波数成分を持っている。しかし受信波の各周波数成分の振幅は、位相差φとφに応じて変化している。
さらに、ドプラシフトを伴う場合、数2のvR(t)は以下のように書き換えられる。
なお、数5においてfに対するドプラシフトは、fのシフト分fに比較して小さいので無視している。
上述の数2や数5で表される受信波形は、超音波振動子が受信する信号波形(受信RF信号)である。超音波診断装置は受信RF信号に対して復調処理を実行する。FMCWの受信RF信号を復調する場合、復調系ではFMCW送信波を参照信号として受信波と乗算を行う。復調系における受信ミキサ出力は、vT(t)とvR(t)を乗算した結果として次式のように算出される。
ここで、数3、数4、数6の算出にはベッセル関数に関する次の公式を利用する。
数7の公式を用いると、数6はさらに次式のように計算される。なお、数8では数6における係数1/2を省略する。
数8で表現される受信ミキサ出力の周波数スペクトラム、つまり、図1のFFT回路40,42から出力される周波数スペクトラムを図示すると図2のようになる。
図2は、復調信号の周波数スペクトラムを示す模式図である。数8にも示されるように、復調信号には、変調波周波数に関する複数の第n次高調波成分(nは0以上の自然数)が含まれている。つまり、図2において、原点O付近に存在する第0次波成分である直流成分、第1次波成分である基本波成分(f)、第2次波成分である第2高調波成分(2f)、第3次波成分である第3高調波成分(3f)が含まれている。なお、図示省略しているnが7以上の高調波成分も存在する。そして、第n次波成分の各々には、固定物エコー64とドプラエコー62が含まれている。
固定物エコー64は、生体内の強反射体である静止体からのエコー(クラッタエコー)であり、ドプラ情報を観測する場合においては妨害要因となる。これに対し、ドプラエコー62が必要としているドプラ信号である。ドプラシフトを伴う場合、ドプラ信号の第n次波成分の各々は、FM変調周波数が抑圧されたDSB−SC(Double Sideband−Suppressed Carrier)の形で周波数スペクトル上に出現する。
本実施形態は、上述したFMCWの基本原理を応用したものである。本実施形態では、図1に示す遅延回路25(移相器あるいは遅延線)により、生体内の目標位置の深さに応じて参照信号と受信信号との間の位相関係が調整され、目標位置(目標となる深さ)からのドプラ情報が選択的に抽出される。つまり、遅延回路25による遅延処理の遅延時間を、超音波が生体内を往復する伝搬時間に設定することにより、目標となる深さからの受信信号と参照信号との相関が最大となり目標からの信号のみが選択的に抽出される。
図3は、参照信号と受信信号との間の位相関係(時間関係)を説明するための図である。(a)はFMCW送信信号(送信波)の時間波形を示しており、(b)はその送信信号に対応した受信信号(受信波)を示している。受信信号は送信時からτだけ遅れて受信される。音速をcとすると、深さdから得られる受信信号はτ=2d/cだけ遅れて受信される。また、図3において、fは搬送波周波数(超音波周波数に相当)を示しており、fは搬送波を変調する周波数(変調周波数)を示している。受信信号の周波数スペクトラム電力を(e)に示す。ちなみに、送信信号の周波数スペクトラムも電力として表現すると、(e)と同じ形をしているが、各電力スペクトラムの位相は遅延時間τに対応して、送信スペクトラムとは異なっている。
受信信号と直交検波する参照波(参照信号)(c)は、送信波を送受信時間差(往復の伝搬時間τ)だけシフトさせた信号である。直交検波器入力、つまり受信ミキサ(図1の符号30)に入力される受信信号と参照信号は、このシフト操作により周波数、位相ともまったく等しい時間波形となる。したがって、受信波(受信信号)を二乗した波形が直交検波器出力(d)となる。以降、直交検波器出力信号をベースバンド信号と呼ぶ。この信号は、振幅が1/2の直流成分と、搬送波周波数が2fで変調度が2βのFM信号の和として表現できる。受信波を二乗することにより、受信波が、直流付近と搬送波の2倍の周波数帯に移行するという特徴がある。(f)におけるベースバンド信号の周波数スペクトラムは、この様子を表している。
ベースバンド信号は、受信波と参照波間の遅延時間が完全に一致している場合は、fおよびその高調波成分(図2参照)は出現せず、図3(f)のように直流成分のみとなる。なお、図3(f)における2fや−2fの成分は、例えば受信ミキサの後段のLPF(図1の符号36,38)によって除去される。受信波と参照波間の遅延時間が一致していないと、両者の時間差により、変調波の高調波成分、つまりfおよびその高調波成分(図2参照)が発生する。高調波成分は、受信波と参照波間の時間差が“0”からわずかでもずれると発生する。
こうした特徴から、本実施形態のFMCW方式では、受信波(受信信号)と参照波(参照信号)との間の位相関係を調整することにより、ベースバンド信号の直流および直流付近の信号成分に基づいて対象とする組織の速度情報を得ることができる。この意味において、本実施形態に係る超音波診断装置を位相シフト型FMCW超音波ドプラシステムと称することができる。
図4は、ベースバンド信号の直流および高調波成分の生体内深さ(体表からの距離)依存性を説明するための図である。図4には、複数の変調指数βについて、各変調指数βごとにベースバンド信号(復調信号)の周波数スペクトラムが示されている。図4に示す各変調指数βごとの周波数スペクトラムは、図2の周波数スペクトラムの表示に距離方向の次元を追加したものに相当する。なお、β=0からβ≒30までの各周波数スペクトラムは、固定組織からからの反射電力を表している。図4においては、組織における減衰の効果は省略した。なお、FM変調度の大きさは、一般的に、変調指数βにより定量化される。βは、FM変調による搬送波の最大周波数偏移Δfと変調周波数fの比として定義され、β=Δf/fにより定義される。
β=0の場合は無変調であるため、これは通常のCWドプラ速度計測システムと等価である。この場合は、どんな深さからの反射電力にも位置依存性は無い。また、送受信ともに無変調なので、ベースバンド信号に変調波成分が出現する余地は無い。連続超音波(CW)にFM変調をかけ、周波数偏移Δfを徐々に増加させると、FMCW送受信波はFM変調された信号となり、その電力は搬送波から側帯波に移行してゆく。送受信間の遅延時間差が無い場合はベースバンド信号に変調波の高調波成分は発生しない(図3参照)。直交検波器の2つの入力(つまり受信信号と参照信号)に時間差を生じさせないためには、当該深さからの反射波の遅延時間に相当する遅延時間を参照波に与えてやればよい。
図4の例は、距離d=7.5cmにおいて、参照波に与える遅延時間を受信波の遅延時間と一致するように設定した場合を示している。したがって、距離dからの反射電力は、直流成分のみで、変調波の高調波成分はまったく発生しない。距離がd以外の場所では、送信波と受信波間に時間差が生じるので、両者の相関性が少なくなってくる。したがって、直流成分が減少し、同時に高調波成分が出現しはじめる。この現象は、図3の(b),(c)間に時間差が生じたときに、瞬時周波数の差が、変調周波数の周期で繰り返す現象が発生するという概念からも説明できる。
変調度(変調指数β)が大きくなるにつれて、距離dにおける反射電力の位置ずれに対する変化は敏感になってくる。すなわち、距離dにおける反射電力の選択性が増加する。この傾向はβが増加するにしたがってますます顕著になる。図4では、その様子をβが0から30の場合について示している。そして、βが30以上になると、この選択性はPW(パルス波)ドプラにおけるレンジゲートの役割と類似の機能に近づいてくる。
次に、距離dからの反射電力が、ドプラシフトfを伴っていると仮定する。この場合は、固定物と相似形の距離依存性が出現するが、ドプラ周波数fだけ、直流成分からシフトしてあらわれる。ドプラスペクトラムは、変調波あるいはその高調波の両側帯波にも同時に出現するが、距離dからのドプラエコーは直流からfだけシフトした周波数成分のみとなる。この様子を図4(DP)に示す。
図4(DP)に示すように、距離dからのドプラエコーが直流からfだけシフトした周波数成分のみとなるのは、搬送波周波数fからfだけずれた周波数において、参照信号とドプラ信号との相関が最も強くなるからである。このドプラ信号は、直流付近にのみ出現し、変調波の高調波成分(f,2f,3f,・・・)の付近には出現しない。したがって、直流付近のこの成分だけをローパスフィルタ(低域濾波器)によって抽出することにより、通常のCWと同様のSNR(信号体ノイズ比)を保った状態で、位置情報の特定されたドプラ情報を得ることができる。
具体的には、例えば、図1の遅延回路25によって、目標となる深さ(位置)dに対応した遅延時間τ(τ=2d/c:音速c,深さd)で参照信号に対して遅延処理が施されることにより、図1のFFT回路40,42から図4(DP)に相当するドプラ周波数スペクトラム情報が出力され、図1のドプラ情報解析部44によって、図4(DP)の直流付近のドプラ信号が抽出される。
次に、本実施形態に係る超音波診断装置(位相シフト型FMCW超音波ドプラシステム)に関するいくつかの特徴について説明する。
「クラッタ電力」
深さ(位置)情報の特定の程度は変調度(変調指数)βに依存するので、必要な位置分解能を確保するためには、βを大きく設定する必要がある。βを大きく設定すると、位置の選択性がシャープになる。つまり、図4に示したようにβが大きくなると目標の距離dにおいて急峻な山の波形が得られる。そのため、距離d付近の反射電力だけが受信信号に大きく反映される。この性質は、固定目標でも移動目標でも共通である。
音線上のすべての固定目標からの反射電力の和がクラッタ電力となる従来のCW法に比べて、本実施形態の方式(位相シフト型FMCW)では、選択された位置からのクラッタしか生じないので、クラッタ電力を極端に減少させることができる。
図5は、ドプラエコーが発生する深さ(体表からの深さ)とクラッタ積算電力の関係を示す計算結果の図である。パラメータはFM変調度(β)である。図5には、各FM変調度(β)ごとに、クラッタ積算電力84の波形とドプラ信号電力82の波形が示されている。また、クラッタ改善度90は、従来のCWと比較した場合のクラッタ積算電力の低減を示している。変調度(変調指数)βが増加するに従って、クラッタ電力(積算電力)が全体的に減少する傾向が示されている。例えばβ=100に設定すると、従来のCWに比べてクラッタ電力を25dB程度低減できる。
「信号対雑音比(SNR)」
図6は、PW(パルス波)と通常のCWとFMCWの各々のドプラ速度計測システムについてのRF帯とベースバンド帯における受信信号のスペクトルを示す図である。PWドプラのSNRを支配している雑音は、直交検波後のサンプリング時における信号帯域により決定される。この雑音は、通信システムと同様に、RF信号の帯域に分布している白色ガウス雑音として扱うことができる。サンプリング時の信号帯域は、ベースバンドにおけるパルス幅の逆数で与えられる。たとえば、パルス幅を2μsec.と仮定すると、帯域は500kHzとなる。
一方、通常のCWドプラ速度計測システムでは、PRFが存在せず、信号の帯域は測定するドプラ信号の最高周波数程度である。これをたとえば5KHzとすると、PWとCWのSNRの差は帯域比の差で表現されるので、この例では、500kHz/5kHz=100となる。すなわち、CWのSNRはPWに比べて20dB良好となる。
FMCWの信号帯域は、ベースバンド信号におけるドプラ信号の最高周波数により決定される。ただし、FMCWでは、RF(超音波)周波数帯では、変調度に依存した周波数帯域を持っており、信号は広い帯域に拡散している。しかし、直交検波により、この広帯域信号を直流付近の狭帯域ベースバンド信号に圧縮変換するので、雑音も狭帯域となり、SNRが大幅に改善される。改善の程度は、CWと同様で、500kHz/5kHz=100の場合は、PWに比べて20dBの改善が予測される。
「位置の選択性(位置分解能)」
PWドプラでは、特定位置からのドプラ情報を得られるが、通常のCWドプラ方式では位置情報が得られない。この特徴を相補するのが本実施形態の位相シフト型FMCWということができる。本実施形態の復調過程では、直交検波用参照信号の遅延時間を目標までの距離に整合させることにより位置の選択性を持たせ、この選択性は変調度βを大きくすることにより向上するという性質がある。変調度βを大きくすると、搬送波帯の帯域が広がる。必要とする占有帯域幅BWは近似的に下式で与えられる。
図7は、変調度に応じた位置選択性の計算結果を示す図である。図7に示す半値幅は、目標となる位置のスペクトル波形の半値幅(図4に示す各周波数スペクトラムの距離dにおけるスペクトル波形の山の半値幅)である。
図7に示すように、βを大きくすると、その位置選択性を数mm以下に設定することができる。この結果は、搬送波の周波数帯を広帯域にするほど、目標の位置分解能が向上することを意味している。これは、PWにおいてパルス幅をせまくするほど位置分解能が向上するという特性とも矛盾しない。
つまり、本実施形態の位相シフト型FMCW方式では、位置分解能を満足する程度までβを大きく設定すれば、すなわち、数9で与えられるFMCWの帯域をPWと同程度に設定すれば、位置情報を持ち且つSNRが良好なドプラ情報を得ることが可能となる。
「最高血流速度」
FMCW方式は、PWと同様に、最高速度に制限がある。FMCW方式では、周波数fの変調波で搬送波を変調しており、折り返し現象により、最高測定可能周波数は、f/2に制限される。この制限を低減するためにはfを大きく設定すればよい。しかし、この場合は、選択した位置のほかに、fの周期に相当する位置からのドプラ信号が本来の位置からの信号に重畳される。この性質は、PWのHPRFモードの場合とまったく同様である。本実施形態の位相シフト型FMCWドプラ方式によれば、計測可能な最高血流速度に関して、PW方式の場合と同程度の計測能力が実現可能である。
「送受信部の構成」
PW、CW、FMCWドプラ速度計測システムで、探触子入力における平均電力を等しいと仮定する。この場合、前述したようなクラッタおよび雑音に対する改善効果を達成するためのピーク電力は、PWに比べて、本実施形態のFMCW方式では、1/100程度、ピーク電圧は1/10に減少できる。一方、探触子に入力できる送信電力がピーク値により制限されていると仮定する。この場合、本実施形態のFMCWは、PWに比べて、クラッタおよび雑音に対する改善効果に加え、電力を増加できる比率で、さらにクラッタ抑圧とSNRの改善が期待できる。
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本実施形態のいくつかの特徴(効果)をまとめると図8のようになる。
また、上述した実施形態では、変調波として、図9に示すような正弦波を利用した。この正弦波に換えて、変調波として図9に示す対称三角波を利用してもよい。対称三角波を用いると、位置情報とドプラ情報を切り分けて計測できる利点がある(特許文献2参照)。なお、対称三角波は、正弦波と似た周期性を有しているため、正弦波に換えて対称三角波を用いても、位相シフト型FMCW超音波ドプラシステムを構築できる。
さらに、図9に示すように、変調周波数変化の変換点における周波数変化を時間的にゆるやかにした対称三角波(角を丸めた対称三角波)を変調波として利用してもよい。この波形によれば、対称三角波が変調周波数変化の変換点で発生する高周波成分を除去できる特長がある。すなわち、この変換点における周波数変化を時間的にゆるやかにすることで、高周波成分の発生を低減し、RF帯域を必要以上に広げない効果が期待できる。
また、受信信号と参照信号の位相を調整するための変形態様として、図1において、遅延回路25を電力増幅器14の直前(図1のPの位置)に移してもよい。つまり、電力増幅器14へ供給される送信用のFMCWに遅延処理を施し、受信ミキサ30へ供給される参照信号に遅延処理を施さずに、参照信号と受信信号の位相を調整してもよい。なお、図1に示す遅延回路25をそのまま残し、さらに電力増幅器14の直前にも遅延回路25を設けてもよい。つまり、電力増幅器14へ供給される送信用のFMCWに遅延処理を施し、さらに受信ミキサ30へ供給される参照信号にも遅延処理を施して、参照信号と受信信号の位相を調整してもよい。
また、周波数変調処理で用いられる変調信号(変調波)を目標位置の深さに応じた遅延量だけ遅延処理して遅延変調信号を生成し、そして、遅延変調信号を用いて搬送波信号(RF波)を周波数変調処理することにより参照信号を形成して、受信信号と参照信号の位相を調整してもよい。なお、この場合には、例えば、遅延処理されていない変調信号を用いて搬送波信号を周波数変調処理することより変調送信信号(FMCW送信波)が形成される。
図1に示した超音波診断装置では、遅延回路25によって生体内の目標位置の深さに応じて参照信号と受信信号との間の位相関係が調整されているため、目標位置からのドプラ情報が選択的に抽出される。そのため、生体内の各深さ(各位置)ごとにドプラ情報を抽出して、例えば、超音波ビーム(音線)上の各深さごとに生体内組織の速度を算出することができる。さらに、遅延回路25における遅延量を周期的に変化させることにより、以下に説明するように、超音波ビームに沿った対象区間内において目標位置を周期的に移動させ、対象区間内に亘って複数の位置からドプラ情報を抽出することも可能になる。
図10には、本発明に係る超音波診断装置の別の好適な実施形態が示されており、図10はその全体構成を示す機能ブロック図である。図10に示す超音波診断装置は、図1の装置を改良したものであり、第2変調波発振器52が挿入されている点において図1の装置とは異なる。以下、図10の超音波診断装置について、第2変調波発振器52の挿入に伴う改良点を中心に説明し、図1の装置と同じ部分については説明を省略する。
図10の超音波診断装置においても、図1の場合と同様に、遅延回路25によって生体内の目標位置の深さに応じて参照信号と受信信号との間の位相関係が調整され、目標位置からのドプラ情報が選択的に抽出される。つまり、遅延回路25による遅延処理の遅延時間(遅延量)を、超音波が生体内を往復する伝搬時間に設定することにより、目標となる深さからの受信信号と参照信号との相関が最大となり目標からの信号のみが選択的に抽出される。
図10においては、遅延回路25における遅延時間を周期的に変化させ、深さ方向に沿った対象区間内において目標位置を周期的に移動させることにより、対象区間内に亘って複数の位置からドプラ情報を抽出する。遅延回路25は、第2変調波発振器52が出力する信号に基づいて、遅延時間を周期的に変化させる。
第2変調波発振器52は、FM変調波発振器24から出力される変調波(第1変調波)よりも低い周波数の第2変調波を出力する。第1変調波の周波数が、例えば5kHz程度であれば、第2変調波の周波数が、例えば50Hz程度に設定される。遅延回路25は、この比較的低い周波数の第2変調波を利用して遅延時間を周期的に変化させる。
遅延時間が周期的に変化することにより、参照信号との相関が最大となる目標位置が超音波ビーム方向(生体の深さ方向)に沿って周期的に変化する。つまり、深さ方向に沿ったある範囲(対象区間)内において目標位置が周期的に移動し、対象区間内に亘る複数の位置からドプラ情報を抽出することができる。
なお、図1の場合と同様に、図10においても、遅延回路25を電力増幅器14の直前(図10のPの位置)に移してもよい。つまり、電力増幅器14へ供給される送信用のFMCWに周期的な変化の遅延処理を施し、受信ミキサ30へ供給される参照信号に遅延処理を施さずに、参照信号と受信信号の位相を調整してもよい。
周期的に移動する目標位置は、遅延回路25における遅延時間(遅延量)に応じて決定される。システム制御部50は、第2変調波発振器52が出力する第2変調波に基づいて、あるいは、遅延回路25における遅延時間に基づいて、周期的に移動する目標位置を確認する。そして、システム制御部50は、ドプラ情報解析部44において得られるドプラ情報(ドプラシフト量やドプラ成分の電力など)と、そのドプラ情報が得られた位置(深さ)とを対応付ける。その対応関係は、表示処理部46などに伝えられる。
図11は、第2変調波が正弦波の場合のドプラ情報と深さの対応関係を説明するための図である。図11には、底面に時間軸と深さ軸を設けて高さ方向のZ軸にドプラ情報(ドプラシフト量またはドプラ成分の電力)を示したグラフが図示されている。
第2変調波が正弦波の場合、時間の経過と共に遅延回路25(図10)における遅延時間が正弦波状に変化し、ドプラ情報が得られる目標位置(深さ)も時間の経過と共に正弦波状に変化する。
図11には、時間の経過と共に、目標位置が深さ−d/2から+d/2の間(対象区間)を正弦波に沿って変化する様子が示されている。なお、図11に示すグラフは、第2変調波の周波数がfm2の場合であり、目標位置が周期1/fm2の正弦波に沿って変化している。そして、正弦波に沿って変化する各位置において、その位置から得られるドプラ情報がZ軸方向に示されている。
このように、深さ−d/2から+d/2までの対象区間内において、各位置(深さ)ごとにドプラ情報が得られるため、例えば、そのドプラ情報から各位置(深さ)ごとに速度を算出することにより、図11に示すように、深さ−d/2から+d/2までの対象区間内における速度分布70を得ることができる。
なお、図11においては、深さ−d/2と+d/2の中間位置において、比較的大きなドプラ情報が得られている。血管内においては、通常、血管壁の近傍に比べて血管の中心付近において大きな血流が得られる。そのため、例えば、血管と交差するように超音波ビームを設定し、超音波ビーム上の血管に対応した部分に対象区間(深さ−d/2から+d/2)を設定することにより、例えば、図11のような計測結果が得られ、血管内の血流の速度分布70が得られる。
図12は、速度分布の表示態様を示す図であり、図12には、底面に時間軸と深さ軸を設けて、ドプラ情報から得られる流速を高さ方向に示したグラフが図示されている。図12に示すグラフは、図10の表示処理部46において形成されて表示部48に表示される画像の一例である。表示処理部46は、例えば、システム制御部50から得られるドプラ情報とその位置(深さ)との対応関係に基づいて図12に示す画像を形成する。
つまり、時間の経過と共に移動する目標位置(深さ)と、図10のドプラ情報解析部44から得られるドプラ情報が対応付けられ、ドプラ情報から速度(流速)が算出される。そして、時間の経過と共に、目標位置が深さ−d/2から+d/2までの対象区間内を繰り返し移動することにより、対象区間内における流速の時間変化を示す図12のグラフが形成される。
図12のグラフは、深さ−d/2から+d/2までの対象区間内における流速分布が、時間の経過と共に変化する様子を示している。例えば、血管と交差するように超音波ビームを設定し、超音波ビーム上の血管に対応した部分に対象区間(深さ−d/2から+d/2)を設定することにより、その血管の部分における血流の流速分布の変化として図12に示すような計測結果が得られる。
なお、図11および図12においては、第2変調波が正弦波の場合について説明したが、第2変調波は鋸波や三角波などでもよい。
図13は、第2変調波が鋸波の場合のドプラ情報と深さの対応関係を説明するための図である。図13には、図11と同様に、底面に時間軸と深さ軸を設けて高さ方向にドプラ情報を示したグラフが示されている。第2変調波が鋸波の場合、時間の経過と共に遅延回路25(図10)における遅延時間が鋸波状に変化し、ドプラ情報が得られる目標位置(深さ)も時間の経過と共に鋸波状に変化する。
図13には、時間の経過と共に、目標位置が深さ−d/2から+d/2の間(対象区間)を鋸波に沿って変化する様子が示されている。なお、図13に示すグラフにおいても、第2変調波の周波数がfm2であり、目標位置が周期1/fm2の鋸波に沿って変化している。そして、鋸波に沿って変化する各位置において、その位置から得られるドプラ情報が高さ方向に示されている。また、図11の場合と同様に、深さ−d/2から+d/2までの対象区間内における速度分布70を得るようにしてもよい。
図14は、第2変調波が対称三角波の場合のドプラ情報と深さの対応関係を説明するための図である。図14には、図11,図13と同様に、底面に時間軸と深さ軸を設けて高さ方向にドプラ情報を示したグラフが示されている。第2変調波が対称三角波の場合、ドプラ情報が得られる目標位置(深さ)が時間の経過と共に対称三角波に沿って変化する。図14には、対称三角波に沿って変化する各位置において、その位置から得られるドプラ情報が高さ方向に示されている。なお、図11,図13の場合と同様に、深さ−d/2から+d/2までの対象区間内における速度分布70を得るようにしてもよい。
以上、本発明の好適な実施形態といくつかの変形形態を説明したが、上述した本発明の好適な実施形態等は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
例えば、上述した実施形態においては、周波数を周期的に変化させる連続波の変調送信信号を形成するにあたって、搬送波信号(RF波発振器22から供給されるRF波)に対して周波数変調処理を施している。この周波数変調処理に換えて、周波数変調処理と同じ角度変調の方式として当業者において明らかな位相変調処理(PM処理)を利用してもよい。つまり、搬送波信号(RF波発振器22から供給されるRF波)に対して位相変調処理を施すことにより、FM変調器20から出力されるFM連続波と同じ波形あるいは同等な波形を形成してもよい。なお、周波数を周期的に変化させる連続波のデータをメモリなどに記憶しておき、このメモリから読み出されるデータに基づいて、当該連続波を生成してもよい。
本発明に係る超音波診断装置の全体構成を示す機能ブロック図である。 復調信号(ベースバンド信号)のドプラエコーと固定物エコーの周波数スペクトラムを示す図である。 参照信号と受信信号との間の位相関係およびベースバンド信号の周波数スペクトラムを示す図である。 ベースバンド信号電力の深さ依存性を説明するための図である。 ドプラエコーが発生する深さとクラッタ積算電力の関係を示す計算結果の図である。 各方式についての受信信号と雑音の周波数スペクトルを示す図である。 変調度に応じた位置選択性の計算結果を示す図である。 本実施形態のいくつかの特徴を示す図である。 変調波の波形を説明するための図である。 本発明に係る超音波診断装置の別の好適な実施形態を示す図である。 第2変調波が正弦波の場合のドプラ情報と深さと時間の関係を説明するための図である。 速度分布の表示態様を示す図である。 第2変調波が鋸波の場合のドプラ情報と深さの対応関係を説明するための図である。 第2変調波が対称三角波の場合のドプラ情報と深さの対応関係を説明するための図である。
符号の説明
20 FM変調器、22 RF波発振器、24 FM変調波発振器、25 遅延回路、40,42 FFT回路、44 ドプラ情報解析部、52 第2変調波発振器。

Claims (13)

  1. 周波数を周期的に変化させる連続波の変調送信信号を出力する送信信号処理部と、
    変調送信信号に基づいて超音波を生体に送波して生体からの反射波を受波することにより受信信号を得る送受波部と、
    実質的に変調送信信号に等しい波形の参照信号を用いて受信信号に対して復調処理を施すことにより復調信号を得る受信信号処理部と、
    復調信号からドプラ情報を抽出するドプラ情報抽出部と、
    を有し、
    生体内の目標位置の深さに応じた遅延処理を施して参照信号と受信信号との間の遅延関係を調整して復調処理を施すことにより目標位置からのドプラ情報を選択的に抽出する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  2. 請求項1に記載の超音波診断装置において、
    前記送信信号処理部から出力される変調送信信号と受信信号処理部で用いられる参照信号のうちの少なくとも一方の信号を遅延処理し、目標位置からの受信信号と参照信号との相関を強めることにより、目標位置からのドプラ情報を選択的に抽出する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  3. 請求項2に記載の超音波診断装置において、
    目標位置からの受信信号の位相と参照信号の位相が等しくなるように前記少なくとも一方の信号を遅延処理する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  4. 請求項3に記載の超音波診断装置において、
    目標位置からの受信信号の位相と参照信号の位相が等しくなるように、目標位置の深さに応じた遅延量だけ、前記変調送信信号または前記参照信号を遅延処理する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  5. 請求項4に記載の超音波診断装置において、
    前記遅延量を変化させることにより深さ方向に沿って目標位置を移動させつつ目標位置からのドプラ情報を抽出する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  6. 請求項5に記載の超音波診断装置において、
    前記遅延量を周期的に変化させ、深さ方向に沿った対象区間内において目標位置を周期的に移動させることにより、対象区間内に亘って複数の位置からドプラ情報を抽出する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  7. 請求項6に記載の超音波診断装置において、
    前記対象区間内に亘って複数の位置から抽出されるドプラ情報に基づいて、対象区間内における流体の速度分布を形成する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  8. 請求項7に記載の超音波診断装置において、
    生体内の深さに対応した軸と時間に対応した軸と流体の速度に対応した軸とを含み、前記速度分布の時間変化の様子を示した表示画像を形成する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  9. 請求項1から8のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
    前記ドプラ情報抽出部は、ドプラ情報として、復調信号に含まれる直流信号成分に対応したドプラ信号成分を抽出する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  10. 請求項1から9のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
    前記送信信号処理部は、搬送波信号に対して周波数変調処理を施すことにより変調送信信号を生成し、
    前記送信信号処理部による周波数変調処理の変調指数が調整されることにより位置分解能が設定される、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  11. 請求項10に記載の超音波診断装置において、
    前記送信信号処理部で生成された変調送信信号を目標位置の深さに応じた遅延量だけ遅延処理することにより前記参照信号が形成される、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  12. 請求項10に記載の超音波診断装置において、
    前記周波数変調処理で用いられる変調信号を目標位置の深さに応じた遅延量だけ遅延処理して得られる遅延変調信号を用いて前記搬送波信号を周波数変調処理することにより前記参照信号が形成される、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  13. 請求項10から12のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
    前記送信信号処理部による周波数変調処理の変調指数は、最大周波数偏移と変調周波数との比であり、その値が1以上に設定される、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
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