JP5631604B2 - 磁気ディスクの製造方法 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層が順次設けられた磁気ディスクの製造方法であって、前記潤滑層は、構造中にパーフルオロポリエーテル主鎖を有し且つヒドロキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を、沸点が90℃以上のフッ素系溶媒に分散溶解させた塗布液を用いて形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法である。
(構成3)前記潤滑層中に含有される前記パーフルオロポリエーテル化合物は、1分子中にヒドロキシル基を4個以上有する化合物であることを特徴とする構成1又は2に記載の磁気ディスクの製造方法である。
(構成4)前記潤滑層中に含有される前記パーフルオロポリエーテル化合物の数平均分子量が、1000〜10000の範囲であることを特徴とする構成1乃至3のいずれか一項に記載の磁気ディスクの製造方法である。
(構成6)前記保護層は、前記潤滑層に接する側に窒素を含むことを特徴とする構成5に記載の磁気ディスクの製造方法である。
(構成7)前記磁気ディスクは、起動停止機構がロードアンロード方式の磁気ディスク装置に搭載され、5nm以下のヘッド浮上量の下で使用される磁気ディスクであることを特徴とする構成1乃至6のいずれか一項に記載の磁気ディスクの製造方法である。
また、構成3に係る発明にあるように、前記潤滑層中に含有される前記パーフルオロポリエーテル化合物は、1分子中にヒドロキシル基を4個以上有する化合物であることが特に好ましい。潤滑層の保護層との密着性を高めるためには、潤滑剤分子中の極性基の数が多い方が好適であり、本発明によれば、このような極性の高い潤滑剤を用いてもその相互作用を緩和させることができるので、潤滑剤の凝集になりにくく、保護層との結合に有効に関与し、その結果、潤滑層の密着性を高められる。
本発明の磁気ディスクの製造方法は、基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層が順次設けられた磁気ディスクの製造方法であって、前記潤滑層は、構造中にパーフルオロポリエーテル主鎖を有し且つヒドロキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を、沸点が90℃以上のフッ素系溶媒に分散溶解させた塗布液を用いて形成することを特徴としている。
化学式
市販品を用いる場合は、適当な分子量分画により、例えば数平均分子量(Mn)を、1000〜10000の範囲としたものが適当である。この場合の分子量分画する方法に特に制約されないが、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による分子量分画や、超臨界抽出法による分子量分画などを用いることができる。
本発明に好ましく用いることができる沸点が90℃以上であるフッ素系溶媒としては、例えば以下の溶媒を挙げることができる。
1.C6F13OCH3(沸点98℃)
2.C3HF6−CH(CH3)O−C3HF6(沸点131℃)
このような室温よりも高い温度範囲の塗布液とすることにより、例えば分子中に少なくとも4個のヒドロキシル基を有するような極性の高い潤滑剤を溶媒中に分散溶解させても、分子間相互作用もしくは極性基同士の引き付けあいによる相互作用を緩和させて小さくすることができるため、潤滑剤分子の極性基が有効に保護膜上の活性点との結合に関与し、潤滑層の密着性を向上できる。また、潤滑剤の分子間相互作用が緩和されることで凝集になりにくいため、ディスク面上に塗布したときに薄膜の単分子層を形成することができる。また前にも説明したように、上記例示に係る沸点が90℃以上のフッ素系溶媒は、従来一般的に用いられているフッ素系溶媒よりも表面張力が高く、蒸気圧が低いため、ディップ塗布時に、ディスク面が潤滑剤塗布液中から大気中に出てもまだ濡れている領域の幅(液面からの引き上げ方向における幅)が大きく、ディスクを引き上げる際に発生する液面の波紋(波打っている状態)の影響を受けにくいため、塗布時の筋状の塗布ムラの様なものは発生しにくく、均一な塗布膜を形成することができる。
なお、従来一般的に用いられているフッ素系溶媒(商品名バートレル)の表面張力は、14.1mN/m、蒸気圧は、0.030Mpaである。これに対し、本発明におけるフッ素系溶媒である例えばHFE7300(商品名)(上記例示1の溶媒)の表面張力は、15.0mN/m、蒸気圧は、0.006Mpaである。これらの物性値は25℃における値である。
また、従来は、塗布液を室温下で調整する必要があったため、室温において液体である液体潤滑剤が一般に用いられていたが、本発明においては、室温において固体である固体潤滑剤(例えばパーフルオロポリエーテル長鎖アルキルアミンなど)であっても本発明の溶媒を温めることによって完全に溶解し使用することができる。
本発明においては、成膜した潤滑層の保護層への付着力をより向上させるために、成膜後に磁気ディスクを50℃〜150℃の雰囲気に曝して加熱処理を施してもよい。あるいは、磁気ディスクに対して紫外線(UV)照射を施してもよい。すなわち、後処理として、ベーク処理とUV処理の二つの処理が可能である。本発明においては、後処理として、ベーク処理とUV処理の二つの処理を併用することも好適である。
本発明においては、上記基板の主表面の粗さは、Rmaxが6nm以下、Raが0.6nm以下、さらに好ましくは、Rmaxが3nm以下、Raが0.3nm以下の超平滑であることが好ましい。なお、ここでいう表面粗さRmax、Raは、JIS B0601の規定に基づくものである。
高記録密度化に好適な垂直磁気記録ディスクとしては、基板上に付着層、軟磁性層、下地層、磁性層(垂直磁気記録層)、炭素系保護層、潤滑層を備える構成が好適である。この場合、上記垂直磁気記録層の上に交換結合制御層を介して補助記録層を設けることも好適である。
(実施例1)
本実施例の磁気ディスクは、ディスク基板上に、付着層、軟磁性層、第1下地層、第2下地層、磁性層、炭素系保護層、潤滑層が順次形成されてなる。
潤滑剤として、市販品のパーフルオロポリエーテル系潤滑剤であるソルベイソレクシス社製のフォンブリンゼットテトラオール(商品名)をGPC法で分子量分画し、Mnが3000、分子量分散度が1.08としたものを使用した。
化学強化されたアルミノシリケートガラスからなる2.5インチ型ガラスディスク(外径65mm、内径20mm、ディスク厚0.635mm)を準備し、ディスク基板とした。ディスク基板の主表面は、Rmaxが2.13nm、Raが0.20nmに鏡面研磨されている。
引き続き、プラズマCVD法により、ダイヤモンドライク炭素保護層を成膜し、窒素プラズマ処理して保護層表面に窒素を含有させた。なお、保護層の膜厚は50Åとした。
上記のように調整した潤滑剤を、前記例示1の溶媒に相当するフッ素系溶媒であるミネソタ マイニング アンド マニュファクチュアリング(3M)社製HFE7300(商品名)に0.2重量%の濃度、液温45℃で分散溶解させた溶液を調整した。この溶液を塗布液とし、上記保護層まで成膜された磁気ディスクを浸漬させ、ディップ法で塗布することにより潤滑層を成膜した。なお、塗布ムラの様なものは発生しなかった。
成膜後に、磁気ディスクを真空焼成炉内で130℃、90分間で加熱処理した。潤滑層の膜厚をフーリエ変換型赤外分光光度計(FTIR)で測定したところ15Åであった。こうして、実施例1の磁気ディスクを得た。
潤滑剤としては、実施例1と同じパーフルオロポリエーテル系潤滑剤であるソルベイソレクシス社製のフォンブリンゼットテトラオール(商品名)をGPC法で分子量分画し、Mnが3000、分子量分散度が1.08としたものを使用した。これをフッ素系溶媒である三井デュポンフロロケミカル社製バートレルXF(商品名)に分散溶解させた溶液(室温)を塗布液とし、保護層まで成膜された磁気ディスクを浸漬させ、ディップ法で塗布することにより潤滑層を成膜した。ここで、上記塗布液の濃度を適宜調整し、潤滑剤被覆率(カバレージ)が実施例1の磁気ディスクとほぼ同じ(95%)になるように成膜した。なお、ディスク面の外周側に筋状の塗布ムラが発生していた。
この点以外は実施例1と同様にして製造した磁気ディスクを比較例1とした。
図1は、原子間力顕微鏡(AFM)による潤滑剤高さ(段差)の測定結果を示したものであり、具体的には潤滑剤を上述の実施例1および比較例1の条件で、ディスクの半分だけ塗布し、その境にできる段差をAFMにより測定した。
また、図2は、磁気ヘッドをディスク内周側(ディスク半径15mm位置)で一旦浮上させ、装置内を減圧していき、ヘッドがディスク表面に接触したときの気圧の比較結果である。
LUL方式のHDD(5400rpm回転型)を準備し、浮上量が5nmの磁気ヘッドと実施例1の磁気ディスクを搭載した。磁気ヘッドのスライダーはNPAB(負圧)スライダーであり、再生素子は磁気抵抗効果型素子(GMR素子)を搭載している。シールド部はFeNi系パーマロイ合金である。このLUL方式HDDに連続LUL動作を繰り返させて、故障が発生するまでに磁気ディスクが耐久したLUL回数を計測した。
また、LUL耐久性試験後の磁気ディスク表面を光学顕微鏡及び電子顕微鏡で詳細に観察したが、傷や汚れ等の異常は観察されず良好であった。また、LUL耐久性試験後の磁気ヘッドの表面を光学顕微鏡及び電子顕微鏡で詳細に観察したが、傷や汚れ等の異常は観察されず、また、磁気ヘッドへの潤滑剤の付着や、腐食障害も観察されず良好であった。
すなわち、本発明によれば、薄膜化された潤滑層を形成でき、しかも高い耐久性(信頼性)が得られるので、磁気スペーシング、つまりヘッドと媒体間のクリアランス低減を実現できる。
潤滑層を以下のようにして形成した。
実施例1と同様にして調整した潤滑剤を、前記例示2の溶媒に相当するフッ素系溶媒であるミネソタ マイニング アンド マニュファクチュアリング(3M)社製HFE7600(商品名)に0.2重量%の濃度、液温45℃で分散溶解させた溶液を調整した。この溶液を塗布液とし、上記保護層まで成膜された磁気ディスクを浸漬させ、ディップ法で塗布することにより潤滑層を成膜した。なお、塗布ムラの様なものは発生しなかった。
成膜後に、磁気ディスクに対して、130℃、90分間の加熱処理と紫外線照射を行った。潤滑層の膜厚をフーリエ変換型赤外分光光度計(FTIR)で測定したところ15Åであった。こうして、潤滑層の形成以外は実施例1と同様にして、実施例2の磁気ディスクを得た。
潤滑剤としては、実施例1と同じパーフルオロポリエーテル系潤滑剤であるソルベイソレクシス社製のフォンブリンゼットテトラオール(商品名)をGPC法で分子量分画し、Mnが3000、分子量分散度が1.08としたものを使用した。これをフッ素系溶媒であるミネソタ マイニング アンド マニュファクチュアリング(3M)社製HFE7200(商品名)(沸点76℃)に分散溶解させた溶液(温度30℃)を塗布液とし、保護層まで成膜された磁気ディスクを浸漬させ、ディップ法で塗布することにより潤滑層を成膜した。ここで、上記塗布液の濃度を適宜調整し、潤滑剤被覆率が実施例1の磁気ディスクとほぼ同じになるように成膜した。なお、ディスク面の外周側に筋状の塗布ムラが発生していた。
この点以外は実施例1と同様にして製造した磁気ディスクを比較例2とした。
また、比較例2の磁気ディスクについても、5nmの超低浮上量の下でLUL耐久性試験を行なった結果、途中でフライスティクション障害が発生し、40万回でヘッドクラッシュにより故障した。LUL耐久性試験後の磁気ディスク表面を光学顕微鏡及び電子顕微鏡で詳細に観察したところ、若干の傷等が観察された。また、LUL耐久性試験後の磁気ヘッドの表面を光学顕微鏡及び電子顕微鏡で詳細に観察したところ、磁気ヘッドへの潤滑剤の付着や、腐食障害が観察された。
Claims (5)
- 基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層が順次設けられた磁気ディスクの製造方法であって、
前記潤滑層は、構造中にパーフルオロポリエーテル主鎖を有し且つ1分子中にヒドロキシル基を4個以上有するパーフルオロポリエーテル化合物を、沸点が90℃以上のフッ素系溶媒に分散溶解させた塗布液を用いて形成し、
前記フッ素系溶媒は、C 6 F 13 OCH 3 、または、C 3 HF 6 −CH(CH 3 )O−C 3 HF 6 であり、該フッ素系溶媒を、30℃以上、該溶媒の沸点よりも低い温度の範囲内に加温し、前記パーフルオロポリエーテル化合物を溶解させて塗布液とすることを特徴とする磁気ディスクの製造方法。 - 前記潤滑層中に含有される前記パーフルオロポリエーテル化合物の数平均分子量が、1000〜10000の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスクの製造方法。
- 前記保護層は、プラズマCVD法により成膜された炭素系保護層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気ディスクの製造方法。
- 前記保護層は、前記潤滑層に接する側に窒素を含むことを特徴とする請求項3に記載の磁気ディスクの製造方法。
- 前記磁気ディスクは、起動停止機構がロードアンロード方式の磁気ディスク装置に搭載され、5nm以下のヘッド浮上量の下で使用される磁気ディスクであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の磁気ディスクの製造方法。
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