JP2010125246A - 超音波診断装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】連続波を利用して目標位置からドプラ情報を抽出する技術において、必要とされるドプラ情報を適切に抽出する。
【解決手段】FM変調器20から出力されるFM連続波が遅延回路25において遅延処理され、ミキサ32には遅延処理されたFM連続波が直接供給され、一方、ミキサ34には遅延処理されたFM連続波がπ/2シフト回路26を経由して供給される。遅延回路25において、目的とする深さからの受信信号の位相と参照波の位相を一致させることにより、目的とする深さからの復調信号を選択的に抽出することができる。さらに、ドプラ情報解析部44は、目的とする深さに対応した復調信号の周波数スペクトラムに含まれる直流成分と不要波成分の中から、スペクトラムの電力に基づいて、直流成分をドプラ信号として抽出する。
【選択図】図1

Description

本発明は、超音波診断装置に関し、特に、連続波を利用する超音波診断装置に関する。
超音波診断装置の連続波を利用した技術として、連続波ドプラが知られている。連続波ドプラでは、例えば、数MHzの正弦波である送信波が生体内へ連続的に放射され、生体内からの反射波が連続的に受波される。反射波には、生体内における運動体(例えば血流など)によるドプラシフト情報が含まれる。そこで、そのドプラシフト情報を抽出して周波数解析することにより、運動体の速度情報を反映させたドプラ波形などを形成することができる。
連続波を利用した連続波ドプラは、パルス波を利用したパルスドプラに比べて一般に高速の速度計測の面で優れている。こうした事情などから、本願発明者は、連続波ドプラに関する研究を重ねてきた。その成果の一つとして、特許文献1において、周波数変調処理を施した連続波ドプラ(FMCWドプラ)に関する技術を提案している。
一方、連続波ドプラでは、連続波を利用していることにより位置計測が困難である。例えば、従来の一般的な連続波ドプラの装置(FMCWドプラを利用しない装置)では、位置計測を行うことができなかった。これに対し、本願発明者は、特許文献2において、FMCWドプラにより生体内組織の速度に加えて生体内組織の位置を計測することができる技術を提案している。
特開2005−253949号公報 特開2006−14916号公報
特許文献1や特許文献2に記載されたFMCWドプラの技術は、それまでにない超音波診断の可能性を秘めた画期的な技術である。本願発明者は、この画期的な技術の改良についてさらに研究を重ねてきた。特に、連続波を利用して目標位置からドプラ情報を抽出する技術に注目して研究を重ねてきた。
本発明は、このような背景において成されたものであり、その目的は、連続波を利用して目標位置からドプラ情報を抽出する技術において、必要とされるドプラ情報を適切に抽出することにある。
上記目的を達成するために、本発明の好適な態様である超音波診断装置は、変調周波数に応じて周期的に周波数を変化させた連続波の送信信号を出力する送信信号処理部と、前記送信信号に基づいて超音波の送信波を生体に送波してその送信波に伴う受信波を生体から受波することにより得られる受信信号に対して、前記送信信号に実質的に等しい波形の参照信号を用いて復調処理を施す受信信号処理部と、復調処理により得られた信号からドプラ信号を抽出するドプラ信号抽出部と、を有し、前記受信信号処理部は、生体内の目標位置から得られる受信信号との間の相関関係が調整された参照信号を用いて前記復調処理を施すことにより、前記目標位置に対応した復調信号を選択的に抽出し、前記ドプラ信号抽出部は、前記目標位置に対応した復調信号に含まれる、直流成分と前記変調周波数の基本波成分と前記変調周波数の高調波成分の中から、直流成分をドプラ信号として抽出することを特徴とする。
上記態様により、必要とされるドプラ情報として、目標位置に対応した復調信号に含まれる直流成分を抽出することができる。なお、上記態様において、参照信号と送信信号は、完全に等しい波形であることが望ましい。但し、参照信号と送信信号は、実質的に等しい波形とみなせる程度の対応関係であってもよい。
望ましい態様において、前記ドプラ信号抽出部は、前記目標位置に対応した復調信号の周波数スペクトラム内におけるスペクトラムの電力に基づいて前記直流成分を抽出する、ことを特徴とする。
望ましい態様において、前記ドプラ信号抽出部は、前記周波数スペクトラムを周波数軸方向に沿って微小間隔で連続的に区切って複数の周波数要素に分割し、前記変調周波数の整数倍だけ互いに異なる周波数に対応した複数の周波数要素で構成される要素グループの中から、電力が最大の周波数要素を前記直流成分の周波数要素として抽出する、ことを特徴とする。
望ましい態様において、前記ドプラ信号抽出部は、前記周波数スペクトラムの時間軸方向に沿って、各時刻ごとに、複数の要素グループの各々から、電力が最大の周波数要素を前記直流成分の周波数要素として抽出する、ことを特徴とする。
望ましい態様において、前記ドプラ信号抽出部は、前記直流成分の周波数要素として抽出された複数の周波数要素に基づいて、時間的に変化するドプラ信号の表示波形を形成する、ことを特徴とする。
本発明により、連続波を利用して目標位置からドプラ情報を抽出する技術において、必要とされるドプラ情報を適切に抽出することが可能になる。例えば、本発明の好適な態様によれば、目標位置に対応した復調信号に含まれる直流成分をドプラ信号として抽出することができる。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。
図1には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されており、図1はその全体構成を示す機能ブロック図である。送信用振動子10は生体内へ送信波を連続的に送波し、また、受信用振動子12は生体内からの反射波を連続的に受波する。このように、送信および受信がそれぞれ異なる振動子で行われて、いわゆる連続波ドプラ法による送受信が実行される。なお、送信用振動子10は複数の振動素子を備えており、これら複数の振動素子が制御されて超音波の送信ビームが形成される。また、受信用振動子12も複数の振動素子を備えており、これら複数の振動素子により得られた信号が処理されて受信ビームが形成される。
送信ビームフォーマ(送信BF)14は、送信用振動子10が備える複数の振動素子に対して送信信号を出力する。送信ビームフォーマ14には、例えば正弦波によるFM変調処理が施されたFM連続波(FMCW波)が入力される。送信ビームフォーマ14は、FM連続波に対して、各振動素子に応じた遅延処理を施して各振動素子に対応した送信信号を形成する。なお、送信ビームフォーマ14において形成された各振動素子に対応した送信信号に対して、必要に応じて電力増幅処理が施されてもよい。こうして、FM連続波による送信ビームが形成される。
FM変調器20は、送信ビームフォーマ14にFM連続波を出力する。FM変調器20は、変調波生成部24から供給される変調信号を用いて、RF波発振器22から供給されるRF波(搬送波信号)に対して周波数変調を施すことにより、FM連続波を発生する。このFM連続波の波形等については後に詳述する。
受信ビームフォーマ(受信BF)16は、受信用振動子12が備える複数の振動素子から得られる複数の受波信号を整相加算処理して受信ビームを形成する。つまり、受信ビームフォーマ16は、各振動素子から得られる受波信号に対してその振動素子に応じた遅延処理を施し、複数の振動素子から得られる複数の受波信号を加算処理することにより受信ビームを形成する。なお、各振動素子から得られる受波信号に対して低雑音増幅等の処理を施してから、受信ビームフォーマ16に複数の受波信号が供給されてもよい。こうして受信ビームに沿った受信RF信号が得られる。
受信ミキサ30は受信RF信号に対して直交検波を施して複素ベースバンド信号を生成する回路であり、2つのミキサ32,34で構成される。各ミキサは受信RF信号を所定の参照信号と混合する回路である。
受信ミキサ30の各ミキサに供給される参照信号は、FM変調器20から出力されるFM連続波に基づいて生成される。つまり、FM変調器20から出力されるFM連続波が遅延回路25において遅延処理され、ミキサ32には遅延処理されたFM連続波が直接供給され、一方、ミキサ34には遅延処理されたFM連続波がπ/2シフト回路26を経由して供給される。
π/2シフト回路26は遅延処理されたFM連続波の位相をπ/2だけずらす回路である。この結果、2つのミキサ32,34の一方から同相信号成分(I信号成分)が出力され、他方から直交信号成分(Q信号成分)が出力される。なお、受信ミキサ30の後段に設けられたLPF(ローパスフィルタ)36,38により、同相信号成分および直交信号成分の各々の高周波数成分がカットされ、検波後の必要な帯域のみの復調信号が抽出される。
FFT処理部(高速フーリエ変換処理部)42は、復調信号(同相信号成分および直交信号成分)の各々に対してFFT演算を実行する。その結果、FFT処理部42において復調信号が周波数スペクトラムに変換される。なお、FFT処理部42から出力される周波数スペクトラムは、回路の設定条件などにより周波数分解能δfの周波数スペクトラムデータとして出力される。
ドプラ情報解析部44は、周波数スペクトラムに変換された復調信号からドプラ信号を抽出する。後に詳述するが、本実施形態では、変調波生成部24における変調処理と遅延回路25における遅延処理により目標位置が設定され、ドプラ情報解析部44において目標位置からのドプラ信号が選択的に抽出される。ドプラ情報解析部44は、例えば、時間的に変化するドプラ信号の表示波形を形成する。なお、生体内の各深さ(各位置)ごとにドプラ信号を抽出して、例えば、超音波ビーム(音線)上の各深さごとに生体内組織の速度を算出し、リアルタイムで出力してもよい。また、超音波ビームを走査させて二次元的あるいは三次元的に生体内組織の各位置の速度を算出してもよい。
表示部46は、ドプラ情報解析部44において形成されたドプラ信号の波形などを表示する。なお、図1に示す超音波診断装置内の各部は、システム制御部50によって制御される。つまり、システム制御部50は、送信制御や受信制御や表示制御などを行う。
以上、概説したように、本実施形態では、連続波(CW)を変調波でFM変調した超音波(FMCW波)を送受波して受信信号が得られて、目標位置からのドプラ情報が選択的に抽出される。そこで、目標位置からのドプラ情報が選択的に抽出される原理について詳述する。なお、図1に示した部分(構成)については、以下の説明においても図1の符号を利用する。
周波数fのRF波(搬送波)に対して、周波数fの正弦波によりFM変調を施したFMCW送信波は次式のように表現できる。
Figure 2010125246
数1式において、Δfは周波数変動幅の0−P値(ゼロピーク値:最大周波数偏移)であり、最大周波数偏移Δfと変調周波数fの比であるβはFMの変調指数である。
また、ドプラシフトを伴う場合のFMCW受信波は、生体における往復の減衰をαとすると次式で表現できる。
Figure 2010125246
なお、数2式においてfに対するドプラシフトは、fのシフト分fに比較して小さいので無視している。
図2は、本実施形態における送信波と受信波を説明するための図である。図2(a)は、FMCW送信波(送信信号)の波形(数1式参照)を示しており、横軸が時間軸であり縦軸が振幅である。また、図2(b)は、FMCW送信波(送信信号)とFMCW受信波(受信信号)の各々についての瞬時周波数変化を示している。図2(b)の横軸は時間軸であり縦軸は周波数(瞬時周波数)である。なお、図2(a)と図2(b)の時間軸は互いに揃えられている。
図2(b)に示されるように、送信信号(破線)は、周期T=1/fで周波数を変化させた連続波となっている。また、受信信号(実線)は、送信信号から、位相角でφだけ遅れている。なお、図2(b)においては、数2式で示した受信信号の減衰やドプラシフトを省略している。
数2式で表される受信波形は、超音波振動子を介して受信される信号波形(受信RF信号)である。FMCWドプラでは、受信RF信号に対する復調処理において、FMCW送信波を参照信号として受信波と乗算を行う。図1を利用して説明したように、FM変調器20から出力されるFM連続波が遅延回路25において遅延処理され、参照信号として、ミキサ32には遅延処理されたFM連続波が直接供給され、一方、ミキサ34には遅延処理されたFM連続波がπ/2シフト回路26を経由して供給される。したがって、ミキサ32へ供給される参照信号vrI(t)と、ミキサ34へ供給される参照信号vrQ(t)は、次式のように表現できる。
Figure 2010125246
数3式において、φmrは、遅延回路25における遅延処理により任意に設定できる参照信号の位相を示しており、φ0rは、任意に設定した参照信号の位相に対応して決まる搬送波の位相変化量を示している。
受信ミキサ30では、復調処理として直交検波が行われる。つまり、ミキサ32において、受信RF信号v(t)と参照信号vrI(t)の乗算に相当する処理が実行され、また、ミキサ34において、受信RF信号v(t)と参照信号vrQ(t)の乗算に相当する処理が実行される。
ミキサ32における受信RF信号v(t)と参照信号vrI(t)の乗算vDI(t)は次式のように表現される。なお、次式の計算途中において、周波数2fの成分が消去されている。これは、LPF36によって除去される。
Figure 2010125246
ここで、ベッセル関数に関する次の公式を利用する。
Figure 2010125246
数5式の公式を用いると、数4式はさらに次式のように計算される。
Figure 2010125246
一方、ミキサ34における受信RF信号v(t)と参照信号vrQ(t)の乗算vDQ(t)は次式のように表現される。なお、次式の計算途中において、周波数2fの成分が消去されている。これは、LPF38によって除去される。
Figure 2010125246
ここで、数6式のvDI(t)と数7式のvDQ(t)とに基づいて、複素ベースバンド信号を定義する。まず、vDI(t)とvDQ(t)に含まれている直流(DC)成分、変調周波数fの偶数次高調波成分を次式のように表現する。
Figure 2010125246
次に、vDI(t)とvDQ(t)に含まれている変調周波数fの成分、変調周波数fの奇数次高調波成分を次式のように表現する。
Figure 2010125246
数8式と数9式から、直交検波後のベースバンド信号において、ドプラシフトfを含んだドプラ信号は、DC成分と変調周波数fの成分と変調周波数fの高調波成分とからなる複数の成分の各々についての両側帯波として出現することがわかる。通信工学ではこの種の信号形式を両側帯波搬送波除去変調(Double-Sideband Suppressed-Carrier, DSB-SC)と呼んでいる。
ここで、受信信号と参照信号の位相を互いに揃えた場合、つまり、遅延回路25における遅延処理によりφmrを調整してφと一致させた場合(φmr=φ)を考える。φmrとφを一致させた場合には、数4式におけるkが0となる。この結果を数5式のベッセル関数に適用すると、次式のように、0次のベッセル関数の値のみが1となり、それ以外のベッセル関数の値は0となる。
Figure 2010125246
数10式に示す結果を数8式と数9式に適用すると次式のとおりとなる。
Figure 2010125246
数11式は、参照波(参照信号)の位相φmrを送受信間の位相差φに設定すると、圧縮変換により、DC成分(直流信号成分)に対応したドプラ信号のみが抽出できることを示している。その結果として得られる複素ドプラ周波数fの値と極性は、血流などの流体の速度とその極性を表わしている。また、ドプラ信号の振幅は、搬送波および参照波の位相に依存しないこともわかる。
この事実は以下のように解釈することもできる。図1における遅延回路25は、参照波(参照信号)における変調波の位相φmrを、送受信間の変調波の位相差φに設定する役目を持っている。しかし、この遅延回路25は変調波の位相ばかりでなく、搬送波の位相も同時に変化させる。この値がφ0rである。搬送波の位相は、参照波における変調波の位相φmrに応じて変化するので、送受信間の変調波の位相差に応じた特定の値に定めることができない。しかし、数11式に示されているように、φ0rは、φと同様に、どんな値になろうとも、直交検波する限りは、ドプラ信号の振幅、周波数およびその極性に影響を与えない。
そのため、例えば、変調信号(変調波)のみを目標位置の深さに応じた遅延量だけ遅延処理して遅延変調信号を形成し、その遅延変調信号を用いて搬送波信号を変調処理することにより参照信号を形成し、その参照信号とπ/2だけ位相をずらした参照信号とを用いて復調処理を施すようにしてもよい。
そして、本実施形態においては、以下に説明するように、PWドプラ(パルスドプラ)と同様に特定位置のドプラ情報をCWドプラと類似の比較的良好なSNRで得ることができる。数6式から数9式において、ドプラ信号の振幅を支配するJ(kβ)の因数であるkβについて考察する。数4式におけるkの定義から、kβは次式のように表現できる。
Figure 2010125246
数12式は、kβが深さdに依存して正弦波状に変化することを意味している。
図3は、kβが深さdに依存して正弦波状に変化する様子を示す図である。第1次ベッセル関数の性質により、kβが0のときにJ(kβ)が最大値となる。図3において実線で示されるkβの波形は、体表からの深さdが正の範囲において0となる深さが3箇所ある。これら3箇所の深さから得られるドプラ信号の振幅が最大となることを意味している。
数12式などから、目的とする深さからの受信信号の位相φと、参照波の位相φmrとを一致させるとkβを0とすることができ、kβが0となる深さにおいてJ(kβ)が最大となりドプラ信号の振幅が最大となる。つまり、遅延回路25において、目的とする深さからの受信信号の位相φと参照波の位相φmrを一致させることにより、目的とする深さからのドプラ信号の振幅が最大となるようにして、そのドプラ信号を選択的に抽出することができる。
以上のように、ドプラ信号が選択的に抽出される目標位置は、遅延回路25における遅延処理に基づいて決定される。図1のシステム制御部50は、目標位置の深さに応じて遅延回路25における遅延時間を制御する。
さらに、本実施形態においては、FM連続波の周期性に伴うドプラ信号の不要波が除去され、必要とされるドプラ信号が抽出される。そこで、その抽出処理について以下に詳述する。なお、図1に示した部分(構成)については、以下の説明においても図1の符号を利用する。
まず、ドプラ法の基本原理において、移動体(例えば血流)に関するドプラ周波数(ドプラシフト周波数)は、計測に利用される超音波の周波数と移動体の速度に比例する。本実施形態においては、FM連続波を利用しており、FM連続波は、図2を利用して説明したように、周波数(瞬時周波数)が周期的に変化している。そのため、移動体の速度が一定の場合においても、FM連続波を利用してその移動体のドプラ周波数を計測すると、FM連続波の周期性に伴ってドプラ周波数が周期的に変動する。
図4は、FM連続波の周期性がドプラ周波数へ与える影響を説明する図である。図4には、ドプラシフトの影響を受けていないFM連続波60と、ドプラシフトの影響を受けたFM連続波62が図示されている。なお、図4の横軸は時間軸であり、図4の縦軸にはFM連続波60,62の瞬時周波数が示されている。
本実施形態における超音波の送信信号は、その瞬時周波数がFM連続波60のように周期的に正弦波状に変化する。そのため、移動体の速度が一定の場合においても、ドプラシフトが周期的に変化し、その結果としてFM連続波62のような波形が得られる。つまり、FM連続波60の瞬時周波数が低い(小さい)時刻においては、比較的小さいドプラ周波数fdLとなり、FM連続波60の瞬時周波数が高い(大きい)時刻においては、比較的大きいドプラ周波数fdHとなる。
このように、FM連続波60を利用して得られるドプラ周波数の変動は、FM連続波60の周期性に対応した周期的なものとなる。特に、移動体の速度が大きい場合には、ドプラ周波数fdLとドプラ周波数fdHの差も大きくなり、ドプラ周波数の周期性が比較的顕著になる。一方、移動体の速度が小さい場合にはドプラ周波数fdLとドプラ周波数fdHの差が小さくなり、ドプラ周波数の周期性が比較的目立たなくなる。
本実施形態における超音波の送信信号は、周波数fのRF波(搬送波)に対して、周波数fの正弦波によりFM変調を施したFMCW送信波であり、その信号は前述の数1式のとおりである。その送信信号(FMCW送信波)の瞬時角周波数は、数1式の位相項を時間微分して次式のように表現される。
Figure 2010125246
ここで、ドプラシフトを音速(超音波の速度)cと移動体の速度vの比だけ、瞬時周波数が変化する量として定義する。この場合、相対速度vに対するドプラ周波数変化は往復で速度2vとして次式で表現される。
Figure 2010125246
数14式で表現されるドプラ周波数変化を瞬時位相に変換すると次式となる。
Figure 2010125246
数15式で表現される瞬時位相は、移動体からの受信波の瞬時位相に対して、初項で表現される搬送波fによるドプラシフトに加え、第2項で表現される変調波によるドプラシフトが追加されることを意味している。なお、第3項は積分定数であり、ドプラ周波数の位相を意味する。一般に、血流などの速度計測では、ドプラ周波数の位相情報までは必要としない。また、時間的に変化しない位相成分であるため、速度計測において物理的に大きな意味を含んでいないと考える。
受信波は、送受信時間差(目標位置までの往復の伝播時間)τだけ送信波よりも遅れて到着するため、送受信時間差τを考慮すると、受信波は次式のように表現される。
Figure 2010125246
受信ミキサ30では、送信波に実質的に同じ波形の参照波(参照信号)と受信波との乗算(次式)に相当する処理が実行される。
Figure 2010125246
数17式から2fの周波数成分をローパスフィルタで除去すると、受信ミキサ30の出力(例えばLPF36の出力)は次式のように表現することができる。
Figure 2010125246
数18式の結果について、さらに計算を進めると、次式のようになる。
Figure 2010125246
数19式は、ドプラ信号が、新たに定義された変調度β´(数18式参照)と変調周波数fにより周波数変調された信号に等しいことを意味している。
図5は、周波数変調の影響を受けたドプラ信号を説明するための図であり、図5には、数19式に対応したドプラ信号の周波数スペクトラムが示されている。なお、図5の横軸は周波数であり縦軸は電力である。
図5や数19式に示されるように、変調信号の影響を受けたドプラ信号には、変調周波数fのゼロ次成分である直流成分J(β´)に加え、1次成分J(β´),2次成分J(β´),3次成分J(β´),・・・の折り返し成分が含まれている。
本実施形態においては、必要とされるドプラ信号として、ゼロ次成分である直流成分を抽出する。そのため、本実施形態においては、折り返し成分である1次成分,2次成分,3次成分,・・・を不要波成分とする。不要波成分の電力は、FM変調度βとドプラ周波数、すなわち血流などの速度に依存して変化する。
図6は、FM変調度β=20の場合における各成分の電力を示す図であり、図7は、FM変調度β=50の場合における各成分の電力を示す図である。図6,図7における波形は、測定対象である血流の速度を変化させた場合の直流成分と1次成分以上の不要波成分の電力を示している。なお、図6,図7の縦軸に示す相対電力は、直流成分の電力に対する相対的な大きさである。図6,図7に示すように、不要波の電力は、直流成分の電力との比較において、10〜20dB以下であることがわかる。
そこで、本実施形態においては、FFT処理部42により形成される周波数スペクトラム内におけるスペクトラムの電力に基づいて、必要とされるドプラ信号として、直流成分を抽出する。
図8は、FFT処理部42により形成される周波数スペクトラムを示す図である。先に説明したように(図5、数19式参照)、受信ミキサ30とローパスフィルタの処理により得られる復調信号(ベースバンド信号)に含まれるドプラ信号は、変調周波数のゼロ次成分である直流成分に加え、1次成分や2次成分などの不要波成分が含まれている。
図8には、直流成分と1次成分(−1次成分)と2次成分の各々についての時間変化波形が示されている。横軸に示す時間の経過に伴って測定対象である血流などの速度が変化すると、速度の変化に応じてドプラ周波数fも変化する。そのため、図8に示す各成分の波形は、横軸に示す時間の経過に従って縦軸に示す周波数方向に変化している。
本実施形態のようなFMCWを利用したドプラ計測では、PW(パルス波)を利用したドプラ計測において出現する折り返し周波数成分が存在しない。つまり、PWドプラシステムでは、PRF(パルス繰り返し周波数)の影響により、PRF/2以上のドプラ周波数が折り返し成分として負の周波数領域に移行して出現してしまう。
これに対し、本実施形態のFMCWドプラシステムでは、PRFが存在しないため、PRFの影響による折り返し成分が出現しない。また、FMCWドプラシステムでは、PRFに相当する変調周波数fの1/2以上の周波数においても、折り返し無くドプラ周波数を計測できる。但し、FMCWドプラシステムでは、1次成分や2次成分などの不要波成分が発生する。そこで、本実施形態では、ドプラ情報解析部44において、不要波成分が除去されて直流成分のみが抽出される。
ドプラ情報解析部44は、FFT処理部42により形成された周波数スペクトラムを周波数軸方向に沿って微小間隔で連続的に区切って複数の周波数要素に分割する。例えば、図8に示すうに、横軸の時刻tにおいて、縦軸の周波数を複数の周波数ピクセルP1,P2,・・・に分割する。周波数の分割は、変調周波数fごとに周期的に行われる。例えば、周波数0〜周波数fまでの0次帯域内において、互いに同じ大きさの複数の周波数ピクセルP1〜PNに周波数が分割される。また、周波数f〜周波数2fまでの1次帯域内においても、互いに同じ大きさの複数の周波数ピクセルP1〜PNに周波数が分割される。同様に、2次帯域や−1次帯域も複数の周波数ピクセルP1〜PNに分割される。
周波数軸方向に沿って周波数スペクトラムが複数の周波数要素(周波数ピクセルP1〜PN)に分割されると、ドプラ情報解析部44は、変調周波数fの整数倍だけ互いに異なる周波数に対応した複数の周波数要素で構成される要素グループの中から、電力が最大の周波数要素を抽出する。例えば、−1次帯域から2次帯域までの各帯域に含まれる周波数ピクセルP1を要素グループとし、−1次帯域から2次帯域までの4つの周波数ピクセルP1の電力を比較し、電力が最大である周波数ピクセルP1を抽出する。
次に−1次帯域から2次帯域までの各帯域に含まれる周波数ピクセルP2を要素グループとし、−1次帯域から2次帯域までの4つの周波数ピクセルP2の電力を比較し、電力が最大である周波数ピクセルP2を抽出する。ちなみに、図8に示す例では、時刻tにおいて、4つの周波数ピクセルP2のうち、0次帯域の周波数ピクセルP2の電力が最大となり、0次帯域の周波数ピクセルP2が抽出される。
同様に、周波数ピクセルP3,P4,・・・,PNの各々についても、−1次帯域から2次帯域までの4つの周波数ピクセルの中から最大電力のものが抽出される。これにより、時刻tにおいて、直流成分の周波数ピクセルとして、最大電力の周波数ピクセルが次々に抽出される。
ドプラ情報解析部44は、時刻tにおける周波数ピクセルの抽出と同じ手法により、図8の横軸に沿って複数の時刻に亘って各時刻ごとに、直流成分の周波数ピクセルを抽出する。これにより、1次成分や2次成分などの不要波成分が除去され、不要波成分よりも電力の大きい直流成分の波形が抽出される。
図9は、ドプラ情報解析部44により抽出された直流成分の波形を示す図である。図8に示す周波数スペクトラム内から、1次成分や2次成分などの不要波成分が除去され、直流成分の波形のみが抽出される。例えば、図9に示す直流成分の時間変化波形が、ドプラ信号の時間変化波形として、表示部46に表示される。
本実施形態によれば、図9に示すように、直流成分の波形が周波数軸方向に大きく変化して変調周波数fを超えた場合においても、直流成分を適切に抽出することができるため、変調周波数fに制限されることなく、比較的高速の血流などを計測することが可能になる。
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した本発明の好適な実施形態等は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
例えば、上述した実施形態においては、周波数を周期的に変化させる連続波の変調送信信号を形成するにあたって、搬送波信号(RF波発振器22から供給されるRF波)に対して周波数変調処理を施している。この周波数変調処理に換えて、周波数変調処理と同じ角度変調の方式として一般によく知られている位相変調処理(PM処理)を利用してもよい。つまり、搬送波信号(RF波発振器22から供給されるRF波)に対して位相変調処理を施すことにより、FM変調器20から出力されるFM連続波と同じ波形あるいは同等な波形を形成してもよい。なお、周波数を周期的に変化させる連続波のデータをメモリなどに記憶しておき、このメモリから読み出されるデータに基づいて、当該連続波を生成してもよい。また、変調波形としては、正弦波に限定されず、鋸歯状波あるいは三角波を用いてもよい。
本発明に係る超音波診断装置の全体構成を示す機能ブロック図である。 本実施形態における送信波と受信波を説明するための図である。 kβが深さdに依存して正弦波状に変化する様子を示す図である。 FM連続波の周期性がドプラ周波数へ与える影響を説明する図である。 周波数変調の影響を受けたドプラ信号を説明するための図である。 FM変調度β=20の場合における各成分の電力を示す図である。 FM変調度β=50の場合における各成分の電力を示す図である。 FFT処理部により形成される周波数スペクトラムを示す図である。 ドプラ情報解析部により抽出された直流成分の波形を示す図である。
符号の説明
20 FM変調器、22 RF波発振器、24 変調波生成部、25 遅延回路、42 FFT処理部、44 ドプラ情報解析部。

Claims (5)

  1. 変調周波数に応じて周期的に周波数を変化させた連続波の送信信号を出力する送信信号処理部と、
    前記送信信号に基づいて超音波の送信波を生体に送波してその送信波に伴う受信波を生体から受波することにより得られる受信信号に対して、前記送信信号に実質的に等しい波形の参照信号を用いて復調処理を施す受信信号処理部と、
    復調処理により得られた信号からドプラ信号を抽出するドプラ信号抽出部と、
    を有し、
    前記受信信号処理部は、生体内の目標位置から得られる受信信号との間の相関関係が調整された参照信号を用いて前記復調処理を施すことにより、前記目標位置に対応した復調信号を選択的に抽出し、
    前記ドプラ信号抽出部は、前記目標位置に対応した復調信号に含まれる、直流成分と前記変調周波数の基本波成分と前記変調周波数の高調波成分の中から、直流成分をドプラ信号として抽出する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  2. 請求項1に記載の超音波診断装置において、
    前記ドプラ信号抽出部は、前記目標位置に対応した復調信号の周波数スペクトラム内におけるスペクトラムの電力に基づいて前記直流成分を抽出する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  3. 請求項2に記載の超音波診断装置において、
    前記ドプラ信号抽出部は、前記周波数スペクトラムを周波数軸方向に沿って微小間隔で連続的に区切って複数の周波数要素に分割し、前記変調周波数の整数倍だけ互いに異なる周波数に対応した複数の周波数要素で構成される要素グループの中から、電力が最大の周波数要素を前記直流成分の周波数要素として抽出する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  4. 請求項3に記載の超音波診断装置において、
    前記ドプラ信号抽出部は、前記周波数スペクトラムの時間軸方向に沿って、各時刻ごとに、複数の要素グループの各々から、電力が最大の周波数要素を前記直流成分の周波数要素として抽出する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
  5. 請求項4に記載の超音波診断装置において、
    前記ドプラ信号抽出部は、前記直流成分の周波数要素として抽出された複数の周波数要素に基づいて、時間的に変化するドプラ信号の表示波形を形成する、
    ことを特徴とする超音波診断装置。
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