JP2008090919A - 磁気ディスクの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基板10上に磁性層50と保護層60と潤滑層70を順に備える磁気ディスクの製造方法であって、基板10上に磁性層50と保護層60を順に形成した後、前記保護層60を常圧下でのプラズマに曝す処理を行う。上記プラズマに曝される保護層表面付近には酸素又は水分が存在しないような状態で処理を行う。しかる後、前記保護層60上に前記潤滑層70を形成する。
【選択図】図1
Description
このような要求に対し、従来、上記保護層の材料としては、炭素系材料が用いられており、特に耐久性に優れている点からダイヤモンドライクカーボン(以下「DLC」と略称する。)が多く用いられてきた。通常、DLCからなる保護層はスパッタ法やCVD法で成膜される。このような方法で成膜される従来のDLC保護層は、剛性の高い水素原子を含む水素化(CHカーボン)DLC層と、その上層に、潤滑層との密着性を考慮して、水素化DLCよりは剛性の劣る窒素原子等を含む窒素化DLC層を設けた二層構造のものが一般的である(例えば下記特許文献1、2参照)。また、このような保護層の上には潤滑層が設けられ、最表面に用いられる潤滑層は、長期安定性、化学物質耐性、摩擦特性、耐熱特性等の様々な特性が求められる。
そこで、保護層のさらなる薄膜化を実現するため、機械的強度が高く、しかも潤滑層との高い親和性を有する磁気ディスク用保護層が求められていた。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)非磁性基板上に少なくとも磁性層と保護層と潤滑層を順次形成する磁気ディスクの製造方法であって、常圧下でのプラズマに被処理基板を曝す処理を行う工程を含み、該工程は前記プラズマに曝される被処理基板の表面付近には酸素又は水分が存在しないような状態で処理を行うことを特徴とする磁気ディスクの製造方法である。
(構成2)非磁性基板上に少なくとも磁性層と保護層と潤滑層を順次形成する磁気ディスクの製造方法であって、常圧下でのプラズマに被処理基板を曝す処理を行う工程を含み、該工程は前記プラズマに曝される被処理基板の表面付近に窒素を供給しながら処理を行うことを特徴とする磁気ディスクの製造方法である。
(構成3)磁性層等を形成する前の前記非磁性基板に対して、前記プラズマに曝す処理を行うことを特徴とする構成1又は2に記載の磁気ディスクの製造方法である。
(構成4)前記非磁性基板上に保護層まで形成した基板の保護層表面に対して、前記プラズマに曝す処理を行うことを特徴とする構成1乃至3の何れか一に記載の磁気ディスクの製造方法である。
(構成5)前記保護層は、水素化炭素系保護層であることを特徴とする構成4に記載の磁気ディスクの製造方法である。
(構成6)前記保護層の膜厚が、0.5nm〜3.0nmの範囲であることを特徴とする構成4又は5に記載の磁気ディスクの製造方法である。
さらに、請求項6に係る発明にあるように、前記保護層の膜厚を、0.5〜3.0nmと、従来よりも薄膜化することが可能である。
本発明に係る磁気ディスクの製造方法の一実施の形態は、非磁性基板上に少なくとも磁性層と保護層と潤滑層を順次形成する磁気ディスクの製造方法であって、常圧下でのプラズマに被処理基板を曝す処理を行う工程を含み、該工程は前記プラズマに曝される被処理基板の表面付近には酸素又は水分が存在しないような状態で処理を行うことである。このような磁気ディスクの製造方法によれば、常圧下でのプラズマ処理時に雰囲気中に硝酸やアンモニアなどが発生してもそれらがプラズマ処理面へ付着してコンタミとなるのを防止でき、プラズマ処理後の基板表面を清浄な状態に保つことができる。
なお、保護層を、水素化炭素系保護層(例えば水素化DLC層)と、その上層の窒素化炭素系保護層(例えば窒素化DLC層)との二層構造とする場合においても、潤滑層を形成する前に、かかる保護層に対して本発明による常圧でのプラズマ処理を施すことにより、このプラズマ処理を施さずに潤滑層を形成した場合よりも更に密着性の良好な潤滑層とすることができる。
本発明においては、保護層を水素化炭素系保護層(例えば水素化DLC層)とする場合、保護層の膜厚を、例えば0.5〜3.0nm、好ましくは1.0〜3.0nmとすることができ、従来よりも薄膜化することが可能である。
また、本発明では、基板上に例えば上記成膜法を用いて磁性層と保護層を順に形成した後は、常圧下でのプラズマ処理ができるので、次工程の潤滑剤塗布工程へオンラインで処理することが可能になるという大きな利点がある。また、保護層を例えば水素化炭素系保護層の一層とする場合は、水素化炭素系保護層と窒素化炭素系保護層の二層とする場合と比べれば超高真空チャンバーを一つ減らせることも利点である。
成膜した潤滑層の保護層への付着力をより向上させるために、成膜後に磁気ディスクを70℃〜200℃の雰囲気に曝してもよい。
また、ガラス基板の主表面には、例えば磁性層の磁気異方性を高めるため、テクスチャ形状(例えば円周状テクスチャ)を形成してもよい。例えば円周状テクスチャを形成するためには、ガラス基板の主表面に適当な材質の研磨用テープを押し当て、ガラス基板とテープとを相対的に移動させる方法などが挙げられる。
本発明においては、上記基板の主表面の粗さは、Rmaxが6nm以下、Raが0.6nm以下の超平滑であることが好ましい。なお、ここでいうRmax、Raは、JIS B0601の規定に基づくものである。
(実施例1)
図1は、本発明の一実施の形態による磁気ディスクである。
磁気ディスクは、基板10上に順次、付着層20、軟磁性層30、下地層40、垂直磁気記録層50、保護層60、潤滑層70が順次形成されてなる。
化学強化されたアルミノシリケートガラスからなる2.5インチ型ガラスディスク(外径65mm、内径20mm、ディスク厚0.635mm)を準備し、ディスク基板10とした。ディスク基板10の主表面は、Rmaxが4.8nm、Raが0.43nmに鏡面研磨されている。
次に、プラズマリアクターを用いて、上記基板10を、常圧(大気中)下、窒素ガス中で高周波プラズマにて発生した窒素プラズマに所定時間曝した。なお、上記プラズマリアクター内には窒素ガスを導入し、該プラズマリアクター内全体を窒素雰囲気となるようにしてプラズマ処理を行った。
付着層20は、CrTi合金膜(Cr:50原子%、Ti:50原子%)を200Åの膜厚で成膜した。
軟磁性層30は、CoZrTa合金膜(Co:88原子%、Zr:5原子%、Ta:7原子%)を500Åの膜厚で成膜した。
下地層40は、Ta膜とRu膜を積層して300Åの膜厚で成膜した。
垂直磁気記録層50は、CoCrPt合金膜(Co:62原子%、Cr:20原子%、Pt:18原子%)を200Åの膜厚で成膜した。
次に、再びプラズマリアクターを用いて、上記保護層60まで成膜した磁気ディスクを、常圧(大気中)下、窒素ガス中で高周波プラズマにて発生した窒素プラズマに所定時間曝した。なお、この際にも上記プラズマリアクター内には窒素ガスを導入し、該プラズマリアクター内全体を窒素雰囲気となるようにしてプラズマ処理を行った。
潤滑剤として、パーフルオロポリエーテル系潤滑剤であるソルベイソレクシス社製のフォンブリンゼットドール(商品名)をGPC法で分子量分画し、Mwが3000、分子量分散度が1.08としたものを使用し、これをフッ素系溶媒である三井デュポンフロロケミカル社製バートレルXF(商品名)に0.02重量%の濃度で分散溶解させた溶液を調整した。この溶液を塗布液とし、上記プラズマ処理した磁気ディスクを浸漬させ、ディップ法で塗布することにより潤滑層70を成膜した。成膜後、磁気ディスクを真空焼成炉内で130℃、90分間加熱処理した。潤滑層70の膜厚をフーリエ変換型赤外分光光度計(FTIR)で測定したところ15Åであった。
こうして、本実施例の磁気ディスクを得た。
(磁気ディスクの評価)
保護層に対する潤滑層の付着性能(密着性)を評価するために、潤滑層付着性試験を行った。まず、本実施例の磁気ディスクの潤滑層膜厚をFTIR法で測定した結果、前記のように15Åであった。次に、本実施例の磁気ディスクを前記フッ素系溶媒バートレルXFに1分間浸漬させた。溶媒に浸漬させることで、付着力の弱い潤滑層部分(流動潤滑層)は溶媒に分散溶解してしまうが、付着力の強い潤滑層部分(固定潤滑層)は保護層上に残留することができる。次に、磁気ディスクを溶媒から引き上げ、再び、FTIR法で潤滑層膜厚を測定した。溶媒浸漬前の潤滑層膜厚に対する、溶媒浸漬後の潤滑層膜厚の比率を潤滑層密着率(ボンデッド(bonded)率)と呼ぶ。ボンデッド率が高ければ高いほど、保護層に対する潤滑層の付着性能(密着性)が高いと言える。本実施例の磁気ディスクでは、ボンデッド率は85%であった。従来の基準では、ボンデッド率は70%以上であることが好ましいとされていたので、本実施例の磁気ディスクは、保護層に対する潤滑層の密着性に極めて優れていることがわかる。
要するに、本発明によれば、実施例1のように機械的強度の高い水素化DLC保護層のみを用いた磁気ディスクを製造することができ、保護層の膜厚も従来と比べて薄膜化することができ、しかも保護層上に所望の膜厚で密着性の優れた潤滑層を形成することができる。
LUL方式のHDD(ハードディスクドライブ)(5400rpm回転型)を準備し、浮上量が10nmの磁気ヘッドと磁気ディスクを搭載した。磁気ヘッドのスライダーはNPABスライダーであり、再生素子は磁気抵抗効果型素子(GMR素子)を搭載している。シールド部はFeNi系パーマロイ合金である。このLUL方式のHDDに連続LUL動作を繰り返させて、故障が発生するまでに磁気ディスクが耐久したLUL回数を計測した。
本実施例では、実施例1と同様にして基板10上に磁気記録層50まで形成し、次いで、該磁気記録層50上に、プラズマCVD法により、水素化DLCからなる保護層60を膜厚25Åで成膜した後、プラズマリアクターを用いて、上記保護層60まで成膜した磁気ディスクを、常圧(大気中)下、窒素と酸素の混合ガス(窒素:酸素=1体積%:0.025体積%)中で高周波プラズマにて発生した酸素プラズマに所定時間曝した。なお、上記プラズマリアクター内には窒素ガスを導入し、該プラズマリアクター内全体を窒素雰囲気となるようにしてプラズマ処理を行った。
次いで、実施例1と同様にして保護層60上に潤滑層70を形成し、本実施例の磁気ディスクを作製した。潤滑層70の膜厚をフーリエ変換型赤外分光光度計(FTIR)で測定したところ15Åであった。
まず、実施例1と同様に、潤滑層付着性試験を行ったところ、本実施例の磁気ディスクでは、ボンデッド率は85%であった。本実施例によれば、機械的強度の高い水素化DLC保護層のみを用いた磁気ディスクを製造することができ、保護層の膜厚も従来と比べて薄膜化することができ、しかも保護層上に所望の膜厚で密着性の優れた潤滑層を形成することができる。
前記保護層を、プラズマCVD法で成膜した30Åの水素化DLCとその上に同じくプラズマCVD法で成膜した5Åの窒素化DLCの積層からなる保護層とし、常圧プラズマ処理は行わずに保護層上に潤滑層を形成したこと以外は実施例1と同様にして磁気ディスクを作製した(比較例1の磁気ディスクとする。)。また、前記保護層を、プラズマCVD法で成膜した25Åの水素化DLCからなる保護層とし、常圧プラズマ処理(但し、プラズマ発生ガスとして窒素ガスを用いた以外は、プラズマリアクター内全体を窒素雰囲気とするための窒素ガスの導入は行わなかった。)を行った後、保護層上に潤滑層を形成したこと以外は実施例1と同様にして磁気ディスクを作製した(比較例2の磁気ディスクとする。)。なお、比較例1,2の磁気ディスクにおいて、潤滑剤塗布条件やプラズマ処理時間(比較例2の場合)を適宜調節して、潤滑層膜厚は実施例1の磁気ディスクと略合わせるようにして作製した。
まず、実施例1と同様に、潤滑層付着性試験を行ったところ、比較例1の磁気ディスクのボンデッド率は70%であり、比較例2の磁気ディスクではボンデッド率は73%であった。保護層の構成は実施例1と同様であるが、潤滑層を形成する前の常圧プラズマ処理の際にプラズマリアクター内全体を窒素雰囲気とするための窒素ガスの導入は行わなかった比較例2の磁気ディスクでは、実施例1と比較すると、雰囲気中に発生した酸性コンタミの付着に起因すると考えられる潤滑層の密着性の低下がみられる。
20 付着層
30 軟磁性層
40 下地層
50 垂直磁気記録層
60 保護層
70 潤滑層
Claims (6)
- 非磁性基板上に少なくとも磁性層と保護層と潤滑層を順次形成する磁気ディスクの製造方法であって、
常圧下でのプラズマに被処理基板を曝す処理を行う工程を含み、該工程は前記プラズマに曝される被処理基板の表面付近には酸素又は水分が存在しないような状態で処理を行うことを特徴とする磁気ディスクの製造方法。 - 非磁性基板上に少なくとも磁性層と保護層と潤滑層を順次形成する磁気ディスクの製造方法であって、
常圧下でのプラズマに被処理基板を曝す処理を行う工程を含み、該工程は前記プラズマに曝される被処理基板の表面付近に窒素を供給しながら処理を行うことを特徴とする磁気ディスクの製造方法。 - 磁性層等を形成する前の前記非磁性基板に対して、前記プラズマに曝す処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気ディスクの製造方法。
- 前記非磁性基板上に保護層まで形成した基板の保護層表面に対して、前記プラズマに曝す処理を行うことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載の磁気ディスクの製造方法。
- 前記保護層は、水素化炭素系保護層であることを特徴とする請求項4に記載の磁気ディスクの製造方法。
- 前記保護層の膜厚が、0.5nm〜3.0nmの範囲であることを特徴とする請求項4又は5に記載の磁気ディスクの製造方法。
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